(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】4相電力分配器及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01P 5/22 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
H01P5/22 A
(21)【出願番号】P 2019131941
(22)【出願日】2019-07-17
【審査請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】林 等
(72)【発明者】
【氏名】原田 教広
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-062753(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/140802(US,A1)
【文献】特開2001-168608(JP,A)
【文献】特開平10-150307(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1815804(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入出力端子と第2の入出力端子との間に接続された、設定周波数で4分の1波長の電気長を有する第1の伝送線路と、
前記第2の入出力端子と第3の入出力端子との間に接続された、前記設定周波数で4分の1波長の電気長を有する第2の伝送線路と、
前記第3の入出力端子と第4の入出力端子との間に接続された、前記設定周波数で4分の1波長の電気長を有する第3の伝送線路と、
前記第4の入出力端子と第5の入出力端子との間に接続された、前記設定周波数で4分の1波長の電気長を有する第4の伝送線路と、
前記第5の入出力端子と第6の入出力端子との間に接続された、前記設定周波数で4分の1波長の電気長を有する第5の伝送線路と、
前記第6の入出力端子と前記第1の入出力端子との間に接続された、前記設定周波数で4分の3波長の電気長を有する第6の伝送線路と、
を有するラットレース回路と、
前記第2の入出力端子と第7の入出力端子との間に接続された
前記設定周波数で2分の1波長の電気長を有する第7の伝送線路である第1遅延回路と、
前記第6の入出力端子と第8の入出力端子との間に接続された
前記設定周波数で2分の1波長の電気長を有する第8の伝送線路である第2遅延回路と、
を備え、
前記第1の伝送線路、前記第2の伝送線路、前記第3の伝送線路、前記第4の伝送線路、前記第5の伝送線路、前記第6の伝送線路、前記第1遅延回路、及び前記第2遅延回路の特性インピーダンスは同一である、
4相電力分配器。
【請求項2】
前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路との接続部に並列共振回路が接続されている、
請求項
1に記載の4相電力分配器。
【請求項3】
前記並列共振回路は、前記設定周波数での電気長が2分の1波長のオープンスタブである、
請求項
2に記載の4相電力分配器。
【請求項4】
前記並列共振回路は、前記設定周波数での電気長が4分の1波長のショートスタブである、
請求項
2に記載の4相電力分配器。
【請求項5】
前記並列共振回路は、並列に接続されたインダクタとキャパシタとを有する、
請求項
2に記載の4相電力分配器。
【請求項6】
前記第1の伝送線路、前記第2の伝送線路、前記第3の伝送線路、前記第4の伝送線路、前記第5の伝送線路、前記第6の伝送線路、前記第1遅延回路、及び前記第2遅延回路のうち、少なくとも一つの伝送線路が集中定数素子で構成されている、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の4相電力分配器。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載の4相電力分配器と、
前記第1の入出力端子、前記第3の入出力端子、前記第4の入出力端子、前記第5の入出力端子、前記第7の入出力端子、及び前記第8の入出力端子のそれぞれに接続されており、前記特性インピーダンスと同一のインピーダンスを有する複数の負荷と、
を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された高周波信号を4つの信号に電力分配して出力するラットレース回路を含む4相電力分配器及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力分配器とは、一つの入力端子に入力された高周波信号を、複数の出力端子に分配して出力する回路である(例えば、特許文献1、2及び非特許文献1)。このような電力分配器は、受動回路のみで構成するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-80063号公報
【文献】特開2010-62753号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】津留正臣・谷口英司著、「直交差動出力6ポートブランチライン型ハイブリッド回路の解析」、信学技報MW2013-143、電子情報通信学会、2013年11月、P70-73
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
直交変調等に使用することを目的として、4相電力分配器の4つの出力端子から出力される出力信号間の位相差を90度に調整することがある。特許文献1及び特許文献2に記載された4相電力分配器では、出力信号間の位相差が周波数に応じて変動する。このため、これらの4相電力分配器では、出力信号間の位相差が90度となる周波数範囲が小さいという問題があった。
