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特許7253485チップ状電子部品用キャリアテープ台紙及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】チップ状電子部品用キャリアテープ台紙及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/90 20060101AFI20230330BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20230330BHJP
   D21H 17/60 20060101ALI20230330BHJP
   D21H 17/14 20060101ALI20230330BHJP
   B65D 75/36 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B65D85/90 300
D21H27/00 E
D21H17/60
D21H17/14
B65D75/36
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019233096
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021100863
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】田村 篤
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰久
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-136273(JP,A)
【文献】特開2004-067222(JP,A)
【文献】特開2006-143227(JP,A)
【文献】特開平09-021090(JP,A)
【文献】特開2014-213477(JP,A)
【文献】特開2014-227216(JP,A)
【文献】特開2004-255736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00-79/02
B65D 85/86-85/90
D21H 11/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層と、少なくとも1層以上の中間層と、裏層と、を有する3層以上の多層抄きのチップ状電子部品用キャリアテープ台紙において、
前記中間層の少なくとも1層は、1層あたり、合計含有量が5ppm以上10000ppm以下のワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を含み、
前記表層及び前記裏層の前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩の合計含有量は、1層あたり0ppm以上1000ppm以下であることを特徴とするチップ状電子部品用キャリアテープ台紙。
【請求項2】
前記ワックス類が、合成ワックス、天然ワックス及び配合・変性ワックスの中から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙。
【請求項3】
前記高級脂肪酸塩が、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム及びラウリン酸カルシウムの中から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙。
【請求項4】
前記中間層が2層以上であり、該中間層のすべての層が前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙。
【請求項5】
無機填料の含有量が、チップ状電子部品用キャリアテープ台紙の質量中1質量%以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙。
【請求項6】
表層と、少なくとも1層以上の中間層と、裏層と、を有する3層以上の多層抄きのチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法において、
前記中間層を抄紙するためのパルプスラリーのうち少なくとも1層のためのパルプスラリーにワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を前記1層のためのパルプスラリー中のパルプに対して合計で5ppm以上10000ppm以下添加し、かつ、前記表層を抄紙するためのパルプスラリー及び前記裏層を抄紙するためのパルプスラリーには前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩を添加しないか又は1層あたり合計で1000ppm以下添加して、抄紙することを特徴とするチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法。
【請求項7】
前記中間層が2層以上であり、該中間層を抄紙するためのすべての層のパルプスラリーに前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩を添加することを特徴とする請求項6に記載のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法。
【請求項8】
前記パルプスラリーへの前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩の添加に加えて、各層の湿紙を抄き合わせる前に、(1)前記表層と前記中間層との間の該中間層側、(2)前記裏層と前記中間層との間の該中間層側、及び(3)前記中間層同士の間、の(1)~(3)の少なくとも1つに前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩を噴霧することによって、前記中間層に前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩を添加することを特徴とする請求項6又は7に記載のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法。
