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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】耐刃防護衣
(51)【国際特許分類】
   F41H 1/02 20060101AFI20230331BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20230331BHJP
   A41D 13/015 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
F41H1/02
A41D13/00 102
A41D13/015
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020102859
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021196109
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】593219883
【氏名又は名称】日本エム・アイ・シー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 和行
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-144480(JP,A)
【文献】特開2000-186899(JP,A)
【文献】特開2019-137930(JP,A)
【文献】特開2015-172480(JP,A)
【文献】特開平11-230696(JP,A)
【文献】特開2008-163533(JP,A)
【文献】特開2005-089963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41H 1/00- 1/08
A41D 13/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料によって箔状に形成されて厚み方向に積層された複数のシートと、
前記複数の前記シートを隣り合う前記シートどうしが互いに摺動自在となるように保持する保持体とによって構成された防護体と、
布状体によって形成されて前記防護体を支持し、使用者の上半身に着用される基体とを備え、
前記防護体は、使用者の胸と腹部とを覆う本体部と、前記本体部から使用者の脇腹を覆う部位に延びる延長部とを備え、
前記防護体の前記複数のシートは、前記布状体の厚み方向と一致するように積層されているとともに、前記本体部と前記延長部との全域にわたって途切れることなく延びるように形成され、
前記基体は、使用者の肩、胸、腹部および脇腹の前部を前側から覆う前半部と、使用者の肩、背中および脇腹の後部を後側から覆う後半部とによって構成されているとともに、前記前半部と前記後半部とを肩部分と脇腹部分とで互いに接続する面ファスナーと、前記脇腹部分を緊縛するベルトとを備え
前記ベルトは、ソケット形バックルと、このソケット形バックルに着脱可能に係合するプラグ形バックルとを備えていることを特徴とする耐刃防護衣。
【請求項2】
請求項1記載の耐刃防護衣において、
前記シートは、厚さ0.6mm以下のチタン製の薄板または箔によって形成されていることを特徴とする耐刃防護衣。
【請求項3】
請求項1記載の耐刃防護衣において、
前記シートは、厚さ0.6mm以下のステンレス鋼と、アルミニウムと、鉄と、マグネシウムとのうちいずれか一つの金属材料からなる薄板または箔を含むことを特徴とする耐刃防護衣。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一つに記載の耐刃防護衣において、
前記保持体の少なくとも前記複数の前記シートの後面を覆う部分は、防弾性能を有する繊維によって形成されていることを特徴とする耐刃防護衣。
【請求項5】
請求項1~請求項3のいずれか一つに記載の耐刃防護衣において、
さらに、防弾性能を有する繊維によって形成されて前記シートに重ねられた防弾膜を有していることを特徴とする耐刃防護衣。
【請求項6】
請求項1記載の耐刃防護衣において、
前記基体は、前記防護体を収納可能な袋状に形成された袋部と、前記袋部に対して前記防護体を出し入れ可能となるように形成された出し入れ口とを有していることを特徴とする耐刃防護衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の箔状の金属製のシートが積層された防護体およびこの防護体を有する防護衣に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防護衣としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に開示された防護衣は、使用者の胸から腹部を覆う防護部を有している。防護部は、複数の金属板を上下方向と左右方向とに並べて構成された第1の防護層と、この第1の防護層の外側(前側)に重ねられた第2の防護層とを有している。第2の防護層は、第1の防護層の複数の金属板どうしの間の隙間を外側から覆う十字状の複数の金属板を有している。第1の防護層の複数の金属板と、第2の防護層の複数の金属板は、それぞれ表側の布と裏側の布とによって挟まれ、これらの布どうしを縫い合わせることによって一つの防護体となるように連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-186899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている防護衣は、金属板どうしの間に隙間が生じることを防ぐために防護部において複数の金属板が2層で並んでいることに起因して3つの大きな問題があった。
