(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】海苔剥ぎ装置
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20230331BHJP
【FI】
A23L17/60 103E
(21)【出願番号】P 2022079152
(22)【出願日】2022-05-13
【審査請求日】2022-11-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000149457
【氏名又は名称】株式会社オーツボ
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠一郎
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-161091(JP,A)
【文献】特公平8-4480(JP,B2)
【文献】特開2004-298091(JP,A)
【文献】特開平9-271368(JP,A)
【文献】実開平7-1790(JP,U)
【文献】実開昭59-26992(JP,U)
【文献】実開平4-65100(JP,U)
【文献】特開昭59-28455(JP,A)
【文献】実開昭56-167995(JP,U)
【文献】実開昭55-51161(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/60
D21
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の乾海苔を、海苔簀ホルダに保持された海苔簀から剥ぎ取る本剥ぎ部を有する海苔剥ぎ装置であって、
前記海苔簀ホルダは、一対の横桿と縦桿を枠型に組立てた形状であり、前記海苔簀の一端側は一方の前記横桿に保持され、前記海苔簀の他端側には他方の前記横桿と平行な棒部材が結合されており、
前記本剥ぎ部は、
前記海苔簀の下面側に付着する前記乾海苔を吸引する吸引面が設けられたベルトを有し、前記乾海苔を吸引した状態の前記ベルトを回動させることにより前記乾海苔を搬出する吸引回動ベルトと、
前記吸引回動ベルトを昇降させて前記吸引面を前記海苔簀の下面に接離させるベルト昇降手段と、
前記棒部材の保持及び保持解除を行うチャック部と、
前記棒部材を保持した前記チャック部を所定の軌跡で移動させることにより、前記吸引面に吸引された前記乾海苔が前記海苔簀から剥ぎ取られるように、前記海苔簀ホルダにおいて前記海苔簀に折り返し動作を行わせるチャック移動手段と、を備え、
前記吸引回動ベルトは、前記乾海苔の剥ぎ取り時における前記チャック部の移動方向と反対の方向に下傾していることを特徴とする海苔剥ぎ装置。
【請求項2】
前記吸引回動ベルトの水平面に対する傾き角度は、0°を超え、かつ、5°以下の範囲にある、請求項1に記載の海苔剥ぎ装置。
【請求項3】
前記吸引回動ベルトの水平面に対する傾き角度は、約2~3°の範囲にある、請求項2に記載の海苔剥ぎ装置。
【請求項4】
前記吸引回動ベルトの傾きが調整可能となっている、請求項1に記載の海苔剥ぎ装置。
【請求項5】
前記棒部材が、前記海苔簀ホルダに取り付けられたバネ部材によって前記横桿に固着されたストッパに下方から押し当てられることにより、前記海苔簀が展張された展張位置に固定される構成となっており、
前記本剥ぎ部が、
前記バネ部材の自由端部を下方に押圧することにより前記展張位置に位置する前記棒部材の前記ストッパへの押し当てを解除する押圧手段をさらに備えている、請求項1に記載の海苔剥ぎ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海苔剥ぎ装置に関する。さらに詳細には、本発明は、海苔製造装置の乾燥室において乾燥されたシート状の乾海苔を、海苔簀ホルダに保持された海苔簀から剥ぎ取る海苔剥ぎ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の乾海苔を製造する海苔製造装置においては、生海苔を矩形状の海苔簀によって抄き上げ、脱水した後に海苔簀ごと乾燥室を通過させて乾燥させ、乾海苔のみを海苔簀から剥ぎ取る作業が連続して行われる。
