IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シチズンホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-部品、及びその製造方法 図1
  • 特許-部品、及びその製造方法 図2
  • 特許-部品、及びその製造方法 図3
  • 特許-部品、及びその製造方法 図4
  • 特許-部品、及びその製造方法 図5
  • 特許-部品、及びその製造方法 図6
  • 特許-部品、及びその製造方法 図7
  • 特許-部品、及びその製造方法 図8
  • 特許-部品、及びその製造方法 図9
  • 特許-部品、及びその製造方法 図10
  • 特許-部品、及びその製造方法 図11
  • 特許-部品、及びその製造方法 図12
  • 特許-部品、及びその製造方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】部品、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B44C 1/22 20060101AFI20230331BHJP
   A44C 5/00 20060101ALI20230331BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20230331BHJP
【FI】
B44C1/22 B
A44C5/00 E
B23K26/364
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018092204
(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公開番号】P2019195979
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-11-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】有賀 庄作
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸島 功
【合議体】
【審判長】鈴木 貴雄
【審判官】奥隅 隆
【審判官】大山 健
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2009-0110956(KR,A)
【文献】特開2016-117270(JP,A)
【文献】特開2017-70978(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108406119(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/22
B23K 26/352
B23K 26/359
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に装飾領域を有し、該装飾領域にレーザ光によるヘアライン模様である装飾が施された部品の製造方法であって、
前記装飾領域に、複数の線によって構成される装飾パターンを複数重畳して描画するようにレーザ光を順次照射することを含み、
前記複数の装飾パターンの数は、6個以上20個以下であり、
前記装飾パターンの少なくとも2つは異なるパターンで描画され、
前記複数の装飾パターンは、延伸方向に延伸する第1直線と、第1直線の一端から延伸方向から45°シフトした方向に延伸する第2直線と、第1直線の他端から延伸方向から-45°シフトした方向に延伸する第3直線により形成されるかぎ型の単位模様がアレイ状に配置される第1かぎ型装飾パターン、及び第1かぎ型装飾パターンを形成する前記かぎ型の単位模様よりも大きいかぎ型の単位模様がアレイ状に配置される第2かぎ型装飾パターンを含み、
前記複数の装飾パターンの中で最後に描画される装飾パターンは、該装飾パターンの一端から他端まで延伸し、且つ、配置間隔は、他の装飾パターンにおける線の配置間隔よりも短い平行な複数の線で構成される、
ことを特徴とする部品の製造方法。
【請求項2】
前記装飾パターン間の前記線の延伸方向の角度差は全体を通して±1°の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の部品の製造方法。
【請求項3】
前記線の延伸方向の角度差は±0.1°以内であることを特徴とする請求項2に記載の部品の製造方法。
【請求項4】
前記装飾パターンは前記装飾領域より面積が小さく、同じ前記装飾パターンが前記重畳する方向と直交する平面方向に複数並んで前記装飾領域を覆うように描画され、前記平面方向で隣接する前記装飾パターン間で、前記装飾パターンを構成する線が連続するようにシフトしながら前記レーザ光を順次照射すること特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の部品の製造方法。
【請求項5】
