(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】部品実装装置およびその実装ヘッド
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
H05K13/04 A
(21)【出願番号】P 2019104287
(22)【出願日】2019-06-04
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 和広
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-073474(JP,A)
【文献】特開2001-003882(JP,A)
【文献】特開2007-294825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並んで配置され、部品を吸着して基板に実装する複数のノズルを含む実装ヘッドを備え、
前記実装ヘッドは、
前記複数のノズルの各々の中心軸線回りの周方向に回転するとともに昇降する
移動部と、前記中心軸線の延びる方向と直交するシャフト側対向面
とを有するノズルシャフトと、
前記移動部に取り付けられて前記複数のノズルの各々を保持し、前記中心軸線の延びる方向において前記シャフト側対向面に対向する保持側対向面を有するノズル保持部材と
を含み、
前記保持側対向面および前記シャフト側対向面の少なくとも一方には、前記周方向に沿って断続的に配置されて前記中心軸線の延びる方向に窪み、潤滑剤を保持する複数の凹部が形成されている、部品実装装置。
【請求項2】
前記凹部は、
前記シャフト側対向面に対して相対的に
前記移動部とともに前記ノズル保持部材の前記保持側対向面が回転した際に、前記保持側対向面と前記シャフト側対向面との間に、前記凹部に保持した前記潤滑剤が進入されることにより発生される浮上力によって、前記保持側対向面を前記シャフト側対向面に対して相対的に浮上させて離間させるように構成されている、請求項1に記載の部品実装装置。
【請求項3】
前記実装ヘッドは、
前記ノズルシャフトが取り付けられるハウジングと、
前記ノズルシャフト
の前記移動部を上昇方向に付勢し、前記ノズルシャフト
の前記移動部を上端位置に位置決めする付勢部材とをさらに含み、
前記ノズルシャフトは、
前記ハウジングに固定され、前記シャフト側対向面が設けられた固定部と、
前記周方向
に回転および前記中心軸線の延びる方向に
昇降可能に前記固定部に配置される
前記移動部とをさらに有し、
前記凹部は、前記付勢部材により前記ノズルシャフト
の前記移動部が前記上端位置に位置した状態において、
前記固定部に設けられた前記シャフト側対向面に対して相対的に
前記移動部とともに前記ノズル保持部材の前記保持側対向面が回転した際に、前記固定部に設けられた前記シャフト側対向面に対して前記保持側対向面を浮上させて離間させるように構成されている、請求項2に記載の部品実装装置。
【請求項4】
前記保持側対向面と前記シャフト側対向面との間の前記凹部以外の領域には、前記シャフト側対向面と前記保持側対向面とを離間させることにより、前記潤滑剤を含む潤滑膜が形成されている、請求項2または3に記載の部品実装装置。
【請求項5】
前記実装ヘッドは、
前記ノズルシャフトを介して前記ノズル保持部材に保持された前記複数のノズルのうちの所望のノズルを選択的に上下移動させるノズル押圧部材と、
前記所望のノズルを前記周方向に回転させるとともに、前記所望のノズル以外の他のノズルも前記所望のノズルの回転に伴って前記周方向に回転させる回転機構とをさらに含み、
前記潤滑膜は、前記他のノズルが保持された前記ノズル保持部材の前記保持側対向面と、前記他のノズルが取り付けられた前記ノズルシャフトの前記シャフト側対向面との間に形成されている、請求項4に記載の部品実装装置。
【請求項6】
前記保持側対向面および前記シャフト側対向面の少なくとも一方に形成された前記凹部は、前記中心軸線の延びる方向に沿って延びる中心線に対して線対称な形状を有している、請求項1~5のいずれか1項に記載の部品実装装置。
【請求項7】
前記凹部は、半球形状に形成され、前記周方向に間隔を隔てて周状に配置された複数の半球形状部を有し、
前記複数の半球形状部は、前記中心軸線の延びる方向から視て前記中心軸線の延びる方向に直交する径方向に間隔を隔てて放射状にも配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の部品実装装置。
【請求項8】
前記複数の半球形状部の各々の直径は、前記径方向の外側に向かうにしたがって大きくなるように形成されている、請求項7に記載の部品実装装置。
【請求項9】
前記凹部は、前記周方向に間隔を隔てて複数配置され、
複数の前記凹部は、前記周方向に間隔を隔てて配置された複数の溝部を有し、
前記複数の溝部は、前記中心軸線の延びる方向から視て、前記複数の溝部の各々が前記中心軸線の延びる方向に直交する径方向に延びることによって放射状に配置されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の部品実装装置。
【請求項10】
前記複数の溝部の各々の前記周方向の幅は、前記径方向の外側に向かうにしたがって大きく形成されている、請求項9に記載の部品実装装置。
【請求項11】
前記保持側対向面および前記シャフト側対向面の少なくとも一方には、
前記周方向に沿って延びて前記複数の凹部同士を互いに接続し、前記中心軸線の延びる方向に向かって窪む接続溝が形成され、
前記中心軸線の延びる方向において、前記凹部の深さは、前記接続溝の深さよりも大きい、請求項1~10のいずれか1項に記載の部品実装装置。
【請求項12】
並んで配置され、部品を吸着して基板に実装する複数のノズルと、
前記複数のノズルの各々の中心軸線回りの周方向に回転するとともに昇降
する移動部と、前記中心軸線の延びる方向と直交するシャフト側対向面
とを有するノズルシャフトと、
前記
移動部に取り付けられて前記複数のノズルの各々を保持し、前記中心軸線の延びる方向において前記シャフト側対向面に対向する保持側対向面を有するノズル保持部材とを備え、
前記保持側対向面および前記シャフト側対向面の少なくとも一方には、前記周方向に沿って断続的に配置されて前記中心軸線の延びる方向に窪み、潤滑剤を保持する複数の凹部が形成されている、実装ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部品実装装置およびその実装ヘッドに関し、特に、並んで配置され、部品を吸着して基板に実装する複数のノズルを備える部品実装装置およびその実装ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、並んで配置され、部品を吸着して基板に実装する複数のノズルを備える部品実装装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、並んで配置され、部品を吸着して基板に実装する複数の吸着ノズル(ノズル)を備える表面実装機(部品実装装置)が開示されている。この表面実装機は、複数の吸着ノズルが配置される実装シャフト装置を備えている。
【0004】
上記特許文献1の実装シャフト装置は、スプラインシャフトと、ノズル保持部材とを含んでいる。スプラインシャフトは、スプラインシャフトの軸線回りの回転動作、および、軸線に沿った直動動作の両方を動作可能に構成されている。ノズル保持部材は、スプラインシャフトの先端に取り付けられている。ノズル保持部材は、複数のノズルのうちの1つを保持している。
【0005】
上記特許文献1の実装シャフト装置は、スプラインシャフトの軸線の延びる方向に対向するシャフト側対向面および保持側対向面を有している。シャフト側対向面は、スプラインシャフトに設けられる。保持側対向面は、ノズル保持部材に設けられている。
【0006】
上記特許文献1の実装シャフト装置では、スプラインシャフトを軸線の延びる方向の上側の端部まで移動させた際、シャフト側対向面と保持側対向面とが近接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、シャフト側対向面および保持側対向面の各々には、スプラインシャフトを軸線の延びる方向の上側の端部まで移動させた状態でスプラインシャフトの軸線回りの回転した場合にシャフト側対向面と保持側対向面との接触面に生じる抵抗を低減するために潤滑剤が塗布されていると考えられる。
【0009】