海苔簀は、複数個が一単位として海苔簀ホルダに保持され、当該海苔簀ホルダを、アタッチメントチェーンを連結した構成の搬送機構によって循環搬送することにより、海苔簀に対して上述の作業が順次実行される。
【0003】
ところで、乾海苔を海苔簀から全面剥離する本剥ぎ部においては、乾海苔が破れないように海苔簀から剥ぎ取らねばならない。このため、従来より様々な海苔剥ぎ装置が提案されてきたが、いずれも確実性に欠け、剥ぎ取る際に乾海苔が破れやすい等の課題は残ったままとなっていた。
【0004】
そこで、本出願人は、先に、乾海苔を海苔簀からより確実に剥ぎ取ることを可能にする海苔剥ぎ装置(本剥ぎ部)を提案している(特許文献1,2を参照)。
【0005】
特許文献1,2で用いられる海苔簀ホルダは、一対の横桿と縦桿を枠型に組み立てた形状であり、海苔簀の一端側は一方の前記横桿に保持され、前記海苔簀の他端側には他方の前記横桿と平行な棒部材が結合されている。そして、前記棒部材が、前記海苔簀ホルダに取り付けられたバネ部材によって前記横桿に固着されたストッパに下方から押し当てられることにより、前記海苔簀が展張された展張位置に固定される構成となっている。
特許文献1,2で提案されている海苔剥ぎ装置は、前記海苔簀の下面側に付着する乾海苔を吸引する吸引面が設けられたベルトを有し、前記乾海苔を吸引した状態の前記ベルトを回動させることにより前記乾海苔を搬出する吸引回動ベルトと、前記吸引回動ベルトを昇降させて前記吸引面を前記海苔簀の下面に接離させるベルト昇降手段と、前記バネ部材の自由端部を下方に押圧することにより前記展張位置に位置する前記棒部材の前記ストッパへの押し当てを解除する押圧手段と、前記棒部材の保持及び保持解除を行うチャック部と、前記棒部材を保持した前記チャック部を所定の軌跡で移動させることにより、前記吸引面に吸引された前記乾海苔が前記海苔簀から剥ぎ取られるように、記海苔簀ホルダにおいて前記海苔簀に折り返し動作を行わせるチャック移動手段と、を備えている。
そして、かかる構成を備えた海苔剥ぎ装置によれば、乾海苔を海苔簀からより確実に剥ぎ取って次工程へ搬出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-065060号公報
【文献】特開2018-161091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2で提案されている海苔剥ぎ装置は、上記のように、乾海苔を海苔簀からより確実に剥ぎ取って次工程へ搬出することを可能とするものであるが、剥ぎ取る際の乾海苔の破れをさらに確実に防止して乾海苔の品質向上を確実なものとすることが望まれている。
そこで、本発明者らは、さらに鋭意研究を重ね、吸引回動ベルトの設置状態を工夫することにより、剥ぎ取る際の乾海苔の破れをさらに確実に防止できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、剥ぎ取る際の乾海苔の破れをさらに確実に防止して乾海苔の品質向上を確実なものとすることが可能な海苔剥ぎ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明に係る海苔剥ぎ装置の構成は、
(1)シート状の乾海苔を、海苔簀ホルダに保持された海苔簀から剥ぎ取る本剥ぎ部を有する海苔剥ぎ装置であって、
前記海苔簀ホルダは、一対の横桿と縦桿を枠型に組立てた形状であり、前記海苔簀の一端側は一方の前記横桿に保持され、前記海苔簀の他端側には他方の前記横桿と平行な棒部材が結合されており、
前記本剥ぎ部は、
前記海苔簀の下面側に付着する前記乾海苔を吸引する吸引面が設けられたベルトを有し、前記乾海苔を吸引した状態の前記ベルトを回動させることにより前記乾海苔を搬出する吸引回動ベルトと、
前記吸引回動ベルトを昇降させて前記吸引面を前記海苔簀の下面に接離させるベルト昇降手段と、
前記棒部材の保持及び保持解除を行うチャック部と、