【請求項9】
表層と、少なくとも1層以上の中間層と、裏層と、を有する3層以上の多層抄きのチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法において、
各層の湿紙を抄き合わせる前に、(1)前記表層と前記中間層との間の該中間層側、(2)前記裏層と前記中間層との間の該中間層側、及び(3)前記中間層同士の間、の(1)~(3)の少なくとも1つに前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩を噴霧することによって、前記中間層に前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩を合計で5ppm以上10000ppm以下添加し、
抄紙前の前記表層及び前記裏層には前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩を添加しないか又は1層あたり合計で1000ppm以下添加して、抄紙することを特徴とするチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チップ状電子部品用キャリアテープ台紙及びチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法に関する。更に詳しくは、チップ状電子部品装填用の凹状又は穿孔の装填部の形成の際に、金型先端部の摩耗を起こしにくいチップ状電子部品用キャリアテープ台紙及びチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の電子機器の自動生産化を図るために、プリント基板に対してチップ状電子部品の自動装着がなされている。チップ状電子部品の自動装着工程では、チップ部品実装機などを用いて、プリント配線板にチップ状電子部品を1つずつ供給し、プリント配線板に自動装着している。この自動装着工程において、チップ状電子部品の取り扱いを容易に行うために、個々のチップ状電子部品をテープ状の搬送体で包装したテーピング包装体が使用されている。
【0003】
前記テーピング包装体は、キャリアテープ台紙に、チップ状電子部品装填用の凹状又は穿孔の装填部(以下、単に「装填部」と記載することがある。)を一定間隔で形成し、前記装填部に所定のチップ状電子部品を装填した後、カバーテープで封入することによって形成されている。なお、装填部は、一般的に角形に設けられ、プレスポケットやキャビティーなどと称されることもある。装填部は金型を用いて形成される(例えば、特許文献1又は2を参照。)。
【0004】
チップ状電子部品を装填したテーピング包装体は、リール状に搬送され、チップ状電子部品を装着する自動機械によって連続的にカバーテープが引き剥がされ、チップ状電子部品がキャリアテープ台紙から順次取り出されてプリント配線板の所定の位置に自動装着される。
【0005】
キャリアテープ台紙は、プラスチック製と紙製とに大別される。製造コスト、非帯電性、使用後の廃棄容易性などの点で紙製が望ましいとされている。紙製のキャリアテープ台紙としては、単層又は多層抄きの板紙製のものが知られている(例えば、特許文献3~5を参照。)。
【0006】
特許文献3~5のような紙製のキャリアテープ台紙においては、その装填部の形状が正確に形成されることが要求される。その為には、装填部を形成するために使用する金型が摩耗しにくいことが求められる。金型が摩耗すると装填部の形成不良が生じやすくなるため、金型を研磨又は新調する必要があり、操業性を著しく悪化させるほか、コストがかかるなどの問題がある。このような問題を解決するために、金型摩耗を抑制するキャリアテープ台紙が開示されている(例えば、特許文献6を参照。)。また、キャリアテープ台紙に表面サイズ剤、ワックス、若しくは特定の溶解パラメーターの接着剤を表面に塗工する提案がある(例えば、特許文献7,8を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-211507号公報
【文献】特開平10-218281号公報
【文献】特開平09-188385号公報
【文献】特開2005-313946号公報
【文献】特開2008-230651号公報
【文献】特開2006-143227号公報
【文献】特開2009-57114号公報
【文献】特開2012-96804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献6~8の何れもトップカバーテープの接着性改善が目的であり、台紙表面への処理のため金型の摩耗に対しては効果が低いという問題がある。装填部の形成においては、金型の摩耗の抑制が重要であるのにもかかわらず、トップテープ剥離時にケバを発生させない、キャリアテープ台紙の層間剥離や層内剥離を起こさせないなどの理由によってキャリアテープ自体の強度を上げ、結果として金型の摩耗を引き起こす問題が発生している。
【0009】
