(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】FC結合能力を有する融合タンパク質を含む細胞外小胞
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230331BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230331BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230331BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20230331BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230331BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230331BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
A61K38/17
A61K39/395 M
A61K47/69
C07K16/00
C07K19/00
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2019502697
(86)(22)【出願日】2017-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2017068476
(87)【国際公開番号】W WO2018015535
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-07-17
(32)【優先日】2016-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518259431
【氏名又は名称】エヴォックス・セラピューティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オスカー・ヴィクランダー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・ジェルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ダヌ・グプタ
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0086490(US,A1)
【文献】特表2010-540466(JP,A)
【文献】国際公開第2015/002956(WO,A1)
【文献】特表2014-506893(JP,A)
【文献】国際公開第2015/058148(WO,A1)
【文献】特表2015-500826(JP,A)
【文献】特表2016-516768(JP,A)
【文献】特表2012-524052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00 - 19/00
C12N 1/00 - 7/08
15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの融合タンパク質を含むエキソソームであって、前記少なくとも1つの融合タンパク質が、少なくとも1つのヒトエキソソームポリペプチドに融合した少なくとも1つのFc結合ポリペプチドを含み、前記少なくとも1つのFc結合ポリペプチドが、前記エキソソームの外面に表される、エキソソーム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのFc結合ポリペプチドが、タンパク質A、タンパク質G、タンパク質A/G、タンパク質LG、Zドメイン、ZZドメイン、ヒトFCGRI、ヒトFCGR2A、ヒトFCGR2B、ヒトFCGR2C、ヒトFCGR3A、ヒトFCGR3B、ヒトFCGRB、ヒトFCAMR、ヒトFCERA、ヒトFCAR、マウスFCGRI、マウスFCGRIIB、マウスFCGRIII、マウスFCGRIV、マウスFCGRn、SPHペプチド、SPAペプチド、SPG
2、及びそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項1に記載のエキソソーム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのFc結合ポリペプチドが、1つより多いFc結合領域を含む、請求項1又は2に記載のエキソソーム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのヒトエキソソームポリペプチドが、CD9、CD53、CD63、CD81、CD54、CD50、FLOT1、FLOT2、CD49d、CD71、CD133、CD138、CD235a、シンテニン-1、シンテニン-2、Lamp2b、TSPAN8、TSPAN14、CD37、CD82、CD151、CD231、CD102、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、DLL1、DLL4、JAG1、JAG2、CD49d/ITGA4、ITGB5、ITGB6、ITGB7、CD11a、CD11b、CD11c、CD18/ITGB2、CD41、CD49b、CD49c、CD49e、CD51、CD61、CD104、Fc受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン、CD2、CD3イプシロン、CD3ゼータ、CD13、CD18、CD19、CD30、CD34、CD36、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD45RA、CD47、CD86、CD110、CD111、CD115、CD117、CD125、CD135、CD184、CD200、CD279、CD273、CD274、CD362、EGFR、GLUR2、GLUR3、HLA-DM、L1CAM、LFA-1、Mac-1α、Mac-1β、STX3、TCRA、TCRB、TCRD、TCRG、VTI1A、VTI1B、他のヒト膜貫通エキソソームポリペプチド、及びそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項1~3の何れか一項に記載のエキソソーム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのFc結合ポリペプチドが、少なくとも1つのFc含有タンパク質に結合する、請求項1~4の何れか一項に記載のエキソソーム。
【請求項6】
前記エキソソームが、前記Fc結合ポリペプチドと複数のFc含有タンパク質との間の相互作用によって、前記複数のFc含有タンパク質に結合しており、前記複数のFc含有タンパク質は、同じであっても又は異なっていてもよい、請求項1~5の何れか一項に記載のエキソソーム。
【請求項7】
前記Fc結合ポリペプチドが結合する前記少なくとも1つのFc含有タンパク質が、抗体及び/又はFcドメインを含むように操作されたタンパク質である、請求項5又は6に記載のエキソソーム。
【請求項8】
前記抗体が、標的抗体、治療用抗体、抗体薬物複合体(ADC)、又はオプソニン作用及び/又は免疫細胞媒介クリアランスを低下させるための抗体である、請求項7に記載のエキソソーム。
【請求項9】
前記エキソソームが、少なくとも10のFc含有タンパク質に結合している、請求項5~8の何れか一項に記載のエキソソーム。
【請求項10】
前記エキソソームが、少なくとも20のFc含有タンパク質に結合している、請求項5~8の何れか一項に記載のエキソソーム。
【請求項11】
前記エキソソームが、少なくとも30のFc含有タンパク質に結合している、請求項5~8の何れか一項に記載のエキソソーム。
【請求項12】
(i)融合タンパク質と(ii)Fc含有タンパク質との間の非共有結合複合体であって、前記融合タンパク質が、エキソソームの外面におけるFc結合ポリペプチドの提示を可能とするように、少なくとも1つのヒトエキソソームポリペプチドに融合した少なくとも1つのFc結合ポリペプチドを含み、前記Fc結合ポリペプチドが、前記Fc含有タンパク質に結合することを特徴とする、非共有結合複合体。
【請求項13】
前記非共有結合複合体が、エキソソームの脂質膜
に存在する、請求項12に記載の非共有結合複合体。
【請求項14】
請求項1~11の何れか一項に記載のエキソソーム、及び/又は請求項12若しくは13に記載の非共有結合複合体を含む、医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物が、薬学的に許容される担体を含む、請求項14に記載のエキソソームを含む医薬組成物。
【請求項16】
医薬において使用するための、請求項14又は15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
少なくとも1つのFc含有タンパク質をエキソソームに結合させる方法であって、
(i)少なくとも1つのFc結合ポリペプチド及び少なくとも1つのヒトエキソソームポリペプチドを含む融合タンパク質を含むエキソソームを提供するステップ、
(ii)前記融合タンパク質の前記Fc結合ポリペプチドを前記少なくとも1つのFc含有タンパク質に結合させるステップ
を含
み、
前記Fc結合ポリペプチドが、エキソソームの外面に提示される、方法。
【請求項18】
エキソソームの外面におけるFc結合ポリペプチドの提示を可能とするように、少なくとも1つのFc結合ポリペプチド及び少なくとも1つのヒトエキソソームポリペプチドを含む融合タンパク質を含むポリペプチド構築物。
【請求項19】
請求項18に記載の少なくとも1つのポリペプチド構築物をコードするポリヌクレオチド構築物。
【請求項20】
請求項18に記載の少なくとも1つのポリペプチド構築物、請求項19に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチド構築物、請求項1~11の何れか一項に記載の少なくとも1つのエキソソーム、及び/又は請求項12若しくは13に記載の少なくとも1つの非共有結合複合体を含む細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞外小胞(EV)治療薬に関し、当該EVは、とりわけ標的化及び治療適用のために(抗体等の)Fcドメインを含むタンパク質で被覆される。
【背景技術】
【0002】
タンパク質生物は、癌、遺伝性障害及び自己免疫疾患を含む広範な疾患の治療及び/又は予防に通常使用される。今日、多くの大型新薬を見ることができる中で、抗体及びキメラ受容体は、送達ビヒクルのない状態の裸の形態で、通常投与される。細胞外小胞(EV)は、EV産生細胞によって、細胞外環境に放出されるナノサイズの小胞である。EV及び特にエキソソームは、抗体及びデコイ受容体等のタンパク質生物を標的細胞に輸送することができ、組み換えタンパク質の特異性と組み合わせて、EVの特性を利用する進歩した生物学的治療薬の完全に新しい形態にすることができることを示している。
【0003】
タンパク質治療薬を送達するためにEVを使用することで、通常の生物の直接投与を上回るいくつかの利点を提供する。例えば、EVを用いて生物学的治療薬を送達する場合、生物学的治療薬は、変性から保護され、より安定し、EVは、高い有効性を導きうる多価薬物送達モダリティを構成し、EVは、タンパク質生物の薬物動態及び薬力学を改善することができ、EVは、目的の組織及び細胞に対して標的になることができ、EVは、その細胞起源を反映する生来の治療効果を有することができ、EVは、血液脳関門を貫通し、CNS送達を改善することもできる。
【0004】
これらの利点があるにもかかわらず、次の標的細胞に送達するために、多くの複雑なタンパク質生物をEVに負荷することは、必ずしも容易ではないことが分かっている。国際公開第2013/084000号パンフレット及び国際公開第2014/168548号パンフレットの両方は、(抗体及びデコイ受容体等の)タンパク質ベースの生物のEVの中、及びEVの上への負荷の成功を述べている。国際公開第2013/084000号パンフレットは、例えば、抗体をエキソソーム等のEVに、いわゆる内在性及び外因性に負荷することの両方を開示している。外因性負荷は、培地内のEV産生細胞から単離した後に、タンパク質カーゴ分子をEVに直接導入することによるEVの負荷を指す。国際公開第2013/084000号パンフレットのように、親細胞から単離した後に、例えば、目的のポリペプチドを電気泳動又はトランスフェクションすることを用いて、タンパク質の外因性導入を行うことができる。他方で、内因性負荷は、例えば国際公開第2014/168548号パンフレットのように、目的の治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチド構築物でEV産生細胞をトランスフェクトすることを伴う。国際公開第2015/058148号パンフレットは、目的のタンパク質の内因性負荷の例、いわゆるCD64、CD32及びCD16等のFc受容体をコードする構築物でNK細胞を遺伝子操作することを述べている。しかしながら、Fc受容体を発現するために、例えばNK細胞を遺伝子改変することは、目的のタンパク質を負荷する特に効果的な方法ではなく、EVにつき少ない数のFc受容体しか発現しない。したがって、国際公開第2015/058148号パンフレットが示したアプローチは、特に制御可能、予測可能、スケーラブル、及び経済的な方法で、EVに複数の大きくて複雑なタンパク質生物を効率的に負荷することに関連する課題に全く対処していない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、タンパク質生物をEVに負荷する、特に、次の治療適用のためにFcドメインを含む抗体及び他のタンパク質を負荷することに関連する前述の問題を克服することである。さらに、本発明は、技術分野における既存の必要性、例えば、実質的に複数の治療的、標的の、又は反クリアランス抗体及びFcドメインを含む他のタンパク質でEVを(天然に又はタンパク質操作の結果として)抗親和性に高密度に被覆することができ、EVの治療用タンパク質の送達能力を顕著に向上させることを満たすことを目的とする。
【0006】
本発明は、ヒト及び/又は非ヒト起源のFc結合ポリペプチド(以降、Fc結合体(binder)と呼ぶことが多い)に融合するエキソソームタンパク質を含む融合構築物を使用することによって、これらの目的及び他の目的を達成する。EVに負荷するモダリティとしてエキソソームタンパク質の使用は、EVの表面に多数のFc結合体を示すことができ、このことは、Fcドメイン(本明細書ではFc含有タンパク質と呼ぶことが多い)を含むタンパク質でEVを高密度に被覆するために重要であり、(Fc含有タンパク質が有利な実施形態において抗体となりうるように)Fc結合体とFcドメインを含むタンパク質との相互作用によってEVに結合する。生来Fcドメインを欠損しているタンパク質に融合することができるヒト及び/又は哺乳動物起源のFcドメインは、以下の非限定的な代替物:ヒトIGHM(非限定的な例として寄託番号P01871)、ヒトIGHA1(非限定的な例として寄託番号P01876)、ヒトIGHA2(非限定的な例として寄託番号P01877)、ヒトIGKC(非限定的な例として寄託番号P01834)、ヒトIGHG1(非限定的な例として寄託番号P01857)、ヒトIGHG2(非限定的な例として寄託番号P01859)、ヒトIGHG3(非限定的な例として寄託番号P01860)、ヒトIGHG4(非限定的な例として寄託番号P01861)、ヒトIGHD(非限定的な例として寄託番号P01880)、ヒトIGHE(非限定的な例として寄託番号P01854)、及びドメイン、誘導体、又はその組み合わせから選択することができる。タンパク質A/G等の非ヒトFc結合ポリペプチド、いわゆるZドメイン及び二量体ZZドメインを使用することで、Fc結合体とその相互作用パートナー、すなわち、Fc含有タンパク質のFcドメインとの間の結合親和性をより高くすることができる。さらに、非ヒトFc結合体は、ヒトFc結合タンパク質よりサイズが小さいことが多い。他方で、ヒト及び/又は哺乳動物起源のFc結合タンパク質及びタンパク質ドメイン、例えばヒトFCGRI(CD64)(非限定的な例として配列番号:31)、FCGR2A(CD32A)(非限定的な例として寄託番号P12318)、FCGR2B(CD32B)(非限定的な例として寄託番号P31994)、FCGR2C(CD32C)(非限定的な例として寄託番号P31995)、FCGR3A(CD16A)(非限定的な例として寄託番号P0837)、FCGR3B(CD16B)(非限定的な例として寄託番号O75015)、FCAMR(非限定的な例として配列番号:28)、FCERA(非限定的な例として配列番号:30)、FCAR(非限定的な例として配列番号:29)、又はマウスFCGRI(非限定的な例として配列番号:79)、FCGRIIB(非限定的な例として配列番号:80)、FCGRIII(非限定的な例として配列番号:81)、FCGRIV(非限定的な例として配列番号:82)、FCGRn(非限定的な例として配列番号:83)は、哺乳動物のタンパク質のように利点を提供することができ、免疫賦活性が低くなりうる。いずれにせよ、Fcドメインに結合する単に過剰発現したタンパク質に対して、Fc結合ポリペプチドの融合構築物を確実に含み、充分な数のFc結合ポリペプチドがEVに確実に示され、制御可能に産生ができるように、EVを操作することが鍵となる。
【0007】
