(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】発電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20230331BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20230331BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20230331BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230331BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/00 180
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J7/35 K
(21)【出願番号】P 2020013975
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2021-01-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇次
(72)【発明者】
【氏名】奥田 泰生
(72)【発明者】
【氏名】西川 修平
(72)【発明者】
【氏名】杉本 敏
【合議体】
【審判長】角田 慎治
【審判官】寺谷 大亮
【審判官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】実開平4-762(JP,U)
【文献】特開2005-245136(JP,A)
【文献】特開2016-82601(JP,A)
【文献】特開2005-287300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統からの高圧の交流電力を変圧し、変圧した交流電力を出力する
、売買電の電力を計測するための機能が含まれていないキュービクルと、
発電装置において発電された直流電力を交流電力に変換して出力するパワーコンディショナと、
前記キュービクルと前記パワーコンディショナとに接続され、前記キュービクルあるいは前記パワーコンディショナからの交流電力を負荷機器に供給する分電盤と、
前記電力系統に対して売買電される電力を計測し、計測結果を前記パワーコンディショナに送信する電力量計とを備え、
前記パワーコンディショナは、
前記電力量計から計測結果を受けつける入力部と、
前記入力部において受けつけた前記計測結果をもとに、売電とならないように、直流電力から交流電力への変換を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする発電システム。
【請求項2】
電力系統からの高圧の交流電力を変圧し、変圧した交流電力を出力する
、売買電の電力を計測するための機能が含まれていないキュービクルと、
発電装置において発電された直流電力を交流電力に変換して出力するパワーコンディショナと、
前記キュービクルと前記パワーコンディショナとに接続され、前記キュービクルあるいは前記パワーコンディショナからの交流電力を負荷機器に供給する分電盤と、
前記電力系統に対して売買電される電流を計測し、計測結果を前記パワーコンディショナに送信する電流センサとを備え、
前記パワーコンディショナは、
前記電流センサから計測結果を受けつける入力部と、
前記入力部において受けつけた前記計測結果をもとに、売電とならないように、直流電力から交流電力への変換を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする発電システム。
【請求項3】
電力系統からの高圧の交流電力を変圧し、変圧した交流電力を出力する
、売買電の電力を計測するための機能が含まれていないキュービクルと、
発電装置において発電された直流電力を交流電力に変換して出力するメインパワーコンディショナと、
発電装置において発電された直流電力を交流電力に変換して出力するスレーブパワーコンディショナと、
前記キュービクルと前記メインパワーコンディショナと前記スレーブパワーコンディショナとに接続され、前記キュービクルあるいは前記メインパワーコンディショナあるいは前記スレーブパワーコンディショナからの交流電力を負荷機器に供給する分電盤と、
前記電力系統に対して売買電される電力を計測し、計測結果を前記メインパワーコンディショナに送信する電力量計とを備え、
前記メインパワーコンディショナは、
前記電力量計から計測結果を受けつける入力部と、
前記入力部において受けつけた前記計測結果をもとに、売電とならないように、直流電力から交流電力への変換を制御する制御部とを備え、