【0006】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、4相電力分配器又は4相電力分配器を含む電子機器において出力信号間の位相差が90度となる周波数範囲を大きくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様の4相電力分配器は、第1の入出力端子と第2の入出力端子との間に接続された、設定周波数で4分の1波長の電気長を有する第1の伝送線路と、前記第2の入出力端子と第3の入出力端子との間に接続された、前記設定周波数で4分の1波長の電気長を有する第2の伝送線路と、前記第3の入出力端子と第4の入出力端子との間に接続された、前記設定周波数で4分の1波長の電気長を有する第3の伝送線路と、前記第4の入出力端子と第5の入出力端子との間に接続された、前記設定周波数で4分の1波長の電気長を有する第4の伝送線路と、前記第5の入出力端子と第6の入出力端子との間に接続された、前記設定周波数で4分の1波長の電気長を有する第5の伝送線路と、前記第6の入出力端子と前記第1の入出力端子との間に接続された、前記設定周波数で4分の3波長の電気長を有する第6の伝送線路と、を有するラットレース回路と、前記第2の入出力端子と第7の入出力端子との間に接続された第1遅延回路と、前記第6の入出力端子と第8の入出力端子との間に接続された第2遅延回路と、を備え、前記第1の伝送線路、前記第2の伝送線路、前記第3の伝送線路、前記第4の伝送線路、前記第5の伝送線路、前記第6の伝送線路、前記第1遅延回路、及び前記第2遅延回路の特性インピーダンスは同一である。
【0008】
前記第2の入出力端子と前記第7の入出力端子との間に接続された遅延回路は、前記設定周波数で2分の1波長の電気長を有する第7の伝送線路であり、前記第6の入出力端子と前記第8の入出力端子との間に接続された遅延回路は、前記設定周波数で2分の1波長の電気長を有する第8の伝送線路であってもよい。
【0009】
前記4相電力分配器は、前記第1の伝送線路と前記第2の伝送線路との接続部に並列共振回路が接続されていてもよい。前記並列共振回路は、前記設定周波数での電気長が2分の1波長のオープンスタブであってもよい。前記並列共振回路は、前記設定周波数での電気長が4分の1波長のショートスタブであってもよい。前記並列共振回路は、並列に接続されたインダクタとキャパシタとを有してもよい。前記第1の伝送線路、前記第2の伝送線路、前記第3の伝送線路、前記第4の伝送線路、前記第5の伝送線路、前記第6の伝送線路、前記第1遅延回路、及び第2遅延回路のうち、少なくとも一つの伝送線路が集中定数素子で構成されていてもよい。
【0010】
本発明の第2の態様の電子機器は、上記のいずれかの4相電力分配器と、前記第1の入出力端子、前記第3の入出力端子、前記第4の入出力端子、前記第5の入出力端子、前記第7の入出力端子、及び前記第8の入出力端子のそれぞれに接続されており、前記特性インピーダンスと同一のインピーダンスを有する複数の負荷と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、4相電力分配器又は4相電力分配器を含む電子機器において出力信号間の位相差が90度となる周波数範囲を大きくするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1に係る4相電力分配器を含む電子機器を示す図である。
【
図2】4相電力分配器の動作について説明するための簡略化モデルを示す図である。
【
図3】4相電力分配器のラットレース回路としての動作について説明するための図である。
【
図4】4相電力分配器のラットレース回路としての動作について説明するための図である。
【
図6】回路シミュレータによる複数の入出力端子1、3、4、5、7及び8の特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図7】回路シミュレータによる複数の入出力端子1、3、4、5、7及び8の特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】回路シミュレータによる複数の入出力端子1、3、4、5、7及び8の特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】4相電力分配器の実装におけるレイアウトを示す図である。
【
図10】4相電力分配器の特性の実測値を示す図である。
【
図11】4相電力分配器の特性の実測値を示す図である。
【
図12】4相電力分配器の特性の実測値を示す図である。
【
図13】従来の4相電力分配器の一例を示す回路図である。
【
図14】4相電力分配器の特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図15】4相電力分配器の特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図16】4相電力分配器の特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図17】実施形態2の4相電力分配器の構成を示す回路図である。
【
図18】回路シミュレータによる4相電力分配器の特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図19】回路シミュレータによる4相電力分配器の特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図20】回路シミュレータによる4相電力分配器の特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図21】実施形態3の4相電力分配器の構成を示す回路図である。
【
