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特許7253408クライオポンプ、クライオポンプの再生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】クライオポンプ、クライオポンプの再生方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 37/08 20060101AFI20230330BHJP
   F04B 37/16 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
F04B37/08
F04B37/16 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019041937
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020143646
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591176306
【氏名又は名称】アルバック・クライオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】安田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】村山 吉信
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-033872(JP,A)
【文献】特開平08-291791(JP,A)
【文献】特開平09-126125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/08
F04B 37/16
F04C 25/00
F04D 19/04
B01D 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッフルと、シールドと、クライオパネルとを冷却する2段式のヘリウムガスを冷媒とした冷凍機を有し、冷却された前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとに気体を凝縮又は吸着させて真空槽の内部を真空排気するクライオポンプであって、
前記クライオパネルが配置された排気空間に加湿ガスを供給する加湿ガス源を有し、
前記加湿ガスには、排気空間が相対湿度0.5%RH以上の水のガスが含有されたクライオポンプ。
【請求項2】
前記排気空間に位置する気体の相対湿度を測定する湿度センサが設けられた請求項1記載のクライオポンプ。
【請求項3】
前記湿度センサの測定結果が入力され、前記湿度センサの測定値が示す前記相対湿度の値と基準相対湿度の値とを比較して、前記測定値の値が前記基準相対湿度の値以上のときに、前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとの冷却を開始するクライオポンプであって、
前記基準相対湿度の値は、相対湿度0.5%RHである請求項2記載のクライオポンプ。
【請求項4】
バッフルと、シールドと、クライオパネルとを冷却する2段式のヘリウムガスを冷媒とした冷凍機を有し、冷却された前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとに気体を凝縮又は吸着させて真空槽の内部を真空排気するクライオポンプであって、
前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとが配置された排気空間の相対湿度を測定する湿度センサが設けられ
前記湿度センサの測定結果が入力され、前記湿度センサの測定値が示す前記相対湿度の値と基準相対湿度の値とを比較して、前記測定値の値が前記基準相対湿度の値以上のときに、前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとの冷却を開始し、
前記基準相対湿度の値は、相対湿度0.5%RHであるクライオポンプ。
【請求項5】
バッフルと、シールドと、クライオパネルとを冷却する2段式のヘリウムガスを冷媒とした冷凍機を有し、冷却された前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとに気体を凝縮又は吸着させて真空槽の内部を真空排気するクライオポンプの再生処理を行うクライオポンプの再生方法であって、
