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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】製氷器
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/24 20180101AFI20230331BHJP
【FI】
F25C1/24 304
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022057467
(22)【出願日】2022-03-11
【審査請求日】2022-03-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522126349
【氏名又は名称】宇和川 歌乃
(73)【特許権者】
【識別番号】522126350
【氏名又は名称】高尾 千晴
(73)【特許権者】
【識別番号】522126361
【氏名又は名称】本田 菜月
(72)【発明者】
【氏名】宇和川 歌乃
(72)【発明者】
【氏名】高尾 千晴
(72)【発明者】
【氏名】本田 菜月
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-200457(JP,A)
【文献】実開平06-051764(JP,U)
【文献】特開昭53-114552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/00-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に球状の空洞が形成される満月部と、前記満月部の上方に一体成型されて平面に開口を有する山部とを備える柔軟性を有するカップ部と、前記満月部の外周面を覆う第1膨張防止カバーと、前記山部の内部に受容される水の液面との間に空隙が生じるように前記開口に配置される第2膨張防止カバーと、前記山部の外周を覆い弾力性を有する断熱部材とを備え、
前記第二膨張防止カバーは、前記空隙にある空気を外部に排出させる空気抜き孔が形成されるとともに、前記空隙の容積が、前記水が氷結するときの膨張体積以上であり、
前記断熱部材は、前記開口側から前記満月部側にかけて徐々に厚みが増加することを特徴とする製氷器。
【請求項5】
円筒形外箱は、山頂部の外周に配置される前記断熱部材の外径以上の内径に形成されることを特徴とする請求項4記載の製氷器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明度の高い球体部分を含み、内部に白濁部分が配置されるパール富士を象った氷を製造することができる製氷器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、氷を作るときには、空気や不純物を含まない水から先に凍り透明となり、空気や不純物を含む水が後から凍り白濁するという性質を利用し、断熱材などで冷気の伝わり方をコントロールすることで、透明な氷および球体の氷の美観を求める製氷器が用いられている。このような製氷器としては、例えば、コップ部2と、コップ部2における側部21の内面211に対して一定の位置にあって当該位置から上方へと移動可能に当接する下枠部31と当該下枠部31から下方に延びる底壁部32とを備える下製氷部3と、前記下製氷部3の上方に設けられ、コップ部2における側部21の内面211に対して一定の位置にあって当該位置から上方へと移動可能に当接する上枠部41と上枠部41から上方に延びる天壁部42とを備える上製氷部4と、コップ部2における側部21の外方に位置する断熱部5と、を備え、下製氷部3における下枠部31の外周面311と、コップ部2における側部21の内面211のうち外周面311に対向する部分とは共に、上広がりのテーパ面とした製氷器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-3133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の製氷器は、透明で球体の氷ができる点で優れるが、2つの半球体部材である下製氷部3と上製氷部4とを組み合わせて球体状の氷をつくるようになっており、水が氷結すると膨張の影響で両部材が離れてしまって、出来上がった球体状の氷が歪んだ形状になるという不都合があった。さらに、下製氷部3と上製氷部4とが組み合わさってなる球体部分に水不足が生じて、出来上がった球体状の氷の一部が欠けてしまうという不都合もあった。また、透明な氷の内部に白濁した氷を配置し、加えて白濁した氷が配置される位置を任意に設定できる製氷器は提案されていない。
【0005】
一方、富士山の山頂に満月が位置した状態は「パール富士」と称されており、その美しい景観は広く知られている。
【0006】
本発明は、上記の不都合を解消して、透明度に優れて欠けのない球体部分を含むとともに、パール富士の美しい形状が表現された氷を作製することができる製氷器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明がとった手段は、内部に球状の空洞が形成される満月部と、前記満月部の上方に一体成型されて平面に開口を有する山部とを備える柔軟性を有するカップ部と、前記満月部の外周面を覆う第1膨張防止カバーと、前記山部の内部に受容される水の液面との間に空隙が生じるように前記開口に配置される第2膨張防止カバーと、前記山部の外周を覆い弾力性を有する断熱部材とを備え、前記第二膨張防止カバーは、前記空隙にある空気を外部に排出させる空気抜き孔が形成されるとともに、前記空隙の容積が、前記水が氷結するときの膨張体積以上であり、前記断熱部材は、前記開口側から前記満月部側にかけて徐々に厚みが増加することを特徴とする製氷器、である。
