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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230331BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20230331BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20230331BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20230331BHJP
【FI】
H02J7/00 P
B60L1/00 L
B60L53/14
B60L58/12
H02J7/00 X
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019059633
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020162295
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】守屋 史之
(72)【発明者】
【氏名】福家 和也
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-104143(JP,A)
【文献】特開2018-125901(JP,A)
【文献】特開2013-255345(JP,A)
【文献】特開2015-180138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
B60L 1/00
B60L 53/14
B60L 58/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の電力を蓄積するバッテリと、
前記バッテリを充電する電力を車両の外部から取込み可能な電力取込部と、
前記バッテリと車両の電力線との接続を切り替えるリレーと、
前記電力線から電力を受けて走行モータ以外の機器に電源電圧を供給可能な電源機能部と、
前記電力線を介した電力の伝送制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記電力取込部から前記バッテリへ電力が送られ、かつ、前記電源機能部が動作継続又は始動する第1状況で、電力の伝送モードを、前記リレーが切断状態でかつ前記電力取込部から前記電源機能部へ電力が伝送される直接伝送モードへ切り替え可能であり、
前記制御部は、前記バッテリへ流れる電流を小さくなる方へ調整する電流調整処理を行った後、前記直接伝送モードへの切替えを行うことを特徴とする車両。
【請求項2】
走行用の電力を蓄積するバッテリと、
前記バッテリを充電する電力を車両の外部から取込み可能な電力取込部と、
前記バッテリと車両の電力線との接続を切り替えるリレーと、
前記電力線から電力を受けて走行モータ以外の機器に電源電圧を供給可能な電源機能部と、
前記電力線を介した電力の伝送制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記バッテリの電力により前記電源機能部が動作しているときに、前記電力取込部から電力の取り込みが可能となった第1状況で、電力の伝送モードを、前記リレーが切断状態でかつ前記電力取込部から前記電源機能部へ電力が伝送される直接伝送モードへ切り替え可能であり、
前記制御部は、前記バッテリへ流れる電流を小さくなる方へ調整する電流調整処理を行った後、前記直接伝送モードへの切替えを行うことを特徴とする車両。
【請求項3】
前記電流調整処理は、前記電力取込部に接続される送電設備の出力調整を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記電流調整処理は、前記電力線に接続された機器の駆動調整を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1状況で、更に、前記電力取込部から取込み可能な電力が前記電源機能部に要求される電力以上である場合に、電力の伝送モードを前記直接伝送モードへ切り替えることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1状況で、更に、前記バッテリの充電率が所定の閾値以上である場合に、電力の伝送モードを前記直接伝送モードへ切り替えることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の車両。
