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特許7253866トリアジン誘導体を含有する経口投与する製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】トリアジン誘導体を含有する経口投与する製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/53 20060101AFI20230331BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230331BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230331BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230331BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230331BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230331BHJP
   C07D 403/14 20060101ALN20230331BHJP
【FI】
A61K31/53
A61K9/20
A61P31/14
A61P43/00 111
A61K47/38
A61K47/32
C07D403/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022574839
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2022043092
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】202211151791.9
(32)【優先日】2022-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】P 2021189932
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021191635
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022006725
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022012386
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022017132
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022027629
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022046304
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022142767
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001926
【氏名又は名称】塩野義製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113789
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100209598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 秀昭
(74)【代理人】
【識別番号】100219841
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 綾子
(72)【発明者】
【氏名】五味 真人
(72)【発明者】
【氏名】堀内 健佑
(72)【発明者】
【氏名】森本 甫享
(72)【発明者】
【氏名】高垣 恵介
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/138987(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/138988(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/158528(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/212314(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/087884(WO,A1)
【文献】特表2002-509140(JP,A)
【文献】特許第7105430(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(VII):
【化1】

で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの複合体を有効成分として含有する、経口投与する固形製剤。
【請求項2】
有効成分が、式(VII)で示される化合物の複合体であり、当該複合体がフマル酸を含む複合体である、請求項1記載の経口投与する固形製剤。
【請求項3】
当該複合体が、式(VII)で示される化合物およびフマル酸が1:1のモル比の共結晶である、請求項2記載の経口投与する固形製剤。
【請求項4】
高分子を製剤中に含有する、請求項1~3のいずれかに記載の経口投与する固形製剤。
【請求項5】
高分子が、セルロース系高分子、アクリル酸系高分子、ビニル系高分子から選択される1以上である、請求項4記載の経口投与する固形製剤。
【請求項6】
有効成分として式(VII)で示される化合物が125mg含まれる、請求項1記載の経口投与する固形製剤。
【請求項7】
式(VII)で示される化合物およびフマル酸のモル比が1:1である複合体を152.3mg含む、請求項6記載の経口投与する固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリアジン誘導体を含有する、経口投与する製剤に関する。詳しくは、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を示すトリアジン誘導体、その製薬上許容される塩またはそれらの複合体を有効成分として含有する、経口投与する製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ニドウイルス目コロナウイルス科オルトコロナウイルス亜科に属するコロナウイルスは、約30キロベースのゲノムサイズを有し、既知のRNAウイルスでは最大級の一本鎖+鎖RNAウイルスである。コロナウイルスはアルファコロナウイルス属、ベータコロナウイルス属、ガンマコロナウイルス属およびデルタコロナウイルス属の4つに分類され、ヒトに感染するコロナウイルスとして、アルファコロナウイルス属の2種類(HCoV-229E、HCoV-NL63)およびベータコロナウイルス属の5種類(HCoV-HKU1、HCoV-OC43、SARS-CoV、MERS-CoV、SARS-CoV-2)の計7種類が知られている。この内、4種類(HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、HCoV-OC43)は風邪の病原体であるが、残りの3種類は重症肺炎を引き起こす重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス(MERS-CoV)および新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)である。
【0003】
2019年12月に中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は急速に国際社会に蔓延し、2020年3月11日にWHOよりパンデミックが表明された。2022年9月21日時点で確認された感染者数は6.1億人以上、死者数は650万人以上に達する(非特許文献1)。SARS-CoV-2の主な感染経路として飛沫感染、接触感染およびエアロゾル感染が報告されており、SARS-CoV-2は3時間程度エアロゾルと共に空気中を漂い続け、感染力を維持することが確認されている(非特許文献2)。潜伏期間は2~14日程度であり、発熱(87.9%)、空咳(67.7%)、倦怠感(38.1%)、痰(33.4%)等の風邪様症状が典型的である(非特許文献3)。重症例では、急性呼吸窮迫症候群や急性肺障害、間質性肺炎等による呼吸器不全が起こる。また、腎不全や肝不全などの多臓器不全も報告されている。
【0004】
本邦においては、既存薬のドラッグリポジショニングから、抗ウイルス薬であるレムデシビル、抗炎症薬であるデキサメタゾン、リウマチ薬であるバリシチニブがCOVID-19に対する治療薬として承認され、2022年1月に抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブが追加承認されている。また、2021年7月に、抗体カクテル療法であるロナプリーブ(カシリビマブ/イムデビマブ)が特例承認され、2021年9月にソトロビマブが特例承認され、2021年12月にモルヌピラビルが特例承認された。これらの薬剤についての有効性や安全性については、十分なエビデンスが得られていない。したがって、COVID-19に対する治療薬の創製は急務である。
【0005】
コロナウイルスは、細胞に感染すると、2つのポリタンパク質を合成する。この2つのポリタンパク質中には、ウイルスゲノムを作る複製複合体、2つのプロテアーゼが含まれている。プロテアーゼは、ウイルスから合成されたポリタンパク質を切断し、それぞれのタンパク質を機能させるために不可欠な働きをする。2つのプロテアーゼのうち、ポリタンパク質の切断のほとんどを担うのが、3CLプロテアーゼ(メインプロテアーゼ)である(非特許文献4)。
3CLプロテアーゼを標的とした、COVID-19治療薬としては、2021年6月、Pfizer社によるPF-00835231のプロドラッグであるLufotrelvir(PF-07304814)のPhase1b試験の完了がClinicalTrials.govに掲載された(NCT04535167)。また、2021年3月、Pfizer社は新型コロナウイルス感染症に対する治療薬PF-07321332のPhase1試験を開始すると発表した。PF-00835231、LufotrelvirおよびPF-07321332の構造式は以下に示す通りで、本発明化合物とは化学構造が異なる(非特許文献5、12および13、ならびに特許文献6および7)。
PF-00835231:
【化1】

Lufotrelvir(PF-07304814):
【化2】

PF-07321332:
【化3】

さらに2021年7月、ハイリスク因子を持つCOVID-19患者を対象とした、PF-07321332およびリトナビル併用のPhase2/3試験が開始されることがClinicalTrials.govに掲載された(NCT04960202)。また、2021年11月、Pfizer社のホームページにおいて、PAXLOVID(TM)(PF-07321332;リトナビル)は、成人のハイリスク患者において、プラセボと比較して入院または死亡のリスクを89%減少させたことが報告された(非特許文献14)。さらに、2021年12月、PAXLOVID(TM)は米国で緊急使用許可が承認され、2022年2月10日にパキロビッド(登録商標)パックが日本で特例承認された。
【0006】
3CLプロテアーゼ阻害活性を有する化合物が非特許文献5~8に開示されているが、いずれの文献においても本発明に関連する化合物、製造方法および合成中間体は記載も示唆もされていない。
Ρ2Xおよび/またはΡ2X2/3受容体拮抗作用を有するトリアジン誘導体およびウラシル誘導体が特許文献1~4および8~12に開示されているが、いずれの文献においても、3CLプロテアーゼ阻害活性および抗ウイルス効果については記載も示唆もされていない。また、本発明に係る製造方法および合成中間体は記載も示唆もされていない。
抗腫瘍効果を有するトリアジン誘導体が非特許文献9~11に開示されているが、いずれの文献においても、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性および抗ウイルス効果については記載されておらず、また、本発明に関連する化合物、製造方法および合成中間体は記載も示唆もされていない。
ガラニン受容体調節作用を有するトリアジン誘導体が特許文献5に開示されているが、いずれの文献においても、3CLプロテアーゼ阻害活性および抗ウイルス効果については記載も示唆もされていない。また、本発明に係る製造方法および合成中間体は記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2012/020749号
【文献】国際公開第2013/089212号
【文献】国際公開第2010/092966号
【文献】国際公開第2014/200078号
【文献】国際公開第2012/009258号
【文献】国際公開第2021/205298号
【文献】国際公開第2021/250648号
【文献】中国特許出願公開第113620888号明細書
【文献】中国特許出願公開第113666914号明細書
【文献】中国特許出願公開第113735838号明細書
【文献】中国特許出願公開第113773300号明細書
【文献】中国特許出願公開第113801097号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】“COVID-19 Dashboard by the Center for Systems Science and Engineering at Johns Hopkins University”、[online]、Johns Hopkins University、[2022年9月21日検索]、インターネット<URL:https://coronavirus.jhu.edu/map.html>
【文献】The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE(2020年)、382巻、1564~1567頁
【文献】“Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)”、[online]、2020年2月28日、WHO、[2021年2月8日検索]、インターネット<URL:https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/who-china-joint-mission-on-covid-19-final-report.pdf>
【文献】Science(2003年)、300巻、1763~1767頁
【文献】“A comparative analysis of SARS-CoV-2 antivirals characterizes 3CLpro inhibitor PF-00835231 as a potential new treatment for COVID-19”、Journal of Virology、2021年4月26日、[2022年2月15日検索]、インターネット<URL: https://journals.asm.org/doi/10.1128/JVI.01819-20><doi: 10.1128/JVI.01819-20>
【文献】Cell Research(2020年)、30巻、678~692頁
【文献】Science(2020年)、368巻、409~412頁
【文献】ACS Central Science(2021年)、7巻、3号、467~475頁
【文献】Cancer Treatment Reviews(1984年)、11巻、Supplement 1、99~110頁
【文献】Contributions to Oncology(1984年)、18巻、221~234頁
【文献】Arzneimittel-Forschung(1984年)、11巻、6号、663~668頁
【文献】261st Am Chem Soc (ACS) Natl Meet ・ 2021-04-05 / 2021-04-16 ・ Virtual, N/A ・ Abst 243
【文献】Science(2021年)、374巻、1586~1593頁
【文献】"Pfizer’s Novel COVID-19 Oral Antiviral Treatment Candidate Reduced Risk Of Hospitalization Or Death By 89% In Interim Analysis Of Phase 2/3 EPIC-HR Study"、[online]、2021年11月5日、 Pfizer Press Release、[2022年2月15日検索]、インターネット<URL:https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizers-novel-covid-19-oral-antiviral-treatment-candidate>
【文献】AIMECS 2021(AFMC International Medicinal Chemistry Symposium 2021)、オンラインシンポジウム、2021年11月29日-12月2日
【文献】bioRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2022.01.26.477782、“Discovery of S-217622, a Non-Covalent Oral SARS-CoV-2 3CL Protease Inhibitor Clinical Candidate for Treating COVID-19”
【文献】J.Med.Chem.(2022年)、65巻、6499~6512頁、“Discovery of S-217622, a Noncovalent Oral SARS-CoV-2 3CL Protease Inhibitor Clinical Candidate for Treating COVID-19”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を示すトリアジン誘導体、その製薬上許容される塩またはそれらの複合体の製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を示すトリアジン誘導体、その製薬上許容される塩またはそれらの複合体を有効成分として含有する、経口投与する製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下に関する。
(1)式(I):
【化4】

(式中、Rは置換もしくは非置換のC1-C4アルキル、Rはそれぞれ独立して、ハロゲン、シアノまたはメチル、nは1~5の整数である。)で示される化合物またはその塩と、式(II):
【化5】

(式中、Rはそれぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1-C4アルキル、mは0~5の整数である)で示される化合物またはその塩を、酸存在下で反応させることを特徴とする、式(III):
【化6】

で示される化合物またはその塩の製造方法。
(2)酸が、トリフルオロ酢酸である、上記(1)記載の製造方法。
(3)式(III)で示される化合物が、式(III-1):
【化7】

である、上記(1)または(2)記載の製造方法。
(4)式(IV):
【化8】

(式中、Rは置換もしくは非置換の芳香族複素環式基、または置換もしくは非置換の芳香族炭素環式基であり、pは0または1であり、その他の記号は上記(1)と同意義である。)で示される化合物またはその塩と、式(V):
【化9】

(式中、Rはそれぞれ独立して、ハロゲン、または置換もしくは非置換のアルキルであり、qは0~5の整数である。)またはその塩を、酸存在下で反応させることを特徴とする、式(VI):
【化10】

(式中の記号は上記と同意義である。)で示される化合物またはその塩またはそれらの溶媒和物の製造方法。
(5)酸が酢酸である、上記(4)記載の製造方法。
(6)式(VI)で示される化合物が、
式(VII):
【化11】

である、上記(4)または(5)記載の製造方法。
(7)上記(1)~(3)のいずれかの製造方法より、式(III):
【化12】

で示される化合物またその塩を得る工程を含む、式(VII):
【化13】

で示される化合物、またその塩またはそれらの溶媒和物の製造方法。
(8)式(VII):
【化14】

で示される化合物またはその塩を、フマル酸、アセトンおよび水存在下で結晶化することを特徴とする、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の製造方法。
(9)上記(1)~(7)のいずれかに記載の製造方法を使用することにより得られた式(VII):
【化15】

で示される化合物またはその塩を、結晶化させることを特徴とする、上記(8)記載の製造方法。
(10)結晶化温度が40~60℃であり、結晶化時間が120分以上である、上記(8)または(9)記載の製造方法。
(11)式(VIII):
【化16】

で示される化合物、またはその塩。
(12)式(IX):
【化17】

で示される化合物、またはその塩。
(13)式(X):
【化18】

で示される化合物、またはその塩。
(14)式(XI):
【化19】

で示される化合物、またはその塩。
(15)式(VII):
【化20】

で示される化合物のトルエン和物。
(16)実質的に、式(VII):
【化21】

で示される化合物のフリー体が含まれない、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形。
(17)以下の式:
【化22】