さらに、本発明のFc結合体ポリペプチドは、天然に発現したFc結合タンパク質より小さくなるように操作することができ、そうすることで、EVタンパク質を有する融合構築物を用いて、Fc結合体ポリペプチドをEV表面により容易に向けさせる。さらに、非ヒトFc結合体(例えば、細菌を起源とし得る)とヒトFc結合体との1つの重要な差は、こうした非ヒトFc結合体が、特定の例において1つ以上のFcドメインに同時に結合し、Fcドメインを含む目的のタンパク質のEVへの表面被覆を増加させることができる。例えば、黄色ブドウ球菌に由来するタンパク質Aとストレプトコッカス‐ディスガラクティエに由来するタンパク質の融合タンパク質であるタンパク質A/Gは、IgG抗体のFcドメインについて7つの結合領域を有する。この多価性は、抗体等のFcドメインを含む複数のタンパク質を各Fc結合体(この場合はタンパク質A/G)に結合させ、抗体等のFcドメイン含有タンパク質でより高密度にEVを被覆することができる。Fc結合体によるEVの高密度の被覆は、例えば、抗体とその対応する抗原との結合活性をより高くすることもでき、これは、目的の標的への結合が向上し、標的及び/又は治療的見地から利益となりうることを意味する。
【0008】
一態様において、本発明は、融合タンパク質を含むEVに関し、融合タンパク質は、エキソソームポリペプチドに融合した少なくとも1つのポリペプチドベースのFc結合体を含む。EVタンパク質との融合の結果として、多数のFc結合体がEVの表面に効率的に示され、抗体等のFcドメイン含有タンパク質でEVを緻密に被覆することができる。Fcドメインを含む抗体及び他のタンパク質で(天然又は分子生物学的操作の結果として)EVを被覆することは、以下のいくつかの理由で有利である。(1)特定の細胞種、組織及び/又は臓器を標的とする抗体又は他のタンパク質は、EVベースの治療薬の分布をリダイレクトし、送達を最適化する高度に有用なアプローチを提示する、(2)治療用抗体又は目的の標的抗原に相互作用する他のFcドメイン含有タンパク質を、EVを使用して目的の組織(例えばCNS又は脳)に効率的に送達することができる、(3)EVの表面上の多重抗体又は他のFcドメイン含有タンパク質が、標的抗原等の結合標的において非常に良好でありうる、(4)抗体薬物複合体(ADC)の多重化が治療有効性を著しく向上させ、EVに存在することがADCの標的細胞への侵入も可能にすることを意味するため、EVは、ADC又は受容体-薬物複合体の送達によって有利なモダリティになる、(5)Fc結合体を含むEVが、天然に又は操作の結果として、抗体等のFCドメイン含有タンパク質、ADC又は本質的にFcドメインを含むタンパク質の細胞の内部移行を促進する、(6)抗体又はFcドメイン含有タンパク質でEVを被覆することでEVのオプソニン作用及び/又は免疫媒介性クリアランスを減少させることができ、次に、治療活性にとって重要になりうる。
【0009】
別の態様において、本発明は、本発明に係る融合タンパク質と、(例えば、抗体、及びFcドメインを融合することができる実質的な生物製剤、例えばNPC1もしくはヌクレアーゼCas9等の細胞内活性酵素等の)Fcドメイン含有タンパク質との複合体に関する。前述の融合タンパク質がエキソソームポリペプチドに融合したFc結合ポリペプチドを含むため、Fc結合体は、複合体のFcドメイン含有タンパク質のFcドメインに結合し、Fcドメイン含有タンパク質は、目的のタンパク質、例えば、当該タンパク質を天然に、又は操作の結果として、抗体又はFcドメインを含む他のタンパク質になりうる。EVタンパク質のEV輸送能力の結果として、このような非共有結合複合体は、通常、融合タンパク質とFcドメイン含有タンパク質との間に存在し、例えばEVの膜に留まり、生物学的効果を発揮することができる複数のFcドメイン含有タンパク質で被覆したEVになる。複合体は、追加又はあるいはEVの内部で残基であってもよい。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、EV及び/又は非共有結合複合体、例えば、本発明に係るナノ粒子複合体(すなわち、複数の少なくとも1種類のFc含有タンパク質でEV膜の内側、外側及び/又は中を装飾したEV)を含む医薬組成物、及び薬学的に許容される担体に関する。さらなる態様において、本発明は、また、医療、好ましくは、抗体-又はFcドメイン含有タンパク質ベースの治療、ADCベースの治療、及び/又は抗体媒介性標的化から利益を受けうる疾患の治療に使用するために、EV、EVタンパク質複合体、及び/又は当該EV及びEVタンパク質複合体を含む医薬組成物に関する。
【0011】
さらなる態様において、本発明は、Fcドメインを含むタンパク質に結合することができるEVの産生方法に関する。このような方法は、(i)少なくとも1つのFc結合体ポリペプチド及び少なくとも1つのエキソソームポリペプチドを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド構築物を、EV源細胞に導入し、(ii)EV源細胞から分泌されるEVを回収し、当該EVは目的の融合タンパク質を含む、ステップを含んでもよい。さらに、本発明は、Fcドメインを含む少なくとも1つのタンパク質でEVを被覆する方法に関し、当該方法は、(i)少なくとも1つのFc結合体及び少なくとも1つのエキソソームポリペプチドを含む融合タンパク質を含むEVを提供し、(ii)融合タンパク質のFc結合体を、Fcドメインを含む少なくとも1つのタンパク質のFcドメインに結合するステップを含む。
【0012】
最後に、本発明は、少なくとも1つのFc結合体及び少なくとも1つのエキソソームポリペプチドを含む融合タンパク質、及び当該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド構築物、ならびに当該構築物を含むベクター、EV及び細胞に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】Fc結合ポリペプチド(すなわち、Fc結合体ドメイン)に融合したエキソソームタンパク質を含む融合タンパク質を含むEVの模式図である。Fc結合体は、例えば、Fcドメインを含む抗体及び/又は他のタンパク質に結合することができ、それによって、EVは、タンパク質治療薬について多価送達ビヒクルになる。
【
図2】ナノ金(nanogold)標識した抗体で装飾された(すなわちFc含有タンパク質)Fc結合ポリペプチドを含むEV(A)、Fc結合ポリペプチドを欠損しており、表面に結合する抗体を有しない対照EV(B)の電子顕微鏡写真である。
【
図3】Fc結合ポリペプチドを含むEVが目的のFc含有タンパク質(ヒトIgG)に結合することを示すフローサイトメトリーのデータである。結合は、が非特異的/アイソタイプ/負対照ビーズ集団を含む、キットに含まれる全てのビーズ集団に非常に効率的である。
【
図4】抗HER2抗体は、アイソタイプ対照で装飾したEV、及びHER2発現細胞株MDA-MB-361にのみ存在する野生型EVに比べて、抗体で装飾したEVの取り込みを増加させるが、HER2低発現細胞株MDA-MB-231では増加させない。
【
図5】エタネルセプトを被覆したEVは、WT又は対照で装飾したEVとは対照的に、マウスの体重減少を防ぎ、裸のエタネルセプトより高い活性を示し、これは、おそらく、エタネルセプトが多重化し、及び/又はFc結合ポリペプチドがFcドメインに結合するとき、エタネルセプトとTNFアルファとの親和性が高いことによる。
【
図6】蛍光顕微鏡(A)及びフローサイトメトリー(B)で測定すると、蛍光標識した抗体のシグナルが、Fcドメインを含む表面抗体に結合しているFc結合EVで処理した細胞に明らかに存在し、未処理(1)の細胞又は対照EV処理した(2)細胞には、蛍光シグナルは存在しない。このことは、抗体等のFc含有タンパク質がFc結合EVによって細胞内に送達することができ、EVとの結合が、抗体の細胞への取り込みを劇的に増加させることを実証している。
【
図7】抗NFkB抗体がFc結合EV(すなわち、少なくとも1つのエキソソームポリペプチドに融合した少なくとも1つのFc結合ポリペプチドを含むEV)によって細胞に運ばれる場合のNFkB媒介性細胞内シグナルの阻害の成功を示す。
【
図8】対照EV、抗インテグリン4a抗体による単独処理が、マウスのEAE発現から中程度の保護効果を示し、同抗インテグリン4a抗体で被覆したzzドメインEVがインビボでEAEの発現をほぼ完全に抑制することを示す。
【
図9】標的化ゲノム編集について、CRISPR-Cas9ガイドRNA複合体の細胞内送達を示し、Fc結合ドメイン-Lamp2bを操作したEVによってFc Cas9ガイドRNA複合体の送達後の標的化ゲノム開裂を示すグラフである。
【
図10】Fcドメインに融合し、Fc結合ポリペプチドを含むHEK由来EVに結合したリソソーム蓄積症酵素GBAの細胞内送達を示す。
【
図11】著しい標的サイレンシングが生じるLamp2b-ZZドメインEVの表面に結合したsiRNAを負荷したAgo2でU2OS細胞処理を行った後のサイクリンDのレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、エキソソームポリペプチドに融合した少なくとも1つのFc結合体を含む融合タンパク質を含むEVに関する様々な態様及び実施形態に関し、EVを抗体及びFc結合体によって封鎖され、様々な疾患及び障害の治療の治療適用に使用することができる他のFcドメイン含有タンパク質でEVを緻密な被覆することができる。
【0015】
便宜上及び明白性のために、本明細書で使用する特定の用語を集めて、以下に記述する。他に断りがない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は、本発明が属している技術分野の当業者に広く理解されている意味と同じ意味を有する。
【0016】
本発明の特徴、態様、実施形態、又は代替物がマーカッシュ群で記述する場合、当業者は、本発明が個別のメンバー又はマーカッシュ群のメンバーのサブグループで記述されることも認識するだろう。当業者は、さらに、個別のメンバー及びマーカッシュ群のメンバーのサブグループの組み合わせで記述されることも認識するだろう。さらに、本発明の態様及び/又は実施形態の1つに結びついて記述される実施形態及び特徴は、必要な変更を加えて適用されることも留意すべきである。例えば、当該Fc結合ポリペプチドを含む融合タンパク質を含むEVに結びついて本明細書に記載のFc結合ポリペプチドは、開示され、関連し、本明細書の他の態様、教示及び実施形態の全て、例えば、EVを産生し、又は被覆する方法に関連する、又は本明細書に記載のポリヌクレオチド及びポリペプチドに関連する態様及び/又は実施形態に適合することが理解される。さらに、特定の態様、例えば、特定の医学的適応症を治療することに関する態様に関連して記述するように、Fc結合ポリペプチド及びエキソソームポリペプチドを含む融合タンパク質を含むEVの投与経路に結びついて記述する特定の実施形態は、医薬組成物及び/又は本発明のFc-結合ポリペプチド-Fc含有タンパク質複合体に関する他の態様及び/又は実施形態と結びついて自然に関連することもありうる。さらに、本明細書で識別するポリペプチド及びタンパク質は全て、ポリペプチドを融合するための通常の計画を用いて融合タンパク質において自由に組み合わせることができる。非限定的な例として、本明細書に記載の全てのFc結合ポリペプチドは、一又は複数のエキソソームポリペプチドと組み合わせて、自由に組み合わせることができる。また、Fc結合ポリペプチドは、互いに合わせて、1つ以上のFc結合ポリペプチドを含む構築物を生成することができる。さらに、任意の全ての特徴(例えば、マーカッシュ群の任意の全てのメンバー)は、任意の全ての他の特徴(例えば、他のマーカッシュ群の任意の全てのメンバー)と自由に組み合わせることができ、例えば、Fc結合タンパク質は、抗体等のFc含有タンパク質と組み合わせることができ、又はエキソソームポリペプチドは、Fc結合ポリペプチドと組み合わせることができる。さらに、本明細書の教示がEV(及び/又はEVを留めた融合タンパク質-Fc含有タンパク質複合体)を単独で、及び/又は別々の天然のナノ粒子様小胞としてEVを指すとき、このような全ての教示は、等しく関連し、複数のEV、EVの集団及びFc含有タンパク質で被覆したEVに適用することができる。一般的な見解として、本発明に係るFc結合ポリペプチド、抗体等のFc含有タンパク質、EV産生細胞源、エキソソームタンパク質、及び他の全ての態様、実施形態及び代替物は、本発明の範囲及び要旨から逸脱することなく、可能な全ての組み合わせで自由に組み合わせることができる。さらに、本発明のポリペプチドもしくはポリヌクレオチド、又はポリペプチドもしくはポリヌクレオチド配列(それぞれ、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列)は、所与の分子が、関連する望ましい技術的効果を実行する能力を保持する限り、元来のポリペプチド、ポリヌクレオチド及び配列からかなり逸脱する場合がある。これらの生物学的特性が保持される限り、本出願に係るポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド配列は、できるだけ高い配列同一性が好まれるものの(例えば、60%、70%、80%又は90%以上)、元来の配列に比べて、(例えば、BLAST又はClustalWを用いて計算した場合に)50%程度逸脱しうる。例えば、少なくとも1つのFc結合ポリペプチド及び少なくとも1つのエキソソームタンパク質の組み合わせ(融合)は、それぞれのポリペプチドの特定のセグメントが、置換及び/又は修飾することができ、及び/又は配列が他のアミノ酸伸長物の挿入によって妨害され得ることを意味し、基本性質(例えば、Fc結合特性、エキソソームの表面への輸送、治療的活性等)が保つ限り、元来の配列からかなり逸脱することを意味する。同様の理由は、このようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に当然適用される。ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質に結びついて、本明細書で述べる寄託番号及び配列番号は全て例示及び情報に過ぎず、全てのペプチド、ポリペプチド及びタンパク質は、当業者が理解している意味と同じ通常の意味を有する。従って、前述のように、当業者は、本発明が本明細書に示す特定の配列番号及び/又は寄託番号だけを含むだけでなく、その変異体及び誘導体も含むことも理解するだろう。本明細書に示す寄託番号の全てが2017年6月22日バージョンのデータベースのUniProtKB寄託番号であり、本明細書に記述するタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ヌクレオチド及びポリヌクレオチドは全て、当業者が理解している通常の意味に従って解釈される。
【0017】
用語「細胞外小胞」又は「EV」又は「エキソソーム」は、本明細書では同じ意味で使用し、任意の形態の細胞から得ることができる種類の小胞に関係することが理解され、例えば、微小胞(例えば、細胞の血漿膜から流れる小胞)、エキソソーム(例えば、リソソーム内経路から生じる小胞)、(例えば、アポトーシス細胞から得ることができる)アポトーシス体、(血小板から得ることができる)マイクロ粒子、(例えば、血清の好中球及び単球由来の)エクトソーム、(例えば、前立腺癌細胞から得ることができる)プロスタトソーム、又は(例えば、心細胞由来の)cardiosomeが挙げられる。EVの大きさはかなり変動しうるが、通常、ナノサイズの流体力学的半径、すなわち1000nmより小さい半径を有する。明らかに、EVはインビボ、エクスビボ、インビトロの両方の細胞種に由来しうる。さらに前述の用語は、細胞外小胞模倣物、例えば、除膜、超音波処理又は他の技術によって得られる細胞膜ベースの小胞に関係することも理解される。EVの医療及び科学的用途及び適用を記述する場合、本発明は、複数のEV、すなわち、数千、数百万、数十億、又は数兆このEVを含みうるEVの集団に関係することは、当業者にとって明白である。以下の実施の節で分かるように、EVは、単位体積あたり(例えばmL当り)105、108、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1018、1025、1030EV(「粒子」と呼ぶことが多い)、又はそれより多い数、少ない数、又はその間といった濃度で存在しうる。同じように、用語「集団」は、例えば、エキソソームポリペプチドと目的のFc含有タンパク質に結合しうるFc結合ポリペプチドとの間の特定の融合タンパク質を含むEVに関連する場合があり、このような集団を構成する複数の属性を含むと理解されるべきである。言い換えれば、個々のEVが複数存在する場合、EV集団を構成する。したがって、当然のこととして、本発明は、当業者に明らかであるように、個々のEVとEVを含む集団の両方に関する。EVの用量は、インビボで適用する場合、当然のこととして、治療対象の疾患、投与経路、目的のFc含有タンパク質、EVに存在する標的部分、製剤によってかなり変化しうる。さらに本発明のEVは、EV表面に結合しうるFc含有タンパク質の他に、追加の治療薬も含みうる。いくつかの実施形態において、追加の治療薬は、少なくとも1つの治療用小分子薬であってもよい。いくつかの実施形態において、治療用小分子薬は、DNA傷害剤、DNA合成を阻害する薬剤、微小管及びチューブリン結合剤、代謝拮抗薬、酸化的損傷の誘発剤、抗血管新生薬、内分泌治療薬、抗エストロゲン薬、Toll様受容体アゴニスト又はアンタゴニスト等の免疫調節薬、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬、キナーゼ阻害剤等のシグナル伝達の阻害剤、ヒートショックタンパク質の阻害剤、レチノイド、成長因子受容体の阻害剤、有糸分裂阻害化合物、抗炎症薬、細胞周期調節剤、転写因子阻害剤、及びアポトーシス誘発剤、及びその組み合わせから成る群から選択することができる。