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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】細菌を含む医薬経口製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20230330BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230330BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230330BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230330BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230330BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230330BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20230330BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
A61K35/74 A
A61K9/48
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/14
A61K47/34
A61P1/04
A61P1/12
A61P1/14
A61P35/00
A61P35/02
A61P31/04
A61P3/10
A61P37/08
A61P37/02
A61P3/04
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/18
A61P19/02
A61P19/00
A61P31/10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020526531
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 EP2018081650
(87)【国際公開番号】W WO2019097030
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】17306602.8
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517369461
【氏名又は名称】マー ファルマ
(73)【特許権者】
【識別番号】516149952
【氏名又は名称】ビオコデ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】カロル シュウィンネ
(72)【発明者】
【氏名】マリアンヌ ロバン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フランソワ デュビュイソン
(72)【発明者】
【氏名】エルベ アファガール
(72)【発明者】
【氏名】セドリック ミシェネ
(72)【発明者】
【氏名】アマンディーヌ バルディ
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-517425(JP,A)
【文献】Int. J. Pharm., (2005), 298, [1], p.26-37
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 36/06-36/068
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌の混合物を含むカプセル化された医薬経口製剤であって、ここで、前記カプセルが、以下:
a.乾燥ポリマーの重量で50~70%のポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1、
b.乾燥ポリマーの重量で10~30%のポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)1:1、
c.5~10重量%のグリセロールモノステアレート
d.5~8重量%のクエン酸トリエチル
e.6~9重量%の少なくとも1つの非イオン性乳化剤であって12~16のHLBを有するもの、
を含むpH応答性ポリマー組成物でコーティングされており、
当該カプセルは、動物性タンパク質、植物性多糖又はその誘導体を含む植物由来の材料、及びこれらの混合物から選択される1又は複数のゲル化剤を含む、
前記医薬経口製剤。
【請求項2】
前記カプセルが、以下:
a.乾燥ポリマーの重量で60~70%のポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1、
b.乾燥ポリマーの重量で10~20%のポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)1:1、
c.5~10重量%のグリセロールモノステアレート
d.5~8重量%のクエン酸トリエチル
e.6~9重量%の少なくとも1つの非イオン性乳化剤であって12~16のHLBを有するもの
を含むpH応答性ポリマー組成物でコーティングされる、請求項1に記載の医薬経口製剤。
【請求項3】
前記カプセルが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース製である、請求項1又は2に記載の医薬経口製剤。
【請求項4】
前記pH応答性ポリマー組成物が、以下:
a.乾燥ポリマーの重量で6266%のポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1
b.乾燥ポリマーの重量で1418%のポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)1:1
c.5~重量%のグリセロールモノステアレート、
d.5~8重量%のクエン酸トリエチル、
e.6~9重量%のポリソルベート80、
を含む請求項1の何れか1項に記載の医薬経口製剤。
【請求項5】
便細菌叢に由来する少なくとも2つの前記カプセル化された混合物が、1人以上のドナーからの全ての便細菌叢を含む、請求項1~の何れか1項に記載の医薬経口製剤。
【請求項6】
前記混合物が、凍結乾燥物の形態で存在する、請求項1~の何れか1項に記載の医薬経口製剤。
【請求項7】
前記凍結乾燥物が、以下のステップ:
A)便由来の細菌叢のサンプルを、ポリオール、二糖、三糖又は多糖、又はそれらの混合物から選択された希釈剤及び充填剤と1:1~1:10の比率で混合すること、
B)A)で得られた混合物を凍結し、次いでそれを凍結乾燥すること、
によって生成される、請求項に記載の医薬経口製剤の製造方法
【請求項8】
前記製剤が、便細菌叢に由来する少なくとも2つ、又は3つ、又は4つ、又は5つ、又は6つ、又は7つ、又は8つ、又は9つ、又は10の細菌の混合物を含む、請求項1~の何れか1項に記載の医薬経口製剤。
【請求項9】
前記製剤が、便細菌叢全体又は改変された便細菌叢を含む、請求項1~6及び8の何れか1項に記載の医薬経口製剤。
【請求項10】
自己又は同種異系の便細菌叢移植での使用、又は自己又は同種異系の改変便細菌叢移植での使用のための、請求項に記載の医薬経口製剤。
【請求項11】
腸内の腸内菌共生バランス失調及び関連する病状の治療又は予防に使用するための請求項1~6及び8~10の何れか1項に記載の医薬経口製剤。
【請求項12】
医原性の腸内の腸内菌共生バランス失調及び関連する病状並びに敗血症、敗血症ショック及び下痢、粘膜炎、腹痛、胃腸出血を含む胃腸障害を含む合併症の予防又は治療のための請求項1~6及び8~11の何れか1項に記載の医薬経口製剤。
【請求項13】
前記関連する病状が、クロストリジウム・ディフィシル感染及び関連する下痢(CDI)、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、特発性便秘、セリアック病、クローン病、2型糖尿病、食物アレルギー、白血病を含む癌、難治性移植片対宿主病、肥満及び病的肥満、自閉症、硬化症、旅行者の下痢、慢性膣感染症(膀胱炎、真菌症を含む)、骨及び関節感染症、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症及び双極性障害及び抗癌化学療法又は免疫療法に伴う腸内の腸内菌共生バランス失調、から選択される、
請求項11又は12に記載の医薬経口製剤。
【請求項14】
前記製剤が、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ、バクテロイデス・フラジリス、ロセブリア・インテスティナリス、ロセブリア・ホミニスの混合物を含み、及び炎症性腸疾患(IBD)の治療又は予防に使用される、請求項13に記載の医薬経口製剤。
【請求項15】
前記製剤が、アッカーマンシア・ムシニフィラ、クリステンセネラspp.の混合物を含み、及び肥満及び糖尿病の治療又は予防に使用される、請求項13に記載の医薬経口製剤。
【請求項16】
前記製剤が、アッカーマンシア・ムシニフィラ、エンテロコッカスspp.及びバクテロイデス・フラジリスを含み、及び抗癌化学療法又は免疫療法に伴う腸内の腸内菌共生バランス失調の治療又は予防に使用される、請求項13に記載の医薬経口製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内菌共生バランス失調及び感染する病状の治療及び/又は予防のために、便細菌叢に由来する細菌を哺乳動物に投与する際に使用するための医薬経口製剤に関する。医薬経口製剤は、自己又は同種異系の便細菌叢移植(FMT)法で使用され得る。医薬経口製剤は、経鼻十二指腸、経結腸内視鏡(transcolonoscopic)及び浣腸に基づく製剤と比較して、また既知のFMT医薬経口製剤と比較して利点を有する。医薬経口製剤は、特に、主に回腸及び結腸に送達され、サンプルの細菌の生存率と多様性を維持するように設計されている。
【背景技術】
【0002】
ヒトの腸内細菌叢は、ヒトの胃腸系(胃、腸及び結腸)の全ての微生物で構成される。成人個体の腸内細菌叢は、約1014個の細菌を含み、個体当たり200,000~800,000遺伝子の主要な細菌メタゲノム、すなわち、ヒトゲノムの遺伝子数の10~50倍を示す。子宮内では無菌である腸は、生後数日でコロニーが-形成され、独特の細菌叢集団に発展する。個人は、比較的近い細菌種の集団を有しているが、正確な細菌叢の組成(細菌種及びその比率)は、その大部分は宿主に特有である。従って、ヒトの腸内細菌叢は、各個人に固有の非常に多様で複雑な生態系である。
【0003】