前記装飾パターンは前記装飾領域より面積が小さく、同じ前記装飾パターンが前記重畳する方向と直交する平面方向に複数並んで前記装飾領域を覆うように描画され、前記平面方向の隣接する前記装飾パターンの境界線は、前記重畳する方向で互いに異なる位置になるようにシフトしながら前記レーザ光を順次照射すること特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計のバンドを構成する内駒及び外駒等の装飾部品に種々の方法で装飾を施すことが知られている。例えば、特許文献1には、圧印工具等の専用工具及びレーザ光による転写、研削模様付け、及び彫刻模様付け等の装飾を、金属材料、プラスティック材料及びセラミック材料等により形成される装飾部品に装飾を施すことが記載される。
【0003】
また、多数の毛髪状の筋が単一方向に流れる模様であるヘアライン模様が知られている。一般に、ヘアライン模様は、ブラシ等の工具により物理的に傷を付けて微細な溝を形成するヘアライン加工により装飾部品に施される。ヘアライン模様が施された装飾部品は、金属的な質感が強調され、落ち着いた雰囲気の意匠を有することができる。ヘアライン加工を腕時計のバンドの内駒及び外駒等の小さな装飾部品に実行するとき、ヘアライン加工を実行しない部分へのマスキング、ヘアライン加工後の洗浄、及びマスキング部材の剥離等の多くの工程を伴うため、製造コストの低減が容易ではない。
【0004】
特許文献2には、レーザ光によりヘアライン模様を自動車の内装部品に施す技術が記載されている。特許文献2に記載される技術は、曲率半径が極めて大きく且つ曲率が異なる複数の円弧状曲線をレーザ加工により形成することで、微細且つ本物のヘアライン模様の風合いに近い模様を施すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭58―221688号公報
【文献】特開2016―117270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載される技術は、自動車の内装部品等の比較的大きな部品では、微細且つ本物のヘアライン模様の風合いに近い模様を施すことができる。しかしながら、特許文献2に記載される技術により形成される模様は、腕時計のバンドの内駒及び外駒等の小さな部品では、ヘアラインの筋目が細かくならず、所望の意匠が実現されない。
【0007】
そこで、本発明では、腕時計のバンドの内駒及び外駒等の小さな部品にヘアライン模様の風合いに近い模様を施すことが可能な部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表面に装飾領域を有し、該装飾領域にレーザ光による装飾が施された部品の製造方法であって、装飾領域に、複数の線によって構成される装飾パターンを複数重畳して描画するようにレーザ光を順次照射することを特徴とするものである。
複数の装飾パターンは全て同じパターンであり、少なくとも2つの装飾パターン間で線の延伸方向が異なるようにレーザ光を照射してもよい。
また、装飾パターンの少なくとも2つは異なるパターンで描画されていてもよい。
複数の装飾パターンの中で最後に描画される装飾パターンは、該装飾パターンの一端から他端まで延伸する平行な複数の線で構成されていることが好ましい。
装飾パターン間の線の延伸方向の角度差は全体を通して±1°の範囲内であることが好ましい。
この場合、線の延伸方向の角度差は±0.1°以内であることが好ましい。
最後に描画される装飾パターンの線の配置間隔は、他の装飾パターンにおける線の配置間隔よりも短いことが好ましい。
また、複数の装飾パターンの数は、6個以上20個以下であることが好ましい。
さらに、装飾パターンは装飾領域より面積が小さく、同じ装飾パターンが重畳する方向と直交する平面方向に複数並んで装飾領域を覆うように描画され、平面方向で隣接する装飾パターン間で、装飾パターンを構成する線が連続するようにシフトしながらレーザ光を順次照射するようにしてもよい。
また、装飾パターンは装飾領域より面積が小さく、同じ装飾パターンが重畳する方向と直交する平面方向に複数並んで装飾領域を覆うように描画され、平面方向の隣接する装飾パターンの境界線は、重畳する方向で互いに異なる位置になるようにシフトしながらレーザ光を順次照射してもよい。
上記装飾はヘアライン模様であるのが好ましい。
また本発明は、レーザ光の照射により複数の線で構成された装飾が施された部品であって、複数の線のそれぞれの深さは、所定の単位深度の整数倍である、ことを特徴とするものである。
この場合、装飾の最表面に形成されている線は、連続かつ平行な直線であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、時計のバンドの内駒及び外駒等の小さな部品にヘアライン模様の風合いに近い模様を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る中駒及び外駒を有するバンドの斜視図である。
図2図1に示すバンドの部分拡大斜視図である。
図3図2に示す第1中駒面の平面図である。
図4】(a)は図2に示す第1中駒面の部分拡大図であり、(b)は(a)に示すA-B線に沿った断面を示す図である。
図5図2に示す第1中駒面、第2外駒面及び第3外駒面のそれぞれに装飾模様を描画するレーザ加工装置を示す図である。
図6図5に示す記憶部に記憶される装飾パターンデータに対応する装飾パターンの一部を拡大した図である。
図7図5に示す記憶部に記憶される装飾パターンデータに対応する装飾パターンの一部を拡大した図である。
図8図5に示すレーザ加工装置による装飾模様描画処理のフローチャートである。