で示される化合物のメシル酸塩。
(18)以下の式:
【化23】

で示される化合物のメシル酸塩。
(19)以下の式:
【化24】

で示される化合物、またはその塩。
(20)以下の式:
【化25】

で示される化合物、またはその塩。
(21)以下の式:
【化26】

で示される化合物の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン塩である、上記項目(20)記載の塩。
(22)式(VII):
【化27】
で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの複合体を有効成分として含有する、経口投与する製剤(医薬組成物)。
(23)有効成分が、式(VII)で示される化合物の複合体であり、当該複合体がフマル酸を含む複合体である、上記(22)記載の製剤(医薬組成物)。
(24)当該複合体が、式(VII)で示される化合物およびフマル酸が1:1のモル比の共結晶である、上記(23)記載の製剤(医薬組成物)。
(25)高分子を製剤中に含有する、上記(22)~(24)のいずれかに記載の製剤(医薬組成物)。
(26)高分子がセルロース系高分子、アクリル系高分子、ビニル系高分子から選択される1以上である、上記(25)記載の製剤(医薬組成物)。
(27)有効成分が、上記(4)~(10)のいずれかに記載の方法により得られた化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの複合体である、上記(22)~(26)のいずれかに記載の製剤(医薬組成物)。
(28)コロナウイルス感染症を治療および/または予防するための、上記(22)~(27)のいずれかに記載の製剤(医薬組成物)。
(29)コロナウイルス感染症が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)である、上記(28)記載の製剤(医薬組成物)。
(30)有効成分として式(VII)で示される化合物が125.0mg含まれる、上記(22)記載の製剤。
(31)式(VII)で示される化合物およびフマル酸のモル比が1:1である複合体を152.3mg含む、上記(23)記載の製剤。
(32)有効成分として式(VII)で示される化合物が250.0mg含まれる、上記(22)記載の製剤。
(33)式(VII)で示される化合物およびフマル酸のモル比が1:1である複合体を304.6mg含む、上記(23)記載の製剤。
(34)有効成分として式(VII)で示される化合物が25.0mg含まれる、上記(22)記載の製剤。
(35)式(VII)で示される化合物およびフマル酸のモル比が1:1である複合体を30.46mg含む、上記(23)記載の製剤。
(36)12歳以上の小児及び成人に用いる、上記(22)~(35)のいずれかに記載の製剤。
(37)6歳以上12歳未満の小児に用いる、上記(22)~(35)のいずれかに記載の製剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る製造方法により製造された化合物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼに対する阻害活性を有し、コロナウイルス感染症の治療剤および/または予防剤として有用である。
また、本発明に係る製造方法により製造された化合物は、医薬原体として有用である。
さらに、本発明に係る製造方法により製造された化合物(I-0005)のフマル酸共結晶を含有する医薬組成物は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療剤として非常に有用である。本発明に係る製造方法は、本発明に係る化合物を収率よく製造することが出来る方法である。
本発明に係る、経口投与する製剤(医薬組成物)は、コロナウイルス3CLプロテアーゼに対する阻害活性を有し、コロナウイルス感染症の治療剤および/または予防剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例aにおける式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の粉末X線回折パターンを示す。横軸は2θ(°)で、縦軸は強度(Count)を表す。
図2図1の粉末X線解析パターンのピークリストを示す。
図3】式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の非対称単位中の構造を示す。
図4図1の粉末X線解析パターンを示した式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の、DSC分析結果を示す。横軸は温度(℃)を、縦軸は熱量(W/g)を表す。
図5図1の粉末X線解析パターンを示した式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の、TG/DTA分析結果を示す。縦軸は熱量(μV)又は重量変化(%)を示し、横軸は温度(℃)を示す。図中のCelは、セルシウス度(℃)を意味する。
図6図1の粉末X線解析パターンを示した式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の、DVS分析結果を示す。湿度を変化させても実質的な重量変化はみられず、当該結晶は水分に対して安定であった。
図7】実施例1aの工程4で得られた化合物I-005のHPLC測定結果を示す。式(VII)で示される化合物(化合物I-005)のpa%(ピーク面積%)は約95pa%であった。
図8】工程4’で得られた化合物I-005のHPLC測定結果を示す。式(VII)で示される化合物(化合物I-005)のpa%は約99pa%であった。
図9】実施例bにおける、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の粉末X線回折パターンを示す。横軸は2θ(°)で、縦軸は強度(Count)を表す。
図10図9の粉末X線解析パターンのピークテーブルを示す。
図11】式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の非対称単位中の構造図を示す。
図12】実施例1bの工程5-1で得られた式(VII)で示される化合物の未乾結晶のHPLCの結果を示す。式(VII)で示される化合物のpa%は約99pa%であった。
図13図12において、トルエン由来のピーク(RT=約9.8min)を除いた解析結果を示す。式(VII)で示される化合物のpa%は約99.7pa%であり、各不純物は約0.1pa%以下であった。
図14】実施例1bの工程5-2で得られた式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の、DSC分析結果を示す。
図15】実施例1bの工程5-2で得られた式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の、TG/DTA分析結果を示す。150℃までの重量減少は0.28%であった。
図16】実施例1bの工程5-2で得られた式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の、HPLCの結果を示す。
図17】実施例1bの工程5-2で得られた式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の粒度分布を示す。D50は25.35μm、D90は73.56μmであった。
図18】実施例1bの工程5-2で得られた式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)のDVS分析結果を示す。湿度を変化させても実質的な重量変化はみられず、当該結晶は水分に対して安定であった。
図19図18のDVS測定前後での粉末X線解析パターンの比較を示す。DVS測定の前後で結晶形は変化せず、安定であった。
図20】式(VII)で示される化合物のトルエン和物の粉末X線回折パターンを示す。横軸は2θ(°)で、縦軸は強度(Count)を表す。
図21】実施例6の溶出挙動を示す。横軸は時間(分)、縦軸は溶出率(%)を表す。
図22】実施例6Aおよび6Bの製剤に用いた有効成分(式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶)の粒度分布を示す。
図23】実施例6Cおよび6Dの製剤に用いた有効成分(式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶)の粒度分布を示す。
図24】Phase 2a PartのSARS-CoV-2のウイルス力価のベースラインからの変化量を示す。縦軸はウイルス力価のベースラインからの変化量 (log10 (TCID50/mL))、横軸は評価時点を示す。
図25】ウイルス力価陰性が最初に確認されるまでの時間を示す。縦軸はSARS-CoV-2ウイルス力価陰性者の割合(単位:%)を示す。横軸は治療開始からの時間(単位:時間)を示す。
図26】各時点におけるCOVID-19の12症状合計スコアのベースラインからの変化量を示す。縦軸はCOVID-19の12症状合計スコアのベースラインからの変化量を示す。横軸は評価時点を示す。
図27】実施例10の溶出挙動を示す。横軸は時間(分)、縦軸は含量補正した溶出率(%)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本明細書において用いられる各用語の意味を説明する。各用語は特に断りのない限り、単独で用いられる場合も、または他の用語と組み合わせて用いられる場合も、同一の意味で用いられる。
「からなる」という用語は、構成要件のみを有することを意味する。
「含む」または「含有する」という用語は、構成要件に限定されず、記載されていない要素を排除しないことを意味する。
また、本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。
また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当上記分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0014】
「ハロゲン」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子を包含する。特にフッ素原子および塩素原子が好ましい。
【0015】
「アルキル」とは、炭素数1~15、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6、さらに好ましくは炭素数1~4の直鎖又は分枝状の炭化水素基を包含する。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、n-へプチル、イソヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、n-ノニル、n-デシル等が挙げられる。
「アルキル」の好ましい態様として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチルが挙げられる。さらに好ましい態様として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、tert-ブチルが挙げられる。
「C1-C4アルキル」とは、炭素数1~4の直鎖又は分枝状の炭化水素基を包含する。例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等が挙げられる。
【0016】
「芳香族炭素環式基」とは、単環または2環以上の、環状芳香族炭化水素基を意味する。例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル等が挙げられる。6員芳香族炭素環式基としては、例えば、フェニルが挙げられる。10員芳香族炭素環式基としては、例えば、ナフチル等が挙げられる。14員芳香族炭素環式基としては、例えば、アントリル、フェナントリル等が挙げられる。
「芳香族炭素環式基」の好ましい態様として、フェニルが挙げられる。
【0017】
「芳香族炭素環」とは、上記「芳香族炭素環式基」から導かれる環を意味する。
【0018】
「芳香族複素環式基」とは、O、SおよびNから任意に選択される同一または異なるヘテロ原子を環内に1以上有する、単環または2環以上の、芳香族環式基を意味する。
2環以上の芳香族複素環式基は、単環または2環以上の芳香族複素環式基に、上記「芳香族炭素環式基」における環が縮合したものも包含し、該結合手はいずれの環に有していても良い。
単環の芳香族複素環式基としては、5~8員が好ましく、より好ましくは5員または6員である。5員芳香族複素環式基としては、例えば、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル等が挙げられる。6員芳香族複素環式基としては、例えば、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル等が挙げられる。
2環の芳香族複素環式基としては、8~10員が好ましく、より好ましくは9員または10員である。例えば、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、プリニル、プテリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル、イソベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、イミダゾピリジル、トリアゾロピリジル、イミダゾチアゾリル、ピラジノピリダジニル、オキサゾロピリジル、チアゾロピリジル等が挙げられる。9員芳香族複素環式基としては、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、プリニル、ベンズイミダゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾフラニル、イミダゾピリジル、トリアゾロピリジル、オキサゾロピリジル、チアゾロピリジル等が挙げられる。10員芳香族複素環式基としては、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、プテリジニル、ピラジノピリダジニル等が挙げられる。
3環以上の芳香族複素環式基としては、13~15員が好ましい。例えば、カルバゾリル、アクリジニル、キサンテニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、ジベンゾフリル等が挙げられる。
「芳香族複素環式基」の好ましい態様として、トリアゾリルが挙げられる。
【0019】
「芳香族複素環」とは、上記「芳香族複素環式基」から導かれる環を意味する。
【0020】
「置換アルキル」の置換基としては、次の置換基群Aが挙げられる。任意の位置の炭素原子が次の置換基群Aから選択される1以上の基と結合していてもよい。
置換基群A:ハロゲン、シアノおよびニトロ。
「置換C1-C4アルキル」の置換基としては、次の置換基群Bが挙げられる。任意の位置の炭素原子が次の置換基群Bから選択される1以上の基と結合していてもよい。
置換基群B:ハロゲン、シアノおよびニトロ。
【0021】
「置換芳香族炭素環式基」および「置換芳香族複素環式基」等の「芳香族炭素環」および「芳香族複素環」の環上の置換基としては、次の置換基群Cが挙げられる。環上の任意の位置の原子が次の置換基群Bから選択される1以上の基と結合していてもよい。
置換基群C:ハロゲン、シアノ、ニトロおよびアルキル。
【0022】
式(VI)および式(VII)で示される化合物は、特定の異性体に限定するものではなく、全ての可能な異性体(例えば、ケト-エノール異性体、イミン-エナミン異性体、ジアステレオ異性体、光学異性体、回転異性体等)、ラセミ体またはそれらの混合物を含む。
【化28】

例えば、式(VII)で示される化合物や化合物I-005は、以下のような互変異性体を包含する。
【化29】
【0023】
実質的に、式(VII):
【化30】

で示される化合物のフリー体が含まれない、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形とは、粉末X線回折測定等の測定機器で、式(VII)で示される化合物のフリー体由来のピークが検出されない(検出限界以下である)、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形を意味する。
【0024】
さらに、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および、式(XI)(以下、式(VII)等とする)で示される化合物の一つ以上の水素、炭素および/または他の原子は、それぞれ水素、炭素および/または他の原子の同位体で置換され得る。そのような同位体の例としては、それぞれH、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、123Iおよび36Clのように、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、ヨウ素および塩素が包含される。式(VII)等で示される化合物は、そのような同位体で置換された化合物も包含する。該同位体で置換された化合物は、医薬品としても有用であり、式(VII)等で示される化合物のすべての放射性標識体を包含する。また該「放射性標識体」を製造するための「放射性標識化方法」も本発明に包含され、該「放射性標識体」は、代謝薬物動態研究、結合アッセイにおける研究および/または診断のツールとして有用である。
また、本発明の結晶は重水素変換体であってもよい。本発明の結晶は同位元素(例、H、14C、35S、125I等)で標識されていてもよい。
【0025】
式(VII)等で示される化合物の放射性標識体は、当該技術分野で周知の方法で調製できる。例えば、式(VII)等で示されるトリチウム標識化合物は、トリチウムを用いた触媒的脱ハロゲン化反応によって、式(VII)等で示される特定の化合物にトリチウムを導入することで調製できる。この方法は、適切な触媒、例えばPd/Cの存在下、塩基の存在下または非存在下で、式(VII)等で示される化合物が適切にハロゲン置換された前駆体とトリチウムガスとを反応させることを包含する。トリチウム標識化合物を調製するための他の適切な方法は、“Isotopes in the Physical and Biomedical Sciences,Vol.1,Labeled Compounds (Part A),Chapter 6 (1987年)”を参照することができる。14C-標識化合物は、14C炭素を有する原料を用いることによって調製できる。
【0026】
本発明の製剤においては、式(VII)等で示される化合物の製薬上許容される塩を用いることができる。式(VII)等で示される化合物の製薬上許容される塩としては、例えば、式(VII)等で示される化合物と、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、バリウム等)、マグネシウム、遷移金属(例えば、亜鉛、鉄等)、アンモニア、有機塩基(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メグルミン、エチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、キノリン等)およびアミノ酸との塩、または無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、臭化水素酸、リン酸、ヨウ化水素酸等)、および有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、マンデル酸、グルタル酸、リンゴ酸、安息香酸、フタル酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等)との塩が挙げられる。これらの塩は、通常行われる方法によって形成させることができる。
式(VII)で示される化合物の製薬上許容される塩としては、例えば、式(VII)で示される化合物とカウンター分子またはカウンターイオンからなり、任意の数のカウンター分子またはカウンターイオンを含んでいても良い。式(VII)で示される化合物の製薬上許容される塩は、化合物とカウンター分子またはカウンター原子との間でプロトン移動することにより、イオン結合を介するものをいう。
【0027】
本発明の製剤においては、式(VII)で示される化合物またはその製薬上許容される塩の複合体を用いることができる。式(VII)で示される化合物またはその製薬上許容される塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)、共結晶および/または包接化合物を形成する場合があり、本明細書中ではそれらを「複合体」と記載する。
【0028】
本明細書中で用いる「溶媒和物」とは、例えば式(VII)等で示される化合物に対し、任意の数の溶媒分子(例えば、水分子等)と配位していてもよい。式(VII)等で示される化合物またはその製薬上許容される塩を、大気中に放置することにより、水分を吸収し、吸着水が付着する場合や、水和物を形成する場合がある。
【0029】
溶媒分子としては、例えば、アセトニトリル、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2‐ジクロロエテン、ジクロロメタン、1,2‐ジメトキシエタン、N,N‐ジメチルアセトアミド、N,N‐ジメチルホルムアミド、1,4‐ジオキサン、2‐エトキシエタノール、エチレングリコール、ホルムアミド、ヘキサン、メタノール、2‐メトキシエタノール、メチルブチルケトン、メチルシクロヘキサン、N‐メチルピロリドン、ニトロメタン、ピリジン、スルホラン、テトラリン、トルエン、1,1,2‐トリクロロエテン、キシレン、酢酸、アニソール、1‐ブタノール、2‐ブタノール、酢酸n‐ブチル、t‐ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3‐メチル‐1‐ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2‐メチル‐1‐プロパノール、ペンタン、1‐ペンタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、水(すなわち水和物)、エタノール、アセトン、1,1‐ジエトキシプロパン、1,1‐ジメトキシメタン、2,2‐ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸、好ましくは、酢酸、アニソール、1‐ブタノール、2‐ブタノール、酢酸n‐ブチル、t‐ブチルメチルエーテル、クメン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3‐メチル‐1‐ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2‐メチル‐1‐プロパノール、ペンタン、1‐ペンタノール、1‐プロパノール、2‐プロパノール、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、水(すなわち水和物)、エタノール、アセトン、1,1‐ジエトキシプロパン、1,1‐ジメトキシメタン、2,2‐ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸、より好ましくは、水(すなわち水和物)、エタノール、アセトン、1,1‐ジエトキシプロパン、1,1‐ジメトキシメタン、2,2‐ジメトキシプロパン、イソオクタン、イソプロピルエーテル、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、石油エーテル、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸などが挙げられる。
【0030】
本明細書中で用いる「共結晶」とは、カウンター分子が同一結晶格子内に規則的に配列することを意味し、任意の数のカウンター分子を含んでいても良い。また、共結晶とは、化合物とカウンター分子との分子間相互作用が、水素結合、ファンデルワールス力などの、非共有結合性かつ非イオン性の化学的相互作用を介するものをいう。
例えば、式(VII)で示される化合物の共結晶としては、式(VII)で示される化合物とカウンター分子からなり、任意の数のカウンター分子を含んでいても良い。好ましくは、式(VII)で示される化合物とフマル酸からなり、任意の数のフマル酸を含んでいても良い。さらに好ましくは、式(VII)で示される化合物およびフマル酸が1:1のモル比の共結晶である。
共結晶は、化合物が本質的に無電荷または中性のままであるという点で、塩と区別される。
共結晶は、カウンター分子が水もしくは溶媒ではないという点で水和物または溶媒和物と区別される。
【0031】
本発明の式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および、式(XI)で示される化合物またはその塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)、共結晶および/または結晶多形を形成する場合があり、本発明はそのような各種の溶媒和物、共結晶および結晶多形も包含する。「溶媒和物」は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および、式(XI)で示される化合物に対し、任意の数の溶媒分子(例えば、水分子等)と配位していてもよい。また、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および、式(XI)で示される化合物またはその塩を、再結晶することで結晶多形を形成する場合がある。
【0032】
本明細書中で用いる「結晶」とは、構成する原子、イオン、分子などが三次元的に規則正しく配列した固体を意味し、そのような規則正しい内部構造を持たない非晶質固体とは区別される。本発明の結晶は、単結晶、双晶、多結晶などであってもよい。
さらに、「結晶」には、組成が同一でありながら結晶中の配列が異なる「結晶多形」が存在することがあり、それらを含めて「結晶形態」という。
加えて、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)、式(VI)、式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)および、式(XI)で示される化合物は、これらの塩又はこれらの製薬上許容される溶媒和物に変換してもよい。本発明の結晶は、これらの塩、水和物、溶媒和物、結晶多形のいずれであってもよく、二つ以上の混合物であっても、発明の範囲内に包含されることが意図される。
結晶形態および結晶化度は、例えば、粉末X線回折測定、ラマン分光法、赤外吸収スペクトル測定法、水分吸脱着測定、示差走査熱量測定、溶解特性を含めた多くの技術によって測定することができる。
【0033】
また、式(VII)等で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの複合体を、再結晶することで「結晶多形」を形成する場合がある。
本発明製剤においては、そのような各種の塩、複合体(水和物、溶媒和物、共結晶、包接化合物)、結晶多形を用いることができ、また、それらの二つ以上の混合物であっても用いることができる。
【0034】
(粉末X線回折(XRPD))
粉末X線回折(XRPD)は、固体の結晶形態および結晶性を測定するための最も感度の良い分析法の1つである。X線が結晶に照射されると、結晶格子面で反射し、互いに干渉しあい、構造の周期に対応した秩序だった回折線を示す。一方、非晶質固体については、通常、その構造の中に秩序だった繰返し周期をもたないため、回折現象は起こらず、特徴のないブロードなXRPDパターン(ハローパターンとも呼ばれる)を示す。
【0035】
式(VII)等で示される化合物の結晶形態は、粉末X線回折パターンおよび特徴的な回折ピークにより識別可能である。式(VII)等で示される化合物の結晶形態は、特徴的な回折ピークの存在によって他の結晶形態と区別することができる。
本明細書中で用いる特徴的な回折ピークは、観測された回折パターンから選択されるピークである。特徴的な回折ピークは、好ましくは回折パターンにおける約10本、より好ましくは約5本、さらに好ましくは約3本から選択される。
複数の結晶を区別する上では、ピークの強度よりも、当該結晶で確認され、他の結晶では確認されないピークが、その結晶を特定する上で好ましい特徴的なピークとなる。そういった特徴的なピークであれば、一つまたは二つのピークでも、当該結晶を特徴付けることができる。測定して得られたチャートを比較し、これらの特徴的なピークが一致すれば、粉末X線回折パターンが実質的に一致するといえる。
【0036】
一般に、粉末X線回折における回折角度(2θ)は±0.2°の範囲内で誤差が生じ得るため、粉末X線回折の回折角度の値は±0.2°程度の範囲内の数値も含むものとして理解される必要がある。したがって、粉末X線回折におけるピークの回折角度が完全に一致する結晶だけでなく、ピークの回折角度が±0.2°程度の誤差で一致する結晶も本発明に含まれる。
【0037】
以下の表および図において表示されるピークの強度は、一般に、多くの因子、例えばX線ビームに対する結晶の選択配向の効果、粗大粒子の影響、分析される物質の純度またはサンプルの結晶化度によって変動し得ることが知られている。また、ピーク位置についても、サンプル高の変動に基づいてシフトし得る。さらに、異なる波長を使用して測定するとブラッグ式(nλ=2dsinθ)に従って異なるシフトが得られるが、このような別の波長の使用により得られる別のXRPDパターンも、本発明の範囲に含まれる。
【0038】
(単結晶構造解析)
結晶を特定する方法の一つで、当該結晶における結晶学的パラメーター、さらに、原子座標(各原子の空間的な位置関係を示す値)および3次元構造モデルを得ることができる。桜井敏雄著「X線構造解析の手引き」裳華房発行(1983年)、Stout & Jensen著 X-Ray Structure Determination: A Practical Guide, Macmillan Co., New York (1968)などを参照。本発明のような複合体、塩、光学異性体、互変異性体、幾何異性体の結晶の構造を同定する際には、単結晶構造解析が有用である。
【0039】
式(VII)等で示される化合物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を有するため、コロナウイルス3CLプロテアーゼが関与する疾患の治療および/または予防剤として有用である。本発明において「治療剤および/または予防剤」という場合、症状改善剤も包含する。コロナウイルス3CLプロテアーゼが関与する疾患としては、ウイルス感染症が挙げられ、好ましくはコロナウイルス感染症が挙げられる。
一つの態様として、コロナウイルスとしては、ヒトに感染するコロナウイルスが挙げられる。ヒトに感染するコロナウイルスとしては、HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-HKU1、HCoV-OC43、SARS-CoV、MERS-CoV、および/またはSARS-CoV-2が挙げられる。
一つの態様として、コロナウイルスとしては、アルファコロナウイルスおよび/またはベータコロナウイルス、より好ましくはベータコロナウイルス、さらに好ましくはサルベコウイルスが挙げられる。
一つの態様として、アルファコロナウイルスとしては、HCoV-229EおよびHCoV-NL63が挙げられる。特に好ましくは、HCoV-229Eが挙げられる。
一つの態様として、ベータコロナウイルスとしては、HCoV-HKU1、HCoV-OC43、SARS-CoV、MERS-CoV、および/またはSARS-CoV-2が挙げられる。好ましくはHCoV-OC43またはSARS-CoV-2、特に好ましくはSARS-CoV-2が挙げられる。
一つの態様として、ベータコロナウイルスとしては、ベータコロナウイルスA系統(β-coronavirus lineage A)、ベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)、およびベータコロナウイルスC系統(β-coronavirus lineage C)が挙げられる。より好ましくは、ベータコロナウイルスA系統(β-coronavirus lineage A)、およびベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)、特に好ましくはベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)が挙げられる。
ベータコロナウイルスA系統(β-coronavirus lineage A)としては、例えばHCoV-HKU1およびHCoV-OC43、好ましくは、HCoV-OC43が挙げられる。ベータコロナウイルスB系統(β-coronavirus lineage B)としては、例えばSARS-CoVおよびSARS-CoV-2、好ましくはSARS-CoV-2が挙げられる。ベータコロナウイルスC系統(β-coronavirus lineage B)としては、好ましくはMERS-CoVが挙げられる。
一つの態様として、コロナウイルスとしては、HCoV-229E、HCoV-OC43、および/またはSARS-CoV-2、特に好ましくはSARS-CoV-2が挙げられる。
コロナウイルス感染症としては、HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoV-OC43、HCoV-HKU1、SARS-CoV、MERS-CoV、および/またはSARS-CoV-2による感染症が挙げられる。好ましくは、HCoV-229E、HCoV-OC43、および/またはSARS-CoV-2による感染症、特に好ましくは、SARS-CoV-2による感染症が挙げられる。
コロナウイルス感染症としては、特に好ましくは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が挙げられる。
【0040】
以下に、本発明に係る製造方法について説明する。
工程1 式(III)で示される化合物の製造方法
【化31】

