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特許7254009統合されたセル内抵抗を有する一次アルカリ電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】統合されたセル内抵抗を有する一次アルカリ電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 6/08 20060101AFI20230331BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20230331BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20230331BHJP
【FI】
H01M6/08 A
H01M4/06 D
H01M4/06 T
H01M50/409
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019200253
(22)【出願日】2019-11-01
(62)【分割の表示】P 2016574134の分割
【原出願日】2015-06-16
(65)【公開番号】P2020035756
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2019-11-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】62/015,276
(32)【優先日】2014-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】315014051
【氏名又は名称】デュラセル、ユーエス、オペレーションズ、インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096921
【弁理士】
【氏名又は名称】吉元 弘
(72)【発明者】
【氏名】マイケル、ポジン
(72)【発明者】
【氏名】ブリアンナ、ローズ、デロイ
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ、イサエブ
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】土屋 知久
【審判官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0154542(US,A1)
【文献】国際公開第2012/049720(WO,A1)
【文献】特開2001-256948(JP,A)
【文献】特開2004-95475(JP,A)
【文献】特開2009-93947(JP,A)
【文献】特開2006-49797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M6/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次AAサイズ・アルカリ電池であって、
電気化学的活性アノード材料を備えるアノードと、
電気化学的活性カソード材料を備えるカソードと、
水酸化物を備える電解質と、
前記アノードと前記カソードとの間のセパレータと
22℃で9mΩ未満の統合されたセル内イオン抵抗(R)と
を備え、
前記電気化学的活性カソード材料は、高原子価ニッケル化合物、脱リチウム化(delithiated)された層状リチウムニッケル酸化物、部分的に脱リチウム化された層状酸化ニッケル酸化物、又はこれらの組み合わせを備える、一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項2】
前記電気化学的活性アノード材料は亜鉛を有し、亜鉛は少なくとも.3グラムの亜鉛のアノード・ローディングを有する、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項3】
前記電気化学的活性アノード材料は亜鉛を有し、亜鉛は少なくとも.0グラムの亜鉛のアノード・ローディングを有する、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項4】
前記電気化学的活性アノード材料は亜鉛を有し、亜鉛は少なくとも.3グラムの亜鉛のアノード・ローディングを有する、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項5】
前記電気化学的活性アノード材料は亜鉛を有し、亜鉛は少なくとも.6グラムの亜鉛のアノード・ローディングを有する、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項6】
前記電気化学的活性アノード材料は亜鉛を有し、亜鉛は少なくとも.0グラムの亜鉛のアノード・ローディングを有する、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項7】
前記電気化学的活性アノード材料は亜鉛を有し、亜鉛は少なくとも.5グラムの亜鉛のアノード・ローディングを有する、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項8】
前記電気化学的活性カソード材料は電解二酸化マンガンをさらに備える、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項9】
前記一次AAサイズ・アルカリ電池は、22℃で2mΩ未満の統合されたセル内電子抵抗(R)を更に備える、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項10】
前記一次AAサイズ・アルカリ電池は、22℃で7mΩ未満のオーム抵抗(R)を更に備える、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項11】
前記電気化学的活性カソード材料は、8m/gから8m/gのBET表面積を有する、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項12】
前記カソードは炭素粒子を備え、前記炭素粒子は、前記カソードの.0重量パーセントから0重量パーセントを備える、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項13】
前記セパレータは、.30g/cmから.40g/cmの密度を備える、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項14】
前記電気化学的活性アノード材料は、0μmから00μmの粒子サイズを有する、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項15】
前記電気化学的活性アノードは、.040m/gから.060m/gのBET表面積を有する、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項16】
前記統合されたセル内イオン抵抗(R は、22℃で0mΩから6.5mΩである、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項17】
前記カソードは、5%から5%のカソード多孔率を有する、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項18】
前記水酸化物は、水酸化カリウムを含む、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項19】
前記水酸化物は、前記電池内の全ての前記電解質の重量に基づいて5%から0%を含む、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項20】
前記セパレータは、0%より大きい多孔率を有する、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【請求項21】
前記電気化学的活性アノード材料は亜鉛を有する、請求項1に記載の一次AAサイズ・アルカリ電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、統合されたセル内抵抗を有する一次アルカリ電池およびこのようなセル内の統合された抵抗を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学的セルまたは電池は、電気エネルギー源として一般に使用されている。電池は、典型的にはアノードと呼ばれる負電極と、典型的にはカソードと呼ばれる正電極とを含む。アノードは、酸化されることができる電気化学的活性アノード材料を含む。カソードは、還元されることができる電気化学的活性カソード材料を含む。電気化学的活性アノード材料は、電気化学的活性カソード材料を還元することができる。セパレータがアノードとカソードとの間に配置される。電池の構成要素は、典型的は金属から作られる缶または筐体内に配置される。