このような問題に鑑み、本開示は、チップ状電子部品装填用の凹状又は穿孔の装填部の形成の際に、金型先端部の摩耗を抑制でき、結果的に金型の交換を最小限とすることができるチップ状電子部品用キャリアテープ台紙及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本開示は、生産効率を向上することができるチップ状電子部品用キャリアテープ台紙及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的並びに作用効果については、以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、表層と、少なくとも1層以上の中間層と、裏層と、を有する3層以上の多層抄きのチップ状電子部品用キャリアテープ台紙において、前記中間層の少なくとも1層は、1層あたり、合計含有量が5ppm以上10000ppm以下のワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を含み、前記表層及び前記裏層の前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩の合計含有量は、1層あたり0ppm以上1000ppm以下であることを特徴とする。このような構成とすることで、チップ状電子部品装填用の凹状又は穿孔の装填部の形成の際に、金型先端部の摩耗を起こしにくいチップ状電子部品用キャリアテープ台紙とすることができる。
【0012】
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙では、前記ワックス類が、合成ワックス、天然ワックス及び配合・変性ワックスの中から選ばれる少なくとも一種である形態を包含する。
【0013】
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙では、前記高級脂肪酸塩が、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム及びラウリン酸カルシウムの中から選ばれる少なくとも一種である形態を包含する。
【0014】
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙では、前記中間層が2層以上であり、該中間層のすべての層が前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩を含むことが好ましい。金型先端部の摩耗をより軽減することができる。
【0015】
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙では、無機填料の含有量が、チップ状電子部品用キャリアテープ台紙の全質量中1質量%以下であることが好ましい。金型先端部の摩耗をより軽減することができる。
【0016】
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法は、表層と、少なくとも1層以上の中間層と、裏層と、を有する3層以上の多層抄きのチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法において、前記中間層を抄紙するためのパルプスラリーのうち少なくとも1層のためのパルプスラリーにワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を前記1層のためのパルプスラリー中のパルプに対して合計で5ppm以上10000ppm以下添加し、かつ、前記表層を抄紙するためのパルプスラリー及び前記裏層を抄紙するためのパルプスラリーには前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩を添加しないか又は1層あたり合計で1000ppm以下添加して、抄紙することを特徴とする。
【0017】
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法では、前記中間層が2層以上であり、該中間層を抄紙するためのすべての層のパルプスラリーに前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩を添加することが好ましい。金型先端部の摩耗をより軽減することができる。
【0018】
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法では、前記パルプスラリーへの前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩の添加に加えて、各層の湿紙を抄き合わせる前に、(1)前記表層と前記中間層との間の該中間層側、(2)前記裏層と前記中間層との間の該中間層側、及び(3)前記中間層同士の間、の(1)~(3)の少なくとも1つに前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩を噴霧することによって、前記中間層に前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩を添加することが好ましい。
【0019】
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法は、表層と、少なくとも1層以上の中間層と、裏層と、を有する3層以上の多層抄きのチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法において、各層の湿紙を抄き合わせる前に、(1)前記表層と前記中間層との間の該中間層側、(2)前記裏層と前記中間層との間の該中間層側、及び(3)前記中間層同士の間、の(1)~(3)の少なくとも1つに前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩を噴霧することによって、前記中間層に前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩を合計で5ppm以上10000ppm以下添加し、抄紙前の前記表層及び前記裏層には前記ワックス類及び/又は前記高級脂肪酸塩を添加しないか又は1層あたり合計で1000ppm以下添加して、抄紙することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、チップ状電子部品装填用の凹状又は穿孔の装填部の形成の際に、金型先端部の摩耗を抑制でき、結果的に金型の交換を最小限とすることができるチップ状電子部品用キャリアテープ台紙及びその製造方法を提供することができる。本開示のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙及びその製造方法であれば、生産効率を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0022】