前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとを昇温させ、前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとに凝縮又は吸着された気体を放出させる放出工程と、
前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとが配置された排気空間の真空排気を開始する排気工程と、
前記冷凍機により前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとの冷却を開始する冷却開始工程と、
前記排気空間に加湿ガスを導入する水分導入工程を有し、
前記加湿ガスには、排気空間を相対湿度が0.5%RH以上になる水のガスを含有させ、
前記水分導入工程を行う場合は、前記水分導入工程を前記排気工程を開始した後、前記冷却開始工程を開始する前に行うクライオポンプの再生方法。
【請求項6】
前記排気工程を開始した後、前記水分導入工程を開始する前に、前記排気空間に位置する気体の相対湿度を測定する湿度測定工程と、
測定した前記相対湿度の測定値が、基準相対湿度よりも大きい場合に、前記冷却開始工程に移行する請求項5記載のクライオポンプの再生方法。
【請求項7】
前記基準相対湿度は、相対湿度が0.5%RHである請求項6記載のクライオポンプの再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は クライオポンプとクライオポンプの再生方法にかかり、特に、クライオポンプの冷却時間を短縮させ、一定にするクライオポンプとクライオポンプの再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空容器内にバッフルと、シールドと、クライオパネルとの表面を露出させ、容器内の気体分子をバッフル、シールド、クライオパネルに凝縮又は吸着させて捕捉し、排気するポンプである。真空槽の内部雰囲気に露出する機械的可動部材が無く、油等を使わないため、クリーンな高真空雰囲気を形成することができる。
【0003】
クライオポンプ内のバッフルと、シールドと、クライオパネルとの冷却を開始する際には、先ず、クライオポンプの内部を大気雰囲気と遮断させた状態で、クライオポンプに接続された粗引きポンプを動作させ、クライオポンプの内部を粗引きポンプによって真空排気する。
【0004】
クライオポンプ内が所定圧力まで真空排気され、圧力上昇を確認後、バッフルと、シールドと、クライオパネルとの冷却を開始する。バッフルと、シールドと、クライオパネルとの温度が低下すると、クライオポンプ内の蒸気圧が低い残留ガスからバッフルと、シールドと、クライオパネルとに凝縮又は吸着され、真空排気される。
【0005】
平衡蒸気圧が10-8Pa以下となる温度は、水の場合は130Kであり、ArやN2の場合は20Kである。従って、クライオパネルの温度が20Kに冷却されると、ArやN2等の気体はクライオパネルに凝縮されて除去される。
【0006】
他方、水素、ヘリウム、ネオンのような蒸気圧の高い気体は20Kでは凝縮により排気することができないため、20K以下に冷却された吸着剤により排気される。
【0007】
バッフルと、シールドと、クライオパネルとが低温に冷却されたクライオポンプを使用して真空槽を真空排気する際には、真空槽の内部を粗引きポンプによって真空排気し、真空槽の内部がクライオポンプが動作可能な圧力まで低下した後、真空槽の内部をクライオポンプに接続し真空槽の内部に残留する気体をバッフルと、シールドと、クライオパネルとに凝縮又は吸着させて除去し、真空槽の内部を高真空雰囲気にする。
【0008】
真空槽を真空排気する度に、バッフルと、シールドと、クライオパネルとに凝縮又は吸着される気体の量が増加し、排気性能が低下すると、バッフルと、シールドと、クライオパネルとに凝縮又は吸着された気体を除去するため、バッフルと、シールドと、クライオパネルとを室温程度の温度まで昇温させた後、粗引きと冷却とによって、バッフルと、シールドと、クライオパネルとを所定温度に冷却することで、クライオポンプを使用できる状態に再生する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-44107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般には、クライオポンプの内部がバッフルと、シールドと、クライオパネルとが冷却可能な所定圧力まで真空排気されたところで、クライオポンプの内部と粗引きポンプとを遮断させ、クライオポンプの内部が真空排気されていない状態を維持し、クライオポンプの内部の圧力上昇を確認する。
