(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】包装巻回体用化粧箱
(51)【国際特許分類】
B65D 5/72 20060101AFI20230330BHJP
B65D 5/42 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B65D5/72 A
B65D5/42 Z
(21)【出願番号】P 2019008447
(22)【出願日】2019-01-22
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】松尾 利香
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-122877(JP,A)
【文献】特開2007-112475(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221514(WO,A1)
【文献】特開2016-084140(JP,A)
【文献】特開2018-140821(JP,A)
【文献】特開2016-137541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/72
B65D 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧箱に、巻芯に
透明のポリ塩化ビニル系樹脂シートが巻かれた包装巻回体を収納し、化粧箱から引き出された包装巻回体のポリ塩化ビニル系樹脂シートを切断部材で切断可能な包装巻回体用化粧箱であって、
化粧箱は、包装巻回体を搭載可能な底板と、この底板の前部に接続されて
包装巻回体から引き出されたポリ塩化ビニル系樹脂シートに
上端部が接触可能な正面板と、底板の後部に接続されて正面板に対向可能な背面板と、この背面板に接続されて底板に対向可能な天井蓋板と、この天井蓋板に接続されて正面板に対向可能な重ね胴板と、底板の側部、正面板の側部、及び背面板の側部が区画する開口を閉塞可能な側板とを含んだコートボール紙製であり、表面に意匠がグラビア印刷又はオフセット印刷され、正面板表面の算術平均粗さRaが
高精度のレーザ顕微鏡を使用した非接触方式で測定された場合に0.48μm以上1.29μm以下とされるととともに、正面板表面の最大高さRzが
高精度のレーザ顕微鏡を使用した非接触方式で測定された場合に0.06μm以上0.33μm以下とされており、正面板表面の突出山部高さSpkが
高精度のレーザ顕微鏡を使用した非接触方式で測定された場合に0.58μm以上1.27μm以下
であり、
包装巻回体は、巻芯に巻かれたポリ塩化ビニル系樹脂シート同士の密着力が0.82N以上1.60N以下、ポリ塩化ビニル系樹脂シートと化粧箱の正面板の上端部との動摩擦係数が0.248以上0.667以下、ポリ塩化ビニル系樹脂シートと化粧箱の正面板の上端部との静摩擦係数が0.256以上0.319以下であり、
巻かれたポリ塩化ビニル系樹脂シート同士の密着力は、ポリ塩化ビニル系樹脂シートを25cm
2
の大きさに形成し、このポリ塩化ビニル系樹脂シートを2.94Nの圧縮応力で60秒間加圧して100mm/minの速度で剥離した場合の最大荷重点を測定する試験の実施により測定され、
ポリ塩化ビニル系樹脂シートと化粧箱の正面板の上端部との動摩擦係数と静摩擦係数は、表面性測定機を使用し、JIS K 7125の規格に準拠してそれぞれ測定されることを特徴とする包装巻回体用化粧箱。
【請求項2】
化粧箱の正面板の両側部に、第一のフラップがそれぞれ接続されるとともに、化粧箱の背面板の両側部に、第一のフラップに重なる第二のフラップがそれぞれ接続され、これら複数の第一、第二のフラップの少なくともいずれかに、略連続した接着剤用の小穴が形成されており、化粧箱の底板の両側部には、第一、第二のフラップの少なくともいずれかに接着される側板がそれぞれ接続される請求項1記載の包装巻回体用化粧箱。
【請求項3】
化粧箱の重ね胴板は、化粧箱の天井蓋板に接続されて化粧箱の正面板に重なる胴片と、この胴片に略連続した複数の小穴を介して接続される剥離片とに分割され、化粧箱の正面板と重ね胴板の剥離片のいずれかに、これらを接着する複数の接着部が形成されており、重ね胴板の剥離片には、複数の接着部のうち、少なくとも一部の接着部の周縁に部分的に沿う切り欠きが形成される請求項1又は2記載の包装巻回体用化粧箱。
【請求項4】
切断部材は、化粧箱の底板前部に取り付けられる
請求項1、2、又は3に記載の包装巻回体用化粧箱。
【請求項5】
切断部材は、生分解性樹脂により形成され、化粧箱の底板前部に取り付けられる
請求項1ないし4のいずれかに記載の包装巻回体用化粧箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻芯に包装用の樹脂シートが巻かれた包装巻回体用の化粧箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品の乾燥や酸化を防いだり、食品の香りが他の食品に移るのを防止する場合には、巻芯に食品包装用の薄いラップフィルムが巻回されたラップロールが使用されるが、このラップロールは、専用の収容箱に収容して用いられるのが一般的である(特許文献1、2参照)。
収容箱は、図示しないが、ポリ塩化ビニリデン系樹脂のラップロールを回転可能に収容する本体箱と、この本体箱に揺動可能に連接されて本体箱の開口部を開閉する蓋とを備えて構成されている。これら本体箱と蓋とは、0.2mm以上1.3mm以下の厚さを有し、表面が滑らかなケント紙の加工によりそれぞれ形成される。
【0003】
本体箱は、ラップロールを回転可能に搭載する底板と、この底板の前部に接続される前面板と、底板の後部に接続されて前面板に対向する後面板と、底板の両側部、前面板の両側部、及び後面板の両側部が区画する開口をそれぞれ閉塞する一対の側面板とから上部が開口した細長い箱に形成されている。
【0004】
これに対し、蓋は、後面板の上部に揺動可能に連接される蓋上面板と、この蓋上面板の前部に連接されて収容箱の前面板上部に重なる蓋前面板と、この蓋前面板に取り付けられてラップロールのラップフィルムを切断する略へ字形の切断刃と、蓋前面板の両側部にそれぞれ連接されて収容箱の側面板上部に重なる一対の蓋側面板とから構成され、本体箱の開口上部を開閉する。
