(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】評価システムおよび評価装置
(51)【国際特許分類】
G01R 29/08 20060101AFI20230331BHJP
G01R 29/26 20060101ALI20230331BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20230331BHJP
G01R 35/00 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
G01R29/08 D
G01R29/26 D
G01R31/28 M
G01R31/28 L
G01R31/28 P
G01R31/28 R
G01R35/00 L
(21)【出願番号】P 2019177929
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝村 俊介
(72)【発明者】
【氏名】井上 竜也
(72)【発明者】
【氏名】徳永 英晃
(72)【発明者】
【氏名】小林 恵治
(72)【発明者】
【氏名】野添 研治
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-237099(JP,A)
【文献】特開2013-246043(JP,A)
【文献】特開2000-019204(JP,A)
【文献】特開2013-258457(JP,A)
【文献】特開平08-101262(JP,A)
【文献】国際公開第2014/147866(WO,A1)
【文献】特開2014-240775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 29/00-29/26
31/28-31/3193、
11/00-11/66、
21/00-22/10、
35/00-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置と、前記測定装置と通信する処理装置と、を備えた評価システムであって、
前記測定装置は、
測定対象が有する測定領域から、前記測定対象への入力信号に対応して出力される出力信号の、位相に関する出力位相情報および振幅に関する出力振幅情報を測定し、
前記処理装置は、
前記入力信号と、前記出力位相情報と、前記出力振幅情報と、に基づいて、前記測定領域におけるノイズ波形を計算し、
前記入力信号は、第1周波数を有する第1信号と、前記第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2信号と、を含み、
前記第1信号は、位相に関する第1位相情報と、振幅に関する第1振幅情報と、を有し、
前記第2信号は、位相に関する第2位相情報と、振幅に関する第2振幅情報と、を有する、
評価システム。
【請求項2】
前記処理装置は、前記入力信号と、前記出力位相情報と、前記出力振幅情報と、を用いて畳み込み積分を行い、前記ノイズ波形を導出する、
請求項1に記載の評価システム。
【請求項3】
前記入力信号は、前記測定装置から前記測定対象に対して出力される、
請求項1または請求項2に記載の評価システム。
【請求項4】
前記測定装置に接続され、前記測定領域から発生する前記出力信号を検知するプローブを備え、
前記測定装置は、
前記プローブに対応する較正計数を用いて前記出力信号を較正し、較正後の前記出力信号の前記出力位相情報および前記出力振幅情報を測定する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の評価システム。
【請求項5】
前記処理装置は、
前記ノイズ波形の強度の分布を表示装置に表示する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の評価システム。
【請求項6】
前記ノイズ波形の強度は、前記ノイズ波形の振幅である、
請求項5に記載の評価システム。
【請求項7】
前記処理装置は、
前記測定対象の画像に前記ノイズ波形の強度の分布を示す画像を重ねた画像を、前記表示装置に表示する、
請求項5または請求項6に記載の評価システム。
【請求項8】
測定対象への入力信号と、前記入力信号に対応して前記測定対象が有する測定領域から出力された出力信号の、位相に関する出力位相情報および振幅に関する出力振幅情報と、を受信する受信部と、
前記入力信号と、前記出力位相情報と、前記出力振幅情報と、に基づいて、前記測定領域におけるノイズ波形を計算する計算部と、
を備え、
前記入力信号は、第1周波数を有する第1信号と、前記第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2信号と、を含み、
