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特許7253542有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/844 20230101AFI20230330BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20230330BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20230330BHJP
   C08F 20/22 20060101ALI20230330BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
H10K50/844
H10K85/10
H10K59/10
C08F20/22
C09K3/10 E
C09K3/10 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020522567
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2019021406
(87)【国際公開番号】W WO2019230846
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2018103972
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 麻希子
(72)【発明者】
【氏名】山下 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】栗村 啓之
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-148878(JP,A)
【文献】特開2009-172991(JP,A)
【文献】特開2013-186450(JP,A)
【文献】特表2017-515935(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082996(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/844
H10K 85/10
H10K 59/10
C08F 20/22
C09K 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素原子及び(メタ)アクリロイル基を有する含フッ素モノマー(A)を含むモノマー成分と、光重合開始剤と、を含有する、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤であって、
前記含フッ素モノマーが、式(A-2-1)で表される化合物を含み、
前記モノマー成分のフッ素原子含有量が、前記モノマー成分の全量基準で、0.1質量%以上10質量%以下である、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【化1】

[式(A-2-1)中、R は水素原子又はメチル基を示し、R 41 は水素原子又はフッ素原子を示し、mは1以上の整数を示す。複数存在するR は互いに同一でも異なっていてもよい。複数存在するR 41 は、互いに同一でも異なっていてもよい。但し、R 41 の少なくとも一つはフッ素原子である。]
【請求項2】
前記含フッ素モノマーのフッ素原子含有量が、前記含フッ素モノマーの全量基準で、2~75質量%である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項3】
前記モノマー成分が、前記含フッ素モノマー以外のモノマー(B)を更に含む、請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項4】
前記モノマー成分が、前記モノマー(B)として、環状構造を有するモノマー(B-1)を含む、請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項5】
前記モノマー(B-1)が、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項6】
前記モノマー成分が、前記モノマー(B)として、炭素数6以上のアルカンジイル基を有するアルカンジオールジ(メタ)アクリレート(B-2)を含む、請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項7】
前記アルカンジオールジ(メタ)アクリレート(B-2)が、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート及び1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項8】
前記光重合開始剤が、アシルホスフィンオキサイド型光重合開始剤を含む、請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を硬化してなる、硬化体。
【請求項10】
請求項に記載の硬化体を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止材。
【請求項11】
無機膜と有機膜とが積層した積層体を含み、
前記有機膜が請求項に記載の硬化体を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止材。
【請求項12】
有機エレクトロルミネッセンス表示素子と、
請求項10又は11に記載の有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止材と、を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示素子用封止剤に関する。また、本発明は、有機EL表示素子用封止剤の硬化体、当該硬化体を含む有機EL表示素子用封止材、及び、当該封止材を含む有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス表示素子(有機EL表示素子、有機EL素子又はOLED素子ともいう)は、高い輝度発光が可能な素子体として注目を集めている。しかし、有機EL表示素子には、水分により劣化し、発光特性が低下してしまうという課題があった。
【0003】
このような課題を解決するために、有機EL表示素子を封止し、水分による劣化を防止する技術が検討されている(例えば、特許文献1~3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-74583号公報
【文献】特開2001-307873号公報
【文献】特開2009-37812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、有機EL表示素子に対する要求特性が高まり、より高い信頼性を実現可能な封止材が求められている。
【0006】
本発明の目的の一つは、ガラス基板等との濡れ性に優れ、効率良く有機EL表示素子を封止可能な、有機EL表示素子用封止剤を提供することにある。また、本発明の目的の一つは、上記封止剤の硬化物を含む有機EL表示素子用封止材を提供することにある。更に、本発明の目的の一つは、上記封止材を含む有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、フッ素原子及び(メタ)アクリロイル基を有する含フッ素モノマー(A)を含むモノマー成分と、光重合開始剤と、を含有する、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤に関する。
【0008】
上記有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤は、ガラス基板等との濡れ性に優れるため、効率良く有機EL表示素子を封止することができる。
【0009】
一態様において、上記含フッ素モノマーのフッ素原子含有量は、上記含フッ素モノマーの全量基準で、2~75質量%であってよい。
【0010】
一態様において、上記モノマー成分のフッ素原子含有量は、上記モノマー成分の全量基準で、0.1~75質量%であってよい。
【0011】
一態様において、上記含フッ素モノマーは、3~25個のフッ素原子を有する化合物を含んでいてよい。
【0012】
一態様において、上記含フッ素モノマーは、式(A-1)で表される化合物、式(A-2)で表される化合物及び式(A-3)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
【化1】
[式(A-1)中、
は、水素原子又はメチル基を示し、
は、フッ化アルキル基、又は、フッ化アルキル基における炭素-炭素結合及び炭素-水素結合の一部に酸素原子が挿入された基、を示す。]
【化2】
[式(A-2)中、
は、水素原子又はメチル基を示し、
は、フッ化アルカンジイル基、又は、フッ化アルカンジイル基における炭素-炭素結合及び炭素-水素結合の一部に酸素原子が挿入された基、を示す。
複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化3】
[式(A-3)中、
は水素原子又はメチル基を示し、
は、単結合、アルカンジイル基、フッ化アルカンジイル基、又は、アルカンジイル基若しくはフッ化アルカンジイル基における炭素-炭素結合及び炭素-水素結合の一部に酸素原子が挿入された基、を示し、
Arはフッ化アリール基を示す。]
【0013】
一態様において、上記含フッ素モノマーは、式(A-1-1)で表される化合物、式(A-2-1)で表される化合物及び式(A-3-1)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
【化4】
[式(A-1-1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、R21は水素原子又はフッ素原子を示し、nは1以上の整数を示す。複数存在するR21は互いに同一でも異なっていてもよい。但し、R21の少なくとも一つはフッ素原子である。]
【化5】
[式(A-2-1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、R41は水素原子又はフッ素原子を示し、mは1以上の整数を示す。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。複数存在するR41は、互いに同一でも異なっていてもよい。但し、R41の少なくとも一つはフッ素原子である。]
【化6】