前記棒部材を保持した前記チャック部を所定の軌跡で移動させることにより、前記吸引面に吸引された前記乾海苔が前記海苔簀から剥ぎ取られるように、前記海苔簀ホルダにおいて前記海苔簀に折り返し動作を行わせるチャック移動手段と、を備え、
前記吸引回動ベルトは、前記乾海苔の剥ぎ取り時における前記チャック部の移動方向と反対の方向に下傾していることを特徴とする。
【0010】
本発明の海苔剥ぎ装置の上記(1)の構成は、次のような作用効果を奏する。
すなわち、少なくともチャック部を往復移動させる際には、吸引回動ベルトの上面とチャック部の先端部分とが干渉することがないように、チャック部の往復移動をガイドするガイドビーム(及び当該ガイドビームに形成されるガイド溝)は、チャック部の復動方向に下傾した状態となっている。
しかし、このままでは、海苔簀ホルダにおいて海苔簀に折り返し動作を行わせる際の折り返し角度が徐々に開いていき(海苔簀を引く角度を鋭角な状態に保つことが困難となり)、乾海苔と海苔簀が離れ難くなる虞がある。また、乾海苔に掛かる力の上向き成分を小さく抑えることも困難となる。そして、このため、剥ぎ取る際の乾海苔の破れを完全には防止することができない。
これに対し、上記(1)の構成によれば、棒部材を保持した状態のチャック部の先端部分を、吸引回動ベルトの上面と干渉しない程度に当該吸引回動ベルトの上面に近接させることが可能となる。そして、その結果、海苔簀ホルダにおいて海苔簀に折り返し動作を行わせる際の折り返し角度を小さく抑えることができ(海苔簀を引く角度を鋭角な状態に保つことができ)、乾海苔と海苔簀の離れが良好となる。また、乾海苔に掛かる力の上向き成分を極力小さく抑えることもできる。
したがって、上記(1)の構成によれば、剥ぎ取る際の乾海苔の破れをさらに確実に防止して乾海苔の品質向上を確実なものとすることが可能となる。
【0011】
本発明の海苔剥ぎ装置の上記(1)の構成においては、以下の(2)~(5)のような構成にすることが好ましい。
【0012】
(2)前記吸引回動ベルトの水平面に対する傾き角度は、0°を超え、かつ、5°以下の範囲にある。
上記(2)の好ましい構成によれば、棒部材を保持した状態のチャック部を往復移動させる際の、当該チャック部の先端部分を、確実に、吸引回動ベルトの上面と干渉しない程度に当該吸引回動ベルトの上面に近接させることが可能となる。
【0013】
(3)上記(2)の構成において、前記吸引回動ベルトの水平面に対する傾き角度は、約2~3°の範囲にある。
上記(3)の好ましい構成によれば、海苔簀ホルダにおいて海苔簀に折り返し動作を行わせる際に乾海苔に負担を掛けない傾き角度とすることができる。
【0014】
(4)前記吸引回動ベルトの傾きが調整可能となっている。
上記(4)の好ましい構成によれば、海苔簀ホルダにおいて海苔簀に折り返し動作を行わせる際に乾海苔に最も負担を掛けない傾き角度に調整することが可能となる。
【0015】
(5)前記棒部材が、前記海苔簀ホルダに取り付けられたバネ部材によって前記横桿に固着されたストッパに下方から押し当てられることにより、前記海苔簀が展張された展張位置に固定される構成となっており、
前記本剥ぎ部が、
前記バネ部材の自由端部を下方に押圧することにより前記展張位置に位置する前記棒部材の前記ストッパへの押し当てを解除する押圧手段をさらに備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、剥ぎ取る際の乾海苔の破れをさらに確実に防止して乾海苔の品質向上を確実なものとすることが可能な海苔剥ぎ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、シート状の乾海苔を製造する海苔製造装置の全体構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、シート状の乾海苔を製造する海苔製造装置の構成部材である海苔簀ホルダを説明するための図((a)は平面図、(b)は側面図)である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態における海苔剥ぎ装置の一部を示す側面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態における海苔剥ぎ装置の構成部材であるベルトの一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、好適な実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
