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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】塀
(51)【国際特許分類】
   E04H 17/14 20060101AFI20230331BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
E04H17/14 101A
E04H9/02 301
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022179630
(22)【出願日】2022-11-09
【審査請求日】2022-11-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518306355
【氏名又は名称】株式会社コンクレタス
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳元 八大
(72)【発明者】
【氏名】池永 征司
(72)【発明者】
【氏名】池永 智浩
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-090832(JP,A)
【文献】実開昭58-188456(JP,U)
【文献】特開2001-279956(JP,A)
【文献】特開昭58-164868(JP,A)
【文献】特開2006-138143(JP,A)
【文献】特開2022-041560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/14
E04H 9/02
E04B 1/02,1/04
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート製の第1塀セグメントと、前記第1塀セグメントに隣接するプレキャストコンクリート製の第2塀セグメントとを備えた塀であって、
前記塀は、基礎部と、前記基礎部から上方に延びる壁部とを有し、
前記第1塀セグメントと前記第2塀セグメントとは、地震時等において、前記壁部を独立して振動させることができるように、前記基礎部で結合構造により強固に連結されており、前記壁部で縁切りされている塀。
【請求項2】
前記第1塀セグメントと前記第2塀セグメントとの壁部の間にスリットを有する
請求項1に記載の塀。
【請求項3】
前記第1塀セグメントと前記第2塀セグメントとは、前記壁部で摺動可能に接している
請求項1又は請求項2に記載の塀。
【請求項4】
前記基礎部と前記壁部とは、分割された状態で連結されている
請求項1又は請求項2に記載の塀。
【請求項5】
前記第1塀セグメントと前記第2塀セグメントとは、前記壁部の頂部に生じる相対変位を許容限界以内に抑えた状態で連結されている
請求項1又は請求項2に記載の塀。
【請求項6】
前記第1塀セグメントと前記第2塀セグメントとは、前記基礎部の両側部で結合されている
請求項1又は請求項2に記載の塀。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塀に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数に分割されたセグメント同士が連結されて構成された間仕切り壁があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】登録実用新案第3185413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の間仕切り壁は、複数に分割されたセグメント同士を連結して境界線に沿って水平方向に延在するように構成されている。しかしながら、従来の間仕切り壁は、隣接するセグメント同士が単純に連結されていて長いため、地震動に対して共振して振幅が大きくなり、間仕切り壁全体が倒壊する可能性があった。また、連結していない場合は、局所的な地盤沈下があると、間仕切り壁の一部が倒壊する可能性があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、振動を抑え、倒壊するリスクを低減できる安全な塀を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決する手段は、次のとおりである。