個人の健康にとって、変化の後に初期の状態に戻ることが可能であり、病原体の侵入に耐性のある安定した細菌叢を維持することは不可欠である。細菌叢の多様性を維持することで安定性が得られる。しかしながら、特定の病状又は医学的治療は、細菌叢を乱し、腸内菌共生バランス失調を引き起こす。例えば、慢性腸炎症性疾患等の炎症性疾患は、腸内細菌叢の多様性を制限する可能性がある。医原性腸内菌共生バランス失調は、腸内菌共生バランス失調が医学的介入又は治療によって引き起こされたときに発生する。特に、抗生物質による治療(又は抗生物質療法)は、細菌叢の悪化及び腸のバリア機能の喪失を引き起こす。これは、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)等の病原性微生物の増殖を促進することができ、病院で発生した下痢症の原因となり、多くの場合、従来の広域抗生物質(バンコマイシン及びメトロニダゾール等)に体性を有する。
【0004】
FMTは、「健康な」腸内細菌叢を回復するために現在使用されている方法の1つである。FMTにおいて、健康なドナー又は健康なドナーの群からの糞便が、患者の受取の消化管に導入され、宿主の消化管の腸内菌共生バランス失調を「リセット」又は治療する。移植は、同種異系(すなわち、個々の健康なドナー又は患者に対するドナーの群)であっても自己移植であってもよく、ここで、便サンプルは、入院、又は抗生物質による治療、又は個人の細菌叢を混乱させる可能性が高い他の治療又は腸内菌共生バランス失調を引き起こす可能性のある何れかのイベントを経験する前に個人から採取される。
【0005】
現在の移植方法は、経鼻十二指腸、経結腸内視鏡及び浣腸に基づく方法が含まれる。しかしながら、経鼻十二指腸投与は、患者にとって困難であり、嘔吐のリスクを有する。経結腸内視鏡又は浣腸に基づく方法は、病院で実施する必要があり、患者に不快感を与える可能性があり、再コロニー化を非常に限られた時間で行わなければならないことを意味する「一回限り」の治療方法である。FMTで使用する経口製剤は、患者の快適さと利便性の観点から後者の方法よりも優れており、現在これらの問題を克服するために開発されている。
【0006】
FMT療法を含む細菌の投与方法において、細菌/細菌叢のサンプルが、回腸及び結腸に送られることが重要である。従って、経口製剤は、無傷で胃を通過することができ、回腸又は結腸に到達した際にのみ放出される必要がある。回腸及び結腸の中性pH環境への放出は、細菌の生存を促す。さらに、細菌の生存率及びプロファイル(経口製剤の種の集団)は、保存する必要がある。
【0007】
FMTの経口製剤のいくつかの報告が利用可能である。例えば、クロストリジウム・ディフィシル感染の治療のための凍結乾燥経口FMT製剤の投与が報告されている[Hecker et al. (2016) Open Forum Infect Dis (2016) 3 (2): ofw091. DOI: https://doi.org/10.1093/ofid/ofw091]。製剤は、サイズ0カプセルの凍結乾燥便懸濁液からなり、各カプセルは、約60mgの凍結乾燥物質を含む。凍結乾燥物質1ml当たりの総嫌気性菌の濃度は、約8.5×1010CFU(コロニー形成単位(colony forming units))/mlで、好気性及び通気性細菌の数は、約4.3×1010CFU/ml~5.0×1010CFU/mlであった。カプセルが、大量に(すなわち、20~40)摂取されたことが示されている。これはもちろん、不快であり、誤嚥のリスク並びに医師の立ち合いでの実施が必要である。
【0008】
WO2016/201114に開示される他の経口製剤において、凍結乾燥便細菌叢は、胃耐性のサイズ0のカプセルで提供される。凍結乾燥賦形剤は、PEG3350、グリセロール、トレハロース、スクロース又はポリビニルピロリドンを含み得る。カプセルヘッド及び本体は、低pH耐性バンド材料でバンドされる。カプセルは、約4℃で保存され得る。1つのカプセルに約6.7×10CFU含まれる可能性があり、1日2回服用した8個のカプセルが、1回の浣腸での用量に相当する必要があることを示唆している。
【0009】
FMTを含む細菌治療への関心の高まりを考慮して、消化管の腸内菌共生バランス失調及び関連する病状の治療に使用するために、特に工業規模で効果的かつ、製造が容易な便細菌叢に由来する細菌の医薬経口製剤を提供する必要がある。便細菌叢に由来する細菌を回腸及び結腸に送達することができる医薬経口製剤を提供する必要性がある。これは、約7以上のpHに達するまで、経口製剤の内容物が、腸内で大幅に放出されないことを意味する。さらに、細菌の生存能力、並びに細菌集団プロファイルが製剤製造全体にわたり、並びに腸内(gut)の所望の放出部位において留まる、便細菌叢に由来する細菌の医薬経口製剤を提供する必要性が存在する。冷蔵庫内又は室温で保存でき、室温で使用できる製剤を提供する必要性がある。長期間安定である便細菌叢に由来する医薬経口製剤を提供する必要性がある。
【0010】
細菌性(医原性又は非医原性)腸内の腸内菌共生バランス失調及び関連する病状の治療及び予防のために投与される医薬経口製剤を提供する必要性がある。懸念される病理症状は、クロストリジウム・ディフィシル等の感染、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、クローン病、2型糖尿病、食物アレルギー、白血病を含む癌、難治性移植片対宿主病(GvHD)、肥満及び病的肥満であり得る。腸内菌共生バランス失調に関連する他の病状は、自閉症、硬化症、旅行者の下痢、慢性膣感染症(膀胱炎、真菌症)、骨及び関節感染症、集中治療室(ICU)に関連する腸内菌共生バランス失調、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症及び双極性障害及び抗癌化学療法又は免疫療法に伴う腸内の腸内菌共生バランス失調である。
【0011】
医原性の腸内の腸内菌共生バランス失調及び関連する病状、並びに限定されないが、下痢、粘膜炎、腹痛、胃腸出血を含む、限定されないが敗血症、敗血症性ショック及び胃腸障害を含む合併症の治療又は予防に使用される医薬経口製剤を提供する必要がある。
【0012】
本発明は、上記の必要性を満たすものである。
【0013】
従って、本発明の目的は、FMTで使用するため、及び一般的に便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌の投与で使用するための医薬経口製剤を提供することであり、これは、信頼性及び再現性を有する方法で簡単に製造でき、ユーザーに受け入れられ、回腸及び/又は結腸への送達まで初期細菌サンプルの細菌生存率及び多様性を維持する。
【発明の概要】
【0014】
本発明の一態様によれば、本発明は、便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌のカプセル化された混合物の医薬経口製剤に関し、ここで、前記カプセルは、以下を含むpH応答性ポリマー組成物でコーティングされている:
a.乾燥ポリマー重量で50~70%のポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1、
b.乾燥ポリマー重量で10~30%のポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)1:1
c.5~10重量%の少なくとも1つの脂肪酸モノ-、ジ-又はトリ-グリセリドエステル、又はそれらの混合物、
d.5~8重量%の少なくとも1つの可塑剤、
e.6~9重量%の少なくとも1つの非イオン性乳化剤。
【0015】
好ましくは、カプセルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから作られる。
【0016】
pH応答性ポリマー組成物は、一般的に以下を含み得る:
a.乾燥ポリマー重量で60~70%のポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1
b.乾燥ポリマー重量で10~20%のポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)1:1
c.5~10重量%のグリセロールモノステアレート、
d.5~8重量%のクエン酸トリエチル、
e.6~9重量%の、好ましくは12~16の間のHLBを有する少なくとも1つの非イオン性乳化剤。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、pH応答性ポリマー組成物は、以下を含み得る:
a.乾燥ポリマー重量で62~66%のポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1
b.乾燥ポリマー重量で14~18%のポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)1:1
c.5~8重量%のグリセロールモノステアレート(例えば、40~55)、
d.5~8重量%のクエン酸トリエチル、
e.6~9重量%のポリソルベート80。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、pH応答性ポリマー組成物は、以下を含み得る:
a.乾燥ポリマー重量で54~58%のポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1、
b.乾燥ポリマー重量で22~26%のポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)1:1
c.5~8重量%のグリセロールモノステアレート(例えば、40~55)、
d.5~8重量%のクエン酸トリエチル、
e.6~9重量%のポリソルベート80。
【0019】
本発明の実施形態によれば、医薬経口製剤は、1人以上のドナーからの全ての便細菌叢を含むカプセル化された混合物を含み得る。
【0020】
本発明の実施形態によれば、少なくとも2つの細菌のカプセル化された混合物は、凍結乾燥の形態であり得る。
【0021】
本発明の実施形態によれば、凍結乾燥物は、以下の工程によって製造され得る:
A)便由来の細菌叢のサンプルを、ポリオール、二糖、三糖又は多糖、又はそれらの混合物から選択された希釈剤及び充填剤と1:1~1:10の比率で混合すること、
B)A)で得られた混合物を凍結し、次いでそれを凍結乾燥すること。
【0022】
本発明の実施形態によれば、製剤は、一人以上のドナーの便細菌叢全体又は改変された便細菌叢を含む。
【0023】
本発明の実施形態によれば、医薬経口製剤は、便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌の混合物を含む。
【0024】
本発明の他の態様によれば、医薬経口製剤は、自己又は同種異系の便細菌叢の移植、又は自己又は同種異系の改変された便細菌叢移植で用いられ得る。
【0025】
本発明の他の態様によれば、医薬経口製剤は、腸内の腸内菌共生バランス失調及び関連する病状の治療又は予防に用いられ得る。
【0026】
