(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】加飾シート、カバーパネル及び表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 13/04 20060101AFI20230330BHJP
C09B 67/20 20060101ALN20230330BHJP
【FI】
G09F13/04 J
C09B67/20 F
(21)【出願番号】P 2022084793
(22)【出願日】2022-05-24
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2021088953
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149216
【氏名又は名称】浅津 治司
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉永 拓也
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-254520(JP,A)
【文献】特開2015-120304(JP,A)
【文献】特開2017-187477(JP,A)
【文献】特許第6839319(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/00-13/46
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面から入射する光の反射光の干渉で発色する干渉顔料で図柄が形成され、裏面から前記表面に光を透過できる図柄層と、
前記図柄層の前記表面を覆っていて光を透過できる表側調色層と、
前記図柄層及び前記表側調色層を支持するベースフィルムと
を備え、
前記表側調色層は、当該表側調色層の全体に均一に分散されている表側吸収顔料を含み、当該表側調色層を透過する光から所定範囲の波長のスペクトル成分を前記表側吸収顔料で減少さ
せ、
前記表面から入射する入射光が入射光IL1と入射光IL1wとであり、
前記入射光IL1及び前記入射光IL1wが前記干渉顔料で反射されるときの反射光がそれぞれ反射光RL1と反射光RL1wとであり、
前記入射光IL1及び前記反射光RL1の反射角に比べて、前記入射光IL1w及び前記反射光RL1wの反射角が大きく、
前記所定範囲の波長は、前記反射光RL1に比べて前記反射光RL1wの特定色のスペクトル成分が薄くなる場合に、前記特定色のスペクトル成分以外の範囲に設定される、加飾シート。
【請求項2】
前記図柄層の前記裏面を覆っていて光を透過できる裏側調色層を備え、
前記裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含み、
前記裏側吸収顔料は、前記裏側調色層と前記表側調色層の2層を透過する光を、前記表側調色層のみを透過する光に比べて無彩色に近づけるような光の吸収特性を持つ、
請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記図柄層の前記裏面を覆っていて光を透過できる裏側調色層を備え、
前記裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含み、
前記表側調色層の色と前記裏側調色層の色が互いに補色の関係にある、
請求項1に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記図柄層の前記裏面を覆っていて光を透過できる裏側調色層を備え、
前記裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含み、
前記裏側吸収顔料は、特定箇所の前記裏側調色層と前記図柄層と前記表側調色層を透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、0.28≦x≦0.36且つ0.28≦y≦0.36の条件を満たすような光の吸収特性を持つ、
請求項1に記載の加飾シート。
【請求項5】
表面から入射する光の反射光の干渉で発色する干渉顔料で形成され、裏面から前記表面に光を透過できる図柄を有する図柄層と、
前記図柄層の前記裏面を覆っていて光を透過できる裏側調色層と、
前記図柄層及び前記裏側調色層を支持するベースフィルムと
を備え、
前記裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含み、
前記裏側吸収顔料は、特定箇所の前記裏側調色層と前記図柄層を透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、0.28≦x≦0.36且つ0.28≦y≦0.36の条件を満たすような光の吸収特性を持つ、加飾シート。
【請求項6】
表面から入射する光の反射光の干渉で発色する干渉顔料で図柄が形成され、裏面から前記表面に光を透過できる図柄層と、
前記図柄層の前記表面を覆っていて光を透過できる表側調色層と、
前記図柄層及び前記表側調色層を支持し、光を透過できる成形部材と
を備え、
前記表側調色層は、当該表側調色層の全体に均一に分散されている表側吸収顔料を含み、当該表側調色層を透過する光から所定範囲の波長のスペクトル成分を前記表側吸収顔料で減少さ
せ、
前記表面から入射する入射光が入射光IL1と入射光IL1wとであり、
前記入射光IL1及び前記入射光IL1wが前記干渉顔料で反射されるときの反射光がそれぞれ反射光RL1と反射光RL1wとであり、
前記入射光IL1及び前記反射光RL1の反射角に比べて、前記入射光IL1w及び前記反射光RL1wの反射角が大きく、
前記所定範囲の波長は、前記反射光RL1に比べて前記反射光RL1wの特定色のスペクトル成分が薄くなる場合に、前記特定色のスペクトル成分以外の範囲に設定される、カバーパネル。
【請求項7】
前記図柄層の前記裏面を覆っていて光を透過できる裏側調色層を備え、
前記裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含み、
前記裏側吸収顔料は、特定箇所の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、0.28≦x≦0.36且つ0.28≦y≦0.36の条件を満たすような光の吸収特性を持つ、
請求項6に記載のカバーパネル。
【請求項8】
表面から入射する光の反射光の干渉で発色する干渉顔料で形成されている図柄を有し、
裏面から前記表面に光を透過できる図柄層と、
前記図柄層の裏面を覆っていて光を透過できる裏側調色層と、
前記図柄層及び前記裏側調色層を支持し、光を透過できる成形部材と
を備え、
前記裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含み、
前記裏側吸収顔料は、特定箇所の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(0.28≦x≦0.36)且つ(0.28≦y≦0.36)の条件を満たす光の吸収特性を持つ、カバーパネル。
【請求項9】
表面から入射する光の反射光の干渉で発色する干渉顔料で図柄が形成され、裏面から前記表面に光を透過できる図柄層と、
前記図柄層の前記表面を覆っていて光を透過できる表側調色層及び前記裏面を覆っていて光を透過できる裏側調色層と、
前記表側調色層、前記図柄層及び前記裏側調色層を支持し、光を透過できる成形部材と、
前記成形部材、前記裏側調色層、前記図柄層及び前記表側調色層を透過する光を照射する光源と
を備え、
前記表側調色層は、当該表側調色層の全体に均一に分散されている表側吸収顔料を含み、当該表側調色層を透過する光から所定範囲の波長のスペクトル成分を前記表側吸収顔料で減少させ、
前記裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含み、
前記裏側吸収顔料は、前記光源の色のxy色度図上の点を(x1,y1)としたときに、特定箇所の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(x1-0.03)≦x≦(x1+0.03)且つ(y1-0.03)≦y≦(y1+0.03)の条件を満たすような光の吸収特性を持つ、表示装置。
【請求項10】
表面から入射する光の反射光の干渉で発色する干渉顔料で形成されている図柄を有し、裏面から前記表面に光を透過できる図柄層と、
前記図柄層の前記裏面を覆っていて光を透過できる裏側調色層と、
前記図柄層及び前記裏側調色層を支持し、光を透過できる成形部材と、
前記成形部材、前記裏側調色層及び前記図柄層を透過する光を照射する光源と
を備え、
前記裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含み、
前記裏側吸収顔料は、前記光源の色のxy色度図上の点を(x1,y1)としたときに、特定箇所の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(x1-0.03)≦x≦(x1+0.03)且つ(y1-0.03)≦y≦(y1+0.03)の条件を満たすような光の吸収特性を持つ、表示装置。
【請求項11】
表面から入射する光の反射光の干渉で発色する干渉顔料で形成されている図柄を有し、裏面から前記表面に光を透過できる図柄層と、
前記図柄層の前記表面を覆っていて光を透過できる表側調色層及び前記裏面を覆っていて光を透過できる裏側調色層のうちの少なくとも一方と、
前記表側調色層及び前記裏側調色層のうちの少なくとも一方並びに前記図柄層を支持し、光を透過できる成形部材と、
前記表側調色層及び前記裏側調色層のうちの少なくとも一方、前記成形部材並びに前記図柄層を透過する光を照射するディスプレイと、
前記ディスプレイと前記図柄層との間で且つ前記ディスプレイの外縁に沿って配置され、光を遮断する外枠部材と、
前記成形部材と前記ディスプレイの間の空隙を埋める光学透明接着剤と
を備え、
前記表側調色層は、当該表側調色層の全体に均一に分散されている表側吸収顔料を含み、当該表側調色層を透過する光から所定範囲の波長のスペクトル成分を前記表側吸収顔料で減少させ、
前記裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含み、
前記裏側吸収顔料は、前記光学透明接着剤よりも表側に在る全ての透光部材を透過する透過光を、前記透光部材のうちの前記裏側調色層がない場合の透過光に比べて無彩色に近づけるような光の吸収特性を持つ、表示装置。
【請求項12】
前記図柄層の裏側に配置され、光が通過する第1形状の開口部を有し、前記開口部の周囲の光を遮断する遮蔽層を備え、
前記図柄層は、前記図柄として、前記第1形状と同じ形状または前記第1形状と相似形状の第2形状を、前記第1形状と重なる位置に有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の加飾シート。
【請求項13】
前記図柄層の裏側に配置され、光が通過する第1形状の開口部を有し、前記開口部の周囲の光を遮断する遮蔽層を備え、
前記図柄層は、前記図柄として、前記第1形状と同じ形状または前記第1形状と相似形状の第2形状を、前記第1形状と重なる位置に有する、
請求項6から8のいずれか一項に記載のカバーパネル。
【請求項14】
前記図柄層の裏側に配置され、光が通過する第1形状の開口部を有し、前記開口部の周囲の光を遮断する遮蔽層を備え、
前記図柄層は、前記図柄として、前記第1形状と同じ形状または前記第1形状と相似形状の第2形状を、前記第1形状と重なる位置に有する、
請求項9から11のいずれか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
干渉顔料で形成されている図柄を有する加飾シート、カバーパネル及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
