(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】弁体状態監視装置及び流体圧駆動装置
(51)【国際特許分類】
G01M 13/003 20190101AFI20230331BHJP
F16K 37/00 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
G01M13/003
F16K37/00 F
(21)【出願番号】P 2018246000
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】久保山 豊
(72)【発明者】
【氏名】川谷 聖
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 貴章
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-233204(JP,A)
【文献】特開2018-124183(JP,A)
【文献】特開2018-048920(JP,A)
【文献】特開平03-296644(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0202608(US,A1)
【文献】特開2012-188997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00- 13/045
G01M 99/00
F16K 37/00
F16K 3/00- 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ハウジング内を移動する弁体を目標位置に留めるように帰還制御を行って作動流体の吐出量を制御する流量制御弁から、前記弁体の位置情報を取得する取得部と、
前記弁体が前記目標位置からずれた場合に当該目標位置に復帰させるために前記弁体を移動させた単位時間当たりの回数に基づいて前記弁体の状態を推定する状態推定部と
を備える弁体状態監視装置。
【請求項2】
前記状態推定部で所定期間にわたって推定した前記弁体の状態に基づいて前記弁体の寿命を予測する寿命予測部を備える
請求項1に記載の弁体状態監視装置。
【請求項3】
弁ハウジング内を移動する弁体を有し、作動流体の吐出量を制御する流量制御弁と、
前記弁ハウジング内における前記弁体の位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部で検出された前記弁体の位置を目標位置と一致するように帰還制御を行う帰還制御部と、
前記弁体の位置が前記目標位置からずれた場合に当該目標位置に復帰させるために前記弁体を移動させた単位時間当たりの回数に基づいて前記弁体の状態を推定する状態推定部と
を備える流体圧駆動装置。
【請求項4】
前記弁体を移動させた単位時間当たりの回数が第1閾値を超えた場合と前記弁体の位置が所定時間内に前記目標位置から乖離した距離が第2閾値を超えた場合との少なくとも一方において所定の警告処理を行う警告部を備える
請求項3記載の流体圧駆動装置。
【請求項5】
前記状態推定部で所定期間にわたって推定した前記弁体の状態に基づいて前記弁体の寿命を予測する寿命予測部を備える
請求項3又は4に記載の流体圧駆動装置。
【請求項6】
前記状態推定部は、前記弁体を所定位置で停止させているときに前記弁体の状態を推定する
請求項
3乃至5
のいずれか一項記載の流体圧駆動装置。
【請求項7】
前記状態推定部は、前記弁体を移動させているときに前記弁体の状態を推定する請求項
3乃至5のいずれか一項に記載の流体圧駆動装置。
【請求項8】
前記流量制御弁からの作業流体の吐出量に応じて、前記流量制御弁の前記弁体とは別の弁体を移動させる別の流量制御弁を備え、
前記状態推定部は、前記弁体の位置が前記目標位置からずれた場合に当該目標位置に復帰させるために前記弁体を移動させた単位時間当たりの回数と、前記別の流量制御弁の前記別の弁体の位置と、に基づいて、前記弁体の状態を推定する、請求項3乃至7のいずれか一項に記載の流体圧駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体状態監視装置及び流体圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作動油の吐出量を制御する流量制御弁の故障の一つに、流量制御弁のスプール(弁体とも呼ばれる)の摩耗による作動油漏れがある。本来、スプールは、中立位置のときは、確実に作動油をシールし、スプールが中立位置から移動すると、作動油を吐出しなければならない。