前記第1信号は、位相に関する第1位相情報と、振幅に関する第1振幅情報と、を有し、
前記第2信号は、位相に関する第2位相情報と、振幅に関する第2振幅情報と、を有する、
評価装置。
【請求項9】
前記計算部は、前記入力信号と、前記出力位相情報と、前記出力振幅情報と、を用いて畳み込み積分を行い、前記ノイズ波形を求める、
請求項8に記載の評価装置。
【請求項10】
前記入力信号を、前記測定対象に対して出力する出力部を備える、
請求項8または請求項9に記載の評価装置。
【請求項11】
前記計算部は、
記測定領域から発生する前記出力信号を検知するプローブに対応する較正計数を用いて前記出力信号を較正し、
前記入力信号と、較正した前記出力信号の、前記出力位相情報および前記出力振幅情報と、に基づいて、前記測定領域における前記ノイズ波形を計算する、
請求項8~請求項10のいずれか一項に記載の評価装置。
【請求項12】
前記ノイズ波形の強度の分布を表示装置に表示する出力制御部を備える、
請求項8~請求項11のいずれか一項に記載の評価装置。
【請求項13】
前記表示装置を備える、
請求項12に記載の評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、評価システムおよび評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器を構成するプリント基板などの評価対象物において、外部から注入されたノイズが、評価対象物内でどのように伝搬しているかを可視化し、それによって評価対象物の電磁環境適合性(EMC:ElectroMagnetic Compatibility)を評価する方法が知られている。特許文献1には、所定の周波数を有する信号を評価対象物に印加し、評価対象物内を伝搬するノイズを、ノイズ検知手段によって検知するノイズ評価システムが開示されている。特許文献1に記載のノイズ評価システムでは、検知されたノイズの強度を測定し、測定された強度と測定ポイントとが対応付けられた評価結果を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のノイズ評価システムでは、周波数ごとにノイズの強度を測定している。つまり、印加するノイズとして単一の周波数を有するノイズのみを用いており、評価対象物から発生したノイズも、単一の周波数に対応するものとして評価している。一方で、実際に電子機器に進入するノイズは、複数の周波数を有する場合もある。したがって、複数の周波数を有するノイズが評価対象物内でどのように伝搬するかを評価できると、評価対象物内のノイズ伝搬について、より正確な評価結果を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示の一実施形態の評価システムは、測定装置と、測定装置と通信する処理装置と、を備える。測定装置は、測定対象が有する測定領域から、測定対象への入力信号に対応して出力される出力信号の、位相に関する出力位相情報および振幅に関する出力振幅情報を測定する。処理装置は、入力信号と、出力位相情報と、出力振幅情報と、に基づいて、測定領域におけるノイズ波形を計算する。入力信号は、第1周波数を有する第1信号と、第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2信号と、を含む。第1信号は、位相に関する第1位相情報と、振幅に関する第1振幅情報と、を有する。第2信号は、位相に関する第2位相情報と、振幅に関する第2振幅情報と、を有する。
【0006】
本開示の一実施形態の評価装置は、受信部と、計算部と、を備える。受信部は、測定対象への入力信号と、入力信号に対応して測定対象が有する測定領域から出力された出力信号の、位相に関する出力位相情報および振幅に関する出力振幅情報と、を受信する。計算部は、入力信号と、出力位相情報と、出力振幅情報と、に基づいて、測定領域におけるノイズ波形を計算する。入力信号は、第1周波数を有する第1信号と、第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2信号と、を含む。第1信号は、位相に関する第1位相情報と、振幅に関する第1振幅情報と、を有する。第2信号は、位相に関する第2位相情報と、振幅に関する第2振幅情報と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
評価対象物内のノイズ伝搬について、より正確な評価結果を得ることができる、評価システムおよび評価装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る評価システムの概略構成を表す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る処理装置のハードウェア構成図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る処理装置のブロック図である。
