(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】磁性繊維材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
D01F 1/10 20060101AFI20230331BHJP
D01F 6/00 20060101ALI20230331BHJP
D01D 5/06 20060101ALI20230331BHJP
D04H 1/728 20120101ALI20230331BHJP
【FI】
D01F1/10
D01F6/00 A
D01D5/06 Z
D04H1/728
(21)【出願番号】P 2021548600
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(86)【国際出願番号】 CN2020122097
(87)【国際公開番号】W WO2021139306
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】202010025304.9
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512000569
【氏名又は名称】華南理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】王 林格
(72)【発明者】
【氏名】賈 毅凡
(72)【発明者】
【氏名】于 倩倩
(72)【発明者】
【氏名】呉 恙
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/109379(WO,A1)
【文献】特開2010-229563(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0019096(US,A1)
【文献】特開平07-197311(JP,A)
【文献】特公昭47-046845(JP,B1)
【文献】特開2006-312794(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0045454(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1715463(CN,A)
【文献】特開2015-074866(JP,A)
【文献】国際公開第2000/009611(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106987922(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105801901(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102336920(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 1/00- 6/96
D01D 1/00-13/02
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の製造工程
(1)~(3)を含
み、工程(1)における磁性担持物原料と工程(2)における溶質成分との組み合わせが以下(a)~(d)のいずれかである、ことを特徴とする磁性繊維材料の製造方法。
(1)紡糸溶液の配置:高分子と磁性担持物原料とを溶媒に溶解し、均一な紡糸溶液とする。
前記高分子は、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリヒドロキシ酢酸、ヒアルロン酸、フィブリン、フィブロイン、ポリエチレングリコール、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸ブロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポリカプロラクトンブロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポリビニルピロリドンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブテン)ポリスチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体の少なくとも1種であり、前記高分子の前記紡糸溶液中の質量分率が1%~40%である。前記磁性担持物原料は、単体、合金及び化合物であり、前記単体は、鉄、ニッケル、マンガン、銅、ランタン系金属の単体の少なくとも1種であり、前記合金は、ケイ素鉄合金、鉄ニッケル合金、鉄ケイ素アルミニウム合金、アルミニウムニッケルコバルト合金、鉄クロムコバルト合金、フェライト、マンガン亜鉛合金、ニッケル亜鉛合金、ネオジム鉄ホウ素合金、鉄ランタン系金属合金の少なくとも1種であり、前記化合物は、鉄、ニッケル、アルミニウム、マンガン、銅、ランタン系金属の塩化物、酸化物、硝酸塩、硫酸塩の少なくとも1種であり、前記磁性担持物原料の添加量は、高分子質量の0.001%~10%である。
(2)反応性凝固浴溶液の調製:
前記磁性担持物原料と反応する溶質成分を凝固浴溶媒に加え、均一な
前記反応性凝固浴溶液とする。
前記溶質成分は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウムの水酸化物の少なくとも1種、又はリチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウムの炭酸塩の少なくとも1種、又はリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、アンモニウムのリン酸塩の少なくとも1種である。
(3)工程(1)の
前記紡糸溶液を静電紡糸し、工程(2)の
前記反応性凝固浴溶液で繊維を捕集し、
前記繊維中の
前記磁性担持物原料と
前記反応性凝固浴溶液中の溶質とのその場反応により
前記磁性繊維材料を得る。
前記静電紡糸の条件は、紡糸口金電圧0.5~50kV、凝固浴電圧0~50kV、紡糸口金と凝固浴との距離5~50cm、紡糸溶液供給速度0.1~30mL/h、紡糸周囲温度5~60℃、相対湿度25%~95%である。