前記メインパワーコンディショナは、変換の動作を前記スレーブパワーコンディショナに指示することを特徴とする発電システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記計測結果が買電を示す場合にMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御を実行し、前記計測結果が売電を示す場合に買電を示すようになるように変換を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の発電システム。
【請求項5】
蓄電池をさらに備え、
前記制御部は、前記計測結果が買電を示す場合にMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御を実行し、前記計測結果が売電を示す場合に前記蓄電池への充電を実行することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力を制御する発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムにおいて、余剰電力が商用電力線に逆潮流させ電力会社に売電される。一方、逆潮流による電力系統の電圧変動を抑制するために、太陽光発電システムから電力会社への逆潮流が回避される。例えば、太陽電池の発電電力を制御するパワーコンデショナには、当該パワーコンデショナの出力を制御する発電制御装置が接続され、発電制御装置は、消費電力の計測値と発電電力の計測値とをもとに、出力指令値を算出してパワーコンディショナに出力する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工場、大型商業施設、病院、オフィスビル、ホテル、店舗などの受電容量が50kVA以上4000kVA以下の小中規模施設には、キュービクル式高圧受電設備(以下、「キュービクル」という)が設置されることがある。キュービクルは、高圧で受電するための機器一式を金属製の外箱に収めた変電設備であり、6600Vで受電した高圧電力を100Vまたは200Vに変圧して施設に供給する。また、施設には、施設において施設において使用された電力を計測する電力量計も設置され、電力量計は、小売電気事業者によって電力売買取引のために使用される。さらに、太陽光発電システムは、目的が売電から自家消費に移行しつつある。自家消費の場合、売買電の電力を計測し、逆潮流が発生しないように発電電力を調整するための計測制御装置が必要となる。前述の太陽光発電システムにこれらの設備が接続されると、設備の規模が大きくなる。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、発電システムにおける設備の規模の拡大を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の発電システムは、電力系統からの高圧の交流電力を変圧し、変圧した交流電力を出力する、売買電の電力を計測するための機能が含まれていないキュービクルと、発電装置において発電された直流電力を交流電力に変換して出力するパワーコンディショナと、キュービクルとパワーコンディショナとに接続され、キュービクルあるいはパワーコンディショナからの交流電力を負荷機器に供給する分電盤と、電力系統に対して売買電される電力を計測し、計測結果をパワーコンディショナに送信する電力量計とを備える。パワーコンディショナは、電力量計から計測結果を受けつける入力部と、入力部において受けつけた計測結果をもとに、売電とならないように、直流電力から交流電力への変換を制御する制御部と、を備える。
【0008】
本開示の別の態様もまた、発電システムである。この発電システムは、電力系統からの高圧の交流電力を変圧し、変圧した交流電力を出力する、売買電の電力を計測するための機能が含まれていないキュービクルと、発電装置において発電された直流電力を交流電力に変換して出力するパワーコンディショナと、キュービクルとパワーコンディショナとに接続され、キュービクルあるいはパワーコンディショナからの交流電力を負荷機器に供給する分電盤と、電力系統に対して売買電される電流を計測し、計測結果をパワーコンディショナに送信する電流センサとを備える。パワーコンディショナは、電流センサから計測結果を受けつける入力部と、入力部において受けつけた計測結果をもとに、売電とならないように、直流電力から交流電力への変換を制御する制御部と、を備える。
【0009】
