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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 41/335 20210101AFI20230331BHJP
   F16K 31/68 20060101ALI20230331BHJP
   F16K 7/12 20060101ALI20230331BHJP
   F16K 47/02 20060101ALN20230331BHJP
【FI】
F25B41/335 C
F16K31/68 S
F16K7/12 B
F16K47/02 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019098698
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020193651
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】山口 智也
(72)【発明者】
【氏名】諏佐 庸晴
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-57949(JP,A)
【文献】実開昭50-114729(JP,U)
【文献】特開2017-198387(JP,A)
【文献】特開2004-162806(JP,A)
【文献】特開2007-64333(JP,A)
【文献】特開平3-92681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 41/335
F16K 31/68
F16K 47/02
F16K 7/12
F16K 1/00- 1/54
F16K 15/00-15/20
F16K 31/12-31/165
F16K 31/36-31/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が進入する圧力検出室と、ガスが封入された圧力作動室とを内部に備えたケースと、
前記ケース内において、前記圧力検出室と前記圧力作動室とを仕切る可撓性のダイアフラムと、
前記ダイアフラムの変位に応じて開弁方向に移動する移動体と、
弁座を形成した弁室を備え、前記ケースに接合された弁本体と、
前記弁座に着座可能となるよう前記弁室内に配置され、前記移動体に当接する弁体と、を有し、
前記弁体は、金属製の円形板材から形成され、前記移動体から開弁方向の力を付与されたときに、前記弁室内に向かうように弾性変形することにより前記弁座から離間し、前記移動体から開弁方向の力を付与されないときは自身の弾性力により変形から復帰して、前記弁座に着座する、
ことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記弁体は、中央が突出するよう塑性加工されたダイアフラムである、
ことを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記弁体のダイアフラムは、板厚方向に貫通し、冷媒を通過させる流路を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記弁体のダイアフラムを、前記弁本体に取り付ける保持プレートを有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の弁装置。
【請求項5】
前記保持プレートは、板厚方向に貫通し、冷媒を通過させる流路を有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の弁装置。
【請求項6】
前記弁体は、前記移動体に当接する中央の当接部と、前記当接部から径方向外側に延在する変形部とを有し、前記弁体が前記弁室内に取り付けられて、前記移動体から前記当接部に開弁方向の力が付与されたとき、前記変形部が変形して弾性力を発生する、
ことを特徴とする請求項1に記載の弁装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機において冷媒の流量制御を行う弁装置として、機械式定圧弁や膨張弁などが知られている。例えば特許文献1には、パワーエレメントの駆動力が増大したときに作動棒を介して球体である弁体を開弁させ、またパワーエレメントの駆動力が減少したとき、コイルばねの付勢力で弁体を閉弁させる膨張弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-011886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらに特許文献1に記載の膨張弁においては、作動棒の振動に起因する異音を抑制するために、作動棒の振動を減衰させる防振ばねを設けることが行われている。