(1)本発明の一態様に係る塀は、第1塀セグメントと、前記第1塀セグメントに隣接する第2塀セグメントとを備えた塀であって、前記塀は、基礎部と、前記基礎部から上方に延びる壁部とを有し、前記第1塀セグメントと前記第2塀セグメントとは、前記基礎部で結合されており、前記壁部で縁切りされている。
(2)上記(1)において、前記第1塀セグメントと前記第2塀セグメントとの壁部の間にスリットを有してよい。
(3)上記(1)又は(2)において、前記第1塀セグメントと前記第2塀セグメントとは、前記壁部で摺動可能に接していてよい。
(4)上記(1)又は(2)において、前記基礎部と前記壁部とは、分割された状態で連結されていてよい。
(5)上記(1)又は(2)において、前記第1塀セグメントと前記第2塀セグメントとは、前記壁部の頂部における相対変位に制限がある状態で連結されていてよい。
(6)上記(1)又は(2)において、前記第1塀セグメントと前記第2塀セグメントとは、前記基礎部の両側部で結合されていてよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、振動を抑え、倒壊するリスクを低減できる安全な塀を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る塀の斜視図である。
図2】第1実施形態に係る塀の正面図である。
図3】第2実施形態に係る塀の壁部の頂部における変位制限部材の説明図である。
図4】第3実施形態に係る塀の斜視図である。
図5】第3実施形態に係る塀の正面図である。
図6】第4実施形態に係る塀の斜視図である。
図7】第4実施形態に係る塀の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、第1実施形態に係る塀100を説明する。
図1は、第1実施形態に係る塀100の斜視図である。図2は、第1実施形態に係る塀100の正面図である。
【0010】
図1に示すように、第1実施形態に係る塀100は、第1塀セグメント10と、第1塀セグメント10に隣接する第2塀セグメント20とを備えている。
塀100は、基礎部11,21と、基礎部11,21から上方に延びる壁部12,22とを有している。基礎部11,21及び壁部12,22は、それぞれ、コンクリート製である。なお、基礎部11,21は、地中に全部を埋設されてよく、地中に一部を埋設されてよく、地中に埋設されずに地上で地表に載置されてもよい。
【0011】
塀100は、例えば、地盤の上に砕石基礎を敷き均し、その上に18N/mmの強度を有する均しコンクリートを打設し、その上に砂セメント比1対3の敷モルタルを打設し、その上に据え付けられる。そして、その後、高さ約300mmから500mmの背面根入れ(基礎部11,21の上方への土砂の設置)と前面根入れ(基礎部11,21の上方に対して塀100を隔てた反対側への土砂の設置)とを行う。なお、前面根入れ又は背面根入れに加えてさらに上方に加わる根入れの許容根入差は、400mmである。
【0012】
塀100における長手方向に垂直な断面の形状は、例えば、矩形状、L字形状、又は、逆T字形状であってよい。塀100の厚みは等厚であってよい。すなわち、基礎部11,21の断面形状及び壁部12,22の断面形状は、それぞれ、長方形状であってよい。なお、基礎部11,21における壁部12,22に推移する部分には、ハンチが設けられていてよい。
第1塀セグメント10の形状と第2塀セグメント20の形状は同じであってよい。これにより、効率よく塀セグメントを生産できる。
第1塀セグメント10の長手方向の長さと第2塀セグメント20の長手方向の長さは異なっていてよい。これにより、第1塀セグメント10の固有振動数と第2塀セグメント20の固有振動数とをずらすことができ、外力によって両者が同時に共振することを抑制できる。
【0013】
基礎部11,21及び壁部12,22は、継ぎ目なく一体化されたプレキャストコンクリートブロックであってよい。なお、基礎部11,21及び壁部12,22は、それぞれ、独立したプレキャストコンクリートブロックであってよい。
【0014】
基礎部11,21は、地中に埋設されて地盤に支持される。基礎部11,21は、プレキャストコンクリート製であることが好ましい。基礎部11,21は、大部分を地中に埋設された状態とし、上部を地上に露出させた状態にしてよい。これにより、地上に露出した基礎部11,21の上部を、敷地等の境界として視認できる。基礎部11,21は、壁部12,22と継ぎ目なく一体化した状態であってよい。基礎部11,21は、壁部12,22と一体化されたプレキャストコンクリート製の塀100の一部であってよい。また、地上に露出した基礎部11,21の上部に、壁部12,22を連結して又は現場打ちコンクリートとして打ち継いで施工することで、塀100を完成できる。