さらなる実施形態において、追加の治療薬は、治療用核酸ベース剤であってもよい。このような核酸ベース治療薬は、一本鎖RNA又はDNA、二本鎖RNA又はDNA、siRNA等のオリゴヌクレオチド、スプライススイッチRNA(splice-switching RNA)、CRISPRガイド鎖、ショートヘアピンRNA(shRNA)、miRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、mRNA等のポリヌクレオチド、血漿、又は他のRNA又はDNAベクターから成る群から選択することができる。化学合成された、及び/又は2’-O-Me、2’-O-アリル、2’-O-MOE、2’-F、2’-CE、2’-EA2’-FANA、LNA、CLNA、ENA、PNA、ホスホロチオエート、トリシクロ-DNA等の化学修飾ヌクレオチドを含む核酸ベース薬が特に関心がある。さらなる実施形態において、本発明に係るEVは、タンパク質及び/又はペプチドであってもよい追加の治療薬を含むことができる。このようなタンパク質及び/又はペプチドは、EVの内部に存在してもよく、EV膜に挿入されてもよく、又はEV膜に結合していてもよく、又はEVから小胞外(extravesicular)環境に突出してもよい。このような治療用タンパク質及び/又はペプチド剤は、抗体、細胞内抗体、一本鎖抗体(scFv)、アフィボディ、二重特異性及び多重特異性抗体、又は結合体、アフィボディ、DARPin、受容体、リガンド、酵素補充療法又は遺伝子編集のための酵素、腫瘍抑制剤、ウイルス又は細菌阻害剤、細胞成分タンパク質、DNA及び/又はRNA結合タンパク質、DNA修復阻害剤、ヌクレアーゼ、プロテイナーゼ、インテグラーゼ、転写因子、成長因子、アポトーシス阻害剤及び誘発剤、トキシン(例えば緑膿菌外毒素)構造タンパク質、NT3/4等の神経栄養因子、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)及び2.5Sベータサブユニット等の個別のサブユニット、イオンチャンネル、膜輸送体、タンパク質恒常性因子、細胞シグナル伝達に関係するタンパク質、翻訳-及び転写関連因子、ヌクレオチド結合タンパク質、タンパク質結合タンパク質、脂質結合タンパク質、グリコサミノグリカン(GAG)、及びGAG結合タンパク質、代謝タンパク質、細胞ストレス制御タンパク質、炎症及び免疫系制御タンパク質、ミトコンドリアタンパク質、及びヒートショックタンパク質等を含む非限定的な例の群から選択することができる。好ましい実施形態において、治療薬は、EVによって送達されると、Casポリペプチドに標的細胞においてヌクレアーゼ活性を実行させることができるRNA鎖に関連する(すなわちRNA鎖と共に運ぶ)そのままのヌクレアーゼ活性を有するCRISPR随伴(Cas)ポリペプチド(Cas9(非限定的な例として寄託番号Q99ZW2)等)であってもよい。あるいは、別の好ましい実施形態において、Casポリペプチドは、触媒的に非活性であってもよく、標的遺伝子操作を可能にする。別の代替物は、(アシダミノコッカス又はラクノスピラ科等の種に由来する)1つのRNAガイドエンドヌクレアーゼCpfl(非限定的な例として寄託番号U2UMQ6及びA0Q7Q2)等の他の種類のCRISPRエフェクターであってもよい。追加の好ましい実施形態は、リソソーム蓄積症のための酵素を含む群、例えば、イミグルセラーゼ等のグルコセレブロシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、α-L-イズロニダーゼ、イズロネート-2-スルファターゼ及びイデュルスルファーゼ、アリールスルファターゼ、ガルスルファーゼ、酸性αグルコシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、ガラクトシルセラミダーゼ、グルコシルセラミダーゼ(非限定的な例として寄託番号P04062)セラミダーゼ、α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リゾリーマル酸リパーゼ及び酸性スフィンゴミエリナーゼ、NPC1(非限定的な例として寄託番号O15118)、NPC2(非限定的な例として寄託番号P61916)、ヘパランスルファミダーゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ、へパラン-α-グルコサミニド-N-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ、ガラクトース-6-スルファターゼ、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼ、ヒアルロニダーゼ、α-N-アセチルノイラミニダーゼ、GlcNAcホスホトランスフェラーゼ、ムコリピン1、パルミトイル-タンパク質チオエステラーゼI、トリペプチジルペプチダーゼ1、battenin、linclin、α-D-マンノシダーゼ、β-マンノシダーゼ、アスパルチルグルコシルアミナーゼ、α-L-フコシダーゼ、シスチノシン、カテプシンK、シアリン、LAMP2及びヘキソサミニダーゼから選択される治療用タンパク質を含む。他の好ましい実施形態において、治療用タンパク質は、炎症反応を緩和する細胞内タンパク質、例えば、メチラーゼ及びブロモドメイン等のエピジェネティックタンパク質、又は筋肉機能を変性する細胞内タンパク質、例えば、MyoD(非限定的な例として寄託番号P15172)又はMyf5等の転写因子、筋収縮性を制御するタンパク質、例えば、ミオシン、アクチン、トロポニン等のカルシウム/結合タンパク質、又はジストロフィン(非限定的な例として寄託番号P11532)、ミニジストロフィン(非限定的な例として寄託番号P15172)、ユートロフィン、タイチン、ネブリン、ジストロブレビン等のジストロフィン随伴タンパク質、シントロフィン、シンコイリン、デスミン、サルコグリカン、ジストログリカン、サルコスパン、アグリン及び/又はフクチンであってもよい。重要なこととして、前述の治療用タンパク質の全てを、EVに存在するFc結合ポリペプチドに結合するために、Fcドメインを含むように操作することができる。別の非限定的な例は、標的細胞への次の送達のために、酵素NPC1上におけるFcドメインの融合である。EV送達Fc含有タンパク質(例えばFc-Cas9又は抗体)の細胞内生物活性を改善するために使用することができる別の非限定的な例は、HA2等のエンドソームエスケープペプチド又はタンパク質、TATペプチド等の細胞透過性ペプチド(CPP)、ペネラチン、ポリ-リジン、又はgp41、コレラ毒素、志賀毒素、サポリン、ジフテリア毒素ペプチド等にFcドメインを融合することである。EVの表面に、このようなエンドソームエスケープドメインを示すことによって、標的細胞への内部移行と次のエンドソームエスケープの両方を高めることができる。Fcドメインを目的のタンパク質に融合する方法の有利な非限定的な例は、Cas9、Cpf1、非開裂Cas変異体、又は他の種類の遺伝子編集タンパク質、又は標的細胞へのEV媒介性送達についてリボ核タンパク質(RNP)にFcドメインを融合することである。好ましい実施形態において、FcドメインはCas9に対してN末端又はC末端の何れかに融合し、単一ガイドRNA(sgRNA)鎖をインビトロに前負荷している(RNAを前負荷したCasはいわゆるリボ核タンパク質(RNP)複合体を形成する)。結果として得られる形成したFcドメイン含有RNP複合体は、その後、適切なEVのFc結合ポリペプチドによって結合して、Fc結合ポリペプチドをEV表面に結合し、次に標的細胞に送達する。RNP複合体の作成は、異なる方法で、通常の単一ガイドRNA、crRNAとtracrRNAの両方を含み、ヘアピンループで結合してもよい合成ガイドRNA、crRNA、tracrRNA、及びその様々な組み合わせ等の異なるRNA成分で達成することができる。また、相同組換え遺伝子組み換え又は非相同末端結合、又は他の修復もしくは置換機序の修復テンプレートを、Fcドメイン-Fc結合ポリペプチド結合を用いて、EVに結合することができる事前に形成したRNPに含むことができる。
【0018】
本明細書に記載の用語「抗体」及び「mAb」及び「Ab」は、全体の抗体(すなわち全抗体)及び抗原結合特性を有するその誘導体の両方を含むことが理解される。通常、抗体は、ジスルフィド結合、又はその抗原結合部分によって相互接続した少なくとも2つの重鎖(H)及び2つの軽鎖(L)を含む糖タンパク質を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと省略する)及び重鎖定常領域から成る。各軽鎖は、軽鎖可変領域本明細書ではVLと省略する)及び軽鎖定常領域から成る。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。VH領域及びVL領域は、さらに、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超変異性の領域に分けられ、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域が点在している。重要なこととして、本発明の目的のために、目的の抗体は、好ましくは、EV表面を被覆することができるように、本発明のFc結合ポリペプチドが結合することができるFcドメイン又はその誘導体を有する。本発明に使用する抗体は、モノクローナル抗体(mAb)又はポリクローナル抗体であってもよいが、好ましくはmAbである。本発明の特に有用な抗体は、抗体が本発明に係る融合タンパク質に通常含まれるFc結合ポリペプチドによって結合することができる限り、キメラ抗体、CDR移植抗体、ナノボディ、ヒト又はヒト化抗体、又はその誘導体であってもよい。抗体の産生は、本発明の範囲外にあるが、通常、モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の両方は、ヤギ、ウサギ、ラマ、ラクダ、ラット又はマウス等の実験用非ヒト哺乳動物から産生するが、適した抗体は、Kohler and Milsteinの標準体細胞ハイブリダイゼーション技術といった他の産生方法の結果であってもよい。例えば、マウスのハイブリドーマ産生は確立された方法であり、技術分野で知られている技術を用いて達成することができる。本発明で使用する抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、及び/又は任意の種類のキメラ抗体であってもよい。用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用するとき、フレームワークとCDR領域の両方がヒト生殖系免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含んでいることを意図している。本発明で使用するヒト抗体は、ヒト生殖系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロのランダム又は部位特異的変異誘発、又はインビボの体細胞変異によって導入される変異)を含んでもよい。用語「抗体誘導体」は、抗体の改変した形態、例えば、何らかの方法で改変するアミノ酸配列を有する抗体、又は抗体及び別の薬剤又は抗体の抱合体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、抗体ドメインを指す。用語「ヒト化抗体」は、マウス、ラクダ、ラマ等の別の哺乳動物種に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列に移植した抗体を指す。追加のフレームワーク領域の改変は、ヒトフレームワーク配列の内部で行うことができる。本発明に係る抗体は、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG2a、IgG2d及びIgG2c)、IgA、IgM、IgM、IgD、及び単量体、二量体、及びそのオリゴマー等の全てのアイソタイプ及びサブタイプを含むことができる。さらに、本発明に係る抗体は、EVに示されるとき、いくつかの機能を有することができる。(1)抗体は、EVベースの治療薬の分布をリダイレクトし、送達を最適化するために、特定の細胞種、組織及び/又は臓器を標的にすることができ、(2)目的の標的抗原に相互作用する治療用抗体を、EVを使用して目的の組織(例えばCNS又は脳)に効率的に送達することができる、(3)EVの表面上の多重抗体が結合標的抗原において非常に良好でありうる、(4)抗体薬物複合体(ADC)がEVで多重化し、治療有効性を著しく向上させる、(5)Fc結合ポリペプチドによって結合した抗体が標的により高い親和性を有することができる、(6)本発明に係るEV上で被覆された抗体は、細胞内に送達することができ、(7)抗体でEVを被覆することで、オプソニン作用及び/又はEVの免疫媒介性クリアランスを減少させることができ、次に、治療活性のために重要になりうる。
【0019】
用語「Fc含有タンパク質」及び「Fcドメインを含むタンパク質」及び「Fcドメイン含有タンパク質」及び「Fcドメイン含有タンパク質」及び「Fcドメインタンパク質」及び同様の用語は、本明細書では同じ意味で使用し、Fcドメインを導入するために、目的のタンパク質を天然で、又は操作した結果の何れかで少なくとも1つのFcドメインを含むタンパク質、ポリペプチド又はペプチド(すなわち、アミノ酸の配列を含む分子)に関することが理解される。Fcは「fragment crystallizable」の略であり、抗体の尾領域の名前である。Fcドメインは、しかしながら抗体だけでなくタンパク質でも作製され、使用することができる。このようなFcドメイン含有タンパク質の非限定的な例として、抗体及び抗体誘導体、Fc修飾デコイ受容体及び/又はIL1、IL2、IL3、IL4、IL5、(シグナルトランスデューサーgp130等の(非限定的な例として、寄託番号P40189))IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12、IL13、IL14、IL15、(IL17R等、非限定的な例として、寄託番号Q96F46)IL17についてインターロイキンデコイ受容体等のシグナルトランスデューサー、Fcドメイン含有二重特異的及び多重特異的結合体、Fcドメイン含有受容体又はリガンド、例えば、酵素置換療法又は遺伝子編集のためのFcドメイン修飾酵素、Fcドメインを移植したCas及びCas9等のヌクレアーゼ、Fcドメインに融合した腫瘍抑制剤が挙げられる。生来Fcドメインを欠損している目的のタンパク質に融合することができる適切なFcドメインとして、以下の非限定的な例が挙げられる。ヒトIGHM(非限定的な例として寄託番号P01871)、ヒトIGHA1(非限定的な例として寄託番号P01876)、ヒトIGHA2(非限定的な例として寄託番号P01877)、ヒトIGKC(非限定的な例として寄託番号P01834)、ヒトIGHG1(非限定的な例として寄託番号P01857)、ヒトIGHG2(非限定的な例として寄託番号P01859)、ヒトIGHG3(非限定的な例として寄託番号P01860)、ヒトIGHG4(非限定的な例として寄託番号P01861)、ヒトIGHD(非限定的な例として寄託番号P01880)、ヒトIGHE(非限定的な例として寄託番号P01854)、及びドメイン、誘導体、又はその組み合わせから選択することができる。本質的に、目的のタンパク質は修飾されてFcドメインに組み込むことができる。Fcドメインが導入されるタンパク質の非限定的な例として、例えば、腫瘍抑制剤、ウイルス又は細菌阻害剤、細胞要素タンパク質、DNA及び/又はRNA結合タンパク質、DNA修復阻害剤、ヌクレアーゼ、プロテイナーゼ、インテグラーゼ、転写因子、成長因子、アポトーシス阻害剤及び誘発剤、トキシン(例えば緑膿菌外毒素)構造タンパク質、NT3/4等の神経栄養因子、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)及び2.5Sベータサブユニット等の個別のサブユニット、イオンチャンネル、膜輸送体、タンパク質恒常性因子、細胞シグナル伝達に関係するタンパク質、翻訳-及び転写関連因子、ヌクレオチド結合タンパク質、タンパク質結合タンパク質、脂質結合タンパク質、グリコサミノグリカン(GAG)、及びGAG結合タンパク質、代謝タンパク質、細胞ストレス制御タンパク質、炎症及び免疫系制御タンパク質、ミトコンドリアタンパク質、及びヒートショックタンパク質等を含む非限定的な例の群から選択することができる。目的のタンパク質の上のリストは網羅的なものではなく、タンパク質がFcドメインを含む限り、又はFcドメインを含むように目的のタンパク質を操作することができる限り、他のタンパク質も関連している。Fcドメインを導入するためのタンパク質を操作する1つの非限定的な例として、Fcドメインをデコイ受容体に加えること、例えば、生物活性を標的細胞に送達して遺伝子編集を可能にするために、FcドメインをCas又はCas9酵素に加えることが挙げられる。Fcドメインを導入するためのタンパク質を操作する別の非限定的な例として、酵素置換療法のためにFcドメインを酵素に加えること(例えば、Fcドメイン含有グルコセレブロシダーゼ又はFcドメイン-α-ガラクトシダーゼ又はFcドメイン-NPC1)が挙げられる。市販されているFcドメイン修飾タンパク質の良く知られている例はエタネルセプトであり、エタネルセプトは、TNF受容体2に融合したIgGのFcドメインを含む様々な自己免疫疾患を治療するための生物製剤である。したがって、前述より明白なように、本発明に係るFcドメイン含有タンパク質は、本質的に、天然又は導入した結果としてFcドメインを含む目的のタンパク質でありうる。
