IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TMTマシナリー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-紡糸引取設備 図1
  • 特許-紡糸引取設備 図2
  • 特許-紡糸引取設備 図3
  • 特許-紡糸引取設備 図4
  • 特許-紡糸引取設備 図5
  • 特許-紡糸引取設備 図6
  • 特許-紡糸引取設備 図7
  • 特許-紡糸引取設備 図8
  • 特許-紡糸引取設備 図9
  • 特許-紡糸引取設備 図10
  • 特許-紡糸引取設備 図11
  • 特許-紡糸引取設備 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】紡糸引取設備
(51)【国際特許分類】
   D01D 7/00 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
D01D7/00 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019077494
(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公開番号】P2020176337
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】利山 裕介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智也
(72)【発明者】
【氏名】那須 葵
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/198698(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/001948(WO,A1)
【文献】実公昭47-030579(JP,Y1)
【文献】特開昭53-106815(JP,A)
【文献】特開昭54-077711(JP,A)
【文献】特開平09-137318(JP,A)
【文献】特開2001-131822(JP,A)
【文献】特開2018-178318(JP,A)
【文献】国際公開第2008/116759(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/193803(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00ー13/02
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上階に配置された紡糸装置から紡出される複数の糸を下階に配置された巻取装置で巻き取るように構成された紡糸引取装置を複数備える紡糸引取設備であって、
前記各紡糸引取装置は、
前記上階に配置された糸吸引部と、
前記糸吸引部によって保持されている前記複数の糸を前記上階から前記下階に降ろす糸降ろし装置と、
を有しており、
少なくとも1つの前記紡糸引取装置において、前記糸降ろし装置によって前記下階に降ろされた前記複数の糸が、前記下階の糸掛けロボット又はオペレータに引き渡されたことを示す引渡完了信号を発信する発信部と、
前記発信部から前記引渡完了信号が発信されると、前記少なくとも1つの紡糸引取装置の前記糸吸引部のバルブを閉じるバルブ制御部と、
を備えることを特徴とする紡糸引取設備。
【請求項2】
上階に配置された紡糸装置から紡出される複数の糸を下階に配置された巻取装置で巻き取るように構成された紡糸引取装置を複数備える紡糸引取設備であって、
前記各紡糸引取装置は、
前記上階に配置された糸吸引部と、
前記糸吸引部によって保持されている前記複数の糸を前記上階から前記下階に降ろす糸降ろし装置と、
を有しており、
少なくとも1つの前記紡糸引取装置において、前記糸降ろし装置によって前記下階に降ろされた前記複数の糸が、前記下階の糸掛けロボット又はオペレータに引き渡されたことを示す引渡完了信号を発信する発信部と、
前記発信部から前記引渡完了信号が発信されると、前記少なくとも1つの紡糸引取装置において前記複数の糸の引き渡しが完了したことを前記上階のオペレータに報知する報知部と、
を備えることを特徴とする紡糸引取設備。
【請求項3】
前記発信部は、前記糸掛けロボットが所定の動作を実行する際に前記引渡完了信号を発信することを特徴とする請求項1又は2に記載の紡糸引取設備。
【請求項4】
前記糸掛けロボットは、前記糸降ろし装置によって前記下階に降ろされた前記複数の糸を受け取る際に前記複数の糸を切断するカッターを有しており、
前記発信部は、前記糸掛けロボットが前記カッターによって前記複数の糸を切断する際に前記引渡完了信号を発信することを特徴とする請求項3に記載の紡糸引取設備。
【請求項5】
前記発信部は、前記糸掛けロボットが前記カッターによって前記複数の糸を切断するための動作を開始してから所定時間経過後に前記引渡完了信号を発信することを特徴とする請求項4に記載の紡糸引取設備。
【請求項6】
前記複数の紡糸引取装置及び前記糸掛けロボットを制御する集中制御装置を備え、
前記集中制御装置が、前記発信部として前記引渡完了信号を発信することを特徴とする請求項3~5の何れか1項に記載の紡糸引取設備。
【請求項7】
前記糸掛けロボットが、前記発信部として前記引渡完了信号を発信することを特徴とする請求項3~5の何れか1項に記載の紡糸引取設備。
【請求項8】
前記糸掛けロボットを呼び出すための呼出部が前記上階に設けられていることを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の紡糸引取設備。
【請求項9】
前記下階のオペレータによって糸掛け作業の際に操作される操作部が、前記発信部として前記引渡完了信号を発信することを特徴とする請求項1又は2に記載の紡糸引取設備。
【請求項10】
前記各紡糸引取装置は、
前記下階において最初に前記複数の糸が掛けられ、且つ、糸掛け作業の際に移動させられる糸規制ガイドと、
前記操作部として、前記糸規制ガイドを移動させるためのガイド操作部と、
を有しており、
前記ガイド操作部が前記糸規制ガイドを移動させるために発信する信号が、前記引渡完了信号として使用されることを特徴とする請求項9に記載の紡糸引取設備。
【請求項11】
前記各紡糸引取装置は、
糸掛け位置で前記複数の糸が掛けられ、前記複数の糸が掛けられると巻取位置に移動させられるゴデットローラと、
前記操作部として、前記ゴデットローラを前記糸掛け位置から前記巻取位置に移動させるためのゴデットローラ操作部と、
を有しており、
前記ゴデットローラ操作部が前記ゴデットローラを前記糸掛け位置から前記巻取位置に移動させるために発信する信号が、前記引渡完了信号として使用されることを特徴とする請求項9に記載の紡糸引取設備。
【請求項12】
前記各紡糸引取装置の前記巻取装置は、
前記複数の糸をトラバースさせる際の支点となる複数の支点ガイドと、