【0015】
基礎部11,21における長手方向に垂直な断面の形状は、例えば、矩形状、L字形状、又は、逆T字形状であってよい。
【0016】
基礎部11,21の上部には、上部を露出したアンカーボルトが埋設されていてよい。これにより、基礎部11,21の上部に、壁部12,22を、構造的に連続するように強固に結合できる。
【0017】
互いに隣接する第1塀セグメント10の基礎部11と第2塀セグメント20の基礎部21とは、結合されている。
【0018】
具体的には、図1及び図2に示すように、例えば、塀100の基礎部11,21におけるハンチの領域に、塀100の長手方向に延在する短冊状(長板状)の締結部材50の一端を係止部G(例えば、第1塀セグメント10の基礎部11に設けられたねじインサートとそれに締結されるボルトの組み合わせ)で係止し、他端を係止部G(例えば、第2塀セグメント20の基礎部21に設けられたねじインサートとそれに締結されるボルトの組み合わせ)で係止する。このような結合構造により、互いに隣接する第1塀セグメント10の基礎部11と第2塀セグメント20の基礎部21とは、強固に結合される。よって、施工時において基礎部11,21の上に埋め戻す(根入れする)土砂等による作用によってセグメントが移動して施工位置がずれたりすることを抑制し、塀100を正確に施工できる。また、地震時等において、基礎部11,21を、各塀セグメントの振動の中心にして、壁部12,22を各塀セグメント別に独立して振動させることができる。
なお、結合構造の配置は、基礎部11,21であればよい。結合構造は、例えば、基礎部11,21における壁部12,22との境界に配置されてもよい。この際、結合構造は、壁部12,22に覆われたり、埋められたりしてもよい。
また、第1塀セグメント10と第2塀セグメント20とは、基礎部11,21の両側部(塀100の断面視における左右両側)で結合されていてよい。これにより、第1塀セグメント10の基礎部11と第2塀セグメント20の基礎部21とを、より強固に結合でき、壁部12,22の固有振動数を高めて振動変位を抑制できる。
【0019】
締結部材50は、第1塀セグメント10の基礎部11と第2塀セグメント20の基礎部21との間に亘って、締結部材50の長手方向が塀100の長手方向に沿うように配置されていることが好ましい。これにより、第1塀セグメント10と第2塀セグメント20との間に作用する引張力とせん断力に対して効果的に抵抗させることができる。よって、施工時における施工位置のずれを抑制できるとともに、地震時のように横荷重が作用した場合においても基礎部11,21における結合した状態を保つように効果的に抵抗できる。
【0020】
壁部12,22は、基礎部11,21の上部に連結して施工される。壁部12,22は、基礎部11,21と継ぎ目なく一体化した状態であってよい。壁部12,22は、基礎部11,21と一体化されたプレキャストコンクリート製の塀100の一部であってよい。また、壁部12,22は、基礎部11,21の上部に現場打ちコンクリートとして打ち継がれることで、完成した塀100の一部となってもよい。
【0021】
壁部12,22における長手方向に垂直な断面の形状は、例えば、鉛直に延びる長方形状であってよい。
【0022】
壁部12,22は、配筋用スペーサを利用してかぶりを確保された、シングル配筋(センター配筋)又はダブル配筋を備えた鉄筋コンクリートであってよい。
【0023】
壁部12,22は、表面に、適宜、例えば、レンガ積の化粧材又はレンガ積を模した模様を形成してよい。壁部12,22は、貫通する開口部を有していてもよい。これにより、壁部12,22の側面の一方から他方に雨水、地下水等の水を流すことができるので、塀100に作用する水圧を低減できる。また、壁部12,22は、貫通する開口部を有していることにより、防犯上の見通しを高め、通風を確保して耐風性を向上できるとともに、意匠の自由度を向上させることができる。
【0024】
壁部12,22は、頂部13,23に、吊金具を取り付けるための吊金具取付部(不図示)を有していることが好ましい。吊金具取付部は、吊時の安定性確保のため、塀セグメント一つ当り、例えば、壁部12,22の頂部13,23に2箇所及び基礎部11,21に1箇所の合計3箇所であることが好ましい。
【0025】