第1の問題は、防護部の可撓性が低いため、この防護衣を着用した使用者の運動性が低くなるという問題である。
第2の問題は、防護部を製造するにあたって全ての金属板に対して縫製を行わなければならないから、製造作業が煩雑になるという問題である。
第3の問題は、防護部の形状が複数の金属板を並べた形状に限定されるために、形状の自由度が小さいという問題である。
【0005】
本発明の目的は、隙間が形成されることなくかつ可撓性が高くなるように形成されているとともに、簡単にしかも自由な形状に製造できる防護体およびこの防護体を有する防護衣を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明に係る防護体は、金属材料によって箔状に形成されて厚み方向に積層された複数のシートと、前記複数の前記シートを隣り合う前記シートどうしが互いに摺動自在となるように保持する保持体とによって構成されているものである。
【0007】
本発明は、前記防護体において、前記シートは、厚さ0.6mm以下のチタン製の薄板または箔によって形成されていてもよい。
【0008】
本発明は、前記防護体において、前記シートは、厚さ0.6mm以下のステンレス鋼と、アルミニウムと、鉄と、マグネシウムとのうちいずれか一つの金属材料からなる薄板または箔を含んでいてもよい。
【0009】
本発明は、前記防護体において、前記保持体の少なくとも前記複数の前記シートの後面を覆う部分は、防弾性能を有する繊維によって形成されていてもよい。
【0010】
本発明は、前記防護体において、さらに、防弾性能を有する繊維によって形成されて前記シートに重ねられた防弾膜を有していてもよい。
【0011】
本発明に係る防護衣は、前記防護体と、布状体によって形成されて前記防護体を支持し、使用者の上半身に着用される基体とを備え、前記防護体の前記複数のシートは、前記布状体の厚み方向と一致するように積層されているものである。
【0012】
本発明は、前記防護衣において、前記基体は、前記防護体を収納可能な袋状に形成された袋部と、前記袋部に対して前記防護体を出し入れ可能となるように形成された出し入れ口とを有していてもよい。
【0013】
本発明は、前記防護衣において、前記防護体は、前記使用者の少なくとも胸を含む上半身の前部を覆う形状の本体部と、前記本体部から前記使用者の肩を覆う部位と脇腹を覆う部位とのうち少なくともいずれか一方に延びる延長部とを有し、前記シートは、前記本体部と前記延長部との全域にわたって途切れることなく延びるように形成されていてもよい。
【0014】
本発明は、前記防護衣において、前記防護体は、前記使用者の少なくとも胸を含む上半身の前部と、前記使用者の肩部と、前記使用者の脇腹部とのいずれか一つを覆う形状に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明による防護体は、シートを縦方向あるいは横方向に並べることなく形成できるから、隙間が生じることがなく、しかも、製造が簡単である。また、この防護体は、隣り合うシートどうしが互いに摺動自在であるから容易に曲げることができ、可撓性が高いものとなる。さらに、箔状の金属材料からなるシートは、切断が容易であるから形状の自由度が高い。
したがって、本発明によれば、隙間が形成されることなくかつ可撓性が高くなるように形成されているとともに、簡単にしかも自由な形状に製造できる防護体を提供することができる。
また、本発明に係る防護体を備えた防護衣によれば、防護体の性能を十分に発揮できるように使用者に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1の実施の形態による防護体および防護衣の使用状態を示す斜視図である。
図2図2は、防護衣を示す図である。
図3図3は、第1の実施の形態による防護体の正面図である。
図4図4は、図3におけるIV-IV線断面図である。
図5図5は、防護体の変形例を示す防護衣の正面図である。
図6図6は、防護体の変形例を示す防護衣の正面図である。
図7図7は、第2の実施の形態による防護衣と防護体を示す図である。
図8図8は、第3の実施の形態による防護衣の使用状態を示す斜視図である。
図9図9は、防護体の変形例を示す断面図である。
図10図10は、防護体の変形例を示す断面図である。
図11図11は、防護体の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る防護体および防護衣の一実施の形態を図1図4を参照して詳細に説明する。
