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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】クロージャ
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/46 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
G02B6/46
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019190380
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021067705
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000231936
【氏名又は名称】日本通信電材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 峻矢
(72)【発明者】
【氏名】大杉 哲也
(72)【発明者】
【氏名】石原 竜也
(72)【発明者】
【氏名】天坂 竜一
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 龍太郎
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-510553(JP,A)
【文献】特開2006-098610(JP,A)
【文献】特開2002-139634(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103984069(CN,A)
【文献】特開2001-100050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00,6/02,6/245-6/25,6/46-6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側ケーブルに含まれる光ファイバと下流側ケーブルに含まれる光ファイバとの接続箇所を収容するクロージャであって、
一端に開口を有する有底筒状のスリーブと、
前記上流側ケーブル及び前記下流側ケーブルを挿入する第1挿入孔を有し、前記開口と嵌合するキャップと、
前記スリーブ内に収容される被収容体と、を備え、
前記被収容体は、
前記被収容体の長手方向に沿って設けられた棒状部材と、
前記棒状部材を挿通可能な挿通孔を有するホルダと、を含み、
前記ホルダは、前記挿通孔の周囲に前記接続箇所を収納可能な複数の第1収納孔を有し、
前記ホルダは、前記ホルダを前記長手方向に貫通する複数の第2収納孔を有し、
前記複数の第2収納孔は、前記上流側ケーブルに含まれる光ファイバ及び前記下流側ケーブルに含まれる光ファイバの少なくとも一部を収納可能であり、
前記ホルダの前記長手方向と直交する断面内において、
前記挿通孔は、前記ホルダの中心近傍に位置し、
前記複数の第1収納孔は、前記挿通孔を中心とする同一円周上にそれぞれ位置し、
前記複数の第2収納孔は、隣り合う2つの前記第1収納孔の間にそれぞれ位置しており、
前記ホルダの前記長手方向に直交する平面における前記第2収納孔の断面形状は、前記第1収納孔の断面形状と異なる、
クロージャ。
【請求項2】
前記第1収納孔は、前記ホルダを前記長手方向に貫通しており、かつ、前記長手方向にわたって前記ホルダの外周面に向かって開口した開口部を含む、
請求項1に記載のクロージャ。
【請求項3】
前記ホルダの前記長手方向と直交する断面内において前記第1収納孔の少なくとも一部は、前記開口部の開口端における幅よりも長い幅を有する、
請求項2に記載のクロージャ。
【請求項4】
前記開口部は、前記ホルダの前記外周面において前記長手方向にわたって設けられた切り欠きによって形成されており、
前記切り欠きの幅は前記ホルダの長手方向にわたって一定であり、前記第1収納孔の内径は前記切り欠きの前記幅よりも長い、
請求項2又は請求項3に記載のクロージャ。
【請求項5】
前記ホルダは、弾性材料によって形成されており、
前記ホルダは、前記挿通孔の中心側に向かう凸部を有し、
前記棒状部材は、前記棒状部材の外周面上に凹部を有し、
前記挿通孔の前記凸部と、前記棒状部材の前記凹部とが係合可能である、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のクロージャ。
【請求項6】
前記スリーブの前記開口に嵌合した前記キャップを前記スリーブに固定する固定部を備え、