しかしながら、スプラインシャフトは付勢部材により上方に付勢されており、シャフト側対向面および保持側対向面の各々に塗布された潤滑剤は、シャフト側対向面と保持側対向面とに挟まれて圧縮される。これに起因して、潤滑剤は、シャフト側対向面と保持側対向面との間の部分の外側に逃げる。したがって、この状態でスプラインシャフトを軸線回りに回転させると、シャフト側対向面と保持側対向面との間に十分な厚さの潤滑膜が形成されていないので、シャフト側対向面と保持側対向面との間に上記付勢による力に比例して大きな抵抗が生じたままスプラインシャフトが回転するという不都合がある。このため、上記のような構成を有する従来の部品実装装置では、シャフト側対向面と保持側対向面とを近接させた状態でスプラインシャフト(ノズルシャフト)を回転させた際に、シャフト側対向面と保持側対向面との間の抵抗を十分に低減することが望まれている。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、シャフト側対向面と保持側対向面との間の抵抗を十分に低減することが可能な部品実装装置およびその実装ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本願発明者が鋭意検討した結果、保持側対向面およびシャフト側対向面の少なくとも一方に潤滑剤を保持する複数の凹部を設けることによって、保持側対向面とシャフト側対向面との間の抵抗を十分に低減できることを見い出した。すなわち、この発明の第1の局面による部品実装装置は、並んで配置され、部品を吸着して基板に実装する複数のノズルを含む実装ヘッドを備え、実装ヘッドは、複数のノズルの各々の中心軸線回りの周方向に回転するとともに昇降する移動部と、中心軸線の延びる方向と直交するシャフト側対向面とを有するノズルシャフトと、移動部に取り付けられて複数のノズルの各々を保持し、中心軸線の延びる方向においてシャフト側対向面に対向する保持側対向面を有するノズル保持部材とを含み、保持側対向面およびシャフト側対向面の少なくとも一方には、周方向に沿って断続的に配置されて中心軸線の延びる方向に窪み、潤滑剤を保持する複数の凹部が形成されている。
【0012】
この発明の第1の局面による部品実装装置では、上記のように、保持側対向面およびシャフト側対向面の少なくとも一方に、周方向に沿って断続的に配置されて中心軸線の延びる方向に窪み、潤滑剤を保持する複数の凹部を形成する。これにより、シャフト側対向面と保持側対向面とに挟まれて圧縮されることにより、潤滑剤がシャフト側対向面と保持側対向面との間の外側に逃げたとしても、ノズルシャフトの周方向への回転の際、複数の凹部に保持された潤滑剤が凹部以外の領域に進入することにより生じる浮上力によって、シャフト側対向面と保持側対向面との間隔が広げられるので、圧縮状態が緩和されることにより逃げた潤滑剤を内側に戻すことができるという知見を得た。その結果、シャフト側対向面と保持側対向面とを近接させた状態でノズルシャフトを回転させた際、シャフト側対向面と保持側対向面との間に十分な厚さの潤滑膜が形成されるので、シャフト側対向面と保持側対向面との間の抵抗を十分に低減することができる。ここで、浮上力は、凹部から凹部以外の領域に潤滑剤が進入する際、進入した潤滑剤が圧縮されて高圧の潤滑剤になり、凹部の縁が高圧の潤滑剤によりテーパ形状に変形すると考えられることにより、より多くの潤滑剤が凹部以外の領域に進入する結果生じる(くさび効果)と考えられる。なお、浮上力は、シャフト側対向面と保持側対向面とを離間するように作用すると考えられる。また、シャフト側対向面と保持側対向面との間に十分な厚さの潤滑膜が形成されることにより、シャフト側対向面と保持側対向面との接触を抑制することができるので、シャフト側対向面と保持側対向面との接触により発生する粉塵の量を減少させることができる。また、シャフト側対向面と保持側対向面との間に十分な厚さの潤滑膜が形成されることにより、シャフト側対向面および保持側対向面の各々の摩耗を減少させることができるので、シャフト側対向面および保持側対向面の表面粗さの増加を抑制することができる。その結果、シャフト側対向面と保持側対向面とを近接させた状態でノズルシャフトを回転させた際、ノズルシャフトが振動することを抑制することができるので、振動に起因してノズルから部品が落下することによる実装品質の低下を抑制することができる。
【0013】
この発明の第1の局面による部品実装装置において、好ましくは、凹部は、シャフト側対向面に対して相対的に移動部とともにノズル保持部材の保持側対向面が回転した際に、保持側対向面とシャフト側対向面との間に、凹部に保持した潤滑剤が進入されることにより発生される浮上力によって、保持側対向面をシャフト側対向面に対して相対的に浮上させて離間させるように構成されている。このように構成すれば、シャフト側対向面と保持側対向面とに挟まれることにより、シャフト側対向面と保持側対向面との間の外側に逃げたとしても、ノズルシャフトの周方向への回転の際に生じる浮上力により、シャフト側対向面と保持側対向面とを相対的に浮上させて離間させることによって、シャフト側対向面と保持側対向面との間隔を十分に確保することができる。その結果、シャフト側対向面と保持側対向面との間の外側に逃げた潤滑剤を内側に戻すことができるので、シャフト側対向面と保持側対向面とを近接させた状態でノズルシャフトを回転させた際、シャフト側対向面と保持側対向面との間に十分な厚さの潤滑膜が形成されるので、シャフト側対向面と保持側対向面との間の抵抗を十分に低減することができる。
【0014】
この場合、好ましくは、実装ヘッドは、ノズルシャフトが取り付けられるハウジングと、ノズルシャフトの移動部を上昇方向に付勢し、ノズルシャフトの移動部を上端位置に位置決めする付勢部材とをさらに含み、ノズルシャフトは、ハウジングに固定され、シャフト側対向面が設けられた固定部と、周方向に回転および中心軸線の延びる方向に昇降可能に固定部に配置される移動部とをさらに有し、凹部は、付勢部材によりノズルシャフトの移動部が上端位置に位置した状態において、固定部に設けられたシャフト側対向面に対して相対的に移動部とともにノズル保持部材の保持側対向面が回転した際に、固定部に設けられたシャフト側対向面に対して保持側対向面を浮上させて離間させるように構成されている。このように構成すれば、ハウジングに固定された固定部に対する移動部の相対的な周方向および中心軸線の延びる方向への移動を利用して、凹部により保持側対向面をシャフト側対向面に対して浮上させて離間させることができるので、簡易な構造により保持側対向面をシャフト側対向面に対して浮上させることができる。また、シャフト側対向面と保持側対向面との間に十分な厚さの潤滑膜が形成されることにより、シャフト側対向面と保持側対向面との間の抵抗を十分に低減することができるつまり、ノズルシャフトを上端位置に位置させた状態で回転させたとしても、シャフト側対向面と保持側対向面との間にノズルシャフトを付勢する力に比例した大きな抵抗が生じない。したがって、付勢部材の付勢力を増加させることができる。その結果、移動部の中心軸線の延びる方向への移動をより速くすることができるので、実装作業時間を短縮することができる。
【0015】
上記浮上力により保持側対向面をシャフト側対向面に対して相対的に浮上させて離間させるように構成された部品実装装置において、好ましくは、保持側対向面とシャフト側対向面との間の凹部以外の領域には、シャフト側対向面と保持側対向面とを離間させることにより、潤滑剤を含む潤滑膜が形成されている。このように構成すれば、シャフト側対向面と保持側対向面とを離間させることにより、シャフト側対向面と保持側対向面との間の外側に逃げた潤滑剤を充填させて潤滑膜を形成することができるので、ノズルシャフトの回転の際に生じる抵抗を低減することができる。その結果、ノズルシャフトを回転させるための駆動源の発熱の低減を図ることができるとともに、抵抗を低減するために玉軸受けを設ける場合と比較して実装ヘッドの小型化を図り、かつ、同じ駆動源により回転可能なノズルシャフトの数の増加および同じ駆動源によるノズルシャフトの回転の高速化を図ることができる。
【0016】
この場合、好ましくは、実装ヘッドは、ノズルシャフトを介してノズル保持部材に保持された複数のノズルのうちの所望のノズルを選択的に上下移動させるノズル押圧部材と、所望のノズルを周方向に回転させるとともに、所望のノズル以外の他のノズルも所望のノズルの回転に伴って周方向に回転させる回転機構とをさらに含み、潤滑膜は、他のノズルが保持されたノズル保持部材の保持側対向面と、他のノズルが取り付けられたノズルシャフトのシャフト側対向面との間に形成されている。このように構成すれば、所望のノズル以外の他のノズルにおいて生じるノズルシャフトの回転の際に生じる抵抗を低減することができるので、回転機構の負荷を軽減することができる。
【0017】
上記第1の局面による部品実装装置において、好ましくは、保持側対向面およびシャフト側対向面の少なくとも一方に形成された凹部は、中心軸線の延びる方向に沿って延びる中心線に対して線対称な形状を有している。このように構成すれば、ノズルシャフトのいずれの方向の回転においても同様の浮上力を発生させることができるので、シャフト側対向面と保持側対向面との間の抵抗を安定して十分に低減することができる。