図22】回路シミュレータによる4相電力分配器の特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図23】回路シミュレータによる4相電力分配器の特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図24】回路シミュレータによる4相電力分配器の特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図25】集中定数素子で構成されている伝送線路の一例を示す構成図である。
【
図26】変形例における4相電力分配器の構成を示す回路図である。
【
図27】回路シミュレータによる4相電力分配器の特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図28】回路シミュレータによる4相電力分配器の特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図29】回路シミュレータによる4相電力分配器の特性のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
[4相電力分配器の概要]
図1は、実施形態1に係る4相電力分配器500を含む電子機器100を示す図である。4相電力分配器500は、6端子ラットレース回路として動作する。4相電力分配器500は、1つの入力端子に入力された高周波信号を4つの出力端子に均等に電力分配する。また、4相電力分配器500は、電力分配において、位相が90度ずつずれた高周波信号を4つの出力端子から出力する。
【0014】
4相電力分配器500は、ラットレース回路200を有する。ラットレース回路200は、複数の入出力端子1~6と、複数の伝送線路9~14と、を備える。
図1に示す例においては、第1の入出力端子1~第6の入出力端子6に負荷Lが接続されている。負荷LのインピーダンスはZ
0であるとする。
【0015】
4相電力分配器500は、さらに、第7の入出力端子7及び第8の入出力端子8と、遅延回路15(第1遅延回路に相当)及び遅延回路16(第2遅延回路に相当)とを有する。遅延回路15は、第2の入出力端子2と第7の入出力端子7との間に設けられている。遅延回路16は、第6の入出力端子6と第8の入出力端子8との間に設けられている。
図1に示す例において、第7の入出力端子7及び第8の入出力端子8にも負荷Lが接続されている。
【0016】
入出力端子1~8は、信号を入力又は出力する。伝送線路9~13は、設定周波数において4分の1波長の電気長を有する。設定周波数は、例えば、4相電力分配器の用途に応じて、設計時に製造者により決定される。伝送線路9(第1の伝送線路に相当)は、第1の入出力端子1と、第2の入出力端子2との間に接続されている。伝送線路10(第2の伝送線路に相当)は、第2の入出力端子2と、第3の入出力端子3との間に接続されている。伝送線路11(第3の伝送線路に相当)は、第3の入出力端子3と、第4の入出力端子4との間に接続されている。
【0017】
伝送線路12(第4の伝送線路に相当)は、第4の入出力端子4と、第5の入出力端子5との間に接続されている。伝送線路13(第5の伝送線路に相当)は、第5の入出力端子5と、第6の入出力端子6との間に接続されている。伝送線路14(第6の伝送線路に相当)は、伝送線路9~13よりも長く、設定周波数において4分の3波長の電気長を有する。伝送線路14は、第6の入出力端子6と、第1の入出力端子1との間に接続されている。
【0018】
遅延回路15及び16は、設定周波数において2分の1波長の電気長を有する伝送線路である。遅延回路15(第7の伝送線路に相当)は、第7の入出力端子7と、第2の入出力端子2との間に接続されている。遅延回路16(第8の伝送線路に相当)は、第6の入出力端子6と、第8の入出力端子8との間に接続されている。並列共振回路17は、伝送線路9と、伝送線路10との接続部から分岐する配線に接続されている。並列共振回路17の詳細については後述する。
【0019】
伝送線路9~14、遅延回路15及び遅延回路16は、同一の特性インピーダンスZ0を有する。また、第1の入出力端子1、第3の入出力端子3、第4の入出力端子4及び第5の入出力端子5、第7の入出力端子7及び第8の入出力端子8は、この特性インピーダンスZ0と同じインピーダンスを有する負荷Lにそれぞれ接続されて使用される。伝送線路9~14、遅延回路15、遅延回路16及び並列共振回路17はいずれも無損失であるとみなせるものとする。
【0020】
詳細については後述するが、4相電力分配器500は、従来の4相電力分配器に比べて、各入出力端子から出力される信号間の位相差が90度となる周波数範囲を広くすることができる。
【0021】
[4相電力分配器の簡略化モデル]
図2は、4相電力分配器500の動作について説明するための簡略化モデルを示す図である。
図2の4相電力分配器は、
図1の4相電力分配器500から遅延回路15、遅延回路16及び並列共振回路17が取り外されたものに相当する。
【0022】
図3及び
図4は、
図2の4相電力分配器のラットレース回路としての動作について説明するための図である。シミュレータの処理負荷を軽減するため、
図3に示す電気壁が存在するものと仮定して4相電力分配器の特性を解析してもよく、
図4に示す磁気壁が存在するものと仮定して4相電力分配器の特性を解析してもよい。
【0023】
図3には、伝送線路11及び14の中点が電気壁であると仮定した場合の様子を示す。
図3の例では、第1の入出力端子1及び第3の入出力端子3を有する回路におけるFマトリックス[F
e]は下記の式(1)のようになる。式中、jは虚数単位である。第2の入出力端子2には、伝送線路9~14、遅延回路15及び遅延回路16の特性インピーダンスZ
0と同じインピーダンスを有する負荷Lが接続されていると仮定した。
【数1】
【0024】
Fマトリックスである式(1)を変形することにより、伝送線路11及び14の中点が電気壁であると仮定した場合の反射係数S
11e及び透過係数S
31eを算出するための下記の式(2)及び(3)が求められる。
【数2】
【数3】
【0025】
図4は、伝送線路11及び14の中点が磁気壁であると仮定した場合の様子を示す。
