(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/00 20060101AFI20230330BHJP
H01H 50/16 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
H01H50/00 F
H01H50/16 Y
(21)【出願番号】P 2020042232
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷本 昌大
(72)【発明者】
【氏名】藤原 貢
(72)【発明者】
【氏名】名倉 宏
(72)【発明者】
【氏名】神谷 誠
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/038769(WO,A1)
【文献】特開2017-152264(JP,A)
【文献】特開2005-347118(JP,A)
【文献】特開2013-182711(JP,A)
【文献】特開2007-109470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/00-50/92
H01H 45/00-45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点(41)と接離する可動接点(31)を有する可動子(3)と、
上記固定接点と上記可動接点とが接離するように上記可動子を進退させるプランジャ(2)と、
上記プランジャを進退させるソレノイド部(5)と、を有し、
上記ソレノイド部は、通電により磁束を形成する電磁コイル(53)と、該電磁コイルへの通電によって進退する可動コア(51)と、該可動コアの外周面(511)を摺動可能に支持する支持部材(61)と、を有し、
上記可動子は、上記固定接点よりも上記ソレノイド部から遠い側に配されており、
上記固定接点を支持する固定接点支持体(40)には、上記プランジャを挿通する挿通孔(42)が形成されており、
上記可動子における上記ソレノイド部側の面には、上記挿通孔よりも外周側であって上記可動接点よりも内周側の位置に、内周側を向いた内向壁面(32)が形成されている、電磁継電器(1)。
【請求項2】
上記プランジャの進退方向(Z)における、上記支持部材と上記可動コアとの摺接部(54)と、上記固定接点と上記可動接点との間の接点部(11)との間には、上記プランジャと共に進退する可動壁部(7)が設けられており、
該可動壁部は、上記進退方向から見て、少なくとも上記摺接部を含む領域に配されている、
請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
上記可動壁部は、上記摺接部よりも外周側に、上記進退方向における上記摺接部側に立設した突壁部(71)を有する、請求項
2に記載の電磁継電器。
【請求項4】
上記可動子と上記プランジャと上記ソレノイド部とを収容する筐体(12)を有し、
上記可動壁部の外周端縁(72)は、上記筐体の内部空間(120)の内周面(121)に沿って形成されている、請求項
2又は
3に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電磁コイルへの通電により生じる磁気吸引力によって可動子を移動させ、固定接点と可動子の可動接点とを接離させる電磁継電器が知られている。
【0003】
特許文献1に記載された電磁継電器は、固定接点と可動接点とが配置された接点室と、ソレノイド部が配置された巻線室とをダイヤフラムによって分離させている。これにより、巻線室の異物が接点室に侵入すること等を防止しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ダイヤフラムは、プランジャの進退に伴って変形するため、プランジャの進退運動に対して抵抗となり、プランジャの進退速度が低下しやすい。特許文献1において、プランジャの進退速度低下に対する対策が提案されているものの、ダイヤフラムを設ける以上、速度低下を解消することは困難となりやすく、オンオフ動作への影響を解消することは困難となりやすい。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、オンオフ動作への影響を抑制しつつ、接点部への異物の侵入を抑制することができる電磁継電器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の参考態様は、固定接点(41)と接離する可動接点(31)を有する可動子(3)と、