【0011】
このとき、クライオポンプの内部の圧力の上昇速度を測定し、圧力上昇速度が所定値以下の場合はリークが発生していない、及びクライオポンプ内部からの放出ガスが少ないと判断して、クライオポンプのバッフルと、シールドと、クライオパネルとの冷却を開始する。
【0012】
しかしながらリークが無い、放出ガスが少ないと判断しても、バッフルと、シールドと、クライオパネルとが室温から所定温度、例えばクライオパネルが20K、に冷却されるまでの時間が一定しないという現象が認識されており、冷却時間が長時間の場合はクライオポンプの再生に長時間を要することになる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発明者等は、クライオポンプの内部雰囲気中の水分の相対湿度によって冷却時間に差があり、相対湿度がある一定以上あると冷却時間が短くなり、一定になるという現象を見出した。
【0014】
この冷却時間の相違は、バッフルと、シールドと、クライオパネルとを冷却する際の、バッフルと、シールドと、クライオパネルとが水分を凝縮して起こる真空断熱効果の差に基づいていると考えられ、真空断熱効果が大きいほど、冷却時間が早くなり、バッフルと、シールドと、クライオパネルとが配置された排気空間の相対湿度がある一定以上あると、真空断熱効果が大きくなる。
【0015】
本発明は上記知見に基づいて創作されたものであり、バッフルと、シールドと、クライオパネルとを冷却する2段式のヘリウムガスを冷媒とした冷凍機を有し、冷却された前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとに気体を凝縮又は吸着させて真空槽の内部を真空排気するクライオポンプであって、前記クライオパネルが配置された排気空間に加湿ガスを供給する加湿ガス源を有し、前記加湿ガスには、排気空間が相対湿度0.5%RH以上の水のガスが含有されたクライオポンプである。
本発明は、前記排気空間に位置する気体の相対湿度を測定する湿度センサが設けられたクライオポンプである。
本発明は、バッフルと、シールドと、クライオパネルとを冷却する2段式のヘリウムガスを冷媒とした冷凍機を有し、冷却された前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとに気体を凝縮又は吸着させて真空槽の内部を真空排気するクライオポンプであって、前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとが配置された排気空間の相対湿度を測定する湿度センサが設けられたクライオポンプである。
本発明は、前記湿度センサの測定結果が入力され、前記湿度センサの測定値が示す前記相対湿度の値と基準相対湿度の値とを比較して、前記測定値の値が前記基準相対湿度の値以上のときに、前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとの冷却を開始するクライオポンプであって、前記基準相対湿度の値は、相対湿度0.5%RHであるクライオポンプである。
本発明は、バッフルと、シールドと、クライオパネルとを冷却する2段式のヘリウムガスを冷媒とした冷凍機を有し、冷却された前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとに気体を凝縮又は吸着させて真空槽の内部を真空排気するクライオポンプの再生処理を行うクライオポンプの再生方法であって、前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとを昇温させ、前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとに凝縮又は吸着された気体を放出させる放出工程と、前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとが配置された排気空間の真空排気を開始する排気工程と、前記冷却装置により前記バッフルと、前記シールドと、前記クライオパネルとの冷却を開始する冷却開始工程と、前記排気空間に加湿ガスを導入する水分導入工程を有し、前記加湿ガスには、排気空間を相対湿度が0.5%RH以上になる水のガスを含有させ、前記水分導入工程を行う場合は、前記水分導入工程を前記排気工程を開始した後、前記冷却開始工程を開始する前に行うクライオポンプの再生方法である。