【0005】
上記構成において、食品の乾燥や酸化を防ぐ場合には、先ず、収容箱の本体箱を握って蓋を開け、収容箱内のラップロールから薄い透明のラップフィルムを必要な長さ分引き出し、この引き出されたラップフィルムにより、食品を被覆して包装する。こうして食品を包装したら、収容箱の蓋を完全に閉じ、この蓋の切断刃により、引き出されたラップフィルムを切断すれば、食品の乾燥や酸化を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2018/163592号公報
【文献】特開2005‐247403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来における収容箱は、以上のように構成され、本体箱やその前面板がケント紙の加工により単に形成されるに止まり、表面が滑らかなので、蓋の切断刃で引き出されたラップフィルムが切断されると、残りの短いラップフィルムが本体箱の前面板に張り付くことなく、滑ってラップロール側に巻き戻ることがある。
【0008】
残りの短いラップフィルムがラップロール側に巻き戻った場合、収容箱の蓋を開けてラップロールからラップフィルムを再度引き出す必要がある。しかしながら、透明の薄いラップフィルムの端部を視覚的に把握することは容易ではないので、引き出し作業に手間がかかり、作業の迅速化を図ることができないという問題が生じる。この問題は、幅広のラップフィルムを大量に使用して短時間で確実な食品包装が要求される飲食店、ホテルや旅館等では実に深刻であり、早急な解決が望まれる。
【0009】
係る問題を解消する方法としては、本体箱の前面板に粘着性のニスを塗布することにより、本体箱の前面板にラップフィルムを貼り付け、巻き戻りを防止する方法があげられる。しかしながら、この方法を採用する場合、本体箱の前面板に張り付いた薄いラップフィルムを引き上げて剥離する際、薄いラップフィルムが簡単に破れてしまうという大きな問題が新たに生じることとなる。
【0010】
本発明は上記に鑑みなされたもので、包装巻回体にポリ塩化ビニル系樹脂シートが巻き戻るのを防止し、化粧箱の正面板に張り付いたポリ塩化ビニル系樹脂シートを損傷させることなく剥離することのできる包装巻回体用化粧箱を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては上記課題を解決するため、化粧箱に、巻芯に透明のポリ塩化ビニル系樹脂シートが巻かれた包装巻回体を収納し、化粧箱から引き出された包装巻回体のポリ塩化ビニル系樹脂シートを切断部材で切断可能なものであって、
化粧箱は、包装巻回体を搭載可能な底板と、この底板の前部に接続されて包装巻回体から引き出されたポリ塩化ビニル系樹脂シートに上端部が接触可能な正面板と、底板の後部に接続されて正面板に対向可能な背面板と、この背面板に接続されて底板に対向可能な天井蓋板と、この天井蓋板に接続されて正面板に対向可能な重ね胴板と、底板の側部、正面板の側部、及び背面板の側部が区画する開口を閉塞可能な側板とを含んだコートボール紙製であり、表面に意匠がグラビア印刷又はオフセット印刷され、正面板表面の算術平均粗さRaが高精度のレーザ顕微鏡を使用した非接触方式で測定された場合に0.48μm以上1.29μm以下とされるととともに、正面板表面の最大高さRzが高精度のレーザ顕微鏡を使用した非接触方式で測定された場合に0.06μm以上0.33μm以下とされており、正面板表面の突出山部高さSpkが高精度のレーザ顕微鏡を使用した非接触方式で測定された場合に0.58μm以上1.27μm以下であり、
包装巻回体は、巻芯に巻かれたポリ塩化ビニル系樹脂シート同士の密着力が0.82N以上1.60N以下、ポリ塩化ビニル系樹脂シートと化粧箱の正面板の上端部との動摩擦係数が0.248以上0.667以下、ポリ塩化ビニル系樹脂シートと化粧箱の正面板の上端部との静摩擦係数が0.256以上0.319以下であり、
巻かれたポリ塩化ビニル系樹脂シート同士の密着力は、ポリ塩化ビニル系樹脂シートを25cm
2
の大きさに形成し、このポリ塩化ビニル系樹脂シートを2.94Nの圧縮応力で60秒間加圧して100mm/minの速度で剥離した場合の最大荷重点を測定する試験の実施により測定され、
ポリ塩化ビニル系樹脂シートと化粧箱の正面板の上端部との動摩擦係数と静摩擦係数は、表面性測定機を使用し、JIS K 7125の規格に準拠してそれぞれ測定されることを特徴としている。
【0012】
なお、化粧箱の正面板の両側部に、第一のフラップがそれぞれ接続されるとともに、化粧箱の背面板の両側部に、第一のフラップに重なる第二のフラップがそれぞれ接続され、これら複数の第一、第二のフラップの少なくともいずれかに、略連続した接着剤用の小穴が形成されており、化粧箱の底板の両側部には、第一、第二のフラップの少なくともいずれかに接着される側板がそれぞれ接続されるようにすることができる。
【0013】
また、化粧箱の重ね胴板は、化粧箱の天井蓋板に接続されて化粧箱の正面板に重なる胴片と、この胴片に略連続した複数の小穴を介して接続される剥離片とに分割され、化粧箱の正面板と重ね胴板の剥離片のいずれかに、これらを接着する複数の接着部が形成されており、重ね胴板の剥離片には、複数の接着部のうち、少なくとも一部の接着部の周縁に部分的に沿う切り欠きが形成されるようにすることができる。
【0014】
また、切断部材は、化粧箱の底板前部に取り付けられると良い。
さらに、切断部材は、生分解性樹脂により形成され、化粧箱の底板前部に取り付けられると良い。
【0015】
ここで、特許請求の範囲におけるポリ塩化ビニル系樹脂シートには、ポリ塩化ビニル樹脂製の樹脂シートの他、樹脂フィルムが含まれる。Raは、Saと共に算術平均粗さを示すパラメータである。但し、Saは、国際規格(ISO25178)でRa(線の算術平均高さ)を面に拡張したパラメータである。また、Spkは、国際規格(ISO25178)における突出山部の平均高さである。さらに、包装巻回体用化粧箱は、使用の態様に応じ、上下前後左右が変更され、家庭用、業務用を特に問うものではない。
