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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】配管支持具及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/08 20060101AFI20230331BHJP
   F16L 3/12 20060101ALI20230331BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
F16L3/08 C
F16L3/12 A
F16B2/08 Z
F16B2/08 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019001777
(22)【出願日】2019-01-09
(65)【公開番号】P2020112183
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】508333228
【氏名又は名称】AWJ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099704
【弁理士】
【氏名又は名称】久寶 聡博
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 聡
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-202086(JP,A)
【文献】特開2011-007256(JP,A)
【文献】特開2018-204773(JP,A)
【文献】実開昭53-023018(JP,U)
【文献】特開2012-057737(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0292034(US,A1)
【文献】“A10232デップステンSP吊タン付”,アカギ式 配管支持金具 2018-69,株式会社アカギ,2018年,p.43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00-3/26
F16B 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面外方向にかつ環状に湾曲形成され周方向に沿って補剛リブが設けられた配管挿通部及び該配管挿通部の対向端部から放射方向にそれぞれ延設された互いに対向する一対の連結部からなる金属本体を備え、該一対の連結部を所定の連結具を介して天井面若しくは上階床スラブ下面又は壁面に連結することにより、前記配管挿通部の内側空間に挿通された配管を支持できるようになっている配管支持具において、
前記配管挿通部と前記配管との間で荷重伝達が行われるようにそれらの間に配置されたエラストマーからなる荷重伝達手段を備え、該荷重伝達手段を、その内周側において前記配管の材軸を含む断面で凹凸が顕れないように形成するとともに、前記補剛リブの内周側に顕れる溝が埋められる断面形状とし、前記荷重伝達手段の内周側であって、前記一対の連結部の反対側に位置する部位に前記配管の材軸方向に沿って延びる切り欠きを設けたことを特徴とする配管支持具。
【請求項2】
前記荷重伝達手段を、該荷重伝達手段に前記配管挿通部が埋設された形となるように荷重伝達部として構成した請求項1記載の配管支持具。
【請求項3】
前記荷重伝達手段を、前記配管挿通部に着脱自在な荷重伝達部材として構成した請求項1記載の配管支持具。
【請求項4】
請求項2記載の配管支持具を製造する方法であって、前記金属本体のうち、前記配管挿通部を埋設物とした射出成形によって前記荷重伝達部を構成することを特徴とする配管支持具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種配管を吊りバンドあるいは立てバンドといった形で支持する際に用いられる配管支持具及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和設備工事や衛生設備工事においては、用途や目的に応じてさまざまな配管が用いられており、材質で分類すると概ね金属管と樹脂管に大別される。
【0003】
例えば、給水管には、ポリエチレンや硬質ポリ塩化ビニルで内面を被覆したライニング鋼管や、硬質ポリ塩化ビニル管、ポリエチレン管などの樹脂管が用いられており、給湯管には、ステンレス鋼管や耐熱性硬質ポリ塩化ビニルライニング鋼管が用いられている。