[海苔製造装置の全体構成]
まず、シート状の乾海苔を製造する海苔製造装置の全体構成について、
図1を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、シート状の乾海苔を製造する海苔製造装置の全体構成を示す模式図である。
【0021】
図1に示す海苔製造装置1は、海苔簀3c(
図2を参照)に抄き上げられた生海苔を乾燥させて乾海苔16(
図4を参照)を製造する機能を有するものである。
図1に示すように、海苔製造装置1は、アタッチメントチェーンをエンドレスに連結した無端チェーン2によって海苔簀ホルダ3(
図2,
図3を参照)を循環搬送する構成の搬送用コンベア4の搬送径路に沿って、抄き部5、脱水部6、剥ぎ部7、ホルダ洗浄部9を配設し、乾燥室10と組み合わせた構成となっている。
【0022】
無端チェーン2は、1つの駆動スプロケット11と3つの従動スプロケット12~14に横長長方形状に掛け回され(上下2段構成 上段側の搬送用コンベア4U、下段側の搬送用コンベア4L)、海苔簀ホルダ3を両持ちで保持するために、
図1の紙面垂直方向の同じ高さ位置に一対対向配置されている。そして、駆動スプロケット11を、例えば、駆動モータ(図示せず)によって回転駆動させることにより(
図1の矢印Aを参照)、無端チェーン2を
図1の時計回りに所定のタイミングで断続的に回転させることができるようにされている。
【0023】
上下2段構成の無端チェーン2からなる搬送用コンベア4の搬送径路のうち、高い位置にある上段側の搬送用コンベア4Uの搬送経路には、搬送方向の上流側から下流側(
図1の左側から右側)に順に抄き部5、脱水部6が配設されている。また、搬送用コンベア4の搬送径路のうち、低い位置にある下段側の搬送用コンベア4Lの搬送経路には、搬送方向の上流側から下流側(
図1の右側から左側)に順に剥ぎ部7、ホルダ洗浄部9が配設されている。そして、海苔簀ホルダ3を、抄き部5、脱水部6、乾燥室10、剥ぎ部7、ホルダ洗浄部9に順次搬送するようにされている。
【0024】
脱水後の海苔簀ホルダ3は、搬送用コンベア4の搬送径路のうち、高い位置にある上段側の搬送用コンベア4Uの搬送経路から乾燥室10内に搬入される。乾燥室10は、例えば、上段コンベアと下段コンベアとからなる2段の乾燥用コンベア(図示せず)を備えており、海苔簀ホルダ3に保持された海苔簀3c(
図2を参照)上の生海苔は、当該乾燥用コンベアによって乾燥室10内を移動する間に乾燥して乾海苔16となる。乾燥後の海苔簀ホルダ3は、搬送用コンベア4の搬送径路のうち、低い位置にある下段側の搬送用コンベア4Lの搬送経路に受け渡される。
【0025】
抄き部5は、海苔簀ホルダ3に保持された海苔簀3c上に生海苔を抄き上げる処理を行う。
脱水部6は、抄き部5によって抄き上げられた海苔簀3c上の生海苔を脱水する。海苔製造装置1において、脱水部6は、搬送方向の上流側から下流側に順に配設された、海苔簀3cの上面に抄製した海苔生地から水分を吸引して脱水を行う吸引脱水部6aと、海苔生地にスポンジ状のパッドを押圧して脱水を行うプレス脱水部6bと、により構成されている。
剥ぎ部7は、海苔簀ホルダ3に保持された海苔簀3cから乾海苔16を剥ぎ取る。海苔製造装置1において、剥ぎ部7は、搬送方向の上流側から下流側に順に配設された、乾海苔16の端部(耳)のみを海苔簀3cから剥離する予備剥ぎ部(耳剥ぎ部)7aと、乾海苔16を海苔簀3cから全面剥離する本剥ぎ部(海苔剥ぎ装置)7bと、により構成されている。
ホルダ洗浄部9は、乾海苔16が剥ぎ取られた海苔簀ホルダ3を水によって洗浄する。洗浄後の海苔簀ホルダ3は、再び抄き部5に搬送される。
