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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】表示装置を備える車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20230331BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G02B27/01
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019059194
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020157920
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 勝長
(72)【発明者】
【氏名】森 俊也
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/203371(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、ユーザーから見える外部の実像に重なるように虚像を表示する表示装置であって、
表示媒体に前記虚像を投影するとともに、当該虚像の第1基準線を投影する投影部を備え、
前記投影部は、測距部により測定された前記実像に含まれる第2基準線までの距離に基づいて前記第1基準線を投影し、
前記表示媒体への前記虚像の上下方向の投影位置、及び、前記表示媒体への前記虚像の前記車両のロール軸回りの傾斜は、前記ユーザーの操作量に基づいて調整可能である、
表示装置。
【請求項2】
前記投影部は、前記測距部により測定された距離に対応した上下位置に、前記第1基準線を投影する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記ユーザーの操作量に基づいて調整された投影位置をキャリブレーション値として記憶する、
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第2基準線は、照射部により前記車両の前方の道路に照射される可視光により形成される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表示装置が搭載された車両であって、
前記測距部と、
前記ユーザーの操作量に基づいて前記表示媒体への前記虚像の上下方向の投影位置を調整可能な投影位置調整操作部と、
前記照射部と、を備え、
前記照射部は、プロジェクタ機能を有するヘッドライトである、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイ(Head‐Up Display、以下、HUDとも表記する)などの表示装置を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置として、ヘッドアップディスプレイ(Head‐Up Display、以下、HUDとも表記する)が知られている。HUDは、透光性の表示媒体に画像を投影し、この画像を、表示媒体越しに見える物に重畳するようユーザーに提示して、いわゆるAR(Augmented Reality)を実現することができる。
【0003】
そして車載用のHUDには、運転を支援する情報などを、ウインドシールドの前方に、現実の景色と重畳して見える虚像として運転者に提示するものがある。この種の表示装置は、例えば特許文献1、2などで開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、車両の姿勢角の変化に起因する虚像の表示ズレを低減する技術が開示されている。具体的には、特許文献3には、姿勢角センサーを用いて自動で車両の姿勢角を検知し、この検知結果に基づいて虚像の表示ズレを補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-257228号公報
【文献】特開2018-045103号公報
【文献】特開2018-058544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献3で開示された技術を用いれば、車両の姿勢角の変化に起因する虚像の表示ズレを自動で補正することができるが、姿勢角センサーに経年劣化などによって計測誤差が発生すると、再び虚像の表示ズレが生じてしまう問題がある。虚像の表示ズレを観測するのは非常に困難なため、使用時間の経過につれて虚像の表示ズレが増大していくおそれがある。また、現状のところこのようにセンサーに測定誤差がある場合などには、表示ズレが生じた虚像を正しい表示に復帰させる手段もないという課題がある。
【0007】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであり、車両の姿勢角の変化に起因する虚像の表示ズレを容易かつ正確に補正できる、表示装置を備える車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の表示装置を備える車両の一つの態様は、
ユーザーから見える外部の実像に重なるように虚像を表示する表示装置が搭載された車両であって、
表示媒体に前記虚像を投影するとともに、当該虚像の基準線を投影する投影部と、
前記実像に含まれる基準線までの距離を測定する測距部と、
ユーザーの操作量に基づいて、前記表示媒体への前記虚像の上下方向の投影位置を調整可能な投影位置調整操作部と、
