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特許7253732酵素を用いた豆腐の製造方法、豆乳凝固用組成物、豆腐用凝固剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】酵素を用いた豆腐の製造方法、豆乳凝固用組成物、豆腐用凝固剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/45 20210101AFI20230331BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20230331BHJP
   C12N 9/20 20060101ALN20230331BHJP
【FI】
A23L11/45 106A
A23L11/45 Z
C12N9/16 Z
C12N9/20
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019042626
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2019154437
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2018043274
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591162631
【氏名又は名称】株式会社高井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘明
(72)【発明者】
【氏名】高井 東一郎
(72)【発明者】
【氏名】天野 原成
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 裕介
(72)【発明者】
【氏名】上村 佑也
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-100254(JP,A)
【文献】特開昭48-087040(JP,A)
【文献】特開2011-152131(JP,A)
【文献】特開昭63-028412(JP,A)
【文献】特開平06-276987(JP,A)
【文献】特開2015-216846(JP,A)
【文献】特開平01-153056(JP,A)
【文献】特開平04-356164(JP,A)
【文献】特開平05-304923(JP,A)
【文献】特開昭62-265958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 11/45
C12N 9/16
C12N 9/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝固剤および食用油にリパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を作用させることを含む、乳化された豆腐用凝固剤の製造方法。
【請求項2】
凝固剤が、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、有機酸、およびこれらの1以上を含む組成物からなる群から選択される1以上である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
さらにシクロデキストリンを作用させることを含む、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
豆乳と、請求項1~3のいずれか一項記載の方法により製造された、乳化された凝固剤とを混合することを含む、豆腐の製造方法。
【請求項5】
豆乳にリパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を作用させることにより製造された凝固が遅延する特性を有する豆乳と、請求項1~3のいずれか一項記載の方法により製造された、乳化された凝固剤とを混合することを含む、豆腐の製造方法。
【請求項6】
凝固剤および食用油にリパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を作用させることを含む、豆腐用凝固剤を乳化する方法。
【請求項7】
さらにシクロデキストリンを作用させることを含む、請求項記載の方法。
【請求項8】
食用油が、米油、なたね油、および大豆油からなる群から選択される植物性油脂の少なくとも1つである、請求項または記載の方法。
【請求項9】
凝固剤が、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、有機酸、およびこれらの1以上を含む組成物からなる群から選択される1以上である、請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
豆乳にリパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を作用させることを含む、豆乳の凝固を遅延させる方法。
【請求項11】
豆乳にリパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を作用させる温度が、50℃~95℃である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
リパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を含む、豆腐製造用豆乳の凝固遅延用組成物。
【請求項13】
リパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方、ならびに、凝固剤を含んでなる、豆腐用凝固剤。
【請求項14】
食用油をさらに含んでなる、請求項13記載の豆腐用凝固剤。
【請求項15】
さらにシクロデキストリンを含んでなる、請求項13または14記載の豆腐用凝固剤。
【請求項16】
食用油が、米油、なたね油、および大豆油からなる群から選択される植物性油脂の少なくとも1つである、請求項1315のいずれか一項記載の豆腐用凝固剤。
【請求項17】
凝固剤が、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、有機酸、およびこれらの1以上を含む組成物からなる群から選択される1以上である、請求項1316のいずれか一項記載の豆腐用凝固剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素を用いた豆腐の製造方法等に関し、詳細には、酵素により乳化された凝固剤の製造方法、酵素により改質された豆乳の製造方法、酵素により乳化された凝固剤および/または酵素により改質された豆乳を用いた豆腐の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
