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  • 特許-鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/08 20060101AFI20230331BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20230331BHJP
   C04B 5/00 20060101ALI20230331BHJP
   B09B 3/30 20220101ALI20230331BHJP
   B09B 3/20 20220101ALI20230331BHJP
【FI】
C04B28/08
C04B18/14 A
C04B18/14 F
C04B5/00 C
B09B3/30 ZAB
B09B3/20
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019102128
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020196636
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591146125
【氏名又は名称】日鉄スラグ製品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(74)【代理人】
【識別番号】100089462
【弁理士】
【氏名又は名称】溝上 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100129827
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 進
(72)【発明者】
【氏名】神保 正人
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 拓司
(72)【発明者】
【氏名】米田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】小川 英俊
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-308662(JP,A)
【文献】特開2015-193508(JP,A)
【文献】特開2017-031053(JP,A)
【文献】特開2015-193537(JP,A)
【文献】特開2007-106631(JP,A)
【文献】特開2014-043093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 5/00-28/36
B09B 3/00-3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法であって、
前記水和固化体は、製鋼スラグ、骨材としての高炉スラグ、結合材、及び水を原料とし、
そのうち、前記製鋼スラグは、MgOの含有量が8.5質量%以下の通常の製鋼スラグと、MgOの含有量が8.5質量%よりも多いMgO含有製鋼スラグを含み、これら通常の製鋼スラグとMgO含有製鋼スラグの各々に、湿潤環境下で水和反応を進行させるエージング処理を行い、当該エージング処理後の前記両製鋼スラグの粉化率を2.5%以下とした後、
前記エージング処理後の通常の製鋼スラグを55~60質量%、前記エージング処理後のMgO含有製鋼スラグを6~8質量%、前記高炉スラグを12~15質量%、前記結合材を12~15質量%、前記水を8~10質量%含有し、合計が100質量%となるように配合して混練し、
当該混練によって得られた混練物を7日間以上養生することを特徴とする鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法。
【請求項2】
前記湿潤環境下のエージング処理は、前記MgO含有製鋼スラグに、大気圧以上の圧力環境下で10日以上に亘って水蒸気を供給するものであることを特徴とする請求項1に記載の鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路盤材や鉄鋼スラグ水和固化体(以下、単に「水和固化体」ともいう。)の原材料として使用する鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼産業における環境対策の一つとして、製銑工程で生じる高炉スラグや、製鋼工程で得られる製鋼スラグを、路盤材や水和固化体の原材料として使用することが進められている。