成形同時加飾に用いられる加飾シートに干渉顔料(または光干渉顔料という場合もある)を使用する技術が、例えば特許文献1(特許第6839319号公報)に開示されている。特許文献1に記載されているように、顔料で反射して得られる干渉光による発色が異なる干渉顔料を用いることで、種々の色を提供することができる。また、発色の異なる干渉顔料を混ぜ合わせることで、さらに異なる色を表現することができる。例えば、赤色に発色する干渉顔料と、青色に発色する干渉顔料とを混ぜ合わせることで、紫色を表現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているように反射光と透過光によって異なる画像を加飾シートで表現する場合、透過光に色がつき難い干渉顔料は、吸収顔料に比べて有利な場合がある。
しかしながら、干渉顔料は、反射光の干渉による発色を用いて色を表現しているため、干渉顔料を見る角度によって色味が変化する場合がある。また、干渉光を使う干渉顔料は、特定波長の光の吸収によって発色する吸収顔料に比べて、干渉顔料で形成された図柄を観る者に、真珠のような光沢感を与える傾向がある。このような干渉顔料特有の発色を積極的に利用することも考えられるが、従来から一般的に使用されている吸収顔料との見え方の差が好ましく思われないケースも存在する。
【0005】
本発明の課題は、加飾シートに干渉顔料を用いて形成されている図柄について干渉顔料特有の発色を抑制することで汎用性を向上させることにある。また、本発明の課題は、そのような加飾シートを適用したカバーパネル及び表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る加飾シートは、図柄層と表側調色層とベースフィルムとを備える。図柄層は、裏面から表面に光を透過できる。図柄層では、表面から入射する光の反射光の干渉で発色する干渉顔料で図柄が形成されている。表側調色層は、図柄層の表面を覆っていて光を透過できる。ベースフィルムは、図柄層及び表側調色層を支持する。表側調色層は、表側調色層の全体に均一に分散されている表側吸収顔料を含み、表側調色層を透過する光から所定範囲の波長のスペクトル成分を表側吸収顔料で減少させる。
このように構成された加飾シートでは、干渉顔料による図柄の真珠のような光沢感のある見え方が表側調色層の吸収顔料によって抑えられる。また、図柄を見る角度によって観る者に与える図柄の色味が変化したという印象を、表側調色層で減少させるスペクトル成分の所定範囲の設定によって緩和することができる。
【0007】
上述の一見地に係る加飾シートは、図柄層の裏面を覆っていて光を透過できる裏側調色層を備え、裏側調色層が、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含み、裏側吸収顔料が、裏側調色層と表側調色層の2層を透過する光を、表側調色層のみを透過する光に比べて無彩色に近づけるような光の吸収特性を持つ、ように構成されてもよい。
このように構成された加飾シートにおいて、図柄層の裏面から表面に向かう透過光が表側調色層によって着色され、光源色またはユーザ所望の色合いでなくなってしまう場合がある。そのような場合に、裏側調色層の裏側吸収顔料により、裏側調色層と表側調色層を透過する光が表側調色層のみを通過する場合に比べて無彩色に近づくように変更することで、表側調色層に起因する好ましくない着色を抑制することができる。
【0008】
上述の一見地に係る加飾シートは、図柄層の裏面を覆っていて光を透過できる裏側調色層を備え、裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含み、表側調色層の色と裏側調色層の色は、互いに補色の関係にある、ように構成されてもよい。
このように構成された加飾シートにおいて、図柄層の裏面から表面に向かう透過光が表側調色層によって着色され、光源色またはユーザ所望の色合いでなくなってしまう場合がある。そのような場合に、裏側調色層と表側調色層を透過する光が無彩色になることで、図柄層の裏面から表面に向かう透過光の好ましくない着色を抑制することができる。
【0009】
上述の一見地に係る加飾シートは、図柄層の裏面を覆っていて光を透過できる裏側調色層を備え、裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含み、裏側吸収顔料は、特定箇所の裏側調色層と図柄層と表側調色層とを透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、0.28≦x≦0.36且つ0.28≦y≦0.36の条件を満たすような光の吸収特性を持つ、ように構成されてもよい。
このように構成された加飾シートにおいて、図柄層の裏面から表面に向かう白色の透過光が表側調色層によって着色され、白色でなくなる場合がある。そのような場合に、裏側吸収顔料により、特定箇所の裏側調色層と図柄層と表側調色層とを透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、0.28≦x≦0.36且つ0.28≦y≦0.36の条件を満たすようになり、裏側調色層と図柄層と表側調色層とを透過する光が白色でない色に着色されるのを抑制することができる。
【0010】
本発明の他の見地に係る加飾シートは、図柄層と裏側調色層とベースフィルムとを備えている。図柄層は、裏面から表面に光を透過できる。図柄層は、表面から入射する光の反射光の干渉で発色する干渉顔料で形成されている。裏側調色層は、図柄層の裏面を覆っていて光を透過できる。ベースフィルムは、図柄層及び裏側調色層を支持する。裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含み、裏側吸収顔料が特定箇所の裏側調色層と図柄層とを透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、0.28≦x≦0.36且つ0.28≦y≦0.36の条件を満たすような光の吸収特性を持つ。
このように構成された加飾シートにおいて、図柄層の裏面から表面に向かう白色の透過光が図柄層の地色によって着色され、白色でなくなる場合がある。そのような場合に、裏側吸収顔料により、特定箇所の裏側調色層と図柄層とを透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、0.28≦x≦0.36且つ0.28≦y≦0.36の条件を満たすようになり、裏側調色層と図柄層を透過する光が白色で色に着色されるのを抑制することができる。
上述の一見地または他の見地に係る加飾シートは、図柄層の裏側に配置され、光が通過する第1形状の開口部を有し、開口部の周囲の光を遮断する遮蔽層を備え、図柄層は、図柄として、第1形状と同じ形状または第1形状と相似形状の第2形状を、第1形状と重なる位置に有する、ように構成されてもよい。
【0011】
本発明の一見地に係るカバーパネルは、図柄層と表側調色層と成形部材とを備える。図柄層は、裏面から表面に光を透過できる。図柄層は、表面から入射する光の反射光の干渉で発色する干渉顔料で図柄が形成されている。表側調色層は、図柄層の表面を覆っていて光を透過できる。成形部材は、図柄層及び表側調色層を支持している。成形部材は、光を透過できる。表側調色層は、当該表側調色層の全体に均一に分散されている表側吸収顔料を含み、当該表側調色層を透過する光から所定範囲の波長のスペクトル成分を表側吸収顔料で減少させる。
このように構成されたカバーパネルでは、干渉顔料による図柄の光沢感のある見え方が表側調色層の吸収顔料によって抑えられる。また、図柄を見る角度によって観る者に与える図柄の色味が変化したという印象を、表側調色層で減少させるスペクトル成分の所定範囲の設定によって緩和することができる。
【0012】
上述の一見地に係るカバーパネルは、図柄層の裏面を覆っていて光を透過できる裏側調色層を備え、裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含み、裏側吸収顔料は、特定箇所の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、0.28≦x≦0.36且つ0.28≦y≦0.36の条件を満たす光の吸収特性を持つ、ように構成されてもよい。
このように構成されたカバーパネルは、図柄層の裏面から表面に向かう白色の透過光が例えば成形部材と裏側調色層と図柄層と表側調色層によって着色され、白色でなくなる場合がある。そのような場合に、裏側吸収顔料により、特定箇所の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、0.28≦x≦0.36且つ0.28≦y≦0.36の条件を満たすようになり、カバーパネルを透過する光が白色でない色に着色されるのを抑制することができる。
【0013】
本発明の他の見地に係るカバーパネルは、図柄層と裏側調色層と成形部材とを備える。図柄層は、裏面から表面に光を透過できる。図柄層は、表面から入射する光の反射光の干渉で発色する干渉顔料で形成されている図柄を有する。裏側調色層は、図柄層の裏面を覆っていて光を透過できる。成形部材は、図柄層及び裏側調色層を支持し、光を透過できる。裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含む。裏側吸収顔料は、特定箇所の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(0.28≦x≦0.36)且つ(0.28≦y≦0.36)の条件を満たす光の吸収特性を持つ。
このように構成されたカバーパネルは、図柄層の裏面から表面に向かう白色の透過光が例えば成形部材と裏側調色層と図柄層とによって着色され、白色でなくなる場合がある。そのような場合に、裏側吸収顔料により、特定箇所の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、0.28≦x≦0.36且つ0.28≦y≦0.36の条件を満たすようになり、カバーパネルを透過する光が白色でない色になるのを抑制することができる。
上述の一見地または他の見地に係るカバーパネルは、図柄層の裏側に配置され、光が通過する第1形状の開口部を有し、開口部の周囲の光を遮断する遮蔽層を備え、図柄層は、図柄として、第1形状と同じ形状または第1形状と相似形状の第2形状を、第1形状と重なる位置に有する、ように構成されてもよい。
【0014】
上述の一見地または他の見地に係るカバーパネルは、図柄層の裏面から表面に光が透過する部分の光の透過率が、10%以上70%以下である、ように構成されてもよい。
このように構成されたカバーパネルは、図柄を観る者に、図柄層を透かして、カバーパネルで覆われた内部構造が見えてしまうのを防止することができる。
【0015】
本発明の第1見地に係る表示装置は、図柄層と表側調色層と裏側調色層と成形部材と光源とを備えている。図柄層は、裏面から表面に光を透過できる。図柄層は、表面から入射する光の反射光の干渉で発色する干渉顔料で図柄が形成されている。表側調色層は、図柄層の表面を覆っていて光を透過できる。裏側調色層は、図柄層の裏面を覆っていて光を透過できる。成形部材は、表側調色層、図柄層及び裏側調色層を支持し、光を透過できる。光源は、成形部材、裏側調色層、図柄層及び表側調色層を透過する光を照射する。表側調色層は、当該表側調色層の全体に均一に分散されている表側吸収顔料を含み、当該表側調色層を透過する光から所定範囲の波長のスペクトル成分を表側吸収顔料で減少させる。裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含む。裏側吸収顔料は、光源の色のxy色度図上の点を(x1,y1)としたときに、特定箇所の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(x1-0.03)≦x≦(x1+0.03)且つ(y1-0.03)≦y≦(y1+0.03)の条件を満たすような光の吸収特性を持つ。