前記被収容体は、弾性材料により形成されたグロメットを含み、
前記グロメットは、前記スリーブの前記開口の近傍における内径に対応する外径を有し、かつ、前記上流側ケーブルの直径および前記下流側ケーブルの直径にそれぞれ対応する内径をもつ複数の第2挿入孔を有し、
前記固定部は、前記グロメットが前記長手方向に圧縮された状態で前記キャップを前記スリーブに固定可能である、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のクロージャ。
【請求項7】
前記固定部は、
前記キャップに取り付け可能であって前記キャップを前記被収容体の方向へと締め付けながら固定するネジと、
前記スリーブに設けられ、前記ネジに対応するネジ孔と、を含む、
請求項に記載のクロージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クロージャに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ケーブル用のクロージャとして、光ケーブル同士の接続箇所を収納するための光ケーブル用トレイを複数備えたものが知られている(特許文献1から特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-100050号公報
【文献】特開2013-113891号公報
【文献】特開2013-113926号公報
【文献】特表2000-505567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、無電柱化を求める気運が高まっている。電柱をなくす場合、その電柱に配線されていた光ケーブルは、地中に埋設されることが多い。その際、クロージャのサイズが大きいと、その分だけ掘る穴のサイズを大きくしなければならず、コストが高くなってしまうことがあった。
【0005】
本開示は、小型化を実現可能なクロージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るクロージャは、
上流側ケーブルに含まれる光ファイバと下流側ケーブルに含まれる光ファイバとの接続箇所を収容するクロージャであって、
一端に開口を有する有底筒状のスリーブと、
前記上流側ケーブル及び前記下流側ケーブルを挿入する第1挿入孔を有し、前記開口と嵌合するキャップと、
前記スリーブ内に収容される被収容体と、を備え、
前記被収容体は、
前記被収容体の長手方向に沿って設けられた棒状部材と、
前記棒状部材を挿通可能な挿通孔を有するホルダと、を含み、
前記ホルダは、前記挿通孔の周囲に前記接続箇所を収納可能な複数の第1収納孔を有する。
【発明の効果】
【0007】
上記開示の構成によれば、小型化を実現可能なクロージャを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係るクロージャの分離斜視図である。
図2】本開示の一実施形態に係るキャップの斜視図である。
図3図2に示すキャップの平面図である。
図4】本開示の一実施形態に係るクロージャの設置時の斜視図である。
図5】本開示の一実施形態に係るホルダの斜視図である。
図6図5に示すホルダの断面図である。
図7】本開示の一実施形態に係る把持具の斜視図である。
図8】本開示の一実施形態に係るグロメットの斜視図である。
図9】本開示の一実施形態に係るシールスペーサの斜視図である。
図10図4に示すクロージャの部分的な模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の一態様に係るクロージャは、
上流側ケーブルに含まれる光ファイバと下流側ケーブルに含まれる光ファイバとの接続箇所を収容するクロージャであって、
一端に開口を有する有底筒状のスリーブと、
前記上流側ケーブル及び前記下流側ケーブルを挿入する第1挿入孔を有し、前記開口と嵌合するキャップと、
前記スリーブ内に収容される被収容体と、を備え、
前記被収容体は、
前記被収容体の長手方向に沿って設けられた棒状部材と、
前記棒状部材を挿通可能な挿通孔を有するホルダと、を含み、
前記ホルダは、前記挿通孔の周囲に前記接続箇所を収納可能な複数の第1収納孔を有する。
上記構成によれば、クロージャの小型化を実現することが可能になる。
【0010】
前記クロージャは、
前記第1収納孔が、前記ホルダを前記長手方向に貫通しており、かつ、前記長手方向にわたって前記ホルダの外周面に向かって開口した開口部を含むことが好ましい。
上記構成によれば、光ファイバ同士の接続箇所を第1収納孔に収納することが容易になり、作業効率を向上させることができる。