【0003】
しかしながら、製鋼スラグの中でもMgOを多く含むものは、free-MgOの水和反応による膨張が生じる。さらに、水和反応速度が遅いため、長期に亘って膨張が進行しやすい。そのため、例えば非特許文献1の「附属書1 鉄鋼スラグ水和固化体用製鋼スラグ」において、水和固化体に用いる製鋼スラグとしては、MgO含有量が8.5質量%以下(粉化率が2.5%以下)とされている。
【0004】
そのため、路盤材や水和固化体の原材料として、従来は、MgOの含有割合の少ない製鋼スラグを利用していた(例えば特許文献1の段落0006、特許文献2の請求項1、段落0007を参照)。
【0005】
つまり、従来は、MgO含有製鋼スラグは、水和固化体の原材料としての使用が難しく、概ね埋め立て等に使用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-323403号公報
【文献】特開2002-308662号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】財団法人沿岸技術研究センター編(平成20年2月)「鉄鋼スラグ水和固化体技術マニュアル(改訂版)」財団法人沿岸技術研究センター
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、製鋼スラグの中でもMgOを多く含むMgO含有製鋼スラグは、水和固化体の原材料としての使用が難しかったという点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、製鋼スラグの中でもMgOを多く含むMgO含有製鋼スラグを、水和固化体の原材料として使用可能とするための製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0010】
発明者らは、MgO含有製鋼スラグを水和固化体の原料として使用するための製造方法について検討を重ねた結果、以下の知見を得た。
【0011】
・MgO含有製鋼スラグは、一般的な製鋼スラグよりも、長期間エージングして水和反応を十分進行させることで、膨張が抑制されること。
・長期間エージングした後のMgO含有製鋼スラグを原材料とする水和固化体は、膨張安定性試験において有害なひび割れを有しないこと。
・MgO含有製鋼スラグの配合量を所定の範囲とすることで、MgO含有製鋼スラグを添加しないものよりも強度の向上が認められること。
【0012】
本発明は、発明者らの上記知見に基づいてなされたもので、本発明方法によって製造する鉄鋼スラグ水和固化体は、製鋼スラグ、高炉スラグ、結合材、及び水を原料としている。
【0013】
前記原料のうち、前記製鋼スラグは、MgOの含有量が8.5質量%以下の製鋼スラグと、MgOの含有量が8.5質量%よりも多い製鋼スラグを含んでいる(以下、MgOの含有量が8.5質量%よりも多い製鋼スラグを「MgO含有製鋼スラグ」といい、これと対比する意味でMgOの含有量が8.5質量%以下の製鋼スラグを「通常の製鋼スラグ」という。)。そして、これら通常の製鋼スラグとMgO含有製鋼スラグの各々に、湿潤環境下で水和反応を進行させるエージング処理を行い、エージング処理後の両製鋼スラグの粉化率を2.5%以下とする。なお、粉化率とは、非特許文献1の「附属書3 製鋼スラグの粉化率試験方法」に記載の試験方法(以下、単に「粉化率試験」ともいう。)により求められる粉化率(P)をいう。
【0014】
その後、前記エージング処理後の通常の製鋼スラグを55~60質量%、前記エージング処理後のMgO含有製鋼スラグを6~8質量%、高炉スラグを12~15質量%、結合材を12~15質量%、水を8~10質量%含有し、合計が100質量%となるように配合して混練し、当該混練によって得られた混練物を7日間以上養生することが最も主要な特徴である。
【0015】
前記本発明方法では、MgO含有製鋼スラグを、通常の製鋼スラグよりも長期間エージングして水和反応を十分進行させるので、MgO含有製鋼スラグの膨張が抑制され、水和固化体の原料として使用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明方法によれば、MgO含有製鋼スラグを水和固化体の原料として使用することができる。また、長期間エージングした後のMgO含有製鋼スラグを原材料に適量含むことで、水和固化体の強度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】鉄鋼スラグ水和固化体中のMgO含有製鋼スラグの配合量と、28日間養生した後の一軸圧縮強度を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)以下、本発明の鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法を詳細に説明する。