【0026】
[海苔簀ホルダの構成]
次に、海苔製造装置の構成部材である海苔簀ホルダの構成について、
図2,
図3を参照しながら説明する。
【0027】
図2は、シート状の乾海苔を製造する海苔製造装置の構成部材である海苔簀ホルダを説明するための図((a)は平面図、(b)は側面図)、
図3は、
図2に示す海苔簀ホルダの拡大側面図である。
尚、
図2(a),
図3に示す「搬送方向」は、海苔製造装置1において海苔簀ホルダ3が下段側の搬送用コンベア4Lによって搬送される方向を示している。
【0028】
図2,
図3に示すように、生海苔を抄き上げて乾燥するために用いられる海苔簀ホルダ3は、2本の平行な第1の桿部3a,3a(横桿と棒部材)と、当該2本の第1の桿部3a,3aの間に止具3bを介して展張保持された複数(
図2においては、3つ)の海苔簀3cと、を備えている。また、海苔簀ホルダ3は、第1の桿部3a,3aの外側で、当該第1の桿部3a,3aと平行に延びる2本の第2の桿部3d,3d(搬送方向上流側の第2の桿部3dが「横桿」)を備えている。第2の桿部3d,3dには、3つの海苔簀3cを挟んだ状態で当該第2の桿部3d,3dと垂直に延びる2本の連結部材3j,3j(縦桿)が張り渡されている。
【0029】
2本の連結部材3j,3jの内側には、3つの海苔簀3cを挟んだ状態で当該2本の連結部材3j,3jと平行に2本の支持部材3e,3eが設けられている。
支持部材3eの一端部は、搬送方向上流側の第2の桿部3d(横桿)の下面に固着されており、支持部材3eの他端部は、搬送方向下流側の第2の桿部3dの上面に固着されている。搬送方向上流側の第1の桿部3a(棒部材)は支持部材3eの上面に位置し、搬送方向下流側の第1の桿部3a(横桿)は支持部材3eの下面に位置している。
搬送方向上流側の第1の桿部3a(棒部材)の両端部は、支持部材3e,3eに取り付けられたトーションバネ3i(バネ部材)によって第2の桿部3d(横桿)の上面に固着されたストッパ3hに下方から押し当てられている。また、搬送方向下流側の第1の桿部3a(横桿)の両端部は、支持部材3e,3eに取り付けられたトーションバネ3i(バネ部材)によって第2の桿部3dの下面に固着されたストッパ3hに上方から押し当てられている。そして、これにより、海苔簀3cが展張された展張位置に固定された状態となっている。尚、トーションバネ3i(バネ部材)の自由端部は、海苔簀ホルダ3から搬送方向上流側あるいは下流側に突出した状態となっている。
【0030】
海苔簀3cは、複数の樹脂製の棒状部材3fを並列させて細紐3gで固縛して構成されている。ここで、棒状部材3fとしては、粗度や微細な縞目模様などの表面性状を表裏面で異ならせたものが用いられており、同一性状の面を揃えた形態でこれらの棒状部材3fが並列固縛されている。このようにして製作された海苔簀3cは、表面(おもてめん)と裏面(うらめん)で表面性状が異なっており、使用される生海苔の特性に応じて表面、裏面の2面から、抄き面としてより適した面を選択して用いることが可能となっている。
【0031】
海苔製造装置1における海苔簀ホルダ3の搬送時には、当該海苔簀ホルダ3は、第2の桿部3d,3dの両端部が下面側から支持された状態で搬送される。
【0032】
海苔簀ホルダ3を以上のように構成すれば、海苔簀ホルダの前後の方向性を無くして、例えば、当該海苔簀ホルダを表裏反転させて両面使用することが可能となる。
【0033】
[海苔剥ぎ装置(本剥ぎ部)の構成]
次に、本発明の一実施形態における海苔剥ぎ装置(本剥ぎ部)の構成について、
図4を参照しながら説明する。
【0034】
図4は、本発明の一実施形態における海苔剥ぎ装置の一部を示す側面図である。
尚、
図4に示す「搬送方向」は、海苔製造装置1において海苔簀ホルダ3が下段側の搬送用コンベア4Lによって搬送される方向を示している。
【0035】
図4に示すように、海苔剥ぎ装置(本剥ぎ部)15は、海苔簀3cの下面側に付着する乾海苔16を吸引する吸引面17aが設けられたベルト17を有し、乾海苔16を吸引した状態のベルト17の上段部を、
