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特許7253616負極材料、並びにそれを用いた電気化学装置および電子装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】負極材料、並びにそれを用いた電気化学装置および電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20230330BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230330BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230330BHJP
   H01M 4/131 20100101ALN20230330BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20230330BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 C
H01M4/36 E
H01M4/62 Z
H01M4/131
H01M10/052
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021512505
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 CN2019125945
(87)【国際公開番号】W WO2020125621
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】201811541619.8
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100201938
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 静可
(72)【発明者】
【氏名】ジアン ダオイー
(72)【発明者】
【氏名】ツイ ハン
(72)【発明者】
【氏名】シエ ユアンセン
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108023074(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105742599(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105514390(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105244488(CN,A)
【文献】特開2009-064576(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0057176(US,A1)
【文献】特開2018-081753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/48
H01M 4/36
H01M 4/131
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素化合物SiOxと、前記ケイ素化合物SiOxを被覆する酸化物MeOy層と、前記MeOy層を被覆する炭素層とを含む負極材料であって、
xが0.5-1.5であり、
MeがAl、Si、Ti、Mn、V、Cr、Co又はZrの少なくとも一種を含み、
yが0.5-3であり、
前記MeOy層は、前記炭素層に接する表面に開口の孔隙構造を有し、且つ、前記開口の孔隙構造の少なくとも一部が前記炭素層により充填される、負極材料。
【請求項2】
前記MeOy層は、未開口の孔隙構造を有する、請求項1に記載の負極材料。
【請求項3】
前記ケイ素化合物SiOxがSiO、またはSiOとSiO の組み合わせを含む、請求項1に記載の負極材料。
【請求項4】
前記MeOy層がTiO2、Al2O3またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の負極材料。
【請求項5】
前記MeOy層は炭素を含み、前記ケイ素化合物SiOxおよび前記MeOy層の全重量に対して、前記MeOy層における炭素の含有量が0.1wt%-1wt%である、請求項1に記載の負極材料。
【請求項6】
前記MeOy層における炭素の含有量が0.2wt%-0.4wt%である、請求項5に記載の負極材料。
【請求項7】
前記ケイ素化合物SiOxの平均粒子径が500nm-30μmである、請求項1に記載の負極材料。
【請求項8】
前記MeOy層の厚さが2nm-1000nmである、請求項1に記載の負極材料。
【請求項9】
前記MeOy層の厚さが5nm-50nmである、請求項1に記載の負極材料。
【請求項10】
前記炭素層の厚さが2nm-1000nmである、請求項1に記載の負極材料。
【請求項11】
前記炭素層の厚さが10nm-100nmである、請求項1に記載の負極材料。
【請求項12】
前記負極材料の全重量に対して、前記負極材料に含有される炭素の含有量が1wt%-6wt%である、請求項1に記載の負極材料。
【請求項13】
前記負極材料の比表面積が2-20cm2/gである、請求項1に記載の負極材料。
【請求項14】
(1)SiOx粉末、孔形成剤、および酸化物前駆体MeXnを、有機溶媒と脱イオン水の存在下で混合溶液を形成すること、
前記混合溶液を乾燥させて粉末を得ること、および
前記粉末を焼結して、酸化物MeOy層に被覆されたケイ素化合物SiOx粒子を得ること、並びに
(2)前記酸化物MeOy層に被覆されたケイ素化合物SiOx粒子、有機溶媒及び炭素前駆体を混合して混合溶液を形成すること、
前記混合溶液を乾燥させて粉末を得ること、および
前記粉末を焼結して、負極材料を得ること、を含む負極材料の調製方法であって、
xが0.5-1.5であり、yが0.5-3であり、
MeがAl、Si、Ti、Mn、Cr、V、Co、Zrの少なくとも一種を含み、
Xがメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ハロゲンの少なくとも一種を含み、且つ
