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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】タグ読取システム
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20230330BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
G06K7/10 276
H04B5/02
G06K7/10 184
G06K7/10 132
G06K7/10 148
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019093168
(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2020187653
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000113665
【氏名又は名称】マスプロ電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横井 浩二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀考
【審査官】松平 英
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-318078(JP,A)
【文献】特開平4-315284(JP,A)
【文献】特開2010-3271(JP,A)
【文献】特開2005-354137(JP,A)
【文献】特開2006-268695(JP,A)
【文献】特開2009-110087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00-7/14
17/00-19/18
H04B 5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を搬送する搬送経路に設定された作業区間内における前記物品の位置を検出するように構成された位置検出部と、
前記作業区間に向けて電波を照射するように構成された指向性可変アンテナと、
前記指向性可変アンテナを介して、前記物品に取り付けられたRFタグから情報を読み取るように構成されたタグ読取部と、
前記位置検出部にて検出された前記物品の位置に応じて、前記指向性可変アンテナのビームの向きを前記搬送経路に沿って変化させると共に、前記ビームの向きが前記作業区間の出入口に近いほど、前記タグ読取部による誤読率が低下するように、前記タグ読取部の送受信条件を変化させるように構成された制御部と、
タグ読取システム。
【請求項2】
請求項1に記載のタグ読取システムであって、
前記送受信条件として、前記タグ読取部が前記指向性可変アンテナに供給する送信電力を少なくとも含む、
タグ読取システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のタグ読取システムであって、
前記送受信条件として、前記指向性可変アンテナからの受信信号に対する前記タグ読取部の受信感度を変化させるパラメータを少なくとも含む、
タグ読取システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のタグ読取システムであって、
前記指向性可変アンテナは、前記作業区間の側方に配置された、
タグ読取システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のタグ読取システムであって、
前記位置検出部は、前記作業区間の出入口となる前記作業区間の両端部にてそれぞれ検出を行う2つの端部センサと、前記作業区間の中央部にて検出を行う中央センサとを備え、
前記制御部は、前記2つの端部センサのうちいずれか一方でのみが反応した場合、前記タグ読取部を作動させると共に、反応したセンサが位置する前記作業区間の出入口の方向に、前記指向性可変アンテナのビームを向け、前記中央センサが反応した場合、前記2つの端部センサでの反応によらず前記作業区間の中央に前記ビームを向けるように制御する
タグ読取システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のタグ読取システムであって、
前記制御部は、前記タグ読取部の作動中に、前記位置検出部によるあらかじめ設定された許容時間以上継続して前記位置検出部での検出結果に変化がない場合、前記タグ読取部を停止させる
