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  • 特許-吸音装置及び防音塀 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】吸音装置及び防音塀
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/175 20060101AFI20230330BHJP
   E01F 8/00 20060101ALI20230330BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
G10K11/175
E01F8/00
G10K11/162
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019063592
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020166024
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】谷川 将規
(72)【発明者】
【氏名】宮瀬 文裕
(72)【発明者】
【氏名】宇野 昌利
(72)【発明者】
【氏名】高橋 豊
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-152785(JP,A)
【文献】特開2018-066914(JP,A)
【文献】特開2009-084991(JP,A)
【文献】特開2015-168960(JP,A)
【文献】特開2018-053470(JP,A)
【文献】特開2006-161523(JP,A)
【文献】特開昭51-068930(JP,A)
【文献】特開2000-125387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16-11/175
E01F 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の長さに形成された複数の音響管を一体に設けてなる吸音装置において、
前記音響管が1枚の平板状の紙を折り曲げて形成した断面多角形筒状の本体と、該管本体の一方の開口を閉塞するように取り付けられた蓋部材と、を備えた有底筒状に形成されていることを特徴とする吸音装置。
【請求項2】
請求項1記載の吸音装置において、
前記音響管となる前記紙製の管が、平板状の紙を所定の折曲部で折り曲げて複数の管路を備えて形成され、下端の開口を閉塞するように紙製の底板を取り付けて構成されていることを特徴とする吸音装置。
【請求項3】
前記音響管の前記管本体が断面三角形状に形成され、
前記管本体の一辺の長さは、吸音対象周波数の音波長の1/2以下である請求項1または請求項2に記載の吸音装置。
【請求項4】
請求項1請求項3のいずれか一項に記載の吸音装置を備えることを特徴とする防音塀。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音装置及びこれを備えた防音塀に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場などでは、作業エリアの外周、敷地境界などに防音塀(防音壁)を設け、建設機械等による作業時の騒音が外部に拡散することを防ぐ対策が多用されている。
【0003】
また、防音塀には、その頂部や内部に、例えば発生騒音の周波数の1/4の長さの音響管の集合体である吸音装置(音響装置、消音装置)を設け、音響管による干渉効果や音の回折減衰効果で防音塀の高さを大きくした場合に相当する騒音低減効果が得られるように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-232357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、上記従来の防音塀に具備される吸音装置においては、騒音源の周波数分布に合わせた最適な長さの音響管を組み合わせて構成することがコスト的に難しい。すなわち、建設現場、作業工程、使用する機器などによって発生する周波数帯が異なる場合に対してより効果的に騒音を低減できるように構成することが難しく、また、構成できたとしても複数の音響管の集合体である吸音装置自体が非常に高コストになってしまい、やはり適用が難しいという問題があった。
【0006】
また、吸音装置(音響管)は、既存の管材料を使用して製作されるため、それ自体が高価で、且つ大重量である。このため、現状では、住宅や商業地が隣接する場合など、騒音対策が非常に重要視されてこの騒音対策が本設として必要な場合に適用が限定されている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、より容易で簡便に、且つ低コストで設置でき、効果的に騒音を低減可能な吸音装置及びこれを備えた防音塀を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明に係る吸音装置は、所定の長さに形成された複数の音響管を一体に設けてなる吸音装置において、前記音響管が1枚の平板状の紙を折り曲げて形成した断面多角形筒状の本体と、該管本体の一方の開口を閉塞するように取り付けられた蓋部材と、を備えた有底筒状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る吸音装置においては、前記音響管となる前記紙製の管が、平板状の紙を所定の折曲部で折り曲げて複数の管路を備えて形成され、下端の開口を閉塞するように紙製の底板を取り付けて構成されていることが望ましい。
さらに、本発明に係る吸音装置においては、前記音響管の前記管本体が断面三角形状に形成され、前記管本体の一辺の長さは、吸音対象周波数の音波長の1/2以下であってもよい。
【0011】
本発明に係る防音塀は、上記のいずれかの吸音装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の吸音装置(及び防音塀)においては、騒音低減効果が高く、安価で軽量な仮設用の吸音装置を実現することができる。また、使用後は、再利用可能であり、環境にやさしく、廃棄費用も不要にすることができる。
【0013】
