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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-29
(45)【発行日】2023-04-06
(54)【発明の名称】判定方法及び電圧調整装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/12 20060101AFI20230330BHJP
【FI】
H02J3/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022186705
(22)【出願日】2022-11-22
【審査請求日】2022-12-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】中西 朋也
(72)【発明者】
【氏名】清水 直紀
(72)【発明者】
【氏名】泉 健児
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208640(JP,A)
【文献】特開平11-289666(JP,A)
【文献】特開2018-133982(JP,A)
【文献】特開2014-27810(JP,A)
【文献】特開2019-33638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動電圧調整装置に備えられるコンピュータが、
前記自動電圧調整装置が備えるタップ付き調整変圧器のタップが、複数のタップのうち、前記自動電圧調整装置における1次側から2次側へ最も大きく昇圧させる上限タップ、又は、1次側から2次側へ最も大きく降圧させる下限タップであるか否かを判断し、
前記タップが前記上限タップ又は下限タップであると判断された場合、前記自動電圧調整装置における1次側から2次側へそのまま変圧せずに素通しする素通しタップ寄りのタップへ、タップを切り換え、
タップが切り換わる際の前記自動電圧調整装置における1次側及び2次側の電圧の変化量の比較に基づき、送電方向を判定する
判定方法。
【請求項2】
前記コンピュータは、
前記自動電圧調整装置の負荷側の電圧値が目標電圧値の許容範囲から逸脱し、且つ、前記タップが前記上限タップ又は下限タップのままである極限タップ状態が、所定のカウント上限値以上続いた場合に、前記素通しタップ寄りのタップへのタップの切り換え、及び、送電方向の判定を実行する
請求項1に記載の判定方法。
【請求項3】
前記コンピュータは、
前記極限タップ状態となる頻度に基づき、前記素通しタップ寄りのタップへのタップの切り換え、及び、送電方向の判定を実行する
請求項2に記載の判定方法。
【請求項4】
前記コンピュータは、
前回の送電方向の判定結果に基づき、送電元側の電圧のみについて不足電圧が検出されているか、又は、送電元側の電圧のみについて過大電圧が検出されている場合に、前記素通しタップ寄りのタップへのタップの切り換え、及び、送電方向の判定を実行する
請求項1に記載の判定方法。
【請求項5】
タップ付きの調整変圧器と、
1次側及び2次側の電圧をそれぞれ計測する電圧計測器と、
前記調整変圧器のタップを切り換えるタップ切換器と、
前記タップ切換器を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記調整変圧器のタップが、複数のタップのうち、前記1次側から2次側へ最も大きく昇圧させる上限タップ、又は、1次側から2次側へ最も大きく降圧させる下限タップであるか否かを判断し、
前記タップが前記上限タップ又は下限タップであると判断された場合、前記1次側から2次側へそのまま変圧せずに素通しする素通しタップ寄りのタップへ、タップを切り換えるように前記タップ切換器へ指示し、
タップが切り換わる際の前記1次側及び2次側の電圧の変化量の比較に基づき、送電方向を判定し、
判定結果に基づき、負荷側の電圧値が目標電圧値となるように制御する
電圧調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧調整装置における送電方向の判定方法、及び、電圧調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配電系統の系統電圧を設定された範囲に保つことが必要である。配電系統の電圧が変動する要因は基本的に、需要家の負荷変動である。それ以外の要因として、太陽光発電等による分散型電源の発電状況による変動がある。これらの変動を抑えて設定された範囲に保つために、タップを切り換える電圧調整装置(SVR:Step Voltage Regulator)や、無効電力調整によって系統電圧を調整する機器(SVC:Static Var Compensator)が用いられている。
