(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】インピーダンス整合装置及びインピーダンス整合方法
(51)【国際特許分類】
H03H 7/40 20060101AFI20230330BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20230330BHJP
C23C 16/505 20060101ALI20230330BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
H03H7/40
H05H1/46 R
C23C16/505
H01L21/302 101G
(21)【出願番号】P 2019055109
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】森井 龍哉
【審査官】▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-213967(JP,A)
【文献】特開2013-098177(JP,A)
【文献】特表2018-504864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/461
C23C16/00-C23C16/56
H03H7/30-H03H7/54
H05H1/00-H05H1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電力が所定周波数で振幅偏移変調される高周波電源と負荷との間に設けられ、前記高周波電源と
前記負荷とのインピーダンスの整合を図るインピーダンス整合装置であって、
前記高周波電源は、第1期間及び第2期間それぞれにて出力電力が高出力及び低出力に変調されるものであり、
前記高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から前記負荷側を見たインピーダンスに関する情報を取得する取得部と、
該取得部が取得した前記インピーダンスに関する情報を用いて前記負荷側を見たインピーダンス又は反射係数を算出する算出部と、
該算出部が前記第1期間及び前記第2期間それぞれにて算出した結果に基づいて、後続する前記第2期間及び前記第1期間にて前記整合のための演算を行う演算部と、
該演算部が前記第2期間及び前記第1期間それぞれにて演算した結果に基づいて、後続する前記第1期間及び前記第2期間にて前記整合を図る整合部と
を備えるインピーダンス整合装置。
【請求項2】
前記負荷は、出力電力が前記所定周波数の整数倍の周波数で振幅偏移変調される第2の高周波電源から電力が供給されるものであり、
前記第2の高周波電源は、第3期間及び第4期間それぞれにて出力電力が高出力及び低出力に変調されるものであり、
前記演算部は、前記算出部が前記第1期間中の前記第3期間及び前記第4期間それぞれにて算出した結果に基づいて、後続する前記第2期間にて順次前記演算を行うと共に、前記算出部が前記第2期間中の前記第3期間及び前記第4期間それぞれにて算出した結果に基づいて、後続する前記第1期間にて順次前記演算を行うようにしてあり、
前記整合部は、前記演算部が前記第2期間にて順次演算した結果に基づいて、後続する前記第1期間中の前記第3期間及び前記第4期間にて前記整合を図ると共に、前記演算部が前記第1期間にて順次演算した結果に基づいて、後続する前記第2期間中の前記第3期間及び前記第4期間にて前記整合を図るようにしてある
請求項1に記載のインピーダンス整合装置。
【請求項3】
出力電力が所定周波数で振幅偏移変調される第1高周波電源から電力が供給される負荷と第2高周波電源との間に設けられ、該第2高周波電源と
前記負荷とのインピーダンスの整合を図るインピーダンス整合装置であって、
前記第1高周波電源は、第1期間及び第2期間それぞれにて出力電力が高出力及び低出力に変調されるものであり、
前記第2高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から前記負荷側を見たインピーダンスに関する情報を取得する取得部と、
該取得部が取得した前記インピーダンスに関する情報を用いて前記負荷側を見たインピーダンス又は反射係数を算出する算出部と、
該算出部が前記第1期間及び前記第2期間それぞれにて算出した結果に基づいて、後続する前記第2期間及び前記第1期間にて前記整合のための演算を行う演算部と、
該演算部が前記第2期間及び前記第1期間それぞれにて演算した結果に基づいて、後続する前記第1期間及び前記第2期間にて前記整合を図る整合部と
を備えるインピーダンス整合装置。
【請求項4】
出力電力が所定周波数で振幅偏移変調される高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合を図るインピーダンス整合方法であって、
前記高周波電源は、第1期間及び第2期間それぞれにて出力電力が高出力及び低出力に変調されるものであり、
前記高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から前記負荷側を見たインピーダンスに関する情報を取得し、
取得した前記インピーダンスに関する情報を用いて前記負荷側を見たインピーダンス又は反射係数を算出し、
前記第1期間及び前記第2期間それぞれにて算出した結果
である前記インピーダンス又は前記反射係数に基づいて、後続する前記第2期間及び前記第1期間にて前記整合のための演算を行い、
前記第2期間及び前記第1期間それぞれにて
前記整合のために演算した結果に基づいて、後続する前記第1期間及び前記第2期間にて前記整合を図るインピーダンス整合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電源と負荷とのインピーダンスを整合させるインピーダンス整合装置及びインピーダンス整合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の製造に用いられるプラズマ処理装置に高周波電力を供給する方式の一つとして、プラズマの生成に適した比較的高い周波数の高周波電力を第1電源から上部電極に供給し、被処理体におけるプラズマ中のイオンの引き込みに適した比較的低い周波数の高周波電力を第2電源から下部電極に供給する方式がある。
【0003】
上記第1及び第2電源を用いる場合、第1電源の高周波電力を第1周波数でオン/オフ又はHレベル/Lレベルに振幅偏移変調してプラズマを連続的に生成する時間を短縮することにより、被処理基板に対するいわゆるチャージングダメージを抑制する技術が考案されている。また、第2電源の高周波電力を第2周波数でオン/オフ又はHレベル/Lレベルに変調して被処理基板上の所定の膜のエッチングが進行する時間を断続させることにより、いわゆるマイクロローディング効果を低減してエッチングレートを均一化する技術が考案されている。
【0004】
一方、第1電源又は第2電源の高周波電力を上記のとおり変調した場合、プラズマ処理装置のインピーダンス(負荷インピーダンス)が変調に同期して周期的に変動するため、第1電源及び第2電源それぞれとプラズマ処理装置との間に設けられたインピーダンス整合装置の整合動作を上記変動に追従させるのが難しくなる。
【0005】
これに対し、特許文献1及び2には、高周波HFのパワー(上記第1電源の高周波電力に相当)を一定の周波数でオン/オフ又はHレベル/Lレベルに変調する場合、高周波HFに関する負荷インピーダンスの変調周期毎の平均値を、更に移動平均する技術が開示されている。この技術により、変調周波数が比較的高い場合であっても、可動部を有するインピーダンス整合装置の寿命短縮化を防止する効果があるとされている。
【0006】