【0003】
電池が電子装置内で電気エネルギー源として使用されるとき、アノードおよびカソードへの電気的接触がなされ、電子が装置を通って流れることを許容し、それぞれの酸化および還元反応が起こって電子装置に電力を供給することを可能にする。電解質は、アノード、カソード、およびセパレータと接触している。電解質は、放電中に電池全体の電荷のバランスを維持するために、アノードとカソードとの間のセパレータを通って流れるイオンを含む。
【0004】
玩具、リモコン、オーディオ装置、懐中電灯、デジタルカメラおよび周辺撮像機器、電子ゲーム、歯ブラシ、ラジオ、ならびに時計などの現代の電子装置への給電により適する電池を作成する必要性が高まってきている。この必要性に応えるために、電池は、容量および耐用寿命を増加させるために、電気化学的活性アノードおよび/またはカソード材料のより高いローディング(loading)を含むことができる。しかしながら、電池は、一定の外部寸法および制約された内部体積を有するAA、AAA、AAAA、C、およびDの電池サイズなどの共通サイズとしても供給される。より性能のよい電池を達成するために電気化学的活性材料のローディングだけを増加させることは、したがって限定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
給電能力および耐用寿命などの全体的な電池性能を実質的に上昇させるために最適化された統合されたセル内抵抗を有するアルカリ電池を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態において、本発明は、一次AAサイズ・アルカリ電池を対象とする。一次AAサイズ・アルカリ電池は、アノードと、カソードと、電解質と、アノードとカソードとの間のセパレータとを含む。アノードは、電気化学的活性アノード材料を含む。カソードは、電気化学的活性カソード材料を含む。電解質は、水酸化カリウムを含む。一次AAサイズ・アルカリ電池は、22℃で約39mΩ未満の統合されたセル内イオン抵抗(R)を有する。電気化学的活性カソード材料は電解二酸化マンガンを含む。電解二酸化マンガンは、約2.9g/cmから約3.45g/cmの固有のカソード・ローディングを有する。セパレータは、75%より大きい多孔率を有する。
【0007】
別の実施形態において、本発明は、電池の統合されたセル内抵抗を決定するための方法を対象とする。この方法は、電解質を用意するステップを含む。この方法は、温度tにおける電解質の抵抗Rel-te(ti)を測定するステップも含む。この方法は、温度tにおける電解質の抵抗Rel-te(tj)を測定するステップを更に含む。この方法は、温度tにおける電解質の抵抗Rel-te(ti)の、温度tにおける電解質の抵抗Rel-te(tj)に対する比率を、式6によって計算するステップも含む。この方法は、電解質を含む電池を用意するステップを更に含む。この方法は、温度tにおける電池のオーム抵抗Rを測定するステップも含む。この方法は、温度tにおける電池のオーム抵抗Rを測定するステップを含む。更に、この方法は、電池の統合されたセル内電子抵抗Rを式7によって計算するステップを含む。この方法は、温度tにおける電池の統合されたセル内イオン抵抗Ri(ti)を式8によって計算するステップも含む。この方法は、温度tにおける電池の統合されたセル内イオン抵抗Ri(tj)を式8によって計算するステップを含む。
【0008】
本明細書は、本発明を形成すると考えられる主題を詳しく指摘して明瞭に請求する特許請求の範囲によって結ばれるが、本発明は、添付の図面と併せてなされる下記の説明によって、よりよく理解されると確信される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の統合されたセル内抵抗を有する一次アルカリ電池の断面図である。
図2】本発明の統合されたセル内抵抗を計算するための方法の実施形態のプロセスフロー図である。
図3】本発明の電圧インジケータを含み統合されたセル内抵抗を有する一次アルカリ電池の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
電気化学的セルまたは電池は、一次または二次であってよい。一次電池は、例えば空になるまで1回だけ放電し、その後に廃棄されると意味される。一次電池は、例えば、David Linden,Handbook of Batteries(4th ed.2011)に説明されている。二次電池は、再充電されるように意図される。二次電池は、多数回、例えば、50回以上、100回以上、またはそれ以上の放電および再充電が可能である。二次電池は、例えば、David Linden,Handbook of Batteries(4th ed.2011)に説明されている。したがって、電池は、様々な電気化学的対および電解質の組み合わせを含むことができる。本明細書において提供される説明および実施例は、概して、一次アルカリ電気化学的セル、または電池を対象とするが、本発明は、水性系、非水性系、イオン液体系または固体系の一次電池および二次電池の両方に適用されることを理解されたい。したがって、前述の系の一次電池および二次電池は、本出願の範囲内にあり、本発明は、任意の特定の実施形態に限定されない。
【0011】
図1を参照すると、カソード12と、アノード14と、セパレータ16と、ハウジング18と含む一次アルカリ電気化学的セルまたは電池10が図示されている。電池10は、集電体20と、シール22と、端部キャップ24とも含む。端部キャップ24は、電池10の負端子として機能する。正ピップ(positive pip)26が、電池10の端部キャップ24とは他端に位置している。正ピップ26は、電池10の正端子として機能することができる。電解質溶液が、電池10の全体に分散されている。カソード12、アノード14、セパレータ16、電解質、集電体20、およびシール22は、ハウジング18内に収容されている。電池10は、例えばAA、AAA、AAAA、C、またはDサイズのアルカリ電池であってよい。
【0012】
ハウジング18は、一次アルカリ電池において広く使用されている任意の従来の種類のハウジングであってよく、例えば、冷間圧延鋼またはニッケルめっき冷間圧延鋼などの任意の適切な母材で作られてよい。ハウジング18は、円筒形状を有してよい。ハウジング18は、任意の他の適切な非円筒形状であってよい。例えば、ハウジング18は、長方形、正方形または角柱形状などの少なくとも2つの平行な板部を備える形状を有してよい。
ハウジング18は、冷間圧延鋼またはニッケルめっき鋼などの母材のシートから、例えば、深絞りされてよい。ハウジング18は、例えば、円筒形状に絞られてよい。ハウジング18は、少なくとも1つの開放端部を有してよい。ハウジング18は、それらの間に側壁を有する閉鎖端部および開放端部を有してよい。ハウジング18の側壁の内面は、ハウジング18の側壁の内面とカソード12などの電極との間に低電気接触抵抗を提供する材料により処理されてよい。ハウジング18の側壁の内面は、例えばハウジング18の側壁の内側面とカソード12との間の接触抵抗を減少させるように、例えば、ニッケル、コバルトでめっきされてもよく、および/または炭素含有塗料で塗布されてもよい。
【0013】
集電体20は、当技術分野における任意の既知の方法によって特定の電池設計のための任意の適切な形状に作られてよい。集電体20は、例えば、爪のような形状を有してよい。集電体20は、柱状本体と柱状本体の一方の端部に位置するヘッドとを有してよい。集電体20は、金属、例えば亜鉛、銅、真ちゅう、銀、または任意のその他の適切な材料で作られてよい。集電体20は、任意に、集電体20と例えばアノード14との間に低電気接触抵抗を提供する、スズ、亜鉛、ビスマス、インジウム、または別の適切な材料でめっきされてよい。めっき材料は、集電体20がアノード14によって接触されたときにガス形成を抑制する能力を呈してもよい。
【0014】
