(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】光線場をコリメートするための装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20230330BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20230330BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20230330BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
G01S7/481 A
(21)【出願番号】P 2021503838
(86)(22)【出願日】2019-04-29
(86)【国際出願番号】 EP2019060867
(87)【国際公開番号】W WO2020020499
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-02-21
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515069141
【氏名又は名称】フィスバ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】FISBA AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モーザー,ハンスルーディ
(72)【発明者】
【氏名】ラーゲンバッハ,エックハルト
(72)【発明者】
【氏名】セルム,ロメディ
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-6641(JP,A)
【文献】特開2005-156733(JP,A)
【文献】特開2002-286914(JP,A)
【文献】特開昭53-100841(JP,A)
【文献】特表2009-520353(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0027417(US,A1)
【文献】国際公開第2018/021108(WO,A1)
【文献】国際公開第01/35149(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
G02B 27/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出方向(s)に垂直な第1の方向(F)において、前記放出方向(s)および前記第1の方向(F)に垂直な第2の方向(S)よりも、前記放出方向(s)に対してより迅速に発散する光線場(L)をコリメートするための装置(100)であって、前記第1の方向(F)において前記光線場(L)をコリメートするための少なくとも1つの第1のコリメーションレンズ系(1
)を含み、前記第1のコリメーションレンズ系(1)は、ガラスから作られた
、少なくとも部分的に円形のプロファイル(4)を有する円柱レンズ(3)を含み、
前記第1のコリメーションレンズ系(1)は、プラスチッ
クから作られた非球面レンズ素子(5)を含むことを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記装置は、前記第2の方向(S)において前記光線場をコリメートするための第2のコリメーションレンズ系(2)を含み、前記第2のコリメーションレンズ系(2)は円柱レンズアレイ(6)を含
む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記非球面レンズ素子(5)は、前記放出方向(s)においてガラスから作られた前記円柱レンズ(3)の後ろに配置される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、前記放出方向(s)においてガラスの前記円柱レンズ(3)の後ろに配置された光学素子(7)を含
む、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記非球面レンズ素子(5)の光学的有効表面(14)は、前記円柱レンズ(3)に面する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記非球面レンズ素子(5)は、前記光学素子(
7)の一体部品として形成される、請求項
4に記載の装置。
【請求項7】
前
記光学素子(7)は、レンズアレイを含む、請求項
4に記載の装置。
【請求項8】
前記光学素子(
7)は、射出金型で生成される、請求項
4に記載の装置。