【0005】
しかし、防振ばねにより作動棒の振動を抑制しても、異音が発生する場合があることが確認された。本発明者らが解析を行ったところ、弁体の振動がその異音の原因であることが判明した。異音発生のメカニズムとしては、弁体としての球体を駆動する作動棒の端部が平坦であるため、球体の表面と作動棒の端部とが点接触し、ここを支点として、弁体近傍を冷媒が通過する際の外乱により弁体が揺動し、振動が生じるものと推認される。
【0006】
特に、特許文献1に記載されたような、弁室内に配置したコイルばねにより弁体を閉弁方向に付勢するタイプの膨張弁では、冷媒の流れによりコイルばねが振動を受け、弁体の振動を増大させていることも分かった。
【0007】
そこで本発明は、低コストでありながら異音を抑制できる、改良された弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による弁装置は、
冷媒が進入する圧力検出室と、ガスが封入された圧力作動室とを内部に備えたケースと、
前記ケース内において、前記圧力検出室と前記圧力作動室とを仕切る可撓性のダイアフラムと、
前記ダイアフラムの変位に応じて開弁方向に移動する移動体と、
弁座を形成した弁室を備え、前記ケースに接合された弁本体と、
前記弁座に着座可能となるよう前記弁室内に配置され、前記移動体に当接する弁体と、を有し、
前記弁体は、金属製の円形板材から形成され、前記移動体から開弁方向の力を付与されたときに、前記弁室内に向かうように弾性変形することにより前記弁座から離間し、前記移動体から開弁方向の力を付与されないときは自身の弾性力により変形から復帰して、前記弁座に着座する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、低コストでありながら異音を抑制できる、改良された弁装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態における膨張弁を、冷媒循環システムに適用した例を模式的に示す概略断面図である。
図2図2は、作動棒の下端及び弁体の近傍における断面を拡大して示す斜視図である。
図3図3は、弁体の斜視図である。
図4図4は、リングばねを示す斜視図である。
図5図5は、作動棒の下端及び弁体の近傍における拡大断面図である。
図6図6は、作動棒の下端及び弁体並びに保持プレートの近傍における断面を拡大して示す斜視図である。
図7図7は、弁体並びに保持プレートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明にかかる実施形態について説明する。
【0012】
(方向の定義)
本明細書において、弁体からダイアフラムに向かう側を「上方」と定義し、ダイアフラムから弁体に向かう側を「下方」と定義する。
【0013】
図1を参照して、本発明の実施形態における弁装置である膨張弁1の概要について説明する。図1は、本実施形態における膨張弁1を、冷媒循環システム100に適用した例を模式的に示す概略断面図である。本実施例では、膨張弁1は、コンプレッサ101と、コンデンサ102と、エバポレータ103とに流体接続されている。
【0014】
膨張弁1は、弁室VSを備える弁本体2と、弁体3と、作動棒5と、リングばね6と、パワーエレメント8とを具備する。膨張弁1の軸線をLとする。作動棒5が、移動体を構成する。
【0015】
弁本体2は、弁室VSに加え、第1流路21および第2流路22を備える。第1流路21は供給側流路であり、弁室VSには、供給側流路を介して冷媒(流体ともいう)が供給される。第2流路22は排出側流路であり、弁室VS内の流体は、作動棒5の下端が挿通された連通孔27及び排出側流路を介して膨張弁外に排出される。第1流路21と弁室VSとの間は、第1流路21より小径の接続路21aにより連通している。弁室VSの下端はプラグ43により封止されている。
【0016】
図2は、作動棒5の下端及び弁体3の近傍における断面を拡大して示す斜視図である。弁本体2において、弁室VSの上端における連通孔27の下端周囲が環状に窪むことにより環状凹部27aが形成される。この環状凹部27aを形成したことにより、連通孔27の下縁は下方に向かって環状に突出して、突出部27bを形成している。突出部27bの断面は下端側が半円形状を有し、その最下端が弁座20を構成する。
【0017】
作動棒5の下端は平面5aとなっており、この平面5aが弁体3の上面に当接する。
【0018】
