(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】タンパク質を表面に発現させた小胞によるオートファジー細胞およびアポトーシス細胞への薬剤送達
(51)【国際特許分類】
A61K 9/127 20060101AFI20230331BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20230331BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230331BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230331BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230331BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230331BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230331BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230331BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230331BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230331BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230331BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20230331BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230331BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230331BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230331BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230331BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230331BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230331BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230331BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20230331BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230331BHJP
A61K 47/66 20170101ALI20230331BHJP
C07H 15/252 20060101ALN20230331BHJP
C07D 487/14 20060101ALN20230331BHJP
A61K 31/704 20060101ALN20230331BHJP
A61K 31/407 20060101ALN20230331BHJP
【FI】
A61K9/127
A61K9/107
A61K47/42
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P25/00
A61P3/00
A61P3/04
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
A61P21/00
A61P9/00
A61P9/10
A61P31/00
A61P37/02
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P5/14
A61K39/395 D
A61K47/66
C07H15/252
C07D487/14
A61K31/704
A61K31/407
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017251049
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】517456141
【氏名又は名称】慈濟大學
【氏名又は名称原語表記】TZU CHI UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 新侯
(72)【発明者】
【氏名】孫 徳珊
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/201323(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0151573(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0184395(US,A1)
【文献】特表2014-501714(JP,A)
【文献】特表2010-532216(JP,A)
【文献】特表2015-500825(JP,A)
【文献】特開2007-204469(JP,A)
【文献】PNAS,1998年,Vol.95, No.13,pp.7469-7474
【文献】Journal of Proteomics,2012年,Vol.75, No.12,pp.3574-3584
【文献】Journal of Controlled Release,2012年,Vol.160,pp.609-617
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61L
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメント
がコンジュゲートされた小胞であって:
前記1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメントが、前記小胞の表面
にコンジュゲートされたものであり、
前記小胞が、必要な場合には薬剤を含み;
前記1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメントが、マンノース-6-リン酸受容体(M6PR)、CD22、CD206、ガレクチン3、アネキシンV、インテグリンαLβ2、VE-カドヘリン、CD300a、トロンボスポンジン1(TSP1)およびCD36、ならびにそれらのフラグメントからなる群から選択される第1のタンパク質を含む
、小胞。
【請求項2】
CD300a、トロンボスポンジン1(TSP1)、CD36およびToll様受容体4(TLR4)ならびにそれらのフラグメントからなる群から選択される、第2のタンパク質を含む
、1つもしくは複数のレクチン又はそのフラグメント
が前記小胞の表面にさらにコンジュゲートされた、請求項1に記載
の小胞。
【請求項3】
前記薬剤が小胞内に封入され
た、または、小胞の外側表面に付加され
た、請求項1又は2に記載の小胞。
【請求項4】
リポソームまたはミセルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の小胞。
【請求項5】
人為的に改変
された、または、細胞に由来する
、請求項1~4のいずれか一項に記載の小胞。
【請求項6】
1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメントがコンジュゲートされた小胞であって:
前記1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメントが、前記小胞の表面にコンジュゲートされたものであり、
前記1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメントが、M6PRと、P-セレクチン、E-セレクチン、PSGL-1またはガレクチン3との組合せ
である、小胞。
【請求項7】
1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメントがコンジュゲートされた小胞であって:
前記1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメントが、前記小胞の表面にコンジュゲートされたものであり、
前記1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメントが、CD22と、P-セレクチン、ガレクチン3またはCD31との組合せ
である、小胞。
【請求項8】
1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメントがコンジュゲートされた小胞であって:
前記1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメントが、前記小胞の表面にコンジュゲートされたものであり、
前記1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメントが、P-セレクチンまたはM6PRと、TLR4、ガレクチン3、CLEC2、インテグリンαLβ2またはCD31との組合せ
である、小胞。
【請求項9】
前記薬剤が、診断用造影剤、細胞生存強化剤、細胞生存抑制剤、細胞成分、オルガネラ、細胞、細胞傷害性薬剤、抗腫瘍薬物、毒素、抗体、脂質、タンパク質、DNA、RNA、治療剤またはナノ材料である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の小胞。