豆腐は、凝固剤を豆乳に加え、豆乳中のタンパク質を架橋し、豆乳をゲル化することによって製造される。豆腐用の凝固剤としては、塩化マグネシウムを主成分とする苦汁(にがり)が良く知られている。苦汁は、即効性の凝固剤であり、豆乳に添加した直後からその凝固を開始させる。特に、高温の豆乳を用いた場合、この特性はより顕著となる。従って、凝固剤を豆乳中に偏りなく拡散させ、均一な品質を備える豆腐を製造するためには豆腐職人の熟練の技術を要し、また、機械化された製造ライン等により豆腐を大量生産する場合にも、特に豆腐の風味が良いとされる、苦汁(塩化マグネシウム)による豆乳の凝固が早いことに起因して均質な豆腐を安定的に製造することは困難であった。
【0003】
かかる背景から、均質な豆腐の大量生産を実現するための手段として、苦汁をはじめとする凝固剤の豆乳凝固時間を制御・遅延化するための技術が求められており、このニーズに対する解決策の一つとして、油脂および乳化剤を用いて凝固剤を乳化させることを特徴とする、乳化凝固剤(いわゆる「乳化苦汁」)が、既に販売・利用されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-130803号公報
【文献】特開2012-254097号公報
【文献】特許第3654623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の乳化凝固剤は、豆乳の凝固遅延の観点からは優れた効果を発揮する。しかしながら、該乳化凝固剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤を用いて調製されるため、乳化剤に起因する豆腐の風味や呈味を悪化させてしまう欠点がある。また、特に近年、消費者の健康志向の高まりから、乳化剤を含有する食品が忌避される傾向にある。また、豆腐生産者が差別化商品や付加価値を追求する動向から、画一化された風味は敬遠される傾向にある。これらの点に関しても改善の必要性に迫られている。従って、乳化剤を使用せずに豆乳の凝固を遅延させる新たな手段の開発が強く求められており、いくつか試みられてきたが、食用油の種類が限定され、80℃以上の高温域での凝固遅効性は十分とは言えず使いにくかった(特許文献2、特許文献3)。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討した結果、凝固剤に食用油およびリパーゼまたはホスホリパーゼを作用させることによって、乳化剤を使用せず、また、食用油の種類を選ばずとも、凝固剤をW/O型に容易に乳化させることができ、該乳化された凝固剤を用いれば、豆乳の凝固を遅延させることができることを見出した。また、食用油とリパーゼまたはホスホリパーゼとによる凝固剤の乳化の際にシクロデキストリンをさらに添加することで、より好ましい凝固遅延効果を備えた凝固剤を調製できることを見出した。さらに本発明者らは、リパーゼまたはホスホリパーゼを作用させることにより改質された豆乳が、凝固剤に対する凝固遅延特性を備えること、ならびに、リパーゼまたはホスホリパーゼを用いて乳化させた凝固剤およびリパーゼを用いて改質した豆乳を使用して調製された豆腐が、非常に滑らかな食感を有することをも見出し、かかる知見に基づいてさらに研究を進めることによって本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0007】
[1]凝固剤および食用油にリパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を作用させることを含む、乳化された豆腐用凝固剤の製造方法。
[2]凝固剤が、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、有機酸、およびこれらの1以上を含む組成物からなる群から選択される1以上である、[1]記載の製造方法。
[3]さらにシクロデキストリンを作用させることを含む、[1]または[2]記載の製造方法。
[4]豆乳にリパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を作用させることを含む、凝固が遅延する特性を有する豆乳の製造方法。
[5]豆乳にリパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を作用させる温度が、50℃~95℃である、[4]記載の製造方法。
[6]豆乳と、[1]~[3]のいずれか記載の方法により製造された、乳化された凝固剤とを混合することを含む、豆腐の製造方法。
[7][4]または[5]に記載の方法により製造された凝固が遅延する特性を有する豆乳と、凝固剤とを混合することを含む、豆腐の製造方法。
[8][4]または[5]に記載の方法により製造された凝固が遅延する特性を有する豆乳と、[1]~[3]のいずれか記載の方法により製造された、乳化された凝固剤とを混合することを含む、豆腐の製造方法。
[9]凝固剤および食用油にリパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を作用させることを含む、豆腐用凝固剤を乳化する方法。
[10]さらにシクロデキストリンを作用させることを含む、[9]記載の方法。
[11]食用油が、米油、なたね油、および大豆油からなる群から選択される植物性油脂の少なくとも1つである、[9]または[10]記載の方法。
[12]凝固剤が、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、有機酸、およびこれらの1以上を含む組成物からなる群から選択される1以上である、[9]~[11]のいずれか記載の方法。
[13]豆乳にリパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を作用させることを含む、豆乳の凝固を遅延させる方法。
[14]豆乳にリパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を作用させる温度が、50℃~95℃である、[13]記載の方法。
[15]リパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を含む、豆腐製造用豆乳の凝固遅延用組成物。
[16]リパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方、ならびに、凝固剤を含んでなる、豆腐用凝固剤。
[17]食用油をさらに含んでなる、[16]記載の豆腐用凝固剤。
[18]さらにシクロデキストリンを含んでなる、[16]または[17]記載の豆腐用凝固剤。
[19]食用油が、米油、なたね油、および大豆油からなる群から選択される植物性油脂の少なくとも1つである、[16]~[18]のいずれか記載の豆腐用凝固剤。
[20]凝固剤が、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、有機酸、およびこれらの1以上を含む組成物からなる群から選択される1以上である、[16]~[19]のいずれか記載の豆腐用凝固剤。
【0008】
なお、本発明の一態様において、本発明は以下の通りである。
[A1]凝固剤および食用油にリパーゼを作用させることを含む、乳化された豆腐用凝固剤の製造方法。
[A2]凝固剤が、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、有機酸、およびこれらの1以上を含む組成物からなる群から選択される1以上である、[A1]記載の製造方法。