式中の記号は上記と同意義である。
本工程は、式(I)で示される化合物と式(II)で示される化合物を酸存在下で反応させることを特徴とする、式(III)で示される化合物の製造方法である。
式(I)で示される化合物に対して、式(II)で示される化合物は、通常、1.0~5.0当量、例えば、1.0~3.0当量用いることができる。
溶媒としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されず、酸を溶媒として利用してもよい。酸、トルエン、塩化メチレン、ジクロロエタン等が挙げられ、単独または混合して用いることができる。好ましくは、酸が挙げられる。
酸としては、プロトン酸、ルイス酸が挙げられ、好ましくは、トリフルオロ酢酸が挙げられる。
式(I)で示される化合物に対して、酸の使用量は通常、1.0当量~大過剰、例えば、5.0当量~大過剰用いることができる。
反応温度は、特に制限されないが通常、約0℃~約50℃、好ましくは、室温~40℃で行うことができる。
反応時間は、特に制限されないが通常、0.1時間~12時間、好ましくは、0.1~5時間である。
【0041】
工程2 式(VI)で示される化合物の製造方法
【化32】

式中の記号は上記と同意義である。
本工程は、式(IV)で示される化合物と式(V)で示される化合物を酸存在下で反応させることを特徴とする、式(VI)で示される化合物の製造方法である。
式(IV)で示される化合物に対して、式(V)で示される化合物は、通常、1.0~5.0当量、例えば、1.0~1.5当量用いることができる。
溶媒としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されず、酸を溶媒として利用してもよい。トルエン、tブタノール、tアミルアルコール等が挙げられ、単独または混合して用いることができる。好ましくは、トルエン挙げられる。
酸としては、酢酸、2,2―ジメチルブタン酸等が挙げられる。好ましくは、酢酸が挙げられる。
式(IV)で示される化合物に対して、酸の使用量は通常、1.0当量~10当量、例えば、3.0当量~10当量用いることができる。
反応温度は、特に制限されないが通常、室温~約150℃またはマイクロウェーブ照射下、好ましくは、50~150℃またはマイクロウェーブ照射下で行うことができる。
反応時間は、特に制限されないが通常、0.1時間~12時間、好ましくは、3~10時間である。
【0042】
工程3 式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の製造方法
本工程は、式(VII)で示される化合物をフマル酸、アセトンおよび水存在下で結晶化することを特徴とする、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の製造方法である。
式(VII)で示される化合物に対して、フマル酸の使用量は通常、1.0当量~3.0、例えば、1.0当量~1.5当量用いることができる。
結晶化温度は、特に制限されないが通常、40~80℃、好ましくは、40~60℃で行うことができる。
結晶化時間は、特に制限されないが通常、1時間以上、好ましくは、2時間以上、さらに好ましくは2~12時間である。
アセトンおよび水存在下であればよく、好ましくはアセトンおよび水の割合としては、85:15~50:50で行うことができる。
【0043】
式(VII)で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの複合体(以下、式(VII)で示される化合物等とする)、および、本発明に係る製造方法により製造された化合物(式(VII)で示される化合物等)は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害活性を有するため、ウイルス感染症の治療および/または予防剤として有用である。
さらに本発明に係る製造方法により製造された化合物は、医薬としての有用性を備えており、好ましくは、下記のいずれか、または複数の優れた特徴を有している。
a)CYP酵素(例えば、CYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4等)に対する阻害作用が弱い。
b)高いバイオアベイラビリティー、適度なクリアランス等良好な薬物動態を示す。
c)代謝安定性が高い。
d)CYP酵素(例えば、CYP3A4)に対し、本明細書に記載する測定条件の濃度範囲内で不可逆的阻害作用を示さない。
e)変異原性を有さない。
f)心血管系のリスクが低い。
g)高い溶解性を示す。
h)タンパク質非結合率(fu値)が高い。
i)高いコロナウイルス3CLプロテアーゼ選択性を有している。
j)高いコロナウイルス増殖阻害活性を有している。例えば、ヒト血清(HS)またはヒト血清アルブミン(HSA)添加下において、高いコロナウイルス増殖阻害活性を有している。
コロナウイルス増殖阻害剤としては、例えば後述のCPE抑制効果確認試験(SARS-CoV-2)において、例えばEC50が10μM以下、好ましくは1μM以下、より好ましくは100nM以下である態様が挙げられる。
また、本発明に係る化合物の塩・結晶・複合体・共結晶は、医薬としての有用性を備えており、好ましくは、下記のいずれか、または複数の優れた特徴を有している。
bb)高いバイオアベイラビリティー、適度なクリアランス、高いAUC、高い最高血中濃度等、良好な薬物動態を示す。
gg)高い溶解性、高い化学安定性、低い吸湿性を示す。
【0044】
式(VII)で示される化合物等(例えば、本発明に係る製造方法により製造された化合物)を含有する医薬組成物は、経口的、非経口的のいずれの方法でも投与することができる。非経口投与の方法としては、経皮、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、経粘膜、吸入、経鼻、点眼、点耳、膣内投与等が挙げられる。
【0045】
経口投与の場合は常法に従って、内用固形製剤(例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、フィルム剤等)、内用液剤(例えば、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、シロップ剤、リモナーデ剤、酒精剤、芳香水剤、エキス剤、煎剤、チンキ剤等)等の通常用いられるいずれの剤型に調製して投与すればよい。錠剤は、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶性コーティング錠、徐放錠、トローチ錠、舌下錠、バッカル錠、チュアブル錠または口腔内崩壊錠であってもよく、散剤および顆粒剤はドライシロップであってもよく、カプセル剤は、ソフトカプセル剤、マイクロカプセル剤または徐放性カプセル剤であってもよい。
【0046】
非経口投与の場合は、注射剤、点滴剤、外用剤(例えば、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、エアゾール剤、吸入剤、ローション剤、注入剤、塗布剤、含嗽剤、浣腸剤、軟膏剤、硬膏剤、ゼリー剤、クリーム剤、貼付剤、パップ剤、外用散剤、坐剤等)等の通常用いられるいずれの剤型でも好適に投与することができる。注射剤は、O/W、W/O、O/W/O、W/O/W型等のエマルジョンであってもよい。
【0047】
式(VII)で示される化合物等(例えば、本発明に係る製造方法により製造された化合物)の有効量にその剤型に適した賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等の各種医薬用添加剤を必要に応じて混合し、医薬組成物とすることができる。さらに、該医薬組成物は、本発明化合物の有効量、剤型および/または各種医薬用添加剤を適宜変更することにより、小児用、高齢者用、重症患者用または手術用の医薬組成物とすることもできる。例えば、小児用医薬組成物は、新生児(出生後4週未満)、乳児(出生後4週~1歳未満)幼児(1歳以上7歳未満)、小児(7歳以上15歳未満)若しくは15歳~18歳の患者に投与されうる。例えば、高齢者用医薬組成物は、65歳以上の患者に投与されうる。
【0048】
式(VII)で示される化合物等(例えば、本発明に係る製造方法により製造された化合物)を含有する医薬組成物(例えば、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形を含む医薬組成物)の投与量は、患者の年齢、体重、疾病の種類や程度、投与経路等を考慮した上で設定することが望ましいが、経口投与する場合、通常0.05~200mg/kg/日であり、好ましくは0.1~100mg/kg/日の範囲内である。非経口投与の場合には投与経路により大きく異なるが、通常0.005~200mg/kg/日であり、好ましくは0.01~100mg/kg/日の範囲内である。これを1日1回~数回に分けて投与すれば良い。
【0049】
式(VII)で示される化合物等(例えば、本発明に係る製造方法により製造された化合物))は、該化合物の作用の増強または該化合物の投与量の低減等を目的として、例えば、他の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬(該治療薬としては、承認を受けた薬剤、および開発中または今後開発される薬剤を含む)(以下、併用薬剤と称する)と組み合わせて用いてもよい。この際、本発明化合物と併用薬剤の投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。さらに、本発明化合物と併用薬剤とは、それぞれの活性成分を含む2種類以上の製剤として投与されてもよいし、それらの活性成分を含む単一の製剤として投与されてもよい。
【0050】
併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明化合物と併用薬剤の配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせ等により適宜選択することができる。例えば、投与対象がヒトである場合、本発明化合物1重量部に対し、併用薬剤を0.01~100重量部用いればよい。
【0051】
式(VII)で示される化合物等の有効量にその剤型に適した賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等の各種医薬用添加剤を必要に応じて混合し、製剤とすることができる。
本発明製剤は、経口投与する製剤であればよい。経口投与の場合は常法に従って、内用固形製剤(例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、ドライシロップ剤、カプセル剤、丸剤、フィルム剤等)、内用液剤(例えば、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、シロップ剤、リモナーデ剤、酒精剤、芳香水剤、エキス剤、煎剤、チンキ剤等)等の通常用いられるいずれの剤型に調製して投与すればよい。錠剤は、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶性コーティング錠、徐放錠、トローチ錠、舌下錠、バッカル錠、チュアブル錠または口腔内崩壊錠であってもよく、散剤および顆粒剤はドライシロップであってもよく、カプセル剤は、ソフトカプセル剤、マイクロカプセル剤または徐放性カプセル剤であってもよい。好ましくは経口投与する固形製剤または懸濁剤であり、より好ましくは経口投与する固形製剤であり、特に好ましくは、錠剤、顆粒剤である。
【0052】
錠剤の形状としては、どのような形状も採用することができ、具体的には、丸形、楕円形、球形、棒状型、ドーナツ型の形状の錠剤とすることができる。また、積層錠、有核錠などであってもよいが、好ましくは製造法が簡便な単層錠が好ましい。さらには、識別性向上のためのマーク、文字などの刻印さらには分割用の割線を付けてもよい。
【0053】
さらに、本発明製剤は、式(VII)で示される化合物等の有効量、剤型および/または各種医薬用添加剤を適宜変更することにより、小児用、高齢者用、重症患者用または手術用の製剤とすることもできる。例えば、小児用医薬組成物は、新生児(出生後4週未満)、乳児(出生後4週~1歳未満)幼児(1歳以上7歳未満)、小児(7歳以上15歳未満)若しくは15歳~18歳の患者に投与されうる。例えば、高齢者用製剤は、65歳以上の患者に投与されうる。
【0054】
本発明製剤(例えば、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形を含む製剤)の投与量は、患者の年齢、体重、疾病の種類や程度、投与経路等を考慮した上で設定することが望ましいが、経口投与する場合、通常0.05~200mg/kg/日であり、好ましくは0.1~100mg/kg/日の範囲内である。非経口投与の場合には投与経路により大きく異なるが、通常0.005~200mg/kg/日であり、好ましくは0.01~100mg/kg/日の範囲内である。これを1日1回~数回に分けて投与すれば良い。
【0055】
本発明製剤中に含有する、式(VII)で示される化合物等の重量は、患者が服用しやすく、製剤製造することができる含量であれば、特に制限されないが、1~450mg、好ましくは5~350mg、より好ましくは25~250mgである。
具体的には、1錠、1カプセルまたは1包あたりに含有する、式(VII)で示される化合物等の重量は、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mgまたは250mgである。
この場合、25mgとは、22.5mg~27.5mg、好ましくは23.7mg~26.3mgの範囲の範囲を示し、50mgとは、45.0mg~55.0mg、好ましくは47.5mg~52.5mgの範囲を示し、75mgとは、67.5mg~82.5mgの範囲を示し、好ましくは71.2mg~78.8mgの範囲を示し、100mgとは、90.0mg~110.0mg、好ましくは95.0mg~105.0mgの範囲を示し、125mgとは、112.5mg~137.5mg、好ましくは118.7mg~131.3mgの範囲を示し、150mgとは、135.0mg~165.0mg、好ましくは142.5mg~157.5mgの範囲を示し、175mgとは、157.5mg~192.5mg、好ましくは166.2~183.8mgの範囲を示し、200mgとは、180.0mg~220.0mg、好ましくは190.0mg~210.0mgの範囲を示し、225mgとは、202.5mg~247.5mg、好ましくは213.7mg~236.3mgの範囲を示し、250mgとは、225.0mg~275.0mg、好ましくは237.5mg~262.5mgの範囲を示す。
【0056】
式(VII)で示される化合物等は、該化合物の作用の増強または該化合物の投与量の低減等を目的として、例えば、他の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬(該治療薬としては、承認を受けた薬剤、および開発中または今後開発される薬剤を含む)(以下、併用薬剤と称する)と組み合わせて用いてもよい。この際、式(VII)で示される化合物等と併用薬剤の投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。さらに、式(VII)で示される化合物等と併用薬剤とは、それぞれの活性成分を含む2種類以上の製剤として投与されてもよいし、それらの活性成分を含む単一の製剤として投与されてもよい。
【0057】
併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、式(VII)で示される化合物等で示される化合物と併用薬剤の配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせ等により適宜選択することができる。例えば、投与対象がヒトである場合、式(VII)で示される化合物等で示される化合物1重量部に対し、併用薬剤を0.01~100重量部用いればよい。
【0058】
本発明製剤は高分子を含有してもよく、高分子としては、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格または食品添加物公定書等に収載されている高分子を使用することができる。
式(VII)で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの複合体、および高分子を含有する製剤は、製剤中の式(VII)で示される化合物の溶解度を向上することができる。
【0059】
高分子としては、例えば、セルロース系高分子、アクリル系高分子、ビニル系高分子、多糖類等が挙げられる。
セルロース系高分子としては、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタレート、メチルセルロース(MC)、メチルヒドロキシエチルセルロースカルボキシメチルエチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、微結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、フマル酸・ステアリン酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルメチルセルロース混合物等が挙げられる。
アクリル系高分子としては、アミノアルキルアクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、2-メチル-5-ビニルピリジンメチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、乾燥メタクリル酸コポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー等が挙げられる。
ビニル系高分子としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・メチルメタクリレート・アクリル酸共重合体、クロスポビドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、およびポリビニルアルコールコポリマー等が挙げられる。
また、多糖類としてはプルラン等が挙げられる。
好ましくは、セルロース系高分子、アクリル系高分子および/またはビニル系高分子であり、より好ましくはセルロース系高分子であり、さらに好ましくはヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)である。
【0060】
別の態様としては、式(VII)で示される化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの複合体を有効成分、およびセルロース系高分子を含有する、経口投与する錠剤が好ましい。
【0061】
本発明製剤においては、賦形剤、結合剤、崩壊剤および滑沢剤からなる群から選択される、1以上の添加剤を用いてもよい。
【0062】
本発明製剤においては、賦形剤(充填剤ということもある。)を用いてもよい。賦形剤としては、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格または食品添加物公定書等に収載されている賦形剤を使用することができる。例えば、賦形剤としては、糖誘導体、デンプン誘導体、セルロース誘導体、無機系賦形剤、βーシクロデキストリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、クロスポビドン、大豆レシチン、トラガント末、アラビアゴム、デキストラン、プルラン等が挙げられる。
糖誘導体としては、糖類、糖アルコールがあり、糖類としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖等が挙げられ、また、糖アルコールとしては、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、粉末麦芽糖水あめ、マルチトール等が挙げられる。
デンプン誘導体としては、デンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン(コーンスターチ)、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、有孔デンプン、カルボキシスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられる。
セルロース誘導体としては、結晶セルロース、粉末セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルエチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
無機系賦形剤としては、ケイ酸塩誘導体、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、酸化マグネシウム、酸化チタン、乳酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト、タルク、カオリン、乾燥水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ベントナイト等が挙げられる。
ケイ酸塩誘導体としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸等の二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
リン酸塩としては、無水リン酸水素カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウム等が挙げられる。
炭酸塩としては、沈降炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。硫酸塩としては、硫酸カルシウム等が挙げられる。
これら賦形剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
本発明製剤における賦形剤は、好ましくはマンニトールおよび/またはクロスカルメロースナトリウムである。
【0063】
本発明製剤においては、結合剤を用いてもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格または食品添加物公定書等に収載されている結合剤を使用することができる。例えば、結合剤としては、セルロース系結合剤、デンプン系結合剤、ビニル系結合剤、ポリエーテル、アラビアゴム、アラビアゴム粉末、アラビアゴム末、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ショ糖、ゼラチン、デキストリン、プルラン、トラガント、トラガント末、キサンタンガム、ペクチン、ポリアクリル酸ナトリウム、寒天、オウバク末、グァーガム、軽質無水ケイ酸、硬化油等が挙げられる。
【0064】
セルロース系結合剤としては、カルボキシメチルセルロース(カルメロース、CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)(HPMC)、メチルセルロース(MC)、結晶セルロース、微結晶セルロース、エチルセルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、粉末セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0065】
デンプン系結合剤としては、澱粉、α化デンプン、部分α化デンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、有孔デンプン、トウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、デンプングリコール酸ナトリウム(カルボキシメチルスターチナトリウム) 等が挙げられる。
【0066】
ビニル系結合剤としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(ポビドン)(PVP)、カルボキシビニルポリマー、コポリビドン等が挙げられる。
【0067】
ポリエーテルとしては、マクロゴール(ポリエチレングリコール)200、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール20000、グリセリン、ポリオキシエチレン[105]ポリオキシプロピレン[5]グリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0068】
これら結合剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
本発明製剤における結合剤は、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)である。
【0069】
本発明製剤においては、崩壊剤を用いてもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格または食品添加物公定書等に収載されている崩壊剤を使用することができる。例えば、崩壊剤としては、セルロース系崩壊剤、デンプン系崩壊剤、ビニル系崩壊剤、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0070】
セルロース系崩壊剤としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム(Ac―Di―Sol)、結晶セルロース、粉末セルロース等が挙げられる。
【0071】
デンプン系崩壊剤としては、部分アルファー化デンプン、バレイショデンプン、コーンスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルファ化デンプン、デンプン等が挙げられる。
【0072】
ビニル系崩壊剤としては、クロスポビドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0073】
これら崩壊剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
【0074】
崩壊剤の中でも、膨潤率が非常に大きい膨潤型崩壊剤は「スーパー崩壊剤」として知られている。スーパー崩壊剤としては、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム等が挙げられる。
【0075】
これらのスーパー崩壊剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。また、崩壊剤およびスーパー崩壊剤を組合せてもよい。
本発明製剤における崩壊剤は、好ましくはクロスカルメロースナトリウムである。
【0076】
本発明製剤においては、滑沢剤を含有してもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格または食品添加物公定書等に収載されている滑沢剤を使用することができる。例えば、滑沢剤としては、ステアリン酸およびステアリン酸金属塩、無機系滑沢剤、疎水性滑沢剤、親水性滑沢剤、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられる。
【0077】
ステアリン酸およびステアリン酸金属塩としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸ポリオキシル40等が挙げられる。
【0078】
無機系滑沢剤としては、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0079】
疎水性滑沢剤としては、カカオ脂、カルナウバロウ、グリセリン脂肪酸エステル、硬化油、サラシミツロウ、ダイズ硬化油、ミツロウ、セタノール、ラウリル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0080】
親水性滑沢剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(マクロゴール)等が挙げられる。
【0081】
これら滑沢剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
本発明製剤における結合剤は、好ましくはステアリン酸マグネシウムである。
【0082】
本発明製剤においては、流動化剤を含有してもよく、日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格または食品添加物公定書等に収載されている流動化剤を使用することができる。例えば、流動化剤としては、二酸化ケイ素、ステアリン酸およびその金属塩、結晶セルロース、合成ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、重質無水ケイ酸、水酸化アルミナマグネシウム、第三リン酸カルシウム、タルク、トウモロコシデンプン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム造粒物、ケイ酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、合成ヒドロタルサイト等が挙げられる。
【0083】
二酸化ケイ素としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。ステアリン酸およびその金属塩としては、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0084】
これら流動化剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
本発明製剤における結合剤は、好ましくは結晶セルロースである。
【0085】
本発明製剤のうち顆粒剤の製造方法は、特に制限されないが、具体的には、有効成分、崩壊剤、賦形剤等の添加剤を混合して、混合末を製造後、当該混合末を造粒する方法であり、好ましくは水や結合剤を含有する水や溶媒を添加して造粒する湿式造粒法や圧縮成形して水を使用しない乾式造粒法や溶融造粒法である。
【0086】
本発明製剤のうち、錠剤の製造方法は、特に制限されないが、具体的には、上記方法によって顆粒を製造し、さらに、この顆粒に対して、崩壊剤および滑沢剤を混合し、当該混合顆粒を打錠機で打錠する打錠法である。
本発明製剤は、上記の顆粒剤や錠剤を製造後、当該顆粒剤や錠剤を被覆層で被覆することがある。顆粒剤に被覆層を形成する際、流動層造粒コーティング機、流動層転動コーティング機等を用いることができる。錠剤に被覆層を形成する際、パンコーティング機、通気式コーティング機等を用いることができる。コーティング機の中で、顆粒剤や錠剤を流動させながら、この顆粒剤や錠剤に当該コーティング液を噴霧、乾燥し、被覆層を形成する。
(実施例)
【0087】
以下に実施例および参考例、ならびに試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0088】
また、本明細書中で用いる略語は以下の意味を表す。
Boc:tert-ブトキシカルボニル
CDI:カルボニルジイミダゾール
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン
DIEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMA:N,N-ジメチルアセトアミド
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
DTT:ジチオトレイトール
EDC:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
EDT:1,2-エタンジチオール
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
FBS:ウシ胎児血清
HOBT:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
LHMDS:リチウムビス(トリメチルシリル)アミド
MEM:イーグル最小必須培地
NMP:N-メチルピロリドン
Pd(OAc):酢酸パラジウム
TFA:トリフルオロ酢酸
TMSCl:クロロトリメチルシラン
Xantphos:4,5’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9’-ジメチルキサンテン
mM:mmol/L
μM:μmol/L
nM:nmol/L
【0089】
(実施例a)
【0090】
(化合物の同定方法)
各実施例で得られたNMR分析は400MHzで行い、DMSO-d、CDCl、Methanol-d4を用いて測定した。また、NMRデータを示す場合は、測定した全てのピークを記載していない場合が存在する。
RTは、LC/MS:液体クロマトグラフィー/質量分析でのリテンションタイムを表し、以下の条件で測定した。
(測定条件1’)
カラム:ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18 (1.7μm i.d.2.1x50mm) (Waters)
流速:0.8mL/分
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は0.1%ギ酸含有アセトニトリル溶液
グラジエント:3.5分間で5%-100%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、0.5分間、100%溶媒[B]を維持した。
(測定条件2’)
カラム:Shim-pack XR-ODS (2.2μm、i.d.3.0x50mm) (Shimadzu)
流速:1.6mL/分
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は0.1%ギ酸含有アセトニトリル溶液
グラジエント:3分間で10%-100%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、0.5分間、100%溶媒[B]を維持した。
なお、明細書中、MS(m/z)との記載は、質量分析で観測された値を示す。
【0091】
(HPLC測定条件)
カラム:Xselect CSH Fluoro-Phenyl (3.5μm i.d.4.6x150mm) (Waters)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:255nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエント:2分間、20%溶媒[B]を維持し,6分間で20%-37%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、10分間で37%-50%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、2分間で50%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った。
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
【0092】
(粉末X線回折パターンの測定)
日本薬局方の一般試験法に記載された粉末X線回折測定法に従い、各実施例で得られた結晶の粉末X線回折測定を行った。測定条件を以下に示す。
(装置)
リガク社製SmartLab
(操作方法)
測定法:反射法
使用波長:CuKα線
管電流:200mA
管電圧:45kV
試料プレート:アルミニウム
X線の入射角:2.5°
サンプリング幅:0.02°
検出器:HyPix-3000(2次元検出モード)
【0093】
(示差走査熱量(DSC)の測定)
実施例で得られた結晶のDSCの測定を行った。アルミニウムパンに試料約3mgを量り、クリンプして測定した。測定条件を以下に示す。なお、示差走査熱量(DSC)による測定は±2℃の範囲内で誤差が生じうる。
装置:TA Instrument Q1000/TA Instrument
測定温度範囲:0℃-295℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:N 50mL/分
【0094】
(TG/DTAデータの測定)
実施例で得られた結晶約3mgを量り、アルミニウムパンにつめ、開放系にて測定した。測定条件は以下のとおりである。
装置:日立ハイテクノロジーズ TG/DTA STA7200RV
測定温度範囲:室温-350℃
昇温速度:10℃/分
【0095】
(水分吸脱着等温線測定)
サンプルパンに試料約15~25mgを測り取り測定を行った。測定条件を以下に示す。
装置:Surface Measurement Systems Ltd.社製 DVS Adventure
測定ポイント:0%から5%ごとに95%RH, および95%RHから5%ごとに0%まで
温度:25℃
【0096】
(単結晶構造解析の測定と解析方法)
単結晶構造解析の測定条件および解析方法を以下に示す。
(装置)
リガク社製 XtaLAB P200 MM007
(測定条件)
測定温度:25℃
使用波長:CuKα線(λ=1.5418Å)
ソフト:CrysAlisPro 1.171.39.46e (Rigaku Oxford Diffraction, 2018)
(データ処理)
ソフト:CrysAlisPro 1.171.39.46e (Rigaku Oxford Diffraction, 2018)
データはローレンツおよび偏光補正、吸収補正を行った。
(結晶構造解析)
直接法プログラムShelXT(Sheldrick, G.M.,2015)を用いて位相決定を行い、精密化はShelXL(Sheldrick, G.M.,2015)を用いて、full-matrix最小二乗法を実施した。非水素原子の温度因子はすべて異方性で精密化を行った。水素原子はShelXLのデフォルトパラメータを用いて計算により導入し、riding atomとして取り扱った。全ての水素原子は、等方性パラメーターで精密化を行った。
作図にはPLATON(Spek,1991)/ORTEP(Johnson,1976)を使用した。
(実施例1a)
【0097】
化合物(I-005)の合成
【化33】