前記操作部として、前記複数の支点ガイドに前記複数の糸を掛ける際に前記下階のオペレータによって操作される糸掛け操作部と、
を有しており、
前記下階のオペレータによって操作されたときに前記糸掛け操作部が発信する信号が、前記引渡完了信号として使用されることを特徴とする請求項9に記載の紡糸引取設備。
【請求項13】
前記複数の支点ガイドは、互いに隣接した状態で前記複数の糸が掛けられ、前記複数の糸が掛けられると互いに離間するように構成されており、
前記糸掛け操作部は、前記複数の支点ガイドを少なくとも互いに離間させるためのものであり、
前記糸掛け操作部が前記複数の支点ガイドを互いに離間させるために発信する信号が、前記引渡完了信号として使用されることを特徴とする請求項12に記載の紡糸引取設備。
【請求項14】
前記各紡糸引取装置の前記巻取装置は、前記複数の糸が掛けられた状態で移動することで、前記複数の支点ガイドに前記複数の糸を掛ける糸掛けガイドをさらに有しており、
前記糸掛け操作部は、前記糸掛けガイドを移動させるためのものであり、
前記糸掛け操作部が前記糸掛けガイドを移動させるために発信する信号が、前記引渡完了信号として使用されることを特徴とする請求項12に記載の紡糸引取設備。
【請求項15】
前記各紡糸引取装置の前記巻取装置は、前記操作部として、前記巻取装置に前記複数の糸の巻き取りを開始させるための巻取操作部を有しており、
前記巻取操作部が前記巻取装置に前記複数の糸の巻き取りを開始させるために発信する信号が、前記引渡完了信号として使用されることを特徴とする請求項9に記載の紡糸引取設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上階に配置された紡糸装置から紡出される糸を下階に配置された巻取装置で巻き取るように構成された紡糸引取装置を複数備える紡糸引取設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載の紡糸引取設備は、上階に配置された紡糸装置から紡出される糸を下階に配置された巻取装置で巻き取るように構成された紡糸引取装置を複数備えている。各紡糸引取装置において糸掛け作業を行う際には、まず、上階のオペレータが紡糸装置から紡出される複数の糸を上階に配置されている糸吸引部に保持させる。続いて、糸吸引部に保持されている複数の糸を糸降ろし装置によって下階に降ろし、下階に配置されている糸保持部に保持させる。その後、適宜のタイミングで下階のオペレータが糸保持部に保持されている複数の糸をサクションガンで受け取り、サクションガンを適切に取り回すことによって巻取装置までの糸掛けを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2015/198698
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において下階に設けられている糸保持部は、吸引力によって糸を保持するように構成されており、吸引力の大きさや糸の張力によっては糸降ろし装置から糸保持部への糸の引き渡しに失敗することがあった。このため、下階における糸の引き渡しを確実に行うためには、糸降ろし装置によって下階に降ろされた糸を下階のオペレータ(又は糸掛けロボットでもよい)に直接引き渡すことが好ましい。
【0005】
紡糸引取装置下階に降ろされた糸をオペレータ又は糸掛けロボットに直接引き渡す場合、上階の糸吸引部が無駄に作動し続けることを回避するため、下階での糸の引き渡しが終わり次第できるだけ速やかに上階の糸吸引部のバルブを閉じる必要がある。しかしながら、上階のオペレータが下階での糸の引き渡しが終わるまで待機しておくのは作業効率が悪いため、上階のオペレータは糸降ろし装置を作動させるとその場を離れることが多い。このため、下階での糸の引き渡しが終わったにもかかわらず、上階の糸吸引部のバルブが開いたままで放置される時間が長くなりがちだった。そうすると、他の紡糸引取装置の糸吸引部の吸引力が不足し、他の紡糸引取装置で糸降ろしができなくなるおそれがあった。
【0006】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、上階のオペレータの作業効率を悪化させることなく、上階の糸吸引部のバルブを速やかに閉じることが可能な紡糸引取設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、上階に配置された紡糸装置から紡出される複数の糸を下階に配置された巻取装置で巻き取るように構成された紡糸引取装置を複数備える紡糸引取設備であって、前記各紡糸引取装置は、前記上階に配置された糸吸引部と、前記糸吸引部によって保持されている前記複数の糸を前記上階から前記下階に降ろす糸降ろし装置と、を有しており、ある前記紡糸引取装置において、前記糸降ろし装置によって前記下階に降ろされた前記複数の糸が、前記下階の糸掛けロボット又はオペレータに引き渡されたことを示す引渡完了信号を発信する発信部と、前記発信部から前記引渡完了信号が発信されると、前記ある紡糸引取装置の前記糸吸引部のバルブを閉じるバルブ制御部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の第1態様によれば、下階での糸の引き渡しが終わると、発信部から引渡完了信号が発信され、それを受けてバルブ制御部が糸吸引部のバルブを閉じる。つまり、上階のオペレータが下階での糸の引き渡しが終わるまでその場で待機していなくても、糸の引き渡しが終われば糸吸引部のバルブが自動で閉じられる。したがって、上階のオペレータの作業効率を悪化させることなく、上階の糸吸引部のバルブを速やかに閉じることが可能となる。
【0009】
本発明の第2態様は、上階に配置された紡糸装置から紡出される複数の糸を下階に配置された巻取装置で巻き取るように構成された紡糸引取装置を複数備える紡糸引取設備であって、前記各紡糸引取装置は、前記上階に配置された糸吸引部と、前記糸吸引部によって保持されている前記複数の糸を前記上階から前記下階に降ろす糸降ろし装置と、を有しており、ある前記紡糸引取装置において、前記糸降ろし装置によって前記下階に降ろされた前記複数の糸が、前記下階の糸掛けロボット又はオペレータに引き渡されたことを示す引渡完了信号を発信する発信部と、前記発信部から前記引渡完了信号が発信されると、前記ある紡糸引取装置において前記複数の糸の引き渡しが完了したことを前記上階のオペレータに報知する報知部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2態様によれば、下階での糸の引き渡しが終わると、発信部から引渡完了信号が発信され、そのことが報知部によって上階のオペレータに報知される。つまり、上階のオペレータが下階での糸の引き渡しが終わるまでその場で待機していなくても、糸の引き渡しが終われば報知部が作動することで、糸の引き渡しが終わったことをすぐに知ることができる。したがって、上階のオペレータの作業効率を悪化させることなく、上階の糸吸引部のバルブを速やかに閉じることが可能となる。