【
図4A】
図4Aは、測定対象の二次元平面画像データの一例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、測定対象のノイズ強度を示す分布図を、測定対象の二次元平面画像データに重ね合わせて表示したノイズ強度分布図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る処理装置3の動作を説明する図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る評価装置および周辺構成を表す図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る評価装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1に、本実施形態の評価システムの概略構成を示す。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の評価システム1は、測定装置2と、処理装置3と、を備える。測定装置2と処理装置3とは、データまたは信号を授受可能に接続されている。
【0011】
測定装置2は、測定対象11が有する測定領域12から、入力信号に対応して出力される出力信号を受信する。処理装置3は、入力信号と、出力位相情報と、出力振幅情報と、に基づいて、測定領域12におけるノイズ波形を求める。
【0012】
評価システム1は、プローブ7、プローブ7を駆動する駆動機構9、および駆動機構9の位置を制御する位置コントローラ10を備えてもよい。それらを備えることにより、評価システム1は、測定対象11における複数の測定領域12について走査を行うことができる。評価システム1は、付随的な構成要素である増幅器4および表示装置20のうち少なくとも一方を備えてもよい。評価システム1は、プローブ7と測定装置2の間に、図示しない増幅器あるいは減衰器を備えてもよい。増幅器あるいは減衰器を備えることにより、プローブ7で検出されたノイズのゲインの調整を行うことができる。
【0013】
測定対象11は、評価システム1によって評価される対象の評価対象物の一例である。具体的には、測定対象11は、電子機器を構成する電子部品である。測定対象11は、例えば、所定の配線パターンが形成されたプリント基板上に各種電子部品が実装されたプリント回路板である。測定対象11は、端部にコネクタ13を有してもよい。コネクタ13にケーブルを接続することにより、ケーブルおよびコネクタ13を介して、入力信号を測定対象11に供給することができる。例えばインジェクションプローブから、ケーブルを介して、入力信号を測定対象11に供給することができる。詳細は後述する。なお、測定対象11はコネクタ13を有さなくてもよい。例えばケーブルが測定対象11にはんだ付けされていてもよい。
【0014】
測定対象11は、測定領域12を有する。測定領域12は、評価システム1が評価対象とする領域である。測定領域12は、入力信号に対応して出力信号を出力する。
【0015】
入力信号とは、測定対象11に対して印加される信号である。言い換えると、入力信号は、測定対象11に対して外部から侵入するノイズに相当する。本実施形態では、入力信号は、第1周波数を有する第1信号と、第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2信号とを含む。なお、入力信号は、互いに異なる周波数の複数の信号を含んでいればよく、互いに異なる2種類の周波数の信号を含む形態に限定されない。入力信号は、例えば高周波信号である。
【0016】
出力信号とは、測定対象11に入力信号を印加または入力したときに、該測定対象11の測定領域12から出力される信号である。言い換えると、出力信号とは、測定対象11に侵入したノイズである入力信号が該測定対象11内を伝搬し、測定領域12から出力した信号である。出力信号は、例えば磁界あるいは電界である。出力ノイズは、出力信号の一例である。
【0017】
入力信号に対応する出力信号とは、測定対象11に入力信号が入力されたときに、該入力信号の入力によって測定領域12から出力される出力信号を意味する。
【0018】
入力信号と出力信号の詳細については後述する。測定対象11は、複数の測定領域12を有していてもよい。例えば、測定対象11の一部の領域が、複数の測定領域12によって占められていてもよい。あるいは、測定対象11の全部の領域が、複数の測定領域12によって占められていてもよい。
【0019】