工程1 化合物18の合成
化合物4a(926mg、4.04mmol)、アセトニトリル(7.41mL)、炭酸カリウム(726mg、5.25mmol)および2,4,5-トリフルオロベンジルブロミド(1000mg、4.44mmol)を混合した。反応溶液を80℃で40分間攪拌し、放冷後、酢酸エチルで希釈した。不溶物を濾別後、ろ液を濃縮し、化合物18の粗生成物(1.51g、4.04mmol、収率:定量)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=374、RT=2.54min、LC/MS測定条件1’
【0098】
工程2 化合物19の合成
化合物18(1.51g、4.04mmol)およびTFA(3.02mL)を混合した。反応溶液を室温で4時間攪拌し、一晩静置した。TFAを減圧留去し、残渣にトルエンを加え共沸した。残渣にイソプロピルエーテルを加え懸濁後、ろ取し、化合物19(1.22g、3.84mmol、収率95%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=318、RT=1.68min、LC/MS測定条件1’
【0099】
工程3 化合物20の合成
化合物19(200mg、0.63mmol)、DMF(1.8mL)、炭酸カリウム(261mg、1.89mmol)および3-(クロロメチル)-1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール 塩酸塩(159mg、0.946mmol)を混合した。反応溶液を60℃で2時間攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して濃縮した。残渣をイソプロピルエーテル、ヘキサン、酢酸エチルおよびクロロホルムの混合溶媒で懸濁し、ろ取した。残渣、DMF(1.8mL)、炭酸カリウム(261mg、1.89mmol)および3-(クロロメチル)-1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール 塩酸塩(159mg、0.946mmol)を混合した。反応溶液を60℃で6時間攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。水層を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過して濃縮した。残渣をイソプロピルエーテル、ヘキサン、酢酸エチルおよびクロロホルムの混合溶媒で懸濁してろ取し、化合物20(116mg、0.281mmol、収率45%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=413、RT=1.84min、LC/MS測定条件1’
【0100】
工程4 化合物(I-005)の合成
化合物20(115mg、0.279mmol)、THF(2.30mL)および6-クロロ-2-メチル-2H-インダゾール-5-アミン(60.8mg、0.335mmol)を混合した。反応溶液に、LHMDS(558μL、0.558mmol)を0℃で滴下した。反応溶液を0℃で2時間半、室温で40分間攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。クロロホルムで抽出し、有機層を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)で精製し、化合物(I-005)(61.8mg、0.116mmol、収率42%)を得た。得られた化合物I-005のHPLC測定結果を図7に示す。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.96 (s, 1H), 7.82 (d, J = 2.5Hz, 2H), 7.48 (br s, 1H), 7.45-7.37 (m, 1H), 7.08 (s, 1H), 6.97-6.88 (m, 1H), 5.35 (s, 2H), 5.17 (s, 2H), 4.21 (s, 3H), 3.89 (s, 3H).
LC/MS(ESI):m/z=532、RT=1.70min、LC/MS測定条件1’
(実施例2a)
【0101】
化合物(I-005)1170mgにフマル酸 278mg(1.1eq)および酢酸エチル 5.85mLを加え、室温下で45分間攪拌した。固体をろ取し、乾燥することで、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶(1369.4mg、94.6%)を得た。
【0102】
式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の単結晶構造解析の結果を以下に示す。
R1 (I>2.00s(I))は0.0470であり、最終の差フーリエから電子密度の欠如も誤置もないことを確認した。
結晶学的データを表1に示す。
【表1】

ここで、Volumeは単位格子体積、Zは単位格子中の分子数を意味する。
【0103】
式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の、非対称単位中の構造を図3に示す。
【0104】
非対称単位中に、式(VII)で示される化合物、フマル酸がそれぞれ1分子存在していた。イオン性の化学的相互作用は確認されず、1:1のモル比の共結晶であることを確認した。
N10-C9の結合距離は約1.26Åであり、N16-C9の結合距離は約1.37Åであった。この結合距離より、フマル酸共結晶I形の式(VII)で示される化合物は、イミノ構造:
【化34】