【0011】
本発明において、前記発信部は、前記糸掛けロボットが所定の動作を実行する際に前記引渡完了信号を発信するとよい。
【0012】
こうすれば、糸掛けロボットが所定の動作を実行すれば、発信部から自動的に引渡完了信号が発信されるので、引渡完了信号を発信し損ねるということがない。したがって、糸吸引部のバルブを確実に閉じることができる。
【0013】
本発明において、前記糸掛けロボットは、前記糸降ろし装置によって前記下階に降ろされた前記複数の糸を受け取る際に前記複数の糸を切断するカッターを有しており、前記発信部は、前記糸掛けロボットが前記カッターによって前記複数の糸を切断する際に前記引渡完了信号を発信するとよい。
【0014】
一般的に、糸掛けロボットは、カッターで切断した複数の糸をサクションで吸引するように構成されている。つまり、カッターで複数の糸を切断するのと略同時又は直後に、下階での糸の引き渡しが完了することになる。したがって、上述の構成によれば、糸の引き渡しと略同時に引渡完了信号を発信することになるので、より速やかに糸吸引部のバルブを閉めることが可能となる。
【0015】
本発明において、前記発信部は、前記糸掛けロボットが前記カッターによって前記複数の糸を切断するための動作を開始してから所定時間経過後に前記引渡完了信号を発信するとよい。
【0016】
糸掛けロボットでは、カッターで複数の糸を切断するための動作を開始してから全ての糸をサクションで吸引した状態となるまでに多少の時間を要することがある。そこで、上述のように、引渡完了信号を発信するまでに所定時間待機しておくことで、下階での糸の引き渡しが確実に完了してから引渡完了信号を発信することができる。
【0017】
本発明において、前記複数の紡糸引取装置及び前記糸掛けロボットを制御する集中制御装置を備え、前記集中制御装置が、前記発信部として前記引渡完了信号を発信するとよい。
【0018】
このように、集中制御装置を発信部として機能させることで、新たな発信部を設ける必要がない。したがって、コストを抑えることができる。また、集中制御装置は他の制御装置と比べて一般的に高スペックであるので、データ通信をスムーズに行うことができ、その他の装置との連携が取りやすい。
【0019】
本発明において、前記糸掛けロボットが、前記発信部として前記引渡完了信号を発信するとよい。
【0020】
このように、糸掛けロボットを発信部として機能させることで、新たな発信部を設ける必要がない。したがって、コストを抑えることができる。また、この場合、集中制御装置を省略することが可能となり、糸掛けロボットが他の制御部と直接やり取りすることが可能となる。
【0021】
本発明において、前記糸掛けロボットを呼び出すための呼出部が前記上階に設けられているとよい。
【0022】
このような呼出部を上階に設ければ、上階のオペレータは糸降ろしを行った後、糸掛けロボットを呼び出しさえすればその場を離れることができる。したがって、上階のオペレータの作業効率を向上させることができる。
【0023】
本発明において、前記下階のオペレータによって糸掛け作業の際に操作される操作部が、前記発信部として前記引渡完了信号を発信するとよい。
【0024】
このように、糸掛け作業の際にオペレータが操作する操作部を発信部として機能させることで、新たな発信部を設ける必要がない。したがって、コストを抑えることができる。
【0025】
本発明において、前記各紡糸引取装置は、前記下階において最初に前記複数の糸が掛けられ、且つ、糸掛け作業の際に移動させられる糸規制ガイドと、前記操作部として、前記糸規制ガイドを移動させるためのガイド操作部と、を有しており、前記ガイド操作部が前記糸規制ガイドを移動させるために発信する信号が、前記引渡完了信号として使用されるとよい。
【0026】
こうすれば、下階において最初の糸規制ガイドに糸を掛けるタイミングで引渡完了信号を発信することができる。つまり、下階のオペレータに糸が引き渡されてすぐに引渡完了信号を発信することができるので、上階の糸吸引部のバルブをより速やかに閉じることができる。
【0027】
本発明において、前記各紡糸引取装置は、糸掛け位置で前記複数の糸が掛けられ、前記複数の糸が掛けられると巻取位置に移動させられるゴデットローラと、前記操作部として、前記ゴデットローラを前記糸掛け位置から前記巻取位置に移動させるためのゴデットローラ操作部と、を有しており、前記ゴデットローラ操作部が前記ゴデットローラを前記糸掛け位置から前記巻取位置に移動させるために発信する信号が、前記引渡完了信号として使用されるとよい。
【0028】
こうすれば、ゴデットローラに糸を掛け終わったタイミングで引渡完了信号を発信することができる。
【0029】
本発明において、前記各紡糸引取装置の前記巻取装置は、前記複数の糸をトラバースさせる際の支点となる複数の支点ガイドと、前記操作部として、前記複数の支点ガイドに前記複数の糸を掛ける際に前記下階のオペレータによって操作される糸掛け操作部と、を有しており、前記下階のオペレータによって操作されたときに前記糸掛け操作部が発信する信号が、前記引渡完了信号として使用されるとよい。
【0030】
こうすれば、複数の支点ガイドに糸を掛ける際に引渡完了信号を発信することができる。
【0031】
本発明において、前記複数の支点ガイドは、互いに隣接した状態で前記複数の糸が掛けられ、前記複数の糸が掛けられると互いに離間するように構成されており、前記糸掛け操作部は、前記複数の支点ガイドを少なくとも互いに離間させるためのものであり、前記糸掛け操作部が前記複数の支点ガイドを互いに離間させるために発信する信号が、前記引渡完了信号として使用されるとよい。
【0032】
こうすれば、複数の支点ガイドに糸を掛け終わったタイミングで引渡完了信号を発信することができる。
【0033】
本発明において、前記各紡糸引取装置の前記巻取装置は、前記複数の糸が掛けられた状態で移動することで、前記複数の支点ガイドに前記複数の糸を掛ける糸掛けガイドをさらに有しており、前記糸掛け操作部は、前記糸掛けガイドを移動させるためのものであり、前記糸掛け操作部が前記糸掛けガイドを移動させるために発信する信号が、前記引渡完了信号として使用されるとよい。
【0034】
こうすれば、糸掛けガイドに糸を掛け終わったタイミングで引渡完了信号を発信することができる。
【0035】
本発明において、前記各紡糸引取装置の前記巻取装置は、前記操作部として、前記巻取装置に前記複数の糸の巻き取りを開始させるための巻取操作部を有しており、前記巻取操作部が前記巻取装置に前記複数の糸の巻き取りを開始させるために発信する信号が、前記引渡完了信号として使用されるとよい。
【0036】
こうすれば、巻取装置で糸の巻き取りを開始するタイミングで引渡完了信号を発信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】第1実施形態に係る紡糸引取設備の概略構成図である。
図2】第1実施形態に係る紡糸引取装置の概略構成図である。
