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特許7254015配管固定具及びそれに用いる取付けプレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】配管固定具及びそれに用いる取付けプレート
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/10 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
F16L3/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019239054
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107722
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-07-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508333228
【氏名又は名称】AWJ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099704
【弁理士】
【氏名又は名称】久寶 聡博
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 聡
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/109249(WO,A2)
【文献】特開2003-106479(JP,A)
【文献】特開昭59-212584(JP,A)
【文献】米国特許第06601802(US,B1)
【文献】国際公開第99/056051(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00-3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体がU字状をなし内側空間に配管が挿通配置されるようになっているとともに各端近傍に雄ネジがそれぞれ設けられてなる金属製の固定部材と、該固定部材の周面をその周方向に沿って全周で覆う被覆部と、該被覆部の配管配置側に隣接配置された荷重伝達部とで構成され、該荷重伝達部を、前記被覆部に連続一体化され前記配管の材軸を中心とした半円筒状をなす本体壁と該本体壁から前記材軸に向かって延びる形で周方向に離散配置され各先端面が前記配管の周面にそれぞれ当接されるように形成されてなる複数の突起とで構成するとともに、前記被覆部を前記固定部材がインサート成形によって該被覆部に埋設される形で設け、
前記固定部材をUボルトとし、
前記被覆部及び前記荷重伝達部を、ブラケット、門型架台、振れ止め等の取付け側部材に前記雄ネジが挿通され該雄ネジに螺合されたナットによって締付けトルクが導入された状態で、該被覆部の雄ネジ側端部及び前記本体壁の雄ネジ側端部が前記取付け側部材又はそれに配置された台座に当接されるように構成することにより、前記ナットによる締込みが制限されるようにしたことを特徴とする配管固定具。
【請求項2】
前記荷重伝達部のうち、少なくとも前記突起を、振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーで形成した請求項1記載の配管固定具。
【請求項3】
前記配管の材軸方向に沿った寸法を幅として、前記荷重伝達部の幅を、前記固定部材及び前記被覆部の全体幅よりも大きく設定した請求項1又は請求項2記載の配管固定具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれか一記載の配管固定具と併用される取付けプレートであって、
前記雄ネジがそれぞれ挿通されるボルト孔を離間形成したプレート本体と、該プレート本体のうち、前記ボルト孔の間に位置する部位であって前記配管が配置される側に突設された台座とで構成してなり、該台座を、台座本体と該台座本体から前記材軸に向かって延びる形で離散配置され各先端面が前記配管の周面にそれぞれ当接されるように形成されてなる複数の突起とで構成したことを特徴とする取付けプレート。
【請求項5】