【0003】
近年、太陽光発電設備などの自家発電設備が設置され、そのような自家発電設備が配電系統と連携するようになってきている。したがって配電系統は、事故やその他の都合によって系統切替を実施する、即ち変電所の接続を変更することがある。この場合、SVRにおける負荷側も切り換えられ、逆送電となることがある。これに伴い、サイリスタを用いてタップの切り換えの即応性を高めたサイリスタ式自動電圧調整器(TVR:Thyristor type step Voltage Regulator )も使用されている。
【0004】
このため、特許文献1のように、1次側と2次側の電圧、インピーダンス、無効電力等の変化量の比較によって、自律的に送電方向を判定し、負荷側の電圧を制御する機能を有するSVR,TVRが実現されている。送電方向(変電所方向)は、1次側と2次側とのうち、いずれが変電所側であっていずれが負荷側であるかを示す方向である。また、電流逆潮流発生時においては、分散型電源の発電によって負荷側の電圧が上昇するものとみなし、負荷側の電圧を低めのタップに固定する制御(逆送時固定タップ制御)を行なうSVRも提案されている。
【0005】
これらの動作方式が異なるSVR,TVRが、配電系統に繋がる配電線路の各所に点在し、連携して動作している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-133982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電圧調整装置における送電方向の判定は、分散型電源の発電状況や、他の電圧調整装置との連携の不整合等が複合的に重なることで、誤る可能性がゼロでない。送電方向を誤って判定した場合、電圧調整装置は、負荷側へ電圧を最も大きく昇圧させるためのタップ又は最も大きく降圧させるためのタップである極限タップにタップを張り付けてしまい、負荷側の過電圧、または不足電圧といったトラブルを発生させる可能性がある。このため、特許文献1に示すように、送電方向を判定する方法は、より正確であることが求められる。
【0008】
本発明は、送電方向をより精度よく判定する判定方法及び電圧調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態の判定方法は、自動電圧調整装置に備えられるコンピュータが、前記自動電圧調整装置が備えるタップ付き調整変圧器のタップが、複数のタップのうち、前記自動電圧調整装置における1次側から2次側へ最も大きく昇圧させる上限タップ、又は、1次側から2次側へ最も大きく降圧させる下限タップであるか否かを判断し、前記タップが前記上限タップ又は下限タップであると判断された場合、前記自動電圧調整装置における1次側から2次側へそのまま変圧せずに素通しする素通しタップ寄りのタップへ、タップを切り換え、タップが切り換わる際の前記自動電圧調整装置における1次側及び2次側の電圧の変化量の比較に基づき、送電方向を判定する。
【0010】
本開示の一実施形態の電圧調整装置は、タップ付きの調整変圧器と、1次側及び2次側の電圧をそれぞれ計測する電圧計測器と、前記調整変圧器のタップを切り換えるタップ切換器と、前記タップ切換器を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記調整変圧器のタップが、複数のタップのうち、前記1次側から2次側へ最も大きく昇圧させる上限タップ、又は、1次側から2次側へ最も大きく降圧させる下限タップであるか否かを判断し、前記タップが前記上限タップ又は下限タップであると判断された場合、前記1次側から2次側へそのまま変圧せずに素通しする素通しタップ寄りのタップへ、タップを切り換えるように前記タップ切換器へ指示し、タップが切り換わる際の前記1次側及び2次側の電圧の変化量の比較に基づき、送電方向を判定し、判定結果に基づき、負荷側の電圧値が目標電圧値となるように制御する。
【0011】