【0004】
これらの配管は、横走り管であれば、吊りバンドで天井や上階スラブから吊持し、立ち上がり管であれば、立てバンドで壁に固定することで建物内に設置されるが、これら吊りバンドあるいは立てバンドといった配管支持具は、帯状の鋼材を面外方向に環状に湾曲加工することでその内側に配管が挿通できるように構成された配管挿通部と、該配管挿通部の各端部から互いに対向するように放射方向にそれぞれ延設された一対の連結部とで構成してあり、該一対の連結部の間に天井面や上階床スラブ下面に固定された連結具の下端あるいは壁面に固定された連結具の先端を挟み込むとともに、上述した配管を配管挿通部に挿通した上、一対の連結部にボルトを挿通して締め付けることで、該配管を天井や上階床スラブから吊持し、あるいは壁に固定できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-57737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、帯状の鋼材からなる配管挿通部には配管の自重が鉛直荷重として常時作用し、あるいは地震時慣性力が水平荷重として作用する一方、それらの反力が配管の周面に作用するが、配管支持具の製作コストを抑えるためには、鋼材の幅を25mm程度に制限せざるを得ない。
【0007】
そのため、配管挿通部からの反力の作用面が配管の狭い範囲に集中し、その結果、腐食等によって配管の強度が低下している場合には、該配管が破断するおそれがあるという問題を生じていた。
【0008】
また、配管挿通部が帯状の鋼材を面外に湾曲加工して構成される関係上、該配管挿通部には、いわゆるスプリングバックを防止するための補剛リブが周方向に設けられるが、その凹凸は、外周側では突条として、内周側では溝として顕れるので、荷重作用面がさらに減少し、上述した応力集中がより顕著になるという問題も生じていた。
【0009】
ちなみに、配管が金属管である場合には、電食を防止すべく、鋼材に電気絶縁材を被覆したものが配管挿通部として用いられているが、従来においては、電気絶縁材の被覆を主としてディッピングによって行っているので、上述した補剛リブにはその凹凸に沿って電気絶縁材が被覆されるにとどまり、内周側には上述した溝が依然として顕れたままとなり、溝による荷重作用面の減少の問題は何ら解決されない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、配管に作用する荷重の応力集中を緩和することが可能な配管支持具及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る配管支持具は請求項1に記載したように、面外方向にかつ環状に湾曲形成され周方向に沿って補剛リブが設けられた配管挿通部及び該配管挿通部の対向端部から放射方向にそれぞれ延設された互いに対向する一対の連結部からなる金属本体を備え、該一対の連結部を所定の連結具を介して天井面若しくは上階床スラブ下面又は壁面に連結することにより、前記配管挿通部の内側空間に挿通された配管を支持できるようになっている配管支持具において、
前記配管挿通部と前記配管との間で荷重伝達が行われるようにそれらの間に配置されたエラストマーからなる荷重伝達手段を備え、該荷重伝達手段を、その内周側において前記配管の材軸を含む断面で凹凸が顕れないように形成するとともに、前記補剛リブの内周側に顕れる溝が埋められる断面形状とし、前記荷重伝達手段の内周側であって、前記一対の連結部の反対側に位置する部位に前記配管の材軸方向に沿って延びる切り欠きを設けたものである。
【0017】
また、本発明に係る配管支持具は、前記荷重伝達手段を、該荷重伝達手段に前記配管挿通部が埋設された形となるように荷重伝達部として構成したものである。
【0018】
また、本発明に係る配管支持具は、前記荷重伝達手段を、前記配管挿通部に着脱自在な荷重伝達部材として構成したものである。
【0019】
また、本発明に係る配管支持具の製造方法は請求項に記載したように、請求項2記載の配管支持具を製造する方法であって、前記金属本体のうち、前記配管挿通部を埋設物とした射出成形によって前記荷重伝達部を構成するものである。
【0020】