【請求項10】
可溶性形態、対応するリガンド、中和抗体およびブロッキング抗体から選択される、前記第1のタンパク質および前記第2のタンパク質のアンタゴニストが、
オートファジー細胞および/またはアポトーシス細胞、ならびに、オートファジー細胞および/またはアポトーシス細胞を含有する組織への
小胞標的化を低下させるための解毒物として働くことができる、請求項
2~
5のいずれか一項に記載の小胞。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の小胞と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む、医薬組成物。
【請求項12】
オートファジー細胞および/またはアポトーシス細胞、ならびに、前記細胞を含有する組織を標的として薬剤を送達するための、
1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメントがコンジュゲートされた小胞を含有する医薬組成物であって、
前記1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメントが、前記小胞の表面に
コンジュゲートされたものであり、
前記1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメントが、マンノース-6-リン酸受容体(M6PR)、P-セレクチン、E-セレクチン、L-セレクチン、P-セレクチン-リガンド-1(PSGL-1)、CD22、CD206、ガレクチン3、アネキシンV、インテグリンαLβ2、VE-カドヘリン、CD300a、CD31、CD44、CD47、トロンボスポンジン1(TSP1)およびCD36、ならびにそれらのフラグメントからなる群から選択される
、医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物を投与する前において、追加の薬剤が投与され、
前記追加の薬剤が、オートファジー誘導剤および/またはアポトーシス誘導剤である、請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
オートファジーの脱調節に伴う疾患の治療用又は診断用である、請求項
12または
13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
オートファジーの脱調節に伴う前記疾患が、外傷、化学的および物理的な毒性因子への曝露、遺伝性疾患、老化関連疾患、心臓血管疾患、感染性疾患、腫瘍性疾患、神経変性疾患、代謝性疾患、老化、肥満、ガン、β-アミロイドまたはα-シヌクレインまたは毒性により誘発される神経変性、筋変性状態、あるいは、嚢胞性線維症によって引き起こされる慢性の肺炎症である、請求項
14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
アポトーシスの変化に伴う疾患の治療用又は診断用である、請求項
12または
13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
アポトーシスの変化に伴う前記疾患が、外傷、化学的および物理的な毒性因子への曝露、遺伝性疾患、老化関連疾患、心臓血管疾患、感染性疾患、腫瘍性疾患、神経変性疾患、代謝性疾患、老化、肥満、ガン、β-アミロイドまたはα-シヌクレインまたは毒性により誘発される神経変性、筋変性状態、あるいは、嚢胞性線維症によって引き起こされる慢性の肺炎症、または自己免疫疾患である、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記神経変性疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症または脳卒中であり、前記心臓血管障害が、虚血、心不全または感染性疾患であり、かつ、前記自己免疫疾患が、全身性エリテマトーデス、自己免疫性リンパ増殖症候群、関節リウマチまたは甲状腺炎である、請求項
15又は
17に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞への薬剤送達の分野に関連する。特に、本発明は、オートファジーおよび/またはアポトーシスを受ける細胞および組織に、改変されたタンパク質が表面に発現させられる小胞、またはコンジュゲートされる小胞を介して薬剤を送達することに関連する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシスは、プログラム細胞死のよく研究された経路である。細胞排除の非アポトーシス形態には、壊死およびオートファジーの特徴を有する形態が含まれる。アポトーシスが、古い細胞、不要な細胞および不健康な細胞を排除することによって、身体の健康状態を発達させること、および維持することにおいて、非常に重要な役割を果たしている。過度に少ないアポトーシスまたは過度の多いアポトーシスが何らかの役割を多くの疾患において果たしている可能性がある。アポトーシスが正しく働かないときには、排除されるべき細胞が、例えば、ガンおよび白血病では残存し、不死性となる場合がある。アポトーシスが正常ではあるが、働き過ぎるときには、アポトーシスにより、過度に多くの細胞が死滅させられ、重大な組織損傷が引き起こされる。このことが、脳卒中および神経変性障害(例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病およびパーキンソン病など)では当てはまる。
【0003】
オートファジー、すなわち、タンパク質およびオルガネラが、オートファゴソームと呼ばれる二重膜構造体に隔離され、分解のためのリソソームに送達されるプロセスが、様々な疾患において非常に重要である。ガンおよび神経変性に加えて、オートファジーの調節が、広範囲の様々なさらなる疾患および障害における治療戦略となっている。例えば、いくつかの肝臓疾患、心臓疾患および筋疾患が、誤って折り畳まれたタンパク質凝集物の蓄積に関連づけられている。そのような疾患では、細胞のオートファジーを増大させる薬剤は、疾患の原因となる凝集物のクリアランスを高め、それにより、処置への寄与および疾患重篤度の軽減をもたらす場合がある。さらに、オートファジーの阻害剤は、膵炎の処置において治療剤として機能する場合がある。
【0004】
したがって、アポトーシスおよびオートファジーを細胞において調節し、それにより、オートファジーに伴う疾患を治療する手段または改善する手段を開発することが求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、タンパク質コンジュゲート小胞であって、前記小胞の表面に発現させられる、またはコンジュゲートされる1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメントと、必要な場合には薬剤とを含むタンパク質コンジュゲート小胞を提供する。
【0006】
1つの実施形態において、前記薬剤は前記小胞の内部に封入され、または、前記小胞の外側表面に結合される。前記小胞の具体的な実施形態には、リポソームおよびミセルが含まれる。前記小胞は人為的に改変することができ、または、細胞に由来することができる。
【0007】
前記レクチンまたはフラグメントの具体的な実施形態には、第1のタンパク質として使用される、カチオン依存性マンノース-6-リン酸受容体(M6PR)、P-セレクチン、E-セレクチン、L-セレクチン、P-セレクチン-リガンド-1(PSGL-1)、CD22、CD206、ガレクチン3、アネキシンV、CD31、インテグリンαLβ2、VE-カドヘリン、CD44、CD300a、CD47、トロンボスポンジン1(TSP1)およびCD36が含まれるが、これらに限定されない。
【0008】
前記レクチンまたはフラグメントの具体的な実施形態には、第2のタンパク質として使用される、CD300a、CD47、トロンボスポンジン1(TSP1)およびCD36、Toll様受容体4(TLR4)またはそのフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。
【0009】
前記レクチンまたはフラグメントの具体的な実施形態には、前記第1のタンパク質の1つまたは複数、および、前記第2のタンパク質の1つまたは複数が含まれるが、これらに限定されない。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記小胞は、M6PRを、P-セレクチン、E-セレクチン、PSGL-1またはガレクチン3との組合せで含む。いくつかの実施形態において、前記小胞は、Siglec2を、P-セレクチン、ガレクチン3またはCD31との組合せで含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記小胞は、P-セレクチンまたはM6PRを、TLR4、ガレクチン3、CLEC2、インテグリンαLβ2またはCD31との組合せで含む。
【0012】
前記薬剤の具体的な実施形態には、診断用造影剤、細胞生存強化剤、細胞生存抑制剤、細胞成分、オルガネラ、細胞、細胞傷害性薬剤、抗腫瘍薬物、毒素または抗体、脂質、タンパク質、DNA、RNA、治療剤またはナノ材料が含まれるが、これらに限定されない。
【0013】
本発明はまた、本発明の小胞と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明はまた、薬剤の送達を、オートファジー細胞および/またはアポトーシス細胞、ならびに前記細胞を含有する組織に対して標的化するための方法であって、本発明のタンパク質コンジュゲート小胞を対象に投与することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】インビトロにおけるオートファジー細胞へのリポソーム標的化を示す。