本開示のさらに別の態様もまた、発電システムである。この発電システムは、電力系統からの高圧の交流電力を変圧し、変圧した交流電力を出力する、売買電の電力を計測するための機能が含まれていないキュービクルと、発電装置において発電された直流電力を交流電力に変換して出力するメインパワーコンディショナと、発電装置において発電された直流電力を交流電力に変換して出力するスレーブパワーコンディショナと、キュービクルとメインパワーコンディショナとスレーブパワーコンディショナとに接続され、キュービクルあるいはメインパワーコンディショナあるいはスレーブパワーコンディショナからの交流電力を負荷機器に供給する分電盤と、電力系統に対して売買電される電力を計測し、計測結果をメインパワーコンディショナに送信する電力量計とを備える。メインパワーコンディショナは、電力量計から計測結果を受けつける入力部と、入力部において受けつけた計測結果をもとに、売電とならないように、直流電力から交流電力への変換を制御する制御部とを備える。メインパワーコンディショナは、変換の動作をスレーブパワーコンディショナに指示する。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、またはコンピュータプログラムを記録した記録媒体などの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、発電システムにおける設備の規模の拡大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1の比較対象となる発電システムの構成を示す図である。
【
図2】実施例1に係る発電システムの構成を示す図である。
【
図3】
図3(a)-(b)は、
図2の制御部に保持されるテーブルのデータ構造を示す図である。
【
図4】
図4(a)-(b)は、
図2の発電システムによる処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】実施例2に係る発電システムの構成を示す図である。
【
図6】
図6(a)-(b)は、
図5の制御部に保持されるテーブルのデータ構造を示す図である。
【
図7】
図7(a)-(b)は、
図5の発電システムによる処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施例1)
本開示の実施例を具体的に説明する前に、本実施例の概要を説明する。実施例1は、太陽電池システム等の発電システムに関する。小中規模施設には、電力系統から高圧電力が供給され、キュービクルにより高圧電力を変圧する。変圧された電力は、小中規模施設内の分電盤を介して負荷機器に供給される。一方、小中規模施設に発電システムが導入される場合、太陽電池等の発電装置はパワーコンディショナに接続され、パワーコンディショナは分電盤に接続される。パワーコンディショナは、例えば、発電装置において発電された直流電力を交流電力に変換して分電盤に出力する。このような発電システムでは、発電装置において発電された電力がパワーコンディショナ、分電盤、キュービクルを介して電力系統に逆潮流されることによって、売電がなされる。
【0014】
しかしながら、電力の買取価格の下落が進むことによって、発電システムの目的が、売電から自家消費に移行しつつある。発電システムの自家消費を実現する場合、電力系統への逆潮流の発生を防止するために、キュービクル内に逆潮流継電器(RPR)が設けられる。RPRが動作するとパワーコンディショナを停止させる必要があるので、それを防ぐために、キュービクル内に計測制御装置が設けられる。計測制御装置は、売買電の電力を計測して、逆潮流が発生しないように発電電力を調節するための指令を生成し、指令をパワーコンディショナに出力する。
【0015】
また、キュービクルには、小中規模施設において使用された電力を計測するための電力量計も設置される。電力量計は、小売電気事業者による確認のために使用され、計測制御装置は、パワーコンディショナの制御のために使用されており、それらの使用用途は異なる。しかしながら、いずれも電力を計測する機能を備えているので、同一の機能を有する複数の装置が発電システム内に含まれるといえる。発電システムにおける設備の規模の拡大を抑制するためには、同一の機能を有する複数の装置が発電システム内に含まれないような構成が望ましい。
【0016】
本実施例における発電システムでは、キュービクル内に計測制御装置が設けられず、計測制御装置のうち、逆潮流が発生しないようにパワーコンディショナの動作を制御するための機能がパワーコンディショナ内に設けられる。また、パワーコンディショナには、電力量計の計測結果を電力量計から受けつけるための機能も設けられ、パワーコンディショナは、電力量計の計測結果をもとに、逆潮流が発生しないように動作する。
【0017】
図1は、比較対象となる発電システム1の構成を示す。発電システム1は、電力系統10、キュービクル20、電力量計30、分電盤40、負荷機器50、発電装置60、パワーコンディショナ70を含む。キュービクル20は、計測制御部22、RPR24を含み、パワーコンディショナ70は、入力部74、変換部72を含む。発電システム1は、前述のごとく、受電容量が50kVA以上4000kVA以下の小中規模施設に設けられる。小中規模施設の一例は、工場、大型商業施設、病院、オフィスビル、ホテル、店舗などである。
【0018】