【請求項9】
前記光学素子(
7)は、前記円柱レンズ(3)に面する表面(14)を有し、その輪郭は、式
【数1】
によって表わされ得る、請求項
4に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、前記第1のコリメーションレンズ系(1)が搭載されるマウント(13)を含
む、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記マウント(13)の熱膨張係数α
hは、前記第1のコリメーションレンズ系(1)の熱膨張係数α
fと等しい、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
ガラスから作られた前記円柱レンズ(3)は、30mmよりも大き
い焦点距離を有する、
請求項1~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記非球面レンズ素子(5)は、200mmよりも大きい焦点距離を有する、
請求項1~12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
レーザーダイオード(120
)と、
請求項1~13のいずれか1項に記載の装置(100)とを含む
、ダイオードレーザー(110)。
【請求項15】
前記第2のコリメーションレンズ系(2)の前記円柱レンズアレイ(6)は、前記放出方向(s)において前記第1のコリメーションレンズ系(1)の前に配置される、請求項2に記載の装置。
【請求項16】
放出方向(s)に垂直な第1の方向(F)において、前記放出方向(s)および前記第1の方向(F)に垂直な第2の方向(S)よりも、前記放出方向(s)に対してより迅速に発散する光線場(L)をコリメートするための方法であって、前記光線場(L)は、少なくとも1つの第1のコリメーションレンズ系(1)によって前記第1の方向(F)においてコリメートさ
れ、前記第1のコリメーションレンズ系(1)は、ガラスで作られた
、少なくとも部分的に円形のプロファイル(4)を有する円柱レンズ(3)を含み、
前記第1のコリメーションレンズ系(1)は、プラスチックで作られた非球面レンズ素子(5)を含むことを特徴とする、方法。
【請求項17】
放出方向(s)に垂直な第1の方向(F)において、前記放出方向(s)および前記第1の方向(F)に垂直な第2の方向(S)よりも、前記放出方向(s)に対してより迅速に発散する
、光線場(L)をコリメートするための装置(100)を製造する方法であって、前記方法は、
前記第1の方向(F)において前記光線場(L)をコリメートするための少なくとも1つの第1のコリメーションレンズ系(1)を提供するステップを含み、前記第1のコリメーションレンズ系(1)は、ガラスで作られた
、少なくとも部分的に円形のプロファイル(4)を有する円柱レンズ(3)と、プラスチックで作られた非球面レンズ素子(5)とを含み、前記方法はさらに、
前記
第1のコリメーションレンズ系(1)をマウントに搭載するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光線場をコリメートするための装置、ダイオードレーザー、コリメーティングレンズ系の使用、コリメーションのための方法、および、コリメーションのための装置を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光線場をコリメートするための装置は、たとえば、非対称的な線場を有する発光体のために使用され、とりわけ、ダイオードレーザーおよび高出力ダイオードレーザーにおいて使用される。
【0003】
高出力ダイオードレーザーとは、ワット範囲の光線としての高出力の放出を可能にするためのブロードストライプ構造を有する半導体レーザーである。高出力ダイオードレーザーは、複数の単一発光体を含む。
【0004】
そのような単一発光体は、元の平面から、この平面に対する所定の放出方向で光線場を生成する。放出方向に対して、光線場は、放出方向に垂直な第1の方向(高速軸)において、放出方向および第1の方向に垂直な第2の方向(遅軸)よりも、より迅速に発散する。
【0005】
高速軸および遅軸方向における別々のコリメーションを用いてできるだけ対称的な放射場を実現することは、従来技術から公知である。
【0006】
特に、かなり大きいビーム径を有する系については、まず、遅軸コリメーションが、円柱コリメーティングレンズSAC(Slow Axis Collimator:遅軸コリメータ)を用いて、または、遅軸アレイに配置された複数のコリメーティングレンズを用いて実行され得る。
【0007】