タグ読取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、所定の搬送経路に沿って搬送される物品に取り付けられたRFタグを読み取る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を搬送する搬送経路中に設けられたリーダライタを用いて、各物品に添付されたRFタグの情報を読み取るタグ読取システムが知られている。RFは、Radio Frequency の略である。
【0003】
特許文献1には、タグの読取率を向上させるために、指向性の強い複数のアンテナを用い、且つ、アンテナの指向性を上下方向に変化させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-20083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術では、上下方向にビームスキャンをするため、高さ方向については広い範囲に渡って読取可能となるが、搬送方向のビーム幅が狭く、RFタグがビーム内に留まる時間が短いため、読取率を向上させることができなかった。
【0006】
なお、送受信アンテナのビーム幅を、搬送方向に沿って広がるように設定し、個々のRFタグが一つのアンテナのビーム内に留まる時間を長くして、読み取り率を向上させることが考えられる。しかし、この場合、周囲に存在する読取不要なタグを誤って読み取ってしまう可能性が高くなるという問題があった。
【0007】
本開示は、搬送経路に沿って移動する物品に取り付けられたRFタグの読み取り性能を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、タグ読取システムであって、位置検出部と、指向性可変アンテナと、タグ読取部と、制御部とを備えてもよい。位置検出部は、物品を搬送する搬送経路に設定された作業区間内における物品の位置を検出する。指向性可変アンテナは、作業区間に向けて電波を照射する。タグ読取部は、指向性可変アンテナを介して、物品に取り付けられたRFタグから情報を読み取る。制御部は、位置検出部にて検出された物品の位置に応じて、指向性可変アンテナのビームの向きを搬送経路に沿って変化させる。また、制御部は、ビームの向きが作業区間の出入口に近いほど、タグ読取部による誤読率が低下するように、タグ読取部の送受信条件を変化させる。
【0009】
このような構成によれば、作業区間内での物品の位置に応じて指向性可変アンテナのビームの向きを変化させるため、物品に取り付けられたRFタグがビーム内に留まる時間、すなわち、RFタグの読み取りに使用できる時間が長くなる。その結果、タグ読取部によるRFタグの読取率を向上させることができる。
【0010】
また、ビームの向きが作業区間の出入口に近いほど、タグ誤読率が低下するように、タグ読取部の送受信条件を変化させるため、作業区間外に存在するRFタグの情報を誤って読み取ることを抑制できる。
【0011】
本開示の一態様では、送受信条件として、タグ読取部が指向性可変アンテナに供給する送信電力を少なくとも含んでもよい。
この場合、ビームの向きが作業区間の出入口に近いほど、送信電力を小さくすることで、作業区間外への電波の漏洩を抑制できる。
【0012】
本開示の一態様では、送受信条件として、指向性可変アンテナからの受信信号に対するタグ読取部の受信感度を変化させるパラメータを少なくとも含んでもよい。このパラメータには、例えば、受信信号が有効であるか否かを受信レベルで識別する際に用いる受信閾値が含まれてもよい。
この場合、作業区間外に位置するRFタグからの電波が、読み取り可能な強度で受信されることを抑制できる。
【0013】
本開示の一態様では、指向性可変アンテナは、作業区間の側方に配置されてもよい。
この場合、例えば、指向性可変アンテナを、作業区間の上方に配置する場合と比較して、作業区間外への電波の漏洩を、より簡易に抑制できる。例えば、電波の漏洩を抑制するために、電波吸収材を利用する場合、側方からの照射に対しては、その対向する位置に側壁を設けて電波吸収材を配置すればよいが、上方からの照射に対しては、搬送経路の路面に電波吸収材を配置しなければならない。この場合、電波吸収材が配置された路面は、段差が生じる等して使い勝手が悪くなる。
【0014】