前記台座のうち、少なくとも前記突起を、振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーで形成した請求項記載の取付けプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種配管をブラケットや架台あるいは振れ止めに固定する際に用いられる配管固定具及びそれに用いる取付けプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和設備工事や衛生設備工事においては、用途や目的に応じてさまざまな配管が用いられており、材質で分類すると概ね金属管と樹脂管に大別される。
【0003】
例えば、給水管には、ポリエチレンや硬質ポリ塩化ビニルで内面を被覆したライニング鋼管や、硬質ポリ塩化ビニル管、ポリエチレン管などの樹脂管が用いられており、給湯管には、ステンレス鋼管や耐熱性硬質ポリ塩化ビニルライニング鋼管が用いられている。
【0004】
これらの配管を建物内に設置するにあたっては、横走り管であれば、吊りバンドで天井や上階スラブから吊持するほか、壁面に取り付けられたブラケットや床面に設置された門型架台に載せた上、これらのブラケットや架台にUボルトで固定し、立ち上がり管であれば、立てバンドで壁に固定するほか、壁面に取り付けられた振れ止めにUボルトで固定する。
【0005】
ここで、Uボルトを用いて配管を固定するには、配管を跨ぐようにUボルトを配管に配置した上、該Uボルトの各端に形成された雄ネジをブラケットや門型架台あるいは振れ止めのボルト孔にそれぞれ挿通し、しかる後、該雄ネジにナットを螺合する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】株式会社昭和コーポレーション、[online]、[令和元年12月13日検索]、インターネット<URL :https://www.showa-cp.jp/products-own/boushin/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
配管には、さまざまな機械振動が駆動源から伝わるほか、ポンプから圧送される液体の圧力脈動が作用し、その振動数が配管系の固有振動数に一致すると、共振によって配管が大きく振動し、その結果、配管やそれらを固定している配管固定具が破損する事態を招く。
【0008】
このような事態を回避するには、圧力脈動の振動数と配管系の固有振動数が一致しないように配管経路等を設計するといった根本的な対策が有効であるが、設備設計上、配管経路等を変更することには制約があり、実際には、配管に振動が生じるのを余儀なくされることが少なくない。
【0009】
そのため、振動が予想される箇所では、防振ゴムがUバンドの内周側に取り付けられてなる配管固定具を用いて配管を固定する対策が採用されている(非特許文献1)。
【0010】
しかしながら、従来の配管固定具では、防振ゴムがUバンドに対し着脱式になっているなど、防振ゴムがUバンドに強固に固定されるものではないため、配管から振動荷重が伝わると、防振ゴムとUバンドとの間に摩擦やせん断ズレを生じ、あるいは防振ゴムに不測の衝撃荷重が作用して該防振ゴムに応力集中が生じ、やがては防振機能を果たし得なくなるおそれがあるという問題を生じていた。
【0011】
また、配管系の固有振動数を事前に解析する際、Uバンドに対する防振ゴムの固定度合いにばらつきがあるため、固定条件が定まりにくく、解析結果に十分な信頼性をおくことができないという問題も生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、長期間にわたって防振機能を維持することができるとともに、Uバンドなどの固定部材に対する固定度合いのばらつきを抑えることで防振機能に対する信頼性を高めることが可能な配管固定具及びそれに用いる取付けプレートを提供することを目的とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る配管固定具は請求項1に記載したように、全体がU字状をなし内側空間に配管が挿通配置されるようになっているとともに各端近傍に雄ネジがそれぞれ設けられてなる金属製の固定部材と、該固定部材の周面をその周方向に沿って全周で覆う被覆部と、該被覆部の配管配置側に隣接配置された荷重伝達部とで構成され、該荷重伝達部を、前記被覆部に連続一体化され前記配管の材軸を中心とした半円筒状をなす本体壁と該本体壁から前記材軸に向かって延びる形で周方向に離散配置され各先端面が前記配管の周面にそれぞれ当接されるように形成されてなる複数の突起とで構成するとともに、前記被覆部を前記固定部材がインサート成形によって該被覆部に埋設される形で設け、
前記固定部材をUボルトとし、