【0011】
前記クロージャは、
前記ホルダの前記長手方向と直交する断面内において前記第1収納孔の少なくとも一部が、前記開口部の開口端における幅よりも長い幅を有することが好ましい。
上記構成によれば、光ファイバ同士の接続箇所が第1収納孔の外部に出にくくなり、接続箇所を適切に保護することが可能になる。
【0012】
前記クロージャは、
前記開口部が、前記ホルダの前記外周面において前記長手方向にわたって設けられた切り欠きによって形成されており、
前記切り欠きの幅が前記ホルダの長手方向にわたって一定であり、前記第1収納孔の内径が前記切り欠きの前記幅よりも長いことが好ましい。
上記構成によれば、光ファイバ同士の接続箇所が第1収納孔の外部に出にくくなり、接続箇所を適切に保護することが可能になる。また、光ファイバ同士の接続箇所を第1収納孔に収納することが容易になる。
【0013】
前記クロージャは、
前記ホルダが、弾性材料によって形成されており、
前記ホルダが、前記挿通孔の中心側に向かう凸部を有し、
前記棒状部材が、前記棒状部材の外周面上に凹部を有し、
前記挿通孔の前記凸部と、前記棒状部材の前記凹部とが係合可能であることが好ましい。
上記構成によれば、ホルダの位置を簡便に固定することができ、かつ、不用意にホルダ位置が変わることがないため、接続箇所を適切に保護することが可能になる。
【0014】
前記クロージャは、
前記ホルダが、前記ホルダを前記長手方向に貫通する複数の第2収納孔を有し、
前記複数の第2収納孔が、前記上流側ケーブルに含まれる光ファイバ及び前記下流側ケーブルに含まれる光ファイバの少なくとも一部を収納可能であることが好ましい。
上記構成によれば、第2収納孔に光ファイバの余長を収納することができるため、光ファイバの余長をクロージャ内に収めることが容易になり、作業効率を向上させることができる。
【0015】
前記クロージャは、
前記ホルダの前記長手方向と直交する断面内において、
前記挿通孔が、前記ホルダの中心近傍に位置し、
前記複数の第1収納孔が、前記挿通孔を中心とする同一円周上にそれぞれ位置し、
前記複数の第2収納孔が、隣り合う2つの前記第1収納孔の間にそれぞれ位置していることが好ましい。
上記構成によれば、光ファイバの接続箇所を収納する第1収納孔の近傍に、当該接続箇所から延びる光ファイバの余長を収納できるため、接続箇所および余長をホルダに収納する際の作業効率を向上させることができる。
【0016】
前記クロージャは、
前記スリーブの前記開口に嵌合した前記キャップを前記スリーブに固定する固定部を備え、
前記被収容体が、弾性材料により形成されたグロメットを含み、
前記グロメットが、前記スリーブの前記開口の近傍における内径に対応する外径を有し、かつ、前記上流側ケーブルの直径および前記下流側ケーブルの直径にそれぞれ対応する内径をもつ複数の第2挿入孔を有し、
前記固定部は、前記グロメットが前記長手方向に圧縮された状態で、前記キャップを前記スリーブに固定可能であることが好ましい。
上記構成によれば、簡単な構造で、グロメットとスリーブの間、及び第2挿入孔と光ケーブルの間をシールすることができる。
【0017】
前記クロージャは、
前記固定部が、
前記キャップに取り付け可能であって前記キャップを前記被収容体の方向へと締め付けながら固定するネジと、
前記スリーブに設けられ、前記ネジに対応するネジ孔と、を含むことが好ましい。
上記構成によれば、グロメットを強い力で圧縮することが容易になり、スリーブ内の密閉性をより向上させることができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示に係るクロージャの実施の形態の例を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、異なる図面であっても同一又は相当の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0019】
図1は、本開示の一実施形態に係るクロージャ1の分離斜視図である。図2は、本開示の一実施形態に係るキャップ20の斜視図である。図3は、図2に示すキャップ20の平面図である。図3は、具体的には、図2に示す矢印の方向からキャップ20を見た場合の図である。図4は、図1に示すクロージャ1の設置時の状態を示す斜視図である。
【0020】
なお、以下の説明において、「長手方向」とは、図1において矢印で示した方向をいい、具体的には、被収容体30の軸方向のことをいう。「底部側」とは、スリーブ10に被収容体30を収容した状態において、スリーブ10の底部の方向に位置する側をいう。「開口側」とは、スリーブ10に被収容体30を収容した状態において、スリーブ10の開口11の方向に位置する側をいう。「等しい」とは、厳密に等しい場合だけではなく、両者の差が十分に小さく、実質的に等しいと評価される場合をも含む。
