(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】高圧蒸気滅菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/07 20060101AFI20230331BHJP
A61C 19/00 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
A61L2/07
A61C19/00 J
(21)【出願番号】P 2019103167
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳沼 哲也
(72)【発明者】
【氏名】國分 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】土岐 和也
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雅之
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-299125(JP,A)
【文献】特開平03-086168(JP,A)
【文献】特開平07-067945(JP,A)
【文献】特開2003-250883(JP,A)
【文献】特開2010-259482(JP,A)
【文献】米国特許第06470593(US,B1)
【文献】米国特許第04164538(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/07
A61C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被滅菌物が収容される滅菌槽と、
駆動気体を生成して前記滅菌槽に駆動気体を供給する駆動気体供給手段と、
前記滅菌槽内の気体を外部へ吸引排出して前記滅菌槽内を減圧するエジェクタと、
前記滅菌槽内に蒸気を発生させる蒸気発生手段と、
少なくとも、前記滅菌槽内の被滅菌物を蒸気滅菌する滅菌工程と、前記滅菌槽内の蒸気及び残留水を排出する排出工程と、を順次に実行する制御手段と、
前記駆動気体供給手段で生成された圧縮空気が送られ、分岐点で前記滅菌槽に圧縮空気を送る滅菌槽ラインと、前記エジェクタに圧縮空気を送るエジェクタラインと、に分岐された圧縮空気供給流路と、
前記滅菌槽内の空気を前記エジェクタに送る滅菌槽減圧流路と、
前記滅菌槽ラインに設けられた第1電磁弁と、
前記エジェクタラインに設けられた第2電磁弁と、
前記滅菌槽減圧流路に設けられた第3電磁弁と、
を備え、
前記制御手段は、前記エジェクタによる前記滅菌槽内
を減圧
する減圧ステップ、及び、前記駆動気体供給手段による前記滅菌槽内への駆動気体
を供給
する圧縮空気注入ステップを繰り返し、被滅菌物を乾燥させる乾燥工程を実行する
と共に、
更に、前記制御手段は、前記乾燥工程の前記減圧ステップで、前記第2電磁弁及び前記第3電磁弁を開弁し、前記圧縮空気注入ステップで、前記第1電磁弁及び前記第3電磁弁を開弁すること、
を特徴とする高圧蒸気滅菌装置。
【請求項2】
前記駆動気体供給手段は、圧縮空気を生成するコンプレッサであること、
を特徴とする請求項1に記載の高圧蒸気滅菌装置。
【請求項3】
前記エジェクタの下流側には、前記滅菌槽内の空気や水蒸気を水槽に送る排出流路が接続されていること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の高圧蒸気滅菌装置。
【請求項4】
前記滅菌槽には、当該滅菌槽内に設けられた貯水手段の残留水を水槽に排水するための排水流路が設けられ、
前記排水流路には、前記滅菌槽に対して水を排水可能にするための第4電磁弁が設けられていること、
を特徴とする請求項3に記載の高圧蒸気滅菌装置。
【請求項5】
前記滅菌槽には、当該滅菌槽内に設けられた貯水手段の残留水をエジェクタに排水するための蒸気排出流路が設けられ、
前記蒸気排出流路には、前記滅菌槽に対して水を排水可能にするための第5電磁弁が設けられていること、