nが1、2、3又は4である、負極材料の調製方法。
【請求項15】
請求項1-13のいずれか1項に記載の負極材料を含む、負極極片。
【請求項16】
請求項15に記載の負極極片を含む、電気化学装置。
【請求項17】
リチウムイオン電池である、請求項16に記載の電気化学装置。
【請求項18】
請求項16に記載の電気化学装置を含む、電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はエネルギー貯蔵分野に関し、より詳しくは、負極材料並びにそれを用いた電気化学装置および電子装置、特にリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)は既に科学技術の進歩と環境保護の要求の向上に伴って、我々の日常生活に入ってきた。近年、ケイ素の可逆容量は4200mAh/gと高いため、大規模に応用される可能性が最も高いリチウムイオン負極材料と考えられている。しかし、ケイ素は充放電中に約400%の体積膨張があり、この非常に大きな体積膨張によって固体電解質界面膜(SEI)が破壊され、新たな材料表面が露出しつつ、電解液を消耗し続け、SEIが繰り返して形成することをもたらす。純粋なケイ素に比べて、ケイ素酸素材料は、容量上で、ある程度の低下があるが、体積膨張をある程度で顕著に低減しうる。ケイ素酸素比と、粒子の大きさとを合理的に設計すること、およびセル調製工程の最適化によって、その体積膨張を僅か120-160%としうる。しかし、これでも、依然として現在のリチウムイオン電池に対する高サイクル寿命の要求を満たすことができない。
【0003】
これに鑑みて、高サイクル寿命の要求を満たすために、負極材料の構造の更なる微細化と改良することが必要である。
【発明の概要】
【0004】
本願の実施例は負極材料およびこの負極材料の調製方法を提供し、関連分野に存在する課題の少なくとも一つを少なくともある程度で解決することを図る。本願の実施例はこの負極材料を用いた負極極片、電気化学装置および電子デバイスも提供する。
【0005】
ある実施例において、本願は
ケイ素化合物SiOと、前記ケイ素化合物SiOを被覆する酸化物MeO層と、前記MeO層を被覆する炭素層とを含む負極材料であって、
xが0.5-1.5であり、
MeがAl、Si、Ti、Mn、V、Cr、Co又はZrの少なくとも一種を含み、
yが0.5-3であり、
前記MeO層は、前記炭素層に接する表面に開口の孔隙構造を有し、且つ、前記開口の孔隙構造の少なくとも一部が前記炭素層により充填される、負極材料を提供する。
【0006】
他の一実施例において、本願は
(1)SiO粉末、孔形成剤、および酸化物前駆体MeXを有機溶媒と脱イオン水の存在下で混合溶液を形成すること、
前記混合溶液を乾燥させて粉末を得ること、および
前記粉末を約250-900Cで約0.5-24h焼結して、酸化物MeO層に被覆されたケイ素化合物SiO粒子を得ること、並びに
(2)前記酸化物MeO層に被覆されたケイ素化合物SiO粒子、有機溶媒及び炭素前駆体を混合して混合溶液を形成すること、
前記混合溶液を乾燥させて粉末を得ること、および
前記粉末を約700-1400Cで約0.5-24h焼結して、前記負極材料を得ること、を含む負極材料の調製方法であって、
xが約0.5-1.5であり、yが約0.5-3であり、
MeがAl、Si、Ti、Mn、Cr、V、Co、Zrの少なくとも一種を含み、
Xがメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ハロゲンの少なくとも一種を含み、且つ
nが1、2、3又は4である、負極材料の調製方法。
【0007】
他の一実施例において、本願は、本願に記載の負極材料を含む負極極片を提供する。
【0008】
他の実施例において、本願は、本願に記載の負極極片を含む電気化学装置を提供する。
【0009】
他の実施例において、本願は、本願に記載の電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0010】
材料は充放電中に膨張と収縮があるため、緊密な被覆構造がこのプロセスにおける構造破壊を効果的に緩和しうる。一方、材料の破壊により新たな界面が生じ、複数のサイクルによって大量のSEI副生成物が生じ、界面の結合が緊密ではなくて強固ではないと、この厚い副生成物は炭素層の剥離を促進および加速し、これによって、材料の減衰と破損を加速する。
【0011】
ケイ素酸素材料のサイクル性能を向上させる主な手段には、炭素でケイ素酸素材料を被覆すること、炭素に被覆されたケイ素酸素材料の中に中間空隙層を設けること、ケイ素酸素材料のサイズを低減すること、重合体でケイ素酸素材料を被覆することなどが含まれる。これらの被覆手段の中でも、炭素で被覆された材料の電子伝導性能が比較的によく、安定性が高い。しかし、炭素で被覆されたケイ素酸素材料は、電池極片の加工において、繰り返すせん断力による脱炭素現象が起き、クーロン効率に影響を与えるとともに、SEI膜が形成され、電解液を消耗する可能性がある。一方、複数のサイクルの間に、ケイ素の膨張、収縮および破裂によって、炭素層はマトリックスから剥がれやすく、SEIの生成に伴って副生成物に包まれ、これにより、電気化学抵抗と分極が極めて大きくなり、サイクル寿命が影響される。従って、炭素層とケイ素酸素材料との界面の結合性能を高めることには、サイクル寿命の改善やサイクル構造安定性の向上に重要な意味がある。
【0012】
本願に提供する負極材料によれば、酸化物MeO層が非晶質構造で、孔隙構造を含む。一方、これらの孔隙構造は材料中のリチウムイオンの受け渡しを高め、分極抵抗を低減しうる。もう一方、酸化物MeO層の炭素層に接する表面にはさらに開口の孔隙構造を有し、炭素前駆体がこれらの開口の孔隙構造に浸透し、焼結された炭素層と酸化物MeO層をより緊密に結合させ、インターロッキング(interlocking)の効果が生じるため、炭素層とマトリックスの界面結合力を効果的に向上させる。また、酸化物MeO層とケイ素酸素材料マトリックスは、化学結合「Me-O-Si」で良好な連接を形成できる。従って、このような構造設計は、材料のサイクル中の構造安定性を顕著に向上させて、サイクル寿命を顕著に向上させうる。