本開示の判定方法及び電圧調整装置では、タップが極限タップに張り付いている状態であっても、半ば強制的にタップを切り換え、その切換中に変電所方向を判定できる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、系統切替が実施されても自律的に、送電方向をより正確に判定し、配電系統による接続変更への即応性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の電圧調整装置の構成を示す図である。
図2】本実施形態の電圧調整装置における判定手順の一例を示すフローチャートである。
図3】本実施形態の電圧調整装置における判定手順の一例を示すフローチャートである。
図4】変形例2における電圧調整装置の構成を示す図である。
図5】系統電圧異常を判断するためのテーブルの内容例を示す。
図6】変形例2における電圧調整装置による処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。以下の実施の形態では、本開示の判定方法を適用した電圧調整装置について説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の電圧調整装置1の構成を示す図である。本実施形態の電圧調整装置1は、直列変圧器10、調整変圧器(タップ付変圧器)11、タップ切換器12、1次側電圧計測器13、2次側電圧計測器14、及び制御部15を備える。
【0016】
直列変圧器10は、配電線L1,L2のうちの配電線L1に直列に接続された1次巻線101と、対応する2次巻線102とを含む。
【0017】
調整変圧器11は、配電線L1,L2に対して並列に接続接続されたタップ巻線111と、対応する制御巻線112とを含む。タップ巻線111には、タップ巻線のうちの使用する部分(タップ)を選択するための複数の接点(スイッチ素子)113が設けられている。タップは、例えば第1タップから第9タップまで設けられている。第1タップは、1次側の電圧を、最も大きく降圧させて2次側へ出力するためのタップである。第5タップは、1次側の電圧を変圧させずに素通しで2次側へ出力するためのタップである。第9タップは、1次側の電圧を、最も大きく昇圧させて2次側へ出力するためのタップである。
【0018】
タップ切換器12は、制御部15から出力されるタップ切換指示に応じて、調整変圧器11のタップを切り換える。タップ切換器12は、直列変圧器10の2次巻線102と接続されており、タップ切換指示信号に基づくモータの駆動によって調整変圧器11の各タップ(第1タップから第9タップ)に対応する接点113と、直列変圧器10の2次巻線102との接続スイッチを切り換える。タップ切換器12は、サイリスタ(スイッチ)を利用して制御信号に基づいて接点113との接続を切り換えてもよい。なお、図1におけるタップ切換器12は、間接切換式であるが、これに限らず、直接切換式であってもよいことは勿論である。
【0019】
1次側電圧計測器13は、配電線L1,L2の1次側に接続された計測用の変圧器131、図示しないデジアナ変換器、移動平均処理回路等を用い、1次側電圧値を計測して出力する。2次側電圧計測器14は、配電線L1,L2の2次側に接続された計測用の変圧器131、図示しないデジアナ変換器、移動平均処理回路等を用い、2次側電圧値を計測して出力する。
【0020】
制御部15は、例えばマイコン等により構成され、CPU(Central Processing Unit )150を含む。制御部15は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、又はフラッシュメモリ等のメモリ151を含む。制御部15は、経過時間を計測するためのタイマ152を含む。制御部15は、メモリ151に予め記憶された制御プログラム(プログラム製品)P1に従って後述する制御処理を実行する。メモリ151の不揮発性記憶領域には、電圧値とタップ位置との関係を示すテーブル(図示せず)が記憶されている。
【0021】
制御部15は、電圧調整継電器(90リレー)と、配電線の2次側を流れる負荷電流を検出する変流器CTからの出力が入力される線路電圧降下補償器(LDC:Line Drop Compensator )とを備える(いずれも図示せず)。
【0022】
制御部15は、調整変圧器11の制御巻線112、タップ切換器12、1次側電圧計測器13、及び2次側電圧計測器14と接続されている。制御部15は、制御巻線112及びタップ切換器12から、いずれのタップに切り換えられているかを認識可能である。制御部15は、1次側電圧計測器13、及び2次側電圧計測器14から得られる信号に基づき、1次側電圧値及び2次側電圧値を任意のタイミングで取得できる。