【0003】
ところが、流量制御弁内の作動油中に異物が混入している場合は、異物によってスプールの表面が削れてしまい、スプールが中立位置に移動しても、スプールの摩耗によって生じた隙間から作動油が漏れ出すおそれがある。
【0004】
スプールが中立位置に移動しても、作動油が漏れ出す場合、流量制御弁によって駆動される駆動部や、駆動部によって制御されるアクチュエータを誤動作させる要因になる。また、作動油の漏出量が過大になると、作動油の供給が不足し、十分な作動油圧が得られなくなって、駆動部やアクチュエータの効率が低下してしまう。
【0005】
流量制御弁を分解せずに、スプールの摩耗の度合いを調べることができれば、保守費用の削減が図れるため、望ましい。また、流量制御弁から吐出される作動油にて駆動部を駆動している場合、駆動部の動作を止めずに流量制御弁のスプールの摩耗の度合いを調べることができれば、なお望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、簡易かつ正確に弁体や可動部の摩耗の度合いを調べることができる弁体状態監視装置及び流体圧駆動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、弁ハウジング内を移動する弁体を目標位置に留めるように帰還制御を行って作動流体の吐出量を制御する流量制御弁から、前記弁体の位置情報を取得する取得部と、
前記弁体が前記目標位置からずれた場合に当該目標位置に復帰させるために前記弁体を移動させた単位時間当たりの回数と前記弁体が所定時間内に前記目標位置から乖離した距離との少なくとも一方に基づいて前記弁体の状態を推定する状態推定部と
を備える。
【0009】
前記状態推定部で所定期間にわたって推定した前記弁体の状態に基づいて前記弁体の寿命を予測する寿命予測部を備えてもよい。
【0010】
本発明の他の一態様では、弁ハウジング内を移動する弁体を有し、前記作動流体の吐出量を制御する流量制御弁と、
前記弁ハウジング内における前記弁体の位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部で検出された前記弁体の位置を目標位置と一致するように帰還制御を行う帰還制御部と、
前記弁体の位置が前記目標位置からずれた場合に当該目標位置に復帰させるために前記弁体を移動させた単位時間当たりの回数と前記弁体の位置が所定時間内に前記目標位置から乖離した距離との少なくとも一方に基づいて前記弁体の状態を推定する状態推定部と
を備える流体圧駆動装置が提供される。
【0011】
前記弁体を移動させた単位時間当たりの回数が第1閾値を超えた場合と前記弁体の位置が所定時間内に前記目標位置から乖離した距離が第2閾値を超えた場合との少なくとも一方において所定の警告処理を行う警告部を備えてもよい。
【0012】
前記状態推定部で所定期間にわたって推定した前記弁体の状態に基づいて前記弁体の寿命を予測する寿命予測部を備えてもよい。
【0013】
前記状態推定部は、前記弁体を所定位置で停止させているときに前記弁体の状態を推定してもよい。
【0014】
前記状態推定部は、前記弁体を移動させているときに前記弁体の状態を推定してもよい。
【0015】
前記流量制御弁からの作業流体の吐出量に応じて、前記流量制御弁の前記弁体とは別の弁体を移動させる別の流量制御弁を備え、
前記状態推定部は、前記弁体の位置が前記目標位置からずれた場合に当該目標位置に復帰させるために前記弁体を移動させた単位時間当たりの回数と前記弁体の位置が所定時間内に前記目標位置から乖離した距離との少なくとも一方と、前記別の流量制御弁の前記別の弁体の位置と、に基づいて、前記弁体の状態を推定してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易かつ正確に弁体や可動部の摩耗の度合いを調べることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態による弁体状態監視装置と流量制御弁の概略構成を示す図。
【
図2】(a)はスプールが中立位置のときに作動油が漏れ出す経路を矢印で示す図、(b)は目標位置の変更によりスプールを左側に移動させた例、(c)は目標位置の変更によりスプールを右側に移動させた例を示す図。