本発明の他の実施形態によれば、関連する病状は、クロストリジウム・ディフィシル感染及び関連する下痢(CDI)、炎digestive症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、特発性便秘、セリアック病、クローン病、2型糖尿病、食物アレルギー、癌、難治性GvHD、肥満及び病的肥満、自閉症、硬化症、旅行者の下痢、慢性膣感染症(膀胱炎、真菌症)、骨及び関節感染症、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症及び双極性障害及び抗癌化学療法又は免疫療法に伴う腸内の腸内菌共生バランス失調から選択される。
【0027】
本発明の他の実施形態によれば、医薬経口製剤は、医原性の腸内の腸内菌共生バランス失調及び関連する病状、並びに限定されないが、下痢、粘膜炎、腹痛、胃腸出血を含む、限定されないが敗血症、敗血症性ショック及び胃腸障害を含む合併症の治療又は予防に使用され得る。
【0028】
本発明の他の実施形態によれば、医薬経口製剤は、以下の細菌を含み得る: フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、ロセブリア・インテスティナリス(Roseburia intestinalis)、ロセブリア・ホミニス(Roseburia hominis)。後者の医薬経口製剤は、炎症性腸疾患(IBD)の治療又は予防に使用され得る。
【0029】
本発明の他の実施形態によれば、医薬経口製剤は、以下の細菌を含み得る: アッカーマンシア・ムシニフィ(Akkermansia muciniphi)及びクリステンセネラspp.(Christensenella spp.)。
【0030】
後者の医薬経口製剤は、肥満及び糖尿病の治療又は予防に使用され得る。
【0031】
本発明の他の実施形態によれば、医薬経口製剤は、以下の細菌を含み得る:アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)、エンテロコッカスspp.(Enterococcus spp.)、及びバクテロイデス・フラジリス。後者の医薬経口製剤は、抗癌化学療法又は免疫療法に関連する腸内の腸内菌共生バランス失調の治療又は予防に使用され得る。
【0032】
本発明の他の実施形態によれば、医薬経口製剤に含まれる便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌の混合物は、pH約7.2、好ましくはpH7.2で実質的に放出される。
【0033】
本発明の一実施形態において、経口製剤を受ける対象は、ヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1aは、USP2法を使用して、本発明の一実施形態による医薬経口製剤について得られた溶解プロファイルである。図1bは、適応USP2方を使用して、本発明の一実施形態による医薬経口製剤について得られた溶解プロファイルである。
図2図2は、USP2法を使用して、本発明の実施形態による多数の医薬経口製剤について得られた溶解プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
「医薬経口製剤」とは、病状又は生理学的障害の治療又は予防に使用され得る医薬経口製剤を意味する。
【0036】
「FMT」とは、便細菌叢移植を意味し、これは、少なくとも一人の健康なドナーから、又は1つ以上の望ましい特性を有する少なくとも一人のドナーから、患者の腸管(intestinal tract)への微生物を含む便細菌叢の移動を指す。FMTは、自己由来の場合もあり、ドナーとレシピエント患者が同一個人であることを意味する。一般に、FMTは、便細菌叢全体の完全な回復を指す。
【0037】
「改変されたFMT」という用語は、改変された便細菌叢移植を意味し、これは、便材料の微生物集団が、初期の便サンプル中の微生物集団に対して改変されているFMTを指す。微生物集団の改変は、何れか多数の方法又はそれらの組み合わせによって実行され得る。例えば、微生物集団を、特定の種の成長に有利又は不利な条件で便の微生物を培養することによって変えることができる。これは、微生物選択とも呼ばれる。これはまた、便微生物に対し1つ以上の細菌種を加える便微生物の富化によって実施されてもよい。これはまた、元の便微生物集団から1つ以上の便微生物のサブグループを単離することによって実施われてもよい。この1つ以上の種のサブグループは、改変されたFMTにおいて使用される。「便微生物治療」という用語は、便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌の投与を意味する。
【0038】
「腸内菌共生バランス失調」とは、通常優勢な種が少数しか存在しない状態になる、又は通常は競合できないか又は含まれる種が、集団で増加する、細菌叢の傷害を意味する。腸内菌共生バランス失調が抗生物質による治療又は経腸栄養等の医学的介入によって引き起こされる場合、医原性腸内菌共生バランス失調として知られている。
【0039】
「治療有効量」とは、所望の治療効果を生み出すために必要な量を意味する。一般的に、この場合、治療上有効な量は、所望の腸内のコロニー形成を再確立する細菌添加量である。
【0040】
「pH応答性ポリマー」とは、所与のpHで溶解するポリマーを意味する。
【0041】
「実質的に放出される」とは、80%超が放出されることを意味する。
【0042】
「凍結乾燥」とは、凍結乾燥又はフリーズドライ工程を意味する。これは、昇華と脱離の段階を介して、凍結済のサンプルから水を除去することである。最初に、昇華段階、又は一時乾燥が行われる。昇華とは、固体(氷)が最初に液体(水)相を経由せずに直接蒸気に変化することである。次いで、製品を深い真空に置き、温度を上げ、固体の水(氷)が蒸気に変わる。蒸気は、装置に取り込まれる。製品のほとんどの水分が除去されると、製品の温度が上昇し始め、昇華工程の終了を示す。この段階で、最後の水分を抽出するために、脱離段階、又は二次乾燥が行われる。脱離段階は、産物に結合した水分子を除去するために使用される。このため、システム内の温度が上昇する。
【0043】
量は、特に明記されない限り、重量/容量として示される。
【0044】
医薬経口製剤の細菌混合物:
本発明の医薬経口製剤は、一般に、便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌、少なくとも1つの凍結防止剤、及び任意で、他の薬剤を含むカプセル化された凍結乾燥混合物を含む。
【0045】
「便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌」は、個々のドナーからの全ての細菌叢、又は個々のドナーの群からのプールされた細菌叢であり得る。
【0046】
あるいは、「便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌」は、全ての細菌叢ではなく、便細菌叢に由来する多くの細菌の混合物であり得る。混合物は、個々のドナーから、又は個々のドナーの群からのものであり得る。
【0047】
例えば、便細菌叢に由来する多くの細菌の混合物は、細菌の少なくとも2種、又は少なくとも5種、又は少なくとも10種、又は少なくとも20種、又は少なくとも30種、又は少なくとも40種、又は少なくとも50種、又は少なくとも60種、又は少なくとも70種、又は少なくとも80種、又は少なくとも90種、又は少なくとも100種、又は少なくとも200種、又は少なくとも300種、又は少なくとも400種、又は少なくとも500種、又は少なくとも600種、又は少なくとも700種、又は少なくとも800種、又は少なくとも900種、は少なくとも1000種の異なる種を含む混合物であり得る。
【0048】
好ましくは、便細菌叢に由来する多くの細菌の混合物は、少なくとも2種の異なる種の細菌を含む混合物である。
【0049】
混合して使用するための便細菌叢に由来する好ましい細菌として、以下を引用することができる:
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ、ブラウチア・ヒドロギノトトロフィカ(Blautia hydrogenotrophica)、アッカーマンシア・ムシニフィラ、エンテロコッカスspp.、及びバクテロイデス・フラジリス、ロセブリア・インテスティナリス、ロセブリア・ホミニス、ラクトバチルス spp.(Lactobacilles spp.)。
【0050】
医薬経口製剤において便細菌叢に由来する細菌の好ましい混合物として、以下を引用することができる:
- フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ、バクテロイデス・フラジリス、ロセブリア・インテスティナリス、ロセブリア・ホミニス。この混合物は、炎症性腸疾患(IBD)の治療に使用され得る。
- フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ、ブラウチア・ヒドロギノトトロフィカ。この混合物は、過敏性腸症候群(IBS)の治療に使用され得る。
- アッカーマンシア・ムシニフィラ、クリステンセネラspp.。この混合物は、肥満及び糖尿病の治療に使用され得る。
- アッカーマンシア・ムシニフィラ、エンテロコッカスspp.、及びバクテロイデス・フラジリス。
【0051】
この混合物は、化学療法又は免疫療法に伴う腸の腸内菌共生バランス失調の治療に使用され得る。
【0052】
便細菌叢に由来する細菌は、当業者に知られている16S rRNAシーケンシング法によって同定され得る。
【0053】
サンプル調製:
一般に、便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌の混合物のサンプルは、既知の凍結乾燥技術によって調製される。当業者に公知の他の技術も使用することができる。例えば、非営利の便貯蔵所(stool bank)であるOpenBiomeによって開発された微生物乳剤マトリクス(MEM)技術を引用することが可能である。MEMは、長鎖脂肪酸を使用して担体マトリクスを作成する。ここで、担体マトリクスは、凍結した細菌が水相マイクロ液滴に埋め込まれた油中水型エマルションである(www.open biome.orgの「FMT Capsule G3 Clinical Primer」を参照)。
【0054】
Louis達は、予め還元されたリン酸緩衝生理食塩水で便サンプルの調製、次いで、最少量のPBSでの沈殿物のデカンテーション及び再懸濁が所々で実施される連続遠心分離について記載している。次いで、サンプルが、♯1ゼラチンカプセルにマイクロ注入され、さらに♯0及び♯00カプセルでさらにカプセル化される(経口アブストラクトセッション:C.difficileの予防及び治療における新しい考慮事項、再発性クロストリジウム感染症(rCDI)の経口便細菌叢カプセルによる便細菌叢移植(FMT)(https://idsa.confex.com/IDSA/2013/webprogram/paper41427.html)を参照)。