(a)前記磁性担持物原料が、鉄、ニッケル、銅、ランタン系金属単体の1種と、鉄、ニッケル、銅、ランタン系金属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩の1種と、の混合物であり、前記溶質成分が、リチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物、炭酸塩の1種又は2種以上の混合物である。
(b)前記磁性担持物原料が、ケイ素鉄合金、鉄ニッケル合金、鉄ケイ素アルミニウム合金、アルミニウムニッケルコバルト合金、鉄クロムコバルト合金の1種と、鉄、ニッケル、銅、ランタン系金属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩の1種と、の混合物であり、前記溶質成分が、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウムの塩化物、水酸化物の1種又は2種以上の混合物である。
(c)前記磁性担持物原料が、フェライト、亜鉛マンガン合金、ネオジム鉄ホウ素合金、鉄ランタン系金属合金の1種又は2種以上の混合物であり、前記溶質成分が、リチウム、ナトリウム、アンモニウムの炭酸塩、水酸化物の1種又はこれらの混合物である。
(d)前記磁性担持物原料が、鉄、マンガン、銅、ランタン系金属の塩化物、硫酸塩の1種又はこれらの混合物であり、前記溶質成分が、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウムの水酸化物、炭酸塩の1種又はこれらの混合物である。
【請求項2】
工程(1)に記載の
前記溶媒は、水、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、メチルアクリレート、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エーテル、石油エーテル、アセトン、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、四塩化炭素、キシレン、トルエン、フェノール、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ペンタン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、アニソール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、N-メチルモルホリン-N-オキシド、塩化メチルイミダゾール塩及びクレゾールの1種又は2種以上の混合物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁性繊維材料の製造方法。
【請求項3】
工程(2)の前記凝固浴溶媒は、水、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、メチルアクリレート、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エーテル、石油エーテル、アセトン、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、四塩化炭素、キシレン、トルエン、フェノール、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ペンタン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、アニソール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、N-メチルモルホリン-N-オキシド、塩化メチルイミダゾール塩及びクレゾールの1種又は2種以上の混合物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁性繊維材料の製造方法。
【請求項4】
工程(3)に記載の
前記静電紡糸のプロセスは、その成分比が安定であることを保証するために、凝固浴を絶えず補充する必要がある、
ことを特徴とする請求項1に記載の磁性繊維材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性繊維材料分野に属し、具体的に磁性繊維材料並びにその製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性材料は、その発展と進歩とに伴い、国民経済と人類社会との重要な基礎材料になっている。物質は、外部磁界の作用を受けると、外部磁界に関する磁界を誘起することができる。誘起磁界は、その方向が外部磁界と平行であり、その強度が磁界強度Mと呼ばれる。外部磁界の強度は、磁化強度Hと呼ばれる。通常、X=M/Hを用いてこの種の物質の磁性性能を測定する。
【0003】
Xの数値の大きさと正負との関係、及び異なるHにおけるXの変化に基づいて、物質は、大きく分けて、反磁性材料、常磁性材料、強磁性材料、反強磁性材料、フェリ磁性材料、超常磁性材料に分類される。そのうち常磁性材料と超常磁性材料とは、その独特な性能によりすでにマイクロ波増幅器、核磁気共鳴イメージング技術、電子常磁性イメージング技術、生物学的酸素測定(酸素測定器)などに使用されている。しかし、原理的な制約から、優れた磁性材料は、すべて金属元素で製造されなければならない。そのため、従来、材料の磁性性能は、無機物又は有機無機化合物のみによって付与される。
【0004】
磁性材料の広範な使用に伴い、可撓性を有する磁性材料は、実際の生産生活に必要とされるようになってきている。磁性性能を有する無機材料を可撓性材料で担持して複合材料を製造することは、磁性材料に可撓性を付与するための可能な手段である。しかしながら、この担持の過程では、無機材料の形態及びその可撓性材料中の分布は、複合材料の性能及び適用範囲に影響を及ぼす重要なパラメータである。特に常磁性材料と超常磁性材料とは、それらの性能が材料のサイズがナノスケールに縮小する時に大きく変化する。微小なサイズと形態との変化は、磁性性能に大きく影響する。
【0005】