【0008】
本発明者らは、パール富士の美しい景観を氷で表現することについて鋭意検討した結果、本発明に想到した。すなわち、本発明にかかる製氷器は、パール富士型の満月部と山部とを天地反転させた形状をなすカップ部を備え、これに断熱部材を組み合わせて家庭用冷凍庫の冷気の伝導をコントロールすることにより、最初に満月部の水が氷結して透明な球体の氷となり、次いで山部の山裾部の水が氷結し、最後に山頂部の水が氷結し、残っていた気泡や不純物により白濁して山頂が冠雪したような見た目となって、パール富士を象った美しい外観を備えた氷を作製できるようにしている。
【0009】
カップ部は、シリコン等の柔軟性のある素材から作製され、満月部で氷結される氷を欠けのないきれいな球体に形成できるようしている。また、氷結された氷の満月部と山部との境界にはくびれ部分が形成されるが、カップ部が柔軟性を備えることで、くびれ部分が引っ掛からずに氷を取り出すことができる。
【0010】
さらに、弾力性を有する断熱部材を用いることで、第二膨張防止カバーとカップ部に受容された水の液面との間にある空隙内に氷結による水の膨張体積が収まらない場合でも、第二膨張防止カバー側ではなく断熱部材の方向(カップ部の外周方向)に圧力を逃がすことができる。なお、こうして出来上がった氷の稜線には僅かな変形が生じるが、この変形によって山部の稜線形状を自然な形にすることができる。
【0011】
また、前記第1膨張防止カバー及び前記第2膨張防止カバーは、硬質かつ低断熱の素材から形成されるようにしてもよい。
【0012】
第1膨張防止カバー及び第2膨張防止カバーを硬質とすることで、氷の膨張によって球体部分や山部底面の型崩れを防ぎ、パール富士の美しい形状をより確実に表現することができる。また、低断熱とすることにより、山裾部を山頂部よりも先に氷結させて透明な氷にすることができる。
【0013】
また、前記山部は、山頂部の内部断面形状が正八角形であり、山裾部に向かうにつれて徐々に正円に変化するようにしてもよい。
【0014】
また、低断熱の素材からなり、前記山頂部の下端の高さから下は柵状になっている円筒形外箱をさらに備えてもよい。
【0015】
円筒形外箱を備えることで、冷凍庫内で安定して載置できるようになるだけでなく、冷凍庫の冷気を満月部内に受容された水に効率良く伝えることができるので、満月部内の水をいち早く氷結させて透明な氷にすることができるようになる。
【0016】
また、円筒形外箱は、山頂部の外周に配置される前記断熱部材の外径以上の内径に形成されるようにしてよい。
【0017】
こうすることで、氷結中に冷凍庫が開閉されたときに製氷器が揺れ動かないよう安定させることができるので、受容された水が傾いたりこぼれたりするのを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる製氷器によれば、パール富士が象られ、これを天地反転させた形状をなす柔軟性を有するカップ部と、カップ部の周囲に配置される断熱部材と、第一膨張防止カバー及び第二膨張防止カバーとを備えるので、満月を表す球体部分に欠損部分がなく、また、山頂の冠雪を模した白濁部分を有するパール富士を象った美しい外観の氷を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例にかかる製氷器の断面図である。
図2】実施例にかかるシリコンカップの断面図である。
図3】実施例にかかる第一膨張防止カバー及び断熱部材の断面図である。
図4】実施例にかかる製氷器で製造した氷の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、欠損部分がない球体を有し、局所的に白濁を有したパール富士を象った美しい外観の氷を製造することができる製氷器である。以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。なお、以下の説明における方向の表現は、図示した方向によっている。
【実施例
【0021】
図1に示すように、本発明にかかる製氷器100は、パール富士型のシリコンカップ110、断熱部材120、第一膨張防止カバー130、第二膨張防止カバー140、円筒形外箱150、本体蓋160から構成され、これらすべての構成要素は、同一軸での回転体を基本とした形状になっている。
【0022】
シリコンカップ110は、水を受容して球状を有すパール富士を象った形の氷に成形する型枠として機能するものである。シリコンカップ110は、柔軟で薄い素材から作成され、例えば、シリコンゴム、天然ゴムといった素材を用いることができる。シリコンカップ110は、満月部111と山部112とを備える。満月部111と山部112とは一体形成され、パール富士型を天地反転させた形状となっている。これにより、満月部111で氷結される氷に水不足による欠けが生じるのを防ぐことができるので、パール富士の主役ともいえる満月部分の形状を、欠けのないきれいな球体に作製することができる。
【0023】
また、満月部111と山部112の山頂部112aとの境界部分は、満月部111の最大の径よりも窄まっているくびれ部分がある。シリコンカップ110を、満月部111と山部112とを柔軟で薄い素材から一体成型したことは、この形状の氷を取り出しやすくすることにも効果を発揮する。
【0024】
山部112には、充填ライン112cが形成される。充填ライン112cは、山裾部112bの上部に位置しており、これにより水を充填する量を確認することができる。
【0025】