[式(A-3-1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、R61は水素原子又はフッ素原子を示し、R62は水素原子又はフッ素原子を示し、pは0以上の整数を示す。複数存在するR61は、互いに同一でも異なっていてもよい。複数存在するR62は、互いに同一でも異なっていてもよい。但し、R62の少なくとも一つはフッ素原子である。]
【0014】
一態様において、上記モノマー成分は、上記含フッ素モノマー以外のモノマー(B)を更に含んでいてよい。
【0015】
一態様において、上記モノマー成分は、上記モノマー(B)として、環状構造を有するモノマー(B-1)を含んでいてよい。
【0016】
一態様において、上記モノマー(B-1)は、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
【0017】
一態様において、上記モノマー成分は、上記モノマー(B)として、炭素数6以上のアルカンジイル基を有するアルカンジオールジ(メタ)アクリレート(B-2)を含んでいてよい。
【0018】
一態様において、上記アルカンジオールジ(メタ)アクリレート(B-2)は、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート及び1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
【0019】
一態様において、上記光重合開始剤は、アシルホスフィンオキサイド型光重合開始剤を含んでいてよい。
【0020】
本発明の他の一側面は、上記有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止剤を硬化してなる、硬化体に関する。このような硬化体は、透湿度が低く、ガラス基板等との接着性に優れるため、有機エレクトロルミネッセンス表示素子を封止する封止材として、好適に用いることができる。
【0021】
本発明の更に他の一側面は、上記硬化体を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止材に関する。このような封止材は、防湿性に優れ、且つ、ガラス基板等との接着性に優れる。このため、上記封止材によれば、信頼性及び耐久性に優れた有機エレクトロルミネッセンス表示装置を得ることができる。
【0022】
本発明の更に他の一側面は、無機膜と有機膜とが積層した積層体を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止材に関する。この封止材において、上記有機膜は、上記硬化体を含む。このような封止材によれば、上記硬化体を含む有機膜と無機膜との組み合わせによって、より高い防湿性が実現される。また、上記硬化体は、ガラス基板及び無機膜に対する接着性に優れるため、上記封止材によれば、より高い信頼性及び耐久性が実現される。
【0023】
本発明の更に他の一側面は、有機エレクトロルミネッセンス表示素子と、上記有機エレクトロルミネッセンス表示素子用封止材と、を含む、有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ガラス基板等との濡れ性に優れ、効率良く有機EL表示素子を封止可能な、有機EL表示素子用封止剤が提供される。また、本発明によれば、上記封止剤の硬化物を含む有機EL表示素子用封止材が提供される。更に、本発明によれば、上記封止材を含む有機EL表示装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0026】
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示素子用封止剤(以下、単に封止剤ともいう)は、フッ素原子及び(メタ)アクリロイル基を有する含フッ素モノマー(以下、(A)成分ともいう。)を含むモノマー成分と、光重合開始剤と、を含有する。
【0027】
本実施形態に係る封止剤は、ガラス基板等の無機表面を有する基板(ガラス基板、無機膜が成膜された樹脂基板等)との濡れ性に優れる。封止剤が濡れ性に優れることで、塗布性が良好となり、短時間のうちに基板上に封止剤が拡がるため、作業効率が向上する。また、封止剤が濡れ性に優れることで、塗膜の平坦性が向上し、平坦性に優れる封止材を形成できる。また、本実施形態に係る封止剤によれば、防湿性に優れた封止材を形成できる。更に、本実施形態に係る封止剤により形成される封止材は、ガラス基板、無機膜が成膜された基板(ガラス基板、樹脂基板等)等との接着性に優れる。
【0028】
上記効果が奏される理由は必ずしも限定されないが、含フッ素モノマーによって封止剤の表面自由エネルギーが低くなり、微細な凹凸に追従しやすくなることで、基板等に対する密着性が向上することが一因と考えられる。
【0029】
含フッ素モノマーは、フッ素原子と(メタ)アクリロイル基とを有している。尚、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を示す。含フッ素モノマーは1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
含フッ素モノマーが有するフッ素原子の数は、1個以上であればよく、例えば2個以上であってもよく、好ましくは3個以上である。また、含フッ素モノマーが有するフッ素原子の数の上限は特に限定されず、例えば40個以下であってよく、好ましくは30個以下であり、より好ましくは25個以下である。
【0031】
含フッ素モノマーの全量に対するフッ素原子の含有量は、例えば1質量%以上であってよく、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。また、フッ素原子の含有量は、含フッ素モノマーの全量基準で、例えば75質量%以下であってよく、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。
【0032】
含フッ素モノマーが有する(メタ)アクリロイル基の数は、1個以上であればよい。ガラス転移温度の低い硬化体が得られやすくなる観点からは、含フッ素モノマーが有する(メタ)アクリロイル基の数は1個であってよい。また、ガラス転移温度の高い硬化体が得られやすくなる観点からは、含フッ素モノマーが有する(メタ)アクリロイル基の数は、2個以上であってよい。含フッ素モノマーが有する(メタ)アクリロイル基の数の上限は特に限定されず、例えば4個以下であってよく、柔軟性に優れる硬化体が得られやすくなる観点からは、好ましくは3個以下、より好ましくは2個以下である。
【0033】
含フッ素モノマーの具体例の一つとして、式(A-1)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【化7】
【0035】
式(A-1)中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。また、Rは、フッ化アルキル基、又は、フッ化アルキル基における炭素-炭素結合及び炭素-水素結合の一部に酸素原子が挿入された基、を示す。
【0036】
フッ化アルキル基は、アルキル基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換された基、ということができる。フッ化アルキル基の炭素原子数は特に限定されず、例えば、1個以上であってよく、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上である。また、フッ化アルキル基の炭素原子数は、例えば25個以下であってよく、20個以下であってもよい。
【0037】
フッ化アルキル基としては、ジフルオロメチレン(-CF-)を含む基を好適に用いることができる。
【0038】
フッ化アルキル基の具体例としては、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、1,1,1-トリフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペルフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロプロピル基、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロエチルメチル基、1-(トリフルオロメチル)-1,2,2,2-テトラフルオロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、ペルフルオロプロピル基、1,1,2,2-テトラフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロブチル基、1,1,1,2,2,3,3-ペプタフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブチル基、ペルフルオロブチル基、1,1-ビス(トリフルオロ)メチル-2,2,2-トリフルオロエチル基、2-(ペルフルオロプロピル)エチル基、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチル基、ペルフルオロペンチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-デカフルオロペンチル基、1,1-ビス(トリフルオロメチル)-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2-(ペルフルオロブチル)エチル基、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロペンチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-デカフルオロヘキシル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-ドデカフルオロヘキシル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロペンチルメチル基及びペルフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0039】
フッ化アルキル基における炭素-炭素結合及び炭素-水素結合の一部に酸素原子が挿入された基(以下、Rの含酸素基ともいう。)は、酸素原子が一箇所に挿入された基であってよく、二箇所以上に挿入された基であってもよい。
【0040】
尚、炭素-炭素結合に酸素原子が挿入されると、エーテル結合が形成される。また、炭素-水素結合に酸素原子が挿入されると、ヒドロキシル基が形成される。すなわち、Rの含酸素基は、エーテル結合及びヒドロキシル基からなる群より選択される少なくとも一種を含む基ということもできる。