であると同定した。
また、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶の粉末X線回折の結果を示す。
図1に、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の粉末X線回折パターンを示す。図1の粉末X線回折パターンのピークテーブルを図2に示す。
粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ):7.8±0.2°、9.5±0.2°、10.1±0.2°、10.9±0.2°、13.8±0.2°、14.7±0.2°、18.6±0.2°、22.6±0.2°、23.5±0.2°および24.6±0.2°にピークが認められた。
上記粉末X線回折ピークにおいて、回折角度(2θ):9.5±0.2°、10.9±0.2°、18.6±0.2°、23.5±0.2°および24.6±0.2°のピークが式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶として特に特徴的である。
【0105】
図1の粉末X線解析パターンを示した、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶のDSC分析結果を図4に示す。吸熱ピークのオンセット温度は約272℃を示した。
【0106】
図1の粉末X線解析パターンを示した、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)のTG/DTA分析結果を図5に示す。
【0107】
図1の粉末X線解析パターンを示した、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)のDVS分析結果を図6に示す。
【0108】
なお、式(VII)で示される化合物(I-005)の合成は、以下のようにも行うことができる。
工程4’
THF(6mL)中、化合物20(300mg、0.727mmol)、6-クロロ-2-メチル-2H-インダゾール-5-アミン(172mg、0.946mmol)に、LHMDS(1M in THF;1.46mL、1.46mmol)を0℃で滴下した。反応液を0℃で2時間半、室温で40分間攪拌し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。水層をEtOAcで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH、グラジエント 0-20% MeOH)で精製した。得られた固体をアセトン/H2Oから固化させ、化合物I-005(95.3mg、収率25%、茶色固体)を得た。得られた化合物I-005のHPLC測定結果を図8に示す(約99pa%)。
【0109】
また、本明細書中で用いる略語は以下の意味を表す。
BINAP:2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル
CPME:シクロペンチルメチルエーテル
CbzCl:クロロぎ酸ベンジル
DME:ジメチルエーテル
MEK:メチルエチルケトン
(実施例b)
【0110】
(化合物の同定方法)
各実施例および参考例で得られたNMR分析は400MHzで行い、DMSO-d、CDClを用いて測定した。また、NMRデータを示す場合は、測定した全てのピークを記載していない場合が存在する。
「RT」または「保持時間」とあるのは、LC/MS:液体クロマトグラフィー/質量分析または液体クロマトグラフィー(HPLC)でのリテンションタイムを表し、以下の条件で測定した。
なお、MS(m/z)との記載は、質量分析で観測された値を示す。
(測定条件1)
カラム:ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18 (1.7μm i.d.2.1x50mm) (Waters)
流速:0.8mL/分
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は0.1%ギ酸含有アセトニトリル溶液
グラジエント:3.5分間で5%-100%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、0.5分間、100%溶媒[B]を維持した。
(測定条件2)
カラム:ACQUITY UPLC(登録商標)BEH C18 (1.7μm i.d.2.1x50mm) (Waters)
流速:0.8mL/分
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は10mM炭酸アンモニウム含有水溶液、[B]は0.1%ギ酸含有アセトニトリル溶液
グラジエント:3.5分間で5%-100%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、0.5分間、100%溶媒[B]を維持した。
(測定条件4)
カラム:Xselect CSH C18 (3.5μm i.d.4.6x150mm) (Waters)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエント:17分間で5%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、3分間、95%溶媒[B]を維持した。
流量:1.0mL/分
注入量:5μL
(測定条件5)
カラム:Xselect CSH C18 (3.5μm i.d.4.6x150mm) (Waters)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエント:17分間で5%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、3分間、95%溶媒[B]を維持した。
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
(測定条件7)
カラム:Xselect CSH Fluoro-Phenyl (3.5μm i.d.4.6x150mm) (Waters)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:255nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエント:6分間、20%溶媒[B]を維持し,21分間で20%-42%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、4分間で42%-50%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い,最後に3分間で50%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った。
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
(測定条件8)
カラム:Xselect CSH Fluoro-Phenyl (3.5μm i.d.4.6x150mm) (Waters)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:255nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエント:2分間、20%溶媒[B]を維持し,6分間で20%-37%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、10分間で37%-50%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、2分間で50%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った。
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
(測定条件9)
カラム:YMC Jsphere ODS-H80(4μm i.d.4.6x250mm)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:250nm
移動相:[A]は0.2%トリフルオロ酢酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用メタノール
グラジエント:6分間で10%-70%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、3分間、70%溶媒[B]を維持,その後,3分間で70%-90%のリニアグラジエント,その後,5分間,90%溶媒[B]を維持,その後,1分間で90%-95%のリニアグラジエント,その後5分間,95%溶媒[B]を維持
流量:1.0mL/分
注入量:5μL
(測定条件10)
カラム:Xselect CSH C18(3.5μm i.d.4.6x150mm)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:254nm
移動相:[A]は0.1%ギ酸含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用アセトニトリル
グラジエント:17分間で5%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、3分間、95%溶媒[B]を維持
流量:1.0mL/分
注入量:10μL
(測定条件11)
カラム:XBridge C18(3.5μm i.d.4.6x150mm)
カラム温度:40℃付近の一定温度
UV検出波長:210nm
移動相:[A]は10mMアンモニア含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用メタノール
グラジエント:5分間で5%溶媒[B]を維持し、10分間で5%-38%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、5分間で38%-95%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った。
流量:0.8mL/分
注入量:10μL
(測定条件12)
カラム:C18カラム
カラム温度:40℃
UV検出波長:255nm
移動相:[A]は10mMギ酸アンモニア含有水溶液、[B]は液体クロマトグラフィー用メタノール
グラジエントは、9:1から1:9まで徐々に移動相Bの混合比を高め、28分間で測定を行った。
流量:0.3mL/分
注入量:4μL
【0111】
(粉末X線回折パターンの測定)
日本薬局方の一般試験法に記載された粉末X線回折測定法に従い、各実施例で得られた結晶の粉末X線回折測定を行った。測定条件を以下に示す。(装置)
リガク社製MiniFlex600
(操作方法)
検出器:高速一次元検出器(D/TecUltra2)
光源の種類:Cu管球
使用波長:CuKα線
管電流:15mA
管電圧:40Kv
試料プレート:無反射試料板
【0112】
(単結晶構造解析の測定と解析方法)
単結晶構造解析の測定条件および解析方法を以下に示す。
(装置)
リガク社製 XtaLAB P200 MM007
(測定条件)
測定温度:25℃
使用波長:CuKα線(λ=1.5418Å)
ソフト:CrysAlisPro 1.171.39.46e (Rigaku Oxford Diffraction, 2018)
(データ処理)
ソフト:CrysAlisPro 1.171.39.46e (Rigaku Oxford Diffraction, 2018)
データはローレンツ及び偏光補正、吸収補正を行った。
(結晶構造解析)
直接法プログラムShelXT(Sheldrick, G.M.,2015)を用いて位相決定を行い、精密化はShelXL(Sheldrick, G.M.,2015)を用いて、full-matrix最小二乗法を実施した。非水素原子の温度因子はすべて異方性で精密化を行った。水素原子はShelXLのデフォルトパラメータを用いて計算により導入し、riding atomとして取り扱った。全ての水素原子は、等方性パラメーターで精密化を行った。
作図にはPLATON(Spek,1991)/ORTEP(Johnson,1976)を使用した。
【0113】
(示差走査熱量(DSC)の測定)
実施例で得られた結晶のDSCの測定を行った。SUS製パンに試料約2mgを量り、クリンプして測定した。測定条件を以下に示す。なお、示差走査熱量(DSC)による測定は±2℃の範囲内で誤差が生じうる。
装置:DSC 3+
測定温度範囲:30℃-300℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:N2 40mL/分
【0114】
(TG/DTAデータの測定)
実施例で得られた結晶約3mgを量り、アルミニウムパンにつめ、開放系にて測定した。測定条件は以下のとおりである。
装置:日立ハイテクサイエンス TG/DTA7200
測定温度範囲:30-350℃
昇温速度:10℃/分
【0115】
(水分吸脱着等温線測定)
サンプルパンに試料約15~25mgを測り取り測定を行った。測定条件を以下に示す。
装置:Surface Measurement Systems Ltd.社製 DVS Adventure
測定ポイント:0%から5%ごとに95%RH, および95%RHから5%ごとに0%まで
温度:25℃