【0013】
本願の実施例の他の態様および利点は、以下の説明で部分的に説明され、示され、または本願の実施例の実施で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下では、本願の実施例を説明するために、本願の実施例または先行技術を説明するための必要な図面を概要的に説明する。明らかなことに、以下に説明される図面は本願の実施例の一部に過ぎない。当業者であれば、創造的な労働なしに、依然として、これらの図面に例示される構造から、他の実施例の図面を得ることができる。
図1図1は本願の負極材料の構造の模式図である。
図2図2における図Aは未被覆の一酸化ケイ素材料の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、図2における図Bは表面が多孔質酸化物層で被覆された一酸化ケイ素材料のSEM画像であり、図2における図Cは本願の実施例2における負極材料の表面のSEM画像であり、図2における図Dは本願の実施例2における負極材料の断面のSEM画像である。
図3図3は本願の実施例2と比較例4のリチウムイオン電池のサイクルに対する減衰曲線を示す。
図4図4の左図は、本願の比較例4における電池を200サイクル経過後の負極極片の断面のSEM画像を示し、図4の右図は、本願の実施例2における電池を200サイクル経過後の負極極片の断面のSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願の実施例を詳細に示す。本願の実施例は本願を制限するものと解釈されるべきではない。
【0016】
本願で使用されるように、用語「約」は小さな変化を叙述して説明するためのものである。事例または状況と合わせて用いると、前記用語は事例または状況が精確に発生した例、並びに事例または状況が極めて近似的に発生した例を指しうる。例を挙げて説明すると、数値と合わせて使用する時は、用語は前記数値の±10%以下の変化範囲、例えば±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、または±0.05%以下を指しうる。また、本願において、範囲の形式で量、比および他の数値を呈することがある。このような範囲の形式は、便宜上および簡潔のためのものと理解されるべきであり、円滑に理解されるべきものであり、範囲で制限される数値として明らかに指されるものだけではなく、各数値および副範囲が明らかに指されるように、前記範囲内に及ぶ全ての個別の数値または副範囲も含まれる。
【0017】
一、負極材料
本願の実施例において、
ケイ素化合物SiOと、前記ケイ素化合物SiOを被覆する酸化物MeO層と、前記MeO層を被覆する炭素層とを含む負極材料であって、
xが0.5-1.5であり、
MeがAl、Si、Ti、Mn、V、Cr、Co又はZrの少なくとも一種を含み、
yが0.5-3であり、
前記MeO層は、前記炭素層に接する表面に開口の孔隙構造を有し、且つ、前記開口の孔隙構造の少なくとも一部が前記炭素層により充填される、負極材料を提供する。
【0018】
ある実施例において、前記MeO層は未開口の孔隙構造を有する。
【0019】
ある実施例において、前記ケイ素化合物SiOはSiO、SiOまたはこれらの組み合わせを含む。
【0020】
ある実施例において、前記MeO層はTiO、Alまたはこれらの組み合わせを含む。
【0021】
ある実施例において、前記MeO層は炭素を含み、前記ケイ素化合物SiOおよび前記MeO層の全重量に対して、前記MeO層における炭素の含有量が約0.1wt%-1wt%である。
【0022】
ある実施例において、前記MeO層は炭素を含み、前記ケイ素化合物SiOおよび前記MeO層の全重量に対して、前記MeO層における炭素の含有量が約0.2wt%-0.8wt%である。
【0023】
ある実施例において、前記MeO層は炭素を含み、前記ケイ素化合物SiOおよび前記MeO層の全重量に対して、前記MeO層における炭素の含有量が約0.2wt%-0.6wt%である。
【0024】
ある実施例において、前記MeO層は炭素を含み、前記ケイ素化合物SiOおよび前記MeO層の全重量に対して、前記MeO層における炭素の含有量が約0.2wt%-0.4wt%である。
【0025】
ある実施例において、前記ケイ素化合物SiOの平均粒子径は約500nm-30μmである。ある実施例において、前記ケイ素化合物SiOの平均粒子径は約1μm-30μmである。ある実施例において、前記ケイ素化合物SiOの平均粒子径は約3μm-8μmである。
【0026】
ある実施例において、前記MeO層の厚さは約2nm-1000nmである。ある実施例において、前記MeO層の厚さは約10nm-500nmである。ある実施例において、前記MeO層の厚さは約10nm-50nmである。ある実施例において、前記MeO層の厚さは約5nm-50nmである。
【0027】
ある実施例において、前記炭素層の厚さは約2nm-1000nmである。ある実施例において、前記炭素層の厚さは約10nm-100nmである。ある実施例において、前記炭素層の厚さは約10nm-50nmである。
【0028】
ある実施例において、前記負極材料の全重量に対して、前記負極材料に含有される炭素の含有量は約1wt%-10wt%である。
【0029】
ある実施例において、前記負極材料の全重量に対して、前記負極材料に含有される炭素の含有量は約1wt%-8wt%である。
【0030】
ある実施例において、前記負極材料の全重量に対して、前記負極材料に含有される炭素の含有量は約1wt%-6wt%である。
【0031】
ある実施例において、前記負極材料の全重量に対して、前記負極材料に含有される炭素の含有量は約2wt%-5wt%である。
【0032】
ある実施例において、前記負極材料の比表面積は約2-20cm/gである。ある実施例において、前記負極材料の比表面積は約5-20cm/gである。ある実施例において、前記負極材料の比表面積は約5-10cm/gである。
【0033】
二、負極材料の調製方法
本願の実施例は、上記負極材料のいずれかを調製する方法であって、