本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、表層と、少なくとも1層以上の中間層と、裏層と、を有する3層以上の多層抄きのチップ状電子部品用キャリアテープ台紙において、中間層の少なくとも1層は、1層あたり5ppm以上10000ppm以下のワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を含み、表層及び裏層のワックス類及び/又は高級脂肪酸塩の合計含有量は、1層あたり0ppm以上1000ppm以下である。本明細書において、ppmは、質量百万分率である。
【0023】
本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、基紙中の中間層にワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を存在させ装填部の形成の際の金型の摩耗を抑制するものである。また表層及び裏層にワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を存在させないか、又は存在を最小限とすることでキャリアテープ搬送の際の搬送性を良好とすることができる。なお、本実施形態において、ワックス類とは一般に「常温で固体、加熱すると液体となる有機物」と定義される。ワックスは天然ワックス、合成ワックス、配合・変性ワックスに大別される。天然ワックスは蜜蝋若しくは鯨蝋などの動物ワックス、木蝋若しくは米糠蝋などの植物ワックス、モンタンワックス若しくはオゾケライトなどの鉱物ワックス、又はパラフィンワックス若しくはマイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックスに分類される。合成ワックスの代表例としてフィッシャー・トロプシュワックスワックス、ポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックスなどが挙げられる。配合・変性ワックスの代表例として配合ワックス又は酸化ワックスなどが挙げられる。本実施形態では、ワックス類が合成ワックスであることが好ましく、中でもポリエチレンワックスであることがより好ましい。合成ワックスとすることで、合成によって作られるため粒子径を揃えられ金型先端部への耐摩耗を安定させることができる。ワックス類を含有することによって滑り性が増し金型摩耗を低減する。上記に示したワックス類を1種類若しくは2種類以上の組合せで使用してもよい。また、パルプスラリー中にワックス類を添加する場合、ワックス類のイオン性はカチオン性であることが好ましい。パルプ自体はアニオン性であるため、カチオン性のワックス類を用いることでワックス類が定着しやすい。ワックス類がアニオン性の場合は硫酸バンドやカチオン澱粉に代表されるカチオン性資材を併用することが好ましい。ノニオン性は定着しにくいためパルプスラリーに添加する方式には好ましくない。
【0024】
高級脂肪酸塩は、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム又はラウリン酸カルシウムである。このうち、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸マグネシウムであることが好ましい。
【0025】
本実施形態では、表層は、台紙のいずれか一方の最外層である。裏層は、台紙のいずれか他方の最外層である。テーピング包装袋製造時にカバーテープが接する面は、表層の表面であっても、裏層の表面であってもよい。中間層は、表層と裏層との間の層である。中間層は、1層だけであっても、2層以上であってもよい。台紙が4層以上の場合は表層と裏層に挟まれた複数層を中間層とする。
【0026】
ワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を含む形態は、例えば、ワックス類を1種だけ含有する形態、ワックス類を2種以上含有する形態、高級脂肪酸塩を1種だけ含有する形態、高級脂肪酸塩を2種以上含有する形態、又は、ワックス類を1種以上と高級脂肪酸塩を1種以上とを含有する形態であってもよい。
【0027】
中間層の少なくとも1層のワックス類及び/又は高級脂肪酸塩の合計含有量は、1層あたり5ppm以上10000ppm以下であり、10ppm以上5000ppm以下であることがより好ましく、50ppm以上3000ppm以下であることが更に好ましい。5ppm未満では、滑りが不足し結果として金型摩耗が大きくなる。10000ppmを超えるとキャリアテープ台紙の繊維間結合を阻害し、強度低下を起こし、結果としてカバーテープを剥離させたときにケバが立つ、若しくは層内、層間強度が低下し台紙内部で剥離が発生しやすくなる。中間層が1層だけの場合、当該層にはワックス類及び/又は高級脂肪酸塩が含まれる。中間層が2層以上の場合、1層だけにワックス類及び/又は高級脂肪酸塩が含まれ、ワックス類及び/又は高級脂肪酸塩が含まれない中間層があってもよいが、中間層の全ての層にワックス類及び/又は高級脂肪酸塩が含まれることがより好ましい。
【0028】
表層のワックス類及び/又は高級脂肪酸塩の合計含有量は、1層あたり0ppm以上1000ppm以下である。裏層のワックス類及び/又は高級脂肪酸塩の合計含有量は、1層あたり0ppm以上1000ppm以下である。表層及び裏層は、いずれもワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を含有しないことが好ましい。表層のワックス類及び/又は高級脂肪酸塩の合計含有量又は裏層のワックス類及び/又は高級脂肪酸塩の合計含有量が1層あたり1000ppmを超えると、表層又は裏層の摩擦係数が低くなりすぎて、キャリアテープ搬送の際にスリップを生じてしまう。