【0020】
Fc含有タンパク質は、EV及び/又はFc結合ポリペプチドに「結合」しているものして、本明細書に記述されることが多い。あるいは、EVは、Fc含有タンパク質によって「被覆される」、又は「その表面に結合する」又は「その表面に付着する」Fc含有タンパク質として示されることもある。これらの用語は、Fc結合ポリペプチドとFcドメインとの間の通常の相互作用の文脈で理解され、すなわち、2つのポリペプチドは、Fc結合体とFcドメインの間で形成する化学結合(通常は非共有結合)が生じるように、互いに相互作用する。そのため、通常は、Fc結合ポリペプチドを含むEVは、化学結合によって、Fc含有タンパク質のFcドメインに結合していることを意味する。当業者が理解するように、EVは結果として、EVに結合する(付着する)このようなFc含有タンパク質を複数有し、EV表面で結合が生じると被覆の形態になる。
【0021】
用語「Fc結合ポリペプチド」及び「Fc結合タンパク質」及び「Fc結合体」及び「Fc結合タンパク質」及び「結合体」は、本明細書では同じ意味で使用し、目的のタンパク質のFcドメインを結合することができるタンパク質、ポリペプチド又はペプチド(すなわち、アミノ酸の配列を含む分子)に関することが理解される。通常、本発明のFc結合ポリペプチドは、ヒト又は非ヒト(例えば、哺乳動物源、細菌等)の何れかである様々な源に由来し、様々な抗体アイソタイプ、サブタイプ、及び種(例えば、非限定的な例として、IgG、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgG2a、IgG2d、及び/又はIgG2c)、IgA、IgM、IgM、IgD)のFcドメインに高い親和性を有し、EVタンパク質に融合することができる。本発明に係るFc結合ポリペプチドの非限定的な例として、本出願の全体で述べるFc結合ポリペプチドの他に、タンパク質A(非限定的な例として配列番号:77)、タンパク質G(非限定的な例として配列番号:78)、タンパク質A/G(非限定的な例として配列番号:72、Zドメイン(非限定的な例として配列番号:73)、ZZドメイン(非限定的な例として配列番号:73、すなわち非限定的な例として配列番号:74の2つの操作可能に結合したコピー、ヒトFCGRI(非限定的な例として配列番号:31)、ヒトFCGRIIA(非限定的な例として配列番号:33)、ヒトFCGRIIB(非限定的な例として、寄託番号31994)、ヒトFCGRIIC(非限定的な例として、寄託番号31995)、ヒトFCGRIIIA(非限定的な例として、寄託番号P08637)、ヒトFCGR3B(非限定的な例として、寄託番号O75015)、ヒトFCAMR(非限定的な例として配列番号:28)、ヒトFCERA、ヒトFCAR、マウスFCGRI(非限定的な例として配列番号:79)、マウスFCGRIIB(非限定的な例として配列番号:80)、マウスFCGRIII(非限定的な例として配列番号:81)、マウスFCGRIV(非限定的な例として配列番号:82)、マウスFCGRn(非限定的な例として配列番号:83)及び様々な組み合わせ、誘導体、又はその代替物が挙げられる。
【0022】
用語「EVタンパク質」及び「EVポリペプチド」及び「エキソソームポリペプチド」及び「エキソソームタンパク質」は、本明細書では同じ意味で使用し、(通常は、EVタンパク質の他にFc結合ポリペプチドを含む)ポリペプチド構築物を適切な小胞構造、すなわち適切なEVに輸送するために使用することができるポリペプチドに関することが理解される。より具体的には、これらの用語は、融合タンパク質構築物をEV等の小胞構造に輸送(transporting)、輸送(traficking)又は往復することができるポリペプチドを含むと理解される。エキソソームポリペプチドの例は、例えば、CD9(非限定的な例として配列番号:1)、CD53(非限定的な例として配列番号:2)、CD63(非限定的な例として配列番号:3)、CD81(非限定的な例として配列番号:4)、CD54(非限定的な例として配列番号:5)、CD50(非限定的な例として配列番号:6)、FLOT1(非限定的な例として配列番号:7)、FLOT2(非限定的な例として配列番号:8)、CD49d(非限定的な例として配列番号:9)、CD71(トランスフェリン受容体としても知られる)(非限定的な例として配列番号:10)及びそのエンドソーム選別ドメイン、すなわちトランスフェリン受容体エンドソーム選別ドメイン(非限定的な例として配列番号:23)、CD133(非限定的な例として配列番号:11)、CD138(シンデカン-1)(非限定的な例として配列番号:12)、CD235a(非限定的な例として配列番号:13)、ALIX(非限定的な例として配列番号:14)、シンテニン-1(非限定的な例として配列番号:15)、シンテニン-2(非限定的な例として配列番号:16)、Lamp2b(非限定的な例として配列番号:17)、シンデカン-2(非限定的な例として配列番号:20)、シンデカン-3(非限定的な例として配列番号:21)、シンデカン-4(非限定的な例として配列番号:22)、TSPAN8、TSPAN14、CD37、CD82、CD151、CD231、CD102、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、DLL1、DLL4、JAG1、JAG2、CD49d/ITGA4、ITGB5、ITGB6、ITGB7、CD11a、CD11b、CD11c、CD18/ITGB2、CD41、CD49b、CD49c、CD49e、CD51、CD61、CD104、Fc受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン、MHC-I又はMHC-II要素、CD2、CD3イプシロン、CD3ゼータ、CD13、CD18、CD19(非限定的な例として配列番号:26)、CD30(非限定的な例として配列番号:27)、TSG101、CD34、CD36、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD45RA、CD47、CD86、CD110、CD111、CD115、CD117、CD125、CD135、CD184、CD200、CD279、CD273、CD274、CD362、COL6A1、AGRN、EGFR、GAPDH、GLUR2、GLUR3、HLA-DM、HSPG2、L1CAM、LAMB1、LAMC1、LFA-1、LGALS3BP、Mac-1α、Mac-1β、MFGE8、SLIT2、STX3、TCRA、TCRB、TCRD、TCRG、VTI1A、VTI1B、他のエキソソームポリペプチド、及びその組み合わせが挙げられるが、ポリペプチド構築物をEVに輸送することができるいくつかの他のポリペプチドが本発明の範囲に含まれる。通常、本発明の多くの実施形態において、少なくとも1つのエキソソームポリペプチドは、EVに存在する融合タンパク質を形成するために、少なくとも1つのFc結合ポリペプチドに融合する。このような融合タンパク質は、リンカー、膜貫通ドメイン、サイトゾルドメイン、多量体化ドメインを含む機能を最適化するために様々な要素も含むことができる。
【0023】
用語「源細胞」又は「EV源細胞」又は「親細胞」又は「細胞源」又は「EV産生細胞」又は他の同様の用語は、適切な条件下、例えば、懸濁培地又は付着性培地又は他の種類の培養系でEVを産生することができる細胞の種類に関係することが理解される。本発明に係る源細胞はインビボでエキソソームを産生する細胞も含むことができる。本発明に係る源細胞は、広い範囲の細胞及び細胞株、例えば、間葉系幹細胞、又は間質細胞又は線維芽細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、ワルトン膠様質、周産期組織、歯蕾、臍帯血、皮膚組織等から得られる)、羊膜細胞及びより具体的には、様々な初期マーカーを発現する羊膜上皮細胞、骨髄系サプレッサー細胞、M2極性化マクロファージ、脂肪細胞、内皮細胞、線維芽細胞等から選択することができる。特定の目的の細胞株として、ヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)、ヒト胎児性腎臓細胞(HEK)細胞、微小血管又はリンパ管内皮細胞等の内皮細胞株、軟骨細胞、異なる由来のMSC、気道又は肺胞上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞等が挙げられる。また、B細胞、T細胞、NK細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞等の免疫細胞も本発明の範囲にあり、本質的にEVを産生することができる細胞の種類も本明細書に含まれる。概して、EVは、本質的に細胞源、始原細胞源又は不死化細胞株に由来することができる。EV源細胞は、胚性、胎児及び成人体細胞の幹細胞種であってもよく、人工多能性幹細胞(iPSC)及び任意の方法によって生じる他の幹細胞を含む。神経疾患を治療する場合に、例えば、一次ニューロン、星状細胞、オリゴデンドロサイト、ミクログリア及び神経前駆体細胞として利用可能であることが理解することができる。源細胞は、治療を受ける患者に対して、本質的に同種、自家、又は異種であってもよく、すなわち、細胞は、患者自身、又は無関係、適合したもしくは非適合のドナーに由来してもよい。特定の文脈において、同種細胞は、特定の適応症をり患している患者の自家細胞から得ることができない免疫調節効果を提供することができるため、医療的見地から好ましい。例えば、全身性、末梢性及び/又は神経炎症において、同種MSCは、このような細胞から得ることができるEVとして好ましく、例えば、マクロファージ及び/又は(炎症促進性M1又はN1表現型からそれぞれ抗炎症性M2又はN2表現型に)好中性表現型スイッチングによって、免疫調節が可能である。
【0024】
第1態様において、本発明は、融合タンパク質を含むEVに関し、融合タンパク質はエキソソームポリペプチドに融合した少なくとも1つのFc結合ポリペプチドを含む。EVタンパク質との融合の結果として、Fc結合ポリペプチドはEVの表面に効率的に輸送され、多数示され、様々な種類のFc含有タンパク質、通常、様々な種類のFc含有タンパク質、通常、Fcドメインを賦与した治療用タンパク質、標的抗体、治療用抗体、抗体薬物複合体、及び/又はインビボで受動的に結合し、又はオプソニン作用及び免疫細胞による認識を減少するために故意に選択され(EVの循環時間を長くする)抗体で、次にEVを被覆することができる。
【0025】
したがって、一実施形態において、第1態様に記載のEVは、Fc結合ポリペプチドと複数のFc含有タンパク質のFcドメインとの相互作用によって、複数のFc含有タンパク質に結合した。EVは、Fc結合体とFcドメインを含む少なくとも1つのタンパク質との非共有結合的な相互作用によって、Fcドメインを含む複数のタンパク質で被覆することができる。Fcドメインを含む複数のタンパク質は、Fcドメインを含む少なくとも10、少なくとも20、又は少なくとも30個のタンパク質であってもよい。
【0026】
本発明の一実施形態において、Fc結合体は非ヒト由来であり、例えば、細菌、ウイルス又は非ヒト哺乳動物から得ることができる。別の実施形態において、Fc結合体は、ヒト又は哺乳動物由来である。好ましい実施形態において、少なくとも1つのFc結合ポリペプチドは、タンパク質A(非限定的な例として配列番号:77)、タンパク質G(非限定的な例として配列番号:78)、タンパク質A/G(非限定的な例として配列番号:72)、Zドメイン(非限定的な例として配列番号:73)、ZZドメイン(非限定的な例として配列番号:74)、タンパク質L(非限定的な例として、pdb id no:1のHEZ)、タンパク質LG、ヒトFCGRI(非限定的な例として、配列番号:31)、ヒトFCGR2A(非限定的な例として寄託番号P12318)、ヒトFCGR2B(非限定的な例として、寄託番号P31994)、ヒトFCGR2C(非限定的な例として、寄託番号P31994)、ヒトFCGR3A(非限定的な例として、寄託番号P08637)、ヒトFCGR3B(非限定的な例として、寄託番号O75015)、ヒトFCGRB(非限定的な例として、寄託番号Q92637)(非限定的な例として、配列番号:32)、ヒトFCAMR(非限定的な例として、配列番号:28)、ヒトFCERA(非限定的な例として、配列番号:30)、ヒトFCAR(非限定的な例として、配列番号:29)、マウスFCGRI(非限定的な例として配列番号:79)、マウスFCGRIIB(非限定的な例として配列番号:80)、マウスFCGRIII(非限定的な例として配列番号:81)、マウスFCGRIV(非限定的な例として配列番号:82)、マウスFCGRn(非限定的な例として配列番号:83)及び前述のFc結合ポリペプチドの組み合わせが挙げられる。例えば、ファージディスプレイスクリーニング及びバイオインフォマティクスによって得られる他の適切なFc結合ポリペプチドとして、Fc結合ポリペプチドSPH(非限定的な例として、配列番号:57)、SPA(非限定的な例として、配列番号:58)、SPG2(非限定的な例として、配列番号:59)、SpA模倣物1(非限定的な例として、配列番号:60)、SpA模倣物2(非限定的な例として、配列番号:61)、SpA模倣物3(非限定的な例として、配列番号:62)、SpA模倣物4(非限定的な例として、配列番号:63)、SpA模倣物5(非限定的な例として、配列番号:64)、SpA模倣物6(非限定的な例として、配列番号:65)、SpA模倣物7(非限定的な例として、配列番号:66)、SpA模倣物8(非限定的な例として、配列番号:69)、SpA模倣物9(非限定的な例として、配列番号:70)、SpA模倣物10(非限定的な例として、配列番号:71)、Fcγ模倣物1(非限定的な例として、配列番号:67)、及びFcγ模倣物2(非限定的な例として、配列番号:68)、及びその組み合わせ又は誘導体が挙げられる。特定の構築物について、最も適切なFc結合ポリペプチドの選択は、望ましい結合特徴、親和性、エキソソームポリペプチドに融合するときのFc結合ポリペプチドの方向、及び様々な他の要因にかなり依存する。
【0027】
タンパク質A/Gは、7個のFc結合ドメインEDABC-C1C3から成る遺伝子組み換え操作したタンパク質であり、タンパク質Aは、黄色ブドウ球菌セグメントE、D、A、B及びCから得られ、タンパク質Gは、連鎖球菌セグメントC1及びC3から得られる。有利なこととして、タンパク質A/G(非限定的な例として、配列番号:72)は、タンパク質A(非限定的な例として、配列番号:77)又はタンパク質G(非限定的な例として、配列番号:78)単独よりも広い結合能力を有し、様々な種の抗体について広い結合親和性を有する。タンパク質A/Gは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4;マウスIgG2a、IgG2b、IgG3及びラットIgG2a、IgG2c等の様々なヒト、マウス及びラットlgGサブクラスに結合する。さらにタンパク質A/Gは、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、モルモット、ブタ、イヌ及びネコの全体のIgGに結合する。タンパク質A/Gは、細胞壁結合タンパク質、膜結合領域及びアルブミン結合領域を取り除くように操作されて、目的のタンパク質のFcドメインに強く結合することができる。したがって、本発明に係る有利な実施形態において、Fc結合体は、タンパク質A、タンパク質G、及びタンパク質A/Gの場合のように、1つ以上のFc結合領域を含む。代替の実施形態において、Fc結合体は、目的の抗体の1つ以上のコピーに結合することができるように、増やすことができる。例えば、短ZドメインFc結合体は、1つ以上のFcドメインに結合することができる操作可能な結合によって、1つ以上のコピーの融合タンパク質に含むことができる。このように、別々の融合タンパク質間だけでなく、1つの融合タンパク質の内部で抗体及び他のFcドメイン含有タンパク質を増殖することができ、したがって、1つ以上の抗体に結合することができる。例えば、Fc結合ポリペプチドは、(CD63等の)テトラスパニンファミリーに属するEVタンパク質に導入されると、1つのループ上のFc結合体及びタンパク質の別のループ上の(同じであっても異なっていてもよい)別のFc結合体を挿入するのに有利になりうる。Fc結合体は、Fc含有タンパク質が、EVの内腔又はEVの表面に負荷するかどうかによって、内向き及び/又は外向きループに配置することができる。本発明に係る融合タンパク質のいくつの非限定的な例を以下に模式的に記述することができる(以下の表記は、C及び/又はN末端方向を図示するものとして解釈されず、単なる説明のためにある)。
エキソソームポリペプチド-Fc結合ポリペプチド-Fc結合ポリペプチド
エキソソームポリペプチドドメイン-Fc結合ポリペプチド-エキソソームポリペプチドドメイン-Fc結合ポリペプチド
エキソソームポリペプチド-Fc結合ポリペプチドA-エキソソームポリペプチドドメイン-Fc結合ポリペプチドB
【0028】