を具備する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、車両の姿勢角の変化に起因する虚像の表示ズレを容易かつ正確に補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】HUDを備える車両を示す図
図2】実施の形態における表示装置によって光が投射される領域の一例を示す図
図3】前景に虚像が重なるようにして表示された一例を示す図
図4】虚像表示位置調整機能を実現するための実施の形態の要部構成を示す図
図5】照射部による実像の基準線の照射の様子を示す図
図6】運転者からの前方視界を示す図
図7】投影位置調整操作部としての機能を有するステアリングスイッチを示した図
図8】他の実施の形態の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
<1>表示装置の概略構成
図1は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)である表示装置100を備える車両200を示す。表示装置100は、車両200のダッシュボード220の上面付近に取り付けられる。
【0013】
表示装置100は、ウインドシールド(いわゆるフロントガラス)210における、一点鎖線で示される運転手の視界内にある領域D10に光を投射する。投射された光の一部はウインドシールド210を透過するが、他の一部はウインドシールド210に反射される。この反射光は、運転者の目に向かう。運転者は、目に入ったその反射光を、ウインドシールド210越しに見える実在の物体を背景に、ウインドシールド210を挟んで反対側(車両200の外側)にある物体の像のように見える虚像Viとして知覚する。
【0014】
図2は、表示装置100によって光が投射される領域である領域D10の一例を示す図である。領域D10は、例えば図2に破線で囲まれた領域として示されるように、ウインドシールド210の運転席側の下寄りに位置する。ダッシュボード220に取り付けられた表示装置100は、図1に示されるように領域D10に光を投射することでウインドシールド210に画像を投影する。これにより運転者からは車両200の外側にある物体の像のように見える虚像Viが生成される。
【0015】
なお、ウインドシールド210に投影された画像は、その領域D10内の上下位置によって、虚像Viにおいて運転者から異なる距離にあるように知覚され得る。例えば図1及び図2の例では、領域D10は運転者の目の高さよりも下に位置するため、領域D10でより低い位置にある画像は、虚像Viにおいては運転者からより近い位置に、領域D10に投影された画像内でより高い位置にある物は、虚像Viにおいては運転者からより遠い位置にある物として知覚され得る。このように知覚される原理は、幾何学的な遠近法の一種(上下遠近法)によって説明される。
【0016】
図3は、表示装置100によって生成される虚像の一例、及びこの虚像と、走行中の車両200の運転者から見た車両200前方の景色との重畳の一例を示す図である。
【0017】
図3全体は、車両200を運転中の運転者(図示なし)の視界内の景色の一部を模式的に示す。ただし表示装置100から画像が投影される領域D10を示す破線の枠は、本実施の形態の説明の便宜上示されるものであり、存在して運転者に知覚されるものではない。参照符号200が示すのは、車両200の一部であるボンネットである。また、参照符号V10が付された矢印の像は、表示装置100によって生成されて運転者に知覚されている虚像Viの例であるAR(Augmented Reality)ルートである。
【0018】
図3に示されるように、虚像であるARルートV10は、運転者の視界内で実際に見える景色に重畳するように表示される。実際上、ARルートV10は、道路上に重畳して表示される。これにより、運転者はARルートV10で示される帯状の領域上を走行するように誘導される。
【0019】
<2>虚像表示位置調整機能
図4は、本実施の形態の車両200に搭載された虚像表示位置調整機能を実現するための要部構成を示す図である。
【0020】
本実施の形態の車両は、投影部101と、照射部102と、測距部103と、投影位置調整操作部110と、を有する。
【0021】
投影部101は、ARルートなどの画像データを入力し、画像データに基づく虚像をウインドシールド210に表示させる。具体的には、投影部101は、光源部、走査部及び光学系などを有する。本実施の形態の投影部101は、ウインドシールド210に虚像の基準線L2を投影できるようになっている。
【0022】
照射部102は、図5に示したように、自車前方の道路に、道路の幅方向に亘って、実像の基準線L1となる可視光を照射する。本実施の形態の場合、照射部102は、プロジェクタ機能を有するヘッドライトによって具現化されている。
【0023】
測距部103は、自車から基準線L1までの距離を測定する。測距部103は、例えば可視光ステレオカメラなどにより具現化されている。なお、測距部103は、可視光ステレオカメラに限らず、基準線L1までの距離を測定できる種々のデバイスを用いることができる。測距部103によって得られた基準線L1までの距離情報は、投影部101に入力される。
【0024】
投影部101は、測距部103から入力した基準線L1までの距離情報で示される距離に対応した上下位置に、虚像の基準線L2を投影する。例えば、測距部103により測定された基準線L1までの距離が50mの場合には、50mの位置の実像の基準線L1に重なって見えるような虚像の基準線L2をウインドシールド210に投影する。