図1に示す防護衣1は、使用者2が衣服3の上に着用するベストとなるように形成されている。図1(A)は防護衣1を左斜め前上方から見た斜視図、図1(B)は防護衣1を右斜め後上方から見た斜視図である。この実施の形態による防護衣1は、耐刃性を有する耐刃防護衣である。この防護衣1は、使用者2の上半身に着用される基体4と、この基体4に設けられた、本発明に係る防護体5とを有している。
【0018】
(基体の説明)
この実施の形態による基体4は、使用者2の前側に位置する前半部11と、使用者2の後側に位置する後半部12とによって構成されている。前半部11は、使用者2の肩、胸および腹部と、脇腹の前部とを覆う形状に形成されている。後半部12は、使用者2の肩、背中、脇腹の後部を覆う形状に形成されている。前半部11と後半部12とは、肩部分と脇腹部分とで互いに接続されている。
【0019】
詳述すると、前半部11における使用者2の肩を覆う肩部11aの前面には、図2(A)に示すように、第1の面ファスナー13が設けられている。図2(A)は前半部11の正面図、図2(B)は後半部12の後面図である。後半部12における使用者2の肩を覆う肩部12aの前面には、図2(B)に示すように、前半部11の第1の面ファスナー13に接続可能な第2の面ファスナー14が設けられている。前半部11の肩部11aの上に後半部12の肩部12aを載せることにより、第1および第2の面ファスナー13,14を介して肩部11a,12aどうしが接続される。
【0020】
前半部11における使用者2の脇腹を覆う脇腹部11bの後面には、図2(A)に示すように、第3の面ファスナー15が設けられている。また、この脇腹部11bの前面には、第1のベルト16が設けられている。第1のベルト16の先端にはソケット形バックル17が設けられている。
後半部12における使用者2の脇腹を覆う脇腹部12bの後面には、前半部11の第3の面ファスナー15に接続可能な第4の面ファスナー18と、第2のベルト19が設けられている。第2のベルト19の先端に、第1のベルト16のソケット形バックル17に着脱可能に係合するプラグ形バックル20が設けられている。
【0021】
前半部11の脇腹部11bを後半部12の脇腹部12bの上に被せることにより、第3および第4の面ファスナー15,18を介して脇腹部11b,12bどうしが接続される。また、第1のベルト16のソケット形バックル17に第2のベルト19のプラグ形バックル20を接続することにより、脇腹部11b,12bを緊縛することができ、後述する防護体5の復元力で第3の面ファスナー15が第4の面ファスナー18から剥がれされることを防ぐことができる。
【0022】
基体4の前半部11は、図2(C)に示すように、布状体からなる表地21と裏地22とによって袋状に形成された袋部23を有している。図2(C)は、図2(A)におけるII-II線断面図である。後半部12は、詳細には図示していないが、前半部11と同様に表地24{図2(B)参照}と裏地25とによって袋状に形成されている。
前半部11の袋部23は、後述する防護体5を収納可能に形成されている。前半部11には、袋部23と、袋部23に対して防護体5を出し入れ可能となるように形成された出し入れ口26{図2(C)参照}とを有している。出し入れ口26は、裏地22の左右方向の中央部に、裏地22の上端から下端まで延びるように形成されている。
【0023】
前半部11の表地21は、左右方向の中央部にチャック27が設けられ、左右方向に開くように構成されている。チャック27が開いた状態においては、開いたチャック27により生じた開口を防護体5の出し入れ口として使用することができる。
後半部12の袋部は、図示してはいないが、前半部11の袋部23と同様に形成されている。後半部12の表地24の下端部には、図2(B)に示すように、第5の面ファスナー28が設けられ、後半部12の裏地25の下端には、第5の面ファスナー28に着脱可能に接続される第6の面ファスナー29が設けられている。第5の面ファスナー28から第6の面ファスナー29を剥がすことにより、後半部12の袋部が下方に向けて開口するようになり、この開口部を通して後半部12の袋部に対して例えば背中用の防護体(図示せず)を出し入れすることができる。
【0024】
(防護体の説明)
上述した基体4に装着される防護体5は、基体4の前半部11と略同じ形状に形成されており、図3に示すように、図3の中央部に位置する本体部31と、この本体部31から突出する第1~第4の延長部32~35とを有している。本体部31は、使用者2の胸と腹部とを覆う形状に形成されている。第1の延長部32と第2の延長部33は、使用者2の肩を覆う部位に延びている。第3の延長部34と第4の延長部35は、使用者2の脇腹を覆う部位に延びている。すなわち、この実施の形態による防護体5は、本体部31から使用者2の肩を覆う部位に延びる第1および第2の延長部32,33と、本体部31から使用者2の脇腹を覆う部位に延びる第3および第4の延長部34,35とを有している。
【0025】