前記被覆部及び前記荷重伝達部を、ブラケット、門型架台、振れ止め等の取付け側部材に前記雄ネジが挿通され該雄ネジに螺合されたナットによって締付けトルクが導入された状態で、該被覆部の雄ネジ側端部及び前記本体壁の雄ネジ側端部が前記取付け側部材又はそれに配置された台座に当接されるように構成することにより、前記ナットによる締込みが制限されるようにしたものである。
【0014】
また、本発明に係る配管固定具は、前記荷重伝達部のうち、少なくとも前記突起を、振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーで形成したものである。
【0015】
また、本発明に係る配管固定具は、前記配管の材軸方向に沿った寸法を幅として、前記荷重伝達部の幅を、前記固定部材及び前記被覆部の全体幅よりも大きく設定したものである。
【0016】
また、本発明に係る取付けプレートは請求項に記載したように、請求項1乃至請求項のいずれか一記載の配管固定具と併用される取付けプレートであって、
前記雄ネジがそれぞれ挿通されるボルト孔を離間形成したプレート本体と、該プレート本体のうち、前記ボルト孔の間に位置する部位であって前記配管が配置される側に突設された台座とで構成してなり、該台座を、台座本体と該台座本体から前記材軸に向かって延びる形で離散配置され各先端面が前記配管の周面にそれぞれ当接されるように形成されてなる複数の突起とで構成したものである。
【0017】
また、本発明に係る取付けプレートは、前記台座のうち、少なくとも前記突起を、振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーで形成したものである。
【0018】
本発明に係る配管固定具においては、固定部材の周面を覆う被覆部の配管配置側で該被覆部に荷重伝達部を隣接配置してあるが、該荷重伝達部は、被覆部に連続一体化され配管の材軸を中心とした半円筒状をなす本体壁と、該本体壁から配管の材軸に向かって延びる形で周方向に離散配置され各先端面が配管の周面にそれぞれ当接されるように形成されてなる複数の突起とで構成するとともに、被覆部を、固定部材がインサート成形によって該被覆部に埋設される形で設けてある。
【0019】
このようにすると、被覆部と固定部材との接着強度が大きくなって両者間に遊びやガタツキがなくなるので、配管からの振動荷重が作用したとき、被覆部と固定部材との間に摩擦やせん断ズレを生じるおそれがなくなるとともに、荷重伝達部や被覆部に不測の衝撃荷重が作用するおそれもなくなる。
【0020】
そのため、摩擦やせん断ズレあるいは衝撃荷重に起因した損傷が荷重伝達部や被覆部に生じるおそれがなくなり、かくして振動荷重に追従するように突起が変形する荷重伝達部の基本的な防振機能が長期間にわたって維持される。
【0021】
なお、ここでいう荷重伝達部の防振機能は、配管固定具と圧力脈動とが共振しないように突起の剛性を調整することによる防振機能であり、後述する振動吸収による防振機能とは異なる。
【0022】
また、防振ゴムをUバンドに取り付ける従来の配管固定具では、直状に成形された防振ゴムを湾曲させ、その状態でUバンドにセットするようになっているため、防振ゴムは、そのような取付け作業に見合った柔らかさで成形される必要があり、剛性を調整するにも制約が大きいが、本発明に係る配管固定具によれば、上記のような取付け時の作業性を考慮する必要がないため、荷重伝達部を形成する材料の種類、突起の断面積、突起の長さなどの仕様を、何らの制約を受けることなく自由に定めることが可能であって、荷重伝達部の剛性を所望の大きさに設定することができる。
【0023】
また、固定部材がインサート成形によって埋設されるように被覆部を設けてあるので、固定部材に対する被覆部の固定度合いにばらつきが生じにくくなる。
【0024】
そのため、本発明に係る配管固定具の振動特性を振動実験等によって明確に定めることができるとともに、これを配管系の固有振動数解析に反映させれば、より正確な解析結果を得ることが可能となる。
【0025】
固定部材は、Uボルト又はUバンドで構成される場合が典型例となるが、ブラケット、門型架台、振れ止め等の取付け側部材に配管を固定できる限り、その構成は任意である。
【0026】
被覆部及び荷重伝達部は、固定部材と配管との間で荷重伝達が可能となる剛性及び強度を有する材料で形成するものとし、例えば熱可塑性エラストマーを射出材料とした射出成形で形成することができるが、荷重伝達部のうち、少なくとも突起を、振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーで形成したならば、荷重伝達部の振動吸収機能を高めることが可能となる。