*P<0.05、非コンジュゲート群に対して(n=3)。群1~群15は、タンパク質コンジュゲートを伴う、または伴わない様々なリポソームの細胞結合レベルを示した。群:1、非コンジュゲートリポソーム;2、M6PRコンジュゲートリポソーム;3、P-セレクチンコンジュゲートリポソーム;4、E-セレクチンコンジュゲートリポソーム;5、PSGL-1コンジュゲートリポソーム;6、CD22コンジュゲートリポソーム;7、CD206コンジュゲートリポソーム;8、ガレクチン3コンジュゲートリポソーム;9、アネキシンVコンジュゲートリポソーム;10、インテグリンαLβ2コンジュゲートリポソーム;11、VE-カドヘリンコンジュゲートリポソーム;12、CD300aコンジュゲートリポソーム;13、CD47コンジュゲートリポソーム;14、TSP1およびCD36とのコンジュゲートリポソーム。非コンジュゲート群を100%に正規化した。
【0016】
【
図2】インビトロにおけるアポトーシス細胞へのリポソーム標的化を示す。
*P<0.05、非存在群に対して(n=3)。群1~群15は、タンパク質コンジュゲート化を伴う、または伴わない様々なリポソームの細胞結合レベルを示した。群:1、非コンジュゲートリポソーム;2、M6PRコンジュゲートリポソーム;3、P-セレクチンコンジュゲートリポソーム;4、E-セレクチンコンジュゲートリポソーム;5、PSGL-1コンジュゲートリポソーム;6、CD22コンジュゲートリポソーム;7、CD206コンジュゲートリポソーム;8、ガレクチン3コンジュゲートリポソーム;9、アネキシンVコンジュゲートリポソーム;10、インテグリンαLβ2コンジュゲートリポソーム;11、VE-カドヘリンコンジュゲートリポソーム;12、CD300aコンジュゲートリポソーム;13、CD47コンジュゲートリポソーム;14、TSP1およびCD36とのコンジュゲートリポソーム。非コンジュゲート群を100%に正規化した。
【0017】
【
図3】オートファジー細胞(青色集団)のフローサイトメトリーによる分析および検出の一例を示す。
【0018】
【
図4】アポトーシス細胞(紫色集団)のフローサイトメトリーによる分析および検出の一例を示す。
【0019】
【
図5】組換えタンパク質コンジュゲートリポソームの標的化作用をインビボ画像システム(IVIS)によって示す。組換えM6PRコンジュゲートリポソームの蛍光強度(標識蛍光性色素はカルセインレッド)。
【0020】
【
図6】B16-F10腫瘍細胞に対する組換えタンパク質コンジュゲートリポソームの標的化作用をインビボ画像システム(IVIS)によって示す。蛍光標識されたリポソームを使用した。組換えM6PRタンパク質コンジュゲートリポソームの蛍光強度(標識蛍光性色素はカルセインレッド)。非存在:非コンジュゲートリポソームにより処置された。
【0021】
【
図7】インビボ画像システム(IVIS)を使用して、組換えタンパク質コンジュゲート蛍光性リポソームが傷害後の肝臓に対する標的化作用を有するかどうかが確認されたことを示す。TAA処置およびリポソーム処置を伴う場合または伴わない場合の、心臓、肺、肝臓および脾臓を含むマウス臓器の相対的蛍光強度を測定した。A、明視野画像により、心臓、肺、肝臓および脾臓を含むマウス臓器が示された。B~S、蛍光画像、これらの画像において、疑似カラー画像(B、D、F、H、J)における赤色部分が、C、E、G、I、Kに示される。相乗的標的化:B~C、M6PR+P-セレクチン;D~E、M6PR+ガレクチン3およびSiglec2;F~G、M6PR+MMRおよびインテグリンαLβ2;H~I、M6PR+CD31およびアネキシンV;J~K、M6PR+CD44およびVE-カドヘリン。すべてのタンパク質コンジュゲートリポソームが、非コンジュゲートリポソーム(ビヒクル)により処置されるコントロール群と比較して、より高い肝臓優先的標的化特性を示した。加えて、蛍光レベルが、2つのタンパク質がコンジュゲートされているそのような群では、1つだけのタンパク質がコンジュゲートされた群と比較してより高い。
【0022】
【
図8】インビボ画像システム(IVIS)を使用して、組換えタンパク質コンジュゲート蛍光性リポソームが腫瘍に対する標的化作用を有するかどうかが確認されることを示す。本発明者らは、蛍光搭載リポソームが、より効率的な標的化を、B16-F10メラノーマ細胞から形成される腫瘍に対して示すことを見出した(非処置群およびビヒクル群に対して、M6PR群、M6PR+P-セレクチンによる群、および、M6PR+ガレクチン3による群)。
【0023】
【
図9】インビボ画像システム(IVIS)を使用して、組換えタンパク質コンジュゲート蛍光性リポソームが、(抗脂肪組織抗体により前処置される)傷害された白色脂肪組織に対する標的化作用を有するかどうかが確認されたことを示す。C57Bl/6Jマウスを、ウサギ抗マウス脂肪細胞抗体を用いて、または用いることなく処置した。その後、マウスを組換えタンパク質コンジュゲート蛍光性(カルセインレッド)リポソームにより処置した。群:1、非処置;2、非コンジュゲートリポソーム;3、M6PR+ガレクチン3;4、M6PR+P-セレクチン;5、M6PR。
【0024】
【
図10】傷害後のマウス肝臓はオートファジー細胞およびアポトーシス細胞を含有することを示す。
*P<0.05、正常群と比較して(n=4)。
【0025】
【
図11】マウスB16-F10細胞から形成される固形腫瘍はオートファジー細胞およびアポトーシス細胞を含有することを示す。
*P<0.05、正常群と比較して(n=4)。
【0026】
【
図12】抗脂肪抗体により処置されたマウス脂肪組織はオートファジー細胞およびアポトーシス細胞を含有することを示す。
*P<0.05、正常群と比較して(n=4)。
【0027】
【
図13】アポトーシス細胞に対するリポソーム標的の阻止を示す。ブロッキング抗体および可溶性M6PR組換えタンパク質(パネル3およびパネル4、それぞれ)は、アポトーシス細胞に対して標的化するM6PRコンジュゲートリポソーム/微小胞(パネル2)の標的化を阻止することができ、解毒物として働く場合がある。リポソーム調製物:パネル1、非コンジュゲートリポソーム;パネル2、M6PR+P-セレクチンとのコンジュゲートリポソーム;パネル3、M6PR+P-セレクチンとのコンジュゲートリポソーム+ブロッキング抗体;パネル4、M6PR+P-セレクチンとのコンジュゲートリポソーム+可溶性M6PR組換えタンパク質。
【0028】
【
図14】オートファジー細胞に対するリポソーム標的の阻止を示す。ブロッキング抗体および可溶性M6PR組換えタンパク質(パネル3およびパネル4、それぞれ)は、オートファジー細胞に対して標的化するM6PR+P-セレクチンのコンジュゲートリポソーム/微小胞(パネル2)の標的化を阻止することができ、解毒物として働く場合がある。リポソーム調製物:パネル1、非コンジュゲートリポソーム;パネル2、M6PR+P-セレクチンとのコンジュゲートリポソーム;パネル3、M6PR+P-セレクチンとのコンジュゲートリポソーム+ブロッキング抗体;パネル4、M6PR+P-セレクチンとのコンジュゲートリポソーム+可溶性M6PR組換えタンパク質。
【0029】
【
図15】アポトーシス細胞に対するリポソーム標的化を示す。群1~群4は、非処置群、M6PR+P-セレクチンとのコンジュゲート群、M6PR+E-セレクチンとのコンジュゲート群、およびM6PR+PSGL-1とのコンジュゲート群をそれぞれ示す。
*P<0.05、非処置(パネル1)群と比較して(n=4)。これらの結果は、特異的なブロッキング抗体、特異的な可溶性組換えタンパク質およびシアリル-ルイスxオリゴ糖は、P-セレクチンコンジュゲートリポソーム、E-セレクチンコンジュゲートリポソームおよびPSGL-1コンジュゲートリポソームのアポトーシス細胞に対する標的化を阻止するための解毒物として働くことができることを示唆した。
【0030】
【
図16】オートファジー細胞に対するリポソーム標的化を示す。群1~群4は、非処置群、M6PR+P-セレクチンとのコンジュゲート群、M6PR+E-セレクチンとのコンジュゲート群、およびM6PR+PSGL-1とのコンジュゲート群をそれぞれ示す。
*P<0.05、非処置(パネル1)群と比較して(n=4)。これらの結果は、特異的なブロッキング抗体、特異的な可溶性組換えタンパク質およびシアリル-ルイスxオリゴ糖は、P-セレクチンコンジュゲートリポソーム、E-セレクチンコンジュゲートリポソームおよびPSGL-1コンジュゲートリポソームのオートファジー細胞に対する標的化を阻止するための解毒物として働くことができることを示唆した。
【0031】
【
図17】カスパーゼ-3阻害剤搭載のM6PRコンジュゲートリポソームのインビトロにおける剥離したアポトーシスB16-F10細胞をレスキューについての結果を示す。
*P<0.05、剥離群と比較して(n=4)。これらの結果は、M6PRコンジュゲートリポソームはリポソームに搭載されたカスパーゼ-3阻害剤(BioVision)をアポトーシス細胞内に特異的に送達することができることを示唆した。
【0032】
【
図18】、DNA搭載M6PRコンジュゲートリポソーム(白色パネル)、RNA搭載M6PRコンジュゲートリポソーム(灰色パネル)、およびタンパク質搭載M6PRコンジュゲートリポソーム(黒色パネル)のDNA、RNAおよびタンパク質をB16-F10細胞に送達についての結果を示す。リポソームを伴う場合、または伴わない場合のB16-F10細胞の相対的蛍光レベルを、フローサイトメトリーを使用して分析した。
*P<0.05、それぞれの非コンジュゲート群と比較して(n=4)。
【0033】
【