【
図3】第2の実施形態による弁体状態監視装置と流量制御弁の概略構成を示す図。
【
図4】アクチュエータを備えた流体圧駆動装置の概略構成を示す図。
【
図5】
図4の一変形例による流体圧駆動装置の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態による弁体状態監視装置1を備えた流体圧駆動装置10の概略構成を示す図である。流体圧駆動装置10は、流量制御弁2を備えている。流量制御弁2は、1つ以上のスプール(弁体)2aを有する弁棒2bと、弁体状態監視装置1とを備えている。弁棒2bは、例えば不図示の電磁コイルに流れる電流により、図示の左右に移動制御される。なお、弁棒2bは、必ずしも電磁コイル等の電気制御で移動させる必要はなく、他の制御手法(例えば、油圧制御)により移動させてもよい。このように、スプール2aは、流量制御弁2の弁ハウジング内を移動する。流量制御弁2は、弁ハウジング内を移動するスプール(弁体)2aを目標位置に留めるように帰還制御を行って、作動流体の吐出量を制御する。
【0020】
図1の流量制御弁2には、作動油が流入出する複数のポートが設けられており、スプール2aの位置に応じて、各ポートからの作動油の流入出が制御される。例えば、流量制御弁2は、アクチュエータからの作動油が流れ込むポートP1と、流量制御弁2からアクチュエータに作動油を供給するポートP2と、流量制御弁2からタンクに作動油を排出するポートP3とを有する。なお、流量制御弁2に設けられるポートの種類と数は任意である。
【0021】
図1の流体圧駆動装置10は、位置検出部3と、帰還制御部4と、弁体状態監視装置1とを備えている。このうち、帰還制御部4と弁体状態監視装置1は、コントローラの一部を構成している。
【0022】
位置検出部3は、弁ハウジング内を移動する弁体を有する。より具体的には、位置検出部3は、弁棒2bの一端部側に配置されており、弁棒2bの一端部の位置を検出することにより、スプール2aの位置を検出する。位置検出部3は、ギャップセンサなどを用いて構成可能である。位置検出部3が検出したスプール2aの位置情報は、帰還制御部4に伝送される。
【0023】
帰還制御部4は、スプール2aの位置が目標位置に一致するように帰還制御を行う。スプール2aの目標位置は、流量制御弁2の動作によって変わりうる。
図1は、スプール2aの目標位置を中立位置にした例を示している。中立位置では、流量制御弁2からの作動油がシールされる。すなわち、中立位置では、本来的には、外部から流量制御弁2に作動油が供給されず、かつ、流量制御弁2から外部にも作動油は供給されない。
【0024】
帰還制御部4は、位置検出部3で検出されたスプール2aの現在位置が目標位置に一致するように、弁棒2bの移動を制御する。例えば、電磁コイルを用いて弁棒2bを移動させている場合は、帰還制御部4は電磁コイルに流す電流の大きさ及び向きを制御する。
【0025】
帰還制御部4は、流量制御弁2から吐出される作動油の量に応じて目標位置を調整することができる。例えば、スプール2aが摩耗していて、スプール2aが中立位置にいても作動油が漏れ出す場合、作動油の漏れを抑制するために、目標位置が変更されることがありうる。この場合、帰還制御部4は、目標位置の変更に伴って、スプール2aを細かく移動させることになる。
【0026】
図2(a)はスプール2aが中立位置のときにスプール2aの摩耗により作動油が漏れ出す経路を矢印で示した図である。
図2(b)は目標位置の変更によりスプール2aを左側に移動させた例、
図2(c)は目標位置の変更によりスプール2aを右側に移動させた例を示している。このように、スプール2aの中立位置で作動油が漏れ出す場合は、帰還制御部4は、目標位置を変更して、それに応じてスプール2aを左又は右に移動させることで、作動油の漏れを抑制する制御を行う。
【0027】
弁体状態監視装置1は、取得部16と状態推定部5とを備えている。取得部16は、流量制御弁2から、スプール2aの位置情報を取得する。
【0028】
状態推定部5は、スプール2aが目標位置からずれた場合に当該目標位置に復帰させるためにスプール2aを移動させた単位時間当たりの回数とスプール2aが所定時間内に目標位置から乖離した距離との少なくとも一方に基づいて、スプール2aの状態を推定する。
【0029】