また、特許文献1には、高周波LFのパワー(上記第2電源の高周波電力に相当)を一定の周波数でオン/オフ又はHレベル/Lレベルに変調する場合、高周波HFに関する負荷インピーダンスを高周波LFの変調周期内で加重平均して、負荷インピーダンスの変調周期毎の平均値とする技術が開示されている。この技術により、高周波LFのパワーが振幅変調された場合であっても、高周波HFのパワーを最適化することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-90759号公報
【文献】特開2016-105489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された移動平均を用いる方法によれば、第1電源の高周波電力を変調周期毎に最適に制御することはできない。また、特許文献1に記載された加重平均を用いる方法は、第1電源の高周波電力を振幅偏移変調する場合に適用することは想定されておらず、仮に適用した場合であっても、変調周期内における異なる振幅の高周波電力についてインピーダンス整合装置を最適に整合させることはできない。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電源から負荷に供給される高周波電力が振幅偏移変調される場合であっても、電源と負荷との整合を図ることが可能なインピーダンス整合装置及びインピーダンス整合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るインピーダンス整合装置は、出力電力が所定周波数で振幅偏移変調される高周波電源と負荷との間に設けられ、前記高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合を図るインピーダンス整合装置であって、前記高周波電源は、第1期間及び第2期間それぞれにて出力電力が高出力及び低出力に変調されるものであり、前記高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から前記負荷側を見たインピーダンスに関する情報を取得する取得部と、該取得部が取得した前記インピーダンスに関する情報を用いて前記負荷側を見たインピーダンス又は反射係数を算出する算出部と、該算出部が前記第1期間及び前記第2期間それぞれにて算出した結果に基づいて、後続する前記第2期間及び前記第1期間にて前記整合のための演算を行う演算部と、該演算部が前記第2期間及び前記第1期間それぞれにて演算した結果に基づいて、後続する前記第1期間及び前記第2期間にて前記整合を図る整合部とを備える
【0011】
本開示の一態様に係るインピーダンス整合方法は、出力電力が所定周波数で振幅偏移変調される高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合を図るインピーダンス整合方法であって、前記高周波電源は、第1期間及び第2期間それぞれにて出力電力が高出力及び低出力に変調されるものであり、前記高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から前記負荷側を見たインピーダンスに関する情報を取得し、取得した前記インピーダンスに関する情報を用いて前記負荷側を見たインピーダンス又は反射係数を算出し、前記第1期間及び前記第2期間それぞれにて算出した結果に基づいて、後続する前記第2期間及び前記第1期間にて前記整合のための演算を行い、前記第2期間及び前記第1期間それぞれにて演算した結果に基づいて、後続する前記第1期間及び前記第2期間にて前記整合を図る
【0012】
本態様にあっては、所定周波数で振幅偏移変調される高周波電源の出力電力が負荷に供給される状態で高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合を図るに際し、高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から負荷側を見たインピーダンス又は反射係数に関する情報を外部から取得し、取得した情報を用いて負荷側のインピーダンス又は反射係数を算出する。なお、高周波電源の出力端と同等の箇所とは、例えば、高周波電源と負荷との間に接続されるインピーダンス整合装置の高周波電源側の入力端である。
【0013】
高周波電源の出力電力が高出力及び低出力に変調される第1期間及び第2期間それぞれにて負荷側のインピーダンスを算出した場合は、調整後の負荷側のインピーダンスが高周波電源の出力インピーダンスに近づくように、後続する第2期間及び第1期間にて整合演算を行う。一方、上記第1期間及び第2期間それぞれにて反射係数を算出した場合は、実際の反射係数が0に近づくように、後続する第2期間及び第1期間にて整合演算を行う。第2期間及び第1期間それぞれにおける整合演算の結果は、更に後続する第1期間及び第2期間にて実際の整合部に反映する。これにより、高周波電源の変調に影響されて第1期間及び第2期間それぞれにて負荷側のインピーダンスが変動した場合であっても、高周波電源に関する振幅偏移変調の1周期後の第1期間及び第2期間にて高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合が図れる。
【0014】
本発明の一態様に係るインピーダンス整合装置は、前記負荷は、出力電力が前記所定周波数の整数倍の周波数で振幅偏移変調される第2の高周波電源から電力が供給されるものであり、前記第2の高周波電源は、第3期間及び第4期間それぞれにて出力電力が高出力及び低出力に変調されるものであり、前記演算部は、前記算出部が前記第1期間中の前記第3期間及び前記第4期間それぞれにて算出した結果に基づいて、後続する前記第2期間にて順次前記演算を行うと共に、前記算出部が前記第2期間中の前記第3期間及び前記第4期間それぞれにて算出した結果に基づいて、後続する前記第1期間にて順次前記演算を行うようにしてあり、前記整合部は、前記演算部が前記第2期間にて順次演算した結果に基づいて、後続する前記第1期間中の前記第3期間及び前記第4期間にて前記整合を図ると共に、前記演算部が前記第1期間にて順次演算した結果に基づいて、後続する前記第2期間中の前記第3期間及び前記第4期間にて前記整合を図るようにしてある。
【0015】
本態様にあっては、上記所定周波数の整数倍の周波数で振幅偏移変調される第2の高周波電源の出力電力が更に負荷に供給される状態で前述の高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合を図る。第2の高周波電源の出力電力は、第3期間及び第4期間それぞれにて高出力及び低出力に変調される。
【0016】
第1期間中の第3期間及び第4期間それぞれにて負荷側のインピーダンスを算出した場合は、調整後の負荷側のインピーダンスが高周波電源の出力インピーダンスに近づくように、後続する第2期間にて順次整合演算を行う。同様に、第2期間中の第3期間及び第4期間それぞれにて負荷側のインピーダンスを算出した場合は、調整後の負荷側のインピーダンスが高周波電源の出力インピーダンスに近づくように、後続する第1期間にて順次整合演算を行う。一方、第1期間中の第3期間及び第4期間それぞれにて反射係数を算出した場合は、実際の反射係数が0に近づくように、後続する第2期間にて順次整合演算を行う。同様に、第2期間中の第3期間及び第4期間それぞれにて反射係数を算出した場合は、実際の反射係数が0に近づくように、後続する第1期間にて順次整合演算を行う。
【0017】
第2期間にて順次行った整合演算の結果は、更に後続する第1期間中の第3期間及び第4期間にて実際の整合部に反映する。同様に、第1期間にて順次行った整合演算の結果は、更に後続する第2期間中の第3期間及び第4期間にて実際の整合部に反映する。これにより、第2の高周波電源の変調に影響されて第3期間及び第4期間それぞれにて負荷側のインピーダンスが変動した場合であっても、高周波電源に関する振幅偏移変調の1周期後の第1期間及び第2期間にて高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合が図れる。
【0018】
本発明の一態様に係るインピーダンス整合装置は、