なお、DVS測定の前後での粉末X線解析パターンの比較は以下の方法により測定した。
(装置)
リガク社製SmartLab
(操作方法)
測定法:反射法
使用波長:CuKα線
管電流:200mA
管電圧:45kV
試料プレート:アルミニウム
X線の入射角:2.5°
サンプリング幅:0.02°
検出器:HyPix-3000(2次元検出モード)
【0116】
(粒度分布の測定)
測定条件は以下のとおりである。
メーカー:シンパテック
装置:レーザー回折式HELOS&RODOS粒度分布測定装置
レンジ:R4
分散圧:3bar
トリガー条件:ストップ2s測定濃度≦1%か10s実時間
(実施例1b)
【0117】
式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の合成
【化35】
【0118】
工程1:化合物3の合成
化合物1(35.0kg、238.8mol、塩酸塩)、N,N-ジメチルアセトアミド(273L)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(87.2kg、573.1mol)および化合物2(26.0kg、262.7mol)を混合し、25℃で10分間攪拌した。反応溶液にN,N'-カルボニルジイミダゾール(50.3kg、310.4mol)、N,N-ジメチルアセトアミド(7L)を混合し、50℃で90分間攪拌した。反応溶液にメタノール(18.4kg、573.1mol)を加え、25℃に冷却し、10%硫酸でpHを2.5に調整した。スラリーを5℃に冷却し、固体をろ取し、20%メタノール水で洗浄後、乾燥することで化合物3(38.12kg、162.0mol、収率:67.9%)を得た。
HPLC(UV=254nm):RT=8.9min、HPLC測定条件4
【0119】
工程2:化合物5の合成
化合物3(34.5kg、146.7mol)、アセトニトリル(345L)、ジイソプロピルエチルアミン(26.5kg、205.4mol)および化合物4(39.6kg、176.0mol)を混合し、60℃で300分間攪拌した。反応溶液を25℃に冷却し、水(172.5L)を加えた。スラリーを0℃に冷却し、固体をろ取し、66%アセトニトリル水で洗浄後、乾燥することで化合物5(46.10kg、121.5mol、収率:82.9%)を得た。
HPLC(UV=254nm):RT=14.7min、HPLC測定条件4
【0120】
工程3:化合物7の合成
化合物5(29.0kg、76.4mol)、トリフルオロ酢酸(72.5L)、化合物6(16.5kg、152.9mol)を混合し、35℃で180分間攪拌した。反応溶液を冷却し、酢酸エチル(348L)を加え、38%リン酸三カリウム水溶液、2.3%食塩水、水で洗浄した。酢酸エチル溶液を203Lまで濃縮し、ヘプタン(261L)を加えた。スラリーを0℃に冷却し、固体をろ取し、酢酸エチルとヘプタンの混合溶媒で洗浄後、乾燥することで化合物7(23.60kg、65.0mol、収率:85.0%)を得た。
HPLC(UV=254nm):RT=12.5min、HPLC測定条件5
【0121】
工程4:化合物9の合成
化合物7(23.3kg、64.1mol)、化合物8(14.0kg、83.4mol、塩酸塩)、ヨウ化カリウム(6.4kg、38.5mol)、炭酸セシウム(31.3kg、96.2mol)およびN,N-ジメチルアセトアミド(139.8L)を混合し、40℃で360分間攪拌した。反応溶液を25℃に冷却し、酢酸(34.6kg、577.2mol)を加えた。不溶物をろ別し、ろ液にアセトニトリル(93.2L)、水(326.2L)を加えた。スラリーを0℃に冷却し、固体をろ取し、20%アセトニトリル水溶液で洗浄後、乾燥することで化合物9(20.35kg、44.4mol、収率:69.2%)を得た。
HPLC(UV=255nm):RT=25.1min、HPLC測定条件7
工程1~4について、同様の操作を2回行った。
【0122】
工程5-1:式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の合成
工程1~4で得られた化合物9(39.0kg、80.7mol)、化合物10(16.2kg、84.8mol)、酢酸(30.7kg、484.3mol)およびトルエン(234L)を混合し、100℃で360分間攪拌した。トルエン(390L)を加え、得られたスラリーを25℃に冷却した。固体をろ取し、アセトンで洗浄し、式(VII)で示される化合物の未乾結晶を得た(ここで得られた未乾結晶を、HPLC測定条件8により測定した結果を図12および図13に示す。RT=9.8minのピークはトルエンである)。
工程5-2:得られた式(VII)で示される化合物の半量の未乾結晶にアセトン(613.5L)と水(109.2L)を加え、50℃で溶解した。得られた溶解液を活性炭処理し、処理液にアセトン(150.2L)と水(5.9L)を加え、702Lまで濃縮した。濃縮液を50℃に温度調節し、フマル酸(4.6kg、72.6mol)、アセトン(150.2L)、水(5.9L)を加え、464Lまで濃縮した。濃縮液にアセトン(78L)を加え、265Lまで濃縮し、アセトン(19.5L)を加えた。スラリーを55℃に温度調節し、120分間以上攪拌した。スラリーを0℃に冷却し、固体をろ取し、アセトンで洗浄後、乾燥した(ここで得られた乾燥結晶の、DSC、TG/DTA、HPLC、粒度分布、DVS測定の結果を図14~18に示す。HPLCは測定条件12により測定した。図19は、当該DVS測定の前後での粉末X線解析パターンの比較を示す。)。
同様の操作を残りの半量についても繰り返すことで、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(41.68kg、64.3mol、収率:75.6%)を得た。
HPLC(UV=255nm):RT=12.8min、HPLC測定条件8
(実施例2b)
【0123】
式(VII)で示される化合物のトルエン和物の合成
工程1
化合物9(150mg,0.327mmol)と化合物10(65.4mg,0.360mmol)をトルエン(1.5mL)および酢酸(0.187ml,3.27mmol)と混合し、100℃で9時間撹拌した。室温に冷却後、ヘプタン(1.5mL,10V)を加えろ過し、得られた結晶をヘプタン(0.7mL)で3回洗浄した。減圧乾燥を行い、式(VII)で示される化合物の結晶(168mg、収率87%)を得た。得られた結晶にはトルエンが溶媒和物として0.5から0.6分子相当が含まれており、通常操作範囲の減圧乾燥下では、トルエンは除去されなかった。品質的に良好な式(VII)で示される化合物のトルエン和物の取得を確認した。
1H-NMR(400MHz,CDCl)δ ppm:7.93(s,1H),7.70(d,J=2.57Hz,2H),7.62(brs,1H),7.35-7,45(m,1H),7.07(m,1H),6.92-6.97(td,J=9.63,6.42,1H),5.34(s,2H),5.14(s,2H),4.20(s,3H),3.87(s,2H).
7.14-7.27ppm,2.35ppmに、トルエン0.5分子から0.6分子に相当するピークを確認した。
【0124】
参考例1 化合物S-4の合成
【化36】
【0125】
工程1:化合物S-2の合成
化合物S-1(5.50kg、29.5mol)、アセトニトリル(21.7kg)および氷酢酸(115.00kg)を混合し、5℃に冷却した。17%亜硝酸ナトリウム水溶液(13.03kg)を加え1時間撹拌し、25℃に昇温後1.5時間撹拌した。不溶物をろ別し、アセトニトリル(21.7kg)、テトラヒドロフラン(49.0kg)で不溶物を洗浄した。集めたろ液に水(460L)を加えた。スラリーを0℃に冷却し、固体をろ取し、水で洗浄後、乾燥することで化合物S-2(3.75kg、19.0mol、収率:64.4%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=196(M-H)、RT=11.8min、LC/MS測定条件4
【0126】
工程2:化合物S-3の合成
化合物S-2(3.25kg、16.4mol)と酢酸エチル(58.7kg)を混合し、トリメチルオキソニウムテトラフルオロボレート(2.09kg、14.1mol)を加え、25℃で7時間撹拌した。この反応液に酢酸エチル(29.5kg)、メタノール(10.3kg)の混合液を加えた。この混合液を5%炭酸ナトリウム水溶液(66.3kg)に加え、有機層と水層に分離した。有機層を5%塩化ナトリウム水溶液(65.8kg)で2回洗浄し、活性炭処理し、42kgまで濃縮した。テトラヒドロフラン(87.0kg)を加え、23kgまで濃縮する操作を2回繰り返し、さらにテトラヒドロフラン(87.0kg)を加え、18.9kgまで濃縮し、33℃に昇温した。この混合液にヘプタン(47.0kg)を加えた。スラリーを0℃に冷却し、固体をろ取し、テトラヒドロフラン、ヘプタンの混合液で洗浄後、乾燥することで化合物S-3(1.68kg、7.9mol,収率:48.2%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=212(M+H)、253(M+CHCN+H)RT=12.4min、LC/MS測定条件4
【0127】
工程3:化合物S-4の合成
化合物S-3(1040g、4.9mol)、10%パラジウム炭素(PEタイプ、含水)(523g、0.25mol)および酢酸エチル(8.99kg)を混合し、ヒドラジン一水和物(504g、10.1mol)を加え、35℃で3時間撹拌した。10%パラジウム炭素をろ別し、水(1560g)、酢酸エチル(9.00kg)で10%パラジウム炭素を洗浄した。集めたろ液に2mol/L塩酸(750g)を加え、有機層と水層に分離した。得られた水層を酢酸エチル(4.69kg)で抽出した。有機層を併せて活性炭処理し、11.09kgまで濃縮した。この濃縮液に4mol/L塩化水素・酢酸エチル溶液(1124g)を加えた。固体をろ取し、酢酸エチルで洗浄後、乾燥することで化合物S-4(0.84kg、3.9mol、収率:78.5%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=182(M+H)、223(M+CHCN+H)RT=6.6min、LC/MS測定条件4
塩素濃度(イオンクロマトグラフィー):16.74%
【0128】
参考例2 化合物A-3の合成
【化37】
【0129】
工程1:化合物A-2のジクロロメタン溶液の合成
化合物A-1(9.2kg,65.1mol)およびテトラヒドロフラン(64L)を混合し、0℃に冷却し、スラリーとした。ここに、水素化ビス(2-メトキシ)アルミニウムナトリウム(Red-AL)/トルエン溶液(65wt%)(26.4kg,84.9mol)とテトラヒドロフラン(28L)を混合したRed-AL/テトラヒドロフラン溶液を内温8℃以下に保ちながら60分間かけて滴下した。その後、0℃~5℃で30分間撹拌した。本反応液に対してアセトン(4.9kg,84.3mol)を30分間かけて滴下し、25℃に昇温した。別の反応器に酒石酸カリウムナトリウム・4水和物(46kg,163mol)とテトラヒドロフラン(138L)を混合したスラリーを準備し、先のRed-AL還元をアセトンでクエンチした反応液を30分間かけて滴下した(この間に内温は40℃付近になった)。2時間、40℃で撹拌を継続したのち、25℃に冷却した。水(2.5kg)を加えて撹拌したのち、ブフナーろ過を行い、得られたろ液を35kg(28L)まで減圧濃縮した。ろ液(28L)を3等分し、1つ目についてトルエン(2.6kg)を加え、減圧濃縮を行う操作を8回繰り返したのち、最終的に濃縮乾固した。濃縮乾固した生成物にジクロロメタン(13.5kg)を加えて生成物A-2のジクロロメタン溶液とした。同じ操作を2つ目、3つ目にも実施し、A-2(5.53kg)とジクロロメタン(42.7kg)で構成されるA-2/ジクロロメタン溶液を調整した(収率:74.8%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,30℃)δ ppm:8.00(s,1H),4.74(s,2H),3.90(s,3H).
【0130】
工程2:化合物8の合成
工程1で製造したA-2/ジクロロメタン溶液(5.53kgのA-2(48.8mol)を含むジクロロメタン溶液49.8kg)にジクロロメタン(44L)を加え、25℃に温度調整した。塩化チオニル(7.8kg,65.5mol)とジクロロメタン(27L)の混合溶液を30分間かけて滴下し、ジクロロメタン(8.2L)を用いてライン洗浄し洗液として流入後、室温で7時間撹拌した。別途、酢酸ナトリウム(36.2kg,436mol)と水道水(143L)から20%酢酸ナトリウム水溶液(179kg)を調整した。20%酢酸ナトリウム(119kg)を先の反応液に滴下した。滴下終了時点のpHは4.6付近であった。本操作で得られた有機層を塩化ナトリウム(5.5kg)と水道水(49L)から調整した10%塩化ナトリウム水溶液で洗浄、水層についてもジクロロメタン(55L)で抽出した。合併有機層(ジクロロメタン溶液)を33Lまで濃縮したのち、酢酸エチル(27.5L)を加え、濃縮した。33Lまで濃縮後、あらためて酢酸エチル(47.5L)を加え、ジャケット温度60℃のもとで常圧濃縮し、生じた無機塩をろ過後した。ろ液に塩酸・酢酸エチル溶液(4mol/L,12.6kg)を加えて塩酸塩化し、25℃で30分間撹拌した後、5℃付近に冷却した。30分間撹拌し、晶析熟成の後、得られた晶析スラリーをろ過、冷却した酢酸エチル(55L)で洗浄、減圧乾燥し、化合物8(5.25kg)を得た(淡黄色粉末,収率:64.8%)。
1H-NMR(400MHz,DMSO-D6,30℃)δ ppm:8.54(s,1H),4.70(s,2H),3.86(s,3H).
【0131】
参考例3 化合物10の合成
【化38】
【0132】
工程1:化合物B-2の合成
窒素雰囲気下で、0℃~5℃下に冷却した98%硫酸(395.7L)に対して化合物B-1(79.1kg,499mol)を分割して加えた(内温を0℃~5℃に保つ)。硝酸カリウム(55.5kg)を内温0℃~12℃に保ち、15回に分けて(20分以上の間隔を空けて)分割投入した。内温0℃~5℃で5時間撹拌した。0℃~5℃に冷却した水(791L)に内温0℃~5℃に保ちながら、先の反応液をゆっくり流入し、98%硫酸(39.6L)で洗いこみを行なったのち、内温0℃で5時間撹拌した。スラリーを遠心分離機によりろ過し、水(791L)で洗浄した。得られた粗固体を水(791L)に懸濁させ、20℃~30℃で30分間撹拌したのち、固体をろ過、水(791L)で3回洗浄した後、減圧乾燥し、化合物B-2(99.61kg)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ ppm:10.31(s,1H),8.46(d,J=6.60Hz,1H),7.47(d,J=9.17Hz,1H).
HPLC(UV=250nm):RT=10.9min、HPLC測定条件9
【0133】
工程2:化合物S-2の合成
エタノール(697L)、水(697L)およびヒドラジン1水和物(73.5kg,1468mol)を混合し、45℃に加熱した。ここに、化合物B-2(99.6kg,489mol)とエタノール(299L)の混合溶液を60分かけて滴下し、さらに8時間、45℃から50℃で9時間撹拌した。内温を40℃~50℃に保ちながら、炭酸水素カリウム(53.9kg,538mol)と水(1295L)から調整した水溶液を30分間以上かけて滴下した。0℃~5℃に冷却し、1時間撹拌したのち、ろ過を行なった。水(1335L)とエタノール(657L)を混合し、0℃~5℃に冷却させたエタノール水溶液を用いて先の固体を洗浄した。減圧乾燥を行って、化合物S-2(83.25kg)を得た(収率:86.9%)。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ ppm:13.56-13.98(m,1H),8.67(s,1H),8.37(d,J=0.98Hz,1H),7.92(d,J=0.61,1H).
HPLC(UV=250nm):RT=10.4min、HPLC測定条件9
【0134】
工程3:化合物S-3の合成
化合物S-2(84kg,430mol)と酢酸エチル(1596L)を混合し、20℃~30℃で撹拌した。トリメチルオキソニウムテトラフルオロボレート(77.6kg,525mol)を数回に分けて投入し、酢酸エチル(84L)を加え、25℃で6時間撹拌した。メタノール(252L)と酢酸エチル(420L)の混合溶液を2時間かけて先の反応液に滴下し、過剰のトリメチルオキソニウムテトラフルオロボレートのクエンチを行った。炭酸ナトリウム(84kg)と水(1596L)を混合した炭酸ナトリウム水溶液に、先のクエンチ後の反応液を1時間かけて滴下し、酢酸エチル(420L)とメタノール(84L)を加えた。分液操作により得られた有機層を飽和食塩水(1680kg)で2回洗浄し、得られた有機層に対して活性炭ろ過処理を行った。その後、有機層を減圧濃縮したのち、テトラヒドロフラン(2520L)を流入し、さらに減圧濃縮を行った。テトラヒドロフランの追加流入と減圧濃縮の操作を再度実施したのち、ヘプタン(2139L)を滴下し、-5℃~5℃に冷却した後、0℃付近で1時間撹拌、晶析熟成した。晶析スラリーをろ過し、冷却したテトラヒドロフラン(224L)とへプタン(912L)の混合溶液で洗浄した。減圧乾燥を行って、化合物S-3(65.73kg)を得た(収率:74.1%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ ppm:8.31(s,1H),8.13(s,1H),7.81(s,1H),4.27(s,3H).
HPLC(UV=254nm):RT=10.3min、HPLC測定条件10
【0135】
工程4:化合物10の合成
化合物S-3(65.7kg,310mol)と酢酸エチル(657L)を混合し、室温で撹拌した後、10℃付近に冷却し、窒素置換を行った。5%の白金-炭素(57.7kg,53%水分含有)を加えた。水素置換後、内温を25℃付近に調節しながら4時間撹拌した。原料消失を確認後に窒素置換、ろ過操作を実施し白金-炭素触媒を除去した。分液操作を実施後、有機層を濃縮、酢酸エチル溶液にヘプタンを滴下し、晶析スラリーを形成させた。ろ過、ヘプタン/酢酸エチルで洗浄後、減圧乾燥を実施し、化合物10(37.24kg)を得た(収率:66.2%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ ppm:7.70(s,1H),7.64(s,1H),6.89(s,1H),4.15(s,3H).
HPLC(UV=254nm):RT=4.8min、HPLC測定条件10
【0136】
参考例4 化合物9の合成
【化39】
【0137】
工程1:化合物C-2の合成
化合物C-1(10.00g、48.0mmol、メシル酸塩)、N,N'-カルボニルジイミダゾール(8.18g、50.4mmol)、アセトニトリル(60.00mL)、およびジイソプロピルエチルアミン(6.83g、52.8mmol)を混合し、10℃で60分間攪拌した。反応液に化合物1(8.09g、55.2mmol、塩酸塩)、ジイソプロピルエチルアミン(7.14g、55.2mmol)を混合し、50℃で210分間攪拌した。反応液を冷却し、45gまで濃縮した。2-プロパノール(100mL)を加え、60gまで濃縮した後、2-プロパノール(100mL)を加えた。スラリーを0℃に冷却し、固体をろ取し、2-プロパノールで洗浄後、乾燥することで化合物C-2(10.48g、42.2mmol、収率:88%)を得た。
HPLC(UV=210nm):RT=14.5min、HPLC測定条件11
【0138】
工程2:化合物C-3の合成
化合物C-2(8.00g、32.2mmol)、N,N'-カルボニルジイミダゾール(6.79g、41.9mmol)、テトラヒドロフラン(80.0mL)、および1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(5.40g,35.4mmol)を混合し、25℃で120分間攪拌した。テトラヒドロフラン(80.0mL)を滴下し、反応液を0℃に冷却し、晶析スラリーを形成させた。固体をろ取し、テトラヒドロフランで洗浄後、加熱乾燥することで化合物C-3の結晶(12.6g、29.6mmol、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン塩、収率:92%)を得た。
HPLC(UV=210nm):RT=1.9min、HPLC測定条件11
【0139】
工程3:化合物9の合成
化合物C-3(1.00g、2.3mmol、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン塩)、N,N-ジメチルアセトアミド(5.0mL)、および化合物4(579.2mg、2.6mmol)を混合し、70℃で300分間攪拌した。反応液を冷却し、アセトニトリル(10mL)を加え、9.4gまで濃縮する操作を2回繰り返した。濃縮液に化合物6(461mg、4.7mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(456mg、3.5mmol)を加え、60℃で160分間攪拌した。反応液を25℃に冷却し、酢酸(703mg、11.7mmol)、水(8.0mL)および種晶を加え、得られた晶析スラリーを0℃に冷却した。スラリーに水(12.0mL)を加え、固体をろ取し、20%アセトニトリル水溶液で洗浄後、乾燥することで化合物9(0.86g、1.9mmol,収率:79.5%)を得た。
HPLC(UV=255nm):RT=14.5min、HPLC測定条件8
【0140】
参考例5 化合物S-3の合成
【化40】
【0141】
工程1:化合物S-3の合成
参考例3の工程1と同様にして、化合物B-2を得た。続いて、化合物B-2(30g、147mmol)とNMP(120mL)を混合し、氷冷下でBoc-カルボキシレート(56g、383mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。反応液にジイソプロピルエチルアミン(38.6mL、221mmol)を加え、90℃にて20時間攪拌した。反応液を80℃にして水(240mL)を加えた後、室温に冷却し、析出した不溶物をろ別した。得られた固体をNMP/水=1/2(15mL)の混合液で3回洗浄し、さらに水(30mL)で3回洗浄した。得られた固体を酢酸イソプロピル(60mL)、ヘプタン(240mL)に懸濁させ室温で攪拌後、酢酸イソプロピル/ヘプタン=1/4(30mL)で3回洗浄することで化合物D-3を得た。得られた固体を酢酸イソプロピル(100mL)に懸濁させた。得られた懸濁液をメシル酸(96mL、1474mmol)と酢酸イソプロピル(100mL)の混液に55℃にて加え、酢酸イソプロピル(60mL)で洗いこみ、同温にて25分間攪拌した。氷冷下、水(240mL)、水酸化ナトリウム水溶液(239mL、1916mmol)および酢酸イソプロピル(150mL)を反応液に加え、40℃にて攪拌した。得られた反応液に酢酸イソプロピル(150mL)を加えた。得られた有機層を水(90mL)で3回洗浄し、45gまで濃縮した。酢酸イソプロピル(12g)、ヘプタン(210mL)を加え、得られた不溶物をろ別し、固体を酢酸イソプロピル/ヘプタン=1/7(30ml)で3回洗浄、乾燥することで、化合物S-3(25.3g、120mmol、収率:81.1%)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ ppm:8.34(s,1H),8.13(s,1H),7.84(s,1H),4.28(s,3H).
【0142】
参考例6 化合物10の合成
【化41】
【0143】
工程1:化合物T-2、T-3の合成
氷冷下、化合物T-1(40g、182mmol)、濃硫酸(200mL、3677mmol)および69%硝酸(23.3g、255mmol)を混合し、氷冷から室温にて3時間攪拌し、その後終夜静置した。氷水520mLにその混合液を注入し、ジクロロメタン(200mL)を加え、分液操作を行った。得られたジクロロメタン溶液を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(400mL)で2回洗浄し、濃縮乾固した。得られた固体にメタノール(120mL)を加えたのち、内容量が116gになるまで濃縮した。得られたスラリーに内容量が333gになるまでメタノールを加えたのち、水(240mL)を加え、得られた不溶物をろ別し、固体をメタノール/水=1/1(200mL)で洗浄、乾燥することで、化合物T-2/T-3=1/2.78の混合物(30.67g、収率:58.5%)を得た。
LC/MS(ESI):m/zとしてMS検出されず、RT=2.04min、LC/MS測定条件1
【0144】
工程2:化合物T-4の合成
窒素気流下、T-2/T-3=1/2.78の混合物(200mg)に2-プロパノール(1.4mL)を加え、60℃まで昇温し、トリエチルアミン(0.289mL、2.07mmol)を加え、1.5時間攪拌した。その後、メチルアミン塩酸塩(94mg、1.39mmol)を水(0.4mL)に溶かした溶液を60℃で反応液に加え、3時間攪拌した。得られた反応液に60℃で水(8mL)を加えた後、室温に冷却し30分間攪拌した。析出した不溶物をろ別し、得られた固体を水(5mL)で洗浄、乾燥することで、化合物T-4(194mg、0.699mmol、収率:100%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=277(M+H)、RT=2.46min、LC/MS測定条件2
【0145】
工程3:化合物T-5の合成
窒素気流下、化合物T-4(500mg,1.80mmol)と2-プロパノール(2.5mL)およびトリブチルホスフィン(802mg、3.96mmol)を混合し、80℃にて1.5時間撹拌した。室温へ冷却した後、トルエン(3mL)にて3回溶媒置換を行い、濃縮後の残渣が5gになるまで濃縮を行った。その後、反応液を4℃まで氷冷し、4mol/L塩酸-酢酸エチル溶液(1.5mL)を加え20分間攪拌した。得られた晶析スラリーをろ別し、トルエン(2.5mL)で洗浄、乾燥することで固体を得た。水(4.3mL)と炭酸水素ナトリウム(0.192g、2.29mmol)の混液に、得られた固体を少しずつ加え、pHを7~8に調整し30分間攪拌して、晶析スラリーを得た。ろ別し、水(8.6mL)で洗浄、乾燥することで、化合物T-5(351mg、1.43mmol、収率:79.4%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=245(M+H)、RT=1.90min、LC/MS測定条件1
【0146】
工程4:化合物10の合成
窒素気流下、化合物T-5(2.015g、8.21mmol)、DME(20mL)、ナトリウムtert-ブトキシド(1.104g、11.49mmol)、ベンゾフェノンイミン(1.645mL、9.80mmol)、BINAP(0.153g、0.246mmol)、およびジアセトキシパラジウム(0.036g、0.160mmol)を混合し、80℃にて9時間攪拌して、終夜静置した。得られた懸濁液にエタノール(10mL)を加え、5℃に冷却した。懸濁液に30%硫酸(20mL)を少しずつ加え、室温にて終夜攪拌した。得られた反応液に酢酸エチル(40mL)、水(20mL)を加え、分液操作を実施した。得られた水層を酢酸エチル(10mL)で洗浄し、有機層を10%硫酸(10mL)で洗浄した。得られた水層を合わせ、氷冷後、48%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHが8になるまで中和した。酢酸エチル(20mL)を加え、析出した硫酸ナトリウムをろ別し、分液操作を実施した。得られた水層に酢酸エチル(20mL)を加え、分液操作を実施した。得られた有機層を合わせ、濃縮し、さらに酢酸エチル(10mL)にて溶媒置換を4回繰り返した。ヘプタン(12mL)を加え、得られた晶析スラリーを氷冷下1時間攪拌した。ろ別し、酢酸エチル/ヘプタン=1/3(6mL)にて洗浄、乾燥することで、化合物10(1.18g、6.5mmol、収率:79.2%)を得た。
LC/MS(ESI):m/z=182(M+H)、RT=0.88min、LC/MS測定条件1
【0147】
参考例7 化合物U-4の合成
【化42】
【0148】
工程1:化合物U-2の合成
化合物U-1(2.09g、22.6mmol、塩酸塩)とCPME(12.04g)および水(7g)を混合し、炭酸カリウム(4.25g、30.8mmol)を水(7g)に溶解させた溶液を、反応液の温度が20~30℃になるようにゆっくり加えた。得られた混合溶液を激しく攪拌し、CbzCl(3.50g、20.5mmol)を反応液の温度が20~30℃になるようにゆっくり加え、室温にて1時間攪拌した。得られた溶液に分液操作を施し、有機層を水(14g)で洗浄後、濃縮した。残渣にCPME(15.05g)を加え、さらに残渣が10.5gになるまで濃縮した。得られた溶液を45℃まで昇温し、ヘプタン(9.58g)を温度を維持したまま30分間かけて加え、その後さらに30分間攪拌した。ヘプタン(19.15g)を加えた後、得られた晶析スラリーを氷冷下で30分間攪拌した。ろ別し、得られた固体をCPME-ヘプタン(3g-9.58g)の混液で洗浄、乾燥することで、化合物U-2(3.41g、17.93mmol、収率:86%)を得た。
HPLC(UV=254nm):RT=9.51min、HPLC測定条件5
【0149】
工程2:化合物U-3の合成
化合物U-2(8.00g、42.1mmol)にメタノール(31.66g)を加え、0℃まで冷却後、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液(2.43g、12.6mmol)を加え、同温度にて4時間攪拌した。得られた溶液に、N-メチルホルモヒドラジド(3.74g、50.5mmol)をメタノール(19g)に溶かした溶液を0~5℃で加え、さらに酢酸(2.53g、42.1mmol)を同温度にて加え、0℃にて2時間攪拌した。得られた溶液を60℃まで昇温し、同温度にて4時間攪拌した。反応液を32gまで濃縮した後、酢酸エチル(57.73g)、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(67.53g)を加えた。得られた混合溶液を10分間攪拌し、分液操作を行った。得られた水層についても酢酸エチル(57.73g)で抽出した。合わせた有機層を40gまで濃縮した。MEK(64.4g)を加え、さらに40gまで濃縮する操作を2回繰り返した。得られた濃縮液にメシル酸(4.04g、42.0mmol)をMEK(32.2g)に溶かした溶液を20~30℃で加え、室温にて30分間攪拌した。析出した晶析スラリーをろ別し、得られた固体をMEK(25.76g)で洗浄、乾燥することで、化合物U-3(10.1g、29.5mmol、メシル酸塩、収率:70%)を得た。
HPLC(UV=254nm):RT=7.90min、HPLC測定条件5
【0150】
工程3:化合物C-1の合成
化合物U-3(10g、29.2mol、メシル酸塩)とメタノール(79.15g)を混合し、室温で撹拌した後、窒素置換を行った。パラジウム-炭素(パラジウム10%)(0.5g、5重量%)を加え、水素置換後、室温にて7時間撹拌した。窒素置換後、セライト(登録商標)ろ過操作にてパラジウム-炭素触媒を除去した。得られたろ液を50gまで濃縮した。MEK(40.25g)を加え、40gまで濃縮する操作を2回繰り返した。得られた晶析スラリーをろ別し、MEK(25.76g)で洗浄、乾燥することで、化合物C-1(5.3g、25.5mmol、メシル酸塩、収率:87%)を得た。
HPLC(UV=254nm):RT=2.75min、HPLC測定条件11
【0151】
式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の単結晶構造解析の結果を以下に示す。
R1 (I>2.00s(I))は0.0470であり、最終の差フーリエから電子密度の欠如も誤置もないことを確認した。
結晶学的データを表2に示す。
【表2】

ここで、Volumeは単位格子体積、Zは単位格子中の分子数を意味する。
【0152】
また、非水素原子の原子座標を表3~表4に示す。ここで、U(eq)とは、等価等方性温度因子を意味する。
【表3】

【表4】
【0153】
次に、水素原子の原子座標を表5に示す。ここで、U(iso)とは、等方性温度因子を意味する。また、表5の水素原子の番号は、結合している非水素原子の番号に関連して付けた。
【表5】
【0154】
さらに、原子間結合距離(単位:オングストローム)を表6に示す。
【表6】
【0155】
式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形は、非対称単位中に、式(VII)で示される化合物が1分子存在していた。式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の非対称単位中の構造を、図11に示す。
なお、表3~表4および表6における非水素原子の番号は、それぞれ図11に記載された番号に対応している。
【0156】
表6に記載の通り、N10-C9の結合距離は約1.26Åを示し、N16-C9の結合距離は約1.37Åを示した。
N10-C9の結合距離(約1.26Å)は、N16-C9の結合距離(約1.37Å)よりも短いため、フマル酸共結晶I形の式(VII)で示される化合物は、イミノ構造:
【化43】