【0019】
〔原料〕
本発明方法によって製造する鉄鋼スラグ水和固化体は、製鋼スラグ、高炉スラグ、結合材、及び水を原料として使用する。以下、これらの原料について説明する。
【0020】
A)製鋼スラグ
製鋼スラグとは、製鋼工程で得られるスラグであり、この製鋼スラグは、鉄鋼スラグ水和固化体の骨材として使用されている。しかしながら、従来は、例えば特許文献1,2に開示されているように、MgO含有量が0~6質量%の製鋼スラグが使用されている。
【0021】
これに対して、本発明では、このようなMgO含有量が少ない製鋼スラグに加えて、MgO含有量が8.5質量%よりも多いMgO含有製鋼スラグも使用する。
【0022】
A-1)通常の製鋼スラグ
本発明では、MgO含有量が8.5質量%よりも多いMgO含有製鋼スラグと区別するため、MgO含有量が8.5質量%以下のものを通常の製鋼スラグという。代表的なものは、溶鋼を溶製するために利用する精錬容器で形成されたスラグであり、例えば溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ、二次精錬スラグ、電気炉スラグ等が挙げられ、これらを混合したものでも良い。
【0023】
通常の製鋼スラグは、排出後、屋外の冷却ヤードでの大気放冷等により冷却される。その後、破砕されて有用成分を回収された後、粒度調整のために破砕され、分級される。鉄鋼スラグ水和固化体の原料として使用する通常の製鋼スラグの粒度は40mm以下であることが好ましい。
【0024】
A-2)MgO含有製鋼スラグ
MgO含有製鋼スラグは、製鋼工程でMgO含有量が8.5質量%よりも多い、例えば粉状の製鋼スラグである。鉄鋼スラグ水和固化体の原料として使用するMgO含有製鋼スラグの粒度は40mm以下であることが好ましい。
【0025】
このMgO含有製鋼スラグに含まれているfree-MgOは、水との反応でMg(OH)2となる。この反応は体積膨張を伴う。また、この水和反応の速度が比較的遅い。したがって、MgOを多量に含有する製鋼スラグを用いて鉄鋼スラグ水和固化体を製造すると、水和反応による体積膨張が比較的長期間に亘って進行し、水和固化体の割れ等が発生するおそれがある。そのため、MgOを多量に含有する製鋼スラグを水和固化体の原材料として使用することは避けられていた。
【0026】
しかしながら、発明者らの検討の結果、後述する適切なエージング処理を行うことで、鉄鋼スラグ水和固化体の製造に使用できる。
【0027】
B)高炉スラグ
高炉スラグは、例えば、高炉で生成されたスラグを急速水冷して得られる高炉水砕スラグである。高炉水砕スラグの粒度は、公称目開きが5mmのふるいを通過する質量百分率が100%であって、従来より、必要に応じて加工処理を施して骨材(主に細骨材)として使用されている。
【0028】
鉄鋼スラグ水和固化体の製造に使用する細骨材は、JIS A 5011-1「コンクリート用スラグ骨材-第1部:高炉スラグ骨材」に適合したものでも良いが、製造する鉄鋼スラグ水和固化体の品質が損なわれなければ、前記工業規格に適合したものに限らない。
【0029】
C)結合材
鉄鋼スラグ水和固化体を製造する際に使用する結合材は、シリカ含有物質及びポラゾン反応性を有する材料を使用することが好ましい。結合材としては、高炉スラグ微粉末が代表的であり、その他として、高炉セメントやポルトランドセメント等がある。省資源の観点からは、高炉セメント、高炉スラグ微粉末がより好ましい。
【0030】
高炉スラグ微粉末は、高炉水砕スラグを粉砕加工した結合材であり、JIS A 6206(コンクリート用高炉スラグ微粉末)に定められている通り、粉末度に応じて4000,6000,8000の3種類がある。どの粉末度の高炉スラグ微粉末を結合材として用いてもよい。
【0031】
D)水
通常の工業用水を使用する。
【0032】
前記原料のうち、A)で説明した両製鋼スラグに、以下のエージング処理を施す。
【0033】
〔エージング処理〕
エージング処理とは、製鋼スラグの水和反応を進行させる処理である。本発明では、両製鋼スラグにエージング処理を施すことによって、粉化率を2.5%以下にする。
【0034】
具体的な処理条件としては、通常の製鋼スラグでは、例えば大気圧下で5日間~1週間程度に亘って水蒸気を供給する。
【0035】