【0029】
本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙では、中間層が2層以上であり、中間層のすべての層がワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を含むことが好ましい。金型先端部の摩耗をより軽減することができる。3層以上の多層抄きのチップ状電子部品用キャリアテープ台紙において、中間層の全ての層に少なくとも5ppm以上ワックス類を含み、表層及び裏層にワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を含まないことが好ましい。中間層の1層あたりに含まれるワックス類は10ppm以上が好ましく、より好ましくは50ppm以上である。5ppm未満の層が存在するとその部分で滑りが不足し結果として金型摩耗が大きくなる場合がある。中間層の1層あたりに含まれるワックス類は、10000ppm以下であることが好ましく、5000ppm以下であることがより好ましく、3000ppm以下であることが更に好ましい。10000ppmを超えるとキャリアテープ台紙の繊維間結合を阻害し、強度低下を起こし、結果としてカバーテープを剥離させたときにケバが立つ、若しくは層内、層間強度が低下し台紙内部で剥離が発生しやすくなる場合がある。
【0030】
本実施形態のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、パルプを主成分とする基紙を有する。ここで、主成分とは、基紙を構成する成分のうち質量基準で最も含有量の多い成分をいう。本実施形態では、基紙を構成する成分のうちパルプが50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。基紙に使用する原料パルプとしては、特に限定するものではないが、木材パルプを好適に使用することができる。木材パルプとしては、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)や針葉樹未晒しクラフトパルプ(NUKP)、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒しクラフトパルプ(LUKP)などの化学パルプ、砕木パルプ(GP)やサーモメカニカルパルプ(TMP)などの機械パルプ、脱墨パルプなどの古紙パルプが挙げられる。これらの原料パルプから選択した1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、特に、NBKPとLBKPを単独または併用することが好ましい。例えば、LBKPをパルプスラリー中70~100質量%または90~100質量%含むものを使用することができる。なお、本発明において古紙パルプを採用することは可能であるが、古紙パルプは異物を含むことが多く、基紙への石英の混入の増加に繋がる可能性がある。従って、古紙パルプの製造工程においては、クリーナー等での異物除去を高レベルで行うことが好ましい。また、古紙パルプのうち自己回流損紙はワックス類を含むため、中間層のパルプとして配合することが好ましい。
【0031】
前記原料パルプは、離解機及び叩解機を使用して適切な叩解度を有するパルプスラリーとする。本発明においては、カナダ標準濾水度(JIS P 8121:1995 パルプのろ水度試験方法)でCSF300~800mlとすることが好ましい。より好ましくは、CSF350~650mlであり、更に好ましくはCSF410~580mlである。
【0032】
本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法は、表層と、少なくとも1層以上の中間層と、裏層と、を有する3層以上の多層抄きのチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法において、中間層を抄紙するためのパルプスラリーのうち少なくとも1層のためのパルプスラリーにワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を前記1層のためのパルプスラリー中のパルプに対して合計で5ppm以上10000ppm以下添加し、かつ、表層を抄紙するためのパルプスラリー及び裏層を抄紙するためのパルプスラリーにはワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を添加しないか又は1層あたり合計で1000ppm以下添加して、抄紙する。
【0033】
本実施形態では、ワックス類及び/又は高級脂肪酸塩は、少なくとも中間層の少なくとも1層のパルプスラリーに添加する。パルプスラリーにワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を添加することで、添加した中間層の全体にわたってワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を存在させることができるため、添加した中間層の全体にわたって滑りが良好となり、金型の摩耗を抑制することができる。
【0034】
本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法では、中間層が2層以上であり、中間層のすべての層のパルプスラリーにワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を添加することが好ましい。金型先端部の摩耗をより軽減することができる。
【0035】