図9】(a)は図5に示すレーザ加工装置による装飾模様描画処理によって中駒に装飾模様が形成されたバンドを示す図であり、(b)はブラシによるヘアライン加工によって中駒にヘアライン模様が形成されたバンドを示す図である。
図10】第1変形例に係る装飾模様描画処理を説明するための図である。
図11】第1変形例に係る装飾模様描画処理を実行するレーザ加工装置を示す図である。
図12図11に示すレーザ加工装置による装飾模様描画処理のフローチャートである。
図13】第2変形例に係る装飾模様描画処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施形態に係る部品の製造方法について説明する。ただし、本発明は図面又は以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。本実施形態に係る部品の製造方法では、所定の延伸方向に延伸する直線により形成される複数の装飾パターンを装飾領域に重畳してレーザ光により描画することで、時計のバンドの内駒及び外駒にヘアライン模様の風合いに近い模様を施すことができる。
なお、本実施形態では、時計のバンドへ適用した例を示しているがそれだけには限定されず、例えば、時計のケース、裏蓋、文字板、ムーブ部品等であっても良いし、時計以外の装飾品などの部品であっても良い。
【0012】
(実施形態に係る中駒及び外駒を有するバンドの構造及び機能)
図1は、実施形態に係る中駒及び外駒を有するバンドの斜視図である。
【0013】
バンド1は、中駒2と、外駒3と、軸部材4と、中留5と、一対のエンドピース6a及び6bとを有する。中駒2及び外駒3は、チタン及びステンレス鋼等の金属製の部材であり、中駒2がバンド1の幅方向の内側に位置し、外駒3がバンド1の幅方向の外側に位置するように隣合って配置される。なお、中駒2及び外駒3は、ポリウレタン等の合成樹脂材料により形成されてもよい。
【0014】
軸部材4は、ピンとも称され、中駒2及び外駒3のそれぞれに形成される貫通孔に挿入されて、隣接する中駒2及び外駒3を連結する。中留5は、バックルとも称され、12時側バンドと6時側バンド部を連結する金属製の部品である。一対のエンドピース6a及び6bのそれぞれは、時計本体のケースと接続される金属製の接続部品である。
【0015】
図2は、バンド1の部分拡大斜視図である。
【0016】
中駒2は、第1中駒面2aと、第2中駒面2bと、第3中駒面2cとを有する。第1中駒面2aは、バンド1の表面側に、バンド1の延伸方向と略平行に延伸する平面である。第1中駒面2aは、レーザ光により描画された直線により形成される複数の装飾パターンが重畳して描画される装飾領域である。第2中駒面2bは、第1中駒面2aのバンド1の延伸方向と直交する一方の辺から第1中駒面2aの延伸方向から傾斜して延伸する鏡面加工された面である。第3中駒面2cは、第1中駒面2aのバンド1の延伸方向と直交する他方の辺から第1中駒面2aの延伸方向から傾斜して延伸する鏡面加工された面である。
【0017】
図3は第1中駒面2aの平面図であり、図4(a)は第1中駒面2aの部分拡大図であり、図4(b)は図4(a)に示すA-B線に沿った断面を示す図である。
【0018】
図3に図示するように、第1中駒面2aは、平行に延伸する複数の線により形成される複数の装飾パターンが重畳して描画される。一例では、第1中駒面2aは、第1装飾パターン221~第10装飾パターン230の10個の装飾パターンが重畳して描画される。例えば、第1装飾パターン221~第10装飾パターン230を構成する線は、第1装飾パターン221~第10装飾パターン230のそれぞれで略平行に延伸する。第1装飾パターン221~第10装飾パターン230のそれぞれを構成する線の延伸方向の角度差は、全体を通して±1°の範囲内に収まることが好ましく、さらには±0.1°の範囲内であるのが好ましい。この角度差は、線が平行となる0°になるように装飾パターンを重畳しても、ヘアライン模様の風合いに近い模様を表現することができるが、複数の装飾パターン全体を通して上記範囲内で線をずらすことによって、よりヘアライン模様の風合いとすることができる。
なお、複数の装飾パターンはすべて同じパターンであってもよく、その際は、少なくとも2つの装飾パターン間で線の延伸方向が異なるように描画する。この場合、装飾パターン間で相互にずらしながら装飾領域を線で埋めるように描画するのが好ましい。これにより、ヘアライン模様の風合いに近い模様を表現することができる。
【0019】
図4(a)に図示するように第1中駒面2aには、互いに略平行に延伸する第1直線301~第4直線304が形成される。第1直線301~第4直線304のそれぞれは、円形状の照射面を有するレーザ光を第1中駒面2aに一方向に徐々にシフトさせながら照射することで形成される。これにより、第1直線301~第4直線304のそれぞれは、平面視したときに、うろこ状の形状を有する凹部が連続して配置された形状を有する。
【0020】
第1直線301~第4直線304のそれぞれは、複数の装飾パターンを形成する直線を重畳して形成される。第1直線301は4つの装飾パターンを形成する直線が重畳して形成され、第2直線302は3つの装飾パターンを形成する直線が重畳して形成される。第3直線303は6つの装飾パターンを形成する直線が重畳して形成され、第4直線304は8つの装飾パターンを形成する直線が重畳して形成される。