【0055】
従って、本発明の実施形態による医薬経口製剤は、後者の文書に記載されるように調製され得るが、適切な大きさの、適切な小さいゼラチンカプセルをカプセル化するためにコーティングされた(pH応答性ポリマーで)カプセルを使用する。
【0056】
一般的に、FMTで使用するためのサンプルはまた、ドナー対象から便細菌叢サンプルを調製する方法を開示する国際特許出願WO2016/170285に記載されている回収方法を用いて調製することができる。当該方法は、少なくとも1つの便細菌叢サンプルを回収し、酸素の通らない回収装置に置くこと、サンプルを少なくとも1つの凍結保護剤及び/又は充填剤を含む少なくとも1つの生理食塩水性溶液と混合すること、及び任意に、混合物を、例えば0.7mm以下、好ましくは0.5mm以下の細孔を有するフィルターを用いて濾過すること、及び得られた混合物を保存すること又は得られた混合物を凍結させることを提供する。当業者に知られているこの方法の変形もまた、便細菌叢サンプルを調製するために用いられ得る。
【0057】
本発明の医薬経口製剤のためのサンプル調製に使用するためのさらに適切な乾燥方法は、国際特許出願WO2017/1035550に記載されている。例えば、便細菌叢のサンプルは、以下の工程によって調製され得る:
A)対象ドナーからの便細菌叢のサンプルを、例えば、ポリオール、二糖、三糖又は多糖類から選択される希釈剤とマルトデキストリン等の充填剤とを、好ましくは便細菌叢、好ましくは精製された便細菌叢(g)/希釈剤の容量(mL)が1:1~1:10の間で構成される比率で混合する。
B)A)で得られた混合物を-50℃以下、好ましくは-7℃~-100℃の間の温度で凍結させた後、サンプルを凍結乾燥させる。
【0058】
好ましくは、本発明の一実施形態によれば、医薬経口製剤が、FMTで使用される場合、便細菌叢のサンプルは、少なくとも1つのドナーからの便サンプルである。実質的に、ドナーからの便サンプルは、便細菌叢を含む。自己FMTの場合、ドナーが治療の対象になる。同種異系の場合、ドナーは、治療の対象ではない。
【0059】
便サンプルを回収するための適切な方法の例は、WO2016/170285及びWO2017/103550(ページ6及び7を参照)に記載されている。
【0060】
サンプルの調製には、何れかの適切な希釈剤/凍結防止剤が使用され得る。好ましくは、ポリオール、二糖、三糖又は多糖類、又はこれらの混合物が使用され得る。適切なポリオールとして、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、プロピレングリコール又はエチレングリコールを挙げることができる。適切な二糖、三糖又は多糖類として、異なる又は同一の単位の二量体、三量体、四量体及び五量体を上げることができ、前記単位は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、フコース、及びNアセチルニューラミン酸から選択される。使用することができる適切な二糖類として、トレハロース又はその類似体の1つ又はサッカロースを挙げることができる。
【0061】
好ましくは、凍結防止剤は、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、プロピレングリコール、エチレングリコール、トレハロース及びその類似体、サッカロース、ガラクトース-ラクトース及びそれらの混合物から選択される。より好ましくは、凍結防止剤は、ガラクトース-ラクトース又はトレハロースである。
【0062】
典型的に、生理食塩水性溶液中に存在する凍結防止剤の量は、溶液全容量(w/v)に対して3~30重量%、好ましくは4~20重量%の間で構成される。
【0063】
充填剤として、例えば、デンプン、特にコムギ又はトウモロコシの部分加水分解物、並びに大量のマルトデキストリンを含有する、例えばジャガイモ等のフェクレート(feculent)の部分加水分解物を挙げることができる。好ましくは、充填剤は、マルトデキストリンが、4~20%(w/v)の間で存在するマルトデキストリンの混合物である。
【0064】
好ましくは、希釈剤/凍結防止剤は、少なくとも1つの凍結防止剤及び/又は充填剤を含む生理食塩水性溶液である。従って、通常、溶液は、水と生理学的に許容される塩を含む。典型的に、溶液は、塩化物、グルコン酸塩、酢酸塩又は炭酸水素塩鉄を有するカルシウム、ナトリウム、カリウム又はマグネシウムの塩を含むだろう。生理食塩水性溶液はまた、任意に少なくとも1つの酸化防止剤を含み得る。酸化防止剤は、アスコルビン酸及びその塩、トコフェロール、システイン及びその塩、特に塩化水素、及びそれらの混合物から選択され得る。好ましくは、生理食塩水性溶液は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化カリウム、グルコン酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムから選択される少なくとも1つの塩、及び任意に、好ましくはL-アスコルビン酸ナトリウム、トコフェロール、L-システイン塩素酸一水和物、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの酸化防止剤を含む。典型的に、塩は、生理食塩水性溶液中に約5~20g/L、好ましくは7~10g/Lの濃度で存在する。
【0065】
典型的に、酸化防止剤は、生理食塩水性溶液中に0.3~1%w/v、好ましくは0.4~0.6%w/vの量で存在する。適切な希釈剤/凍結防止剤の詳細は、WO2017/103550の9ページ目に記載されている。適切なサンプル凍結乾燥プロトコールは、WO2017/103550の10~20ページに記載されている。
【0066】
腸内の細菌叢全体を含む処理された便サンプルを含む代わりに、本発明の特定の実施形態による医薬経口製剤は、便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌の混合物を含み得る。その場合、便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌の混合物は、上記に記載される方法と同様の方法及びWO2017/103550に記載されるものと同様の方法に従って調製され得る。当業者にとって、これらの方法を適合させて、便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌の混合物を調製する方法は、周知である。例えば、便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌の混合物は、溶液又は粉末又は他の形態として提供され得る。次に、凍結防止剤、及び任意に充填剤、及び/又は酸化防止剤を含む生理食塩水性溶液と混合することができる。次に、混合物を、50℃未満の温度で凍結させ、その後、当該技術分野、特にWO2017/103550に記載されている方法に従って凍結乾燥することができる。
【0067】
改変FMT(mFMT)で使用するサンプルは、上記FMTと同様の方法で調製することが可能であるが、便微生物集団を改変する追加の工程が必要である。例えば、WO2017/103550に記載されているような既知の方法を、便サンプルからの細菌の単離に使用することができる。便微生物集団の改変は、例えば、特定の種の成長に好ましい又は好ましくない条件にすることによって、集団を改変する条件で便細菌叢を培養することによって実施することができる。便細菌叢は、元の便サンプルから特定の細菌種を単離し、単離した種をさらに培養することによっても改変することができる。便細菌叢の改変は、便微生物への1つ以上の細菌種の追加による富化であり得る。
【0068】
便細菌叢、改変された便細菌叢又は便細菌叢由来する少なくとも2つの細菌が調製されると、それらは、当業者に位置の方法を使用して、カプセルに充填される。
【0069】
細菌の充填:
本発明の一実施形態によれば、凍結乾燥に用いられる液体溶液は、1ml当たり1×10~2×1010の数の細菌を含み得る。従って、本発明の実施形態によれば、この溶液の凍結サンプルを含むサイズ0のカプセルは、故に約1×1010の細菌を含み得る。
【0070】
カプセルが、全ての便細菌叢のサンプルを含むか、又は全ての便細菌叢ではない便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌の混合物を含むか否かに関わらず、類似又は同一の細菌充填が用いられる。
【0071】
後者において、医薬経口製剤が、便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌の混合物を含む場合、凍結乾燥に使用される液体溶液は、1ml当たり1×10~2×1010個の細菌を含む可能性がある。従って、溶液の乾燥凍結サンプルを含むサイズ0のカプセルは、約1×1010個の細菌を含む場合がある。
【0072】
カプセル:
一般的に、医薬経口製剤は、哺乳動物、特にヒトへの経口投与に適したカプセルに封入される。カプセルは一般的に、直径の小さい「本体」が充填され、直径の大きい「キャップ」を用いて密封される2つの半分に作られた「硬い」カプセルである。この「硬い」カプセルは、動物タンパク質、好ましくはゼラチン等の1つ以上のゲル化剤の水性溶液、又はカラギーナン又はデンプン及びセルロースの改変済み形態等の植物多糖又は誘導体から作製され得る。カプセル硬度、着色剤、防腐剤、崩壊剤、潤滑剤及び表面処理を低減するために他の成分が、グリセリン又はソルビトール等の可塑剤を含むゲル化剤溶液に加えられ得る。好ましくは、カプセルは、少なくとも1つの植物由来の材料、例えば、「ヒプロメロース」としても知られるヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はデンプン加水分解物から作製される。適切なカプセルは、例えば、商品名「Naturecaps」でACG(インド)から、又は「Vcaps」の商品名でCapsugel(ニュージャージー、USA)から入手可能である。
【0073】
適切なカプセルサイズは、5、4、3、2、2el、1、0、0el、00、00el及び000である。本発明の一実施形態によれば、ヒトへの投与には、サイズ0が好ましい。
【0074】
pH応答性ポリマー:
一般的に、カプセルは、特定のpHに感受性のあるポリマーでコーティングされている。pHに感受性のあるポリマーは、カプセルの中身のサンプルが、回腸及び結腸に到達する前に体内で実質的に放出されないように設計されている。これは、放出が、pH約7.2未満では発生しないことを意味し、内容物は、回腸のpHに対応するpH約7.2で放出される必要がある。具体的には、本発明の一実施形態によるコーティングされたカプセルは、pH1.2、6.8及び7.2で連続してテストされる際に、最初の2段階でのテストでの累積放出が10%以下、好ましくは2%以下であり、pH約7.2でカプセルの内容物の80%超が放出されるように設計されている。