【請求項7】
車両の制御モードを選択可能なモード設定部を備え、
前記制御部は、前記第1状況で、更に、前記制御モードが所定モードである場合に、電力の伝送モードを前記直接伝送モードへ切り替えることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の電力を蓄積するバッテリと、バッテリの充電電力を車両の外部から取込み可能な電力取込部とを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)又はPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)などの車両は、走行用の電力を蓄積するバッテリと、バッテリの充電電力を外部から取込可能な電力取込部とを備える。近年、このような車両において、バッテリの電力を利用して様々な電気機器に電源電圧を供給する利便性機能が実用化されている。利便性機能により、例えば、車両の電気エアコンの駆動、あるいは、車室内に設けられたコンセントからAC電源電圧の供給等が可能となる。AC電源電圧の供給により、例えば家庭用の電気器具を車室内で使用することができる。
【0003】
特許文献1には、本発明に関連する技術として、バッテリの充電と電気負荷の使用とが並行して行われているときに、所定の条件でシステムメインリレーをオフに切り替え、バッテリを電力線から切り離す車両が示されている。特許文献1の車両では、バッテリの充電率(SOC:State Of Charge)が低く、バッテリの充電電流がゼロであるか、バッテリから電流が出力されているという条件を満たした場合に、バッテリの過放電を防ぐためにシステムメインリレーがオフにされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/081104号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外部電源を用いて車両のバッテリを充電する充電システムは、一般に、バッテリが満充電となったら外部電源からの充電電力の取り込みが停止される。利便性機能を備える車両においては、バッテリの充電前後又は充電中に利便性機能が使用されることが想定される。このような想定では、バッテリが満充電となって外部電源からの充電電力の供給が停止された後、利便性機能の電力使用によりバッテリの充電率が低下する。そして、バッテリの充電率が所定値以下となった場合に、再び、外部電源からの電力の取り込が再開され、満充電までバッテリが充電される。このような制御方式では、充電中の利便性機能の利用時間が長いと、バッテリの放電と充電とが繰り返され、バッテリの劣化を進めてしまう。特許文献1の技術においても、バッテリの充電率が高い場合には、同様の制御が行われると考えられる。
【0006】
本発明は、電力取込部からの電力の取り込みと電気負荷の使用とが並行して行われる場合に、バッテリの充電と放電とが繰り替えされてしまうことを抑制できる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、
走行用の電力を蓄積するバッテリと、
前記バッテリを充電する電力を車両の外部から取込み可能な電力取込部と、
前記バッテリと車両の電力線との接続を切り替えるリレーと、
前記電力線から電力を受けて走行モータ以外の機器に電源電圧を供給可能な電源機能部
と、
前記電力線を介した電力の伝送制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記電力取込部から前記バッテリへ電力が送られ、かつ、前記電源機能部が動作継続又は始動する第1状況で、電力の伝送モードを、前記リレーが切断状態でかつ前記電力取込部から前記電源機能部へ電力が伝送される直接伝送モードへ切り替え可能であり、
前記制御部は、前記バッテリへ流れる電流を小さくなる方へ調整する電流調整処理を行った後、前記直接伝送モードへの切替えを行うことを特徴とする車両である。
【0008】
請求項2記載の発明は、
走行用の電力を蓄積するバッテリと、
前記バッテリを充電する電力を車両の外部から取込み可能な電力取込部と、
前記バッテリと車両の電力線との接続を切り替えるリレーと、
前記電力線から電力を受けて走行モータ以外の機器に電源電圧を供給可能な電源機能部と、
