(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】サンプリングピペットのための容量調整ねじの位置を保持するためのドッグクラッチシステム
(51)【国際特許分類】
B01L 3/02 20060101AFI20230330BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
B01L3/02 D
G01N1/00 101K
(21)【出願番号】P 2020519132
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(86)【国際出願番号】 FR2019050876
(87)【国際公開番号】W WO2019202245
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-04
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513310243
【氏名又は名称】ジルソン エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルヴォワザン,エルベ
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05892161(US,A)
【文献】特表2018-532588(JP,A)
【文献】特表2020-534147(JP,A)
【文献】中国実用新案第202113872(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00-99/00
G01N 1/00- 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペッティングシステム(1)のための容量調整ねじ(14)の位置を保持するためのリングドッギングシステム(32)であって、
-第1歯(40)を含む第1歯付きホイール(34)と、
-第2歯(46)を含む第2歯付きホイール(36)と、を備え、前記第1歯付きホイール(34)が、前記ピペッティングシステムの不動部品(2)に対して回転可能に固定されるためのロックホイールであり、且つ、前記第2歯付きホイール(36)が前記容量調整ねじ(14)と回転可能に一体的であり、或いは、前記第1歯付きホイール(34)と第2歯付きホイール(36)の構成が逆であってもよく、前記リングドッギングシステム(32)が、さらに、
-弾性の戻り手段(38)を備え、当該弾性の戻り手段(38)が、前記第1歯付きホイールと前記第2歯付きホイールと(34,36)を互いに対して、前記第1歯(40)を前記第2歯(46)と協働させるために戻すことが可能であり、
前記第2歯付きホイール(36)の前記第2歯(46)が、N個の同心環状列(58a,58b)を形成し、前記Nが2以上の整数であり
、
前記第2歯付きホイール(36)が、歯が重なり合うゾーン(64)を少なくとも1つ有し、当該歯が重なり合うゾーンにおいて、第2歯から成る前記N個の同心環状列(58a,58b)が、それぞれ、N個の重なり合うセクタ(66a,66b)を有し、当該セクタ(66a,66b)が前記第2歯付きホイールの半径方向(55)に沿って互いに重なり合い、
前記N個の重なり合うセクタの前記第2歯(46)が、前記第1歯付きホイール(34)の前記第1歯(40)の少なくとも1つが前記第2歯付きホイール(36)に対して複数の相対位置にあり得るように互いに角度的にずらされており、前記複数の相対位置の各々において、この第1歯(40)が前記N個のセクタのうちの1つ(66a)の前記第2歯(46)の1つに接触し、且つ、これらのN個のセクタのうちの別のセクタ(66b)の前記第2歯(46)の1つに接触していることを特徴とする、システム(32)。
【請求項2】
前記第2歯付きホイール(36)の前記N個の重なり合うセクタ(66a,66b)の各々が、当該各セクタの第2歯(46)間に同一のピッチPを有し、且つ、前記N個の重なり合うセクタのうちの、前記半径方向(55)に沿って直接連続している任意の2つの重なり合うセクタ(66a,66b)間の角度ずれが、値P/Nを有することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1歯付きホイール(34)が、第1歯(40)から成る単一の環状列(56)を有し、当該単一の環状列(56)が前記第1歯(40)間にて同一のピッチPを有することを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記Nが2に等しいことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2歯付きホイール(36)が、周方向に互いに離間された、歯が重なり合う複数のゾーン(64)を有し、且つ、歯が重なり合うこれらのゾーン(64)の個数が、優先的には3つよりも多いことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