(1)SiO粉末、孔形成剤、および酸化物前駆体MeXを有機溶媒と脱イオン水の存在下で混合溶液を形成すること、
前記混合溶液を乾燥させて粉末を得ること、および
前記粉末を約250-900Cで約0.5-24h焼結して、酸化物MeO層に被覆されたケイ素化合物SiO粒子を得ること、並びに
(2)前記酸化物MeO層に被覆されたケイ素化合物SiO粒子、有機溶媒と炭素前駆体を混合して混合溶液を形成すること、
前記混合溶液を乾燥させて粉末を得ること、および
前記粉末を約400-1000Cで約0.5-24h焼結して、前記負極材料を得ること、を含み、
xが約0.5-1.5であり、yは約0.5-3であり、
MeがAl、Si、Ti、Mn、Cr、V、Co、Zrの少なくとも一種を含み、
Xがメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ハロゲンの少なくとも一種を含み、且つ
nが1、2、3又は4である、負極材料の調製方法を提供する。
【0034】
本願のある実施例によれば、前記孔形成剤は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドトリブロックコポリマー、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、又はオクタデシルトリメチルアンモニウムブロミドの少なくとも一種を含む。
【0035】
本願のある実施例によれば、前記炭素前駆体はフェノール樹脂とヘキサメチレンテトラアミンの混合物であり、フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラアミンの重量比は約12:1-6:1である。本願のある実施例によれば、フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラアミンの重量比は約10:1-8:1である。本願のある実施例によれば、フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラアミンの重量比は約9:1である。
【0036】
本願のある実施例によれば、前記酸化物前駆体MeXはチタン酸イソプロピル、アルミニウムイソプロポキシドまたはこれらの組み合わせを含む。
【0037】
本願のある実施例によれば、前記有機溶媒は、エタノール、メタノール、n-ヘキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、ピロリドン、アセトン、トルエン、イソプロパノールまたはn-プロパノールの少なくとも一種を含む。本願のある実施例によれば、前記有機溶媒はエタノールである。
【0038】
本願のある実施例によれば、ステップ(1)における焼結温度は約300-800Cである。本願のある実施例によれば、ステップ(1)における焼結温度は約400-700Cである。本願のある実施例によれば、ステップ(1)における焼結温度は約400-650Cである。
【0039】
本願のある実施例によれば、ステップ(1)における焼結時間は約1-20hである。本願のある実施例によれば、ステップ(1)における焼結時間は約1-15hである。本願のある実施例によれば、ステップ(1)における焼結時間は約1-10hである。本願のある実施例によれば、ステップ(1)における焼結時間は約1.5-5hである。
【0040】
本願のある実施例によれば、ステップ(2)における焼結温度は約700-1300Cである。本願のある実施例によれば、ステップ(2)における焼結温度は約700-1200Cである。本願のある実施例によれば、ステップ(2)における焼結温度は約800-1100Cである。
【0041】
本願のある実施例によれば、ステップ(2)における焼結時間は約1-20hである。本願のある実施例によれば、ステップ(2)における焼結時間は約1-15hである。本願のある実施例によれば、ステップ(2)における焼結時間は約1-10hである。本願のある実施例によれば、ステップ(2)における焼結時間は約1.5-5hである。
【0042】
本願のある実施例によれば、ステップ(1)とステップ(2)における焼結はいずれも非活性気体雰囲気で行う。本願のある実施例によれば、前記非活性気体は窒素ガス、アルゴンガスまたはこれらの組み合わせを含む。
【0043】
本願のある実施例によれば、ステップ(1)とステップ(2)における乾燥はスプレー乾燥であり、乾燥温度は約100-300Cである。
本願の負極材料を調製するときに、本願の調製方法には孔形成剤が使用される。本願に使用される孔形成剤は有機重合体であるため、焼結後に、酸化物MeO層に残留された炭素が生じる。これらの残留された炭素は酸化物MeOy層の電気伝導率の向上に寄与することで、負極材料の電気伝導率を高める。
【0044】
上記のように、前記ケイ素化合物SiOと前記酸化物MeO層の全重量に対して、前記MeO層における残留された炭素の含有量は約0.1wt%-1wt%、約0.2wt%-0.8wt%、約0.2wt%-0.6wt%、または約0.2wt%-0.4wt%である。
【0045】
一方、孔形成剤を使用することで、得られる酸化物MeO層は孔隙構造を有する。そのうち、酸化物MeO層の、炭素層に接する表面に開口の孔隙構造を有し、炭素前駆体はこれらの開口の孔隙構造の少なくとも一部に浸透し、これらの開口の孔隙構造が、焼結された後に得られた炭素層により充填させる。これで炭素層と酸化物MeO層の結合をより緊密にして、インターロックの効果を発生させるため、炭素とマトリックスの界面結合力を効果的に向上させる。
【0046】
図1は本願の負極材料の構造の模式図である。内層1はケイ素酸素材料であり、中間層2は多孔質酸化物層であり、外層3は炭素層である。また、図1に中間層2と外層3の界面における拡大図を示したが、この拡大図から分かるように、中間層2は孔隙構造を有し、且つ、酸化物層の炭素層に接する表面に開口の孔隙構造を有し、これらの開口の孔隙構造の少なくとも一部が炭素層により充填される。
【0047】
三、負極極片
本願の実施例は負極極片を提供する。前記負極極片は集電体および集電体上に設けられる負極活物質層を含む。前記負極活物質層は本願の実施例に記載の負極材料を含む。
【0048】