シール22は、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエーテルウレタンなどのポリマー、ポリマー複合体、およびこれらの混合物を所定の寸法の形状に射出成形することによって作成されてよい。シール22は、例えば、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン11、ポリプロピレン、ポリエーテルウレタン、コポリマー、複合体、およびこれらの混合物から作られてよい。例示的な射出成形方法は、コールドランナー法およびホットランナー法の両方を含む。シール22は、可塑剤、結晶性核剤、酸化防止剤、離型剤、潤滑剤、および帯電防止剤などの他の既知の機能材料を含有してよい。シール22はまた、シーラントで被覆されてもよい。シール22は、電池10内での使用の前に加湿されてよい。シール22は、例えば、シール材料に応じて約1.0重量パーセントから約9.0重量パーセントの湿分含量を有してよい。集電体20は、シール22に挿入され、シール22を貫通してよい。
【0015】
端部キャップ24は、それぞれの電池を閉鎖するのに十分な任意の形状に形成されてよい。端部キャップ24は、例えば、円筒形状または角柱形状を有してよい。端部キャップ24は、適切な寸法を有した所望の形状に材料をプレス加工することによって形成されてよい。端部キャップ24は、電池10の放電中に電子を伝導するであろう任意の適切な材料から作られてよい。端部キャップ24は、例えば、ニッケルめっき鋼またはスズめっき鋼から作られてよい。端部キャップ24は、集電体20に電気的に接続されてよい。端部キャップ24は、例えば、集電体20に溶接されることによって、集電体20に電気的に接続することができる。端部キャップ24は、例えば、装置内の電池10の深放電または逆転中などに通気口の断裂をもたらすことのある電池10内でのガス発生イベント中に端部キャップ24の下で起こる可能性がある任意のガス圧力を排出させるために、穴などの1つまたは複数の開口も含んでよい。
【0016】
カソード12は、1つまたは複数の電気化学的活性カソード材料を含む。電気化学的活性カソード材料として、酸化マンガン、二酸化マンガン、電解二酸化マンガン(EMD)、化学二酸化マンガン(CMD)、ハイパワー電解二酸化マンガン(HPEMD)、ラムダ二酸化マンガン、ガンマ二酸化マンガン、ベータ二酸化マンガンおよびこれらの混合物を挙げることができる。他の電気化学的活性カソード材料として、酸化銀、酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、酸化銅、ヨウ素酸銅などの銅塩、酸化ビスマス、高原子価ニッケル化合物、高原子価鉄化合物、酸素、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。酸化ニッケルは、水酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、オキシ水酸化コバルトでコーティングされたオキシ水酸化ニッケル、脱リチウム化(delithiated)された層状リチウムニッケル酸化物、部分的に脱リチウム化された層状酸化ニッケル、およびこれらの組み合わせを含んでよい。水酸化ニッケルまたはオキシ水酸化ニッケルは、ベータ-オキシ水酸化ニッケル、ガンマ-オキシ水酸化ニッケル、ならびに/またはベータ-オキシ水酸化ニッケルおよび/もしくはガンマ-オキシ水酸化ニッケルの連晶(intergrowth)を含んでよい。オキシ水酸化コバルトでコーティングされたオキシ水酸化ニッケルは、オキシ水酸化コバルトでコーティングされたベータ-オキシ水酸化ニッケル、オキシ水酸化コバルトでコーティングされたガンマ-オキシ水酸化ニッケル、ならびに/またはオキシ水酸化コバルトでコーティングされたベータ-オキシ水酸化ニッケルおよびガンマ-オキシ水酸化ニッケルの連晶を含んでよい。高原子価ニッケル化合物は、例えば、四価ニッケルを含んでよい。高原子価鉄化合物は、例えば、六価鉄を含んでよい。
【0017】
カソード12は、炭素粒子などの導電性添加物およびバインダーを含んでよい。炭素粒子がカソードに含まれることで、電子がカソード中を流れることが可能になる。炭素粒子は、膨張黒鉛および天然黒鉛などの黒鉛、グラフェン、単層ナノチューブ、多層ナノチューブ、炭素繊維、炭素ナノ繊維、およびこれらの混合物であってよい。カソード内の炭素粒子の量は比較的少ない、例えば、約10%未満、約7.0%未満、約4.25%未満、約3.75%未満、約3.5%未満、または更には約3.25%未満、例えば約2.0%から約3.25%であることが好ましい。炭素レベルが低いほど、カソード12の体積を増やすことなく、または完成品の電池10の空隙の体積(セル内でガスが生成されたときに内圧が過度に上昇することを防止するために、特定のレベル以上に維持されなければならない)を減らすことなく、カソード12内の電気化学的活性材料のより高いローディングを含むことができる。適切な膨張黒鉛は、例えば、TIMCAL Carbon & Graphite(ボディオ、スイス)から入手できるBNB-90黒鉛でよい。
【0018】
カソード12内で使用されることができるバインダーの例として、ポリエチレン、ポリアクリル酸、またはPVDFもしくはPTFEなどのフッ化炭素樹脂が挙げられる。ポリエチレン・バインダーの例が、COATHYLENE HA-1681(HoechstまたはDuPontから入手可能)という商標名で販売されている。その他のカソード添加剤の例は、例えば、米国特許第5,698,315号、米国特許第5,919,598号、米国特許第5,997,775号、および米国特許第7,351,499号に記載されている。
【0019】
カソード12内の電気化学的活性カソード材料の量は、カソード・ローディングと称されることができる。カソード12のローディングは、電池10内で使用される電気化学的活性カソード材料および電池10のセル・サイズに応じて、変化してよい。例えば、EMD電気化学的活性カソード材料を有するAAサイズ電池は、少なくとも約9.0グラムのEMDのカソード・ローディングを有することができる。カソード・ローディングは、例えば少なくとも約9.5グラムのEMDであってよい。カソード・ローディングは、例えば約9.7グラムから約11.5グラムのEMDであってよい。カソード・ローディングは、約9.7グラムから約11.0グラムのEMDであってよい。カソード・ローディングは、約9.8グラムから約11.2グラムのEMDであってよい。カソード・ローディングは、約9.9グラムから約11.5グラムのEMDであってよい。カソード・ローディングは、約10.4グラムから約11.5グラムのEMDであってよい。AAAサイズ電池については、カソード・ローディングは、約4.0グラムから約6.0グラムのEMDであってよい。AAAAサイズ電池については、カソード・ローディングは、約2.0グラムから約3.0グラムのEMDであってよい。Cサイズ電池については、カソード・ローディングは、約25.0グラムから約29.0グラムのEMDであってよい。Dサイズ電池については、カソード・ローディングは、約54.0グラムから約70.0グラムのEMDであってよい。
【0020】
電気化学的活性カソード材料などのカソード成分、炭素粒子、およびバインダーは、水性水酸化カリウム電解質などの液体と組み合わされ、ブレンドされ、完成品の電池の製造において使用するペレットにプレス加工されてよい。最適なカソードペレット処理のためには、概して、カソード材料が、約2.5%から約5%、より好ましくは約2.8%から約4.6%の範囲の水分レベルを有することが好ましい。ペレットは、電池製造プロセス中にハウジング内に配置された後で、典型的には、均一なカソードを形成するために再圧縮される。
【0021】
概して、カソード12は、非膨張黒鉛を実質的に含まないことが好ましい。非膨張黒鉛粒子は、カソードペレット形成機器に潤滑性を提供することができる。しかしながら、非膨張黒鉛は、膨張黒鉛よりも著しく導電性が低く、膨張黒鉛を含有するカソードと同じカソード導電性を得るために、より多くの非膨張黒鉛を使用する必要がある可能性がある。
好ましくはないが、カソードは、低レベルの非膨張黒鉛を含んでもよいが、これは、特定のカソード導電性を保ちつつ得ることができる黒鉛の濃度の低減を損なうであろう。
【0022】
カソード12は、カソードの製造時点において計算されることができる多孔率を有するであろう。電池10内のカソード12の多孔率は、とりわけカソードの電解質湿潤および電池放電に関連するカソードの膨潤に起因して時間とともに変化するため、カソードの多孔率は、製造時点において、例えば、カソードペレット処理の後で、計算されてよい。カソードの多孔率は、以下のようにして計算されることができる。各固体カソード成分の実密度は、参考図書、例えば、Lange’s Handbook of Chemistry(16th ed. 2005)から得ることができる。固体カソード成分それぞれの固体重量は、電池設計によって規定される。各カソード成分の固体重量を各カソード成分の実密度で除算することでカソードの固体体積を求めることができる。電池内においてカソードによって占められる体積もまた、電池設計によって規定される。カソードによって占められる体積は、コンピュータ支援設計(CAD)プログラムによって計算されることができる。多孔率は、下記の式によって求められることができる。