上記固定接点と上記可動接点とが接離するように上記可動子を進退させるプランジャ(2)と、
上記プランジャを進退させるソレノイド部(5)と、を有し、
上記ソレノイド部は、通電により磁束を形成する電磁コイル(53)と、該電磁コイルへの通電によって進退する可動コア(51)と、該可動コアの外周面(511)を摺動可能に支持する支持部材(61)と、を有し、
上記プランジャの進退方向(Z)における、上記支持部材と上記可動コアとの摺接部(54)と、上記固定接点と上記可動接点との間の接点部(11)との間には、上記プランジャと共に進退する可動壁部(7)が設けられており、
該可動壁部は、上記進退方向から見て、少なくとも上記摺接部を含む領域に配されている、電磁継電器(1)にある。
【0008】
本発明の第1の態様は、固定接点(41)と接離する可動接点(31)を有する可動子(3)と、
上記固定接点と上記可動接点とが接離するように上記可動子を進退させるプランジャ(2)と、
上記プランジャを進退させるソレノイド部(5)と、を有し、
上記ソレノイド部は、通電により磁束を形成する電磁コイル(53)と、該電磁コイルへの通電によって進退する可動コア(51)と、該可動コアの外周面(511)を摺動可能に支持する支持部材(61)と、を有し、
上記可動子は、上記固定接点よりも上記ソレノイド部から遠い側に配されており、
上記固定接点を支持する固定接点支持体(40)には、上記プランジャを挿通する挿通孔(42)が形成されており、
上記可動子における上記ソレノイド部側の面には、上記挿通孔よりも外周側であって上記可動接点よりも内周側の位置に、内周側を向いた内向壁面(32)が形成されている、電磁継電器(1)にある。
【発明の効果】
【0009】
上記第1の参考態様の電磁継電器において、可動壁部は、進退方向から見て、少なくとも摺接部を含む領域に配されている。それゆえ、摺接部に異物が発生したとしても、可動壁部によって、異物が接点部側に移動することを抑えることができる。その結果、接点部に異物が侵入することを抑えることができる。また、可動壁部は、プランジャと共に進退するため、プランジャの進退運動への影響を抑制することができる。それゆえ、可動壁部を設けることによるオンオフ動作への影響を抑制することができる。
【0010】
また、上記第1の態様の電磁継電器において、可動子には、ソレノイド部側の面に、内周側を向いた内向壁面が形成されている。それゆえ、摺接部に発生した異物が、固定接点支持体の挿通孔を通って可動子側に侵入したとしても、内向壁面によって、異物が接点部側に移動することを抑えることができる。その結果、接点部に異物が侵入することを抑えることができる。また、内向壁面は、可動子と共に進退するため、可動子の進退運動への影響を抑制することができる。それゆえ、内向壁面を設けることによるオンオフ動作への影響を抑制することができる。
【0011】
以上のごとく、本発明の態様によれば、オンオフ動作への影響を抑制しつつ、接点部への異物の侵入を抑制することができる電磁継電器を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
参考形態1における、固定接点と可動接点とが離間したときの電磁継電器の断面図。
【
図2】
参考形態1における、固定接点と可動接点とが互いに当接したときの電磁継電器の断面図。
【
図5】
参考形態1における、支持部材を、前側から見た平面図。
【
図7】比較形態における、異物の移動経路を示した、電磁継電器の断面図。
【
図8】
参考形態1における、異物の移動経路を示した、電磁継電器の断面図。
【
図9】
参考形態2における、電磁継電器の断面図。
【
図10】
参考形態3における、電磁継電器の断面図。
【
図11】
参考形態4における、固定接点と可動接点とが離間したときの電磁継電器の断面図。
【
図12】
参考形態4における、固定接点と可動接点とが互いに当接したときの電磁継電器の断面図。
【
図14】
参考形態5における、電磁継電器の断面図。
【
図15】
実施形態1における、固定接点と可動接点とが離間したときの電磁継電器の断面図。
【
図16】
実施形態1における、固定接点と可動接点とが互いに当接したときの電磁継電器の断面図。
【
図18】
実施形態2における、電磁継電器の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(