壁部12,22は、平面視において、例えば、円弧状に湾曲した角を有していてよい。図3は、平面視において、壁部12,22の端部が半円形状になっている場合の例を示している。これにより、塀100が、平面視において、第1塀セグメント10と第2塀セグメント20とが直線状ではなく所定の角度で折れるように隣接していても、角度に依らず、第1塀セグメント10及び第2塀セグメント20との間に生じるスリットSの水平方向の間隔を一定にできる。また、隣接する壁部12,22が、それぞれ、平面視において、他方の湾曲した角に対向する湾曲した角を有しており、それらの対向している湾曲した角同士が接している場合、端部が全面(壁部12,22における矩形状の縦断面)で接する場合と比べて、振動する際の摩擦を小さくできる。よって、塀セグメント間を縁切りできるとともに、湾曲した角の曲率半径を可変させて振動の減衰力を調整できる。
【0026】
ここで、第1塀セグメント10と第2塀セグメント20とは、基礎部11,21で結合されており、壁部12,22で縁切りされている。なお、縁切りとは、応力の分断をはかるため、構造的に分離することである。このように、塀100において、第1塀セグメント10の基礎部11と第2塀セグメント20の基礎部21とは、結合されている。これにより、施工時において基礎部11,21の上に埋め戻す土砂等による作用によってセグメントが移動して施工位置がずれたりすることを抑制し、塀100を正確に施工できる。また、塀100の第1塀セグメント10と第2塀セグメント20とは、壁部12,22で縁切りされている。これにより、隣接する第1塀セグメント10と第2塀セグメント20との壁部12,22が互いに拘束し合わないので、それぞれのセグメントの壁部12,22を、結合された基礎部11,21を中心として、比較的高い固有振動数で、独立して自由に振動させることができる。そして、塀100の全長にわたって一体として振動する場合における固有振動数に比べて高い固有振動数で振動させることができ、振幅を小さくできる。よって、比較的低い振動数の地震動に対して塀100を共振しにくくでき、塀100の振幅を小さくして振動を抑え、塀100が倒壊するリスクを低減できる。そして、塀100を安定的で安全な状態にでき、安全な塀100を提供できる。
【0027】
第1塀セグメント10と第2塀セグメント20との壁部12,22の間にスリットSを有することが好ましい。図2に示すように、スリットSは、第1塀セグメント10の壁部12と第2塀セグメント20の壁部22との間に生じる細い隙間である。第1塀セグメント10と第2塀セグメント20との壁部12,22の間は、シール材、モルタル等で埋められることで拘束されていない。このため、第1塀セグメント10の壁部12と第2塀セグメント20の壁部22とを縁切りされた状態にできるとともに、第1塀セグメント10の壁部12と第2塀セグメント20の壁部22とを完全に離れた状態にできる。これにより、結合された基礎部11,21を中心として、それぞれの壁部12,22を、隣接する壁部12,22から作用を受けることなく、完全に独立して比較的小さな振幅で自由に振動させることができる。よって、塀100の振動を抑え、塀100が倒壊するリスクを低減でき、塀100を安定的で安全な状態にできる。なお、第1塀セグメント10と第2塀セグメント20との壁部12,22の間は、シール材、モルタル等の目隠材で埋められてもよい。その場合、目隠材と壁部12との間又は目隠材と壁部22との間の少なくとも一方を、縁切りされた状態とする。これにより、第1塀セグメント10と第2塀セグメント20との壁部12,22の間を目隠材で埋めて目隠しした状態で、第1塀セグメント10の壁部12と第2塀セグメント20との壁部22とを互いに拘束されていない状態にできる。よって、安全で見栄えのよい塀100にできる。
【0028】
第1塀セグメント10と第2塀セグメント20とは、壁部12,22で摺動可能に接していてよい。これにより、第1塀セグメント10の壁部12と第2塀セグメント20の壁部22とを縁切りされた状態にできるとともに、塀100に地震力が作用して壁部12,22が振動した際に、第1塀セグメント10の壁部12と第2塀セグメント20の壁部22との間に生じる摩擦力により、壁部12,22に生じた振動を減衰させることができる。よって、塀100の振動を抑え、塀100が倒壊するリスクを低減でき、塀100を安定的で安全な状態にできる。
【0029】