【0041】
の含酸素基の具体例としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。
【0042】
【化8】
【0043】
式(A-1)で表される化合物におけるフッ素原子含有量は、例えば2質量%以上であってよく、好ましくは5質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。また、式(A-1)で表される化合物におけるフッ素原子含有量は、例えば75質量%以下であってよく、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。
【0044】
式(A-1)で表される化合物の具体例の一つとして、例えば、式(A-1-1)で表される化合物が挙げられる。
【0045】
【化9】
【0046】
式(A-1-1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、R21は水素原子又はフッ素原子を示し、nは1以上の整数を示す。複数存在するR21は互いに同一でも異なっていてもよい。但し、R21の少なくとも一つはフッ素原子である。
【0047】
nは、1以上であればよく、好ましくは2以上である。また、nの上限は特に限定されず、例えば25以下であってよく、20以下であってもよい。
【0048】
21は、式(A-1-1)中に複数存在しているが、そのうちの少なくとも一つがフッ素原子である。また、R21のうち、2つ以上がフッ素原子であることが好ましく、3つ以上がフッ素原子であることがより好ましい。R21は全てフッ素原子であってもよい。
【0049】
21の合計数に対するフッ素原子の数の割合は、例えば4%以上であってよく、好ましくは8%以上、より好ましくは12%以上である。当該割合は、例えば100%以下であってよく、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下である。
【0050】
式(A-1-1)で表される化合物は、nが付された括弧内の2価の基(-C(R21-)のうち、少なくとも一つがジフルオロメチレン(-CF-)であることが好ましい。
【0051】
含フッ素モノマーの具体例の他の一つとして、式(A-2)で表される化合物が挙げられる。
【0052】
【化10】
【0053】
式(A-2)中、Rは、水素原子又はメチル基を示す。また、Rは、フッ化アルカンジイル基、又は、フッ化アルカンジイル基における炭素-炭素結合及び炭素-水素結合の一部に酸素原子が挿入された基、を示す。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0054】
フッ化アルカンジイル基は、アルカンジイル基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換された基、ということができる。フッ化アルカンジイル基の炭素原子数は特に限定されず、例えば、1以上であってよく、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上である。また、フッ化アルカンジイル基の炭素原子数は、例えば17以下であってよく、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
【0055】
フッ化アルカンジイル基としては、ジフルオロメチレン(-CF-)を含む基を好適に用いることができる。
【0056】
フッ化アルカンジイル基の具体例としては、炭素数1~17の直鎖状又は分枝状のフッ化アルカンジイル基(例えば、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフルオロ-1,10-デカンジイル基)、炭素数1~17のフッ化シクロアルカンジイル基等が挙げられる。
【0057】
フッ化アルカンジイル基における炭素-炭素結合及び炭素-水素結合の一部に酸素原子が挿入された基(以下、Rの含酸素基ともいう。)は、酸素原子が一箇所に挿入された基であってよく、二箇所以上に挿入された基であってもよい。
【0058】
尚、炭素-炭素結合に酸素原子が挿入されると、エーテル結合が形成される。また、炭素-水素結合に酸素原子が挿入されると、ヒドロキシル基が形成される。すなわち、Rの含酸素基は、エーテル結合及びヒドロキシル基からなる群より選択される少なくとも一種を含む基ということもできる。
【0059】
の含酸素基の具体例としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。
【0060】
【化11】
【0061】
式(A-2)で表される化合物におけるフッ素原子含有量は、例えば4質量%以上であってよく、好ましくは8質量%以上、より好ましくは12質量%以上である。また、式(A-2)で表される化合物におけるフッ素原子含有量は、例えば90質量%以下であってよく、好ましくは75質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。
【0062】
式(A-2)で表される化合物の具体例の一つとして、例えば、式(A-2-1)で表される化合物が挙げられる。
【0063】
【化12】
【0064】
式(A-2-1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、R41は水素原子又はフッ素原子を示し、mは1以上の整数を示す。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。複数存在するR41は、互いに同一でも異なっていてもよい。但し、R41の少なくとも一つはフッ素原子である。
【0065】
mは、1以上であればよく、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上である。また、mの上限は特に限定されず、例えば20以下であってよく、好ましくは17以下、より好ましくは15以下である。
【0066】
41は、式(A-2-1)中に複数存在しているが、そのうちの少なくとも一つがフッ素原子である。また、R41のうち、2つ以上がフッ素原子であることが好ましく、4つ以上がフッ素原子であることがより好ましい。R41は全てフッ素原子であってもよい。
【0067】
41の合計数に対するフッ素原子の数の割合は、例えば1%以上であってよく、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上である。当該割合は、例えば100%以下であってよく、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。
【0068】
式(A-2-1)で表される化合物は、mが付された括弧内の2価の基(-C(R41-)のうち、少なくとも一つがジフルオロメチレン(-CF-)であることが好ましい。
【0069】
含フッ素モノマーの具体例の他の一つとして、式(A-3)で表される化合物が挙げられる。
【0070】
【化13】
【0071】
式(A-3)中、Rは水素原子又はメチル基を示す。また、Rは、単結合、アルカンジイル基、フッ化アルカンジイル基、又は、アルカンジイル基若しくはフッ化アルカンジイル基における炭素-炭素結合及び炭素-水素結合の一部に酸素原子が挿入された基、を示す。また、Arはフッ化アリール基を示す。
【0072】
尚、「Rが単結合を示す」とは、Arと酸素原子とが直接結合していることを意味する。
【0073】
Arのフッ化アリール基としては、フッ化フェニル基が好ましい。フッ化フェニル基は、フェニル基中の水素原子の1~5個がフッ素原子に置換した基ということもできる。フッ化フェニル基は、フッ素原子を1つ以上有するものであってよく、5つ有するものであってもよい。
【0074】
のアルカンジイル基の炭素原子数は特に限定されず、例えば、1以上であってよい。また、Rのアルカンジイル基の炭素原子数は、例えば17以下であってよく、好ましくは15以下、より好ましくは12以下である。
【0075】
アルカンジイル基の具体例としては、炭素数1~17の直鎖状又は分枝状のアルカンジイル基(例えば、メチレン基、エチレン基等)、炭素数1~17のシクロアルカンジイル基等が挙げられる。
【0076】
のフッ化アルカンジイル基は、上述のアルカンジイル基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換された基、ということができる。Rのフッ化アルカンジイル基の炭素原子数は特に限定されず、例えば、1以上であってよい。また、Rのフッ化アルカンジイル基の炭素原子数は、例えば17以下であってよく、好ましくは15以下、より好ましくは12以下である。
【0077】
のフッ化アルカンジイル基としては、ジフルオロメチレン(-CF-)を含む基を好適に用いることができる。
【0078】
アルカンジイル基若しくはフッ化アルカンジイル基における炭素-炭素結合及び炭素-水素結合の一部に酸素原子が挿入された基(以下、Rの含酸素基ともいう。)は、酸素原子が一箇所に挿入された基であってよく、二箇所以上に挿入された基であってもよい。
【0079】
尚、炭素-炭素結合に酸素原子が挿入されると、エーテル結合が形成される。また、炭素-水素結合に酸素原子が挿入されると、ヒドロキシル基が形成される。すなわち、Rの含酸素基は、エーテル結合及びヒドロキシル基からなる群より選択される少なくとも一種を含む基ということもできる。
【0080】
の含酸素基の具体例としては、例えば、-CHCHO-を含む基等が挙げられる。
【0081】
式(A-3)で表される化合物におけるフッ素原子含有量は、例えば3質量%以上であってよく、好ましくは7質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。また、式(A-3)で表される化合物におけるフッ素原子含有量は、例えば90質量%以下であってよく、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0082】
式(A-3)で表される化合物の具体例の一つとして、例えば、式(A-3-1)で表される化合物が挙げられる。
【0083】
【化14】
【0084】
式(A-3-1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、R61は水素原子又はフッ素原子を示し、R62は水素原子又はフッ素原子を示し、pは0以上の整数を示す。pが1以上のとき、複数存在するR61は、互いに同一でも異なっていてもよい。また、複数存在するR62は、互いに同一でも異なっていてもよい。但し、R62の少なくとも一つはフッ素原子である。