参考形態1)
電磁継電器に係る
参考形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
本形態の電磁継電器1は、
図1、
図2に示すごとく、可動子3と、プランジャ2と、プランジャ2を進退させるソレノイド部5とを有する。可動子3は、固定接点41と接離する可動接点31を有する。プランジャ2は、固定接点41と可動接点31とが接離するように可動子3を進退させる。
【0014】
ソレノイド部5は、電磁コイル53と、可動コア51と、支持部材61とを有する。電磁コイル53は、通電により磁束を形成する。可動コア51は、電磁コイル53への通電によって進退する。支持部材61は、可動コア51の外周面511を摺動可能に支持する。
【0015】
プランジャ2の進退方向Zにおける、支持部材61と可動コア51との摺接部54と、固定接点41と可動接点31との間の接点部11との間には、プランジャ2と共に進退する可動壁部7が設けられている。可動壁部7は、
図4に示すごとく、進退方向Zから見て、少なくとも摺接部54を含む領域に配されている。
【0016】
本明細書において、プランジャ2の進退方向Zを、適宜、Z方向ともいう。また、Z方向におけるプランジャ2が可動子3を押す方向を前方といい、その反対方向を後方という。
また、本形態の電磁継電器1は、前方が、重力方向となるよう配置されている。
【0017】
電磁継電器1は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の、メインリレーや充電用メインリレー等として用いられる。
【0018】
電磁継電器1は、
図1、
図2に示すごとく、可動子3とプランジャ2とソレノイド部5とを収容する筐体12を有する。可動壁部7の外周端縁72は、
図1、
図4に示すごとく、筐体12の内部空間120の内周面121に沿って形成されている。
筐体12は、例えば、樹脂等の絶縁性材料からなる。
【0019】
本形態において、可動子3は、
図3に示すごとく、導電性を有する金属製の板状部材からなり、その長手方向における両端部付近にそれぞれ可動接点31を備えている。そして、
図1に示すごとく、可動子3とその前側に配された筐体12の一部との間に、後方付勢部材14が介設されている。後方付勢部材14は、可動子3を後方へ付勢している。本形態において、後方付勢部材14は、コイルスプリングからなる。
【0020】
複数の可動接点31のそれぞれに対して、Z方向における後方に対向する位置に固定接点41が配置されている。固定接点41は、導電性を有する金属製の板状部材からなる固定バスバー4に設けてある。電磁継電器1は、
図1、
図6に示すごとく、2つの固定バスバー4を有する。各固定バスバー4に固定接点41がそれぞれ設けてある。固定バスバー4は、それぞれが固定接点支持体40に固定されている。固定接点支持体40は、筐体12の一部を構成している。各固定バスバー4の一部は、筐体12の外部に引き出されており、この引出部が外部配線等に接続されるように構成されている。
【0021】
可動子3は、プランジャ2が前進して可動子3を押すことにより、後方付勢部材14の付勢力に抗して前進する。プランジャ2は、ソレノイド部5の作動によって、進退するよう構成されている。
【0022】
ソレノイド部5は、
図1に示すごとく、電磁コイル53と、固定コア52と、可動コア51と、ヨーク6とを有する。電磁コイル53への通電によって、電磁コイル53は、固定コア52と、可動コア51と、支持部材61を含むヨーク6とによって構成される磁路に、磁束を形成する。なお、後述するプランジャ2の軸部22は、例えば磁性SUS等の磁性金属からなるものとすることができる。この場合、軸部22も磁路の一部となりうる。
【0023】
電磁コイル53は、筐体12内に固定配置されている。電磁コイル53は、巻線を、ボビン531の筒状部532の外周に巻回することにより形成されている。筒状部532は、Z方向の双方に開口している。プランジャ2は、その一部が筒状部532の内側に配置されている。
【0024】
電磁コイル53における筒状部532の内側には、軟磁性金属からなる固定コア52が配置されている。固定コア52は、可動コア51に対しZ方向に対向配置されている。固定コア52は、可動コア51の後側に配置されている。
【0025】