本発明は、前記排気工程を開始した後、前記水分導入工程を開始する前に、前記排気空間に位置する気体の相対湿度を測定する湿度測定工程と、測定した前記相対湿度の測定値が、基準相対湿度よりも大きい場合に、前記冷却開始工程に移行するクライオポンプの再生方法である。
本発明は、前記基準相対湿度は、相対湿度が0.5%RHであるクライオポンプの再生方法である。
【発明の効果】
【0016】
冷却時間を早めることができるので、クライオポンプの再生時間が短くなる。また、冷却時間を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のクライオポンプの一例
図2】冷却時間とクライオパネルの温度との関係を示すグラフ
図3】冷却時間とシールドの温度との関係を示すグラフ
図4】相対湿度とクライオパネルの冷却時間との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1の符号2は、本発明のクライオポンプが用いられた真空処理装置であり、真空槽12とクライオポンプ3とを有している。クライオポンプ3はポンプケース11を有しており、ポンプケース11はゲートバルブ25を介して内部が真空槽12の内部に接続されるようにされている。
【0019】
ポンプケース11の内側には、ポンプケース11の内側表面を覆うシールド17と、シールド17によって取り囲まれた空間の中に配置されたクライオパネル16とが設けられている。
【0020】
ポンプケース11の内側の空間を排気空間10と呼び、真空槽12の内部の空間を処理空間20と呼ぶと、ゲートバルブ25が開状態になると排気空間10と処理空間20とが接続され、ゲートバルブ25が閉状態になると排気空間10と処理空間20とは分離される。排気空間10はシールド17によって取り囲まれている。クライオパネル16は排気空間10に配置されている。
【0021】
クライオポンプ3には制御装置41が接続されており、ゲートバルブ25の他、クライオポンプ3に接続された後述のバルブは制御装置41が出力する電気信号によって開閉しても良いし、装置側で制御しても良い。
【0022】
排気空間10のうち、ゲートバルブ25とクライオパネル16との間の位置にはバッフル15が配置されている。
【0023】
冷凍機19の2段ステージ18によって冷却されるクライオパネル16は、冷凍機19の1段ステージ14によって冷却されるシールド17によって取り囲まれている。
【0024】
ポンプケース11の膨出部分の中には、排気管31が通されており、ポンプケース11の内部は、排気管31によって、粗引バルブ42を介して粗引ポンプ34に接続されている。
【0025】
また、ポンプケース11は、排気管31によって、排気バルブ43を介して放出部35に接続されている。粗引バルブ42が開状態にされると排気空間10は粗引ポンプ34に接続され、閉状態にされると排気空間10と粗引ポンプ34とは分離される。
【0026】
また、排気バルブ43が開状態にされると排気空間10は大気雰囲気に接続され、閉状態にされると排気空間10は大気雰囲気から分離される。
【0027】
冷凍機19は、吸入バルブ22と排出バルブ23とによってコンプレッサー21に接続されている。
【0028】
コンプレッサー21と冷凍機19とは制御装置41に電気的に接続されており、制御装置41が出力する電気信号によって動作が制御されても良いし、コンプレッサー21等の装置側で制御しても良い。
【0029】
コンプレッサー21は、Heガスを圧縮させるようにされており、コンプレッサー21から冷凍機19に高圧Heガスが供給され、冷凍機19が動作すると、冷凍機19の内部での断熱膨張によって二種類の低温が生成される。シールド17とバッフル15とは、冷凍機19の1段ステージ14に接続されて、後述するクライオパネル16よりも高い温度でかつ130K以下の温度に冷却されており、また、クライオパネル16は2段ステージ18に接続されて20K以下の温度に冷却されるようになっている。
【0030】
なお、供給された高圧Heガスは、冷凍機19の動作により、低圧Heガスとなって冷凍機19からコンプレッサー21に戻り、圧縮されて高圧Heガスとなって冷凍機19に供給される。
【0031】
ポンプケース11には、再生ガス配管32によって、再生ガス供給源33が接続されており、再生ガス配管32に設けられた再生ガスバルブ45を開状態にすると排気空間10と再生ガス供給源33とが接続され、再生ガス供給源33から再生ガスが排気空間10に供給される。再生ガスにはN2ガス等の不活性ガスが用いられている。
