(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】動的歯列弓マップ
(51)【国際特許分類】
A61C 19/04 20060101AFI20230331BHJP
G16H 30/40 20180101ALI20230331BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20230331BHJP
A61B 1/045 20060101ALI20230331BHJP
A61B 1/24 20060101ALI20230331BHJP
A61B 6/14 20060101ALI20230331BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20230331BHJP
A61B 8/00 20060101ALN20230331BHJP
【FI】
A61C19/04 Z
G16H30/40
A61B1/00 551
A61B1/045 610
A61B1/24
A61B6/14 300
A61B6/03 360J
A61B8/00
(21)【出願番号】P 2019551269
(86)(22)【出願日】2017-03-17
(86)【国際出願番号】 IB2017000443
(87)【国際公開番号】W WO2018167530
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】508143775
【氏名又は名称】トロフィー エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイナード デルフィン
(72)【発明者】
【氏名】ラガルデール オード
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】キャプロン-リシャール サブリナ
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ ジャン パスカル
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/143022(WO,A1)
【文献】特開2012-150801(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141760(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1723652(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0076443(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016110931(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00-19/10
G16H 10/00-80/00
A61B 1/00-1/32
A61B 6/00-6/14
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯列弓マップにおける歯に数字ラベルを自動的に割り当てる方法であって、
患者の歯列の3D表面画像をセグメント化して、歯列弓における個々の歯の3D輪郭境界を識別するステップと、
前記歯列弓における歯の位置を決定するステップと、
識別された前記3D輪郭境界を2D平面に沿って投影して、動的な歯列弓マップの2D輪郭を形成するステップと、
前記識別された歯について歯の輪郭を画定するステップと、
前記歯の種類を切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯、又は過剰歯のうちの1つとして識別することと、
前記歯の2D輪郭の表示に、前記歯の位置、前記歯
の輪郭、及び前記歯の種類に従って割り当てられた歯の番号でラベル付けするステップと、
ラベル付けされたマッピングを表示するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記割り当てられた歯の番号をオペレータ指示に従って編集するステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者の歯列の前記3D表面画像は、コーンビームコンピュータ断層撮影装置、構造化光撮像装置、超音波装置、及び、光干渉断層撮影装置の1つから得られる、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1つ又は複数の前記歯についてのセグメント化を補正するオペレータ指示を受け入れて実行することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記割り当てられた歯の番号が、様々な患者データ及び歯の特性に基づくコンピュータ学習アルゴリズムを用いて決定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
1つの歯について表示された輪郭を選択することによって入力されるオペレータ指示を受け入れるステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
患者の3D表面画像を取得する表面撮像装置と、