電力系統10は電力会社等によって提供される。ここでは、6600Vの高圧電力が提供される場合を想定する。キュービクル20は、前述のごとく、変電機能を有し、6600Vでの高圧電力と、100Vまたは200Vの電力との間の変圧を実行する。分電盤40は、キュービクル20に接続され、キュービクル20を介して電力系統10に接続される。また、分電盤40は、負荷機器50を接続し、負荷機器50に電力を供給する。負荷機器50は分電盤40から供給される電力を消費する機器である。負荷機器50は、空調機器(エアコン)、テレビジョン受信装置(テレビ)、照明装置、冷蔵庫等の機器を含む。ここでは、分電盤40に1つの負荷機器50が接続されているが、分電盤40に複数の負荷機器50が接続されてもよい。
【0019】
電力量計30は、キュービクル20に接続されたデジタル式の電力量計であり、例えばスマートメータである。電力量計30は、電力系統10から入ってくる順潮流の電力、あるいは電力系統10へ出て行く逆潮流の電力とを計測可能である。前者が買電電力あるいは順潮流電力に相当し、後者が売電電力あるいは逆潮流電力に相当する。電力量計30は、小売電気事業者によって確認されるために小中規模施設に設置される。
【0020】
発電装置60は、例えば太陽電池であり、再生可能エネルギー発電装置である。発電装置60は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換する。太陽電池として、シリコン太陽電池、化合物半導体などを素材にした太陽電池、色素増感型(有機太陽電池)等が使用される。再生可能エネルギーである太陽光の強さは天候および時刻とともに変動するので、発電装置60において発電される電力も変動する。発電装置60は、発電した直流電力をパワーコンディショナ70に出力する。
【0021】
パワーコンディショナ70の変換部72は、DC-DCコンバータおよびDC-ACインバータの機能を有し、発電装置60から出力される直流電力を、所望の電圧値の直流電力に変換し、変換した直流電力を交流電力に変換する。変換部72は、変換した交流電力を分電盤40に出力する。発電装置60において発電した電力を売電する場合、分電盤40は、変換部72からの交流電力をキュービクル20を介して電力系統10に出力する。しかしながら、本実施例は、売電ではなく自家消費を前提とするので、分電盤40は、変換部72からの交流電力を負荷機器50に供給する。
【0022】
自家消費を前提とする場合、電力の逆潮流を防止するために、キュービクル20にRPR24が設けられる。RPR24は、分電盤40から電力系統10に向かう方向、つまり逆潮流の交流電力を検出した際に動作する継電器である。RPR24は、例えば、逆潮流の電流が流れた場合に、接点信号をパワーコンディショナ70に送信し、パワーコンディショナ70は発電を停止する。このように、RPR24は、電力系統10への逆潮流が発生した場合に動作することによって、逆潮流発生の場合に発電装置60、パワーコンディショナ70からの送電を停止し、電力系統10への逆潮流を防止する。
【0023】
計測制御部22は、電力系統10から入ってくる順潮流の電力、あるいは電力系統10へ出て行く逆潮流の電力とを計測可能であり、計測結果をもとに変換部72での変換を制御するための指令(以下、「出力指令値」という)を生成する。例えば、計測制御部22は、順潮流の電力が第1所定値よりも小さい場合、逆潮流の発生を防止するために、変換部72から出力される交流電力を小さくするような出力指令値を生成する。また、計測制御部22は、順潮流の電力が第2所定値よりも大きい場合、変換部72から出力される交流電力を大きくするような出力指令値を生成する。第2所定値は第1所定値よりも大きな値に設定される。このような計測制御部22における制御には公知の技術が使用されればよい。計測制御部22は、パワーコンディショナ70と通信線により接続されており、通信線を介してパワーコンディショナ70に出力指令値を送信する。
【0024】
パワーコンディショナ70の入力部74は、通信線を介してキュービクル20に接続されており、出力指令値を受信する。変換部72は、入力部74において受信した出力指令値の内容にしたがって、交流電力の出力を制御する。このような構成において、計測制御部22と電力量計30は、電力系統10から入ってくる順潮流の電力、あるいは電力系統10へ出て行く逆潮流の電力とを計測しており、同様の機能を有する。前述のごとく、発電システム1における設備の規模の拡大を抑制するためには、同一の機能を有する複数の装置が発電システム1内に含まれないような構成が望ましい。
【0025】
図2は、発電システム1000の構成を示す。発電システム1000は、電力系統100、キュービクル200、電力量計300、分電盤400、負荷機器500、発電装置600、パワーコンディショナ700、蓄電池800を含む。キュービクル200は、RPR204を含み、パワーコンディショナ700は、変換部702、入力部704、制御部706を含む。発電システム1000は、前述の発電システム1と同様に、受電容量が50kVA以上4000kVA以下の小中規模施設に設けられる。
【0026】