【0023】
カソード多孔率=[1-(カソード固体体積÷カソード体積)]×100
例えば、AAサイズ電池のカソード12は、カソード12内の固体として、約10.90グラムの二酸化マンガンおよび約0.401グラムの黒鉛(BNB-90)を含むことができる。二酸化マンガンおよび黒鉛の実密度は、それぞれ、約4.45g/cmおよび約2.15g/cmであってよい。固体の重量をそれぞれの実密度で除算すると、二酸化マンガンによって占められる体積約2.45cmおよび黒鉛によって占められる体積約0.19cmが得られる。総固体体積は約2.64cmである。設計者は、カソード12によって占められる体積を、約3.473cmとなるように選択することができる。上記の式[1-(2.64cm÷3.473cm)]によってカソード多孔率を計算すると、約0.24すなわち24%のカソード多孔率が得られる。カソード多孔率は、約15%から約45%でよく、好ましくは約22%から約35%の間である。
【0024】
所与の体積のカソード12内の電気化学的活性カソード材料の量は、固有のカソード・ローディングと称されることができる。電池10内のカソード12によって占められる体積は、上述のように、電池設計によって規定されてよい。カソード12によって占められる体積は、コンピュータ支援設計(CAD)プログラムによって計算されることができる。固有のカソード・ローディングは、例えば、カソード体積の立方センチメートルあたり約2.9グラムのEMDより大きくてよい。固有のカソード・ローディングは、例えば、カソード体積の立方センチメートルあたり約2.9グラムのEMDからカソード体積の立方センチメートルあたり約3.45グラムのEMDであってよい。固有のカソード・ローディングは、例えば、カソード体積の立方センチメートルあたり約3.0グラムのEMDからカソード体積の立方センチメートルあたり約3.36グラムのEMDであってよい。
固有のカソード・ローディングは、例えば、カソード体積の立方センチメートルあたり約3.10グラムのEMDからカソード体積の立方センチメートルあたり約3.25グラムのEMDであってよい。
【0025】
電気化学的活性カソード材料は、粒子から構成されることができる。電気化学的活性カソード材料の粒子は、表面積を有することができる。電気化学的活性カソード材料の粒子の表面積は、当技術分野において既知の任意の方法で決定されてよい。例えば、電気化学的活性カソード材料の粒子の表面積は、Brauner-Emmet-Teller(BET)法を使用して決定されてよい。電気化学的活性カソード材料の粒子のBET表面積は、例えば、15m/gよりも大きくてよい。電気化学的活性カソード材料の粒子のBET表面積は、例えば、約15m/gから約35m/gでよい。電気化学的活性カソード材料の粒子のBET表面積は、例えば、約18m/gから約28m/gでよい。
電気化学的活性カソード材料の粒子のBET表面積は、例えば、約20m/gから約25m/gでよい。
【0026】
アノード14は、少なくとも1つの電気化学的活性アノード材料、ゲル化剤、およびガス発生防止剤などの微量の添加剤で形成されることができる。電気化学的活性アノード材料は、亜鉛、カドミウム、鉄、金属水素化物、例えばAB、AB、およびAなど、これらの合金、ならびにこれらの混合物を含むことができる。
【0027】
アノード14内の電気化学的活性アノード材料の量は、アノード・ローディングと称されることができる。アノード14のローディングは、電池10内で使用される電気化学的活性アノード材料および電池10のセル・サイズに応じて、変化してよい。例えば、亜鉛の電気化学的活性アノード材料を有するAAサイズ電池は、少なくとも約3.3グラムの亜鉛のアノード・ローディングを有することができる。アノード・ローディングは、例えば、少なくとも約4.0、約4.3、約4.6グラム、約5.0グラム、または約5.5グラムの亜鉛であってよい。例えば、亜鉛の電気化学的活性アノード材料を有するAAAサイズ電池は、少なくとも約1.9グラムの亜鉛のアノード・ローディングを有することができる。例えば、アノード・ローディングは、少なくとも約2.0または約2.1グラムの亜鉛を有することができる。例えば、亜鉛の電気化学的活性アノード材料を有するAAAAサイズ電池は、少なくとも約0.6グラムの亜鉛のアノード・ローディングを有することができる。例えば、アノード・ローディングは、少なくとも約0.7から約1.0グラムの亜鉛を有することができる。例えば、亜鉛の電気化学的活性アノード材料を有するCサイズ電池は、少なくとも約9.5グラムの亜鉛のアノード・ローディングを有することができる。例えば、アノード・ローディングは、少なくとも約10.0から約15.0グラムの亜鉛を有することができる。例えば、亜鉛の電気化学的活性アノード材料を有するDサイズ電池は、少なくとも約19.5グラムの亜鉛のアノード・ローディングを有することができる。例えば、アノード・ローディングは、少なくとも約20.0から約30.0グラムの亜鉛を有することができる。
【0028】
電気化学的活性アノード材料は、粒子から構成されることができる。電気化学的活性アノード材料の粒子は、表面積を有することができる。電気化学的活性アノード材料の粒子の表面積は、当技術分野において既知の任意の方法で求められてよい。例えば、電気化学的活性アノード材料の粒子の表面積は、Brauner-Emmet-Teller(BET)法を使用して求められてよい。電気化学的活性アノード材料の粒子のBET表面積は、例えば、0.040m/gよりも大きくてよい。電気化学的活性アノード材料の粒子のBET表面積は、例えば、約0.0410m/gから約0.0600m/gでよい。電気化学的活性アノード材料の粒子のBET表面積は、例えば、約0.0450m/gから約0.0550m/gでよい。電気化学的活性アノード材料の粒子のBET表面積は、例えば、約0.0490m/gから約0.0510m/gでよい。
【0029】
電気化学的活性アノード材料の粒子は、粒子サイズを有することができる。電気化学的活性アノード材料は、粒子サイズのガウス分布を備えてよい。例えば、電気化学的活性アノード材料の平均粒子サイズは、約10μmより大きく約300μm未満でよい。電気化学的活性アノード材料の平均粒子サイズは、約50μmより大きく約300μm未満でよい。電気化学的活性アノード材料の平均粒子サイズは、約60μmより大きく約250μm未満でよい。電気化学的活性アノード材料の平均粒子サイズは、約75μmより大きく約150μm未満でよい。電気化学的活性アノード材料の平均粒子サイズは、約10μmより大きく約70μm未満でよい。電気化学的活性アノード材料の平均粒子サイズは、約20μmより大きく約60μm未満でよい。電気化学的活性アノード材料の平均粒子サイズは、約30μmより大きく約50μm未満でよい。電気化学的活性アノード材料は、粒子サイズのマルチモーダル分布、例えば、粒子サイズのバイモーダル分布またはトリモーダル分布を備えてよい。マルチモーダル分布とは、少なくとも2つの明白なピークを有する分布のことをいう。したがって、粒子サイズのマルチモーダル分布を有する電気化学的活性アノード材料についての粒子サイズの関数としての粒子の相対的割合の線図は、少なくとも2つの明白なピークを有するであろう。粒子サイズ分布の1つのモードは、このモードにおける約10μmから約70μmの範囲の平均粒子サイズを有する約10%から約90%のサンプルを備えてよい。粒子サイズ分布の第2のモードは、このモードにおける約50μmから約300μmの範囲の平均粒子サイズを有する約10%から約90%の同一のサンプルを備えてよい。電気化学的活性アノード材料粒子サイズ分布としての亜鉛についての例示的マルチモーダルは、バイモーダル分布であってよく、そこでは、約10%から約35%の混合物は約10μmから約70μmの間の平均粒子サイズを有してよく、残りの約65%から約90%の混合物は約50μmから約300μmの間の平均粒子サイズ分布を有してよい。
【0030】
使用可能なゲル化剤の例として、ポリアクリル酸、グラフト化デンプン材料、ポリアクリル酸の塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。アノードは、ビスマス、スズ、またはインジウムなどの無機材料を含むことができるガス発生防止剤を含むことができる。または、ガス発生防止剤として、リン酸エステル、イオン性界面活性剤、または非イオン性界面活性剤などの有機化合物を挙げることができる。