図4に示すように、伝送線路11及び14の中点が磁気壁であると仮定した場合の第1の入出力端子1及び第3の入出力端子3を有する回路におけるFマトリックス[F
m]は、下記の式(4)のようになる。第2の入出力端子2には、伝送線路9~14、遅延回路15及び遅延回路16の特性インピーダンスZ
0と同じインピーダンスを有する負荷Lが接続されていると仮定した。
【数4】
【0026】
式(4)を変形することにより、反射係数S
11m及び透過係数S
31mを算出するための下記の式(5)及び式(6)が求められる。
【数5】
【数6】
【0027】
入出力端子1における反射係数S
11は、下記の式(7)のようになる。
【数7】
第1の入出力端子1から第3の入出力端子3への透過係数S
31は、下記の式(8)のようになる。
【数8】
第1の入出力端子1から第4の入出力端子4への透過係数S
41は、下記の式(9)のようになる。
【数9】
第1の入出力端子1から第6の入出力端子6への透過係数S
61は、下記の式(10)のようになる。
【数10】
【0028】
対称面において電気壁及び磁気壁が存在すると仮定しているので、第1の入出力端子1、第2の入出力端子2及び第3の入出力端子3において全体の1/2の電力が出力され、第4の入出力端子4、第5の入出力端子5及び第6の入出力端子6において全体の1/2の電力が出力される。第2の入出力端子2と第3の入出力端子3とが4分の1波長の電気長を有する伝送線路10で互いに接続されている。このため、第2の入出力端子2から出力される信号と、第3の入出力端子3から出力される信号とが90度の位相差を有する。第5の入出力端子5と第6の入出力端子6とが4分の1波長の電気長を有する伝送線路13で互いに接続されている。このため、第5の入出力端子から出力される信号と、第6の入出力端子から出力される信号とが90度の位相差を有する。
【0029】
図4の4相電力分配器では、第1の入出力端子1から第2の入出力端子2への透過係数S
21は、下記の式(11)のようになる。
【数11】
また、
図4の4相電力分配器において第1の入出力端子1から第5の入出力端子5への透過係数S
51は、下記の式(12)のようになる。
【数12】
第1の入出力端子1に入力された信号は、第1の入出力端子1で反射されずに、互いに90度の位相差を有する4つの等しい電力の信号として複数の入出力端子2、3、5及び6から出力される。
【0030】
[4相電力分配器の動作]
図1の4相電力分配器500が備える構成のうち、
図2の4相電力分配器が備えていない第7の入出力端子7、第8の入出力端子8、遅延回路15、遅延回路16及び並列共振回路17の動作について説明する。
【0031】
図1に示す4相電力分配器500の第7の入出力端子7には、設定周波数において2分の1波長の電気長を有する遅延回路15が接続されている。第8の入出力端子8には、設定周波数において2分の1波長の電気長を有する遅延回路16が接続されている。
【0032】
並列共振回路17は、入力された信号が設定周波数自体である場合には、オープンとなり、4相電力分配器500の出力信号に影響を与えないものとみなすことができる。第1の入出力端子1から第7の入出力端子7への透過係数S
71は、下記の式(13)のようになる。
【数13】
また、第1の入出力端子1から第8の入出力端子8への透過係数S
81は、下記の式(14)のようになる。
【数14】
遅延回路15及び16はいずれも無損失とみなせる。
図1の反射係数S
11、透過係数S
31、S
41及びS
51は、それぞれ
図2の反射係数S
11、透過係数S
31、S
41及びS
51と同じ値になる。
図1の4相電力分配器500は、設定周波数の信号を第1の入出力端子1に入力された場合に、互いに90度の位相差がある等しい電力の信号を複数の入出力端子3、5、7及び8から出力する。
【0033】
一方、第4の入出力端子4は、第1の入出力端子1から伝送線路10及び11を経由して第4の入出力端子4に到達する信号と、第1の入出力端子1から伝送線路14及び13を経由して第4の入出力端子4に到達する信号とが設定周波数において打ち消し合うことにより、信号を出力しないアイソレーション端子になる。
【0034】
遅延回路15、16及び並列共振回路17は、設定周波数以外の周波数において4相電力分配器500の他の構成によって生じる位相差の変化を補償する。このため、広い周波数範囲にわたって位相差の変化が小さい6端子ラットレース回路が実現される。
【0035】
[並列共振回路がオープンスタブである場合の例]
図5は、
図1の4相電力分配器500の一例を示す図である。
図5には、
図1の並列共振回路17が、オープンスタブ18である場合の例を示す。
図1と同様の構成については
図1と同じ符号を付して説明を省略する。オープンスタブ18は、設定周波数において2分の1波長の電気長を有する。オープンスタブ18の特性インピーダンスは、伝送線路9~14、遅延回路15及び16の特性インピーダンスと同じZ
0である。オープンスタブ18の特性インピーダンスは、第1の入出力端子1、第3の入出力端子3、第4の入出力端子4、第5の入出力端子5、第7の入出力端子7、第8の入出力端子8に接続される負荷のインピーダンスとそれぞれ同じであるものとする。
【0036】
図6~
図8は、回路シミュレータによる複数の入出力端子1、3、4、5、7及び8のシミュレーション結果を示す図である。
図6は、複数の入出力端子1、3、4、5、7及び8の入力に対する反射量のシミュレーション結果を示す。
図7は、第1の入出力端子1から複数の入出力端子3、4、5、7及び8への透過量(振幅特性)と、第1入出力端子1の入力に対する反射量(振幅特性)とのシミュレーション結果を示す。
図8は、第1の入出力端子1から第5の入出力端子5へ到達した信号の移相量を基準(0度)とした、第1の入出力端子1から複数の入出力端子3、5、7及び8へ到達した信号の移相量のシミュレーション結果を示す。
【0037】