このように構成された表示装置は、図柄層の裏面から表面に向かう透過光が例えば成形部材と裏側調色層と図柄層と表側調色層とによって着色され、光源の光の色からずれたものとなる場合がある。そのような場合に、裏側吸収顔料により、特定箇所の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(x1-0.03)≦x≦(x1+0.03)且つ(y1-0.03)≦y≦(y1+0.03)の条件を満たすようになり、例えば成形部材と裏側調色層と図柄層と表側調色層とを透過する光の色が、光源の光の色からずれるのを抑制することができる。
【0016】
本発明の第2見地に係る表示装置は、図柄層と裏側調色層と成形部材と光源とを備えている。図柄層は、裏面から表面に光を透過できる。図柄層は、表面から入射する光の反射光の干渉で発色する干渉顔料で図柄が形成されている。裏側調色層は、図柄層の裏面を覆っていて光を透過できる。成形部材は、図柄層及び裏側調色層を支持し、光を透過できる。光源は、成形部材、裏側調色層及び図柄層を透過する光を照射する。裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含む。裏側吸収顔料は、光源の色のxy色度図上の点を(x1,y1)としたときに、特定箇所の成形部材と裏側調色層と図柄層とを透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(x1-0.03)≦x≦(x1+0.03)且つ(y1-0.03)≦y≦(y1+0.03)の条件を満たす光の吸収特性を持つ。
このように構成された表示装置は、図柄層の裏面から表面に向かう透過光が例えば成形部材と裏側調色層と図柄層とによって着色され、光源の光の色からずれたものとなる場合がある。そのような場合に、裏側吸収顔料により、特定箇所の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(x1-0.03)≦x≦(x1+0.03)且つ(y1-0.03)≦y≦(y1+0.03)の条件を満たすようになり、例えば成形部材と裏側調色層と図柄層とを透過する光の色が、光源の光の色からずれるのを抑制することができる。
【0017】
本発明の第3見地に係る表示装置は、表側調色層及び裏側調色層のうちの一方と図柄層と成形部材とディスプレイと外枠部材と光学透明接着剤とを備えている。図柄層は、裏面から表面に光を透過できる。図柄層は、表面から入射する光の反射光の干渉で発色する干渉顔料で図柄が形成されている。表側調色層は、図柄層の表面を覆っていて光を透過できる。裏側調色層は、図柄層の裏面を覆っていて光を透過できる。成形部材は、表側調色層及び裏側調色層のうちの少なくとも一方並びに図柄層を支持し、光を透過できる。ディスプレイは、表側調色層及び裏側調色層のうちの少なくとも一方、成形部材並びに図柄層を透過する光を照射する。外枠部材は、ディスプレイと図柄層との間で且つディスプレイの外縁に沿って配置され、光を遮断する。光学透明接着剤は、成形部材とディスプレイの間の空隙を埋める。表側調色層は、当該表側調色層の全体に均一に分散されている表側吸収顔料を含み、当該表側調色層を透過する光から所定範囲の波長のスペクトル成分を表側吸収顔料で減少させる。裏側調色層は、当該裏側調色層の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料を含む。裏側吸収顔料は、光学透明接着剤よりも表側に在る全ての透光部材を透過する透過光を、透光部材のうちの裏側調色層がない場合の透過光に比べて無彩色に近づけるような光の吸収特性を持つ。
このように構成された表示装置は、光学透明接着剤により、成形部材とディスプレイの間に空隙ができないので、成形部材と空気層が接する部分が生じない。図柄層の表面側から入射した光が成形部材と空気層との界面で反射しなくなるので、ディスプレイが光を照射していない状態において、空気層との界面での反射光によって外枠部材の境界が見える現象を軽減することができる。
上述の第1見地、第2見地または第3見地に係る表示装置は、図柄層の裏側に配置され、光が通過する第1形状の開口部を有し、開口部の周囲の光を遮断する遮蔽層を備え、図柄層は、図柄として、第1形状と同じ形状または第1形状と相似形状の第2形状を、第1形状と重なる位置に有する、ように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る加飾シートは、干渉顔料で形成された図柄について干渉顔料特有の発色を抑制することで、加飾シートの汎用性を向上させることができる。また、本発明に係るカバーパネル及び表示装置は、干渉顔料で形成された図柄について干渉顔料特有の発色を抑制した加飾を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】第1実施形態に係るカバーパネルを表側から見た場合の反射光による見え方を説明するための図である。
【
図1B】第1実施形態に係るカバーパネルを表側から見た場合の透過光による見え方を説明するための図である。
【
図2】第1実施形態に係るカバーパネルの構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図3】第1実施形態に係るカバーパネルの構成の他の例を示す模式的な断面図である。
【
図4】図柄を形成している干渉顔料の一例について説明するための模式図である。
【
図5】干渉顔料による見え方の変化を説明するための模式図である。
【
図6】裏側調色層による透過光の色の調整の一例を示すxy色度図である。
【
図7】表側調色層と図柄層と裏側調色層の厚みと透過率と透過色の一例を説明するための図である。
【
図8】裏側調色層による透過光の色の調整の他の例を示すxy色度図である。
【
図9】変形例1Aのカバーパネルの構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図10】変形例1Bのカバーパネルの構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図11】変形例1Cのカバーパネルの構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図12】変形例1Dのカバーパネルの構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図13】変形例1Eのカバーパネルの構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図14】変形例1Fのカバーパネルの構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図15】変形例1Gのカバーパネルの構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図16】変形例1Gのカバーパネルの構成の他の例を示す模式的な断面図である。
【
図17】変形例1Gのカバーパネルの構成の他の例を示す模式的な断面図である。
【
図18】第2実施形態に係る表示装置の反射光による見え方を説明するための斜視図である。
【
図19】第2実施形態に係る表示装置の透過光による見え方を説明するための斜視図である。
【
図20】第2実施形態に係る表示装置の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図21A】表側調色層が設けられていない場合のカバーパネルの図柄部分を正面から見た撮影画像を示す図である。
【
図21B】表側調色層が設けられていない場合のカバーパネルの図柄部分を斜めから見た撮影画像を示す図である。
【
図22A】表側調色層が設けられている場合のカバーパネルの図柄部分を正面から見た撮影画像を示す図である。
【
図22B】表側調色層が設けられている場合のカバーパネルの図柄部分を斜めから見た撮影画像を示す図である。
【
図23A】裏側調色層が設けられている場合のカバーパネルのアイコンの撮影画像を示す図である。
【
図23B】裏側調色層が設けられていない場合のカバーパネルのアイコンの撮影画像を示す図である。
【
図24】変形例1Iに係る表側調色層と図柄層と裏側調色層と遮蔽層の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図25】変形例1Jに係る表側調色層と図柄層と裏側調色層と遮蔽層の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図26】変形例1Kに係る表側調色層と図柄層と裏側調色層と遮蔽層の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図27】変形例1Lに係るカバーパネル10の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図28】変形例1Mに係るカバーパネル10の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図29】変形例1Mに係るカバーパネル10の構成の他の例を示す模式的な断面図である。
【
図30】第3実施形態に係る表側調色層と図柄層と裏側調色層と遮蔽層の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図31】第3実施形態の平面視におけるライン柄と開口部との位置関係を説明するための模式的な平面図である。
【
図32】第3実施形態のライン柄と開口部との位置関係を説明するための模式的な断面図である。
【
図33】第3実施形態の図柄層と遮蔽層の関係を説明するための撮影画像を示す図である。
【
図34】第3実施形態における反射状態と透過状態のカバーパネル10を説明するための撮影画像を示す図である。
【
図35】変形例3Aに係る表側調色層と図柄層と裏側調色層と遮蔽層の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図36】変形例3Bに係る表側調色層と図柄層と裏側調色層と遮蔽層の構成の一例を示す模式的な断面図である。
【
図37】変形例3Bに係る表側調色層と図柄層と裏側調色層と遮蔽層の構成の他の例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
(1)全体構成
図1A及び
図1Bには、第1実施形態に係るカバーパネル10を表側から見た状態が示されている。
図2には、カバーパネル10の断面形状が模式的に示されている。カバーパネル10を観ている者は、カバーパネル10の表面10aの側からカバーパネル10を視認している。
図2に示されているように、カバーパネル10の裏面10bの側には、光源2が配置されている。カバーパネル10と光源2とで表示装置50が構成されている。
図1Aには、光源2が点灯しておらず、カバーパネル10の表面10aからの入射光IL1だけがある状態での、カバーパネル10の見え方が示されている。
図1Bには、光源2が点灯し、カバーパネル10の裏面10bの側から入射光IL2がある状態での、カバーパネル10の見え方が示されている。
図1Aと
図1Bとを比較してわかるように、光源2が点灯していない状態で、カバーパネル10を観ている者には、カバーパネル10の表面10aに木目模様の図柄100のみが見て取れる。光源2が点灯すると、アイコン110が木目模様の図柄100の中に表示される。ここでは、図柄100が木目である場合について説明するが、図柄100は木目には限られない。
【0021】