図3は、弁体3の斜視図である。例えば板厚が1mm前後のSUS製の円形板材を、プレス成形によって中央が突出するように塑性加工することにより、ダイアフラムとしての弁体3を形成できる。弁体3は、上面がフラットな中央の円形部3aと、円形部3aに対して下方にシフトした周囲環状部3bと、円形部3aの外周と周囲環状部3bの内周とを接続するよう放射状に斜め下方に延在する複数(ここでは6本の)脚部3cとを連設してなる。隣接する脚部3cと、円形部3aと、周囲環状部3bとで囲まれた開口3dは、板厚方向に弁体3を貫通してなり、開口3dが冷媒の流路を形成する。円形部3aが当接部を構成し、脚部3cが変形部を構成する。
【0019】
弁体3において、周囲環状部3bを削除して、各脚部3cの径方向外方端を自由端とした形状としてもよい。かかる場合、脚部3cの径方向外方端が弁室VSにカシメにより取り付けられることとなる。また、弁体3は、回転対称の形状を有すると好ましい。
【0020】
弁体3を弁本体2に組み付ける工程について説明する。弁室VSの内径は、自由状態にある弁体3の外径よりもわずかに小さい。また、図2において、弁室VSの上端近傍の内周には、周溝2cが形成されている。
【0021】
弁室VSの下端を封止するプラグ43(後述)を組み付ける前の状態で、弁本体2の下方から弁体3を弁室VS内に押し込むように挿入すると、弁体3は弾性変形により縮径する。さらに、弁体3を上方に押し込んでゆくと、周囲環状部3bが周溝2cに嵌合して、変形より復帰するとともに、円形部3aが弁本体2の弁座20に当接する。かかる状態でも、弁体3を弁本体2に取り付けることができるが、さらに強固な固定を行うため本実施形態ではカシメを用いる。
【0022】
より具体的には、周溝2cの下方に隆起を形成しておき、弁体3を保持した状態で、弁室VS内に挿入した工具(不図示)を用いて、かかる隆起を加圧して塑性変形を生じさせ、カシメ部CKを形成する。これによりカシメ部CKが周囲環状部3bを押圧して、図2に示すように、弁体3を弁室VSの上部に固定することができる。取り付け状態では弁体3はカシメ部CKにより板厚方向に予圧を付与され、それにより脚部3cが弾性変形し、円形部3aを弁座20に対して押圧した状態が維持される。その後、作動棒5を上方から挿入して、弁体3の円形部3aに当接させ、またプラグ43により、弁室VSの下端を封止する。
【0023】
次に図1を参照して、パワーエレメント8について説明する。パワーエレメント8は、弁本体2の頂部に設けられた凹部2aに取り付けられている。凹部2aは連通路2bを介して、エバポレータ103からの冷媒が通過する、弁本体2内の戻り流路23と連通している。連通路2b内を作動棒5が通過している。凹部2aの内周に雌ねじが形成されている。
【0024】
パワーエレメント8は、栓81と、上蓋部材82と、ダイアフラム83と、ストッパ部材84と、受け部材86とを有する。
【0025】
上蓋部材82は、中央の円錐部82aと、円錐部82aの下端から外周に広がる環状のフランジ部82bとを有する。円錐部82aの頂部には開口82cが形成され、栓81により封止可能となっている。
【0026】
ダイアフラム83は、同心円の凹凸形状を複数個形成した薄い板材からなる。ストッパ部材84は、下端中央に嵌合孔84aを有する。
【0027】
受け部材86は、上蓋部材82のフランジ部82bの外径とほぼ同じ外径を持つフランジ部86aと、軸線Lと略直交する環状の支持面86bを持つ段差部86cと、中空円筒部86dとを有している。中空円筒部86dの外周には雄ねじが形成されている。
【0028】
パワーエレメント8の組み立て手順を説明する。図1に示すような位置関係となるように、上蓋部材82、ダイアフラム83、ストッパ部材84、及び受け部材86を配置する。
【0029】
更に、上蓋部材82のフランジ部82bと、ダイアフラム83と、受け部材86のフランジ部86aのそれぞれ外周部を重ね合わせた状態で、当該外周部を例えばTIG溶接やレーザ溶接、プラズマ溶接等により周溶接して一体化する。上蓋部材82と受け部材86とでケースを構成する。
【0030】
続いて、上蓋部材82に形成された開口82cから、上蓋部材82とダイアフラム83とで囲われる空間(圧力作動室PO)内に作動ガスを封入した後、開口82cを栓81で封止し、更にプロジェクション溶接等を用いて、栓81を上蓋部材82に固定する。
【0031】
このとき、圧力作動室POに封入された作動ガスにより、ダイアフラム83は受け部材86側に張り出す形で圧力を受けるため、ダイアフラム83と受け部材86とで囲われる空間(圧力検出室PD)に配置されたストッパ部材84の上面と当接して支持される。
【0032】