本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法では、パルプスラリーへのワックス類及び/又は高級脂肪酸塩の添加に加えて、各層の湿紙を抄き合わせる前に、(1)表層と中間層との間の該中間層側、(2)裏層と中間層との間の該中間層側、及び(3)中間層同士の間、の(1)~(3)の少なくとも1つにワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を噴霧することによって、中間層にワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を添加することが好ましい。ワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を噴霧する場所は、例えば、(1)表層と中間層との間の中間層側だけの形態、(2)中間層と裏層との間の中間層側だけの形態、(3)中間層が2層以上の場合は中間層同士の間だけの形態、前記(1)及び前記(2)の形態、前記(1)及び前記(2)の形態、前記(1)、前記(2)及び前記(3)の形態である。このうち、前記(3)中間層が2層以上の場合は中間層同士の間だけの形態がより好ましい。
【0036】
適切な叩解度に調整したパルプスラリーを原料スラリーとし、抄紙機で抄紙してキャリアテープ台紙の基紙を形成する。抄紙機は公知の抄紙機を用いることができる。すなわち、長網式抄紙機、円網式抄紙機、ハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマー等で抄紙することができる。基紙の構成は3層以上の多層抄きが好ましい。3層以上の多層抄きとすることで中間層のみワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を使用することができ、表層の表面及び裏層の表面にワックス類及び/又は高級脂肪酸塩の存在を避けることができるため表面強度への悪影響を抑えることができる。層数の上限は、特に限定されないが、7層以下であることが好ましく、6層以下であることがより好ましい。3層以上の多層とする場合には、各層間には、層間強度を向上させることを目的として、層間に澱粉やポリアクリルアマイド水溶液を噴霧して抄紙してもよい。また層間に澱粉やポリアクリルアマイド水溶液にワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を添加して噴霧してもよい。また自己回流損紙にもワックス類が含まれるが、このワックス類も金型先端部の摩耗低減の効果を持つため有効に中間層へ配合してもよい。
【0037】
原料スラリーには、ワックス類の他、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で、填料、紙力剤、サイズ剤、歩留まり向上剤、着色染料、着色顔料などの製紙用添加剤を適宜添加してもよいが、金型の摩耗を軽減するため填料、特に無機填料はキャリアテープ台紙中に1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下である。本明細書において、無機填料には、原料パルプに由来して意図せずに混入する灰分が含まれる。キャリアテープ台紙中に含まれる無機填料の含有量の下限値は、特に限定されないが、この非意図的に混入する灰分を考慮して、0.1質量%以上であってもよい。また、基紙の表面には、必要に応じて表面紙力増強剤を塗布することができる。基紙への塗布方法は限定するものではなく、2本ロールサイズプレス、ゲートロールサイズプレス、メタリングサイズプレス等の塗工機を用いて塗布することができる。これらの中でも、製造効率や加工適性、表面強度の向上、紙層強度の向上の観点から2本ロールサイズプレスを使用することが好ましい。表面紙力増強剤の塗布量は、基紙の両面当たり固形分換算で0.5~5g/mであることが好ましく、より好ましくは1~3.5g/mの範囲である。
【0038】
本実施形態においては、乾燥後の基紙を、必要に応じて平滑化処理してもよい。平滑化処理の方法は特に限定するものではなく、マシンキャンダー、ソフトキャレンダ-、スーパーキャレンダ-などを用いることができる。
【0039】
基紙の厚さは、装填されるチップ状電子部品の大きさによっても異なるが、50~1200μmとすることが好ましく、より好ましくは200~1000μmである。また、基紙全体の坪量は200~1200g/mとすることが好ましく、より好ましくは250~1100g/mである。基紙全体の坪量に対する中間層の坪量の占める割合は、10~90%であることが好ましく、20~70%であることがより好ましく、45~65%であることが更に好ましい。中間層の坪量の占める割合が10%未満では、金型の摩耗を抑制する効果が不足する場合がある。中間層の坪量の占める割合が90%を超えると、層間剥離強度が不足する場合がある。
【0040】
本実施形態のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、チップ状電子部品を装填するための装填部を一定間隔で形成し、前記装填部にチップ状電子部品を装填した後、カバーテープで封入し、チップ状電子部品用キャリアテープとして使用される。装填部は、エンボス加工によって形成される有底の凹部又は打ち抜き加工によって形成される貫通孔のいずれでもよい。貫通孔とする場合は、キャリアテープ台紙の一方の面にボトムテープを装着して貫通孔の一方の孔を塞ぎ、装填部を形成する。
【0041】
本実施形態のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、チップ状電子部品装填用の凹状の装填部を形成するために用いられる場合に、よりその効果を発揮しやすい。すなわち、凹状の装填部を形成するためには、前述したエンボス加工のような方法が考えられるが、この方法は、貫通孔を形成する場合とは異なり、打ち抜き時の金型にかかる圧力が大きくなる。貫通孔を形成する場合には、金型が基紙を貫通するので、貫通時に基紙に加わった圧力は比較的逃げやすくなるが、凹状の装填部を形成する場合は、基紙への圧力が逃げにくく、金型へかかる圧力も大きくなる。それゆえに、台紙と金型が接触することにより生じる摩耗も、凹状の装填部を形成する場合の方が、貫通孔を形成する場合よりも発生しやすくなるのだが、本発明のチップ状電子部品用キャリアテープ台紙によれば、凹状の装填部を形成する場合であっても金型の摩耗の問題を抑制することができる。