前記電力線を介した電力の伝送制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記バッテリの電力により前記電源機能部が動作しているときに、前記電力取込部から電力の取り込みが可能となった第1状況で、電力の伝送モードを、前記リレーが切断状態でかつ前記電力取込部から前記電源機能部へ電力が伝送される直接伝送モードへ切り替え可能であり、
前記制御部は、前記バッテリへ流れる電流を小さくなる方へ調整する電流調整処理を行った後、前記直接伝送モードへの切替えを行うことを特徴とする車両である。
【0010】
請求項記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両において、
前記電流調整処理は、前記電力取込部に接続される送電設備の出力調整を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両において、
前記電流調整処理は、前記電力線に接続された機器の駆動調整を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の車両において、
前記制御部は、前記第1状況で、更に、前記電力取込部から取込み可能な電力が前記電源機能部に要求される電力以上である場合に、電力の伝送モードを前記直接伝送モードへ切り替えることを特徴とする。
【0013】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の車両において、
前記制御部は、前記第1状況で、更に、前記バッテリの充電率が所定の閾値以上である場合に、電力の伝送モードを前記直接伝送モードへ切り替えることを特徴とする。
【0014】
請求項記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の車両において、
車両の制御モードを選択可能なモード設定部を備え、
前記制御部は、前記第1状況で、更に、前記制御モードが所定モードである場合に、電力の伝送モードを前記直接伝送モードへ切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電力取込部からの電力の取り込みと、前記電源機能部による電源電圧の供給とが並行して行われる場合に、制御部は、電力の伝送モードを直接伝送モードに切り替えることができる。そして、この切替えにより、バッテリが電力線から切り離されて、電力取込部から電源機能部へ電力が送られるようになるので、電源機能部の電力使用と電力取込部からの電力の取り込みとによって、バッテリの放電と充電とが繰り返されてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る車両を示すブロック図である。
図2】実施形態の車両制御部が実行する劣化抑制モード処理の手順を示すフローチャートである。
図3】実施形態の車両において、充電中に電源機能部の使用要求があった場合の各部の状態を示すタイムチャートである。
図4】比較例の車両において、充電中に電源機能部の使用要求があった場合の各部の状態を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る車両を示すブロック図である。本発明の実施形態に係る車両1は、EV又はPHEVなどの自動車であり、走行用の電力を蓄積するバッテリ11と、駆動輪を駆動する走行モータ13と、バッテリ11と走行モータ13との間で電力を変換するインバータ12と、バッテリ11の状態を管理するBCU(Battery Control Unit)14とを備える。バッテリ11は、走行モータ13を駆動する高電圧を出力し、高電圧バッテリと呼んでもよい。バッテリ11は、例えばリチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池などの二次電池である。
【0019】
車両1は、さらに、システムメインリレーRs(陽極側のリレーRpと陰極側のリレーRn)と、プリチャージリレーRprと、プリチャージ素子R1とを備える。バッテリ11は、システムメインリレーRsを介して電力線Lbに接続されている。システムメインリレーRsが切断状態のとき、バッテリ11と電力線Lbとは、その間に電流が流れないように電気的に切断される。システムメインリレーRsが接続状態のとき、バッテリ11と電力線Lbとは、その間に電流が流れるように電気的に接続される。システムメインリレーRsが接続状態とは、陽極側のリレーRpと陰極側のリレーRnとの両方がオンされている状態を意味する。システムメインリレーRsが切断状態とは、陽極側のリレーRpと陰極側のリレーRnの両方又はいずれか一方がオフされている状態を意味する。システムメインリレーRsは、本発明に係るリレーの一例に相当する。