【0016】
本発明によれば、化粧箱の正面板の表面粗さを数値限定するので、正面板の表面が粗くなり、化粧箱の正面板表面にポリ塩化ビニル系樹脂シートが張り付くこととなる。この張り付きにより、ポリ塩化ビニル系樹脂シートが包装巻回体に巻き戻るのを防ぎ、ポリ塩化ビニル系樹脂シートの引き出し作業を簡素化し、作業の迅速化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、化粧箱の正面板表面の算術平均粗さRaが0.48μm以上1.29μm以下とされるととともに、正面板表面の最大高さRzが0.06μm以上0.33μm以下とされ、正面板表面の突出山部高さSpkが0.58μm以上1.27μm以下の範囲なので、包装巻回体にポリ塩化ビニル系樹脂シートが巻き戻るのを防止し、化粧箱の正面板に張り付いたポリ塩化ビニル系樹脂シートを損傷させることなく剥離することができるという効果がある。また、化粧箱の正面板表面が粗く、摩擦係数が従来よりも大きいので、化粧箱の正面板表面にポリ塩化ビニル系樹脂シートが密着し易くなり、包装巻回体からポリ塩化ビニル系樹脂シートを円滑に引き出すことが可能となる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、化粧箱の底板の側部、正面板の側部、及び背面板の側部が区画する開口を側板により閉塞する際、接着剤としてホットメルト接着剤を塗布する場合には、フラップの略連続した小穴に沿ってホットメルト接着剤を複数に分け、ビート塗布することができる。このビート塗布により、例えポリオレフィン系のホットメルト接着剤が接着しにくくても、ホットメルト接着剤の塗布範囲、塗布位置、塗布量を安定させることができ、側板を確実に接着することができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、化粧箱の重ね胴板から剥離片を除去すれば、重ね胴板の胴片が揺動可能となり、包装巻回体を覆う天井蓋板の開放が可能となる。天井蓋板が開放可能になれば、化粧箱内に収納された包装巻回体を自由に取り扱うことができるので、包装巻回体のポリ塩化ビニル系樹脂シートを簡易に引き出すことができる。また、重ね胴板の剥離片の切り欠きを利用して押圧操作すれば、剥離片の複数の接着部間等が部分的に浮き上がるので、正面板の表面から剥離片を徐々に、かつ簡単に剥離することができる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、化粧箱の底板に切断部材を取り付け、この切断部材により、ポリ塩化ビニル系樹脂シートを切断するので、化粧箱の正面板と引き出されたポリ塩化ビニル系樹脂シートの対向面積が拡大し、ポリ塩化ビニル系樹脂シートを長く引き出して密着させ、巻き戻りを防ぐことができる。また、化粧箱の底板に切断部材が取り付けられるので、例え化粧箱が強く握られても、天井蓋板が撓んで変形することを防止することが可能となる。したがって、ポリ塩化ビニル系樹脂シートの切断に支障を来すのを防止することが可能となる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、上記効果の他、切断部材が生分解性樹脂製なので、安全性が向上し、切れ味に大きな変化がなく、しかも、廃棄時の分別や処分が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る包装巻回体用化粧箱の実施形態を模式的に示す斜視全体説明図である。
【
図2】本発明に係る包装巻回体用化粧箱の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【
図3】本発明に係る包装巻回体用化粧箱の実施形態における化粧箱を模式的に示す展開図である。
【
図4】本発明に係る包装巻回体用化粧箱の実施形態における包装巻回体を模式的に示す斜視説明図である。
【
図5】本発明に係る包装巻回体用化粧箱の実施形態における化粧箱の内フラップと開放状態の側板の関係を模式的に示す斜視説明図である。
【
図6】本発明に係る包装巻回体用化粧箱の実施形態における化粧箱から引き出されたポリ塩化ビニル系樹脂フィルムを切断歯で切断する状態を模式的に示す斜視説明図である。
【
図7】本発明に係る包装巻回体用化粧箱の実施形態における化粧箱から引き出されたポリ塩化ビニル系樹脂フィルムを切断歯で切断する状態を模式的に示す別の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における包装巻回体用化粧箱は、
図1ないし
図7に示すように、化粧箱1から引き出された包装巻回体20のポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22を切断歯30で切断する細長い包装用の箱であり、化粧箱1をコートボール紙製としてその表面に意匠をグラビア印刷又はオフセット印刷し、少なくとも化粧箱1の正面板3表面の算術平均粗さRaを0.48μm以上1.29μm以下とするとともに、少なくとも正面板3表面の最大高さRzを0.06μm以上0.33μm以下とし、少なくとも正面板3表面の突出山部高さSpkを0.58μm以上1.27μm以下とするようにしている。
【0025】
化粧箱1は、
図1ないし
図3、
図5に示すように、包装巻回体20を回転可能に搭載する底板2と、この底板2の前端部に接続されて包装巻回体20のポリ塩化ビニル系樹脂シート22と摺接する正面板3と、底板2の後端部に接続されて正面板3の内面に包装巻回体20を介して対向する背面板6と、この背面板6の上端部に揺動可能に接続されて底板2に包装巻回体20を介して対向する天井蓋板7と、この天井蓋板7に揺動可能に接続されて正面板3の表面に対向可能な重ね胴板8と、底板2の両側部、正面板3の両側部、及び背面板6の両側部が区画する開口側部をそれぞれ閉塞可能な一対の側板15とを備えて一体形成され、製造時に正面板3の表面に重ね胴板8が接着された未完成の状態で図示しない製函機に平坦に折り畳んでセットされる。
【0026】