図19】M6PR、M6PR+P-セレクチン、M6PR+E-セレクチン、および、M6PR+PSGL-1、とコンジュゲートされたカスパーゼ-3阻害剤搭載のリポソーム/MVのTAA処置マウスをレスキューについての結果を示す。血漿アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)レベルを分析した。P-セレクチン:P-sel;E-セレクチン:E-sel;P-セレクチン糖タンパク質リガンド1:PSGL-1。○# P<0.05、非コンジュゲートMV群と比較して。
**P<0.01、それぞれの組換えタンパク質コンジュゲート群と比較して(n=6)。
【0034】
【
図20】M6PR、M6PR+P-セレクチン、M6PR+E-セレクチン、および、M6PR+PSGL-1コンジュゲートBcl-2発現プラスミド搭載リポソーム/MVのTAA処置マウスのレスキューの結果を示す。血漿アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)レベルを分析した。P-セレクチン:P-sel;E-セレクチン:E-sel;P-セレクチン糖タンパク質リガンド1:PSGL-1。# P<0.05、リポソーム/MVを伴わない群と比較して。
**P<0.01、それぞれの組換えタンパク質コンジュゲート群と比較して(n=6)。
【0035】
【
図21】M6PR、M6PR+P-セレクチン、M6PR+E-セレクチン、および、M6PR+PSGL-1コンジュゲートカスパーゼ-3 siRNA搭載のリポソーム/MVのTAA処置マウスのレスキューの結果を示す。血漿アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)レベルを分析した。P-セレクチン:P-sel;E-セレクチン:E-sel;P-セレクチン糖タンパク質リガンド1:PSGL-1。# P<0.05、非コンジュゲートMV群と比較して。
**P<0.01、それぞれの組換えタンパク質コンジュゲート群と比較して(n=6)。
【0036】
【
図22】M6PR、M6PR+P-セレクチン、M6PR+E-セレクチン、および、M6PR+PSGL-1コンジュゲート抗アポトーシス性Bcl-xL由来BH4モチーフ搭載リポソーム/MVのTAA処置マウスをレスキューの結果を示す。血漿アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)レベルを分析した。P-セレクチン:P-sel;E-セレクチン:E-sel;P-セレクチン糖タンパク質リガンド1:PSGL-1。○# P<0.05、非コンジュゲートMV群と比較して。
**P<0.01、(抗アポトーシス性Bcl-xL由来BH4モチーフが搭載される)それぞれの組換えタンパク質抱合群と比較して(n=6)。
【0037】
【
図23】TAA処置マウスをレスキューするときの、M6PR+ガレクチン3、M6PR+P-セレクチン、Siglec2+P-セレクチン、および、Siglec2+ガレクチン3コンジュゲートカスパーゼ3阻害剤搭載リポソーム/MVの相乗効果を示す。血小板数(PLT)および血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベルを分析した。P-セレクチン:P-sel;ガレクチン3:Gal3。## P<0.01、BSAを伴わない群と比較して。
*P<0.05、
**P<0.01、(カスパーゼ3阻害剤搭載された)それぞれの単一組換えタンパク質コンジュゲート群と比較して(n=6)。
【0038】
【
図24】M6PRおよびP-セレクチン(P-sel)コンジュゲートリポソーム/MVの蛍光標識されたCD34+幹細胞の傷害組織への標的化促進に対するIVIS分析を示す。ここでは、TAA処置マウスのモデルにおける肝臓を示した。
【0039】
【
図25】M6PR、M6PR+P-セレクチン、M6PR+E-セレクチン、および、M6PR+PSGL-1コンジュゲートリポソーム/MVのTAA処置マウスのレスキューの結果を示す。血漿アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)レベルを分析した。P-セレクチン:P-sel;E-セレクチン:E-sel;P-セレクチン糖タンパク質リガンド1:PSGL-1。# P<0.05、非コンジュゲートMV群と比較して。
**P<0.01、それぞれのM6PRコンジュゲートリポソーム/MV群と比較して(n=6)。
【0040】
【
図26A】腫瘍の成長速度に対するMP搭載抗ガン薬物の影響:
図26Aはそれぞれの群の腫瘍プロットを示す。ビヒクル:規定生理食塩水(コントロール)、MMC:マイトマイシンC(抗ガン薬物)。
【0041】
【
図26B】腫瘍の成長速度に対するMP搭載抗ガン薬物の影響:
図26Bはそれぞれの群の腫瘍の重量および体積を示す。ビヒクル:規定生理食塩水(コントロール)、MMC:マイトマイシンC(抗ガン薬物)。
【0042】
【
図27A】
図27Aは、(ドキソルビシン含有)タンパク質コンジュゲート改変リポソームは腫瘍成長速度を抑制することができることを示す。
【0043】
【
図27B】
図27Bは、(ドキソルビシン含有)タンパク質コンジュゲート改変リポソームはマウスの死亡率もまた低下させることができることを示す。
【0044】
【
図28】脂肪質マウスに対するマイトマイシンC搭載リポソームの影響を示す。リポソーム-薬物:マイトマイシンC搭載リポソーム、CIg:コントロールIg。
【0045】
【
図29A】
図29Aは、(ドキソルビシン含有)タンパク質コンジュゲート改変リポソームはマウスの重量増加率を低下させることができることを示す。
【0046】
【
図29B】
図29Bは抗脂肪抗体または(ドキソルビシン含有)リポソームは肝機能指標における増加を生じさせない。
【0047】
【
図30】血漿MVは、血清MVおよび細胞(C6/36)由来MVと比較して、P-セレクチンの相対的により高いレベルの表面P-セレクチンを発現することを示す。分析をフローサイトメトリーによって行った。
*P<0.05、血清由来MV群と比較して(n=4)。
【0048】
【
図31】血漿由来MPのTAAマウスモデルにおける肝臓損傷のレスキューの結果を示す(n=4)。
【0049】
【
図32】実験マウスの肝機能を示す肝臓酵素ASTの血漿中レベルが示されている(ASTレベルがより高いほど肝機能がより低いことを示す)。
*P<0.05、血清由来MV群と比較して(n=4)。これらの結果は、血漿MVは標的組織における傷害をレスキューすることができることを示唆した。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明では、オートファジー細胞および/またはアポトーシス細胞への薬剤の特異的な標的化および送達のための小胞の表面に発現させられる、または小胞コンジュゲートされる改変された表面タンパク質がもたらされる。特に、本発明の小胞は、オートファジー細胞および/またはアポトーシス細胞、ならびに、オートファジー細胞および/またはアポトーシス細胞を含有する組織に対する標的化および薬物送達に関する相乗効果を達成することができる。
【0051】
用語の定義が当該用語の一般に使用されている意味から逸脱する場合には、出願人は、具体的に示される場合を除き、下記において提供される定義を利用することを意図する。
【0052】
本明細書および添付された請求項において使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈が反することを明らかに示す場合を除き、複数の言及物を包含する。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「または(もしくは、あるいは)」の使用は、別途明記される場合を除き、「および/または」を意味する。多数の従属請求項の状況においては、「または」の使用は、2つ以上の先行する独立請求項または従属請求項を択一的にだけ参照する。
【0054】
本明細書中で使用される場合、用語「1つまたは(もしくは)複数」は、特にその慣用法の枠内で読み取られるときには当業者によって容易に理解される。
【0055】
本明細書中で使用される場合、用語「リポソーム」は、封入された脂質二重層または凝集物の生成によって形成される様々な単層脂質小胞および多重層脂質小胞を包含する総称用語である。リポソームは、一般にはリン脂質を含む二重層膜と、一般には水性組成物を含む内部媒体とを伴う小胞構造を有するとして特徴づけられる場合がある。
【0056】
本明細書中で使用される場合、用語「ミセル」は、液体コロイドに分散された界面活性分子の凝集体(または超分子集合体)を示す。水溶液中の典型的なミセルは、親水性の「頭部」領域が周囲の溶媒と接触している凝集物で、疎水性の単尾領域をミセル中心に閉じ込める凝集物を形成する。
【0057】
本明細書中で使用される場合、用語「薬剤」または用語「治療剤」は、状態または疾患の処置および/または改善をもたらすことができる薬品を示す。
【0058】
本明細書中で交換可能に使用されるように、用語「個体」、用語「対象」、用語「宿主」および用語「患者」は哺乳動物を示し、これには、ネズミ科動物(ラット、マウス)、ヒト以外の霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書中で使用される場合、用語「治療効果的な量」または用語「有効量」は、疾患を処置するために哺乳動物または他の対象に投与されたとき、当該疾患のためのそのような処置をもたらすために十分である上記小胞の量を示す。
【0060】
本明細書中で使用される場合、用語「処置」、用語「処置する」および同様な用語は、哺乳動物(特にヒト)における疾患の処置をどのような処置であっても包含し、(a)前記疾患が、前記疾患に罹りやすいかもしれないが、前記疾患を有するとは未だ診断されていない対象において生じることを防止すること、(b)前記疾患を抑制すること、すなわち、その発達を停止させること、および、(c)前記疾患を緩和すること、すなわち、前記疾患の退縮を引き起こすことを包含する。