カバーパネル10は、ハードコート層11と表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14と遮蔽層15と接着層16と成形部材17とを備えている。
アイコン110の表示を可能にするため、ハードコート層11と表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14と接着層16と成形部材17とは、カバーパネル10の裏面10bから入射する入射光IL2を透過できるように構成されている。
図2に示されているカバーパネル10においては、アイコン110の形状が、遮蔽層15によって決まる。遮蔽層15が形成されていない部分の形状がアイコン110の形状になる。例えば、エアコンの運転状態を示す「A/C」のアイコン110は、遮蔽層15に形成された「A」と「/」と「C」の形状の開口によって表示が可能となる。
【0022】
木目模様の図柄100は、図柄層13に形成されている。図柄層13には、図柄100を形成するための干渉顔料21が含まれている。入射光IL1が干渉顔料21で反射されるときに反射光RL1の干渉で発色する。図柄層13に入射した入射光IL1の一部が反射されてカバーパネル10の表面10aの側に出射される。この反射光RL1が、カバーパネル10を観る者に視認され、木目模様の図柄100を表出させる。このように、図柄層13では、図柄層13の表面13aから入射する光の反射光の干渉で発色する干渉顔料21で図柄100が形成されている。このように干渉顔料21で図柄100が形成されている図柄層13であるが、この図柄層13は、図柄層13の裏面13bから表面13aに光を透過できる。
ハードコート層11は、カバーパネル10の表面10a及び裏面10bの両方からの入射光IL1,IL2を透過することのできる材料で構成されている。ハードコート層11は、例えば透明な硬度の高い樹脂からなる。ハードコート層11は、また、図柄層13で反射された反射光RL1も透過する。
【0023】
表側調色層12は、図柄層13の表面13aを覆っている。表側調色層12は、図柄層13の表面13aに入射する入射光IL1、並びに図柄層13から外部に出射される反射光RL1及びカバーパネル10の裏面10bからの入射光IL2を透過できる。表側調色層12は、表側調色層12の全体に均一に分散されている表側吸収顔料22を含んでいる。表側調色層12は、表側調色層12を透過する光から所定範囲の波長のスペクトル成分を表側吸収顔料22で減少させる。表側吸収顔料22を透過する際に、カバーパネル10の表面10aの側からの入射光IL1、裏面10bの側からの入射光IL2及び反射光RL1に、所定範囲の波長のスペクトル成分の減少が生じる。言い換えると、表側吸収顔料22は、表側調色層12を透過する光から所定範囲の波長のスペクトル成分を減少させる光吸収特性を有する吸収顔料である。例えば、黄色の表側吸収顔料22は、黄色のスペクトル成分の波長以外の所定範囲の波長を持つスペクトル成分を減少させる。
【0024】
裏側調色層14は、図柄層13の裏面13bを覆っている。裏側調色層14は、図柄層13の表面13aに入射する入射光IL1及びカバーパネル10の裏面10bからの入射光IL2を透過できる。図柄層13の表面13aに入射する入射光IL1の一部が干渉顔料21で反射されるが、入射光IL1のうちの干渉顔料21で反射されなかった光が裏側調色層14を透過する。裏側調色層14は、裏側調色層14の全体に均一に分散されている裏側吸収顔料23を含んでいる。裏側吸収顔料23は、裏側調色層14と表側調色層12の2層を透過する光を、表側調色層12のみを透過する光に比べて無彩色に近づけるような光の吸収特性を持つ吸収顔料である。
ここで、「無彩色に近づく」とは、CIE1931のxy色度図において、白色点からの距離が小さくなることを意味する。言い換えると、「無彩色に近づく」とは、xy色度図の白色点に近づくような色度と彩度の変更ができれば、明度が低下することは許容するということである。ここでXY色度図の白色点は、D65を基準に考える。白色点は、CIE1964 10°測色標準観察者において、X=0.31382、y=0.33100であり、CIE1931色空間の色度座標において、x=0.31271、y=0.32902である。
【0025】
遮蔽層15は、所定箇所の透過光を遮断する層である。遮蔽層15は、図柄層13よりも、さらには裏側調色層14よりもカバーパネル10の裏面10bに近い所に配置される。遮蔽層15の所定箇所以外の部分が開口部15aである。開口部15aは、光を通過させる部分である。開口部15aによって、アイコン110が表示される。
【0026】
接着層16は、遮蔽層15の裏面に設けられ、可視光を透過する。接着層16は、遮蔽層15及び成形部材17を接着している。成形部材17は、光を透過できる部材で構成されている。光を透過できる部材には、例えば、ガラス、光透過性の樹脂がある。光透過性の樹脂には、例えば、光透過性の熱可塑性樹脂及び光透過性の熱硬化性樹脂がある。成形部材17は、所望の形状に加工された部材である。
図1A、
図1B及び
図2に示されている成形部材17は、カバーパネル10の形状を形作っている。カバーパネル10が例えば板状であれば、成形部材17は板状である。この成形部材17によって、ハードコート層11、表側調色層12、図柄層13、裏側調色層14、遮蔽層15及び接着層16を支持している。ここでは、カバーパネル10の形状が平面形状である場合について説明するが、カバーパネル10の形状は立体的であってもよい。カバーパネル10は、例えば、断面の形状が円弧状に湾曲しているものであってもよい。
【0027】
カバーパネル10は、例えば、成形部材17の射出成形と同時に、成形部材17に転写して製造される。あるいは、カバーパネル10は、
図3に示されているカバーパネル10のように、成形部材17の射出成形と同時に、加飾シート8が成形部材17に接着されて製造されてもよい。あるいは、成形部材17がガラス製であってもよい。ガラス製の成形部材17に対しては、成形部材17の成形後に接着剤で加飾シート8を貼り付けることで、カバーパネル10が製造される。例えば、成形部材17が樹脂である場合には、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形あるいは圧縮成形で形成されてもよく、機械加工により成形されてもよい。
加飾シート8は、ハードコート層11、ベースフィルム18、表側調色層12、図柄層13、裏側調色層14、遮蔽層15及び接着層16を備えている。ベースフィルム18は、可視光を透過するフィルムである。ここでは、ベースフィルム18が透明である場合について説明するが、ベースフィルム18は半透明であってもよい。ベースフィルム18は、例えば樹脂からなるフィルムである。ベースフィルム18は、例えば、ハードコート層11と表側調色層12との間に設けられる。加飾シート8では、ベースフィルム18が、ハードコート層11、表側調色層12、図柄層13、裏側調色層14、遮蔽層15及び接着層16を支えている。
【0028】
(2)詳細構成
(2-1)ハードコート層11
ハードコート層11は、ベースフィルム18または樹脂製の成形部材17よりも高度の高い保護層である。ハードコート層11の材質としては、例えば、ポリエステルアクリレート及びウレタンアクリレートなどのUV硬化性、電離放射線硬化性樹脂、あるいはアクリル系及びウレタン系などの熱硬化性樹脂が挙げられる。ハードコート層は、JISK5600-5-4に準拠した鉛筆硬度試験(荷重750g)においてHB以上の硬度を示すように形成されることが好ましい。
【0029】
(2-2)図柄層13
図柄層13の図柄100は、反射光RL1の干渉で発色する干渉顔料21で形成されている。
図4には、干渉顔料21の粒子の断面構造の一例が模式的に示されている。干渉顔料21は、例えば、コア部201と、コア部201を覆う薄いシェル部202を有している。コア部201とシェル部202は、いずれも可視光を透過する。コア部201とシェル部202は、屈折率の異なる材料で構成されている。例えば、コア部201の屈折率がシェル部202の屈折率より小さい。矢印Ar2,Ar3が干渉顔料21のシェル部202に入射した入射光である。矢印Ar3で示された入射光の一部は、シェル部202の中を進んでコア部201で反射して矢印Ar31で示された反射光になる。また、矢印Ar2で示された入射光の一部がシェル部202の表面で反射して、矢印Ar21で示された反射光になる。矢印Ar21で示された反射光と矢印Ar31で示された反射光とが干渉して強め合うことで、特定の波長の干渉光が強く視認される。矢印Ar21で示された反射光と矢印Ar31で示された反射光が、例えば、
図2及び
図3に示されている反射光RL1である。
例えば、シェル部202の厚みを調節するなどして干渉で強められる波長が青色の波長になるようにすれば、青色の干渉顔料が得られる。
干渉顔料21には、光源2から照射された可視光も入射する。
図4の矢印Ar4で示されている干渉顔料21に入射する光が、入射光IL2である。矢印Ar4で示された可視光は、干渉顔料21に入射して干渉顔料21を透過し、干渉顔料21の反対に抜ける。この干渉顔料21を透過した可視光が、矢印Ar41で示された透過光である。矢印Ar41で示された透過光は、アイコン110の表示に寄与する。
なお、図柄層13は、裏面10bから入射する入射光IL2を透過するが、図柄層13の裏面13bから表面13aに光が透過する部分のカバーパネル10の光の透過率は、10%以上50%以下に設定されている。第1実施形態では、図柄層13の裏面13bから表面13aに光が透過する部分がアイコン110の配置されている部分になる。アイコン110が配置されている箇所の透過率がこのように設定されることで、カバーパネル10を透かして、カバーパネル10で覆われている部分が見えるのを防いでいる。ここで示したカバーパネル10のアイコン110が小さいので、アイコン110を透かして内部が見えても目立たないが、カバーパネル10を透過する透過光によって表示する部分が大きい場合もあり、そのような場合には、カバーパネル10で覆われている部分の中身を見せないために、図柄層13の裏面13bから表面13aに光が透過する部分のカバーパネル10の光の透過率が特に重要になる。
【0030】
図5に示されているように、干渉顔料21に当たる入射光IL1と反射光RL1の反射角が入射光IL1wと反射光RL1wの反射角と異なると、光の経路が異なるので、干渉光の色も変化する。また、入射光IL1と反射光RL1の反射角が、入射光IL1wと反射光RL1wの反射角と異なると、反射率も異なるので、干渉光に含まれるスペクトル成分の大きさも変化する。また、前述の反射角が異なると、干渉光に含まれる周波数ごとのスペクトル成分の割合も変化する。
例えば、入射光IL1と反射光RL1の反射角に比べて、入射光IL1wと反射光RL1wの反射角が大きいので、反射光RL1wは、反射光RL1に比べて強くなる。また、反射光RL1wは、反射光RL1と比べると、含まれているスペクトル成分の大きさが周波数ごとに異なるので、色味が異なる。
【0031】
(2-3)表側調色層12
表側調色層12は、透明なバインダー樹脂に、表側吸収顔料22が均一に分散された層である。表側調色層12の厚みは、例えば、0.5μm~5μmである。表側吸収顔料22は、表側調色層12を透過する入射光IL1,IL1w及び反射光RL1,RL1wから所定範囲の波長のスペクトル成分を減少させる。
入射光IL1と反射光RL1の反射角に比べて入射光IL1wと反射光RL1wの反射角が大きいので、入射光IL1及び反射光RL1が表側調色層12の中を進む距離に比べて入射光IL1w及び反射光RL1wが表側調色層12の中を進む距離が長くなる。干渉顔料21によって反射光RL1よりも反射光RL1wが強められるが、表側吸収顔料22が、表側調色層12の中で長い距離を進む反射光RL1wから所定範囲の波長のスペクトル成分を大きく減少させることができる。反射光RL1よりも反射光RL1wが強められるのを、表側吸収顔料22によって緩和することができる。