オペレータ指示に応答して、前記3D表面画像をセグメント化して、歯列弓における個々の歯の3D輪郭境界を識別し、前記歯列弓における歯の位置を決定し、識別された前記3D輪郭境界を2D平面に沿って投影して、前記歯列弓における前記歯についてのアウトラインのマッピングを作成し、前記歯の種類を切歯、犬歯、小臼歯、大臼歯、又は過剰歯のうちの1つとして識別し、前記歯のためのアウトラインのマッピングを、番号付け方式を用いて、少なくとも前記歯列弓における歯の位置、個々の歯の輪郭、及び歯の種類に従ってラベル付けするように構成されたホストプロセッサと、
前記ホストプロセッサと信号通信状態にある、前記歯のラベル付けを表示するためのディスプレイと、
を備えることを特徴とする歯科用撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、撮像方法及び装置に関し、より具体的には、患者についての三次元表面情報から歯列弓の二次元マップを生成する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歯科カルテ又は歯列弓マップは、施術者及びより規模の大きい歯科チームの助けとなるように使用され、当該各患者の歯の状態及び治療に関する注釈及びその他の情報を整理する手段を提供する。従来の治療では、各患者に対して同一の基本的な歯科カルテを始めに使用する。歯列弓のこのマッピングを基準として使用して、診断評価及び治療手順を進めることができ、また、必要に応じてそれらを各歯と関連付けることができる。歯科カルテは、複雑で込み入っており、患者ごとの大量のデータを含む。例えば、米国特許第8,416,984号、発明の名称「デジタル画像を使用した自動歯科カルテ作成方法」を参照されたい。
【0003】
ただし、従来使用されている歯列弓マップは標準的マッピング構成であり、各患者に対して等しく良好には適用されないことがある。標準的歯列弓マップを不正確に又は患者個人とって分かりづらくし得る条件、及び歯構造の標準的マッピングの使用を複雑にしがちな条件は、いくつか存在する。標準的歯科カルテの有効性を損ない得る患者の状態としては、例えば、不良な歯並び、欠損歯、過剰歯、並びに永久歯及び乳歯が混在する歯並びが挙げられる。
【0004】
各個々の患者の実際の歯の配置を正確に表す歯科カルテを生成する装置及び方法には利点があろうことが理解できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、画像診断の技術を進歩させること、及び個々の患者の歯列を正確に表す歯列弓マッピングを有する歯科カルテを生成する必要性に対処することである。本開示の一実施形態では、歯科用撮像装置から入手可能な3D歯輪郭情報を処理して、患者の2D歯列弓マップを自動的に生成する。
【0007】
これらの目的は実例としてのみ与えられ、このような目的は、本発明の1つ又は複数の実施形態を代表するものであり得る。開示された方法によって本来達成される他の所望の目的及び利点が生じるか、又は当業者に明らかになることもある。本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様によれば、患者の歯列弓マップを生成する方法が提供され、この方法は、患者の歯列の3D表面画像を取得することと、その3D表面画像を自動的にセグメント化して、個々の歯を識別することと、識別された歯のアウトラインのマッピングを作成することと、ラベル付けされたマッピングを表示することと、を含むことができる。例示的な一実施形態では、指定の歯番号付け方式に従って、マッピングに自動的にラベル付けすることができる。
【0009】
本開示の一態様によれば、歯列弓マップにおける歯に数字ラベルを自動的に割り当てる方法が提供され、この方法は、
識別された個々の歯と、歯列弓において決定された歯の位置とを含む、患者の歯列のセグメント化された3D表面画像を提供することと、
識別された歯について歯の輪郭を画定することと、
歯の種類を切歯、犬歯、小臼歯、又は大臼歯のうちの1つとして識別することと、
歯の輪郭の表示に、歯の位置、歯の輪郭、及び歯の種類に従って割り当てられた歯の番号でラベル付けすることと、
ラベル付けされたマッピングを表示することとを含む。
【0010】
前述の及び他の、本発明の、目的、特徴、及び利点は、添付の図面において図示されるように、以下の本発明の実施形態のより具体的な説明から明らかとなろう。
【0011】
図面の要素は、必ずしも互いに対して一定の縮尺ではない。基本的な構造的関係、オペレータインターフェース機能、又は操作の原則を強調するために、多少の誇張が有用となる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】治療期間のいろいろな段階の間に取得される画像を含む、様々な種類の患者画像を取得及び表示するための歯科用撮像システムの構成要素を示す図である。
【
図2】患者の上顎弓及び下顎弓の標準的な構成を示す図である。
【
図3】歯科用印象材(impression)から走査した例示的な患者の上顎弓歯列を示す図である。
【
図4】本願による3D表面輪郭画像から得られた例示的な2D歯列弓マップの実施形態を示す図である。
【
図5】本願による例示的な歯列弓マップ生成及び更新方法の実施形態を示す論理流れ図である。
【
図6】
図1の撮像装置を使用して得られる輪郭画像内容を示す図である。
【
図7A】2D歯列弓マップを作成するための種々の投影を示す図である。
【
図7B】2D歯列弓マップを作成するための種々の投影を示す図である。
【
図8A】走査された歯科用印象材から得られた3Dボリューム情報からの歯列弓マップの生成を示す図である。