いくつかの実施形態において、エキソソームポリペプチド及びFc結合ポリペプチドを含む融合タンパク質は、追加のポリペプチド、ポリペプチドドメイン又は配列を含んでもよい。このような追加のポリペプチドドメインは様々な機能を示すことができ、例えば、このようなドメインは、(i)融合タンパク質のEV表面表示を向上するのに寄与し、(ii)融合タンパク質のクラスター化を導き、それによってFc結合ポリペプチドの結合活性を増加させ、(iii)エキソソームポリペプチドとFc結合ポリペプチドとの相互作用を最適化するリンカーとして機能し、及び/又は(iv)EV膜に留まること及び様々な機能を改善することができる。本発明の融合タンパク質に部分的又は全体として有利に含むことができる2つのこのような追加のポリペプチドは、gp130(非限定的な例として、配列番号:18)及び腫瘍壊死因子受容体1(TNFR1)(非限定的な例として、配列番号:19)である。特に、追加のポリペプチドの膜貫通ドメインは、EV膜への挿入及びFc結合ポリペプチドの表示を最適化するのに非常に有用となりうる。全体として、様々な膜貫通ドメインは、融合タンパク質の追加のドメインとして非常に有利となりうる。例えば、エキソソームタンパク質シンテニンを使用する場合、TNFRの膜貫通ドメイン又はgp130の膜貫通ドメイン等の追加のポリペプチドドメインを、シンテニンと融合タンパク質のFc結合ポリペプチドに挿入するのに非常に有利である。さらに追加のドメインとして、表面表示及び/又は結合活性を増加するために、フォールドオンドメイン、ロイシンジッパードメイン及び/又は三量体化ドメイン等の多量体化ドメインを挙げてもよい。この非限定的な模式的例を以下に示す。
シンテニン-サイトゾルTNRF、フォールドオン三量体化ドメイン-膜貫通TNFRドメイン-Zドメイン-細胞外TNFRドメイン
シンデカン-ロイシンジッパードメイン-gp130サイトゾルドメイン-gp130膜貫通ドメイン-Fc結合ポリペプチド-gp130細胞外ドメイン
【0029】
さらなる実施形態において、エキソソームポリペプチドは、CD9、CD53、CD63、CD81、CD54、CD50、FLOT1、FLOT2、CD49d、CD71、CD133、CD138、CD235a、ALIX、シンテニン-1、シンテニン-2、Lamp2b、TSPAN8、シンデカン-1、シンデカン-2、シンデカン-3、シンデカン-4、TSPAN14、CD37、CD82(非限定的な例として、配列番号:24)、CD151、CD231、CD102、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、DLL1、DLL4、JAG1、JAG2、CD49d/ITGA4、ITGB5、ITGB6、ITGB7、CD11a、CD11b、CD11c、CD18/ITGB2、CD41、CD49b、CD49c、CD49e、CD51、CD61、CD104、Fc受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン、MHC-I又はMHC-II成分、CD2、CD3イプシロン、CD3ゼータ、CD13、CD18、CD19、CD30、CD34、CD36、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD45RA、CD47、CD86、CD110、CD111、CD115、CD117、CD125、CD135、CD184、CD200、CD279、CD273、CD274、CD362、COL6A1、AGRN、EGFR、GAPDH、GLUR2、GLUR3、HLA-DM、HSPG2、L1CAM、LAMB1、LAMC1、LFA-1、LGALS3BP、Mac-1α、Mac-1β、MFGE8(非限定的な例として、配列番号:25)、SLIT2、STX3、TCRA、TCRB、TCRD、TCRG、VTI1A、VTI1B、他のエキソソームポリペプチド、及びその組み合わせが挙げられる。
【0030】
本発明に係る特に有利な融合タンパク質は、ヒトエキソソームタンパク質CD63、CD81、CD9、CD71(トランスフェリン受容体)、Lamp2、及びシンテニンを含むことができ、以下のFc結合ポリペプチド:Zドメイン、タンパク質A、タンパク質G、タンパク質A/G、FCGRI、ヒトFCGR2A、ヒトFCGR2B、ヒトFCGR2C、ヒトFCGR3A、ヒトFCGR3B、ヒトFCGR3C、ヒトFCAMR、ヒトFCAR、及びヒトFCERAの少なくとも1つのコピーに融合する。特に、EVタンパク質CD63(非限定的な例として、配列番号:3)に2つのZドメインを融合すると、小さいサイズのZドメイン及びCD63の高いEV表面発現の結果として、EVの表面に大量に示される能力の高いFc結合体が生じる。目的のFc含有タンパク質の外因性結合を可能にするために、EVの外面にFc結合体を示すことが当然好ましい。CD63-ZZドメイン融合タンパク質の場合では、ZドメインがCD63の第1ループ及び第2ループに挿入して、CD63をEV膜に留めた後に、EV表面の外側に示すことができる。さらに前述のように、適切な追加のポリペプチド及びポリペプチドドメイン及びリンカーも融合タンパク質に含まれ、通常、エキソソームポリペプチド及びFc結合ポリペプチドを含む。このような追加のポリペプチドとして、TNFR1及びTNFR2等の様々なサイトカイン受容体からのドメイン、IL6シグナルトランスデューサーgp130、及び様々な他のサイトカイン及びサイトカイン関連ポリペプチドが挙げられる。特定の例において、サイトカイン及び(様々なサイトカイン受容体等の)サイトカイン関連ポリペプチドは、単独で、Fc結合ポリペプチドをEVに輸送することができる。特定の有用性のリンカーは、グリシン(G)及びセリン(S)、通常はGSと記述し、例えば2XGS又は4XGS等の小さくて可撓性アミノ酸の複数及び/又は組み合わせである。精製及びアッセイを単純にするためのHisタグをC末端及びN末端の両方に加えることもでき、GFP等の様々な蛍光タンパク質になりうる。以下は、少なくとも1つのエキソソームポリペプチド及び少なくとも1つのFc結合ポリペプチドを含む融合タンパク質の特に有利な非限定的な例であり、リンカーによって接続されることが多く、任意に、追加のポリペプチド又は以下のポリペプチドドメインを含む。
- CD81-タンパク質A/G CD81第2ループ(非限定的な例として、配列番号:75)
- CD9-ZZドメインCD9第2ループ(非限定的な例として、配列番号:76)
- FCAR細胞外ドメイン-2XGGGgSリンカー-Lamp2b(非限定的な例として、配列番号:55)
- FCAR細胞外ドメイン-4XGSリンカー-Lamp2b(非限定的な例として、配列番号:54)
- FCGR1A細胞外ドメイン-2XGGGgSリンカー-Lamp2b(非限定的な例として、配列番号:49)
- FCGR1A細胞外ドメイン-4XGSリンカー-Lamp2b(非限定的な例として、配列番号:48)
- FcRN細胞外ドメイン-4XGSリンカー-Lamp2b(非限定的な例として、配列番号:39)
- FcRN-2XGGGgSリンカー-Lamp2b(非限定的な例として、配列番号:40)
- Gp130細胞外ドメイン-2XGGGGSリンカー-FCAR細胞外ドメイン-Gp130膜貫通ドメイン-ロイシンジッパー-N末端シンテニン(非限定的な例として、配列番号:52)
- Gp130細胞外ドメイン-2XGGGGSリンカー-FCGR1A細胞外ドメイン-Gp130膜貫通ドメイン-ロイシンジッパー-N末端シンテニン(非限定的な例として、配列番号:46)
- Gp130細胞外ドメイン-2XGGGGSリンカー-FcRN細胞外ドメイン-Gp130膜貫通ドメイン-ロイシンジッパー-N末端シンテニン(非限定的な例として配列番号:43)
- Gp130細胞外ドメイン-2XGGGGSリンカー-Zドメイン-Gp130膜貫通ドメイン-ロイシンジッパー-N末端シンテニン(非限定的な例として、配列番号:34)
- トランスフェリン受容体-2XGGGGSリンカー-FCAR細胞外ドメイン(非限定的な例として、配列番号:56)
- トランスフェリン受容体-2XGGGGSリンカー-FCGR1A細胞外ドメイン(非限定的な例として、配列番号:50)
- トランスフェリン受容体-2XGGGGSリンカー-FcRN細胞外ドメイン(非限定的な例として、配列番号:41)
- トランスフェリン受容体-2XGGGGSリンカー-Zドメイン(非限定的な例として、配列番号:38)
- CD63-FCAR細胞外ドメインCD63第1ループ及びCD63第2ループ(非限定的な例として、配列番号:53)
- CD63-FCGR1A細胞外ドメインCD63第1ループ及びCD63第2ループ(非限定的な例として、配列番号:47)
- CD63-FcRN細胞外ドメインCD63第1ループ及びCD63第2ループ(非限定的な例として、配列番号:44)
- CD63-ZドメインCD63第1ループ及びCD63 第2ループ(非限定的な例として、配列番号:35)
- TNFR細胞外ドメイン-2XGGGGSリンカー-FCAR細胞外ドメイン-TNFR膜貫通ドメイン-foldon-N末端シンテニン(非限定的な例として、配列番号:51)
- TNFR細胞外ドメイン-2XGGGGSリンカー-FCGR1A細胞外ドメイン-TNFR膜貫通ドメイン-foldon-N末端シンテニン(非限定的な例として、配列番号:45)
- TNFR細胞外ドメイン-2XGGGGSリンカー-FcRN細胞外ドメイン-TNFR 膜貫通ドメイン-foldon-N末端シンテニン(非限定的な例として、配列番号:42)
- TNFR細胞外ドメイン-2XGGGGSリンカー-Zドメイン-TNFR 膜貫通ドメイン-foldon-N末端シンテニン(非限定的な例として、配列番号:33)
- Zドメイン--2XGGGgSリンカー-Lamp2b(非限定的な例として、配列番号:37)
- Z ドメイン-4XGSリンカー-Lamp2b(非限定的な例として、配列番号:36)
-トランスフェリン受容体-タンパク質AG(非限定的な例として、配列番号:72に操作可能に融合する、非限定的な例として配列番号:72)
【0031】
前述の融合タンパク質は、本発明が考慮する多くの操作可能性の単なる例であり、本発明の非限定的な実施形態に過ぎない。本発明に係る融合タンパク質の全成分は、自由に組み合わせることができ、例えば、融合タンパク質は、C末端、N末端又はその両方、又は融合タンパク質のどこかに配置することができる一又はいくつかのエキソソームポリペプチドを含むことができる。さらに、融合タンパク質は、一又はいくつかのFc結合ポリペプチドを含んでいてもよく、C末端、N末端又はその両方、又は、例えば膜貫通ドメインの一又は複数のループ、又は融合タンパク質のどこかに配置することができる。明白にするために、1つ以上のエキソソームポリペプチド及び1つ以上のFc結合ポリペプチドは、単一構築物に含むことができる。さらに、(アミノ酸グリシン及びセリンを含むことが多い)リンカー及びHisタグ等のアミノ酸の追加の伸長物は、精製、アッセイ及び視覚化を単純にするために含まれていてもよい。また、他のペプチド及びポリペプチドドメインは、融合タンパク質の配列のどこかに含まれてもよい。例えば、様々なサイトカイン受容体の様々なドメイン及び領域、例えば、TNFR1、TNFR2、IL17R、IL23R、gp130、IL6R等の様々なドメインが有利に含まれていてもよい。
【0032】
さらなる実施形態において、Fc結合ポリペプチドは、前述のように、Fcドメインを含むタンパク質に結合し、抗体だけでなくFcドメインを含む他のタンパク質、前述のいくつかの例で記述した自然発生と操作したFcドメインを含むタンパク質の両方にも結合することができる。有利なこととして、本発明は、Fc結合ポリペプチドと少なくとも1つのFc含有タンパク質との相互作用によって、Fcドメインを含む複数のタンパク質で被覆したEVを生じる。Fc結合体とFc含有タンパク質との相互作用は、通常、Fc結合ポリペプチドとFc含有タンパク質のFcドメインの間の非共有結合に基づく。当然のこととして、1つのEVは、1つ以上のFcドメイン含有タンパク質で被覆されてもよい。1つの非限定的な例において、Fc結合EVは、PD1軸に沿って適切な標的を標的にする1つの抗体で被覆され、別の抗体は、CTLA4軸に沿って適切な標的を標的にする。別の非限定的な例において、Fc結合Evは、腫瘍細胞表面受容体を標的にする抗体及びFcドメインに融合したCas9で被覆される。1つのEVは、また、通常のように、1種類のモノクローナル抗体の1種類のFcドメイン含有タンパク質を実質的に複数含んでもよい。標的抗体、治療用抗体、目的のFc含有非抗体治療用タンパク質、抗体薬物複合体(ADC)、及びオプソニン作用及び/又は免疫細胞媒介性クリアランスを減少させるための抗体の様々な組み合わせが本発明の好ましい実施形態を構築する。有利な実施形態において、本発明に係るEVは、Fcドメインを含む複数のタンパク質で被覆される。例えば、CD63又はCD81又はシンテニン等の高度に発現したEVタンパク質を使用する場合、EVの表面の非常に緻密な被覆を達成することができる。したがって、本発明は、Fcドメインを含む少なくとも10個のタンパク質、好ましくは、Fcドメインを含む少なくとも20個のタンパク質、より好ましくはFcドメインを含む少なくとも30個のタンパク質で被覆することができる。このようなタンパク質は、同タンパク質(例えば、1つのEVを被覆する50個のエタネルセプト分子)又は1つ以上のタンパク質(例えば、30個のエタネルセプト分子及び1つのEVを被覆する30個のgp130-Fcドメイン)のコピーであってもよい。EVタンパク質とFc結合体の最適な組み合わせを選択することによって、おそらくさらなる表示を増加させることができ、特定の場合において、Fcドメインを含む50個以上のタンパク質、又はさらにFcドメインを含む約75個以上のタンパク質でEVを被覆することが可能になる。
【0033】
さらなる態様において、本発明は、また、ディスプレイポリペプチド及びFc結合ポリペプチドとの間に融合タンパク質を含む細胞に関する。ディスプレイポリペプチドは、通常、膜貫通タンパク質であってもよい。様々なエキソソームポリペプチドをこの目的のために使用することができ、T細胞受容体膜貫通ドメイン等の一般的な細胞膜貫通タンパク質、インターロイキン受容体、トランスフェリン受容体、スタンニン、サルコリピン、ホスホランバン、及びチャンネル及びシンポーター等の様々な膜タンパク質を使用することができ、目的のFc含有タンパク質が、細胞内に存在するか、又は細胞表面に表視されるかどうかに依存して、Fc結合ポリペプチドを細胞膜に輸送して、細胞膜の外側又は内側に表示することができる。好ましい実施形態において、Fc含有タンパク質は、抗体であり、細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞等の細胞療法のために意図した細胞である。このアプローチを使用して、細胞を目的の特定の組織に標的化することができ、CAR-T細胞の場合において、目的の組織は、腫瘍組織である可能性がある。MSC等の免疫調節細胞の場合において、目的の組織は、炎症及び/又は損傷の部位である可能性がある。本明細書の全ての抗体及び他のFc含有タンパク質は、EVについての同じ理由のために、細胞に示されるのに同様に適している。
【0034】
別の態様において、本発明は、(i)エキソソームポリペプチド及び(ii)Fc結合ポリペプチドを含む融合タンパク質と、Fcドメインを含むタンパク質との間で形成される複合体に関する。本発明に係るEVは、通常、このような複合体を複数含み、例えば、立体障害に関係する問題がなく、通常、EVに示される複合体の数が多いほど、EVは、治療及び/又は標的の見地からより強力になる。このような融合タンパク質Fc含有タンパク質複合体は、通常、エキソソーム膜への輸送及びアンカリングを媒介するエキソソームタンパク質の存在によって、EVの脂質膜に存在する。しかしながら、複合体は、他の脂質膜、例えば、細胞膜又は細胞小器官の膜に存在することもできる。本発明に係るEVは、また、Fc含有タンパク質を有するナノ粒子複合体の種類を形成する。通常、前述のように、Fc結合ポリペプチドを含むEVはそれぞれ複数のFc含有タンパク質に結合し、被覆(装飾)され、及び/又は複数の目的のFc含有タンパク質を含むEVになる。これは、このような抗体でインキュベーションすることで抗体に結合することができるFc結合EVが、複数の抗体、例えば、EVにつき少なくとも10個の抗体、より多くはEVにつき少なくとも20又は30個の抗体で、その表面を装飾することの例である。したがって、EV抗体複合体は、標的、治療及び細胞内送達のためにかなりの有用性を有するナノ粒子複合体の種類を構成する。
【0035】
重要なこととして、本発明は、Fc含有タンパク質を内因性にEVに負荷する方法も提供する。このような内因性の負荷方法は、(i)エキソソームポリペプチド及びFc結合ポリペプチドを含む融合タンパク質、及び(ii)Fcドメインを含む目的のタンパク質のEV産生細胞において共発現することを含む。Fc結合ドメインに融合するエキソソームポリペプチドは、融合タンパク質をEV産生細胞のEVに能動的に選別することを可能にし、Fc結合タンパク質の存在によって、融合タンパク質は、Fc含有タンパク質をEVに引きずる(輸送する)ことができる。前述のように、様々なエキソソームタンパク質を使用して、融合タンパク質をEVに選別することができ、とりわけ、内因性負荷の場合には、タンパク質の選択がかなり重要になる。アリックス及びシンテニン等の可溶性EVタンパク質は、Fc含有タンパク質の負荷に適しており、好ましくは標的細胞の内部に可溶性であるCas9等の標的環境に可溶性であることを意味する。しかしながら、Fc含有タンパク質の内因性負荷は、また、CD9、CD81、CD63等の膜貫通及び/又は膜関連EVタンパク質で達成することができる。内因性負荷のために膜結合エキソソームタンパク質を使用する場合、Fc結合ポリペプチドは、代わりに、小胞外側ではなく、EV膜の内腔側のループに置かれ、内腔を小胞外負荷とは違うものにすることができる。したがって、本発明に係るEVは、通常、複数のこのような融合タンパク質-Fcドメイン含有タンパク質複合体(「複数」は、同じFcドメイン含有タンパク質又はいくつかの異なるFcドメイン含有タンパク質の複数のコピーに関係すると理解される)を含み、内側又は外側のEV膜、又はEVの内腔に本質的に可溶性の形態で、留まるか又は結合する。