【0027】
ちなみに、標準的あるいは汎用的な熱可塑性エラストマーの場合、振動吸収機能が十分でない場合もあるが、弾性バネとしての機能は十分に発揮し得るものであって、なおかつその振動特性については、振動実験等で明確に、しかもばらつきが少ない形で把握することができるため、振動吸収機能が十分でないとしても、熱可塑性エラストマーの剛性を適宜設定すれば、配管固定具を含む配管系全体の固有振動数を変化させ、それによって圧力脈動の振動数に一致しないようにすることが可能であって、その意味では、防振機能が発揮されることに何ら変わりはなく、振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーで形成した場合には、そのような剛性調整による防振機能に加えて、振動吸収機能の向上を図ることが可能となる。
【0028】
荷重伝達部の本体壁は、配管の材軸を中心とした半円筒状となるように構成するが、突起と協働して配管を確実に固定することができる限り、必ずしも半円筒、つまり横断面でみたときの中心角が概ね180゜としたものである必要はなく、180゜未満、例えば120゜としたものでもかまわない。
【0029】
荷重伝達部は、配管の材軸方向に沿った寸法(以下、幅)を、固定部材及び被覆部の全体幅と同等にすることも可能であるが、該全体幅よりも大きく設定したならば、突起の個数、ひいてはそれらの先端面の合計面積を増やすことができるため、配管からの振動荷重が分散状態で荷重伝達部に伝達されることとなり、かくして配管や荷重伝達部に応力集中が生じる事態を防止することができる。
【0030】
上述した本発明に係る配管固定具と併用される取付けプレートは、ブラケット、門型架台、振れ止め等の取付け側部材と配管との間に挟み込まれる形で用いられるものであって、配管固定具を構成する固定部材の雄ネジが挿通される2つのボルト孔の間には、配管を受けるための台座を突設してあるが、該台座は、台座本体と該台座本体から配管の材軸に向かって延びる形で離散配置され各先端面が配管の周面にそれぞれ当接されるように形成されてなる複数の突起とで構成してある。
【0031】
このようにすると、直状に成形された防振ゴムを湾曲させて用いていた従来とは異なり、台座を形成する材料の種類、突起の断面積、突起の長さなどの仕様を、何らの制約を受けることなく自由に定めることが可能であって、台座の剛性を所望の大きさに設定することができる。
【0032】
台座は、ブラケット、門型架台、振れ止め等の取付け側部材と配管との間で荷重伝達が可能となる剛性及び強度を有する材料で形成するものとし、例えば熱可塑性エラストマーを射出材料とした射出成形で形成することができるが、台座のうち、少なくとも突起を、振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーで形成したならば、台座の振動吸収機能を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本実施形態に係る配管固定具1の全体斜視図。
図2】同じく本実施形態に係る配管固定具1の図であり、(a)は正面図、(b)はA-A線方向から見た矢視図(側面図)、(c)はB-B線に沿う断面図。
図3】同じく本実施形態に係る配管固定具1の図であり、(a)はC-C線方向から見た矢視図(平面図)、(b)はD-D線方向から見た矢視図(底面図)。
図4】配管固定具1及び取付けプレート61を用いて配管2をブラケット51に固定する様子を示した組立斜視図。
図5】同じく配管固定具1及び取付けプレート61を用いて配管2をブラケット51に固定する様子を示した図であり、(a)は組立前の正面図、(b)は組立後の正面図。
図6】変形例に係る配管固定具の組立斜視図。
図7】同じくその正面図であり、(a)は組立前の正面図、(b)は組立後の正面図。
図8】別の変形例に係る配管固定具の斜視図。
図9】別の変形例に係る配管固定具であり、(a)は正面図、(b)はE-E線方向から見た矢視図(側面図)、(c)はF-F線方向に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る配管固定具の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0035】
図1は、本実施形態に係る配管固定具を示した全体斜視図、図2は正面図、側面図及び断面図、図3は平面図及び底面図である。
【0036】