本開示の一態様では、位置検出部は、2つの端部センサと、中央センサとを備えてもよい。端部センサは、作業区間の出入口となる作業区間の両端部にてそれぞれ検出を行う。中央センサは、作業区間の中央部にて検出を行う。制御部は、2つの端部センサのうちいずれか一方のみが反応した場合、タグ読取部を作動させると共に、反応したセンサが位置する作業区間の出入口の方向に、指向性可変アンテナのビームを向ける。そして、中央センサが反応した場合、2つの端部センサでの反応によらず作業区間の中央にビームを向けるように制御してもよい。
【0015】
このような構成によれば、タグ読取部によるRFタグの読取率が高い送受信条件での読取時間を長く確保できるため、作業区間全体でのRFタグの読取率を向上させることができる。
【0016】
本開示の一態様では、制御部は、タグ読取部の作動中に、位置検出部によるあらかじめ設定された許容時間以上継続して位置検出部での検出結果に変化がない場合、タグ読取部を停止させてもよい。
【0017】
このような構成によれば、作業区間から物品が正常に退出した後、又は、物品が作業区間内に滞留する等のエラーが発生した状況において、タグ読取部が無駄に作動し続けることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】タグ読取システムの全体構成を示すブロック図である。
図2】ゲート部の構成を示す斜視図である。
図3】リーダライタが実行する読取処理のフローチャートである。
図4】リーダライタが実行する読取処理のフローチャートである。
図5】物品の位置に応じて指向性可変アンテナのビームの向きが変化する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態を図面と共に説明する。
[1.構成]
本実施形態のタグ読取システム1は、物品を搬送する搬送経路に設けられ、搬送される物品に取り付けられたRFタグから識別情報を読み取るためのものである。物品は、台車を用いて作業者によって搬送されてもよいし、ベルトコンベア等の搬送装置によって自動搬送されてもよい。ここでは、RFタグが取り付けられた複数の物品を、台車を用いて一括して搬送する場合について説明する。
【0020】
図1に示すように、タグ読取システム1は、ゲート部2と、リーダライタ3と、表示装置4とを備える。
ゲート部2は、図2に示すように、搬送経路に沿って搬送経路の左右両側に対向配置された第1側壁部21と第2側壁部22とを備え、物品を通過させる領域を制限する。搬送経路において、第1側壁部21と第2側壁部22とに挟まれた区間を作業区間という。
【0021】
第1側壁部21及び第2側壁部22は、例えば、棒状の複数のパイプと、そのパイプを連結するパイプ連結具とを用いて、厚みのある扁平な箱形状の外形を有するように組み立てられた枠体を用いて構成される。
【0022】
第1側壁部21の対向面21aには、アンテナユニット5と、センサユニット6とが取り付けられ、第2側壁部22の対向面22aには、ミラーユニット7が取り付けられる。なお、対向面21a,22aとは、第1側壁部21及び第2側壁部22において互いに対向する面をいう。アンテナユニット5が指向性可変アンテナに相当し、センサユニット6及びミラーユニット7が位置検出部に相当する。
【0023】
アンテナユニット5は、第1側壁部21の高さ方向中央付近に配置される。センサユニット6は、第1側壁部21の下端付近において、少なくとも台車8の車輪軸より高い位置に配置される。ミラーユニット7は、第2側壁部22において、第1側壁部21のセンサユニット6と対向する位置に配置される。
【0024】
第1側壁部21においてアンテナユニット5及びセンサユニット6が取り付けられた部位以外の対向面21a、及び第2側壁部22においてミラーユニット7が取り付けられた部位以外の対向面22aは、いずれも電波吸収材で覆われる。
【0025】
アンテナユニット5は、一列に配置された複数のアンテナ素子を有し、リーダライタ3からの制御信号に従って、各アンテナ素子への給電位相を変化させることで、放射されるビームの向きが変化する指向性可変アンテナが用いられる。アンテナユニット5のビームは、高さ方向には大きな広がりを有し、水平方向には絞られた形状を有する。そして、ビームは、水平方向、すなわち、搬送経路に沿った方向に向きが変化するように第1側壁部21に取り付けられる。
【0026】
なお、制御信号によって制御可能なビームの向きは、正面方向、第1端方向、第2端方向の3方向である。なお、ビームの向きが正面方向である場合、作業区間において搬送方向に沿った中心付近に電波が放射される。ビームの向きが第1端方向である場合、作業区間の出入口となる両端部のうちの一方に向けて電波が放射される。ビームの向きが第2端方向である場合、作業区間の出入口となる両端部のうちの他方に向けて電波が放射される。図2において、ゲート部2の手前側に向いた方向が第1端方向、ゲート部2の奥側に向いた方向が第2端方向とする。