【0020】
プリチャージリレーRpr及びプリチャージ素子(例えば抵抗)R1は、電力線Lbとバッテリ11との電圧差が大きいときに、電力線Lb又はこれに接続された機器の入力容量にプリチャージを行って、電力線Lbの電圧を緩やかに上昇させることができる。
【0021】
車両1は、さらに、走行モータ13以外の電気機器に電源電圧を供給する電源機能部25を備える。電源機能部25には、一例として、エアコン用インバータ21及び車載インバータ23などが含まれる。エアコン用インバータ21は、電力線Lbから送られた電力を変換してエアコン22(コンプレッサ等)に駆動電力を出力する。車載インバータ23は、電力線Lbから送られた電力をAC電源電圧に変換し、車内コンセント24に出力する。車両1の搭乗者は、車載インバータ23を動作させることで、例えば家庭用の電気器具を車内コンセント24に接続して使用することができる。
【0022】
なお、車内コンセント24の代わりに、あるいは、車内コンセント24に加えて、車載インバータ23には、車両1の近傍(車室外)で電気器具を使用できる車外コンセントが接続されていてもよい。あるいは、電源機能部25は、車載インバータ23の代わりに、外付け用のインバータを接続可能なコネクタ及びリレーを備えていてもよい。この場合、コネクタに外付け用のインバータが接続され、リレーがオンにされることで、車両制御部15の制御により、電力線Lbからインバータへ電力が供給され、外付け用のインバータから車外コンセントへAC電源電圧が出力される。このような構成により、車両1のユーザは、車両1の近傍で家庭用の電気器具を使用することができる。
【0023】
車両1は、さらに、走行制御と各部の制御を行う車両制御部15を備える。車両制御部15は、1つのECU(Electronic Control Unit)から構成されてもよいし、互いに連携して動作する複数のECUから構成されてもよい。ECUは、CPU(Central Processing Unit)、CPUが実行する制御プログラム及び制御データを格納した記憶部、並びに、CPUがデータを展開するRAM(Random Access Memory)を有する。
【0024】
車両制御部15は、例えば運転操作部の操作に応じてインバータ12を駆動し、走行モータ13を力行運転又は回生運転させる。これにより、運転操作に応じた車両1の走行が実現される。加えて、車両制御部15は、システムメインリレーRs及びプリチャージリレーRprの切替制御、電源機能部25の各要素の始動と停止の制御、モード設定部19及び機器操作部20を介した搭乗者からの入力制御等を行う。機器操作部20を介した搭乗者からの入力には、電源機能部25の各要素の始動要求が含まれる。モード設定部19により設定可能な制御モードには、バッテリ11の劣化を抑制する劣化抑制モードが含まれる。モード設定部19及び機器操作部20は、ダッシュボードなど車室内の搭乗者が操作可能な箇所に配置されている。なお、モード設定部19、機器操作部20又はこれら両方は、車室内に配置されていなくてもよく、例えば、携帯機器(所謂スマートフォンなど)からテレマティクスサービスを介してモード設定、各要素の制御又はこれら両方を行える構成が採用されてもよい。
【0025】
車両1は、さらに、バッテリ11の充電電力を車両1の外部から取込み可能な充電コネクタ(電力取込部)31と、充電コネクタ31を介して車両1の外部の送電設備と通信を行う通信部33と、バッテリ11の充電制御を行う充電制御部34とを備える。充電コネクタ31と電力線Lbとの間には充電用リレーRjが設けられている。充電制御部34は、通信線Lcを介してBCU14及び車両制御部15と通信し、これらと連携してバッテリ11の充電の制御を行う。充電制御部34及びBCU14は、例えばECUである。充電制御部34は、送電設備が有する充電プラグ101が充電コネクタ31に接続されている状態で、通信部33を介して送電及び送電停止の要求を送電設備に送ることができる。送電の要求には、電力の大きさを規定する要求、及び、定電圧出力の要求などが含まれる。充電制御部34が、充電用リレーRjの切替えと、送電設備へ送電要求又は停止要求を行うことにより、充電プラグ101からのDC電圧の出力と停止、並びに、充電コネクタ31から電力線LbへのDC電圧の出力とその停止とを切り替えることができる。車両制御部15及び充電制御部34が、本発明に係る制御部の一例に相当する。
【0026】