電力系統100は、前述の電力系統10と同様に、電力系統10は電力会社等によって提供される6600Vの高圧電力である。キュービクル200は、前述のごとく、変電機能を有し、6600Vの高圧電力と、100Vまたは200Vの電力との間の変圧を実行するとともに、電力の逆潮流を防止するためのRPR204を有する。RPR204はこれまでのRPR24と同一である。分電盤400は、キュービクル200に接続され、キュービクル200を介して電力系統100に接続される。また、分電盤400は、負荷機器500を接続し、負荷機器500に電力を供給する。負荷機器500は、前述の負荷機器50と同一である。
【0027】
電力量計300は、キュービクル200に接続されたデジタル式の電力量計であり、例えばスマートメータである。電力量計300は、前述の電力量計30と同様の計測機能を有し、電力系統100から入ってくる順潮流の電力、あるいは電力系統100へ出て行く逆潮流の電力とを計測可能である。前者が買電電力あるいは順潮流電力に相当し、後者が売電電力あるいは逆潮流電力に相当する。つまり、電力量計300は、電力系統100に対して売買電される電力を計測する。
【0028】
発電装置600は、前述の発電装置60と同一であり、例えば太陽電池のような再生可能エネルギー発電装置である。発電装置600は、発電した直流電力をパワーコンディショナ700に出力する。パワーコンディショナ700は、発電装置600と分電盤400との間に配置される。変換部702は、DC-DCコンバータおよびDC-ACインバータの機能を有し、発電装置600から出力される直流電力を、所望の電圧値の直流電力に変換し、変換した直流電力を交流電力に変換する。変換部702は、変換した交流電力を分電盤400に出力する。これまでと同様に、売電ではなく自家消費を前提とするので、分電盤400は、変換部702からの交流電力を負荷機器500に供給する。
【0029】
電力量計300は、通信線を介してパワーコンディショナ700に接続され、パワーコンディショナ700との間の通信を実行する。また、電力量計300は、無線回線を介してパワーコンディショナ700に接続され、パワーコンディショナ700との間の無線通信を実行してもよい。電力量計300は、計測結果をパワーコンディショナ700に送信する。ここで、計測結果の送信は定期的になされてもよく、変化が予め定めた範囲よりも大きくなった場合になされてもよい。
【0030】
パワーコンディショナ700の入力部704は、通信線あるいは無線回線を介して電力量計300に接続されており、計測結果を受信する。入力部704における通信機能はオプション部材で構成されてもよく、オプション部材の通信装置がパワーコンディショナ700に接続されてもよい。
【0031】
制御部706は、入力部704において受けつけた計測結果をもとに、電力系統100に対して売電とならないように変換部702における変換を制御する。変換を制御することは、変換部702から出力する交流電力の大きさを制御することに相当する。
図3(a)-(b)は、制御部706に保持されるテーブルのデータ構造を示す。
図3(a)に示されるテーブルでは、計測結果に含まれる電力値が「売電」である場合の制御「出力を低減」と、計測結果に含まれる電力値が「買電」である場合の制御「通常制御」とが示される。
【0032】
制御部706は、変換部702から受けつけた計測結果に含まれる電力値が「買電」である場合、通常制御の実行を決定する。通常制御として、制御部706は、発電装置600の出力電力が最大になるようMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御を変換部702に対して実行する。MPPTについては公知の技術が使用されればよく、通常制御としてMPPT制御以外の制御が実行されてもよい。一方、制御部706は、変換部702から受けつけた計測結果に含まれる電力値が「売電」である場合、出力を低減させることを決定する。その際、制御部706は、出力される交流電力を1/X倍となるように変換部702を制御する。「X」は、予め定められた固定値であってもよく、電力値が大きくなるほど大きくなるような値であってもよい。このように制御部706は、計測結果が売電を示す場合に買電を示すようになるように変換部702における変換を制御する。
【0033】
図3(b)は、
図3(a)とは別のテーブルである。
図3(b)に示されるテーブルでは、計測結果に含まれる電力値が「売電」である場合に、蓄電池800への充電が可能であるときの制御「充電」と、蓄電池800への充電が不可能であるときの制御「出力を低減」とが示される。また、計測結果に含まれる電力値が「買電」である場合の制御「通常制御」も示される。ここでは、
図2に示されるように、蓄電池800がパワーコンディショナ700に接続される。蓄電池800は、電力を充放電可能であり、リチウムイオン蓄電池、ニッケル水素蓄電池、鉛蓄電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等を含む。蓄電池800はパワーコンディショナ700に内蔵されてもよい。