【0036】
さらなる態様において、本発明は、抗体等のFcドメインを含むタンパク質及びFcドメインを含むように操作したタンパク質に結合することができるEVを産生する方法に関する。このような方法は、通常、(i)少なくとも1つのFc結合ポリペプチド及び少なくとも1つのエキソソームポリペプチドを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド構築物を、EV源細胞に導入し、(ii)EV産生源細胞によって分泌されたEVを回収するステップを含み、EVは、ポリヌクレオチド構築物から発現した融合タンパク質を含む。次のステップにおいて、融合タンパク質を含むEVは、適切な精製技術を用いて精製することができ、次に、抗体等のFcドメイン含有タンパク質に暴露して、Fc結合ポリペプチドと目的のタンパク質のFcドメインとの相互作用によって、Fc含有タンパク質を結合することができる。前述のように、代替の実施形態において、ステップ(i)は、同EV源細胞のポリヌクレオチド構築物から目的のFc含有タンパク質を発現し、それによってEVの内因性負荷を達成することも含むことができる。(エキソソームポリペプチドとFc結合ポリペプチド間の)融合タンパク質及びFc含有タンパク質は、構築物の設計に依存して、同じ又は異なるポリヌクレオチドから発現することができる。
【0037】
別の態様において、本発明は、抗体等のFcドメインを含む少なくとも1つのタンパク質をEVに結合する方法に関する。一実施形態において、方法は、Fcドメインを含む前記少なくとも1つのタンパク質でEVを被覆するためにある。当該方法は、(i)少なくとも1つのエキソソームポリペプチドに融合した少なくとも1つのFc結合タンパク質を含む融合タンパク質を含むEVを提供し、(ii)融合タンパク質のFc結合タンパク質を、Fcドメインを含む少なくとも1つのタンパク質のFcドメインに結合するステップを含む。本発明に係る融合タンパク質を含むEVの産生に使用するEV源細胞は、融合タンパク質-Fc含有タンパク質複合体を有するEVを生成するために必要なポリヌクレオチド構築物で安定的、又は一過性にトランスフェクトしてもよい。安定的なトランスフェクションは、マスターセルバンク(MCB)及びワーキングセルバンク(WCB)の作製が可能であるため、有利である。しかしながら、一過性のトランスフェクションも、例えば、異なる構築物を評価するとき、又は例えば、患者自身のEV産生細胞から得たEVを含む自家治療薬を素早く作製するときに有利である。
【0038】
さらなる態様において、本発明は、目的のタンパク質を、標的細胞の細胞内環境にインビトロ、エクスビボ又はインビボに送達する方法に関する。このような方法は、(i)少なくとも1つのFc結合ポリペプチドを含むEVを提供し、(ii)EVに含まれるFc結合ポリペプチドと、Fc含有タンパク質のFcドメインとを結合するために、Fc結合ポリペプチドを含むEVをFc含有タンパク質に接触させ、及び(iii)EVとFc含有タンパク質の間で形成した複合体(すなわち、Fc結合ポリペプチドとFcドメインとの相互作用によって、EVに結合した少なくとも1つのFc含有タンパク質を有するEV)を、標的細胞に接触させるステップを含む。好ましい実施形態において、Fc結合ポリペプチドは、少なくとも1つのエキソソームポリペプチド(他のポリペプチド及びドメインであってもよい)と一緒に、融合タンパク質に含まれる。標的細胞に内部移行するEVのユニークな能力によって、Fc含有タンパク質も内部移行する。このことは非常に有利なことであり、実質的なタンパク質ベースの治療薬を送達する細胞内空間を開ける。前述のように、Fc含有タンパク質のEV媒介性内部移行は、インビボとインビトロの両方で行われ、これらの方法は、治療の開発だけでなく研究及び診断目的にも重要な影響を有しうる。
【0039】
さらなる態様において、本発明は、抗体及び他の目的のFcドメイン含有タンパク質のための送達ビヒクルとして、EVを使用することに関する。さらに、本発明は、他の目的の治療薬のための送達ビヒクルとして、Fc含有タンパク質に結合したEVの使用も提供する。非限定的な例として、標的抗体の表面に結合したEVは、EVの内部及び/又はEV膜の何れかに存在しうる追加の治療薬も含んでもよい。例えば、抗体で被覆されたEVは、(mRNA、siRNA、オリゴヌクレオチド等の)RNA治療薬カーゴを標的細胞、組織及び/又は臓器に送達するために使用してもよい。別の非限定的な例として、Fc含有標的タンパク質(Fcドメインを含有するように操作されたscFvなど)の表面に結合し、EVの内部又はEV膜の中/上に、遺伝子編集のためのCas9等の治療用タンパク質を含むEVは、CRISPR RNAガイド鎖と共にあってもよい。
【0040】
さらなる態様において、本発明の方法は、結果として得られるEVの収率又は特性に影響を与えるために、EV源細胞を血清飢餓、低酸素、バフィロマイシン又はTNFα及び/又はIFNγ等のサイトカインに暴露することも含んでもよい。EV産生のスケール及びタイムラインは、EV産生細胞又は細胞株にかなり依存し、当業者に応じて適応してもよい。本発明に係る方法は、さらにEV精製ステップを含むことができ、EV精製ステップは、EVに結合した(例えばEV上で被覆された)(抗体等の)Fcドメイン含有タンパク質で融合タンパク質を含むEVを共培養する前に、実施してもよい。EVは、液体クロマトグラフィー(LC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ビーズ-溶出液クロマトグラフィー、スピンろ過、タンジェント流ろ過(TFF)、中空糸ろ過、遠心分離、免疫沈降、フィールドフローフラクショネーション、透析、微少流体に基づく分離又はその組み合わせを含む技術の群から選択される方法によって精製することができる。有利な実施形態において、EVの精製は、ろ過の連続した組み合わせ(好ましくは限界ろ過(UF)、タンジェント流ろ過又は中空糸ろ過)及びサイズ排除液体クロマトグラフィー(LC)又はビーズ-溶出液クロマトグラフィーを用いて実施する。精製ステップを組み合わせることで、最適化した精製になり、次に、優れた治療活性を導く。さらに、エキソソームを精製するために通常使用する限界ろ過(UC)に比べて、連続ろ過クロマトグラフィーは、非常に速く、先行技術を占める現在のUC方法の重大な欠点であるより多くの製造量に対応することができる。別の有利な精製方法は、タンジェント流ろ過(TFF)であり、スケーラビリティ及び純度を提供し、他の種類の精製技術と組み合わせることができる。
【0041】
別の態様において、本発明は、通常、本発明に係るEVの集団の形態のEVを含む医薬組成物に関する。通常、本発明に係る医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と調合した1種類の治療用EV(すなわち、特定の種類の融合タンパク質を含み、及び抗体等の一又は複数の種類のFc含有タンパク質によって被覆したEVの集団;Cas9-Fc融合タンパク質及びFc-RNP融合複合体;Fcドメインに融合したリソソーム蓄積症酵素)を含む。しかしながら、1つ以上の種類のEV集団は、当然のこととして、例えば、組み合わせの抗体治療が望ましい場合に、単一の医薬組成物に含まれてもよい。しかし当然ながら、前述のように、単一のEV又は単一のEVの集団は、EV表面に結合した1つ以上のFc含有タンパク質(例えば、抗体)を含んでもよい。少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤は、薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクルを含む群から選択されてもよく、例えば、固体又は液体充填剤、希釈剤、賦形剤、担体、溶媒又は封止剤であり、活性を保留にし、維持し、又はEV集団を1つの臓器、又は身体の部分から別の臓器又は身体の部分(例えば、血液から目的の組織及び/又は臓器及び/又は身体部分)に運ぶ又は輸送することに関与することができる。
【0042】
本発明は、また、EVの化粧品用途に関する。したがって、本発明は、乾燥肌、しわ(wrinkle)、しわ(fold)、稜及び/又は皮膚のたるみ等の症状及び問題を改善し、及び/又は緩和するために、EVを含むスキンケア製品、例えば、クリーム、ローション、ゲル、エマルジョン、軟膏、ペースト、パウダー、リニメント、日焼け止め、シャンプーに関する。一実施形態において、(例えば、目的の抗体に結合する融合タンパク質を運ぶ)EVは、再生特性(例えば、MSC)を有する適切なEV産生細胞源から得られ、乾燥肌、しわ(wrinkle)、しわ(line)、しわ(fold)、稜及び/又は皮膚のたるみの美容又は治療的緩和に使用するための化粧用クリーム、ローション、又はゲルに含まれる。
【0043】
別の態様において、本発明は、医学に使用する本発明に係るEVに関する。当然のこととして、(抗体等の)目的のタンパク質のFcドメインに結合した融合タンパク質を含むEVを医学で使用する場合、実際には、通常、EVの集団を使用する。患者に投与するEVの用量は、EV面に被覆した目的の抗体の数、治療又は緩和する対象の疾患又は症状、投与経路、治療用タンパク質自体の薬理学的作用、EVの生来備わっている特性、標的抗体又は他の標的属性の存在、ならびに当業者に知られている関連の様々な他のパラメータに依存する。
【0044】
Fc含有タンパク質を運ぶ本発明のEVは、いくつかの異なる治療的、薬学的態様のために使用してもよい。一実施形態において、EVは、抗体又は特定の細胞種、組織及び/又は臓器を標的にする他のFc含有タンパク質で覆われる。これは、EVを標的にする非常に強力な方法であり、Fc含有タンパク質の他に、目的の組織に対する他の薬剤を含んでいてもよく、標的化した薬物送達のステップチャンスを示すことができる。別の実施形態において、治療用抗体又は目的の標的抗原に相互作用するFcドメイン含有タンパク質を、生物学的バリアを通過する能力を有するEVを用いて、通常は到達することが困難な目的の組織に効率的に送ることができる。このアプローチは、例えば、モノクローナル抗体を中枢神経又は脳に送達することができる。別の実施形態において、EVをFc含有タンパク質で被覆することは、標的の結合活性又は目的の標的への結合の構造を向上させ、又は影響を与えるために、目的のFc含有タンパク質を多重化する方法である。別の実施形態において、本発明に係るEVは、抗体薬物複合体(ADC)又は受容体-薬物複合体の送達及び有効性を改善することができ、ADCの多重化によって治療有効性が著しく向上するため、ADCがEVに存在することは、ADCの標的細胞への進入を可能にすることも意味する。さらなる実施形態において、EVの標的細胞に進入する能力は、本発明のEVが全体の細胞内空間を開き、Fcドメインを含む本質的に任意のタンパク質及び/又はFcドメインが融合することができるタンパク質によってドラッガブルにする(酵素補充療法のための酵素、Cas9等のヌクレアーゼ、又はp53、pVHL、APC、CD95、ST5、YPEL3、ST7及びST14の何れか1つ等の腫瘍抑制剤)。
【0045】
本発明に係るEV及びそのEV集団は、したがって、例えば、様々な疾患及び障害の予防及び/又は治療及び/又は緩和に使用するために、予防及び/又は治療目的で使用することができる。本発明に係るEVを適用することができる疾患の非限定的な例として、クローン病、潰瘍性大腸炎、強直性脊椎炎、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、サルコイドーシス、特発性肺線維症、乾癬、腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連性周期症候群(TRAPS)、インターロイキン-1受容体アンタゴニストの欠乏(DIRA)、子宮内膜症、自己免疫性肝炎、強皮症、筋炎、脳卒中、急性脊髄損傷、血管炎、ギラン・バレー症候群、急性心筋梗塞、ARDS、敗血症、髄膜炎、脳炎、肝不全、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、腎不全、心不全又は急性もしくは慢性臓器不全及び関連の基礎病因、移植片対宿主病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー及び他の筋ジストロフィー、ゴーシェ病等のリソソーム蓄積症、ファブリー病、MPS I、II(ハンター症候群)及びIII、ニーマン・ピック病、ポンペ病、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病及びその他のトリヌクレオチドリピート関連疾患を含む神経変性疾患、認知症、ALS、癌誘発性悪液質、食欲不振、2型糖尿病及び様々な癌が挙げられる。実質的に癌種の全てが、本発明の関連する疾患の標的であり、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫、
小脳又は大脳の基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳幹神経膠腫、脳癌、脳腫瘍(小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上初期神経外胚葉性腫瘍、視覚路及び視床下部神経膠腫)、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(小児、消化管)、未知の初期腫瘍、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌(眼球内黒色腫、網膜芽細胞腫)、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞性腫瘍(頭蓋外、性腺外又は卵巣)、妊娠性絨毛腫瘍、神経膠腫(脳幹の神経膠腫、アストログリオーマ、視覚路及び視床下部神経膠腫)、胃カルチノイド、ヘアリーセル白血病、頭頸部癌、心臓癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼球内黒色腫、膵島細胞癌(膵島)、カポジ肉腫、腎臓癌(腎細胞癌)、喉頭癌、白血病((急性リンパ芽球性白血病(急性リンパ性白血病(acute myelogenous leukemia)とも呼ぶ)、急性骨髄性白血病(急性骨髄性白血病)、慢性リンパ性白血病(慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia)とも呼ぶ)、慢性骨髄性白血病(慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia)とも呼ぶ)、ヘアリーセル白血病))、口唇及び口腔内癌、脂肪肉腫、肝癌(初期)、肺癌(非小細胞、小細胞)、リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、髄芽腫、メルケル細胞癌、中皮腫、潜在性原発転移性扁平上皮頸部癌、口こう癌、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉症、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病(急性、慢性)、骨髄腫、鼻腔及び副鼻腔新生物、上咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣癌、卵巣上皮癌(表面上皮間質腫瘍)、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵癌、膵島細胞癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体星状細胞腫、松果体胚腫、松果体芽腫及びテント上未分化神経外胚葉性腫瘍、下垂体腺腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌(腎臓癌)、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫(ユーイング腫瘍肉腫、カポジ肉腫、軟部肉腫、子宮肉腫)、セザリー症候群、皮膚癌(非黒色腫性、黒色腫性)、小腸癌、扁平細胞、扁平細胞頭頸部癌、胃癌、テント上未分化神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽頭癌、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管の移行上皮癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、腟癌、外陰癌、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症及び/又はウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0046】