ある実施例において、負極活物質層は粘着剤を含む。ある実施例において、粘着剤はポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリド、エチレンオキシドを含む重合体、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ1,1-ジフルオロビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(エステル)化されたスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0049】
ある実施例において、負極活物質層は導電材を含む。ある実施例において、導電材は天然グラファイト、人造グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー、金属粉末、金属ファイバー、銅、ニッケル、アルミニウム、銀、ポリフェニレン誘導体を含むが、これらに限定されるものではない。
【0050】
ある実施例において、集電体は銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケルフォーム、銅フォーム、導電性金属で覆われた重合体基板を含むが、これらに限定されるものではない。
【0051】
ある実施例において、負極極片は、溶媒の中で活物質、導電材と粘着剤を混合して、活物質組成物を調製して、当該活物質組成物を集電体に塗工する方法で得られる。
【0052】
ある実施例において、溶媒はN-メチルピロリドンを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0053】
四、正極極片
【0054】
本願の実施例に使用される正極の材料、構造およびその製造方法は、任意の先行技術に開示された技術を含む。ある実施例において、正極は米国特許出願US9812739Bに記載されたものであり、その全体を引用して本明細書に組み込まれる。
【0055】
ある実施例において、正極は集電体およびこの集電体上に設けられる正極活物質層を含む。
【0056】
ある実施例において、正極活物質はコバルト酸リチウム(LiCoO)、リチウムニッケルコバルトマンガン(NCM)三元材料、リン酸鉄リチウム(LiFePO)、マンガン酸リチウム(LiMn)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0057】
ある実施例において、正極活物質層はさらに粘着剤を含み、導電材を任意に含む。粘着剤は正極活物質粒子同士の結合を高めるとともに、正極活物質と集電体の結合を高める。
【0058】
ある実施例において、粘着剤はポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリド、エチレンオキシドを含む重合体、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ1,1-ジフルオロビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル(エステル)化されたスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0059】
ある実施例において、導電材は、炭素による材料、金属による材料、導電重合体およびこれらの混合物を含むが、これらに限定されるものではない。ある実施例において、炭素による材料は天然グラファイト、人造グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー又はこれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれるものである。ある実施例において、金属による材料は金属粉末、金属ファイバー、銅、ニッケル、アルミニウム、銀からなる群から選ばれるものである。ある実施例において、導電重合体はポリフェニレン誘導体である。
【0060】
ある実施例において、集電体はアルミニウムであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0061】
正極は当技術分野で公知の調製方法にて調製しうる。例えば、正極は、溶媒の中で活物質、導電材と粘着剤を混合して、活物質組成物を調製して、当該活物質組成物を集電体に塗工する方法で得られる。ある実施例において、溶媒はN-メチルピロリドンを含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0062】
五、電解液
本願の実施例に使用される電解液は先行技術において既知の電解液であってもよい。
【0063】
ある実施例において、前記電解液は有機溶媒、リチウム塩、及び添加剤を含む。本願の電解液の有機溶媒は先行技術において既知の任意の、電解液の溶媒としうるものであってもよい。本願の電解液に使用される電解質は制限されなく、先行技術において既知の任意のものであってもよい。本願の電解液の添加剤は先行技術において既知の任意の電解液の添加剤としうるものであってもよい。
【0064】
ある実施例において、前記有機溶媒はエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、炭酸プロピレン、エチルプロピオネートを含むが、これらに限定されるものではない。
【0065】
ある実施例において、前記リチウム塩は有機リチウム塩または無機リチウム塩の少なくとも一種を含む。
【0066】
ある実施例において、前記リチウム塩はヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミドLiN(CFSO(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドLi(N(SOF))(LiFSI)、ホウ酸ビスシュウ酸リチウムLiB(C(LiBOB)、ホウ酸ジフルオロシュウ酸リチウムLiBF(C)(LiDFOB)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0067】