[A3]豆乳にリパーゼを作用させることを含む、凝固が遅延する特性を有する豆乳の製造方法。
[A4]豆乳にリパーゼを作用させる温度が、50℃~95℃である、[A3]記載の製造方法。
[A5]豆乳と、[A1]または[A2]に記載の方法により製造され、乳化された凝固剤とを混合することを含む、豆腐の製造方法。
[A6][A3]または[A4]に記載の方法により製造された凝固が遅延する特性を有する豆乳と、凝固剤とを混合することを含む、豆腐の製造方法。
[A7][A3]または[A4]に記載の方法により製造された凝固が遅延する特性を有する豆乳と、[A1]または[A2]に記載の方法により製造され、乳化された凝固剤とを混合することを含む、豆腐の製造方法。
[A8]凝固剤および食用油にリパーゼを作用させることを含む、豆腐用凝固剤を乳化する方法。
[A9]食用油が、米油、なたね油、および大豆油からなる群から選択される植物性油脂の少なくとも1つである、[A8]記載の方法。
[A10]凝固剤が、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、有機酸、およびこれらの1以上を含む組成物からなる群から選択される1以上である、[A8]または[A9]に記載の方法。
[A11]豆乳にリパーゼを作用させることを含む、豆乳の凝固を遅延させる方法。
[A12]豆乳にリパーゼを作用させる温度が、50℃~95℃である、[A11]記載の方法。
[A13]リパーゼを含む、豆腐製造用豆乳の凝固遅延用組成物。
[A14]リパーゼおよび凝固剤を含んでなる、豆腐用凝固剤。
[A15]食用油をさらに含んでなる、[A14]記載の豆腐用凝固剤。
[A16]食用油が、米油、なたね油、および大豆油からなる群から選択される植物性油脂の少なくとも1つである、[A15]記載の豆腐用凝固剤。
[A17]凝固剤が、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、有機酸、およびこれらの1以上を含む組成物からなる群から選択される1以上である、[A14]~[A16]のいずれかに記載の豆腐用凝固剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乳化剤を使用することなく凝固剤を乳化することができる。また、本発明によれば、凝固剤に対しての凝固が遅延した特性を有する豆乳を調製することができる。さらには、これらの乳化された凝固剤および改質豆乳を併用することにより長時間豆乳の凝固を抑制することができるため、均質な豆腐を容易かつ安定的に生産することができる。また、本発明によれば、非常に滑らかな食感を有する豆腐を生産することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本明細書における「凝固剤」とは、豆腐の製造において豆乳中のタンパク質を架橋または変性させ、豆乳のゲル化を促す作用を有する物質そのもの、または当該物質を含有する組成物を意味する。凝固剤が組成物の場合は、豆乳のゲル化を促す作用を有する物質のほか、当該成分以外の成分が含まれていてもよい。かかる豆腐製造用の凝固剤の例としては、苦汁(にがり)が挙げられる。苦汁は、海水から塩化カリウムおよび塩化ナトリウムを析出分離して得られた、塩化マグネシウムを主成分とする組成物である。精製された塩化マグネシウム(6水塩)を主体とする凝固剤製品が市販されている。なお、本発明に用いられ得る凝固剤としては、豆乳のタンパク質を架橋できるものであれば特に限定されず、海水由来の苦汁の他、工業的手法で製造された塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、水溶きして十分時間の経ったグルコノデルタラクトン(グルコン酸)、クエン酸の有機酸等の化合物や、凝乳効果のある食塩、食酢や酸性果汁等の食品素材、タンパク質架橋酵素やタンパク質分解酵素(凝乳酵素)等も好適に使用または併用することができる。特に即効性のある凝固剤の塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、有機酸などに好適である。なお、本明細書において「有機酸」とは、食品に添加可能であり、且つ、豆腐の製造に際して豆乳を凝固させることができる有機化合物の酸であれば特に限定されないが、好ましくは、グルコノデルタラクトン(グルコン酸)、クエン酸、およびリンゴ酸、シュウ酸、乳酸、酢酸(食酢)、レモン汁などの酸性果汁や乳酸発酵エキス等が挙げられ、このうち、即効性の有機酸としては、クエン酸、ゆずやレモン等のかんきつ類から得られる酸性果汁が好適に用いられる。
【0012】
本明細書において「豆乳が凝固する」および「凝固した豆乳」とは、液体状の豆乳に凝固剤を添加することにより豆乳が凝固を開始し、豆乳粘度が高まり、完全に固形(ゲル)になり流動性が消失した状態へと移行すること、および該状態へと移行した豆乳をそれぞれ意味する。なお、本発明における豆乳は、本発明の所望の効果が得られるものである限り特に限定されず、通常の豆腐製造用の豆乳や無消泡剤の豆乳、無調整豆乳(生豆乳、生呉、煮呉、豆の煮汁等も含む)および調整豆乳のいずれであってもよい。本発明に用いられる豆乳としては、絹ごし状に凝固可能な濃度であって、大豆固形分7~20重量%、大豆タンパク質濃度3~10重量%、簡易測定で常用される糖度計で8~23%brixに相当する豆乳を好適に使用できるが、これに限定されない。
【0013】
1.乳化された豆腐用凝固剤の製造方法
本発明は、凝固剤および食用油にリパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を作用させることを含む、乳化された豆腐用凝固剤の製造方法(以下、「本発明の乳化された凝固剤の製造方法」と称することがある)を提供する。本発明の乳化された凝固剤の製造方法によれば、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤を使用することなく、食用油により乳化した乳化凝固剤を比較的容易に製造することができる。
【0014】
一般的な乳化凝固剤は、苦汁等の凝固剤水溶液の水滴が油脂中に分散した、いわゆるW/O(ウォーター イン オイル)型の乳化構造を有している。凝固剤を油脂中に分散させることにより凝固剤成分(塩化マグネシウム)が徐々に放出されて豆乳に作用することとなり、その結果として豆乳をゆっくりと均一に凝固させることができる。一般的な乳化凝固剤を製造する工程においては、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の化学合成された乳化剤の添加を伴うが、本発明の乳化された凝固剤の製造方法においてはかかる乳化剤を使用せず、代わりとしてリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを用いることを特徴とする。本発明の乳化された凝固剤の製造方法においては、乳化剤の代わりとしてリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを用いて上記の乳化構造を有する乳化された凝固剤を製造できる限りは、これら成分をいかなる順序や条件・方法・装置において混合してもよい。