を特徴とする請求項3に記載の高圧蒸気滅菌装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記排出工程において、さらに、前記エジェクタを駆動させ、前記滅菌槽内に設けられた貯水手段の残留水を排出すること、
を特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項5のいずれか1項に記載の高圧蒸気滅菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科診療用のインスツルメント等の器具(以下適宜「被滅菌物」という)を滅菌する高圧蒸気滅菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧蒸気滅菌装置は、例えば、特許文献1に記載されているように、滅菌槽(気密性容器)内で水蒸気を発生させて、水蒸気を被滅菌物内に侵入させたり、水蒸気の熱を被滅菌物に伝えたりすることで、滅菌している。
【0003】
このような水蒸気を使用して滅菌する滅菌装置では、滅菌後に被滅菌物に残留した水分が付着しているため、水分を蒸発させて、乾燥させることが不可欠になっている。一般に、被滅菌物の乾燥を行う際には、ラジエータや、ファン等の送風装置が必要となるため、装置全体が大型化するという問題点があった。
【0004】
その問題点を解消するために、特許文献1に記載された高圧蒸気滅菌器では、アスピレータ等の減圧手段によって、気密性容器内を減圧して残留水分を蒸発させて、乾燥させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された高圧蒸気滅菌器では、残留水分を蒸発させて、乾燥させるのに、時間がかかるという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、そのような問題を解消すべく発明されたものであって、乾燥性能を向上させて、乾燥時間を短縮させることができる高圧蒸気滅菌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る小型高圧蒸気滅菌装置は、被滅菌物が収容される滅菌槽と、駆動気体を生成して前記滅菌槽に駆動気体を供給する駆動気体供給手段と、前記滅菌槽内の気体を外部へ吸引排出して前記滅菌槽内を減圧するエジェクタと、前記滅菌槽内に蒸気を発生させる蒸気発生手段と、少なくとも、前記滅菌槽内の被滅菌物を蒸気滅菌する滅菌工程と、前記滅菌槽内の蒸気及び残留水を排出する排出工程と、を順次に実行する制御手段と、前記駆動気体供給手段で生成された圧縮空気が送られ、分岐点で前記滅菌槽に圧縮空気を送る滅菌槽ラインと、前記エジェクタに圧縮空気を送るエジェクタラインと、に分岐された圧縮空気供給流路と、前記滅菌槽内の空気を前記エジェクタに送る滅菌槽減圧流路と、前記滅菌槽ラインに設けられた第1電磁弁と、前記エジェクタラインに設けられた第2電磁弁と、前記滅菌槽減圧流路に設けられた第3電磁弁と、を備え、前記制御手段は、前記エジェクタによる前記滅菌槽内を減圧する減圧ステップ、及び、前記駆動気体供給手段による前記滅菌槽内への駆動気体を供給する圧縮空気注入ステップを繰り返し、被滅菌物を乾燥させる乾燥工程を実行すると共に、更に、前記制御手段は、前記乾燥工程の前記減圧ステップで、前記第2電磁弁及び前記第3電磁弁を開弁し、前記圧縮空気注入ステップで、前記第1電磁弁及び前記第3電磁弁を開弁することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乾燥性能を向上させて、乾燥時間を短縮させることができる高圧蒸気滅菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る高圧蒸気滅菌装置の一例を示す図であり、エジェクタによって滅菌槽内を減圧しているときの状態を示す概略斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