その後、コリメーティングレンズFAC(Fast Axis Collimator:高速軸コリメータ)を用いた高速軸コリメーションが実行される。
【0008】
特に高速軸コリメーションについて、開口エラーを訂正するために、非円形のプロファイルを有する円柱レンズが通常使用される。
【0009】
自由形状の表面、すなわち、非球面および非円形の表面プロファイルを有するレンズは好ましくは、たとえばWO2018/125830で明らかにされているように、たとえば射出成形によってプラスチックで作られる。これは、レンズを低コストで生成できるためである。
【0010】
装置の用途に依存して、コリメーション装置は、たとえば周囲温度で動作するLIDARシステムで使用される場合、温度変動の影響を受ける。-40℃と+85℃~+105℃との間での温度安定性が必要とされる。LIDARシステムでは、可視表面までの距離は、光を放出し、反射光の特性、たとえば光パルスの「飛行時間」を分析することによって測定され得る。
【0011】
大抵の材料は、温度によって変化する特性を有する。温度変化による材料の相対的伸縮は、材料の熱膨張係数αによって定められ、それは通常、10-6K-1という単位で与えられる。
【0012】
光学性能のために考慮すべき関連する特性が2つある。1つは、熱膨張、すなわち熱膨張係数αであり、もう1つは、屈折率が温度によって変化する様子(dn/dT)である。屈折率nは、材料に特有の量であり、波長に依存する。
【0013】
屈折率は、レンズの屈折力に影響を及ぼす。屈折率がより高いほど、レンズの屈折力はより強くなる。
【0014】
屈折力はまた、レンズの曲率に依存し、レンズの曲率も、熱膨張係数αと同様に、温度に依存する。
【0015】
温度による屈折率の変化(dn/dT)および材料の膨張により、それはしたがって、熱的焦点外れ、すなわち、軸上の焦点位置の変化であり得る。
【0016】
熱膨張係数αtを有するハウジングに搭載される装置については、焦点位置の変化は、ハウジングの膨張によるレンズ系の焦点距離の変化と像平面位置の変化との組み合わせである。ハウジング長さの変化がレンズ系による像平面の変位と等しい場合、焦点外れはゼロであり、系は非熱的であると考えられる。
【0017】
焦点外れは機械的に補償可能であり、それにより、レンズはハウジング内で変位され得るが、これは追加の部品を必要とし、また、非常に高くつく場合がある。
【0018】
特に、十分なビーム断面を実現するために、LIDARシステムで使用される系などの長い焦点距離を有する系では、比較的大きい全長により、焦点位置は温度を補償することが難しい。
【0019】
また、熱安定性がガラスレンズを用いて実現され得ることは、たとえばEP 3 267 233 A2から公知である。
【0020】
しかしながら、自由形状の表面を有するガラスレンズの生成は、特により大きい設計については、非常に高くつく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、課題は、先行技術の欠点を克服し、できるだけ非熱的なコリメーションを低コストで可能にする、コリメーションのための装置、ダイオードレーザー、コリメーティングレンズ系、および光線場をコリメートするための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的は、放出方向に垂直な第1の方向(高速軸)において、放出方向および第1の方向に垂直な第2の方向(遅軸)よりも、より高速に発散する光線場のコリメーションのための装置によって実現される。装置は、第1の方向において光線場をコリメートするための少なくとも1つの第1のコリメーションレンズ系(高速軸コリメータFAC)、および好ましくは、第2の方向において光線場をコリメートするための少なくとも1つの第2のコリメーションレンズ系(遅軸コリメータSAC)を含む。
【0023】
第1のコリメーションレンズ系は、ガラスから作られた円柱レンズを含む。
第1のコリメーションレンズ系はまた、プラスチックで作られた非球面レンズ素子を含む。プラスチック材料は特に、ポリカーボネート、ゼオネックス(Zeonex)T62R、またはゼオネックスE48Rである。
【0024】
ガラスから作られた円柱レンズは好ましくは、製造が容易なプロファイル、特に少なくとも部分的に円形のプロファイルを有する。これは、円柱軸に垂直な断面の輪郭が、円またはピッチ円の輪郭に少なくとも部分的に対応するということを意味する。光軸に沿って、円柱レンズは、一方側に第1の曲率半径および第1の曲率方向を有する円形プロファイルと、反対側に第2の曲率半径および第2の曲率方向を有する円形プロファイルとを有し得る。
【0025】