固定コア52と可動コア51との間には、前方付勢部材13が配置されている。前方付勢部材13は、固定コア52に対して可動コア51が前方へ向かうように、可動コア51を付勢している。つまり、前方付勢部材13は、可動コア51を付勢することによって、プランジャ2を前方へ付勢する。本形態において、前方付勢部材13は、コイルスプリングからなる。
【0026】
また、電磁コイル53の周囲には、ヨーク6が配設されている。支持部材61は、ヨーク6の一部を構成している。支持部材61には、
図1、
図5に示すごとく、Z方向に貫通した摺接孔611が形成されている。支持部材61は、
図5に示すごとく、進退方向Zから見ると、環状をなしている。
【0027】
図1、
図2に示すごとく、摺接孔611の内側には、可動コア51が摺動可能に配置されている。そして、摺接孔611を形成する支持部材61の内周面615と、可動コア51の外周面511とが互いに摺接している。
【0028】
支持部材61は、
図1に示すごとく、内周壁部612と、環状壁部613と、角部614とを有する。内周壁部612は、Z方向に平行な筒状に形成されている。環状壁部613は、内周壁部612の前端から外方へ広がる平板状に形成されている。環状壁部613は、電磁コイル53の前方を覆っている。角部614は、内周壁部612の前側の端部と、環状壁部613の内周端とを曲面状につなぐ部分である。
【0029】
内周壁部612の内側が摺接孔611となっている。また、内周壁部612の内周面615と、可動コア51の外周面511には、それぞれ摩擦係数の低い絶縁性のコーティング層541が形成されている。コーティング層541は、例えばテフロン(登録商標)等のフッ素樹脂からなる。
【0030】
本形態において、プランジャ2は、
図1に示すごとく、可動コア51と、軸部22と、インシュレータ部21とを有する。軸部22は、磁性金属からなる。ただし、軸部22を非磁性金属にて構成することもできる。また、プランジャ2は、可動コア51及びインシュレータ部21のみからなる構成とすることもできる。
【0031】
可動コア51は、可動コア51に形成された挿通孔に、プランジャ2の軸部22が挿通された状態にて、軸部22に固定されている。そのため、可動コア51と軸部22とは、一体となって移動する。可動コア51は、軟磁性金属からなる。可動コア51の後側の部分は、固定コア52の形状に対応するように、後方に向かうに従って縮径したテーパ形状となっている。また、可動コア51の少なくとも一部は、電磁コイル53における筒状部532の内側に配置されている。
【0032】
プランジャ2の前端には、インシュレータ部21が配設されている。プランジャ2は、インシュレータ部21を可動子3に当接させて、可動子3を前方へ押圧する。インシュレータ部21は、樹脂等の絶縁性材料からなる。
【0033】
プランジャ2の少なくとも一部は、樹脂からなる固定接点支持体40の内側の挿通孔42内に配置されている。本形態において、挿通孔42内には、軸部22の前端とインシュレータ部21とが配置されている。インシュレータ部21は、挿通孔42内を、Z方向に進退する。
図1、
図2、
図6に示すごとく、固定接点支持体40の挿通孔42の内周面と、インシュレータ部21の外周面との間には、環状の隙間G2が形成されている。
【0034】
可動壁部7は、プランジャ2の軸部22に対し、挿通された状態にて固定されている。つまり、
図1に示すごとく、可動壁部7には圧入孔73が形成されており、圧入孔73にプランジャ2の軸部22を挿通させ、圧入することにより固定される。可動壁部7は、
図4に示すごとく、Z方向から見ると、環状をなしている。また、可動壁部7は、Z方向から見ると、摺接部54全体を含む領域に配されている。可動壁部7の外周端縁72は、
図1に示すごとく、摺接部54及び挿通孔42よりも外側に位置する。可動壁部7は、円盤形状をなしている。本形態において、可動壁部7は、鉄合金等の金属からなる。
【0035】
前述のごとく、可動壁部7の外周端縁72は、
図1、
図4に示すように、筐体12の内部空間120の内周面121に沿って形成されている。そして、
図4に示すごとく、Z方向から見ると、可動壁部7の外周端縁72と、内周面121との間には、環状の隙間G1が形成されている。隙間G1の径方向の幅は、例えば、可動壁部7のZ方向の厚み以下とすることができる。
【0036】
次に、電磁コイル53への通電によるプランジャ2の動作について説明する。