る高圧蒸気滅菌装置の一例を示す図であり、滅菌槽内に空気を送風して滅菌槽内の残留水分を強制排出しているときの状態を示す概略斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る高圧蒸気滅菌装置の一例を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る高圧蒸気滅菌装置の作業工程を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態に係る高圧蒸気滅菌装置の変形例を示すブロック図である。
【
図7】変形例における滅菌槽内の圧力の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、
図1~
図5を参照して本発明の実施形態に係る高圧蒸気滅菌装置Aの一例を説明する。なお、
図1及び
図2において、実線の矢印は正圧を示し、破線の矢印は負圧を示す。
【0012】
<高圧蒸気滅菌装置>
図1に示すように、高圧蒸気滅菌装置Aは、歯科診療用のインスツルメント等の器具(被滅菌物)を水蒸気の熱で滅菌する小型高圧蒸気滅菌装置である。高圧蒸気滅菌装置Aは、滅菌槽1と、駆動気体供給手段2と、エジェクタ3(アスピレータ)と、蒸気発生手段4と、制御手段6(
図3参照)と、水槽7と、レギュレータ8と、エアフィルタ9と、第1電磁弁V1と、第2電磁弁V2と、第3電磁弁V3と、第4電磁弁V4と、配管13,14,21,31,81,91,92,93と、を備えている(
図3参照)。
【0013】
高圧蒸気滅菌装置Aにおいて、滅菌槽1と、エジェクタ3と、蒸気発生手段4と、制御手段6(
図3参照)と、水槽7と、レギュレータ8と、エアフィルタ9と、第1~第4電磁弁V1~V4と、配管13,14,31,81,91~93と、は、箱状の筐体A10内に設けられている。
筐体A10には、滅菌槽1の蓋部材11の外側に、高圧蒸気滅菌装置Aを開閉する開閉体(図示省略)が回動自在に設けられている。
【0014】
<滅菌槽>
滅菌槽1は、被滅菌物が収容される気密性容器(チャンバ)である。滅菌槽1には、滅菌槽1内に形成された空気室の気密を保持して高圧にすることが可能な蓋部材11が開閉自在に設けられている。滅菌槽1内には、被滅菌物を載置するトレイ12と、トレイ12の下方に配置された蒸気発生手段4と、滅菌槽1の内底部に設けられた貯水手段10(
図3参照)と、が設けられている。滅菌槽1は、例えば、有底円筒状の筒体から成る。滅菌槽1の側面には、蓋部材11が開閉自在に設けられている。
【0015】
図3に示すように、滅菌槽1の外側下部には、この滅菌槽1内に設けられた貯水手段10の残留水を水槽7に排水するための配管13(排水流路)が設けられている。配管13は、フィルタ(図示省略)と、第4電磁弁V4と、を介して水槽7に接続されている。
滅菌槽1の外側上部には、滅菌槽1内部の水蒸気をエジェクタ3に供給する配管14(滅菌槽減圧流路)が第3電磁弁V3を介してエジェクタ3に連結されている。
【0016】
<トレイ>
図1に示すように、トレイ12は、滅菌する被滅菌物を載置するための板部材である。トレイ12には、水蒸気を通過させるための多数の貫通孔12aが穿設されている。トレイ12は、貫通孔12aを有し、被滅菌物を載置することが可能なものであればよく、その形状等は特に限定されない。トレイ12は、例えば、スノコ状のものであってもよい。
【0017】
<蒸気発生手段>
蒸気発生手段4は、滅菌槽1内に水蒸気を発生させる装置である。蒸気発生手段4は、トレイ12の下面の下方に配設された貯水手段10の貯留水(残留水)を加熱して、水蒸気を発生させるヒータから成る。蒸気発生手段4は、例えば、貯水手段10に貯留された水の中に浸した状態に設置されている。蒸気発生手段4は、例えば、空間を介して対向配置されたトレイ12の下面全体に対して、一端から他端に亘って蛇行するように曲げて設置されたパイプ状のヒータから成る。蒸気発生手段4は、制御手段6に電気的に接続されている。