【0018】
上記第1の局面による部品実装装置において、好ましくは、凹部は、半球形状に形成され、周方向に間隔を隔てて周状に配置された複数の半球形状部を有し、複数の半球形状部は、中心軸線の延びる方向から視て中心軸線の延びる方向に直交する径方向に間隔を隔てて放射状にも配置されている。このように構成すれば、複数の半球形状部が周状および放射状に全体にわたって分散して形成されているので、浮上力の偏りを抑制することができる。
【0019】
この場合、好ましくは、複数の半球形状部の各々の直径は、径方向の外側に向かうにしたがって大きくなるように形成されている。このように構成すれば、相対的に回転速度が速いノズルシャフトの外側端部ほど半球形状部以外の領域に半球形状部内の潤滑剤が多く進入しやすく、より多量の潤滑剤が必要となる領域ほど保持する潤滑剤の量を大きくすることができるので、複数の半球形状部に保持されている潤滑剤を保持側対向面とシャフト側対向面との間の半球形状部以外の領域全体に確実に行き渡らせることができる。
【0020】
上記第1の局面による部品実装装置において、好ましくは、凹部は、周方向に間隔を隔てて複数配置され、複数の凹部は、周方向に間隔を隔てて配置された複数の溝部を有し、複数の溝部は、中心軸線の延びる方向から視て、複数の溝部の各々が中心軸線の延びる方向に直交する径方向に延びることによって放射状に配置されている。このように構成すれば、複数の溝部が周方向に間隔を隔てて形成され、かつ、径方向にも延びていることによって、全体にわたって配置された状態になるので、浮上力の偏りを抑制することができる。
【0021】
この場合、好ましくは、複数の溝部の各々の周方向の幅は、径方向の外側に向かうにしたがって大きく形成されている。このように構成すれば、相対的に回転速度が速いノズルシャフトの外側端部ほど溝部以外の領域に溝部内の潤滑剤が多く進入しやすく、より多量の潤滑剤が必要となる領域ほど保持する潤滑剤の量を大きくすることができるので、複数の溝部に保持されている潤滑剤を保持側対向面とシャフト側対向面との間の溝部以外の領域全体に確実に行き渡らせることができる。
【0022】
上記第1の局面による部品実装装置において、好ましくは、保持側対向面およびシャフト側対向面の少なくとも一方には、周方向に沿って延びて複数の凹部同士を互いに接続し、中心軸線の延びる方向に向かって窪む接続溝が形成され、中心軸線の延びる方向において、凹部の深さは、接続溝の深さよりも大きい。このように構成すれば、接続溝を凹部間における潤滑剤の経路として機能させることができるので、接続溝により複数の凹部に潤滑剤を行き渡らせやすくすることができる。その結果、複数の凹部に保持される潤滑剤を略均一にすることができるので、保持側対向面とシャフト側対向面との間の凹部以外の領域に略均一に潤滑剤を行き渡らせやすくすることができる。
【0023】
この発明の第2の局面による実装ヘッドは、並んで配置され、部品を吸着して基板に実装する複数のノズルと、複数のノズルの各々の中心軸線回りの周方向に回転するとともに昇降する移動部と、中心軸線の延びる方向と直交するシャフト側対向面とを有するノズルシャフトと、移動部に取り付けられて複数のノズルの各々を保持し、中心軸線の延びる方向においてシャフト側対向面に対向する保持側対向面を有するノズル保持部材とを備え、保持側対向面およびシャフト側対向面の少なくとも一方には、周方向に沿って断続的に配置されて中心軸線の延びる方向に窪み、潤滑剤を保持する複数の凹部が形成されている。
【0024】
この発明の第2の局面による実装ヘッドでは、上記のように、保持側対向面およびシャフト側対向面の少なくとも一方に、周方向に沿って断続的に配置されて中心軸線の延びる方向に窪み、潤滑剤を保持する複数の凹部を形成する。これにより、シャフト側対向面と保持側対向面とに挟まれることにより、シャフト側対向面および保持側対向面の少なくともいずれかに塗布した潤滑剤がシャフト側対向面および保持側対向面の各々の外側に逃げたとしても、ノズルシャフトの周方向への回転の際、複数の凹部に保持された潤滑剤が凹部以外の領域に進入することにより生じる浮上力によって、シャフト側対向面と保持側対向面との間隔が広げられるので、逃げた潤滑剤を内側に戻すことができるという知見を得た。その結果、シャフト側対向面と保持側対向面とを近接させた状態でノズルシャフトを回転させた際、シャフト側対向面と保持側対向面との間に十分な厚さの潤滑膜が形成されるので、シャフト側対向面と保持側対向面との間の抵抗を十分に低減することが可能な実装ヘッドを得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上記のように、シャフト側対向面と保持側対向面との間の抵抗を十分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1および第2実施形態による部品実装装置の概略を示した平面図である。
【
図2】第1および第2実施形態による部品実装装置の実装ヘッドを示した斜視図である。
【
図3】第1実施形態による部品実装装置の実装ヘッドを示した正面図である。
【
図4】第1実施形態による実装ヘッドのノズルシャフトおよびノズル保持部材を示した正面図である。
【
図5】第1実施形態による実装ヘッドにおいてノズルシャフトを下端位置に配置した状態を示した拡大断面図である。
【
図6】第1実施形態による実装ヘッドのノズルシャフトを上端位置に配置した状態を示した拡大断面図である。
【
図7】第1実施形態による実装ヘッドのノズルシャフトを上端位置に配置するとともに、ノズルシャフトを自転させた状態を示した拡大断面図である。
【
図8】第1実施形態による実装ヘッドのノズル保持部材を示した斜視図である。
【
図9】第1実施形態による実装ヘッドのノズル保持部材を示した平面図である。
【
図10】第1実施形態による実装ヘッドのノズルシャフトを上端位置に配置した状態のシャフト側対向面および保持側対向面を示した断面図である。
【
図11】第1実施形態による実装ヘッドのノズルシャフトを上端位置に配置するとともにノズルシャフトを自転させた状態のシャフト側対向面および保持側対向面を示した断面図である。
【
図13】第1実施形態の第1変形例による実装ヘッドの保持部材を示した斜視図である。
【
図14】第1実施形態の第2変形例による実装ヘッドのノズル保持部材を示した斜視図である。
【
図15】第2実施形態による実装ヘッドのノズルシャフトを下端位置に配置した状態を示した拡大断面図である。
【
図16】第2実施形態による実装ヘッドのノズルシャフトを上端位置に配置するとともに、ノズルシャフトを自転させた状態を示した拡大断面図である。
【
図17】第2実施形態による実装ヘッドの凹部が形成された固定部を示した斜視図である。
【
図18】第2実施形態の変形例による実装ヘッドの凹部が形成された固定部を示した斜視図である。
【
図19】
図19(A)~(D)は、それぞれ、第1実施形態の第3変形例による実装ヘッドにおいて、凹部の数を1、2、4および8個にした保持側対向面を示した平面図である。
【
図20】
図20(A)および
図20(B)は、それぞれ、第1実施形態の第4変形例による実装ヘッドにおいて、凹部の径方向の大きさを外側に向かうにしたがって大きくした保持側対向面を示した平面図である。
【
図21】
図21(A)は第1実施形態による第5変形例の実装ヘッドの保持側対向面を示した平面図である。
図21(B)は第1実施形態による第5変形例の実装ヘッドの保持側対向面におけるR2方向に沿った断面図である。
【
図22】
図22(A)~(D)は、それぞれ、第1実施形態の第6変形例による実装ヘッドにおいて、凹部の数を1、2、4および8個にした保持側対向面を示した平面図である。
【
図23】
図23(A)~(D)は、それぞれ、第1実施形態の第7変形例による実装ヘッドにおいて、径方向に5個並べた凹部の組を周方向に1、2、4および8組配置した保持側対向面を示した平面図である。
【
図24】
図24(A)および
図24(B)は、それぞれ、第1実施形態の第8変形例による実装ヘッドにおいて、凹部の径方向の大きさを外側に向かうにしたがって大きくし、径方向に5個並べた凹部の組を周方向に4および8組配置したシャフト側対向面を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
[第1実施形態]
図1~
図12を参照して、第1実施形態による部品実装装置100の構成について説明する。
【0029】
図1に示すように、部品実装装置100は、IC、トランジスタ、コンデンサおよび抵抗などの電子部品Eをプリント基板などの基板Bに実装するように構成されている。なお、電子部品Eは、特許請求の範囲の「部品」の一例である。
【0030】