【0027】
また、リーダライタ3の送受信条件には、アンテナユニット5に供給する送信電力と、アンテナユニット5からの受信信号が有効であるか否かを受信レベルで識別する際に用いる受信閾値とのうち少なくとも一方が含まれ、通常設定と、抑制設定との2段階がある。通常設定での送信電力及び受信閾値を基準として、抑制設定では、送信電力が通常設定より小さく、受信閾値が通常設定より大きくなる。なお、受信閾値の代わりに、受信感度を変化させる他のパラメータを用いてもよい。
【0028】
制御信号は、複数の信号レベルを有する直流信号であり、各信号レベルに、ビームの向きと送受信条件との組み合わせが対応づけられる。ここでは、第1端方向かつ抑制設定と、第2端方向かつ抑制設定と、中央方向かつ通常設定とが用いられるため、制御信号は3つの信号レベルを有する。また、制御信号は、アンテナユニット5とリーダライタ3との間で、送受信される高周波信号を伝送する信号線と同じ信号線を用いて伝送される。但し、高周波信号と制御信号とは、異なる信号線を用いて個別に伝送してもよい。
【0029】
なお、ビームの向き、水平方向のビーム幅(すなわち、半値角)、送受信条件における送信電力及び受信閾値は、次の二つの場合のいずれについても、作業区間外に位置するRFタグからの読取率である誤読率が予め設定された許容値以下となるように設定される。すなわち、ビームの向きが正面方向かつ送受信条件が通常設定である場合、及びビームの向きが第1端方向又は第2端方向かつ送受信条件が抑制設定である場合である。
【0030】
センサユニット6は、一列に配置された3つのセンサ61~63を有する。中心に位置するセンサ(以下、中央センサ)62は、作業区間の中心に位置するように配置される。中央センサ62の両側に位置する2つのセンサ(以下、端部センサ)61,63は、作業区間の出入口において、外部区間と境界にそれぞれ配置される。また、ミラーユニット7は、端部センサ61,63と対向する位置に配置された二つのミラー71,73を備える。
【0031】
中央センサ62は、赤外線、超音波、又は可視光等を照射し、反射の強弱によって物体を検知するセンサが用いられる。端部センサ61,63は、可視光又は赤外線(以下、光線)を照射し、正面に配置されたミラーユニット7のミラー71,73からの反射光を受光したか否かによって、物体を検知するミラー反射型センサが用いられる。
【0032】
つまり、端部センサ61,63は、光線の往復経路を遮る位置に存在する物品、すなわち、作業区間に進入した物品、又は作業区間から退出する物品を精度良く検知する。中央センサ62は、正面方向を中心としたより広い範囲に存在する物体を検知する。但し、中央センサ62の検知範囲は、端部センサ61,63による検知範囲を含むことがないように設定される。
【0033】
表示装置4は、リーダライタ3による処理結果等を表示するためのものであり、液晶ディスプレイ等が用いられる。
リーダライタ3は、CPU、ROM、RAM等を含むマイクロコンピュータにて構成される。また、リーダライタ3は、複数のIOポートを備えており、アンテナユニット5,センサユニット6及び表示装置4の制御、及び外部装置にとの通信等に用いられる。
【0034】
リーダライタ3は、タグ読取処理と、メイン処理とを少なくとも実行する。タグ読取処理は、アンテナユニット5での受信信号からRFタグの情報を抽出するリーダライタ本来の処理であり、既存の処理であるため、ここでの説明は省略する。メイン処理は、センサユニット6からの検出信号に従って、アンテナユニット5の制御とタグ読取処理を起動、停止する制御とを実施する。なお、タグ読取処理がタグ読取部に相当し、メイン処理が制御部に相当する。
【0035】
リーダライタ3のRAMには、作業区間を物品群が通過するに従って、センサユニット6に属する各センサ61~63がどのように反応したかを示す通過履歴を記憶する領域が少なくとも用意される。この通過履歴は、一つの物品群による作業区間の通過が完了する毎に削除される。
【0036】
[2.処理]
リーダライタ3が実行するメイン処理を、図3及び図4のフローチャートを用いて説明する。
【0037】
メイン処理は、センサユニット6にて何れかのセンサ61~63が反応した場合に、処理を開始する。但し、リーダライタ3の起動時に、アンテナユニット5は、送受信を実行しないオフ状態に、タグ読取処理は停止状態に初期化される。
【0038】