出力電力が所定周波数で振幅偏移変調される第1高周波電源から電力が供給される負荷と第2高周波電源との間に設けられ、該第2高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合を図るインピーダンス整合装置であって、前記第1高周波電源は、第1期間及び第2期間それぞれにて出力電力が高出力及び低出力に変調されるものであり、前記第2高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から前記負荷側を見たインピーダンスに関する情報を取得する取得部と、該取得部が取得した前記インピーダンスに関する情報を用いて前記負荷側を見たインピーダンス又は反射係数を算出する算出部と、該算出部が前記第1期間及び前記第2期間それぞれにて算出した結果に基づいて、後続する前記第2期間及び前記第1期間にて前記整合のための演算を行う演算部と、該演算部が前記第2期間及び前記第1期間それぞれにて演算した結果に基づいて、後続する前記第1期間及び前記第2期間にて前記整合を図る整合部とを備える。
【0019】
本態様にあっては、所定周波数で振幅偏移変調される第1高周波電源の出力電力が負荷に供給される状態で更に負荷に電力を供給する第2高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合を図るに際し、第2高周波電源の出力端又は該出力端と同等の箇所から負荷側を見たインピーダンス又は反射係数に関する情報を外部から取得し、取得した情報を用いて負荷側のインピーダンス又は反射係数を算出する。なお、第2高周波電源の出力端と同等の箇所とは、例えば、第2高周波電源と負荷との間に接続されるインピーダンス整合装置の第2高周波電源側の入力端である。
【0020】
第1高周波電源の出力電力が高出力及び低出力それぞれに変調される第1期間及び第2期間それぞれにて負荷側のインピーダンスを算出した場合は、調整後の負荷側のインピーダンスが第2高周波電源の出力インピーダンスに近づくように、後続する第2期間及び第1期間にて整合演算を行う。一方、第1期間及び第2期間それぞれにて反射係数を算出した場合は、実際の反射係数が0に近づくように、後続する第2期間及び第1期間にて整合演算を行う。第2期間及び第1期間それぞれにおける整合演算の結果は、更に後続する第1期間及び第2期間にて実際の整合部に反映する。これにより、第1高周波電源の変調に影響されて第1期間及び第2期間それぞれにて負荷側のインピーダンスが変動した場合であっても、第1高周波電源に関する振幅偏移変調の1周期後の第1期間及び第2期間にて第2高周波電源と負荷とのインピーダンスの整合が図れる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電源から負荷に供給される高周波電力が振幅偏移変調される場合であっても、電源と負荷との整合を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態1に係るインピーダンス整合装置の構成例及び外部との接続例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態1に係るインピーダンス整合装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図3】負荷側のインピーダンスを算出して平均化するFPGAの処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】インピーダンスの整合演算を行うCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態1に係るインピーダンス整合装置で半導体スイッチのオン/オフを切り換えるCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態2に係るインピーダンス整合装置の構成例及び外部との接続例を示すブロック図である。
【
図7】実施形態2に係るインピーダンス整合装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図8】実施形態3に係るインピーダンス整合装置の構成例及び外部との接続例を示すブロック図である。
【
図9】実施形態3に係るインピーダンス整合装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るインピーダンス整合装置100aの構成例及び外部との接続例を示すブロック図である。インピーダンス整合装置100aは、高周波電力を出力する高周波電源6a及び高周波電力を消費する負荷8aの間に設けられている。高周波電源6a及びインピーダンス整合装置100aの間には、高周波電力を通過させると共に高周波電圧等のパラメータを検出する高周波検出部7が接続されている。即ち、高周波検出部7は、高周波電源6aの出力端と、インピーダンス整合装置100aの入力端との間に介在してある。高周波検出部7がインピーダンス整合装置100aに含まれていてもよい。
【0024】
高周波電源6aは、例えば2MHz、13.56MHz、27MHz、60MHz等の工業用のRF帯(Radio Frequency)の高周波電力を出力する交流電源であり、出力インピーダンスは、例えば50Ω等の規定の値に設定されている。高周波電源6aは、インバータ回路(図示せず)を含み、該インバータ回路をスイッチング制御することにより、高周波の交流電力を生成する。
【0025】
高周波電源6aの出力電力は、変調部5aによってHレベル(高出力に相当)/Lレベル(低出力に相当)に振幅偏移変調される。この変調の変調周波数は、例えば数Hzから数百Hz(所定周波数に相当)である。変調部5aは、上記Hレベル/Lレベルの期間を示す変調信号を、後述する制御部3aに与える。
【0026】
高周波検出部7は、高周波電源6aの出力端又は当該出力端と同等の箇所であるインピーダンス整合装置100aの入力端から負荷8a側を見た(以下、単に負荷8a側を見た、又は負荷8a側の、と言う)インピーダンスを算出するためのパラメータ又は負荷8a側を見た反射係数を算出するためのパラメータ(インピーダンスに関する情報に相当)を検出する。負荷8a側を見たインピーダンスは、負荷8aのインピーダンスと、インピーダンス整合装置100aとの合成インピーダンスである。
【0027】
具体的には、高周波検出部7は、自身の位置における高周波電圧と、高周波電流と、高周波電圧と高周波電流との位相差とをパラメータとして検出する。又は、高周波検出部7は、負荷8aに向かう高周波の進行波電力(又は進行波電圧)と負荷8aから反射されて戻ってくる反射波電力(又は反射波電圧)とをパラメータとして検出する。これらの検出されたパラメータを用いて、後述する算出部2が周知の方法によって負荷8a側のインピーダンス又は反射係数を算出する。
【0028】
負荷8aは、高周波電源6aから供給される高周波電力を用いて各種処理を行うものであり、例えば、プラズマ処理装置及び非接触電力伝送装置が挙げられる。プラズマ処理装置では、プラズマエッチング、プラズマCVD等の製造プロセスの進行に伴い、プラズマの状態が時々刻々と変化する。これにより、負荷8aのインピーダンスが変動する。負荷8aのインピーダンスは、また、上記の変調信号に応じて周期的に変動する。
【0029】
インピーダンス整合装置100aは、キャパシタンスが可変の可変キャパシタ1(整合部に相当)と、高周波検出部7から上記パラメータを取得する取得部20と、該取得部20が取得したパラメータを用いて負荷8a側のインピーダンス又は反射係数を算出する算出部2と、該算出部2が算出したインピーダンス又は反射係数を用いて、可変キャパシタ1のキャパシタンスを制御する制御部3aとを備える。インピーダンス整合装置100aは、更に、可変キャパシタ1が有する後述の半導体スイッチをオン/オフに設定するスイッチ状態設定部4を備え、制御部3aがスイッチ状態設定部4を介して可変キャパシタ1のキャパシタンスを制御するようになっている。
【0030】