化粧箱1の底板2、正面板3、背面板6、天井蓋板7、及び重ね胴板8は、包装巻回体20に対応する細長い長方形にそれぞれ形成され、底板2の前端部と正面板3との間、底板2の後端部と背面板6との間、この背面板6の上端部と天井蓋板7との間、及び天井蓋板7の前端部と重ね胴板8との間には、化粧箱1の組立を容易にする屈曲用の折線がそれぞれ形成される。
【0027】
正面板3の短辺の両側部には、矩形あるいは一部切り欠かれた台形の内フラップ4がそれぞれ折線を介し屈曲可能に接続され、各内フラップ4の表面が側板15の内面に対向して接着される。この内フラップ4の表面には、ホットメルト接着剤の接着を容易にする複数本のミシン目5が間隔をおき並べて形成され、各ミシン目5が底板2や天井蓋板7の左右方向に連続して伸長される。
【0028】
背面板6の短辺の両側部には、化粧箱1の開口側部を被覆可能な内フラップ4Aがそれぞれ折線を介し屈曲可能に接続され、各内フラップ4Aが矩形あるいは一部切り欠かれた台形等に形成されており、各内フラップ4Aが折り畳まれて対向する正面板3の内フラップ4の裏面に接着される。内フラップ4Aの表面には、ホットメルト接着剤の接着を容易にする複数本のミシン目5Aが間隔をおき並べて形成され、各ミシン目5Aが底板2や天井蓋板7の左右方向に連続して伸長される。
【0029】
正面板3と背面板6の内フラップ4・4Aは、同じ大きさや長さでも良いが、必要に応じて変更される。例えば、正面板3の内フラップ4が短く形成されるとともに、背面板6の内フラップ4Aが長く形成されたり、逆に正面板3の内フラップ4が長く形成され、背面板6の内フラップ4Aが短く形成される。
【0030】
天井蓋板7は、底板2と同じ大きさ・長さに形成され、底板2の内面に対向して包装巻回体20を収納する空間を区画形成する。この天井蓋板7の短辺の両側部には、底板2に側板15が接続されない場合、包装巻回体20のポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22の引き出しに支障を来さないことを条件として、側板15がそれぞれ折線を介し屈曲可能に接続される。
【0031】
重ね胴板8は、天井蓋板7の前端部に接続されて正面板3の表面に重なる細長い胴片9と、この胴片9の前端部にミシン目10を介して接続される細長い剥離片11とに分割され、この剥離片11の裏面長手方向に、正面板3の表面に接着剤により接着される複数の接着部12が所定の間隔をおき並べて形成されており、各接着部12が略円形あるいは矩形に区画形成されて所定の接着剤が塗布される。
【0032】
ミシン目10の両端部には、必要に応じ、胴片9と剥離片11との分離を容易にする略三角形の切り欠き13がそれぞれ形成される。また、剥離片11の少なくとも長手方向には、複数の接着部12のうち、少なくとも一部の接着部12の周縁に部分的に沿う切り欠き14が所定の間隔をおきそれぞれ形成され、この複数の切り欠き14を利用した押圧操作により、剥離片11の複数の接着部12間等が部分的に浮き上がり、正面板3の表面から剥離片11が徐々に、かつ簡単に剥離される。
【0033】
このような重ね胴板8は、正面板3から剥離片11が複数の切り欠き13を介して剥離され、この剥離片11が胴片9からミシン目10に沿って除去されることにより、胴片9が揺動可能となって天井蓋板7の開放を可能とする。天井蓋板7が開放可能になると、化粧箱1内に収納された包装巻回体20を自由に取り扱うことができ、包装巻回体20のポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22を所定の長さ分引き出すことができる。
【0034】
各側板15は、化粧箱1の開口側部に対応する大きさの矩形に形成され、底板2の短辺の側部に折線を介し屈曲可能に接続される。各側板15の先端部には、天井蓋板7の裏面側部に重なる先細りの舌フラップ16が折線を介し屈曲可能に接続され、これら側板15と舌フラップ16とが化粧箱1の組立時にL字形に屈曲される。
【0035】
以上の構成を有する化粧箱1は、紙器用板紙であるコートボール紙の打ち抜きにより形成され、底板2、正面板3、各内フラップ4、背面板6、各内フラップ4A、天井蓋板7、重ね胴板8、各側板15、及び各舌フラップ16の視認可能な全表面(外面)に、製品価値を高める所定の意匠が必要に応じて印刷される。
【0036】
紙器用板紙には、コートボール紙、チップボール、クラフトボール、メタル紙、段ボール等の種類があるが、印刷適性に優れ、あらゆる紙器の素材に適するコートボール紙が最適である。コートボール紙は、例えば裏層の古紙、中層の古紙、及び表層のパルプ(植物繊維)が積層され、白板紙に形成される。コートボール紙としては、例えばレンゴー株式会社製や大阪製紙株式会社製のコート白ボール等が採用される。
【0037】
化粧箱1の表面には、文字、記号、模様、色彩、これらの結合からなる所定の意匠が印刷されるが、この所定の意匠の印刷方法としては、細かい濃淡の表現を再現したり、化粧箱1の製造コストを低減したい場合には、グラビア印刷法が選択される。これに対し、凹凸のあるコートボール紙に適切に印刷して同品質の化粧箱1を安価に製造したり、使い勝手を向上させたい場合には、オフセット印刷法が選択される。
【0038】
化粧箱1表面の表面粗さは、包装巻回体20のポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22の密着を重視する場合には、小さい値が好ましいものの、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22の引き出し時の作業性や剥離時の剥離性を重視する場合には、大きい値が好ましい。これらの点に鑑み、表面粗さは、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22の密着に配慮しながら、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22の引き出し時の作業性や剥離時の剥離性を考慮して決定される。
【0039】
