(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】積層シート体の製造装置
(51)【国際特許分類】
D04H 3/16 20060101AFI20230331BHJP
D04H 1/4374 20120101ALI20230331BHJP
【FI】
D04H3/16
D04H1/4374
(21)【出願番号】P 2019006445
(22)【出願日】2019-01-17
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】516342047
【氏名又は名称】関西電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正博
(72)【発明者】
【氏名】進士 国広
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-126907(JP,A)
【文献】特開平11-012912(JP,A)
【文献】特開2011-047098(JP,A)
【文献】特開2013-185272(JP,A)
【文献】特開2008-018429(JP,A)
【文献】特開2015-092038(JP,A)
【文献】特開平06-294060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-18/04
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機の樹脂ノズルから押し出される熱可塑性樹脂を略水平方向に形成された吐出気流に与えて長繊維交絡体としこれを2枚の不織布の間に連続的に挟み込んでなる積層シート体の製造装置であって、
長尺方向且つ同一方向に流れる上側連続シート体及び下側連続シート体を上下方向から徐々に近接させつつこの間を通して面同士を重ね合わせて送出する上下対向ロールと、
前記上下対向ロールの上流にあって、前記吐出気流の水平進行方向に対して開口を向けたチャンバで前記吐出気流で飛ばされてくる前記長繊維交絡体を周囲の雰囲気とともに吸引するとともに、前記チャンバ内においてこの中を通過する前記下側連続シート体の上に前記長繊維交絡体を与えていく吸引ユニットと、を含み、
前記チャンバ内には、前記吐出気流の前記水平進行方向に対して斜めに上るように傾斜し前記下側連続シート体をこの上面に沿って上がるように通過させる傾斜面板を備え、前記傾斜面板はその上面に前記下側連続シート体を通過させる通過領域に沿って前記下側連続シート体を間に介して前記チャンバ内を吸引する吸引口を設けられて
おり、前記吸引口が前記通過領域に沿って下側に向けて広がる非吸引領域を形成するように設けられていることを特徴とする積層シート体の製造装置。
【請求項2】
前記非吸引領域は、逆V字状に形成されていることを特徴とする請求項
1記載の積層シート体の製造装置。
【請求項3】
前記吸引口は、複数の開口として設けられていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の積層シート体の製造装置。
【請求項4】
前記吸引口は、前記通過領域の幅方向端部に非吸引領域を形成するように設けられていることを特徴とする請求項1乃至
3のうちの1つに記載の積層シート体の製造装置。
【請求項5】
前記上下対向ロールの下流にあって、前記幅方向端部の前記非吸引領域で前記上側連続シート体及び前記下側連続シート体を連続的に熱融着させる融着装置を設けられていることを特徴とする請求項
4記載の積層シート体の製造装置。
【請求項6】
前記傾斜面板は、前記水平進行方向に対しての傾斜角度を変更可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至
5のうちの1つに記載の積層シート体の製造装置。
【請求項7】
前記長繊維交絡体は、少なくとも10μm以下の平均径を有する長繊維からなることを特徴とする請求項1乃至
6のうちの1つに記載の積層シート体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機の樹脂ノズルから押し出される熱可塑性樹脂を略水平方向に形成された吐出気流に与えて長繊維交絡体としこれを2枚の不織布の間に連続的に挟み込んで積層シート体を製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機の樹脂ノズルから押し出される熱可塑性樹脂を吐出気流に与えて繊維状に延伸する、いわゆる「メルトブロー法」が知られている。得られる繊維を堆積させてシート化させる不織布の製造方法では、連続的に繊維が供給できるから、これを基材の上などに巻き取りながら連続供給し長尺の不織布を得ることができる。
【0003】