であると同定した。
【0157】
すなわち、同一の化合物でも、結晶化条件等により、イミノ構造を取る場合とアミノ構造を取る場合が存在し、塩や複合体を形成している場合においても、その塩や複合体のカウンター分子の種類により、イミノ構造を取る場合とアミノ構造を取る場合が存在し、同一カウンター分子であっても、結晶化条件等により、イミノ構造を取る場合とアミノ構造を取る場合が存在する。また、イミノ構造を取る化合物、その塩またはそれらの複合体と、アミノ構造を取る化合物、その塩またはそれらの複合体の混合物であることもある。
【0158】
実施例1bの工程5-2と同様の製造方法により得られた式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形の粉末X線回折の結果を示す。
粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ):7.7±0.2°、9.5±0.2°、10.0±0.2°、10.9±0.2°、13.8±0.2°、14.6±0.2°、18.6±0.2°、22.6±0.2°、23.4±0.2°および24.6±0.2°にピークが認められた。
式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形(Form I)の粉末X線回折パターンを図9に示す。横軸は2θ(°)で、縦軸は強度(Count)を表す。
図9の粉末X線回折パターンにおけるピークテーブルを図10に示す。
【0159】
また、式(VII)で示される化合物のトルエン和物の粉末X線回折の結果を示す。
粉末X線回折パターンにおいて、回折角度(2θ):7.4±0.2°、8.1±0.2°、13.7±0.2°、15.1±0.2°、16.3±0.2°、19.3±0.2°、21.4±0.2°、22.6±0.2°、24.6±0.2°、26.6±0.2°、27.8±0.2°および29.5±0.2°にピークが認められた。
式(VII)で示される化合物のトルエン和物の粉末X線回折パターンを図20に示す。横軸は2θ(°)で、縦軸は強度(Count)を表す。
式(VII)で示される化合物のトルエン和物については、分子構造(アミノ体/イミノ体)は同定していない。
【0160】
以下に、本発明化合物の生物試験例を記載する。
本発明に係る式(VII)で示される化合物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼ阻害作用を有し、コロナウイルス3CLプロテアーゼを阻害するものであればよい。
具体的には、以下に記載する評価方法において、IC50は50μM以下が好ましく、より好ましくは、1μM以下、さらにより好ましくは100nM以下である。
【0161】
試験例1:human TMPRSS2発現Vero E6細胞(Vero E6/TMPRSS2細胞)を用いたCytopathic effect(CPE)抑制効果確認試験
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、2~5倍段階希釈系列を作製後、384ウェルプレートに分注する。
・細胞およびSARS-CoV-2の希釈、分注
VeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、5×10cells/well)とSARS-CoV-2(100TCID50/well)を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で混合し、被験試料が入ったウェルに分注した後、COインキュベーターで3日間培養する。
・CellTiter-Glo(登録商標)2.0の分注および発光シグナルの測定
3日間培養したプレートを室温に戻した後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0を各ウェルに分注し、プレートミキサーで混和する。一定時間置いた後、プレートリーダーで発光シグナル(Lum)を測定する。
【0162】
<各測定項目値の算出>
・50% SARS-CoV-2感染細胞死阻害濃度(EC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Efficacyとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をEC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Efficacy = {(Sample - virus control) / (cell control - virus control)} * 100%
cell control: the average of Lum of cell control wells
virus control: the average of Lum of virus control wells

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
【0163】
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
化合物I-005:0.328μM
【0164】
試験例2:SARS-CoV-2 3CLプロテアーゼに対する阻害活性試験
<材料>
・市販のRecombinant SARS-CoV-2 3CL Protease
・市販の基質ペプチド
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-Gln-Ser-Gly-Phe-Arg-Lys-Met-Glu(Edans)-NH2(配列番号:1)
・Internal Standardペプチド
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(13C6,15N)-Gln(配列番号:2)
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(13C6,15N)-Glnは、文献(Atherton, E.; Sheppard, R. C.、“In Solid Phase Peptide Synthesis, A Practical Approach”、IRL Press at Oxford University Pres、1989.およびBioorg. Med. Chem.、5巻、9号、1997年、1883-1891頁、等)を参考に合成できる。以下に一例を示す。
Rinkアミド樹脂を用いて、Fmoc固相合成によって、H-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(13C6,15N)-Glu(resin)-OαOtBu(Lys側鎖はBoc保護、Thr側鎖はtert-ブチル基で保護、Ser側鎖はtert-ブチル基で保護、GluのC末端OHはtert-ブチル基で保護されており、Glu側鎖のカルボン酸を樹脂に縮合)を合成する。N末端Dabcyl基の修飾は4-ジメチルアミノアゾベンゼン-4’-カルボン酸(Dabcyl-OH)をEDC/HOBTを用いて樹脂上で縮合する。最終脱保護、および樹脂からの切り出しはTFA/EDT=95:5で処理することで行う。その後、逆相HPLCによって精製する。
・RapidFire Cartridge C4 typeA
<操作手順>
・アッセイバッファーの調製
本試験では、20mM Tris-HCl、100mM 塩化ナトリウム、1mM EDTA、10mM DTT、0.01% BSAからなるアッセイバッファーを使用する。IC50値が10nM以下の化合物については、20mM Tris-HCl、1mM EDTA、10mM DTT、0.01% BSAからなるアッセイバッファーを使用する。
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、2~5倍段階希釈系列を作製後、384ウェルプレートに分注する。
・酵素と基質の添加、酵素反応
準備した化合物プレートに、8μMの基質、および6または0.6nMの酵素溶液を添加し、室温で3~5時間インキュベーションを行う。その後、反応停止液(0.067μM Internal Standard、0.1% ギ酸、10または25% アセトニトリル)を加え酵素反応を停止させる。
・反応産物の測定
反応完了したプレートはRapidFire System 360および質量分析器(Agilent、6550 iFunnel Q-TOF)、またはRapid Fire System 365および質量分析器(Agilent、 6495C Triple Quadrupole)を用いて測定する。測定時の移動相としてA溶液(75% イソプロパノール、15% アセトニトリル、5mM ギ酸アンモニウム)とB溶液(0.01% トリフルオロ酢酸、0.09% ギ酸)を用いる。
質量分析器によって検出された反応産物は、RapidFire Integratorまたは同等の解析が可能なプログラムを用いて算出しProduct area値とする。また、同時に検出されたInternal Standardも算出しInternal Standard area値とする。
<各測定項目値の算出>
・P/ISの算出
前項目で得られたarea値を下記の式によって計算し、P/ISを算出する。
P/IS= Product area値/ Internal Standard area値
・50% SARS-CoV-2 3CLプロテアーゼ阻害濃度(IC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Inhibitionとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をIC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Inhibition = {1-(Sample - Control(-)) / Control(+)-Control(-))} * 100

Control(-):the average of P/IS of enzyme inhibited condition wells
Control(+):the average of P/IS of DMSO control wells
min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
【0165】
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
化合物I-005:0.010μM
【0166】
試験例1-2:human TMPRSS2発現Vero E6細胞(Vero E6/TMPRSS2細胞)を用いたCytopathic effect(CPE)抑制効果確認試験
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、96ウェルプレートに分注する。
・細胞およびSARS-CoV-2の希釈、分注
VeroE6/TMPRSS2細胞(JCRB1819、1.5×10cells/well)とSARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY/WK-521/2020、hCoV-19/Japan/QK002/2020、hCoV-19/Japan/QHN001/2020、hCoV-19/Japan/QHN002/2020、hCoV-19/Japan/TY7-501/2021、hCoV-19/Japan/TY7-503/2021、hCoV-19/Japan/TY8-612/2021、hCoV-19/Japan/TY11-927-P1/2021(30-1000TCID50/well)を培地(MEM、2%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン)で混合し、被験試料が入ったウェルに分注した後、COインキュベーターで3日間培養する。
・CellTiter-Glo(登録商標)2.0の分注および発光シグナルの測定
3日間培養したプレートを室温に戻した後、CellTiter-Glo(登録商標)2.0を各ウェルに分注し、プレートミキサーで混和する。一定時間置いた後、プレートリーダーで発光シグナル(Lum)を測定する。
【0167】
<各測定項目値の算出>
・50% SARS-CoV-2感染細胞死阻害濃度(EC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Efficacyとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をEC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Efficacy = {(Sample - virus control) / (cell control - virus control)} * 100%
cell control: the average of Lum of cell control wells
virus control: the average of Lum of virus control wells

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
【0168】
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
(SARS-CoV-2 hCoV-19/Japan/TY/WK-521/2020)
式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形:0.37μM
【0169】
試験例2-2:SARS-CoV-2 3CLプロテアーゼに対する阻害活性試験
<材料>
・市販のRecombinant SARS-CoV-2 3CL Protease
・市販の基質ペプチド
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu-Gln-Ser-Gly-Phe-Arg-Lys-Met-Glu(Edans)-NH2(配列番号:1)
・Internal Standardペプチド
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(13C6,15N)-Gln(配列番号:2)
Dabcyl-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(13C6,15N)-Glnは、文献(Atherton, E.; Sheppard, R. C.、“In Solid Phase Peptide Synthesis, A Practical Approach”、IRL Press at Oxford University Pres、1989.およびBioorg. Med. Chem.、5巻、9号、1997年、1883-1891頁、等)を参考に合成できる。以下に一例を示す。
Rinkアミド樹脂を用いて、Fmoc固相合成によって、H-Lys-Thr-Ser-Ala-Val-Leu(13C6,15N)-Glu(resin)-OαOtBu(Lys側鎖はBoc保護、Thr側鎖はtert-ブチル基で保護、Ser側鎖はtert-ブチル基で保護、GluのC末端OHはtert-ブチル基で保護されており、Glu側鎖のカルボン酸を樹脂に縮合)を合成する。N末端Dabcyl基の修飾は4-ジメチルアミノアゾベンゼン-4’-カルボン酸(Dabcyl-OH)をEDC/HOBTを用いて樹脂上で縮合する。最終脱保護、および樹脂からの切り出しはTFA/EDT=95:5で処理することで行う。その後、逆相HPLCによって精製する。
・RapidFire Cartridge C4 typeA
<操作手順>
・アッセイバッファーの調製
本試験では、20mM Tris-HCl、1mM EDTA、10mM DTT、0.01% BSAからなるアッセイバッファーを使用する。
・被験試料の希釈、分注
予め被験試料をDMSOで適度な濃度に希釈し、3倍段階希釈系列を作製後、384ウェルプレートに分注する。
・酵素と基質の添加、酵素反応
準備した化合物プレートに、8μMの基質、及び6nMの酵素溶液を添加し、室温で3時間インキュベーションを行う。その後、反応停止液(0.072μM Internal Standard、0.1% ギ酸、10% アセトニトリル)を加え酵素反応を停止させる。
・反応産物の測定
反応完了したプレートはRapidFire System 360及び質量分析器(Agilent、6550 iFunnel Q-TOF)を用いて測定する。測定時の移動相としてA溶液(75% イソプロパノール、15% アセトニトリル、5mM ギ酸アンモニウム)とB溶液(0.01% トリフルオロ酢酸、0.09% ギ酸)を用いる。
質量分析器によって検出された反応産物は、RapidFire Integratorを用いて算出しProduct area値とする。また、同時に検出されたInternal Standardも算出しInternal Standard area値とする。
<各測定項目値の算出>
・P/ISの算出
前項目で得られたarea値を下記の式によって計算し、P/ISを算出する。
P/IS= Product area値/ Internal Standard area値
・50% SARS-CoV-2 3CLプロテアーゼ阻害濃度(IC50)算出
xを化合物濃度の対数値、yを%Inhibitionとしたとき、以下のLogistic回帰式で阻害曲線を近似し、y=50(%)を代入したときのxの値をIC50として算出する。

y = min + (max - min)/{1 + (X50/x) ^Hill}

%Inhibition = {1-(Sample - Control(-)) / Control(+)-Control(-))} * 100

Control(-):the average of P/IS ratio in the wells without SARS-CoV-2 3CL protease and test substance
Control(+):the average of P/IS ratio in the wells with SARS-CoV-2 3CL protease and without test substance

min:y軸下限値、max:y軸上限値、X50:変曲点のx座標、Hill:minとmaxの中間点でのカーブの傾き
【0170】
本発明化合物を本質的に上記のとおり試験した。結果を以下に示す。
式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形:0.0132μM

(実施例5)
【0171】
式(VII)で示される化合物の量が約1.8(w/v)%となるように、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を量り、0.3(w/v)%の高分子を溶解した水溶液に添加して分散させた。
添加剤としては、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(Evonik社製)、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)、ヒプロメロース(信越化学工業社製)、ポリビニルアルコール(Merck社製)、ポリビニルピロリドン(BASF社製)、ポリビニルアルコール・メチルメタクリレート・アクリル酸共重合体(日新化成社製)を使用した。
【表7】



【0172】
試験例3:溶解度評価
実施例5の各分散液1mLを、空腹時模擬人工腸液(FaSSIF)14mLに加え、恒温スターラーにて37℃、400rpmで1時間攪拌した。1時間攪拌後、検体を0.45μmフィルターでろ過し、ろ液中の式(VII)で示される化合物の濃度を液体クロマトグラフィー法により測定した。
【0173】
(測定法)
・検出器:紫外吸光光度計 (測定波長222nm)
・カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 2.1×50mm、1.7μm
・カラム温度:40℃付近の一定温度
・移動相A:0.1Mギ酸アンモニウム溶液、移動相B:アセトニトリル
・移動相の送液:移動相Aおよび移動相Bの混合比を7:3または以下の表のように変えて濃度勾配制御した。
【表8】




・流量:約0.6mL/min
・注入量:1μLまたは1.5μL
・サンプルクーラー温度:約10℃
・オートインジェクター洗浄液:水/メタノール混液 (7:3)
・面積測定範囲:試料溶液注入後4分間または7.5分間
・式(VII)で示される化合物の量の計算式
式(VII)で示される化合物の量(%)=ATII/ΣAT×100
ATII:試料溶液の式(VII)で示される化合物のピーク面積
ΣAT:試料溶液のピーク面積の合計 (ブランクおよびシステムピークは除く)
【0174】
(結果)
式(VII)で示される化合物の溶解度試験結果を以下の表に示す。その結果、式(VII)で示される化合物は、高分子を添加することで溶解度が大幅に向上した。
【表9】



本実験で用いた、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶の粒子径は、D50が3.44μm、D90が8.33μmであった。

(実施例6)
【0175】
(錠剤の製造方法)
式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を含有する錠剤を製造した。
以下の表に、1錠剤あたりの処方を示す。式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶、D-マンニトール(Roquette社製)、クロスカルメロースナトリウム(DuPont社製)、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)、軽質無水ケイ酸(Cabot社製)およびステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt社製)を30メッシュふるいで篩過して混合した後、造粒した。
造粒および整粒した顆粒、結晶セルロース(旭化成社製)およびステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt社製)、または、軽質無水ケイ酸(Cabot社製)を添加して混合した後、静的圧縮機またはロータリー式打錠機で直径9.0mmに圧縮成形し、下記組成の錠剤を得た。
【表10】

【0176】
試験例4:錠剤の溶出試験
(溶出試験法)
溶出試験は、第18改正日本薬局方溶出試験法第2法(界面活性剤を含有した溶出試験第1液、パドル法、パドル回転数:50rpm、結果:2錠の平均値)によっておこなった。
【0177】
(実験結果)
実施例6A、6B、6Cおよび6Dの溶出試験結果を図21に示す。その結果、いずれの実施例においても速やかな溶出性を示した。
【0178】
試験例4に用いた実施例6Aおよび6Bの製剤に用いた、有効成分(式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶)の粒度分布を図22に示す。10%粒子径が0.69μm、50%粒子径が4.00μm、90%粒子径が10.80μmであった。
試験例4に用いた、実施例6Cおよび6Dの製剤に用いた有効成分(式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶)の粒度分布を図23に示す。10%粒子径が0.67μm、50%粒子径が3.63μm、90%粒子径が10.98μmであった。

粒度分布の測定条件を以下に示す。
メーカー:シンパテック
装置:レーザー回折式HELOS&RODOS粒度分布測定装置
レンジ:R2
分散圧:3bar
トリガー条件:ストップ2s測定濃度≦1%か10s実時間
【0179】
試験例5:経時安定性試験における製剤中の安定化剤の影響
試験例4で用いたものと同一ロットの実施例6Aの製剤の経時安定性を確認した結果を示す。
a.安定性試験法
実施例6Aの製剤を、1)褐色ガラス瓶閉栓状態で60℃、二週間、または、2)褐色ガラス瓶開栓状態で40℃、75%相対湿度下、一ヶ月保管した。その後、本発明製剤中の式(VII)で示される化合物の類縁物質量を測定した。
(試料液調製方法)
(測定方法)
以下の方法、条件によって、液体クロマトグラフで、本発明製剤中の式(VII)で示される化合物の類縁物質量を測定した。
・検出器:紫外吸光光度計 (測定波長:222nm)
・カラム:C18カラム
・カラム温度:40℃付近の一定温度
・移動相A:0.01 mol/Lギ酸アンモニウム溶液、移動相B:アセトニトリル
・移動相A及び移動相Bの混合比は、9:1から1:9まで徐々に移動相Bの混合比を高め、32分間で測定を行った。
・流量:0.6mL/分
類縁物質量は、HPLCチャートのクロマトグラムのピーク面積の合計を100%とし、その量に対する割合(%)を算出した。
b.結果
安定性試験の結果を以下の表に示す。実施例6Aの製剤の総類縁物質量は、1)褐色ガラス瓶閉栓状態で60℃、二週間、および、2)褐色ガラス瓶開栓状態で40℃、75%相対湿度下、一ヶ月保管後も増加しておらず、安定であった。