図3】第1実施形態に係る紡糸引取設備の電気的構成を示すブロック図である。
図4】a図は、巻取時の支点ガイドの状態を示す図であり、b図は、糸掛け時の支点ガイドの状態を示す図である。
図5】糸降ろし装置の斜視図である。
図6】糸降ろし作業及び糸掛け作業の様子を示す図である。
図7】糸降ろし作業及び糸掛け作業の様子を示す図である。
図8】糸降ろし作業及び糸掛け作業の様子を示す図である。
図9】糸降ろし作業及び糸掛け作業の様子を示す図である。
図10】糸降ろし作業及び糸掛け作業の様子を示す図である。
図11】第2実施形態に係る紡糸引取装置の概略構成図である。
図12】第2実施形態に係る紡糸引取設備の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[第1実施形態]
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る紡糸引取設備の概略構成図である。図2は、第1実施形態に係る紡糸引取装置の概略構成図である。図3は、第1実施形態に係る紡糸引取設備の電気的構成を示すブロック図である。紡糸引取設備1及び紡糸引取装置2の方向は、図1及び図2に示すように定義する。また、図3では、紙面の都合上、紡糸引取装置2については1つのみを図示している。
【0039】
(紡糸引取設備)
紡糸引取設備1が配置されている建屋は、仕切床5によって下階(1階)と上階(2階)とに仕切られている。図1に示すように、上階には、複数の紡糸装置100が左右方向に並んで配置されている。紡糸引取設備1は、各紡糸装置100から紡出される複数の糸Y(具体的には合成繊維糸)を複数のボビンBにそれぞれ巻き取り、複数のパッケージPを形成するための設備である。紡糸引取設備1は、複数の紡糸引取装置2と、糸掛けロボット3と、集中制御装置4(図3参照)とを備える。
【0040】
(紡糸引取装置)
複数の紡糸引取装置2は、各紡糸装置100に対応して左右方向に並んで配置されている。図2に示すように、各紡糸引取装置2は、油剤ガイド11と、糸規制ガイド12と、第1ゴデットローラ13と、第2ゴデットローラ14と、巻取装置15と、糸降ろし装置16と、糸吸引部17と、引取制御部18(図3参照)とを有する。各紡糸引取装置2は、対応する紡糸装置100から紡出される複数の糸Yを巻取装置15で巻き取るように構成されている。
【0041】
油剤ガイド11は、上階に設けられており、紡糸装置100の下方に配置されている。油剤ガイド11は、図1では図示を省略しているが、紡糸装置100から紡出される糸Yの本数(本実施形態では8本)と同じ数だけ左右方向に並んでいる。紡糸装置100から紡出された複数の糸Yは、それぞれ対応する油剤ガイド11において油剤が付与される。油剤が付与された複数の糸Yは、仕切床5に形成された糸通過穴5aを通って下階に至る。
【0042】
糸規制ガイド12は、下階に設けられており、下階に降ろされた複数の糸Yが最初に掛けられるガイドである。糸規制ガイド12は、第1ゴデットローラ13の軸方向(左右方向)において、第1ゴデットローラ13と重複する巻取位置(図1の実線参照)と、第1ゴデットローラ13と重複しない糸掛け位置(図1の一点鎖線参照)との間で移動可能である。糸規制ガイド12の移動は、例えばシリンダからなるガイド駆動部51(図3参照)によって行われる。糸規制ガイド12への糸掛け時には、糸掛けを行いやすくするため、糸規制ガイド12は糸掛け位置に移動させられる。糸掛けが終了すると、糸規制ガイド12は巻取位置に戻される。
【0043】
第1ゴデットローラ13及び第2ゴデットローラ14は、下階に設けられており、複数の糸Yを巻取装置15へ送る。第1ゴデットローラ13及び第2ゴデットローラ14は、それぞれ不図示のモータによって回転駆動される。第1ゴデットローラ13は、糸規制ガイド12の下方且つ近傍に配置されている。第2ゴデットローラ14は、巻取装置15の上方の巻取位置(図2の実線参照)と、第1ゴデットローラ13の近傍の糸掛け位置(図2の一点鎖線参照)との間で移動可能である。第2ゴデットローラ14の移動は、例えばシリンダからなるゴデットローラ駆動部52(図3参照)によって行われる。第1ゴデットローラ13及び第2ゴデットローラ14への糸掛け時には、糸掛けを行いやすくするため、第2ゴデットローラ14は糸掛け位置に下降させられる。糸掛けが終了すると、ゴデットローラ14は巻取位置に上昇させられる。
【0044】
巻取装置15は、下階に設けられており、複数の糸Yを複数のボビンBに巻き取って複数のパッケージPを形成する。巻取装置15は、ターレット21と、2本のボビンホルダ22と、コンタクトローラ23と、複数の支点ガイド24と、複数のトラバースガイド25と、巻取制御部26(図3参照)とを有する。ターレット21は、不図示のモータによって回転駆動される円盤状の部材であり、2本のボビンホルダ22を回転可能に片持ち支持する。ターレット21が回転することによって、2本のボビンホルダ22の位置が上下に切り換えられる。各ボビンホルダ22には、複数のボビンBが装着される。各ボビンホルダ22は、ボビンホルダモータ53(図3参照)によって回転駆動される。コンタクトローラ23は、上側のボビンホルダ22に支持されている複数のパッケージPに接触し、複数のパッケージPに接圧を付与する。
【0045】
複数の支点ガイド24及び複数のトラバースガイド25は、ともに前後方向に並んでおり、1対1で対応している。糸Yは、支点ガイド24に掛けられた後、対応するトラバースガイド25に掛けられる。複数のトラバースガイド25は、例えばモータからなるトラバース駆動部54(図3参照)によって前後方向に往復駆動される。巻取制御部26は、巻取装置15の各部の動作を制御する。巻取制御部26は、上側のボビンホルダ22をボビンホルダモータ53によって回転させながら、複数のトラバースガイド25をトラバース駆動部54によって前後方向に往復移動させる巻取動作を実行可能である。巻取動作によって、複数の糸Yが各支点ガイド24を中心にトラバースされつつ複数のボビンBに巻き取られて、複数のパッケージPが形成される。
【0046】
図4のa図は、巻取時の支点ガイド24の状態を示す図であり、図4のb図は、糸掛け時の支点ガイド24の状態を示す図である。複数の支点ガイド24は、複数のスライダ27を介して、前後方向に延びるガイドレール28に移動可能に取り付けられている。複数の支点ガイド24は、等間隔で互いに離間した状態となる巻取位置(図2及び図4のa図参照)と、ガイドレール28の前端部に集合して互いに隣接した状態となる糸掛け位置(図4のb図参照)との間で移動可能である。複数の支点ガイド24(複数のスライダ27)の移動は、例えばシリンダからなる支点ガイド駆動部55(図3参照)によって行われる。複数の支点ガイド24への糸掛け時には、糸掛けを行いやすくするため、複数の支点ガイド24は糸掛け位置に移動させられる。糸掛けが終了すると、複数の支点ガイド24は巻取位置に戻される。
【0047】