【0032】
<放出工程>
放出工程では、再生ガスを供給する際にはゲートバルブ25は閉状態にし、粗引バルブ42は閉状態、排気バルブ43は閉状態のまま、コンプレッサー21の動作と冷凍機19の動作とを停止させ、その状態で、排気空間10に再生ガスを導入し、バッフル15と、シールド17と、クライオパネル16とを室温以上の温度に昇温させる。
【0033】
バッフル15と、シールド17と、クライオパネル16との昇温により、バッフル15と、シールド17と、クライオパネル16とに凝縮又は吸着されていた気体が排気空間10に放出され、排気空間10の圧力が上昇し、圧力センサ38で大気圧以上を検知したら排気バルブ43を開状態にして、放出部35から大気に放出される。
【0034】
<排気工程>
バッフル15と、シールド17と、クライオパネル16とのガス放出が終了し、バッフル15の温度と、シールド17の温度と、クライオパネル16の温度とが常温付近になると、排気工程を開始する。
【0035】
排気工程では、再生ガスバルブ45を閉状態にして再生ガスの導入を終了させ、粗引ポンプ34を起動して真空排気を開始した後、ゲートバルブ25が閉状態のまま排気バルブ43を閉状態、粗引バルブ42を開状態にし、排気空間10を粗引ポンプ34に接続し、排気空間10に充満する気体を真空排気する。
【0036】
クライオポンプ3には、排気空間10の相対湿度を測定する湿度センサ37と、排気空間10の圧力を測定する圧力センサ38とを有している。湿度センサ37には温度センサが内蔵されていて、湿度の測定値と温度の測定値とによって相対湿度を算出できるようになっている。
【0037】
湿度センサ37と圧力センサ38とは制御装置41に接続されており、測定した相対湿度と圧力の値とは、制御装置41に入力される。
【0038】
この例では湿度センサ37と圧力センサ38とは、ポンプケース11と粗引ポンプ34とを接続する排気管31に設けられている。排気管31の圧力と相対湿度は、排気空間10と同じ値であり、排気管31の相対湿度と圧力とが測定されることで、排気空間10の相対湿度と圧力とが測定されるようになっている。
【0039】
制御装置41には所定の基準圧力の値が記憶されており、排気空間10を真空排気し、排気空間10の圧力が基準圧力以下の圧力になったところで粗引バルブ42が閉じられ、排気工程が終了され、リーク検出工程に移行される。基準圧力は、ここでは100Paに設定されている。
【0040】
<リーク検出工程>
排気空間10の圧力と相対湿度とは圧力センサ38と湿度センサ37とによって継続して測定されており、リーク検出工程では、制御装置41に入力された圧力の測定値と時間とから、排気空間10の圧力上昇速度(Pa/分)が求められる。
【0041】
制御装置41には、所定の基準圧力上昇速度の値が記憶されており、求められた圧力上昇速度と基準圧力上昇速度とが比較され、圧力上昇速度が基準圧力上昇速度未満の場合は、リークや残留水分や残留ガスが発生していないと判断されて湿度測定工程に移行される。
【0042】
圧力上昇速度が基準圧力上昇速度以上の値の場合はリークが発生したか、又は残留水分や残留ガスがあると判断されて異常処理を行う。異常処理は、例えば放出工程に戻り、排気工程を行った後、リーク検出工程を再度行うような処理である。
【0043】
<湿度測定工程>
制御装置41には、所定の相対湿度の値が基準相対湿度として記憶されており、湿度測定工程では、湿度センサ37によって排気空間10の相対湿度が測定され、測定値と基準相対湿度とが比較され、測定値が基準相対湿度よりも大きい場合は冷却開始工程に移行する。基準相対湿度は、ここでは0.5%RHの相対湿度の値に設定されている。
【0044】
測定値が基準相対湿度の値以下の場合は排気空間10の内部の水分が不足していると判断し、水分導入工程に移行される。
【0045】
<水分導入工程>
水分導入工程では、水分を含有する加湿ガスを排気空間10の内部に導入し、排気空間10の雰囲気の圧力と相対湿度とを上昇させる。
【0046】
ポンプケース11には、排気管31に挿入された加湿ガス配管52によって、加湿ガス供給源53が接続されており、加湿ガス配管52に設けられた加湿ガスバルブ55を開状態にすると排気空間10と加湿ガス供給源53とが接続され、加湿ガス供給源53から加湿ガスが排気空間10に供給される。加湿ガスは、再生ガス配管32を用いて導入することもできる。
【0047】