【0061】
本明細書中で使用される場合、用語「コンジュゲート部位」は、2つの高分子の間で形成される共有結合の部位であり、主として末端-側鎖の枝分かれしたコンジュゲーションであり、また、場合によっては分子の頭-尾の線状コンジュゲーションである。
【0062】
1つの局面において、本発明は、小胞の表面に発現させられる、またはコンジュゲートされる1つもしくは複数のレクチンまたはそのフラグメントと、必要な場合には薬剤とを含む、タンパク質コンジュゲート小胞を提供する。
【0063】
1つの実施形態において、前記薬剤は前記小胞の内部に封入され、または、前記小胞の外側表面に結合される。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記小胞はリポソームまたはミセルである。前記小胞は人為的に改変することができ、または、細胞に由来することができる。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記レクチンまたはそのフラグメントは、カチオン依存性マンノース-6-リン酸受容体(M6PR)、P-セレクチン、E-セレクチン、L-セレクチン、P-セレクチン-リガンド-1(PSGL-1)、CD22、CD206、ガレクチン3、アネキシンV、CD31、インテグリンαLβ2、VE-カドヘリン、CD300a、CD47、トロンボスポンジン1(TSP1)およびCD36、またはそれらのフラグメントからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、M6PR、P-セレクチン、E-セレクチン、P-セレクチン-リガンド-1(PSGL-1)、CD22、CD206、ガレクチン3、アネキシンV、インテグリンαLβ2、VE-カドヘリンは単独で、オートファジー細胞および/またはアポトーシス細胞、ならびに、オートファジー細胞および/またはアポトーシス細胞を含有する組織への小胞標的化を行うために十分であり、第1のタンパク質(EP)として働く。さらなるいくつかの実施形態において、前記小胞は、M6PRを、P-セレクチン、E-セレクチン、PSGL-1またはガレクチン3との組合せで含み、あるいは、Siglec2をP-セレクチンまたはガレクチン3との組合せで含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、CD300a、CD47、トロンボスポンジン1(TSP1)およびCD36はさらに、第2のタンパク質として働くことができる。したがって、本発明はさらに、M6PR、P-セレクチン、E-セレクチン、L-セレクチン、P-セレクチン-リガンド-1(PSGL-1)、CD22、CD206、ガレクチン3、アネキシンV、CD31、インテグリンαLβ2およびVE-カドヘリンからなる群から選択される第1のタンパク質の1つまたは複数と、CD300a、CD47、トロンボスポンジン1(TSP1)、Toll様受容体4(TLR4)およびCD36ならびにそれらのフラグメントからなる群から選択される第2のタンパク質の1つまたは複数とを含む小胞を提供する。いくつかの実施形態において、前記小胞は、M6PRまたはP-セレクチンを、TLR4、ガレクチン3、CLEC2、インテグリンαLβ2またはCD31との組合せで含む。タンパク質標識化の組合せを伴う上記小胞は、オートファジー細胞および/またはアポトーシス細胞、ならびに、オートファジー細胞および/またはアポトーシス細胞を含有する組織に対する標的化および薬物送達に関する相乗効果を達成することができる。標的化作用に関する相乗効果により、送達されるべき薬剤の効果的な投薬量が少なくなり、したがって、当該薬物の副作用を軽減することができる。
【0067】
1つの実施形態において、前記薬剤は診断剤または治療剤である。1つの実施形態において、前記薬剤は、オートファジーまたはアポトーシスを引き起こす薬物である。いくつかの実施形態において、前記薬剤の例には、抗マラリア薬物、オートファジー阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、本明細書中に記載されるEPまたはAPのアンタゴニスト、診断用造影剤、細胞生存強化剤(または細胞死抑制剤)、細胞生存抑制剤(または細胞死強化剤)、細胞(例えば、幹細胞および始原体細胞など)、細胞成分、オルガネラ、細胞傷害性薬剤、抗腫瘍薬物、毒素または抗体、脂質、タンパク質、DNA、RNA、治療剤、ならびにナノ材料が含まれるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、上述の第1のタンパク質または第2のタンパク質のアンタゴニスト(例えば、可溶性形態、対応するリガンド、ならびに中和抗体およびブロッキング抗体など)は、オートファジー細胞およびアポトーシス細胞、ならびに、オートファジー細胞およびアポトーシス細胞を含有する組織への小胞標的化を低下させるための解毒物として働くことができる。いくつかの実施形態において、前記薬剤は、バルドキソロンメチル、クロロキン、キニン、ヒドロクロロキン、ソラフェニブ、スニチニブ、Hsp90阻害剤、メトホルミンまたはクリゾチニブである。
【0068】
本明細書中に提供されるリポソームには、単層リポソーム、多重層リポソームおよび多小胞リポソームが含まれる。本明細書中に提供されるリポソームは、正荷電のリン脂質、負荷電のリン脂質、または中性のリン脂質から構成される場合がある。
【0069】
本発明において使用されるリポソームは、この技術分野において知られている種々の方法によって作製することができる。例えば、リン脂質(例えば、中性リン脂質のジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)および/またはEPCなど)をアルコールまたは他の有機溶媒に溶解し、その後、脂質二重層における封入のための成分と混合することができる。この混合物はさらに、様々な界面活性剤を含む場合がある。典型的には、脂質混合物がボルテックス撹拌され、ドライアイス/アセトン浴で凍結され、一晩の凍結乾燥に供される。凍結乾燥された調製物は長期間にわたって-20℃以下で貯蔵される。必要とされるときに、凍結乾燥されたリポソームは再構成される。
【0070】
あるいは、リポソームを、脂質を容器(例えば、ガラス製のナシ型フラスコ)において溶媒に混合することによって調製することができる。容器は、容積がリポソームの予想される懸濁物の体積よりも10倍大きくなければならない。ロータリーエバポレーターを使用して、溶媒が負圧下においておよそ40℃で除かれる。溶媒は通常、リポソームの所望される体積に依存して、約5分から2時間のうちに除かれる。組成物は真空下のデシケーターにおいてさらに乾燥することができる。乾燥後の脂質は一般には、時間とともに劣化する傾向があるので、約1週間後には廃棄される。
【0071】
ミセル構造がそれ自体は主に、ミセルを形成するために使用されるポリマー分子のタイプおよび組成、ならびに、ミセルの溶媒環境によって決定されるであろう。いくつかの実施形態において、ミセルが、親水性モノマーユニットおよび疎水性モノマーユニットの両方からなる非イオン性のトリブロックコポリマーを使用して製造される。本開示の実施形態においては、ポロキサマー、すなわち、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)(PEO-PPO-PEO)のトリブロックコポリマーが使用される。いくつかの実施形態において、本開示のミセルは、様々なブロックサイズ(例えば、上記範囲の範囲内であるブロックサイズ)のPEG-PLAポリマーを使用して、また、様々な比率(例えば、約1:10から約10:1までの、または、どのような整数比であれ、前記比率の範囲内である整数比のPEG:PLA)で調製することができる。
【0072】
本明細書中に記載されるタンパク質を小胞内にコンジュゲートすることが、官能基で標識された脂質を、剪断力に基づく方法を使用して小胞内に補うことを介して行われる(Yu B、Lee RJ、Lee LJ、Microfluidic methods for production of liposomes、Methods Enzymol.、2009;465:129~141、および、Jeong D、Jo W、Yoon J他、Nanovesicles engineered from ES cells for enhanced cell proliferation、Biomaterials、2014;35(34):9302~9310)。
【0073】
別の局面において、本発明は、本発明の小胞と、医薬的に許容され得るキャリアとを含む医薬組成物を提供する。本発明の小胞は、当業者に知られている様々な異なる様式で配合することができる。医薬的に許容され得るキャリアが一部は、投与される具体的な組成物によって、同様にまた、組成物を投与するために使用される具体的な方法によって決定される。したがって、本発明の医薬組成物の広範囲の様々な好適な配合物が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第20版、2003年、上掲)を参照のこと)。効果的な配合物には、経口配合物および鼻腔配合物、非経口投与のための配合物、ならびに、持続放出のために配合される組成物が含まれる。
【0074】
投与のために、例えば、非経口投与のために、水溶性塩(例えば、NaCl)の無菌の水溶液を用いることができる。さらなるキャリアまたは代替キャリアには、ゴマ油またはピーナッツ油、同様にまた、水性プロピレングリコールが含まれる場合がある。水溶液は、必要ならば、好適に緩衝化される場合があり、液体希釈剤は最初に、十分な生理食塩水またはグルコースにより等張性にすることができる。これらの水溶液は、静脈内注入、筋肉内注入、皮下注入、腹腔内注入および腫瘍内(IT)注入のためにとりわけ好適である。