【0042】
ここまで、中間層を抄紙するためのパルプスラリーへワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を添加する方法について説明してきたが、本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法は、中間層を抄紙するためのパルプスラリーへはワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を添加せず、層間だけにワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を噴霧することによって中間層へワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を添加させてもよい。具体的には、本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法は、表層と、少なくとも1層以上の中間層と、裏層と、を有する3層以上の多層抄きのチップ状電子部品用キャリアテープ台紙の製造方法において、各層の湿紙を抄き合わせる前に、(1)表層と中間層との間の該中間層側、(2)裏層と中間層との間の該中間層側、及び(3)中間層同士の間、の(1)~(3)の少なくとも1つにワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を噴霧することによって、中間層にワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を合計で5ppm以上10000ppm以下添加し、抄紙前の表層及び裏層にはワックス類及び/又は高級脂肪酸塩を添加しないか又は1層あたり1000ppm以下添加して、抄紙してもよい。
【実施例
【0043】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0044】
<実施例1>
基紙として表層(1層目)、中間層(2~4層目)、裏層(5層目)の5層抄きの紙を次の通り抄造した。カナディアンスタンダードフリーネス(CSF)450mlのLBKP100部からなるパルプスラリーに、硫酸バンドを0.3部、カチオン性デンプン(商品名:ネオタック#30T/日本食品加工社製)1部、ロジンエマルジョンサイズ剤(商品名:CC-1404/星光PMC社製)0.4部を添加し原料スラリーを得た。得られた原料スラリーにカチオン性ポリエチレンワックス(メイカテックスHP-10/明成化学工業社製)が台紙中の中層3層全てのパルプに対して各々1000ppm含有するように添加し、表層及び裏層には前記カチオン性ポリエチレンワックスを添加せずに円網抄紙機によって表層、中間層、裏層からなる5層の湿紙を抄き合わせて抄紙し基紙を得た。その後、プレスパートで窄水し、乾燥後、2本ロールサイズプレスにて酸化澱粉(SK-20/日本コーンスターチ社製)6%のサイズ液を基紙の両面あたり3g/mとなるように塗布し、水分含有率が9%となるようにシリンダードライヤーで乾燥、多段キャレンダーにより平滑化処理をさせて目的とするチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。なお、各層の坪量は、表層を100g/m、中間層を100g/mを3層、裏層を100g/mとして、基紙全体の坪量を、500g/mとした。チップ状電子部品用キャリアテープ台紙中の灰分は、0.4質量%であった。この灰分は、パルプ由来と考えられる。
【0045】
<実施例2>
台紙中の中間層3層全てにカチオン性ポリエチレンワックスが各々5ppm含有するように変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0046】
<実施例3>
台紙中の中間層3層全てにカチオン性ポリエチレンワックスが各々10ppm含有するように変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0047】
<実施例4>
台紙中の中間層3層全てにカチオン性ポリエチレンワックスが各々3000ppm含有するように変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0048】
<実施例5>
台紙中の中間層3層全てにカチオン性ポリエチレンワックスが各々10000ppm含有するように変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0049】
<実施例6>
台紙中の中間層にカチオン性ポリエチレンワックスが2層目と4層目に1000ppm、3層目に5ppm含有するように変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0050】
<実施例7>
台紙中の中間層にカチオン性ポリエチレンワックスが2層目と4層目に5ppm、3層目に1000pm含有するように変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0051】
<実施例8>
5層の湿紙を抄き合わせる直前に層間にカチオン性ポリエチレンワックスを噴霧し、台紙中にカチオン性ポリエチレンワックスが中間層各層に1000pm含有するように変更した以外は実施例2と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。層間への噴霧は、具体的には、中間層同士の間とした。
【0052】
<実施例9>
カチオン性ポリエチレンワックスからアニオン性ポリエチレンワックス(メイカテックスKSP:明成化学工業社製)に変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0053】
<実施例10>
カチオン性ポリエチレンワックスからノニオン性ポリエチレンワックス(メイカテックスHP-70:明成化学工業社製)に変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0054】