【0031】
電解質は、カソード12、アノード14およびセパレータ16の全体に分散されてよい。電解質は、水溶液中にイオン伝導性成分を備える。イオン伝導性成分は、水酸化物であってよい。水酸化物は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、およびこれらの混合物であってよい。イオン伝導性成分は、塩を含むこともできる。塩は、例えば、塩化亜鉛、塩化アンモニウム、過塩素酸マグネシウム、臭化マグネシウム、およびこれらの混合物であってよい。イオン伝導性成分の濃度は、電池設計およびその所望の性能に応じて選択されることができる。水性アルカリ電解質は、水を有する溶液において水酸化物をイオン伝導性成分として含むことができる。電解質内の水酸化物の濃度は、電池10内の全電解質の重量に基づいて約0.25から約0.40すなわち約25%から約40%であってよい。例えば、電解質の水酸化物の濃度は、電池10内の全電解質の重量に基づいて約0.25から約0.32すなわち約25%から約32%であってよい。水性アルカリ電解質はまた、その中に溶解された酸化亜鉛(ZnO)も含むことができる。ZnOは、アノード内の亜鉛の腐食を抑えるように機能することができる。電解質に含まれるZnOの濃度は、電池10内の全電解質の約3重量%未満であってよい。例えば、ZnO濃度は、電池10内の全電解質の約1重量%から約3重量%であってよい。
【0032】
AAサイズ・アルカリ電池内の水性アルカリ電解質の総重量は、例えば、約3.0グラムから約4.0グラムであってよい。AAサイズ電池内の電解質の総重量は、好ましくは、例えば、約3.3グラムから約3.8グラムであってよい。AAサイズ電池内の電解質の総重量は、例えば、約3.4グラムから約3.65グラムであってよい。AAAサイズ・アルカリ電池内の水性アルカリ電解質の総重量は、例えば、約1.0グラムから約2.0グラムであってよい。AAAサイズ電池内の電解質の総重量は、例えば、約1.2グラムから約1.8グラムであってよい。AAAサイズ電池内の電解質の総重量は、例えば約1.4グラムから約1.6グラムであってよい。
【0033】
セパレータ16は、電解質によって濡らすことができるまたは電解質によって濡らされた材料を備える。材料は、液体と表面との間の接触角度が90°未満である場合、または液体が自発的に表面全体に広がる傾向がある場合に、液体によって濡らされると言われ、これら両条件は通常は共存する。セパレータ16は、織られた紙もしくは布または不織の紙もしくは布を備えてよい。セパレータ16は、例えば、不織布材料の層と組み合わせられたセロハンの層を含んでよい。セパレータは、更なる不織布材料の層を含んでもよい。
セパレータの材料は、薄くてよい。セパレータは、例えば、150マイクロメートル(ミクロン)未満の乾燥厚さを有してよい。セパレータは、例えば、100ミクロン未満の乾燥厚さを有してよい。セパレータは、好ましくは、約70ミクロンから約90ミクロン、より好ましくは、約70ミクロンから約75ミクロンの乾燥厚さを有する。セパレータは、例えば、185マイクロメートル(ミクロン)未満の湿潤厚さを有してよい。セパレータは、例えば、約90ミクロンから約180ミクロンの湿潤厚さを有してよい。セパレータは、例えば、約100ミクロンから約170ミクロンの湿潤厚さを有してよい。セパレータは、例えば、約110ミクロンから約130ミクロンの湿潤厚さを有してよい。セパレータは、40g/m以下の坪量(basis weight)を有する。セパレータは、好ましくは、約15g/mから約40g/m、より好ましくは約20g/mから約30g/mの坪量を有する。セパレータは、例えば、約1.30g/cmより大きい密度を有してよい。セパレータは、約1.32g/cmから約1.40g/cmの密度を有してよい。セパレータは、約1.34g/cmから約1.38g/cmの密度を有してよい。セパレータは、例えば、約70%より大きい多孔率を有してよい。セパレータは、約71%から約85%の多孔率を有してよい。セパレータは、約73%から約80%の多孔率を有してよい。セパレータは、約75%から約79%の多孔率を有してよい。
【0034】
セパレータ16は、透気度値を有することができる。セパレータの透気度値は、ISO2965に定められるようにSodim透気度試験器によって、その特性を示されることができる。Sodim透気度試験器は、紙および不織材料の透気度を測定するように設計されている。試験器は、1kPaの圧力において1分間に材料の所定の断面を通過するガスの体積を測定する。セパレータ16の透気度値は、約2000cm/cm・min@1kPaから約5000cm/cm・min@1kPaであってよい。セパレータ16の透気度値は、約3000cm/cm・min@1kPaから約4000cm/cm・min@1kPaであってよい。セパレータ16の透気度値は、約3500cm/cm・min@1kPaから約3800cm/cm・min@1kPaであってよい。
【0035】
面積比抵抗(area-specific resistance)は、組み合わされたセパレータと電解質との測定された特性であり、組成、厚さ、透気度、坪量、および湿潤性などのセパレータ特性、ならびに水酸化物および亜鉛酸塩の濃度などの電解質特性に影響される。アルカリ電解質内のセパレータの組み合わせの面積比抵抗は、約100mOhm-cmから約800mOhm-cmであってよい。面積比抵抗は、約200mOhm-cmから約500mOhm-cmであってよい。
【0036】
電池放電性能は、概して、いくつかの要因に依存する。1つの重要な要因は、電池のオーム抵抗であり、これは他の要因とともに、電池の放電率能力および放電効率に影響を与えることができる。電池のオーム抵抗Rは、電池内の統合されたセル内イオン抵抗Rおよび統合されたセル内電子抵抗Rの組み合わせである。統合されたセル内イオン抵抗Rは、セパレータの孔内の電解質のイオン抵抗Risおよびセパレータに近接するカソードおよびアノードの孔内の電解質の抵抗Ripを含むことができる。カソードおよびアノードの多孔質母材(porous matrix)内に配置されたカソードおよびアノードの電極材料の孔内の電解質の抵抗は、統合されたセル内イオン抵抗Rに影響を与えることができる。統合されたセル内イオン抵抗Rは、セパレータの孔内およびカソードおよびアノードの多孔質母材の孔内の電解質の有効イオン抵抗を表すことができる。カソードおよびアノードの孔内の電解質の抵抗Ripは、カソードおよびアノードの多孔率、孔の湿潤性、孔の分布、粒子サイズ、モフォロジ(morphology)、湿潤表面積、および電解質の導電性に依存する。統合されたセル内イオン抵抗R、統合されたセル内電子抵抗R、オーム抵抗Rは、特に高ドレイン状態において、電池放電性能に影響する。電池の放電性能は、例えば、電池の統合されたセル内イオン抵抗R、統合されたセル内電子抵抗R、およびオーム抵抗Rを最小化することによって、向上されることができる。
【0037】
例えば、アノードとカソードとの間の静圧はセパレータの両側に力を及ぼすことができ、その結果として厚さが圧縮されるので、組み立てられた電池内のセパレータの実際の厚さは不明である。更に、電池放電に伴ってカソード活性材料およびアノード活性材料の密度が変化するので、アノードとカソードとの間の静圧は、電池放電の間に変化する。また、カソード成分およびアノード成分の粒子サイズおよび粒子サイズ分布も組み立てられた電池内のセパレータの厚さに影響することがある。更に、カソード成分およびアノード成分の粒子は、このような状態で、セパレータ内に埋め込まれることがある。セパレータの湿潤性および圧縮性もまた、組み立てられた電池内のセパレータの厚さに影響する。このような状態を考慮して、有効セパレータ厚さTcellは、統合されたセル内イオン抵抗Rおよびセパレータの孔内の電解質の抵抗Risにおける差を反映する。有効セパレータ厚さTcellは、電池内でアノードがいかに有効に分配されるか、およびアノード分配プロセスの間にアノード内にどのくらいの空間が生成されるかを反映することもできる。有効セパレータ厚さは、カソードおよびアノードの孔内の電解質の抵抗Ripも備える。有効セパレータ厚さTcellは、特に高ドレイン状態において、電池放電性能に影響する。電池の放電性能は、例えば、有効セパレータ厚さTcellを最小化することによって、向上されることができる。
【0038】