これらの図に示すように、本実施形態に係る配管固定具1は、全体がU字状をなし内側空間に配管2が挿通配置されるようになっているとともに各端近傍に雄ネジ3,3がそれぞれ形成されてなる金属製固定部材としてのUボルト4と、該Uボルトの周面を覆う被覆部5と、該被覆部の配管配置側に隣接配置された荷重伝達部6とで構成してある。
【0037】
被覆部5は、周方向についてはUボルト4の全周にわたって、材軸方向については雄ネジ3,3を除く部分にわたって、Uボルト4がインサート成形によって埋設される形で設けてある。
【0038】
荷重伝達部6は、被覆部5に連続一体化され配管2の材軸を中心とした半円筒状をなす本体壁6aと、該本体壁から配管2の材軸に向かって延びる形で周方向に離散配置された複数の突起としての突条6bとで構成してあり、該突条は、それらの先端面11が配管2の周面にそれぞれ当接されるように形成してある。
【0039】
荷重伝達部6は、配管2の材軸方向に沿った寸法を幅としたとき、図2(c)でよくわかるように、幅Wが、Uボルト4及びその周面に被覆された被覆部5の全体幅Wよりも大きくなるように形成してある。
【0040】
被覆部5及び荷重伝達部6は、Uボルト4と配管2との間で荷重伝達を行うことが可能な剛性及び強度を有するように、熱可塑性エラストマーを射出材料とした射出成形で形成してあるが、特に荷重伝達部6の突条6bについては、振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーで形成してある。
【0041】
振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーは、例えば積水ポリマテック株式会社から「エグザゲル」(登録商標)の商品名で市販されているものや、株式会社クラレから「ハイブラー」(登録商標)の商品名で市販されているものを選択することができる。
【0042】
本実施形態に係る配管固定具1においては、Uボルト4の周面を覆う被覆部5に連続一体化する形でその配管配置側に荷重伝達部6を隣接配置してあるが、該荷重伝達部には、配管2の材軸に向かって本体壁6aから延びる形で複数の突条6bを周方向に離散配置してあり、該各突条は、それらの先端面11が配管2の周面にそれぞれ当接されるように形成してある。
【0043】
このようにすると、配管2から伝わってきた振動荷重に追従するように、それぞれの突条6bが伸縮方向あるいはせん断方向に変形するが、振動の主たる原因が例えば配管2内を流れる流体の圧力脈動である場合、該圧力脈動と共振しないように突条6bの形成材料である熱可塑性エラストマーの仕様や、突条6bの立体形状(配管2の周方向に沿った寸法、配管2の材軸方向に沿った寸法、高さなど)を適宜選定することで、該突条の圧縮剛性及びせん断剛性を調整し、配管2から配管固定具1に伝達される振動荷重の低減を図ることができる。
【0044】
図4及び図5は、配管固定具1を用いて配管2を取付け側部材であるブラケット51に固定する様子を示した図である。これらの図に示すように、ブラケット51への固定には取付けプレート61を用いる。
【0045】
取付けプレート61は、雄ネジ3,3がそれぞれ挿通されるボルト孔62,62を離間形成したプレート本体63と、該プレート本体のうち、ボルト孔62,62の間に位置する部位であって配管2が配置される側に突設された台座64とで構成してなる。
【0046】
台座64は、プレート本体63に固着された台座本体64aと該台座本体から配管2の材軸に向かって延びる形で配管2の周方向に沿って離散配置された複数の突起としての突条64bとで構成してあり、該突条は、それらの先端面65が配管2の周面にそれぞれ当接されるように形成してある。
【0047】
台座64は、ブラケット51と配管2との間で荷重伝達、主として配管に作用する鉛直荷重の伝達を行うことが可能な剛性及び強度を有するように熱可塑性エラストマーを射出材料とした射出成形で形成してあるが、特に突条64bについては、振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーで形成してある。
【0048】
なお、振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーについては、配管固定具1で説明したと同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0049】