なお、上記の充電コネクタ31の例では、DC電圧が入力される例を示した。しかし、このような充電コネクタ31の代わりに、あるいは、このような充電コネクタ31に加えて、AC電圧が入力されるAC充電コネクタを備えていてもよい。この場合、AC充電コネクタと電力線Lbとの間には、AC電源電圧を充電用のDC電圧に変換するコンバータが設けられる。そして、充電制御部34が、コンバータの始動と停止とを切り替えることで、電力線Lbへの充電用のDC電圧の出力とその停止とが切り替わる。
【0027】
<劣化抑制モード処理>
図2は、車両制御部が実行する劣化抑制モード処理の手順を示すフローチャートである。劣化抑制モード処理は、車両1の制御モードとして劣化抑制モードが設定され、車両1が停車しており、かつ、システムメインリレーRsが接続状態である場合に、車両制御部15が、他の制御処理と並行して実行する。
【0028】
劣化抑制モード処理が開始されると、車両制御部15は、充電制御部34を介して充電プラグ101が充電コネクタ31に接続されているか否かを判別する(ステップS1)。加えて、車両制御部15は、電源機能部25の動作中又は動作要求があるか判別する(ステップS2)。そして、両方の判別結果がYESであれば、車両制御部15は、処理を進め、いずれかの判別結果がNOであれば、処理をステップS1に戻す。
【0029】
ステップS1及びステップS2の判別結果がともにYESとなる状況には、バッテリ11の電力で電源機能部25を利用しているときにユーザが充電プラグ101を充電コネクタ31に接続した場合、充電プラグ101を接続してバッテリ11を充電しているときに電源機能部25の利用を開始した場合、充電プラグ101を接続してバッテリ11を充電しながら電源機能部25を利用している場合などが含まれる。
【0030】
両方の判別結果がYESであれば、次に、車両制御部15は、充電プラグ101からの入力最大電力と、動作中又は動作要求された電源機能部25の最大使用電力とを比較する(ステップS3)。入力最大電力は、例えば、充電制御部34が送電設備と通信を行って取得することができる。電源機能部25の最大使用電力は、予め電源機能部25の各要素の定格電力を、車両制御部15が制御データとして保持していることで、これらから求めることができる。車載インバータ23など、接続される電気機器により使用電力が変わるものについては定格容量などをその最大使用電力と定めておけばよい。ステップS3の判別の結果、入力最大電力が電源機能部25の最大使用電力以上であれば、車両制御部15は処理を進めるが、そうでなければ、処理をステップS1に戻す。なお、最大使用電力の代わりに、平均的な使用電力にマージン分を加えた値を適用してもよい。
【0031】
処理が進んだら、車両制御部15は、バッテリの充電率が、走行に支障の無いレベルを示す閾値(例えば80%)以上か否かを判別する(ステップS4)。この閾値は、満充電(100%)を示す値としてもよい。ステップS4の判別結果がYESであれば、車両制御部15は、処理を進めるが、NOであれば、処理をステップS1に戻す。
【0032】
ステップS1~S4の判別結果が全てYESとなって処理が進むと、車両制御部15は、バッテリ11に流れる電流を小さい値(例えばゼロ)に調整する(ステップS5)。この調整処理は、例えば、充電制御部34及び通信部33を介して、送電設備に出力電圧をバッテリ11の出力電圧まで下げる要求を送ることで達成される。あるいは、この調整処理は、車両制御部15へ充放電電流の情報をフィードバックしつつ、車両制御部15が、電力線Lbに接続されている他の電気機器(例えばヒータ等)の駆動の強弱を切り替えて、充放電電流が小さい値(例えばゼロ)になるように帰還制御を実行することで達成してもよい。
【0033】
なお、ステップS5の調整処理により目標とされるバッテリ11の電流値は、システムメインリレーRsを遮断したときに悪影響を及ぼさないレベルまで小さくされた電流値であれば、ゼロでなくてもよい。ステップS5の調整処理により、調整処理を行わない場合と比較して、バッテリ11の電流値が小さくなる。
【0034】
そして、調整処理によりバッテリ11の電流値が小さくなったら、車両制御部15は、システムメインリレーRsを切断状態に切り替える(ステップS6)。さらに、車両制御部15は、充電制御部34及び通信部33を介して、送電設備に定電圧出力の要求を行う(ステップS7)。
【0035】