繊維は、非常に大きなアスペクト比を有するので、しばしば優れた可撓性を示すことができる。静電紡糸技術は、サブミクロン、更にはナノメートルオーダーの直径の高分子繊維を連続的に生産でき、繊維直径が制御可能であり、大きな比表面積を持ち、優れた機能特性を示し、そしてその簡単な実験装置、低いコスト、高い生産量と制御しやすいこととなどの利点から、長年にわたり広く研究されてきた。それは、従来の紡糸方法と比べて、紡糸口金などの構造を経る必要がない。そのため、この技術は、紡糸原料に不溶性又は難溶性の成分を加えることができ、有機/無機可撓性複合材料を製造する絶好の手段である。しかし、(1)ほとんどの磁性粒子は、有機物(高分子)の溶液に溶解しにくいこと、(2)小さいサイズ(例えばナノメートルオーダー)の粒子は、高い表面エネルギーを有するため、紡糸過程で大きな粒子に凝集しやすいこと、(3)磁性材料同士が互いに引き付け合い、凝集しやすいこと、の3つの原因の存在により、静電紡糸の結果、元々溶液中に分散されていた磁性材料が凝集する。特に材料サイズにより敏感である常磁性材料と超常磁性材料との場合、微小なサイズ変化は、大きな磁性性能の変化をもたらす。現在の技術では、静電紡糸の間、溶媒は、溶液から急速に揮発して繊維の硬化を達成する。しかし、紡糸終了後も、エレクトロスピニング繊維は、湿潤状態(すなわち、残留溶媒がある)のままである。この時点で繊維材料は、溶液から析出しているが、残留溶媒の存在は、繊維材料及び繊維担持物が十分な運動能力を得て、小さなサイズの粒子を凝集させることを可能にし、より小さなサイズの磁性材料を得ることができない。そのため、磁性繊維系材料を静電紡糸技術によって加工する場合、いかにしてより小さい磁性材料サイズ(ナノ、サブナノ、分子級、原子級)を得て材料の磁性性能を向上させるかは、本発明が解決しようとする技術的課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の目的は、上述の開示された技術の欠点及び不備に対して、磁性繊維材料の製造方法を提供することである。本発明は、静電紡糸によってその場で磁性材料を合成する方法を提供する。それにより、磁性材料は、静電紡糸で得られた繊維中に単分子(又は単原子)レベルの分散を実現し、より良好な磁性性能を得る。同時に、繊維がもたらす材料の柔軟性、高い気孔率、高い比表面積などの特性を維持する。
【0007】
本発明の別の目的は、上記の方法により製造された磁性繊維材料を提供することである。
【0008】
本発明の更に別の目的は、磁気共鳴イメージング材料、磁気記録材料、磁気冷却材料、磁歪材料又は磁気ルミネッセンス材料における、上記磁性繊維材料の使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
磁性繊維材料の製造方法であって、以下の製造工程を含む。
(1)紡糸溶液の配置:高分子と磁性担持物原料とを溶媒に溶解し、均一な紡糸溶液とする。
(2)反応性凝固浴溶液の調製:磁性担持物原料と反応する溶質成分を凝固浴溶媒に加え、均一な反応性凝固浴溶液とする。
(3)工程(1)の紡糸溶液を静電紡糸し、工程(2)の反応性凝固浴溶液で繊維を捕集し、繊維中の磁性担持物原料と反応性凝固浴溶液中の溶質とのその場反応により磁性繊維材料を得る。
【0010】
更に、工程(1)の前記高分子は、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリヒドロキシ酢酸、ヒアルロン酸、フィブリン、フィブロイン、ポリエチレングリコール、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸ブロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポリカプロラクトンブロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポリビニルピロリドンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブテン)ポリスチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体の少なくとも1種である。前記高分子の紡糸溶液中の質量分率が1%~40%である。
【0011】
更に、工程(1)の前記磁性担持物原料は、単体、合金及び化合物である。前記単体は、鉄、ニッケル、マンガン、銅、ランタン系金属の単体の少なくとも1種である。前記合金は、ケイ素鉄合金、鉄ニッケル合金、鉄ケイ素アルミニウム合金、アルミニウムニッケルコバルト合金、鉄クロムコバルト合金、フェライト、マンガン亜鉛合金、ニッケル亜鉛合金、ネオジム鉄ホウ素合金、鉄ランタン系金属合金の少なくとも1種である。前記化合物は、鉄、ニッケル、アルミニウム、マンガン、銅、ランタン系金属の塩化物、酸化物、硝酸塩、硫酸塩の少なくとも1種である。前記磁性担持物原料の添加量は、高分子質量の0.001%~10%である。
【0012】
更に、工程(1)に記載の溶媒は、水、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、メチルアクリレート、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エーテル、石油エーテル、アセトン、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、四塩化炭素、キシレン、トルエン、フェノール、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ペンタン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、アニソール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、N-メチルモルホリン-N-オキシド、塩化メチルイミダゾール塩及びクレゾールの1種又は2種以上の混合物である。
【0013】