本実施形態において、入力信号は測定装置2からコネクタ13を介して測定対象11に入力される。測定対象11への入力信号の入力と、測定対象11からの出力信号の受信との両方を測定装置2で行うことにより、測定装置2および後述する処理装置3は、入力信号と出力信号とを容易に同期させることができる。入力信号と出力信号とを同期させることができるのであれば、測定装置2とは別の信号源から入力信号が測定対象11に入力されてもよい。
【0020】
増幅器4は、測定装置2に接続されるとともに、コネクタ13に接続される。本実施形態において、測定装置2から出力された入力信号は、増幅器4に入力される。入力信号は、増幅器4で増幅されてから、コネクタ13を介して測定対象11に入力される。入力信号が小さい場合、増幅器4で増幅することにより、入力信号を大きくすることができる。これにより、現実の環境において測定対象11に注入されるノイズに近い振幅の入力信号を測定対象11に入力することができる。また、入力信号に対応する出力信号をも大きくすることができる。これらにより、評価の精度を高めることができる。入力信号の大きさを十分に大きくできるのであれば、評価システム1は増幅器4を備えなくてもよい。
【0021】
測定装置2は、測定対象11から出力された出力信号を受信する。本実施形態において、測定対象11から出力された出力信号は、プローブ7によって検知され、測定装置2に入力される。プローブ7は、電界測定用のプローブであってもよく、磁界測定用のプローブであってもよく、電界および磁界の双方を測定可能なプローブであってもよい。具体的にどのような構成、あるいは性能のプローブを用いるかは、評価目的に応じて適宜決定すればよい。プローブ7は、測定装置2に接続されていてもよい。
【0022】
プローブ7により検知された出力信号は、測定装置2に入力される。また、プローブ7は支持部8により支持される。支持部8は、駆動機構9によって駆動される。駆動機構9により、プローブ7は、支持部8とともに測定対象11付近を移動可能である。言い換えると、プローブ7は、測定対象11を走査してもよい。
【0023】
具体的には、プローブ7は、測定対象11における測定領域12内を、X方向、およびY方向にそれぞれ移動可能である。プローブ7は、Z方向にも移動可能であってもよい。プローブ7が指向性を有する場合、プローブ7はZ方向に平行な直線を軸として回転することが可能であってもよい。
【0024】
なお、X方向およびY方向は、測定対象11に対して平行である。言い換えると、X方向およびY方向は、測定対象11を構成するプリント基板の板面に平行である。Z方向は、測定対象11に対して垂直である。言い換えると、Z方向は、測定対象11を構成するプリント基板の板面に垂直である。
【0025】
駆動機構9によるプローブ7のX方向およびY方向の移動は、例えば、処理装置3からの位置制御信号に基づき、位置コントローラ10が駆動機構9へ駆動信号を出力することにより行われる。
【0026】
測定領域12は、測定対象11における、プローブ7によって出力信号が検知される領域である。言い換えると、測定領域12は、ノイズ検知が行われる領域である。
【0027】
測定領域12は、測定対象11と平行な二次元平面における所定の測定範囲内においてあらかじめ複数設定されている。具体的には、測定対象11と平行な二次元平面をX-Y平面としたとき、X方向に等間隔でn列、Y方向に等間隔でm行、の測定領域12があらかじめ設定されている。nおよびmの値、測定領域12の間隔ならびに測定領域12の位置は、測定に応じて適宜決定することができる。
【0028】
測定装置2は、プローブ7にて検知された出力信号の周波数特性を測定可能な測定器である。具体的には、測定装置2は、出力信号の位相および振幅を測定可能である。測定装置2としては、例えばネットワークアナライザを用いることができる。本実施形態では、入力信号は測定装置2からコネクタ13を介して測定対象11に入力される。言い換えると、測定装置2は、入力信号の周波数を示すデータを保持している。測定装置2は、入力信号の周波数に対応させて、検知された出力信号の周波数特性を測定する。具体的には、測定装置2は、検知された出力信号の位相である出力位相情報および振幅である出力振幅情報を測定する。そして、測定装置2は、出力位相情報および出力振幅情報を、入力信号の周波数を示すデータとともに処理装置3に出力する。入力信号が測定装置2とは異なる信号源から測定対象11に入力される場合、入力信号の周波数を示すデータが測定装置2に入力されてもよい。
【0029】