基礎部11,21と壁部12,22とは、分割された状態で連結されていてよい。これにより、基礎部11,21を施工した後に、基礎部11,21の上に壁部12,22を施工して、塀100を完成することができる。よって、壁部12,22を施工する前において、基礎部11,21を施工した時点で、基礎部11,21の上部を地上に露出させておくことで、基礎部11,21を、境界ブロックとして、敷地等の境界を示す用途に用いることができる。また、基礎部11,21を施工する時期と壁部12,22を施工する時期をずらして塀100を完成させることができるため、塀100を施工するスケジュールの自由度を高めることができる。
【0030】
(第2実施形態)
次に、第1塀セグメント10と第2塀セグメント20とが、頂部13,23における相対変位に制限がある状態で連結された塀100の第2実施形態を説明する。
図3は、第2実施形態における塀100の壁部12,22の頂部13,23における変位制限部材30の説明図である。
第2実施形態に係る塀100は、第1実施形態に係る塀100と同様に、第1塀セグメント10と、第1塀セグメント10に隣接する第2塀セグメント20とを備えている。また、塀100は、基礎部11,21と、基礎部11,21から上方に延びる壁部12,22とを有している。また、第1塀セグメント10と第2塀セグメント20とは、基礎部11,21で結合されており、壁部12,22で縁切りされている。なお、第1塀セグメント10と第2塀セグメント20との壁部12,22の間のスリットSは、あっても、なくてもよい。なお、第1塀セグメント10と第2塀セグメント20とは、壁部12,22で摺動可能に接していてもよい。
【0031】
ここで、図3に示すように、第2実施形態における塀100の第1塀セグメント10と第2塀セグメント20とは、壁部12,22の頂部13,23における相対変位に制限がある状態で連結されていてよい。相対変位に制限がある状態で連結されているとは、例えば、塀セグメント単位で振動するような場合に、隣接する塀セグメント間の相対変位があらかじめ設定された制限値(例えば、20mm)以上にならないように規制されている状態で連結されていることを意味する。具体的には、第1塀セグメント10の頂部13と第2塀セグメント20の頂部23とは、変位制限部材30で連結されていてよい。
【0032】
変位制限部材30は、第1塀セグメント10の頂部13と第2塀セグメント20の頂部23との相対変位を制限する。したがって、第1塀セグメント10及び第2塀セグメント20がそれぞれ独立して振動したりして相対変位する際に、第1塀セグメント10の頂部13と第2塀セグメント20の頂部23との相対変位があらかじめ設定された制限値以上にならないようにできる。これにより、第1塀セグメント10及び第2塀セグメント20がそれぞれ独立して振動する自由を妨げることなく、塀100の相対変位(振幅)を小さくして振動を抑え、塀100が倒壊するリスクを低減でき、塀100を安定的で安全な状態にできる。
【0033】
塀100に取り付けられた状態における変位制限部材30の平面視は、小判状であってよく、略矩形状であってよく、中央を括れさせた形状であってもよい。
【0034】
変位制限部材30における塀100の長手方向(水平方向)に対して垂直な断面は、横長の略矩形状断面であってよく、略U字形状であってよく、略L字形状であってもよい。
【0035】
第1塀セグメント10又は第2塀セグメント20と変位制限部材30との間には、遊間eがなくてよく、遊間eがあってもよい。遊間eがない場合、第1塀セグメント10の頂部13と第2塀セグメント20の頂部23との間の相対変位が変位制限部材30と係止部材40との間の摩擦力(係止部材40がボルトである場合は、そのボルトにかかる締付トルク)に応じて抑えられ、頂部13,23と基礎部11,21を節として壁部12,22の高さ方向の中央部が腹となる比較的高い振動数で壁部12,22が振動する。遊間eがある場合、第1塀セグメント10の頂部13と第2塀セグメント20の頂部23との間に、最大相対変位が制限された相対変位が生じ、基礎部11,21を中心とする片持ち梁のように壁部12,22が振動する。
【0036】
変位制限部材30は、例えば、第1塀セグメント10の頂部13に設けられた係止部材40を介して係止される第1穴と第2塀セグメント20の頂部23に設けられたボルト等の係止部材40を介して係止される第2穴を有する板状体であってよい。
【0037】
係止部材40は、例えば、ボルトであり、第1塀セグメント10及び第2塀セグメント20のそれぞれの頂部13,23に設けられてよい。
【0038】