ここで、部品実装装置100において、基板Bを搬送する搬送方向をX1方向とし、基板Bを搬送する搬送方向の逆方向をX2方向とし、X1方向およびX2方向を合わせた方向をX方向とする。また、水平方向のうちのX方向に直交する方向をY方向とし、Y方向の一方をY1方向とし、Y方向の他方をY2方向とする。また、X方向およびY方向に直交する上下方向をZ方向(上下方向)とし、Z方向の一方をZ1方向(上方向)とし、Z方向の他方をZ2方向(下方向)とする。なお、Z方向は、特許請求の範囲の「中心軸線の延びる方向」の一例である。
【0031】
部品実装装置100は、基台1と、フィーダ配置部2と、基板搬送部3と、支持部4と、レール部5と、実装ヘッド6と、部品認識カメラ7と、基板認識カメラ8と、制御部9とを備えている。
【0032】
(基台)
基台1は、部品実装装置100において各構成要素を配置する基礎となる台である。基台1上には、構成要素として、基板搬送部3、レール部5、および、部品認識カメラ7が設けられている。また、基台1内には、制御部9が設けられている。また、基台1には、Y方向の両側(Y1方向側およびY2方向側)に、複数のテープフィーダ21を配置可能なフィーダ配置部2が設けられている。
【0033】
(テープフィーダ)
テープフィーダ21は、基板Bに実装される電子部品Eを供給する装置である。テープフィーダ21は、複数の電子部品Eを所定の間隔を隔てて保持したテープを巻き回したリール(図示せず)を保持している。また、テープフィーダ21は、実装ヘッド6による電子部品Eの取り出しのための部品保持動作に応じて、リールを回転させてテープを送り出すように構成されている。テープフィーダ21は、テープを送り出すことにより、作業位置側の先端部から電子部品Eを供給するように構成されている。
【0034】
(基板搬送部)
基板搬送部3は、部品実装装置100の外部から基板Bを搬入し、基板Bを搬送方向(X1方向)に搬送するように構成されている。基板搬送部3は、一対のコンベア部31と、一対のコンベア部31を回転駆動させるための駆動モータ(図示せず)とを含んでいる。一対のコンベア部31の各々は、プーリ(図示せず)と、プーリに掛け回された輪状の搬送ベルトとを有している。制御部9は、駆動モータを制御することにより、一対のコンベア部31上に載置された基板Bの搬送速度を制御するように構成されている。
【0035】
(支持部)
支持部4は、実装ヘッド6をX方向に移動可能に支持するように構成されている。具体的には、支持部4は、X方向に延びるボールねじ軸41と、ボールねじ軸41を回転させるX軸モータ42とを含んでいる。実装ヘッド6には、支持部4のボールねじ軸41と係合するボールナット(図示せず)が設けられている。実装ヘッド6は、X軸モータ42によりボールねじ軸41が回転されることにより、ボールねじ軸41と係合するボールナットとともに、X方向に移動可能に構成されている。
【0036】
(レール部)
一対のレール部5は、支持部4をY方向に移動可能に支持するように構成されている。具体的には、レール部5は、Y方向に延びるボールねじ軸51と、ボールねじ軸51を回転させるY軸モータ52と、一対のガイドレール53とを含んでいる。支持部4には、レール部5のボールねじ軸51と係合するボールナット(図示せず)が設けられている。一対のガイドレール53は、Y方向に延びている。支持部4は、Y軸モータ52によりボールねじ軸51が回転されることにより、ボールねじ軸51と係合するボールナットとともに、一対のガイドレール53に沿ってY方向に移動可能に構成されている。
【0037】
このような構成により、実装ヘッド6は、基台1上を水平面内で(X方向およびY方向に)移動可能に構成されている。
【0038】
(実装ヘッド)
実装ヘッド6は、
図2に示すように、部品実装用のユニットであり、作業位置において固定された基板Bに電子部品Eを実装するように構成されている。具体的には、実装ヘッド6は、複数のノズル6aと、ノズル押圧部材6bと、第1付勢部材6cと、周方向移動機構6dと、昇降機構6eと、自転機構6fと、公転機構6gと、ハウジング6hと、第2付勢部材6iと、ノズルシャフト6jと、ノズル保持部材6kとを含んでいる。なお、第2付勢部材6iは、特許請求の範囲の「付勢部材」の一例である。また、自転機構6fは、特許請求の範囲の「回転機構」の一例である。
【0039】
複数のノズル6aは、円周状に並んで配置され、電子部品Eを吸着して基板Bに実装するように構成されている。複数のノズル6aの各々は、先細り形状となっている。複数のノズル6aの各々は、圧力発生装置(図示せず)に接続されており、圧力発生装置により生じる負圧によって、電子部品Eを保持(吸着)可能に構成されている。ここで、電子部品Eを保持(吸着)する際、複数のノズル6aのうちの所望のノズル6aが、ノズルシャフト5jを下端位置Dw(
図4参照)に配置することにより、吸着位置に配置される。また、複数のノズル6aの各々は、圧力発生装置による負圧を正圧に切り換えることによって、電子部品Eを基板Bに実装可能に構成されている。電子部品Eを実装した後、所望のノズル6aは、第2付勢部材6iによりノズルシャフト5jを上端位置Up(
図3参照)に配置することによって、上昇位置に配置される。
【0040】
複数のノズル6aは、回転軸線C1回りに等角度間隔(約30度間隔)において12本配置されている。複数のノズル6aの各々は、ノズル保持部材6kに保持されている。
【0041】
図3に示すように、ノズル押圧部材6bは、ノズルシャフト6jを介してノズル保持部材6kに保持された複数のノズル6aのうち所望のノズル6aを選択的に上下移動させるように構成されている。
【0042】
具体的には、ノズル押圧部材6bは、回転軸線C1回りを回転可能に構成されている。ノズル押圧部材6bは、周方向移動機構6dに接続されている。ノズル押圧部材6bは、周方向移動機構6dの駆動力により、回転軸線C1回りに回転可能である。また、ノズル押圧部材6bは、回転軸線C1の延びる方向(Z方向)に移動可能に構成されている。具体的には、ノズル押圧部材6bは、昇降機構6eに接続されている。ノズル押圧部材6bは、昇降機構6eの駆動力により、回転軸線C1の延びる方向に移動可能である。
【0043】
第1付勢部材6cは、ノズル押圧部材6bをZ1方向(上方向)に付勢するように構成されている。具体的には、第1付勢部材6cは、コイルスプリングにより形成されている。第1付勢部材6cは、ノズル押圧部材6bをZ1方向(上方向)に付勢することによりノズル押圧部材6bのZ方向における上端位置に位置決めしている。
【0044】
このように、ノズル押圧部材6bは、複数のノズル6aのうちの所望のノズル6aの位置まで周方向移動機構6dにより移動し、昇降機構6eにより下降することにより、複数のノズル6aのうちの所望のノズル6aを選択的に下降させる。ノズル押圧部材6bは、昇降機構6eにより下降した後、第1付勢部材6cにより上端位置Upに移動することに伴って、所望のノズル6aを選択的に上昇させる。
【0045】
周方向移動機構6dは、ノズル押圧部材6bを回転軸線C1回りの回転方向であるR1方向に沿って移動させるように構成されている。具体的には、周方向移動機構6dは、回転用モータ60、回転用駆動ギア61、回転用従動ギア62および回転軸63を有している。回転用駆動ギア61、回転用従動ギア62および回転軸63の各々は、Z方向に延びる中心軸線回りに回転する。回転用駆動ギア61と回転用従動ギア62とは、機械的に噛み合って接続されている。回転軸63は、回転用従動ギア62に固定されている。回転軸63は、回転用モータ60の駆動に伴って、回転用駆動ギア61および回転用従動ギア62が回転することにより、回転軸線C1回りに回転する。
【0046】
昇降機構6eは、ノズル押圧部材6bをZ方向に移動させるように構成されている。具体的には、昇降機構6eは、昇降用モータ64と、昇降用ボールねじ65と、昇降部66とを有している。昇降用ボールねじ65は、昇降用モータ64からの駆動力により、Z方向に延びる中心軸線回りに回転する。昇降部66は、ノズル押圧部材6bをZ1方向側から押圧するように設けられている。昇降部66は、昇降用ボールねじ65と一体的に回転することなく、Z方向に移動するように構成されている。昇降部66は、昇降用モータ64の駆動に伴って、昇降用ボールねじ65が回転して昇降部66がZ方向に移動する。
【0047】
自転機構6fは、所望のノズル6aを中心軸線C2回りのR2方向に回転させるとともに、所望のノズル6a以外も所望のノズル6aの回転に伴ってR2方向に回転させるように構成されている。これにより、所望のノズル6aに吸着された電子部品Eの姿勢が修正される。
【0048】
自転機構6fは、自転用モータ160と、自転用駆動ギア161と、第1自転用従動ギア162と、自転用シャフト163と、第2自転用従動ギア164と、第3自転用従動ギア165とを有している。
【0049】