スプール2aの単位時間当たりの回数が多い場合は、スプール2aの位置が目標位置になかなか一致しないことを示している。上述したように、スプール2aが摩耗している場合は、スプール2aが中立位置にいても、作動油が漏れ出すため、作動油の漏れを抑制するべく目標位置が変更されて、それに応じて、スプール2aの位置も移動するため、単位時間当たりの回数が多くなる。よって、スプール2aの単位時間当たりの回数が所定の閾値(第1閾値)を超えた場合には、状態推定部5は、スプール2aの摩耗が生じた状態であると推定する。
【0030】
また、スプール2aが目標位置を基準として移動する距離が大きい場合は、スプール2aが目標位置と大きくかけ離れていることを示している。上述したように、スプール2aが摩耗している場合は、スプール2aが中立位置にいても、作動油が漏れ出すが、漏れ出す作動油の量が多いほど、目標位置が大きく変更される。よって、スプール2aが目標位置を基準として移動する距離が所定の閾値(第2閾値)を超えた場合には、状態推定部5は、スプール2aの摩耗が生じた状態であると推定する。
【0031】
状態推定部5は、現時点でのスプール2aの状態を推定するものである。帰還制御部4は、流量制御弁2が動作を行っている間、継続してスプール2aの位置が目標位置に一致するように帰還制御を行うため、それに応じて、状態推定部5も、継続してスプール2aの状態を推定する。状態推定部5が推定する状態は、スプール2aが摩耗しているか否かを示す状態であってもよいし、摩耗している度合いを表す状態であってもよい。
【0032】
状態推定部5が各時点において推定した状態は、例えば
図1に破線で示す記憶部6に記憶してもよい。記憶部6は、状態推定部5が推定した時刻情報と、推定した状態とを組にして記憶する。これにより、帰還制御部4が帰還制御を行っている期間内の複数の時点における状態を逐次、記憶部6に記憶することができる。記憶部6が記憶した情報は、必要に応じて、外部に出力できるようにするのが望ましい。
【0033】
また、
図1の弁体状態監視装置1は、破線で示す警告部7を備えていてもよい。警告部7は、状態推定部5が、スプール2aの単位時間当たりの回数が第1閾値を超えたと判断した場合と、スプール2aの目標位置から乖離した距離が第2閾値を超えたと判断した場合との少なくとも一方において、所定の警告処理を行う。警告処理の具体的な内容は任意であるが、例えば、流量制御弁2の管理を行う不図示の管理サーバ等に、無線又は有線のネットワークを介して、警告信号を送信して、管理サーバ等の表示装置に警告内容を表示してもよい。あるいは、流量制御弁2に接続された表示装置やスピーカにて、警告内容を表示又は音声出力してもよい。警告内容の一例は、スプール2aの点検を促すものであってもよい。
【0034】
このように、第1の実施形態では、流量制御弁2のスプール2aの位置が目標位置に一致するように帰還制御を行っている最中に、スプール2aが目標位置に向けて移動する単位時間当たりの回数と、スプール2aが目標位置から乖離した距離と、の少なくとも一方に基づいて、スプール2aの状態を推定するため、スプール2aが中立位置にいるときにスプール2aの摩耗により作動油が漏れ出しているか否かを簡易かつ正確に判断できる。
【0035】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、状態推定部5で推定した状態に基づいて、流量制御弁2のスプール2aの寿命を予測するものである。
【0036】
図3は第2の実施形態による弁体状態監視装置1と流量制御弁2を備えた流体圧駆動装置10の概略構成を示す図である。
図3の弁体状態監視装置1は、
図1の構成に加えて、寿命予測部8を備えている。なお、取得部16は、帰還制御部4又は状態推定部5と一体化してもよい。
【0037】
寿命予測部8は、状態推定部5で所定期間にわたって推定した流量制御弁2のスプール2aの状態に基づいて、スプール2aの寿命を予測する。一般には、スプール2aは使用している間に徐々に摩耗していくため、スプール2aが中立位置のときに漏れ出す作動油の量も徐々に増えることが予想される。ただし、作動油中に含まれる異物がスプール2aに噛み込んだりすると、急激に作動油の漏出量が増えることがありうる。作動油の漏出量が増えるほど、スプール2aの単位時間当たりの回数と、目標位置から乖離した距離がともに大きくなる。
【0038】