【0021】
図1に示すように、クロージャ1は、スリーブ10と、キャップ20と、被収容体30とを備えている。スリーブ10は、一端に開口11を有する有底筒状の筺体である。スリーブ10は、その内部に被収容体30を収容し、被収容体30を保護する。スリーブ10の外周面には、複数のU字切り欠き12が設けられている。U字切り欠き12を備えることで、クロージャ1の設置時に、任意の向きや位置でクロージャ1を包縛固定することが容易になる。また、開口11の近傍には、ネジ孔13a及び13bが設けられている。
【0022】
図1図3に示すように、キャップ20は、ケーブル挿入孔(第1挿入孔)21と、ネジ23a及び23bと、キャップ端面24と、を備えている。図3において、ケーブル挿入孔21は、キャップ20の中心に設けられている。ケーブル挿入孔21には、上流側および下流側のドロップケーブルが挿入される。また、ケーブル挿入孔21は、後述する第2軸棒51が挿通される孔でもある。ケーブル挿入孔21には、上流側および下流側のドロップケーブルと共に、後述する第2軸棒51も挿通される。
【0023】
キャップ20は、スリーブ10の開口11に嵌合可能である。具体的には、後述するシールスペーサ70と対向する面であるキャップ端面24の形状および大きさは、スリーブ10の開口11の形状および大きさと等しい。
【0024】
ネジ23a及び23bは、ネジ孔13a及び13bとそれぞれ螺合する。すなわち、ネジ孔13は雌ネジとして機能し、ネジ23は雄ネジとして機能する。ネジの種類は、特に限定はされず、例えば、ボルト等の公知のものを用いることができる。
【0025】
クロージャ1の設置時の状態は、図4に示すとおりである。具体的には、クロージャ1の設置時には、被収納体30がスリーブ10の内部に収容される。そして、キャップ端面24が開口11に嵌合した状態で、ネジ23がネジ孔13にネジ止めされることにより、キャップ20がスリーブ10に固定される。なお、図4において、クロージャ1の内部に導入されるドロップケーブルは、図示せずに省略している。
【0026】
図1に示すように、被収容体30は、第1軸棒(棒状部材)31と、保護シート33と、ホルダ40と、把持具50と、グロメット60と、シールスペーサ70とを備えている。
【0027】
第1軸棒31は、被収容体30の長手方向に沿って設けられた棒状の部材である。第1軸棒31の構成材料は、特に制限はされず、例えば、樹脂や金属(例えば、ステンレス鋼)などの公知の材料を用いることができる。第1軸棒31における開口側の端部は、把持具50の嵌合穴58(図10参照)に嵌合する。すなわち、第1軸棒31は、把持具50によって支持される。また、第1軸棒31は、ホルダ40に挿通される。すなわち、第1軸棒31は、ホルダ40を支持する。
【0028】
以下、図1に加えて、図5図9を適宜参照しながら、被収容体30の各構成部材について詳述をする。図5は、本開示の一実施形態に係るホルダ40の斜視図である。図6は、図5に示すホルダ40の断面図である。図6は、具体的には、後述の凸部45を通り長手方向と直交する平面で、図5に示すホルダ40を切断した断面図である。図5及び図6に示すように、ホルダ40は、挿通孔41と、複数の第1収納孔42と、複数の開口部(切り欠き)43と、複数の第2収納孔44と、凸部45と、を備えている。
【0029】
ホルダ40の形状は、スリーブ10内に収容できれば特に制限はされないが、例えば、スリーブ10の内部形状に対応する形状が好ましい。また、ホルダ40の構成材料は、特に制限はされないが、例えば、作業効率を向上させつつ、接続箇所を適切に保護するという観点から、弾性材料であることが好ましい。本実施形態では、ホルダ40の形状は円柱状であり、ホルダ40の構成材料は硬質ゴムである。
【0030】
挿通孔41は、ホルダ40を長手方向に貫通する孔である。挿通孔41は、図6に示す断面内において、ホルダ40の中心に位置する。挿通孔41には、第1軸棒31を挿通可能である。挿通孔41の内径は、例えば、第1軸棒31の外径以上であり、好ましくは当該外径と等しい。
【0031】
挿通孔41における長手方向中央部付近には、挿通孔41の中心側に向かって突出した凸部45が設けられている。また、第1軸棒31における長手方向中央部付近には、第1軸棒31の中心側に向かって凹んだ凹部32が設けられている。凸部45と凹部32とは、互いに対応する形状を有しており、互いに係合可能である。挿通孔41に第1軸棒31を挿通し、凸部45を凹部32に嵌め合わせることで、長手方向におけるホルダ40の位置を固定できる。なお、本実施形態では、挿通孔41に凸部45が設けられ、第1軸棒31に凹部32が設けられているが、これらは反対でもよい。すなわち、挿通孔41に凹部を設け、第1軸棒31に凸部を設けてもよい。