一実施形態としては、次のような順序により各主成分の混合を実施することができる。すなわち、まず液体状の凝固剤に、あるいは、予め水と固体状の凝固剤とを混合(溶解・分散)し、これにリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを添加して、凝固剤とリパーゼおよび/またはホスホリパーゼからなる水相を調製する。次いで、この水相を油相となる食用油に添加する。得られた水相と油相の混合液を撹拌・乳化することにより、食用油中のグリセリドに対してリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを充分に作用させる。該乳化組成物をさらに安定化させるために、再撹拌・再乳化を行ってもよく、一定時間該組成物を適温に静置することもできる。これにより、食用油を連続相とし、凝固剤およびリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを分散層とするW/O型乳化組成物を得ることができる。
【0015】
本発明の乳化された凝固剤の製造方法において用いられる凝固剤は、豆乳のゲル化を促す作用を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、いわゆる豆腐製造用凝固剤で、塩化マグネシウム(苦汁を含む)、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウムなどのマグネシウムやカルシウム等の無機塩類、グルコノデルタラクトン(グルコン酸)、クエン酸等の有機酸やそれらのカルシウム塩やマグネシウム塩等の化合物や天然素材が挙げられ、広義には凝乳効果のある食塩(塩化ナトリウム)、食酢や酸性果汁等の食品素材、タンパク質架橋酵素(例えばトランスグルタミナーゼ、チロシナーゼ)やタンパク質分解酵素(例えばパパイン、レンネット等の凝乳酵素)なども挙げられる。これらの凝固剤は、いずれか1種を用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、食感や風味等の観点から、塩化マグネシウムおよび硫酸マグネシウムが好ましい。特に即効性凝固剤とされる塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム(微粒子の硫酸カルシウムを含む)、即効性の有機酸などに好適である。
【0016】
また、本発明の乳化された凝固剤の製造方法において用いられる食用油は、本発明の所望の効果を得られる限り特に限定されず、例えば、米油、大豆油、なたね油、オリーブオイル、ココナッツ油、ごま油、パームオイル、綿実油、コーン油、およびベニバナ油等の植物性油脂、もしくは、乳脂、牛脂、豚脂、鶏脂、および魚油等の動物性油脂のいずれか1種または2種以上が用いられる。なお、豆腐が植物性タンパク質食品であり、需要性の観点から、植物性油脂の使用が好ましく、とりわけ、米油および大豆油が好ましい。なお、食用油はウィンタリングと呼ばれる脱ロウ処理を省いたロウ成分を含む食用油、ないしは一部のロウ成分を残した食用油や、人為的にカルナウバワックス、ライスワックス、ミツロウ等の食用ワックスを添加した食用油など、ワックス成分0.01~20%、好ましくは0.1~10%含む食用油であってもよい。
【0017】
また、本発明の乳化された凝固剤の製造方法において用いられるリパーゼは、食品に添加可能な酵素製剤のものであり、かつ、本発明の所望の効果を得られるものである限り特に限定されず、任意のリパーゼを使用することができる。本発明に用いられるリパーゼは、自体公知の方法により調製・精製することができるほか、市販のものを用いてもよい。本発明の乳化された凝固剤の製造方法において用いられるリパーゼの種類は、合わせて用いられる食用油中のグリセリドの構成およびリパーゼの基質特異性(例えば、リパーゼの位置特異性や脂肪酸の鎖長特異性等)等を勘案して適宜最適化してもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、リパーゼは、主に食用油を構成するグリセリド(ジグリセリド、トリグリセリド)に作用し、これを加水分解することで、モノグリセリド、ジグリセリドが生じる。これらが乳化作用を持つため、油および水の親和性が高まる。その結果として、凝固剤の乳化が促進・安定化されるものと考えられる。本発明では化学合成された乳化剤を添加するのではなく、自然な酵素作用による油成分の改質を利用するものである。
【0018】
なお、本発明に用いられるリパーゼの活性単位は次のように測定され、かつ、定義される。試料を所定量秤取し、試料希釈溶液を加えて溶解し、所定の希釈溶液とする。すなわち、リン酸緩衝液4mL、オリーブ油乳化液5mLを平底試験管に量り、混和して37℃で10分放置する。これに試料溶液1mLを加え、よく振り混ぜ、直ちに37℃で正確に30分間放置する。30分後にエタノール/アセトン混液(1:1)を10mL加え、よく振り混ぜる。これに0.05mol/L水酸化ナトリウム液10mLおよびエタノール/アセトン混液(1:1)10mLを加え、更に指示薬としてフェノールフタレイン試液2滴を加えて、直ちに窒素ガスを液面に吹き付けながらスターラーで撹拌しつつ、0.05mol/L塩酸でpH計を用いてpH10.0まで滴定し、T30mLを求める。別にブランクとして緩衝液4mL、オリーブ油乳化液5mLを平底試験管に量り、エタノール/アセトン混液(1:1)を10mL加え混和した後、試料溶液または水1mLを加え、以下同様に操作してTmLを求める。本条件下、1分間に1μモルの脂肪酸を生成する酵素量を1単位(1ユニット(U))と定義し、次式より算出する。但し、ファクターとは塩酸の正味の濃度を把握するため、標準液の真の濃度/調製した標準液の表示濃度で定義され、試薬情報に従うものとする。
【0019】
【0020】
また、本発明の乳化された凝固剤の製造方法において用いられるホスホリパーゼは、食品に添加可能な酵素製剤のものであり、かつ、本発明の所望の効果を得られるものである限り特に限定されず、任意のホスホリパーゼを使用することができる。本発明に用いられるホスホリパーゼは、自体公知の方法により調製・精製することができるほか、市販のものを用いてもよい。本発明の乳化された凝固剤の製造方法において用いられるホスホリパーゼの種類(ホスホリパーゼA、B、C、またはD)は、合わせて用いられる食用油中のグリセリドの構成およびホスホリパーゼの基質特異性等を勘案して適宜最適化してもよい。
【0021】
なお、本発明に用いられるホスホリパーゼの活性単位は次のように測定され、かつ、定義される。基質溶液1.0mlに0.1mlの試験酵素液を混和し、37℃で10分間反応させる(ブランクは試験酵素液の代わりに精製水を用いる)。その後、反応液50μlを0.5mlの発色液A(NEFA C-テストワコー(和光純薬工業))に混和し、37℃で10分間反応させ、さらに発色液B(NEFA C-テストワコー(和光純薬工業))1.0mlを混和し、10分間反応させる。反応後、常温に戻し、550nmにおける吸光度を分光高度計にて測定し、次式より活性を算出する。
【0022】