ステップS6の切替えによって、電力線Lbを介した電力の伝送モードが、バッテリ11へ電力が入出力されることなく充電プラグ101から電源機能部25へ電力が伝送される直接伝送モードへ移行する。さらに、ステップS7の要求により、充電プラグ101から定電圧の出力が行われ、電源機能部25の使用電力が変動しても、充電プラグ101から変動に追従した電力出力が行われる。車両制御部15は、その後、各部の状態に応じて、直接伝送モードの継続、直接伝送モードの停止、他の伝送モードへの切替え等を行う直接伝送管理処理へ制御処理を移行する。
【0036】
<直接伝送モード>
図3は、実施形態の車両において、充電中に電源機能部の使用要求があった場合の各部の状態を示すタイムチャートである。このタイムチャートは、図2に示した劣化抑制モード処理により実現される制御の一例を示す。
【0037】
充電プラグ101が充電コネクタ31に接続された状態で、タイミングt1に機器操作部20を介して充電要求がなされると、先ず、プリチャージリレーRprとリレーRnとがオンにされて、電力線Lbの線間電圧が上昇される。その後、システムメインリレーRsが接続状態に切り替えられ、充電設備に送電要求が行われる。そして、充電プラグ101から電力出力がなされてバッテリ11へ充電電流が入力され、時間の経過に伴ってバッテリ11の充電率(SOC)が上昇する(期間T1)。
【0038】
充電の途中、ユーザが機器操作部20を介して電源機能部25の動作要求を行うと(タイミングt2)、図2の劣化抑制モード処理のステップS1、S2の判別結果がYESとなる。そして、図2のステップS3、S4の条件を満たす場合に、車両制御部15は、バッテリ11の入出力電流をゼロに調整した上で、システムメインリレーRsを切断状態に切り替える(タイミングt3)。そして、充電プラグ101から定電圧出力が行われて、バッテリ11へ電力が入出力されることなく、充電プラグ101から電源機能部25へ直接に電力が送られる直接伝送モード(期間T2)が実現される。
【0039】
図4は、比較例の車両において、充電中に電源機能部の使用要求があった場合の各部の状態を示すタイムチャートである。この比較例の車両は、充電中、バッテリ11が満充電となったら充電プラグ101からの出力が停止され、バッテリ11の充電率が充電再開閾値を下回ったら、充電プラグ101からの出力が再開されるように構成される。
【0040】
このような構成では、バッテリ11の充電要求(タイミングt11)があり、バッテリ11の充電が開始された(タイミングt12)後に、電源機能部25の動作要求(タイミングt13)があっても、そのままバッテリ11の充電処理が継続される。そして、バッテリ11が満充電となると、充電プラグ101からの出力が停止され、その後、バッテリ11の電力が電源機能部25により使用されることで、バッテリ11の充電率が低下する。そして、バッテリ11の充電率が充電再開閾値を下回ると、再び、充電プラグ101の出力が再開され、バッテリ11が満充電まで充電される。
【0041】
このように、比較例の構成では、充電中の電源機能部25の動作期間T11に、バッテリ11の充電と放電とが繰り返され、バッテリ11の劣化が進んでしまう。一方、本実施形態の車両1においては、図3に示したように、直接伝送モードにより、電源機能部25が動作していてもバッテリ11の放電と充電とが繰り返されず、バッテリ11の劣化が進んでしまうことを抑制できる。
【0042】
以上のように、本実施形態の車両1によれば、充電プラグ101からバッテリ11へ充電電力が送られ、かつ、電源機能部25が始動又はその動作が継続される状況で、車両制御部15が電力の伝送モードを直接伝送モードへ切り替えることができる。さらに、本実施形態の車両1によれば、バッテリ11の電力により電源機能部25が動作し、かつ、充電コネクタ31に充電プラグ101が接続された状況で、車両制御部15が電力の伝送モードを直接伝送モードへ切り替えることができる。そして、直接伝送モードへ切り替えられた場合に、電源機能部25の電力使用と、充電プラグ101からの送電とによって、バッテリ11の放電と充電とが繰り返されることが抑制される。したがって、このような状況でバッテリ11の充電率が大きく変動し、バッテリ11の劣化が進んでしまうことを抑制できる。
【0043】
さらに、本実施形態の車両1によれば、電力伝送モードを直接伝送モードへ切り替える際、車両制御部15は、バッテリ11へ流れる電流が小さくなる方へ調整する電流調整処理(図2のステップS5)を行った後に、システムメインリレーRsを切断状態に切り替える。システムメインリレーRsに大きな電流が流れている状態で、システムメインリレーRsが切断状態に切り替えられると、大きなサージ電圧等によりシステムメインリレーRsが損傷してしまう恐れがある。しかし、上記の電流調整処理により、バッテリ11の放電中又は充電中の状態から直接伝送モードへ移行する場合でも、システムメインリレーRsの損傷を防止できる。