糸降ろし装置16は、紡糸装置100から紡出された複数の糸Yを上階から下階に降ろすための装置である。図5は、糸降ろし装置16の斜視図である。糸降ろし装置16は、ガイド部材31及び移動部32を有する。ガイド部材31は、仕切床5に形成された糸通過穴5aを貫通しており、下階と上階とにまたがって上下方向に延びている。移動部32は、ガイド部材31によって上下方向に移動可能に支持されている。移動部32は、上階の待機位置(図2の実線参照)と、下階の糸規制ガイド12の近傍の引渡位置(図2の一点鎖線参照)との間で昇降可能である。移動部32の移動は、例えばモータからなる糸降ろし駆動部36(図3参照)によって行われる。上階には、移動部32を昇降させるための操作スイッチ37が設けられている。
【0048】
移動部32は、支持部材33と、ローラ34と、集束ガイド35とを有する。支持部材33は、鉛直面に略平行な板状部材であり、ガイド部材31に上下方向に移動可能に取り付けられている。ローラ34は回転自在なローラであり、その回転軸が略水平となるように支持部材33の側面部に支持されている。ローラ34には、紡糸装置100から紡出された複数の糸Yが巻き掛けられる。集束ガイド35は、U字状の平面形状を有しており、ローラ34の上方において支持部材33の側面部に取り付けられている。集束ガイド35には、ローラ34に巻き掛けられる前の複数の糸Yが掛けられる。ローラ34に複数の糸Yが巻き掛けられた状態で、移動部32が上階の待機位置から下階の引渡位置に移動することで、複数の糸Yを上階から下階へと降ろすことができる。
【0049】
糸吸引部17は、上階に設けられており、糸通過穴5aの近傍に配置されている。糸吸引部17は、糸降ろし装置16によって複数の糸Yを下階に降ろす際に、一時的に複数の糸Yを吸引して保持する。糸吸引部17は、圧縮流体の流れによって吸引口17aに吸引力を発生させるように構成されている。糸吸引部17には、電磁バルブ19(図3参照)が設けられている。電磁バルブ19を開くと、糸吸引部17に圧縮流体が供給され、吸引口17aに吸引力が発生する。一方、電磁バルブ19を閉じると、糸吸引部17に圧縮流体は供給されず、吸引口17aに吸引力は発生しない。各紡糸引取装置2の糸吸引部17には、不図示の共通の配管によって圧縮流体が供給される。
【0050】
引取制御部18は、図3に示すように、紡糸引取装置2の各部の動作を制御する。引取制御部18は、主に、巻取装置15に含まれないガイド駆動部51、ゴデットローラ駆動部52、糸降ろし駆動部36、電磁バルブ19等の動作を制御する。引取制御部18には、操作スイッチ37からの信号が入力される。引取制御部18は、集中制御装置4及び巻取制御部26のそれぞれと互いに信号を送受信可能に接続されている。
【0051】
(糸掛けロボット)
糸掛けロボット3は、図1及び図2に示すように下階に設けられており、複数の紡糸引取装置2に自動で糸掛け作業を行う装置である。糸掛けロボット3は、本体部41と、ロボットアーム42と、サクション43と、カッター44と、ロボット制御部45(図3参照)とを有する。本体部41は、左右方向に延びるガイドレール40に移動可能に支持されており、移動用モータ46(図3参照)によって移動させられる。ロボットアーム42は、本体部41に取り付けられており、アーム駆動モータ47(図3参照)によって駆動されることで三次元的な動作を行うことができる。ロボットアーム42の先端部には、サクション43及びカッター44が取り付けられている。サクション43は、複数の糸Yを吸引して保持する。カッター44は、複数の糸Yを切断する。カッター44は、例えばシリンダからなるカッター駆動部48(図3参照)によって作動される。ロボット制御部45は、糸掛けロボット3の各部の動作を制御する。上階には、糸掛けロボット3の位置や動作状況を表示するとともに、糸掛けロボット3を呼び出すための操作パネル49が配置されている。
【0052】
(集中制御装置)
図3に示すように、集中制御装置4は、各紡糸引取装置2の引取制御部18及びロボット制御部45のそれぞれと互いに信号を送受信可能に接続されており、複数の紡糸引取装置2及び糸掛けロボット3を制御する。また、集中制御装置4は、操作パネル49とも互いに信号を送受信可能に接続されている。操作パネル49によってある紡糸引取装置2に糸掛けロボット3を呼び出すための操作を行うと、操作パネル49から集中制御装置4に呼出信号が送信される。そして、呼出信号を受信した集中制御装置4は、糸掛けロボット3をその紡糸引取装置2に移動させるようにロボット制御部45に対して指令を発する。
【0053】
(糸掛け作業)
ある紡糸引取装置2において、例えばパッケージ生産開始時や糸切れ発生時等に、巻取装置15による巻き取りを開始(再開)する際には、上階の紡糸装置100から紡出された複数の糸Yを下階に降ろし、巻取装置15まで糸掛けを行う必要がある。本実施形態では、複数の糸Yを下階に降ろす糸降ろし作業は上階のオペレータが行い、下階における糸掛け作業は下階の糸掛けロボット3が行う。これらの糸降ろし作業及び糸掛け作業の一連の流れについて、図6図10を参照しつつ詳しく説明する。
【0054】
糸降ろし作業及び糸掛け作業の対象となる紡糸引取装置2においては、糸降ろし作業を行う前に、引取制御部18によって、糸吸引部17の電磁バルブ19が開かれるとともに、糸降ろし装置16の移動部32が上階の待機位置で待機させられる。なお、これらの準備は上階のオペレータによって行われてもよい。
【0055】
まず、上階のオペレータは、図6に示すように、紡糸装置100から紡出される複数の糸Yを糸吸引部17に導き、複数の糸Yを糸吸引部17に吸引保持させる。続けて、上階のオペレータは、図7に示すように、紡糸装置100から紡出される複数の糸Yを油剤ガイド11に掛け、さらに、糸降ろし装置16の集束ガイド35及びローラ34に掛ける。集束ガイド35及びローラ34への糸掛けが終わったら、上階のオペレータは、操作スイッチ37を操作して、糸降ろし装置16の移動部32を下階の引渡位置に移動させる。すると、図8に示すように、糸吸引部17に保持されている複数の糸Yの一部が下階に位置するようになる。
【0056】
次に、上階のオペレータは、操作パネル49を操作して、下階の糸掛けロボット3を糸掛け作業の対象の紡糸引取装置2に呼び出す。集中制御装置4は、操作パネル49からの呼出信号を受けると、糸掛けロボット3を対象の紡糸引取装置2に移動させるように指令を発する。糸掛けロボット3は、その指令を受けて、対象の紡糸引取装置2まで移動する。
【0057】
対象の紡糸引取装置2に到着した糸掛けロボット3は、ロボットアーム42を動かしてサクション43及びカッター44を複数の糸Yに近接させる。より詳細には、サクション43及びカッター44を、糸降ろし装置16の移動部32よりも糸走行方向上流側において複数の糸Yに近接させる。この状態で、カッター44を作動させて複数の糸Yを切断すると、図9に示すように、サクション43によって複数の糸Yが吸引保持される。こうして、紡糸装置100から紡出される複数の糸Yが、糸降ろし装置16から糸掛けロボット3へと引き渡される。糸掛けロボット3へ複数の糸Yが引き渡された後、適宜のタイミングで移動部32は上階の待機位置へと戻される。