化粧箱1表面の表面粗さの二次元の算術平均粗さRaは、従来例よりも大きい0.48μm以上1.29μm以下であるが、好ましくは0.53μm以上1.24μm以下、より好ましくは0.58μm以上1.19μm以下が良い。また、化粧箱1表面の表面粗さを示す最大高さRzは、従来例よりも小さい0.06μm以上0.33μm以下、好ましくは0.08μm以上0.28μm以下、より好ましくは0.11μm以上0.23μm以下が最適である。
【0040】
化粧箱1表面の表面粗さ三次元の算術平均粗さSaは、0.48μm以上1.22μm以下、好ましくは0.53μm以上1.17μm以下、より好ましくは0.58μm以上1.12μm以下が良い。また、化粧箱1表面の表面粗さを示す突出山部高さSpkは、0.58μm以上1.27μm以下であるが、好ましくは0.63μm以上1.22μm以下、より好ましくは0.68μm以上1.17μm以下が良い。
【0041】
包装巻回体20は、
図2や
図4に示すように、化粧箱1の底板2よりも短い巻芯21を備え、この巻芯21の外周面に透明帯形のポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22が20m~50m程度、あるいは50m~110m程度巻回されており、化粧箱1内に自由回転可能に収納される。巻芯21は、所定の紙により、円筒形に形成される。また、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22は、例えば耐熱性、耐水性、粘着性等に優れるポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、柔軟剤、安定剤等により柔軟な薄膜に成形され、包装巻回体20から化粧箱1の正面板3の自由端部である上端部を跨いで所定の長さ分引き出された後、化粧箱1の切断歯30により切断され、食品の包装に利用される。
【0042】
包装巻回体20の巻回されたポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22同士の密着力は、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22が巻かれた包装巻回体20の放置期間等にもよるが、0.82N以上1.60N以下、好ましくは0.87N以上1.55N以下、より好ましくは0.92N以上1.50N以下が良い。
【0043】
切断歯30は、
図5ないし
図7に示すように、例えば金属や生分解性樹脂により細長い長方形の薄板に形成され、両側のうち、少なくとも一側部の長手方向に複数の鋸歯31が連続して形成されるとともに、各鋸歯31が小さな三角形に形成されており、包装巻回体20から引き出されたポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22を迅速に切断できるよう、金属製の場合には底板2の表面前部にカシメ接合され、生分解性樹脂の場合には底板2の表面前部に接着される。
【0044】
切断歯30の材料が生分解性樹脂の場合、生分解性樹脂として、例えばバイオポリエステル、バクテリアセルロース、脂肪酸ポリエステル等があげられる。切断歯30の具体的な材料としては、例えば三菱ケミカル株式会社製のエコロージュ(登録商標)、ユニチカ株式会社製のテラマック〔製品名〕、旭化成株式会社製のビオクリア〔製品名〕等が好適に使用される。
【0045】
切断歯30の一側部は、底板2の表面前端部と正面板3との接続部分付近、換言すれば、境界の折線付近に位置し、複数の鋸歯31が底板2の表面前端部から僅かに食み出ており、この僅かに食み出た複数の鋸歯31が包装巻回体20から引き出されたポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22を切断するよう機能する。切断歯30が重ね胴板8ではなく、底板2の表面前部に接合されることにより、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22は、切断の際、従来例よりも包装巻回体20から長く引き出され、正面板3表面の上部から下部に亘る領域に対向する。
【0046】
上記構成において、包装巻回体20用の化粧箱1を組み立てて製造・出荷する場合、製函機に平坦に折り畳んでセットされた未完成の化粧箱1は、先ず、引き起こされて中空の角筒形に成形され、開口した両側部の一方の側部から既に製造された包装巻回体20が水平に挿入される。
【0047】
包装巻回体20が挿入された化粧箱1は、開口した両側部における一対の内フラップ4・4Aの表面にポリオレフィン系のホットメルト接着剤等がそれぞれ薄く塗布され、一対の内フラップ4A・4が順次折り畳まれる(
図5参照)とともに、後から折り畳まれた内フラップ4の表面に側板15が折り重ねられてその舌フラップ16が一対の内フラップ4・4Aと天井蓋板7との間に挟持され、内フラップ4と側板15との接着により、開口した両側部がそれぞれ閉塞される。
【0048】
この際、化粧箱1の各側部における一対の内フラップ4・4Aの長さが異なる場合には、長い内フラップ4Aを先に畳み、この長い内フラップ4Aの表面に短い内フラップ4を後から畳んで重ねれば良い。こうすれば、一対の内フラップ4・4Aの姿勢を安定させることができるので、この一対の内フラップ4・4Aの表面にホットメルト接着剤を適切に塗布したり、側板15の裏面を強固に接着することができる。
【0049】
また、ホットメルト接着剤を塗布する場合には、内フラップ4・4Aの複数のミシン目5に沿ってホットメルト接着剤を複数に分け、ビート塗布することができる。こうすれば、例えポリオレフィン系のホットメルト接着剤が接着しにくくても、ホットメルト接着剤の塗布範囲、塗布位置、塗布量を安定させ、確実に接着することができる。
【0050】
化粧箱1の開口した両側部が閉塞されると、この化粧箱1の両側部やその付近に紫外光が紫外光照射装置からそれぞれ照射され、化粧箱1の各側部付近、具体的には、折り畳まれた接着状態の側板15とその付近が検査装置により検査される。検査の結果、化粧箱1の両側部に外観上の問題がない場合には、化粧箱1を良品とし、他の良品の化粧箱1と共にまとめてダンボールで出荷することができる。
【0051】