活性(U/g)=(OD550nm-ブランクOD550nm)×1.1×N
(N:試験酵素液の希釈倍率)
【0023】
尚、基質溶液の詳細は以下の通りである。
【0024】
基質溶液:1.0gのL-α-phosphatidylcholineに10%w/v Triton X-100溶液0.16ml、1.0mol/l塩化カルシウム溶液0.2mlおよび精製水19.64mlを加え、乳化・懸濁させる。この液15mlに、1mol/l Tris-HCl緩衝液(pH8.0) 15mlを加える。
【0025】
本発明の乳化された凝固剤の製造方法において、「凝固剤および食用油にリパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を作用させる」条件は、所望の効果を有する乳化された凝固剤が製造できる限り特に限定されないが、次のような条件を例示することができる。まず、常温(15℃~30℃)において水と凝固剤(例、豆腐用凝固剤として市販される固形の塩化マグネシウム)とを通常重量比1:0.1~2(好ましくは1:0.3~1.5、より好ましくは1:0.7~1.3)で混合し、水に溶解した凝固剤(例、水苦汁)を調製する(本明細書において、このような条件において調製される水に溶解した凝固剤を「凝固剤水溶液」と称することがある)。次いで、この凝固剤水溶液に対して、通常0.000001~10,000,000U、好ましくは0.00001~1,000,000U、特に好ましくは0.0001~100,000Uのリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを溶解させる。次いで、凝固剤ならびにリパーゼおよび/またはホスホリパーゼの混合水溶液と食用油とを、通常重量比1:0.1~5(好ましくは1:0.3~3、より好ましくは1:0.5~2)で混合し、乳化機等を用いて充分に撹拌・乳化し、通常-20℃~100℃(好ましくは0℃~100℃、より好ましくは15℃~100℃)にて0~100時間程度静置する。これにより乳化剤を使用せずにリパーゼおよび/またはホスホリパーゼによりW/O型に乳化させた凝固剤が調製される。なお、前述したとおり、水、凝固剤(例、塩化マグネシウム等)、リパーゼおよび/またはホスホリパーゼ、および食用油を混合・乳化する条件・順序・方法・装置(乳化機)は特に限定されず、上述の例とどの様に異なっていてもよく、あるいは、全てを同時に混合してもよい。なお、一態様において苦汁およびリパーゼおよび/またはホスホリパーゼが水溶性であるとの理由から、まず凝固剤水溶液(または苦汁)ならびにリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを混合し、その水溶液を油に添加する態様が好ましい。また最初の予備的混合ではO/W型乳化状態であって、後の本乳化でW/O型乳化状態に相転換させる方法であってもよい。
前記乳化機はワンパス方式、循環方式または、複数回乳化を繰り返す多段方式であってもよく、高圧ホモジナイザー、静止ミキサー、動的ミキサーなど強力なせん断力、分散力のある乳化装置であれば、特に限定しない。
【0026】
本発明の乳化された凝固剤の製造方法の好ましい一態様において、凝固剤を食用油とリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを用いて乳化させる際に、さらにシクロデキストリンを添加することができる。シクロデキストリンとは、6個、7個または8個のグルコースが環状に結合した環状オリゴ糖のことであり、それぞれα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンまたはγ-シクロデキストリンと称される。本発明の乳化された凝固剤の製造方法においては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンおよびγ-シクロデキストリンのいずれを用いてもよいが、特にα-シクロデキストリン及びβ-シクロデキストリンが好ましい。シクロデキストリンは、自体公知の方法(例、澱粉にシクロデキストリン合成酵素を作用させる方法等)を用いて製造でき、また、市販されているものを使用してもよい。
【0027】
凝固剤を食用油とリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを用いて乳化させる際に添加されるシクロデキストリンの量は、所望の効果を有する乳化された凝固剤が製造できる限り特に限定されないが、凝固剤水溶液の重量に対して、通常0.01~1%、好ましくは0.02~0.8%、より好ましくは0.03~0.6%、さらに好ましくは0.03~0.4%、特に好ましくは0.04~0.2%である。また、シクロデキストリンを作用させるタイミングは、所望の効果を有する乳化された凝固剤が製造できる限り特に限定されないが、凝固剤を水に溶解させるタイミングでシクロデキストリンを添加する製造方法が好ましい。これらに限定されるものではないが、例えば、凝固剤と食用油とリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを混合した後に、該混合物にシクロデキストリンを添加することができ、或いは、シクロデキストリンを予め凝固剤と混合しておき、この混合物にリパーゼおよび/またはホスホリパーゼと食用油とを添加してもよい。
【0028】
2.凝固が遅延する特性を有する豆乳の製造方法
本発明は、豆乳にリパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を作用させることを含む、凝固が遅延する特性を有する豆乳の製造方法(以下、「本発明の凝固が遅延する特性を有する豆乳の製造方法」と称することがある)を提供する。
【0029】
本明細書において、「凝固が遅延する特性を有する豆乳」とは、同一条件下において測定した場合に、苦汁等の豆腐製造用の凝固剤を添加した際の凝固速度(または凝固時間)が、通常の豆乳(酵素処理等の物性改質処理に供されていない豆乳)と比較して、緩慢になる(遅くなっている)特性を有する豆乳を意味する。凝固速度の評価は様々な測定の方法があるが、例えば凝固剤を所定(例えば80℃の13%brix)の豆乳に添加して、所定条件の撹拌を行ってから、粘度計を用いて凝固剤入り豆乳の粘性が所定粘度までに上昇し始める時間や、目視で流動性がなくなり静止するまでの時間などを測定することによって求めることができる。標準的な市販乳化苦汁製剤や、水苦汁を対照試験区として相対的に評価することが望ましい。一態様において、凝固が遅延する特性を有する豆乳は、通常の豆乳を基準として、水苦汁を用いて凝固させた際に、通常15秒以上、好ましくは30秒以上、より好ましくは45秒以上、さらに好ましくは1分以上、なおさらに好ましくは2分以上、なおさらにより好ましくは2.5分以上、特に好ましくは3分以上、凝固が遅延するものであってよい。
【0030】
本発明の凝固が遅延する特性を有する豆乳の製造方法に用いられるリパーゼおよび/またはホスホリパーゼは、「1.乳化された凝固剤の製造方法」において説明したものと同様のものを使用することができる。
【0031】