【0018】
<貯水手段>
貯水手段10は、滅菌槽1内の残留水や、貯水手段10に供給された水を貯留して、蒸気発生手段4を収容することが可能な容器の機能を有するものであればよく、形状、構造等は特に限定されない。貯水手段10は、例えば、滅菌槽1の内底面によって形成された容器、あるいは、滅菌槽1の内底部に水平に配置された容器から成る。以下、貯水手段10(
図3参照)の一例として、滅菌槽1の内底面によって形成された貯水手段10を例に挙げて説明する。
【0019】
<駆動気体供給手段>
図1に示すように、駆動気体供給手段2は、駆動気体である圧縮空気(外部送風エネルギー)を生成して滅菌槽1に駆動気体を供給する気体供給装置である。駆動気体供給手段2は、例えば、コンプレッサから成る。駆動気体供給手段2は、筐体A10の外部に設置されている。駆動気体供給手段2は、配管21によってレギュレータ8に接続されている。駆動気体供給手段2は、一次電源から直接電気的に接続されている。
【0020】
<レギュレータ>
レギュレータ8は、駆動気体供給手段2によって生成された圧縮空気の空気圧を調整する圧力調整器である。レギュレータ8は、配管81によってエアフィルタ9に接続されている。
【0021】
<エアフィルタ>
エアフィルタ9は、レギュレータ8で調圧された圧縮空気中の塵埃等を取り除いて清浄な空気にろ過するための装置である。エアフィルタ9は、配管91、配管92(滅菌槽ライン)によって第1電磁弁V1を介して滅菌槽1に接続されている。また、エアフィルタ9は、配管91、配管93(エジェクタライン)によって第2電磁弁V2を介してエジェクタ3に接続されている。
【0022】
<圧縮空気供給流路>
圧縮空気供給流路90は、駆動気体供給手段2で生成された圧縮空気を滅菌槽1、または、エジェクタ3に送るための流路である。圧縮空気供給流路90は、配管21,81,91~93から成る。圧縮空気供給流路90は、この圧縮空気供給流路90の配管91の分岐点90aで、滅菌槽1に圧縮空気を送る配管92(滅菌槽ライン)と、エジェクタ3に圧縮空気を送る配管93(エジェクタライン)と、に分岐されている。
【0023】
<第1~第4電磁弁>
図1または
図2に示すように、第1~第4電磁弁V1~V4は、制御手段6からの開弁信号、閉弁信号を受けて開弁、閉弁して圧縮空気あるいは残留水の流れを遮断したり、供給状態にしたりするための制御弁である。第1~第4電磁弁V1~V4は、例えば、平常時に閉弁状態にある常閉電磁弁から成る。第1~第4電磁弁V1~V4は、制御手段6(
図3参照)に電気的に接続されている。
【0024】
図2に示すように、第1電磁弁V1は、配管92(滅菌槽ライン)の流路を開閉して、駆動気体供給手段2から滅菌槽1に供給される圧縮空気の流れを遮断したり、供給状態にしたりする機能を備えている。第1電磁弁V1は、配管92に設けられている。第1電磁弁V1は、後記する乾燥工程(ステップS40)で送風を行うときに、制御手段6からの駆動信号を受けて開弁し、駆動気体供給手段2で生成された圧縮空気を滅菌槽1内に供給させる。
配管92(滅菌槽ライン)は、滅菌槽1に圧縮空気を送って、滅菌槽1の内圧を上昇させるための圧縮空気供給管である。
【0025】
図1に示すように、第2電磁弁V2は、配管93(エジェクタライン)の流路を開閉して、駆動気体供給手段2からエジェクタ3に供給される圧縮空気の流れを遮断したり、供給状態にしたりする機能を備えている。第2電磁弁V2は、配管93に設けられている。第2電磁弁V2は、後記する乾燥工程(ステップS40)で真空引きを行うときに、制御手段6からの駆動信号を受けて開弁し、駆動気体供給手段2で生成された圧縮空気をエジェクタ3に供給させる。
配管93(エジェクタライン)は、エジェクタ3に圧縮空気を送って、エジェクタ3で滅菌槽1内の空気や水蒸気を吸引して水槽7に排出させるポンプの機能を発揮させるための圧縮空気供給管である。
【0026】
図1及び