インピーダンス整合装置100aでは、高周波検出部7へ延伸する伝送路101と、インダクタL1側の一端が負荷8aに接続されたキャパシタC1及びインダクタL1の直列回路とが縦続接続されている。可変キャパシタ1は、実質的に2端子の回路であり、一端が伝送路101に、他端が接地電位に接続されている。即ち、可変キャパシタ1とキャパシタC1及びインダクタL1の直列回路とは、L型の整合回路を構成する。キャパシタC1を他の可変キャパシタ1と置き換えてもよい。
【0031】
ここでは、上記の整合回路がL型である場合について説明したが、逆L型であってもよいし、T型又はπ型であってもよい。更に、キャパシタC1及びインダクタL1の直列回路は、インピーダンス整合装置100aの外側(即ち、インピーダンス整合装置100a及び負荷8aの間)に接続されていてもよい。以下では、高周波検出部7から伝送路101に高周波電力が入力される部位を入力部と言う。また、インダクタL1から負荷8aに高周波電力が出力される部位を出力部と言う。
【0032】
可変キャパシタ1は、一端同士が伝送路101に接続されたキャパシタ11,12,・・18と、各アノードがキャパシタ11,12,・・18それぞれの他端に接続されたPINダイオードである半導体スイッチ21,22,・・28と、駆動回路31,32,・・38とを有する。半導体スイッチ21,22,・・28の他端であるカソードは、接地電位に接続されている。駆動回路31,32,・・38それぞれの出力端子は、キャパシタ11,12,・・18と半導体スイッチ21,22,・・28との接続点に各別に接続されている。キャパシタ11,12,・・18の数、半導体スイッチ21,22,・・28の数及び駆動回路31,32,・・38の数は8つに限定されない。
【0033】
駆動回路31は、スイッチ状態設定部4からの駆動信号がオンであるか又はオフであるかに応じて、半導体スイッチ21を、不図示の抵抗器及びインダクタを介して所定のプラス電源に接続するか又は該インダクタを介して所定のマイナス電源に接続する。この結果、半導体スイッチ21がオン/オフして、キャパシタ11のキャパシタンスが可変キャパシタ1全体のキャパシタンスに含まれたり含まれなくなったり変化することとなり、可変キャパシタ1のキャパシタンスが調整される。他の駆動回路32,33,・・38それぞれが半導体スイッチ22,23,・・28をオン/オフして可変キャパシタ1のキャパシタンスを調整する動作についても同様である。
【0034】
取得部20及び算出部2は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array )を含んでなる。算出部2は、高周波検出部7から、負荷8a側のインピーダンスを算出するためのパラメータ又は負荷8a側の反射係数を算出するためのパラメータを取得部20によって取得する。算出部2は、取得したこれらのパラメータを用いて、負荷8a側のインピーダンス又は反射係数を算出して平均化し、平均化したインピーダンス又は反射係数を制御部3aに向けて出力する。
【0035】
制御部3aは、不図示のCPU(Central Processing Unit )を有し、予めROM(Read Only Memory )に記憶された制御プログラムに従って各部の動作を制御すると共に、入出力、演算、時間の計測等の処理を行う。CPUによる各処理の手順を定めたコンピュータプログラムを、不図示の手段を用いて予めRAM(Random Access Memory )にロードし、ロードされたコンピュータプログラムをCPUで実行するようにしてもよいし、制御部3aをマイクロコンピュータ又は専用のハードウェア回路で構成してもよい。
【0036】
制御部3aは、算出部2で算出された負荷8a側のインピーダンス又は反射係数を取り込む。負荷8a側のインピーダンスを取り込んだ場合、制御部3aは、負荷8a側のインピーダンスを高周波電源6aの出力インピーダンスに整合させるべく、可変キャパシタ1のキャパシタ11,12,・・18の組み合わせを決定する。一方、負荷8a側の反射係数を取り込んだ場合、制御部3aは、入力部における反射係数を0に近づけるべく、可変キャパシタ1のキャパシタ11,12,・・18の組み合わせを決定する。反射係数の大きさが、許容範囲内になれば整合したと見做す。このような制御により、高周波電源6aから負荷8aに効率よく電力が供給される。
【0037】
以下では、算出部2にて負荷8a側のインピーダンスを算出し、算出されたインピーダンスを用いて、制御部3aが可変キャパシタ1のキャパシタンスを算出してキャパシタ11,12,・・18の組み合わせを決定するものとして説明する。決定されたキャパシタ11,12,・・18の組み合わせは、半導体スイッチ21,22,・・28がとるべきオン/オフ状態に対応している。
【0038】
スイッチ状態設定部4は、制御部3aが決定したキャパシタ11,12,・・18の組み合わせ、即ち半導体スイッチ21,22,・・28がとるべきオン/オフ状態に応じて、制御部3aから上記駆動信号のオン/オフが設定される。スイッチ状態設定部4に駆動信号のオン/オフが設定された場合、対応する駆動回路31,32,・・38それぞれに対してオン/オフに制御された駆動信号が与えられる。これにより、可変キャパシタ1の半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフ状態が新たに制御される。そして、可変キャパシタ1のキャパシタンスは、制御部3aが算出したキャパシタンスに調整される。以下では、この調整を可変キャパシタ1の設定と言う。
【0039】
次に、インピーダンス整合装置100a全体の動作の流れについて説明する。
図2は、実施形態1に係るインピーダンス整合装置100aの動作を示すタイミングチャートである。
図2に示す4つのタイミングチャートは、何れも同一の時間軸(t)を横軸にしてあり、上段から順に、高周波電源6aの出力電力、負荷8a側のインピーダンスの算出・平均化、インピーダンスの整合演算及び可変キャパシタ1の設定それぞれに関するタイミングを模式的に示す。図中の「算・平」は算出・平均化を意味し、「演算」は整合演算を意味する。
【0040】
図2に示すタイミングチャートに対応する動作のうち、インピーダンスの算出・平均化は、取得部20及び算出部2に含まれるFPGA(以下、単にFPGAと言う)が実行し、インピーダンスの整合演算及び可変キャパシタ1の設定は、制御部3aが有するCPU(以下、単にCPUと言う)が実行する。時刻t0からt11までの第1期間及び時刻t11からt12までの第2期間それぞれは、高周波電源6aの出力電力がHレベルである期間及びLレベルである期間に対応する。従って、第1期間及び第2期間が高周波電源6aに関する変調周期毎に出現する。
【0041】
算出部2は、第1期間及び第2期間それぞれの期間内に少なくとも1回インピーダンスの算出・平均化を行う。ここでは、初回に算出・平均化した結果を用いるが、これに限定されるものではない。制御部3aは、算出部2が第1期間及び第2期間それぞれにて算出・平均化した結果に基づいて、後続する第2期間及び第1期間にインピーダンスの整合演算を行って可変キャパシタ1のキャパシタンスを算出する。即ち、制御部3aは、算出部2が第1期間にて算出・平均化した結果に基づいて、後続する第2期間にインピーダンスの整合演算を行い、算出部2が第2期間にて算出・平均化した結果に基づいて、後続する第1期間にインピーダンスの整合演算を行う。
【0042】
制御部3aは、第2期間及び第1期間それぞれにて整合演算した結果に基づいて、更に後続する第1期間及び第2期間に上記駆動信号をオン又はオフに設定する。即ち、制御部3aは、第2期間にて整合演算した結果に基づいて、後続する第1期間に上記駆動信号をオン又はオフに設定し、第1期間にて整合演算した結果に基づいて、後続する第2期間に上記駆動信号をオン又はオフに設定する。これにより、半導体スイッチ21,22,・・28の各ビットがオン又はオフに設定される。
【0043】