例えば、特許文献1では、連続シート体を水平方向に連続的に供給しこの上にメルトブロー法によって熱可塑性樹脂からなる長繊維を連続的に与える積層シート体の製造方法を開示している。溶融混錬押出機等の混合機で溶融された熱可塑性樹脂は、複数の紡糸孔を一列に形成された紡糸口から高温の気体とともに鉛直下向きに吹き飛ばされて長繊維に延伸されながら固化する。一方、吸引機構を有する金属ネットからなる水平ステージの上面に連続シート体を通過させながら、長繊維を連続シート体の上に吸引して捕集することで積層シート体が連続的に形成できるのである。
【0004】
また、特許文献2では、加熱気流を吐出する上下2列に設けられたスリットの間に水平方向に並置された複数の細径樹脂ノズルから溶融樹脂を水平方向に吐出し、水平方向に飛翔しながら形成される繊維状の樹脂を回転するスクリーンドラム上に収集しながら巻き取る不織布の製造方法を開示している。スクリーンドラムは、細径樹脂ノズルと水平方向に対向配置され、ここでも繊維状の樹脂を吸引しながら収集できるようにメッシュ状となっていてその内部の吸引ダクトで吸引できるようになっている。
【0005】
さらに、特許文献3では、少なくとも10μm以下の平均径の長繊維からなる長繊維交絡体を重ね合わせた2枚の連続シート体の間に挟み込んでなる連続積層シート体の製造方法を開示している。かかる方法では、長尺方向且つ同一方向に流れる上側連続シート体及び下側連続シート体を上下方向から徐々に近接させつつ上下対向ロールの間を通して面同士を重ね合わせて送出するとともに、略水平方向に形成された吐出気流に押出機の樹脂ノズルから押し出される熱可塑性樹脂を与え、上下対向ロールの手前において上側連続シート体及び連続シート体の間に形成される引き込み気流に向けて吹き付けている。これにより、長繊維交絡体を連続シート体の間に挟み込んだ積層シート体を連続的に製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-144480号公報
【文献】特開2015-7296号公報
【文献】特開2018-126907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
メルトブロー法は、上述のとおり、噴射される気流で溶融樹脂を延伸して繊維を形成する方法であるため、繊維の形成される範囲は気流の到達する領域内に制限される。このため、繊維を堆積させ得る幅は、噴射される気流の幅に依存することとなる。そこで、より幅広に繊維を堆積させようとする場合には、溶融樹脂及び気流を噴射するノズルヘッドを複数並べて配置する等の手法が考えられるが製造装置を大型化させてしまう。また、気流を得るための装置が大型化すると動作コストを上昇させてしまう。
【0008】
本発明は以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、メルトブロー法を用いたコンパクトな装置であって、長繊維交絡体を不織布の間に連続的に挟み込んでなる比較的幅広の積層シート体を得られる製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による積層シート体の製造装置は、押出機の樹脂ノズルから押し出される熱可塑性樹脂を略水平方向に形成された吐出気流に与えて長繊維交絡体としこれを2枚の不織布の間に連続的に挟み込んでなる積層シート体の製造装置であって、長尺方向且つ同一方向に流れる上側連続シート体及び下側連続シート体を上下方向から徐々に近接させつつこの間を通して面同士を重ね合わせて送出する上下対向ロールと、前記上下対向ロールの上流にあって、前記吐出気流の水平進行方向に対して開口を向けたチャンバで前記吐出気流で飛ばされてくる前記長繊維交絡体を周囲の雰囲気とともに吸引するとともに、前記チャンバ内においてこの中を通過する前記下側連続シート体の上に前記長繊維交絡体を与えていく吸引ユニットと、を含み、前記チャンバ内には、前記吐出気流の前記水平進行方向に対して斜めに上るように傾斜し前記下側連続シート体をこの上面に沿って上がるように通過させる傾斜面板を備え、前記傾斜面板はその上面に前記下側連続シート体を通過させる通過領域に沿って前記下側連続シート体を間に介して前記チャンバ内を吸引する吸引口を設けられていることを特徴とする。
【0010】
かかる発明によれば、吐出気流で飛ばされた長繊維を周囲の雰囲気とともに吸引して下側連続シート体の一方の面に長繊維交絡体を堆積させ得て、コンパクトな装置でありながら比較的幅広の積層シート体を得られるのである。
【0011】
上記した発明において、前記吸引口は、前記傾斜面板の前記通過領域に沿って所定高さ位置よりも上側に設けられていることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、下側連続シート体の一方の面に幅広に且つ均一に長繊維交絡体を堆積させ得て、コンパクトな装置でありながら比較的幅広の積層シート体を得られるのである。
【0012】
上記した発明において、前記吸引口は、前記通過領域に沿って下側に向けて広がる非吸引領域を形成するように設けられていることを特徴としてもよい。また、前記非吸引領域は、逆V字状に形成されていることを特徴としてもよい。また、前記吸引口は、複数の開口として設けられていることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、下側連続シート体の一方の面に幅広に且つより均一に長繊維交絡体を堆積させ得て、コンパクトな装置でありながら比較的幅広の積層シート体を得られるのである。