【0058】
糸掛けロボット3は、複数の糸Yを受け取ると、糸規制ガイド12、第1ゴデットローラ13、第2ゴデットローラ14、複数の支点ガイド24に順番に糸掛けを行う。なお、糸掛けロボット3による糸掛けが行われる前に、糸規制ガイド12、第2ゴデットローラ14及び複数の支点ガイド24は、それぞれの糸掛け位置に予め移動させられる。これらの移動は、引取制御部18によって実行されるものとするが、下階にオペレータがいる場合はオペレータが行ってもよい。
【0059】
糸掛けロボット3は、図10に示すように、サクション43に保持されている複数の糸Yを、糸規制ガイド12、第1ゴデットローラ13、第2ゴデットローラ14に順番に掛けていく。糸規制ガイド12への糸掛けが終わると、糸規制ガイド12は巻取位置に戻される。また、第2ゴデットローラ14については、第2ゴデットローラ14への糸掛けが終わった時点で巻取位置に戻してもよいが、本実施形態では、後述のように、複数の支点ガイド24への糸掛けが終わってから巻取位置に戻している。
【0060】
次に、糸掛けロボット3は、糸掛け位置にある複数の支点ガイド24(図4のb図参照)に糸掛けを行う。この工程についての詳細については、例えば特開2018-66088号公報等を参照されたい。複数の支点ガイド24への糸掛けが終わると、第2ゴデットローラ14を巻取位置に戻すとともに、複数の支点ガイド24を巻取位置(図4のa図参照)に戻す。続けて、糸掛けロボット3は、上側のボビンホルダ22よりも下方の所定位置にサクション43を移動させ、複数の糸Yを複数のボビンBに接触させる。それから、巻取制御部26によって巻取動作が実行される。巻取動作が開始されると、複数のトラバースガイド25が前後方向に往復移動する過程で、複数のトラバースガイド25に複数の糸Yが掛かる。また、複数のボビンBに形成されている不図示のスリットに複数の糸Yが引っ掛かると、複数の糸Yが切断され、複数の糸Yが複数のボビンBに巻き取られるようになる。こうして、一連の糸降ろし作業及び糸掛け作業は終了する。
【0061】
なお、糸掛け作業を適切に実行するためには、糸掛けロボット3による糸掛け作業の進行状況に応じて、引取制御部18及び巻取制御部26が適切なタイミングで各部を動作させる必要がある。このタイミングは、糸掛けロボット3が糸掛け作業を開始してからの経過時間に応じて決められていてもよい。また、糸掛けロボット3が所定の作業を終わるたびに、そのことを示す信号を糸掛けロボット3が引取制御部18及び巻取制御部26に送信するようにしてもよい。あるいは、紡糸引取装置2及び巻取装置15の各部に、複数の糸Yが掛けられたことを検出可能なセンサ等が設けられていてもよい。
【0062】
(糸吸引部の自動停止)
既に説明したように、各紡糸引取装置2の糸吸引部17には、共通の配管によって圧縮流体が供給されるように構成されている。このため、ある紡糸引取装置2の糸吸引部17の電磁バルブ19が開きっぱなしだと、他の紡糸引取装置2の糸吸引部17に供給される圧縮流体が不十分となり、吸引力不足で糸降ろしが行えなくなるおそれがあった。一方、下階での複数の糸Yの引き渡しが終わるまで、上階のオペレータがその場で待機し、複数の糸Yの引き渡し完了後に電磁バルブ19を閉じるとなると、オペレータの作業効率が悪化する。そこで、本実施形態では、ある紡糸引取装置2において糸降ろし装置16から糸掛けロボット3への複数の糸Yの引き渡しが終わると、自動で電磁バルブ19を閉じるように構成している。以下、詳細について説明する。
【0063】
集中制御装置4は、ある紡糸引取装置2において下階で糸Yの引き渡しを行う際、ロボット制御部45に切断指令を発する。さらに、集中制御装置4は、切断指令を発してから所定時間経過後(例えば3秒後)に、糸Yの引き渡しが完了したことを示す引渡完了信号を引取制御部18に送信する。つまり、本実施形態では、集中制御装置4が本発明の「発信部」として機能する。ロボット制御部45は、切断指令を受けると、カッター44によって複数の糸Yを切断する。また、引取制御部18は、集中制御装置4からの引渡完了信号を受信すると、電磁バルブ19を閉じる。
【0064】
ここで、集中制御装置4は、切断指令を発するのと略同時に引渡完了信号を発信してもよい。しかしそうすると、まだ全ての糸Yがカッター44によって切断されていない、あるいは、サクション43によって吸引保持されていない状態で、電磁バルブ19を閉じてしまい、糸Yの引き渡しに失敗することもあり得る。そこで、本実施形態では、集中制御装置4が切断指令を発してから、すなわち、糸掛けロボット3がカッター44によって複数の糸Yを切断するための動作を開始してから所定時間経過後に、引渡完了信号を発信するようにしている。こうすることで、全ての糸Yの引き渡しが終わっていないのに、電磁バルブ19を閉じてしまうことを確実に回避することができる。
【0065】
(効果)
第1実施形態では、下階での糸Yの引き渡しが終わると、集中制御装置4(発信部)から引渡完了信号が発信され、それを受けて引取制御部18(バルブ制御部)が糸吸引部17の電磁バルブ19(バルブ)を閉じる。つまり、上階のオペレータが下階での糸Yの引き渡しが終わるまでその場で待機していなくても、糸Yの引き渡しが終われば糸吸引部17の電磁バルブ19が自動で閉じられる。したがって、上階のオペレータの作業効率を悪化させることなく、上階の糸吸引部17の電磁バルブ19を速やかに閉じることが可能となる。
【0066】
第1実施形態では、集中制御装置4は、糸掛けロボット3が所定の動作(カッター44によって複数の糸Yを切断するための動作)を実行する際に引渡完了信号を発信する。こうすれば、糸掛けロボット3が所定の動作を実行すれば、集中制御装置4から自動的に引渡完了信号が発信されるので、引渡完了信号を発信し損ねるということがない。したがって、糸吸引部17の電磁バルブ19を確実に閉じることができる。
【0067】
第1実施形態では、集中制御装置4は、糸掛けロボット3がカッター44によって複数の糸Yを切断する際に引渡完了信号を発信する。糸掛けロボット3は、カッター44で切断した複数の糸Yをサクション43で吸引するように構成されている。つまり、カッター44で複数の糸Yを切断するのと略同時又は直後に、下階での糸Yの引き渡しが完了することになる。したがって、上述の構成によれば、糸Yの引き渡しと略同時に引渡完了信号を発信することになるので、より速やかに糸吸引部17の電磁バルブ19を閉めることが可能となる。
【0068】
第1実施形態では、集中制御装置4は、糸掛けロボット3がカッター44によって複数の糸Yを切断するための動作を開始してから所定時間経過後に引渡完了信号を発信する。糸掛けロボット3では、カッター44で複数の糸Yを切断するための動作を開始してから全ての糸Yをサクション43で吸引した状態となるまでに多少の時間を要することがある。そこで、上述のように、引渡完了信号を発信するまでに所定時間待機しておくことで、下階での糸Yの引き渡しが確実に完了してから引渡完了信号を発信することができる。