第1穴及び第2穴は、それぞれの穴を貫通する係止部材40に対して、第1塀セグメント10の頂部13における振動変位と第2塀セグメント20の頂部23における振動変位との相対変位の許容限界に応じた大きさの寸法の穴であってよい。これにより、第1塀セグメント10の頂部13と第2塀セグメント20の頂部23との相対変位を、許容限界以内に抑えることができる。
【0039】
変位制限部材30は、例えば、一端を第1塀セグメント10の頂部13に直接的に固定されてもよい。この際、変位制限部材30の他端は、第2塀セグメント20の頂部23に設けられた係止部材40に対して、遊間eをもって貫通される穴又は遊間eなく嵌められる穴を有していてよい。これにより、相対変位を、許容限界以内に抑えることができる。これにより、第1塀セグメント10の頂部13と第2塀セグメント20の頂部23との相対変位を、許容限界以内に抑えることができる。
【0040】
(第3実施形態)
次に、図4及び図5を参照し、第3実施形態に係る塀100を説明する。
図4は、第3実施形態に係る塀100の斜視図である。図5は、第3実施形態に係る塀100の正面図である。
【0041】
図4及び図5に示すように、第3実施形態に係る塀100は、第1実施形態に係る塀100と同様に、第1塀セグメント10と、第1塀セグメント10に隣接する第2塀セグメント20とを備えている。そして、第3実施形態に係る塀100は、第1実施形態に係る塀100と同様に、基礎部11,21と、基礎部11,21から上方に延びる壁部12,22とを有している。また、第3実施形態に係る塀100は、第1実施形態に係る塀100と同様に、互いに隣接する第1塀セグメント10の基礎部11と第2塀セグメント20の基礎部21とは、結合されている。
【0042】
ここで、第3実施形態に係る塀100と第1実施形態に係る塀100とは、互いに隣接する第1塀セグメント10の基礎部11と第2塀セグメント20の基礎部21との結合構造の位置が異なる。第3実施形態に係る塀100では、結合構造は、塀100の基礎部11,21におけるハンチの領域ではなく、略水平な上面の領域に位置している。
【0043】
具体的には、図4及び図5に示すように、塀100の基礎部11,21にハンチが設けられる場合でも設けられない場合でも、塀100のハンチの領域ではない、塀100の基礎部11,21における略水平な上面の領域において、塀100の長手方向に延在する短冊状(長板状)の締結部材50の一端を係止部G(例えば、第1塀セグメント10の基礎部11に設けられたねじインサートとそれに締結されるボルトの組み合わせ)で係止し、他端を係止部G(例えば、第2塀セグメント20の基礎部21に設けられたねじインサートとそれに締結されるボルトの組み合わせ)で係止してよい。これにより、互いに隣接する第1塀セグメント10の基礎部11と第2塀セグメント20の基礎部21とは、強固に結合される。そして、結合構造の施工面が重力方向に対して垂直になるので、結合構造の施工をしやすくできる。
締結部材50は、第1塀セグメント10の基礎部11と第2塀セグメント20の基礎部21との間に亘って、締結部材50の長手方向が塀100の長手方向に沿うように配置されていることが好ましい。
なお、互いに隣接する第1塀セグメント10の基礎部11と第2塀セグメント20の基礎部21との結合構造は、基礎部11,21におけるいずれの位置に配置してもよい。
【0044】
(第4実施形態)
次に、図6及び図7を参照し、第4実施形態に係る塀100を説明する。
図6は、第4実施形態に係る塀100の斜視図である。図7は、第4実施形態に係る塀100の正面図である。
【0045】
図6及び図7に示すように、第4実施形態に係る塀100は、第1実施形態に係る塀100及び第3実施形態に係る塀100と同様に、第1塀セグメント10と、第1塀セグメント10に隣接する第2塀セグメント20とを備えている。そして、第4実施形態に係る塀100は、第1実施形態に係る塀100及び第3実施形態に係る塀100と同様に、基礎部11,21と、基礎部11,21から上方に延びる壁部12,22とを有している。また、第4実施形態に係る塀100は、第1実施形態に係る塀100及び第3実施形態に係る塀100と同様に、互いに隣接する第1塀セグメント10の基礎部11と第2塀セグメント20の基礎部21とは、結合されている。
【0046】
ここで、第4実施形態に係る塀100と第1実施形態に係る塀100又は第3実施形態に係る塀100とは、互いに隣接する第1塀セグメント10の基礎部11と第2塀セグメント20の基礎部21との結合構造が異なる。