【0032】
また、凸部45は、挿通孔41の周方向の一部にのみ設けられている。同様に、凹部32は、第1軸棒31の周方向の一部にのみ設けられている。このように、周方向の一部にのみ凸部45と凹部32とを設けることにより、ホルダ40が第1軸棒31の軸周りに回転することを防止できる。
【0033】
凸部45は弾性材料で形成されており、凸部45の頂上部は丸みを帯びている。第1軸棒31の先端が凸部45に当接した状態で、第1軸棒31をさらに押し込むように力を加えると、凸部45が弾性変形し、凸部45と凹部32とが係合可能な位置まで第1軸棒31を挿通孔41に押しこむことができる。なお、凸部45は、押しボタン式の構成としてもよい。
【0034】
第1収納孔42は、上流側のドロップケーブルに含まれる光ファイバと下流側のドロップケーブルに含まれる光ファイバとの接続箇所を収納可能なように構成されている。第1収納孔42には、例えば、光ファイバ同士を融着接続した場合の接続箇所が収納される。なお、本開示のクロージャ1は、アダプタ接続やメカニカルスプライス接続などの他の接続方法に対応できるように変形可能である。例えば、光ファイバ同士をアダプタ接続する場合、第1収納孔42には、光アダプタが収納されることになる。
【0035】
第1収納孔42は、ホルダ40を長手方向に貫通する孔である。各第1収納孔42は、図6に示すように、挿通孔41を中心とする同一円周上に、所定の間隔で設けられている。
【0036】
第1収納孔42は、長手方向にわたって、ホルダ40の外周面に向かって開口した開口部(切り欠き)43を含む。光ファイバ同士の接続箇所は、例えば、開口部43から第1収納孔42の奥へと入れられ、第1収納孔42の内部に保持される。すなわち、開口部43を備えることによって、接続箇所を第1収納孔42に収納することが容易になり、作業効率を向上させることができる。なお、開口部43は、第1収納孔42とホルダ40の外周面とを連通させるものであればよく、例えば、一条のスリットであってもよいし、ホルダ40の中心(挿通孔41の方向)に向かうにつれ幅が広くなる切り欠きであってもよいし、本実施形態に示すような一定の幅を有する切り欠きであってもよい。
【0037】
図6に示すように、第1収納孔42の奥部分の内径d2は、開口部43の開口端における幅d1よりも長い。言い換えると、開口部43の開口端における幅d1は、第1収納孔42の奥部分の内径d2よりも狭くなっている。そのため、光ファイバ同士の接続箇所が第1収納孔42の外部に出にくくなり、接続箇所を適切に保護することが可能になる。
【0038】
本実施形態においては、開口部43は、ホルダ40の外周面において長手方向にわたって設けられた切り欠きによって形成されている。また、当該切り欠きの幅は、第1収納孔42の奥部分の内径d2よりも狭く、長手方向にわたって一定であり、さらに、図6に示す断面内においても一定である。そのため、接続箇所を第1収納孔42に収納し易く、かつ、接続箇所を第1収納孔42の外部に出にくくなっている。
【0039】
第2収納孔44は、光ファイバの余長を収納可能なように構成されている。すなわち、第2収納孔44には、上流側および下流側のドロップケーブルに含まれる光ファイバの少なくとも一部が収納可能である。光ファイバの余長を収納可能なスペースを設けることで、作業効率を向上させることができる。
【0040】
各第2収納孔44は、図6に示すように、挿通孔41を中心とする同一円周上に、所定の間隔で設けられている。また、各第2収納孔44は、隣り合う2つの第1収納孔42の間にそれぞれ位置している。このような配置により、光ファイバの接続箇所を収納する第1収納孔42の近傍に当該接続箇所から延びる光ファイバの余長を収納できるため、作業効率をさらに向上させることができる。
【0041】
第2収納孔44は、第1収納孔42と同様に、ホルダ40を長手方向に貫通する孔である。一方で、第2収納孔44は、第1収納孔42とは異なり、ホルダ40の外周面に向かって開口していない。第2収納孔44を使用する際は、使用者が任意の位置に切り込みを入れて、第2収納孔44をホルダ40の外周面に向かって開口させ、その開口部分から第2収納孔44の内部へと光ファイバの余長を入れることになる。第2収納孔44は、使用者が切り込みを入れやすいように、ホルダ40の外周近傍に設けられている。