処理装置3は、測定装置2から入力された測定データの計算処理を行う。処理装置3は、例えばPC(パーソナル・コンピュータ)である。処理装置3は、入力信号と、出力位相情報と、出力振幅情報と、を測定装置2から受信する。そして、処理装置3は、入力信号と、出力位相情報と、出力振幅情報と、に基づき、測定領域12におけるノイズ波形を導出する。前述の通り、処理装置3は、位置コントローラ10へ制御信号を出力することによる、プローブ7の移動の制御を行ってもよい。入力信号が測定装置2とは異なる信号源から測定対象11に入力される場合、入力信号の周波数を示すデータが信号源から処理装置3に入力されてもよい。
【0030】
次に、処理装置3のハードウェア構成を説明する。
図2は、処理装置3のハードウェア構成図の一例である。
【0031】
処理装置3は、CPU(Central Processing Unit)40A、ROM(Read Only Memory)40B、RAM(Random Access Memory)40C、およびI/F40D等がバス40Eにより相互に接続されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0032】
CPU40Aは、本実施形態の処理装置3を制御する演算装置である。ROM40Bは、CPU40Aによる処理を実現するプログラム等を記憶する。RAM40Cは、CPU40Aによる処理に必要なデータを記憶する。I/F40Dは、データを送受信するためのインターフェースである。
【0033】
本実施形態の処理装置3で実行される情報処理を実行するためのプログラムは、ROM40B等に予め組み込んで提供される。なお、本実施形態の処理装置3で実行されるプログラムは、処理装置3にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供するように構成してもよい。
【0034】
図3を用いて、処理装置3の詳細を説明する。
図3は、処理装置3のブロック図である。処理装置3は、入力信号、第1位相情報、および第1振幅情報を受信する受信部31と、ノイズ波形を求める計算処理を行う計算部32と、を備える。処理装置3がプローブ7の移動の制御を行う場合、処理装置3は、位置コントローラ10に制御信号を出力する、制御部33を備えてもよい。処理装置3は、プローブ7の較正を行う較正部34を備えてもよい。また、評価システム1は、ノイズ波形に関する情報を表示装置20に表示してもよい。その場合、処理装置3は、ノイズ波形の情報を表示装置20に出力する、出力制御部35を備えてもよい。ノイズ波形に関する情報とは、例えば、ノイズ強度分布図である。
【0035】
受信部31は、測定装置2より、出力位相情報と、出力振幅情報と、を受信する。また、受信部31は、測定装置2から、あるいは信号源から、入力信号を受信する。受信部31は、受信した入力信号、出力位相情報、および出力振幅情報を、計算部32に出力する。
【0036】
計算部32は、入力信号と、出力位相情報と、出力振幅情報と、に基づき、測定領域12におけるノイズ波形を求める。具体的な処理内容については後述する。
【0037】
較正部34は、プローブ7の較正を行う。プローブ7は、測定するノイズの周波数によって、出力ゲインが異なる場合がある。その場合、プローブ7の較正を行ってもよい。例えば、較正部は、プローブ7の、入力される各周波数に対するゲインの値を保持する。ゲインの値は、較正計数に相当する。較正部は、続いて、入力信号の周波数に対応するプローブ7のゲインの逆数を、計算部32に出力する。計算部32は、得られた出力信号に、プローブ7のゲインの逆数を乗算する。これにより、プローブ7の周波数特性によらない評価結果を得ることができる。ここではプローブ7の周波数特性の較正について説明したが、プローブ7の位相特性についても同様に較正を行ってもよい。
【0038】
本実施形態においては、処理装置3は、CPU40AがROM40Bから処理内容に応じた制御プログラムを読み出してRAM40Cに展開し、実行することにより、受信部31および計算部32の機能を実現する。同様にして、制御部33、較正部34、および出力制御部35の機能が実現されてもよい。あるいは、それぞれ異なるハードウェア回路によって、各部の機能が実現されてもよい。
【0039】
計算部32で行っているノイズ波形を求める処理について、詳細を説明する。
【0040】
測定対象11に入力される入力信号は、上述したように、複数の周波数を有する信号である。言い換えると、入力信号は、第1周波数を有する第1信号と、第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2信号と、を含む。第1信号と、第2信号とは、それぞれ正弦波で表される。つまり、第1信号は、位相に関する第1位相情報と、振幅に関する第1振幅情報とを有する。また、第2信号は、位相に関する第2位相情報と、振幅に関する第2振幅情報とを有する。
【0041】