本発明に係る配管支持具においては、従来と同様、面外方向にかつ環状に湾曲形成され周方向に沿って補剛リブが設けられた配管挿通部及び該配管挿通部の対向端部から放射方向にそれぞれ延設された互いに対向する一対の連結部からなる金属本体を備えるが、配管挿通部には、該配管挿通部と配管との間で荷重伝達が行われるようにエラストマーからなる荷重伝達手段を配置してあり、該荷重伝達手段は、その内周側において、配管の材軸を含む断面(以下、縦断面)で凹凸が顕れないように、換言すれば縦断面でみたときに平坦になるように形成してあるとともに、補剛リブの内周側に顕れる溝が埋められる断面形状としてある。
【0021】
このようにすると、荷重伝達手段は、配管挿通部に補剛リブが設けられていても、十分な作用面積をもってその内周側で配管の周面と当接し、該荷重伝達手段からの力、すなわち配管の自重や配管の地震時慣性力に対する反力は、分散した状態で配管に作用することとなり、かくして配管に生じるせん断応力が小さくなり、配管への応力集中、ひいてはそれに起因する破断が未然に防止される。
【0022】
荷重伝達手段は、配管との間で荷重伝達が行われるように配置されていればよいのであって、少なくとも内周側に配置されていれば足りるが、内周及び外周の両方に配置されている構成が典型例となる。
【0023】
また、荷重伝達手段は、配管挿通部の全長に沿って配置されておらずとも、離散的にあるいは不連続に配置されていてもかまわないが、以下の構成、すなわち、
(a) 荷重伝達手段を、前記配管挿通部の全長にわたって配置した構成
(b) 荷重伝達手段を、前記配管挿通部のうち、前記一対の連結部の反対側に位置する部位を除く残り全てにわたって配置した構成
が典型例となる。
【0024】
ここで、荷重伝達手段はエラストマーで構成してあるので、配管が金属管である場合の該配管と金属本体との接触を回避して電食防止を図ることができるが、(a)は、かかる電食防止をより確実に防止可能な構成となり、(b)は、開閉操作の際、曲げが卓越する部位に荷重伝達手段が存在しないため、開閉操作が容易な構成となることはもちろん、荷重伝達手段がそもそも存在しないため、割れの発生についても懸念の必要がない構成となる。
【0025】
また、金属本体については、配管挿通部の開閉操作を容易にすべく、該金属本体のうち、一対の連結部の反対側となる位置に開口、切り欠き等の断面欠損部を設けるか、又はヒンジ部を設けることが前提となり、(b)の場合には、これら断面欠損部やヒンジ部が設けられた箇所で金属本体が露出することになるが、荷重伝達手段の内周側厚みを適宜設定することにより、断面欠損部やヒンジ部が設けられた箇所での金属本体と配管との接触も確実に回避することが可能である。
【0026】
荷重伝達手段は、縦断面でその内周側に凹凸が顕れないように形成されていれば足りるものであって、配管の材軸に直交する断面(以下、横断面)については、内周側に凹凸が顕れてもかまわない。
【0027】
すなわち、金属本体に補剛リブが設けられている従来の配管支持具において、補剛リブの凹凸が内周側では溝として顕れ、その溝の分だけ、配管に当接可能な配管挿通部の領域が狭くなることからわかるように、周方向に沿った溝、つまり縦断面において内周側に顕れる凹部は、周方向に沿っているために長くなりがちであり、荷重作用面の面積減少への影響が大きく、それゆえ、縦断面において内周側に凹凸が顕れる構成は本発明では許容されないが、横断面において内周側に顕れる凹部は、配管材軸方向に沿っているがゆえに長さが短くなるため、荷重作用面の面積減少への影響はわずかであり、本発明ではこれが許容される。
【0028】
ここで、横断面においても内周側に凹凸が顕れないように形成されている場合には、荷重伝達手段を周方向に沿って展開した状態での輪郭線(周縁)で囲まれた領域の面積が、配管の周面に当接する実際の面積と一致するため、荷重作用面積が最大となり、配管に生じるせん断応力を最小にすることが可能となるが、本発明においては、荷重伝達手段の内周側であって、一対の連結部の反対側に位置する部位に配管の材軸方向に沿って延びる切り欠きを設けてあり、かかる構成によれば、荷重作用面の面積減少への影響をわずかにとどめつつ、かつ断面欠損部やヒンジ部が設けられた箇所での金属本体の露出を回避しつつ、配管挿通部の開閉操作を容易にすることが可能となる。
【0029】
荷重伝達手段は、既に述べた通り、その内周側を、配管の材軸を含む断面において凹凸が顕れないように形成することで、配管への応力集中、ひいてはそれに起因する破断を未然に防止することができるが、配管の材軸方向に延びるフラップを荷重伝達手段に設けた構成とすれば、配管への応力集中をさらに緩和することが可能となる(参考発明)
【0030】