【0085】
pは、0以上の整数を示す。ここで、pが0とは、ベンゼン環と酸素原子とが直接結合していることを示す。pは、1以上の整数であってもよい。また、pの上限は特に限定されず、例えば17以下であってよく、好ましくは15以下、より好ましくは12以下である。
【0086】
式(A-3-1)中にR61が存在するとき(すなわち、pが1以上の整数であるとき)、R61は、全て水素原子であってよく、全てフッ素原子であってもよく、一部が水素原子で他部がフッ素原子であってもよい。
【0087】
62は、式(A-3-1)中に複数存在しており、そのうちの少なくとも1個がフッ素原子である。また、R62のうち、2個以上がフッ素原子であってもよく、3個以上がフッ素原子以上であってもよい。また、R62の全て(5個)がフッ素原子であってもよい。
【0088】
61及びR62の合計数に対するフッ素原子の数の割合は、例えば5%以上であってよく、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上である。当該割合は、例えば100%以下であってよく、好ましくは95%以下、より好ましくは80%以下である。
【0089】
含フッ素モノマーは、上記の化合物に限定されない。
【0090】
本実施形態に係る封止剤は、含フッ素モノマー以外の他のモノマー成分(以下、(B)成分ともいう。)を更に含有していてよい。(B)成分は、含フッ素モノマー((A)成分)と共重合可能な化合物であればよく、例えば、(メタ)アクリロイル基と共重合可能な重合性基を有する化合物であってよい。
【0091】
(B)成分が有する重合性基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基等が挙げられ、これらのうち(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0092】
(B)成分としては、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを好適に用いることができる。すなわち、(B)成分は、フッ素原子を有さず、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーであることが好ましい。
【0093】
(B)成分としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート等の単官能(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0094】
(B)成分の好適な一例としては、環状構造を有するモノマー(以下、(B-1)成分ともいう。)が挙げられる。(B-1)成分が有する環状構造としては、例えば、環状アミド、テトラヒドロフラン環、ピペリジン環等のヘテロ環;シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロドデカトリエン環、ノルボルナン環、アダマンタン環等の脂肪族炭化水素環;ベンゼン環等の芳香族炭化水素環が挙げられ、これらのうち脂肪族炭化水素環及び芳香族炭化水素環からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。なお、(B-1)成分は、フッ素原子を有さず、上述の含フッ素モノマーとは区別される。
【0095】
(B-1)成分のうち、芳香族炭化水素環を有するモノマーとしては、
ベンジル(メタ)アクリレート、4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5-テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4-クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート(2-HPA)、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタル酸、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキシド)変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO(プロピレンオキシド)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート等の単官能モノマー、
エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシジ(メタ)アクリレート等の多官能モノマー等が挙げられる。
【0096】
芳香族炭化水素環を有するモノマーとしては、ベンゼン環を2個有するモノマーがより好ましく、当該モノマーとしては、例えば、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートが挙げられ、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート及びエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも一種が特に好ましい。
【0097】
エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(B-1-1)で表される化合物が好ましい。
【0098】
【化15】
【0099】
式(B-1-1)中、qは1以上の整数(好ましくは1~5)を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。
【0100】
エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(B-1-2)で表される化合物が好ましい。
【0101】
【化16】
【0102】
式(B-1-2)中、r及びsはそれぞれ独立に1以上の整数(好ましくは、r+s=2~10)を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。
【0103】
(B-1)成分のうち、脂肪族炭化水素環を有するモノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0104】
脂肪族炭化水素環を有するモノマーとしては、ノルボルナン環及びシクロペンタン環からなる群より選択される少なくとも一種を有するモノマーがより好ましく、当該モノマーとしては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられ、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート及びトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも一種が特に好ましい。
【0105】
(B-1)成分としては、低透湿性により優れる封止材が得られやすくなる観点から、環状構造を分子内に2個以上有するモノマーが好ましく、環状構造を分子内に2個有するモノマーがより好ましい。
【0106】
環状構造を分子内に2個以上有するモノマーとしては、例えば、
エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート及びエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される芳香族炭化水素環を有するモノマー;
トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂肪族炭化水素環を有するモノマーが挙げられる。
【0107】
(B-1)成分は、低透湿性により優れる封止材が得られやすくなる観点から、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びエトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートからなる群より選択されることが好ましい。
【0108】
(B)成分の好適な他の一例としては、炭素数6以上のアルカンジイル基を有するアルカンジオールジ(メタ)アクリレート(以下、(B-2)成分ともいう。)が挙げられる。(B-2)成分が有するアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは1~20であり、より好ましくは6~15であり、更に好ましくは9~12である。また、(B-2)成分が有するアルカンジイル基は、好ましくはα,ω-アルカンジイル基である。なお、(B-2)成分は、フッ素原子を有さず、上述の含フッ素モノマーとは区別される。
【0109】
(B-2)成分としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、好ましくは1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも一種であり、より好ましくは1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレートである。
【0110】
本実施形態において、全モノマー成分に占める含フッ素モノマーの割合は、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。当該割合の上限は特に限定されず、例えば100質量%であってもよい。
【0111】
モノマー成分の全量に対するフッ素原子含有量は、濡れ性及び接着性の観点から、例えば0.1質量%以上であってよく、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、最も好ましくは5質量%以上である。また、フッ素原子の含有量は、モノマー成分の全量基準で、例えば75質量%以下であってよく、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。
【0112】
光重合開始剤は、可視光線、紫外線等の活性光線によって活性化し、含フッ素モノマーを含むモノマー成分を開始又は促進させることができる化合物であればよい。光重合開始剤は1種を単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0113】
光ラジカル重合開始剤としては、
ベンゾフェノン及びその誘導体;
ベンジル及びその誘導体;
アントラキノン及びその誘導体;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン型光重合開始剤;