時刻t0に開始する可変キャパシタ1の設定は、時刻t0のより前の第2期間にCPUが行った整合演算の結果に基づいて、CPUが時間T1の間に実行するものである。ここでは、最上位ビットである半導体スイッチ28からビット番号の降順に半導体スイッチ21,22,・・28が設定されるものとするが、最下位ビットである半導体スイッチ21からビット番号の昇順に設定されてもよい。CPUが半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフを並列的に制御可能である場合は、全ての半導体スイッチ21,22,・・28の設定を同時に行ってもよい。CPUは、FPGAに対してマスク信号を与えており、半導体スイッチ21,22,・・28の設定が完了したときにマスク信号をオフにする。
【0044】
一方のFPGAは、CPUから与えられるマスク信号をセンスしており、マスク信号がオフになったときから、負荷8a側のインピーダンスの算出・平均化を開始するまでの間に時間T2だけインターバルを設ける。時間T2の長さは、例えば30μsである。このインターバルは、マスク信号がオンしている間に実行された半導体スイッチ21,22,・・28の設定によって変化する負荷8a側のインピーダンスが安定化するまで、CPUが待機する時間である。
【0045】
上記のインターバルが終了した場合、FPGAは、時間T3の間に高周波検出部7から負荷8a側のインピーダンスを算出するためのパラメータを複数回にわたって取得し、取得する毎に負荷8a側のインピーダンスを算出して平均化する。時間T3の長さは、例えば15μsである。第1期間及び第2期間それぞれにて最初の算出・平均化が終了した場合、FPGAは、平均化したインピーダンスをCPUに向けて出力する。この出力は、例えば、FPGUとCPUの間に設けられた不図示のFIFO(First In First Out )メモリに入力することによって実行される。以後、FPGAは、時間T3毎に負荷8a側のインピーダンスの算出・平均化を繰り返す。この算出・平均化は、CPUによってマスク信号がオンされるまで繰り返される。
【0046】
他方のCPUは、後続する第2期間及び第1期間それぞれの開始時点で上記FIFOメモリから平均化したインピーダンスを取り込んでインピーダンスの整合演算を行い、整合演算の結果を一旦バッファメモリに記憶する。ここでの整合演算とは、FPGAから平均化された負荷8a側のインピーダンスを取り込み、負荷8a側のインピーダンスを高周波電源6aの出力インピーダンスに整合させるべく、可変キャパシタ1のキャパシタンスを算出して、半導体スイッチ21,22,・・28がとるべきオン/オフ状態を決定する処理である。
【0047】
CPUは、更に後続する第1期間及び第2期間それぞれの開始時点で上記バッファメモリから整合演算の結果、即ち半導体スイッチ21,22,・・28がとるべきオン/オフ状態を読み出し、読み出したオン/オフ状態に基づいて、可変キャパシタ1の設定を行う。具体的には、可変キャパシタ1の設定を行うための駆動信号を設定する。この駆動信号の設定に応じて、可変キャパシタ1のキャパシタンスが設定される。
【0048】
以下では、上述した算出部2及び制御部3aの動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。
図3は、負荷8a側のインピーダンスを算出して平均化するFPGAの処理手順を示すフローチャートである。
図4は、インピーダンスの整合演算を行うCPUの処理手順を示すフローチャートである。
図5は、半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフを切り換えるCPUの処理手順を示すフローチャートである。
図3の処理は、上述のマスク信号がオンの間に起動され、FPGAによって実行される。
図5及び
図6の処理は、第1期間及び第2期間の開始時点で起動され、不図示のROMに予め格納されているコンピュータプログラムに従ってCPUにより実行される。
【0049】
図3及び
図5では、マスク信号を単にマスクと記載する。マスク信号の初期値はオンである。
図4及び
図5では、半導体スイッチを単にスイッチと記載する。
図3における初回フラグは、インピーダンスを算出及び平均化する処理の初回であることを示すフラグである。
図5におけるjは、半導体スイッチ21,22,・・28のうち変化するビット数を記憶するためのものであり、kは、処理中のビット番号を記憶するためのものである。
【0050】
図3の処理が開始された場合、FPGAは、CPUからのマスク信号がオンであるか否かを判定し(S11)、オンである場合(S11:YES)、マスク信号がオフとなるまで待機する。マスク信号がオフとなってマスクが外された場合(S11:NO)、FPGAは、初回フラグを1にセットし(S12)、不図示のタイマによる計時を開始する(S13)。その後、FPGAは、タイマの計時により時間T2が経過したか否かを判定し(S14)、経過していない場合(S14:NO)、時間T2が経過するまで待機する。この時間T2は上述のインターバルである。
【0051】
時間T2のインターバルが経過した場合(S14:YES)、FPGAは、タイマによる計時を開始しておき(S15)、マスク信号がオンであるか否かを判定する(S16)。マスク信号がオンである場合(S16:YES)、FPGAは、インピーダンスの算出・平均化の処理中であるか否かに関わらず、
図3の処理を終了する。
【0052】
一方、マスク信号がオンではない場合(S16:NO)、FPGAは、高周波検出部7からインピーダンスに関する情報、即ち負荷8a側のインピーダンスを算出するためのパラメータを取得する(S17)。次いで、FPGAは、取得したパラメータを用いて負荷8a側のインピーダンスを算出し(S18)、算出したインピーダンスを逐次平均化する(S19)。インピーダンスの1回の算出は、例えば100ns以下の時間内に終了する。その後、FPGAは、タイマの計時により時間T3が経過したか否かを判定し(S20)、経過していない場合(S20:NO)、ステップS16に処理を移す。
【0053】
時間T3が経過した場合(S20:YES)、FPGAは、初回フラグが1にセットされているか否かを判定する(S21)。初回フラグが1にセットされている場合(S21:YES)、即ち、最初にインピーダンスの算出及び平均化を終えた場合、FPGAは、
平均化した負荷8a側のインピーダンス(より具体的には、インピーダンスを示すデータ)をCPUに向けて出力する(S22)と共に、初回フラグを0にクリアする(S23)。ステップS22で出力されたデータは、上述のFIFOメモリに入力される。
【0054】
ステップS23の処理を終えた場合、又はステップS21で初回フラグが1にセットされていなかった場合(S21:NO)、FPGAは、負荷8a側のインピーダンスの算出及び平均化を繰り返すために、ステップS15に処理を移す。なお、ステップS17で反射係数を算出するためのパラメータを取得し、ステップS18で負荷8a側を見た反射係数を算出し、ステップS18で反射係数を平均化し、ステップS20で平均化した反射係数を出力するようにしてもよい。
【0055】
図4の処理が起動された場合、CPUは、FPGAが算出して平均化したインピーダンスが、上述のFIFOメモリから入力可能であるか否かを判定し(S31)、入力可能ではない場合(S31:NO)、以後のインピーダンスの整合演算を行わずに
図4の処理を終了する。一方、平均化したインピーダンスがFIFOメモリから入力可能である場合(S31:YES)、CPUは、FIFOメモリから平均化したインピーダンスを取り込み(S32)、負荷8a側のインピーダンスを高周波電源6aの出力インピーダンスに整合させるべく、可変キャパシタ1のキャパシタンスを算出する(S33)。
【0056】
次いで、CPUは、可変キャパシタ1のキャパシタンスが算出したキャパシタンスとなるように、半導体スイッチ21,22,・・28がとるべきオン/オフ状態を決定する(S34)。その後、CPUは、決定したオン/オフ状態を上述のバッファメモリに記憶し(S35)、ステップS31に処理を移す。ステップS33及びS34が演算部に相当する。