【0069】
第1実施形態では、集中制御装置4が、本発明の発信部として引渡完了信号を発信する。このように、集中制御装置4を発信部として機能させることで、新たな発信部を設ける必要がない。したがって、コストを抑えることができる。また、集中制御装置4は他の制御装置(引取制御部18やロボット制御部45等)と比べて一般的に高スペックであるので、データ通信をスムーズに行うことができ、その他の装置との連携が取りやすい。
【0070】
第1実施形態では、糸掛けロボット3を呼び出すための操作パネル49(呼出部)が上階に設けられている。このような操作パネル49を上階に設ければ、上階のオペレータは糸降ろしを行った後、糸掛けロボット3を呼び出しさえすればその場を離れることができる。したがって、上階のオペレータの作業効率を向上させることができる。
【0071】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について、図11及び図12を参照しつつ説明する。第2実施形態のうち、第1実施形態と共通する構成及びそれによって奏される効果については説明を省略し、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。図11は、第2実施形態に係る紡糸引取装置2の概略構成図である。図12は、第2実施形態に係る紡糸引取設備1の電気的構成を示すブロック図である。
【0072】
本実施形態における糸降ろし作業は、第1実施形態における糸降ろし作業と基本的に同じである。しかし、本実施形態では、下階における糸掛け作業を糸掛けロボットではなく下階のオペレータが行う点が、第1実施形態と大きく異なる。また、本実施形態の糸吸引部17のバルブの開閉は、第1実施形態のように引取制御部18によって自動で行われるのではなく、上階のオペレータによって手動で行われる。そのため、ある紡糸引取装置2の下階で糸Yの引き渡しが終わったら、そのことを上階のオペレータに報知するための報知部65が上階に設けられている。報知部65は、例えば光や音によって、上階のオペレータに下階での糸Yの引き渡しが終わったことを報知する。
【0073】
本実施形態の紡糸引取装置2には、ガイド操作部61、ゴデットローラ操作部62、支点ガイド操作部63、及び、巻取操作部64が設けられている。これらの操作部61~64は、下階のオペレータが糸掛け作業を行う際に操作されるものであり、本発明の「操作部」に相当する。ガイド操作部61は、糸規制ガイド12を巻取位置と糸掛け位置との間で移動させるための操作部である。ゴデットローラ操作部62は、第2ゴデットローラ14を巻取位置と糸掛け位置との間で移動させるための操作部である。支点ガイド操作部63は、巻取装置15に設けられており、複数の支点ガイド24を巻取位置と糸掛け位置との間で移動させるための操作部である。支点ガイド操作部63は、本発明の「糸掛け操作部」の一例である。巻取操作部64は、巻取装置15に設けられており、ボビンホルダモータ53及びトラバース駆動部54等を駆動させて、巻取装置15に巻取動作を開始させるための操作部である。
【0074】
下階のオペレータは、糸降ろし装置16によって下階に降ろされた複数の糸Yをサクションガンによって受け取ると、まず、糸掛け位置にある糸規制ガイド12に複数の糸Yを掛ける。糸規制ガイド12に複数の糸Yを掛け終わったら、下階のオペレータは、ガイド操作部61を操作して糸規制ガイド12を巻取位置に戻す。続けて、下階のオペレータは、第1ゴデットローラ13及び糸掛け位置にある第2ゴデットローラ14に複数の糸Yを巻き掛け、さらに、糸掛け位置にある複数の支点ガイド24に複数の糸Yを掛ける。複数の支点ガイド24に複数の糸Yを掛け終わったら、下階のオペレータは、ゴデットローラ操作部62を操作して第2ゴデットローラ14を巻取位置に戻すとともに、支点ガイド操作部63を操作して複数の支点ガイド24を巻取位置に戻す。その後、下階のオペレータは、上側のボビンホルダ22よりも下方の所定位置にサクションガンを移動させてから、巻取操作部64を操作して巻取装置15に巻取動作を開始させる。
【0075】
下階のオペレータが糸掛け作業を行う場合、上述のように、その過程でオペレータは操作部61~64を操作することになる。つまり、これらの操作部61~64が操作されたということは、糸降ろし装置16から下階のオペレータに複数の糸Yが既に引き渡されたことを示している。そこで、本実施形態では、操作部61~64の何れかを本発明の「発信部」として機能させ、そこから発信される信号を本発明の「引渡完了信号」として使用している。
【0076】
具体的には、ガイド操作部61を発信部とする場合は、下階のオペレータが糸規制ガイド12を巻取位置に戻すべくガイド操作部61を操作した際に発信される信号が引渡完了信号として使用される。ゴデットローラ操作部62を発信部とする場合は、下階のオペレータが第2ゴデットローラ14を巻取位置に移動させるべくゴデットローラ操作部62を操作した際に発信される信号が引渡完了信号として使用される。支点ガイド操作部63を発信部とする場合は、下階のオペレータが複数の支点ガイド24を巻取位置に移動させるべく支点ガイド操作部63を操作した際に発信される信号が引渡完了信号として使用される。巻取操作部64を発信部とする場合は、下階のオペレータが巻取装置15に巻取動作を開始させるべく巻取操作部64を操作した際に発信される信号が引渡完了信号として使用される。
【0077】
何れの場合も、引取制御部18が引渡完了信号を受信すると、引取制御部18は報知部65を所定の報知状態(光が点滅する状態や音を発する状態等)に切り換えることによって、上階のオペレータに下階で複数の糸Yの引き渡しが終わったことを報知する。そして、上階のオペレータは、報知部65が報知状態であることによって下階での複数の糸Yの引き渡しが終わったことを知り、速やかに糸吸引部17のバルブを閉じることができる。
【0078】
(効果)
第2実施形態では、下階での糸Yの引き渡しが終わると、操作部61~64の何れか(発信部)から引渡完了信号が発信され、そのことが報知部65によって上階のオペレータに報知される。つまり、上階のオペレータが下階での糸Yの引き渡しが終わるまでその場で待機していなくても、糸Yの引き渡しが終われば報知部65が作動することで、糸Yの引き渡しが終わったことをすぐに知ることができる。したがって、上階のオペレータの作業効率を悪化させることなく、上階の糸吸引部17のバルブを速やかに閉じることが可能となる。
【0079】
第2実施形態では、下階のオペレータによって糸掛け作業の際に操作される操作部61~64の何れかが、本発明の発信部として引渡完了信号を発信する。このように、糸掛け作業の際にオペレータが操作する操作部61~64の何れかを発信部として機能させることで、新たな発信部を設ける必要がない。したがって、コストを抑えることができる。
【0080】