第2歯から成る各環状列(58a,58b)が、非歯付き部分(62a,62b)により周方向に離間された歯付き部分(60a,60b)を有し、且つ、前記重なり合うセクタ(64)が前記歯付き部分(60a,60b)の端部に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
容量調整ねじ(14)と、当該容量調整ねじの位置を保持するための請求項1に記載のリングドッギングシステム(32)とを備えたピペッティングシステム(1)。
【請求項8】
前記第2歯付きホイール(36)が、前記容量調整ねじ(14)がそこを通過する回転可能なカップリング手段(50)を含むリング(48)と一体であることを特徴とする、請求項7に記載のピペッティングシステム。
【請求項9】
4桁カウンタ(20)を備え、当該4桁カウンタが、
-前記4桁カウンタの第1桁を通知する第1ドラム(28a)と、
-前記4桁カウンタの第2桁を通知する第2ドラム(28b)と、
-前記4桁カウンタの第3桁を通知する第3ドラム(28c)と、
-前記4桁カウンタの第4桁を通知する第4ドラム(28d)と、を含み、当該第4ドラムが、前記容量調整ねじ(14)により回転可能に制御されるギヤシステム(22,26)により、回転可能に駆動されることを特徴とする、請求項7に記載のピペッティングシステム。
【請求項10】
前記ピペッティングシステムの不動部品(2)に対して回転可能に固定されている前記ロックホイール(34)が、この不動部品(2)の対応する長手方向溝(44)内にスライド可能に収容された半径方向ラグ(42)を含むことを特徴とする、請求項7に記載のピペッティングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペッティングシステム、例えば、ロボットと称される自動ピペッティングシステムの分野に関し、又は、より優先的には、ラボラトリピペットとも称されるモノチャネル又はマルチチャネル収集ピペット、若しくは、較正された液体の収集及び容器への導入のための空気置換式液体移送ピペットにも関する。これらのピペットは、手動式、モータ駆動式、又はハイブリッド式であるかに関わらず、液体の収集及び分注操作中に操作者の手で保持されるようになっている。
【0002】
本発明は、より具体的には、収集されるべき液体の容量を調整するために実装された手段に関する。
【背景技術】
【0003】
慣用的なピペットにおいて、収集されるべき量を調整するためのねじが設けられており、このねじは、ピペットの制御ノブにより、このノブを容量調整ねじに接続している制御ロッドを介して回転可能に制御される。
【0004】
ピペットが、非常に正確な容量値を表示するように設計されたカウンタ(例えば4桁カウンタ)を含む場合、ピペットを所与の値に調整することが困難な場合がある。実際、カウンタの最後の桁は、一般的に、操作者により作動されるピペット制御ノブよりも速い速度で回転し得るドラムに関連付けられており、これにより、所望の正確な値に達することが困難になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この問題に対処するために、容量調整ねじを、このねじの様々な位置に保持するシステムを追加することが考えられ得る。しかし、カウンタが提供する様々な容量値の存在と同様の多数の位置に調整ねじを正確に保持できるようにするためには、寸法が制限され、尚且つ非常に複雑な幾何学的形状を有する部品を設計する必要がある。この制約が、製造プロセスを困難にし、必要な部品の実現可能性限界を超えることもあり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの欠点の少なくとも一部を克服するために、本発明の目的は、第一に、ピペッティングシステムのための容量調整ねじの位置を保持するためのリングドッギングシステムであり、このリングドッギングシステムは、
-第1歯を含む第1歯付きホイールと、