【0034】
制御部706は、変換部702から受けつけた計測結果に含まれる電力値が「買電」である場合、これまでと同様に通常制御の実行を決定し、変換部702を運転させる。一方、制御部706は、変換部702から受けつけた計測結果に含まれる電力値が「売電」である場合、蓄電池800の空き容量を確認し、空き容量がある場合に充電可能と判定し、満充電の場合に充電不可能と判定する。充電可能である場合、制御部706は、直流電力を蓄電池800に充電させる。充電不可能である場合、制御部706は、出力を低減することを決定する。その際、制御部706は、変換部702における変換を低減させる。蓄電池800に充電させる場合、蓄電池800は、充電にともなって空き容量ありの状態から満充電の状態に変化しうる。このような状況において、制御部706は、蓄電池800が満充電になると、充電を停止させるとともに、出力を低減する。
【0035】
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0036】
以上の構成による発電システム1000の動作を説明する。
図4(a)-(b)は、発電システム1000による処理手順を示すフローチャートである。
図4(a)において、入力部704は、電力値を受けつける(S10)。電力値が売電を示す場合(S12のY)、制御部706は、変換部702からの出力を低減させる(S14)。電力値が売電を示さない場合(S12のN)、制御部706は、通常制御を実行する(S16)。
【0037】
図4(b)において、入力部704は、電力値を受けつける(S30)。電力値が売電を示す場合(S32のY)、蓄電池800が充電可であれば(S34のY)、制御部706は、蓄電池800を充電させる(S36)。蓄電池800が充電可でなければ(S34のN)、制御部706は、変換部702からの出力を低減させる(S38)。電力値が売電を示さない場合(S32のN)、制御部706は、通常制御を実行する(S40)。
【0038】
本実施例によれば、電力量計300から受けつけた計測結果をもとに、売電とならないように変換部702における変換をパワーコンディショナ700において制御するので、キュービクル200における計測機能を不要にできる。また、キュービクル200における計測機能が不要になるので、発電システム1000における設備の規模の拡大を抑制できる。また、電力量計300からの電力値を使用するので、発電システム1000を安価に構成できる。
【0039】
また、計測結果が売電を示す場合に買電を示すようになるように変換部702における変換を制御するので、逆潮流の発生を抑制できる。また、計測結果が売電を示す場合に蓄電池800への充電を実行するので、逆潮流の発生を抑制できる。
【0040】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様のパワーコンディショナ(700)は、発電装置(600)と電力系統(100)との間に配置されるパワーコンディショナ(700)であって、発電装置(600)において発電された直流電力を交流電力に変換する変換部(702)と、電力系統(100)に対して売買電される電力を計測する電力量計(300)から計測結果を受けつける入力部(704)と、入力部(704)において受けつけた計測結果をもとに、売電とならないように変換部(702)における変換を制御する制御部(706)と、を備える。
【0041】
制御部(706)は、計測結果が売電を示す場合に買電を示すようになるように変換部(702)における変換を制御してもよい。
【0042】
制御部(706)は、計測結果が売電を示す場合に蓄電池への充電を実行してもよい。
【0043】
本開示のさらに別の態様は、発電システムである。この発電システムは、発電装置(600)と、発電装置(600)と電力系統(100)との間に配置されるパワーコンディショナ(700)と、電力系統(100)に対して売買電される電力を計測する電力量計(300)とを備える。パワーコンディショナ(700)は、発電装置(600)において発電された直流電力を交流電力に変換する変換部(702)と、電力量計(300)から計測結果を受けつける入力部(704)と、入力部(704)において受けつけた計測結果をもとに、売電とならないように変換部(702)における変換を制御する制御部(706)と、を備える。
【0044】
パワーコンディショナ(700)に接続される蓄電池をさらに備えてもよい。
【0045】
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。実施例2は、実施例1と同様に、太陽電池システム等の発電システムに関する。実施例1では、発電システムにおける設備の規模の拡大を抑制するために、変換部の変換の制御を決定するための機能をパワーコンディショナに備えることによって、電力量計における計測結果をパワーコンディショナに入力させている。実施例2では、実施例1と同様に、変換部の変換の制御を決定するための機能をパワーコンディショナに備える。しかしながら、実施例2では、実施例1とは異なって電力値とは異なった値が使用される。ここでは、実施例1との差異を中心に説明する。