自転用駆動ギア161、第1自転用従動ギア162、第2自転用従動ギア164、自転用シャフト163および第3自転用従動ギア165の各々は、Z方向に延びる中心軸線回りに回転する。第1自転用従動ギア162および第2自転用従動ギア164の各々は、自転用シャフト163に取り付けられている。第3自転用従動ギア165は、ノズルシャフト6jに取り付けられている。自転用駆動ギア161と第1自転用従動ギア162とは、機械的に噛み合っている。自転用シャフト163は、第1自転用従動ギア162と第2自転用従動ギア164とを接続している。第2自転用従動ギア164と第3自転用従動ギア165とは、機械的に噛み合っている。
【0050】
ノズルシャフト6jは、自転用モータ160の駆動に伴って、自転用駆動ギア161、第1自転用従動ギア162、第2自転用従動ギア164、自転用シャフト163および第3自転用従動ギア165が回転することにより、中心軸線C2回りのR2方向に自転する。このように、複数のノズルシャフト6jの全ては、同期して自転する。また、複数のノズル6aの全ても、同期して自転する。
【0051】
公転機構6gは、複数のノズル6aを回転軸線C1回りのR1方向に回転させるように構成されている。公転機構6gは、公転用モータ166と、公転用シャフト167とを有している。
【0052】
公転用シャフト167は、Z方向に延びる回転軸線C1回りに回転する。公転用シャフト167は、公転用モータ166とハウジング6hとを接続している。ハウジング6hは、公転用モータ166の駆動に伴って、公転用シャフト167が回転することにより、回転軸線C1回りのR1方向に回転する。これにより、複数のノズル6aは、公転用モータ166の駆動に伴って、公転用シャフト167が回転することにより、回転軸線C1回りのR1方向に公転する。
【0053】
ハウジング6hは、自転用シャフト163および複数のノズルシャフト6jを取り付け可能に構成されている。詳細には、ハウジング6hには、自転用シャフト163および複数のノズルシャフト6jを取り付けるための貫通孔(図示せず)が複数形成されている。
【0054】
第2付勢部材6iは、ノズルシャフト6jをZ1方向(上昇方向)に付勢するように構成されている。具体的には、第2付勢部材6iは、コイルスプリングにより形成されている。
【0055】
〈ノズルシャフト〉
図4に示すように、ノズルシャフト6jは、複数のノズル6aの各々の中心軸線C2回りのR2方向に回転するとともに昇降するように構成されている。すなわち、ノズルシャフト6jは、固定部68と、移動部69とを有している。固定部68は、Z方向に延びる円筒状に形成されている。固定部68は、ハウジング6hの貫通孔に固定されている。移動部69は、Z方向に延びる円筒状に形成されている。Z方向において、移動部69の長さは、固定部68の長さよりも大きい。移動部69は、R2方向および中心軸線C2の延びる方向に移動可能に固定部68の内部に配置されている。詳細には、移動部69は、固定部68の内部に複数のボール(図示せず)を介して固定部68により移動可能に支持されている。すなわち、ノズルシャフト6jは、移動部69を固定部68の内部に配置した二重筒形状を有している。ここで、ノズルシャフト6jは、第2付勢部材6iにより上端位置Upに位置決めされるように構成されている。
【0056】
また、ノズルシャフト6jは、Z方向において、後述する保持側対向面168aと対向するシャフト側対向面68aを有している。シャフト側対向面68aは、固定部68に設けられている。シャフト側対向面68aは、中心軸線C2の延びる方向と直交している。すなわち、シャフト側対向面68aは、中心軸線C2の延びる方向と直交するように延びる面である。
【0057】
また、シャフト側対向面68aは、ノズルシャフト6jのZ1方向への移動を規制する規制面である。すなわち、ノズルシャフト6jがZ1方向に上昇した際、上端位置Upにおいて、ノズル保持部材6kの保持側対向面168aとノズルシャフト6jの固定部68のシャフト側対向面68aとが当接することにより、ノズルシャフト6jのZ1方向への移動が規制される。また、固定部68のZ1方向側の端面は、ノズルシャフト6jのZ2方向への移動を規制する規制面である。すなわち、ノズルシャフト6jがZ2方向に下降した際、下端位置Dwにおいて、ノズル押圧部材6bとノズルシャフト6jの固定部68のZ1方向側の面とが当接することにより、ノズルシャフト6jのZ2方向への移動が規制される。
【0058】
〈ノズル保持部材〉
図5に示すように、ノズル保持部材6kは、ノズルシャフト6jの先端に取り付けられて複数のノズル6aの各々を保持するように構成されている。具体的には、ノズル保持部材6kのZ1方向側の部分には、ノズルシャフト6jのZ1方向側の端部が圧入される圧入凹部169aが形成されている。ノズル保持部材6kのZ2方向側の部分には、ノズル6aを螺合するためのねじ孔169bが形成されている。
【0059】
また、ノズル保持部材6kは、Z方向において、シャフト側対向面68aと対向する保持側対向面168aを有している。保持側対向面168aは、Z方向において、圧入凹部169aとねじ孔169bとの境界部分に設けられている。保持側対向面168aは、中心軸線C2の延びる方向と直交している。すなわち、保持側対向面168aは、中心軸線C2の延びる方向と直交するように延びる面である。
【0060】
〈凹部〉
図5および
図6に示すように、保持側対向面168aには、ノズルシャフト6jが上端位置Upに位置した際に、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとが接触し摺れ(摺動し)ないようにするため潤滑剤Gが塗布されている。ここで、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとは、ノズルシャフト6jがノズル押圧部材6bにより押圧されてZ2方向に移動し、ノズルシャフト6jが下端位置Dw(
図4参照)に位置した際において当接しない。ここで、保持側対向面168aには、くさび効果によってシャフト側対向面68aと保持側対向面168aとが離間する量の潤滑剤Gが塗布されている。
【0061】
シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとは、下端位置Dwからノズルシャフト6jが第2付勢部材6iの付勢力により移動し、ノズルシャフト6jが上端位置Upに位置した際において互いに近接している。この際、シャフト側対向面68aが保持側対向面168aと接触する領域である近接領域に付着していた潤滑剤Gは、第2付勢部材6iの付勢力によりシャフト側対向面68aと保持側対向面168aとに挟まれて圧縮されることによって、中心軸線C2に直交する方向に逃げていく。そして、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間の内側部分および外側部分の近傍領域Dの部分に、逃げてきた潤滑剤Gが溜まっている。なお、潤滑剤Gは、グリスなどの半固形(ジェル状)の潤滑剤Gであってもよいし、液状の潤滑剤Gであってもよい。
【0062】
図7に示すように、第1実施形態のシャフト側対向面68aおよび保持側対向面168aは、上端位置Upにノズルシャフト6jが位置してノズルシャフト6jが自転機構6fにより自転した際、近傍領域Dに溜まった潤滑剤Gを近接領
域に戻すように構成されている。すなわち、シャフト側対向面68aおよび保持側対向面168aは、上端位置Upにノズルシャフト6jが位置してシャフト側対向面68aと保持側対向面168aとに挟まれて薄くなった潤滑膜Mを、ノズルシャフト6jの自転を利用して、シャフト側対向面68aおよび保持側対向面168aの各々の表面粗さよりも大きな潤滑膜Mを形成するように構成されている。
【0063】
具体的には、
図8および
図9に示すように、保持側対向面168aには、R2方向に沿って断続的に配置されてZ2方向に窪み、潤滑剤Gを保持する複数(6個)の凹部10が形成されている。詳細には、複数の凹部10の各々は、溝部11により構成されている。すなわち、保持側対向面168aには、複数(6個)の溝部11が形成されている。複数の溝部11は、R2方向に間隔を隔てて配置されている。複数の溝部11の各々は、中心軸線C2の延びる方向に直交する方向に沿って直線状に設けられている。複数の溝部11の各々は、中心軸線C2の延びる方向から視て、中心軸線C2の延びる方向に直交する径方向に延びることによって放射状に配置されている。ここで、複数の溝部11の各々は、保持側対向面168aの径方向の端部を貫通している。複数の溝部11は、R2方向において略等角度間隔に配置されている。このように、保持側対向面168aのR2方向の断面では、周期的に複数の溝部11の各々および平面が形成されている。
【0064】
また、
図10に示すように、複数の溝部11の各々は、R2方向に沿った断面において、Z2方向側に窪んだ略円弧形状を有している。詳細には、