また、図2に示すように、山頂部112aの内側断面は、山頂側を正八角形とし、その開口に向かって徐々に円形に変化する形状となっている。これにより、出来上がった氷の富士山部分の形状をより細かく象ることができる。
【0026】
第一膨張防止カバー130は、低断熱で硬い素材からなり、図1に示すように、満月部111の周囲に位置する。これにより、氷結中に起こる水の膨張によって、柔らかいシリコンカップ110が完全な球体から歪んだ形になって、氷結する氷が型崩れするのを防ぐことができる。また、図3に示すように、後述する断熱部材120と接合する左右2つの部材に分かれているため、シリコンカップ110を左右から挟み込むようにセットすることができる。
【0027】
断熱材部120は、発砲プラスチック系の弾力性を有する素材からなり、シリコンカップ110の山部112の外周に配置される。また、断熱部材120は、開口がある山裾部112b側から満月部111がある山頂部112a側に向かうにつれて徐々に厚みが増加するように形成されている。こうすることで、冷凍庫の冷気をシリコンカップ110に充填された水に段階的に伝導させることができる。これは、水が氷結する際に、空気や不純物のない水から先に透明に凍り、残った空気や不純物を含む水が白濁して凍るという性質を利用するものであり、こうすることで、透明部分と白濁部分とを有する氷を製造することができる。
【0028】
上述のように、断熱部材120は、山頂112aと山裾部112bとで大きく厚みを変えており、山裾部112bから山頂部112aに向かって徐々に厚くしていくことにより、断熱部材120に覆われていない満月部111の水が最初に氷結し始めることで透明となり、次いで薄い断熱部材120で覆われた山裾部112bの水が氷結し透明となり、最後に熱い断熱部材120に覆われた山頂部112aの水が氷結し、この部分が残っていた気泡や不純物によって白濁した氷となる。
【0029】
第二膨張防止カバー140は、第一膨張防止カバー130と同じ低断熱で硬い素材からなり、シリコンカップ110に受容される水の氷結による膨張が作用してずれないようにシリコンカップ110及び断熱部材120の上縁に固定される。空隙140bは、第二膨張防止カバー140と充填ライン112cの高さ位置にある水面との間には空隙が形成されており、その容積は、水の膨張率から計算される膨張体積分を確保している。そして、当該空隙内の空気は空気抜き孔140aから外部に逃がされるようにしているので、氷結による水の膨張によって底面が盛り上がった形状の氷となって、例えば、グラスにいれた時に不安定となるのを防ぐことができる。
【0030】
また、第二膨張防止カバー140と充填ライン112cの高さ位置にある水面との間の空隙だけで水の膨張体積が収まらない場合、山部112の周囲の断熱部材120が弾力性を有するので、第二膨張防止カバー140に圧力をかけずに、山部112の外側方向に膨張を促すことができる。なお、このときに生じる山部112の変形は僅かであり、自然な稜線の形状と見なせる範囲に収まる程度である。
【0031】
円筒形外箱150は、低断熱の素材からなり、山頂部112bから下方部分が柵状になっている。これにより、冷凍庫の冷気を満月部111の水にしっかり伝達することができる。また、図4に示すように、円筒形外箱150の内径は、山頂部112aの外周に位置する断熱部材120の外径とほぼ同じになっているため、断熱部材120が円筒形外箱150に丁度収まって、氷結中に冷凍庫が開閉された場合でも、シリコンカップ110内の水が揺れ動いてこぼれたりするのを防ぐことができる。
【0032】
図4に示すように、空気層170は、円筒形外箱150と断熱部材120との間に形成される空気層であり、これにより、山裾部112bに受容される水への冷気の伝達を調整することができる。
【0033】
また、図4に示すように、空気層180は、本体蓋160と第二膨張防止カバー140との間に形成される空気層であり、空気層170と同様に、山裾部112bに受容される水への冷気の伝達を調整することができる。
【0034】
図4には、本実施例にかかる製氷器100によって作製される氷200が示されている。図4に示すように、氷200には、満月を象った満月部210と、富士山を象った山部220とから形成されており、全体としてパール富士を象った形状をなしている。満月部210は欠けのないきれいな球体に形成される。また、満月部210と山部220の山裾部220bとは透明に形成され、満月部210と山裾部220bとの間に位置する山頂部220aは白濁して形成されており、あたかも山頂に雪が積もった富士山に満月がかかったような体をなしている。
【0035】
本発明は、上記実施例の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせも権利範囲に含むものである。
【符号の説明】
【0036】
100 製氷器
110 シリコンカップ(カップ部)
111 満月部
112 山部
120 断熱部材
130 第一膨張防止カバー
140 第二膨張防止カバー
150 円筒形外箱
【要約】
【課題】 透明度の高い球体部分を含み、内部に白濁部分が配置されるパール富士を象った氷を製造することができる製氷機を提供する。
【解決手段】 満月部111と、山頂部112aと、山裾部121bとを備えることによりパール富士型を天地反転させた形状をなすシリコンカップ110の周囲に、発砲プラスチック系で弾力性を有する断熱材120及び空気層170を配置するとともに、満月部111の外周及び山裾部121bの開口とにそれぞれ硬質のぢ第一膨張防止カバー130及び第二膨張防止カバー140を配置する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4