できるだけ最もコスト効率のよい生成を実現するために、一定の凸曲率を有する平面入口側および出口側を有する平凸レンズが好まれる。
【0026】
ガラスから作られた円柱レンズはしたがって、従来の製造方法により、たとえば、表面全体が接触する状態での単純な研削および研磨により生成され得る。
【0027】
ガラスは、住田からのK-VC40、またはオハラからのS-LAH64であってもよい。20℃で、これらのガラスは、プラスチックレンズの結像特性に対応する結像特性を有するが、かなりより安定した温度挙動を有する。
【0028】
円形の円柱ガラスレンズのみでは、高速軸方向において光線場を十分な品質で、特により大きいビーム径でコリメートすることはできない。開口エラーが大きすぎる。たとえば、焦点距離f=32mmおよび開口数NA=0.39の円形の平凸円柱レンズは、65λの開口エラーを示し、それは多くの用途にとって受け入れられない。
【0029】
球面収差がガラスレンズを用いて訂正されることになっている場合、それは、複雑でコスト集約的なプロセスで、たとえば精密成形を用いて生成されなければならないであろう。
【0030】
少なくとも部分的に円形のプロファイルを有する円柱レンズを用いるコリメーションとは対照的に、高速軸コリメーションにとって必要な訂正は、この発明によれば、プラスチックから作られたレンズ素子を用いて行なわれる。この目的のために、プラスチックレンズ素子は、非円形のプロファイルを有する自由形状の表面を有する。
【0031】
第1のコリメーションレンズ系はしたがって、たとえば20mmよりも大きい、より大きいビーム径であっても、高速軸コリメーションにとって十分な光学性能を有しており、また、大部分がガラスで構成されている。それは、熱安定性にとって好都合であるが、にもかかわらず、生成の際に好都合である。なぜなら、ガラスは複雑な処理を必要としないためである。
【0032】
この発明の有利なバージョンでは、装置は、第2の方向において光線場をコリメートするための第2のコリメーションレンズ系を有する。
【0033】
第2のコリメーションレンズ系は、好ましくは少なくとも部分的に円形のプロファイルを有する、少なくとも1つの円柱レンズを含む。第2のコリメーションレンズ系は特に、円柱レンズアレイを含む。
【0034】
第2のコリメーションレンズ系は好ましくは、放射方向において第1のコリメーションレンズ系の前に配置される。
【0035】
遅軸コリメーションのための円柱レンズアレイは、円形プロファイルを有する円柱レンズを含み得る。遅軸コリメーションのための円柱レンズは、高速軸コリメーションのためのレンズよりもはるかにより小さい直径とより短い焦点距離とを有しており、そのため、第2のコリメーションレンズ系は、熱不安定性に影響されにくい。加えて、コリメーション特性のための要件は、遅軸方向においてはるかにより低い。
【0036】
円柱レンズアレイは、ガラスまたはプラスチックで作ることができ、コストの理由でプラスチックがしばしば好まれる。
【0037】
円柱レンズアレイはたとえば、それぞれの円柱軸が互いに隣り合う状態で互いに平行に配置された10個の円柱レンズを含み得る。これらは好ましくは、10個のレーザーダイオードチップによって放出された光場を対称的にするために使用される。
【0038】
プラスチックで作られた非球面レンズ素子は好ましくは、放出方向においてガラスで作られた円柱レンズの後ろに配置される。
【0039】
有利な進歩した一実施形態では、装置は、放出方向においてガラスで作られた円柱レンズの後ろに配置された追加の光学素子を含む。
【0040】
追加の光学素子は、特に遅軸の方向において遠距離場を均質化するために使用され得る。
【0041】
追加の光学素子は、光線場を均質化するよう機能する表面を、円柱レンズから遠い方に面する側に有していてもよい。
【0042】
追加の光学素子は、たとえば、プロファイルの曲線がどこでも連続的に区別可能な状態で、凹状区域および凸状区域が交互して互いに一体化するレンズアレイを含み得る。
【0043】
他の光学素子はまた、ガラスで作られた円柱レンズから遠い方に面する側に平坦な表面を有していてもよく、円柱レンズに面する側は、交互する凹状区域および凸状区域を有する。
【0044】
他の光学素子は好ましくは、プラスチックで作られる。
この発明の好ましい一実施形態では、非球面レンズ素子の光学的有効表面は、円柱レンズに面する。光学的に有効とはここでは、高速軸方向における光線場のコリメーションに対して意図される。
【0045】
非球面レンズ素子は、他の光学素子の一体部品として形成され得る。この場合、円柱レンズに面する側はコリメーションのために機能し、それは自由形状の表面として設計される。円柱レンズから遠い方に面する側は均質化のために機能し、交互する凸状区域および凹状区域を有し得る。