更に、工程(2)の前記凝固浴溶媒は、水、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、メチルアクリレート、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エーテル、石油エーテル、アセトン、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、四塩化炭素、キシレン、トルエン、フェノール、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ペンタン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、アニソール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、N-メチルモルホリン-N-オキシド、塩化メチルイミダゾール塩及びクレゾールの1種又は2種以上の混合物である。
【0014】
更に、工程(1)の溶媒が水である場合、工程(2)の凝固浴溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エーテル、石油エーテル、アセトンの1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。工程(1)における溶媒がジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタンの1種又は2種以上の混合物である場合、工程(2)における凝固浴溶媒は、水、キシレン、トルエン、フェノール、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ペンタン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、アニソールの1種又は2種以上の混合であることが好ましい。工程(1)における溶媒がメチルアクリレート、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エーテル、石油エーテル、アセトンの1種又は2種以上の混合物である場合、工程(2)における凝固浴溶媒は、水、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、四塩化炭素、N-メチルピロリドン、アニソール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、N-メチルモルホリン-N-オキシド、塩化メチルイミダゾール塩及びクレゾールの1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。工程(1)における溶媒がギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、四塩化炭素、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、N-メチルモルホリン-N-オキシド、塩化メチルイミダゾール塩及びクレゾールの1種又は2種以上の混合物である場合、工程(2)における凝固浴溶媒は、水、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフランの1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。工程(1)における溶媒が、キシレン、トルエン、フェノール、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ペンタン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、アニソールの1種又は2種以上の混合物である場合、工程(2)における凝固浴溶媒は、水、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、メチルアクリレート、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エーテル、石油エーテル、アセトンの1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。
【0015】
更に、工程(2)に記載の溶質成分は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウムの水酸化物の少なくとも1種、又はリチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウムの炭酸塩の少なくとも1種、又はリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、アンモニウムのリン酸塩の少なくとも1種である。
【0016】
更に、工程(1)における磁性担持物原料が鉄、ニッケル、銅、ランタン系金属単体の1種と、鉄、ニッケル、銅、ランタン系金属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩の1種と、の混合物である場合、工程(2)における溶質は、リチウム、ナトリウム、カリウムの水酸化物、炭酸塩の1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。工程(1)における磁性担持物原料が、ケイ素鉄合金、鉄ニッケル合金、鉄ケイ素アルミニウム合金、アルミニウムニッケルコバルト合金、鉄クロムコバルト合金の1種と、鉄、ニッケル、銅、ランタン系金属の塩化物、硫酸塩、硝酸塩の1種と、の混合物である場合、工程(2)における溶質は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウムの塩化物、水酸化物の1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。工程(1)における磁性担持物原料が、フェライト、亜鉛マンガン合金、ネオジム鉄ホウ素合金、鉄ランタン系金属合金の1種又は2種以上の混合物である場合、工程(2)における溶質は、リチウム、ナトリウム、アンモニウムの炭酸塩、水酸化物の1種又はこれらの混合物であることが好ましい。工程(1)における磁性担持物原料が、鉄、マンガン、銅、ランタン系金属の塩化物、硫酸塩の1種又はこれらの混合物である場合、工程(2)における溶質は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウムの水酸化物、炭酸塩の1種又はこれらの混合物であることが好ましい。