ある実施例において、前記電解液中のリチウム塩の濃度は約0.5-3mol/L、約0.5-2mol/Lまたは約0.8-1.5mol/Lである。
【0068】
六、セパレータ
ある実施例において、正極極片と負極極片の間には短絡を防止するためのセパレータが設けられる。本願の実施例に使用され得るセパレータの材料と形状は特に制限されなく、先行技術に開示された任意のものであってもよい。ある実施例において、セパレータは本願の電解液に対して安定な材料で形成される重合体または無機物などを含む。
【0069】
例えば、セパレータは基材層と表面処理層を含んでも良い。基材層は多孔質構造を有する無織布、膜または複合膜であり、基材層の材料はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよびポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種である。具体的には、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布、またはポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合膜を使用しても良い。
【0070】
基材層の少なくとも一方の面には表面処理層が設けられ、表面処理層は重合体層または無機物層であってもよく、重合体と無機物を混合して形成される層であってもよい。
【0071】
無機物層は無機粒子と結着剤を含み、無機粒子は酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、二酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イトリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び硫酸バリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種である。結着剤はポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレートエステル、ポリアクリル酸、ポリアクリレート塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリヘキサフルオロプロピレンからなる群から選ばれる少なくとも一種である。
重合体層は重合体を含み、重合体の材料はポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリレートエステル重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリレート塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)からなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0072】
七、電気化学装置
本願の実施例は電気化学装置を提供し、前記電気化学装置は電気化学反応を発生する任意の装置を含む。
【0073】
ある実施例において、本願の電気化学装置は金属イオンを吸蔵することや放出することができる正極活物質を有する正極極片、本願の実施例に記載の負極極片、電解液、および正極極片と負極極片の間に設けられるセパレータを含む。
【0074】
ある実施例において、本願の電気化学装置は全ての種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池またはコンデンサを含むが、これらに限定されるものではない。
【0075】
ある実施例において、前記電気化学装置はリチウム二次電池である。
【0076】
ある実施例において、リチウム二次電池はリチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウム重合体二次電池又はリチウムイオン重合体二次電池を含むが、これらに限定されるものではない。
【0077】
八、電子装置
本願の電子装置は本願の実施例に記載の電気化学装置を使用する任意の装置である。
【0078】
本願のある実施例によれば、前記電子装置はノートパソコン、ペン入力コンピューター、モバイルコンピューター、電子書籍プレーヤー、携帯電話、ポータブルファックス機、ポータブルコピー機、ポータブルプリンター、ヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、ポータブルCDプレーヤー、ミニCD、トランシーバー、電子ノートブック、電卓、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、フラッシュ、カメラ、大型家庭用蓄電池又はリチウムイオンコンデンサなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0079】
以下はリチウムイオン電池を例として、具体的な実施例と合わせてリチウムイオン電池の調製を説明するが、当業者は、本願に叙述された調製方法は実例に過ぎなく、他の任意の適宜な調製方法はいずれも本願の請求の範囲にあると理解している。
【0080】
実施例
以下、本願のリチウムイオン電池の実施例と比較例を説明して、性能を評価する。
【0081】
1、負極材料の調製
以下の方法で実施例1-8および比較例1-5の負極材料を調製した。
【0082】
(1)約100gの一酸化ケイ素粉末を約300mlの有機溶媒としてのエタノールに分散し、約2.2gの孔形成剤としてのポリビニルピロリドン(PVP)を加えて、均一な懸濁液になるまで約0.5-1h撹拌した。
(2)上記懸濁液に約0.5-10gの酸化物前駆体MeXを加え、均一な混合溶液になるまで約0.5-1h撹拌し、混合溶液に前駆体MeXの重量の約3倍の脱イオン水を連続的に滴下し、滴下完了後、反応を約4h続けて、混合溶液を得た。
(3)上記のようにして得られた混合溶液をスプレー乾燥(入口温度220C、出口温度120C)して粉末を得て、上記粉末を約450-900Cで焼結し粉砕した後に、400メッシュの篩でろ過させ、多孔質酸化物層で被覆されたケイ素酸素材料粉末を得た。