-第2歯を含む第2歯付きホイールと、を備え、前記第1歯付きホイールが、前記ピペッティングシステムの不動部品に対して回転可能に固定されるためのロックホイールであり、且つ、前記第2歯付きホイールが前記調整ねじと回転可能に一体的であり、或いは、前記第1歯付きホイールと第2歯付きホイールの構成が逆であってもよく、前記リングドッギングシステムが、さらに、
-弾性の戻り手段を備え、当該弾性の戻り手段が、前記第1ホイールと第2ホイールとを互いに対して、前記第1歯を前記第2歯と協働させるために戻すことが可能であり、
前記第2ホイールの前記第2歯が、N個の同心環状列を形成し、前記個数Nが2以上の整数であり、各列がおそらく不連続であり、
前記第2歯付きホイールが、歯が重なり合うゾーンを少なくとも1つ有し、当該歯が重なり合うゾーンにおいて、第2歯から成る前記N個の同心環状列が、それぞれ、N個の重なり合うセクタを有し、当該セクタが前記第2ホイールの半径方向に沿って互いに重なり合い、且つ、
前記N個の重なり合うセクタの前記第2歯が、前記第1歯付きホイールの前記第1歯の少なくとも1つが前記第2ホイールに対して複数の相対位置にあり得るように互いに角度的にずらされており、前記複数の相対位置の各々において、この第1歯が前記N個のセクタのうちの1つの前記第2歯の1つに接触し、且つ、これらのN個のセクタのうちの別のセクタの前記第2歯の1つに接触していることを特徴とする。
【0007】
このように、本発明は、前記容量調整ねじを様々な位置に保持/ロックするためにリングドッギング機構を使用する特徴を有する。これらの異なる位置の個数を、先に述べた製造上の問題に実際に対処する必要なく、非常に多数にすることが可能である。実際、第2歯から成る複数の同心環状列を有する第2歯付きホイールを設けることにより、そして、各重なり合うゾーン内でのこれらの歯の角度ずれを行うことにより、これらの歯に関する実現可能性の問題に直面せずに、前記調整ねじを多くの位置に保持することが可能である。すなわち、本発明は、前記第2ホイールの上に単一の環状列の歯を設けるだけの解決方法と比較して、明らかに独創的であることが分かる。実際、本発明以外で同一数の保持位置を得ようとすれば、この第2ホイールは、単一列内に非常に小さい寸法の歯を有さなければならず、それは製造が困難であること分かる。
【0008】
本発明は、好ましくは、以下の任意選択な特徴の少なくとも1つを、単独で又は組み合わせて有する。
【0009】
前記第2歯付きホイールの前記N個の重なり合うセクタの各々が、その第2歯間にて同一のピッチPを有し、且つ、前記N個のセクタのうちの、半径方向に沿って直接連続する任意の2つの重なり合うセクタ間の角度ずれは、値P/Nを有する。
【0010】
前記第1歯付きホイールが、第1歯から成る単一の環状列を有し、当該単一の環状列は前記第1歯間にて同一のピッチPを有する。
【0011】
前記整数Nは、優先的には2に等しいが、本発明の範囲から逸脱せずに、2よりも大きい数であり得る。
【0012】
前記第2ホイールは、周方向に互いに離間された、歯が重なり合う複数のゾーンを有し、且つ、歯が重なり合うこれらのゾーンの個数は、優先的には3つよりも多い。
【0013】
第2歯から成る各環状列が、非歯付き部分により周方向に離間された歯付き部分を有し、且つ、前記重なり合うセクタが、前記歯付き部分の端部に形成されている。
【0014】
本発明の別の目的は、容量調整ねじと、当該容量調整ねじを所定位置に保持することを可能にする上述のリングドッギングシステムとを備えたピペッティングシステムである。このシステムは、優先的には、手動の収集ピペットであるが、本発明は、先に列挙した任意のその他のピペッティングシステムにも適用可能である。
【0015】
好ましくは、前記第2歯付きホイールは、前記容量調整ねじがそこを通過する回転可能なカップリング手段を含むリングと一体である。
【0016】
前記システムは、好ましくは4桁カウンタを備え、当該カウンタは、
-前記カウンタの第1桁を通知する第1ドラムと、
-前記カウンタの第2桁を通知する第2ドラムと、
-前記カウンタの第3桁を通知する第3ドラムと、
-前記カウンタの第4桁を通知する第4ドラムと、を含み、当該第4ドラムは、前記容量調整ねじにより回転可能に制御されるギヤシステムにより、回転可能に駆動される。
【0017】
最後に、前記ピペッティングシステムの不動部品に対して回転可能に固定されている前記ロックホイールは、この不動部品の対応する長手方向溝内にスライド可能に収容された半径方向ラグを含む。
【0018】
本発明のさらなる利点及び特徴は、以下の非限定的な詳細な説明において明らかになろう。
【0019】
この説明を、添付図面を参照しつつ行う。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による空気置換式収集ピペットの正面図である。