【0075】
溶解テストは、米国薬局方(USP)第711章及び欧州薬局方(EP)第2.9.3章に準拠し、USB装置I、II(50~100rpmの速度で)又はIVを用いて行う。テスト媒体の温度は37+/-0.5℃に調節される。1つのカプセルが別の容器で処理され、媒体の変化又はpH調整時のカプセル内容物の完全性を目視で検査する。
【0076】
本発明者達は、pH応答性ポリマーとして、2種のアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーの混合物を含む組成物が好ましいことを見出した。
【0077】
第1の(メタ)アクリレートコポリマーは、pH約7.0より上で溶解するように構成される。第2のポリマーは、一般にpH約5.5より上で溶解するように構成される。
【0078】
第1の(メタ)アクリレートコポリマーは一般に、10~30重量%のメチルメタクリレート、50~70重量%のアクリル酸メチル及び5~15重量%のメタクリル酸から重合される。これらのポリマーは、Evonik(ドイツ)から「EUDRAGIT(登録商標)FS」の範囲の名称で販売されている。
【0079】
好ましくは、第1のポリマーは、25重量%のメチルメチルアクリレート(methyl methyl acrylate)、65重量%のアクリル酸メチル及び10重量%のメタクリル酸から重合されたコポリマーである。このタイプのポリマーは、例えば、Evonik(ドイツ)からEUDRAGIT(登録商標)FSの名称で販売されている。EUDRAGIT(登録商標)FS30Dという名称の市販形態は、30重量%のEUDRAGIT(登録商標)FSを含む分散液であり、Evonikから市販されている。後者のポリマーのIUPAC名は、ポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1である。
【0080】
第2のアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーは一般に、40~60重量%のメタクリル酸及び60~40重量%のアクリル酸エチルから重合される。これらのポリマーは、Evonikから「EUDRAGIT(登録商標)L」の範囲の名称で販売されている。
【0081】
好ましくは、第2のアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーは、50重量%のアクリル酸エチル及び50重量%のメタクリル酸から重合されたコポリマーである。このポリマーは、例えば、EUDRAGIT(登録商標)L100-55の名称でEvonikから市販されている。EUDRAGIT(登録商標)L30D-55という名称の市販形態は、30重量%のEUDRAGIT(登録商標)L100-55を含む分散液であり、Evonikから市販されている。後者のポリマーのIUPAC名は、ポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)1:1である。
【0082】
一般的に、第1のポリマーは、(乾燥ポリマーの)重量で約50~70%、好ましくはポリマー組成物の重量で約55~66%でポリマー組成物中に存在する。一般的に、第2のポリマーは、(乾燥ポリマーの)重量で約10~30%、好ましくはポリマー組成物の重量で約15~25%でポリマー組成物中に存在する。
【0083】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1のポリマーは、(乾燥ポリマーの)重量で約60~70%、好ましくはポリマー組成物の重量で約64%ポリマー組成物中に存在する。
【0084】
本発明の好ましい実施形態によれば、第2のポリマーは、(乾燥ポリマーの)重量で約10~20%、好ましくはポリマー組成物中の約14~18%、より好ましくは約16%でポリマー組成物中に存在する。
【0085】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1のポリマーは、(乾燥ポリマーの)重量で約54~58%、好ましくはポリマー組成物の重量で約56%ポリマー組成物中に存在する。
【0086】
本発明の好ましい実施形態によれば、第2のポリマーは、ポリマー組成物中にポリマー組成物の重量で約22~25%、好ましくは約24%存在する。
【0087】
好ましい実施形態によれば、ポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1は、乾燥ポリマーの重量で50~70%、好ましくは55~65%でポリマー組成物中に存在し、及びポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)1:1は、乾燥ポリマーの重量で10~30%、好ましくは22~25%でポリマー組成物中に存在する。
【0088】
好ましい実施形態によれば、ポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1は、乾燥ポリマーの重量で60~70%、好ましくは64%でポリマー組成物中に存在し、及びポリ(メタクリル酸-コーアクリル酸エチル)1:1は、乾燥ポリマーの重量で10~20%、好ましくは14~18%、より好ましくは約16%でポリマー組成物中に存在する。
【0089】
好ましい実施形態によれば、ポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1は、乾燥ポリマーの重量で54~58%、好ましくは56%でポリマー組成物中に存在し、及びポリ(メタクリル酸-コーアクリル酸エチル)1:1は、乾燥ポリマーの重量で22~25%、好ましくは24%でポリマー組成物中に存在する。
【0090】
従って、pH応答性ポリマー組成物は、一般的に以下の成分を含む:
a.乾燥ポリマーの重量で50~70%のポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1、
b.乾燥ポリマーの重量で10~30%のポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)1:1、
c.少なくとも1つの脂肪酸モノ-、ジ-、トリ-グリセリドエステル、又はそれらの混合物、
d.少なくとも1つの可塑剤、
e.少なくとも1つの非イオン性乳化剤。
【0091】
本発明の一実施形態によれば、成分a.及びb.は、pH応答性ポリマー組成物の約75~85%、好ましくは80%を構成し、成分c.d.及びe.は、pH応答性ポリマー組成物の約25~15%、好ましくは20%を構成する。
【0092】
本発明の好ましい実施形態によれば、pH応答性ポリマー組成物は、以下の成分を含む:
a.乾燥ポリマーの重量で60~70%のポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1、
b.乾燥ポリマーの重量で10~20%のポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)1:1、
c.少なくとも1つの脂肪酸モノ-、ジ-、トリ-グリセリドエステル、又はそれらの混合物、
d.少なくとも1つの可塑剤、
e.少なくとも1つの非イオン性乳化剤。
【0093】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、pH応答性ポリマー組成物は、以下の成分を含む:
a.乾燥ポリマーの重量で55~65%のポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1、
b.乾燥ポリマーの重量で15~25%のポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)1:1、
c.少なくとも1つの脂肪酸モノ-、ジ-、トリ-グリセリドエステル、又はそれらの混合物、
d.少なくとも1つの可塑剤、
e.少なくとも1つの非イオン性乳化剤。
【0094】
成分c.として、医薬組成物での使用に適したグリセロールの1つ以上の既知の脂肪酸モノ-、ジ-又はトリ-エステル、又はそれらの混合物が使用され得る。グリセロールのモノエステル及びジエステルが好ましい。グリセロールモノステアレート、例えば「グリセロールモノステアレート40-55」が特に好ましい。
【0095】
脂肪酸エステルモノ-、ジ-又はトリ-グリセリドは、一般に、組成物の重量で約5~10%、好ましくは6~7%、より好ましくは6%で存在し得る。
【0096】
成分d.として、医薬組成物での使用に適した1つ以上の既知の可塑剤が使用され得る。一例として、クエン酸トリエチルを挙げることができる。
【0097】
1つ以上の可塑剤は、一般的に、組成物の重量で約5~10%、好ましくは約6~8%、より好ましくは約5~6%で存在し得る。
【0098】
当業者に知られており、医薬組成物での使用に適した1つ以上の非イオン性乳化剤である成分e.は、ポリマー組成物に含まれる。好ましくは、非イオン性乳化剤は、12~16のHLB値を有する。好ましい非イオン性乳化剤は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80としても知られ、Tween80の商品名で販売されている)である。
【0099】
存在する場合、1つ以上の非イオン性乳化剤は、一般的に、組成物の重量で約4~12%、好ましくは約6~10%、より好ましくは約7~9%で存在し得る。
【0100】
本発明の好ましい実施形態によれば、pH応答性ポリマー組成物は、以下を含む:
a.乾燥ポリマーの重量で50~70%のポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1、
b.乾燥ポリマーの重量で10~30%のポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)1:1、
c.5~10%のグリセロールモノステアレート、
d.5~8%のクエン酸トリエチル、
e.6~9%のポリソルベート80。
【0101】
成分c.、d.、及びいくつかの成分e.は、例えば、ドイツのEvonikからPlasacryl(登録商標)の商品名で市販されている混合物として都合よく供給され得る。本発明の一実施形態によれば、Plasacryl(登録商標)がpH応答性ポリマー組成物の製造に用いられる場合、追加の非イオン性乳化剤を加えて、成分e.が正しい範囲になるようにする必要がある。例えば、pH応答性ポリマー組成物が、80%の成分a.及びb.のポリマーブレンド、及び20%の成分c.、d.及びe.(少なくとも1つの脂肪酸モノ-、ジ-又はトリ-グリセリドエステル、又はそれらの混合物、少なくとも1つの可塑剤、及び少なくとも1つの非イオン性乳化剤)で構成される場合、成分c.、d.及びe.の正しい量を達成するために、例えば、12%Plasacryl(登録商標)T20及びさらに8%の非イオン性乳化剤が加えられ得る。