メイン処理が開始されると、S110では、リーダライタ3は、センサユニット6において反応したセンサが端部センサ61,63のいずれかであるか否かを判定する。S110にて、肯定判定された場合、処理はS120に移行され、否定判定された場合、処理はS160に移行される。以下では、端部センサ61,63のうち、本ステップにて反応したと判定された端部センサを入口センサ、他方の端部センサを出口センサという。
【0039】
S120では、リーダライタ3は、通過履歴が記録されているか否かを判定し、肯定判定した場合は処理をS150に移行し、否定判定した場合は処理をS130に移行する。つまり、S120での肯定判定は、他の物品群が既に作業区間に進入していることを意味し、S120での否定判定は、新たな物品群が作業区間に進入したことを意味する。
【0040】
S130では、リーダライタ3は、アンテナの指向性を、入口センサの方向に向け、送受信条件を抑制設定にすると共に、タグ読取処理を起動することによってRFタグの読み取りを開始する。
【0041】
続くS140では、リーダライタ3は、通過履歴として入口センサを記憶して、処理をS160に進める。
S150では、リーダライタ3は、通過履歴を確認することで、エラー判定を実行して、処理をS310に進める。このエラー判定では、入口センサが反応した物品群は不正進入であるか否かを判定する。具体的には、通過履歴に、今回反応した端部センサとは異なる端部センサと中央センサとが既に記憶されている場合は、現在読み取り中のセンサの移動による検出であるとして、エラーではないと判定される。通過履歴に、今回反応した端部センサのみが既に記憶されている場合は、現在、読取中であるにも関わらず新たな物品群が不正進入したことによるエラーであると判定される。通過履歴に今回反応した端部センサとは異なる端部センサのみが既に記憶されている場合は、読取中の物品群が何らかの理由で中央センサ62をすり抜けたことによるエラー、或いは中央センサ62の故障によるエラーであると判定される。
【0042】
S160では、リーダライタ3は、センサユニット6において、中央センサ62が反応したか否かを判定し、肯定判定された場合は処理をS180に移行し、否定判定された場合は、処理をS170に移行する。先のS110にて肯定判定された場合は、作業区間での物品群の移動状況に応じて、物品群が中央センサ62の検知エリアに達していれば肯定判定され、達していなければ否定判定される。
【0043】
S170では、リーダライタ3は、入口センサが反応してから予め設定された許容時間が経過したか否かを判定し、肯定判定した場合は処理をS190に移行し、否定判定した場合は、処理をS160に戻す。
【0044】
S180では、リーダライタ3は、入口センサの通過履歴があるか否かを判定し、肯定判定した場合は処理をS200に移行し、否定判定した場合は処理をS190に移行する。つまり、S180での肯定判定は、物品群が入口センサから中央センサ62の検知範囲まで移動してきたことを意味し、S180での否定判定は、端部センサ61,63が反応することなく、いきなり中央センサ62が反応したことを意味する。
【0045】
S190では、リーダライタ3は、通過履歴を確認することで、エラー判定を実行し、処理をS310に進める。エラー判定では、具体的には、以下の判定が行われる。S170にて肯定判定されることで本ステップに移行した場合は、通過履歴には入口センサのみが記録される。この場合、作業区間に進入した物品群が中央センサ62の検知範囲の前で滞留している、或いは、中央センサ62が故障していると判定される。また、S180にて否定判定されることで本ステップに移行した場合、物品群が、何等かの理由で端部センサ61,63をすり抜けた、或いは、端部センサ61,63が故障していると判定される。
【0046】
S200では、リーダライタ3は、タグ読取処理によるRFタグの読み取りを継続したまま、アンテナの指向性を中央方向に切り替えると共に、送受信条件を通常設定に切り替える。
【0047】
続くS210では、リーダライタ3は、通過履歴に中央センサ62を追加する。
続くS220では、リーダライタ3は、センサユニット6において、出口センサが反応したか否かを判定し、肯定判定された場合は処理をS250に移行し、否定判定された場合は、処理をS230に移行する。
【0048】
S230では、リーダライタ3は、中央センサ62が反応してから予め設定された許容時間が経過したか否かを判定し、肯定判定した場合は処理をS240に移行し、否定判定した場合は、処理をS220に戻す。本ステップで用いる許容時間は、先のS170で用いる許容時間と同じ長さでもよいし、異なる長さでもよい。
【0049】