【0042】
なお、第2収納孔44を、第1収納孔42と同様に、当初からホルダ40の外周面に向かって開口した構造としてもよい。反対に、第1収納孔42を、第2収納孔44と同様に、当初はホルダ40の外周面に向かって閉じた構造としてもよい。また、ホルダ40の長手方向に直交する平面における第2収納孔44の断面形状は、第1収納孔42の断面形状と異なる形状としておいてもよい。収納すべきものを誤らないようにするためである。
【0043】
光ファイバ同士の接続箇所が第1収納孔42に収納され、光ファイバの余長を第2収納孔44に収納され、被収容体30をスリーブ10の内部に収容可能な状態になると、第1軸棒31と、ホルダ40と、後述の把持部55とは、保護シート33によって覆われる。保護シート33は、例えば、透明の薄いフィルムであり、光ファイバが周囲に拡がらないようにまとめるとともに、保護する役割を有する。これにより、被収容体30をスリーブ10の内部に収容する作業は容易になり、また、収容する際に誤って光ファイバを傷つけてしまうおそれも減らすことができる。
【0044】
図7は、本開示の一実施形態に係る把持具50の斜視図である。把持具50は、第2軸棒51と、シールスペーサ52と、把持部55と、を備えている。把持具50は、把持部55とシールスペーサとを一体化させることが可能なように構成されている。よって、クロージャ1の構成部品数を少なくし、クロージャ1の小型化に貢献できるとともに、コストダウンが可能となる。
【0045】
第2軸棒51は、被収容体30の長手方向に沿って設けられた棒状の部材である。第2軸棒51は、把持部55と一体的に形成されている。具体的には、第2軸棒51は、把持部55を基端として、開口側に向かって延びるように形成されている。第2軸棒51は、グロメット60及びシールスペーサ70に挿通される。すなわち、第2軸棒51は、グロメット60及びシールスペーサ70を支持する。また、既に述べたように、第2軸棒51は、キャップ20のケーブル挿入孔21にも挿通される。すなわち、クロージャの設置時において、第2軸棒51における開口側の先端は、スリーブ10の外部へ飛び出した状態となる。このような構成により、被収容体30をスリーブ10内から引き出し易くなり、作業効率を向上させることが可能になる。
【0046】
シールスペーサ52は、半割り構造になっており、シールスペーサ52a及び52bによって構成される。シールスペーサ52は、複数の上流側ケーブル挿入孔53(53a,53b)と、複数の下流側ケーブル挿入孔54(54a~54f)とを備えている。シールスペーサ52aには、シールスペーサ52aを貫通するように第2軸棒51が一体的に形成されている。上流側ケーブル挿入孔53には、上流側のドロップケーブルが挿入される。下流側ケーブル挿入孔54には、下流側のドロップケーブルが挿入される。
【0047】
上流側のドロップケーブルは、特に制限はされないが、例えば、4心や8心などの多心のテープ心線が収容されたケーブルが好ましい。また、下流側のドロップケーブルは、特に制限はされないが、例えば、単心のドロップケーブルが好ましい。通常、下流側のドロップケーブルよりも上流側のドロップケーブルの方が大きいため、下流側ケーブル挿入孔54よりも上流側ケーブル挿入孔53の方が大きくなっている。
【0048】
また、上流側ケーブル挿入孔53は、シールスペーサ52a及び52bのそれぞれに跨るように形成されている。すなわち、シールスペーサ52a及び52bを分離させた状態において、シールスペーサ52aに形成された上流側ケーブル挿入孔53は、シールスペーサ52bと対向する辺に向かって開口しており、また、シールスペーサ52bに形成された上流側ケーブル挿入孔53は、シールスペーサ52aと対向する辺に向かって開口している。上流側のドロップケーブルを上流側ケーブル挿入孔53に挿入する際は、例えば、シールスペーサ52a及び52bがそれぞれ分離した状態で、シールスペーサ52aに形成された上記開口から上流側ケーブル挿入孔53内へと上流側のドロップケーブルを入れる。そして、その状態で、シールスペーサ52aにシールスペーサ52bを組み合わせることで、上記開口が閉じ、上流側ケーブル挿入孔53の内部に上流側のドロップケーブルが挿通された状態になる。このような構成により、作業効率を向上させることができる。
【0049】
把持部55は、上流側ケーブル把持部56(56a,56b)と、下流側ケーブル把持部57(57a~57c)と、嵌合穴58(図10参照)と、を備えている。
【0050】