【0021】
図4(b)に図示するように、第1直線301の深さは1回当たりのレーザ照射で掘削される掘削量dの4倍である4d(3d+d)であり、第2直線302の深さは1回当たりのレーザ照射で掘削される掘削量dの3倍である3dである。第3直線303の深さは1回当たりのレーザ照射で掘削される掘削量dの6倍である6d(3d+d+2d)であり、第4直線304の深さは1回当たりのレーザ照射で掘削される掘削量dの8倍である8d(3d+d+2d+2d)である。すなわち、第1直線301~第4直線304のそれぞれの深さは、1回当たりのレーザ照射で掘削される掘削量dである単位深度の整数倍となる。一例では、中駒2の厚さが3mm程度であるとき、レーザ照射で掘削される掘削量の最大値は10μm程度である。なお、更にレーザ照射を重ねることでより深く掘削することができる。
【0022】
外駒3は、第1外駒面3aと、第2外駒面3bと、第3外駒面3cとを有する。第1外駒面3aは、バンド1の表面側に、バンド1の延伸方向と略平行に延伸する鏡面加工された平面である。第2外駒面3bは、第1外駒面3aのバンド1の延伸方向と直交する一方の辺から第1外駒面3aの延伸方向から傾斜して延伸する鏡面加工された面である。第3外駒面3cは、第1外駒面3aのバンド1の延伸方向と直交する他方の辺から第1外駒面3aの延伸方向から傾斜して延伸する面である。第2外駒面3b及び第3外駒面3cは、平行に延伸する複数の直線により形成される複数の装飾パターンが重畳して描画される装飾領域である。
【0023】
第2外駒面3b及び第3外駒面3cは、第1中駒面2aと同様に、円形状の照射面を有するレーザ光を一方向に徐々にシフトさせながら照射することで、複数の装飾パターンを描画することで形成される。
【0024】
図5は、第1中駒面2a、第2外駒面3b及び第3外駒面3cのそれぞれに装飾模様を描画するレーザ加工装置を示す図である。
【0025】
レーザ加工装置100は、レーザ照射装置11と、部品移送装置12と、加工台13と、加工台駆動装置14と、LAN15と、演算装置16とを有する。
【0026】
レーザ照射装置11は、レーザ発振器と、レーザ発振器から放射されるレーザ光を伝送する光ファイバ等の光路と、光路を伝送したレーザ光を集光して第1中駒面2a等の装飾領域に出射する集光部とを有する。レーザ照射装置11のレーザ発振器は、YAGレーザ等の固体型発振器及びCO2レーザ等の気体型発振器等である。
【0027】
部品移送装置12は、中駒2及び外駒3等の部品を保持可能なアームを有し、演算装置16からの指示に応じて、部品を移送する。以下、装飾が施される部品を中駒2として実施形態を説明する。部品移送装置12は、第1中駒面2aに装飾が施される中駒2を加工台13の表面の照射位置に配置する。また、部品移送装置12は、第1中駒面2aに装飾が施された中駒2を加工台13の表面の照射位置から不図示の保管位置に移送する。なお、部品の供給は手作業、又は外部機構等で行うことで部品移送装置12を省略してもよい。
【0028】
加工台13は、金属等で形成される平板状の部材である。加工台駆動装置14は、加工台13を水平方向に移動可能に支持する。加工台駆動装置14は、演算装置16からの指示に応じて、中駒2の第1中駒面2aに複数の装飾パターンのそれぞれが描画されるように、加工台13を移動する。なお、本実施形態では、加工台13を移動して加工するようにしているが、レーザ照射装置11を移動しながら加工するようにしてもよい。
【0029】
LAN15は、レーザ照射装置11、部品移送装置12及び加工台駆動装置14と、演算装置16との間とを接続する同軸ケーブル等の信号伝送路である。LAN15は、演算装置16から出力される指示を示す信号を、レーザ照射装置11、部品移送装置12及び加工台駆動装置14のそれぞれに伝送する。
【0030】
演算装置16は、通信部21と、記憶部22と、入力部23と、出力部24と、処理部30とを有する。通信部21、記憶部22、入力部23、出力部24及び処理部30は、バス25を介して互いに接続される。
【0031】
通信部21は、イーサネット(登録商標)などの有線の通信インターフェース回路を有する。通信部21は、LAN15を介してレーザ照射装置11、部品移送装置12、加工台駆動装置14及び不図示の上位制御装置と通信を行う。
【0032】
記憶部22は、例えば、半導体記憶装置、磁気テープ装置、磁気ディスク装置、又は光ディスク装置のうちの少なくとも一つを備える。記憶部22は、処理部30での処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部22は、アプリケーションプログラムとして、中駒2及び外駒3等の部品の装飾領域に所望の装飾模様をレーザ光により描画する装飾模様描画処理を実行するための装飾模様描画プログラム等を記憶する。装飾模様描画プログラムプログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部22にインストールされてもよい。なお、演算装置16の外部からLAN等を通じて直接、記憶部22へ記憶させても良い。
【0033】