シミュレーションでは、設定周波数f0=1GHzとし、伝送線路9~14、遅延回路15、遅延回路16及びオープンスタブ18は、いずれも無損失であると仮定した。複数の入出力端子1、3、4、5、7及び8に接続される負荷インピーダンスは50Ωであり、伝送線路9~14、遅延回路15及び16の特性インピーダンスは50Ωであり、オープンスタブ18の特性インピーダンスは50Ωである。
【0038】
図7に示すように、入出力端子1の入力に対する反射量S
11は、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて-18dB以下である。
図7に示すように、第1の入出力端子1から複数の入出力端子3、5、7又は8への透過量S
31、S
51、S
71又はS
81は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいていずれも(-6±0.2)dBである。言い換えれば、第1の入出力端子1から複数の入出力端子3、5、7又は8への分配損失は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(6±0.2)dBである。
【0039】
第1の入出力端子1と第4の入出力端子4との間の透過量S41は、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて-44dB以下である。したがって、第1の入出力端子1と第4の入出力端子4との間の分配損失を示すアイソレーションは、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて44dB以上である。
【0040】
図8に示すように、第1の入出力端子1から第5の入出力端子5へ到達した信号の移相量は、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて0度である。第1の入出力端子1から第7の入出力端子7へ到達した信号の移相量は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(90±0.3)度である。第1の入出力端子1から第3の入出力端子3へ到達した信号の移相量は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(180±0.1)度である。第1の入出力端子1から第8の入出力端子8へ到達した信号の移相量は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(270±0.3)度である。周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて
図8に示す各信号の位相差の変化は、最大で1度に抑制されている。
【0041】
[4相電力分配器の設計例]
図9は、
図5に示す4相電力分配器500の実装におけるレイアウトの一例を示す図である。
図9において、4相電力分配器500は、第1の入出力端子31(
図1の第1の入出力端子1に対応)、第7の入出力端子32(
図1の第7の入出力端子7に対応)、第3の入出力端子33(
図1の第3の入出力端子3に対応)、第4の入出力端子34(
図1の第4の入出力端子4に対応)、第5の入出力端子35(
図1の第5の入出力端子5に対応)、第8の入出力端子36(
図1の第8の入出力端子8に対応)を備える。4相電力分配器500は、設定周波数f
0=0.96GHz、複数の入出力端子31~36にそれぞれ接続される負荷インピーダンスが50Ω、マイクロストリップラインからなる複数の伝送線路の特性インピーダンスがそれぞれ50Ωになるように設計されている。
【0042】
図10~
図12は、
図9に示す4相電力分配器500の特性の実測値を示す図である。
図10は、複数の入出力端子31~36の入力に対する反射量の実測値を示す。
図11は、第1の入出力端子31から複数の入出力端子32~36への透過量と、第1の入出力端子31の入力に対する反射量との実測値を示す。さらに、
図12は、第1の入出力端子31から複数の入出力端子32、33、35、36へ到達した信号の移相量の実測値を示す。
図11に示すように、入出力端子31の入力に対する反射量は、周波数f=0.91GHz~1.01GHzにおいて-18dB以下である。
【0043】
図11に示すように、第1の入出力端子31から複数の入出力端子32、33、35及び36への透過量は、周波数f=0.91GHz~1.01GHzにおいて(-6.83±0.48)dBである。言い換えれば、第1の入出力端子31から複数の入出力端子32、33、35及び36への分配損失は、(6.83±0.48)dBである。
【0044】
第1の入出力端子31から第4の入出力端子34への透過量は、周波数f=0.91GHz~1.01GHzにおいて-33dB以下である。つまり、第1の入出力端子31から第4の入出力端子34への分配損失を示すアイソレーションは、周波数f=0.91GHz~1.01GHzにおいて33dB以上である。
【0045】
図12に示すように、第1の入出力端子31から第5の入出力端子35への移相量(すなわち、第1の入出力端子31から第5の入出力端子35に信号が伝送される間の移相量)を0度とする。第1の入出力端子31から入出力端子32への移相量は、周波数f=0.91GHz~1.01GHzにおいて(90.5±0.6)度である。第1の入出力端子31から第3の入出力端子33への移相量は、周波数f=0.91GHz~1.01GHzにおいて(179.5±0.4)度である。第1の入出力端子31から入出力端子36への移相量は、周波数f=0.91GHz~1.01GHzにおいて(269.5±0.9)度である。
図12に示す各信号の位相差の変化は、周波数f=0.91GHz~1.01GHzにおいて最大で2度に抑制されている。
【0046】
[比較例:従来の4相電力分配器]
図13は、従来の4相電力分配器の一例を示す回路図である。