ヒト又は動物対象に投与することができる本発明に係るEVの様々な投与経路として、例えば、耳介(耳)、頬側、結膜、歯、電気浸透、子宮頸管内、洞内、気管内、腸内、硬膜外、羊膜外、体外、血液透析、浸潤、間質内、腹腔内、羊水内、動脈内、関節内、胆管内、気管支内、嚢内、心臓内、軟骨内、仙骨内、空洞内、腔内、脳内、大槽内、角膜間、歯冠内(歯科)、冠内、体内海綿体、皮内、円板内、管内、十二指腸内、硬膜内、表皮内、食道内、胃内、歯肉内、回腸内、病巣内、腔内、リンパ管内、髄内、髄膜内、筋肉内、眼内、卵巣内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、intrasinal、脊髄内、関節滑液嚢内、腱内、精巣内、くも膜下腔内、胸腔内、管内、腫瘍内、鼓室内、子宮内、血管内、静脈内、急速静注、点滴静注、脳室内、膀胱内、硝子体内、イオン泳動、灌水、喉頭、経鼻、鼻腔胃、密封療法、眼、経口、中咽頭、他、非経口的、経皮的、関節周囲、硬膜外、神経周囲、歯周、直腸、呼吸(吸入)、眼球後、軟部組織、くも膜下、結膜下、皮下、舌下、粘膜下、局所的、経皮的、経粘膜的、経胎盤性、経気管、経鼓室、尿管、尿道及び/又は腟内投与及び/又は前述の投与経路の組み合わせが挙げられ、投与経路は、通常、治療する疾患、及び/又は抗体又はこのようなEV集団の特徴に依存ずる。
【0047】
本発明に係る適切な標的抗体は、例えば、腫瘍、固形臓器、体構造、細胞又は組織タイプに由来する抗原を標的にすることができる。標的抗体によって標的にすることができる抗原の由来の非限定的な例として、肝臓、肺、腎臓、心臓、膵臓、副腎、甲状腺、副甲状腺、全ての脳領域(例えば、視床、視床下部、線条体)を含む脳、血液脳関門、CNS、PNS、骨髄、皮膚、血管系、脾臓を含むリンパ系、関節、眼、筋肉組織、炎症部位、損傷部位、脂肪細胞等の細胞種、筋肉細胞(筋芽細胞及び筋管)、衛星細胞、心細胞、内皮細胞、線維芽細胞、肝細胞、腎細胞、周皮細胞、ニューロン、グリア細胞、星状細胞、オリゴデンドロサイト、マクロファージ、DC細胞、B細胞、T細胞、NK細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、骨細胞、上皮細胞、赤血球、多能性造血幹細胞/血球芽細胞等の初期前駆体、骨髄系前駆細胞、リンパ球前駆細胞が挙げられる。標的癌に関連する抗原の非限定的な例として、腺癌抗原、α-フェトプロテイン、BAFF、C242抗原、CA-125、炭酸脱水酵素9(CA-IX)、ジシアロガングリオシド(GD2)、4-IBB、5T4、CD22、CD221、CD23(IgE受容体)、CD28、CD30(TNFRSF8)、CD33、CD4、CD40、CD44 v6、CD51、CD52、CD56、CD74、CD80、CEA、CNT0888、CTLA-4、DR5、EGFR、EpCAM、CD3、FAP、フィブロネクチンエキストラドメイン-B、葉酸受容体1、GD2、GD3ガングリオシド、糖タンパク質75、GPNMB、HER2/neu、HGF、ヒトHGFレセプターキナーゼ、IGF-1受容体、IGF-I、IgG1、LI-CAM、IL-13、IL-6、インスリン様増殖因子I受容体、インテグリンα5β1、インテグリンανβ3、レグマイン、MORAb-009、MS4A1、MUC1、ムチンCanAg、C-MET、CCR4、CD152、CD10、CD19、CD20、CD200、N‐グリコリルノイラミン酸、NPC-IC、PDGF-Ra、PDL192、ホスファチジルセリン、腫瘍抗原CTAA16.88、VEGF-A、VEGFR-1、VEGFR2、ビメンチン、RANKL、RON、ROR1、SCH900105、SDC1、SLAMF7、TAG-72、テネイシンC、TGFβ2、TGF-β、TRAIL-R1、TRAIL-R2、葉酸受容体、トランスフェリン受容体及びその組み合わせが挙げられる。
【0048】
オプソニン作用及び/又は本発明に係る免疫細胞媒介性EVクリアランスを防ぎ又は減少するために、抗体又はEVを被覆する他のFcドメイン含有タンパク質は、本質的に、血清又は他の体液に本来存在する抗体等のFc含有タンパク質であってもよい。したがって、このような抗体は、例えば、IgG、IgA、IgM、IgE及び/又はIgDの種類であってもよいが、Fcドメインを含み、インビボでEVのオプソニン作用を防ぐ能力を有する他のタンパク質をEVの被覆に使用することもできる。したがって、EVを被覆して、免疫によるクリアランスを回避する又は減少することは、能動的又は受動的に行われ、活性被覆は、インビボで使用する前に、Fcドメインを含む適切なタンパク質で目的のEVを装飾することを伴ってもよい。この目的のための適切なFc含有タンパク質は、Fcドメインに融合した因子H及び/又は因子Iを含む。因子H及び因子Iは、(C3をC3bに変換することを阻害することによって)補体系の負制御因子であり、それによりFcドメインに融合し、Fc結合ポリペプチドと融合タンパク質のFcドメインとの結合によって、EV表面に結合するとき、EVクリアランスが減少する。一方で、受動的被覆は、目的のEVを利用可能な非結合Fc結合体でインビボにタンパク質を隔離することを伴う。
【0049】
さらなる実施形態において、本発明に係る治療用及び/又は標的抗体の適切な非限定的な例として、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、トラスツズマブエムタンシン(Adotrastuzumab emtansine)、アデュカヌマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブアレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブペンテタート、アマツキシマブ、アナツモマブマフェナトックス、アニフロルマブ、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ、アテゾリズマブ、アチヌマブ、アトリズマブ、Atorolimuma、アベルマブ、バピネオズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビマグルマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブリナツモマブ、ブロソズマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ、カツマキソマブ、cBR96-ドキソルビシン免疫抱合体、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、シタツズマブボガトキス、シクツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、コンシズマブ、クレネズマブ、CR6261、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダラツムマブ、デムシズマブ、デノスマブ、デツモマブ、ジヌツキシマブ、ドルリモマブアリトクス、ドロジツマブ、デュリゴツマブ、デュピルマブ、デュルバルマブ、デュシジツマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、 エファリズマブ、エフングマブ、エルデルマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エナバツズマブ、エンリモマブペゴール、エナバツズマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタネルセプト、エタラシズマブ、エトロリズマブ、エボロクマブ、エクスビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファーレツズマブ、ファシヌマブ、FBTA05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガリキシマブ、ガニツマ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、グセルクマブ、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イクルクマブ、イゴボマブ、IMAB362、イムシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブラブタンシン、インフリキシマブ、インテツムマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ,)ケリキシマブ、ラベツズマブ、ラムブロリズマブ、ランパリズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レルデリムマブ、レキサツムマブ、リビビルマブ、リゲリズマブ、リンツズマブ、リリルマブ、ロデルシズマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マーゲツキジマブ、マスリモマブ、マブリリムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モガムリズマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、モキセツモマブパスドトクス、ムロモナブ-CD3、ナコロマブ・タフェナトクス、ナミルマブ、ナプツモマブエスタフェナトクス、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オヅリモマブ、オファツムマブ、オララツマ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オンツキシズマブ、オポルツズマブモナトキス、オレゴボマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オトレルツズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パジバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パンコマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、ペムブロリズマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマ、ペキセリズマブ、ピディリズマブ、ピナツズマブベドチン、ピンツモマブ、プラクルマブ、ポラツズマブベドチン、ポネズマブ、プリリキシマブ、プリトキサキシマブ、プリツムマブ、PRO140、キリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リサンキズマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロレデュマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サマリズマブ、サリルマブ、サツモマブペンデチド、セクキヌマブ、セリバンツマブ、セトキサキシマブ、セビルマブ、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、シルクマブ、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマ、スタムルマブ、スレソマブ、スビズマブ、タバルマブ、タズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テプロツムマブ、チシリムマブ、チルドラキズマブ、ティガツズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、トシツモマブ、ベキサール、トベツマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、トレガリズマブ、トレメリムマブ、ツコズマブセルモロイキン、ユブリツキシマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バンチクツマブ、バパリキシマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビジリズマブ、ボロシキシマブ、ボルセツズマブマホドチン、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ジラリムマブ、ゾリモマブアリトクス又はその組み合わせが挙げられる。重要なこととして、本発明は、標的が細胞内及び/又は細胞外であるかに関わらず、抗体の送達を提供する。抗体を効率的に内部移行する本発明のEVの能力は、モノクローナル抗体の発現の段階変化を示し、抗原及び標的細胞の細胞内コンパートメント全体の標的を標的にすることができる。重要なこととして、本発明に係る抗体及びFc含有タンパク質は、有利なことに、例えば、フルオロフォア、MRI剤、PET剤、放射線活性剤、酵素、ナノ粒子、金属、有機化合物及び無機化合物等を用いて、検出及びイメージングのために標識することができる。
【0050】
前述の例示的な態様、実施形態、代替物及び変異体は、本発明の範囲を逸脱することなく修正することができる。本発明は、含まれる例でさらに例示し、当然のこととして本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、大きく修正することもできる。
【0051】
実験部分
材料及び方法
構築物の設計及びクローニング少なくとも1つのエキソソームポリペプチド及び少なくとも1つのFc結合ポリペプチドを含む様々な融合タンパク質を構築し、ベクターにクローンし、いくつかの異なるEV産生細胞源に産生した。ORFは、合成によって通常は生成され、哺乳動物の発現ベクターpSF-CAG-Ampにクローンした。端的には、合成したDNA及びベクタープラスミドは、製造者の指示(NEB)によって、酵素Notl及びSailで消化した。制限され、精製されたDNAは、製造者の指示によって、T4リガーゼを用いて一緒に連結した。成功した連結イベントは、アンピシリン補充プレートで細菌の形質転換によって選択した。トランスフェクションのためのプラスミドは、製造者の指示によって、マキシプレパレーション(Max Prep)によって生成した。
【0052】
Fc含有タンパク質が、融合タンパク質を発現する同EV産生細胞源で内因性に生成した場合、ORF配列は購入し(Origene Technologies、Inc.)、増幅し、pIRESバイシストロニック発現ベクター(Clonetech、Laboratories Inc.)のMSC Aサイトにクローンし、翻訳時にエキソソームポリペプチドを1つの構築物のFc結合ポリペプチドに融合し、目的のFc含有タンパク質は、(別々の構築物又は同構築物から)別々に翻訳し、EVに輸送し、EV産生細胞源に形成した。多くのクローニングはNEBuilder HiFi DNAアセンブリクローニングキット(NEB、Inc.)を用いて行い、サンガー法(Source Bioscience)を用いて確認した。pIRESベクターは両方の導入遺伝子のバイシストロニック発現を同時に可能にし、EV産生細胞が、融合タンパク質と目的のFc含有タンパク質の両方を同時に発現することを確実とする。プラスミドをNEB 5-α成分大腸菌細胞(NEB、Inc.)に形質転換し、製造者の推奨に従って振盪培養器で一晩増殖した。プラスミドを単離し、製造者の指示に従って、「マキシプレパレーション(Max Prep)プラスミドDNA生成キット」(Qiagen)を用いて精製した。
【0053】
・細胞培養及びトランスフェクション
実験の設計及びアッセイによって、特定の場合において、非ウイルス一過性導入及びエキソソーム産生を通常の2D細胞培養で行い、他の場合では、ウイルス媒介性形質導入を使用して、安定した細胞株を作製し、通常は、異なる種類のバイオリアクターで培養した。簡潔にするために、2、3個の例のみを本明細書では述べる。
【0054】
通常、HEK293T細胞を15cmの皿に蒔き(皿に9x106個の細胞)、ATCCが推奨する血清含有DMEMに一晩放置した。次の日、細胞を、細胞に直接加えたリポプレックスしたDNAで一過性にトランスフェクトした。端的には、DNA及びポリエチレンイミン(PEI)を別々にOptiMEMに5分間インキュベートし、その後、室温で20分間一緒に合わせた。リポプレックスしたDNA及び細胞を6時間、コインキュベーションし、条件培地をOptiMEMに48時間で変更した。皿、フラスコ及び他の細胞培養容器で評価した他の細胞及び細胞株は、骨髄由来間葉系間質細胞(BM-MSC)及びワルトン膠様質由来MSC(WJ-MSC)、羊膜細胞、線維芽細胞、様々な内皮及び上皮細胞、ならびに様々な免疫細胞及び細胞株を含んだ。
【0055】
融合タンパク質及び目的のFc含有タンパク質の様々な組み合わせについて、ウイルス形質導入及び安定した細胞株の作製では、BM-MSC、WJ-MSC、線維芽細胞、羊膜細胞、線維芽細胞、様々な内皮及び上皮細胞等の細胞源を、通常はレンチウイルス(LV)を使用してウイルス形質導入した。通常、感染前の24時間で、100.000個の細胞(例えば線維芽細胞、MSC等)又は200.000個の細胞(例えばHEK293T)を6ウェルの皿に蒔く。2uLのLV及び任意にポリブレン(又はウェルの最終濃度が8ug/mLのヘキサジメトリン臭化物)を加え、形質導入後24時間で、形質導入下細胞の細胞培地を新鮮な完全培地に変更する。形質導入後72時間で、ピューロマイシンの選択(4~6μg/ml)を行い、通常、7日間、エキソソームポリペプチド及びFc結合ポリペプチドを含む融合タンパク質構築物の安定的発現を分析する。
【0056】
安定した細胞を2D培地又はバイオリアクターの何れか、通常は、中空繊維バイオリアクター又はstir-rankバイオリアクターで培養し、続いてエキソソームの調製のために条件培地を回収した。様々な調製及び精製ステップを行った。標準的なワークフローは、上清の事前洗浄、ろ過に基づく濃縮、タンパク質汚染物のクロマトグラフィーに基づく除去、及びインビトロ及び/又はインビボアッセイのための適切なバッファ中の結果として得られるエキソソーム組成物の任意の調合のステップを含む。