荷重伝達手段は、配管挿通部が埋設された形となるように荷重伝達部として構成するか、配管挿通部に着脱自在な荷重伝達部材として構成するかも適宜選択することが可能であるが、前者の場合であれば、配管挿通部を埋設物としたインサート成形においてエラストマーを射出することにより構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本実施形態に係る配管支持具1の図であり、(a)は全体斜視図、(b)は荷重伝達部を省略して該荷重伝達部に埋設されている金属本体のみを示した全体斜視図。
図2】同じく本実施形態に係る配管支持具1の図であり、(a)は側面図、(b)はA-A線方向から見た正面図、(c)はB-B線に沿う断面図。
図3】同じく本実施形態に係る配管支持具1の図であり、(a)はC-C線に沿う断面図、(b)はD-D線に沿う断面図。
図4】本実施形態に係る配管支持具1の作用を説明した模式図。
図5】配管支持具から配管に作用する荷重伝達状況を示した図であり、(a)及び(b)は、本実施形態に係る配管支持具1の作用を、(c)及び(d)は従来構成に係る配管支持具の作用をそれぞれ示した断面図。
図6】変形例に係る配管支持具1a,1bをそれぞれ示した正面図。
図7】変形例に係る配管支持具1cを示した全体斜視図。
図8】別の変形例に係る配管支持具を示した断面図。
図9】別の変形例に係る配管支持具を示した図であり、(a)は正面図、(b)は着脱前の状況を、(c)は着脱後の状況をそれぞれE-E線に沿って示した断面図。
図10】別の変形例に係る配管支持具を示した図であり、(a)は正面図、(b)は着脱前の状況を、(c)は着脱後の状況をそれぞれF-F線に沿って示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る配管支持具の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0033】
図1は、本実施形態に係る配管支持具を示した全体斜視図、図2(a)~(c)はそれぞれ、本実施形態に係る配管支持具の側面図、A-A線矢視図(正面図)及びB-B線断面図、図3(a)、(b)はそれぞれ、本実施形態に係る配管支持具のC-C線断面図及びD-D線断面図である。これらの図でわかるように、本実施形態に係る配管支持具1は、いわゆる吊りバンドと称されるものであって、天井又は上階床スラブの下方に横走り管として配置されるべき配管6を吊持するようになっており、金属本体2と該金属本体が埋設された樹脂材料からなる荷重伝達部3とを備える。
【0034】
金属本体2は、帯板状の鋼材を用いて構成されたものであって、面外方向にかつ環状に湾曲形成された配管挿通部4及び該配管挿通部の対向端部から放射方向にそれぞれ延設された互いに対向する一対の連結部5,5からなり、該一対の連結部を、該連結部に形成されたボルト挿通孔7,7を利用しつつ、吊りボルト等の連結具(図示せず)を介して天井面又は上階床スラブ下面に連結することにより、配管挿通部4の内側空間に挿通された配管6を吊持できるようになっている。
【0035】
金属本体2の配管挿通部4には、いわゆるスプリングバックを防止するための補剛リブ8が周方向に設けられており、その凹凸は、外周側では突条9として、内周側では溝10として顕れる。
【0036】
また、配管挿通部4のうち、一対の連結部5,5の反対側に位置する部位、すなわち最下端近傍位置には、開口からなる断面欠損部11を設けてあり、図2(b)に示す矢印方向に沿った配管挿通部4の開閉操作を容易に行うことができるようになっている。
【0037】
荷重伝達部3は図3でよくわかるように、配管挿通部4が埋設される形で、その周囲を取り囲むように設けてあり、配管挿通部4と配管6との間に拡がる範囲(内周側)については、それらの間で荷重伝達が行われるようになっている。なお、荷重伝達部3の外周側には、断面欠損部11が設けられた位置に相当する部位を除き、補剛リブ8の突条9を覆うべく、周方向に沿った凸部32を設けてある。
【0038】
荷重伝達部3は、図1(a)及び図3でよくわかるように、配管6の材軸31を含む断面、すなわち同図に示す断面(以下、縦断面)において補強リブ8が溝10として内周側に顕れないように形成してあるとともに、図2(c)に示すように、材軸31に直交する断面(以下、横断面)においても他の凹凸が内周側に顕れないように、換言すれば、縦断面及び横断面のいずれの方向についても内周側が平坦になるように構成してある。
【0039】