パワーエレメント8の組み付け時には、ストッパ部材84の嵌合孔84aに作動棒5の上端を嵌合させた状態で、受け部材86の中空円筒部86dの雄ねじを、弁本体2の凹部2aの雌ねじに螺合させて、パワーエレメント8を弁本体2に固定する。かかる状態で、パワーエレメント8の圧力検出室PDは戻り流路23と連通し、すなわち同じ内圧となる。受け部材86と弁本体2の上面とは、パッキンPKにより封止される。
【0033】
次に、リングばね6について説明する。リングばね6は、図1において弁本体2の円筒状凹部26内に設置されている。図4は、リングばね6を示す斜視図である。
【0034】
リングばね6は、板状の部材を図4に示されるように円筒形状に湾曲させ、かつ第1の弾性片61、第2の弾性片62及び第3の弾性片63を内側に折り曲げて構成される。
【0035】
第1の弾性片61、第2の弾性片62、第3の弾性片63は内側に切り起こすようにして折り曲げられるが、それぞれ先端近傍に設けられた第1の凸状当接部61a、第2の凸状当接部62a、第3の凸状当接部63aは、円周を3等分した位置になるように設計されている。そして、軸線L(図1)に直交する面内において、第1の凸状当接部61a、第2の凸状当接部62a、第3の凸状当接部63aの頂部を結ぶ内接円の直径寸法は、作動棒5の外径より小さな径に形成される。これにより、第1の凸状当接部61a、第2の凸状当接部62a、第3の凸状当接部63aから作動棒5の外周に対して所定の押圧力が付与されることとなる。
【0036】
(膨張弁の動作)
図1を参照して、膨張弁1の動作例について説明する。コンプレッサ101で加圧された冷媒は、コンデンサ102で液化され、膨張弁1に送られる。また、膨張弁1で断熱膨張された冷媒はエバポレータ103に送り出され、エバポレータ103で、エバポレータの周囲を流れる空気と熱交換される。エバポレータ103から戻る冷媒は、膨張弁1(より具体的には、戻り流路23)を通ってコンプレッサ101側へ戻される。
【0037】
膨張弁1には、コンデンサ102から高圧冷媒が供給される。より具体的には、コンデンサ102からの高圧冷媒は、第1流路21を介して弁室VSに供給される。
【0038】
図1において、パワーエレメント8の内部には、ダイアフラム83により仕切られた圧力作動室POと圧力検出室PDとが設けられている。このため、圧力作動室PO内の作動ガスが液化されると、作動棒5は上方向(閉弁方向という)に変位し、液化された作動ガスが気化されると、作動棒5は下方向(開弁方向という)に変位する。
【0039】
作動棒5が上方向に変位したときは、図5に実線で示すように、弁体3は脚部3cの弾性力で円形部3aが弁座20に着座した状態が維持される。弁室VSの冷媒は、開口3d(図3)を介して環状凹部27aまで進入するが、円形部3aが弁座20に着座しているため、連通孔27には進入することはできない。すなわち、弁体3が弁座20に着座しているとき、第1流路21と第2流路22とは非連通状態となる。
【0040】
これに対し、作動棒5が下方向に移動すると、弁室VS内部に向かうよう弁体3の円形部3aが下方に押圧され、図5に点線で示すように脚部3cが弾性変形する。それにより、円形部3aが弁座20から離間するため、矢印で示すように、環状凹部27aから連通孔27に向かって冷媒が流れることとなる。すなわち、弁体3が弁座20から離間したとき、第1流路21と第2流路22とは連通状態となる。
【0041】
これにより、弁室VSに供給された冷媒は、連通孔27及び第2流路22を通って、エバポレータ103へ送り出される。弁の切り換えは、パワーエレメント8に接続された作動棒5によって行われる。
【0042】
パワーエレメント8の圧力検出室PDは、戻り流路23と連通している。このため、戻り流路23を流れる冷媒の温度、圧力に応じて、圧力作動室PO内の作動ガスの相(気相、液相等)が変化し、作動棒5が駆動される。換言すれば、図1に記載の膨張弁1では、エバポレータ103から膨張弁1に戻る冷媒の温度、圧力に応じて、膨張弁1からエバポレータ103に向けて供給される冷媒の量が自動的に調整される。
【0043】
本実施形態によれば、開弁時に弁体3の周囲を冷媒が流れることになるが、作動棒5の下端である平面5aが円形部3aに面当たりしているため、弁体3の保持性が高まり、その振動を効果的に抑制することができる。さらに、ダイアフラムとしての弁体3は自身が弾性力を有しているため、弁室VS内に弁体3を付勢するコイルばねを設ける必要がない。これにより、コイルばねを設けた場合に冷媒の流れが当たることで発生する振動を排除できる。但し、作動棒5が最大ストロークで下方向に移動しても、弁体3は反転しない。さらに作動棒5のストロークに対し、弁座20と弁体3との隙間がリニアな関係となる範囲で使用されると好ましい。