【0075】
経口投与のために好適である配合物は、(a)液体溶液、例えば、希釈剤(例えば、水、生理食塩水またはPEG400など)に懸濁される効果的な量の本発明の化合物など、(b)カプセル剤、サッシェ剤、デポ剤または錠剤(それぞれが、所定量の有効成分を、液体物、固体物、顆粒またはゼラチンとして含有する)、(c)適切な液体における懸濁物、(d)好適な乳化物、および、(e)パッチからなることができる。上記の液体溶液は無菌の溶液であることが可能である。医薬用形態物は、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、微結晶セルロース、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、フィラー、バインダー、希釈剤、緩衝化剤、湿潤剤、保存剤、香味矯臭剤、色素、崩壊剤、ならびに、医薬上適合し得るキャリアの1つまたは複数を含むことができる。ロゼンジは有効成分を風味物(例えば、スクロース)に含むことができ、同様にまた、トローチ剤は有効成分を不活性基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア乳化物など)に含み、ゲル剤などは、有効成分に加えて、この技術分野で知られているキャリアを含有する。
【0076】
別の局面において、本発明は、本発明のタンパク質コンジュゲート小胞を対象に投与することを含む、目的とする薬剤の送達を、オートファジー細胞および/またはアポトーシス細胞、ならびに前記細胞を含有する組織に対して標的化するための方法方法を提供する。1つの実施形態において、前記小胞を投与する前に、前記方法はさらに、オートファジー誘導剤および/またはアポトーシス誘導剤を標的細胞または標的組織に投与する工程を含む。この工程を使用することによって、標的細胞または標的組織において、オートファジーまたはアポトーシスが生じ、その結果、本発明の小胞は、オートファジーおよび/またはアポトーシスを受ける細胞または組織に対して標的化し、その後、目的とする薬剤をそのような細胞または組織に送達することができると考えられる。例えば、抗肥満抗体が最初に対象に投与され、その結果、脂肪細胞または脂肪組織がオートファジーおよび/またはアポトーシスを受けるようにされ、その後、抗肥満薬物を伴う小胞が、オートファジーおよび/またはアポトーシスを受ける脂肪細胞または脂肪組織を標的とするために投与され、その結果、これらの脂肪細胞または脂肪組織は前記抗肥満薬物によってさらに損傷されることが可能である。
【0077】
オートファジーは、生存、分化、発達および恒常性のために必須であるリソソーム分解経路である。薬剤または治療剤を本発明の小胞とともにオートファジー細胞に送達することは、オートファジーの脱調節に伴う疾患に向けられる。オートファジーの脱調節に伴う疾患には、外傷、化学的および物理的な毒性因子への曝露、遺伝性疾患、老化関連疾患、心臓血管疾患、感染性疾患、腫瘍性疾患、神経変性疾患、代謝性疾患、老化(ATG5が生物全体において過剰発現されるとき)、肥満(ATG7またはオートファジー促進性転写因子EB[TFEB]が肝細胞において過剰発現されるとき)、ガン(ベクリン1がKRAS誘導肺腺腫において発現されるとき)、β-アミロイドまたはα-シヌクレインまたは毒性により誘発される神経変性(TFEBまたはベクリン1が脳において過剰発現されるとき、あるいは、シスタチンB(リソソームシステインプロテアーゼの阻害剤)がノックアウトされるとき)、筋変性状態(TFEBまたはベクリン1が骨格筋に標的化されるとき)、および、嚢胞性線維症によって引き起こされる慢性の肺炎症(ベクリン1が肺において発現されるとき)が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
アポトーシスは、多数のアポトーシス促進性シグナルおよび抗アポトーシス性シグナルの統合によって制御される。本発明の小胞を用いて薬剤または治療剤をアポトーシス細胞に送達は、アポトーシスの変化に伴う疾患を対象にする。アポトーシスの変化に伴う疾患には、外傷、化学的および物理的な毒性因子への曝露、遺伝性疾患、老化関連疾患、老化関連疾患、心臓血管疾患、感染性疾患、腫瘍性疾患、神経変性疾患、代謝性疾患、老化、肥満、ガン、β-アミロイドもしくはα-シヌクレインにより誘発される神経変性(アルツハイマー、パーキンソン、ハンチントン、筋萎縮性側索硬化症)または毒性により誘発される神経変性、筋変性状態、あるいは、嚢胞性線維症によって引き起こされる慢性の肺炎症、心臓血管障害(例えば、虚血、心不全および感染性疾患など)および自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、自己免疫性リンパ増殖症候群、関節リウマチおよび甲状腺炎)が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
本発明の小胞は、診断剤または治療剤の投与を必要とする疾患をどのような疾患であっても処置するために、または診断するために使用することができる。好適な薬剤または治療剤はどのようなものであっても、本発明の小胞とともに使用することができる。加えて、本発明の小胞は、様々な病原体(例えば、ウイルス、細菌、真菌および寄生生物など)による感染を処置するために有用である。他の疾患を、本発明の小胞を使用して処置することができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、本発明の小胞または医薬組成物は、局所投与、非経口投与、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、結腸投与、直腸投与または腹腔内投与を含めて様々な方式で患者に投与することができる。好ましくは、医薬組成物は、非経口投与、局所投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経口投与または鼻腔投与(例えば、吸入など)によって投与される。
【0081】
ある実施形態において、タンパク質コンジュゲート小胞は、脂質、タンパク質、DNA、RNA、治療剤またはナノ材料を送達することができる。いくつかの実施形態において、治療剤は細胞生存強化剤(または細胞死抑制剤)である。細胞生存強化剤(または細胞死抑制剤)を対象に送達することにより、組織傷害の薬物媒介レスキューを行うことができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、前記薬剤は、細胞生存抑制剤、細胞死強化剤または抗腫瘍剤である。細胞生存抑制剤(細胞死強化剤)または抗腫瘍剤の送達により、天然に存在するオートファジー細胞およびアポトーシス細胞を含有するそのような組織(例えば、腫瘍など)の標的細胞の生存を低下させることができ、または、、細胞傷害性薬剤(例えば、薬物、毒素、または組織特異的タンパク質に対する抗体など)を使用することで特定の組織においてオートファジー細胞およびアポトーシス細胞が人為的に誘導される選択された特定の組織を減少させることができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、治療剤は幹細胞または始原体細胞である。幹細胞および始原体細胞の送達により、保護的な生理学的機能を発揮させ、オートファジー細胞およびアポトーシス細胞を含有する組織をレスキューすることができる。
【0084】
本発明が、好ましい実施形態およびそれらの実施例を参照して記載されているが、本発明の範囲は、そのような記載された実施形態のみに限定されない。当業者には明らかであるように、上記の発明に対する様々な改変および適合化が、添付された特許請求の範囲によって定義および限定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。下記の実施例は、本発明の様々な実施形態および利点を例示するという趣旨のために提供されており、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【実施例】
【0085】
実施例1 インビトロにおけるオートファジー細胞へのリポソーム標的化
リポソームの調製
【0086】
リポソームを、リポソームキット(Sigma-Aldrich Co.)およびそれぞれの脂質によって調製した。表面タンパク質のコンジュゲート形成が、官能基で標識された脂質を、剪断力に基づく方法を使用してリポソーム内に補うことを介して行われる(Yu B、Lee RJ、Lee LJ、Microfluidic methods for production of liposomes、Methods Enzymol.、2009;465:129~141、および、Jeong D、Jo W、Yoon J他、Nanovesicles engineered from ES cells for enhanced cell proliferation、Biomaterials、2014;35(34):9302~9310)。タンパク質(M6PR、P-セレクチン、E-セレクチン、PSGL-1、CD22、CD206、ガレクチン3、アネキシンV、インテグリンαLβ2、VE-カドヘリン、CD300a、CD47、TSP1およびCD36)のリポソームへのタンパク質コンジュゲーションはは、製品によって提供される方法に基づいている。
【0087】
オートファジー細胞およびアポトーシス細胞に対する相対的会合レベルの測定
【0088】
マウスB16-F10細胞を4時間にわたって懸濁して、オートファジーおよびアポトーシスを誘導した。オートファジー細胞およびアポトーシス細胞を、Cyto-IDオートファジー検出キット(Enzo Life Sciences)(