また、記憶部22は、装飾模様描画処理で使用される種々のデータを記憶する。例えば、記憶部22は、中駒2及び外駒3等の部品の測色領域にレーザ光を照射して描画される複数の装飾パターンを示す装飾パターンデータを記憶する。さらに、記憶部22は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。
【0034】
図6図7は、記憶部22に記憶される装飾パターンデータに対応し、図3で図示した各装飾パターンの一部を拡大した図である。図6(a)は第1装飾パターン221を示し、図6(b)は第2装飾パターン222を示し、図6(c)は第3装飾パターン223を示し、図6(d)は第4装飾パターン224を示し、図6(e)は第5装飾パターン225を示し、図7(f)は第6装飾パターン226を示す。また、図7(g)は第7装飾パターン227を示し、図7(h)は第8装飾パターン228を示し、図7(i)は第9装飾パターン229を示し、図7(j)は第10装飾パターン230を示す。
【0035】
本実施形態において、第1装飾パターン221~第10装飾パターン230のそれぞれは、互いに平行に延伸する直線により構成されている。一例では、第1装飾パターン221~第10装飾パターン230は、一辺の長さが20mmの正方形状のパターンである。
【0036】
図6(a)に示す第1装飾パターン221は、延伸方向の一端から他端まで延伸する直線と、途中で破断した直線との組み合わせ構成され、それら直線の延伸方向と直交する方向の配置間隔は不均一となっている。
【0037】
図6(b)に示す第2装飾パターン222は、途中で破断した直線が延伸方向にずれながら組み合わされて構成され、これら直線の延伸方向と直交する方向の配置間隔は等間隔となっている。
【0038】
図6(c)に示す第3装飾パターン223は、延伸方向の一端から他端まで延伸する直線と、途中で破断した直線との組み合わせ構成され、延伸方向の一端から他端まで延伸する直線の3本と途中で破断した直線とが、規則的な所定の配置間隔で配置されている。
【0039】
図6(d)に示す第4装飾パターン224は、かぎ型の単位模様がアレイ状に配置されることで形成される。かぎ型の単位模様は、延伸方向に延伸する第1直線と、第1直線の一端から延伸方向から45°シフトした方向に延伸する第2直線と、第1直線の他端から延伸方向から-45°シフトした方向に延伸する第3直線により形成される。第4装飾パターン224において、直線の延伸方向は、第1直線の延伸方向である。
【0040】
図6(e)に示す第5装飾パターン225は、第4装飾パターン224を形成する単位模様よりも大きいかぎ型の単位模様がアレイ状に配置されることで形成される。かぎ型の単位模様は、第4装飾パターン224と同様に、延伸方向に延伸する第1直線と、第1直線の両端のそれぞれから延伸方向から±45°シフトした方向に延伸する第2直線及び第3直線により形成される。第5装飾パターン225において、直線の延伸方向は、第1直線の延伸方向である。
【0041】
図7(f)に示す第6装飾パターン226は、延伸方向に配列された単位直線組が延伸方向から直交する方向に等間隔離隔して配置されることで構成される。単位直線組は、延伸方向に延伸する第1直線と、第1直線から延伸方向に第1距離離隔して配置された第1直線よりも短い第2直線と、第2直線から延伸方向に第1距離離隔して配置された第1直線よりも長い第3直線とを含む。
【0042】
図7(g)に示す第7装飾パターン227は、延伸方向に配列された単位直線組が延伸方向から直交する方向に等間隔離隔して配置されることで構成される。単位直線組は、延伸方向に延伸する第1直線と、第1直線から延伸方向に第1距離離隔して配置された第1直線よりも短い複数の第2直線と、第2直線から延伸方向に第1距離離隔して配置された第1直線よりも長い第3直線とを含む。
【0043】
図7(h)に示す第8装飾パターン228は、延伸方向に配列された第1直線組及び第2直線組が延伸方向から直交する方向に等間隔離隔して交互に配置されることで構成される。第1直線組及び第2直線組のそれぞれは、延伸方向に延伸する同一長さを有し、延伸方向に同一間隔で配置される複数の直線を含む。第1直線組の最左端に位置する直線の一端は第8装飾パターン228の左端に接し、第2直線組の最右端に位置する直線の他端は第8装飾パターン228の右端に接する。
【0044】
図7(i)に示す第9装飾パターン229は、延伸方向の一端から他端まで延伸する3つの直線を含む直線組を、延伸方向に直交する方向に等間隔に配置することで構成される。第9装飾パターン229の直線組に含まれる3つの直線の間の延伸方向に直交する方向の間隔は、直線組のそれぞれで相違する。
【0045】
図7(j)に示す第10装飾パターン230を形成する直線は、延伸方向の一端から他端まで延伸する。第10装飾パターン230を形成する直線は、延伸方向に直交する方向の離隔距離が第1装飾パターン221~第9装飾パターン229の何れの直線の延伸方向に直交する方向の離隔距離よりも短くなるように配置される。このような第10装飾パターン230を最後に加工することによって、最表面に形成されている直線は、連続して、かつ平行となる。このように、直線の延伸方向に直交する方向の配置間隔が短く、延伸方向の一端から他端まで連続して延伸する直線でレーザ照射することにより、よりヘアライン模様のリアリティ感が増し、ブラシ加工と遜色ない加工が行なえる。なお、最後に施す第10装飾パターンは、線の延伸方向に直交する方向の離隔距離が、必ずしも第1装飾パターン221~第9装飾パターン229に比して短くなくてもよく、この場合であってもヘアライン模様の風合いに近い模様を表現することが可能である。