【0023】
制御部15は、1次側電圧値及び2次側電圧値に基づき、タップ切換器12を制御する。制御部15は、タップを切り換えることにより、1次側からの単相交流を降圧した電圧から、昇圧した電圧まで段階的に調整して2次側へ配電できる。制御部15は基本的に、調整変圧器11の2次側電圧を、目標電圧に保つようにタップ切換器12を制御する(順送モード)。制御部15は、例えば、2次側電圧計測器14で検出した電圧が、例えば目標電圧の許容範囲(不感帯)を逸脱した場合に、タップを切り換えて電圧を調整しようとする。
【0024】
また、電圧調整装置1が接続されている配電系統は、事故やその他の都合によって系統切替を実施する、即ち変電所の接続を変更することがある。これに対し、電圧調整装置1の制御部15は、自律的に、変電所方向が1次側であるか2次側であるかを判定し、その方向に応じて負荷側の電圧が目標電圧となるように調整可能である。自律的に変電所方向に応じて制御を行なう場合、制御部15は、変電所方向の判定を、上述のタップ切り換えの際に、変電所側の電圧変化量が、負荷側の電圧変化量よりも少ないという関係が成立することを利用して判定する。制御部15は、変電所方向が1次側であると判定できた場合、そのまま2次側を負荷側として電圧調整する「順送モード」で動作する。逆に変電所方向が2次側であると判定できた場合、制御部15は、1次側を負荷側として電圧調整する「逆送モード」で動作する。
【0025】
以下、本実施形態の電圧調整装置1による変電所方向の判定方法についてフローチャートを参照して説明する。図2及び図3は、本実施形態の電圧調整装置1における判定手順の一例を示すフローチャートである。制御部15は、メモリ151に記憶されている制御プログラムP1に従って、負荷側の1次側電圧計測器13又は2次側電圧計測器14で検出した電圧が目標電圧の不感帯を逸脱した場合に本処理を実行する。
【0026】
制御部15は、タップ切換器12からの信号を参照し(ステップS101)、その時点でのタップが上限タップ(第9タップ)又は下限タップ(第1タップ)であるか否かを判断する(ステップS102)。
【0027】
ステップS102において上限タップ又は下限タップであると判断された場合(S102:YES)、制御部15は、極限タップ(上限タップ,下限タップ)についての動作時限(極限動作時限)のカウントアップ中であるか否かを判断する(ステップS103)。ステップS103において制御部15は、ステップS103で極限タップ(上限タップ又は下限タップ)であると判断された場合にカウントをスタート(S113)する極限動作時限のカウント値が無効(又はゼロ)でないか否かを判断する。
【0028】
極限動作時限カウントアップ中であると判断された場合(S103:YES)、制御部15は、極限動作時限のカウント値が所定の上限値に達しているか否かを判断する(ステップS104)。
【0029】
ステップS103において、カウントアップ中でないと判断された場合(S103:NO)、制御部15は、タイマ152による極限動作時限のカウントをスタートさせ(ステップS113)、処理をステップS104へ進める。
【0030】
極限動作時限のカウント値が所定の上限値に達していると判断された場合(S104:YES)、タイマ152による極限動作時限のカウントをストップし(ステップS105)、カウント値をクリアし(ステップS106)、処理をステップS107へ進める。
【0031】
制御部15は、タップを素通し方向へ切り換えるタップ切換指示をタップ切換器12へ出力する(ステップS107)。ステップS107において制御部15は、その時点でのタップが上限タップ(第9タップ)である場合には、第8タップへ切り換えるタップ切換指示を出力し、下限タップ(第1タップ)である場合には、第2タップへ切り換えるタップ切換指示を出力する。
【0032】
制御部15は、ステップS107でタップ切換指示を出力した後の所定時間における1次側電圧計測器13及び2次側電圧計測器14それぞれで計測した電圧値に基づき、変電所方向を判定する(ステップS108)。ステップS108において制御部15は、1次側電圧計測器13から得られる電圧の変化量の絶対値と、2次側電圧計測器14から得られる電圧の変化量の絶対値とを比較する。制御部15は、差が第1所定値超である場合には、1次側が変電所方向であると判定し、差が第1所定値よりも低い第2所定値未満である場合には、2次側が変電所方向であると判定する。制御部15は、差が第2所定値以上第1所定値以下である場合、変電所方向の判定を保留すると判定する。