次に、包装巻回体20用化粧を購入して使用可能な状態にする場合には、化粧箱1の重ね胴板8から剥離片11をミシン目10に沿って引き千切り、除去すれば、重ね胴板8の胴片9が揺動可能となり、包装巻回体20を被覆保護する天井蓋板7の開放が可能となる。天井蓋板7が開放可能になれば、化粧箱1内に収納された包装巻回体20を自由に取り扱うことができるので、包装巻回体20のポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22を使用可能な状態とすることができる。
【0052】
次に、化粧箱1からポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22を引き出して食品の乾燥や酸化を防ぐ場合には、先ず、化粧箱1の中央部付近を握持して底板2の切断歯30を上に向け(
図6、
図7参照)、化粧箱1の天井蓋板7を開けて包装巻回体20から透明の薄いポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22を必要な長さ分引き出し、化粧箱1の天井蓋板7を閉じた後、化粧箱1を外側に傾けながら引き出した薄いポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22により食品を被覆・包装する。
【0053】
この際、包装巻回体20のポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22が化粧箱1の正面板3の上端部に摺接しながら引き出される場合の動摩擦係数は、0.248以上0.667以下、好ましくは0.253以上0.662以下、より好ましくは0.258以上0.657以下が最適である。これは、動摩擦係数が0.248以上0.667以下であれば、包装巻回体20からポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22を容易に引き出すことができるからである。
【0054】
また、包装巻回体20のポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22が化粧箱1の正面板3の上端部に摺接しながら引き出される場合の静摩擦係数は、0.256以上0.319以下、好ましくは0.261以上0.314以下、より好ましくは0.266以上0.309以下が最適である。これも、静摩擦係数が0.256以上0.319以下であれば、包装巻回体20からポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22を円滑に引き出すことができるからである。
【0055】
ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22により食品を被覆・包装したら、底板2の切断歯30にポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22を圧接して切断すれば、食品の乾燥や酸化を防ぐことができる。この際、化粧箱1の切断歯30でポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22が切断されると、残りの長いポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22は、従来例とは異なり、化粧箱1の正面板3表面に静電気で密着し、滑り性の低下に伴い、包装巻回体20側に巻き戻ることがない。
【0056】
上記構成によれば、コートボール紙製の化粧箱1とポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22の組み合わせ、及び化粧箱1の表面に対するグラビア印刷又はオフセット印刷の特性を踏まえ、正面板3の表面粗さを数値限定するので、化粧箱1の正面板3表面にポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22が張り付いて密着する。この密着により、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22が包装巻回体20に巻き戻るのを防止し、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22を引き出す手間を省くことができる。したがって、透明の薄いラップフィルムの端部を容易に把握し、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22の引き出し作業を簡素化し、作業の迅速化を図ることができる。
【0057】
また、幅広のラップフィルムを大量に使用して短時間で確実な食品包装が要求される飲食店、ホテルや旅館等でも、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22の引き出し作業の迅速化が大いに期待できる。また、化粧箱1の正面板3に粘着性のニスを塗布する必要がないので、化粧箱1の正面板3に張り付いた薄いポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22を剥離する際、薄いポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22が簡単に破れるおそれを排除することが可能となる。
【0058】
また、重ね胴板8に切断歯30を接着するのではなく、底板2に切断歯30を接合し、この切断歯30により、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22を切断するので、化粧箱1の正面板3とポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22の対向面積の拡大が期待できる。したがって、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22を従来よりも長く引き出して密着させることができ、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22の巻き戻りを有効に防止することが可能となる。
【0059】