【0046】
図5に戻り、入力部23は、データの入力が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパネル、キーボード等である。作業者は、入力部23を用いて、文字、数字、記号等を入力することができる。入力部23は、作業者により操作されると、その操作に対応する信号を生成する。そして、生成された信号は、作業者の指示として、処理部30に供給される。
【0047】
出力部24は、映像や画像等の表示が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等である。出力部24は、処理部30から供給された映像データに応じた映像や、画像データに応じた画像等を表示する。また、出力部24は、紙などの表示媒体に、映像、画像又は文字等を印刷する出力装置であってもよい。
【0048】
処理部30は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。処理部30は、演算装置16の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。処理部30は、記憶部22に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部30は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。
【0049】
処理部30は、部品移送指示部31と、装飾パターンデータ取得部32と、レーザ照射指示部33と、パターン数計数部34とを有する。これらの各部は、処理部30が備えるプロセッサで実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、ファームウェアとして演算装置16に実装されてもよい。
【0050】
(実施形態に係るレーザ加工装置100による装飾模様描画処理)
図8は、レーザ加工装置100による装飾模様描画処理のフローチャートである。図8に示す装飾模様描画処理は、予め記憶部22に記憶されているプログラムに基づいて、主に処理部30により演算装置16の各要素と協働して実行される。また、図8に示す装飾模様描画処理は、中駒2及び外駒3等の部品を製造する製造工程の一工程として実行される。
【0051】
まず、部品移送指示部31は、装飾が施される装飾領域を表面に有する部品を所定の照射位置に配置することを示す部品配置指示信号を部品移送装置12に出力する(S101)。部品移送装置12は、部品配置指示信号が入力されることに応じて、中駒2を加工台13の表面の照射位置に配置する。
【0052】
次いで、装飾パターンデータ取得部32は、第1装飾パターン221~第10装飾パターン230のそれぞれを示す装飾パターンデータを記憶部22から取得する(S102)。
【0053】
次いで、パターン数計数部34は、パラメータ「N」を「0」に設定する(S103)。次いで、パターン数計数部34は、パラメータ「N」をインクリメントして「1」とする(S104)。
【0054】
次いで、レーザ照射指示部33は、レーザ光により第1装飾パターンを第1中駒面2aに位置する装飾領域に第1装飾パターンを描画することを示す第1装飾パターン描画指示信号をレーザ照射装置11及び加工台駆動装置14に出力する(S105)。レーザ照射装置11は、第1装飾パターン描画指示信号の入力に応じて、第1装飾パターンを描画するように、レーザ光を装飾領域に一定の出力で出力する。また、加工台駆動装置14は、第1装飾パターン描画指示信号の入力に応じて、第1装飾パターン221を描画するように加工台13を移動する。なお、本実施形態では、加工台13を移動して加工するようにしているが、レーザ照射装置11を移動しながら加工するようにしてもよい。
【0055】
次いで、パターン数計数部34は、パラメータ「N」が「10」に一致するか否かを判定する(S106)。ここでは、パラメータ「N」は「1」であるので、パラメータ「N」が「10」に一致しないと判定し(S106-NO)、処理はS104に戻る。パターン数計数部34がパラメータ「N」が「10」に一致する(S106-YES)まで、S104~S106の処理が繰り返される。S104~S106の処理が繰り返されることで、第1中駒面2aに位置する装飾領域に第1装飾パターン221~第10装飾パターン230のそれぞれが重畳して描画するように、レーザ光が順次照射される。
【0056】
パターン数計数部34がパラメータ「N」が「10」に一致する(S106-YES)と、部品移送指示部31は、装飾領域に装飾が施された部品を照射位置から移送することを示す部品移送指示信号を部品移送装置12に出力する(S107)。部品移送装置12は、部品移送指示信号が入力されることに応じて、中駒2を加工台13の表面の照射位置から、不図示の保管場所に移送する。
【0057】
(実施形態に係る部品の製造方法の作用効果)
レーザ加工装置100による装飾模様描画処理は、装飾領域にレーザ光により複数の装飾パターンを重畳するように描画することで、腕時計のバンドの内駒及び外駒等の小さな部品にヘアライン模様の風合いに近い模様を施すことができる。