(4)約100gのステップ(3)で得られたサンプルを約300mlの有機溶媒としてのエタノールに分散し、約5-20gの炭素前駆体(フェノール樹脂と硬化剤であるヘキサメチレンテトラアミンを重量比で約9:1混合して得られたもの)、溶解した後均一に撹拌して混合溶液を得て、スプレー乾燥(入口温度220C、出口温度120C)を行って粉末を得た。及び
(5)ステップ(4)で得られた粉末を約700-1300Cで焼結し粉砕した後、400メッシュの篩でろ過させ、分級させた後、負極材料を得た。
【0083】
表1には各ステップに使用された材料とプロセス条件を示した。本願の負極材料について、ステップ(1)に、孔形成剤としてのPVPを加え、PVPは有機重合体であるため、焼結した後は残留された炭素が生じる。従って、ステップ(3)に、焼結した後得られたサンプルの多孔質酸化物層に残留された炭素が分布された。各実施例において、多孔質酸化物層に残留された炭素の含有量を表1に示す。この含有量はステップ(3)に篩でろ過させた手順の後で測定して得られたものであり、即ち、多孔質酸化物で被覆されたケイ素酸素材料の全重量に対して計算して得られたものである。
【表1】
【0084】
2、実施例1-8および比較例1-5で得られた負極材料に粉末性質測定を行い、粉末性質測定方法は以下の通りである。
(1)粉末粒子のミクロな形態の観察:走査型電子顕微鏡で粉末のミクロな形態の観察を行い、材料表面の被覆状況を確認し、使用した測定デバイスはOXFORD EDS(X-max-20mm)であり、加速電圧は15KVであり、焦点距離を調整し、50Kの観測倍率から高倍率で観察を行い、粒子の凝集の状況を主に500-2000の低い観測倍率で観察した。
【0085】
(2)比表面積測定:恒温の低温で、異なる相対圧力での気体の固体表面への吸着量を測定し、Brownauer-Eter-Taylor吸着理論とその公式(BET公式)により、試料の単分子層吸着量を求めることで、固体の比表面積を計算した。
【0086】
1.5-3.5gの粉末サンプルを秤量し、TriStar II 3020の測定サンプル管に入れ、200Cで120分脱気した後、測定を行った。
【0087】
(3)粒度測定:50mlのクリーンビーカーに約0.02gの粉末サンプルを加え,約20mlの脱イオン水を加え、さらに、数滴の1%の界面活性剤を滴下し、粉末を完全に水中に分散させ、120Wの超音波洗浄機で超音波を5分かけ、MasterSizer 2000で粒度分布を測定した。
【0088】
(4)真密度測定:中国GB/T24586における「鉄鉱石の見掛け密度、真密度および孔隙率の測定」に参照し、測定デバイスとしてAccuPyc II 1340を使用して測定を行った。
【0089】
(5)タップ密度:中国GB/T5162-2006の「金属粉末のタップ密度の測定」を採用し、まず、清潔で乾燥の100cm三面定規(目盛りのピッチは1cmであり、測定精度は±0.5cmである)の質量Mgを秤量し、測定範囲の1/2-2/3の目盛りになるまで粉末サンプルを加えて、パラフィルムでメスシリンダーの口を封じた。粉末を充填したメスシリンダーを機械震動装置に置き、100-300回/分で5000回震動させた後、質量/震動した後の体積により、タップ密度を得た。
【0090】
(6)炭素含有量測定:酸素過量条件にてサンプルを高周波炉で高温加熱して燃焼させて、炭素と硫黄をそれぞれ二酸化炭素と二酸化硫黄に酸化させ、当該気体を処理して、相応的な吸収池に入り、相応的な赤外線輻射を吸収し、検出器により相応的なシグナルに変換された。このシグナルはコンピュータにより採取し、直線性校正した後、二酸化炭素および二酸化硫黄の濃度と正比例する数値に変換され、そして分析過程の全ての数値を累加し、分析完了した後、コンピュータでこの累加した値を重量の値で割り、また校正係数を掛けて、空白を引いて、サンプルの炭素、硫黄の含有率を得た。高周波赤外線炭素硫黄分析装置(Shanghai Dekai Instrument Co., Ltd製HCS-140)でサンプルに対する測定を行った。
【0091】
3、実施例1-8および比較例1-5で得られた負極材料に電気性能測定を行った。その中で、電気性能測定方法は下記の通りである。
実施例1-8および比較例1-5で得られた負極材料、導電カーボンブラックおよび結着剤であるPAAを約80:10:10の重量比で混合し、脱イオン水を加え、スラリーとし、ドクターブレードで厚さが約100μmのコート層を塗工し、真空乾燥箱で約85Cで約12時間乾燥させ、乾燥環境で打ち抜き機にて直径が約1cmの円片に切り出し、グローブボックスで金属リチウム片を対極とし、ceglard複合膜をセパレータとして、電解液(ECとDECの重量比=約3:7、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は約1M、電解液に占めるFECの重量百分率は約5wt%である)を加えて、ボタン式電池に組み立てた。ランド(LAND)シリーズ電池測定で、電池に充放電測定を行い、その充放電性能を測定した。
【0092】
表2には、実施例1-8および比較例1-5で得られた負極材料の粉末性質および電気性能測定結果をまとめた。
【表2】
【0093】
表中の初期効率は、電圧を0.8Vになるまで充電する容量/電圧を0.005Vになるまで放電する容量により計算した。
【0094】
4、全電池における負極材料性能の評価
(1)セルの調製
活物質としてのLiCoO、導電カーボンブラック、結着剤としてのポリビニリデンフルオリド(PVDF)を重量比で約96.7:1.7:1.6でN-メチルピロリドン溶媒系に十分に撹拌し、均一に混合した後、Al箔に塗布し、乾燥して、コールドプレスし、正極極片を得た。
【0095】
グラファイトをそれぞれ実施例1-8および比較例1-5で得られた負極材料と一定の重量比で混合し、グラムごとの容量が430mAh/gである混合粉末を得た。混合粉末、導電材としてのアセチレンブラック、PAAを重量比で約95:1.2:3.8で脱イオン水に十分に攪拌し、均一に混合した後、Cu箔に塗布し、乾燥して、冷間プレスし、負極極片を得た。
【0096】