入射光IL1,IL1wと反射光RL1,RL1wの反射角の違いによって生じる色味の変化も、表側吸収顔料22が減少させるスペクトル成分の所定範囲の波長を適切に設定することで緩和することができる。例えば、反射光RL1に比べて反射光RL1の茶色のスペクトル成分が薄くなったと感じる場合には、表側吸収顔料22の所定範囲を、茶色のスペクトル成分以外の範囲に設定する。そのような設定をすれば、干渉顔料21の色が入射光IL1,IL1wと反射光RL1,RL1wの反射角の違いによって、反射光RL1wの茶色が薄くなったと感じるのを緩和することができる。この場合、反射光RL1よりも反射光RL1wの方が表側調色層12の中で長い距離を進むので、反射光RL1wの所定範囲の波長のスペクトル成分を大きく減少させることができ、反射光RL1wの所定範囲外の茶色のスペクトル成分の割合を大きくし易くなる。それにより、カバーパネル10を観る者が反射光RL1wで茶色が薄くなったと感じるのを緩和することができる。
【0032】
(2-4)裏側調色層14
裏側調色層14は、透明なバインダー樹脂に、裏側吸収顔料23が均一に分散された層である。裏側調色層14の厚みは、例えば、0.5μm~5μmである。裏側吸収顔料23は、裏側調色層14を透過する入射光IL2から、表側吸収顔料22とは異なる範囲の波長のスペクトル成分を減少させる。表側調色層12の透過率は、図柄層13の図柄100を見易くするために、裏側調色層14の光の透過率よりも高いことが好ましい。
表側吸収顔料22によって、光源2からの入射光IL2が着色される。そこで、裏側吸収顔料23が減少させるスペクトル成分を調整することで、表側吸収顔料22による入射光IL2に対する着色を緩和する。言い換えると、表側吸収顔料22によってアイコン110の色が好ましくない色に変化するのを、裏側吸収顔料23の吸収特性を適切なものとすることによって緩和する。
【0033】
(2-4-1)無彩色に近づける場合
裏側吸収顔料23には、裏側調色層14と表側調色層12の2層を透過する光を、表側調色層12のみを透過する光に比べて無彩色に近づけるような光の吸収特性を持っている顔料を用いることができる。
図6のCIE1931のxy色度図において、表側調色層12のみを透過した光の色が「*」で、裏側調色層14のみを透過した光の色が「△」で、表側調色層12と裏側調色層14を透過した光の色が「□」で示されている。換言すれば、「□」は、表側調色層12と裏側調色層14の重なりの色を示しているということである。表側調色層12も裏側調色層14も通過しなかった光の色(白色)が「〇」で示されている。ここでは、光源2の照射光(光源色)は、白色である。言い換えると、CIE1931のxy色度図において、「〇」で示されている点が白色点である。
表側調色層12のみであれば、「*」の位置にずれる透過光の色を、裏側調色層14を加えることで、「□」の位置の色に調整し、「〇」で示されている白色に一致させるかまたは白色に近づけている。
例えば、「◆」で示されている光の色は、裏側吸収顔料23を
図6の裏側吸収顔料23とは異なる色に変更した場合の、表側調色層12と裏側調色層14を透過した光の色である。「◆」で示されている光の色は、「□」で示されている光の色に比べると、「〇」で示されている点(白色点)からは遠いが、「*」で示されている光の色に比べると白色点に近い。従って、表側調色層12と裏側調色層14を透過した光の色が「◆」で示されている光の色になる場合でも、無彩色に近づいているということになる。
また、裏側吸収顔料23には、裏側調色層14と図柄層13と表側調色層12の3層を透過する光を、図柄層13と表側調色層12を透過する光に比べて無彩色に近づけるような光の吸収特性を持っている顔料を用いることができる。この場合には、図柄層13と表側調色層12により着色されるカバーパネル10の裏面10bからの入射光IL2の色を適切な色に向けて、裏側調色層14で調整することができる。
【0034】
(2-4-2)表側調色層12と裏側調色層14の色が補色の場合
表側調色層12の色と裏側調色層14の色が、互いに補色の関係を有するように構成してもよい。ここで、補色とは、色相環で正反対に位置する関係の色の組合せのことをいう。表側調色層12の色と裏側調色層14の色が互いに補色の関係の場合、表側調色層12と裏側調色層14によって無彩色を作れるので、表側調色層12によって着色されるのを抑制することができる。あるいは、表側吸収顔料22の色と裏側吸収顔料23の色が、互いに補色の関係を有するように構成してもよい。表側吸収顔料22と裏側吸収顔料23の色が互いに補色の関係の場合、表側吸収顔料22と裏側吸収顔料23によって無彩色を作れるので、表側調色層12によって着色されるのを抑制することができる。
(2-4-3)xy色度図上の点(x,y)が所定条件を満たす場合
裏側吸収顔料23に、アイコン110のカバーパネル10の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、0.28≦x≦0.36且つ0.28≦y≦0.36の条件を満たすような光の吸収特性を持つ吸収顔料を用いてもよい。アイコン110の在る箇所が、光の色を調整すべき特定箇所である。この場合には、このように裏側調色層14が構成された場合、アイコン110の色が成形部材17からハードコート層11までの裏側調色層14以外の部分によって着色されて白色とは異なる色味になるのを防ぐことができる。言い換えると、このように裏側調色層14が構成された場合、アイコン110の色を白色に調整することができる。
あるいは、この場合、裏側吸収顔料23として、光源2の色のxy色度図上の点を(x1,y1)としたときに、カバーパネル10のアイコン110の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(x1-0.03)≦x≦(x1+0.03)且つ(y1-0.03)≦y≦(y1+0.03)の条件を満たすような光の吸収特性を持つ吸収顔料を用いる。このような吸収特性を持つ裏側吸収顔料23を用いることで、カバーパネル10の裏面10bから表面10aへ透過する入射光IL2の色を、光源2の色に近づけるように調整することができる。
例えば、
図7に示されているように、表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14とを設定することにより、光源2の色のxy色度図上の点(x1,y1)=(0.314,0.331)に対して、表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14の重なった部分を透過した光の色(0.312,0.329)が、(x1-0.03)≦0.312≦(x1+0.03)、(y1-0.03)≦0.329≦(y1+0.03)の条件を満たすものとなっている。
図7のように表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14とを設定し且つ、ハードコート層11及び成形部材17を透過するときに光源2の色がほとんど変化しなければ、アイコン110は、光源2の色に非常に近い色で表示することができるということである。
例えば、
図8に示されているように、光源2の色が薄い緑色である場合、光源色の薄い緑色から表側調色層12で着色されて「*」の位置にずれたとする。
図8において、「●」は、光源2から照射される光の色である光源色を示している。表側調色層12と図柄層13を透過することで、表側調色層12だけであれば「*」の位置にずれる透過光の色を、「△」の色の裏側調色層14で調整することにより、光源2の本来の薄い緑色に戻すことができる。
なお、
図8では、光源色が白色でない場合について説明したが、光源色は白色であってもよい。
【0035】
(2-5)遮蔽層15
遮蔽層15は、所定箇所の光の透過率が低くなっている。遮蔽層15は、例えば、所定箇所の光の透過率が0に近く、黒色である。遮蔽層15は、例えば黒色の吸収顔料を樹脂に分散したインキを印刷して形成される。アイコン110を表現するための開口部15aは、例えばインキによる印刷がされなかった箇所である。
(2-6)接着層16
接着層16は、加飾シート8を成形部材17に接着するための層を、またはハードコート層11と表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14と遮蔽層15を含む転写層を、成形部材17に接着するための層である。接着層16は、可視光を透過することができる。接着層16は、例えば1μm~50μmの範囲内で厚みが設定される。接着層16は、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、又は塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を主材として形成される。副材として、例えば接着力を向上させるための高分子材料が含まれてもよい。
(2-7)ベースフィルム18
ベースフィルム18の厚みは、例えば、10μmから1000μmまでの範囲の中から選定される。ベースフィルム18には、例えば、光透過性の樹脂、光透過性のエラストマーのうちの少なくとも一方が用いられる。樹脂製のベースフィルム18は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、スチレン樹脂若しくはABS樹脂からなる樹脂フィルム、アクリル樹脂とABS樹脂の多層フィルム、またはアクリル樹脂とポリカーボネート樹脂の多層フィルムから選択される。また、ベースフィルム18に用いられるエラストマーとしては、例えば、熱可塑性エラストマー(TPE)を用いることができる。熱可塑性エラストマーには、例えば、アミド系TPE(TPA)、エステル系TPE(TPC)、オレフィン系TPE(TPO)、スチレン系TPE(TPS)、ウレタン系TPE(TPU)がある。なお、ベースフィルム18は、樹脂フィルムとエラストマーフィルムとを積層したフィルムであってもよい。
なお、ベースフィルム19は、光透過性を有していなくてもよいが、例えば、ベースフィルム18と同じものを用いることができる。
【0036】
(3)変形例
(3-1)変形例1A
上記第1実施形態では、
図3に示されている加飾シート8は、インサート成形に用いられる。それに対し、
図9に示されている加飾シート9は、
図1に示されているカバーパネル10の射出成形と同時に、ハードコート層11と表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14と遮蔽層15と接着層16とを転写する加飾シートである。ハードコート層11と表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14と遮蔽層15と接着層16は、加飾シート9の転写層に含まれる。加飾シート9は、ハードコート層11の側にベースフィルム19を備えている。加飾シート9のベースフィルム19は、カバーパネル10を構成する部材としては残らず、カバーパネル10の使用時には剥離される。そのため、加飾シート9のベースフィルム19は、光を透過しないものであってもよい。
図9には記載されていないが、ハードコート層11とベースフィルム19の間には、離型層が設けられてもよい。
(3-2)変形例1B
上記第1実施形態では、図柄層13の裏面10bの側に、裏側調色層14が設けられる場合について説明した。しかし、
図10に示されているように、裏側調色層14を設けない加飾シート8及びカバーパネル10を提供することもできる。この場合、裏側調色層14を設けることによる効果を奏することはないが、第1実施形態と同様に表側調色層12を設けることによる効果を奏することができる。