【0057】
なお、
図3に示す処理によって反射係数が出力される場合は、
図4のステップS32で平均化された反射係数を取り込み、S33では負荷8a側を見た反射係数を0に近づけるべく、可変キャパシタ1のキャパシタンスを算出すればよい。
【0058】
図5の処理が起動された場合、CPUは、FPGAに対するマスク信号をオンした(S41)後、上述のバッファメモリから決定したオン/オフ状態を読み出す(S42)。次いで、CPUは、
図5の処理が前回起動されたときに一時記憶メモリに記憶した半導体スイッチ21,22,・・28の切換前のオン/オフ状態を読み出し(S43)、バッファメモリから読み出したオン/オフ状態と比較する(S44)。
【0059】
CPUは、比較結果に基づいて、オンからオフに又はオフからオンに変化するビットを抽出し(S45)、変化するビット数をjに代入する(S46)。次いで、CPUは、jが0であるか否か、即ち変化するビットが無いか否かを判定し(S47)、jが0である場合(S47:YES)、マスク信号をオフするために後述するステップS55に処理を移す。一方、jが0ではない場合(S47:NO)、CPUは、kを8に初期化する(S48)。
【0060】
その後、CPUは、半導体スイッチ21,22,・・28のうちのk番目のビットであるBkが、オンからオフに又はオフからオンに変化するビットであるか否かを判定する(S49)。Bkが変化するビットではない場合(S49:NO)、CPUは、変化するビットをサーチするために、後述するステップS53に処理を移す。一方、Bkが変化するビットである場合(S49:YES)、CPUは、Bkに対応するk番目の半導体スイッチについて実際にオン/オフを切り換える(S50)。
【0061】
その後、CPUは、jを1だけデクリメントし(S51)、jが0であるか否か、即ち変化する残りのビット数が0であるか否かを判定する(S52)。jが0ではない場合(S52:NO)、CPUは、kを1だけデクリメントし(S53)、変化するビットを更にサーチするために、ステップS49に処理を移す。
【0062】
ステップS52でjが0である場合(S52:YES)、即ち変化する残りのビット数が0となった場合、CPUは、切り換え後の半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフ状態を一時記憶メモリに記憶し(S54)、更にマスク信号をオフして(S55)
図5の処理を終了する。ここで記憶したオン/オフ状態は、
図5の処理が次に起動されたときに、切り換え前のオン/オフ状態としてステップS43で読み出されることとなる。なお、ステップS54で記憶した切り換え後のオン/オフ状態は、
図4のステップS34で決定したオン/オフ状態と一致する。
【0063】
上述の
図5に示すフローチャートでは、半導体スイッチ21,22,・・28のうち、オンからオフに又はオフからオンに変化するビットを抽出し、抽出したビットのみについて半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフを切り換えたが、これに限定されるものではない。例えば、半導体スイッチ21,22,・・28の各ビットが変化するか否かに関わらず、全てのビットについて半導体スイッチ21,22,・・28のオン/オフを新たに設定してもよい。
【0064】
具体的には、
図5に示す各ステップのうち、S43-45、S47及びS49を削除し(次の番号のステップに移るようにする)、ステップS46でjに8(総ビット数)を代入し、ステップS50でBkに対応するk番目の半導体スイッチについてオン/オフを新たに設定すればよい。
【0065】
以上のように本実施形態1によれば、所定周波数で振幅偏移変調される高周波電源6aの出力電力が負荷8aに供給される状態で高周波電源6aと負荷8aとのインピーダンスの整合を図るに際し、高周波電源6aの出力端又は該出力端と同等の箇所から負荷8a側を見たインピーダンス又は反射係数に関する情報を高周波検出部7から取得し(ステップS17)、取得した情報を用いて負荷8a側のインピーダンス又は反射係数を算出する(ステップS18)。なお、高周波電源6aの出力端と同等の箇所とは、例えば、高周波電源6aと負荷8aとの間に接続されるインピーダンス整合装置100aの高周波電源6a側の入力端である。
【0066】
高周波電源6aの出力電力がHレベル及びLレベルに変調される第1期間及び第2期間それぞれにてFPGAが負荷8a側のインピーダンスを算出した場合は、調整後の負荷8a側のインピーダンスが高周波電源6aの出力インピーダンスに近づくように、後続する第2期間及び第1期間にて整合演算を行う(ステップS33,S34)。一方、上記第1期間及び第2期間それぞれにてFPGAが反射係数を算出した場合は、実際の反射係数が0に近づくように、後続する第2期間及び第1期間にて整合演算を行う。第2期間及び第1期間それぞれにおける整合演算の結果は、更に後続する第1期間及び第2期間にて可変キャパシタ1のキャパシタンスに反映する。これにより、高周波電源6aの変調に影響されて第1期間及び第2期間それぞれにて負荷8a側のインピーダンスが変動した場合であっても、高周波電源6aに関する振幅偏移変調の1周期後の第1期間及び第2期間にて高周波電源6aと負荷8aとのインピーダンスの整合が図れる。従って、高周波電源6aから負荷8aに供給される高周波電力が振幅偏移変調される場合であっても、高周波電源6aと負荷8aとの整合を図ることが可能となる。
【0067】
(実施形態2)
実施形態1は、負荷8aに電力を供給する1つの高周波電源6aの高周波電力を振幅偏移変調する形態であるのに対し、実施形態2は、負荷8bに電力を供給する2つの高周波電源6a及び6bのうち、高周波電源6bの高周波電力を所定周波数で振幅偏移変調する形態である。ここでは、2つのインピーダンス整合装置100aを用いて高周波電源6a及び6bそれぞれと負荷8bとのインピーダンスの整合を図るが、高周波電源6bに関する振幅偏移変調の影響を受けてインピーダンスが変動する負荷8bと高周波電源6aとのインピーダンスの整合に着目して説明する。以下では、負荷8bが有する2つの電極それぞれに高周波電源6a及び6bが高周波電力を供給する形態を例にしているが、これに限定されるものではない。例えば、高周波電源6a及び6bからの高周波電力を合成して、実施形態1で用いた負荷8aに供給する形態であってもよい。
【0068】
図6は、実施形態2に係るインピーダンス整合装置100aの構成例及び外部との接続例を示すブロック図である。図中の負荷8bは、例えば真空チャンバ内に上部電極81及び下部電極82を有するプラズマ処理装置である。真空チャンバは接地されている。一方のインピーダンス整合装置100aは、変調部5a(
図1参照)が接続されておらず連続波を出力する高周波電源6a(第2高周波電源に相当)と負荷8bの上部電極81との間に設けられている。高周波電源6a及び上部電極81の間には、高周波電力を通過させると共に高周波電圧等のパラメータを検出する高周波検出部7が接続されている。一方のインピーダンス整合装置100aの構成は、実施形態1に係るインピーダンス整合装置100aと同一であるが、制御部3aに対する外部の接続元が異なる。
【0069】
他方のインピーダンス整合装置100aは、変調部5bが接続されており高周波電力が振幅偏移変調される高周波電源6b(第1高周波電源に相当)と負荷8bの下部電極82との間に設けられている。高周波電源6b及び下部電極82の間には、高周波検出部7が接続されている。他方のインピーダンス整合装置100aが、高周波検出部7から前述のパラメータを取得し、変調部5bからHレベル/Lレベルの期間を示す変調信号が与えられるのは、実施形態1の場合と同様である。変調部5bは、一方のインピーダンス整合装置100aが備える制御部3aにも上記変調信号を与える。その他、実施形態1に対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0070】