【0033】
制御部15は、ステップS108にて変電所方向の判定を保留したか否かを判断する(ステップS109)。変電所方向の判定を保留すると判断した場合(S109:YES)、そのまま処理を終了する。
【0034】
変電所方向の判定を保留しないと判断した場合(S109:NO)、制御部15は、1次側が変電所方向であると判定されたか否かを判断する(ステップS110)。1次側が変電所方向と判定されたと判断された場合(S110:YES)、制御部15は、制御モードを「順送モード」と判断し(ステップS111)、判定処理を終了する。ステップS111において制御部15は、元のモードが「順送モード」である場合はそのまま、元のモードが「逆送モード」である場合は、モードを「順送モード」へ切り換える。
【0035】
制御部15は、ステップS110において、1次側が変電所方向でないと判断された場合(S110:NO)、2次側が変電所方向であると判定されており、制御部15は、制御モードを「逆送モード」と判断し(ステップS112)、判定処理を終了する。ステップS112において制御部は、元のモードが「順送モード」である場合はモードを「逆送モード」へ切り換え、元のモードが「逆送モード」である場合はそのままとする。
【0036】
ステップS104において、極限動作時限のカウント値が所定の上限値に達していないと判断された場合(S104:NO)、制御部15は、処理をそのまま終了する。なお、カウントアップ中の極限動作時限のカウント値は、図2及び図3に示す処理外で、負荷側の電圧が目標電圧の不感帯に戻った場合、その戻っている時間分減算される。
【0037】
ステップS102において、上限タップ又は下限タップでないと判断された場合(S102:NO)、制御部15は、定常動作における動作時限のカウントアップ中であるか否かを判断する(ステップS114)。ステップS114において制御部15は、カウント中でなく、且つ、目標電圧値から逸脱したと判断された場合にカウントをスタート(S119)する動作時限のカウント値が無効(又はゼロ)でないか否かを判断する。
【0038】
ステップS114において、カウントアップ中でないと判断された場合(S114:NO)、制御部15は、タイマ152による動作時限のカウントをスタートさせ(ステップS119)、処理をステップS115へ進める。ステップS114において、カウントアップ中であると判断された場合(S114:YES)、制御部15は、処理をステップS115へ進める。
【0039】
制御部15は、動作時限のカウント値が所定の上限値に達しているか否かを判断する(ステップS115)。なお、カウントアップ中の動作時限のカウント値は、図2及び図3に示す処理外で、負荷側の電圧が目標電圧の不感帯に戻った場合、その戻っている時間分、カウント値を減算される。
【0040】
動作時限のカウント値が所定の上限値に達していると判断された場合(S115:YES)、タイマ152による動作時限のカウントをストップし(ステップS116)、カウント値をクリアし(ステップS117)、処理をステップS118へ進める。
【0041】
制御部15は、タップを、目標電圧側(高くする側、若しくは低くする側)へ切り換えるタップ切換指示をタップ切換器12へ出力する(ステップS118)。ステップS118において制御部15は、例えば、その時点でのタップが第2タップであって、より低くする必要がある場合には、第1タップへ切り換えるタップ切換指示を出力する。
【0042】
制御部15は、ステップS118にてタップを切り換えると、処理をステップS108へ進め、タップ切換期間におけるステップS108からステップS112による変電所方向の判定及びモードの設定の処理を実行し、処理を終了する。
【0043】
ステップS115にて、動作時限のカウント値が所定の上限値に達していないと判断された場合(S115:NO)、制御部15は、処理をそのまま終了する。この場合も、カウントアップ中の動作時限のカウント値は、図2及び図3に示す処理外で、負荷側の電圧が目標電圧の不感帯に戻った場合、その戻っている時間分減算される。
【0044】