ここで、単一の周波数を有する入力信号を入力信号Aとし、入力信号Aが測定対象11に入力されたときに、測定対象11が出力する出力信号を出力信号Bとした場合を想定する。この場合、入力信号Aおよび出力信号Bは、いずれも正弦波で示される。すなわち、入力信号Aおよび出力信号Bは、それぞれ以下の式(1)および式(2)のように示すことができる。
【0042】
【0043】
式(1)におけるA(f)が入力信号Aの振幅、2πft+α(f)が入力信号Aの位相にそれぞれ対応する。また、式(2)におけるB(f)が出力信号Bの振幅、2πft+β(f)が出力信号Bの位相にそれぞれ対応する。
【0044】
このとき、式(2)を式(1)で除することにより、以下の式(3)~(5)で示す周波数特性が得られる。
【0045】
【0046】
ここで、測定装置2で得られる値は、式(4)で示されるゲインおよび式(5)で示される位相である。また、入力信号を測定装置2が出力する場合、測定装置2が式(1)で示される入力信号の情報を保持している。したがって、計算部32は、式(1)と式(4)とを用いることにより、式(2)で示される出力信号の情報を得ることができる。
【0047】
本実施形態における入力信号は、複数の周波数を有する信号である。つまり、入力信号は、複数の正弦波の重ね合わせで表現することができる。n個(nは2以上の自然数)の周波数を有する入力信号を入力信号Nとしたとき、入力信号Nは以下の式(6)のように示すことができる。
【0048】
【0049】
なお、式(6)におけるAk(fk)およびαk(fk)は高速フーリエ変換を用いて入力信号Nから算出することができる。
【0050】
ここで、入力信号Nは、第1周波数を有する第1信号A1と、第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2信号A2とを含む。第1信号A1および第2信号A2は、以下の式で表される。
【0051】
【0052】
式(7)におけるA1(f)が第1信号A1の振幅に、α1(f)が第1信号A1の位相に対応する。言い換えると、式(7)におけるA1(f)は振幅に関する第1振幅情報であり、α1(f)は位相に関する第1位相情報である。
【0053】
また、式(7)におけるA2(f)が第2信号A2の振幅に、α2(f)が第2信号A2の位相に対応する。言い換えると、式(7)におけるA2(f)は振幅に関する第2振幅情報であり、α2(f)は位相に関する第2位相情報である。
【0054】
入力信号Nに対する測定領域12におけるノイズ波形は、入力信号Nと、測定装置2で得られる式(4)のゲインおよび位相とを畳み込み積分することによって以下の式(7)~(9)のように計算される。
【0055】
【0056】
ここで、式(8)はノイズ波形の振幅、式(9)はノイズ波形の位相に対応する。
【0057】
以上の計算により、計算部32は、複数の周波数を有する入力信号に対する、ノイズ波形を計算することができる。
【0058】
出力制御部35は、求めたノイズ波形に関する情報を出力してもよい。例えば、出力制御部35は、測定領域12ごとのノイズ強度を示す分布図を作成して出力してもよい。ノイズ強度としては、例えば、ノイズ波形の振幅を用いることができる。出力制御部35は、例えばノイズ強度に応じて濃淡の差をつけたり、色分けをしたりすることにより、測定領域12ごとのノイズ強度を示す分布図を作成する。出力制御部35は、測定領域ごとのノイズ強度を示す分布図を、測定対象11の二次元平面画像データに重ね合わせたものを、ノイズ強度分布図として作成してもよい。出力制御部35は、測定対象11の二次元平面画像データをあらかじめ保持していてもよく、図示しないカメラにより測定対象11の二次元平面画像データをノイズ評価の前あるいは後に取得してもよい。
【0059】
出力制御部35は、作成したノイズ強度分布図を処理装置3に接続された表示装置20に出力してもよい。それにより、表示装置20は、ノイズ強度分布図を表示することができる。これにより、測定対象11におけるノイズの伝搬経路、およびノイズの強度分布を可視化することができる。表示装置20は、評価システム1に含まれてもよい。
【0060】
ノイズ強度分布図について、
図4Aおよび
図4Bを用いて説明する。
【0061】
図4Aは、測定対象11の二次元平面画像データの一例を示し、
図4Bは、測定対象11のノイズ強度を示す分布図を、測定対象11の二次元平面画像データに重ね合わせて表示したノイズ強度分布図の一例を示す。
図4Bでは、ノイズ強度が大きい領域を、密度の高い網掛けで示している。
【0062】
図4Aに示す例では、測定対象11は、コネクタ13に接続する配線パターン21と、配線パターン21のコネクタ13に接続されない側の端付近に位置する電子部品24と、電子部品24の付近に位置する電子部品25と、配線パターン21の周囲に位置する電子部品22と、電子部品24の周囲に位置する電子部品23と、を有する。電子部品22は、例えば基板グランドの一部である。