図7は、実施形態2に係るインピーダンス整合装置100aの動作を示すタイミングチャートである。
図7に示す5つのタイミングチャートは、何れも同一の時間軸(t)を横軸にしてあり、上段から順に、高周波電源6bの出力電力、高周波電源6aの出力電力、負荷8b側のインピーダンスの算出・平均化、インピーダンスの整合演算及び可変キャパシタ1の設定それぞれに関するタイミングを模式的に示す。図中の「算・平」は算出・平均化を意味し、「演算」は整合演算を意味する。
【0071】
実施形態1の
図2に示すタイミングチャートとの違いは、出力電力が振幅偏移変調された高周波電源6bが追加されており、高周波電源6aの出力電力が連続的にオンしている点である。時刻t0からt21までの第1期間及び時刻t21からt22までの第2期間それぞれは、高周波電源6bの出力電力がHレベルである期間及びLレベルである期間に対応する。従って、第1期間及び第2期間が高周波電源6bに関する変調周期毎に出現する。この変調周期は、実施形態1の
図2に示す高周波電源6aに関する変調周期と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0072】
実施形態1の場合と同様に、制御部3aは、算出部2が第1期間及び第2期間それぞれにて算出・平均化した結果に基づいて、後続する第2期間及び第1期間にインピーダンスの整合演算を行って可変キャパシタ1のキャパシタンスを算出する。即ち、制御部3aは、算出部2が第1期間にて算出・平均化した結果に基づいて、後続する第2期間にインピーダンスの整合演算を行い、算出部2が第2期間にて算出・平均化した結果に基づいて、後続する第1期間にインピーダンスの整合演算を行う。制御部3aは、第2期間及び第1期間それぞれにて整合演算した結果に基づいて、更に後続する第1期間及び第2期間に可変キャパシタ1の設定を行う。即ち、制御部3aは、第2期間にて整合演算した結果に基づいて、後続する第1期間に可変キャパシタ1の設定を行い、第1期間にて整合演算した結果に基づいて、後続する第2期間に可変キャパシタ1の設定を行う。
【0073】
実施形態1の
図2との比較で明らかなように、FPGAは、CPUが与えるマスク信号に応じてインピーダンスの算出・平均化を行っており、実施形態1の場合と全く同じ動作を行う。一方のCPUは、第1期間及び第2期間それぞれの開始時点に起動される処理によってインピーダンスの整合演算及び可変キャパシタ1の設定を行っており、実施形態1との違いは各処理の起動タイミングの差異のみである。ここで、制御部3aには、実施形態1の場合も本実施形態2の場合も第1期間及び第2期間を示す変調信号が与えられており、CPUは上記の各処理を起動する契機を変更する必要がない。FPGAが反射係数を算出した場合についても同様である。従って、本実施形態2についても、FPGA及びCPUの処理内容の変更なしに、実施形態1と同様の効果を奏する。
【0074】
以上のように本実施形態2によれば、所定周波数で振幅偏移変調される高周波電源6bの出力電力が負荷8bに供給される状態で更に負荷8bに電力を供給する高周波電源6aと負荷8bとのインピーダンスの整合を図るに際し、高周波電源6aの出力端又は該出力端と同等の箇所から負荷8b側を見たインピーダンス又は反射係数に関する情報を高周波検出部7から取得し、取得した情報を用いて負荷8b側のインピーダンス又は反射係数を算出する。なお、高周波電源6aの出力端と同等の箇所とは、例えば、高周波電源6aと負荷8bとの間に接続されるインピーダンス整合装置100aの高周波電源6a側の入力端である。
【0075】
高周波電源6bの出力電力が高出力及び低出力それぞれに変調される第1期間及び第2期間それぞれにてFPGAが負荷8b側のインピーダンスを算出した場合は、調整後の負荷8b側のインピーダンスが高周波電源6aの出力インピーダンスに近づくように、後続する第2期間及び第1期間にて整合演算を行う。一方、第1期間及び第2期間それぞれにて反射係数を算出した場合は、実際の反射係数が0に近づくように、後続する第2期間及び第1期間にて整合演算を行う。第2期間及び第1期間それぞれにおける整合演算の結果は、更に後続する第1期間及び第2期間にて可変キャパシタ1のキャパシタンスに反映する。これにより、高周波電源6bの変調に影響されて第1期間及び第2期間それぞれにて負荷8b側のインピーダンスが変動した場合であっても、高周波電源6bに関する振幅偏移変調の1周期後の第1期間及び第2期間にて高周波電源6aと負荷8bとのインピーダンスの整合が図れる。従って、高周波電源6bから負荷8bに供給される高周波電力が振幅偏移変調される場合であっても、高周波電源6aと負荷8bとの整合を図ることが可能となる。
【0076】
(実施形態3)
実施形態1は、負荷8aに電力を供給する1つの高周波電源6aの高周波電力を振幅偏移変調する形態であるのに対し、実施形態3は、実施形態2で用いた負荷8bに電力を供給する2つの高周波電源6a及び6bの高周波電力を共に振幅偏移変調する形態である。高周波電源6bに関する変調周波数は、高周波電源6aに関する変調周波数の整数倍である。ここでは、2つのインピーダンス整合装置100b及び100aを用いて高周波電源6a及び6bそれぞれと負荷8bとのインピーダンスの整合を図るが、高周波電力の変調周波数が低い方の高周波電源6aと負荷8bとのインピーダンスの整合に着目して説明する。
【0077】
図8は、実施形態3に係るインピーダンス整合装置100bの構成例及び外部との接続例を示すブロック図である。インピーダンス整合装置100bは、変調部5aが接続されており高周波電力が所定周波数で振幅偏移変調される高周波電源6aと負荷8bの上部電極81との間に設けられている。高周波電源6a及び上部電極81の間には、高周波検出部7が接続されている。インピーダンス整合装置100bの構成は、実施形態1に係るインピーダンス整合装置100aと比較して、制御部3bに対する外部の接続元が追加されている。
【0078】
インピーダンス整合装置100aは、変調部5bが接続されており高周波電力が上記所定周波数の整数倍の周波数で振幅偏移変調される高周波電源6b(第2の高周波電源に相当)と負荷8bの下部電極82との間に設けられている。高周波電源6b及び下部電極82の間には、高周波検出部7が接続されている。インピーダンス整合装置100aが、高周波検出部7から前述のパラメータを取得し、変調部5bからHレベル/Lレベルの期間を示す変調信号が与えられるのは、実施形態1及び2の場合と同様である。変調部5bは、インピーダンス整合装置100bが備える制御部3bにも上記変調信号を与える。その他、実施形態1及び2に対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
図9は、実施形態3に係るインピーダンス整合装置100bの動作を示すタイミングチャートである。
図9に示す5つのタイミングチャートは、何れも同一の時間軸(t)を横軸にしてあり、上段から順に、高周波電源6bの出力電力、高周波電源6aの出力電力、負荷8b側のインピーダンスの算出・平均化、インピーダンスの整合演算及び可変キャパシタ1の設定それぞれに関するタイミングを模式的に示す。図中の「マ」はマスク信号を、「イ」はインターバルを、「算」は算出・平均化を、「演」は整合演算を、「設」は設定を意味する。
【0080】
実施形態1の
図2に示すタイミングチャートとの違いは、出力電力が振幅偏移変調された高周波電源6bが追加されている点である。時刻t0からt31までの第1期間及び時刻t31からt32までの第2期間それぞれは、高周波電源6aの出力電力がHレベルである期間及びLレベルである期間に対応する。従って、第1期間及び第2期間が高周波電源6aに関する変調周期毎に出現する。この変調周期は、実施形態1の
図2に示す高周波電源6aに関する変調周期と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0081】