【0017】
更に、工程(3)に記載の静電紡糸の条件は、紡糸口金電圧0.5~50kV(正であってもよく負であってもよい)、凝固浴電圧0~50kV(正であってもよく負であってもよく、紡糸口金とは電位が逆であるか、接地する)、紡糸口金と凝固浴、の距離5~50cm、紡糸溶液供給速度0.1~30mL/h、紡糸周囲温度5~60℃、相対湿度25%~95%である。
【0018】
更に、工程(3)に記載の静電紡糸のプロセスは、その成分比が安定であることを保証するために、凝固浴を絶えず補充する必要がある。
【0019】
磁性繊維材料は、上記の方法により製造される。
【0020】
磁気共鳴イメージング材料、磁気記録材料、磁気冷却材料、磁歪材料又は磁気ルミネッセンス材料における、上記磁性繊維材料の使用。
【発明の効果】
【0021】
本発明が提供する技術的手段の原理として、まず高分子溶液の高い粘性と溶液の磁性担持物原料に対する溶解能力とを利用して、溶液中で担持物原料の分散状態を維持し、凝集を阻止し、その後、静電紡糸の過程で、溶剤の急速な揮発を利用して、高分子と磁性担持物原料とを溶剤から迅速に析出させてその場で堆積させ、最後に凝固浴を利用して繊維を膨潤させて、更に溶媒を除去し、凝固浴溶質成分を繊維中の磁性担持物原料と接触させてその場反応を生じ、単分子(又は単原子)分散の磁性材料を生成する。反応性凝固浴は、その第1の機能として、凝固浴成分が高分子繊維中の残留溶媒を繊維から抽出し、繊維の固化を加速すると同時に磁性担持物原料を固化し、凝集を防止し、その第2の機能として、凝固浴の溶質成分が磁性担持物原料と反応でき、繊維の高比表面積により、迅速にその場反応により磁性材料を生成する。これにより、紡糸溶液及び静電紡糸における磁性材料の凝集の問題が解決される。
【0022】
(1)本発明による磁性繊維材料の製造方法は、ナノ材料分散剤を追加する必要がなく、繊維内のその場反応により磁性材料を生成することができ、紡糸過程と磁性材料の合成過程との同期実行が可能である。
(2)本発明の方法が採用する静電紡糸装置は、簡単であり、得られた繊維材料の形態が完全であり、すでに公開された技術より製造された繊維に比較して著しい欠陥がなく、実際の必要に応じて形態、直径制御可能であって磁性性能が制御可能な繊維材料を製造することができる。
(3)本発明による磁性繊維材料の製造方法は、磁性材料の凝集を効果的に避けることができ、開示された技術では実現できない単分子(又は単原子)分散の可撓性磁性繊維を製造する。単分子分散の磁性材料は、より優れた磁性性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例で用いる反応性凝固浴静電紡糸装置の模式図である。
【
図2】本発明の実施例1で製造する磁性繊維の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図3】本発明の実施例1(図中a、c)と比較例(図中b、d)とで製造する磁性繊維の透過型電子顕微鏡写真である。その結果、本発明により製造された磁性繊維は、磁性粒子が単分子分散を呈していることが判明する。
【
図4】本発明の実施例1~4と比較例とで製造する常磁性繊維について、異なる磁性材料原料負荷濃度における磁気共鳴緩和効率を測定する結果を示すグラフである。結果は、本発明で製造する繊維のT
1磁気共鳴緩和率が比較用技術手段より著しく高く、より良い磁気共鳴造影効果があることを表明する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施例及び図面を参照して本発明を更に詳細に説明するが、本発明の実施の形態は、これに限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
(1)ポリエチレンテレフタレートと塩化ガドリニウム六水和物とをジクロロメタンとトリフルオロ酢酸(質量比1:2)との混合溶媒に溶解して質量分率15%の高分子溶液とし、塩化ガドリニウム六水和物をポリエチレンテレフタレートの0.1質量%の量で添加して紡糸溶液を得る。
(2)水に水酸化ナトリウムを加えてpHを9に調整し、均一に混合した後、凝固浴容器に入れ、反応性凝固浴溶液を得る。
(3)工程(1)の紡糸溶液を静電紡糸し、工程(2)の反応性凝固浴溶液で繊維を捕集し、使用する装置の模式図を
図1に示す。紡糸口金に+18kV電圧、凝固浴に-1kV電圧を印加する。紡糸口金は、凝固浴から15cm離れており、紡糸溶液供給速度は、2mL/hである。紡糸周囲温度は、25℃であり、相対湿度は、65%である。紡糸の間、凝固浴は、その成分が安定であることを保証するために絶えず補充される。紡糸終了後、凝固浴中で反応を継続し、反応終了後、繊維を取り出して最終生成物を得る。
【0026】
本実施例で製造する磁性繊維の走査型電子顕微鏡写真を
図2に示す。繊維径は、約900nmである。
【0027】
図2は、本実施例で製造する磁性繊維の走査型電子顕微鏡写真であり、繊維径は、約900nmである。
図3(a、c)は、本実施例で製造する磁性繊維の透過型電子顕微鏡写真であり、繊維中の磁性材料の状態を表している。その中のa図は、磁性材料が繊維中で凝集していない(粒子間隔が約0.5ナノメートル)ことを示し、そのフーリエ変換結果(c図)は、いくつかの分散環であり、磁性材料が単分散であること(ガドリニウム原子の原子半径が0.254nmであり、「希土類元素とその分析化学」(李梅ら、化学工業出版社、2009年)を参照する)を示し、磁性材料は、無定形である。
【0028】
(実施例2)
(1)ポリエチレンテレフタレートと塩化ガドリニウム六水和物とをジクロロメタンとトリフルオロ酢酸(質量比1:2)との混合溶媒に溶解して質量分率15%の高分子溶液とし、塩化ガドリニウム六水和物をポリエチレンテレフタレートの0.2質量%の量で添加して紡糸溶液を得る。
(2)水に水酸化ナトリウムを加えてpHを9.2に調整し、均一に混合した後、凝固浴容器に入れ、反応性凝固浴溶液を得る。