【0013】
上記した発明において、前記吸引口は、前記通過領域の幅方向端部に非吸引領域を形成するように設けられていることを特徴としてもよい。また、前記上下対向ロールの下流にあって、前記幅方向端部の前記非吸引領域で前記上側連続シート体及び前記下側連続シート体を連続的に熱融着させる融着装置を設けられていることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、下側連続シート体の幅に対して長繊維交絡体を堆積させる幅を調整でき、例えば、上側連続シート体及び下側連続シート体の幅方向端部を連続的に熱融着させ得るのである。
【0014】
上記した発明において、前記傾斜面板は、前記水平進行方向に対しての傾斜角度を変更可能に設けられていることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、下側連続シート体上での長繊維交絡体の堆積状態を変化させ得るとともに、厚さをも調整でき得るのである。
【0015】
上記した発明において、前記長繊維交絡体は、少なくとも10μm以下の平均径を有する長繊維からなることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、下側連続シート体上での捕集がより均一になるのである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による製造装置で製造された積層シート体であって、
図1(a)は断面斜視図であり、
図1(b)は長繊維交絡体の外観の写真である。
【
図2】本発明による積層シート体の製造装置の要部を示す側面図である。
【
図3】本発明による積層シート体の製造装置の要部を示す側面図である。
【
図5】吸引機構の要部の図である。
図5(a)は正面図であり、
図5(b)は写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の1つの実施例としての積層シート体の製造装置について、
図1乃至7を用いて説明する。
【0018】
図1に示すように、製造される連続積層シート体10は、長尺方向且つ同一方向に不織布からなる上側連続シート体12a及び下側連続シート体12bを徐々に送出しつつ近接させて長手方向に面同士重ねて、この間に熱可塑性樹脂ファイバの長繊維交絡体14を挟み込んだ積層体である。なお、幅方向端部に接合部12cを設けるとともに、長手方向に所定間隔で接合部12dを設けることで、周接合された袋体とできる。これを適宜、切断して個々の積層シート体10ともし得る。ここで、上側連続シート体12a及び下側連続シート体12bと長繊維交絡体14とは互いに接合されておらず、単に積層されただけである。
【0019】
不織布内部の長繊維交絡体14は、例えば、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂の延伸体からなる長繊維を互いに交絡させ密集させた綿毛状のものであって、その平均径は少なくとも10μm以下、好ましくは5μm以下である。このような平均径の小さい長繊維を綿毛状にして用いた積層シート体10は、例えば、その体積の数倍から数十倍の多量の油を吸着可能な吸着体や、液体又は気体用のフィルター、あるいは医療用具や衣料用の素材として用いることができる。
【0020】
図2及び
図3に示すように、積層シート体10の製造装置100は、押出機114の複合ノズルブロック116の樹脂ノズルから押し出される熱可塑性樹脂を略水平方向に形成された吐出気流B1に与えて長繊維交絡体14としこれを2枚の不織布からなる上側連続シート体12a及び下側連続シート体12bの間に連続的に挟み込んでいく製造装置である。詳細には、メルトブロー法により水平方向に且つチャンバ135の開口15に向けて長繊維交絡体14を連続的に供給する繊維供給機構110と、ロール状に巻かれた上側連続シート体12a及び下側連続シート体12bを連続的に繰り出す繰り出し機構120と、繊維供給機構110と下側連続シート体12bを挟んで対向する位置に配置されて下側連続シート体12bの裏面側をチャンバ135の内部で支持する吸引機構(吸引ユニット)130と、を含む。また、上側連続シート体12a及び長繊維交絡体14が積層された下側連続シート体12bを長手方向に重ねて連続積層シート体10bとする重ね合わせ機構140と、重ね合わされた連続積層シート体10bを送給しつつその幅方向の両端近傍を連続的に重ね合わせ接合を行う送給方向接合機構150と、送られてきた連続積層シート体10bの幅方向に重ね合わせ接合を行うとともに接合後の連続積層シート体10bを幅方向に切断して積層シート体10に分離する幅方向接合切断機構(切断ユニット)160と、送給方向接合機構150及び幅方向接合切断機構160との間に配置されて幅方向接合切断機構160での接合及び切断の作業中に連続積層シート体10bを滞留させる滞留機構170と、を備える。