また、化粧箱1の底板2に切断歯30が接合されるので、例え化粧箱1が強く握持されても、天井蓋板7が撓んで変形することを防止することが可能となる。したがって、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム22の切断に支障を来すのを有効に防止することができる。また、切断歯30が金属製ではなく、生分解性樹脂製の場合、安全性が向上し、切れ味に大きな変化がなく、しかも、廃棄時の分別や処分が容易となる。さらに、化粧箱1の表面に意匠をグラビア印刷あるいはオフセット印刷した後、化粧箱1の少なくとも正面板3の表面に、粘着性のニスを塗工する必要性が全くないので、化粧箱1の安価、かつ迅速な製造に資することができる。
【0060】
なお、上記実施形態では化粧箱1の全表面の算術平均粗さRaを0.48μm以上1.29μm以下、最大高さRzを0.06μm以上0.33μm以下、かつ突出山部高さSpkを0.58μm以上1.27μm以下としたが、化粧箱1の正面板3表面のみの算術平均粗さRaを0.48μm以上1.29μm以下、最大高さRzを0.06μm以上0.33μm以下、かつ突出山部高さSpkを0.58μm以上1.27μm以下としても良い。
【0061】
また、上記実施形態における化粧箱1の内フラップ4・4Aには、包装巻回体20の巻芯21の開口した両端部にそれぞれ嵌合する巻戻り防止部を突出形成しても良い。また、剥離片11の裏面長手方向に複数の接着部12を所定の間隔をおき並べて形成しても良いが、正面板3の表面に複数の接着部12を所定の間隔をおき並べて形成しても良い。また、剥離片11の少なくとも表面長手方向に、全ての接着部12の周縁に部分的に沿う切り欠き14を所定の間隔をおき形成することもできる。さらに、切断歯30は、細長い長方形が主ではあるが、必要に応じ、細長い略へ字形等の薄板に成形することもできる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明に係る包装巻回体用化粧箱の実施例を比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
先ず、コートボール紙により
図3に示すポリマラップ(登録商標)〔信越ポリマー株式会社製:製品名〕用の化粧箱を打ち抜き形成し、この化粧箱の全表面に意匠をグラビア印刷した後、化粧箱の正面板表面の表面粗さ、具体的には算術平均粗さRa、最大高さRz、算術平均粗さSa、突出山部高さSpkをそれぞれ測定してその測定結果を表1に記載した。
【0063】
コートボール紙はCRC 500g/m2〔レンゴー株式会社製:製品名〕とし、打ち抜き寸法は235mm×439mmとした。また、正面板表面の表面粗さは、高精度のレーザ顕微鏡〔オリンパス株式会社製:製品名LEXT OLS‐4000〕を使用して非接触方式で測定した。このレーザ顕微鏡は、測定物である化粧箱の正面板の表面レーザ光を照射し、反射光の輝度を高さ情報として取り込む3D測定レーザ顕微鏡である。
【0064】
化粧箱の正面板表面の表面粗さを測定したら、包装巻回体のポリ塩化ビニル樹脂フィルムが化粧箱の正面板の上端部に摺接しながら引き出される場合の動摩擦係数と静摩擦係数とをそれぞれ測定し、測定結果を表1に記載した。
【0065】
包装巻回体は、巻芯の外周面に透明帯形のポリ塩化ビニル樹脂フィルムが45m巻回されたポリマラップ(登録商標)〔信越ポリマー株式会社製:製品名〕とした。この包装巻回体の巻回されたポリ塩化ビニル樹脂フィルム同士の密着力は、測定したところ、1.50Nであった。密着力は、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムを25cm2の大きさに形成し、このポリ塩化ビニル樹脂フィルムを300g(2.94N)の圧縮応力で60秒間加圧した後、100mm/minの速度で剥離した場合の最大荷重点を測定する試験を実施して測定した。
【0066】
密着力の具体的な測定方法としては、先ず、一対の円柱体を用意し、各円柱体の底面にポリ塩化ビニル樹脂フィルムを弛まないように張り付けてバンドで強固に固定した。ここで、円柱体は、重さが300g、底面の面積が25cm2である。測定には、動摩擦係数の測定と同様のポリ塩化ビニル樹脂フィルムを使用することとした。
【0067】
ポリ塩化ビニル樹脂フィルムを強固に固定したら、一方の円柱体上に他方の円柱体をポリ塩化ビニル樹脂フィルム面同士が重なるように置き、下側の円柱体に上側の円柱体の自重300gが荷重される状態で1分間放置し、上側の円柱体を100mm/minの速度で引き上げることにより、ポリ塩化ビニル樹脂フィルム同士の剥離に必要な力を測定した。この測定時の測定環境の温度は25℃であった。
【0068】
ポリ塩化ビニル樹脂フィルムの摩擦係数を測定する場合には、表面性測定機〔新東科学株式会社製:製品名:トライボギア TYPE14〕を使用し、JIS K 7125(ISO8295)の規格に準拠し、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムを滑らせた場合の動摩擦係数と静摩擦係数とをそれぞれ測定した。この測定の際、30cm幅のポリ塩化ビニル樹脂フィルムを包装巻回体から引き出すときには、化粧箱の上端部とポリ塩化ビニル樹脂フィルムとが摺接する面積が30cm×0.03cm≒1cm2となる。また、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムの初期引出力は、約200g程度となる。
【0069】
摩擦係数の具体的な測定方法としては、先ず、表面性測定機の移動台に、4cm×10cmの大きさに切り出した化粧箱の正面板をセットしてその意匠がグラビア印刷された表面を上方に向け、表面性測定機の別体の圧子に、1cm×4cmの細くカットしたポリ塩化ビニル樹脂フィルムをセットした。圧子が測定する面積は、1cm×1cm四方である。
【0070】
こうして圧子にポリ塩化ビニル樹脂フィルムをセットしたら、圧子を表面性測定機に装着し、移動台上の正面板上に圧子のポリ塩化ビニル樹脂フィルムを接触させ、表面性測定機の分銅受け皿に200gの分銅を載せて10秒間静止した後、移動台を100mm/minで70mm水平に直線移動させることにより、動摩擦係数と静摩擦係数とを測定した。