本実施形態に係る取付けプレート61を用いて配管2をブラケット51に固定するには、該ブラケットに設けられたボルト孔52,52にプレート本体63のボルト孔62,62が位置決めされるように、取付けプレート61をブラケット51の上に載置し、次いで、取付けプレート61の台座64に配管2を載せ、しかる後、配管2を跨ぐように配管固定具1を配置してその雄ネジ3,3をプレート本体63のボルト孔62,62、さらにはブラケット51のボルト孔52,52に挿通し、その先端にナット53,53を螺合して締め付ければよい。
【0050】
なお、取付けプレート61の台座64には、配管2の材軸に向かって台座本体64aから延びる形で複数の突条64bを周方向に離散配置してあり、該各突条は、それらの先端面65が配管2の周面にそれぞれ当接されるように形成してあるので、配管固定具1の荷重伝達部6と同様、配管2内を流れる流体の圧力脈動と共振しないように突条64bの形成材料である熱可塑性エラストマーの仕様や、突条64bの立体形状(配管2の周方向に沿った寸法、配管2の材軸方向に沿った寸法、高さなど)を適宜選定することで、該突条の圧縮剛性及びせん断剛性を調整し、配管2から取付けプレート61に伝達される振動荷重の低減を図ることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る配管固定具1によれば、Uボルト4がインサート成形によって被覆部5に埋設される形で該被覆部を設けるとともに、被覆部5に本体壁6aが連続一体化する形で該被覆部の配管配置側に荷重伝達部6を隣接配置したので、従来の配管固定具においては、直状に形成された防振ゴムを湾曲させたながらUバンドの内周側に取り付けねばならないがゆえに、その作業に見合うように防振ゴムを柔らかく形成しておかねばならなかったのに対し、荷重伝達部6、特に突条6bを形成する材料の種類や、突条6bの断面積あるいはそれらの突出長さといった仕様を、何らの制約を受けることなく、自由に定めることができる。
【0052】
そのため、配管2内を流れる流体の圧力脈動と配管固定具1とが共振しないように、突条6bの剛性を適切に調整することが可能となり、かくして防振機能を高めることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態に係る配管固定具1によれば、Uボルト4がインサート成形によって被覆部5に埋設される形で該被覆部を設けるようにしたので、被覆部5とUボルト4との接着強度が大きくなって両者間に遊びやガタツキがなくなり、配管2からの振動荷重が作用したとき、被覆部5とUボルト4との間に摩擦やせん断ズレを生じるおそれがなくなるとともに、荷重伝達部6や被覆部5に不測の衝撃荷重が作用するおそれもなくなる。
【0054】
そのため、摩擦やせん断ズレあるいは衝撃荷重に起因した損傷が荷重伝達部6や被覆部5に生じるおそれがなくなり、かくして上述した荷重伝達部6の防振機能が長期間にわたって維持される。
【0055】
また、本実施形態に係る配管固定具1によれば、Uボルト4がインサート成形によって被覆部5に埋設される形で該被覆部を設けるようにしたので、Uボルト4に対する被覆部5の固定度合いにばらつきが生じにくくなり、かくして配管固定具1の振動特性を振動実験等によって明確に定めることができるとともに、これを配管系の固有振動数解析に反映させることで、より正確な解析結果を得ることが可能となる。
【0056】
また、本実施形態に係る配管固定具1によれば、荷重伝達部6の幅を、Uボルト4及び被覆部5の全体幅よりも大きく設定したので、突起である突条6bの個数、ひいてはそれらの先端面11の合計面積を増やすことができるため、配管2からの振動荷重が分散状態で荷重伝達部6に伝達されることとなり、かくして配管2や荷重伝達部6に応力集中が生じる事態を防止することができる。
【0057】
本実施形態では、被覆部5及び荷重伝達部6並びに台座64を熱可塑性エラストマー、特に荷重伝達部6の突条6b及び台座64の突条64bについては、振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーで形成したが、これに代えて、突条6b及び突条64bを、他の部位と同様、標準的あるいは汎用的な熱可塑性エラストマーで形成するようにしてもよい。
【0058】
かかる構成においては、荷重伝達部6や台座64における振動吸収機能が低下するが、突条6b及び突条64bの剛性を調整することで、圧力脈動との共振を避けることが可能であり、その点での防振機能が発揮されることに違いはない。
【0059】
また、本実施形態では、取付けプレート61を介して配管2を受けるようにしたが、これに代えて、防振ゴムで形成された台座が突設されてなる公知の取付けプレートを介して配管2を受けるようにしてもよい。