ジエトキシアセトフェノン、4-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン型光重合開始剤;
2-ジメチルアミノエチルベンゾエート;
p-ジメチルアミノエチルベンゾエート;
ジフェニルジスルフィド;
チオキサントン及びその誘導体;
カンファーキノン、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボキシ-2-ブロモエチルエステル、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボキシ-2-メチルエステル、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸クロライド等のカンファーキノン型光重合開始剤;
2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等のα-アミノアルキルフェノン型光重合開始剤;
ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジエトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6―トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド型光重合開始剤;
フェニル-グリオキシリックアシッド-メチルエステル;
オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル;
オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル;等が挙げられる。
【0114】
光重合開始剤としては、390nm以上の可視光線のみを用いて硬化できる観点からは、アシルホスフィンオキサイド型光重合開始剤が好ましい。尚、アシルホスフィンオキサイド型光重合開始剤は、アシルホスフィンオキサイド基(-(C=O)-(P=O)<)を有する光重合開始剤ということもできる。また、395nm以上の光で硬化でき、可視光透過率のより高い硬化体が得られやすくなる観点からは、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイドが特に好ましい。2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイドとしては、例えば、BASFジャパン社製「Irgacure TPO」等が挙げられる。
【0115】
光重合開始剤の含有量は、モノマー成分の総量100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、2質量部以上が更に好ましく、2.5質量部以上が一層好ましい。光重合開始剤の含有量を多くすることで、封止剤の硬化性能がより向上する傾向がある。光重合開始剤の含有量は、モノマー成分の総量100質量部に対して、12質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、6質量部以下が更に好ましい。光重合開始剤の含有量を少なくすることで、可視光透過率のより高い硬化体が得られやすくなる。
【0116】
本実施形態に係る封止剤は、モノマー成分及び光重合開始剤以外の他の成分を更に含有していてもよい。本実施形態に係る封止剤は、例えば、他の成分として当該術分野で用いられる公知の添加剤を更に含有していてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、金属不活性化剤、填料、安定剤、中和剤、滑剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0117】
本実施形態に係る封止剤の表面張力、特に静的表面張力は、40mN/m以下が好ましく、30mN/m以下がより好ましい。これにより、インクジェット等による塗布が容易となり、作業性が向上する。また、これにより、基板等に対する密着性が向上して、防湿性及び接着性がより向上する傾向がある。静的表面張力の下限は特に限定されず、例えば10mN/m以上であってよい。
【0118】
尚、静的表面張力は、プレート法、リング法、ペンダントドロップ法等により測定されるが、本実施形態で規定する静的表面張力の値は、ペンダントドロップ法によるものである。ペンダントドロップ法とは、管の先端から液体を押し出し、ぶら下がった懸滴(ペンダントドロップ)の形状から表面張力を算出する方法をいう。
【0119】
本実施形態に係る封止剤は、可視光線又は紫外線の少なくとも一方を照射することで硬化できる。尚、本明細書中、封止剤の「硬化」とは、必ずしも剛直に固化することに限定されず、モノマー成分が重合して重合体を形成すればよい。例えば、封止剤の硬化体は、剛直な固体(例えば、ガラス状)であってよく、ゴム状であってもよい。
【0120】
可視光線又は紫外線を照射するためのエネルギー照射源としては、重水素ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノン-水銀混成ランプ、ハロゲンランプ、エキシマランプ、インジウムランプ、タリウムランプ、LEDランプ、無電極放電ランプ等のエネルギー照射源が挙げられる。
【0121】
本実施形態に係る封止剤は、有機EL表示素子にダメージを与えづらい観点から、380nm以上の波長の光で硬化させることが好ましく、395nm以上の波長の光で硬化させることがより好ましく、395nmの波長の光で硬化させることが最も好ましい。照射光の波長としては、赤外光による照射部の温度上昇が避けられ、有機EL表示素子にダメージを与える可能性が小さいことから、500nm以下が好ましい。エネルギー照射源としては、発光波長が単波長であるLEDランプが好ましい。
【0122】
封止剤を硬化させる際の照射量は、100~8000mJ/cmが好ましく、300~2000mJ/cmがより好ましい。照射量を100mJ/cm以上とすることで、封止剤が十分に硬化し、高い接着強度が得られやすくなる。また、照射量を8000mJ/cm以下とすることで、有機EL表示素子に対してダメージを与えることなく封止剤を硬化することができる。
【0123】
本実施形態に係る封止剤の硬化体は、透明性に優れることが望ましい。具体的には、硬化体は、360nm以上800nm以下の紫外-可視光線領域の分光透過率が、厚さ10μm当たりで、95%以上であることが好ましく、97%以上であることがより好ましく、99%以上であることが更に好ましい。この分光透過率が95%以上であると、輝度及びコントラストに優れた有機EL表示装置が得られやすくなる。
【0124】
本実施形態に係る封止剤の硬化体は、JIS Z 0208:1976に準拠して、23℃、90%RHの環境下に24時間暴露して測定した100μm厚での透湿度の値が、350g/m以下であることが好ましく、150g/m以下であることがより好ましく、75g/m以下であることが更に好ましい。透湿度が低いと、有機発光材料層への水分の到達によるダークスポットの発生を抑制できる。
【0125】
本実施形態に係る封止剤の使用方法は特に限定されない。例えば、対象物(例えば、有機EL表示素子)に封止剤を塗布し、対象物上で封止剤を硬化させることによって、封止剤の硬化体からなる封止材を形成できる。
【0126】
また、封止剤を所定の形状(例えば、フィルム状、シート状等)に硬化させて、所定の形状を有する封止材を形成してもよい。この場合、例えば、当該封止材を有機EL表示素子上に配置することで、有機EL表示素子を封止できる。
【0127】
以下、本実施形態に係る封止剤を用いて形成される有機EL表示装置の一態様について、トップエミッション型の有機EL表示装置を例に説明する。尚、本実施形態に係る封止剤を適用する有機EL表示装置は、トップエミッション型に限定されず、有機EL層で生じる光を基板側から照射するボトムエミッション型の有機EL表示装置であってもよい。
【0128】
トップエミッション型の有機EL表示装置は、有機EL表示素子と、有機EL表示素子を封止する封止層と、封止層上に設けられる封止基板と、を備えている。
【0129】
有機EL表示素子は、例えば、基板上に、陽極と、発光層を含む有機EL層と、陰極とが順に積層された構造を有している。
【0130】
有機EL表示素子の基板としては、例えば、ガラス基板、シリコン基板、プラスチック基板等が挙げられる。これらのうち、ガラス基板及びプラスチック基板からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、ガラス基板がより好ましい。
【0131】
プラスチック基板に用いられるプラスチックとしては、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキサジアゾール、芳香族ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリチアゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリアクリル等が挙げられる。これらの中では、低水分透過性、低酸素透過性、耐熱性に優れる点で、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキサジアゾール、芳香族ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリチアゾール、ポリパラフェニレンビニレンからなる群のうちの1種以上が好ましく、紫外線又は可視光線等のエネルギー線の透過性が高い点で、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなる群のうちの1種以上がより好ましい。
【0132】
陽極としては、比較的仕事関数の大きな(4.0eVより大きな仕事関数を持つものが好適である)、導電性の金属酸化物膜や半透明の金属薄膜等が一般的に用いられる。陽極の材料としては例えば、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide、以下、ITOという)、酸化スズ等の金属酸化物、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、銅(Cu)等の金属又はこれらのうちの少なくとも1個を含有する合金、ポリアニリン又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体等の有機の透明導電膜等が挙げられる。陽極は、必要があれば2層以上の層構成により形成することができる。陽極の膜厚は、電気伝導度を(ボトムエミッション型の場合には、光の透過性も)考慮して、適宜選択することができる。陽極の膜厚は、10nm~10μmが好ましく、20nm~1μmがより好ましく、50nm~500nmが最も好ましい。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。トップエミッション型の場合には、基板側に照射される光を反射させるための反射膜を陽極の下に設けてもよい。