【0058】
図9(a)はレーザ加工装置100による装飾模様描画処理によって中駒に装飾模様が形成されたバンドを示す図であり、図9(b)はブラシによるヘアライン加工によって中駒にヘアライン模様が形成されたバンドを示す図である。
【0059】
図9(a)及び9(b)に示されるように、レーザ加工装置100による装飾模様描画処理によって中駒に形成された装飾模様は、ブラシにより形成されるヘアライン模様の風合いに近い模様とすることができる。
【0060】
また、レーザ加工装置100による装飾模様描画処理は、レーザ光により装飾模様を形成するので、ブラシ等の工具を使用するヘアライン加工で実行されるマスキング、洗浄及びマスキング部材を剥離する工程を省略できる。レーザ加工装置100による装飾模様描画処理は、マスキング、洗浄及びマスキング部材を剥離する工程を省略できるので、ブラシ等の工具を使用するヘアライン加工よりも製造コストを低減できる。
【0061】
また、レーザ加工装置100は、直線の配置間隔が最も短い第10装飾パターン230を最後に描画することで、装飾領域に形成される装飾模様の均一性が向上し、よりヘアライン模様の風合いに近い模様を施すことができる。
【0062】
また、レーザ加工装置100では、第1装飾パターン221~第10装飾パターン230は、装飾パターン間の線の延伸方向の角度差が全体を通して±1°の範囲内とするので、よりヘアライン模様の風合いに近い模様を施すことができる。
【0063】
また、レーザ加工装置100では、レーザ照射装置11は装飾パターンを描画するときに一定の出力でレーザ光を出力するので、レーザ光の出力の変動に伴ってレーザ光の出力が不安定になるおそれはない。
【0064】
(実施形態に係る部品の製造方法の変形例)
図10は、第1変形例に係る装飾模様描画処理を説明するための図である。
【0065】
第1変形例に係る装飾模様描画処理は、装飾模様描画処理が実行される装飾領域の面積が複数の装飾パターンの面積、すなわちレーザ光が照射可能な面積よりも大きい場合の変形例である。図10に示す例では、装飾領域の面積は、装飾パターンの面積の約4倍である。
【0066】
第1変形例に係る装飾模様描画処理では、装飾パターンを横方向及び縦方向に移動するときに、隣接する装飾パターンの間で、装飾パターンを形成する直線が連続して延伸するように配置される。
【0067】
図10では、第1位置251に描画される装飾パターンを形成する直線と、第2位置252及び第3位置253に描画される装飾パターンを形成する直線とが連続して延伸する。また、第2位置252に描画される装飾パターンを形成する直線と、第1位置251及び第4位置254に描画される装飾パターンを形成する直線とが連続して延伸する。また、第3位置253に描画される装飾パターンを形成する直線と、第1位置251及び第4位置254に描画される装飾パターンを形成する直線とが連続して延伸する。そして、第4位置254に描画される装飾パターンを形成する直線と、第2位置252及び第3位置253に描画される装飾パターンを形成する直線とが連続して延伸する。
【0068】
図11は、第1変形例に係る装飾模様描画処理を実行するレーザ加工装置を示す図である。
【0069】
レーザ加工装置200は、演算装置17を演算装置16の代わりに有することがレーザ加工装置100と相違する。演算装置17は、部品移送指示部41を有する処理部40を、部品移送指示部31を有する処理部30の代わりに有することが演算装置16と相違する。部品移送指示部41以外のレーザ加工装置200の構成要素の構成及び機能は、同一符号が付されたレーザ加工装置200の構成要素の構成及び機能と同一なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0070】
(変形例に係るレーザ加工装置200による装飾模様描画処理)
図12は、レーザ加工装置200による装飾模様描画処理のフローチャートである。図12に示す装飾模様描画処理は、予め記憶部22に記憶されているプログラムに基づいて、主に処理部40により演算装置17の各要素と協働して実行される。また、図11に示す装飾模様描画処理は、中駒2及び外駒3等の部品を製造する製造工程の一工程として実行される。
【0071】
S201~S204の処理は、S101~S104の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。部品移送指示部41は、パラメータ「M」を「0」に設定する(S205)。次いで、部品移送指示部41は、パラメータ「M」をインクリメントして「1」とする(S206)。次いで、部品移送指示部41は、中駒2を第1位置に移動することを示す第1移動指示信号を加工台駆動装置14に出力する(S207)。加工台駆動装置14は、第1移動指示信号の入力に応じて中駒2を第1位置に移動する。第1位置は、装飾領域の左上の領域を描画する位置である。次いで、レーザ照射指示部33は、レーザ光により第1装飾パターンを第1中駒面2aに位置する装飾領域に第1装飾パターンを描画することを示す第1装飾パターン描画指示信号をレーザ照射装置11及び加工台駆動装置14に出力する(S208)。なお、本実施形態では、加工台13を移動して加工するようにしているが、レーザ照射装置11を移動しながら加工するようにしてもよい。
【0072】