図2に示すように、第3電磁弁V3は、配管14(滅菌槽減圧流路)の流路を開閉して、駆動気体供給手段2から滅菌槽1に供給される圧縮空気の流れを遮断したり、供給状態にしたりする機能を備えている。第3電磁弁V3は、配管14に設けられている。第3電磁弁V3は、後記する乾燥工程(ステップS40)で送風及び真空引きを行うときに、制御手段6からの駆動信号を受けて開弁する。そして、
図2に示すように、第3電磁弁V3は、駆動気体供給手段2から滅菌槽1に取り込んだ圧縮空気及び残留水分をエジェクタ3に送風(強制排出)させる。また、第3電磁弁V3は、
図1に示すように、エジェクタ3で滅菌槽1内を減圧することで、沸点を下げて蒸発させた水蒸気をエジェクタ3側に吸引させて、滅菌槽1内の残留水分を削除する真空引きを行う。
配管14(滅菌槽減圧流路)は、滅菌槽1内の空気をエジェクタ3に送るための流路である。
【0027】
図3に示すように、第4電磁弁V4は、配管13(排水流路)の流路を開閉して、滅菌槽1(貯水手段10)と水槽7との間を流れる水の流れを遮断したり、排水可能な状態にしたりする機能を備えている。第4電磁弁V4は、配管13に設けられている。
配管13は、貯水手段10の残留水を水槽7に排水するための排水流路である。
【0028】
<エジェクタ>
図1に示すように、エジェクタ3は、駆動気体供給手段2で生成した圧縮空気をこのエジェクタ3に噴射することで、滅菌槽1内の気体や水分を吸引して水槽7に送り、滅菌槽1内を減圧するための減圧装置である。エジェクタ3の下流側には、前記滅菌槽内の空気や水蒸気を水槽7に送る配管31(排出流路)が接続されている(
図3参照)。
【0029】
<制御手段>
図3または
図5に示すように、制御手段6は、各手段(蒸気発生手段4、及び、第1~第4電磁弁V1~V4)を制御して、主に、滅菌槽1内に蒸気を注入するコンディショニング工程(ステップS10)と、滅菌槽1内の被滅菌物を蒸気滅菌する滅菌工程(ステップS20)と、滅菌槽1内の蒸気及び残留水を排出する排出工程(ステップS30)と、被滅菌物を乾燥させる乾燥工程(ステップS40)と、を順次に実行する制御装置である。制御手段6は、例えば、筐体A10に設けられている。制御手段6は、不図示の表示装置及び電源に電気的に接続されている。
【0030】
制御手段6は、乾燥工程(ステップS40)において、第1~第4電磁弁V1~V4を適宜開弁させてエジェクタ3による滅菌槽1内の減圧、及び、駆動気体供給手段2による滅菌槽1内への駆動気体の供給を繰り返し、被滅菌物を乾燥させる。
【0031】
<水槽>
水槽7は、滅菌槽1から配管14、第3電磁弁V3、エジェクタ3、配管31を介して水槽7に供給された残留水、または、滅菌槽1から配管13、第4電磁弁V4を介して水槽7に供給された残留水を貯留する排水タンクである。水槽7は、上部に開口を有し、上部が開放されている。水槽7には、貯留した残留水を高圧蒸気滅菌装置A外に排水するホース(図示省略)が設けられている。
【0032】
[作用]
次に、
図5を主に、
図1~
図5を参照して高圧蒸気滅菌装置Aの作用を説明する。
【0033】
<準備工程>
図1に示す高圧蒸気滅菌装置Aを用いて被滅菌物を滅菌する場合は、まず、準備工程を行う。準備工程は、滅菌槽1内の貯水手段10に、容器に入れた蒸留水等の水を供給する水供給工程と、被滅菌物を滅菌槽1に収容する工程(ステップS1)と、筐体A10の上面に配置した滅菌開始ボタン(図示省略)を押下操作して滅菌を開始する工程(ステップS2)と、を有して成る。
【0034】
貯水手段10に水を供給後、使用済の被滅菌物をトレイ12の上面に載置し、蓋部材11を閉じて滅菌槽1内の気密を保持させる。つまり、被滅菌物を滅菌槽1に収容する(ステップS1)。続いて、滅菌開始ボタン(図示省略)を押下操作して高圧蒸気滅菌装置Aを駆動させて滅菌を開始する(ステップS2)。
【0035】
<コンディショニング工程>
次に、
図5に示すように、滅菌槽1内を設定した温度及び圧力に到達させるためのコンディショニング工程S10(プレバキューム工程)を行う。そのコンディショニング工程(ステップS10)は、後記するステップS11~ステップS14を有して成る。