「豆乳にリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを作用させる」条件は、所望の効果を得られる限り特に限定されないが、リパーゼおよび/またはホスホリパーゼの添加量は、豆乳1mgあたり通常0.000001~10,000,000U、好ましくは0.00001~1,000,000U、特に好ましくは0.0001~100,000Uのリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを溶解させる。尚、リパーゼとホスホリパーゼを併用するときは、各酵素のユニット数の和が上述の範囲に含まれるようにすればよい。また、豆乳にリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを作用させる温度は、通常0℃~100℃、好ましくは15℃~95℃、より好ましくは20℃~90℃、さらに好ましくは30℃~90℃、なおさらに好ましくは35℃~90℃、特に好ましくは35℃~85℃である。また、豆乳にリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを作用させる時間は、1秒以上作用させることで改質効果を得ることができ、好ましくは30秒以上、より好ましくは1分以上作用させればよい。なお、リパーゼおよび/またはホスホリパーゼを豆乳に作用させる時間の上限は特に限定されないが、一定時間以上はリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを作用させても更なる改質効果が期待できないため、通常100時間以下、好ましくは80時間以下、より好ましくは70時間以下、さらに好ましくは60時間以下、なおさらに好ましくは50時間以下、特に好ましくは40時間以下である。
【0032】
本発明の凝固が遅延する特性を有する豆乳の製造方法において用いられる元の豆乳は、本発明の所望の効果が得られるものである限り特に限定されず、通常の豆腐製造用の豆乳や無消泡剤の豆乳、無調整豆乳(生豆乳、豆の煮汁、生呉、煮呉等も含む)および調整豆乳のいずれであってもよい。本発明に用いられる豆乳としては、絹ごし状(プリン状)に凝固可能な濃度であって、大豆固形分7~20重量%、大豆タンパク質濃度3~10重量%、簡易測定で常用される糖度計で8~23%brixに相当する豆乳を好適に使用できるが、これに限定されない。一態様において、より新鮮で風味高い豆乳を使用できる観点から、無調整豆乳が好ましい場合がある。なお、前記豆乳は消泡剤やpH調整剤や風味・調味剤等や食用油や澱粉や食塩や穀物粉やペーストや色素等の食品素材を適宜含む豆乳であってもよい。
【0033】
3.豆腐の製造方法
本発明は、リパーゼ等の酵素に改質されていない通常の豆乳と、「1.乳化された凝固剤の製造方法」により製造される乳化された凝固剤とを混合することを含む、豆腐の製造方法を提供する。また、本発明は、「2.凝固が遅延する特性を有する豆乳の製造方法」により製造される、リパーゼおよび/またはホスホリパーゼにより物性が改質された豆乳と、通常の凝固剤とを混合することを含む、豆腐の製造方法を提供する。さらに、本発明は、「2.凝固が遅延する特性を有する豆乳の製造方法」により製造される、リパーゼおよび/またはホスホリパーゼを作用させることにより物性が改質された豆乳と、「1.乳化された凝固剤の製造方法」により製造される、リパーゼおよび/またはホスホリパーゼを作用させて乳化された凝固剤とを混合することを含む、豆腐の製造方法を提供する。以下、これらの製造方法について、まとめて「本発明の豆腐の製造方法」と称することがある。本発明の豆腐の製造方法では、豆乳の凝固が遅延しているため、通常の豆腐の製造方法に比較して、様々な状況下において均質にゲル化した豆腐を製造することができ、例えば、製造ライン等を用いた豆腐の大量生産を行う場合においても、均質な豆腐を安定して生産することが可能となる。さらには、特別に化学合成された乳化剤を使用していないことから、乳化剤に由来する風味等の低下を回避することも可能となる。また、より自然でオリジナルな豆腐づくりを追求する豆腐生産者や、健康志向の高い消費者にも受け入れられやすい。また本発明では、苦汁や食用油の種類は様々な選択ができるので、豆腐生産者側においてオリジナルの風味や経済性を追求でき、商品の差別化を図ることができる。
【0034】
本発明の豆腐の製造方法は、通常の豆乳や凝固剤を、リパーゼおよび/またはホスホリパーゼで改質された豆乳やリパーゼおよび/またはホスホリパーゼを作用させて乳化された凝固剤に置き換えて使用すること以外は、通常行われる任意の豆腐の製造工程や製造技術を用いることができる。
【0035】
一態様において、本発明の豆腐の製造方法は、連続式、バッチ式は問わず、本発明の凝固が遅延する特性を有する豆乳・豆腐の製造方法と一体化して実施することもできる。これに限定されないが、例えば、製造ラインを用いて豆腐の連続生産を行う一態様としては、次のような実施態様が例示される。まず、温度調節が可能なタンクに豆乳を入れ、50℃~95℃(より好ましくは60℃~90℃、さらに好ましくは70℃~90℃、なおさらに好ましくは75℃~85℃、よりなおさらに好ましくは77℃~83℃、特に好ましくは78℃~82℃)に温度調整する。必要量のリパーゼおよび/またはホスホリパーゼをこの豆乳タンクに添加するか、またはその豆乳タンクから豆乳ポンプで送液する配管途中にポンプで注入して充分に撹拌し、豆乳の温度を維持しつつ1分(好ましくは3分、より好ましくは5分)程度静置するか、または、必要に応じて撹拌付豆乳バランスタンクで撹拌しながらか、または送液配管上のホールディングパイプ中を流しながら、酵素反応を行わせてリパーゼおよび/またはホスホリパーゼ改質豆乳を用意する。また、別の温度調節が可能な凝固剤タンク(例えば間接冷却・間接加熱が可能なジャケット付で、撹拌機を備える)において、豆腐製造用の凝固剤(乳化されているもの、または乳化されていないもののいずれかを使用ないし併用であってもよい)を、室温または30℃以下に冷却保温しておくことが好ましい。前記リパーゼおよび/またはホスホリパーゼを所定の条件で作用させたリパーゼおよび/またはホスホリパーゼ改質豆乳に、前記凝固剤を定量的に注入・混合分散する注入混合分散装置(各々、定量ポンプ、流量計、PID流量制御を備え、スタティックミキサー等の静止型ミキサーないしはロータとステータからなる高速回転型ミキサーや高圧ホモジナイザー等の乳化分散装置を備えることが好ましい。)等を介して、凝固熟成槽に静置し、絹ごし豆腐状に成型する。なお、凝固熟成槽は直方体状の角型型箱または円筒状の凝固容器であるか、または断面凹状のベルト式連続凝固成型装置を用いる。連続成型の場合、豆乳および凝固剤は、当該槽の一端で注入・混合される。凝固熟成槽の一端で凝固剤と混合した豆乳は、徐々に凝固熟成槽の反対側の端へと移動しながら連続して凝固・熟成することにより、シート状の絹ごし豆腐となる。木綿豆腐の場合は、そのシート状の絹ごし豆腐を崩し装置で適宜崩して連続成型装置に移行し、圧搾成型する。従って、凝固熟成槽における豆乳と凝固剤の注入および混合が行われる端と、その反対側の端までの距離は、豆乳の凝固・熟成時間や能力に則して適宜決定すればよい。凝固熟成槽において完成した豆腐は、適切な大きさへとカットされ、包装パック等に納めて封入する。バッチ生産を行う一態様としては、前記豆乳タンクに用意された豆乳を凝固容器(円筒形バケット、直方体の型箱等)に計量し、前記凝固剤タンクに用意された乳化した凝固剤を計量し凝固容器内の豆乳に添加し、撹拌装置(例えばロータとステータからなる高速回転型ミキサー)で凝固剤入り豆乳を所定の条件で撹拌した後、静置・熟成して、絹ごし豆腐状の凝固物を得る。木綿豆腐の場合、その凝固容器中の絹ごし豆腐状の凝固物を適宜崩して、布を敷いた木綿用穴あき型箱に盛り込んで、圧搾成型する。