【0046】
原則として、円柱レンズに面する側を用いて均質化を実行し、円柱レンズから遠い方に面する側を用いてコリメーションを実行することも可能である。
【0047】
このため、部品の数を制限することができ、それは、アセンブリおよび重量に対してプラスの効果を有する。
【0048】
他の光学素子は好ましくは、射出成形プロセスで、および射出金型で生成される。
非球面の円柱レンズ素子の自由形状の表面、特に、ガラス円柱レンズに面する他の光学素子の表面は、以下の式によって表わされ得る輪郭を有する:
【0049】
【0050】
式中、xは座標軸を示し、それは、光の伝搬方向、すなわち光軸、および円柱軸に垂直である。座標xはこのため、x座標の方向における非球面曲線上の点からの距離を示す。zは非球面の深さ(すなわち、伝搬方向において円柱軸によって形成された円柱レンズの対称面から距離xだけ間隔を置かれた非球面上の点と、光軸上の非球面の頂点に接する接平面との間の垂直距離)を示し、Rは光軸の近くの光学素子の表面の曲率半径を示し、kは円錐定数を示し、Aiは非球面係数を示す。
【0051】
たとえば、i>4については、k=-1、A1=0、A3=0、Ai=0が選択され得る。
【0052】
特に好ましいのは、少なくともパラメータRおよびA4がゼロではないことである。ガラスで作られた円柱レンズとは対照的に、プラスチックで作られた非球面レンズ素子の表面はしたがって、円形プロファイルを有しておらず、開口エラーを訂正することができる。
【0053】
この発明の好ましい一実施形態では、装置は、第1のコリメーションレンズ系が搭載されるマウントを含む。特に、第2のコリメーションレンズ系は、同じマウントに包囲される。
【0054】
好ましくは、マウントは、亜鉛ダイカストまたはプラスチック、特に繊維が埋め込まれた複合プラスチック、たとえばPPSジュラファイド(Durafide)6150T6またはライトン(Ryton)R-7-190BLで作られた部品を含む。
【0055】
この発明の好ましい一実施形態では、マウントの熱膨張係数αtは、第1のコリメーティングレンズ系の熱膨張係数αfと等しい。この場合、コリメーティング系は、非熱的なものとして考えられ得る。
【0056】
第2のコリメーティング系は、同じマウントに配置され得る。しかしながら、それを計算において考慮する必要はない。なぜなら、それは、焦点位置の変位に比較的無反応であるためである。
【0057】
この発明によれば、第1のコリメーションレンズ系は少なくとも、ガラスで作られた円柱レンズと、プラスチックで作られた非球面レンズ素子とから構成される。
【0058】
コリメーティングレンズ系の熱膨張係数はこのため、少なくともこれら2つの部品に依存する。
【0059】
原則として、その距離が焦点距離よりも小さいいくつかの薄い個々のレンズから構成される系の焦点距離は、以下の実験式を用いて計算され得る:
【0060】
【0061】
式中、fは系全体の有効焦点距離であり、fiは個々のレンズの焦点距離である。これに代えて、屈折力、すなわち焦点距離の逆数も計算される:
【0062】
【0063】
これらのレンズの温度係数は、屈折力の温度依存性によって、または焦点距離の温度依存性によって定義され得る。これらは、単一レンズについて以下の関係を有する:
【0064】
【0065】
以下は、系全体に同様に当てはまる:
【0066】
【0067】
または、以下も当てはまる:
【0068】
【0069】
熱膨張係数はしたがって、個々のレンズの対応する熱膨張係数の加重平均である。
熱膨張係数αfが筐体の熱膨張係数αtと等しい場合、薄い多線系は非熱的になる:
【0070】
【0071】
2つのレンズと、公知の熱膨張係数を有する特定された材料で作られたハウジングとを有する系については、それぞれの焦点距離または屈折力は、以下の連立方程式を使用して求められ得る:
【0072】
【0073】
これらの計算は、波長依存性がまだ考慮されていない第1の近似を表わす。
たとえば、2つのレンズを有するコリメーションレンズ系が作成されることになっており、それは総焦点距離が30mmでなければならない。第1のレンズは、ガラス、たとえばCDGM H-ZF2で作られるべきであり、それは温度膨張係数αf1=8.1 10-6K-1を有する。第2のレンズはプラスチック、たとえばポリカーボネートで作られるべきであり、それは熱膨張係数αf2=250.5 10-6K-1を有する。フレーム材料として、たとえば、熱膨張係数αt=27 10-6K-1を有する亜鉛が使用されるべきである。