時刻t0からt41までの第3期間及び時刻t41からt42までの第4期間それぞれは、高周波電源6bの出力電力がオン及びオフとなる期間に対応する。従って、第3期間及び第4期間が高周波電源6bに関する変調周期毎に出現する。時刻t42からt43までの第3期間及び時刻t43からt32までの第4期間についても同様である。
図9では、高周波電源6aに関する第1期間の開始時点と、高周波電源6bに関する第3期間の開始時点とが一致する例を示したが、これに限定されるものではなく、これらの開始時点にずれがあってもよい。また、高周波電源6bの高周波電力は、Hレベル及びLレベルに変化するものであってもよい。
【0082】
実施形態1の場合とは異なり、制御部3bは、算出部2が第1期間中の第3期間及び第4期間それぞれにて算出・平均化した結果に基づいて、後続する第2期間にて順次インピーダンスの整合演算を行って可変キャパシタ1のキャパシタンスを算出する。
図9に示す例では、第1期間中に第3期間が2回出現するが、2回目の第3期間では算出・平均化を終えるまでに第1期間が終了して次のマスク信号がオンとなるため、2回目の第3期間におけるインピーダンスの算出・平均化は行われたことにならない。よって、後続する第2期間では、整合演算が2回行われる。制御部3bは、また、算出部2が第2期間中の第3期間及び第4期間それぞれにて算出・平均化した結果に基づいて、後続する第1期間にて順次インピーダンスの整合演算を行って可変キャパシタ1のキャパシタンスを算出する。
【0083】
制御部3bは、第2期間中にて順次整合演算した結果に基づいて、更に後続する第1期間中の第3期間及び第4期間に可変キャパシタ1の設定を行う。即ち、制御部3bは、算出部2が先行する第1期間中の第3期間にて算出・平均化した結果に基づいて、後続する第1期間中の第3期間に可変キャパシタ1の設定を行い、算出部2が先行する第1期間中の第4期間にて算出・平均化した結果に基づいて、後続する第1期間中の第4期間に可変キャパシタ1の設定を行う。
図9に示す例では、上述したように第1期間中に第3期間が2回出現するが、直前の第2期間中に整合演算が2回しか行われていないため、3回目の可変キャパシタ1の設定は実質的に行われない(図中に×印で示す)。
【0084】
制御部3bは、また、第1期間中にて順次整合演算した結果に基づいて、更に後続する第2期間中の第3期間及び第4期間に可変キャパシタ1の設定を行う。即ち、制御部3bは、算出部2が先行する第2期間中の第3期間にて算出・平均化した結果に基づいて、後続する第2期間中の第3期間に可変キャパシタ1の設定を行い、算出部2が先行する第2期間中の第4期間にて算出・平均化した結果に基づいて、後続する第2期間中の第4期間に可変キャパシタ1の設定を行う。
【0085】
実施形態1の
図2との比較で明らかなように、FPGAは、CPUが与えるマスク信号に応じてインピーダンスの算出・平均化を行っており、実施形態1の場合と全く同じ動作を行う。
【0086】
一方のCPUは、第1期間及び第2期間それぞれの開始時点に起動される処理によってインピーダンスの整合演算を順次行っており、実施形態1との違いは、1回の起動で実行する整合演算の回数のみである。ここで、実施形態1の
図3に示すFPGAの処理手順を参照すると、FPGAは平均化したインピーダンスをステップS22にてFIFOメモリに入力している。また、
図4に示すCPUの処理手順を参照すると、ステップS32ではCPUが上記FIFOメモリから平均化したインピーダンスを取り込んでいる。従って、実施形態1の
図3に示す処理手順により、平均化したインピーダンスを複数回FIFOメモリに入力しておき、
図4に示す処理手順により、平均化したインピーダンスをFIFOメモリから複数回取り込んで順次整合演算を実行することができる。
【0087】
次に、CPUは、第3期間及び第4期間それぞれの開始時点に起動される処理によって可変キャパシタ1の設定を行っており、実施形態1とは、この処理の起動タイミングが異なる。制御部3bには、第3期間及び第4期間を示す変調信号が与えられており、CPUは、実施形態1の
図5に示す処理の起動タイミングを、第3期間及び第4期間それぞれの開始時点に変更すればよい。
【0088】
ここで、実施形態1の
図4に示すCPUの処理手順を参照すると、CPUは決定したオン/オフ状態をステップS35にてバッファメモリに記憶している。また、
図5に示すCPUの処理手順を参照すると、ステップS42ではCPUが上記バッファメモリから決定したオン/オフ状態を読み出している。そこで、このバッファメモリをいわゆるリングバッファにしておけば、
図4に示す処理手順により、決定したオン/オフ状態を複数回リングバッファに記憶しておき、
図5に示す処理手順により、決定したオン/オフ状態を第3期間及び第4期間の開始時点それぞれに1つずつ読み出して、可変キャパシタ1を設定することができる。このリングバッファが空になった後に読み出しを行う場合(
図9に×印で示す)は、可変キャパシタ1の設定を行わないようにしてもよいし、前回と同じ設定を行ってもよい。
【0089】
以上のことから、FPGAは、実施形態1の
図3に示す処理をそのまま実行すればよい。CPUは、
図5に示す処理の起動タイミングを変更するだけでよく、処理手順は
図4及び
図5に示すものをそのまま実行すれば、実施形態1及び2と同様の効果を奏する。FPGAが反射係数を算出した場合についても同様である。
【0090】
以上のように本実施形態3によれば、所定周波数の整数倍の周波数で振幅偏移変調される高周波電源6bの出力電力が更に負荷8bに供給される状態で実施形態1に係る高周波電源6aと負荷8bとのインピーダンスの整合を図る。高周波電源6bの出力電力は、第3期間及び第4期間それぞれにてオン及びオフに変調される。
【0091】
第1期間中の第3期間及び第4期間それぞれにて負荷8b側のインピーダンスを算出した場合は、調整後の負荷8b側のインピーダンスが高周波電源6aの出力インピーダンスに近づくように、後続する第2期間にて順次整合演算を行う。同様に、第2期間中の第3期間及び第4期間それぞれにて負荷8b側のインピーダンスを算出した場合は、調整後の負荷8b側のインピーダンスが高周波電源6aの出力インピーダンスに近づくように、後続する第1期間にて順次整合演算を行う。一方、第1期間中の第3期間及び第4期間それぞれにて反射係数を算出した場合は、実際の反射係数が0に近づくように、後続する第2期間にて順次整合演算を行う。同様に、第2期間中の第3期間及び第4期間それぞれにて反射係数を算出した場合は、実際の反射係数が0に近づくように、後続する第1期間にて順次整合演算を行う。
【0092】
第2期間にて順次行った整合演算の結果は、更に後続する第1期間中の第3期間及び第4期間にて可変キャパシタ1のキャパシタンスに反映する。同様に、第1期間にて順次行った整合演算の結果は、更に後続する第2期間中の第3期間及び第4期間にて可変キャパシタ1のキャパシタンスに反映する。従って、高周波電源6bの変調に影響されて第3期間及び第4期間それぞれにて負荷8b側のインピーダンスが変動する場合であっても、高周波電源6aに関する振幅偏移変調の1周期後の第1期間及び第2期間にて高周波電源6aと負荷8bとのインピーダンスの整合を図ることが可能となる。
【0093】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、各実施形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0094】
100a、100b インピーダンス整合装置
101 伝送路
1 可変キャパシタ
C1 キャパシタ
L1 インダクタ
11、12、13、14、15、16、17、18 キャパシタ
21、22、23、24、25、26、27、28 半導体スイッチ
31、32、33、34、35、36、37、38 駆動回路
2 算出部
20 取得部
3a、3b 制御部
4 スイッチ状態設定部
5a、5b 変調部
6a、6b 高周波電源
7 高周波検出部
8a、8b 負荷
81 上部電極
82 下部電極