スプール2aの単位時間当たりの回数と距離が、それぞれどのくらいの値になったら、スプール2aの寿命と判断するかは、流量制御弁2の種類や用途等によって異なる。そこで、寿命予測部8は、スプール2aの寿命と判断する閾値(第3閾値と第4閾値)を設けてもよい。例えば、寿命予測部8は、スプール2aの単位時間当たりの回数が第3閾値(第3閾値は第1閾値以上)を超えた場合と、スプール2aの振目標位置から乖離した距離が第4閾値(第4閾値は第2閾値以上)を超えた場合との少なくとも一方において、スプール2aの寿命と判断してもよい。
【0039】
スプール2aの回数が第3閾値を超えた場合、又はスプール2aの目標位置から乖離した距離が第4閾値を超えた場合に、所定の警告処理を行う警告部7を設けてもよい。
【0040】
また、寿命予測部8は、作動油の漏出量が急激に増える兆候が見られた時点で、スプール2aの寿命であると判断してもよい。より具体的には、時間の経過とともに、スプール2aの単位時間当たりの回数と距離がほぼ線形的に増大する傾向であったのに、ある時点を境に、回数と距離の増大する傾きがより大きくなった場合は、その時点でスプール2aの寿命と判断してもよい。
【0041】
このように、寿命予測部8がスプール2aの寿命と判断する基準は、種々考えられるが、いったん寿命と判断した場合には、何らかの手段でスプール2aの交換時期であることを報知するのが望ましい。報知の仕方は、種々の手法が考えられ、上述した警告部7が行ってもよい。
【0042】
また、寿命予測部8は、スプール2aが寿命に到達する前に、寿命が近づいたことを報知してもよく、その際にいつ頃寿命になるかの情報も合わせて提供してもよい。
【0043】
このように、第2の実施形態では、状態推定部5で推定した状態に基づいて、スプール2aの寿命を予測する寿命予測部8を設けるため、流量制御弁2の使用中に、作動油が大量に漏れ出すような不具合を未然に防止できる。また、流量制御弁2を分解してスプール2a自体を検査しなくても、スプール2aの交換時期を把握できるため、流量制御弁2の保守管理費用を削減できる。
【0044】
(第3の実施形態)
第3の実施形態による流量制御弁2を、メインバルブやシリンダ等のアクチュエータの駆動に用いるものである。
【0045】
図4は、
図3の弁体状態監視装置1と流量制御弁2に加えて、アクチュエータ9を備えた流体圧駆動装置10の概略構成を示す図である。
図4のアクチュエータ9は、流量制御弁2から吐出された作動油に応じて、可動部(第2可動部)9aを上下させる。
図4のアクチュエータ9は、可動部9aによる圧縮空気により、燃料噴射弁11と排気弁12を制御する例を示しているが、燃料噴射弁11と排気弁12は一例にすぎない。
図4のアクチュエータ9の具体的な構造と駆動対象は任意である。
【0046】
図4の流体圧駆動装置10は、アクチュエータ9の駆動中に、状態推定部5と寿命予測部8にて流量制御弁2のスプール2aの摩耗を監視することができる。より具体的には、アクチュエータ9の駆動中に、流量制御弁2のスプール2aを中立位置に戻すタイミングで、スプール2aの単位時間当たりの回数と距離を計測して、状態推定部5にてスプール2aの状態を推定する。アクチュエータ9の駆動中には、定期的または不定期的に、流量制御弁2のスプール2aは中立位置に復帰するため、そのたびに、状態推定部5にてスプール2aの回数と距離を計測して、スプール2aの状態を推定すれば、アクチュエータ9の駆動中に継続してスプール2aの状態を推定できる。
【0047】
よって、
図4の流体圧駆動装置10では、流量制御弁2のスプール2aの状態を推定するために、流体圧駆動装置10を停止させる必要はなく、アクチュエータ9を駆動しながら、流量制御弁2のスプール2aの状態を推定できる。
【0048】
このように、第3の実施形態では、流量制御弁2から吐出される作動油にてアクチュエータ9を駆動する流体圧駆動装置10において、アクチュエータ9を駆動している最中に、流量制御弁2のスプール2aが例えば中立位置に復帰するタイミングに合わせて、スプール2aの単位時間当たりの回数と距離にて、スプール2aが摩耗したか否かを判断できる。これにより、アクチュエータ9の駆動中にスプール2aの摩耗の有無を確認できることから、アクチュエータ9を停止させることなく、スプール2aの摩耗の有無を検査することができる。
【0049】
(第4の実施形態)
アクチュエータ9を駆動しながら、流量制御弁2のスプール2aの状態を推定した結果、スプール2aの摩耗が疑われる場合には、いったんアクチュエータ9の駆動を停止させて、その状態でアクチュエータ9の可動部9aの変位速度に基づいて、流量制御弁2のスプール2aの状態を改めて推定してもよい。アクチュエータ9の駆動を停止させるには、流量制御弁2のスプール2aを中立位置に移動させなければならない。