【0074】
これは、第1のレンズについては0.031mm-1の屈折力または32.5mmの焦点距離をもたらし、第2のレンズについては0.002599mm-1の屈折力または384.8mmの焦点距離をもたらす。
【0075】
逆に、所与の焦点距離のために、対応する熱膨張係数を有する適切な材料を見つけることができる。
【0076】
焦点距離は、頂点での曲率半径をもたらす。さらに別のステップで、開口エラーを最小限にするための、プラスチックで作られた非球面レンズについての訂正が定められる。
【0077】
より多くのレンズのために、また、薄いとは考えられず、その厚さおよび距離が焦点距離と比較してもはや小さいとは考えられないレンズのために、対応する計算を行なうこともできる。
【0078】
特に屈折力が光軸からの距離に応じて変わる場合、より大きいレンズ径についても訂正を加えなければならない。
【0079】
訂正のために、たとえば、光軸からの距離での周辺光線の進路が考慮される。
好ましくは、ガラスで作られた円柱レンズは、30mmよりも大きい焦点距離を有する。非球面レンズ素子は好ましくは、200mmよりも大きい焦点距離を有する。
【0080】
課題はまた、レーザーダイオードと上述のような装置とを含む、特にLIDARシステムのためのダイオードレーザーによって解決される。
【0081】
好ましくは、ダイオードレーザーは、いくつかのレーザーダイオードを含む。
課題はさらに、少なくとも1つのレーザーダイオードの光線場の高速軸コリメーションのための、ガラスで作られた円柱レンズとプラスチックで作られた非球面レンズ素子とを含むコリメーティングレンズ系を使用することによって解決される。
【0082】
円柱レンズは好ましくは、少なくとも部分的に円形のプロファイルを有しており、したがって、従来の方法を使用してコスト効率よく製造され得る。プラスチックで作られた非球面レンズ素子は好ましくは、非円形プロファイルを有する円柱レンズとして設計される。
【0083】
目的はまた、光線場をコリメートするためのプロセスによって実現される。放出方向に対して、光線場は、放出方向に垂直な第1の方向(高速軸)において、放出方向および第1の方向に垂直な第2の方向(遅軸)よりも、より迅速に発散する。光線場は、少なくとも1つの第1のコリメーションレンズ系によって第1の方向においてコリメートされ、および好ましくは、少なくとも1つの第2のコリメーションレンズ系によって第2の方向においてコリメートされる。
【0084】
第1のコリメーションレンズ系は、ガラスで作られた、特に少なくとも部分的に円形のプロファイルを有する円柱レンズを含む。第1のコリメーションレンズ系はさらに、プラスチックで作られた非球面レンズ素子を含む。プラスチックで作られた非球面レンズ素子は好ましくは、非円形プロファイルを有する円柱レンズである。
【0085】
目的はさらに、光線場をコリメートするための装置、特に上述されたような装置を製造する方法によって実現される。放出方向に対して、光線場は、放出方向に垂直な第1の方向において、放出方向および第1の方向に垂直な第2の方向よりも、より迅速に発散する。手順は、以下のステップを含む。まず第1に、少なくとも1つの第1のコリメーションレンズ系が、第1の方向において光線場をコリメートするために作成される。第1のコリメーションレンズ系は、ガラスで作られた、特に少なくとも部分的に円形のプロファイルを有する円柱レンズと、プラスチックで作られた非球面レンズ素子とを含む。次に、コリメーションレンズ系はマウントに搭載される。
【0086】
円柱レンズおよび非球面レンズ素子の材料は、所与のフレーム材料のために所望の総焦点距離が得られるように選択される。フレームの系およびコリメーションレンズ系は、非熱的であるべきである。
【0087】
屈折の大部分は、ガラスで作られた円柱レンズを通って起こるべきである。
非球面レンズ素子のプロファイルは、開口エラーが十分に小さくなるように定められる。
【0088】
以下に、この発明を、図面を使用して設計例においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】第1の側面図における、この発明に従ったダイオードレーザーの概略図である。
【
図2】第2の側面図における、この発明に従ったダイオードレーザーの概略図である。
【
図3】第1の斜視図における、この発明の装置の概略図である。
【
図4】この発明に従った装置の第2の斜視図である。
【
図5】この発明に従った装置の第3の斜視図である。
【
図6】側面図における他の光学素子の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0090】