S240では、リーダライタ3は、通過履歴を確認することで、エラー判定を実行し、処理をS310に進める。エラー判定では、具体的には、以下の判定が行われる。すなわち、この場合、通過履歴には入口センサ及び中央センサ62が記録されるため、作業区間に進入した物品群が中央センサ62の検知範囲内又は出口センサの検知範囲の前で滞留している、或いは、出口センサが故障していると判定される。
【0050】
S250では、リーダライタ3は、中央センサ62が反応しているか否かを判定し、肯定判定した場合は、本ステップを繰り返すことで待機し、否定判定した場合は、処理をS260に移行する。なお、S250での肯定判定は、出口センサが反応しているにも関わらず、中央センサ62も反応している状態であり、搬送経路に沿って長い物品群が作業区間を通過中であることを意味する。また、S250での否定判定は、作業区間に進入した物品群が、異常が検出されることなく、出口センサの検知範囲まで到達したことを意味する。
【0051】
S260では、リーダライタ3は、タグ読取処理によるRFタグの読み取りを継続したまま、アンテナの指向性を出口センサの方向に切り替えると共に、送受信条件を抑制設定に切り替える。
【0052】
続くS270では、リーダライタ3は、通過履歴に出口センサを追加する。
続くS280では、リーダライタ3は、通過履歴の内容から物品群の通過方向を検出する。
【0053】
続くS290では、リーダライタ3は、出口センサが反応しているか否かを判定し、肯定判定した場合は、本ステップを繰り返すことで待機し、否定判定した場合は処理をS300に移行する。なお、S290での肯定判定は、物品群の一部が作業区間に残っていること、つまり、物品群による作業区間の通過が未完了であることを意味し、S290での否定判定は、物品群による作業区間の通過が完了したことを意味する。
【0054】
S300では、リーダライタ3は、アンテナユニット5による送受信をオフすると共に、タグ読取処理を停止することによってRFタグの読み取りを終了する。更に、リーダライタ3は、RFタグの読取結果を表示させて、処理をS320に進める。なお、タグ読取処理での読取結果には、タグ読取数及び物品群の通過方向が含まれる。通過方向は、例えば、出荷であるか入荷であるかを識別する情報として用いることができる。
【0055】
S310では、リーダライタ3は、何らかのエラーが検出されたものとして、アンテナユニット5による送受信をオフすると共に、タグ読取処理を停止することによってRFタグの読み取りを終了する。更に、リーダライタ3は、検出されたエラーの種類等を表示装置4に表示させて、処理をS320に進める。
【0056】
S320では、リーダライタ3は、外部装置に処理結果を出力する。
続くS330では、リーダライタ3は、通過履歴を削除して、処理を終了する。
[3.動作]
タグ読取システム1では、図5(a)に示すように、RFタグが貼付された物品群を搭載する台車8が、端部センサ61側からゲート部2(すなわち、作業区間)に進入すると、端部センサ61が反応する。この場合、端部センサ61が入口センサ、端部センサ63が出口センサとなる。そして、アンテナユニット5のビームBの向きが、端部センサ61が配置された作業区間の出入口を向く方向に設定されると共に、送受信条件が抑制設定に設定され、リーダライタ3によるRFタグの読み取りが開始される。
【0057】
台車8が作業区間を進み、中央センサ62の検知範囲に到達すると、図5(b)に示すように、リーダライタ3によるRFタグの読み取りが継続されたまま、ビームBの向きが正面方向、送受信条件が通常設定に切り替わる。
【0058】
台車8が作業区間を更に進み、ここでの出口センサである端部センサ63が反応する位置まで到達しても、中央センサ62が反応している間は、ビームBの向き、及び送受信条件の設定は保持される。
【0059】
台車8が作業区間を更に進み、中央センサ62の検知範囲から外れる位置まで到達すると、図5(c)に示すように、リーダライタ3によるRFタグの読み取りが継続されたまま、ビームBの向きが、端部センサ63が配置された作業区間の出入口を向く方向に切り替わると共に、送受信条件が抑制設定に切り替わる。
【0060】
その後、台車8が作業区間の退出し、端部センサ63の検知範囲から外れる位置に到達すると、アンテナユニット5による送受信がオフされ、リーダライタ3によるRFタグの読み取りも停止される。
【0061】
[4.効果]
以上説明した本実施形態では、以下の効果を奏する。