図4Bにおいては、配線パターン21に対応する領域の網掛けの密度が最も高く、電子部品24に対応する領域の網掛けの密度が次に高く、電子部品25に対応する領域、配線パターン21の周辺領域および電子部品24の周辺領域では網掛けの密度が低くなっている。
【0063】
出力制御部35は、例えば、
図4Aおよび
図4Bに示すノイズ強度分布図を生成し、表示装置20へ表示する。これにより、入力ノイズの伝搬しやすさが、配線パターン21において最も高く、電子部品24において次に高く、電子部品25、配線パターン21の周辺および電子部品24の周辺において低くなることを、ユーザに対して容易に提供することができる。また、
図4Bでは、配線パターン21の周辺領域、電子部品24の周辺領域、電子部品25に対応する領域、電子部品22に対応する領域、および電子部品23に対応する領域の網掛けの密度がほぼ同じになっている。
【0064】
このため、例えば、
図4Aおよび
図4Bを視認したユーザは、配線パターン21の周辺領域、電子部品24の周辺領域、電子部品25、電子部品22、および電子部品23とでは、入力ノイズの伝搬しやすさがほぼ同等であることを容易に把握することができる。このように、出力制御部35は、ノイズの伝搬しやすさを直観的に理解することが可能なノイズ強度分布図を生成し、表示装置20へ表示することができる。
【0065】
図5は、本実施形態の評価システム1における処理装置3の動作を説明するフローチャートである。
図5に示すように、受信部31は、入力信号と、出力振幅信号と、出力位相信号とを受信する(S1)。そして、計算部32は、入力信号と、出力振幅信号と、出力位相信号とに基づき、ノイズ波形を求める(S2)。出力制御部35は、求めたノイズ波形に関する情報を出力する(S3)。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の評価システム1は、測定装置2と、処理装置3と、を備える。測定装置は、測定対象11が有する測定領域12から、測定対象11への入力信号に対応して出力される出力信号の、位相に関する出力位相情報および振幅に関する出力振幅情報を測定する。処理装置3は、入力信号と、出力位相情報と、出力振幅情報と、に基づいて、測定領域12におけるノイズ波形を計算する。入力信号は、第1周波数を有する第1信号と、第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2信号と、を含む。第1信号は、位相に関する第1位相情報と、振幅に関する第1振幅情報と、を有する。第2信号は、位相に関する第2位相情報と、振幅に関する第2振幅情報と、を有する。
【0067】
ここで、従来技術においては、印加するノイズとして単一の周波数を有するノイズを用いており、評価対象物から発生したノイズも、単一の周波数に対応するものとして評価していた。例えば、単一の正弦波をノイズ信号として評価対象物に入力していた。
【0068】
しかし、実際の環境で生じるノイズは正弦波ではなく方形波や、三角波である場合もある。方形波や三角波は正弦波の重ね合わせで表すことができる。言い換えると、方形波および三角波は複数の周波数の信号を含む。したがって、評価対象物内で複数の周波数を有するノイズがどのように伝搬するかを評価できると有益である。
【0069】
従来技術では、評価対象物から発生したノイズを、単一の周波数に対応するものとして評価していた。例えば、入力ノイズが周波数Pおよび周波数Qを含む場合には、周波数Pに対してはノイズ波形pを、周波数Qに対してはノイズ波形qを別個に出力していた。言い換えると、複数の周波数を含む入力ノイズに対して、評価対象物から実際に出力される信号を得ることができなかった。
【0070】
一方本実施形態に係る評価システム1では、第1周波数を有する第1信号と、第1周波数とは異なる第2周波数を有する第2信号と、を含む入力信号と、出力信号の出力位相情報および出力振幅情報と、に基づいて、測定領域12におけるノイズ波形を計算する。このため、本実施形態に係る評価システム1では、複数の周波数を有する信号が入力されたときに実際に出力される1つのノイズ波形を求めることができる。
【0071】
従って、本実施形態に係る評価システム1は、複数の周波数を有するノイズが測定対象11である評価対象物内でどのように伝搬するかを評価できる。また、本実施形態に係る評価システム1は、評価対象物のノイズ伝搬について、より正確な評価結果を得ることができる。
【0072】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の評価装置について、
図6および
図7を用いて説明する。