図4の紙面の垂直手前方向に回動させることにより乾海苔16を搬出する吸引回動ベルト18と、吸引回動ベルト18を昇降させて吸引面17aを海苔簀3cの下面に接離させるベルト昇降手段19と、海苔簀ホルダ3の搬送方向上流側の第1の桿部3a(棒部材)の保持及び保持解除を行うチャック部20と、第1の桿部3a(棒部材)を保持したチャック部20を所定の軌跡で移動させることにより、吸引面17aに吸引された乾海苔16が海苔簀3cから剥ぎ取られるように、海苔簀ホルダ3において海苔簀3cに折り返し動作を行わせるチャック移動手段21と、を備えている。
尚、
図4中、参照符号18aは、吸引チャンバを示している。吸引チャンバ18aは、ベルト17の透孔17bを介してベルト17上の乾海苔16を吸引するものである。
【0036】
チャック移動手段21は、下部にチャック部20が結合された移動部22を、チャック水平移動機構(図示せず)によって駆動されるリンク機構(図示せず)を介して、ガイドビーム23に形成されたガイド溝23aに沿って移動させる構成となっている。これにより、移動部22がガイド溝23aに沿って往復動し(
図4の矢印イ,ロを参照)、これに伴ってチャック部20が水平方向に往復移動するようにされている。
そして、海苔簀ホルダ3の搬送方向上流側の第1の桿部3a(棒部材)を保持した状態でチャック部20を水平方向に往動させることにより(
図4の矢印ィを参照)、海苔簀3cに折り返し動作を行わせることができる。また、折り返し動作後にそのままチャック部20を水平方向に復動させることにより(
図4の矢印ロを参照)、海苔簀3cを展張位置に戻すことができる。
【0037】
少なくともチャック部20を往復移動させる際には(
図4の矢印イ,ロを参照)、吸引回動ベルト18の上面とチャック部20の先端部分とが干渉することがないように、ガイドビーム23(及び当該ガイドビーム23に形成されたガイド溝23a)は、チャック部20の復動方向(
図4の矢印ロを参照)に下傾した状態となっている。
しかし、このままでは、海苔簀ホルダ3において海苔簀3cに折り返し動作を行わせる際の折り返し角度が徐々に開いていき(海苔簀3cを引く角度を鋭角な状態に保つことが困難となり)、乾海苔16と海苔簀3cが離れ難くなる虞がある。また、乾海苔16に掛かる力の上向き成分を小さく抑えることも困難となる。そして、このため、剥ぎ取る際の乾海苔16の破れを完全には防止することができない。
【0038】
本実施形態においては、この課題を解決するために、次のような構成を採用している。
すなわち、本実施形態において、吸引回動ベルト18は、ガイドビーム23に対応させて、乾海苔16の剥ぎ取り時におけるチャック部20の移動方向と反対の方向(チャック部20の復動方向(
図4の矢印ロを参照)に下傾した状態となっている。この場合の、水平面からの傾斜角度αは、ガイドビーム23の水平面からの傾斜角度βの概ね半分程度である。
【0039】
本実施形態の海苔剥ぎ装置(本剥ぎ部)15のかかる構成は、次のような作用効果を奏する。
すなわち、かかる構成によれば、海苔簀ホルダ3の搬送方向上流側の第1の桿部3a(棒部材)を保持した状態のチャック部20の先端部分を、吸引回動ベルト18の上面と干渉しない程度に当該吸引回動ベルト18の上面に近接させることが可能となる。そして、その結果、海苔簀ホルダ3において海苔簀3cに折り返し動作を行わせる際の(
図4の矢印イを参照)折り返し角度γを小さく抑えることができ(海苔簀3cを引く角度を鋭角な状態に保つことができ)、乾海苔16と海苔簀3cの離れが良好となる。また、乾海苔16に掛かる力の上向き成分を極力小さく抑えることもできる。
したがって、かかる構成によれば、剥ぎ取る際の乾海苔16の破れをさらに確実に防止して乾海苔16の品質向上を確実なものとすることが可能となる。
【0040】
以下、さらに詳細に説明する。