図1は、第1の側面図における、この発明に従った装置100を有するダイオードレーザー110の概略図を示し、
図2は、それに垂直な第2の側面図における、この発明に従ったダイオードレーザー110の概略図を示す。
【0091】
ダイオードレーザー110は、いくつかのレーザーダイオード120を含む。
装置100は、光線場Lをコリメートするよう機能する。光線場Lは、放出方向sに垂直な第1の方向F(
図1参照)において、放出方向sおよび第1の方向Fに垂直な第2の方向S(
図2参照)よりも、放出方向sに対してより迅速に発散する。
【0092】
装置100は、第1の方向Fにおいて光線場Lをコリメートするための第1のコリメーションレンズ系1と、第2の方向Sにおいて光線場Lをコリメートするための第2のコリメーションレンズ系2とを含む。
【0093】
第1のコリメーションレンズ系1は、ガラスで作られた、少なくとも部分的に円形のプロファイル4を有する円柱レンズ3を含む。
【0094】
第1のコリメーションレンズ系1はまた、プラスチックで作られた非球面レンズ素子5を含む。非球面レンズ素子5は、放出方向sにおいてガラスで作られた円柱レンズ3の後ろに配置される。
【0095】
図2に見えるように、装置100は、第2の方向Sにおいて光線場をコリメートするための第2のコリメーションレンズ系2を有しており、それは円柱レンズアレイ6を含み、好ましくは、放出方向sにおいて第1のコリメーションレンズ系1の前に配置される。
【0096】
装置100は追加の光学素子7を含み、それは放出方向sにおいて円柱レンズ3の後ろに配置される。光学素子7は、円柱レンズ3から遠い方に面する側に表面8を有しており、それは、遅軸方向において光線場を均質化するよう機能するプロファイル9を有する。
図6および
図7も参照されたい。
【0097】
非球面レンズ素子5は、光学素子7の一体部品である。非球面レンズ素子5の光学的活性表面14は、光学素子7の円柱レンズ3に面する側10に形成される。
【0098】
光学的活性表面14は、自由形状の表面として形成されており、以下の式を用いて表わされ得る。
【0099】
【0100】
CDGM H-ZF2というガラスで作られた円柱レンズ3とゼオネックスE48Rというプラスチックで作られた非球面レンズ素子5とを有する第1のコリメーションレンズ系1について、以下のパラメータが例として選択される:
【0101】
【0102】
非球面レンズ素子5の焦点距離は、240mmである。
図3は、第1の斜視図における、この発明に従った装置100の概略図を示す。
【0103】
図4および
図5は、この発明に従った装置100の第2および第3の斜視図を示す。
装置100は、発光体に結合され得る。これは、たとえば、約900nmの波長を有するいくつかのレーザーダイオードチップのスタックから構成される。
【0104】
たとえば、LIDARシステムについては、測定範囲は、1.5m~180mの距離をカバーするべきである。この範囲では、高速軸における光線場は、限られた程度でのみ発散するべきである。遅軸では、線形の測定場が作成されるように、均質の発散光線場が生成されることになっている。ソケットから出た直後に、光線は、およそ25mm×25mmであるべきである。
【0105】
第1のコリメーティングレンズ系1の焦点距離は好ましくは、たとえば望遠鏡などの追加の光学素子がなくてもビーム幅が実現されるように選択される。
【0106】
水平方向では、約0.1°~0.2°の発散が許容され、垂直方向では、23.5°~24.5°の発散が許容される。
【0107】
光線場は、-40℃~105℃の温度範囲においてこれらの公差を満たすべきである。この目的のために、光学部品は、この範囲において非熱的でなければならない。
【0108】
これは、ガラスで作られた円柱レンズ3とプラスチックで作られた非球面レンズ素子5とを用いて保証され得る。
【0109】
装置100は、第2のコリメーションレンズ系2と円柱レンズ3と非球面レンズ素子5とが搭載されるマウント13を含む。
【0110】
図6は、側面図における他の光学素子7の概略図を示し、
図7は、
図6からの詳細
図Xを示す。
【0111】
非球面素子5と追加の光学素子7とは、1つの素子として形成され得る。図示されない円柱レンズ3に面する表面14は、自由形状の表面として設計されており、コリメーションのために使用される。
【0112】
図示されない円柱レンズ3から遠い方に面する表面8は、均質化のために機能する。
この目的のために、表面は、凸状区域15および凹状区域16が交互するプロファイル9を有する。
【0113】
プロファイルは、0.5mm~1mmの高度差dを有する。