(a)タグ読取システム1では、作業区間内での台車8及び台車8に搭載された物品群の位置を検知し、台車8の移動に応じて変化する検知結果に従ってビームの向きを追従させる。このため、物品群に属する各物品に貼付されたRFタグがアンテナユニット5のビーム内に留まる時間、すなわち、RFタグの読み取りに使用できる時間が長くなるため、リーダライタ3によるRFタグの読取率を向上させることができる。
【0062】
(b)タグ読取システム1では、ビームの向きが作業区間の出入口の方向に向いているときには、送受信条件を抑制設定とすることで、リーダライタ3によるRFタグの誤読率を低下させている。このため、作業区間外に存在するRFタグの情報を誤って読み取ることを抑制できる。
【0063】
(c)タグ読取システム1では、センサユニット6に属する各センサ61~63での検知結果を通過履歴として記憶するため、この通過履歴から作業区間における物品群の通過方向を検出できるだけでなく、エラー発生時にはエラーの種類を判定できる。
【0064】
[5.他の実施形態]
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内にて種々の態様をとることができる。
【0065】
(a)上記実施形態では、センサユニット6は、3個のセンサ61~63を用いて物品群の位置を検出し、その検出結果に従って、アンテナユニット5は、ビームの向きを3方向に制御しているが、これらに限定されるものではない。センサユニット6が有するセンサは、2個又は4個以上あってもよい。また、アンテナユニット5が制御するビームの向きは、2方向又は4方向以上であってもよい。
【0066】
(b)上記実施形態では、センサユニット6及びミラーユニット7は、第1側壁部21及び第2側壁部22の下端付近に配置されているが、これに限定されるものではなく、通過する物品群の位置を検出できる位置であればよい。また、第1側壁部21及び第2側壁部22は、センサユニット6及びミラーユニット7の位置や向きを任意に変更できるような構造を有していてもよい。また、使用するセンサのタイプにもよるが、センサユニット6は、第1側壁部21及び第2側壁部22の上部を覆う天壁部、又は下部を覆う床面部に配置されてもよい。
【0067】
(c)上記実施形態では、センサユニット6は、端部センサ61,63と、中央センサ62とで、異なるセンサを用いているが、すべて同じタイプのセンサを用いてもよい。また、使用するセンサの種類も特に限定されるものではない。
【0068】
(d)上記実施形態では、端部センサ61,63が作業区間に進入した物品群、及び作業区間から退出する物品群を検出するように配置されているが、例えば、作業区間に進入する直前、及び作業区間から退出した直後の物品群を検出するように配置されてもよい。
【0069】
(e)上記実施形態では、出口センサが反応した後、その反応が消えた時点でRFタグの読み取りを終了するが、例えば、出口センサが反応した後、所定時間を経過した時点でRFタグの読み取りを終了してもよい。
【0070】
(f)上記実施形態では、アンテナユニット5は、搬送経路の側方からビームを照射するように配置されるが、第1側壁部21及び第2側壁部22の上端に天壁部を設け、天壁部から下方に向けて照射を行うように配置されてもよい。この場合、搬送経路の床面からの反射を抑制するために、床面を電波吸収体で覆ってもよい。また、第1側壁部21及び第2側壁部22は、アンテナユニット5の位置や向きを任意に変更できるような構造を有していてもよい。この場合、アンテナユニット5は、例えば、第1側壁部21の上端付近から斜め下方向に向けて照射を行うように配置されてもよい。
【0071】
(g)上記実施形態では、ゲート部2にアンテナユニット5が一つだけ設けられるが、高さが異なる位置に複数のアンテナユニット5を設けてもよい。この場合、リーダライタ3は、複数のアンテナユニット5からの信号を時分割で個別に処理してもよい。
【0072】
(h)RFタグが貼付された複数の物品が一つの収納箱に収められ、その収納箱にもタグやバーコードが貼付されている場合は、ゲート部2の出入口の外側に、収納箱に貼付されたタグやバーコードから情報を読み取るリーダが設けられてもよい。この場合、一つの収納箱がゲート部2を通過するまでの間、他の収納箱によるゲート部2への進入を阻止する制御等を実現できる。
【符号の説明】
【0073】
1…タグ読取システム、2…ゲート部、3…リーダライタ、4…表示装置、5…アンテナユニット、6…センサユニット、7…ミラーユニット、8…台車、21…第1側壁部、22…第2側壁部、21a,22a…対向面、61,63…端部センサ、62…中央センサ、71,73…ミラー。
図1
図2
図3
図4
図5