一方、MgO含有製鋼スラグでは、通常の製鋼スラグよりも長期間に亘ってエージング処理を実施する。例えば大気圧下で10日~2週間程度に亘って水蒸気を供給する。MgO含有製鋼スラグに長期間に亘って十分なエージング処理を施すことで、MgO含有製鋼スラグを水和固化体の原料として使用することができる。
【0036】
製鋼スラグへの水蒸気の供給は、表面からの供給に加えて、例えば特開2009-280445号公報に記載されたように、製鋼スラグを容器に入れて製鋼スラグの内部にも蒸気配管を通して水蒸気を供給してもよい。その際、製鋼スラグを装入する容器を耐圧容器とし、大気圧よりも高い圧力で水蒸気を供給してもよい。エージング処理後のMgO含有製鋼スラグは、通常、粒が細かくなっていることが多い。
【0037】
〔混練処理〕
本発明では、前記A-1)で説明したエージング処理後の通常の製鋼スラグを55~60質量%、前記A-2)で説明したエージング処理後のMgO含有製鋼スラグを6~8質量%、前記前記B)で説明した高炉スラグを12~15質量%、前記前記C)で説明した結合材を12~15質量%、前記前記D)で説明した水を8~10質量%含有し、合計が100質量%となるように配合して混練し、当該混練によって得られた混練物を7日間以上養生する。なお、前記原料に加えて、さらにAE減水剤等を適宜配合してもよい。
【0038】
すなわち、本発明の鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法は、
製鋼スラグ、高炉スラグ、結合材、及び水を原料とし、
そのうち、前記製鋼スラグは、MgOの含有量が8.5質量%以下の通常の製鋼スラグと、MgOの含有量が8.5質量%よりも多いMgO含有製鋼スラグを含み、これら通常の製鋼スラグとMgO含有製鋼スラグの各々に、湿潤環境下で水和反応を進行させるエージング処理を行い、粉化率を2.5%以下とした後、
前記エージング処理後の通常の製鋼スラグを55~60質量%、前記エージング処理後のMgO含有製鋼スラグを6~8質量%、前記高炉スラグを12~15質量%、前記結合材を12~15質量%、前記水を8~10質量%含有し、合計が100質量%となるように配合して混練し、
当該混練によって得られた混練物を7日間以上養生することを特徴としたものである。
【0039】
(2)次に、本発明の実施例について説明する。
(2-1)実施例1
〔原料〕
A-1)通常の製鋼スラグ
使用した製鋼スラグは、転炉の精錬工程で得られたもので、MgOを4質量%含有し、粒度は0~30mmであった。
【0040】
A-2)MgO含有製鋼スラグ
MgO含有製鋼スラグとして、AOD炉での二次精錬工程で得られたものを使用した。この製鋼スラグは、CaO、MgOをそれぞれ40質量%、13質量%含有し、粒度は0~30mmであった。
【0041】
B)高炉スラグ
使用した高炉スラグは、高炉水砕スラグで、その粒度は0~5mmであった。
【0042】
C)結合材
結合材には、高炉セメントB種を使用した。
D)水
工業用水を使用した。
その他)AE減水剤
市販のAE減水剤を使用し、高炉セメントの重量の0.04%に相当する量を添加した。
【0043】
〔エージング処理〕
・通常の製鋼スラグ
屋外でスラグに水蒸気を吹きかけて、スラグの温度が100℃になるまで昇温した。その後、100℃の温度を5日間保持し、1日かけて降温した(エージング条件1)。エージング完了後の通常の製鋼スラグの粉化率は0.2%であった。一方、エージング処理を行わなかった通常の製鋼スラグの粉化率は0.7%であった。
【0044】
・MgO含有製鋼スラグ
屋外でスラグに水蒸気を吹きかけて、スラグの温度が100℃になるまで昇温した。その後、100℃の温度を10日間を保持してから、2日かけて降温した(エージング条件2)。エージング完了後のMgO含有製鋼スラグの粉化率は1.1%であった。一方、エージング処理を行わなかったMgO含有製鋼スラグの粉化率は18.4%であった。
【0045】
〔混練処理〕
前記原料を、下記表1に示す割合で混合して混練し、当該混練によって得られた混練物を7日間と28日間養生した2種類の水和固化体を作成した。
【0046】
【表1】
【0047】
作成した前記2種類の水和固化体のJIS A 1108(2006)に従う圧縮強度と、膨張安定性の性能調査を行った。これらの性能調査結果を下記表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
case1はMgO含有製鋼スラグを配合しない場合であり、性能の基準とした。