図10に示す複数の溝部11は、
図9のV1線を基準としてV2線に沿った断面を展開することにより示されている。なお、
図10に示す複数の溝部11の一部を省略している。ここで、複数の凹部10の各々の内周面のR2方向の両側の部分は、保持側対向面168aである。保持側対向面168aに形成された凹部10は、中心軸線C2の延びる方向に沿って延びる中心線C3に対して線対称な形状を有している。
【0065】
図11に示すように、凹部10は、ノズル保持部材6kに対して相対的にノズルシャフト6jが回転した際に、保持側対向面168aとシャフト側対向面68aとの間に、凹部10に保持した潤滑剤Gが進入されることにより発生される浮上力によって、保持側対向面168aをシャフト側対向面68aに対して相対的に浮上させて離間させるように構成されている。具体的には、凹部10は、第2付勢部材6iによりノズルシャフト6jが上端位置Upに位置した状態において、ノズル保持部材6kに対して相対的にノズルシャフト6jが回転した際に、保持側対向面168aを固定部68に設けられたシャフト側対向面68aに対して相対的に浮上させて離間させるように構成されている。
【0066】
つまり、内側部分および外側部分の近傍領域Dに溜まった潤滑剤Gは、ノズル保持部材6kに対してノズルシャフト6jが回転した際に、第2付勢部材6iの付勢力によりシャフト側対向面68aと保持側対向面168aとにより挟まれて生じた圧縮力よりも大きな力である浮上力により、保持側対向面168aとシャフト側対向面68aとの間の隙間を広げることによって圧縮状態が緩和されるので、近接領域に引き込まれる。ここで、浮上力は、ノズルシャフト6jが上端位置Upに位置し、移動部69とともにノズル保持部材6kが自転することにより生じる力である。
【0067】
すなわち、
図12に示すように、ノズル保持部材6kがR2方向のうちのR21の向きに回転した場合を例示すると、凹部10内に保持された潤滑剤Gは、保持側対向面168aの自転により保持側対向面168aとシャフト側対向面68aとの間における凹部10以外の領域Aに進入する際の急激な流速変化により、高圧の潤滑剤Gになると考えられる。潤滑剤は保持側対向面に対し相対的にR21と反対の向きに移動するため、凹部10のR21の向きとは反対の向きの縁部が、高圧の潤滑剤Gによりテーパ形状に弾性変形することになると考えられる。そして、上記テーパ形状により、さらに潤滑剤Gが保持側対向面168aとシャフト側対向面68aとの間における凹部10以外の領域Aに進入しやすくなるという知見を得た。この結果、R21の向きとは反対の向きの速度をもって進入する潤滑剤Gによって、浮上力が生じている。なお、上記した例では、ノズル保持部材6kが周方向RのうちのR21の向きに回転した場合を例示したが、ノズル保持部材6kが周方向RのうちのR21の向きとは反対向きに回転した場合も同様の浮上力が生じる。
【0068】
このように、保持側対向面168aとシャフト側対向面68aとの間の凹部10以外の領域Aには、シャフト側対向面68aに対して相対的に保持側対向面168aを浮上させて離間させることにより、潤滑剤Gを含む潤滑膜Mが形成されている。つまり、潤滑膜Mは、浮上力により保持側対向面168aとシャフト側対向面68aとの間の隙間を広げた際に近接領域に引き込まれる内側部分および外側部分の近傍領域Dに溜まった潤滑剤Gにより形成されている。
【0069】
ここで、複数のノズルシャフト6jの全ては自転機構6fにより同期して自転するので、潤滑膜Mは、所望のノズルシャフト6jの移動部69およびノズル保持部材6kを自転機構6fに自転させた際、所望のノズルシャフト6j以外の他のノズルシャフト6jの固定部68とノズル保持部材6kとの間においても形成されている。すなわち、潤滑膜Mは、他のノズル6aが保持されたノズル保持部材6kの保持側対向面168aと、他のノズル6aが取り付けられたノズルシャフト6jのシャフト側対向面68aとの間に形成されている。
【0070】
(部品認識カメラ)
部品認識カメラ7は、
図1に示すように、基板Bへの電子部品Eの実装に先立ってノズル6aに保持(吸着)された電子部品Eを撮像する部品撮像用のカメラである。部品認識カメラ7は、基台1上に固定されており、電子部品Eの下方(Z2方向)から、ノズル6aに保持(吸着)された電子部品Eを撮像するように構成されている。
【0071】
(基板認識カメラ)
基板認識カメラ8は、実装ヘッド6に取り付けられ、基板Bへの電子部品Eの実装に先立って、基板Bの上面に付されたFIマーク(Fiducial Mark(フィデューシャルマーク):図示せず)を撮像するマーク撮像用のカメラである。FIマークは、基板Bの位置を確認するためのマークである。
【0072】
(制御部)
制御部9は、CPU(Central Processing Unit)および記憶部などを含み、部品実装装置100の動作を制御する制御回路である。制御部9は、テープフィーダ21、基板搬送部3、実装ヘッド6、部品認識カメラ7、基板認識カメラ8、X軸モータ42およびY軸モータ52に電気的に接続されている。
【0073】
記憶部には、基板B上に実装される電子部品Eの実装処理に基づく実装プログラムが記憶されている。
【0074】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0075】
第1実施形態では、上記のように、保持側対向面168aに、R2方向に沿って断続的に配置されて中心軸線C2の延びる方向に窪み、潤滑剤Gを保持する複数の凹部10を形成する。これにより、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとに挟まれて圧縮されることにより、潤滑剤Gがシャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間の近傍領域Dに逃げたとしても、ノズルシャフト6jのR2方向への回転の際、複数の凹部10に保持された潤滑剤Gが凹部10以外の領域Aに進入することにより生じる浮上力によって、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間隔が広げられるので、圧縮状態が緩和されることにより逃げた潤滑剤Gをシャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間に形成された近接領域に戻すことができる。この結果、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとを近接させた状態でノズルシャフト6jを回転させた際、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間に十分な厚さの潤滑膜Mが形成されることにより、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間の抵抗を十分に低減することができる。また、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間に十分な厚さの潤滑膜Mが形成されることにより、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの接触を抑制することができるので、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの接触により発生する粉塵の量を減少させることができる。また、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間に十分な厚さの潤滑膜Mが形成されることにより、シャフト側対向面68aおよび保持側対向面168aの各々の摩耗を減少させることができるので、シャフト側対向面68aおよび保持側対向面168aの表面粗さの増加を抑制することができる。この結果、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとを近接させた状態でノズルシャフト6jを回転させた際、ノズルシャフト6jが振動することを抑制することができるので、振動に起因してノズル6aから部品が落下することによる実装品質の低下を抑制することができる。
【0076】