第2実施形態において、ガイド操作部61が糸規制ガイド12を移動させるために発信する信号が、引渡完了信号として使用される場合は、下階において最初の糸規制ガイド12に糸Yを掛けるタイミングで引渡完了信号を発信することができる。つまり、下階のオペレータに糸Yが引き渡されてすぐに引渡完了信号を発信することができるので、上階の糸吸引部17のバルブをより速やかに閉じることができる。
【0081】
第2実施形態において、ゴデットローラ操作部62が第2ゴデットローラ14を糸掛け位置から巻取位置に移動させるために発信する信号が、引渡完了信号として使用される場合は、第2ゴデットローラ14に糸Yを掛け終わったタイミングで引渡完了信号を発信することができる。
【0082】
第2実施形態において、下階のオペレータによって操作されたときに支点ガイド操作部63(糸掛け操作部)が発信する信号が、引渡完了信号として使用される場合は、複数の支点ガイド24に糸Yを掛ける際に引渡完了信号を発信することができる。
【0083】
第2実施形態において、支点ガイド操作部63が複数の支点ガイド24を互いに離間させるために発信する信号が、引渡完了信号として使用される場合は、複数の支点ガイド24に糸Yを掛け終わったタイミングで引渡完了信号を発信することができる。なお、下階のオペレータが複数の支点ガイド24を互いに隣接させるために支点ガイド操作部63を操作する場合には、その際に支点ガイド操作部63が発信する信号を、引渡完了信号として使用してもよい。
【0084】
第2実施形態において、巻取操作部64が巻取装置15に巻き取りを開始させるために発信する信号が、引渡完了信号として使用される場合、巻取装置15で糸Yの巻き取りを開始するタイミングで引渡完了信号を発信することができる。
【0085】
[他の実施形態]
上記各実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0086】
上記第1実施形態では、集中制御装置4から引渡完了信号が発信されると、糸吸引部17の電磁バルブ19を自動で閉じるものとした。しかしながら、電磁バルブ19を自動で閉じる代わりに、上階に報知部を設け(操作パネル49を報知部としてもよい)、集中制御装置4から引渡完了信号が発信されると、上階に設けた報知部が作動するようにしてもよい。
【0087】
上記第2実施形態では、下階のオペレータが操作部61~64の何れかを操作して引渡完了信号が発信されると、上階に設けた報知部65が作動するものとした。しかしながら、報知部65を設ける代わりに、下階のオペレータが操作部61~64の何れかを操作すると、糸吸引部17の電磁バルブが自動で閉められるようにしてもよい。
【0088】
上記第1実施形態では、集中制御装置4が本発明の発信部として機能し、上記第2実施形態では、操作部61~64の何れかが本発明の発信部として機能するものとした。しかしながら、集中制御装置4及び操作部61~64以外のものを発信部として機能させるようにしてもよい。例えば、第1実施形態において、糸掛けロボット3(ロボット制御部45)が引渡完了信号を発信するようにしてもよい。この場合、集中制御装置4を省略することが可能となり、糸掛けロボット3が他の制御部(引取制御部18)と直接やり取りすることが可能となる。また、第2実施形態において、糸Yの引き渡しが終わった後に操作される専用の操作部を下階に設け、この操作部が引渡完了信号を発信するようにしてもよい。
【0089】
上記第1実施形態では、糸掛けロボット3がカッター44によって複数の糸Yを切断する際に引渡完了信号が発信されるものとした。しかしながら、糸掛けロボット3が他の動作を行う際に引渡完了信号が発信されるようにしてもよい。
【0090】
上記第1実施形態では、カッター駆動部48によってカッター44そのものが駆動されることで、複数の糸Yが切断されるものとした。しかしながら、例えば特開2012-127011号公報、特開2017-82376号公報、WO2015/198698等に記載のカッターのように、カッターそのものが駆動されるのではなく、カッター以外の部材が駆動されることで、カッターに複数の糸が案内されて切断される構成を採用してもよい。
【0091】
上記第2実施形態では、下階での糸Yの引き渡しが終わったことを報知する報知部65が上階に設置されているものとしたが、報知部65の構成はこれに限定されない。例えば、上階のオペレータが携帯可能な端末装置を報知部として採用してもよい。
【0092】
上記各実施形態では、複数の支点ガイド24が巻取位置と糸掛け位置との間で移動可能に構成した。しかしながら、例えば特開2012-188784号公報、WO2018/134048等に記載されているように、複数の支点ガイドに複数の糸を掛けるための糸掛けガイドを備えた構成を採用してもよい。具体的には、複数の支点ガイドは互いに離間した状態で固定されており、複数の糸が掛けられた状態の糸掛けガイドが移動することによって、各支点ガイドに順番に糸が掛けられていく。この糸掛けガイドは、下階のオペレータによって操作される糸掛け操作部によって駆動される。この場合、糸掛け操作部が糸掛けガイドを移動させるために発信する信号を、引渡完了信号として使用してもよい。
【0093】
上記各実施形態の電気的構成(図3及び図12参照)を変更してもよい。例えば、引取制御部18と巻取制御部26とは必ずしも別に構成される必要はなく、一体的に構成されてもよい。また、ロボット制御部45と操作パネル49とが、互いに信号を直接的に送受信可能に接続されていてもよい。また、集中制御装置4が各紡糸引取装置2の電磁バルブ19や報知部65を直接制御する構成でもよい。
【0094】
上記各実施形態では、糸規制ガイド12がガイド駆動部51によって移動させるものとしたが、糸規制ガイド12を手動で移動させるようにしてもよい。あるいは、糸規制ガイド12が移動しない構成でもよい。これらの場合、第2実施形態のガイド操作部61は不要である。
【0095】
上記各実施形態では、2つのゴデットローラ13、14が設けられるものとしたが、ゴデットローラの数は2つ以外でもよい。また、第2ゴデットローラ14をゴデットローラ駆動部52によって移動させる構成としたが、第2ゴデットローラ14を手動で移動させるようにしてもよい。あるいは、第2ゴデットローラ14が移動しない構成でもよい。これらの場合、第2実施形態のゴデットローラ操作部62は不要である。
【符号の説明】
【0096】
1:紡糸引取設備
2:紡糸引取装置
3:糸掛けロボット
4:集中制御装置(発信部)
12:糸規制ガイド
14:第2ゴデットローラ(ゴデットローラ)
15:巻取装置
16:糸降ろし装置
17:糸吸引部
18:引取制御部(バルブ制御部)
19:電磁バルブ(バルブ)
25:支点ガイド
44:カッター
49:操作パネル(呼出部)
61:ガイド操作部(発信部、操作部)
62:ゴデットローラ操作部(発信部、操作部)
63:支点ガイド操作部(発信部、操作部、糸掛け操作部)
64:巻取操作部(発信部、操作部)
65:報知部
100:紡糸装置
Y:糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12