(3)工程(1)の紡糸溶液を静電紡糸し、工程(2)の反応性凝固浴溶液で繊維を捕集し、使用する装置の模式図を
図1に示す。紡糸口金に+17kV電圧、凝固浴に-2kV電圧を印加する。紡糸口金は、凝固浴から15cm離れており、紡糸溶液供給速度は、3mL/hである。紡糸周囲温度は、25℃であり、相対湿度は、65%である。紡糸の間、凝固浴は、その成分が安定であることを保証するために絶えず補充される。紡糸終了後、凝固浴中で反応を継続し、反応終了後、繊維を取り出して最終生成物を得る。
【0029】
(実施例3)
(1)ポリエチレンテレフタレートと塩化ガドリニウム六水和物とをジクロロメタンとトリフルオロ酢酸(質量比1:2)との混合溶媒に溶解して質量分率15%の高分子溶液とし、塩化ガドリニウム六水和物をポリエチレンテレフタレートの0.3質量%の量で添加して紡糸溶液を得る。
(2)水に水酸化ナトリウムを加えてpHを9.5に調整し、均一に混合した後、凝固浴容器に入れ、反応性凝固浴溶液を得る。
(3)工程(1)の紡糸溶液を静電紡糸し、工程(2)の反応性凝固浴溶液で繊維を捕集し、使用する装置の模式図を
図1に示す。紡糸口金に+16kV電圧、凝固浴に-3kV電圧を印加する。紡糸口金は、凝固浴から15cm離れており、紡糸溶液供給速度は、3mL/hである。紡糸周囲温度は、25℃であり、相対湿度は、65%である。紡糸の間、凝固浴は、その成分が安定であることを保証するために絶えず補充される。紡糸終了後、凝固浴中で反応を継続し、反応終了後、繊維を取り出して最終生成物を得る。
【0030】
(実施例4)
(1)ポリエチレンテレフタレートと塩化ガドリニウム六水和物とをジクロロメタンとトリフルオロ酢酸(質量比1:2)との混合溶媒に溶解して質量分率15%の高分子溶液とし、塩化ガドリニウム六水和物をポリエチレンテレフタレートの0.5質量%の量で添加して紡糸溶液を得る。
(2)水に水酸化ナトリウムを加えてpHを9.7に調整し,均一に混合した後凝固浴容器に入れて、反応性凝固浴溶液を得る。
(3)工程(1)の紡糸溶液を静電紡糸し、工程(2)の反応性凝固浴溶液で繊維を捕集し、使用する装置の模式図を
図1に示す。紡糸口金に+15kV電圧、凝固浴に-2kV電圧を印加する。紡糸口金は、凝固浴から15cm離れており、紡糸溶液供給速度は、3.5mL/hである。紡糸周囲温度は、25℃であり、相対湿度は、65%である。紡糸の間、凝固浴は、その成分が安定であることを保証するために絶えず補充される。紡糸終了後、凝固浴中で反応を継続し、反応終了後、繊維を取り出して最終生成物を得る。
【0031】
実施例1~4で製造する磁性繊維の磁気共鳴緩和率測定結果は、
図4(本発明の技術的解決手段、実線の四角形)に示すように、比較例の技術的解決手段に対して高い緩和率を有し、より良好な磁気共鳴造影効果を示す。
【0032】
(実施例5)
(1)ポリエチレングリコール(分子量50万)と、アルミニウムニッケルコバルト合金(Al
8Ni
16Co
24Cu
3Fe
39)、塩化鉄ナノ粒子(質量比3:1)と、をテトラヒドロフランに溶解し,質量分率1%の高分子溶液とする。ここで、アルミニウムニッケルコバルト合金と塩化鉄ナノ粒子との添加量は、ポリエチレングリコール質量の0.0015%であり、紡糸溶液を得る。
(2)メタノールに水酸化ナトリウムを質量濃度2%で加え、均一に混合した後、凝固浴容器に入れ、反応性凝固浴溶液を得る。
(3)工程(1)の紡糸溶液を静電紡糸し、工程(2)の反応性凝固浴溶液で繊維を捕集し、使用する装置の模式図を
図1に示す。紡糸口金に+30kVの電圧を印加し、凝固浴を接地する。紡糸口金は、凝固浴から25cm離れており、紡糸溶液供給速度は、5mL/hである。紡糸周囲温度は、30℃であり、相対湿度は、50%である。紡糸の間、凝固浴は、その成分が安定であることを保証するために絶えず補充される。紡糸終了後、凝固浴中で反応を継続し、反応終了後、繊維を取り出して最終生成物を得る。
【0033】
(実施例6)
(1)ポリスチレンと、アルミニウムニッケルコバルト合金(Al
8Ni
16Co
24Cu
3Fe
39)、塩化鉄ナノ粒子(質量比3:1)と、をテトラヒドロフランに溶解し、質量分率1%の高分子溶液とする。ここで、アルミニウムニッケルコバルト合金と塩化鉄ナノ粒子との添加量は、ポリスチレン質量の0.005%であり、紡糸溶液を得る。
(2)メタノールに水酸化ナトリウムを質量濃度1%で加え、均一に混合した後、凝固浴容器に入れ、反応性凝固浴溶液を得る。
(3)工程(1)の紡糸溶液を静電紡糸し、工程(2)の反応性凝固浴溶液で繊維を捕集し、使用する装置の模式図を
図1に示す。紡糸口金に+30kVの電圧を印加し、凝固浴に-20kVを印加する。紡糸口金は、凝固浴から10cm離れており、紡糸溶液供給速度は、20mL/hである。紡糸周囲温度は、10℃であり、相対湿度は、30%である。紡糸の間、凝固浴は、その成分が安定であることを保証するために絶えず補充される。紡糸終了後、凝固浴中で反応を継続し、反応終了後、繊維を取り出して最終生成物を得る。
【0034】
(実施例7)
(1)ポリビニルアルコールと、硝酸ニッケル、硝酸鉄、硝酸ガドリニウム(質量比1:1:2)と、をトリフルオロ酢酸とプロパノール(質量比1:1)との混合溶媒に溶解し、質量分率8%の高分子溶液とする。ここで、硝酸ニッケル、硝酸鉄及び硝酸ガドリニウムの添加量は、ポリビニルアルコールの5質量%であり、紡糸溶液を得る。
(2)水とメタノールとの混合溶液(質量比3:1)に炭酸カリウムを質量濃度5%で加え、均一に混合した後、凝固浴容器に入れ、反応性凝固浴溶液を得る。
(3)工程(1)の紡糸溶液を静電紡糸し、工程(2)の反応性凝固浴溶液で繊維を捕集し、使用する装置の模式図を
図1に示す。紡糸口金に+15kVの電圧を印加し、凝固浴に-40kVを印加する。紡糸口金は、凝固浴から15cm離れており、紡糸溶液供給速度は、15mL/hである。紡糸周囲温度は、10℃であり、相対湿度は、80%である。紡糸の間、凝固浴は、その成分が安定であることを保証するために絶えず補充される。紡糸終了後、凝固浴中で反応を継続し、反応終了後、繊維を取り出して最終生成物を得る。
【0035】
(実施例8)