また、第1実施形態では、上記のように、凹部10を、ノズル保持部材6kに対して相対的にノズルシャフト6jが回転した際に、浮上力によって、保持側対向面168aをシャフト側対向面68aに対して相対的に浮上させて離間させるように構成する。これにより、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとに挟まれることにより、潤滑剤Gがシャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間の近傍領域Dに逃げたとしても、ノズルシャフト6jのR2方向への回転の際に生じる浮上力により、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとを相対的に浮上させて離間させることによって、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間隔を十分に確保することができる。この結果、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間の近傍領域Dに逃げた潤滑剤Gを近接領域に戻すことができるので、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとを近接させた状態でノズルシャフト6jを回転させた際、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間に十分な厚さの潤滑膜Mが形成されるので、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間の抵抗を十分に低減することができる。
【0077】
また、第1実施形態では、上記のように、凹部10を、第2付勢部材6iによりノズルシャフト6jが上端位置Upに位置した状態において、ノズル保持部材6kに対して相対的にノズルシャフト6jが回転した際に、固定部68に設けられたシャフト側対向面68aに対して保持側対向面168aを浮上させて離間させるように構成する。これにより、ハウジング6hに固定された固定部68に対する移動部69の相対的なR2方向および中心軸線C2の延びる方向への移動を利用して、凹部10により保持側対向面168aをシャフト側対向面68aに対して浮上させて離間させることができるので、簡易な構造により保持側対向面168aをシャフト側対向面68aに対して浮上させることができる。また、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間に十分な厚さの潤滑膜Mが形成されることにより、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間の抵抗を十分に低減することができる。つまり、ノズルシャフト6jを上端位置Upに位置させた状態で回転させたとしても、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間にノズルシャフト6jを付勢する力に比例した大きな抵抗が生じない。したがって、第2付勢部材6iの付勢力を増加させることができる。この結果、移動部69の中心軸線C2の延びる方向への移動をより速くすることができるので、実装作業時間を短縮することができる。
【0078】
また、第1実施形態では、上記のように、保持側対向面168aとシャフト側対向面68aとの間の凹部10以外の領域Aに、シャフト側対向面68aに対して相対的に保持側対向面168aを浮上させて離間させることにより、潤滑剤Gを含む潤滑膜Mを形成する。これにより、シャフト側対向面68aに対して相対的に保持側対向面168aを浮上させて離間させることにより、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間の近傍領域Dに逃げた潤滑剤Gを充填させて潤滑膜Mを形成することによって、ノズルシャフト6jの回転の際に生じる抵抗を低減することができる。この結果、ノズルシャフト6jを回転させるための駆動源の発熱の低減を図ることができるとともに、抵抗を低減するために玉軸受けを設ける場合と比較して実装ヘッド6の小型化を図り、かつ、同じ駆動源により回転可能なノズルシャフト6jの数の増加および同じ駆動源によるノズルシャフト6jの回転の高速化を図ることができる。
【0079】
また、第1実施形態では、上記のように、潤滑膜Mを、他のノズル6aが保持されたノズル保持部材6kの保持側対向面168aと、他のノズル6aが取り付けられたノズルシャフト6jのシャフト側対向面68aとの間に形成する。これにより、所望のノズル6a以外の他のノズル6aにおいて生じるノズルシャフト6jの回転の際に生じる抵抗を低減することができるので、自転機構6fの負荷を軽減することができる。
【0080】
また、第1実施形態では、上記のように、保持側対向面168aに形成された凹部10を、中心軸線C2の延びる方向に沿って延びる中心線C3に対して線対称な形状に形成する。これにより、ノズルシャフト6jのいずれの方向の回転においても同様の浮上力を発生させることができるので、シャフト側対向面68aと保持側対向面168aとの間の抵抗を安定して十分に低減することができる。
【0081】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の溝部11を、中心軸線C2の延びる方向から視て、複数の溝部11の各々が中心軸線C2の延びる方向に直交する径方向に延びることによって放射状に配置する。これにより、複数の溝部11がR2方向に間隔を隔てて形成され、かつ、径方向にも延びていることによって、全体にわたって配置された状態になるので、浮上力の偏りを抑制することができる。
【0082】
ここで、上記第1実施形態の部品実装装置100は、
図13に示す第1変形例および
図14に示す第2変形例のように、複数の凹部10が溝形状ではない凹部210および凹部310をさらに含んでいる。
【0083】
図13に示す第1変形例のように、保持側対向面168aには、R2方向に沿って断続的に配置されてZ2方向に窪み、潤滑剤Gを保持する複数の凹部210が形成されている。詳細には、複数の凹部210の各々は、半球形状に形成され、周方向Rに間隔を隔てて周状に配置された複数の半球形状部212を有していてもよい。
【0084】
また、
図14に示す第2変形例のように、凹部310は、半球形状に形成され、R2方向に間隔を隔てて周状に配置された複数の半球形状部312を有している。加えて、複数の半球形状部312は、中心軸線C2の延びる方向から視てR2方向に間隔を隔てて放射状にも配置されてもよい。すなわち、複数の半球形状部312は、R2方向において略等角度間隔に配置されていることが好ましい。
【0085】
[第2実施形態]
次に、
図1、
図2および
図15~
図17を参照して、第2実施形態の部品実装装置400について説明する。第2実施形態の部品実装装置400は、詳細には、複数の凹部10が、ノズル保持部材6kの保持側対向面168aに形成されていた上記第1実施形態の部品実装装置100とは異なり、複数の凹部410が、ノズルシャフト6jのシャフト側対向面468aに形成されている。なお、第2実施形態において、上記第1実施形態と同様の構成に関しては、同じ符号を付して説明を省略する。
【0086】
第2実施形態の部品実装装置400は、基台1と、フィーダ配置部2と、基板搬送部3と、支持部4と、レール部5と、実装ヘッド406と、部品認識カメラ7と、基板認識カメラ8と、制御部9とを備えている。
【0087】
〈複数の凹部〉
図15および
図16に示すように、第2実施形態のシャフト側対向面468aおよび保持側対向面168aは、上端位置Upにノズルシャフト6jが位置してシャフト側対向面468aと保持側対向面168aとにより挟まれて薄くなった潤滑膜Mを、ノズルシャフト6jの自転を利用して、シャフト側対向面468aおよび保持側対向面168aの各々の表面粗さよりも大きな潤滑膜Mを形成するように構成されている。
【0088】
具体的には、
図17に示すように、シャフト側対向面468aには、R2方向に沿って断続的に配置されてZ1方向に窪み、潤滑剤Gを保持する複数(12個)の凹部410が形成されている。詳細には、複数の凹部410の各々は、半球形状部412により構成されている。半球形状部412は、半球形状に形成されている。複数の半球形状部412は、周方向R2に間隔を隔てて周状に配置された複数の半球形状部412を有していてもよい。なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0089】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態の効果について説明する。
【0090】
第2実施形態では、上記のように、シャフト側対向面468aに、R2方向に沿って断続的に配置されて中心軸線C2の延びる方向に窪み、潤滑剤Gを保持する複数の凹部410を形成する。これにより、シャフト側対向面468aと保持側対向面168aとを近接させた状態でノズルシャフト6jを回転させた際、シャフト側対向面468aと保持側対向面168aとの間に十分な厚さの潤滑膜Mが形成されることにより、シャフト側対向面468aと保持側対向面168aとの間の抵抗を十分に低減することができる。
【0091】