case2は本発明の要件をすべて満たす実施例、case3~7は本発明の何れかの要件を満たさない本発明の比較例である。
【0050】
膨張安定性試験について、case2~4は、何れも全く問題のないレベルであった。一方、case2~4と同じ原料構成ではあるものの、MgO含有製鋼スラグのエージング処理をしていないcase5~7は、膨張安定性試験によりひび割れが発生した。
【0051】
一軸圧縮強度について、case2は、養生期間が7日間の場合も28日間の場合も、基準とするcase1よりも大きな値となった。
【0052】
一方、case3は、養生期間が7日間の場合の一軸圧縮強度は、基準とするcase1と大差のない値であった。養生期間が28日間の場合は、基準とするcase1よりもやや小さい値となった。ただし、この一軸圧縮強度の値は、実用上は問題のないレベルである。
【0053】
また、case5~7の一軸圧縮強度は、case5の養生期間が7日間の場合のみ、基準とするcase1と同等の値であった。それ以外は、養生期間が7日間、28日間共に基準とするcase1よりも小さい値となった。
【0054】
(2-2)実施例2
〔原料〕
A-1)通常の製鋼スラグ
製鋼スラグは、実施例1で使用したもの(製鋼スラグA)と、MgOが5質量%含有され、粒度は0~30mmのもの(製鋼スラグB)と、MgOが4質量%含有され、粒度は0~30mmのもの(製鋼スラグC。製鋼スラグAとは別の機会に得られたもの)の何れかを使用した。
【0055】
A-2)MgO含有製鋼スラグ
B)高炉スラグ
C)結合材
D)水
は、いずれも実施例1と同じものを使用した。
【0056】
〔エージング処理〕
通常の製鋼スラグは実施例1で説明したエージング処理1を行った。また、MgO含有製鋼スラグは実施例1で説明したエージング処理2を行った。
【0057】
〔混練処理〕
前記原料を、下記表3に示す割合で混合して混練し、当該混練によって得られた混練物を7日間と28日間養生した2種類の水和固化体を作成した。
【0058】
【表3】
【0059】
作成した前記2種類の水和固化体のJIS A 1108(2006)に従う圧縮強度の調査を行った。これらの調査結果を下記表4及び図1に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
case11は、実施例1のcase1と同じ原料構成及び配合割合の例であって、MgO含有製鋼スラグを配合しない場合である。またcase16およびcase19は、通常の製鋼スラグを製鋼スラグAからそれぞれ製鋼スラグBまたは製鋼スラグCに変更したほかはcase11とほぼ同じ原料構成及び配合割合の例である。
【0062】
case12は、実施例1のcase2と同じ原料構成及び配合割合の例である。また、case17およびcase20は、通常の製鋼スラグを製鋼スラグAからそれぞれ製鋼スラグBまたは製鋼スラグCに変更したほかはcase12とほぼ同じ原料構成及び配合割合の例である。
【0063】
一方、case13は、実施例1のcase3と同じ原料構成及び配合割合の例である。また、case18は、通常の製鋼スラグを製鋼スラグAから製鋼スラグBに変更したほかはcase13とほぼ同じ原料構成及び配合割合の例である。
【0064】
また、case14は、case13から通常の製鋼スラグを含ませずに、製鋼スラグをMgO含有製鋼スラグのみとした例である。また、case15は、case14からさらに高炉水砕スラグを含有しなかったもので、その分だけMgO含有製鋼スラグの配合割合をcase14より増加させた例である。
【0065】
表4及び図1より明らかなように、case12,17,20は、養生期間が7日間の場合も28日間の場合も、何れも一軸圧縮強度は、MgO含有製鋼スラグを配合しないcase11,16よりも大きな値となった。
【0066】
本発明は上記した例に限らないことは勿論であり、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0067】
例えば、明細書で説明した実施例は本発明の好ましい態様であって、実施例で説明した原料構成やその配合割合に限定されるものではなく、請求項で規定する要件を満たすものであれば、本発明の効果を奏することは言うまでもない。
【0068】
また、明細書で説明した実施例では、1種類の通常の製鋼スラグ、MgO含有製鋼スラグを使用しているが、通常の製鋼スラグ、MgO含有製鋼スラグは複数種類を使用してもよい。
【0069】
また、本発明で規定しない要件、例えば原料の粒度なども、明細書で説明した実施例に記載した範囲に限定されないことは言うまでもない。
図1