(1)ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体と、塩化コバルト、硝酸ユーロピウム(質量比1:4)と、をテトラヒドロフランとN,N-ジメチルホルムアミド(質量比1:1)との混合溶媒中に溶解し、質量分率12%の高分子溶液とする。ここで塩化コバルトと硝酸ユーロピウムとの添加量は、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体質量の0.5%であり、紡糸溶液を得る。
(2)水に炭酸カリウムを質量濃度5%で加え、均一に混合した後、凝固浴容器に入れ、反応性凝固浴溶液を得る。
(3)工程(1)の紡糸溶液を静電紡糸し、工程(2)の反応性凝固浴溶液で繊維を捕集し、使用する装置の模式図を
図1に示す。紡糸口金に+50kVの電圧を印加し、凝固浴に-5kVを印加する。紡糸口金は、凝固浴から10cm離れており、紡糸溶液供給速度は、2.5mL/hである。紡糸周囲温度は、50℃であり、相対湿度は、25%である。紡糸の間、凝固浴は、その成分が安定であることを保証するために絶えず補充される。紡糸終了後、凝固浴中で反応を継続し、反応終了後、繊維を取り出して最終生成物を得る。
【0036】
(比較例)
本発明の技術で得られた磁性繊維の性能上の優位性を説明するために、我々は、本発明の技術を採用して新型磁性繊維を製造すると同時に、別の技術手段(比較用技術手段)を採用して磁性繊維を製造し、両方の方法で製造された繊維の性能を測定して比較する。
【0037】
本発明の技術的手段は、紡糸溶液を配置した後、静電紡糸法により、反応性凝固浴を繊維受容装置とし、1工程で磁性繊維を得る、略して「1工程法」に要約することができる。比較用技術手段は、紡糸溶液を配置した後、従来の繊維受容装置(例えば接地平板)で繊維を収集し、その後再び繊維を反応溶液に移して反応させ、磁性繊維を生成する、略して「2工程法」に要約することができる。
【0038】
「2工程法」の具体的な実施形態は、以下の通り。
(1)ポリエチレンテレフタレートと塩化ガドリニウム六水和物とをジクロロメタンとトリフルオロ酢酸(質量比1:2)との混合溶媒に溶解して質量分率15%の高分子溶液とし、ここで塩化ガドリニウム六水和物の添加量は、それぞれポリエチレンテレフタレート質量の0.1%、0.2%、0.3%、0.5%であり、紡糸溶液を得る。
(2)工程(1)の紡糸溶液を静電紡糸し、磁性材料原料を担持した繊維膜を得る。紡糸口金に+18kVの電圧を印加し、紡糸口金と繊維受容体との距離を15cmとし、紡糸溶液供給速度を3mL/hとする。紡糸周囲温度を25℃、相対湿度を65%とする。
(3)工程(2)で得られた繊維膜を、それと反応する水酸化ナトリウム溶液に十分に浸漬し、水酸化ナトリウム溶液のpHをそれぞれ9、9.2、9.5、9.7とし、水酸化物イオンを担持した水溶液を繊維に膨潤させ、繊維中の高分子からなるネットワークをマイクロリアクターとして利用し、繊維中に磁性粒子をその場で生成させる。
(4)反応終了後、繊維を水酸化ナトリウム溶液から取り出し、脱イオン水で中性に洗浄し、空気中で乾燥させる。
【0039】
上記の手段(「2工程法」)で製造された磁性繊維は、透過電子顕微鏡写真が
図3(b、d)であり、b図は、磁性材料の繊維中の凝集体サイズが約10ナノメートルであり、そのフーリエ変換結果(d図)には明るい斑点があり、磁性材料が繊維内で規則正しい構造を持ち、凝集状態にあることを示している。一方、実施例1で製造する磁性繊維は、内部磁性材料(
図3a、cに示す)が完全に無定形である。
【0040】
以上の結果から、本発明は、「1工程法」を採用し、繊維の製造過程においてワンステップで反応し、プロセスを減少させ、凝集確率を低下させ、直接に単分子分散磁性粒子を生成することを説明する。一方、比較技術(「2工程法」)は、高分子繊維を先に製造し、その後繊維を反応溶液中で反応させ、磁性材料に凝集現象が存在し、単分子分散磁性粒子を生成できない。
【0041】
上記の手段(「2工程法」)で製造された磁性繊維は、その磁気共鳴緩和率の測定結果が
図4(破線円形)に示すように、図中の縦軸である緩和率(スピン-格子緩和時間T
1の反比例、T
1Relaxationrate(R
1と略す)が、横軸である粒子の単位量あたりの高分子中の濃度によって変化し、線形関係にある。緩和率R
1は、材料の磁気共鳴イメージング信号強度に比例し、値が大きいほど造影効果が高い。図中の測定結果によると、粒子含有量が増加する場合、本発明技術(「1工程法」)により調製された粒子の分散性がより良いため、発生した造影効果がますます良くなり、非常に明らかな優位性を示す。粒子単位濃度値が約0.032mmol・g
-1の場合、本発明(「1工程法」)で製造された材料の緩和率は、比較技術(「2工程法」)で得られた繊維の7倍以上である。これはまた、静電紡糸技術に対して、反応性凝固浴の「1工程法」の技術手段を革新的に採用することで、より良い磁性性能を備えた新型磁性繊維を製造できることを示す。
【0042】
「1工程法」がより高い緩和率の磁性繊維を製造できる理由は、磁気共鳴にとって、常磁性材料と水分子との結合により水分子の緩和時間を著しく減少させ、緩和率を増加させる。この特性は、高効率磁気共鳴造影剤を製造するために使用される。SBM理論(Solomon-Bloembergen-Morgan、ACSAppl.Mater.Interfaces,2014,6(16):13730参照)によると、水分子と常磁性材料との有効な結合には、水分子と磁性材料との原子核距離が十分に小さいことが必要である。すなわち、凝集した磁性材料では、粒子内部が外部環境と直接接触できない磁性材料は、水分子と結合できなくなり、そのコア粒子が効果的に緩和効果を発揮できなくなる。
【0043】
上記実施例は、本発明の好適な実施形態であるが、本発明の実施形態は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の精神及び原理から逸脱することなく行われる他の任意の変更、変更、置換、組み合わせ、簡略化は、本発明の範囲内に含まれる等価な置換であるべきである。
【0044】
(付記)
(付記1)
以下の製造工程を含むことを特徴とする磁性繊維材料の製造方法。
(1)紡糸溶液の配置:高分子と磁性担持物原料とを溶媒に溶解し、均一な紡糸溶液とする。