裏側調色層14を設けないカバーパネル10は、例えば、加飾シート9から裏側調色層14を省いた加飾シートを用い、従来からある成形同時加飾の製造方法によって製造することもできる。この場合のカバーパネル10は、ハードコート層11と表側調色層12と図柄層13と遮蔽層15と接着層16を含む転写層が成形部材17に転写されることにより製造される。
【0037】
(3-3)変形例1C
上記第1実施形態では、図柄層13の表面10aの側に、表側調色層12が設けられる場合について説明した。しかし、
図11に示されているように、表側調色層12を設けないような加飾シート8及びカバーパネル10を提供することもできる。この場合、表側調色層12によって生じる効果を奏することはないが、裏側調色層14によって、図柄層13の裏面10bから入射する入射光IL2の色の調整を行うことができる。この場合、裏側吸収顔料23として、カバーパネル10のアイコン110の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(0.28≦x≦0.36)且つ(0.280≦y≦0.36)の条件を満たす光の吸収特性を持つ吸収顔料を用いる。このような吸収特性を持つ裏側吸収顔料23を用いることで、カバーパネル10の裏面10bから表面10aへ透過する入射光IL2の色を、白色に調整することができる。なお、特定箇所の例として、アイコン110の表示箇所を示したが、特定箇所はアイコン110の表示箇所には限られない。
あるいは、裏側吸収顔料23として、アイコン110の表示箇所の加飾シート8の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(0.28≦x≦0.36)且つ(0.28≦y≦0.36)の条件を満たす光の吸収特性を持つ吸収顔料を用いる。このような吸収特性を持つ裏側吸収顔料23を用いることで、加飾シート8を透過する入射光IL2の色を、白色に調整することができる。
あるいは、この場合、裏側吸収顔料23として、光源2の色のxy色度図上の点を(x1,y1)としたときに、カバーパネル10のアイコン110の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(x1-0.03)≦x≦(x1+0.03)且つ(y1-0.03)≦y≦(y1+0.03)の条件を満たすような光の吸収特性を持つ吸収顔料を用いる。このような吸収特性を持つ裏側吸収顔料23を用いることで、カバーパネル10の裏面10bから表面10aへ透過する入射光IL2の色を、光源2の色に近づけるように調整することができる。
あるいは、この場合、裏側吸収顔料23として、光源2の色のxy色度図上の点を(x1,y1)としたときに、加飾シート8のアイコン110の表側に透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(x1-0.03)≦x≦(x1+0.03)且つ(y1-0.03)≦y≦(y1+0.03)の条件を満たすような光の吸収特性を持つ吸収顔料を用いる。このような吸収特性を持つ裏側吸収顔料23を用いることで、加飾シート8の裏側から加飾シート8を透過する入射光IL2の色を、光源2の色に近づけるように調整することができる。
なお、転写によってカバーパネル10を製造するための加飾シート9及び、転写によって製造されるカバーパネル10についても、裏側吸収顔料23の光の吸収特性を調整することで、アイコン110の色を白色に調整したり、光源色に近づけたりすることができる。
【0038】
(3-4)変形例1D
図3に示されているカバーパネル10及び加飾シート8は、図柄層13の裏面13bの側にさらに
図12に示されているメタリック層30を備えてもよい。同様に、
図1に示されているカバーパネル10及び
図9に示されている加飾シート9は、図柄層13の裏面13bの側にさらにメタリック層を備えてもよい。メタリック層30は、図柄層13の表面13aから入射する入射光IL1を比較的多く反射する層であって且つ図柄層13の裏面10bから入射する入射光IL2の一部を透過することのできる層である。メタリック層30の厚みは、例えば、0.5μm~5μmである。メタリック層30は、表側吸収顔料22及び裏側吸収顔料23に比べて光の吸収が少ない吸収顔料を含む。メタリック層30は、例えば、透明なバインダー樹脂に金属粉が均一に分散したインキを印刷することで形成される。メタリック層30を設けることにより、メタリック層30を設けない場合に比べて、カバーパネル10の表面10aに多くの光が反射され、図柄層13の図柄100を明るく見せることができる。言い換えると、メタリック層30を設けることにより、図柄100の明度を上げることができる。
なお、メタリック層30を設ける場合には、メタリック層30も含めて、裏側調色層14により、入射光IL2が透過した後の透過光の色(ここでは、アイコン110の色)を調整することが好ましい。
(3-5)変形例1E
変形例1Dでは、加飾シート8,9または
図1もしくは
図3に示されているカバーパネル10にさらにメタリック層30を追加する場合について説明した。このメタリック層30を追加する構成は、表側調色層12が設けられていない
図11の加飾シート8及びカバーパネル10に、
図13に示されているようにメタリック層30を追加する構成であってもよい。また、加飾シート9または
図1に示されているカバーパネル10から表側調色層12を取り除いてメタリック層30を追加してもよい。このように構成された加飾シート及びカバーパネルにおいても、変形例1Dと同様に、図柄100の明度を上げることができる。
なお、メタリック層30を設ける場合には、メタリック層30も含めて、裏側調色層14により、入射光IL2が透過した後の透過光の色(ここでは、アイコン110の色)を調整することが好ましい。
(3-6)変形例1F
変形例1Dでは、加飾シート8,9または
図1もしくは
図3に示されているカバーパネル10にさらにメタリック層30を追加する場合について説明した。このメタリック層30を追加する構成は、裏側調色層14が設けられていない
図10の加飾シート8及びカバーパネル10に、
図14に示されているようにメタリック層30を追加する構成であってもよい。また、加飾シート9または
図1に示されているカバーパネル10から裏側調色層14を取り除いてメタリック層30を追加してもよい。このように構成された加飾シート及びカバーパネルにおいても、変形例1Dと同様に、図柄100の明度を上げることができる。
【0039】
(3-7)変形例1G
変形例1D、変形例1E及び変形例1Fでは、メタリック層30を図柄層13の裏面13bの側に配置する場合について説明した。このメタリック層30は、
図15、
図16及び
図17に示されているように、図柄層13の表面13aの側に設けられてもよい。メタリック層30を図柄層13の表面13aの側に設ける場合には、図柄100に視覚的に金属感を付与することができる。
(3-8)変形例1H
上記実施形態では、アイコン110を表示するために、加飾シート8,9に遮蔽層15を用いる場合について説明した。しかし、本発明の加飾シートは、遮蔽層15を有しないものであってもよい。例えば、表示装置がモニターなどの表示画面を有する場合に、そのような表示装置を形成するための加飾シート及びカバーパネルには遮蔽層を設けないものを用いることができる。
(3-9)変形例1I
上記実施形態では、図柄層13が1層である場合について説明したが、図柄層13は、複数層であってもよい。
図24には、図柄層13が3層であるの場合が示されている。図柄層の層数は、1層及び3層に限られるものではなく、2層であってもよく、4層以上であってもよい。
なお、
図24では、複数層の図柄層13に対して、表側調色層12と裏側調色層14の両方を設ける場合について説明したが、複数層の図柄層13に対して、表側調色層12と裏側調色層14のうちのいずれか一方のみを設けてもよい。
また、
図24には、裏側に遮蔽層15が配置されている例が示されている。しかし、複数の図柄層13を用いる場合に、遮蔽層15を設けないような構成とすることもできる。また、
図24の図柄層13は、干渉顔料が全体に均一に分散した無模様一色の層であってもよい。
【0040】
(3-10)変形例1J
上記の変形例1Iでは、3層の図柄層13を、表側調色層12と裏側調色層14で挟む場合について説明した。言い換えると、変形例1Iは、表側調色層12と裏側調色層14の間に、3層の図柄層13を配置する例を示している。しかし、図柄層13を複数設ける場合には、表側調色層12及び裏側調色層14のうちの少なくとも一方を、複数の図柄層13の間に挟んでもよい。
図25には、表側調色層12が3層の図柄層13の間に配置されている例が示されている。
図25の表側調色層12と裏側調色層14との間には、2層の図柄層13が配置されている。
図25の表側調色層12のさらに表側に、1層の図柄層13が配置されている。
図25のように配置された場合、裏側調色層14は、3層の図柄層13に対して裏側調色層としての機能を発揮する。
図25の配置では、表側調色層12は、2層の図柄層13に対しては表側調色層としての機能を発揮し、最も表側に配置された図柄層13に対しては裏側調色層とみなされる機能を発揮する。
図25の表側調色層12は、表側調色層と裏側調色層の機能を発揮する中間調色層と言い換えることができる。
図25では、複数の図柄層13の間に、表側調色層12を配置する場合について説明したが、表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14の積層構造についての最も表側の位置に表側調色層12を配置し、複数の図柄層13の間に裏側調色層14を配置してもよい。また、表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14の積層構造についての最も表側に表側調色層12を配置せず、且つ積層構造の最も裏側に裏側調色層14を配置せず、複数の図柄層13の間にのみ表側調色層12及び裏側調色層14のうちの少なくとも一方を配置してもよい。
複数の図柄層13の間に吸収顔料が全体に均一に分散された調色層について、本発明においては、その調色層が表側調色層12か、裏側調色層14かの区別を次のように行うものとする。表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14の積層構造についての最も表側に表側調色層12が存在する場合には、複数の図柄層13の間に挟まれた調色層は裏側調色層14と見なす。表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14の積層構造についての最も裏側に裏側調色層14が存在する場合には、複数の図柄層13の間に挟まれた調色層は表側調色層12と見なす。
複数の図柄層13の間に挟まれた調色層しか存在しない場合には、次のように区別する。調色層の表側に配置されている図柄層13の層数が、調色層の裏側に配置されている層数よりも少ない場合には、表側調色層12と見なす。調色層の表側に配置されている図柄層13の層数が、調色層の裏側に配置されている層数よりも多い場合には、裏側調色層14と見なす。調色層の表側に配置されている図柄層13の層数と、調色層の裏側に配置されている層数とが同数の場合には、複数の図柄層の間に配置された調色層を表側調色層12と裏側調色層14の何れと見なしてもよい。
なお、
図25には、裏側に遮蔽層15が配置されている例が示されている。しかし、
図25のような構成を形成する場合に、遮蔽層15を設けないような構成とすることもできる。また、
図25の図柄層13は、干渉顔料が全体に均一に分散した無模様一色の層であってもよい。
【0041】
(3-11)変形例1K
上記実施形態では、遮蔽層15が、表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14の積層構造に対して、表側調色層12と図柄層13の積層構造に対して、または図柄層13と裏側調色層14の積層構造に対して、裏側のみに配置される場合について説明した。しかし、遮蔽層15は、