統合されたセル内イオン抵抗Rは、電池10内の成分および電池10のサイズに応じて変化することができる。統合されたセル内イオン抵抗Rは、温度に伴って変化することもできる。例えば、一次アルカリAAサイズ電池は、22℃で約39mΩ未満の統合されたセル内イオン抵抗Rを有してよい。22℃における統合されたセル内イオン抵抗Rは、約15mΩから約39mΩであってよい。22℃における統合されたセル内イオン抵抗Rは、約20mΩから約36.5mΩであってよい。
【0039】
統合されたセル内電子抵抗Rは、電池10内の成分および電池10のサイズに応じて変化することができる。統合されたセル内電子抵抗Rは、温度に伴って変化することもできる。例えば、一次アルカリAAサイズ電池は、22℃で約22mΩ未満の統合されたセル内電子抵抗Rを有してよい。22℃における統合されたセル内電子抵抗Rは、約10mΩから約19mΩであってよい。
【0040】
オーム抵抗Rは、電池10内の成分および電池10のサイズに応じて変化することができる。オーム抵抗Rは、温度に伴って変化することもできる。例えば、一次アルカリAAサイズ電池は、22℃で約57mΩ未満のオーム抵抗Rを有してよい。22℃におけるオーム抵抗Rは、約25mΩから約56mΩであってよい。
【0041】
セパレータの孔内の電解質のイオン抵抗Risは、電池内で使用される特定の電解質に含浸されたセパレータの面積比抵抗を測定し、電池内のセパレータの界面面積に対する面積比抵抗を調整することによって推定されることができる。しかしながら、カソードおよびアノードの孔内の電解質の抵抗Risを測定する方法は、存在することを知られていない。同様に、有効セパレータ厚さTcellを求める方法もまた、存在することを知られていない。
【0042】
電池の統合されたセル内電子抵抗Rは、電池の放電中に電子が流れることのできる組み合わされた電流路の電子抵抗を含むことができる。電流路は、電池の内部および外部両方の全ての金属-金属接触、ハウジング、任意の金属基板、ハウジングと電気的に接触する任意の導線、例えば黒鉛または亜鉛の粒子-粒子接触、などを含むことができる。
【0043】
場合によっては、様々な電池の構成要素の電子抵抗が推定されることができる。例えば、集電体の電子抵抗が測定されることができる。他の電池の構成要素の電子抵抗は、容易には求められない。例えば、カソードおよびアノードの電子抵抗の測定は、困難で不正確である。カソードおよびアノードの電子抵抗は、カソードおよびアノードにわたる電圧低下の2つまたは4つの電極プローブ測定を使用して完了されることができる。しかしながら、この技法は、測定値の大きなばらつきを含み、このばらつきは、例えば、測定値における約20%から約30%の間の誤差を含むことがある。したがって、この技法は、この技法が適用される電池の構成要素の電子抵抗の推定のためにのみ使用されることができる。
【0044】
電池のオーム抵抗Rは、短期間の直流電流(DC)パルスを電池に印加し、DC電流の印加に対応する電池電圧の低下を測定することによって測定されることができる。電池の内部抵抗Rは、オームの法則に従って印加された電流に対応する電池の電圧を計算することによって求められることができる。電池の内部抵抗Rの全体的な値は、一般に電気化学的インピーダンスと呼ばれるものを利用して測定されることもできる。しかしながら、どちらの技法も、電池の全体的なインピーダンスRを求めることができるだけであり、様々な電池の構成要素に関連づけられた固有の抵抗を区別することはできない。
【0045】
電池の統合されたセル内イオン抵抗Rおよび統合されたセル内電子抵抗Rを個別に測定する必要性が存在する。カソードおよびアノードの孔内の電解質の抵抗Ripを抽出する必要性もまた存在する。更に、組み立てられた電池内のセパレータの有効厚さTcellを推定する必要性も存在する。電池内のこれらのパラメータの個別の特性測定は、最適化された電池設計および向上された電池放電性能をもたらすことができる。
【0046】
上述のように、電池のオーム抵抗Rは、統合されたセル内イオン抵抗成分Rおよび統合されたセル内電子抵抗成分Rを含む。電池の統合されたセル内イオン抵抗Rおよび統合されたセル内電子抵抗Rは、温度に影響されることがある。電池の動作範囲は、約0℃から約45℃であってよい。この動作範囲内での電池の統合されたセル内イオン抵抗Rは、温度における変化によって大きく影響されることがある。しかしながら、電池のこの動作範囲内での電池の統合されたセル内電子抵抗Rは温度における変化によって大きく影響されることはない。
【0047】
統合されたセル内イオン抵抗の温度への依存性は、電池内の統合されたセル内イオン抵抗Rを評価するために利用されることができる。所与の温度範囲内での電池の統合されたセル内電子抵抗Rは、以下の式1に従って、一定のままであると仮定されることができ、
e(ti)=Re(tj)=R(1)
ここで、Re(ti)は、摂氏温度(℃)での温度tにおけるオーム単位(Ω)での電池の統合されたセル内電子抵抗であり、Re(tj)は、摂氏温度(℃)での異なる温度tにおけるオーム単位(Ω)での電池の統合されたセル内電子抵抗であり、Rは、tからtの範囲での任意の温度におけるオーム単位(Ω)での電池の一定の統合されたセル内電子抵抗である。
【0048】
また、異なる温度における電池の統合されたセル内イオン抵抗の比率は、以下の式2に従って、2つの異なる温度における電池の2つの電解質の抵抗の比率に等しいと仮定されることができ、
【数1】
ここで、Rel-te(ti)は、摂氏温度(℃)での温度tにおけるオーム単位(Ω)での電池内の電解質の固有抵抗(resistivity)であり、Rel-te(tj)は、摂氏温度(℃)での異なる温度tにおけるオーム単位(Ω)での電池内の電解質の固有抵抗であり、Ri(ti)は、摂氏温度(℃)での温度tにおけるオーム単位(Ω)での電池の統合されたセル内イオン抵抗であり、Ri(tj)は、摂氏温度(℃)での異なる温度tにおけるオーム単位(Ω)での電池の統合されたセル内イオン抵抗である。
【0049】
温度tおよびtそれぞれにおける電池のオーム抵抗Rは、以下の式3および式4に従って表されることができ、
ti=Re(ti)+Ri(ti)(3)
tj=Re(tj)+Ri(tj)(4)
ここで、Rtiは、摂氏温度(℃)での温度tにおけるオーム単位(Ω)での電池内のオーム抵抗であり、Rtjは、摂氏温度(℃)での異なる温度tにおけるオーム単位(Ω)での電池内のオーム抵抗である。
【0050】
式2は、式1、式3および式4を利用して、以下の式5のように書き換えられることができる。
【数2】
【0051】
温度tにおける電池内の電解質の固有抵抗の、温度tにおける電池内の電解質の固有抵抗に対する比率は、Xと定義され、以下の式6のように記述されることができる。
【数3】
【0052】
式5は、式6を利用して、以下の式7のように書き換えられることができる。
【数4】
【0053】
電池のオーム・インピーダンスは、所与の温度範囲内の特定温度において、例えばSolartron Impedance Analyzerを使用して測定されてよい。更に、所与の温度における電解質の固有抵抗は、例えば導電率セル(conductivity cell)を使用して、実験的に求められることができる。特定温度における電池の統合されたセル内電子抵抗は、上記の式(7)を、実験的に求められた特定温度における電池のオーム・インピーダンスおよび固有抵抗とともに使用することによって求められることができる。所与の温度範囲内の特定温度における電池の統合されたセル内イオン抵抗は、以下の式(8)のように記述されることができる。
i(ti)=Rti-R(8)
【0054】
所与の温度における電池の容量Cもまた、上記の分析に含まれることができる。所与の温度における電池の容量Cは、例えばSolartron Impedance Analyzerを使用して測定されてよい。所与の温度における電池の容量は、このような分析からもたらされたナイキスト線図から抽出されてよい。所与の温度における電池の容量Cは、カソードおよびアノードの電気化学的活性表面積に比例する。所与の温度における電池の容量Cは、セパレータに近接するカソードおよびアノードの孔内の電解質の抵抗を補完するものとして取り扱われてよい。
【0055】
式8を使用して計算された電池の統合されたセル内イオン抵抗Rは、電池のアノード-カソード間界面面積に対して正規化されたセパレータ/電解質の組み合わせの面積比抵抗と比較されることができる。電池の統合されたセル内イオン抵抗Rと、セパレータ/電解質の組み合わせの正規化された面積比抵抗との間の差は、セパレータに近接するカソードおよびアノードの孔内の電解質の抵抗Ripの特性測定のための情報、または電池内のセパレータの有効厚さTcellを求めるための情報を提供することができる。電池の設計者は、統合されたセル内電子抵抗R、統合されたセル内イオン抵抗R、セパレータの孔内の電解質の統合されたセル内イオン抵抗Risまたは面積比抵抗、セパレータに近接するカソードおよびアノードの孔内の電解質の抵抗Rip、電池設計のセパレータの有効厚さTcell、および電池の容量を、個別にまたは組み合わせて測定および調整することで、電池設計および組み立て電池組み立てプロセスを最適化して、その後、電池の放電性能を向上させ、またはアノード分配プロセスの効率を求めることができる。