【表11】



以上より、本発明製剤は、湿度および温度に対して安定性が高い。

(実施例7)
【0180】
試験例6 臨床試験(Ph2a)
軽症/中等症及び無症候/軽度症状のみ有するSARS-CoV-2感染者へ被検薬(有効成分:式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶)を反復経口投与したときの有効性及び安全性の評価を、プラセボを比較対象とした無作為割り付けによる二重盲検比較試験により実施した。
Phase 2a Partの主要評価項目は、軽症/中等症及び無症候のSARS-CoV-2感染者共通で、各時点におけるSARS-CoV-2のウイルス力価のベースラインからの変化量であり、被検薬の抗ウイルス効果を確認した。
【0181】
軽症/中等症のSARS-CoV-2感染者は下記の基準全てに該当する患者を選択した。
(a)12歳以上70歳未満の男性又は女性患者。
(b)登録前120時間以内にSARS-CoV-2陽性と診断された者。
(c)COVID-19発症から登録までの時間が120時間以内の者。
(d)登録時にCOVID-19による以下の症状(COVID-19の12症状)のうちいずれかで、中等度(COVID-19症状スコア:2)以上の症状を1項目以上(COVID-19発症前から存在した症状を除く)有する者。
全身症状:疲労感、筋肉又は体の痛み、頭痛、悪寒、熱っぽさ
呼吸器症状:鼻水又は鼻づまり、喉の痛み、咳、息切れ
消化器症状:吐き気、嘔吐、下痢
【0182】
無症候のSARS-CoV-2感染者は下記の基準全てに該当する患者を選択した。
(a)12歳以上70歳未満の男性又は女性患者。
(b)登録前120時間以内にSARS-CoV-2陽性と診断された者。
(c)無症候:登録前2週間以内に、以下のCOVID-19症状(SARS-CoV-2感染前から存在した症状を除く)が認められていない者。
全身症状:疲労感、筋肉又は体の痛み、頭痛、悪寒、熱っぽさ、味覚異常、嗅覚異常
呼吸器症状:鼻水又は鼻づまり、喉の痛み、咳、息切れ
消化器症状:吐き気、嘔吐、下痢
無症候/軽度症状のみ:無作為割付前2週間以内に,COVID-19による以下の症状 (COVID-19の12症状) のいずれにおいても,中等度 (COVID-19症状スコア:2) 以上の症状を有さない者 (COVID-19発症前から存在した症状を除く).
全身症状:けん怠感 (疲労感),筋肉痛又は体の痛み,頭痛,悪寒/発汗,熱っぽさ又は発熱
呼吸器症状:鼻水又は鼻づまり,喉の痛み,咳,息切れ (呼吸困難)
消化器症状:吐き気,嘔吐,下痢
【0183】
治験薬の投与方法
(i)被験薬
250 mg錠:錠剤中に式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を含み、式(VII)で示される化合物として250 mgを含む。本250mg錠は、実施例6Cと同様の各組成を2倍して製した錠剤である。
125 mg錠:錠剤中に式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を含み、式(VII)で示される化合物として125 mgを含む。本125mg錠は、実施例6Cと同様の組成の錠剤である。
(ii)プラセボ
Placebo-D錠:上記250 mg錠と外観が識別不能の錠剤で、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を含まない。
Placebo-B錠:上記125 mg錠と外観が識別不能の錠剤で、式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を含まない。
【0184】
投与量および投与方法
Phase 2a Partでは、軽症/中等症又は無症候のSARS-CoV-2感染者として適格と判断された被験者を、1:1:1の比率で、被検薬の375/125 mg群、被検薬の750/250 mg群、プラセボ群のいずれかに無作為に割付けた。
【0185】
投与群ごとの治験薬
375/125 mg群
Day 1に125 mg錠及びPlacebo-D錠をそれぞれ3錠、Day 2~5に125 mg錠及びPlacebo-D錠をそれぞれ1日あたり1錠投与する。
750/250 mg群
Day 1に250 mg錠及びPlacebo-B錠をそれぞれ 3錠、Day 2~5に250 mg錠及びPlacebo-B錠をそれぞれ1日あたり1錠投与する。
プラセボ群
Day 1にPlacebo-D錠及びPlacebo-B錠をそれぞれ3錠、Day 2~5にPlacebo-D錠及びPlacebo-B錠をそれぞれ1日あたり1錠投与する。
【0186】
なお、「Day 1」は投与初日を表し、「Day 2~Day 5」は投与初日から数えて、2日目~5日目を表す。
【0187】
有効性の主要評価項目(Phase 2a Part)
Phase 2a Partの有効性の主要評価項目は、軽症/中等症及び無症候のSARS-CoV-2感染者共通で、各時点におけるSARS-CoV-2のウイルス力価のベースラインからの変化量である。各時点におけるSARS-CoV-2ウイルス力価の観測値のベースラインからの絶対変化量と定義する。
【0188】
主要評価項目の解析(Phase 2a Part)
軽症/中等症のSARS-CoV-2感染者集団、無症候のSARS-CoV-2感染者集団、及びこれらの併合集団それぞれについて、mITT集団を対象に、各時点におけるSARS-CoV-2のウイルス力価のベースラインからの変化量の要約統計量を算出した。更に、軽症/中等症と無症候のSARS-CoV-2感染者を併合した集団に対してvan Elteren検定を適用し、両側有意水準5%で各時点におけるSARS-CoV-2のウイルス力価について被検薬の各用量群とプラセボ群の間で対比較を行った。van Elteren検定で使用する層には、軽症/中等症のSARS-CoV-2感染者集団、及び無症候のSARS-CoV-2感染者集団を用いた。
【0189】
主要評価項目の結果
(1)各時点におけるSARS-CoV-2のウイルス力価のベースラインからの変化量(Phase 2a Part)
Phase 2a Partには69例が無作為化され、375/125 mg群には22例(うち1例未投与例)、750/250 mg群には23例、プラセボ群には24例が割付けられた。69例のうち、ベースラインのRT-PCRが陽性であった症例数は44例であり、そのうちベースラインのウイルス力価が検出された症例数は40例であった。この40例の構成は、375/125 mg群で14例、750/250 mg 群で13例、プラセボ群で13例であった。なお、これら集団の例数及びその内訳は、2022年1月17日時点までに入手できたRT-PCR測定結果、及びウイルス力価測定結果に基づいて算出されたものである。
Phase 2a Partの最終結果として、69例のうち、ベースラインのRT-PCRが陽性であった症例数は47例であり、そのうちベースラインのウイルス力価が検出された症例数は43例であった。この43例の構成は、375/125 mg群で15例、750/250 mg 群で14例、プラセボ群で14例であった。
【0190】
治験プロトコルで定められた来院日をVisitで表記し、投薬日(Day)との対応関係および許容幅は以下の通りである。Op VはOptional Visitを意味し、任意来院日を示す。
【表12】



【0191】
Modified intention-to-treat population(無作為化され、かつベースラインのRT-PCRとウイルス力価が共に陽性であった全ての被験者)を対象に、SARS-CoV-2ウイルス力価のベースラインからの変化量の群ごとの平均値の推移を図24に示す。本解析は軽症/中等症のSARS-CoV-2感染者、及び無症候のSARS-CoV-2感染者を解析に含み、必須来院日とされたVisitのみを表示した。また、ウイルス力価が検出下限 (0.8 log10(TCID50/mL)) 未満である場合、そのウイルス力価の値は0.8 log10(TCID50/mL) として取り扱った。375/125 mg群ではVisit 3(投薬開始後4日目)、750/250 mg群ではVisit 2(投薬開始後2日目)及びVisit 3(投薬開始後4日目)の時点において、有意水準0.05でプラセボ群に比べてウイルス力価が統計的に有意に減少していた。なお、2022年1月17日時点までに入手できたRT-PCR測定結果、及びウイルス力価測定結果においても、375/125mg群ではVisit 3(投薬開始後4日目)以降、750/250mg群ではVisit2(投薬開始後2日目)以降の全ての時点において、プラセボ群に比べてウイルス力価が減少している傾向が伺えていた。
【0192】
また、各時点におけるウイルス力価の陽性患者の割合について以下に示す。
Day4の時点において、プラセボ群におけるウイルス力価が0.8以上の陽性者の割合に対して、750/250mg群では80%減少しており、375/125mg群では63%減少していた。Day6の時点において、プラセボ群におけるウイルス力価が0.8以上の陽性者の割合に対して、750/250mg群では54%減少しており、375/125mg群では100%減少していた。
Day4およびDay6の時点において、750/250mg群および375/125mg群の両方において、プラセボ群と比較して、ウイルス力価が陽性である患者割合が低い傾向が見られた。よって、本発明の医薬組成物を服薬することにより、感染性を有するウイルスを排出する患者を速やかに減少させることができることが示唆された。
【0193】
副次評価項目の結果
(1)ウイルス力価陰性が最初に確認されるまでの時間(Phase 2a Part)
SARS-CoV-2のウイルス力価陰性が最初に確認されるまでの時間を以下の表13および図25に示す。
Phase 2a Partの69例のうち、375/125 mg群で15例、750/250 mg 群で13例、プラセボ群で14例における結果を示す。
【表13】

[層別ログランク検定では,被験者層 (軽症/中等症,無症候/軽度のみ) を層別因子とする]
表13に示される通り、375/125mg群では、プラセボ群と比して中央値が49.8時間短く、ウイルス力価陰性が最初に確認されるまでの時間について有意な違いが認められた(p=0.0159)。750/250mg群では、プラセボ群と比して中央値が48.4時間短く、ウイルス力価陰性が最初に確認されるまでの時間について有意な違いが認められた(p=0.0205)。
また、図25に示される通り、プラセボ群においては、50%の患者のウイルス力価が陰性になるまでの時間は、治療開始からおよそ4.6日経過後であった。それに対し、750/250mg群および375/125mg群においては、50%の患者のウイルス力価が陰性になるまでの時間は、治療開始からおよそ2.6日経過後であった。よって、50%の患者のウイルス力価が最初に陰性になるまでの時間を約2日短縮することが確認された。
【0194】
(2)各時点におけるCOVID-19の12症状合計スコアのベースラインからの変化量(Phase 2a Part)
各時点におけるCOVID-19の12症状合計スコアのベースラインからの変化量を図6に示す。
Phase 2a Partの69例のうち、軽症/中等症の被験者を対象とした375/125 mg群で13例、750/250 mg 群で12例、プラセボ群で14例における結果を示す。
図26に示される通り、375/125 mg群および750/250 mg群において、Day 2(1回投与後)以降の全ての時点において、プラセボ群に比べてCOVID-19の12症状合計スコアが数値的に改善している傾向が伺えた。
【0195】
(3)重症化抑制効果(Phase 2a Part)
Phase 2a Partの69例のうち、軽症/中等症の被験者を対象として、投与開始後のいずれかの時点で初めてOrdinal scale(8段階に臨床的重症度を分類する順序尺度、表14)のスコアが3以上に悪化した被験者の割合を表15に示す。
【表14】



【表15】



表15に示される通り、375/125 mg群および750/250 mg群において、投与開始後に初めてOrdinal scaleが3以上へ悪化する症例は確認されなかった。
【0196】
有害事象の発現頻度
Phase 2a Partにおいて、死亡、重篤な有害事象および投与中止に至った有害事象はなかった。
本発明の製剤は、12歳以上の小児及び成人に用いることができる。
(実施例8)
【0197】
(錠剤の製造方法)
式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を含有する錠剤を製造した。
以下の表に、1錠剤あたりの処方を示す。式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶、D-マンニトール(Roquette社製)、クロスカルメロースナトリウム(DuPont社製)、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)、軽質無水ケイ酸(Cabot社製)およびステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt社製)を30メッシュふるいで篩過して混合した後、造粒した。
造粒および整粒した顆粒、結晶セルロース(旭化成社製)およびステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt社製)、または、軽質無水ケイ酸(Cabot社製)を添加して混合した後、静的圧縮機またはロータリー式打錠機で長径15.4mm×短径8mmに圧縮成形し、下記組成の錠剤を得た。
【表16】


【0198】
試験例7:錠剤の溶出試験
(溶出試験法)
実施例8A、8B、8Cおよび8Dについて、第18改正日本薬局方溶出試験法第2法(界面活性剤を含有した溶出試験第1液、パドル法、パドル回転数:50rpm、結果:2錠の平均値)によって溶出試験をおこなった。
【0199】
(実験結果)
いずれの実施例においても速やかな溶出性を示した。

(実施例9)
【0200】
(錠剤の製造方法)
式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を含有する錠剤を製造する。
以下の表に、1錠剤あたりの処方を示す。式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶、D-マンニトール(Roquette社製)、クロスカルメロースナトリウム(DuPont社製)、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)、軽質無水ケイ酸(Cabot社製)およびステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt社製)を30メッシュふるいで篩過して混合した後、造粒する。
造粒および整粒した顆粒、結晶セルロース(旭化成社製)およびステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt社製)、または、軽質無水ケイ酸(Cabot社製)を添加して混合した後、静的圧縮機またはロータリー式打錠機で直径5.0mmまたは5.5mmに圧縮成形し、下記組成の錠剤を得る。
【表17】


【0201】
試験例8:錠剤の溶出試験
(溶出試験法)
実施例9のうち2処方について、第18改正日本薬局方溶出試験法第2法(界面活性剤を含有した溶出試験第1液、パドル法、パドル回転数:50rpm、結果:2錠の平均値)によって溶出試験をおこなった。
【0202】
(実験結果)
いずれの実施例においても速やかな溶出性を示した。
本発明の製剤は、6歳以上12歳未満の小児にも用いることができる。

(実施例10)
【0203】
(顆粒剤の製造方法)
式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶を含有する顆粒剤を製造する。
以下の表に、1顆粒剤あたりの処方を示す。式(VII)で示される化合物のフマル酸共結晶I形結晶、D-マンニトール(Roquette社製)、粉末還元麦芽糖水アメ(マルチトール、Roquette社製)、クロスカルメロースナトリウム(DuPont社製)、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製)、軽質無水ケイ酸(Cabot社製)、ステアリン酸マグネシウム(Mallinckrodt社製)及びスクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を30メッシュふるいで篩過して混合した後、造粒する。
造粒および整粒した顆粒、軽質無水ケイ酸(Cabot社製)及びスクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ社製)を添加して混合し、下記組成の顆粒剤を得る。
【表18】

【0204】
試験例9:顆粒剤の溶出試験
(溶出試験法)
実施例10のうち2処方について、第18改正日本薬局方溶出試験法第2法(界面活性剤を含有した溶出試験第1液、パドル法、パドル回転数:50rpm、結果:2顆粒剤の平均値)によって溶出試験をおこなった。
【0205】
(実験結果)
含量補正した溶出試験結果を図27に示す。その結果、いずれの実施例においても速やかな溶出性を示した。
【0206】
試験例10:顆粒剤の経時安定性試験
実施例10のうち2処方について、経時安定性を確認した結果を示す。
a.安定性試験法
実施例10の製剤を、1)DUMAボトル(プラスチック容器、GERRESHEIMER)閉栓状態で40℃、75%相対湿度下、三週間、若しくは、2)シリカゲルを入れたDUMAボトル閉栓状態で40℃、75%相対湿度下、三週間、または、3)DUMAボトル閉栓状態で40℃、75%相対湿度下、一ヶ月、若しくは、4)シリカゲルを入れたDUMAボトル閉栓状態で40℃、75%相対湿度下、一ヶ月、保存した。その後、本発明製剤中の式(VII)で示される化合物の類縁物質量を測定した。
(試料液調製方法)
(測定方法)
以下の方法、条件によって、液体クロマトグラフで、本発明製剤中の式(VII)で示される化合物の類縁物質量を測定した。
・検出器:紫外吸光光度計 (測定波長:222nm)
・カラム:C18カラム
・カラム温度:40℃付近の一定温度
・移動相A:0.01 mol/Lギ酸アンモニウム溶液、移動相B:アセトニトリル
・移動相A及び移動相Bの混合比は、9:1から1:9まで徐々に移動相Bの混合比を高め、32分間で測定を行った。
・流量:0.3mL/分
類縁物質量は、HPLCチャートのクロマトグラムのピーク面積の合計を100%とし、その量に対する割合(%)を算出した。
b.結果
安定性試験の結果を以下の表19および20に示す。実施例10の製剤の総類縁物質量は、いずれの条件においても増加しておらず、安定であった。

【表19】


【表20】


以上より、本発明製剤は、湿度および温度に対して安定性が高い。
【0207】
以下に示す製剤例は例示にすぎないものであり、発明の範囲を何ら限定することを意図するものではない。
本発明の化合物は、任意の従来の経路により、特に、経腸、例えば、経口で、例えば、錠剤、顆粒剤またはカプセル剤の形態で、または非経口で、例えば注射液剤または懸濁剤の形態で、局所で、例えば、ローション剤、ゲル剤、軟膏剤またはクリーム剤の形態で、または経鼻形態または座剤形態で医薬組成物として投与することができる。少なくとも1種の薬学的に許容される担体または希釈剤と一緒にして、遊離形態または薬学的に許容される塩の形態の本発明の化合物を含む医薬組成物は、従来の方法で、混合、造粒またはコーティング法によって製造することができる。例えば、経口用組成物としては、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等および有効成分等を含有する錠剤、顆粒剤、カプセル剤とすることができる。また、注射用組成物としては、溶液剤または懸濁剤とすることができ、滅菌されていてもよく、また、保存剤、安定化剤、緩衝化剤等を含有してもよい。
(製剤例1)懸濁剤
式(VII)で示される化合物の原薬に、例えば、注射用水を加え、懸濁剤とした。
(製剤例2)錠剤
式(VII)で示される化合物の原薬に、添加剤として例えば、D-マンニトール、ステアリン酸マグネシウムを加え、錠剤とした。
(製剤例3)顆粒剤
式(VII)で示される化合物の原薬に、添加剤として例えば、D-マンニトール、ステアリン酸マグネシウムを加え、顆粒剤とした。

【産業上の利用可能性】
【0208】
本発明に係る製造方法により製造された化合物は、コロナウイルス3CLプロテアーゼに対する阻害作用を有し、コロナウイルス3CLプロテアーゼが関与する疾患または状態の治療剤および/または予防剤として有用であると考えられる。本発明に係る新規合成中間体またはそれらの塩、および本発明に係る製造方法は医薬品製造に有用である。
本発明製剤は、コロナウイルス3CLプロテアーゼに対する阻害作用を有し、コロナウイルス3CLプロテアーゼが関与する疾患または状態の治療剤および/または予防剤として有用であると考えられる。
【要約】
本発明は、ウイルス増殖阻害作用を有するトリアジン誘導体を含有する経口投与する製剤を提供する。
図1
図2
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図10
図11
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図26
図27
【配列表】
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