【0036】
コンディショニング工程(ステップS10)を開始するときは、
図4に示すように、滅菌槽1内の圧力は大気圧P
0の状態になっている。そして、
図1に示すように、制御手段6(
図3参照)は、第2電磁弁V2及び第3電磁弁V3を開弁させる。すると、駆動気体供給手段2から配管21、レギュレータ8、配管81、エアフィルタ9、配管91,93を介してエジェクタ3に圧縮空気が供給される。このとき、エジェクタ3には、負圧が発生する。そのエジェクタ3の負圧によって、滅菌槽1内の空気が、配管14及び第3電磁弁V3を介してエジェクタ3に吸引されて、滅菌槽1内が減圧される(ステップS11)。
これにより、滅菌槽1内の空気を除去することができる。
【0037】
次に、制御手段6(
図3参照)は、蒸気発生手段4をONさせて、貯水手段10にある水を加熱させて水蒸気を発生させる(ステップS12)。そして、前記ステップS11と同様に滅菌槽1内を減圧する(ステップS13)。
【0038】
続いて、
図4に示すコンディショニング工程のように、ステップS13の減圧と、ステップS12の蒸気発生を予め設定した所定の回数(例えば、2~3回程度)繰り返すことで、滅菌槽1内の空気を水蒸気に置換しつつ、設定した温度、圧力に到達させる処理を行う(ステップS14のNo)。ステップS12の蒸気発生を行うと、蒸気発生手段4によって水蒸気が生成される。ステップS13の減圧を行うと、エジェクタ3によって、滅菌槽1内の水蒸気等が吸引されて水槽7に排出される。
そして、ステップS12の蒸気発生と、ステップS13の減圧とが所定の回数に達した場合は、次の滅菌工程(ステップS20)に進む(ステップS14のYes)。
【0039】
<滅菌工程>
次に、滅菌槽1内の被滅菌物を滅菌する滅菌工程(ステップS20)を行う。その滅菌工程(ステップS20)は、蒸気発生を行うステップS21を有して成る。
滅菌工程(ステップS20)では、第1~第4電磁弁V1~V4を全て閉弁状態にして、前記ステップS13でエジェクタ3によって負圧となっている滅菌槽1内の貯水手段10の水を蒸気発生手段4で加熱して水蒸気を発生させる(ステップS21)。そのため、滅菌槽1内は、水蒸気で充満されて、滅菌槽1内を高温、高圧状態を保った状態で滅菌が行われる(
図4参照)。
【0040】
<排出工程>
続いて、滅菌槽1内の水蒸気の排気と、貯水手段10に溜まった残留水を排水する排出工程(ステップS30)を行う。排出工程(ステップS30)は、排気及び排水を行うステップS31を有して成る。
排出工程(ステップS30)で制御手段6は、
図3に示す第4電磁弁V4を開弁させて、貯水手段10に溜まった残留水を水槽7に排水すると共に、滅菌槽1内の水蒸気を配管13(排水流路)から水槽7を介して大気中に排気させる(ステップS31)。このため、滅菌槽1内は、大気圧まで低下する(
図4参照)。
【0041】
<乾燥工程>
次に、滅菌槽1内の被滅菌物を乾燥させる乾燥工程(ステップS40)を行う。その乾燥工程(ステップS40)は、後記するステップS41~ステップS43を有して成る。
まず、制御手段6(
図3参照)は、
図1に示すように、第2電磁弁V2及び第3電磁弁V3を開弁させる。すると、駆動気体供給手段2から配管21、レギュレータ8、配管81、エアフィルタ9、配管91,93を介してエジェクタ3に圧縮空気が供給される。このとき、エジェクタ3には、負圧が発生する。そのエジェクタ3の負圧によって、滅菌槽1内の水蒸気、空気等が、配管14及び第3電磁弁V3を介してエジェクタ3に吸引されて、滅菌槽1内が減圧される(ステップS41)。
【0042】
続いて、
図2に示すように、制御手段6(
図3参照)は、第1及び第3電磁弁V1,V3を開弁させて、駆動気体供給手段2で生成した圧縮空気を滅菌槽1内に注入することができる(ステップS42)。その圧縮空気の注入によって、滅菌槽1内を高圧状態にする(