上流側ケーブル把持部56a及び56bは、それぞれ、上流側ケーブル挿入孔53a及び53bに対応する位置に設けられており、上流側ケーブル挿入孔53a及び53bに挿入された上流側のドロップケーブルを把持する。また、下流側ケーブル把持部57a~57cは、それぞれ、下流側ケーブル挿入孔54a~54cに対応する位置に設けられており、下流側ケーブル挿入孔54a~54cに挿入された下流側のドロップケーブルを把持する。なお、図示はしていないが、下流側ケーブル把持部57は、下流側ケーブル挿入孔54d~54fに対応する把持部も備えている。
【0051】
上流側ケーブル把持部56及び下流側ケーブル把持部57は、弾性変形可能な樹脂によって形成された溝部をそれぞれ備えている。各ドロップケーブルは、上記の溝部によって挟み込まれて、把持される。また、上記の溝部には、複数の突起(鬼目)が設けられている。当該突起が各ドロップケーブルの外被材に食い込むことで、各ドロップケーブルをより安定的に把持することが可能になる。
【0052】
嵌合穴58は、把持部55における底部側の端部に設けられている。嵌合穴58は、第1軸棒31における開口側の端部と嵌合可能である。嵌合穴58は、第1軸棒31と分離可能であってもよいし、一体不可分に構成してもよい。
【0053】
図8は、本開示の一実施形態に係るグロメット60の斜視図である。グロメット60は、第2軸棒挿通孔61と、上流側ケーブル挿入孔63(63a,63b)と、下流側ケーブル挿入孔64(64a~64f)と、スリット65と、を備えている。
【0054】
第2軸棒挿通孔61には、第2軸棒51が挿通される。上流側ケーブル挿入孔63には、上流側のドロップケーブルが挿入される。スリット65は、グロメット60の外周面から上流側ケーブル挿入孔63に向けられた切り込みである。スリット65を備えることで、上流側ケーブル挿入孔63に上流側のドロップケーブルを挿入し易くなっている。下流側ケーブル挿入孔64には、下流側のドロップケーブルが挿入される。
【0055】
グロメット60の構成材料は、例えば、弾性変形が可能なものであることが好ましく、具体的には、硬質ゴムが好ましい。グロメット60の形状は、グロメット60が収容される箇所におけるスリーブ10の内部形状に対応することが好ましい。すなわち、グロメット60の外径は、グロメット60が収容される箇所におけるスリーブ10の内径と等しいか僅かに小さいことが好ましい。また、第2軸棒挿通孔61は、第2軸棒51に対応する形状を有することが好ましい。具体的には、第2軸棒挿通孔61の内径は、第2軸棒51の外径と等しいか僅かに小さいことが好ましい。また、上流側ケーブル挿入孔63は、上流側のドロップケーブルに対応する形状を有することが好ましい。具体的には、上流側ケーブル挿入孔63の内径は、上流側のドロップケーブルの外径と等しいか僅かに小さいことが好ましい。また、下流側ケーブル挿入孔64は、下流側のドロップケーブルに対応する形状を有することが好ましい。具体的には、下流側ケーブル挿入孔64の内径は、下流側のドロップケーブルの外径と等しいか僅かに小さいことが好ましい。これらの構成により、スリーブ10の内部の密閉性を高めることが容易になる。但し、それ以外の構成であってもグロメット60が十分変形可能であれば、スリーブ10の内部の密閉性を維持することができる。グロメット60による密閉性の向上については、後の段落にて、図10を用いて詳述する。
【0056】
図9は、本開示の一実施形態に係るシールスペーサ70の斜視図である。シールスペーサ70は、半割り構造になっており、シールスペーサ片72a及び72bによって構成される。シールスペーサ片72aに設けられた嵌合突起75(75a,75b)と、シールスペーサ片72bに設けられた嵌合孔76(76a,76b)とを嵌合させることで、シールスペーサ70となる。なお、上記のような半割り構造を採用した理由は、上述のシールスペーサ52と同様で、上流側、下流側のドロップケーブルを挿入し易くするためで
ある。シールスペーサ52に関する説明と、シールスペーサ70に関する説明とは、矛盾が生じない範囲内で、互いに援用可能である。
【0057】
シールスペーサ70は、第2軸棒挿通孔71と、複数の上流側ケーブル挿入孔73(73a,73b)と、複数の下流側ケーブル挿入孔74(74a~74f)と、を備えている。第2軸棒挿通孔71には、第2軸棒51が挿通される。上流側ケーブル挿入孔73には、上流側のドロップケーブルが挿入される。下流側ケーブル挿入孔74には、下流側のドロップケーブルが挿入される。
【0058】
以下、図10を用いて、グロメット60による密閉性の向上について説明する。図10は、図4に示すクロージャ1の部分的な模式断面図である。図10は、具体的には、ネジ23a及び23bを通り、かつ、長手方向に平行な平面でクロージャ1を切断した場合における、グロメット60の近傍を示す断面図である。