また、第2実施形態では、上記のように、複数の半球形状部412は、中心軸線C2の延びる方向から視て中心軸線C2の延びる方向に直交する径方向に間隔を隔てて放射状に配置してもよい。これにより、複数の半球形状部412が周状および放射状に全体にわたって分散して形成されているので、浮上力の偏りを抑制することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0092】
ここで、上記第2実施形態の部品実装装置400は、
図18に示す変形例のように、複数の凹部510が半球形状ではない実装ヘッド506をさらに含んでいる。
【0093】
図18に示す変形例のように、シャフト側対向面568aには、複数の凹部510として、R2方向に間隔を隔てて配置された複数の溝部511が形成されている。複数の溝部511は、中心軸線C2の延びる方向から視て、複数の溝部511の各々が中心軸線C2の延びる方向に直交する径方向に延びることによって放射状に配置されていてもよい。すなわち、複数の溝部511は、R2方向において略等角度間隔に配置されていることが好ましい。
【0094】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0095】
たとえば、上記第1実施形態では、保持側対向面168aに、潤滑剤Gを保持する複数の凹部10を形成する例を示し、上記第2実施形態では、シャフト側対向面68aに、潤滑剤Gを保持する複数の凹部10を形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シャフト側対向面および保持側対向面の少なくとも一方に、潤滑剤を保持する複数の凹部が形成されればよく、シャフト側対向面および保持側対向面の両方に、潤滑剤を保持する複数の凹部が形成されてもよい。
【0096】
また、上記第1および第2実施形態では、保持側対向面168aに、潤滑剤Gが塗布されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シャフト側対向面に潤滑剤が塗布されていてもよい。
【0097】
また、上記第1および第2実施形態では、凹部10は、中心軸線C2の延びる方向に沿って延びる中心線C3に対して線対称な形状を有している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、凹部は、中心軸線の延びる方向に沿って延びる中心線に対して線対称な形状以外の形状であってもよい。
【0098】
また、第1実施形態では、複数の凹部10の各々は、R2方向(周方向)に沿った断面において、Z2方向側に窪んだ円弧形状を有している例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、複数の凹部の各々は、周方向に沿った断面において、略矩形形状などを有していてもよい。
【0099】
また、第1実施形態では、保持側対向面168aに、R2方向に沿って断続的に配置されてZ2方向に窪み、潤滑剤Gを保持する複数(6個)の凹部10である溝部11が形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、溝部は、1~5個または7個以上であってもよい。たとえば、
図19(A)~(D)に示す第3変形例では、保持側対向面168aに、1個、2個、4個および8個の溝部611が形成されている。
【0100】
また、第1実施形態では、複数の溝部11の各々は、保持側対向面168aの径方向の端部を貫通している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図19(A)~(D)に示す第3変形例では、保持側対向面168aに、複数の溝部611の各々は、の径方向の端部を貫通することなく形成されてもよい。
【0101】
また、第1実施形態では、複数の凹部10の各々は、中心軸線C2の延びる方向に直交する方向に沿って直線状に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図20に示す第4変形例のように、保持側対向面168aの複数の溝部711の各々の周方向の幅は、径方向の外側に向かうにしたがって大きく形成されていてもよい。これにより、相対的に回転速度が速いノズルシャフト6jの外側端部ほど溝部711以外の領域に溝部711内の潤滑剤Gが多く進入しやすく、より多量の潤滑剤Gが必要となる領域ほど保持する潤滑剤Gの量を大きくすることができるので、複数の溝部711に保持されている潤滑剤Gを保持側対向面168aとシャフト側対向面68aとの間の溝部711以外の領域A全体に確実に行き渡らせることができる。
【0102】
また、第1実施形態では、複数の溝部11の各々は、中心軸線C2の延びる方向から視て、中心軸線C2の延びる方向に直交する径方向に延びることによって放射状に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図21(A)および
図21(B)に示す第5変形例のように、保持側対向面168aには、R2方向に沿って延びて複数の凹部810同士を互いに接続し、中心軸線C2の延びる方向に向かって窪む接続溝813が形成されてもよい。そして、中心軸線C2の延びる方向において、凹部810の深さD1は、接続溝813の深さD2よりも大きいことが好ましい。これにより、接続溝813を凹部810間における潤滑剤Gの経路として機能させることができるので、接続溝813により複数の凹部810に潤滑剤Gを行き渡らせやすくすることができる。その結果、複数の凹部810に保持される潤滑剤Gを略均一にすることができるので、保持側対向面168aとシャフト側対向面68aとの間の凹部10以外の領域Aに略均一に潤滑剤Gを行き渡らせやすくすることができる。
【0103】
また、第1実施形態の第1変形例では、凹部210として、複数(12個)の半球形状部212が形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、半球形状部は、1~11個または13個以上であってもよい。たとえば、
図22(A)~(D)に示す第6変形例では、保持側対向面168aに、1個、2個、4個および8個の半球形状部912が形成されている。
【0104】
また、第1実施形態の第2変形例では、凹部310として、半球形状部213が中心軸線C2に直交する方向に4個並んだ組が、R2方向に8個形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、凹部として、半球形状部が中心軸線に直交する方向に2、3または5個以上並んだ組が、周方向に1~7個または9個以上形成されていてもよい。たとえば、
図23(A)~(D)に示す第7変形例では、保持側対向面168aに、半球形状部1012が5個並んだ組が、周方向に1、2、4または8個形成されている。
【0105】
また、この第7変形例では、中心軸線C2に直交する方向において、略同じ大きさの半球形状部1012が、並んで配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、
図24(A)および
図24(B)に示す第8変形例のように、複数の半球形状部1112の各々の直径は、径方向の外側に向かうにしたがって大きくなるように形成されてもよい。これにより、相対的に回転速度が速いノズルシャフト6jの外側端部ほど半球形状部1112以外の領域Aに半球形状部1112内の潤滑剤Gが多く進入しやすく、より多量の潤滑剤Gが必要となる領域Aほど保持する潤滑剤Gの量を大きくすることができるので、複数の半球形状部1112に保持されている潤滑剤Gを保持側対向面168aとシャフト側対向面68aとの間の半球形状部1112以外の領域A全体に確実に行き渡らせることができる。なお、
図19~
図24に示す構成は、シャフト側対向面に凹部を設ける場合に適用されてもよい。
【0106】
また、第1および第2実施形態の実装ヘッド6(406)は、円周状に並んで配置される複数のノズル6aを有する実装ヘッドである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、実装ヘッドは、所定の間隔をあけて水平方向にライン上に並んで配置された複数のノズルを有する実装ヘッドでもよい。
【符号の説明】
【0107】
6、406 実装ヘッド
6a ノズル
6b ノズル押圧部材
6f 自転機構(回転機構)
6h ハウジング
6i 第2付勢部材(付勢部材)
6j ノズルシャフト
6k ノズル保持部材
10、210、310、410、510、810 凹部
11、511、611、711 溝部
68 固定部
68a、468a シャフト側対向面
69 移動部
100、400 部品実装装置
168a 保持側対向面
212、312、412、912、1012、1112 半球形状部
813 接続溝
A (凹部以外の)領域
B 基板
C2 中心軸線
E 電子部品(部品)
G 潤滑剤
M 潤滑膜
R2 (周)方向