<実施例11>
カチオン性ポリエチレンワックスからステアリン酸カルシウム(堺化学工業社製)に変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0055】
<実施例12>
基紙として表層(1層目)、中間層(2層目)、裏層(3層目)の3層抄きの紙を次の通り抄造した。5層抄き合わせから3層抄き合わせに変更し、各層の坪量は、表層を100g/m、中間層を100g/mを3層、裏層を100g/mから表層を125g/m、中間層を250g/mを1層、裏層を125g/mとして、基紙全体の坪量を500g/mとし、台紙中の中間層にカチオン性ポリエチレンワックスが1000ppm含有するように変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0056】
<実施例13>
カチオン性ポリエチレンワックスからパラフィンワックス155(日本精鑞社製)に変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0057】
<実施例14>
カチオン性ポリエチレンワックスからステアリン酸マグネシウム(堺化学工業社製)に変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0058】
<実施例15>
パルプスラリーに炭酸カルシウム(ソフトン1500:備北粉化工業社製)を添加して、チップ状電子部品用キャリアテープ台紙中の無機填料の含有量を1.5質量%とした以外は、実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0059】
<実施例16>
台紙中の中間層にカチオン性ポリエチレンワックスが2層目と4層目に1000ppm、3層目には無添加となるように変更した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0060】
<比較例1>
カチオン性ポリエチレンワックスを無添加とした以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0061】
<比較例2>
サイズ液にノニオン性ポリエチレンワックスを添加することでノニオン性ポリエチレンワックスを両面あたり0.2g/m塗布し、原料スラリーへカチオン性ポリエチレンワックスを無添加とした以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0062】
<比較例3>
サイズ液に使用する酸化澱粉をノニオン性ポリエチレンワックスに変更し、塗布量を両面あたり3g/mから表層表面(片面)に0.2g/m塗布とした以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。尚、表層側がカバーテープ側である。
【0063】
<比較例4>
原料スラリーに、カチオン性ポリエチレンワックス(メイカテックスHP-10/明成化学工業社製)が台紙中の中層3層全てには無添加となるようにし、表層及び裏層のパルプに対して各々1000ppm含有するように添加した以外は実施例1と同様にしてチップ状電子部品用キャリアテープ台紙を得た。
【0064】
<摩耗評価>
チップ状電子部品用キャリアテープ台紙を8mm幅のテープ状にスリットして、JIS C 0806-3:2014「自動実装部品の包装&#8722;第3部:表面実装部品の連続テープによる包装」に準拠し、プレスポケット形装填部成形機(TWA-6507:東京ウエルズ社製)を用いて、幅方向0.7mm×流れ方向0.4mmの凹状の装填部を2mm間隔で1000万ショット成形した。成形後、プレスポケット形装填部成形機の金型先端の摩耗状況を電子顕微鏡にて観察して評価した。評価基準は次のとおり。
◎:摩耗が殆どなく、良好であり、合格(実用レベル)。
○:やや摩耗が見られるが、良好であり、合格(実用レベル)。
△:摩耗が見られる、合格下限(実用下限レベル)。
×:摩耗が大きい、不合格(実用不適レベル)。
【0065】
<スリップ評価>
チップ状電子部品用キャリアテープ台紙を590mm幅から83mm幅のテープ状にスリット加工する際に、滑りが原因でのカウンター不良となる頻度により評価した。評価基準は次のとおり。
◎:全くカウンター不良は無く、良好であり、合格(実用レベル)。
○:わずかにカウンター不良が見られるが、良好であり、合格(実用レベル)。
△:カウンター不良が見られる、合格下限(実用下限レベル)。
×:カウンター不良が多い、不合格(実用不適レベル)。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示すとおり、実施例1~16で得られたチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、何れも金型の摩耗がほとんど見られず、使用可能であった。一方で、比較例1で得られたチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、ワックス類を使用していないため摩擦が大きくなり、結果として金型の摩耗が大きく、不合格であった。比較例2で得られたチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、ワックス類を表面に塗布しただけで摩擦が大きいままであり、結果として金型の摩耗が大きく、不合格であった。比較例3で得られたチップ状電子部品用キャリアテープ台紙は、摩耗評価が良好である基材にワックス類を表面に塗布しただけであるため、摩耗評価としては良好のままであった。但しワックス類を単独で塗布、乾燥したためワックスが表面に局在するため摩擦係数が非常に低くなり、キャリアテープ搬送の際スリップを生じ実用できるものではなかった。比較例4は摩耗評価が良好であったが、表層及び裏層の原料スラリーにワックス類を添加したため、キャリアテープ搬送の際スリップを生じ実用できるものではなかった。