電磁継電器1は、電磁コイル53に通電することにより、固定コア52と、可動コア51と、支持部材61を含むヨーク6と、軸部22とに磁束が流れ、可動コア51と固定コア52との間に磁気吸引力が生じる。これにより、
図2に示すごとく、前方付勢部材13の付勢力に抗して、可動コア51を備えるプランジャ2が固定コア52に吸引されて後退する。これに伴い、後方付勢部材14の付勢力により可動子3が後退し、それぞれの可動接点31が固定接点41に接触する。その結果、電磁継電器1が接続状態となる。これにより、一方の固定バスバー4から可動子3を介して他方の固定バスバー4にわたり、電流が流れる。また、電磁継電器1の接続状態においては、可動子3からインシュレータ部21が離れる。
【0037】
次に、電磁コイル53を非通電とすると、固定コア52と可動コア51との間の磁気吸引力がなくなる。ここで、前方付勢部材13は、後方付勢部材14よりも大きい付勢力を有している。それゆえ、上記磁気吸引力がない状態となると、前方付勢部材13によって可動コア51が前方に移動すると共に、可動子3はプランジャ2によって前方へ押され、固定接点41から遠ざかるように前進する。これにより、
図1に示すように、それぞれの可動接点31が固定接点41から離間し、電磁継電器1が遮断状態となる。
【0038】
なお、接続状態から遮断状態に切り替わる際、接点部11にアークが生じている間は遮断状態とはならない。そこで、このアークを引き延ばして切るために、電磁継電器1は消弧用磁石15を備えている。消弧用磁石15は、接点部11の径方向の外側に配設されている。この消弧用磁石15により、接点部11に生じるアークを、可動子3の進退方向に直交する方向に引き延ばして消弧するよう構成されている。
【0039】
次に、本形態の作用効果につき説明する。
本形態の電磁継電器1において、可動壁部7は、進退方向Zから見て、少なくとも摺接部54を含む領域に配されている。それゆえ、摺接部54に異物が発生したとしても、可動壁部7によって、異物が接点部11側に移動することを抑えることができる。その結果、接点部11に異物が侵入することを抑えることができる。また、可動壁部7は、プランジャ2と共に進退するため、プランジャ2の進退運動への影響を抑制することができる。それゆえ、可動壁部7を設けることによるオンオフ動作への影響を抑制することができる。
【0040】
つまり、
図7に示すごとく、可動壁部7の無い比較形態の電磁継電器9の場合、摺接部54に異物が発生すると、矢印Rに示すように、固定接点支持体40に直接落下しやすい。さらに、異物は、固定接点支持体40における挿通孔42に近い位置に落下しやすい。異物が挿通孔42を通り、可動子3に落下すると、接点部11側に侵入するおそれがある。
【0041】
一方、本形態の場合、
図8の矢印Rに示すごとく、摺接部54に発生した異物は、可動壁部7に落下する。そして、異物が固定接点支持体40に落下するには、可動壁部7の外周端縁72よりも径方向の外側へ移動し、可動壁部7の外周端縁72と筐体12の内部空間120の内周面121との間の隙間G1を通過する必要がある。さらに、異物が固定接点支持体40に落下したとしても、挿通孔42から遠い側に落下することとなる。それゆえ、摺接部54に異物が発生したとしても、可動壁部7が障壁となることによって、異物が接点部11側に移動することを抑えることができる。
【0042】
また、プランジャ2に固定された可動壁部7は、他の部分と干渉することなくプランジャ2と共に進退するため、プランジャの進退運動に対して抵抗となりにくい。それゆえ、プランジャ2の進退運動への影響を抑制することができる。
【0043】
また、可動壁部7の外周端縁72は、筐体12の内周面121に沿って形成されている。それゆえ、外周端縁72と内周面121との間の隙間G1を狭くすることができる。その結果、異物が接点部11側に移動することを一層抑えることができる。
【0044】
また、支持部材61の内周面615と、可動コア51の外周面511とには、それぞれ摩擦係数の低い絶縁性のコーティング層541が形成されている。そのため、摺接部54の摩擦抵抗を小さくして、プランジャ2の進退運動を円滑にすることができる。しかし、コーティング層541に起因する絶縁性の異物が発生するおそれがある。仮に絶縁性の異物が接点部11に侵入した場合、接点同士の接触不良等を引き起こすおそれがある。本形態の電磁継電器1は、可動壁部7にて、異物が接点部11側に移動することを抑えることができる。それゆえ、接触不良等の不具合を防ぐことができる。
【0045】