【0133】
有機EL層は、少なくとも有機物からなる発光層を含んでいる。この発光層は、発光性材料を含有する。発光性材料としては、蛍光又は燐光を発光する有機物(低分子化合物又は高分子化合物)等が挙げられる。発光層は、更に、ドーパント材料を含有してもよい。有機物としては、色素系材料、金属錯体系材料、高分子材料等が挙げられる。ドーパント材料は、有機物の発光効率の向上や発光波長を変化させる等の目的で、有機物中にドープされるものである。これらの有機物と必要に応じてドープされるドーパントからなる発光層の厚さは通常2~200nmである。
【0134】
色素系材料としては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等が挙げられる。
【0135】
金属錯体系材料としては、イリジウム錯体、白金錯体等の三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等といった、金属錯体等が挙げられる。金属錯体としては、中心金属に、テルビウム(Tb)、ユウロピウム(Eu)、ジスプロシウム(Dy)等の希土類金属、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ベリリウム(Be)等を有し、配位子に、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等が挙げられる。これらの中では、中心金属にアルミニウム(Al)を有し、配位子にキノリン構造等を有する金属錯体が好ましい。中心金属にアルミニウム(Al)を有し、配位子にキノリン構造等を有する金属錯体の中では、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウムが好ましい。
【0136】
高分子材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素体や金属錯体系発光材料を高分子化した物等が挙げられる。
【0137】
上記発光性材料のうち、青色に発光する材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、これらの重合体等が挙げられる。これらの中では、高分子材料が好ましい。高分子材料の中では、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体からなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0138】
緑色に発光する材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、これらの重合体等が挙げられる。これらの中では、高分子材料が好ましい。高分子材料の中では、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体からなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0139】
赤色に発光する材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体、これらの重合体等が挙げられる。これらの中では、高分子材料が好ましい。高分子材料の中では、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体からなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0140】
ドーパント材料としては、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾロン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等が挙げられる。
【0141】
有機EL層は、発光層以外に、発光層と陽極との間に設けられる層と、発光層と陰極との間に設けられる層と、を適宜設けることができる。まず、発光層と陽極との間に設けられる層としては、陽極からの正孔注入効率を改善する正孔注入層や、陽極又は正孔注入層から注入された正孔を発光層へ輸送する正孔輸送層等が挙げられる。発光層と陰極との間に設けられる層としては、陰極からの電子注入効率を改善する電子注入層や、陰極又は電子注入層から注入された電子を発光層へ輸送する電子輸送層等が挙げられる。
【0142】
正孔注入層を形成する材料としては、4’,4’’-トリス{2-ナフチル(フェニル)アミノ}トリフェニルアミン等のフェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。
【0143】
正孔輸送層を構成する材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ベンジジン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリ(2,5-チエニレンビニレン)若しくはその誘導体等が挙げられる。
【0144】
これらの正孔注入層又は正孔輸送層が、電子の輸送を堰き止める機能を有する場合には、電子ブロック層ということもある。
【0145】
電子輸送層を構成する材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8-ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体等が挙げられる。誘導体としては、金属錯体等が挙げられる。これらの中では、8-ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体が好ましい。8-ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の中では、発光層中に含有する、蛍光又は燐光を発光する有機物としても使用できる点で、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウムが好ましい。
【0146】
電子注入層としては、発光層の種類に応じて、カルシウム(Ca)層の単層構造からなる電子注入層、又は、周期律表IA族とIIA族の金属であり、且つ、仕事関数が1.5~3.0eVの金属及びその金属の酸化物、ハロゲン化物及び炭酸化物からなる群のうちの1種以上で形成された層の単層構造、又は、周期律表IA族とIIA族の金属であり、且つ、仕事関数が1.5~3.0eVの金属及びその金属の酸化物、ハロゲン化物及び炭酸化物からなる群のうちの1種以上で形成された層とCa層との積層構造からなる電子注入層等が挙げられる。仕事関数が1.5~3.0eVの、周期律表IA族の金属又はその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物としては、リチウム(Li)、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、酸化リチウム、炭酸リチウム等が挙げられる。仕事関数が1.5~3.0eVの、周期律表IIA族の金属又はその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物としては、ストロンチウム(Sr)、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0147】
これらの電子輸送層又は電子注入層が、正孔の輸送を堰き止める機能を有する場合には、これらの電子輸送層や電子注入層を正孔ブロック層ということもある。
【0148】
陰極としては、仕事関数が比較的小さく(4.0eVより小さな仕事関数を持つものが好適である)、発光層への電子注入が容易な透明又は半透明の材料が好ましい。陰極の材料としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、アルミニウム(Al)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、インジウム(In)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、イッテルビウム(Yb)等の金属、又は上記金属のうち2種以上からなる合金、若しくはそれらのうち1種以上と、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、銅(Cu)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、スズ(Sn)のうち1種以上とからなる合金、又は、グラファイト若しくはグラファイト層間化合物、又は、ITO、酸化スズ等の金属酸化物等が挙げられる。
【0149】
陰極を2層以上の積層構造としてもよい。2層以上の積層構造としては、上記の金属、金属酸化物、フッ化物、これらの合金と、Al、Ag、Cr等の金属との積層構造等が挙げられる。陰極の膜厚は、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜選択することができる。陰極の膜厚は、10nm~10μmが好ましく、15nm~1μmがより好ましく、20nm~500nmが最も好ましい。陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法等が挙げられる。
【0150】
これらの発光層と陽極との間と、発光層と陰極との間に設けられる層は、製造する有機EL表示装置に求められる性能に応じて、適宜選択可能である。例えば、本実施形態で使用される有機EL表示素子の構造としては、下記の(i)~(xv)の層構成のいずれかを有することができる。
(i)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(ii)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(v)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(vi)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(vii)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(viii)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(ix)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(x)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