ここでは制御装置41には、基準圧力よりも大きい上限圧力の値が記憶されている。排気空間10の圧力は圧力センサ38によって測定されており、排気空間10の雰囲気圧力が上限圧力の値以上に上昇すると、加湿ガスの導入は停止され、粗引バルブ42が開状態にされて排気空間10が真空排気され、排気空間10の圧力が低下する。ここでは上限圧力は、100Paに設定されている。
【0048】
排気空間10の圧力が基準圧力以下に低下すると、粗引バルブ42は閉じられ、湿度測定行程に戻る。
【0049】
上記例では、加湿ガスは、加湿ガスが導入された排気空間10の相対湿度が0.5%RH以上になるような相対湿度にされている。
【0050】
加湿ガスは加湿ガス供給源53に配置されており、加湿ガスを排気空間10に供給するときは、加湿ガス供給源53と排気空間10との間のバルブ55を開状態にして排気空間10に加湿ガスを導入するが、図1のように、排気管31にリークバルブ39を設け、リークバルブ39を開状態にして大気を加湿ガスとして排気空間10に導入するようにして相対湿度0.5%RH以上にしてもよい。
【0051】
また、排気空間10の圧力が基準圧力に低下すると、排気空間10の相対湿度の値に拘わらず基準相対湿度以上の水分を含有する加湿ガスを、上限圧力以下の圧力で排気空間10に導入し、冷却を開始するようにしてもよい。
【0052】
<冷却開始行程>
冷却開始工程では、コンプレッサー21の動作と冷凍機19の動作等の動作により、シールド17とバッフル15とがクライオパネル16よりも高い温度でかつ130K以下の温度に冷却され、クライオパネル16が20K以下の温度に冷却され、排気空間10の残留ガスがバッフル15と、シールド17と、クライオパネル16とに凝縮又は吸着され、排気空間10の圧力が低下する。
【0053】
制御装置41にはクライオポンプ3の動作開始圧力と真空槽12の基準真空圧力とが設定されており、制御装置41は排気空間10の圧力が動作開始圧力以下の値になると、制御装置41はクライオポンプ3が再生されたものと判断し、ゲートバルブ25を開状態にできるように設定する。
【0054】
処理空間20は真空ポンプによって真空排気されており、基準真空圧力以下の圧力になるとゲートバルブ25が開状態にされ、処理空間20と排気空間10とが接続され、処理空間20の残留ガスがクライオポンプ3によって真空排気される。
【0055】
なお、図1の符号29は安全弁であり、符号26は温度計である。
【0056】
<実験結果>
粗引ポンプ34による排気空間10の真空排気を開始した後、排気空間10に加湿ガスを供給し、冷却開始前の排気空間10を0.3%RH、0.5%RH、1.0%RH、及び1.9%RHの値の相対湿度にし、冷凍機19によってバッフル15と、シールド17と、クライオパネル16との冷却を開始し、冷却開始時からクライオパネル16とシールド17との温度変化とを測定した(1.9%RHの値の場合は2回測定した)。
【0057】
測定結果から求めた冷却時間とクライオパネル16の温度との関係を図2のグラフに示し、冷却時間とシールド17の温度との関係を図3のグラフに示す。
【0058】
図2、3は、横軸が冷却時間、縦軸が温度である。
【0059】
冷却開始時には、排気空間10の圧力は85Paであり、クライオパネル16の温度は291~292Kであった。
【0060】
図2図3から、冷却開始時の相対湿度が0.3%RHの場合は他の相対湿度の場合よりも冷却時間が長くなっていることが分かる。つまり、0.5%RH以上の値の相対湿度の場合は、0.3%RHのときよりも冷却が早い。また、0.5%RH以上の各値の相対湿度の場合については、それぞれ略同じ冷却時間でクライオパネル16とシールド17とが所定温度まで冷却されていることが分かる。
【0061】
次に、測定結果から冷却開始時の相対湿度とクライオパネルの冷却時間との間の関係を求め、図4に示す。図4は、横軸が冷却開始時の相対湿度の値であり、縦軸が冷却時間である。
【0062】
図4からは、図2図3からと同様に、冷却開始時の相対湿度が0.3%RHのときは冷却時間が長く、0.5%RH以上1.9%RH以下の範囲が冷却時間が短縮され、また、略同じ値の冷却時間になっていることが分かる。
【0063】
なお、冷却開始時の相対湿度が1.9%RHの値を超えた場合も、0.5%RH以上1.9%RH以下の範囲の場合と略同じ値の冷却時間になることが予想されるが、結露等の不都合が発生しない限り、1.9%RHを超える値の相対湿度を用いることができる。
【符号の説明】
【0064】
3……クライオポンプ
10……排気空間
12……真空槽
16……クライオパネル
図1
図2
図3
図4