【0021】
特に、
図2に示すように、繊維供給機構110は、押出機114の一端に取り付けられた複合ノズルブロック116から、水平方向に向けられた高圧ガスの吐出気流B1に乗せて溶融樹脂を噴射し、この噴き出し力を用いて、溶融した樹脂を極細長繊維である樹脂ファイバに延伸させるメルトブロー法による繊維製造装置である。
【0022】
ホッパー117に導入された所定の熱可塑性樹脂のペレットは、押出機114の内部の図示しないスクリューで加熱溶融され、複合ノズルブロック116に供給される。また、加熱された高圧ガスも複合ノズルブロック116に供給され、ガス流が水平方向に形成される。好ましくは、ガス流が図示しない溶融樹脂の0.5mm以上といった繊維径に比べて比較的大なる径の吐出口の近傍に負圧を与えながら、溶融樹脂をその外部に引き出すことで特に極細の長繊維にまで強延伸させながら気流B1中に放出させることができて綿毛状の長繊維交絡体14(
図1参照)とできて好ましい。このような、溶融樹脂を空中に放出させて冷却させながら延伸する一種のメルトブロー法により長繊維交絡体14を同時かつ連続的に製造することができる。
【0023】
繰り出し機構120は、長尺帯状でロール状に巻かれた上側連続シート体12aを繰り出す第1のリール122と、同様にロール状に巻かれた下側連続シート体12bを繰り出す第2のリール124と、を含む。ここで、第1のリール122は、繰り出し機構120の高さ方向で第2のリール124よりも所定の距離だけ上方に配置される。そして、第1のリール122は時計回りの方向R1に回転して上側連続シート体12aを連続的に繰り出し、第2のリール124も時計回りの方向R2に回転して下側連続シート体12bを連続的に繰り出す。
【0024】
図4を合わせて参照すると、吸引機構(吸引ユニット)130は、箱状の支持部材132と、この支持部材132の内部空間S2を脱気する排気装置134と、支持部材132の前方にあって吐出気流B1の水平進行方向に対して向けた開口15を有するチャンバ135と、を含み、チャンバ135によって吐出気流B1で飛ばされてくる長繊維交絡体14を周囲の雰囲気とともに吸引し、極細長繊維の場合、軽量であるため、経路P1のように上方に進んでから、又は、経路P2のように下方に進んでから上昇し、各種経路を辿って、チャンバ135内を通過する下側連続シート体12bの上に長繊維交絡体14を与えていく。
【0025】
支持部材132は、チャンバ135の底部135aを形成し、吐出気流B1と対向してこの気流の水平進行方向に沿って斜めに上るようにして傾斜しており、メッシュ状又は複数の吸引口132bを有する傾斜面板132aを含む。排気装置134は、例えば内部又はダクトを通じてファン(図示せず)を有し、支持部材132の内部空間S2から空気を吸い込んで排気口134aから排出するように構成されている。
【0026】
図5を合わせて参照すると、吸引口132bは、下側連続シート体12bを傾斜面板132aの上面に沿って上がるように通過させる通過領域132cに沿って設けられる。すなわち、吸引口132bは、下側連続シート体12bを間に介してチャンバ135内を吸引することになる。ここで、吸引口132bは、通過領域132cに沿って所定高さ位置H1よりも上側にあり、且つ、通過領域132cに沿って下側に向けて広がる非吸引領域、好ましくは、逆V字状に形成されていると、重力で落下する長繊維交絡体14を均一に堆積できて好ましい。かかる配置では、下側連続シート体12bにおける吸引口132b上の通過距離を中央部よりも両側端部近傍側でより長くでき、幅広に且つより均一に長繊維交絡体14を堆積させ得るのである。つまり、コンパクトな装置でありながら比較的幅広の積層シート体を得られるようになるのである。
【0027】
また、傾斜面板132aは、気流B1の水平進行方向に対して傾斜角度を変更可能に設けられていると、長繊維交絡体14の堆積状態を変化させ得る。つまり、傾斜角度が小さくなると、下側連続シート体12bの長手方向(通過領域132cでの進行方向)に長繊維交絡体14が流れ、逆に、傾斜角度が大きいと、下側連続シート体12bの上に長繊維交絡体14が固まって堆積するのである。
【0028】
なお、吸引口132bは、通過領域132cの幅方向端部に非吸引領域を形成するように設けられると、接合部12c(
図1参照)を容易に設け得て、袋状に積層シート体10を形成できやすくなるのである。
【0029】
図2に戻ると、重ね合わせ機構140は、連続的に繰り出される上側連続シート体12aを周面で受ける上側ロール142と、連続的に繰り出される下側連続シート体12bを周面で受ける下側ロール144と、の上下方向に配列される一対の上下対向ロールを含む。また、上側ロール142及び下側ロール144は、互いに対して独立して回転するとともに、互いの回転軸間距離を接近又は離間できる調整機能を有しており、これにより、2つのロール間に間隙を形成しつつ、連続的に搬送される連続積層シート体10bに与える挟持力を調整可能となる。