【0044】
本実施形態では、弁室VSにコイルばねを収容しないが、大容量の弁室VSを確保することで、冷媒通過時にマフラー効果を発揮して騒音の低減を図ることができる。更に、弁室VS内にフィルタやストレーナ等を配置することで、騒音の低減に加え冷媒中に混入した異物を捕獲することができる。フィルタやストレーナ等は、プラグ43を取り外すことで交換又は洗浄することができる。
【0045】
(変形例)
次に、図6,7を参照して、本実施形態の変形例について説明する。図6は、作動棒5の下端及び弁体3A並びに保持プレート9の近傍における断面を拡大して示す斜視図である。図7は、弁体3A並びに保持プレート9の斜視図である。本変形例においては、弁体3Aは、保持プレート9を介して弁本体2Aの弁室VSに取り付けられる。それ以外の構成は、上述した実施の形態と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0046】
弁体3Aは、円形部3aの周囲に円錐状のテーパ部3eを連設した形状を有し、ダイアフラムを構成する。弁体3Aは、例えば板厚が1mm前後のSUS製の板材を、プレス成形によって中央が突出するように塑性加工して形成できる。なお、上述した実施の形態と同様に、テーパ部3eに開口を設けることもできる。テーパ部3eが変形部を構成する。
【0047】
保持プレート9は、例えばアルミニウム製であって、内側環状部9aと、その周囲に配置された外側環状部9bと、内側環状部9aと外側環状部9bとを連結する3本の梁部9cとを有する。隣接する梁部9cとの間は、上下面を連通する開口である円弧状スリット9dとなっている。円弧状スリット9dが冷媒の流路を構成する。
【0048】
各梁部9cの径方向外側の上面が、外側環状部9bの上面と同じレベルであり、また径方向内側の上面が、内側環状部9aの上面と同じレベルにある。一方、内側環状部9aの上面レベルは、外側環状部9bの上面レベルより低くなっているため、各梁部9cは、中間に段差面9eを設けて両側の上面間を接続している。段差面9eは、保持プレートの軸線Lを軸線とする円筒面の一部となっており、その円筒面の内径は、弁体3Aの外径に略一致する。
【0049】
外側環状部9bの外周には雄ねじ9fが形成されている。一方、図6において、弁室VSの上部内周には、雌ねじSCが形成されている。
【0050】
組み付け時には、弁体3Aの外周を、保持プレート9の段差面9eに嵌合させた状態で、弁室VSの雌ねじSCに雄ねじ9fを螺合させ、工具(不図示)から突き出た3本の爪を円弧状スリット9dに係合させる。この状態から、工具を軸線L回りに回転させることで、保持プレート9が弁室VSに対して旋回しながら上昇し、弁体3Aの円形部3aが弁座20に当接する。その際の反力により、テーパ部3eの外周が段差面9eに突き当たって変形し、これにより弾性力を発揮するようになる(図6)。弁室VSに対する保持プレート9のねじ込み量を調整することで、円形部3aと弁座20との間に作用する予圧を調整できる。
【0051】
作動棒5が上方向に変位したときは、弁体3Aのテーパ部3eの弾性力で円形部3aが弁座20に着座した状態が維持される。弁室VSの冷媒は、図6に矢印で示すように、保持プレート9の円弧状スリット9d内、及びテーパ部3eの外側を通って、環状凹部27aまで進入するが、円形部3aが弁座20に着座しているため、連通孔27には進入することはできない。
【0052】
これに対し、作動棒5が下方向に移動すると、弁体3Aの円形部3aが下方に押圧され、それにより円形部3aが弁座20から離間するため、環状凹部27aから連通孔27に向かって冷媒が流れることとなる(図5参照)。
【0053】
以上述べた変形例では、保持プレート9を弁室VSにねじ締結する例を示したが、例えばカシメや圧入を用いて固定することもできる。また、本発明は、膨張弁に限らず、定圧弁など種々の弁装置にも適用可能である。
【0054】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されない。本発明の範囲内において、上述の実施形態の任意の構成要素の変形が可能であり、また上述の実施形態における任意の構成要素の追加または省略が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 :膨張弁
2、2A :弁本体
3,3A :弁体
5 :作動棒
8 :パワーエレメント
9 :保持プレート
100 :冷媒循環システム
101 :コンプレッサ
102 :コンデンサ
103 :エバポレータ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7