防護体5は、図4に示すように、積層された複数のシート41と、これらのシート41を覆って保持する保持体42とによって構成されている。複数のシート41は、金属材料によって箔状に形成されて厚み方向が基体4の表地21や裏地22の厚み方向と一致するように積層されている。また、シート41は、防護体5の本体部31と、第1~第4の延長部32~35との全域にわたって途切れることなく延びるように形成されている。この実施の形態によるシート41を形成する金属材料は、チタン製の薄板または箔である。なお、シート41を形成する金属材料としては、ステンレス鋼と、アルミニウムと、鉄と、マグネシウムとのうちいずれか一つの金属材料からなる薄板または箔を含む。防護体5の複数のシート41を形成するにあたっては、以下の3つのパターンがある。
【0026】
(1)防護体5の全てのシート41がチタン製のシート41である。
(2)防護体5の全てのシート41がステンレス鋼と、アルミニウムと、鉄と、マグネシウムとのうちいずれか一つの金属材料からなるシート41である。
(3)アルミニウム、鉄、マグネシウムとのうちいずれか一つの金属材料からなる1枚または複数のシート41と、チタン製の1枚または複数のシート41とが混ぜられている。
【0027】
各シート41の厚みは、0.6mm以下とすることが望ましい。厚みを0.6mm以下とする理由は、シート41が0.6mmより厚いと撓み難くなるし、重量も重くなるからである。また、各シート41は、厚みが薄いから、例えば鋏で所望の形状に切ることが可能である。シート41の枚数は、1枚のシート41の厚みが0.6mmである場合は15枚程度が望ましい。なお、図4は、構造を理解し易くするために、シート41の枚数を減らして描いてある。シート41を15枚程度とする理由は、15枚より多くなると防護体5が撓み難くなるし、重量が重くなって扱い難くなるからである。
【0028】
保持体42は、例えば合成繊維からなる織物や網あるいは不織布などによって袋状に形成されており、各シート41が拘束されるようなことがなく、複数のシート41を隣り合うシート41どうしが互いに摺動自在となるように保持している。このように形成された保持体42に複数のシート41を収容してなる防護体5が基体4の前半部11の袋部23に挿入されることにより、防護体5が基体4に装着されることになる。
防護体5が基体4に装着された状態において、防護体5にこれを曲げるように力を加えると、隣り合うシート41どうしが互いに自由に摺動して各シート41が弾性変形により曲がり、防護体5が撓むようになる。
【0029】
このため、この防護衣1の防護体5は、容易に曲げることができるから、可撓性が高いものとなる。また、防護体5は、シート41を縦方向あるいは横方向に並べることなく形成できるから、隙間が生じることがなく、しかも、製造が簡単である。さらに、箔状の金属材料からなるシート41は、切断が容易であるから形状の自由度が高い。
したがって、この実施の形態によれば、隙間が形成されることなくかつ可撓性が高くなるように形成されているとともに、簡単にしかも自由な形状に製造できる防護体を提供することができる。
また、この実施の形態による防護体5を備えた防護衣1によれば、複数のシート41が布状体の厚み方向に積層されているから、防護体5の性能を十分に発揮できるように使用者に装着することができる。
【0030】
(防護体の変形例)
防護体5は図5(A)~(C)および図6(A)~(C)に示すように構成することができる。図5(A)~(C)および図6(A)~(C)において、図1図4によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図5(A)に示す前半部11は、図示していない使用者2の胸と腹部とを覆う本体部31のみからなる防護体5を有している。図5(B)に示す前半部11は、使用者2の胸と腹部とを覆う本体部31と、本体部31から使用者2の肩を覆う部位に延びる第1および第2の延長部32,33とからなる防護体5を有している。図5(C)に示す前半部11は、使用者2の胸と腹部とを覆う本体部31と、本体部31から使用者2の脇腹を覆う部位に延びる第3および第4の延長部34,35とからなる防護体5を有している。
【0031】
図6(A)~(C)に示す前半部11は、それぞれ2種類の防護体を有している。図6(A)に示す前半部11は、図5(C)に示した防護体5と、使用者2の肩部を覆う形状の一対の肩用防護体51とを有している。肩用防護体51は、上述した防護体5と同一の構造となるように形成されている。この構成を採る場合の前半部11は、肩用防護体51が落下することを防ぐために、肩用防護体51と他の防護体5との間で表地21と裏地22とを接続する面ファスナー52を備えている。
【0032】
図6(B)に示す前半部11は、使用者2の胸を覆う形状の胸用防護体53と、使用者2の腹部と脇腹とを覆う形状の腹用防護体54とを備えている。胸用防護体53と腹用防護体54は、上述した防護体5と同一の構造となるように形成されている。この構成を採る場合の前半部11は、胸用防護体53が落下することを防ぐために、胸用防護体53と腹用防護体54との間で表地21と裏地22とを接続する面ファスナー55を備えている。
図6(C)に示す前半部11は、図5(A)に示した、使用者2の胸と腹部とを覆う本体部31のみからなる防護体5と、使用者2の脇腹を覆う一対の脇腹用防護体56とを備えている。