【
図2】本発明の好ましい実施形態による容量調整ねじの位置を保持するためのシステムを含む、
図1に示したピペットの一部の斜視図である。
【
図3】
図2に示したピペットの上部の断面図である。
【
図4】
図1~3に示したピペットに具備されるカウンタの斜視図である。
【
図5】
図4に示したカウンタの長手方向断面図である。
【
図6】
図2に示した保持リングドッギングシステムの詳細な斜視図である。
【
図7】
図6に示した保持リングドッギングシステムに具備される第1歯付きホイールの斜視図である。
【
図8】
図6に示した保持リングドッギングシステムに具備される第2歯付きホイールの斜視図である。
【
図9】
図7及び
図8に示した両方の歯付きホイール間の協働を示す側方概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照すると、本発明による手動式のモノチャネル収集ピペット1が示されている。しかし、本発明は、このようなピペットに限定されるものではなく、マルチチャネルピペットにも、又は、その他の任意の手動式、電動式、若しくはハイブリッド式のピペッティングシステムにも同様に適用され得る。
【0022】
本明細書に記載の手動式の空気置換式ピペット1は、上側部分、ハンドル形成本体2、及び、下側部分4を含み、下側部分4は、その下端にて、収集コーンホルダ先端(図示せず)に一体化される。この収集コーンホルダ先端は、コーンを保持するために設けられており、コーンは消耗品とも称され、ピペッティング操作が終了したならば、エジェクタシステム6により先端から排出される。
【0023】
図1~
図3に見られるように、ピペット1は、異なるピペッティング操作(例えば、液体を収集する、液体を分注するなど)を行うために、操作者の親指で作動されるための制御ノブ8を含む。ノブ8は、制御ロッド10の上端に、上述のピペッティングステップ中にピペットの長手方向中心軸12に沿って並進移動されるために取り付けられている。ノブ8はロッド10に回転可能に連結されており、ロッド10は、容量調整ねじ14と協働する下端を有する。この協働は、制御ロッド10の回転がねじ14の、ねじ14独自の軸(好ましくは、ピペットの長手方向中心軸12と同一の軸)を中心とした回転を生じさせるように行われる。
【0024】
公知の方法において、調整ねじ14の回転は、軸12に沿った調整ねじ14の並進、又は、別の部品の並進を生じさせ、これにより、ピペットの下側部分4の吸入チャンバに収容されているピストンを軸方向に移動させる。それは、このピストンのトップ位置の調節であり、これが、その後のピペッティング時に収集される量に影響を与えることを可能にする。
【0025】
図2及び
図4は、容量調整ねじ14がカウンタ20を回転可能に駆動する様子を示しており、カウンタ20は、調整された容量値を、ハンドル2の窓7(
図1を参照)を通して表示するようになっている。このカウンタ20は、この場合、4桁カウンタである。このカウンタタイプは、より少ない桁のカウンタ(例えば、3桁のみのカウンタ)と比較して、非常に高い精度を提供する。
【0026】
カウンタ20は、第1に、軸12を中心とした外歯付きホイール(外歯車)22を備えたギヤシステムを備えており、この外歯付きホイール22は、調整ねじ14により直接回転駆動される。この駆動は、例えば、ホイール22から内側に突出し且つねじ14の長手方向溝24内に収容されているラグを介して行われる。このホイール22は、別の偏心外歯付きホイール26と噛み合い、偏心外歯付きホイール26自体は、カウンタの第4ドラム28d上に設けられた歯と噛み合って、調整された4桁の容量を通知する。
図5に見られる第4ドラム28dは、制御ノブよりも高速で、例えば制御ノブの5倍の速度で回転する。
【0027】
また、カウンタは、第1ドラム28a、第2ドラム28b、及び第3ドラム28cも含み、これらのドラムのそれぞれが、調整された容量の第1桁、第2桁、第3桁を通知する。これらのドラム28a~28dは、軸12に沿って互いに重畳されており、運動伝達部材30を介して、既知の方法で互いに駆動する。
【0028】
このようなカウンタ20の精度が、本発明に固有のシステムの実施に関連付けられて、望ましい容量値をもたらす正確な位置に調整ねじ14が配置されたならば調整ねじ14がロック/保持されることを可能にしている。リングドッグ(ring dogging)の性質を有するこのシステム32は、また、収集されるべき容量の設定点を変更するために行われるねじ14の回転中に、ねじ14が異なる位置の間で容易に変位されることを可能にする。システム32は、ピペットの制御ノブの回転中に第4ドラムが高速回転することが観察されても、操作者が、最後の桁の量を所望の値に正確に調整することに役立つという点において特に有利であることが分かった。従って、容量調整に関する人間工学性が大幅に改善される。