【0071】
〔実施例2〕
先ず、コートボール紙により
図3に示すベーシックラップ〔株式会社スズカ未来製:製品名〕用の化粧箱を打ち抜き形成し、この化粧箱の全表面に意匠をオフセット印刷した後、化粧箱の正面板表面の表面粗さ、具体的には算術平均粗さRa、最大高さRz、算術平均粗さSa、突出山部高さSpkをそれぞれ測定してその測定結果を表1に記載した。
【0072】
コートボール紙はCRC 500g/m2〔レンゴー株式会社製:製品名〕とし、打ち抜き寸法は235mm×439mmとした。また、正面板表面の表面粗さは、実施例1と同様のレーザ顕微鏡〔オリンパス株式会社製:製品名LEXT OLS‐4000〕を使用して非接触方式で測定した。
【0073】
化粧箱の正面板表面の表面粗さを測定したら、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムが化粧箱の正面板の上端部に摺接しながら引き出される場合の動摩擦係数と静摩擦係数とを実施例1と同様に測定し、測定結果を表1に記載した。
包装巻回体は、巻芯の外周面に透明帯形のポリ塩化ビニル樹脂フィルムが110m巻回されたベーシックラップ〔株式会社スズカ未来製:製品名〕とした。この包装巻回体の巻回されたポリ塩化ビニル樹脂フィルム同士の密着力は、測定したところ、0.92Nであった。
【0074】
〔比較例1〕
先ず、化粧箱を、コートボール紙に意匠がオフセット印刷されたリケンラップ〔リケンファブロ株式会社製:製品名〕用の化粧箱とし、この化粧箱の正面板表面の表面粗さ、具体的には算術平均粗さRa、最大高さRz、算術平均粗さSa、突出山部高さSpkをそれぞれ測定してその測定結果を表1に記載した。正面板表面の表面粗さは、実施例1と同様のレーザ顕微鏡〔オリンパス株式会社製:製品名LEXT OLS‐4000〕を使用して非接触方式で測定した。
【0075】
化粧箱の正面板表面の表面粗さを測定したら、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムが化粧箱の正面板の上端部に摺接しながら引き出される場合の動摩擦係数と静摩擦係数とを実施例1と同様に測定し、測定結果を表1に記載した。
包装巻回体は、巻芯の外周面に透明帯形のポリ塩化ビニル樹脂フィルムが100m巻回されたリケンラップ〔リケンファブロ株式会社製:製品名〕とした。この包装巻回体の巻回されたポリ塩化ビニル樹脂フィルム同士の密着力は、測定したところ、1.10Nであった。
【0076】
〔比較例2〕
先ず、化粧箱を、コートボール紙に意匠がオフセット印刷された日立ラップ〔日立化成株式会社製:製品名〕用の化粧箱とし、この化粧箱の正面板表面の表面粗さ、具体的には算術平均粗さRa、最大高さRz、算術平均粗さSa、突出山部高さSpkをそれぞれ測定してその測定結果を表1に記載した。正面板表面の表面粗さは、実施例1と同様のレーザ顕微鏡〔オリンパス株式会社製:製品名LEXT OLS‐4000〕を使用して非接触方式で測定した。
【0077】
化粧箱の正面板表面の表面粗さを測定したら、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムが化粧箱の正面板の上端部に摺接しながら引き出される場合の動摩擦係数と静摩擦係数とを実施例1と同様に測定し、測定結果を表1に記載した。
包装巻回体は、巻芯の外周面に透明帯形のポリ塩化ビニル樹脂フィルムが100m巻回された日立ラップ〔日立化成株式会社製:製品名〕とした。この包装巻回体の巻回されたポリ塩化ビニル樹脂フィルム同士の密着力は、測定したところ、0.64Nであった。
【0078】
〔比較例3〕
先ず、化粧箱を、コートボール紙に意匠がオフセット印刷されたオカモトラップ〔オカモト株式会社製:製品名〕用の化粧箱とし、この化粧箱の正面板表面の表面粗さ、具体的には算術平均粗さRa、最大高さRz、算術平均粗さSa、突出山部高さSpkをそれぞれ測定してその測定結果を表1に記載した。正面板表面の表面粗さは、実施例1と同様のレーザ顕微鏡〔オリンパス株式会社製:製品名LEXT OLS‐4000〕を使用して非接触方式で測定した。
【0079】
化粧箱の正面板表面の表面粗さを測定したら、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムが化粧箱の正面板の上端部に摺接しながら引き出される場合の動摩擦係数と静摩擦係数とを実施例1と同様に測定し、測定結果を表1に記載した。
包装巻回体は、巻芯の外周面に透明帯形のポリ塩化ビニル樹脂フィルムが100m巻回されたオカモトラップ〔オカモト株式会社製:製品名〕とした。この包装巻回体の巻回されたポリ塩化ビニル樹脂フィルム同士の密着力は、測定したところ、0.84Nであった。
【0080】
【0081】
〔評 価〕
各実施例の場合、化粧箱の正面板表面に長く引き出したポリ塩化ビニル樹脂フィルムが静電気により密着した。この密着により、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムが包装巻回体に巻き戻るのを防止し、化粧箱から新たなポリ塩化ビニル樹脂フィルムを容易に引き出すことができた。
これに対し、各比較例の場合、化粧箱の表面粗さの少なくとも算術平均粗さRaと最大高さRzが本発明の範囲外のため、化粧箱の正面板表面にポリ塩化ビニル樹脂フィルムが密着せず、巻き戻ることがあった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に係る包装巻回体用化粧箱は、食材や家庭用品等の製造分野で使用される。
【符号の説明】
【0083】
1 化粧箱
2 底板
3 正面板
4 内フラップ(第一のフラップ)
4A 内フラップ(第二のフラップ)
5 ミシン目(小穴)
5A ミシン目(小穴)
6 背面板
7 天井蓋板
8 重ね胴板
9 胴片
10 ミシン目(小穴)
11 剥離片
12 接着部
14 切り欠き
15 側板
20 包装巻回体
21 巻芯
22 ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム(ポリ塩化ビニル系樹脂シート)
30 切断歯(切断部材)