図1および
図3を参照のこと)、および、CaspGLOWTM Red活性カスパーゼ-3染色キット(BioVision)(
図2および
図4を参照のこと)のキットをそれぞれ使用して、緑色蛍光色素(GFD)で標識した。オートファジー細胞およびアポトーシス細胞を含有する集団が、蛍光色素のカルセイン-レッド(CR)で標識された様々なタンパク質コンジュゲートリポソームと会合した。B16-F10リポソーム会合集団(GFDおよびCRの二重陽性集団)の割合を、フローサイトメトリーを使用して求めた。非コンジュゲートの細胞と会合したリポソームおよび蛍光性ビーズ(「非コンジュゲート」群)のレベルを100%に正規化した(
図1および
図2を参照のこと)。
【0089】
実施例2 様々なタンパク質コンジュゲートを介した損傷組織に対して特異的に標的化されるリポソーム
チオアセトアミド(TAA)肝炎のマウスモデルにおける傷害された肝臓に対する改変リポソームの標的化
【0090】
チオアセトアミド(TAA)肝炎のマウスモデルにおいて、非コンジュゲートリポソーム(フルオレセイン含有)およびM6PRコンジュゲートの改変リポソーム(フルオレセイン含有)を実験マウスにそれぞれ静脈内注入した。24時間後において、蛍光レベルを、IVISシステムを使用して求めた(
図5を参照のこと)。これらの結果は、M6PRコンジュゲート改変リポソーム(フルオレセイン含有)はリポソーム搭載フルオレセインを肝臓内に特異的に送達することができることを示唆した。
【0091】
相乗作用アッセイを上述の方法に従って行った。結果が
図6に示される。図に示されるように、P-sel、gal-3、siglec2、MMR、αLβ2、CD31、アネキシンV、CD44またはVE-カドヘリンとの組合せでのM6PRの肝臓における蛍光強度が、M6PRのみよりも有意に高い。上記組合せにより、相乗効果が示される。
【0092】
マウスB16-F10細胞株に由来する固形腫瘍
【0093】
マウスに、B16-F10メラノーマ細胞(1
*10
6細胞/マウス)を鼠径部位に皮下注入した。3日目および8日目に、(フルオレセイン含有)コントロールリポソームおよびM6PRコンジュゲート改変リポソームをマウスの眼窩静脈洞にそれぞれ注入した。マウスを12日目に屠殺した。腫瘍の蛍光強度を、IVIS(登録商標)Spectrumを使用して観測した。結果が
図7に示される。図に示されるように、M6PRコンジュゲート改変リポソームの腫瘍における蛍光強度が他の臓器における蛍光強度よりも有意に高く、このことは、M6PRコンジュゲート改変リポソームは腫瘍部位を特定することができることを示す。
【0094】
相乗作用アッセイを上述の方法に従って行った。(フルオレセイン含有)コントロールリポソーム、M6PRコンジュゲートリポソーム、M6PR-P-selコンジュゲートリポソームおよびM6PR-Gal3コンジュゲート改変リポソームをマウスの眼窩静脈洞にそれぞれ注入した。マウスを12日目に屠殺した。腫瘍の蛍光強度を、IVIS(登録商標)Spectrumを使用して観測した。結果が
図8に示される。図に示されるように、M6PRコンジュゲートリポソーム、M6PR-P-selコンジュゲートリポソームおよびM6PR-Gal3コンジュゲート改変リポソームの腫瘍における蛍光強度が他の臓器における蛍光強度よりも有意に高い。そのうえ、M6PR-P-selリポソームおよびM6PR-Gal3コンジュゲート改変リポソームは、M6PRコンジュゲート改変リポソームよりも良好な相乗作用効力を示す。
【0095】
抗脂肪抗体を注射した後の脂肪組織
【0096】
高脂肪食を摂るマウスに、コントロールIgまたは抗脂肪抗体(75μg/マウス)を0時間および48時間において眼窩静脈洞にそれぞれ注入した。(フルオレセイン含有)コントロールリポソーム、M6PRコンジュゲートリポソーム、M6PR-P-selコンジュゲートリポソームおよびM6PR-Gal3抱合コンジュゲートリポソームを、6時間、24時間、54時間および72時間においてマウスの眼窩静脈洞にそれぞれ注入した。マウスを96時間後に屠殺して、白色脂肪組織を取り出した。腫瘍の蛍光強度を、IVIS(登録商標)Spectrumを使用して観測した。結果が
図9に示される。図に示されるように、M6PRコンジュゲートリポソーム、M6PR-P-selコンジュゲートリポソームおよびM6PR-Gal3コンジュゲート改変リポソームの脂肪組織における蛍光強度がコントロールよりも有意に高い。そのうえ、M6PR-P-selリポソームおよびM6PR-Gal3コンジュゲート改変リポソームは、M6PRコンジュゲート改変リポソームよりも良好な相乗的効果を示す。
【0097】
傷害組織はオートファジー細胞およびアポトーシス細胞を含有する。
【0098】
チオアセトアミド(TAA)処置されたマウス肝臓
【0099】
チオアセトアミド(TAA)肝炎のマウスモデルにおいて、非コンジュゲートリポソーム(フルオレセイン含有)およびM6PRコンジュゲート改変リポソーム(フルオレセイン含有)を実験マウスの眼窩静脈洞にそれぞれ静脈内注入した。24時間後において、オートファジーおよびアポトーシスの肝臓細胞を、Cyto-IDオートファジー検出キット(Enzo Life Sciences)、および、CaspGLOWTM Red活性カスパーゼ-3染色キット(BioVision)のキットをそれぞれ使用して、緑色蛍光色素(GFD)で標識した。オートファジーおよびアポトーシスの肝臓細胞を含有する集団が、M6PRコンジュゲート改変リポソーム(これは蛍光色素のカルセイン-レッド(CR)で標識された)と会合した。肝臓細胞-リポソーム会合集団(GFDおよびCRの二重陽性集団)の割合を、フローサイトメトリーを使用して求めた。非コンジュゲートの細胞と会合したリポソームおよび蛍光性ビーズ(「非コンジュゲート」群)のレベルを100%に正規化した(
図10を参照のこと)。
【0100】
B16-F10細胞によって形成される固形腫瘍
【0101】
マウスに、B16-F10メラノーマ細胞(1
*10
6細胞/マウス)を鼠径部位に皮下注入した。3日目および8日目に、(フルオレセイン含有)コントロールリポソームおよびM6PRコンジュゲート改変リポソームをマウスの眼窩静脈洞に注入した。マウスを12日目に屠殺した。オートファジーおよびアポトーシスの腫瘍細胞を、Cyto-IDオートファジー検出キット(Enzo Life Sciences)、および、CaspGLOWTM Red活性カスパーゼ-3染色キット(BioVision)のキットをそれぞれ使用して、緑色蛍光色素(GFD)で標識した。オートファジーおよびアポトーシスの腫瘍細胞を含有する集団が、M6PRコンジュゲート改変リポソーム(これは蛍光色素のカルセイン-レッド(CR)で標識された)と会合した。肝臓細胞-リポソーム会合集団(GFDおよびCRの二重陽性集団)の割合を、フローサイトメトリーを使用して求めた。非コンジュゲートの細胞と会合したリポソームおよび蛍光性ビーズ(「非コンジュゲート」群)のレベルを100%に正規化した(
図11を参照のこと)。
【0102】
抗脂肪抗体で処置された脂肪組織
【0103】
高脂肪食を摂るマウスに、コントロールIgまたは抗脂肪抗体(75μg/マウス)を0時間および48時間において眼窩静脈洞にそれぞれ注入した。(フルオレセイン含有)コントロールリポソーム、M6PRコンジュゲートリポソーム、M6PR-P-selコンジュゲートリポソームおよびM6PR-Gal3コンジュゲート改変リポソームを、6時間、24時間、54時間および72時間においてマウスの眼窩静脈洞にそれぞれ注入した。マウスを96時間後に屠殺して、白色脂肪組織を取り出した。オートファジーおよびアポトーシスの脂肪細胞を、Cyto-IDオートファジー検出キット(Enzo Life Sciences)、および、CaspGLOWTM Red活性カスパーゼ-3染色キット(BioVision)のキットをそれぞれ使用して、緑色蛍光色素(GFD)で標識した。オートファジーおよびアポトーシスの脂肪細胞を含有する集団が、M6PRコンジュゲート改変リポソーム(これは蛍光色素のカルセイン-レッド(CR)で標識された)と会合した。肝臓細胞-リポソーム会合集団(GFDおよびCRの二重陽性集団)の割合を、フローサイトメトリーを使用して求めた。非コンジュゲートの細胞と会合したリポソームおよび蛍光性ビーズ(「非コンジュゲート」群)のレベルを100%に正規化した(
図12を参照のこと)。
【0104】
実施例3 ブロッキング抗体、可溶性組換えタンパク質および可溶性M6Pの処置は、オートファジー細胞およびアポトーシス細胞に対して標的化するM6PRコンジュゲート改変リポソーム/微小胞の標的化を阻止することができ、解毒物として働く場合がある
マウスB16-F10細胞を4時間にわたって懸濁し、その後、ブロッキング抗体または可溶性M6PR組換えタンパク質、加えて、さらなるM6PR+P-セレクチンコンジュゲートリポソームにより処置した。オートファジーおよびアポトーシスの細胞を、Cyto-IDオートファジー検出キット(Enzo Life Sciences)、および、CaspGLOWTM Red活性カスパーゼ-3染色キット(BioVision)のキットをそれぞれ使用して、緑色蛍光色素(GFD)で標識した。オートファジー細胞およびアポトーシス細胞を含有する集団が、M6PR+P-セレクチンとコンジュゲートリポソーム(これは蛍光色素のカルセイン-レッド(CR)で標識された)と会合した。B16-F10-リポソーム会合集団(GFDおよびCRの二重陽性集団)の割合を、フローサイトメトリーを使用して求めた。非コンジュゲートの細胞と会合したリポソームおよび蛍光性ビーズ(「非コンジュゲート」群)のレベルを100%に正規化した(
図13および
図14を参照のこと)。