図13に示す4相電力分配器は、入出力端子51~56、及び、4分の1波長の電気長を有する伝送線路61~70を備える。入出力端子51に入力された高周波信号は、入出力端子52~56に伝搬される。入出力端子51~56に接続される負荷インピーダンスをZ
0とした場合、伝送線路61~70の特性インピーダンスはZ
0であるものとする。
【0047】
入出力端子51に設定周波数の信号を入力した場合、互いに等しい電力を有し、且つ、位相が90度ずつずれた信号が入出力端子52、53、54及び55から出力される。この場合、信号は、入出力端子56からは出力されない。
【0048】
図14~
図16は、回路シミュレータにおける
図13の4相電力分配器の特性のシミュレーション結果を示す図である。
図14は、入出力端子51~56の入力に対する反射量のシミュレーション結果を示す。
図15は、入出力端子51から入出力端子52~56への透過量と、入出力端子51の入力に対する反射量とのシミュレーション結果を示す。さらに、
図16は、入出力端子51から入出力端子55へ到達した信号の移相量を基準(0度)とした、入出力端子51から入出力端子52~54へ到達した信号の移相量のシミュレーション結果を示す。
【0049】
シミュレーションでは、設定周波数f0=1GHzであり、伝送線路61~70はいずれも無損失であると仮定した。入出力端子51~56の負荷インピーダンスはZ0=50Ω、伝送線路61~70の特性インピーダンスはZ0=50Ωである。
【0050】
図15に示すように、入出力端子51の入力に対する反射量は、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて-22dB以下である。
図15に示すように、入出力端子51から入出力端子52、53、54又は55への透過量は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいていずれも(-6±0.5)dBである。言い換えれば、入出力端子51から入出力端子52、53、54又は55への分配損失は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(6±0.5)dBである。
【0051】
入出力端子51と入出力端子56との間の透過量は、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて-28dB以下である。したがって、入出力端子51と入出力端子56との間のアイソレーションは、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて28dB以上である。
【0052】
図16に示すように、入出力端子51から入出力端子55への移相量を0度とする。入出力端子51から入出力端子54への移相量は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(90±4.8)度である。入出力端子51から入出力端子53への移相量は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(180±13.9)度である。入出力端子51から入出力端子52への移相量は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(270±9.9)度である。
【0053】
[実施形態1の4相電力分配器による効果]
周波数f
0=1GHzの近傍において
図16に示す各信号間の位相差の変化は、最大で14度となり、
図12に示す実施形態1の4相電力分配器500の位相差の変化に比べて大きい。このように、従来の4相電力分配器では、入出力端子から出力される信号間の位相差が90度になる周波数範囲が狭いという問題があった。
【0054】
これに対し、実施形態1の4相電力分配器500は、伝送線路9と伝送線路10との接続部から分岐する配線に並列共振回路17を接続し、入出力端子2及び6に遅延回路15及び16を接続することにより、設定周波数f0付近でのそれぞれの入出力端子の位相差の変化を抑制することができる。この結果、従来技術に比べて、広い周波数範囲にわたって位相差の変化が小さい4相電力分配器500を実現できる。
【0055】
<実施形態2>
図17は、実施形態2の4相電力分配器500の構成を示す回路図である。実施形態2の4相電力分配器500は、
図1の並列共振回路17として、設定周波数において4分の1波長の電気長を有するショートスタブ19を備える。
図1と同様の構成については説明を省略する。
【0056】
複数の入出力端子1、3、4、5、7及び8に接続される負荷のインピーダンスをそれぞれZ0とした場合、伝送線路9~14、遅延回路15及び遅延回路16の特性インピーダンスはそれぞれZ0となる。ショートスタブ19の特性インピーダンスはZ0/2となる。
【0057】
図18~
図20は、回路シミュレータによる
図17の4相電力分配器の特性のシミュレーション結果を示す図である。
図18は、複数の入出力端子1、3、4、5、7及び8の入力に対する反射量のシミュレーション結果を示す。
図19は、第1の入出力端子1から複数の入出力端子3、4、5、7及び8への透過量と、第1の入出力端子1の入力に対する反射量とのシミュレーション結果を示す。さらに、
図20は、第1の入出力端子1から第5の入出力端子5への移相量を基準(0度)とした、第1の入出力端子1から複数の入出力端子3、5、7及び8への移相量のシミュレーション結果を示す図である。
【0058】
シミュレーションでは、設定周波数f
0=1GHzとし、伝送線路9~14、遅延回路15、遅延回路16及びショートスタブ19はいずれも無損失であると仮定した。また、複数の入出力端子1、3、4、5、7及び8に接続される負荷インピーダンスはそれぞれ50Ωであり、伝送線路9~14、遅延回路15及び遅延回路16の特性インピーダンスはそれぞれ50Ωであり、ショートスタブ19の特性インピーダンスは25Ωであるものとした。