【0036】
4.リパーゼおよび/またはホスホリパーゼによる豆腐用凝固剤の乳化方法
本発明は、凝固剤および食用油にリパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を作用させることを含む、豆腐用凝固剤を乳化する方法(以下、「本発明の乳化方法」とも称することがある)を提供する。一態様において、本発明の乳化方法は、シクロデキストリンをさらに配合してもよい。本発明の乳化方法によれば、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の化学合成品の乳化剤を特別に使用することなく、凝固剤と食用油と酵素というより自然かつシンプルな素材から乳化組成物を調製することができる。
【0037】
本発明の乳化方法に用いられる凝固剤、食用油、リパーゼ、ホスホリパーゼ、シクロデキストリン、および、これらの作用条件等は、「1.乳化された凝固剤の製造方法」において説明されたものと同様のものを用いることができる。
【0038】
5.リパーゼおよび/またはホスホリパーゼを用いた豆乳の凝固遅延方法
本発明は、豆乳にリパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を作用させることを含む、豆乳の凝固を遅延させる方法(以下、「本発明の豆乳の凝固遅延方法」とも称することがある)を提供する。本発明の豆乳の凝固遅延方法によれば、苦汁等の豆腐製造用の豆乳凝固剤による豆乳の凝固速度(または凝固時間)を、通常の豆乳の凝固速度(または凝固時間)と比較して遅らせることが可能となる。
【0039】
本発明の豆乳の凝固遅延方法に用いられるリパーゼ、ホスホリパーゼ、リパーゼおよび/またはホスホリパーゼの作用温度、作用時間、添加量等の条件等は、「2.凝固が遅延する特性を有する豆乳の製造方法」において説明されたものと同様のものを用いることができる。
【0040】
6.豆乳の凝固遅延用組成物
本発明は、リパーゼおよびホスホリパーゼのいずれかまたは両方を含む、豆乳の凝固遅延用組成物(以下、「本発明の凝固遅延用組成物」と称することがある)を提供する。本発明の凝固遅延用組成物を豆乳に添加することにより、豆乳の物性が改質され、その結果として豆乳が苦汁等の凝固剤により凝固する速度(または時間)を遅延させることができる。
【0041】
本発明の凝固遅延用組成物に含まれるリパーゼおよび/またはホスホリパーゼは、「1.乳化された凝固剤の製造方法」において説明されたものと同様のものを用いることができる。また、その配合量は、所望の効果を得られる限り特に限定されないが、通常0.000001重量%~99.9重量%、好ましくは30重量%~99.9重量%、より好ましくは50重量%~99.9重量%、さらに好ましくは70重量%~99.9重量%であり、特に好ましくは90重量%~99.9重量%である。
【0042】
また、本発明の凝固遅延用組成物の形態も、所望の効果を得られる限り特に限定されないが、固体状(粉末状または顆粒状等)、液体状、ゲル状、またはペースト状等の任意の形態で調製することができる。
【0043】
また、本発明の凝固遅延用組成物は、リパーゼおよび/またはホスホリパーゼ以外の成分を配合することもできる。かかる成分には、例えば、豆腐の製造において通常用いられる凝固剤以外の添加物(例えば、安定剤およびアルカリ性に働くpH調整剤)や、リパーゼおよび/またはホスホリパーゼの活性を保持および/または高め得る成分等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本発明の凝固遅延用組成物を豆乳に添加する際の条件等は、「2.凝固が遅延する特性を有する豆乳の製造方法」において説明した条件等を参考にすれば、当業者であれば適宜決定可能である。
【0045】
7.豆腐用凝固剤
本発明は、酵素と凝固剤等とを含んでなる、豆腐用凝固剤(以下、「本発明の豆腐用凝固剤」と称することがある)を提供する。具体的には、本発明の豆腐用凝固剤は、リパーゼおよび/またはホスホリパーゼならびに凝固剤、またはリパーゼおよび/またはホスホリパーゼ、食用油ならびに凝固剤を含んでなる、豆腐用凝固剤である。一態様において、本発明の豆腐用凝固剤は、シクロデキストリンをさらに含んでいてもよい。本発明の豆腐用凝固剤を豆乳に添加することにより、通常に比べて豆乳の凝固速度(または凝固時間)が遅延し、豆乳をゆっくりと均一に凝固させることが可能となる。
【0046】
本発明の豆腐用凝固剤に配合され得るリパーゼ、ホスホリパーゼ、食用油、凝固剤、シクロデキストリンは「1.乳化された凝固剤の製造方法」において説明したものと同様のものを使用することができる。
【0047】
本発明の豆腐用凝固剤の形態は、所望の効果を得られる限り特に限定されないが、固体状(粉末状または顆粒状等)、液体状、ゲル状、またはペースト状等の任意の形態で調製することができる。例えば、固体状の豆腐用凝固剤を製造する場合、自体公知の方法により各主成分を粉末化し、これらを混合すればよい。
【0048】
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【実施例
【0049】
[実施例1]リパーゼを用いて乳化した凝固剤の凝固遅延効果
乳化剤は使用せず、リパーゼを用いて食用油と乳化させた凝固剤が、豆乳の凝固を遅延させ得るかについて検討した。凝固剤としては苦汁(「ソフトウエハー(マグネシウム含有量は規格値 MgCl・6HOとして95重量%以上、分析値99.9重量%以上)」赤穂化成社製)を用いて以下の手順により乳化苦汁を調製した。まず、苦汁と水とを重量比1:1で混合し、苦汁を水に溶解させることで水苦汁を調製した。この水苦汁に市販の2種類のリパーゼ(サンプルA:酵素活性150000U/g、サンプルB:酵素活性500000U/g)のいずれかを3段階の濃度(0.03U/1g油(全体として0.36U)、0.3U/1g油(全体として3.6U)、3U/1g油(全体として36U))で添加した。リパーゼ添加時の水苦汁の温度は50℃であった。次いで、リパーゼを含む水苦汁と、米油(「こめしぼり」(木徳神糧株式会社製))とを重量比6:4で混合し、強く撹拌、乳化した。具体的には、苦汁9g、水9g、米油12gを混合し、合計30gとし、さらに、「ラボ・リューション」(登録商標)(プライミクス株式会社)を用いて13500rpm、180秒撹拌することにより、リパーゼを含む水苦汁と米油を混合させた。次いで、リパーゼを十分に作用させるために、20℃で16時間静置し、リパーゼ乳化苦汁を得た(調製した各種苦汁の組成は表1に示す)。なお、これらのリパーゼ乳化苦汁の塩化マグネシウム濃度は30重量%である。これらのリパーゼ乳化苦汁を90℃に加熱した豆乳(30g)に塩化マグネシウム濃度が対豆乳0.3重量%となるよう300mg添加し、豆乳が凝固する時間を、ストップウォッチを用いて計測した。本試行は2回行った。なお、乳化させていない水苦汁(対照1)、またはリパーゼは添加せず、米油のみを混合した水苦汁(対照2)を、リパーゼ乳化苦汁と同様の条件で豆乳に添加し、豆乳の凝固遅延の比較対象とした。結果を表1に示す。なお、凝固時間は2回の測定の平均値を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示される通り、水苦汁(対照1)と比較して、リパーゼ乳化苦汁はいずれも豆乳の凝固を遅延させた。