図4参照)。駆動気体供給手段2は、コンプレッサから成るので、乾燥された圧縮空気が滅菌槽1内に供給される。このため、滅菌槽1は、圧縮空気が送り込まれることで、対流が発生するため、乾燥性能を向上させることができる。
【0043】
そして、ステップS41の減圧と、ステップS42の圧縮空気注入とが所定の時間繰り返させて(
図4参照)、所定時間に達した場合は(ステップS43のYes)、次の滅菌槽1を大気圧に復帰させる工程(ステップS51)に進む。所定時間に達しない場合は、ステップS41の滅菌槽1内を減圧させる工程に戻る(ステップS43のNo)。
【0044】
このように、乾燥工程では、エジェクタ3の作用によって滅菌槽1内が減圧されることにより、滅菌槽1内の残留水及び水蒸気の一部を吸引して水槽7に排出し、被滅菌物に残留した水分の蒸発及び乾燥を促進させる。さらに、乾燥工程では、それを何度か繰り返すことで、乾燥性能を向上させることができる。
【0045】
<滅菌終了工程>
滅菌終了工程は、滅菌槽1内を大気圧P0に復帰させる工程(ステップS51)と、被滅菌物を滅菌槽1から取り出す工程(ステップS52)と、有して成る。
【0046】
つまり、第3電磁弁V3を開弁させて滅菌槽1内を大気圧P0の状態にする(ステップS51)。そして、滅菌槽1内から滅菌処理した被滅菌物を取り出すことで、終了する(ステップS52)。
【0047】
このように、本発明の実施形態に係る高圧蒸気滅菌装置Aは、
図1、
図2、
図3あるいは
図5に示すように、被滅菌物が収容される滅菌槽1と、駆動気体を生成して滅菌槽1に駆動気体を供給する駆動気体供給手段2と、滅菌槽1内の気体を外部へ吸引排出して滅菌槽1内を減圧するエジェクタ3(アスピレータ)と、滅菌槽1内に蒸気を発生させる蒸気発生手段4と、少なくとも、滅菌槽1内の被滅菌物を蒸気滅菌する滅菌工程(ステップS20)と、滅菌槽1内の蒸気及び残留水を排出する排出工程(ステップS30)と、を順次に実行する制御手段6と、を備え、制御手段6は、エジェクタ3による滅菌槽1内の減圧、及び、駆動気体供給手段2による滅菌槽1内への駆動気体の供給を繰り返し、被滅菌物を乾燥させる乾燥工程(ステップS40)を実行する。
【0048】
かかる構成によれば、高圧蒸気滅菌装置Aは、エジェクタ3を備えることで、吸引装置を掌サイズの大きさにすることができるため、真空ポンプを使用している場合と比較して、装置全体を小型化することができる。また、高圧蒸気滅菌装置Aは、駆動気体供給手段2によって生成された駆動気体を用いるエジェクタ3を使用していることから、装置全体の消費電力を削減することができる。また、乾燥工程(ステップS40)は、エジェクタ3による滅菌槽1内の減圧と、駆動気体供給手段2による滅菌槽1内への駆動気体の供給と、を繰り返して行って、被滅菌物を乾燥させることで、乾燥性能を向上させて、乾燥工程の時間及び滅菌時間を短縮させることができる。また、高圧蒸気滅菌装置Aは、滅菌槽1内を減圧させることで、100℃よりも低温で水蒸気を発生させて、効率よく滅菌を行うことができる。
【0049】
また、駆動気体供給手段2は、圧縮空気を生成するコンプレッサである。
かかる構成によれば、駆動気体供給手段2は、コンプレッサから成ることで、空気を圧縮して圧縮空気を生成する際に発生する熱を利用して効率よく、滅菌槽1内を乾燥させることができる。
【0050】
また、高圧蒸気滅菌装置Aは、
図1~
図3に示すように、駆動気体供給手段2で生成された圧縮空気が送られ、分岐点90aで滅菌槽1に圧縮空気を送る滅菌槽ライン(配管92)と、エジェクタ3に圧縮空気を送るエジェクタライン(配管93)と、に分岐された圧縮空気供給流路90と、滅菌槽1内の空気をエジェクタ3に送る滅菌槽減圧流路(配管14)と、滅菌槽ライン(配管92)に設けられ、乾燥工程(ステップS40)を行うときに開弁する第1電磁弁V1と、エジェクタライン(配管93)に設けられ、乾燥工程(ステップS40)を行うときに開弁する第2電磁弁V2と、滅菌槽減圧流路(配管14)に設けられ、乾燥工程(ステップS40)を行うときに開弁する第3電磁弁V3と、を備え、エジェクタ3の下流側には、滅菌槽1内の空気や水蒸気を水槽7に送る排出流路(配管31)が接続されている。