よって、本発明の吸音装置(及びこれを備えた防音塀)によれば、従来と比較し、より容易で簡便に、且つ低コストで設置でき、効果的に騒音を低減可能な吸音装置、防音塀を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る吸音装置及び防音塀の一例を示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る吸音装置による騒音低減作用の説明に用いた図である。
図3】本発明の一実施形態に係る吸音装置及び防音塀の一例を示す平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る吸音装置の音響管(紙製の管)の一例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る吸音装置の音響管(紙製の管)、蓋部材の一例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る吸音装置の音響管(紙製の管)の一例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る吸音装置の音響管(紙製の管)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1から図7を参照し、本発明の一実施形態に係る吸音装置及びこれを備えた防音塀について説明する。
【0016】
ここで、本実施形態は、例えば、図1に示すように、建設現場の作業エリアの外周、敷地境界などに設置される防音塀(防音壁)1に取り付けて、騒音が外部に伝播/拡散することを抑止するための吸音装置2及び防音塀1に関するものである。なお、本発明は、勿論、建設作業現場にかかわらず、あらゆる騒音の低減が必要な箇所に適用可能である。
【0017】
本実施形態の吸音装置2は、図1から図3に示すように、所定の長さを備えた複数の音響管2aを一体にして形成されている。さらに、複数の音響管2aが紙を用いて形成されており、仮設用の吸音装置2とされている。
【0018】
より具体的に、本実施形態の吸音装置2は、紙を用い、上端が開口し、下端が閉塞した略有底筒状の複数の紙製の管(音響管)2aを組み合わせて形成されている。各紙製の管2aは、図2に示すように上端の開口部から内部に音波が入射するとともに、紙製の管2aによる干渉効果や音の回折減衰効果、さらに上部開口から出射した音波と外部の音波の干渉効果で優れた騒音低減効果(吸音効果)を発揮する。
【0019】
また、図4に示すように、複数の紙製の管2aはそれぞれ、その長さ(高さH)や厚さが100Hz、500Hz、1kHz、2kHzなど、減衰対象の音波の周波数に応じて設定されている。すなわち、本実施形態の吸音装置2は、長さや厚さを適宜設定した紙製の管2aを一体に組み合わせた集合体として構成されている。
【0020】
さらに、本実施形態の吸音装置2においては、図4及び図5に示すように、端部にのりしろを設け、所定の長さ寸法、所定の幅寸法を備えて形成された略方形平板状の紙に、幅方向に所定の間隔をあけて長さ方向の上端部から下端部まで延びる直線状の折り目線(折曲部)Sを設けて紙製の管材料が形成されている。
【0021】
この紙製の管材料を折り目線Sで折り曲げ、のりしろを適宜接着、固着することによって断面三角形や四角形の断面多角状の紙製の管本体2bを形成でき、この紙製の管本体2bの下端部に紙製の蓋部材2cを取り付けることによって、本実施形態の紙製の管2aが形成される。
【0022】
さらに、図4図6図7に示すように、1枚の紙を折り目線Sで折り曲げることによって、複数の断面多角状の紙製の管本体2bを一体に形成するようにし、この一体形成された紙製の管本体2bに底板/蓋部材2cを取り付けて紙製の管2aを成形するようにしてもよい。
【0023】
本実施形態では、複数の紙製の管2aの側面同士を接着して吸音装置2が形成されている。また、最適な長さや厚さで形成された紙製の管2aの表面、背面同士をマジックテープ(登録商標)、磁石テープ、接着剤などを用いて一体に貼り付けて複数の紙製の管2aを一体にし、さらに、マジックテープ、磁石テープなどを用いて防音塀1の所定位置に貼り付けて設置される。
【0024】
また、本実施形態の吸音装置2においては、騒音の周波数分に合わせ、紙製の管2aを自由に組み合わせて使用(例えば500Hz用1本、1kHz用3本、2kHz用2本、4kHz用1本など)し、騒音低減効果を高めるようにしてもよい。
【0025】
なお、各紙製の管2aは、板紙、段ボール用紙などの紙を用いた管であればよい。例えば、帯状の紙をコア芯に巻き付けた後、コア芯を取り除いて形成される紙管であってもよいが、平板状の板紙あるいは段ボール用紙を折り曲げ、接合して形成すると、様々な形状に加工できるので好ましい。特に板紙は、折り曲げ加工の作業適正に優れている。紙は、2層以上重ね合わせたものなどを用いれば、強度を確保することができる。更に使用する紙に、耐水化剤、撥水剤、紙力増強剤を含有させることで耐水性を高めることもできる。また、最外層としてラミネート紙を用いると、耐久性、耐水性に優れるので好ましい。
【0026】
また、紙製の管2aは、その大きさ、形状(四角形、三角形、円形)を限定する必要はなく、自由であり、設置場所に適した仕様とすればよい。
【0027】
したがって、上記構成からなる本実施形態の吸音装置2(及び防音塀1)においては、騒音低減効果が高く、安価で軽量な仮設用の音響管2aを、紙を用いて容易に製作することが可能になる。
【0028】
また、紙製で軽量なため、仮設防音塀(万能鋼板など)の頂部などへの設置作業の労力を大幅に低減することが可能になる(設置作業の効率を大幅に向上させることが可能になる)。
【0029】
さらに、使用後は、再利用可能であり、環境にやさしく、廃棄費用も不要にできる。
【0030】
そして、底板/蓋部材2cは、特に限定するものではないが、紙製であると、紙製の管2aと分別することなく処理することができるため好ましい。また、底板/蓋部材2cは、紙製の管2aと同様の紙類を用いることができ、特に板紙の使用が好ましい。
【0031】
以上、本発明に係る吸音装置及び防音塀の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 防音塀
2 吸音装置
2a 音響管(紙製の管)
2b 紙製の管本体
2c 蓋部材
S 折り目線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7