図26に示されているように、表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14の積層構造に対して、表側と裏側の両側に配置されてもよい。また、表側調色層12と図柄層13の積層構造に対して、または図柄層13と裏側調色層14の積層構造に対して、遮蔽層15が表側と裏側の両側に配置されてもよい。
また、遮蔽層15が、表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14の積層構造に対して、表側調色層12と図柄層13の積層構造に対して、または図柄層13と裏側調色層14の積層構造に対して、表側のみに配置されてもよい。
なお、
図26の図柄層13は、干渉顔料が全体に均一に分散した無模様一色の層であってもよい。
(3-12)変形例1L
上記第1実施形態では、ベースフィルム18が表側調色層12の表側に配置されている場合について説明した。しかし、ベースフィルム18の配置位置は、表側調色層12の表側には限られない。
図27に示されているように、裏側調色層14の裏側にベースフィルム18を配置してもよい。また、
図27に示されているように、遮蔽層15は、裏側調色層14の裏側にベースフィルム18のさらに裏側に配置されてもよい。さらに、
図27に示されているカバーパネル10の透明なまたは半透明の成形部材17は、加飾シート8の遮蔽層15の裏側に形成されている。
【0042】
(3-13)変形例1M
上記第1実施形態では、遮蔽層15が加飾シート8,9に形成されている場合について説明した。しかし、遮蔽層15は、加飾シート8,9以外の部材に形成されてもよい。
図28に示されているカバーパネル10においては、成形部材17の裏側に遮蔽層15が形成されている。成形部材17の表側に、裏側調色層14が形成され、裏側調色層14の表側に図柄層13が形成され、図柄層13の表側に表側調色層12が形成されている。
図28のようなカバーパネル10は、裏側に遮蔽層15を印刷した透明な成形部材17の表面に、表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14を転写することで形成することができる。
なお、
図28には、表側調色層12と裏側調色層14の両方が形成されているカバーパネル10の例が記載されているが、表側調色層12と裏側調色層14のうちのいずれか一方のみが形成されていてもよい。また、
図28には、図柄層13が1層のみのカバーパネル10が記載されているが、
図28のような構成において図柄層13を複数層としてもよい。
また、
図29に示されているように、透明なまたは半透明な成形部材17の表側に、裏側調色層14、図柄層13及び表側調色層12が配置されている。このような構成は、例えば、裏側調色層14、図柄層13及び表側調色層12を成形部材17に転写して形成することができる。裏側調色層14、図柄層13及び表側調色層12が形成された成形部材17に、遮蔽層15が形成されたベースフィルム18を貼合することで、
図29のカバーパネル10を形成することができる。ベースフィルム18には、例えば、センサなどの機能を付与してもよい。
【0043】
<第2実施形態>
(4)全体構成
上述の第1実施形態では、本発明がカバーパネル10に適用される場合を中心に説明した。
第2実施形態では、本発明が、
図18、
図19及び
図20に示されているような表示装置50に適用される場合について説明する。
表示装置50には、アイコン110だけでなく、表示画面55が設けられている。
図18及び
図19では、説明のために、表示装置50を、遮蔽層15と裏側調色層14との界面で分離した状態が示されている。
表示装置50は、ハードコート層11と表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14と遮蔽層15と接着層16と成形部材17と光学透明接着剤52とディスプレイ51とを備えている。ディスプレイ51は、画像を映し出すために光を照射することができる。ハードコート層11と表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14と遮蔽層15と接着層16と成形部材17については、第1実施形態のカバーパネル10と同様に構成できるので、ここでは説明を省略する。ただし、遮蔽層15には、アイコン110を表示するための開口部15aだけでなく、中央部に表示画面55を表示するための開口部15bが形成されている。成形部材17は、例えば、透明な樹脂製の板または透明なガラスの板である。成形部材17がガラスの板の場合には、ハードコート層11と表側調色層12と図柄層13と裏側調色層14と遮蔽層15と接着層16は、例えば印刷によって形成される。表示装置50では、遮蔽層15がディスプレイ51の外縁に沿って配置され、光を遮断する外枠部材として機能している。なお、ここでは、遮蔽層15を外枠部材として用いているが、遮蔽層15以外の構成を外部部材としてもよい。例えば、遮光性の樹脂製の薄板を外枠部材として用いることもできる。
表示装置50のディスプレイ51がOFF状態のときには、表示装置50の表側に、木目模様の図柄100が表示されている。ディスプレイ51がOFF状態でディスプレイ51から光が照射されていない場合には、
図18に示されているように表示画面55及びアイコン110は表示されない。表示装置50のディスプレイ51がON状態になり、表示画面55及びアイコン110が表示される。
【0044】
成形部材17とディスプレイ51との間は、光学透明接着剤52で埋められている。係る構成により、成形部材17とディスプレイ51との間には空気層が存在しない。成形部材17とディスプレイ51との間に空気層が存在すると、屈折率の差の大きな成形部材17と空気層との境界で反射が起きる。成形部材17と空気層との境界で反射が起きると、表示画面55が反射光によって浮かび上がり、表示装置50の図柄100の価値を下げることになる場合がある。そこで、成形部材17とディスプレイ51との間に光学透明接着剤52を挿入して、成形部材17が空気層に対向しないようにする。このように光学透明接着剤52で成形部材17とディスプレイ51との間の空間を埋めることで、表示画面55が存在する部分と表示画面55が存在しない外枠部材の部分(遮蔽層15の光を遮断する部分)との見え方の差を軽減することができる。
ここで、光学透明接着剤は透明性に優れた接着剤または透明性に優れた粘着剤であり、光学透明接着剤の概念には、例えば、OCA(Optical Clear Adhesive)及びOCR(Optical Clear Resin)が含まれる。
なお、第2実施形態の表示装置50について、第1実施形態及び変形例1A~1Gと同様に、表側調色層12及び裏側調色層14によって、反射光RL1,RL2及び入射光IL2が表示装置50の表側に透過したときの色を調整することができ、またメタリック層30を追加してもよい。
【0045】
<第3実施形態>
(5)全体構成
上述の第1実施形態では、遮蔽層15を光が通過するための開口部15aが、図柄層13の図柄の形状と無関係な場合について説明した。しかし、開口部と同じかまたは相似の形状であって開口部と重なる図柄を図柄層が有するように構成してもよい。つまり、第1実施形態及び第2実施形態で説明した加飾シート8,9、カバーパネル10、及び表示装置50に、第3実施形態の構成を適用することができる。
図30及び
図31には、線状の開口部15aを有する遮蔽層15が示されている。
図30及び
図31に示されている線状の開口部15aと同じ形状のライン柄13cが形成されている。つまり、開口部15aの形状である第1形状は、ライン柄13cの形状である第2形状と同一または相似の形状である。
図31に示されているように、平面視において、ライン柄13cの両側には木目柄13dが形成されている。ここでは、第1形状及び第2形状が線状である場合について説明するが、第1形状及び第2形状は線状には限られない。第1形状及び第2形状は、例えば、円形、円環形状、扇形、楕円形、長円形、三角形、正方形、長方形、台形、5角形、6角形、他の多角形、星形、種々の曲線を組み合わせた形状などの他の2次元形状であってもよい。
図32には、開口部15aの線幅と、ライン柄13cの幅との関係について、3つの例が示されている。ライン柄13cの幅が開口部15aの線幅よりも大きい場合が、
図32に示されている「開口部よりも柄が大きい場合」に該当する。ライン柄13cの幅が開口部15aの線幅よりも小さい場合が、
図32に示されている「開口部よりも柄が小さい場合」に該当する。ライン柄13cの幅と開口部15aの線幅が同じ場合が、「開口部と柄が同寸の場合」に該当する。なお、上述の開口部15aの長さとライン柄13cの長さの関係は、幅の関係と同じである。ライン柄13cの幅が開口部15aの線幅よりも大きい場合、ライン柄13cと遮蔽層15の重なり部分の幅は、例えば2mmである。この重なり部分の幅は、1mm以下であってもよい。ライン柄13cの幅が開口部15aの線幅よりも小さい場合、ライン柄13cと遮蔽層15の隙間の幅は、例えば2mmである。この隙間の幅は、1mm以下であってもよい。
通常は、ライン柄13cの幅が開口部15aの線幅よりも大きくすることが多い。例えば、
図31に示されているように、ライン柄13cの幅が開口部15aの線幅よりも大き
くても、図柄層13に干渉顔料が用いられているため、透過光により木目柄13dが見える不具合を防止できる。また、図柄層13に干渉顔料が用いられているため、透過光を用いない場合に遮蔽層15がライン柄13cに与える影響を抑制することができる。言い換えると、ライン柄13cに遮蔽層15によって隈取りされたように見えるのを防止することができる。
【0046】
図33には、3層の図柄層13と遮蔽層15が示されている。最も表側の図柄層13には、線状のライン柄13cが干渉顔料で描かれている。遮蔽層15には、ライン柄13cに対応する線状の開口部15aが形成されている。
図33に示されているライン柄13cは、線状の開口部15aに対応する透過部分と、透過部分から延びる非透過部分からなっている。ライン柄13cの透過部分は、開口部15aの形状と同じ形状かまたは相似形状を有している。
図34には、「反射状態」と「透過状態」における、
図33の構成を有するカバーパネル10の撮影画像が並べて示されている。反射状態では、3層の図柄層13でそれぞれ反射した反射光が見られる。そのため、反射状態では、遮蔽層15の開口部15aに関する画像は見られない。透過状態では、遮蔽層15を通って、さらに3層の図柄層13を透過した透過光が見られる。従って、透過状態では、透過光によって遮蔽層15の開口部15aの形状を有する画像が見られる。開口部15aの形状を有する画像は、特に、ライン柄13cによって着色される。ここでは、一部のライン柄13cのみを透過光が透過するように構成しているが、透過光がライン柄13cの全てを透過するように構成してもよい。
【0047】
(6)変形例
(6-1)変形例3A
上記第3実施形態では、表側調色層12の裏側にライン柄13cが配置される構成について説明した。しかし、
図35に示されているように、表側調色層12の表側にライン柄13cを配置してもよい。表側調色層12の表側にライン柄13cを配置すると、ライン柄13cの反射光が表側調色層12を通過しない。
図35のように、表側調色層12の表側にライン柄13cを配置することによって、反射光によるライン柄13cの色味そのものを見せることができる。
(6-2)変形例3B
上記第3実施形態及び変形例3Aでは、ライン柄13cを含む図柄層13以外に、ライン柄13cを含まない図柄層13が形成されている場合について説明した。しかし、前述の加飾シート8,9、カバーパネル10及び表示装置50に適用される図柄層13は、ライン柄13cのように、遮蔽層15の開口部15aの形状と同じかまたは相似な形状を有する形状を含む1層の図柄層13のみであってもよい。