(xi)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(xii)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(xiii)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(xiv)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(xv)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、「/」は各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0151】
封止層は、水蒸気や酸素等の気体が有機EL表示素子に接触することを防ぐために、上記気体に対して高いバリア性を有する層で有機EL表示素子を封止するために、設けられる。この封止層は、無機膜と有機膜とが下から交互に形成される。無機/有機積層体は2回以上繰り返して形成されてもよい。
【0152】
無機/有機積層体の無機膜は、有機EL表示装置が置かれる環境に存在する水蒸気や酸素等の気体に有機EL表示素子が曝されることを防止するために設けられる膜である。無機/有機積層体の無機膜は、ピンホール等の欠陥が少ない、連続的かつ緻密な膜であることが好ましい。無機膜としては、SiN膜、SiO膜、SiON膜、Al膜、AlN膜等の単体膜やこれらの積層膜等が挙げられる。
【0153】
無機/有機積層体の有機膜は、無機膜上に形成されたピンホール等の欠陥を被覆するために、また、表面に平坦性を付与するために、設けられる。有機膜は、無機膜が形成される領域よりも狭い領域に形成される。これは、有機膜を無機膜の形成領域と同じか又はそれよりも広く形成すると、有機膜が露出する領域で劣化してしまうからである。但し、封止層全体の最上層に形成される最上位有機膜は、無機膜の形成領域とほぼ同じ領域に形成される。そして、封止層の上面が平坦化されるように形成される。有機膜は、上述の本実施形態に係る封止剤を用いて形成される膜(すなわち、封止剤の硬化体を含む膜)であってよい。
【0154】
本実施形態に係る封止剤は、例えば、短時間で膜厚3μm以上の平坦性に優れる塗布が可能なインクジェット塗布に好適であり、インクジェットによる吐出性とインクジェット塗布後の平坦性に優れる。インクジェット法による塗布法を用いれば、高速かつ均一に有機膜を形成することができる。
【0155】
封止層は、無機/有機積層体を1セットとして数えると、1~5セットであることが好ましい。無機/有機積層体が6セット以上の場合には、有機EL表示素子に対する封止効果が5セットの場合とほぼ同じとなるからである。無機/有機積層体の無機膜の厚さは、50nm~1μmが好ましい。無機/有機積層体の有機膜の厚さは1~15μmが好ましく、3~10μmがより好ましい。有機膜の厚みが1μm以上であると、素子形成時に発生するパーティクルを完全に被覆でき、良好な平坦性で無機膜上に成膜できる。有機膜の厚みが15μm以下であると、有機膜の側面からの水分の侵入が抑制され、有機EL表示素子の信頼性が向上する。
【0156】
封止基板は、封止層の最上位有機膜の上面全体を覆うように密着して形成される。この封止基板としては、前述の基板が挙げられる。これらの中では、可視光線に対して透明な基板が好ましい。可視光線に対して透明な基板(透明封止基板)の中では、ガラス基板、プラスチック基板からなる群のうちの1種以上が好ましく、ガラス基板がより好ましい。
【0157】
透明封止基板の厚さは、1μm以上1mm以下が好ましく、10μm以上800μm以下がより好ましく、50μm以上300μm以下が最も好ましい。透明封止基板を封止層の更に上層に設けることによって、最上位有機膜の表面が気体に触れると進行する劣化を抑えることができ、有機EL表示装置のバリア性を高めることができる。
【0158】
次に、このような構成を有する有機EL表示装置の製造方法について説明する。まず、第1の基板上に、従来公知の方法によって、所定の形状にパターニングした陽極、発光層を含む有機EL層、及び陰極を順に形成して、有機EL表示素子を形成する。例えば、有機EL表示装置をドットマトリックス表示装置として使用する場合、発光領域をマトリックス状に区切るためにバンクが形成され、このバンクで囲まれる領域に発光層を含む有機EL層が形成される。
【0159】
次いで、有機EL表示素子が形成された基板上に、スパッタ法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法やプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法等のCVD法等の成膜方法によって、所定の厚さを有する第1の無機膜を形成する。その後、溶液塗布法やスプレー塗布法等の塗膜形成方法やフラッシュ蒸着法、インクジェット法等を用いて、第1の無機膜上に本実施形態の封止剤を付着させる。これらの中では、生産性の点でインクジェット法が好ましい。その後、紫外線、可視光線等のエネルギー線の照射によって、封止剤が硬化し、第1の有機膜が形成される。以上の工程によって、1セットの無機/有機積層体が形成される。封止剤の硬化率は、本実施形態の効果が奏される限りにおいては特に限定されないが、例えば後述する測定方法に従って得られる値で80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上とすることができる。
【0160】
以上に示される無機/有機積層体の形成工程が、所定の回数だけ繰り返される。但し、最後のセット、即ち、最上層の無機/有機積層体に関しては、上面が平坦化するように封止剤を、塗布法やフラッシュ蒸着法、インクジェット法等によって、無機膜の上面に付着させても良い。
【0161】
次いで、基板上の封止剤を付着させた面に、透明封止基板を貼り合わせる。貼り合わせの際、位置合わせを行う。その後、透明封止基板側から、エネルギー線を照射することによって、最上層の無機膜と透明封止基板との間に存在する、本実施形態の封止剤を硬化させる。これによって、封止剤が硬化し、最上位有機膜を形成すると共に、最上位有機膜と透明封止基板とが接着される。以上によって、有機EL表示装置の製造方法が終了する。
【0162】
無機膜上に封止剤を付着させた後、部分的にエネルギー線を照射して重合させてもよい。このようにすることで、透明封止基板を載置した時に、最上位有機膜の形状の崩れを防止できる。無機膜と有機膜の厚さは、各無機/有機積層体で同じにしてもよいし、各無機/有機積層体で異なっていてもよい。
【0163】
本実施形態において、有機EL表示装置は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置として用いることができる。
【0164】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例
【0165】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0166】
(実施例1)
トリフルオロメチルメタクリレート(東京化成工業社製)100質量部と、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(TPO)(BASFジャパン社製)5質量部とを混合して、封止剤を調製した。尚、モノマー成分の全量に対するフッ素原子の含有量は、32質量%であった。得られた封止剤を、以下に示す評価方法で評価した。また、得られた封止剤を、以下に示す光硬化条件で硬化して硬化体を形成し、以下に示す方法で硬化体の透湿度を評価した。
【0167】
[表面張力]
封止剤の静的表面張力は、23℃の雰囲気下、(協和界面科学社製DM500)を用いて、ペンダントドロップ法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0168】
[濡れ性]
70mm×70mm×0.7mmtの基材(無アルカリガラス(Corning社製 Eagle XG))上に、25μm×25μm×3μmtの凹みを前後左右に10μmの間隔を開けてエッチング法にて作製した。尚、基材は使用前に、アセトン、イソプロパノールそれぞれを用いて洗浄し、その後にテクノビジョン社製UVオゾン洗浄装置UV-208を用いて5分間洗浄した。次いで、凹みを設けた基板上に、プラズマCVD法にて200nmのSiN膜を形成した。次に、インクジェット吐出装置(武蔵エンジニアリング社製MID500B、溶剤系ヘッド「MIDヘッド」)を用いて50mm×50mm×10μmtとなるように封止剤をパターン塗布した。パターン塗布後、温度23℃、相対湿度50%の条件で5分間放置し、塗布領域(50mm×50mm)における封止剤の形状を観察した。封止剤の濡れ性を、以下の式で求めた。結果を表1に示す。
濡れ性(%)=(5分間放置後の塗布領域における封止剤の面積)/(50mm×50mm)
尚、例えば、濡れ性50%とは、パターン塗布した封止剤の一部が弾かれて、50mm×50mmの範囲の半分(50%)で、SiN膜が露出したことを示す。
【0169】
[引張せん断接着強さ]
JIS K 6850に従い測定した。具体的には、被着材として耐熱ガラス(商品名「耐熱パイレックス(登録商標)ガラス」、長さ25mm×幅25mm×厚さ2.0mm)を用い、接着部位を直径8mmの円形とし、封止層の厚さが0.08mmとなるようにして、封止剤を用いて2枚の耐熱ガラスを貼り合わせた。次いで、395nmの波長を発光するLEDランプ(HOYA社製UV-LED LIGHT SOURCE H-4MLH200-V1)により395nmの波長の光の積算光量が1,500mJ/cmとなる条件にて光を上面から照射、硬化させ、引張せん断接着強さ試験片を作製した。作製した試験片について、万能試験機を使用して、温度23℃、湿度50%の環境下、引張速度10mm/minで引張せん断接着強さを測定した。結果を表1に示す。
【0170】
[光硬化条件]
395nmの波長を発光するLEDランプ(HOYA社製UV-LED LIGHT SOURCE H-4MLH200-V1)により、395nmの波長の光の積算光量が1,500mJ/cmとなる条件で、封止剤を光硬化させ、硬化率が80%以上の硬化体を作製した。
【0171】
[透湿度]