【0029】
図2、
図3、及び
図6に見られる位置保持システム32は、その全体において、第2歯付きホイール36と協働する第1歯付きホイール34と、圧縮ばね38とを含み、圧縮ばね38は、軸12を中心とする同軸のホイール34,36の両方を互いに戻す。
【0030】
ピペットの上方に配置された第1ホイール34は、軸方向下向きに延在する第1歯40を含む。このホイール34は、ハンドル2に対して半径方向ラグ42(周方向に離間されて歯車から外側に突出している)を介して回転可能に固定されている。各ラグ42は、ハンドル2の内面の長手方向溝44内にスライド可能に収容されており、これらのラグの1つが
図3に示されている。こうして、第1ホイール34は、ハンドル2内で回転可能に保持されたままであるが、軸12に沿ってハンドル内を並進移動可能である。
【0031】
第1ホイール34(ロックホイールとも称する)の下で、第2ホイール36が、軸方向に上向きに延在する第2歯46を含む。この第2ホイール36はリング48又はシャンクにより支持されており、リング48は、その下端に回転可能なカップリング手段50を含み、このカップリング手段50を調整ねじ14が通過する。手段50は、ねじ14との回転可能なカップリングを、フォームフィッティング(例えば、平坦な又は類似の要素の存在)により保証する。こうして、ホイール36は、調整ねじ14により回転可能に駆動される状態を維持し、且つ、並進的には固定されたままである。並進的固定の特徴は、リング48を、ハンドル2内に固定された底部ストップ54に当接することにより、及び/又は、ホイール36をこのハンドルの内部ショルダ57に当接することにより実現される。
【0032】
そして、ばね38は、このホイールの上部スロートに収容されたスプリング下端を介して、第1ホイール34の上部に圧力を加える。こうして、ばね38により発生された軸方向の力により、第1ホイール34が下方に変位されて、並進的に固定されたままの第2ホイール36に押し付けられ、それにより、第1歯40と第2歯46との協働が生じる。
【0033】
これらの歯の配置は本発明に特有であり、これらの歯を、
図7~
図9を参照しつつ説明する。
【0034】
まず、第1ホイール34に関して説明すると、第1ホイール34の第1軸方向歯40が、単一の環状列56(軸12を中心として、好ましくは360度にわたって続く)内に配置されている。歯40の個数は、例えば50個であり、これらの歯40の間に規則的なピッチPが設けられている。
【0035】
そして、第2ホイール36は、2つの環状列、又は、より多数の環状列を含む。しかし、本明細書に記載する好ましい実施形態において、列の個数を2つに設定し、これらを、軸12を中心とした同心環状列58a,58bとする。
【0036】
外側列に相当する第1列58aは、不連続である。これは、第1列58aが、歯46を備えた円弧に各々が相当する歯付き部分60aにより形成されていることを意味する。これらの歯付き部分60aは、周方向において、好ましくは互いに規則的に離間されている。歯付き部分60a同士の間に、非歯付き(歯付きでない)部分62a(凹部に相当する)が設けられている。例として、第1環状列58aは、4つの歯付き部分60a(各々が約10個の歯を有する)と、4つの非歯付き部分62a(歯付き部分60aとほぼ同一の角度範囲を有する)とを含む。
【0037】
同様に、内側列に相当する第2列58bは、不連続である。これは、第2列58bが、歯46を備えた円弧に各々が相当する歯付き部分60bにより形成されていることを意味する。これらの歯付き部分60bは、周方向において、好ましくは互いに規則的に離間されている。歯付き部分60b同士の間に、非歯付き部分62b(凹部に相当する)が設けられている。例として、第2環状列58bは、4つの歯付き部分60b(各々が約10個の歯を有する)と、4つの非歯付き部分62b(歯付き部分と60bとほぼ同一の角度範囲を有する)とを含む。
【0038】
図8に見られるように、歯付き部分60a,60bは、位相ずれされて、すなわち、各歯付き部分60aが基本的に第2列58bの非歯付き部分62bに半径方向に面するように、尚且つ、各歯付き部分60bが基本的に第1列58aの非歯付き部分62aに半径方向に面するように配置されている。
【0039】