【0059】
当接面14は、スリーブ10においてネジ孔13が設けられている端面である。被収容体30をスリーブ10内に収容した後、キャップ20をスリーブ10に固定しようとする場面において、当初は、当接面14と、キャップ20における当接面14に対向する面との間に、隙間が存在する。その状態において、ネジ23をネジ孔13に螺合させていくと、キャップ20が被収容体30の方向へと締め付けられながら固定されることになる。つまり、キャップ20には図10のA方向への力が加えられることになるので、上記隙間は徐々に狭まっていく。そして、最終的には、図10に示すような、キャップ20が当接面14に当接した状態となる。この状態では、キャップ20が被収容体30を押圧しており、具体的には、キャップ端面24が被収容体30の一つであるシールスペーサ70を底部側へと押圧している。
【0060】
キャップ端面24によって押圧されたシールスペーサ70は、他の被収容体30であるグロメット60を押圧する。そして、グロメット60は、シールスペーサ52を押圧する。しかし、シールスペーサ52は、その一部がスリーブ10の内部に設けられた当接面15に当接しているため、当接面15よりも底部側へと移動することを制限されている。よって、グロメット60は、シールスペーサ52及びシールスペーサ70の双方から挟み込まれるように圧力を受け、図10のB方向(長手方向)に圧縮されることになる。その結果、グロメット60が長手方向に縮むと共に、径方向(B方向と直交する方向)に拡がるまたは狭まるように弾性変形して、スリーブ10、第2軸棒51、上流側ケーブル、及び下流側ケーブルそれぞれと、グロメット60との間が密着する。すなわち、クロージャ1の設置時において、キャップ20をスリーブ10に固定することで、キャップ20とスリーブ10内部、ケーブルとケーブル挿入孔近傍のそれぞれをまとめて一度に密閉することができる。以上のように簡便な方法で、グロメット60よりも底部側の部分を水密となるように密閉することが可能になる。
【0061】
なお、キャップ20が被収容体30を押圧した状態で、キャップ20をスリーブ10に固定する方法としては、グロメット60を強い力で圧縮することが容易であって、スリーブ10内の密閉性をさらに向上させることができるという観点からは、上述のような、ネジ止めによる方法が好ましいが、これに限定されるわけではない。例えば、スリーブ10内部に突起を設け、キャップ20が被収容体30を押圧した状態において当該突起と係合可能な凹みをキャップ20に設けるなど、種々の方法を採用可能である。
【0062】
以上述べたような本開示のクロージャ1によれば、従来のクロージャよりも小型化することが可能である。地下に敷設する従来のクロージャは、小型なものでも、例えば、幅120mm、高さ230mm、長さ180mm程度の大きさを有する。一方で、本開示のクロージャ1は、例えば、幅70mm、高さ(長手方向の長さ)210mm、長さ50mm程度の大きさとすることが可能である。
【0063】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【符号の説明】
【0064】
1:クロージャ
10:スリーブ
11:開口
12:U字切り欠き
13(13a,13b):ネジ孔
14,15:当接面
20:キャップ
21:ケーブル挿入孔(第1挿入孔)
23(23a,23b):ネジ
24:キャップ端面
30:被収容体
31:第1軸棒(棒状部材)
32:凹部
33:保護シート
40:ホルダ
41:挿通孔
42:第1収納孔
43:開口部(切り欠き)
44:第2収納孔
45:凸部
50:把持具
51:第2軸棒
52(52a,52b):シールスペーサ
53(53a,53b):上流側ケーブル挿入孔
54(54a~54f):下流側ケーブル挿入孔
55:把持部
56(56a,56b):上流側ケーブル把持部
57(57a~57c):下流側ケーブル把持部
58:嵌合穴
60:グロメット
61:第2軸棒挿通孔
63(63a,63b):上流側ケーブル挿入孔(第2挿入孔)
64(64a~64f):下流側ケーブル挿入孔(第2挿入孔)
65:スリット
70:シールスペーサ
71:第2軸棒挿通孔
72(72a,72b):シールスペーサ片
73(73a,73b):上流側ケーブル挿入孔
74(74a~74f):下流側ケーブル挿入孔
75(75a,75b):嵌合突起
76(76a,76b):嵌合孔
d1:開口幅
d2:第1収納孔の内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10