【0057】
・アッセイ及び分析
ウエスタンブロット法は、EVの融合タンパク質の富化を評価するための非常に便利な分析方法である。端的には、製造者の指示に従ってSDS-PAGEを行い(Invitrogen、Novex PAGE 4-12%ゲル)、それによりウェル当たり1x1010個のエキソソーム及び20ugの細胞可溶化物を負荷した。SDS-PAGEゲルのタンパク質を、製造者の支持に従って(Immobilon、Invitrogen)、PVDF膜に移行した。膜をOdysseyブロッキングバッファ(Licor)においてブロックし、供給者の指示に従って(一次抗体-Abcam、二次抗体-Licor)、Fc結合ポリペプチド及び/又はエキソソームタンパク質に対して抗体でプローブした。分子プローブを680及び800nmの波長で視覚化した。
【0058】
EVの大きさを決定するために、分析ソフトウェアを備えたNanoSight装置で、ナノ粒子追跡分析(NTA)を行った。記録のために、ポスト取込み設定について、13又は15のカメラレベル及び自動機能を使用した。電子顕微鏡及び蛍光顕微鏡を頻繁に使用して、細胞内の場所及び放出を理解し、EVを定量化し、分析した。
【0059】
通常は、特にビーズ溶離液LCにおいて、TFF及びLC等のろ過を組み合わせて、EVを様々な方法を用いて単離し、精製した。通常、EV含有培地を回収し、300gで5分間低速スピンに供し、次に、10分間2000gのスピンに供して、大きい粒子及び細胞デブリを除去した。上清を0.22μmのシリンジでろ過し、異なる精製ステップに供した。大量をダイアフィルトレーションし、100kDaのカットオフフィルター又は100又は300kDaのカットオフ中空糸フィルターを備えたKR2iTFFシステム(SpectrumLabs)を有するVivaflow50R接線流(TFF)装置(Sartorius)を用いて、約20mlに濃縮した。濃縮前の培地を次にビーズ-溶出液カラム(HiScreen又はHiTrap Capto Core 700 column、GE Healthcare Life Sciences)に負荷し、AKTAprimeプラス又はAKTA Pure 25クロマトグラフィーシステム(GE Healthcare Life Sciences)に接続した。カラム均衡のための流速の設定、試料の負荷及び適切なカラムの洗浄手順を製造者の指示に従って選択した。試料をUV吸収クロマトグラムに従って回収し、Amicon Ultra-15の10kDa分子量カットオフスピンフィルター(Millipore)を用いて濃縮し、最終容量を100μlにし、さらに下流分析を行うために-80℃で保管した。タンパク質及びRNA溶出特性を評価するために、培地を濃縮し、100kDa及び300kDaの中空糸フィルターを用いてKR2i TFFシステムでダイアフィルトレーションし、試料をTricorn 10/300 Sepharose 4 Fast Flow(S4FF)カラム(GE Healthcare Life Sciences)で分析した。
【実施例】
【0060】
実施例1:IgGのFc結合ポリペプチドを含むEV(Fc結合EV)との結合
EVを、300kdの中空糸フィルターを有するタンジェント流ろ過を用いて、操作したHEK293T細胞(対照対Gp130細胞外ドメイン-2XGGGGSリンカー-Zドメイン-Gp130膜貫通ドメイン-ロイシンジッパー-N末端シンテニン-Hisタグを安定して発現するFc結合構築物)から条件培地を単離し、次に、濃縮するために10kdのスピンフィルターを用いて限界ろ過を行った。Fc結合EVによるIgGについての結合能力を電子顕微鏡及びフローサイトメトリーを用いて評価した。
【0061】
電子顕微鏡について、1x10
Λ9のEVを金ナノ粒子で結合したウサギ抗ヤギ10nm抗体で、37℃で2時間インキュベートした。
図2に示すように、Fc結合EV(A)をナノ金標識した抗体で装飾し(すなわちFc含有タンパク質)、対照EV(B)は結合した抗体を有しない。
【0062】
フローサイトメトリーのために、1x10
Λ8のEVをMACSPlexエキソソームキット、ヒト(Miltenyi Biotec、Order no 130-108-813)の15μlの抗体で被覆した捕捉ビーズを有する120μlのPBSにおいて、16時間、450rpmで、オービタルシェーカーで一晩インキュベートした。洗浄後、3μgのAlexaFluor647結合ヒトIgG Fcフラグメント(Jackson Laboratories、カタログ009-600-008)をEV(A)、対照(B)又はFc結合EV(シンテニン-gp130-zドメイン-gp130)(C)を有しない対照に加えた。室温で1時間インキュベーションを行った後、結合していないFcフラグメントを洗浄し、試料をフローサイトメトリーによって分析した。
図3において、個別の左ドットプロットは、B1-A(励起:488nm、放出フィルター:500-550nm;領域)対B2-A(励起:488nm、放出フィルター:565-605nm、領域)パラメータを使用したハードダイの捕捉ビーズ集団を示す。それぞれの右プロットは、R1-A(励起:635nm、放出フィルター:655-730nm、領域)対B2-Aパラメータを示し、(C)にのみ、AlexaFluor647標識Fcフラグメントが捕捉ビーズに結合したEVに結合することを示している。
図3は、Fc結合EVが、AlexaFluor647標識Fcフラグメント(ヒトIgG)に結合し、2つの負対象ビーズ集団を含む、キットに含まれる製造者の捕捉ビーズ集団上で被覆する39個全ての異なる抗体のFcドメインにも非常に効率的に結合することを示す。
【0063】
実施例2:抗HER2抗体の送達についてのFCGR1A Lamp2B EV
EVを、限界ろ過及びサイズ排除クロマトグラフィーを使用してHEK293T細胞(安定して発現するFCGR1A細胞外ドメイン-4XGSリンカー-Lamp2b又はその野生型対照)から単離した。EVにPKH26赤色蛍光染色で標識を付け、EV及び抗体を37℃で1時間コインキュベーションすることによって、抗HER2抗体又はアイソタイプ対照で装飾した。結合していない抗体をサイズ排除クロマトグラフィーによって除去した。抗体装飾したEVの取り込みを、フローサイトメトリーを使用して、HER2低発現細胞株MDA-MB-231及びHER2高発現細胞株MDA-MB-361で特徴化した。
図4は、抗HER2抗体は、HER2高発現細胞株MDA-MB-361において、装飾したアイソタイプ対照及び野生型EVのみに比べて、装飾したEVの取り込みを増加するが、HER2低発現細胞株MDA-MB-231では増加しないことを示す。同様の結果はCD63-ZZ融合タンパク質を発現するEVで得られた。
【0064】
実施例3:CD81タンパク質A/G融合タンパク質を含むEVによるエタネルセプト送達EVを、限界ろ過及びサイズ排除クロマトグラフィーを使用してHEK293T細胞(安定して発現するCD81-ProteinA/G CD81第2ループ融合タンパク質又はその野生型対照)から単離した。EVを、EV及びエタネルセプトを37℃で1時間、コインキュベーションすることによって、エタネルセプト又は対照抗体で装飾した。結合していないエタネルセプトをサイズ排除クロマトグラフィーによって除去した。エタネルセプト装飾したEVの抗炎症効果を研究するために、よく研究されたTNBS誘発性大腸炎マウスモデルを使用した。このモデルは、腸の炎症、サイトカインストーム及びIBD患者に関連する体重減少を刺激する。24匹のマウスを1群につき6匹のマウスで、4つの治療群に分けた。マウスの皮膚に、腸誘発の前に1週間、2%のTNBSを有するオリーブ油酢酸塩溶液を150μl、皮膚に適用することによって、前感作した。その後、40%のエタノール中の1.5%のTNBSを含有する100μlの溶液を直腸注入することによって大腸炎を誘発した。大腸炎の誘発直後に、200μl中の10E10 EV/gを尾静脈に静脈投与した。
図5は、エタネルセプトで被覆したEVがWT又は対照で装飾したEVとは対照的に、マウスの体重減少を防ぎ、裸のエタネルセプトより高い活性を示し、これは、おそらく、エタネルセプトが多重化し、及び/又はFc結合ポリペプチドがFcドメインに結合するとき、エタネルセプトとTNFアルファとの親和性が高いことによることを示す。
【0065】
実施例4:Fc結合EVによる抗体の細胞内取り込み及び送達
EVを、限界ろ過及びサイズ排除クロマトグラフィーを使用して、ワルトン膠様質由来MSCの条件培地(TNFR細胞外2XGGGGSリンカー-Zドメイン-TNFR膜貫通ドメイン-フォールドオン-N末端シンテニン融合タンパク質又は対照の何れかを安定的に発現する)から単離した。Fc結合EVがAbsの細胞内送達に使用することができるかどうかを調査するために、4x10
Λ11のEVを、合計3μgの AlexaFluor488-標識抗ラミン B2 IgGs [abcam ab200426、ウサギ
モノクローナルEPR9701(B)]を有する400μlに、16時間インキュベートした。取り込みの実験のために、ウェルにつき30,000個のHuh7細胞を48ウェル皿に蒔き、0.675x10
Λ11の抗体標識EVを加える前に16時間インキュベートした。加湿した雰囲気下で、37℃で5%のCO
2で、細胞を2時間インキュベートし、その後、細胞をトリプシン処理し、蛍光顕微鏡(A)及び
図6に示すフローサイトメトリー(B)によって分析し、A)は、位相差画像で合わせた緑色蛍光シグナルを示す。B)のヒストグラムは、x軸に対数目盛の緑色蛍光強度及びy軸に正規化周波数を示す。1:抗体又はEVで処理していないHuH7細胞。2:抗ラミンB2抗体でインキュベートした対照EVで処理したHuH7細胞。3:抗ラミンB2抗体でインキュベートしたFc結合EVで処理したHuH7細胞。
図6は、蛍光抗体のシグナルがFc結合EV+抗体で処理した細胞に明らかに存在し、未処理(1)対照EV処理(2)では蛍光シグナルが存在しないことを示す。このことは、抗体がFc結合EVによって細胞内に送達することができ、EVとの結合が、抗体の細胞への取り込みを劇的に増加させることを実証している。
【0066】
機能的細胞内送達を実証するために、抗NFkB抗体(抗-NFkB-Ab)をそれぞれのEVで、37℃で1時間、インキュベートした。受容体細胞株、NFkB-ルシフェラーゼを安定して発現するHEK細胞を5ng/mlのhTNF-α及びEV-Ab-混合で処理した。処理から6時間後にルシフェラーゼ活性を測定した。
図7は、抗-NFkB-abがFc結合EVによって送達されると阻害が成功することを示す。
【0067】
実施例5:抗インテグリン-4-α-Abで装飾したFc結合EVを用いたEAE処理
C57BL/6マウスに、100ulのMOG
35-55-CFAエマルジョンを皮下投与し、同日に400ngの百日咳毒素を腹腔内注入することによって、実験的自己免疫脳炎(EAE)を誘発させ、2日後に免疫化した。EVを、骨髄由来MSC(安定的に発現するCD9-ZZ(非限定的な例として配列番号:74に操作可能に結合する非限定的な例として配列番号:1を含む融合構築物)ドメイン融合タンパク質又はその野生型対照の何れか)から、実施例1に記載するように単離した。抗インテグリン-4-α抗体(Ab)をそれぞれのEV(zzEV又はctrl-EV)でインキュベートした。7日目に、EAEマウスに抗インテグリン-4a-AbをEVのある場合とない場合で注射した。
図8は、対照-EV及び抗インテグリン-4a-AbがEAEの発症それ自体から中程度の保護効果を示し、抗インテグリン-4a-AbでインキュベートしたzzEVがEAEの発症をほぼ完全に抑制することを示す。
【0068】
実施例6:Fc結合EVを使用したFc-Cas9エンドヌクレアーゼを送達することによる標的ゲノムの欠失
EVを脂肪細胞(安定的にトランスフェクトしたFCGR1A細胞外ドメイン-4XGSlinker-Lamp2b融合タンパク質又は対照としてLamp2b GFP)から得た細胞培地から実施例1に示すように精製した。様々な量のEVを使用したが(100μg、500μg、2.5mg、5mg及び10mg)、Fc(IGHG1)タグ付きCas9ガイドRNA複合体(RNP複合体と呼ばれる)標的HPRTの量は100μgであった。EVに対するCas9の最終重量比は、それぞれ1:1、1:5、1:25、1:50及び1:100であり、22℃で60分間インキュベートした。EVへのCas9の最大負荷は、EVに対して1:5重量比のCas9で得られ、遊離Cas9複合体は限界ろ過によって除去した。Cas9負荷Fc+脂肪細胞-EVを使用して異なる濃度でHuh7細胞を処理した。24時間後、細胞を回収し、試料のゲノム切断解析を調製するために、製造プロトコルにつき、GeneArtゲノム切断検出キット(Thermo scientific)を使用し、2%のアガロースゲルで実施した。その後、Image Jソフトウェアを使用してインデルを定量化した。
図9は、標的細胞の用量依存遺伝子編集を示す。Fc結合ポリペプチド及びCas9に融合したFcドメインの様々な他の対についても同じ設定で評価した。CD83に融合し、いくつかの異なるヒトFcドメイン(例えば、IGHM、IGHA1、IGHG1等)に融合したCas9で合わせたヒトFCAMR(IgA及びIgM結合)、ヒトFCGR3A(IgG結合)及びヒトFCGRB(IgG結合)についても同じ設定で評価した。全体として、全ての構築物が遺伝子編集活性を示したが、FCGR1A細胞外ドメイン-4XGSリンカー-Lamp2b融合タンパク質より低い能力であった(データ示さず)。
【0069】
実施例7:ヒト-Fc/pH-感作タンパク質G複合体を用いた可溶性リソソームタンパク質によるEV装飾
CD63、Lamp2及びトランスフェリン受容体等の様々なエキソソームタンパク質に融合したタンパク質GのC2ドメインの発現及びEV表示レベルについて評価した。リソソームタンパク質のEVの表面への係留を容易にするために、(IgG由来の)ヒトFcドメイン(hFc)を酵素GBAのN末端又はC末端の何れかに融合した。N融合構築物の場合では、hFcドメインをGBAに対して野生のシグナルペプチドの次に挿入した。両方の構築物の共発現によって、EVを有するGBAの著しい富化を導き、野生型GBAを上回る発現であった。タンパク質Gのwt C2ドメインの他に、pH感作C2ドメインも前述のように、EV表面に示された。pH感作C2ドメインがヒトFc領域に効果的に結合する能力を有し、複合体の形成の親和性は、pH4で1000倍以上低下する。pH感作C2ドメインEVによってGBA装飾した細胞内取り込みの後に、リソソームコンパートメントに輸送する。コンパートメントのpHが低い場合、係留したGBA及びpH感作C2ドメインは分離し、リソソームの内腔の内側で遊離した係留していないGBAの存在を促す。
【0070】
Hek293T細胞産生野生型エキソソーム、タンパク質Gで装飾したエキソソームのC2ドメイン、又はタンパク質Gで装飾したエキソソームのpH感作C2ドメインから単離した条件培地を、Hek293T細胞発現野生型GBA又はヒトFc-GBA融合からの条件培地と、37℃で1時間合わせた。さらに、pH4に酸性化した条件培地でコインキュベーションを行った。その後、EVは限界ろ過及びビーズ溶出液クロマトグラフィーによって単離した。エキソソームで係留したGBAのレベルを評価するために、精製した小胞をウエスタンブロット法で分析し、GBAの存在についてプローブした。GBAを運ぶエキソソームのGBA活性を評価するために、親由来のGBA欠損線維芽細胞をGBA富化エキソソームとコインキュベーションし、48時間後にグルコシルセラミドレベルについて分析した。
図10はこの実験の結果:WT-野生型Hek293tエキソソーム;GBA-野生型GBA;hFc-GBA-ヒトFcフラグメント-GBA融合;PG-タンパク質GのC2ドメインで装飾したエキソソーム;PGpH-pH感作C2タンパク質GのC2ドメインで装飾したエキソソーム。n=3、を示す。類似の実験において、タンパク質L及びタンパク質LGについても同じ設定でFc結合ポリペプチドとして評価して、同様の結果を示した(データ示さず)。
【0071】
実施例8:ヒトFcドメインに融合したsiRNA負荷したAgo2で被覆したEV
Lamp2bとFc結合ポリペプチドZZとの間に融合タンパク質を含むEVを生成し、限界ろ過及びビーズ溶出液クロマトグラフィーを使用してHek293T細胞から単離した。Hek293T細胞にhFc-Ago2融合タンパク質を発現し、親和性クロマトグラフィーによって単離し、次に、サイクリンDに対してsiRNAの分子余剰で一晩インキュベートした。余剰なsiRNAは、親和性精製の第2ラウンドで除去した。5x10
6個の負荷されたEVを10
5個のU2OS細胞で一晩、コインキュベーションし、次に、48時間後に細胞を回収し、サイクリンDを評価した。インビボ研究のために、1x10
6個のA549細胞をマトリゲルと1:1の比で混合し、NCRNUマウスに皮下注射した。腫瘍を有するマウスを、10
7 siRNA負荷したエキソソームを1日おきに尾静脈に投与することで治療した。試験の経過中にカリパス測定を使用して腫瘍量を計算した。siRNA負荷したAgo2によるU2OS細胞の治療後のLamp2b-ZZドメインEVの表面に示されたサイクリンDレベルは、
図11に示すように、有意な標的サイレンシングを示した。+ve対照についてsiサイクリンDを直接トランスフェクトした。hFcはエキソソーム表面表示を示し、siサイクリン-抗サイクリンD siRNA;siScr-スクランブル配列である。n=3である。
【配列表】