以上のごとく、本形態によれば、オンオフ動作への影響を抑制しつつ、接点部11への異物の侵入を抑制することができる電磁継電器1を提供することができる。
【0046】
(
参考形態2)
本形態は、
図9に示すごとく、可動壁部7が可動コア51に設けられた形態である。
可動壁部7は、可動コア51と一体的に形成することができる。この場合、可動壁部7は、可動コア51の一部として形成される。
その他は、
参考形態1と同様である。なお、
参考形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態
又は参考形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態
又は参考形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0047】
本形態において、可動壁部7は可動コア51に設けられている。それゆえ、部品点数を低減しつつ、異物が接点部11側に移動することを抑えることができる。
その他、参考形態1と同様の作用効果を有する。
なお、可動壁部7と可動コア51とは、別部材とすることもできる。可動壁部7と可動コア51とが別部材である場合、例えば、可動コア51の前端面に、可動壁部7を接着等することができる。
【0048】
(
参考形態3)
本形態は、
図10に示すごとく、可動壁部7がインシュレータ部21に設けられた形態である。
可動壁部7は、インシュレータ部21と一体的に形成することができる。この場合、可動壁部7は、インシュレータ部21の一部として形成される。
その他は、
参考形態1と同様である。
【0049】
本形態において、可動壁部7はインシュレータ部21に設けられている。それゆえ、部品点数を低減しつつ、異物が接点部11側に移動することを抑えることができる。
その他、参考形態1と同様の作用効果を有する。
なお、可動壁部7とインシュレータ部21とは、別部材とすることもできる。可動壁部7とインシュレータ部21とが別部材である場合、例えば、インシュレータ部21の後端面に、可動壁部7を接着等することができる。
【0050】
(
参考形態4)
本形態は、
図11~
図13に示すごとく、可動壁部7に突壁部71を設けた形態である。
【0051】
可動壁部7は、
図11~
図13に示すごとく、摺接部54よりも外周側に、進退方向Zにおける摺接部54側に立設した突壁部71を有する。
【0052】
本形態において、可動壁部7には、
図13に示すごとく、3つの突壁部71が、それぞれ環状に形成されている。なお、突壁部71は、2つ又は1つとすることもできる。また、突壁部71は、4つ以上設けることもできる。また、突壁部71は、必ずしも環状に形成する必要はなく、例えば、複数の弧状の突壁部71を、環状に配置することもできる。
また、突壁部71の内周面は、摺接部54よりも外周側に位置している。
【0053】
本形態において、突壁部71は、
図12に示すごとく、プランジャ2が後方に移動したときも、支持部材61に当接しないように設けられている。
その他は、
参考形態1と同様である。
【0054】
可動壁部7は、摺接部54よりも外周側に、突壁部71を有する。それゆえ、摺接部54に異物が発生し、可動壁部7に落下したとしても、異物は、突壁部71よりも外周側に移動しにくい。その結果、異物が接点部11側に移動することを一層抑えることができる。
その他、参考形態1と同様の作用効果を有する。
なお、可動壁部7には、突壁部71よりも内側に溝部を形成することもできる。
【0055】
(
参考形態5)
本形態は、
図14に示すごとく、
参考形態1に対し、可動壁部7の形状を変更した形態である。
【0056】
本形態の電磁継電器1において、可動壁部7は、
図14に示すごとく、径方向における外側へ向かうほど、後側に向かうように形成されている。
その他は、
参考形態1と同様である。
【0057】
本形態において、可動壁部7は、径方向における外側へ向かうほど、後側に向かうように形成されている。それゆえ、摺接部54に発生した異物が可動壁部7に落下したとしても、径方向の外側に向かって移動しにくい。それゆえ、異物は、可動壁部7を越えて前方に進みにくい。その結果、異物が接点部11側に移動することを一層抑えることができる。
その他、参考形態1と同様の作用効果を有する。
【0058】
(
実施形態1)
本形態は、
図15~
図17に示すごとく、可動壁部7を設けず、可動子3に内向壁面32を設けた形態である。