図5に示すように、アクチュエータ9の可動部9aが鉛直方向に配置されている場合、流量制御弁2のスプール2aを中立位置に移動させた場合、可動部9aは自重により下がるはずである。ところが、流量制御弁2のスプール2aが摩耗している場合、スプール2aが中立位置にあっても、流量制御弁2からアクチュエータ9に向かって作動油が流れるため、可動部9aの変位速度が変化する。そこで、可動部9aの変位速度の変化を検出して、流量制御弁2のスプール2aが摩耗しているか否かを再度判断してもよい。
【0050】
図5は
図4の一変形例による流体圧駆動装置10の概略構成を示す図である。
図5の流体圧駆動装置10は、可動部9aの一端部に配置されて可動部9aの位置を検出する位置検出部13と、可動部9aの位置変化に基づいて可動部9aの変位速度を検出する変位検出部14と、流量制御弁2のスプール2aの状態を再度推定する状態再推定部15とを有する。変位検出部14は、位置検出部13で検出された可動部9aの位置の時間変化に基づいて、可動部9aの変位速度を演算により検出する。
【0051】
図5の状態再推定部15は、アクチュエータ9の駆動を停止させた状態で、すなわち、流量制御弁2のスプール2aを中立位置に復帰させた状態で、可動部9aの変位速度に基づいて、流量制御弁2のスプール2aの状態を再度推定する。より具体的には、可動部9aの変位速度が所定の閾値よりも遅くなれば、流量制御弁2のスプール2aが中立位置のときに、作動油が漏れ出したと判断する。第3の実施形態と同様に、アクチュエータ9を駆動させている最中に、状態推定部5にてスプール2aの摩耗が推定されたときに、アクチュエータ9の駆動を停止させた状態で、状態再推定部15にてスプール2aの摩耗が再度推定された場合に、スプール2aが摩耗したと最終的に判断するようにしてもよい。
【0052】
このように、第4の実施形態では、アクチュエータ9を駆動している最中に状態推定部5にてスプール2aの摩耗が推定された場合に、アクチュエータ9の駆動を停止させて、状態再推定部15にてスプール2aが摩耗しているか否かを再度推定する。これにより、スプール2aが停止しているか否かをより正確に判断できる。
【0053】
第4の実施形態におけるアクチェエータ9は、流量制御弁2とは別の流量制御弁9であってもよい。この場合、別の流量制御弁9は、流量制御弁2のスプール2aとは別のスプール(弁体)を移動させる。状態推定部5は、スプール2aの位置が目標位置からずれた場合に当該目標位置に復帰させるためにスプール2aを移動させた単位時間当たりの回数とスプール2aの位置が所定時間内に目標位置から乖離した距離との少なくとも一方と、別の流量制御弁9の別のスプールの位置と、に基づいて、スプール2aの状態を推定する。
【0054】
上述した第3及び第4実施形態では、流量制御弁2とアクチュエータ9を備えた流体圧駆動装置10について説明したが、アクチェエータ9の構成及び動作は任意であることから、流量制御弁2から吐出される作動油を利用して種々の動作を行う流体圧駆動装置10に幅広く適用可能である。流量制御弁2は、スプール2aを有し、スプール2aの位置に応じて作動油の吐出量を制御するものであればよい。流量制御弁2の具体例は、上述したスプール弁の他に、ポペット弁、ボール弁、ニードル弁などにも適用可能である。アクチュエータ9は、流量制御弁2からの作動油の吐出量に応じて位置を可変可能な可動部9aを有し、可動部9aの位置に応じてアクチュエータ軸を直接駆動するもののほか、可動部9aは位置に応じて、別置きのアクチュエータ9に対する作動油の供給量を制御する弁であってもよい。駆動部の具体例は、上述したピストン式のアクチュエータ9の他に、スプール弁やポペット弁でもよいし、油圧モータ等の流体圧駆動モータでもよい。
【0055】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 弁体状態監視装置、2 流量制御弁、2a スプール、2b 弁棒、3 位置検出部、4 帰還制御部、5 状態推定部、6 記憶部、7 警告部、8 寿命予測部、9 アクチュエータ、9a 可動部、10 流体圧駆動装置、11 燃料噴射弁、12 排気弁、13 位置検出部、14 変位検出部、15 状態再推定部、20 コントローラ