【0056】
電池の設計を評価および最適化するための上記の技法は、電池の放電または充電の様々な状態において完了されてよい。上記の技法は、貯蔵の様々な状態において電池の設計を評価および最適化するためにも適用される。上述された様々なパラメータを、電池放電、電池充電および電池貯蔵の様々な状態において求めることは、電池放電性能および電池の信頼性を最適化することを助けることもできる。
【0057】
図2を参照すると、電池の統合されたセル内抵抗を決定するための方法(200)が示されている。この方法は、電解質を用意するステップ(205)を含む。この方法は、温度tにおける電解質の抵抗Rel-te(ti)を測定するステップ(210)も含む。この方法は、温度tにおける電解質の抵抗Rel-te(tj)を測定するステップ(215)も含む。この方法は、温度tにおける電解質の抵抗Rel-te(ti)の、温度tにおける電解質の抵抗Rel-te(tj)に対する比率を、式6によって計算するステップ(220)も含む。この方法は、電解質を含む電池を用意するステップ(225)も含む。この方法は、温度tにおける電池のオーム抵抗Rを測定するステップ(230)も含む。この方法は、温度tにおける電池のオーム抵抗Rを測定するステップ(235)も含む。この方法は、電池の統合されたセル内電子抵抗Rを式7によって計算するステップ(240)も含む。この方法は、温度tにおける電池の統合されたセル内イオン抵抗Ri(ti)を式8によって計算するステップ(245)も含む。この方法は、温度tにおける電池の統合されたセル内イオン抵抗Ri(tj)を式8によって計算するステップ(250)も含む。
【0058】
図3を参照すると、電池310は、その内部に組み込まれた電圧インジケータまたはテスタ330を有するラベル320を含んで示されている。ラベル320は、透明または半透明な層がラベルの図柄およびテキストを載せた積層多層フィルムであってよい。ラベル320は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、および他の同様のポリマー材料から作られてよい。電池に配置される既知の種類の電圧テスタとして、サーモクロミック(thermochromic)およびエレクトロクロミック(electrochromic)インジケータを挙げることができる。サーモクロミック電池テスタにおいては、インジケータは、電池のアノード電極とカソード電極との間に配置されてよい。消費者は、スイッチを手で押すことによってインジケータを作動させる。
ひとたびスイッチが押されると、消費者が電池のアノードをサーモクロミック・テスタを介して電池のカソードに接続したことになる。サーモクロミック・テスタは、幅が可変の銀導体を含むことができ、したがって導体の抵抗もその長さに沿って変化する。電流は、銀導体を通って流れるときに、銀導体の上のサーモクロミック・インク・ディスプレイの色を変化させる熱を生成する。サーモクロミック・インク・ディスプレイは、電池の相対容量を示すためのゲージとして配置されることができる。電流が大きいほど、生成される熱も多くなり、ゲージがより大きく変化して、電池が良好であることを知らせる。
【0059】
実験試験
電解質抵抗の測定
電解質の抵抗の測定は、ポテンシオスタットおよび周波数応答分析器に結合された抵抗セル(resistivity cell)内で、様々な温度において行われる。抵抗セルは、YSI Incorporatedから入手できるModel3403であり、約1.0のセル定数Kを有している。抵抗セルのセル定数は、例えば、G.Jones and B.C.Bradshaw,J.Am.Chem.Sec.,55,1780(1933)に従って求められてよい。周波数応答分析器は、Solartron Groupから入手できるSolartron1287 Electrochemical Interfaceソフトウェアを有したSolartron1260である。電解質は、水に溶解した、水溶液の31重量%の水酸化カリウム(KOH)および水溶液の2重量%の酸化亜鉛(ZnO)からなる水性アルカリ電解液である。電解質は、温度調節室内で抵抗セル内に配置され、およそ1時間にわたって測定温度に到達することが可能となっている。約100kHzから約0.01Hzのインピーダンス掃引が、温度において電解質を有する抵抗セルに行われる。インピーダンス掃引からもたらされたデータは、Scribner Associates, Inc.から入手できるZ-Plot/Z-View Electrochemical Interface Softwareによって分析される。電解質抵抗の測定は、約5℃の温度t、約15℃の温度t、約30℃の温度t、および約40℃の温度tにおいて完了される。電解質抵抗の測定の結果であるRel-te(t1)、Rel-te(t2)、Rel-te(t3)、およびRel-te(t4)は、以下の表1に含まれている。
【0060】
オーム抵抗の測定
オーム抵抗の測定は、異なる設計の組み立てられた電池上で、様々な温度において行われる。4点電池接点固定具(four-point battery contact fixture)がポテンシオスタットおよび周波数応答分析器に結合される。周波数応答分析器は、Solartron Groupから入手できるSolartron1287 Electrochemical Interfaceソフトウェアを有したSolartron1260である。電池は、温度調節室内で4点電池接点固定具に挿入され、およそ1時間にわたって測定温度に到達することが可能となっている。約60kHzから約0.1Hzのインピーダンス掃引が、温度において電池を含む固定具に行われる。インピーダンス掃引からもたらされたデータは、Scribner Associates,
Inc.から入手できるZ-Plot/Z-View Electrochemical Interface Softwareによって分析される。電池のオーム抵抗の測定は、AC電位を電池に印加し、次いで電池内の電流を測定することによって測定される。次いで、インピーダンスが、実部と虚部とからなる複素数として表される。ナイキスト線図は、測定されたインピーダンスの実部をX軸に、虚部をY軸に含む。インピーダンスのX軸の切片が電池のオーム抵抗の値である。オーム抵抗の測定は、約5℃の温度t、約15℃の温度t、約30℃の温度t、および約40℃の温度tにおいて完了される。固定具のバックグラウンド抵抗(background resistance)が、得られたオーム抵抗値から減算される。オーム抵抗の測定の結果であるRt1、Rt2、Rt3、およびRt4は、以下の表1に含まれている。
【0061】
組み立てられたAAサイズ・アルカリ一次電池の試験
表1中で電池Aと称される電池は、本発明の効果を評価するために組み立てられている。アノードは、4.65グラムの亜鉛、水に溶解した約31重量%のKOHおよび2重量%のZnOを有する1.35立方センチメートルの水酸化カリウムアルカリ電解質、0.027グラムのポリアクリル酸ゲル化剤、および0.02グラムの腐食防止剤を含有するアノード・スラリを含む。カソードは、EMD、黒鉛、および水酸化カリウム水性電解液の混合物を含む。カソードは、10.74グラムのEMDのローディング、および0.4グラムのTimcal BNB-90黒鉛のローディングを含む。電池Aはまた、カソード-アノード間界面面積を有する。電池Aのカソード-アノード間界面面積は11.253cmである。セパレータは、外側層と内側層とを有し、アノードとカソードとの間に挿入される。セパレータの外側層は、約57g/mの坪量と約90ミクロンの厚さ(乾燥)とを有する不織布材料に積層されたセロハンを含む。セパレータの内側層は、約25g/mの坪量と約110ミクロンの厚さ(乾燥)とを有する不織布材料である。アノード、カソード、およびセパレータは、円筒形状のハウジングに挿入される。次いで、ハウジングは、シールされて電池組み立てプロセスを終了する。次いで電池Aのオーム抵抗が、上述されたように測定される。電池Aについてのオーム抵抗の測定の結果であるRt1、Rt2、Rt3、およびRt4は、以下の表1に含まれている。
【0062】