【0046】
図5は、発電システム1000の構成を示す。発電システム1000は、電力系統100、キュービクル200、電力量計300、分電盤400、負荷機器500、発電装置600、パワーコンディショナ700、蓄電池800、電流センサ900を含む。キュービクル200は、RPR204を含み、パワーコンディショナ700は、変換部702、入力部704、制御部706を含む。
【0047】
電流センサ900は、キュービクル200と分電盤400との間に配置され、電力系統100から入ってくる順潮流の電流、あるいは電力系統100へ出て行く逆潮流の電流とを計測可能である。前者が買電電流あるいは順潮流電流に相当し、後者が売電電流あるいは逆潮流電流に相当する。つまり、電流センサ900は、電力系統100に対して売買電される電流を計測する。
【0048】
電流センサ900は、通信線を介してパワーコンディショナ700に接続され、パワーコンディショナ700との間の通信を実行する。また、電流センサ900は、無線回線を介してパワーコンディショナ700に接続され、パワーコンディショナ700との間の無線通信を実行してもよい。電流センサ900は、計測結果をパワーコンディショナ700に送信する。ここで、計測結果の送信は定期的になされてもよく、変化が予め定めた範囲よりも大きくなった場合になされてもよい。
【0049】
パワーコンディショナ700の入力部704は、通信線あるいは無線回線を介して電流センサ900に接続されており、計測結果を受信する。制御部706は、入力部704において受けつけた計測結果をもとに、電力系統100に対して売電とならないように変換部702における変換を制御する。
図6(a)-(b)は、制御部706に保持されるテーブルのデータ構造を示す。
図6(a)に示されるテーブルでは、計測結果に含まれる電流値が「売電」である場合の制御「出力を低減」と、計測結果に含まれる電流値が「買電」である場合の制御「通常制御」とが示される。
【0050】
制御部706は、変換部702から受けつけた計測結果に含まれる電流値が「買電」である場合、通常制御の実行を決定する。通常制御として、制御部706は、MPPT制御を変換部702に対して実行する。一方、制御部706は、変換部702から受けつけた計測結果に含まれる電流値が「売電」である場合、出力を低減させることを決定する。その際、制御部706は、出力される交流電力を1/X倍となるように変換部702を制御する。「X」は、予め定められた固定値であってもよく、電流値が大きくなるほど大きくなるような値であってもよい。このように制御部706は、計測結果が売電を示す場合に買電を示すようになるように変換部702における変換を制御する。
【0051】
図6(b)は、
図6(a)とは別のテーブルである。
図6(b)に示されるテーブルでは、計測結果に含まれる電流値が「売電」である場合に、蓄電池800への充電が可能であるときの制御「充電」と、蓄電池800への充電が不可能であるときの制御「出力を低減」とが示される。また、計測結果に含まれる電流値が「買電」である場合の制御「通常制御」も示される。ここでは、
図5に示されるように、蓄電池800がパワーコンディショナ700に接続される。
【0052】
制御部706は、変換部702から受けつけた計測結果に含まれる電流値が「買電」である場合、これまでと同様に通常制御の実行を決定し、変換部702を運転させる。一方、制御部706は、変換部702から受けつけた計測結果に含まれる電流値が「売電」である場合、蓄電池800の空き容量を確認し、空き容量がある場合に充電可能と判定し、満充電の場合に充電不可能と判定する。充電可能である場合、制御部706は、直流電力を蓄電池800に充電させる。充電不可能である場合、制御部706は、出力を低減することを決定する。その際、制御部706は、変換部702における変換を低減させる。蓄電池800に充電させる場合、蓄電池800は、充電にともなって空き容量ありの状態から満充電の状態に変化しうる。このような状況において、制御部706は、蓄電池800が満充電になると、充電を停止させるとともに、出力を低減する。
【0053】
以上の構成による発電システム1000の動作を説明する。
図7(a)-(b)は、発電システム1000による処理手順を示すフローチャートである。
図7(a)において、入力部704は、電流値を受けつける(S110)。電流値が売電を示す場合(S112のY)、制御部706は、変換部702からの出力を低減させる(S114)。電流値が売電を示さない場合(S112のN)、制御部706は、通常制御を実行する(S116)。
【0054】