【0051】
かかる構成によれば、高圧蒸気滅菌装置Aは、第1~第3電磁弁V1~V3を備えていることで、駆動気体供給手段2で生成された圧縮空気をエジェクタ3と滅菌槽1とに供給して、滅菌槽1内の乾燥、及び、水蒸気の排出等を効率よく行うことができる。
【0052】
また、滅菌槽1には、この滅菌槽1内に設けられた貯水手段10の残留水を水槽7に排水するための排水流路(配管13)が設けられ、排水流路には、滅菌槽1に対して水を排水可能にするための第4電磁弁V4が設けられている。
【0053】
かかる構成によれば、貯水手段10の残留水は、滅菌槽1内が高圧状態になっている場合、制御手段6により第4電磁弁V4が開弁されると、貯水手段10に溜まっている残留水を、配管13から水槽7に排水することができる。
【0054】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0055】
図6は、本発明の実施形態に係る高圧蒸気滅菌装置の変形例を示すブロック図である。
図7は、変形例における滅菌槽内の圧力の変化を示すグラフである。なお、既に説明した構成は同じ符号を付してその説明を省略する。
【0056】
例えば、前記実施形態の高圧蒸気滅菌装置Aの制御手段6は、
図6に示す高圧蒸気滅菌装置Bのように、排出工程(ステップS30)において、さらに、エジェクタ3を駆動させ、滅菌槽1内に設けられた貯水手段10の残留水を排出するようにしてもよい。
【0057】
また、滅菌槽1には、当該滅菌槽1内に設けられた貯水手段10の残留水をエジェクタ3に排水するための蒸気排出流路(配管15)が設けられ、蒸気排出流路には、滅菌槽1に対して水を排水可能にするための第5電磁弁V5を設けてもよい。
【0058】
この場合、
図3に示す前記実施形態の第4電磁弁V4及び配管13を削除する。そして、
図6に示すように、第5電磁弁V5を備えた配管15の一端を滅菌槽1に接続し、他端を第3電磁弁V3とエジェクタ3との間の配管14に接続する。
【0059】
かかる構成によれば、排出工程(ステップS30)では、エジェクタ3を使用していることで、エジェクタ3に供給される圧縮空気を利用してベンチュリ効果によって減圧状態を形成し、貯水手段10の残留水を吸引して送り流すことができる。
【0060】
また、かかる構成によれば、高圧蒸気滅菌装置Bの滅菌槽1は、第5電磁弁V5が設けられた蒸気排出流路(配管15)を有することで、水蒸気や水分を効率よく排水することができる。
【0061】
また、本発明の変形例の乾燥工程は、本発明の実施形態の乾燥工程(
図4参照)と比較して、滅菌槽1内の減圧と、滅菌槽1内の圧縮空気注入とを繰り返して行う回数を変更することができる(
図7参照)。
【0062】
[その他の変形例]
前記実施形態では、滅菌槽1内の貯水手段10に、容器に入れた蒸留水等の水を手動的に供給する場合を説明したが、ポンプやエジェクタを使用して自動的に水を供給してもよい。
その場合は、筐体A10内に、蒸留水等の水を入れた容器と、容器内の水を貯水手段10に供給するための水供給用配管と、その容器内の水を水供給用配管を介して送るためのポンプまたはエジェクタと、を設ける。エジェクタで水を貯水手段10に供給する場合は、前記した駆動気体供給手段2で生成した圧縮空気を利用し、ベンチュリ効果によって容器の水を吸引して、所望量の水を送り流せばよい。
【符号の説明】
【0063】
1 滅菌槽(チャンバ)
2 駆動気体供給手段
3 エジェクタ(アスピレータ)
4 蒸気発生手段(ヒータ)
6 制御手段
7 水槽
10 貯水手段
13 配管(排水流路)
14 配管(滅菌槽減圧流路)
15 蒸気排出流路
31 配管(排出流路)
90 圧縮空気供給流路
90a 分岐点
92 配管(滅菌槽ライン)
93 配管(エジェクタライン)
A,B 高圧蒸気滅菌装置
V1 第1電磁弁
V2 第2電磁弁
V3 第3電磁弁
V4 第4電磁弁
V5 第5電磁弁