本実施形態の海苔剥ぎ装置15の構成において、吸引回動ベルト18の水平面に対する傾き角度は、0°を超え、かつ、5°以下の範囲にあることが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、海苔簀ホルダ3の搬送方向上流側の第1の桿部3a(棒部材)を保持した状態のチャック部20を往復移動させる際の、当該チャック部20の先端部分を、確実に、吸引回動ベルト18の上面と干渉しない程度に当該吸引回動ベルト18の上面に近接させることが可能となる。
【0041】
また、本実施形態の海苔剥ぎ装置15の構成において、吸引回動ベルト18の水平面に対する傾き角度は、約2~3°の範囲にあることがさらに好ましい。
かかる好ましい構成によれば、海苔簀ホルダ3において海苔簀3cに折り返し動作を行わせる際に乾海苔16に負担を掛けない傾き角度とすることができる。
【0042】
また、本実施形態の海苔剥ぎ装置15の構成においては、吸引回動ベルト18の傾きが調整可能となっていることが好ましい。
かかる好ましい構成によれば、海苔簀ホルダ3において海苔簀3cに折り返し動作を行わせる際に乾海苔16に最も負担を掛けない傾き角度に調整することが可能となる。
【0043】
図4中、参照符号24はガイド部材を示し、参照符号24aはガイド部材昇降機構を示している。かかる構成部材を備えることにより、吸引回動ベルト18の上昇に先立って、海苔簀ホルダ3の搬送方向の位置を固定するために、ガイド部材24をガイド部材昇降機構24aによって上昇させて、海苔簀ホルダ3の搬送方向上流側の第2の桿部3d(横桿)をガイドすることができる。すなわち、ガイド部材24及びガイド部材昇降機構24aは、本剥ぎ部7b(
図1を参照)に位置する海苔簀ホルダ3の搬送方向の位置を固定するガイド機構となっている。
【0044】
また、
図4中、参照符号25は押圧部材を示し、参照符号25aは押圧部材昇降機構を示している。本剥ぎ部7bにおいて、ガイド部材24によって位置が固定された状態の海苔簀ホルダ3から搬送方向上流側に突出したトーションバネ3i(バネ部材)の自由端部の上方には、押圧部材昇降機構25aによって昇降駆動される押圧部材25が配設されている。そして、押圧部材昇降機構25aによって押圧部材25を下降させることにより、当該押圧部材25が海苔簀ホルダ3から搬送方向上流側に突出したトーションバネ3i(バネ部材)の自由端部を下方に押圧し、海苔簀ホルダ3において展張位置に位置する第1の桿部3a(棒部材)のストッパ3hへの押し当て(
図2を参照)を解除することができる。
【0045】
[ベルトの構成]
次に、本発明の一実施形態における海苔剥ぎ装置(本剥ぎ部)の構成部材であるベルトの具体的構成について、
図5をも参照しながら説明する。
【0046】
図5は、本発明の一実施形態における海苔剥ぎ装置の構成部材であるベルトの一部を示す平面図である。
尚、
図5に示す「搬送方向」は、海苔製造装置1において海苔簀ホルダ3が下段側の搬送用コンベア4Lによって搬送される方向を示している。また、
図5に示す「回動方向」は、ベルト17の上段部が回動する方向を示している。
【0047】
ベルト17は、上段部と下段部を有する無端ベルト(エンドレスベルト)である。
図4,
図5に示すように、ベルト17のほぼ全面には、直径約6mmの複数の透孔17bが形成されており、吸引チャンバ18aを駆動させることにより、当該透孔17bから吸引し、ベルト17の吸引面17aに乾海苔16を吸着保持できるようにされている。
【0048】
ベルト17に形成される複数の透孔17bは、例えば、
図5に示すような配列構成となっている。
すなわち、透孔17bは、ベルト17の幅方向に千鳥状に配列されており、それがベルト17の長手方向に等間隔で並べられた構成となっている。そして、ベルト17の幅方向の中間部分は、その中央部を除いて、幅方向の前側部分及び後側部分よりも所定面積当たりの透孔17bの数が少なくなっている(約半分程度)。
尚、幅方向の前側部分及び後側部分における透孔17bの密度は、ベルト17の強度が低下しない程度の密度であればよい。
【0049】
ベルト17をこのような構成とすることにより、次のような作用効果が得られる。