図19に示すように、入出力端子1の入力に対する反射量S
11は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて-18dB以下である。
【0059】
図19に示すように、第1の入出力端子1から複数の入出力端子3、5、7及び8への透過量S
31、S
51、S
71、S
81は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(-6±0.2)dBである。言い換えれば、第1の入出力端子1から複数の入出力端子3、5、7及び8への分配損失は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(6±0.2)dBである。
【0060】
第1の入出力端子1と第4の入出力端子4との間の透過量S41は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて-44dB以下である。したがって、第1の入出力端子1と第4の入出力端子4との間のアイソレーションは、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて44dB以上である。
【0061】
図20に示すように、第1の入出力端子1から第5の入出力端子5への移相量を0度とする。第1の入出力端子1から第7の入出力端子7への移相量は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(90±0.3)度である。第1の入出力端子1から第3の入出力端子3への移相量は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(180±0.1)度である。第1の入出力端子1から第8の入出力端子8への移相量は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(270±0.4)度である。周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて
図20に示す各信号間の位相差の変化は、最大で1度に抑制されている。
【0062】
<実施形態3>
図21は、実施形態3の4相電力分配器500の構成を示す回路図である。
図21に示す4相電力分配器500の並列共振回路17は、互いに並列に接続されたインダクタ20及びキャパシタ21から構成されている。
図1と同様の構成については説明を省略する。
【0063】
複数の入出力端子1、3、4、5、7及び8に接続される負荷インピーダンスをZ0とした場合、伝送線路9~14、遅延回路15及び16の特性インピーダンスはZ0であり、インダクタ20のインダクタンスLはL=Z0/(π×π×f0)となる。また、キャパシタ21のキャパシタンスCはC=1/(4×f0×Z0)となる。
【0064】
図22~
図24は、回路シミュレータによる
図21の4相電力分配器500の特性のシミュレーション結果を示す図である。
図22は、複数の入出力端子1、3、4、5、7及び8の入力に対する反射量のシミュレーション結果を示す。
図23は、第1の入出力端子1から入出力端子3、4、5、7及び8への透過量と、第1の入出力端子1の入力に対する反射量とのシミュレーション結果を示す。
図24は、第1の入出力端子1から入出力端子5への移相量を基準(0度)とした、第1の入出力端子1から複数の入出力端子3、5、7及び8への移相量のシミュレーション結果を示す。
【0065】
シミュレーションでは、設定周波数f0=1GHzであり、伝送線路9~14、遅延回路15及び16はいずれも無損失であると仮定した。また、複数の入出力端子1、3、4、5、7及び8に接続される負荷インピーダンスは50Ω、伝送線路9~14、遅延回路15及び16の特性インピーダンスは50Ωとし、インダクタ20のインダクタンスはL=Z0/(π×π×f0)=5.07[nH]、キャパシタ21のキャパシタンスはC=1/(4×f0×Z0)=5[pF]とした。
【0066】
図23に示すように、入出力端子1の入力に対する反射量S
11は、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて-18dB以下である。
図23に示すように、第1の入出力端子1から複数の入出力端子3、5、7又は8への透過量S
31、S
51、S
71又はS
81は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいていずれも(-6±0.2)dBである。言い換えれば、第1の入出力端子1から複数の入出力端子3、5、7又は8への分配損失は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(6±0.2)dBである。
【0067】
第1の入出力端子1と第4の入出力端子4との間の透過量S41は、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて-44dB以下である。つまり、第1の入出力端子1と第4の入出力端子4との間のアイソレーションは、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて44dB以上である。
【0068】
図24に示すように、第1の入出力端子1から第5の入出力端子5への移相量は、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて0度である。第1の入出力端子1から第7の入出力端子7への移相量は、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(90±0.3)度である。第1の入出力端子1から第3の入出力端子3への移相量は、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(180±0.1)度である。第1の入出力端子1から第8の入出力端子8への移相量は、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(270±0.4)度である。周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて
図24に示す各信号の位相差の変化は、最大で1度に抑制されている。
【0069】
<実施形態4>
実施の形態1~実施形態3に記述している伝送線路9~14、遅延回路15及び16のうち、少なくとも一つの伝送線路については、集中定数素子(例えば、キャパシタ、インダクタなど)を用いて構成されていてもよい。
【0070】
図25は、集中定数素子で構成されている伝送線路の一例を示す構成図である。
図25(a)は集中定数素子で構成されている4分の1波長の電気長を有する伝送線路の一例を示す構成図である。
図25(a)に示す伝送線路は、インダクタ43を有し、インダクタ43の両端は、それぞれキャパシタ41又は42を介してグランドに接続されている。
【0071】
図25(b)は集中定数素子で構成されている4分の3波長の電気長を有する伝送線路の一例を示す構成図である。
図25(b)に示す伝送線路は、キャパシタ41を有し、キャパシタ41の両端は、それぞれインダクタ43又は44を介してグランドに接続されている。
【0072】
図25(c)は集中定数素子で構成されているλ/2の電気長を有する伝送線路の一例を示す構成図である。
図25(c)に示す伝送線路は、直列に接続されたインダクタ43及びキャパシタ41を備える。
【0073】
[並列共振回路を備えていない変形例]
本発明の4相電力分配器は、並列共振回路を備える例に限定されない。
図26は、本変形例における4相電力分配器500の構成を示す回路図である。
図26に示す4相電力分配器500は、並列共振回路17を備えていない点を除き、
図1と同様の構成を有する。
図1と同様の構成については
図1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0074】
図27~
図29は、回路シミュレータによる
図26に示す4相電力分配器500の特性のシミュレーション結果を示す図である。
図27は、複数の入出力端子1、3、4、5、7、8の入力に対する反射量のシミュレーション結果を示す。
図28は、第1の入出力端子1から複数の入出力端子3、4、5、7、8への透過量と、第1の入出力端子1の入力に対する反射量とのシミュレーション結果を示す。
図29は、第1の入出力端子1から第5の入出力端子5への移相量を基準(0度)とした、第1の入出力端子1から複数の入出力端子3、5、7、8への移相量のシミュレーション結果を示す。
【0075】
シミュレーションでは、設定周波数f0=1GHzであり、伝送線路9~14、遅延回路15及び16はいずれも無損失であると仮定した。複数の入出力端子1、3、4、5、7又は8に接続される負荷インピーダンスはそれぞれ50Ωであり、伝送線路9~14、遅延回路15及び16の特性インピーダンスはそれぞれ50Ωである。
【0076】
図28に示すように、入出力端子1の入力に対する反射量S
11は、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて-17dB以下である。
図28に示すように、第1の入出力端子1から複数の入出力端子3、5、7又は8への透過量S
31、S
51、S
71及びS
81は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいていずれも(-6±0.3)dBである。言い換えれば、第1の入出力端子1から複数の入出力端子3、5、7及び8への分配損失は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(6±0.3)dBである。
【0077】
第1の入出力端子1と第4の入出力端子4との間の透過量S41は、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて-33dB以下である。つまり、第1の入出力端子1と第4の入出力端子4との間のアイソレーションは、f=0.95GHz~1.05GHzにおいて33dB以上である。
【0078】
図29に示すように、第1の入出力端子1から第5の入出力端子5への移相量は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて0度である。第1の入出力端子1から第7の入出力端子7への移相量は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(90±4.6)度である。第1の入出力端子1から第3の入出力端子3への移相量は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(180±2.3)度である。第1の入出力端子1から第8の入出力端子8への移相量は、周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて(270±2.5)度である。
【0079】
周波数f=0.95GHz~1.05GHzにおいて
図29に示す各信号間の位相差の変化は、最大で8度に抑制されており、
図16に示す従来の電力分配器における各信号間の位相差の変化より小さい。したがって、4相電力分配器500は、並列共振回路を備えていなくても、より広い周波数範囲にわたって位相差の変化が小さくなることができる。
【0080】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0081】
1-8、31-36、51-56 入出力端子
9-14、61-70 伝送線路
15、16 遅延回路
17 並列共振回路
18 オープンスタブ
19 ショートスタブ
20 インダクタ
21、41、42 キャパシタ
43、44 インダクタ
100 電子機器
200 ラットレース回路
500 4相電力分配器