【0102】
本発明の一実施形態によれば、pH応答性ポリマー組成物は、以下を含む:
a.乾燥ポリマーの重量で60~70%のポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1、
b.乾燥ポリマーの重量で10~20%のポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)1:1、
c.5~10%のグリセロールモノステアレート、
d.5~8%のクエン酸トリエチル、
e.6~9%のポリソルベート80。
【0103】
本発明の好ましい実施形態によれば、pH応答性ポリマー組成物は、以下を含む:
a.乾燥ポリマーの重量で50~60%のポリ(アクリル酸メチル-コ-メタクリル酸メチル-コ-メタクリル酸)7:3:1、
b.乾燥ポリマーの重量で20~30%のポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)1:1、
c.5~10%のグリセロールモノステアレート、
d.5~8%のクエン酸トリエチル、
e.6~9%のポリソルベート80。
【0104】
カプセルは、当業者に知られている方法に従って、pH感受性ポリマーでコーティングされてもよい。例えば、ドラムコーティング又は流動層コーティングを引用することができる。一般的に、カプセルは、カプセルに塗布された約3.5又は4.0mg/cm~約6.0mg/cmのポリマーでコーティングされる。当業者が知っているように、コーティングの厚さを利用して、カプセル内容物の放出時間をわずかに変更することができる。従って、約3.5mg/cmのポリマーでコーティングされたカプセルは、例えば、5.5mg/cmでコーティングされたカプセルよりも腸内で少し早く内容物を放出する。
【0105】
pH応答性ポリマーと架橋する経口のあるカプセル材料を用いる場合、次にpH応答性ポリマーによるコーティングを行う前に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)又はメチルセルロース(HMC)で好ましくは0.1~0.5mg/cm2で、前記カプセルをプレコーティングすることを勧める。
【0106】
カプセルが、互いに又は使用される支持体又は包装材料に粘着する傾向がある場合、pH応答性ポリマーでコーティングした後、粘着を防止するために化粧品タイプのさらなるコーティングを使用することができる。化粧品コーティングは、カプセルの生理学的特性に影響を与えないコーティングであり、通常、経口カプセルの色、質感、小ささ又は口当たりを変えるために使用される。化粧品コーティング剤として、PEG6000、又は例えばOpadry(登録商標)(Colorcon、PA、USAから入手可能)を挙げることができる。
【0107】
次に、コーティングされたカプセルに細菌サンプルを充填することができる。典型的に、約0.2~0.6g、好ましくは約0.4gの乾燥製品をサイズ0のカプセルに充填することができる。
【0108】
充填後、カプセル「本体」部分にカプセルの「キャップ」部分を配置することにより、カプセルを閉じる。カプセルの充填及び閉鎖は、当業者によって知られている方法によって行われ、通常、適切な機器をしようして自動化又は半自動化された方法で行われる。例として、Optimatic300(FarmaLabor、イタリア)のような半手動カプセル化システムが挙げられる。
【0109】
あるいは、当業者に知られているコーティング方法によって、カプセルに調製された細菌材料を充填し、次いで閉じ、続いてpH感受性ポリマーでコーティングしてもよい。
【0110】
本発明による医薬経口製剤の使用:
FMT:
本発明の一実施形態によれば、医薬経口製剤は、FMTでの使用に特に適している。
【0111】
FMTは、一般に、腸内菌共生バランス失調を患っている対象、又は腸内菌共生バランス失調を発症するリスクがあり、おそらく関連する疾患にも罹患している対象、又は関連する病状を発症するリスクがある対象に、個人のドナー又はドナーの群であり得る健康なドナーに由来する便細菌叢の1つ以上のサンプルを投与するために用いられる。関連する病状は、クロストリジウム・ディフィシル関連の下痢(CDI)、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、特発性便秘、セリアック病、クローン病、2型糖尿病、食物アレルギー、白血病を含む癌、難治性GvHD及び病的肥満、自閉症、硬化症、旅行者の下痢、慢性膣感染症(膀胱炎、真菌症を含む)、骨及び関節の感染症、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症及び双極性障害を含む。
【0112】
対象は、医原性腸内菌共生バランス失調及び関連する病状及び限定されないが、敗血症、敗血症性ショック、胃腸障害(限定されないが、下痢、粘膜炎、腹痛、GI出血を含む)を含む合併症であり得る。
【0113】
本発明の一実施形態によれば、対象は、治療有効量の医薬経口製剤を投与される。
【0114】
このタイプのFMTは、同種異系のFMTとして知られている。群のドナーの場合において、便細菌叢のサンプルは、プールされ、既知の方法によって処理することにより、群の代表的な便細菌叢のサンプルを得る。
【0115】
本発明の実施形態によれば、医薬経口製剤は、腸内菌共生バランス失調(医原性腸内菌共生バランス失調)を引き起こす可能性が高い医学的介入又は治療の間又は後に対象に投与することができる。
【0116】
本発明の一実施形態によれば、医薬経口製剤は、医原性腸内菌共生バランス失調及び関連する病状及び限定されないが、敗血症、敗血症性ショック、胃腸障害(限定されないが、下痢、粘膜炎、腹痛、GI出血を含む)を含む合併症を予防又は治療するために対象に投与され得る。
【0117】
対象自身が、前記医学的介入又は治療の前に便細菌叢のサンプルを提供し、その後、前記医学的介入又は治療の間又はその後に前記便細菌叢のサンプルが投与される場合、FMTは、自己FMTとして知られている。
【0118】
本発明の実施形態によれば、医薬経口製剤は、自己又は同種異系のFMTでの投与に用いられ得る。
【0119】
本発明の実施形態によれば、医薬経口製剤は、医学的処置の成功率又は有効性の可能性を高めるために、医学的処置の前に対象に投与され得る。例えば、腫瘍学の領域を引用することが可能である。FMTは、特定の癌治療の前に実施され、治療効果を高める可能性がある(例えば、欧州特許出願EP3209692を参照。この書類では、健全な細菌叢で一般的にみられる系統の選択が、免疫チェックポイント阻害剤治療のアジュバントとして使用され、患者の免疫を刺激し、癌に対する治療の有効性を高める)。
【0120】
FMTで使用するための医薬経口製剤は、一般的に、治療上有効な量の細菌混合物を含む、pH感受性ポリマーでコーティングされた「ハード」カプセルを含む。通常、サイズ0のカプセルの場合、各カプセルは、約1.0×1010~2×1010個の細菌が含まれる。
【0121】
プロバイオティクス、プレバイオティクス、抗感染症薬又は消化管の再コローに形成を増強し得る他の薬剤等の他の薬剤も、カプセル内に存在する可能性がある。
【0122】
プレバイオティクスの例として、2’フコシルラクトース、ラクトジフコテトラオース、3-フコシルラクトース、ラクト-N-フコペンタオースI、ラクト-N-フコペンタオースII、ラクト-N-フコペンタオースIII、ラクト-N-ネオテトラオース、ラクト-N-テトラオース、3’シアリルラクトース、6’シアリルラクトース、 3’シアリルラクト-N-テトラオース、6’シアリルラクト-N-ネオテトラオース、イヌリン、 フラクトオリゴ糖(FOS)、短鎖フラクトオリゴ糖(短鎖FOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、イヌリン、キシロオリゴ糖(XOS)、ガングリオシド、部分加水分解グァーガム、アカシアガム、ソイビーンガム、又はそれらの混合物が挙げられ得る。
【0123】
プロバイオティクスとして以下を挙げることができる:ラクトバチルス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、及びビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・サリヴァリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・ラクチス(Lactobacillus lactis)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)、及びE.コリ・ニスル(E.Coli Nissle)を挙げることができる。 特に、プロバイオティクス及び非複製プロバイオティクス、例えば、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属又はそれらの組み合わせ、例えば、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・パラカセイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロングム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、又はそれらの組み合わせ、及び/又はこれらの細菌の生存画分を挙げることができる。
【0124】
抗感染薬の例として、ロイテリン、ラクトコシン又は特定のファージ等の殺菌剤を挙げることができる。
【0125】
腸内の再コロニー形成を増強する可能性のある他の薬剤の例は、例えば亜鉛若しくは銅、又はポリフェノール等の微量栄養素を挙げることができる。
【0126】
改変FMT:
本発明の一実施形態によれば、医薬経口製剤は、改変FMT(mFMT)での使用に特に適している。mFMTは、個人のドナー又はドナーの群であり得る健康なドナーから改変された便細菌叢の1つ以上のサンプルを対象に投与するために使用され得る。対象は、腸内菌共生バランス失調を患っているか、又は腸内菌共生バランス失調を発症するリスクを有する及び関連する病状にも罹患している可能性がある、又は関連する病状を発症するリスクを有する場合がある。関連する病状は、クロストリジウム・ディフィシル関連の下痢(CDI)、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)、特発性便秘、セリアック病、クローン病、2型糖尿病、食物アレルギー、癌、難治性GvHD及び病的肥満、自閉症、硬化症、旅行者の下痢、慢性膣感染症(膀胱炎、真菌症を含む)、骨及び関節感染症、パーキンソン病、アルツハイマー病、統合失調症及び双極性障害を含む。mFMTを使用して、医薬製剤中の特定の細菌又は特定の細菌の混合物の治療効果を確保することが可能である。一般的に、腸内に送達される細菌の量は、その送達された細菌又は細菌の混合物の最終的な相対的な集団が、mFMTの前の集団と比較して有意に増加するようなものである。例えば、炎症性腸疾患の治療又は予防において、治療有効量のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイが消化管に送達されることが望ましい。治療効果を生み出す量は、消化管内のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイの相対的な量に依存する。この場合、蛍光性剤は、消化管内のフィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイの相対量を少なくとも15%まで増加させるために十分な細菌を含む必要がある。当業者にとって、コロニー形成の目標が達成されるように細菌又は細菌の混合物を投与する方法は公知である。