次いで、部品移送指示部41は、パラメータ「M」が「4」に一致するか否かを判定する(S209)。ここでは、パラメータ「M」は「1」であるので、パラメータ「M」が「4」に一致しないと判定し(S209-NO)、処理はS206に戻る。部品移送指示部41がパラメータ「M」が「4」に一致する(S209-YES)まで、S206~S209の処理が繰り返される。第2位置は、装飾領域の右上の領域を描画する位置であり且つ第2位置で描画される装飾パターンを形成する直線と、第1位置及び第4位置で描画される装飾パターンを形成する直線が連続して延伸するような位置である。第3位置は、装飾領域の左下の領域を描画する位置であり且つ第3位置で描画される装飾パターンを形成する直線と、第1位置及び第4位置で描画される装飾パターンを形成する直線が連続して延伸するような位置である。第4位置は、装飾領域の右下の領域を描画する位置であり且つ第4位置で描画される装飾パターンを形成する直線と、第2位置及び第3位置で描画される装飾パターンを形成する直線が連続して延伸するような位置である。
【0073】
S206~S209の処理が繰り返されることで、レーザ加工装置200は、第1装飾パターン221を、隣接する装飾パターンの間で、装飾パターンを形成する直線が連続して延伸するようにシフトしながらレーザ光を順次照射することができる。また、レーザ加工装置200は、第1中駒面2aに位置する装飾領域に第1装飾パターン221の4倍の面積を有する装飾模様を描画することができる。S210~S211の処理は、S106~S107の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0074】
第1変形例に係る装飾模様描画処理では、隣接する装飾パターンの間で、装飾パターンを形成する直線が連続して延伸するように装飾パターンを配置するので、装飾パターンよりも面積が大きい装飾領域に装飾パターンの境界がない装飾模様が形成される。
【0075】
図13は、第2変形例に係る装飾模様描画処理を説明するための図である。
【0076】
第2変形例に係る装飾模様描画処理は、第1変形例に係る装飾模様描画処理と同様に、装飾模様描画処理が実行される装飾領域の面積が複数の装飾パターンの面積よりも大きい場合の変形例である。図13に示す例では、装飾領域の面積は、装飾パターンの面積の約4倍である。なお、本実施形態では2×2面で実施しているがN×n面のN及びnに制限は無い。
【0077】
第2変形例に係る装飾模様描画処理では、複数の装飾パターンのそれぞれを横方向及び縦方向に移動するときに、隣接する装飾パターンとの境界線が互いに異なる位置になるように配置される。
【0078】
図13では、第1装飾パターン261を描画するための4つの位置の間の境界線は、第2装飾パターン262~第10装飾パターン270を描画するための4つの位置の間の境界線と異なる位置となる。同様に第2装飾パターン262~第10装飾パターン270のそれぞれを描画するための4つの位置の間の境界線は、他の装飾パターンを描画するための4つの位置の間の境界線と異なる位置となる。不図示のレーザ加工装置は、S206~S209の処理と同様な処理を繰り返すことで、隣接する装飾パターンとの境界線が、複数の装飾パターンの間で互いに異なる位置になるようにシフトしながらレーザ光を順次照射することができる。第2変形例に係る装飾模様描画処理は、第1変形例に係る装飾模様描画処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0079】
第2変形例に係る装飾模様描画処理では、隣接する装飾パターンとの境界線が互いに異なる位置になるように複数の装飾パターンを配置するので、隣接する装飾パターンとの境界線は、他の装飾パターンにより重畳されて視認され難くなる。第2変形例に係る装飾模様描画処理は、隣接する装飾パターンとの境界線が視認され難くい装飾模様が形成される。
【0080】
また、説明された部品の製造方法では、第1装飾パターン221~第10装飾パターン230の10個の装飾パターンを使用して装飾模様が形成されたが、実施形態に係る部品の製造方法では、6個以上20個以下の装飾パターンを使用してもよい。重畳する装飾パターンの数が5個以下のとき、形成される装飾模様は、ヘアライン模様の風合いに近い模様となり難い。また、重畳する装飾パターンの数が21個以上のとき、レーザ照射により形成される酸化被膜の厚さが厚くなり、装飾パターンが変色するおそれがある。
【0081】
なお、本実施形態では、第1装飾パターン221~第10装飾パターン230のそれぞれは、構成する線が互いに平行に延伸するように形成されているが、複数の装飾パターンのそれぞれについて、構成する線の延伸方向の角度差が±1°以下となっていてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 バンド
2 中駒
3 外駒
4 軸部材
5 中留
6a、6b エンドピース
11 レーザ照射装置
12 部品移送装置
13 加工台
14 加工台駆動装置
15 LAN
16、17 演算装置
31、41 部品移送指示部
32 装飾パターンデータ取得部
33 レーザ照射指示部
34 パターン数計数部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13