【0052】
[実施例2]リパーゼによる豆乳の改質および改質豆乳とリパーゼ乳化苦汁の併用効果の検討
リパーゼによる凝固剤の乳化に加えて、豆乳をリパーゼで改質した場合の凝固遅延効果を検討した。豆乳を85℃に加熱し、これに市販の粉末状のリパーゼ(サンプルB:酵素活性150000U/g)を豆乳(30g)1g当たり0.1mg(豆乳に対して0.01重量%)添加して混合した。温度を85℃に維持したまま、5分間豆乳とリパーゼを反応させた(リパーゼ改質豆乳)。リパーゼ改質豆乳に、水苦汁またはリパーゼを用いた乳化苦汁(リパーゼ乳化苦汁)をそれぞれ添加し、凝固時間を測定した。また、比較対象としては、通常の豆乳に水苦汁を添加した態様(対照1)、通常の豆乳に水苦汁と米油の混合物を添加した態様(対照2)、リパーゼ改質豆乳に水苦汁を添加した態様をそれぞれ用いた。なお、リパーゼ乳化苦汁は、実施例1に記載した方法により調製した(リパーゼはサンプルB:酵素活性500000U/gのものを用いた)。結果を表2に示す。なお、凝固時間は、同試験を2回行って得られた2つの測定値の平均を示す。また、各条件において調製された豆腐の食感(「滑らかさ」)を、専門パネル4名による官能試験により評価した。「滑らかさ」の評価基準としては、上あごと舌ですりつぶした際に、粒子が残らないことを滑らかであると評価した。対照1の条件により調製された豆腐の「滑らかさ」を1点(基準)として、1点(通常の滑らかさ)2点(通常より若干滑らか)、3点(通常より滑らか)、4点(通常より更に滑らか)、5点(通常より非常に滑らか)までの0.5点刻みの9段階で評価した。評点は、それぞれの専門パネルの評価したスコアの平均値で示した。
【0053】
【表2】
【0054】
表2に示される通り、リパーゼを用いて改質した豆乳は、対照1と比較して3分間凝固が遅延しており、凝固が遅延する特性を備えていることが示された。また、リパーゼ乳化苦汁とリパーゼ改質豆乳を併用することで、豆乳の凝固遅延効果がさらに延長されることが示された。また、リパーゼ改質豆乳、リパーゼ乳化苦汁、或いはこれらを併用して調製した豆腐は、通常の水苦汁および豆乳を用いて調製した豆腐(対照1)と比較してより滑らかな食感を有していた。
【0055】
[実施例3]リパーゼ作用温度の検討
豆乳にリパーゼを作用させるより好ましい温度を検討するため、実施例2において豆乳とリパーゼを作用させる温度を85℃から80℃に変更して、同様の実験および評価を行った。結果を以下の表3に示す。なお、凝固時間は、同試験を2回行って得られた2つの測定値の平均を示す。
【0056】
【表3】
【0057】
表3に示される通り、リパーゼの作用温度を80℃に変更しても、リパーゼ改質豆乳は対照1と比較して0.5分の凝固遅延特性を有していた。なお、80℃の温度下においてリパーゼにより改質された豆乳は、それ自身の凝固遅延効果はそれほど高くはないものの、リパーゼ乳化苦汁と併用した場合に極めて顕著な凝固遅延効果を有していた。さらに、リパーゼ改質豆乳およびリパーゼ乳化苦汁を併用して調製した豆腐は、対照1の豆腐と比較して顕著に滑らかな食感を有していた。
【0058】
[実施例4]リパーゼの種類の検討
リパーゼの種類が本発明の効果に影響を与え得るかについて検討した。実施例1におけるリパーゼ乳化苦汁の調製工程のうち、リパーゼを別の種類のリパーゼ(サンプルC:酵素活性30000U/g)に変更して、そのほかは実施例1と同様の条件により、リパーゼ乳化苦汁を調製した。また、実施例3の実験条件のうち、リパーゼを別の種類のもの(サンプルC)へと変更して豆乳の改質を行い、これらを用いて凝固遅延および食感に関する効果を検討した。結果を表4に示す。なお、凝固時間は、同試験を2回行って得られた2つの測定値の平均を示す。
【0059】
【表4】
【0060】
リパーゼの種類を変更した場合でも、豆乳を改質させることができ、また、リパーゼ乳化苦汁とリパーゼ改質豆乳を併用することで、好ましい凝固遅延効果が得られた。
【0061】
[実施例5]ホスホリパーゼを用いて乳化した凝固剤の凝固遅延効果
実施例1におけるリパーゼ乳化苦汁の調製工程のうち、リパーゼをホスホリパーゼA(サンプルD:酵素活性100,000U/g)に変更して、そのほかは実施例1と同様の条件により、ホスホリパーゼ乳化苦汁を調製した。調製したホスホリパーゼ乳化苦汁を用いて豆乳を凝固させた場合の豆乳の凝固時間を表5に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
表5に示される通り、リパーゼの代わりにホスホリパーゼを用いても凝固時間を遅延させることができた。
【0064】
[実施例6]ホスホリパーゼとシクロデキストリンを併用して乳化した凝固剤の凝固遅延効果
実施例1におけるリパーゼ乳化苦汁の調製工程のうち、リパーゼをホスホリパーゼA(サンプルD:酵素活性100,000U/g)とし、さらにシクロデキストリン(α-シクロデキストリン)を追加で添加した以外は実施例1と同様の条件により、乳化苦汁を調製した。尚、ホスホリパーゼの添加量は0.36Uとした。シクロデキストリンの添加量は凝固剤水溶液の重量に対して「%」で示した。調製したシクロデキストリン併用ホスホリパーゼ乳化苦汁を用いて豆乳を凝固させた場合の豆乳の凝固時間を表6に示す。
【0065】
【表6】
【0066】
表6に示される通り、シクロデキストリンの併用により、凝固時間をさらに遅延させることができることが示された。
【0067】
[実施例7]ホスホリパーゼによる豆乳の改質および改質豆乳とホスホリパーゼ乳化苦汁の併用効果の検討
リパーゼをホスホリパーゼA(サンプルD:酵素活性100,000U/g)に変更すること以外は実施例2と同様の条件を用いてホスホリパーゼ改質豆乳およびホスホリパーゼ乳化凝固剤を調製し、これらを用いて凝固時間を測定した。結果を表7に示す。
【0068】
【表7】
【0069】
表7に示される通り、ホスホリパーゼを用いても凝固が遅延する特性を備えた豆乳を調製することができた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、特別に添加する乳化剤を使用することなく豆腐製造用の凝固剤を乳化することができる。また、本発明によれば、豆腐製造用の凝固剤に対しての凝固が遅延した特性を有する豆乳を調製することができる。さらには、これらの乳化された凝固剤および凝固遅延豆乳を併用することにより、乳化剤不使用であるにもかかわらず、均質で、非常に滑らかな豆腐を安定的に大量生産することができる。従って、本発明は、食品製造の分野において有益である。