第4実施形態に係る塀100では、結合構造は、塀100の長手方向に延在するボルト及びナット等の締結部材50を、第1塀セグメント10の基礎部11に設けられた、締結部材50における一端部の座面となる係止部Gから、第2塀セグメント20の基礎部21に設けられた、締結部材50における他端部の座面となる係止部Gまで、に亘って配置し、締結部材50における一端部と他端部との間にある基礎部11,21の一部を圧縮して締結したものであってよい。これにより、互いに隣接する第1塀セグメント10の基礎部11と第2塀セグメント20の基礎部21とは、強固に結合される。
結合構造は、図6及び図7に示すように、塀100の基礎部11,21における略水平な上面の領域に位置していてよく、ハンチの領域に位置していてもよい。結合構造が基礎部11,21における略水平な上面の領域に位置していると、結合構造の施工面が重力方向に対して垂直になるので、結合構造の施工をしやすくできる。
締結部材50は、第1塀セグメント10の基礎部11と第2塀セグメント20の基礎部21との間に亘って、締結部材50の長手方向が塀100の長手方向に沿うように配置されていることが好ましい。これにより、互いに隣接する第1塀セグメント10の基礎部11と第2塀セグメント20の基礎部21とは、強固に結合される。
【0047】
以上説明したように、実施形態に係る塀100は、第1塀セグメント10と、第1塀セグメント10に隣接する第2塀セグメント20とを備えている。塀100は、基礎部11,21と、基礎部11,21から上方に延びる壁部12,22とを有している。第1塀セグメント10と第2塀セグメント20とは、基礎部11,21で結合されており、壁部12,22で縁切りされている。これにより、隣接する第1塀セグメント10と第2塀セグメント20との壁部12,22が互いに拘束し合わないので、それぞれの塀セグメントの壁部12,22を、結合された基礎部11,21を中心として、比較的高い固有振動数で、独立して自由に振動させることができる。そして、塀100の全長にわたって一体として振動する場合における固有振動数に比べて高い固有振動数で振動させることができ、振幅を小さくできる。よって、比較的低い振動数の地震動に対して塀100を共振しにくくでき、振幅を小さくして塀100の振動を抑え、塀100が倒壊するリスクを低減できる。そして、塀100を安定的で安全な状態にでき、安全な塀100を提供できる。
【0048】
なお、本発明の技術的範囲は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、壁部12,22で縁切りされている形態として、第1塀セグメント10と第2塀セグメント20との壁部12,22の間にスリットSを有している状態で、壁部12,22で摺動可能に接していてもよい。すなわち、塀100は、壁部12,22の間の一部にスリットSを有し、他部で摺動可能に接していてもよい。具体的には、例えば、塀100は、壁部12,22の間の鉛直方向における中央にスリットSを有し、壁部12,22の間の鉛直方向における上端部及び下端部で摺動可能に接していてもよい。これにより、スリットSを有することによって防犯上の見通しを高め、通風を確保して耐風性を向上できるとともに、摺動可能に接している部分を有することにより振動を抑制でき、スリットS及び摺動可能に接する部分の位置、数、構造、ピッチ、寸法等を自由にアレンジでき、塀100の意匠を向上させることができる。
【0049】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、上述の実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0050】
100 塀
10 第1塀セグメント
11,21 基礎部
12,22 壁部
13,23 頂部
20 第2塀セグメント
30 変位制限部材
40 係止部材
50 締結部材
G 係止部
S スリット
e 遊間

【要約】
【課題】振動を抑え、倒壊するリスクを低減できる安全な塀を提供する。
【解決手段】塀100は、第1塀セグメント10と、第1塀セグメント10に隣接する第2塀セグメント20とを備えている。塀100は、基礎部11,21と、基礎部11,21から上方に延びる壁部12,22とを有している。第1塀セグメント10と第2塀セグメント20とは、基礎部11,21で結合されており、壁部12,22で縁切りされている。塀100は、第1塀セグメント10と第2塀セグメント20との壁部12,22の間にスリットSを有する。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7