【0044】
さらに、本実施形態の車両1によれば、電流調整処理(図2のステップS5)において、車両制御部15は、充電制御部34を介して送電設備へ出力電圧の要求を行うことで、バッテリ11に流れる電流を小さくする。この方式によれば、無駄な電力消費を低減でき、効率的な電力伝送モードの切替えを実現できる。さらに、本実施形態の車両1によれば、電流調整処理(図2のステップS5)において、車両制御部15は、電力線Lbに接続されている他の電気機器(例えばヒータ等)の駆動の強弱を切り替えることで、バッテリ11に流れる電流を小さくする。この方式によれば、高い応答性で電流を調整でき、システムメインリレーRsを切り替えるときに、そこに流れる電流を高い精度で小さい値に制御できる。
【0045】
さらに、本実施形態の車両1によれば、車両制御部15は、充電プラグ101から供給可能な電力が電源機能部25の使用電力以上であるという条件を満たす場合(図2のステップS3のYES)に、直接伝送モードへの切替えを行う。この構成では、充電プラグ101からの電力だけでは電源機能部25で電力不足となる場合、バッテリ11が電力線Lbに接続されたままとなる。したがって、不足となる電力をバッテリ11の電力で補って、電源機能部25の正常な動作を実現できる。
【0046】
さらに、本実施形態の車両1によれば、車両制御部15は、バッテリ11の充電率が閾値以上であるという条件を満たす場合(図2のステップS4のYES)に、直接伝送モードへの切替えを行う。この構成では、バッテリ11の充電率が低いときには、直接伝送モードへ切り替わらずに、バッテリ11が充電される。したがって、充電プラグ101が接続されている状況で、バッテリ11の充電率が低いまま充電が進まずに、ユーザに違和感を与えてしまうといった事態を回避できる。
【0047】
さらに、本実施形態の車両1によれば、直接伝送モードへの切替えは、車両1の制御モードとしてバッテリ11の劣化抑制モードが設定されている場合に行われる。したがって、ユーザは、バッテリ11の充電を優先するか、バッテリ11の劣化抑制を優先するか、制御モードの設定により選択することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、本発明に係る電源機能部には、図1の構成に限られず、接続機器の電源電圧として直流電圧を出力するDC/DCコンバータ、接続機器の電源電圧としてバッテリの電圧をそのまま出力するリレーなどが含まれていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、劣化抑制モードが選択されているときに、直接伝送モードへの移行が可能な構成を一例として説明したが、車両1の制御モードの選択によらずに、直接伝送モードへの移行を可能としてもよい。また、上記実施形態では、直接伝送モードへ移行する条件として、図2のステップS3とステップS4の条件を加えた例を示したが、これら両方又は一方の条件は省略されてもよい。また、上記実施形態では、直接伝送モードへ移行する際に、バッテリ11の入出力電流を抑制する調整処理を実行してから、システムメインリレーRsを切断状態に切り替える例を示した。しかし、システムメインリレーRsの耐久性が高い場合には、電流の調整処理が省略されてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、本発明に係る制御部として、車両制御部と充電制御部とを示し、これらが連携して電力の伝送モードの切替えを行う構成を示した。しかし、車両制御部と充電制御部の一方、又は、専用の制御部が、電力の伝送モードを切り替える制御を行ってもよい。また、上記実施形態では、電力取込部として有線で電力を取り込む構成を示したが、無線で電力を取り込む構成が適用されてもよい。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 車両
11 バッテリ
13 走行モータ
15 車両制御部
19 モード設定部
20 機器操作部
21 エアコン用インバータ
23 車載インバータ
25 電源機能部
31 充電コネクタ
33 通信部
34 充電制御部
101 充電プラグ
Lb 電力線
Rs システムメインリレー
Rpr プリチャージリレー
R1 プリチャージ素子
Rj 充電用リレー
図1
図2
図3
図4