【0060】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、図6及び図7に示すように、ブラケット51のボルト孔52,52に雄ネジ3,3が挿通され該雄ネジに螺合されたナット53,53によって所要の締付けトルクが導入された状態で、被覆部5の雄ネジ側端部111及び荷重伝達部6を構成する本体壁6aの雄ネジ側端部112が、ブラケット51に配置された取付けプレート61のプレート本体63に当接されるように、被覆部5及び荷重伝達部6を構成してもよい。
【0061】
かかる構成によれば、Uボルト4の雄ネジ3,3に螺合されたナット53,53を締め込んでいく際、予定されたトルクが導入された後は、被覆部5の雄ネジ側端部111及び荷重伝達部6を構成する本体壁6aの雄ネジ側端部112が取付けプレート61に当接してそれ以上の締込みができなくなるため、配管2に作用する締付け力が過大になるのを未然に防止することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態では、配管と固定部材との間における荷重伝達において、配管や荷重伝達部に応力集中が生じにくくなるよう、該荷重伝達部を、幅Wが、Uボルト4及びその周面に被覆された被覆部5の全体幅Wよりも大きくなるように形成してなる荷重伝達部6で構成したが、応力集中の懸念がないのであれば、図8に示すように、本発明の荷重伝達部を、幅Wが、Uボルト4及びその周面に被覆された被覆部5の全体幅Wと同等になるように形成されてなる荷重伝達部6″としてもかまわない。
【0063】
なお、荷重伝達部6″は、幅Wが荷重伝達部6の幅Wよりも小さいことを除き、荷重伝達部6と同様の構成であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0064】
また、本実施形態では、本発明に係る金属製の固定部材をUボルト4で構成したが、これに代えて、図9に示すように、Uバンド141で構成してもよい。
【0065】
同図に示した変形例に係る配管固定具140は、全体がU字状をなし内側空間に配管2が挿通配置されるようになっているバンド本体142の各端に溶接等で雄ネジ部材143,143が連結されてなるUバンド141と、バンド本体142の周面を覆う被覆部144と、該被覆部の配管配置側に隣接配置された荷重伝達部145とで構成してある。
【0066】
被覆部144は、Uバンド141がインサート成形によって埋設される形で設けてある。
【0067】
荷重伝達部145は、被覆部5に連続一体化され配管2の材軸を中心とした半円筒状をなす本体壁6aと、該本体壁から配管2の材軸に向かって延びる形で周方向に離散配置された複数の突起としての突条6bとで構成してあり、該突条は、それらの先端面11が配管2の周面にそれぞれ当接されるように形成してある。
【0068】
荷重伝達部145は、配管2の材軸方向に沿った寸法を幅としたとき、図9(c)でよくわかるように、幅Wが、バンド本体142及びその周面に被覆された被覆部5の全体幅Wよりも大きくなるように形成してある。
【0069】
被覆部144及び荷重伝達部145は、Uバンド141と配管2との間で荷重伝達を行うことが可能な剛性及び強度を有するように、熱可塑性エラストマーを射出材料とした射出成形で形成してあるが、特に荷重伝達部145の突条6bについては、振動吸収機能を備えた熱可塑性エラストマーで形成してある。
【0070】
以下、配管固定具140のその他の構成及び作用効果については、上述した実施形態と概ね同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0071】
なお、配管固定具140についても、取付けプレート61を併用することができるとともに、上述した実施形態の変形例は、すべて配管固定具140にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 配管固定具
2 配管
3,3 雄ネジ
4 Uボルト(固定部材)
5 被覆部
6 荷重伝達部
6a 本体壁
6b 突条(突起)
11 先端面
61 取付けプレート
62,62ボルト孔
63 プレート本体
64 台座
64a 台座本体
64b 突条(突起)
65 先端面
141 Uバンド(固定部材)
144 被覆部
145 荷重伝達部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9