ここで、荷重伝達部3の内周側を平坦になるように、あるいは上記縦断面及び横断面で凹凸が顕れないように形成するとは、図4に示したように、該荷重伝達部を内周側からみたときの周縁で囲まれた領域、本実施形態では、荷重伝達部3の内周面のうち、配管6の周面に当接する面積Sが、周縁で囲まれた短冊状の四角形の面積S0と一致するように形成すると定義することが可能であり、両方向で凹凸がなく平坦面であれば、図4(a)に示すように、S=S0となるが、凹凸があれば、その分、当接面積が減少するため、図4(b)に示すように、S<S0となる。
【0040】
なお、荷重伝達部3の内周側を上記縦断面で凹凸が顕れないように形成した結果として、図3(a)に示すように、荷重伝達部3のうち、補強リブ8が設けられた範囲(断面欠損部11が設けられた部位は除く)においては、補強リブ8の設置部位における内周側厚さd2が、該補強リブの非設置部位における内周側厚さd1よりも大きくなる。
【0041】
本実施形態に係る配管支持具1は、配管挿通部4を埋設物(インサート)とし、合成樹脂又はエラストマーを射出材料としたインサート成形によって製作することが可能であり、合成樹脂やエラストマーは、配管6を流れる流体の温度や支持荷重等に応じて適宜その材種を選定すればよい。
【0042】
本実施形態に係る配管支持具1においては、従来と同様、面外方向にかつ環状に湾曲形成された配管挿通部4及び該配管挿通部の対向端部から放射方向にそれぞれ延設された互いに対向する一対の連結部5,5からなる金属本体2を備えるが、配管挿通部4には、該配管挿通部と配管6との間で荷重伝達が行われるように樹脂材料からなる荷重伝達部3を配置してあるとともに、該荷重伝達部の内周側は、上記縦断面及び横断面で凹凸が顕れないように形成してある。
【0043】
図5(a)及び(b)は、配管挿通部4から荷重伝達部3を介して配管6に作用する反力載荷状況を示したものであって、同図(a)は最下端位置近傍、同図(b)は該最下端位置近傍から上方に若干外れた位置でのものであり、比較のため、ディッピングによってPVCからなる被覆材51を配管挿通部4に被覆した従来構成を同様の位置で同図(c)及び(d)に示してある。
【0044】
これらの図でわかるように、従来構成では、補強リブ8が溝10の形でそのまま配管挿通部4の内周側に顕れるため、該溝の面積分だけ、配管6への荷重作用面積は小さくなるが、本発明に係る配管支持具1においては、溝10を埋めるように荷重伝達部3が拡がっていて、その内周側が両方向で平坦に形成されているため、配管6への荷重作用面積は大きくなる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る配管支持具1によれば、荷重伝達部3が、配管挿通部4の横断面形状とは無関係に、十分な作用面積をもってその内周側で配管6の周面と当接し、該荷重伝達部からの力、すなわち配管6の自重や配管6の地震時慣性力に対する反力は、分散した状態で配管6に作用する。
【0046】
そのため、配管6に生じるせん断応力が小さくなり、配管6への応力集中、ひいてはそれに起因する破断が未然に防止される。
【0047】
なお、荷重伝達部3を電気絶縁材で構成することで、配管6が金属管である場合の該配管と金属本体2との接触を回避して電食防止を図ることができる。
【0048】
また、本実施形態に係る配管支持具1によれば、荷重伝達部3を、その内周側において上記縦断面及び横断面で凹凸が顕れないように構成したので、荷重伝達部3を周方向に沿って展開した状態での輪郭線(周縁)で囲まれた領域の面積が、配管6の周面に当接する実際の面積と一致する。
【0049】
したがって、荷重作用面積が最大となり、配管6に生じるせん断応力を最小にすることが可能となる。
【0050】
本実施形態では、荷重伝達部6を荷重伝達手段としたが、本発明の荷重伝達手段は、配管との間で荷重伝達が行われるように配置されていればよいのであって、少なくとも内周側に配置されていれば足りるものであり、外周側については、配管挿通部4が露出した構成でもかまわない。
【0051】
また、本実施形態では、荷重伝達部6を配管挿通部4の全長に沿って配置されるものとしたが、これに代えて、配管挿通部4の長さ方向に沿って離散的にあるいは不連続に配置された構成であってもかまわない。
【0052】
図6(a)は、このような変形例を示したものであって、配管挿通部4のうち、一対の連結部5,5の反対側に位置する部位を除く残り全てにわたって配置されてなる荷重伝達部3aで荷重伝達手段を構成してある。
【0053】