このように複数の防護体5,51,53,54,56を備える場合であっても、図1図4に示した防護衣1と同等の効果が得られる。
【0033】
(第2の実施の形態)
本発明に係る防護体および防護衣は、図7に示すように構成することができる。図7において、図1図6によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。図7(A)は防護衣を左斜め前上方から見た斜視図、図7(B)は防護衣を右斜め後上方から見た斜視図、図7(C)は防護体の正面図である。
【0034】
図7に示す防護衣61は、使用者2の前側から肩部を経て後側に至る形状の基体62を備えている。この基体62は、第1の実施の形態を採るときの基体4と同様に、袋状に形成されている。基体62の脇腹部分は、第1の実施の形態を採るときと同様に、基体62の前側の脇腹部分を後側の脇腹部分に重ねて面ファスナー(図示せず)によって接続するとともに、第1および第2のベルト16,19を使用して緊縛する構成が採られている。
【0035】
この基体62における、使用者2の首を通す襟部63は、第7の面ファスナー64を有している。第7の面ファスナー64は、詳細には図示してはいないが、襟部63の表地と裏地とを着脱可能に接続している。このため、この基体62においては、この襟部63が出し入れ口となり、防護体5が襟部63を通して基体62の袋部(図示せず)に対して出し入れされる。
【0036】
この実施の形態による防護体5は、図7(C)に示すように、1枚で基体62の前側から後側まで延びる形状に形成されている。すなわち、この防護体5は、使用者2の腹部および脇腹部を覆う前側下部5aと、使用者2の胸を覆う胸部5bと、使用者2の肩を覆う肩部5cと、使用者2の背中を覆う背中部5dと、使用者2の腰部および脇腹部を覆う後側下部5eとを有している。
【0037】
(第3の実施の形態)
本発明に係る防護衣は、図8に示すように構成することができる。図8において、図1図7によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図8に示す防護衣71は、使用者2が着用する基体72と、基体72の前部に取付けられた防護体5とを備えている。この実施の形態による基体72は、布状体によって所定の形状に形成されているが、袋状には形成されていない。
【0038】
この実施の形態による防護体5は、使用者2の胸と腹部とを覆う形状に形成され、保持体42を基体72に縫い付けることによって基体72に取付けられている。防護体5の内部構造は、第1の実施の形態を採るときと同一である。
【0039】
(第4の実施の形態)
本発明に係る防護体は、図9図11に示すように構成することができる。図9図11において、図1図8によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図9に示す防護体81は、第1の実施の形態を採るときの防護体5とは保持体82のみが異なっている。この実施の形態による保持体82は、複数のシート41の前面を覆う前部83と、複数のシート41の後面を覆う後部84とによって構成されている。
【0040】
前部83の材料は、第1の実施の形態を採るときと同一の材料、すなわち合成繊維からなる織物や網あるいは不織布などの材料によって形成されている。後部84の材料は、防弾性能を有する繊維である。防弾性能を有する繊維としては、例えばアラミド繊維や、ポリエチレン製の繊維などを挙げることができる。
このように防弾性能を有する繊維で複数のシート41の後面を覆うことにより、この防護体81を使用した防護衣は、耐刃性のみならず防弾性を有するようになる。
【0041】
図10および図11に示す防護体91,92は、シート41に重ねられた防弾膜93を有している。防弾膜93は、防弾性能を有する繊維によって形成されている。防弾性能を有する繊維としては、例えばアラミド繊維や、ポリエチレン製の繊維などである。
図10に示す防弾膜93は、複数のシート41のうち最も後ろに位置するシート41の後面と保持体42との間に挟まれた状態でシート41ともに保持体42に保持されている。
【0042】
図11に示す防弾膜93は、互いに隣合うシート41どうしの間に挟まれてこれらのシート41とともに保持体42によって保持されている。図11においては、複数の防弾膜93を使用する例を示しているが、防弾膜93を少なくとも1枚設けることにより同等の防弾効果を得ることができる。
図10および図11に示すように防弾膜93がシート41と重ねられた防護体91,92を使用した防護衣は、防刃性のみならず防弾性を有するようになる。
【符号の説明】
【0043】
1…防護衣、2…使用者、4,62,72…基体、5…防護体、11…前半部、23…袋部、26…出し入れ口、31…本体部、32…第1の延長部、33…第2の延長部、34…第3の延長部、35…第4の延長部、41…シート、42,82…保持体、51…肩用防護体、53…胸用防護体、56…脇腹用防護体、93…防弾膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11