【0025】
投影位置調整操作部110は、ユーザーの操作量に基づいて、投影部101によるウインドシールド210への虚像の上下方向の投影位置を調整する。投影位置調整操作部110は、運転者が運転姿勢でウインドシールド210から実像及び虚像を見ながらでも手の届く範囲に設けられている。本実施の形態の場合、投影位置調整操作部110は、ステアリングスイッチ110aにより具現化されている。
【0026】
図6は、運転者からの前方視界を示す図である。運転者からは、照射部102から照射された実像の基準線L1が見える。また、運転者からは、投影部101によりウインドシールド210に投影された虚像の基準線L2が見える。
【0027】
基準線L2は基準線L1に対応する位置に投影しているのであるから、基準線L2は基準線L1に重なって見えるべきである。しかし、車両200の姿勢角が基本姿勢から変化すると基準線L2が基準線L1と重なって見えなくなる。例えば、後部座席に乗客が座ると車両200は若干後方に傾く。すると、虚像の基準線L2は車両200の後方への傾きに連動して上方へと移動する。
【0028】
本実施の形態では、この車両200の姿勢角の変化に起因する虚像の上下方向へのズレを、投影位置調整操作部110を用いて手動にて補正できるようになっている。
【0029】
図7は、投影位置調整操作部110としての機能を有するステアリングスイッチ110aを示した図である。左側のステアリングスイッチ110aの上下方向の操作に応じて基準線L2の左端が上下し、右側のステアリングスイッチ110aの上下方向の操作に応じて基準線L2の右端が上下するようになっている。これにより、図6に示したように、基準線L2が基準線L1よりも上方向にズレている場合には、左右両方のステアリングスイッチ110aを下方向に操作して基準線L2を基準線L1に重なる位置まで移動させればよい。また、左右のステアリングスイッチ110aの操作量によって基準線L2の左右両端の上下方向の移動量を独立して調整できるので、基準線L2が基準線L1に対して平行でなく傾斜してズレている場合でも、基準線L2を基準線L1に重なるように調整することができる。つまり、ロール補正を行うこともできる。
【0030】
上述したような虚像表示位置調整処理は、運転者によって所定の操作ボタンなどの操作部(図示せず)が操作され、虚像表示位置調整モードとされたときに行われる。例えば、運転者は、これから運転を開始する前などに虚像表示位置調整モードに設定し、虚像の表示位置を調整してから運転をするとよい。つまり、乗員の座る場所などに応じて車両の姿勢角が変動するので、この姿勢角の変動による虚像の見える位置の変動を投影位置調整操作部110によって補正してから運転を開始するとよい。
【0031】
また、虚像の調整位置をキャリブレーション値として記憶しておいてもよい。このようにすれば、例えば投影位置調整操作部110を使って補正したときと同じような配置で乗員が座ったときには、投影部101が記憶したキャリブレーション値を読み出して虚像の投影位置を補正することができるようになる。この結果、投影位置調整操作部110によって手動による調整回数を減らすことができる。
【0032】
<3>まとめ
以上説明したように、本実施の形態によれば、項目<2>で説明したように、ウインドシールド210などの表示媒体に虚像を投影するとともに当該虚像の基準線L2を投影する投影部101と、実像に含まれる基準線L1までの距離を測定する測距部103と、ユーザーの操作量に基づいて、前記表示媒体への前記虚像の上下方向の投影位置を調整可能な投影位置調整操作部110と、を設けたことにより、車両200の姿勢角の変化に起因する虚像の表示ズレを容易かつ正確に補正できる。
【0033】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0034】
上述の実施の形態では、照射部102を設け、照射部102によって実像の基準線L1を形成する場合について述べたが、基準線L1は照射部102によって形成したものに限らない。例えば、道路上の停止ラインなどを基準線L1としてもよい。この場合、図8に示したように、照射部102を省略することができる。なお、ここでの省略とは、車両から照射部102を省略するという意味ではなく、虚像の表示位置を調整する際に照射部102を用いないという意味である。
【0035】
ちなみに、図4では、便宜上、照射部102と測距部103とを分けて記載したが、プロジェクタ機能を有するヘッドライトなどでは決まった距離に光を照射することを目的として測距部が組み込まれることも考えられる。この場合、測距部103から投影部101へは距離情報を送らなくてもよい。何故なら、照射部102からは第1の距離(例えば50m)に基準線L1を形成し、投影部101ではこの第1の距離に対応した位置に基準線L2を投影することを予め設定しておけばよいからである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ヘッドアップディスプレイのように、ユーザーから見える外部の実像に重なるように虚像を表示する表示装置における、虚像の表示ズレを解消する技術として有用である。
【符号の説明】
【0037】
100 表示装置
101 投影部
102 照射部
103 測距部
110 投影位置調整操作部
110a ステアリングスイッチ
200 車両
210 ウインドシールド
220 ダッシュボード
L1 実像の基準線
L2 虚像の基準線
Vi 虚像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8