表1中で電池Bと称される別の電池は、本発明の効果を評価するために組み立てられている。アノードは、4.8グラムの亜鉛、水に溶解した約31重量%のKOHおよび2重量%のZnOを有する1.39立方センチメートルの水酸化カリウムアルカリ電解質、0.027グラムのポリアクリル酸ゲル化剤、および0.02グラムの腐食防止剤を含有するアノード・スラリを含む。カソードは、EMD、黒鉛、および水酸化カリウム水性電解液の混合物を含む。カソードは、10.92グラムのEMDのローディング、および0.4グラムのTimcal BNB-90黒鉛のローディングを含む。電池Bはまた、カソード-アノード間界面面積を有する。電池Bのカソード-アノード間界面面積は11.352cmである。セパレータは、外側層と内側層とを有し、アノードとカソードとの間に挿入される。セパレータの外側層および内側層は両方とも、約23g/mの坪量と約75ミクロンの厚さ(乾燥)とを有する不織布材料セパレータを含む。アノード、カソード、およびセパレータは、円筒形状のハウジングに挿入される。次いで、ハウジングは、シールされて電池組み立てプロセスを終了する。次いで電池Bのオーム抵抗が、上述されたように測定される。電池Bについてのオーム抵抗の測定の結果であるRt1、Rt2、Rt3、およびRt4は、以下の表1に含まれている。
【0063】
電池Aおよび電池Bについて、全ての選択された温度の組み合わせについての電解質の抵抗の比率が式6によって計算される。電池Aおよび電池Bについて、統合されたセル内電子抵抗Rが、全ての選択された温度の組み合わせについて式7によって計算される。
各統合されたセル内電子抵抗Rの平均は、以下の表1に含まれている。電池Aおよび電池Bについて、統合されたセル内イオン抵抗Ri(t1)、Ri(t2)、Ri(t3)、およびRi(t4)が式8によって計算される。計算された統合されたセル内イオン抵抗は、以下の表1に含まれている。
【0064】
面積比抵抗の測定
面積比抵抗の測定は、抵抗セル内で、室温、例えば約21℃において行われる。抵抗セルは、Teflon(登録商標)に入れられた2つのステンレス鋼電極からなる。下側電極は、電解質の小さな液だめがセル内に維持されることができるように構成される。上部電極組立体は、取り外し可能で、2つの金属ピンを介して下部組立体に位置合わせされている。上部電極組立体は、分析されている材料サンプルの上部に力(およそ4から5ポンド)が印加されることができるようにバネ負荷をかけられる。下側電極組立体は固定具ベースにねじ留めされ、各電極に導線が取り付けられる。次いで、この導線は、Solartron Impedance Analyzerなどのインピーダンス分析器の導線に接続され、インピーダンス分析器はセルまたはサンプル材料の抵抗を決定するためのインピーダンス掃引を完了するために使用される。
【0065】
抵抗セルのバックグラウンド抵抗が、電極を短絡されたときの電解質で満たされた固定具にインピーダンス掃引を行うことによって決定される。掃引は、計測器を制御するためにScribner Instrumentsによるソフトウェア・プログラムZPlotを使用し、10mVの振幅を使用して100,000kHzで開始され、100Hzで終了する。固定具の抵抗(RCELL)は、ステンレス鋼電極の状態に応じて、10から150mΩの間の標準値(typical value)を有することができる。得られる値が比較的一定になることを保証するために、何回かの掃引が完了されることができる。
【0066】
セパレータおよび電解質の組み合わせの抵抗は、セパレータ・サンプルにインピーダンス掃引を行うことによって求められる。固定具は、セパレータ・サンプルが配置されることができる中央ディスクを含む。電解質は、1分間にわたってセパレータ・サンプルの両側が十分に湿潤されることを保証するようなレベルまで抵抗セルの空隙内に配置される。
上述されたものと同一のインピーダンス掃引が行われる。得られる値が比較的一貫したものになることを保証するために、ここでも、何回かの掃引が完了されることができる。掃引から得られたデータは、ナイキスト線図上にプロットされる。セパレータおよび電解質の組み合わせのオーム抵抗(RREAL)は、ナイキスト線図上のZ’’=0の位置において求められる。しかしながら、この値は、抵抗セルの抵抗を含む。抵抗セル・インピーダンスを含むセパレータおよび電解質の組み合わせサンプルについて求められた抵抗(RREAL)から、抵抗セルの抵抗値(RCELL)を減算することで、セパレータおよび電解質の組み合わせについての調整された抵抗値[RREAL(ADJ)]を計算することができる。
【0067】
セパレータ/電解質の組み合わせの面積比抵抗(ASR)は、抵抗セルの作用電極の幾何学的な表面積に調整されたセパレータ-電解質の組み合わせの抵抗値を乗算することによって求められる。これらの実験において使用された抵抗セルの作用電極の表面積は、3.83cmである。ASRの単位は、mOhm・cmである。
【0068】
上述された、電池Aおよび電池Bの、セパレータおよび電解質の組み合わせについての面積比抵抗が測定される。先ず、室温における抵抗セルのインピーダンスが、上述されたように各特定の電解質によって求められる。次いで、室温におけるセパレータ/電解質の組み合わせのインピーダンスが、それぞれの特定の電解質によって求められる。次いで、セパレータ/電解質の組み合わせの調整された抵抗が求められ、ASRの計算において使用される。電池Aおよび電池BについてのASRは表1に含まれている。
【0069】
結果考察
表1は、上述された全ての分析からもたらされるデータを含む。
【表1】
【0070】
電池Aおよび電池Bの両方の統合されたセル内イオン抵抗および統合されたセル内電子抵抗は、上記のデータから、0℃から40℃の範囲内の任意の温度について、外挿されることができる。例えば、電池Aの22℃における統合されたセル内イオン抵抗および統合されたセル内電子抵抗は、それぞれ0.041Ωおよび0.017Ωである。更に、電池Bの22℃における統合されたセル内イオン抵抗および統合されたセル内電子抵抗は、それぞれ0.034Ωおよび0.019Ωである。電池Aおよび電池Bの両方について、22℃における統合されたセル内イオン抵抗は、セパレータの孔内の電解質の抵抗Risよりも大きい。これは、電池Aおよび電池Bの両方のアノード体積内での、界面内に空隙を生成する可能性があるアノード・スラリの不十分な分配を示すことができる。
【0071】
電池Aのセパレータの外側層の湿潤厚さは約200μmである。電池Aの内側セパレータの湿潤厚さは160μmである。電池Aの22℃におけるセパレータの有効厚さTcellは388μm[(0.041Ω/0.038Ω)・(0.200μm+0.160μm)]である。電池Bのセパレータの外側層の湿潤厚さは約120μmである。電池Bの内側セパレータの湿潤厚さは120μmである。電池Bの22℃におけるセパレータの有効厚さTcellは281μm[(0.034Ω/0.029Ω)・(0.120μm+0.120μm)]である。電池Aおよび電池Bのセパレータの有効厚さは、電池Aおよび電池Bのセパレータの湿潤厚さよりも大きい。これもまた、電池Aおよび電池Bの両方のアノード体積内での、界面内に空隙を生成する可能性があるアノード・スラリの不十分な分配を示すことができる。
【0073】
任意の相互参照された、または関連した特許もしくは出願、および本出願がその優先権または利益を主張する任意の特許出願または特許を含む本明細書に引用される文献は全て、明らかに除外されるかまたは別の方法で限定されない限り、参照によってそれらの全体を本明細書に援用される。いずれの文献の引用も、こうした文献が本明細書で開示または特許請求される任意の発明に対する先行技術であることを容認するものではなく、または、こうした文献が、単独で、または任意の他の1つまたは複数の参照文献との任意の組み合わせにおいて、こうした発明のいずれかを教示、示唆または開示していることを容認するものでもない。更に、本文書内の用語のいずれかの意味または定義が、参照によって援用される文書内の同じ用語のいずれかの意味または定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に付与される意味または定義が優先するものとする。
【0074】
本発明の特定の実施形態が示され説明されたが、様々な他の変更および修正が本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくなされることができることは、当業者にとって自明であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更および修正を添付の特許請求の範囲に含むと意図される。
図1
図2
図3