かかる構成によれば、同図に示すように配管支持具1aを開閉する際、曲げが卓越する部位に荷重伝達部3aが存在しないため、開閉操作が容易な構成となることはもちろん、荷重伝達部3aがそもそも存在しないため、該荷重伝達部に割れが生じることについても懸念する必要がない。
【0054】
なお、上記変形例においては、断面欠損部11近傍が露出する構成となるが、荷重伝達部3aの内周側厚みを適宜設定することにより、断面欠損部11が設けられた箇所での金属本体2と配管6との接触を確実に回避することが可能である。
【0055】
図6(b)は、金属本体2に代えて、最下端近傍にヒンジ部61が設けられた金属本体2bを用いるとともに、該金属本体を構成する配管挿通部4bのうち、ヒンジ部61を除く残り全てにわたって荷重伝達部3bを配置して構成してある。
【0056】
かかる構成においても、配管支持具1bの開閉操作が容易になるとともに、開閉の際に曲げが卓越する部位に荷重伝達部3bが存在しないため、該荷重伝達部に割れが生じる懸念はないし、ヒンジ部61近傍が露出するものの、荷重伝達部3bの内周側厚みを適宜設定することで、ヒンジ部61が設けられた箇所での金属本体2bと配管6との接触を確実に回避することが可能である。
【0057】
また、本実施形態では、荷重伝達部3を、その内周側において上記縦断面及び横断面で凹凸が顕れないように構成したが、本発明の荷重伝達手段は、縦断面でその内周側に凹凸が顕れないように形成されていれば足りるものであって、横断面については、内周側に凹凸が顕れてもかまわない。
【0058】
図7は、変形例に係る配管支持具1cを示した全体斜視図であり、一対の連結部5,5の反対側に位置する部位に配管6の材軸方向に沿って延びる切り欠き71を内周側に設けてなる荷重伝達部3cで本発明の荷重伝達手段を構成してある。
【0059】
かかる構成によれば、断面欠損部11が設けられた箇所での金属本体2の露出を回避しつつ、配管挿通部4の開閉操作を容易にすることが可能となる。
【0060】
なお、本変形例では、横断面において内周側に凹凸が切り欠き71として顕れることになるが、配管材軸方向に沿っているがゆえに長さが短くなるため、荷重作用面の面積減少への影響はわずかである。
【0061】
また、本実施形態では、補剛リブ8が設けられてなる配管挿通部4で本発明の配管挿通部を構成したが、金属本体のスプリングバックを例えば荷重伝達手段の剛性で防止することができるのであれば、これに代えて、図8(a)のように、補剛リブのないフラットな配管挿通部4dで本発明の配管挿通部を構成してもかまわない。
【0062】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、図8(b)に示すように、配管6の材軸方向に延びるフラップ81が設けられてなる荷重伝達部3eで本発明の荷重伝達手段を構成してもよい。
【0063】
かかる変形例によれば、上述した荷重分散作用が向上し、配管6への応力集中をさらに緩和することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態では、配管挿通部4が埋設された形の荷重伝達部3で本発明の荷重伝達手段を構成したが、これに代えて、図9に示すように、配管挿通部4dに着脱自在な荷重伝達部材91で本発明の荷重伝達手段を構成することが可能であり、かかる構成においては、荷重伝達部材91の幅方向各縁部に設けられた爪92,92を配管挿通部4dの幅方向各縁部に係止する形で該荷重伝達部材を配管挿通部4dに装着すればよい。
【0065】
なお、配管挿通部4dに代えて、補剛リブ8が設けられてなる配管挿通部4に着脱自在な構成とすることも可能であり、この場合には、荷重伝達が確実に行われるよう、図10に示すように、配管挿通部4に設けられた補剛リブ8の溝10に嵌り込む凸部102が設けられてなる荷重伝達部材101とするのが望ましい。
【0066】
また、本実施形態では、本発明に係る配管支持具を吊りバンドに適用したものとして説明したが、これに代えて、立てバンドにも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
1,1a,1b,1c 配管挿通部
2,2b 金属本体
3,3a,3b,3c,3e 荷重伝達部(荷重伝達手段)
4,4d 配管挿通部
5,5 一対の連結部
6 配管
8 補剛リブ
10 溝
11 断面欠損部
31 配管6の材軸
71 切り欠き
91,101 荷重伝達部材(荷重伝達手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10