【0105】
実施例4 インビトロにおいてオートファジー細胞およびアポトーシス細胞に対して特異的に標的化されるリポソーム搭載物(脂質、DNA、RNA、タンパク質、薬物)
マウスB16-F10細胞を4時間にわたって懸濁して、アポトーシスを誘導し、その後、カスパーゼ-3阻害剤搭載のM6PRコンジュゲートリポソームにより処置し、血清非含有培地とインキュベーションした。24時間後において、アポトーシス細胞の割合を、フローサイトメトリーを使用して求めた(
図17を参照のこと)。
【0106】
Molecular Probes(登録商標)標識化化学反応(DNA、RNAおよびタンパク質標識キット;ThermoFisher Scientific Co.)を使用して、蛍光標識されたDNA、RNAおよびタンパク質を調製した。蛍光性DNA、蛍光性RNAおよび蛍光性タンパク質(Bcl-xLのBH4モチーフ)を、細胞浸透性ペプチド(R8 11)との複合体を介して、または、細胞浸透性ペプチド(R8 11)とのコンジュゲート化(グルタルアルデヒド;Sigma-Aldrich Co.)によりリポソーム/MVに送達した。これらの結果から、M6PRコンジュゲートリポソームは、DNA搭載リポソーム、RNA搭載リポソームおよびタンパク質搭載リポソームのアポトーシス細胞への標的化を達成することができる(
図18を参照のこと)。
表1.単一の組換えタンパク質がコンジュゲートされたカスパーゼ-3阻害剤搭載リポソームを例として使用して、TAA処置マウスの相乗的なレスキューを、低下したALTレベルによる検出を介して分析した(+ P<0.05、++ P<0.01)。
【表1】
表2.M6PRおよび第2のタンパク質がコンジュゲートされたカスパーゼ-3阻害剤搭載リポソームを例として使用して、TAA処置マウスの相乗的レスキューを、低下したALTレベルによる検出を介して分析した(+ P<0.05、++ P<0.01)。
【表2】
【0107】
実施例6 インビボにおけるリポソーム表面での様々なタンパク質コンジュゲートを介した傷害組織(IVIS)に特異的に標的化される改変リポソームの実証
チオアセトアミド(TAA)肝炎のマウスモデルにおいて、M6PR、M6PR+P-セレクチン抱合、M6PR+E-セレクチン、および、M6PR+PSGL-1とのコンジュゲートされたカスパーゼ-3阻害剤搭載リポソームを実験マウスに静脈内注入した。24時間後において、血漿アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)レベルを分析した(
図19を参照のこと)。これらの結果は、セレクチンコンジュゲートリポソームは損傷後の組織に対して標的化することができるだけでなく、標的組織を治療するために薬物を運ぶことができることを示唆した(
図19を参照のこと)。
【0108】
チオアセトアミド(TAA)肝炎のマウスモデルにおいて、M6PR、M6PR+P-セレクチン、M6PR+E-セレクチン、および、M6PR+PSGL-1とコンジュゲートされたBcl-2発現プラスミド搭載リポソームを実験マウスに静脈内注入した。24時間後において、血漿アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)レベルを分析した(
図20を参照のこと)。これらの結果は、セレクチンコンジュゲートリポソームは損傷後の組織に対して標的化することができるだけでなく、標的組織を治療するためにプラスミドDNAを運ぶことができることを示唆した。
【0109】
チオアセトアミド(TAA)肝炎のマウスモデルにおいて、M6PR、M6PR+P-セレクチン、M6PR+E-セレクチン、および、M6PR+PSGL-1とコンジュゲートされたカスパーゼ-3siRNA搭載リポソームを実験マウスに静脈内注入した。24時間後において、血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを分析した(
図21を参照のこと)。これらの結果は、これらのタンパク質コンジュゲートリポソームは損傷後の組織に対して標的化することができるだけでなく、標的組織を治療するためにRNAを運ぶことができることを示唆した(
図21を参照のこと)。
【0110】
チオアセトアミド(TAA)肝炎のマウスモデルにおいて、M6PR、M6PR+P-セレクチン、M6PR+E-セレクチン、および、M6PR+PSGL-1とコンジュゲートされた抗アポトーシス性Bcl-xL由来BH4モチーフ搭載リポソームを実験マウスに静脈内注入した。24時間後において、血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを分析した(
図22を参照のこと)。
【0111】
チオアセトアミド(TAA)肝炎のマウスモデルにおいて、M6PR+ガレクチン3、M6PR+P-セレクチン、Siglec2+P-セレクチンと、および、Siglec2+ガレクチン3とコンジュゲートされたカスパーゼ-3阻害剤搭載リポソームを実験マウスに静脈内注入した。24時間後において、血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを分析した(
図23を参照のこと)。
【0112】
実施例7 傷害部位への本発明のタンパク質コンジュゲートリポソームによるCD34+細胞の標的化、および、CD34
+細胞媒介レスキューに対するタンパク質コンジュゲートリポソームの相乗効果
蛍光(カルセインレッド)標識されたマウスCD34
+幹細胞(1×10
7細胞/マウス)を、M6PRコンジュゲートリポソーム/MV、およびM6PR+P-selコンジュゲートリポソーム/MV(マウスあたり2.5×10
9個のMV)を伴って実験マウスに静脈内注入した。蛍光レベルを、IVISシステムを使用して求めた(
図24を参照のこと)。
【0113】
チオアセトアミド(TAA)肝炎のマウスモデルにおいて、マウスCD34
+幹細胞(1×10
7細胞/マウス)を、M6PR、M6PR+P-セレクチン、M6PR+E-セレクチン、および、M6PR+PSGL-1とコンジュゲートされたリポソーム/MV(マウスあたり2.5×10
9個のMV)とともに実験マウスに静脈内注入した。24時間後において、血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを分析した(
図25を参照のこと)。
【0114】
実施例8 本発明のタンパク質コンジュゲートリポソームによるガン細胞への抗ガン薬物または細胞抑制剤の標的化
マウスに、B16-F10メラノーマ細胞(1
*10
6細胞/マウス)を鼠径部位に皮下注入した。3日目および8日目に、(MV(マイトマイシンC含有、0.2μg)およびMV(2μg、シスプラチン含有)をマウスの眼窩静脈洞にそれぞれ注入した。マウスを12日目に屠殺して、腫瘍を取り出した。腫瘍のサイズおよび重量を測定した(
図26Aおよび
図26Bを参照のこと)。
図26に示されるように、MVは抗ガン薬物を腫瘍に運搬し、また、抗ガン薬物を腫瘍の中に送達し、腫瘍成長の抑制または緩和、および、腫瘍サイズの縮小をもたらすことができる。
【0115】
上述の方法に従って、(ドキソルビシン含有)タンパク質コンジュゲート改変リポソームを、当該抗ガン薬物を運ぶキャリアとして使用した。
図27に示されるように、(ドキソルビシン含有)タンパク質コンジュゲート改変リポソームは腫瘍成長速度を抑制することができ(
図27Aを参照のこと)、また、マウスの死亡率も低下させることができる(
図27B)。
【0116】
実施例9 本発明のタンパク質コンジュゲートリポソームによる脂肪組織への薬物の標的化
高脂肪食を摂るマウスに、コントロールIgまたは抗脂肪抗体(75μg/マウス)を0時間および48時間において眼窩静脈洞にそれぞれ注入した。6時間、24時間、54時間および72時間において、(MV(マイトマイシンC含有、0.2μg)およびMV(シスプラチン含有、2μg)をマウスの眼窩静脈洞にそれぞれ注入した。マウスの重量を測定した。結果が
図28に示される。結果は、MV(マイトマイシンC含有、0.2μg)はマウスの重量増加率を低下させることができることを示す。
【0117】
上述の方法に従って、(ドキソルビシン含有)タンパク質コンジュゲート改変リポソームをアッセイにおいて使用した。
図29に示されるように、(ドキソルビシン含有)タンパク質コンジュゲート改変リポソームはマウスの重量増加率を低下させることができる(
図29A)。加えて、抗脂肪抗体または(ドキソルビシン含有)リポソームは肝機能指標における増加を生じさせないであろう(
図29B)。
【0118】
実施例10 本発明のタンパク質抱合リポソームは、さらなる薬物/物質を搭載せずに、傷害組織に対するレスキューを媒介するだけである
血漿MVは、血清MVおよび細胞(C6/36)由来MVと比較して、P-セレクチンの相対的により高いレベルの表面P-セレクチンを発現する。フローサイトメトリーによって分析した(
図30を参照のこと)。
【0119】
チオアセトアミド(TAA)肝炎のマウスモデルにおいて、血漿MV、血清MVおよび細胞(C6/36)由来MV(マウスあたり2.5×10
9個のMV)を実験マウスに静脈内注入した。24時間後において、血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを分析した(
図31を参照のこと)。
【0120】
チオアセトアミド(TAA)肝炎のマウスモデルにおいて、マウスCD34
+幹細胞(1×10
7細胞/マウス)を、血漿MV、血清MVおよび細胞(C6/36)由来MV(マウスあたり2.5×10
9個のMV)を伴って実験マウスに静脈内注入した。24時間後において、血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを分析した(
図32を参照のこと)。