図6は、ノイズ評価に係る本実施形態の評価装置100および周辺構成を示す図である。
図7は、本実施形態の評価装置100の概略構成を示す図である。
【0073】
図6に示すように、本実施形態の評価装置100は、
図1に示した第1実施形態の評価システム1のうち、測定装置2と処理装置3が一体になったものである。その他の構成については、基本的に第1実施形態の評価システム1と同じであるため、第1実施形態の評価システム1と同じ構成要素については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0074】
評価装置100は、測定対象が有する測定領域から、入力信号に対応して出力される、出力信号を受信する受信部101と、出力信号の、位相に関する出力位相情報および振幅に関する出力振幅情報を測定する測定部102と、入力信号と、出力位相情報と、出力振幅情報とに基づいて測定領域におけるノイズ波形を求める計算部32と、を備える。評価装置100がプローブ7の移動の制御を行う場合、評価装置100は、位置コントローラ10に制御信号を出力する、制御部33を備えてもよい。評価装置100は、プローブ7の較正を行う較正部34を備えてもよい。また、評価装置100は、ノイズ波形に関する情報を表示装置20に表示してもよい。その場合、評価装置100は、ノイズ波形の情報を表示装置20に出力する、出力制御部35を備えてもよい。ノイズ波形に関する情報とは、例えば、ノイズ強度分布図である。評価装置100が表示装置20を備えていてもよい。
【0075】
受信部101は、測定対象11から出力された出力信号を受信する。受信部101は、受信した出力信号を測定部102に入力する。
【0076】
測定部102は、出力信号の周波数特性を測定する。本実施形態においても、入力信号は評価装置100からコネクタ13を介して測定対象11に入力される。言い換えると、評価装置100は、入力信号の周波数を示すデータを保持している。測定部102は、入力信号の周波数に対応させて、出力信号の周波数特性を測定する。具体的には、測定部102は、検知された出力信号の位相である出力位相情報および振幅である出力振幅情報を測定する。
【0077】
そして、測定部102は、出力位相情報および出力振幅情報を、入力信号の周波数を示すデータとともに計算部32に出力する。入力信号が評価装置100とは異なる信号源から測定対象11に入力される場合、入力信号の周波数を示すデータが測定部102に入力されてもよい。あるいは、入力信号が評価装置100とは異なる信号源から測定対象11に入力される場合、入力信号の周波数を示すデータが信号源から計算部32に入力されてもよい。
【0078】
本実施形態に係る評価装置においても、複数の周波数を有する信号が入力されたときに実際に出力される1つのノイズ波形を求めることができる。したがって、本実施形態に係る評価装置100は、第1の実施形態と同様に、複数の周波数を有するノイズが測定対象11である評価対象物内でどのように伝搬するかを評価できる。また、本実施形態に係る評価装置100は、評価対象物のノイズ伝搬について、より正確な評価結果を得ることができる。
また、本実施形態に係る評価装置100は、測定対象11に入力される入力信号の出力と、入力信号、出力位相情報および出力振幅情報に基づくノイズ波形の計算と、の両方を行っている。これにより、入力信号と、出力位相情報および出力振幅情報と、ノイズ波形と、をより正確に対応づけることができる。
【0079】
図2に示すように、評価装置100のハードウェア構成は、処理装置3のハードウェア構成と同様である。評価装置100においては、CPU40AがROM40Bから処理内容に応じた制御プログラムを読み出してRAM40Cに展開し、実行することにより、受信部101、測定部102および計算部32の機能を実現する。同様にして、制御部33、較正部34、および出力制御部35の機能が実現されてもよい。あるいは、それぞれ異なるハードウェア回路によって、各部の機能が実現されてもよい。
【0080】
本開示の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の用紙を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態は、発明の範囲および用紙に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0081】
1 評価システム
2 測定装置
3 処理装置
4 増幅器
7 プローブ
8 支持部
9 駆動機構
10 位置コントローラ
11 測定対象
12 測定領域
13 コネクタ
20 表示装置
31 受信部
32 計算部
33 制御部
34 較正部
35 出力制御部
100 評価装置
101 受信部
102 測定部