図36には、表側調色層12と裏側調色層14の間に、ライン柄13cを含む図柄層13のみが配置されている例が示されている。
図36においては、裏側から順に、遮蔽層15、裏側調色層14、ライン柄13cを含む図柄層13、表側調色層12が配置されている。開口部15aの形状である第1形状は、ライン柄13cの形状である第2形状と同一または相似の形状である。
図37には、2層の裏側調色層14の表側にライン柄13cを含む図柄層13のみが配置されている例が示されている。なお、
図37の構成では、裏側調色層14が2層の場合が示されているが、裏側調色層14は1層であってもよい。
図37においては、裏側から順に、遮蔽層15、1層目の裏側調色層14、2層目の裏側調色層、ライン柄13cを含む図柄層13が配置されている。開口部15aの形状である第1形状は、ライン柄13cの形状である第2形状と同一または相似の形状である。
【0048】
(7)特徴
(7-1)
図3、
図10、
図12、
図14、
図15、
図17に記載の加飾シート8及びカバーパネル10並びに
図9に記載の加飾シート9では、干渉顔料21による図柄100の真珠のような光沢感のある見え方が表側調色層12の表側吸収顔料22によって抑えられる。また、図柄100を見る角度によって観る者に与える図柄100の色味が変化したという印象を、表側調色層12で減少させるスペクトル成分の所定範囲の設定によって緩和することができる。
例えば、
図21Aには、表側調色層12が設けられていない場合のカバーパネル10の図柄部分を正面から見た撮影画像が示され、
図21Bには、表側調色層12が設けられていない場合のカバーパネル10の図柄部分を斜めから見た撮影画像が示されている。また、
図22Aには、表側調色層12が設けられている場合のカバーパネル10の図柄部分を正面から見た撮影画像が示され、
図22Bには、表側調色層12が設けられている場合のカバーパネル10の図柄部分を斜めから見た撮影画像が示されている。
図21Bと
図22Bを比較すると、図柄の真珠のような光沢感のある見え方が表側調色層によって抑えられていることが分かる。
(7-2)
図3、
図12、
図15に記載の加飾シート8及びカバーパネル10並びに
図9に記載の加飾シート9では、図柄層13の裏面13bから表面13aに向かう透過光が表側調色層12によって着色され、光源色またはユーザ所望の色合いでなくなってしまう場合がある。そのような場合には、裏側調色層14の裏側吸収顔料23により、裏側調色層14と表側調色層12を透過する光が表側調色層12のみを通過する場合に比べて無彩色に近づくように変更する。このような裏側調色層14の働きにより、表側調色層12に起因する好ましくない着色を抑制することができる。
例えば、
図23Aには、裏側調色層14が設けられている場合のカバーパネルのアイコンの撮影画像が示され、
図23Bには、裏側調色層14が設けられていない場合のカバーパネルのアイコンの撮影画像が示されている。
図23Aと
図23Bを比較すると、裏側調色層の働きにより、表側調色層に起因する好ましくない着色を抑制することが分かる。
【0049】
(7-3)
図6を用いて説明したように、加飾シート8,9において、表側調色層12の色と裏側調色層14の色が互いに補色の関係にあるように構成すると、裏側調色層14と表側調色層12を透過する光が無彩色にすることができる。係る構成によれば、裏側調色層14の働きにより、図柄層13の裏面13bから表面13aに向かう透過光の好ましくない着色を抑制することができる。
(7-4)
図7を用いて説明したように、裏側吸収顔料23は、例えば、特定箇所(例えばアイコン110の箇所)の裏側調色層14と図柄層13と表側調色層12とを透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、0.28≦x≦0.36且つ0.28≦y≦0.36の条件を満たす光の吸収特性を持つように構成される。
図7で説明したような裏側調色層14と図柄層13と表側調色層12とを有する加飾シート8,9では、図柄層13の裏面13bから表面13aに向かう白色の透過光が表側調色層12によって着色され、白色でなくなる場合がある。そのような場合に、裏側吸収顔料23により、裏側調色層14と図柄層13と表側調色層12とを透過するアイコン110の光のxy色度図上の点(x,y)が、0.28≦x≦0.36且つ0.28≦y≦0.36の条件を満たすようになる。その結果、裏側調色層14と図柄層13と表側調色層12とを透過するアイコン110の光(特定箇所を透過する光の例)が白色でない色に着色されるのを抑制することができる。
【0050】
(7-5)
図11、
図13、
図16に記載の加飾シート8において、図柄層13の裏面13bから表面13aに向かう白色の透過光が図柄層13の地色によって着色され、白色でなくなる場合がある。そのような場合に、裏側吸収顔料23により、特定箇所(例えばアイコン110の箇所)の裏側調色層14と図柄層13とを透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、0.28≦x≦0.36且つ0.28≦y≦0.36の条件を満たすようになる。その結果、裏側調色層14と図柄層13を透過する光が白色で色に着色されるのを抑制することができる。
なお、
図11、
図13、
図16に記載の加飾シート8と同様に、転写に用いられる加飾シート9において、表側調色層12の無い加飾シートを構成することもでき、その場合には、
図11、
図13、
図16に記載の加飾シート8と同様の効果を奏する。
(7-6)
例えば、
図2に示されている裏側吸収顔料23は、特定箇所の表側に(例えばアイコン110の箇所の表面10aの側に)透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(0.28≦x≦0.36)且つ(0.28≦y≦0.36)の条件を満たす光の吸収特性を持つ。
図2のカバーパネル10では、図柄層13の裏面13bから表面13aに向かう白色の透過光が例えば成形部材17と裏側調色層14と図柄層13と表側調色層12によって着色され、白色でなくなる場合がある。そのような場合に、裏側吸収顔料23により、アイコン110の光(特定箇所の表側に透過する光の例)のxy色度図上の点(x,y)が、0.28≦x≦0.36且つ0.28≦y≦0.36の条件を満たすようになる。その結果、カバーパネル10を透過する光が白色でない色に着色されるのを抑制することができる。
【0051】
(7-7)
例えば、
図11に示されている裏側吸収顔料は、特定箇所の表側に例えばアイコン110の箇所の表面10aの側に)透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(0.28≦x≦0.36)且つ(0.28≦y≦0.36)の条件を満たす光の吸収特性を持つ。
図11のカバーパネル10は、図柄層13の裏面13bから表面13aに向かう白色の透過光が例えば成形部材17と裏側調色層14と図柄層13とによって着色され、白色でなくなる場合がある。そのような場合に、裏側吸収顔料23により、アイコン110の光(特定箇所の表側に透過する光の例)のxy色度図上の点(x,y)が、0.28≦x≦0.36且つ0.28≦y≦0.36の条件を満たすようになる。その結果、カバーパネル10を透過する光が白色でない色になるのを抑制することができる。
(7-8)
カバーパネル10は、図柄層13が設けられている部分の光の透過率が、10%以上70%以下である場合、図柄100を観る者に、図柄層13を透かして、カバーパネル10で覆われた内部構造が見えてしまうのを防止することができる。特に、遮蔽層15が設けられていない部分(例えばアイコン110のための開口部15aが形成されている部分)の光の透過率を、10%以上70%以下とする。その場合、カバーパネル10の裏面10bからの入射光IL1を、アイコン110を十分に表示できる強さで透過できるとともに、アイコン110のための開口部15aからカバーパネル10で覆われている中身が透けて見えるのを抑制することができる。
(7-9)
図2及び
図20に記載の裏側吸収顔料23は、光源2またはディスプレイ51の色のxy色度図上の点を(x1,y1)としたときに、特定箇所の表側に(例えばアイコン110の箇所または表示画面55の箇所の表面10aの側に)透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(x1-0.03)≦x≦(x1+0.03)且つ(y1-0.03)≦y≦(y1+0.03)の条件を満たすような光の吸収特性を持つ。
このように構成された表示装置50は、図柄層13の裏面13bから表面13aに向かう透過光が例えば成形部材17と裏側調色層14と図柄層13と表側調色層12とによって着色され、光源の光の色からずれたものとなる場合がある。そのような場合に、裏側吸収顔料23により、アイコン110の光または表示画面55の光(特定箇所の表側に透過する光の例)のxy色度図上の点(x,y)が、(x1-0.03)≦x≦(x1+0.03)且つ(y1-0.03)≦y≦(y1+0.03)の条件を満たすようになる。その結果、例えばアイコン110または表示画面の色が、光源2またはディスプレイ51の光の色からずれるのを抑制することができる。
【0052】
(7-10)
図11に記載の裏側吸収顔料23は、光源2の色のxy色度図上の点を(x1,y1)としたときに、特定箇所の表側に(例えばアイコン110の箇所の表面10aの側に)透過する光のxy色度図上の点(x,y)が、(x1-0.03)≦x≦(x1+0.03)且つ(y1-0.03)≦y≦(y1+0.03)の条件を満たす光の吸収特性を持つ。
このように構成された表示装置50は、図柄層13の裏面13bから表面13aに向かう透過光が成形部材17と裏側調色層14と図柄層13とによって着色され、光源の光の色からずれたものとなる場合がある。そのような場合に、裏側吸収顔料23により、アイコン110の光(特定箇所の表側に透過する光の例)のxy色度図上の点(x,y)が、(x1-0.03)≦x≦(x1+0.03)且つ(y1-0.03)≦y≦(y1+0.03)の条件を満たすようになる。その結果、アイコン110の色が、光源2の光の色からずれるのを抑制することができる。
(7-11)
図20に示されている表示装置50は、光学透明接着剤52により、成形部材17とディスプレイ51の間に空隙ができないので、成形部材17と空気層が接する部分が生じない。そのため、図柄層13の表面13aの側から入射した入射光IL1が成形部材17と空気層との界面で反射しなくなる。その結果、ディスプレイ51が光を照射していない状態において、空気層との界面での反射光によって外枠部材である遮蔽層15の境界が見える現象を軽減することができる。
(7-12)
図30から
図37に示されている構成は、第1実施形態及び第2実施形態並びにそれらの変形例で説明した加飾シート8,9、カバーパネル10及び表示装置50に適用される。
図30から
図37に示されている構成が適用された加飾シート8,9、カバーパネル10及び表示装置50においては、ライン柄13cなどの図柄層13の第2形状の周囲に、第2形状以外の柄による隈取りが発生するのを防ぐことができる。
以上、本発明の第1実施形態、変形例及び第2実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【符号の説明】
【0053】
2 光源
8,9 加飾シート
10 カバーパネル
12 表面調色層
13 図柄層
13c ライン柄
14 裏側調色層
15 遮蔽層(外枠部材の例)
15a 開口部
17 成形部材
18,19 ベースフィルム
21 干渉顔料
22 表側吸収顔料
23 裏側吸収顔料
30 メタリック層
50 表示装置
51 ディスプレイ
52 光学透明接着剤