厚さ0.1mmのシート状の硬化体を、上記光硬化条件で作製した。JIS Z0208:1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準じ、吸湿剤として塩化カルシウム(無水)を用い、温度23℃又は85℃、相対湿度90%の条件に24時間暴露し、100μm厚での、硬化体の透湿度を測定した。結果を表1に示す。なお、表中、85℃で硬化体が軟化又は溶解して測定が困難になった場合は「-」で示した。
【0172】
(実施例2)
トリフルオロメチルメタクリレートに代えて、ペンタフルオロベンジルメタクリレート(東京化成工業社製)100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止剤及びその硬化体を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。尚、モノマー成分の全量に対するフッ素原子の含有量は、34質量%であった。
【0173】
(実施例3)
トリフルオロメチルメタクリレートに代えて、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルアクリレート(大阪有機化学工業社製)100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止剤及びその硬化体を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。尚、モノマー成分の全量に対するフッ素原子の含有量は、39質量%であった。
【0174】
(実施例4)
トリフルオロメチルメタクリレートに代えて、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルアクリレート(大阪有機化学工業社製)100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止剤及びその硬化体を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。尚、モノマー成分の全量に対するフッ素原子の含有量は、51質量%であった。
【0175】
(実施例5)
トリフルオロメチルメタクリレートに代えて、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフルオロ-1,10-デカンジオールジアクリレート(共栄社化学社製)100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止剤及びその硬化体を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。尚、モノマー成分の全量に対するフッ素原子の含有量は、51質量%であった。
【0176】
(実施例6)
トリフルオロメチルメタクリレートに代えて、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルアクリレート(大阪有機化学工業社製)20質量部及び1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート80質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止剤及びその硬化体を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。尚、モノマー成分の全量に対するフッ素原子の含有量は、10質量%であった。
【0177】
(実施例7)
トリフルオロメチルメタクリレートに代えて、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルメタアクリレート(大阪有機化学工業社製)20質量部、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート(サートマー社製)70質量部、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学社製)5質量部、及び、エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート(新中村化学社製)5質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止剤及びその硬化体を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。尚、モノマー成分の全量に対するフッ素原子の含有量は、10質量%であった。
【0178】
(実施例8)
トリフルオロメチルメタクリレートに代えて、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフルオロ-1,10-デカンジオールジアクリレート(共栄社化学社製LINC-162A)1質量部、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート(サートマー社製)70質量部、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学社製)24質量部、及び、エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート(新中村化学社製、式(B-1-1)におけるRが水素原子、nが1の化合物)5質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止剤及びその硬化体を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。なお、モノマー成分の全量に対するフッ素原子の含有量は、0.3質量%であった。
【0179】
(実施例9)
トリフルオロメチルメタクリレートに代えて、1H、1H、2H、2H-トリデカフルオロオクチルアクリレート(大阪有機化学工業社製13F)1質量部、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート(サートマー社製)79質量部、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学社製)15質量部、及び、エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート(新中村化学社製)5質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止剤及びその硬化体を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。なお、モノマー成分の全量に対するフッ素原子の含有量は、0.6質量%であった。
【0180】
(実施例10)
トリフルオロメチルメタクリレートに代えて、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフルオロ-1,10-デカンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業社製Lnic162A HP)1質量部、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート(サートマー社製)63質量部、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学社製BPE―200、式(B-1-2)におけるR及びRがメチル基、m+nが4の化合物)7.5質量部、及び、エトキシ化-o-フェニルフェノールアクリレート(新中村化学社製)28.5質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止剤及びその硬化体を作製し、評価した。評価結果を表1に示す。なお、モノマー成分の全量に対するフッ素原子の含有量は、0.3質量%であった。
【0181】
(比較例1)
トリフルオロメチルメタクリレートに代えて、エチルメタクリレート(共栄社化学社製)100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止剤及びその硬化体を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0182】
(比較例2)
トリフルオロメチルメタクリレートに代えて、ベンジルメタクリレート(東京化成工業社製)100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止剤及びその硬化体を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0183】
(比較例3)
トリフルオロメチルメタクリレートに代えて、ブチルアクリレート(三菱ケミカル社製)100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止剤及びその硬化体を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0184】
(比較例4)
トリフルオロメチルメタクリレートに代えて、ドデカンジオールジアクリレート(サートマー社製)100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止剤及びその硬化体を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0185】
(比較例5)
トリフルオロメチルメタクリレートに代えて、ブチルアクリレート(三菱ケミカル社製)20質量部及び1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(共栄社化学社製)80質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして封止剤及びその硬化体を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0186】
(比較例6)
2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフルオロ-1,10-デカンジオールジアクリレートに代えて、1,12-ドデカンジオールジメタクリレート1質量部を用いたこと以外は、実施例8と同様にして封止剤及びその硬化体を作製し、評価した。評価結果を表2に示す。
【0187】
【表1】
【0188】
【表2】
【0189】
表1及び表2に示すとおり、実施例の封止剤によれば、濡れ性、接着性及び防湿性に優れる封止材が形成された。