このように、電圧調整装置1は、2次側の電圧を更に高くする必要があるにもかかわらず、タップが既に第9タップになっており、これ以上高くできない状態になっていたとしても、一旦素通し側(高くも低くもしない第5タップに近い側)へタップを切り換える処理を行なう。電圧調整装置は逆に、更に低くする必要があるにも関わらず、タップが既に第1タップになっており、これ以上低くできない状態となっていたとしても同様である。これにより、タップが極限タップに張り付いている状態であっても、変電所方向を改めて判定することができ、配電系統による接続変更への即応性を高めることができる。
【0045】
このように、制御対象側の電圧が不感帯から逸脱している状態で、極限動作時限のカウントが上限値に達した場合には、タップの切り換えを半ば強制的に実行でき、タップが極限タップに張り付いたまま電圧調整装置1が停止してしまう状況を回避できる。
【0046】
なお、図2及び図3に示した処理における「動作時限のカウント」、「極限動作時限のカウント」に基づくタップ切換の処理は、定限時型の電圧調整制御、積分型の電圧調整制御にいずれの場合にも適用可能である。
【0047】
(変形例1)
本実施形態の電圧調整装置1の構成と、図2及び図3を参照して説明した処理とにより、変電所の系統切替への即応性を高めて変電所方向をより正確に判定することができる。タップが第9タップであるにも関わらず、更に2次側を昇圧させる必要がある状態は、あるいは、タップが第1タップであるにも関わらず、更に2次側を降圧させる必要がある状態は、配電系統の系統電圧が極端に上昇又は低下している場合にも発生し得る。変形例では、電圧調整装置1が、変電所方向を誤って判定しているために、タップが極限タップに張り付いてしまっていることと、系統電圧が異常であるために、タップが極限タップに張り付いてしまっていることとを、区別して制御する。
【0048】
電圧調整装置1の制御部15は、図2及び図3に示した処理において、極限動作時限のカウント値が上限値に達したと判断し、タップを切り換える処理を実行する都度(S104:YES、S107)、極限カウントが達したことを、時間情報と共にメモリ151の不揮発性記憶領域に記憶しておく。制御部15は、その後に、S111又はS112で判定した変電所方向(順送/逆送)を記憶しておいてもよい。この場合、制御部15は、これらの記憶に基づき、定期的に、極限カウントが達したと判断した頻度、又は変電所方向の判定の切り換わりの頻度、等を導出し、所定頻度と比較する。制御部15は、導出した頻度が所定頻度よりも高い場合、配電系統の接続変更が起こっていて、誤判定を起こしやすい状況であると判断し、図2及び図3のフローチャートに基づく即応性の高い判定を続行する。
【0049】
制御部15は、導出した頻度が所定頻度以下である場合、配電系統の接続変更が起こっているのではなく、系統電圧が極端に上昇している、又は、低下していると判断する。この場合、制御部15は、系統異常をメモリ151に記憶すると共に、電圧調整装置1が備える警告灯等(図示せず)を所定のパターンで点灯させる制御信号や、外部装置への通知信号を出力してもよい。
【0050】
(変形例2)
電圧調整装置1の制御部15は、図1に示す構成要素以外に、不足電圧継電器、過電圧継電器としての機能を発揮するように構成されていることがある。変形例2では、制御部15は、これらの機能による検出結果を利用し、変電所方向を誤って判定しているためにタップが極限タップに張り付いてしまっているのか、系統電圧が異常であるためにタップが極限タップに張り付いてしまっていることとを、区別する。また、変形例2において制御部15は、メモリ151に、後述の判定のためのテーブル154を記憶している。図4は、変形例2における電圧調整装置1の構成を示す図である。
【0051】
変形例2における電圧調整装置1は、基本的に、図2及び図3のフローチャートに示した処理手順を実行するが、それ以外に、後述するテーブル154を用いた系統電圧異常の判断を実行する。
【0052】
図5は、系統電圧異常を判断するためのテーブル154の内容例を示す。図5に示すテーブル154は、変電所方向を誤っている可能性があるパターンを示す。テーブル154は、変電所方向の判定結果と、1次側及び2次側の電圧値と、デジタルリレー153の不足電圧継電機能及び過電圧継電機能の出力とを項目に含む。例えば、判定された変電所方向が1次側であり、不足電圧も過電圧も検出されておらず、かつ、タップが第1タップ又は第9タップである場合、誤判定を起こしている可能性があると制御部15が判断できる。判定された変電所方向が1次側であり、1次側電圧で不足電圧又は過電圧が検出されている場合、誤判定を起こしている可能性があると制御部15が判断できる。また、判定された変電所方向が2次側であり、不足電圧も過電圧も検出されておらず、かつ、タップが第1タップ又は第9タップである場合、誤判定を起こしている可能性があると制御部15が判断できる。判定された変電所方向が2次側であり、2次側電圧で不足電圧又は過電圧が検出されている場合、誤判定を起こしている可能性があると、制御部15が判断できる。