すなわち、従来のベルトにおける透孔は、その全面に均一な密度で形成されていた(透孔の直径は約6mmであり、密度はベルトの強度が低下しない程度の密度である)。このため、乾海苔の吸着時に、乾海苔の中間部分で、ベルトと乾海苔との間に空気が入り、乾海苔が折れてシワになる虞があった。
これに対し、本実施形態のベルト17の構成によれば、ベルト17の幅方向の中間部分(中央部を除く)における所定面積当たりの透孔17bの数を少なくしたことにより、乾海苔16の中間部分で吸引力が減少し、ベルト17と乾海苔16との間に空気が入りにくくなるため、乾海苔16が折れてシワになることを防止することができる。
また、本実施形態のベルト17の構成によれば、ベルト17の幅方向の中間部分(中央部を除く)における所定面積当たりの透孔17bの数を少なくしたことにより、乾海苔16の前側部分と後側部分で吸引力が増大して吸着が強くなり、海苔簀ホルダ3において海苔簀3cに折り返し動作を行わせる際の乾海苔16と海苔簀3cの離れが良好となる(さらなる剥ぎ能力の向上)。
したがって、本実施形態のベルト17の構成によれば、剥ぎ取る際の乾海苔16のシワの発生を防止するとともに、更なる剥ぎ能力の向上を図って、乾海苔16の品質向上を確実なものとすることが可能となる。
【0050】
尚、本実施形態においては、ベルト17の幅方向の中間部分が、その中央部を除いて、幅方向の前側部分及び後側部分よりも所定面積当たりの透孔17bの数が少なくなっている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。ベルト17の幅方向の中間部分の少なくとも一部が、幅方向の前側部分及び後側部分よりも所定面積当たりの透孔の数が少なくなっていればよい。例えば、ベルト17の幅方向の中間部分の全面が、幅方向の前側部分及び後側部分よりも所定面積当たりの透孔17bの数が少なくなっていてもよい。また、ベルト17の幅方向の中間部分は、透孔17bの密度が大きい領域と透孔17bの密度が小さい領域とが交互にストライプ状に存在する構成であってもよい。
また、ベルト17の透孔17bは、その全面に均一な密度で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 海苔製造装置
2 無端チェーン
3 海苔簀ホルダ
3a 第1の桿部(横桿と棒部材)
3b 止具
3c 海苔簀
3d 第2の桿部(搬送方向上流側の第2の桿部3dが「横桿」)
3e 支持部材
3f 棒状部材
3g 細紐
3h ストッパ
3i トーションバネ(バネ部材)
3j 連結部材(縦桿)
4 搬送用コンベア
4L 下段側の搬送用コンベア
4U 上段側の搬送用コンベア
5 抄き部
6 脱水部
6a 吸引脱水部
6b プレス脱水部
7 剥ぎ部
7a 予備剥ぎ部(耳剥ぎ部)
7b 本剥ぎ部(海苔剥ぎ装置)
9 ホルダ洗浄部
10 乾燥室
11 駆動スプロケット
12~14 従動スプロケット
15 海苔剥ぎ装置(本剥ぎ部)
16 乾海苔
17 ベルト
17a 吸引面
17b 透孔
18 吸引回動ベルト
18a 吸引チャンバ
19 ベルト昇降手段
20 チャック部
21 チャック移動手段
22 移動部
23 ガイドビーム
23a ガイド溝
24 ガイド部材
24a ガイド部材昇降機構
25 押圧部材
25a 押圧部材昇降機構
【要約】
【課題】剥ぎ取る際の乾海苔の破れをさらに確実に防止して乾海苔の品質向上を確実なものとすることが可能な海苔剥ぎ装置を提供する。
【解決手段】海苔剥ぎ装置15は、海苔簀3cの下面側に付着する乾海苔16を吸引する吸引面17aが設けられたベルト17を有し、乾海苔16を吸引した状態のベルト17を回動させることにより乾海苔16を搬出する吸引回動ベルト18と、棒部材3aの保持及び保持解除を行うチャック部20と、棒部材3aを保持したチャック部20を所定の軌跡で移動させることにより、吸引面17aに吸引された乾海苔16が海苔簀3cから剥ぎ取られるように、海苔簀ホルダにおいて海苔簀3cに折り返し動作を行わせるチャック移動手段21と、を備えている。吸引回動ベルト18は、乾海苔16の剥ぎ取り時におけるチャック部20の移動方向と反対の方向に下傾している。
【選択図】
図4