PE多孔質重合体膜をセパレータとした。セパレータが正極と負極の間で隔離する役割を果たすように、正極極片、セパレータ、負極極片をこの順で重ね、巻いてベアセルを得た。ベアセルを外装に入れ、調製した電解液(ECとDECの重量比=約3:7、ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は約1M、電解液に占めるFECの重量百分率は約5wt%である)を注入し、包装して、化成、脱気、トリミング等のプロセスをしてフルセルを得た。
【0097】
(2)高温サイクル測定:測定温度は45Cであり、0.7C恒電流で4.4Vまで充電し、恒電圧で0.025Cまで充電し、5分放置した後、0.5Cで3.0Vまで放電した。上述のようにして得られた容量を初期容量とし、0.7C充電/0.5C放電のサイクル測定を行い、サイクルごとの容量と初期容量の比で容量減衰曲線を得た。
【0098】
(3)放電倍率測定:25Cで、0.2Cで3.0Vまで放電し、5分放置して、0.5Cで4.4Vまで充電し,恒電圧で0.05Cまで充電して、5分放置し、放電の倍率を調整して、0.2C、0.5C、1C、1.5C、2.0Cでそれぞれ放電測定を行い、放電容量を得て、各倍率で得られた容量を0.2Cで得られた容量と対比して比を得て、この比を比較することで倍率性能を比較した。
【0099】
(4)DCR測定:Maccor機で25Cでセルの実際の容量(0.7C恒電流で4.4Vまで充電し、恒電圧で0.025Cまで充電し、10分放置し、0.1Cで3.0Vまで放電し、5分放置した)を測定し、0.1Cで一定の充電状態(SOC)に放電し、1sの放電を測定し、5msずつ採取し、異なるSOCでのDCR値を計算した。
【0100】
表3には測定の結果をまとめた。
【表3】
【0101】
その中で、"-"は、400サイクルになる前に容量維持率が30%以下になることを表す。
【0102】
実施例1、実施例2および実施例6と比較例4の測定結果から分かるように、Al層を中間層として負極材料に導入することは電池の高温サイクル寿命を顕著に改善するとともに電池の抵抗を低減することができる。実施例1、実施例2および実施例6は酸化アルミニウムの前駆体の含有量を制御することで、異なる被覆厚さを有するAl層を得た。これから分かるように、前駆体の含有量が増えていく(即ち、Al層が厚くなる)ことと伴って、電池の高温サイクル性能はまず良くなるが、その後は悪くなり、そして、抵抗は厚さの増加と伴ってだんだん低くなる。従って、実施例2における酸化アルミニウムの前駆体の含有量は最も適宜な含有量であることが分かる。
【0103】
実施例3、実施例4および実施例5と比較例4の測定結果から分かるように、負極材料にTiO層を中間層として導入することは同様に電池の高温サイクル寿命を顕著に改善するとともに電池の抵抗を低減することができる。実施例3、実施例4および実施例5はチタンの前駆体の含有量を制御することで、異なる被覆厚さを有するTiO層を得た。前駆体の含有量が増えていく(即ち、TiO層が厚くなる)ことと伴って、電池の高温サイクル性能はだんだん悪くなり、中間層が厚いほど、材料全体を破壊して剥離するリスクが高まるためと考えられる。
【0104】
実施例1と実施例3の測定結果から分かるように、前駆体含有量が同様に低い(即ち、中間層の厚さが小さい)場合、Alを中間層とする電池のサイクル性能とTiOを中間層とする電池のサイクル性能の差が小さい。Alを中間層とする電池の400サイクル経過後の容量維持率は約4%高い。
【0105】
実施例2と実施例4の測定結果から分かるように、Alを中間層とする電池は、TiOを中間層とする電池より400サイクル経過後の容量維持率が約10%高い。
【0106】
実施例5と実施例6の測定結果から分かるように、前駆体の含有量が高いと、AlまたはTiOを中間層とする電池はいずれも良い高温サイクル性能を備え、そして、高温サイクル性能の差は小さい。
【0107】
実施例2と比較例2の測定結果から分かるように、中間層の酸化アルミニウムのみで被覆される場合、電池の高温サイクル性能を顕著に向上させなく、その400サイクル経過後の容量維持率は僅か約54%であり、中間酸化物層と炭素層が同時に含まれる場合の約78%より遥かに低い。なお、実施例4と比較例1の測定結果からも分かるように、中間層のTiOで被覆されることのみで、同じような効果は達成できない。従って、中間酸化物層と表面の炭素を結合させて被覆すること限り、材料のサイクル性能を向上させることができる。
【0108】
実施例2と比較例4の測定結果から分かるように、中間Al層の設計は電池のサイクル性能を顕著に向上させうる。図3に示す実施例2と比較例4のサイクルに対する減衰曲線から分かるように、中間酸化アルミニウム層の設計は、電池の、容量維持率が80%まで減衰するサイクル数を1倍ほど高めた。
【0109】
図4の左図は本願の比較例4における電池を200サイクル経過後の負極極片の断面のSEM画像を示す。なお、図4の右図は本願の実施例2における電池を200サイクル経過後の負極極片の断面のSEM画像を示す。これから分かるように、比較例4における多孔質中間層を設けていなかったケイ素酸素材料粒子は、サイクル経過後でSEI膜が粒子表面から剥離した。一方、実施例2における多孔質中間層を設けたケイ素酸素材料の粒子は、サイクル経過後もSEI膜が表面に強固に覆って剥離しない。
【0110】
そして、実施例4と比較例4の測定結果から分かるように、中間TiO層の設計も電池の高温サイクル性能を向上させうる。以上の測定結果から分かるように、中間酸化物層の設計は電池のサイクル性能を顕著に向上させうる。
【0111】
実施例2および実施例8と比較例2の測定結果から分かるように、高温サイクル性能は負極材料の炭素含有量と関連する。より高い炭素含有量は材料の導電性の改善に寄与することで、電池のサイクル性能を顕著に改善するとともに、電池の抵抗を低減する。しかし、材料の調製プロセスの原因で、炭素被覆層の含有量が比較的に高いと、負極材料はブロッキングと凝集が発生しやすくなる。実施例2における炭素含有量は最も適宜な炭素含有量である。
【0112】
実施例1-8と比較例5の測定結果から分かるように、中間酸化物層の導入と表面炭素層の被覆の相乗作用により、電池の高温サイクル性能と倍率性能を顕著に向上するとともに、抵抗を低減しうる。

図1
図2
図3
図4