【0127】
対象は、医学的介入を受ける予定を持つ場合がある。便細菌叢の改変は、例えば、特定の種の成長に有利又は不利な条件で便微生物を培養することによって実施することが可能である。これは、微生物の選択とも称される場合がある。それはまた、便微生物に1つ以上の細菌種を加えることによって便微生物の富化によって実行される場合がある。それはまた、元の便微生物集団から1つ以上の便微生物のサブグループを単離することによって実行されてもよい。次に、この1つ以上の種のサブグループが、変更されたFMTで使用される。典型的に、mFMTで使用する経口製剤では、サイズ0のカプセルの場合、各カプセルに約1.0×1010~2×1010個の細菌が含まれる。
【0128】
便細菌療法:
本発明の一実施形態によれば、医薬経口製剤は、便細菌療法での使用に特に適している。この実施形態によれば、投与されるカプセルは、腸内菌共生バランス失調に関連する病状の治療又は予防のために、便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌の混合物を含む。
【0129】
対象は、治療有効量の医薬経口製剤を投与される。
【0130】
好ましくは、便細菌叢に由来する多くの細菌の複雑な混合物は、少なくとも2つの種の細菌を含む混合物である。
【0131】
便細菌叢に由来する細菌の混合物として、以下の細菌から選択された混合物を引用する場合がある: フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ、ブラウチア・ヒドロギノトトロフィカ、アッカーマンシア・ムシニフィラ、エンテロコッカスspp.、バクテロイデス・フラジリス、ロセブリア・インテスティナリス、ロセブリア・ホミニス、クリステンセネラspp.、ラクトバチルスspp.。
【0132】
例えば、本発明の一実施形態による医薬経口製剤は、以下の細菌の混合物を含む: フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ、バクテロイデス・フラジリス、ロセブリア・インテスティナリス、ロセブリア・ホミニス。この混合物は、炎症性腸疾患(IBD)の治療に使用することができる。
【0133】
本発明の一実施形態によれば、医薬経口製剤は、以下の細菌の混合物を含む: アッカーマンシア・ムシニフィラ、クリステンセネラspp.。この混合物は、肥満及び糖尿病の治療に使用できる。
【0134】
本発明の他の実施形態によれば、医薬経口製剤は、以下の細菌の混合物を含む: アッカーマンシア・ムシニフィラ、エンテロコッカスspp.、及びバクテロイデス・フラジリス。この混合物は、化学療法又は免疫療法を伴う腸の腸内菌共生バランス失調の治療に使用することができる。
【0135】
全ての便細菌叢が移植されるFMTで使用するための医薬経口製剤の場合と同様に、便細菌叢に由来する少なくとも2つの細菌の混合物が投与される「便細菌療法」で使用するための医薬経口製剤は、治療有効量の細菌混合物を含むpH感受性ポリマーでコーティングされた「ハード」カプセルを含む。通常、サイズ0のカプセルの場合、各カプセルは、約1.0×1010~2×1010個の細菌が含まれる。mFMTについて論じたように、腸内に送達される細菌又は細菌の混合物の量は、一般的に、その細菌又は細菌の混合物の最終的な相対的な集団が、便細菌療法の前の相対的な集団に対して増加するような量である。当業者にとって、コロニー形成の目標が達成されるように細菌又は細菌の混合物を投与することは公知である。
【0136】
消化管の再コロニー形成を増強することができるプレバイオティクス、抗感染症薬又はプロバイオティクスを含む他の薬剤等の他の薬剤も、カプセル中に存在することができる。
【0137】
プロバイオティクスとして、以下を引用する場合がある: ラクトバチルス・パラカセイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロングム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、及びビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・サリヴァリウス、ラクトバチルス・ラクチス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトコッカス・ラクティス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、エンテロコッカス・フェシウム、サッカロマイセス・セレビシエ、サッカロマイセス・ブラウディ、及びE.コリ・ニスル。特に、ラクトバチルス属、ビフィドバクテリウム属、又はそれらの組み合わせ等、例えば、ラクトバチルス・ジョンソニイ、ラクトバチルス・パラカセイ、ラクトバチルス・ラムノサス、ビフィドバクテリウム・ロングム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、又はそれらの組み合わせ、及び/又はこれらの細菌の非生存画分等のプロバイオティクス及び非複製プロバイオティクス。
【0138】
抗感染薬の例として、ロイテリン、ラクトコシン又は特定のファージ等の殺菌剤を挙げる場合がある。
【0139】
消化管の再コロニー形成を増強する可能性がある他の薬剤の例として、例えば、亜鉛又は銅、又はポリフェノール等の微量栄養素を引用する場合がある。
【0140】
医薬経口製剤の利点及び効果:
本発明の医薬経口製剤は、FMT両方及び便細菌療法のための、有用で、信頼性があり、使いやすい剤形を提供する。本発明の医薬経口製剤は、それらが回腸及び結腸にその内容物を送達するので、FMT療法に特に適している。従って、製剤は、優れた溶解プロファイルを有し、pH1.2~pH6.8の間で内容物が大幅に放出されず、その後にpH7.2で急速に放出される。
【0141】
pH7.2以上での内容物の放出に関して達成される精度は、カプセルのコーティングに使用されるpH感受性ポリマーの混合物によるものである。理論に縛られることなく、成分c.、d.及びe.の正確な量は、成分a.及びb.のポリマーの混合物を効率的に均質化することに役立つと考えられ、それによって、非常に均質なコーティングが提供され、pH7.2での迅速な放出開始が可能になる。上記で詳述したように、各ポリマーの成分a.及びb.の相対比率は重要であり、並びにc.、d.及びe.の比率に対するa.及びb.の混合物の比率は、一般的に、[a.+b.]:[c.+d.+e.]は、75~85:15~25、80:20である。驚くべきことに、本発明者達はまた、非イオン性界面活性剤(成分e.)の請求された量(6~9%)が、pH7.2での放出開始、従って、pH6.8での有意な放出なし、を達成するために特に重要であることを見出した。非イオン性界面活性剤の比率が低いと、放出の開始が6.8より低いpHで行われるため、回腸及び結腸に送達することができない(データは示していない)。
【0142】
消化管の再コロニー形成のための比較的効果的な用量の細菌を医薬経口製剤に含めることができ、それにより患者が摂取しなければならないカプセルの数を減らすことができる。これは、他の細菌療法及びFMTの方法に比べて、さらには細菌混合物のための他の医薬経口製剤に関しても大きな利点である。
【0143】
典型的に、FMT浣腸の細菌充填量は、約5×1010~6×1010個の細菌であり、良好な再コロニー形成に適した量である。本発明の一実施形態によれば、医薬経口製剤の1つのカプセルは、1.0×1010~2×1010個の細菌を含み得る。従って、対象への4つ又は5つのカプセル投与は、医薬経口製剤の便細菌叢との腸内における再コロニー形成が起こるように十分な細菌充填量を提供することに十分である。
【0144】
医薬経口製剤の重要な利点の1つは、それらが医学的監視なしで対象が摂取できることである。それらは冷凍する必要はなく、冷蔵庫又は室温で保存され得る。これらの利点により、患者の快適さとコンプライアンスが向上する。これはまた、必要に応じて治療を数日かけて行うことができることを意味し、それにより、腸内の再コロニー形成段階的に起こすことができる。従って、治療は、浣腸又は経結腸内視鏡で慣習的である1日又は2日と比較して、数日、例えば3、4、5又は6日間の期間にわたって行われる。
【0145】
本発明の医薬経口製剤の使用の利点は、便細菌叢に由来する細菌の混合物が、胃又は十二指腸で放出されることなく、回腸及び結腸に送達されることである。細菌の生存率が維持され、分類学的(多様性)プロファイルが維持される。実施例3は、実施例2によるカプセルに対する一連の溶解テストを記載する。カフェインを含む実施例2のカプセルは、USP2溶解テスト並びに適合されたUSP2溶解テストに供された。USP2溶解テストの結果を表2及び図1aに示した。結果は、pH1.2及びpH6.8では溶解に有意差が無いことを示す。放出は、pH7.2で急速に始まる。
【0146】
同様に、空腸(pH6.8)及び回腸(pH7.2)をより明確に区別する適応されたUSP2溶解テストにおいて、pH1.2及びpH6.8では有意な(1%未満)の放出はないことに注意されたい。しかしながら、放出は、pH7.2で急速に起こる。適合されたUSP2溶解テスト結果を以下の表3に示す。
【0147】
本発明の異なる実施形態によるカプセルの多くのバッチが製造され(下記の実施例4を参照)、USP2溶解テストでテストされた(実施例5を参照)。全てのバッチは、EUDRAGIT(登録商標)ポリマーブレンド、EUDRAGIT(登録商標)FS30D/EUDRAGIT(登録商標)L30D-55でコーティングされたカプセルで構成されていた。いくつかのバッチは、カプセルが互いにくっつくことを防ぐために、さらにPEG6000でコーティングされていた。実施例5で得られた溶解プロファイルを図2に示す。結果は、pH1.2及びpH6.8での溶解は、有意差が無いことを示す。放出は、pH7.2で急速に始まる。バッチ♯14は、3.5mg/cmのEUDRAGIT(登録商標)ポリマーブレンドでコーティングされたカプセルに対応し、バッチ♯20Bは、5.5mg/cmのEUDRAGIT(登録商標)ポリマーブレンドでコーティングされたカプセルに対応することに注意されたい。両方のバッチは、ドラムコーティングを使用してコーティングされた。バッチ♯20Bは、バッチ♯14よりも少し遅れて(約30分)内容物を放出することに注意されたい。