【0030】
図3に示すように、送給方向接合機構150は、上流の重ね合わせ機構140から搬送されてきた連続積層シート体10を挟み込んで送給する一対の上流側搬送ロール152と、一対の下流側搬送ロール154と、これらの間の搬送路に配置された搬送台156と、この搬送台156に対向して配置される接合装置158と、を含む。接合装置158は、連続積層シート体10の上側連続シート体12aと下側連続シート体12bとを重ね合わせて接合部12c(
図1参照)を形成することができるものであれば、どのような接合手法を用いてもよいが、
図3においては、先端に接触振動子158aを備えるとともに搬送台156の上面との間にワークを挟んで超音波振動により接合を行う超音波接合装置を例示している。また、接合装置158は、連続積層シート体10の幅方向の両端近傍に一対で配置される。これにより、送給方向接合機構150は、重ね合わされた連続積層シート体10bを送給しつつその幅方向の両端近傍を連続的に重ね合わせ接合を行う。
【0031】
幅方向接合切断機構(切断ユニット)160は、その上面に連続積層シート体10の搬送方向と直交する方向に配置された一対のスライドレールを有するレール部材162aを備えた本体部162と、このレール部材162aの一方の側面にスライドアーム163を介してスライド自在に取り付けられた接合装置164と、レール部材162aの他方の側面にスライドアーム165を介してスライド自在に取り付けられた切断装置166と、を含む。また、レール部材162aの下端の一部には、連続積層シート体10を挿通可能な搬送空間S3が形成されている。
【0032】
接合装置164は、送給方向接合機構150の場合と同様に任意の接合手法を用い得るが、先端に接触振動子164aを備えるとともに本体部162の上面との間にワークを挟んで超音波振動により接合を行う融着装置を例示できる。そして、接合装置164が重ね合わされた連続積層シート体10bの幅方向に連続的に重ね合わせ熱融着させることにより、連続積層シート体10を所定長さだけ搬送して2か所の接合部12dを形成することができる。
【0033】
一方、切断装置166は、下端部に切断刃166aが取り付けられており、切断刃166aの先端を連続積層シート体10の全厚に対して切り込んだ状態でスライドアーム165が移動することにより、シート体の任意の位置で幅方向に切断線を入れられるように構成されている。これにより、前段の接合装置164で幅方向に形成された接合部12dの近傍を切断して、所定長の積層シート体10(
図1参照)に分離する。
【0034】
滞留機構170は、搬送される連続積層シート体10の入側に固定された第1ガイドローラ172と、出側に固定された第2ガイドローラ174と、これらの中間に位置して上下動可能なダンサローラ176と、を含み、送給方向接合機構150及び幅方向接合切断機構160との間に配置される。ダンサローラ176は、矢印A1で示される方向に上下動するための昇降機構(図示せず)に取り付けられており、第1ガイドローラ及び第2ガイドローラとの相対距離を調整することにより、連続積層シート体10bを滞留させる。これにより、後流側の幅方向接合切断機構160で接合あるいは切断中に連続積層シート体10の搬送を停止させた状態で作業を行うことが可能となる。
【0035】
以上述べた積層シート体10の製造装置100によれば、複合ノズルブロック116と下側連続シート体12bを挟んで対向する位置に配置され、繊維供給機構110からの吐出気流B1で飛ばされた長繊維交絡体14をチャンバ135によって周囲の雰囲気とともに吸引して下側連続シート体12bの一方の面に積層させる吸引ユニット130を設けている。そして、吸引ユニット130の傾斜面板132aには、下側連続シート体12bを通過させる通過領域132cに沿って、下側連続シート体12bを間に介してチャンバ135内を吸引する吸引口132bを設けている。ここで、所定の非吸引領域を設けることで、下側連続シート体12bの一方の面に長繊維交絡体14を均一に堆積させ得て、コンパクトな装置でありながら比較的幅広の積層シート体を得られるのである。
【0036】
ここまで本発明による実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれらの例に限定されるものではない。また、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0037】
10 連続積層シート体
12a 上側連続シート体
12b 下側連続シート体
14 長繊維交絡体
15 開口
100 積層シート体の製造装置
110 繊維供給機構
114 押出機
116 複合ノズルブロック
117 ホッパー
120 繰り出し機構
130 吸引機構(吸引ユニット)
132 支持部材
134 排気装置
135 チャンバ
140 重ね合わせ機構
150 送給方向接合機構
160 幅方向接合切断機構(切断ユニット)
170 滞留機構