(2)反応性凝固浴溶液の調製:磁性担持物原料と反応する溶質成分を凝固浴溶媒に加え、均一な反応性凝固浴溶液とする。
(3)工程(1)の紡糸溶液を静電紡糸し、工程(2)の反応性凝固浴溶液で繊維を捕集し、繊維中の磁性担持物原料と反応性凝固浴溶液中の溶質とのその場反応により磁性繊維材料を得る。
【0045】
(付記2)
工程(1)の前記高分子は、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリグリコリド、ポリラクチド、ポリヒドロキシ酢酸、ヒアルロン酸、フィブリン、フィブロイン、ポリエチレングリコール、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、セルロースアセテート、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸ブロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポリカプロラクトンブロック共重合体、ポリエチレングリコール-ポリビニルピロリドンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-ブテン)ポリスチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン/ブタジエン-スチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体の少なくとも1種であり、前記高分子の紡糸溶液中の質量分率が1%~40%である、
ことを特徴とする付記1に記載の磁性繊維材料の製造方法。
【0046】
(付記3)
工程(1)の前記磁性担持物原料は、単体、合金及び化合物であり、前記単体は、鉄、ニッケル、マンガン、銅、ランタン系金属の単体の少なくとも1種であり、前記合金は、ケイ素鉄合金、鉄ニッケル合金、鉄ケイ素アルミニウム合金、アルミニウムニッケルコバルト合金、鉄クロムコバルト合金、フェライト、マンガン亜鉛合金、ニッケル亜鉛合金、ネオジム鉄ホウ素合金、鉄ランタン系金属合金の少なくとも1種であり、前記化合物は、鉄、ニッケル、アルミニウム、マンガン、銅、ランタン系金属の塩化物、酸化物、硝酸塩、硫酸塩の少なくとも1種であり、前記磁性担持物原料の添加量は、高分子質量の0.001%~10%である、
ことを特徴とする付記1に記載の磁性繊維材料の製造方法。
【0047】
(付記4)
工程(1)に記載の溶媒は、水、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、メチルアクリレート、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エーテル、石油エーテル、アセトン、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、四塩化炭素、キシレン、トルエン、フェノール、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ペンタン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、アニソール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、N-メチルモルホリン-N-オキシド、塩化メチルイミダゾール塩及びクレゾールの1種又は2種以上の混合物である、
ことを特徴とする付記1に記載の磁性繊維材料の製造方法。
【0048】
(付記5)
工程(2)の前記凝固浴溶媒は、水、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、メチルアクリレート、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エーテル、石油エーテル、アセトン、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、四塩化炭素、キシレン、トルエン、フェノール、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ペンタン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン、N-メチルピロリドン、アニソール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、N-メチルモルホリン-N-オキシド、塩化メチルイミダゾール塩及びクレゾールの1種又は2種以上の混合物である、
ことを特徴とする付記1に記載の磁性繊維材料の製造方法。
【0049】
(付記6)
工程(2)に記載の溶質成分は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウムの水酸化物の少なくとも1種、又はリチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウムの炭酸塩の少なくとも1種、又はリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、アンモニウムのリン酸塩の少なくとも1種である、
ことを特徴とする付記1に記載の磁性繊維材料の製造方法。
【0050】
(付記7)
工程(3)に記載の静電紡糸の条件は、紡糸口金電圧0.5~50kV、凝固浴電圧0~50kV、紡糸口金と凝固浴との距離5~50cm、紡糸溶液供給速度0.1~30mL/h、紡糸周囲温度5~60℃、相対湿度25%~95%である、
ことを特徴とする付記1に記載の磁性繊維材料の製造方法。
【0051】
(付記8)
工程(3)に記載の静電紡糸のプロセスは、その成分比が安定であることを保証するために、凝固浴を絶えず補充する必要がある、
ことを特徴とする付記1に記載の磁性繊維材料の製造方法。
【0052】
(付記9)
付記1~8のいずれか1つに記載の方法により製造されたことを特徴とする磁性繊維材料。
【0053】
(付記10)
磁気共鳴イメージング材料、磁気記録材料、磁気冷却材料、磁歪材料又は磁気ルミネッセンス材料における、付記9に記載の磁性繊維材料の使用。