各歯付き部分60a,60bの歯46同士の間のピッチは、第1ホイール34の歯40のためのピッチと同一のピッチPである。
【0040】
これらの歯付き部分60a,60bの、半径方向55に沿って互いに部分的に重なりあう端部にて、歯が重なり合うゾーンが形成されており、
図8において、これらのゾーンに参照符号64が付されている。
【0041】
各重なり合うゾーン64は、歯付き部分60aのうちの1つの一端に相当する重なり合うセクタ66aと、歯付き部分60bのうちの1つの一端に相当する重なり合うセクタ66bとにより形成されている。従って、両セクタ66a,66bは互いに半径方向に向かい合っており、これにより、8個の重なり合うゾーン64(本明細書において、互いに規則的に離間されて設けられている)のうちの1つを形成している。各セクタ66a,66b当たりの歯の個数は、例えば2個~5個である。
【0042】
各重なり合うゾーン64内で、セクタ66aの歯46はセクタ66bの歯46に対してハーフピッチP/2だけずらされている。従って、第2ホイール36の重なり合うゾーン64の1つと協働する各第1歯40は、一方ではこのゾーンのセクタ66aの歯46の1つに接触しており、他方では、この同一の重なり合うゾーン64のセクタ66bの歯46の1つに接触している。この特徴は、
図8の下方だけでなく
図9にも示されており、
図9は、第1歯40が、2つの直接連続した歯46に周方向に沿って接触しており、且つ、それぞれ、両方のセクタ66a,66bに属している様子を概略的に示している。
【0043】
これを行うために、各第一歯40の半径方向長さは、例えば、各第2歯46の半径方向長さよりもほぼ2倍大きく、これが、2つの接触面70a,70bが、第1歯40と、重なり合うゾーン64内の直接連続した両方の歯46との間に設置されることを可能にしている。この点に関し、
図8の下方に見られるこれらの面70a,70bが歯46の上部に配置されていることに留意されたい。これらの面は、両方のセクタ66a,66bの歯46間に位相ずれが生じるように構成されており、これにより、第1歯40は、第2歯46間に形成されたトラフに完全には侵入しない。
【0044】
操作において、操作者が制御ノブ8を介して所望の容量を調整するとき、彼/彼女は、ねじ14を駆動し、これにより同時に第2ホイール36を回転させる。容量調整の下限と上限との間に、通常、制御ノブを複数回回転させることが必要である。第2ホイール36の回転運動中、移動中の第2歯46が第1歯40に対して力を加え、第1歯40は第1ホイール34を軸方向上方に押し戻そうとする。その後、第1ホイール34は、ばね38の拮抗作用により下方に押し戻される。第1ロックホイール34のこの軸方向往復運動は、1つの歯から別の歯に切り替わるときに観察され、これは、システム32がねじ14を非常に多数の位置にインデックスさせることを可能にする。これが、所望の容量の正確な調整を行うことを容易にする。詳細には、各重なり合うゾーン64内で、ホイール46に対する同一第1歯40のための可能な位置の個数は、このゾーン64を形成している各重なり合うセクタ66a,66bにおける第2歯46の個数の2倍にほぼ相当している。表示のために、調整ねじ14を360度回転させる間に、調整ねじ14は約10の異なる角度位置にインデックスされることができ、これらの位置の各々は、第1歯40と第2歯46とが常に異なるように協働するため、安定的で正確である。
【0045】
容量調整の精度は、歯付きホイール34,36の製造容易性に影響を与えずに有利に高められる。これは、例えばプラスチック射出により、良好な歯の品質を維持したまま、容易に行われ得る。
【0046】
もちろん、以上に記載した本発明に対し、種々の改変が当業者により行われ得、上述の内容は、単に非限定的な例として記載されたものであり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。例えば、改変は、複数の環状列を、第2歯付きホイール上にではなく第1ホイール上に配置し、これにより第2歯付きホイールが歯の環状列を1つだけ有する、というように行われ得る。
【符号の説明】
【0047】
1 ピペット
8 制御ノブ
10 ロッド
12 長手方向中心軸
14 容量調整ねじ
20 カウンタ
22 外歯付きホイール
32 リングドッギングシステム、位置保持システム
34 第1歯付きホイール
36 第2歯付きホイール
38 ばね
40 第1歯
42 ラグ
46 第2歯
55 半径方向
56 単一の環状列
58a 同心環状列
58b 同心環状列
64 歯が重なり合うゾーン
66a 重なり合うセクタ
66b 重なり合うセクタ