【0148】
さらに、胃、十二指腸、空腸及び回腸の4つのコンパートメントで構成される胃腸管の前臨床モデルであるTIM-1システムで溶解テストが実施された。このテストにおいて、放出は、回腸のみで起こった。
【0149】
本発明の実施形態によれば、細菌の生存能力の保護及び細菌叢の多様性の保全もまた、医薬経口製剤のために出願人により実証された。実施例1は、糞便が回収され、凍結乾燥された便細菌叢のサンプルが調製された、凍結乾燥されたFMT産物の調製を記載する。サンプルの分類プロファイルは、標準的な方法を使用して16SrDNAのV3-V4セグメントをシーケンシングすることにより得られたターゲット(16S)メタゲノミクスデータを使用して推定された。プロファイリングは、凍結乾燥及び中間的な保管の前後、並びに摩砕及びカプセル化の前後で実施された。製剤は、生存能力並びに多様性を保持していることがわかった。
【0150】
本発明を、以下の実施例を参照してさらに説明する。特許請求の範囲に記載される本発明は、これらの実施例によって限定されること決して意図しないことを理解されたい。
【実施例
【0151】
実施例1:凍結乾燥FMT産物の調製
【0152】
1)糞便の回収及び接種準備
新鮮な糞便を適切な装置で回収し(最大72時間)、国際特許出願WO2017/103550の実施例2に開示される方法を用いて、サンプルを液体接種材料に変換した。凍結乾燥前の摂取材料の細菌生存率は、標準的な方法でセルフローサイトメトリー技術を使用して決定された。接種材料の分類プロファイルは、標準的な方法を使用して、16SrDNA遺伝子のV3-V4セグメントをシーケンシングして得られたターゲット(16S)メタゲノミクスデータを使用して推定された。
【0153】
2)凍結乾燥及び中間的な保管
摂取材料は、WO2017/103550の実施例3に記載された方法に従って凍結乾燥された。凍結乾燥後、凍結乾燥物を手動で粉砕し、保護パッケージ(乾燥剤ストッパー付きのPE/ガラスチューブ又はジッパー付きアルミニウムポケット)に保管した。凍結乾燥物中の生存率を決定し、その分類プロファイルを推定した。
【0154】
3)摩砕及びカプセル化
保管後、産物をナイフミラー(チューブミル-使い捨てカプセル、IKA Werke GmBH & Co.KG、ドイツ)を使用して、10,000~5000RPMで20~40秒間摩砕した。摩砕された凍結乾燥産物の生存率が決定され、その分類プロファイルが推定された。
【0155】
製剤は、摩砕された産物の6.80×10~1.39×1010ユニット/0.5グラムの生存細菌の範囲を提供することがわかった。
【0156】
細菌叢の多様性の維持は、各サンプルのアルファ多様性インデックスの豊富さ及びシンプソンインデックスを計算することによって確認された。豊富さは、サンプル内で観察された異なる種(OTU)の数である。シンプソンのインデックスの豊富さから導き出され、各種の想定的な存在量を考慮する。これは、0と1の間で構成される(0、主に1つの優先的な種、->1、主に多くの希少な種又はいくつかの優先的な種及び多くの希少種)。各ペア(接種材料及びその派生する凍結乾燥物)内では、その豊富さにより225~325種の値が得られた。ペア内の最大差は、約25種であり、非常に制限されている。接種材料及び凍結乾燥物の間のシンプソンインデックスの低下は、1~2%の範囲であった。これは、サンプルの豊富さがフリーズドライ及び凍結乾燥後も維持されることを意味する。
【0157】
さらに、サンプルの細菌叢プロファイルは、摂取材料と凍結乾燥物の間で強く保管されていた。Bray-Curtisの類似性の全ては、0.89~0.92の範囲であった。
【0158】
最後に、産物は、Optimatic300(Farmalabor、イタリア)のような半手動カプセル化システムを使用して、実施例2に従ってカプセル化された。充填されたカプセルを、保護パッケージ乾燥剤ストッパー付きのPE/ガラスチューブ若しくはジッパー付きアルミニウムポケット、又はブリスター)に入れた。
【0159】
実施例2:カプセルコーティング
サイズ0のヒプロメロースカプセルは、pH応答性ポリマーでコーティングされる。
ポリマー組成を、表1に記載する。
【表1】
【0160】
成分を混合し、ポリマーを濾過する(250μm)。
【0161】
カプセルヘッド及び本体は、空気流動層装置(Glatt GPCG-5)を使用して、下部スプレー、又は上部スプレー、又は接線スプレーの何れかで個別にコーティングされる。装置は通常、以下の条件下で操作される:
-空気流量:250~350m/h
-空気流温度:35~40℃
-産物温度:25~28℃
-噴霧速度:15~25g/min
-塗布されたポリマー:4.0~6.0mg/cm
【0162】
実施例3:実施例2のカフェイン充填カプセルの溶解テスト
実施例2に従ってコーティングされ、カフェインで充填されたヒプロメロースカプセルの溶解プロファイルが決定された。
【0163】
(a)USP2溶解テスト
3つのカプセルを2時間pH1.2、次にpH6.8に1時間、最後にpH7.2に2時間曝した。USP2溶解テストは、37℃、75RPMに設定されたERWEKA DT 700パドル装置を使用して行われた。各時点で、HPLC-UVを含む培地でカフェイン検出を使用してカプセルの劣化を測定した。HPLC-UVは、以下のパラメータを使用して、Agilent 1100erシリーズで10μLの培地上で実施された:
-カラム:Gemini 2μm C18 100mm×4.6mm
-移動相:メタノールLicrosolv及び精製水の混合(比率3/7)
-流量:1mL/分
-ランタイム:8分
-検出器波長:273nm。
【0164】
結果を表2及び図1aに示す:
【表2】
【0165】
図1aは、USP2法のカプセル溶解テストを示す。pH1.2及び6.8では、有意な(<1%)溶解は観察されていない。放出は、pH7.2で急速に始まる。
【0166】
(b)適応されたUSP2溶解テスト:適応されたUSP2溶解テストは、空腸(pH6.8)及び回腸(pH7.2)をより明確に区別する。
【0167】
適応されたUSP2溶解テストは、37℃、75RPMに設定されたERWEKA DT 700パドル装置を使用して実施された。カプセルは、塩酸溶液0.1N、pH1.2(空腹時)に2時間、次にリン酸緩衝液pH6.8(空腸)に1時間、最後にリン酸緩衝液pH7.2(回腸)に2時間曝された。各時点で、HPLC-UVを含む培地でカフェイン検出を使用してカプセルの劣化を測定した。
【0168】
HPLC-UVクロマトグラフィーは、以下の分析パラメータを使用して、Agilent1100erシリーズで10μLの培地上で実施された:
-カラム:Gemini 2μm C18 100mm×4.6mm
-移動相:メタノールLicrosolvと精製水の混合(比率3/7)
-流量:1mL/min
-ランタイム:8分
-検出器波長:273nm。
【表3】
【0169】
表3及び図1bは、適応されたUSP2溶解テストのカプセル溶解プロファイルを示す。
【0170】
このプロファイルは、回結腸送達機能を実証し、pH1.2及び6.8で有意に(<1%)に溶解しない。放出は、pH7.2で急速に始まる。
【0171】
(c)TIM
TIM-1システムは、胃腸管を模倣した前臨床装置である。胃及び十二指腸、空腸、並びに回腸の4つのコンパートメントで構成されている。
【0172】
各コンパートメントは、柔軟な内膜を備えたガラスユニットで構成され、適切なpHの培地で満たされている。TIM-1システムでは、MP01(アッセイ1)、MP02、MP03(アッセイ2)及びMP04(アッセイ3)の4つのアッセイが開始された。
【0173】
TIMオペレーティングシステムでの漏出が原因で、MP02が中止された。
【0174】
アッセイ1(MP01)の場合:目視及びプレート数により胃の抵抗が確認される。放出は空腸の最後で始まり、明確な溶解は、視覚での観察できないにもかかわらず、回腸で観察される。
【0175】
アッセイ2(MP03)の場合:目視観察及びプレートの数により目的の機能が確認され、回腸で溶解が検出される。
【0176】
アッセイ3(MP04)の場合:目視観察及びプレートの数により目的の機能が確認され、回腸で溶解が検出される。
【0177】
USP2、適合されたUSP2及びTIM実験で示されているように、カプセルの機能が確認された。
【0178】
実験は、全てのカプセルにういて、放出が空腸の終わりに始まり、pHが低下しても、空等の終わりに完了するか又は結腸で継続することを示している。
【0179】
全ての開いたカプセルについて、空腸の終わりに送達は完全ではなかったが、それでもカプセルが開かれると、たとえpHが低下しても、結腸全体に送達を続けることができる。
【0180】
実施例4:多くのカプセルバッチが製造された。
サイズ0のヒプロメロースカプセルは、pH応答性ポリマーでコーティングされている。ポリマー組成を表4aに記載する。使用したポリマーブレンド比及びコーティング条件を表4bに示す。
【0181】
【表4】
【0182】
【表5】
【0183】
成分を共に混合し、ポリマーを濾過する(250μm)。これらのバッチでは、流動層及びドラムのコーティング方法が用いられる。
【0184】
流動層コーティングについて、実施例2に記載された方法と同じ条件が使用される。実施例4において、バッチ♯14(1,000カプセル)は、中サイズのコーティングドラム(直径30cm)を使用して、3.5mg/cm2のポリマーを塗布することにより製造された。バッチ♯20Bについて、ドラムが大きい(直径36cm)が同じ装置を使用して、4.5mg/cmのポリマーを塗布することによって3,000個のカプセルを製造した。
【0185】
スプレー段階の条件を以下に示す:
【表6】
【0186】
実施例5:実施例4のカフェイン充填カプセルの溶解テスト
カフェインで充填された実施例4におけるコーティングされたヒプロメロースカプセルの溶解プロファイルが決定された。テストは、実施例3と同じ方法で実施された。結果を図2及び以下の表5に示す。
【0187】
pH1.2及び6.8では、有意な(<1%)溶解は観察されない。放出は、pH7.2で急速に始まる。結果を図2に示す。バッチ♯14は、3.5mg/cmのポリマーでコーティングされたカプセルに対応し、5.5mg/cmでコーティングされたカプセルに対応する。どちらもドラムコーティングを使用してコーティングされた。バッチ♯20Bは、バッチ♯14より少し遅れて(約30分遅れて)内容物を放出することに注意されたい。両方のバッチ(並びにテストされた全てのバッチ)は、FMTでの使用に適した溶解プロファイルを有する。
【表7】
図1
図2