【0059】
可動子3は、固定接点41よりもソレノイド部5から遠い側に配されている。固定接点41を支持する固定接点支持体40には、プランジャ2を挿通する挿通孔42が形成されている。
図15~
図17に示すごとく、可動子3におけるソレノイド部5側の面には、挿通孔42よりも外周側であって可動接点31よりも内周側の位置に、内周側を向いた内向壁面32が形成されている。
【0060】
本形態において、可動子3におけるソレノイド部5側の面には、凸壁部320が形成されている。内向壁面32は、凸壁部320の内側に形成されている。凸壁部320は、
図17に示すごとく、2つ形成されている。それぞれの凸壁部320は、可動子3の短手方向の全体にわたって、形成されている。言い換えると、可動子3の長手方向における両端部付近に備えられたそれぞれの可動接点31と、可動子3におけるインシュレータ部21との当接部位との間を仕切るように、それぞれの凸壁部320が形成されている。そして、それぞれの凸壁部320の内側の側面が内向壁面32となっている。なお、凸壁部320は、可動子3に、3つ以上形成することもできる。
【0061】
また、
図17に示すごとく、可動子3には、それぞれの凸壁部320に沿って、溝部33が形成されている。溝部33は、凸壁部320よりも内側に形成されている。そして、溝部33の側面の一部も、内側を向く内向壁面32となっている。本形態において、溝部33の内向壁面32と、凸壁部320の内向壁面32とは、面一となっている。
その他は、
参考形態1と同様である。
【0062】
本形態の電磁継電器1において、可動子3には、ソレノイド部5側の面に内向壁面32が形成されている。それゆえ、摺接部54に発生した異物が、固定接点支持体40の挿通孔42を通って可動子3側に侵入したとしても、内向壁面32によって、異物が接点部11側に移動することを抑えることができる。その結果、接点部11に異物が侵入することを抑えることができる。また、内向壁面32は、可動子3と共に進退するため、可動子3の進退運動への影響を抑制することができる。それゆえ、内向壁面32を設けることによるオンオフ動作への影響を抑制することができる。
【0063】
また、溝部33の内向壁面32と、凸壁部320の内向壁面32とは、面一となっている。そのため、溝部33に侵入した異物が接点部11側に移動するためには、溝部33の内向壁面32のZ方向における距離と、凸壁部320の内向壁面32のZ方向における距離とを合わせた距離以上、Z方向に移動する必要がある。それゆえ、異物は、内向壁面32よりも径方向の外側へ移動しにくい。その結果、異物が接点部11側に移動することを一層抑えることができる。
その他、参考形態1と同様の作用効果を有する。
なお、可動子3の内向壁面32に加え、さらにプランジャ2に、参考形態1~参考形態5に示した可動壁部7を設けることもできる。この場合は、接点部11への異物の移動を一層抑制することができる。
【0064】
(
実施形態2)
本形態は、
図18、
図19に示すごとく、可動子3の後側面に凹部321を形成することにより、内向壁面32を設けた形態である。
凹部321の内向壁面32は、可動子3の長手方向において、固定接点支持体40の挿通孔42よりも外側であり、かつ可動接点31よりも内側の位置に形成されている。
【0065】
凹部321は、
図19に示すごとく、可動子3の短手方向の全体にわたって形成されている。凹部321は、2つの側面を有しており、それぞれの側面が内側を向く内向壁面32となっている。
【0066】
また、
図18に示すごとく、凹部321の底面に、インシュレータ部21が当接するように構成されている。
その他の構成及び作用効果は、
実施形態1と同様である。
【0067】
上記参考形態1、参考形態2、参考形態4、参考形態5の電磁継電器1において、可動壁部7は、鉄合金等の金属からなる。ただし、可動壁部は、鉄合金よりも比重が小さい材料によって形成することができる。例えば、可動壁部は、樹脂によって形成することもできる。この場合、プランジャが軽量となることにより、駆動時の作動音を低減しやすい。
【0068】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…電磁継電器、11…接点部、2…プランジャ、3…可動子、31…可動接点、41…固定接点、5…ソレノイド部、51…可動コア、511…外周面、53…電磁コイル、54…摺接部、支持部材…61、7…可動壁部、Z…進退方向