【0053】
図5に示したテーブル154のパターンに含まれている状況では、図2及び図3のフローチャートに示した処理手順によって、素通し方向にタップを切り換えて変電所方向の判定ができるので、変電所方向の切り換わりへの即応性を高められる。そして、図5に示したテーブル154のパターンに含まれておらず、タップ位置が第1タップ又は第9タップで張り付いたままである場合、系統電圧異常である可能性があると判断できる。
【0054】
図6は、変形例2における電圧調整装置1による処理手順の一例を示すフローチャートである。電圧調整装置1の制御部15は、所定の時間が経過する都度、目標電圧の不感帯を逸脱した場合、又は、不足電圧若しくは過電圧が検出される都度、図6の処理手順を実行する。
【0055】
制御部15は、タップ切換器12からの信号を参照し(ステップS121)、その時点でのタップが上限タップ(第1タップ)又は下限タップ(第9タップ)であるか否かを判断する(ステップS122)。
【0056】
上限タップ又は下限タップであると判断された場合(S122:YES)、制御部15は、制御モードに基づいて判断可能な変電所方向、タップ位置、及び、不足電圧継電器又は過電圧継電器の機能による検出結果がテーブル154のパターンに合致しているか否かを判断する(ステップS123)。ステップS123において制御部15は、「順送モード」である場合には、直近に変電所方向を1次側と判定しており、「逆送モード」である場合には、直近に変電所方向を2次側と判定していることが判断できる。
【0057】
制御部15は、変電所方向、タップ位置及び検出結果がテーブル154のパターンに合致していると判断した場合(S123:YES)、タップ切り換えによる変電所方向の判定処理を実行し(ステップS124)、1回の処理を終了する。ステップS124において制御部15は、図2及び図3のフローチャートに示したステップS103からステップS112に相当する処理を実行する。
【0058】
制御部15は、変電所方向、タップ位置及び検出結果がテーブル154のパターンに合致していないと判断した場合(S123:NO)、系統電圧異常であると判断して、これを通知し(ステップS125)、1回の処理を終了する。系統電圧異常の通知先は、変形例1と同様に、警告灯等(図示せず)や、外部装置でよい。制御部15は、設定によっては電圧調整装置1の動作を少なくとも一時的に停止してもよい。
【0059】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0060】
特許請求の範囲に記載されている複数の請求項に関して、引用形式に関わらず、相互に組み合わせることが可能である。特許請求の範囲では、複数の請求項に従属する多項従属請求項が記載されている。特許請求の範囲では、多項従属請求項に従属する多項従属請求項は記載されていないが、多項従属請求項に従属する多項従属請求項を記載してもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 電圧調整装置
10 直列変圧器
11 調整変圧器
12 タップ切換器
13 1次側電圧計測器
14 2次側電圧計測器
15 制御部(コンピュータ)
150 CPU
【要約】
【課題】送電方向をより精度よく判定する判定方法及び電圧調整装置を提供する。
【解決手段】判定方法は、自動電圧調整装置に備えられるコンピュータが、前記自動電圧調整装置が備えるタップ付き調整変圧器のタップが、複数のタップのうち、前記自動電圧調整装置における1次側から2次側へ最も大きく昇圧させる上限タップ、又は、1次側から2次側へ最も大きく降圧させる下限タップであるか否かを判断し、前記タップが前記上限タップ又は下限タップであると判断された場合、前記自動電圧調整装置における1次側から2次側へそのまま変圧せずに素通しする素通しタップ寄りのタップへ、タップを切り換え、タップが切り換わる際の前記自動電圧調整装置における1次側及び2次側の電圧の変化量の比較に基づき、送電方向を判定する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6