図7(b)において、入力部704は、電流値を受けつける(S130)。電流値が売電を示す場合(S132のY)、蓄電池800が充電可であれば(S134のY)、制御部706は、蓄電池800を充電させる(S136)。蓄電池800が充電可でなければ(S134のN)、制御部706は、変換部702からの出力を低減させる(S138)。電流値が売電を示さない場合(S132のN)、制御部706は、通常制御を実行する(S140)。
【0055】
本実施例によれば、電流センサ900から受けつけた計測結果をもとに、売電とならないように変換部702における変換をパワーコンディショナ700において制御するので、発電システム1000における設備の規模の拡大を抑制できる。また、計測結果が売電を示す場合に買電を示すようになるように変換部702における変換を制御するので、逆潮流の発生を抑制できる。また、計測結果が売電を示す場合に蓄電池800への充電を実行するので、逆潮流の発生を抑制できる。
【0056】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示の別の態様もまた、パワーコンディショナ(700)である。このパワーコンディショナ(700)は、発電装置(600)と電力系統(100)との間に配置されるパワーコンディショナ(700)であって、発電装置(600)において発電された直流電力を交流電力に変換する変換部(702)と、電力系統(100)に対して売買電される電流を計測する電流センサ(900)から計測結果を受けつける入力部(704)と、入力部(704)において受けつけた計測結果をもとに、売電とならないように変換部(702)における変換を制御する制御部(706)と、を備える。
【0057】
本開示のさらに別の態様もまた、発電システムである。この発電システムは、発電装置(600)と、発電装置(600)と電力系統(100)との間に配置されるパワーコンディショナ(700)と、電力系統(100)に対して売買電される電流を計測する電流センサ(900)とを備える。パワーコンディショナ(700)は、発電装置(600)において発電された直流電力を交流電力に変換する変換部(702)と、電流センサ(900)から計測結果を受けつける入力部(704)と、入力部(704)において受けつけた計測結果をもとに、売電とならないように変換部(702)における変換を制御する制御部(706)と、を備える。
【0058】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0059】
本実施例1、2における発電システム1000には、1つのパワーコンディショナ700が含まれる。しかしながらこれに限らず例えば、発電システム1000に複数のパワーコンディショナ700が含まれてもよい。その際、複数のパワーコンディショナ700のうちの1つがマスタとして動作し、残りのパワーコンディショナ700がスレーブとして動作する。また、マスタのパワーコンディショナ700に電力量計300が接続され、電力量計300はマスタのパワーコンディショナ700に電力値あるいは電流値を出力する。また、マスタのパワーコンディショナ700はスレーブのパワーコンディショナ700に動作を指示する。本変形例によれば、構成の自由度を向上できる。
【0060】
実施例1、2における制御部706は、変換部702から出力される交流電力の大きさを制御する機能を有する。しかしながらこれに限らず例えば、パワーコンディショナ700には、タッチパネル機能を備えた表示部が備えられており、変換部702における機能の有効/無効が表示部により設定可能であってもよい。また、パワーコンディショナ700には外部の装置が接続可能であり、変換部702における機能の有効/無効が外部の装置により設定可能であってもよい。本変形例によれば、構成の自由度を向上できる。
【0061】
実施例1、2におけるパワーコンディショナ700は、インターネット上の小売電気事業者のサーバに接続されてもよい。この場合、パワーコンディショナ700は、計測結果の大きさに応じて、遠隔出力制御の指令に対して、出力される交流電力を制御してもよい。本変形例によれば、売電していなければ、100%で交流電力を出力できる。
【0062】
実施例1、2における発電システム1000は、パワーコンディショナ700に接続される表示装置を備えてもよい。表示装置は、計測結果をもとに算出した売買電電力と、発電電力の情報を表示する。本変形例によれば、構成の自由度を向上できる。
【符号の説明】
【0063】
1 発電システム、 10 電力系統、 20 キュービクル、 22 計測制御部、 24 RPR、 30 電力量計、 40 分電盤、 50 負荷機器、 60 発電装置、 70 パワーコンディショナ、 72 変換部、 74 入力部、 100 電力系統、 200 キュービクル、 204 RPR、 300 電力量計、 400 分電盤、 500 負荷機器、 600 発電装置、 700 パワーコンディショナ、 702 変換部、 704 入力部、 706 制御部、 800 蓄電池、 1000 発電システム。