【
図8B】
図8Aの生成された歯列弓マップからの歯のアウトラインの補正を示す図である。
【
図9】歯科マップの1つ又は複数の要素に関連する誤差を補正又は調整することができる編集機能の拡大図を示す図である。
【
図10】自動セグメント化を使用して適切に識別されなかった歯についての歯列弓マップの編集を示す図である。
【
図11】選択された歯についてのシミュレーションを備えた動的歯列弓マップの使用を示す図である。
【
図12】自動歯ラベル付けを備えた歯科カルテを使用するユーザインターフェースの例を示す図である。
【
図13】本開示の一実施形態による、自動歯番号付けのためのシーケンスを示す論理流れ図である。
【
図14】自動歯ラベル割り当てに使用することができる詳細な工程を示す論理流れ図である。
【
図15】歯が番号付けされた、表示された歯列弓の例を示す図である。
【
図16】番号割り当て処理の一工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下は、例示的な方法及び/又は装置の実施形態の説明であり、図面を参照するが、同一の参照番号は、いくつかの図のそれぞれにおいて、同一の構造要素を識別する。
【0014】
本開示の文脈で使用される場合、「第1の」、「第2の」などの用語は、必ずしも任意の順序関係、連続関係、又は優先関係を示すわけではなく、特に指定しない限り、単に1つの工程、要素、又は一組の要素を別のものからより明確に区別するために使用される。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「通電可能(energizable)」は、電力を受け取ると、及び任意選択でイネーブル信号を受け取ると、指示された機能を実行するデバイス又は一組の構成要素に関する。
【0016】
本開示の文脈において、用語「観察者(viewer)」、「オペレータ(operator)」、及び「ユーザ(user)」は、同等であるとみなされ、観察中の施術者、技師、又は他の人物を指し、これらの人物は、撮像システム、カメラ、又はスキャナを操作することができ、また歯の画像などの画像の提示をディスプレイモニタ上で観察及び操作することもできる。「オペレータの指示(operator instruction)」又は「観察者の指示(viewer instruction)」は、カメラ又はスキャナ上のボタンをクリックすることによって、又はコンピュータマウスを使用することによって、又はタッチスクリーン若しくはキーボード入力によってなど、観察者によって入力される明示的なコマンドから得られる。
【0017】
語句「信号通信状態にある(in signal communication)」は、2つ以上のデバイス及び/又は構成要素が、何らかの種類の信号経路を伝わる信号によって相互に通信可能であることを意味する。信号通信は有線であってもよく、又は無線であってもよい。信号は、通信信号、電力信号、データ信号、又はエネルギー信号とすることができる。信号経路は、第1のデバイス及び/又は構成要素と第2のデバイス及び/又は構成要素との間の物理的接続、電気的接続、磁気的接続、電磁的接続、光学的接続、有線接続及び/又は無線接続を含み得る。信号経路は、また、第1のデバイス及び/又は構成要素と第2のデバイス及び/又は構成要素との間に、追加のデバイス及び/又は構成要素を含み得る。
【0018】
本開示の文脈において、用語「撮像装置」は、適切な光エネルギー源又は放射線源を使用して、いくつかの種類の画像のいずれかを取得することができるデバイスに関し、画像の種類には、反射光撮像、構造化光撮像、パノラマ撮像、X線撮像、コンピュータ断層撮影(CT)撮像、コーンビームコンピュータ断層撮影(CBCT)撮像、光干渉断層撮影(OCT)又はその他の撮像種類などの様々な種類が含まれる。
【0019】
用語「対象(subject)」は、撮像され表示される患者の歯又は他の部分を指す。「3D画像」、「3D表面」、「表面輪郭画像」、又は「ボリューム画像」という用語は同等に用いられる。
【0020】
表示された特徴についての「強調表示(highlighting)」という用語は、情報及び画像表示技術の当業者に理解されるその従来の意味を有する。一般に、強調表示は、観察者の注意を引くために何らかの形態の局所化された表示強調(display enhancement)を用いる。例えば、個々の歯、臓器、骨、若しくは構造物、又はある小室から隣の小室への経路などの画像の一部分を強調表示することは、いくつかの方法のいずれかで達成することができ、これらの方法には、注釈を付けること、近傍に若しくは重ねて記号を表示すること、輪郭付け若しくはトレースすること、他の画像若しくは情報内容とは異なる色での表示又は他の画像若しくは情報内容とは著しく異なる輝度若しくはグレイスケール値での表示、表示の一部分の点滅若しくはアニメーション、又は、より高い鮮鋭度若しくはコントラストでの表示が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
図1は、治療期間の様々な段階の間に取得される患者の歯列画像を含む、様々な種類の患者画像を取得及び表示するための歯科用撮像システム100の構成要素を示す。歯科用撮像システム100は、反射光撮像を用いた構造化光撮像スキャナなどの口腔内カメラ若しくはスキャナなどのデジタルカメラ114であり得る、3D表面画像取得のための少なくとも1つの撮像装置18、又は歯の表面及び関連する構造物のボリューム画像を生成するための歯科用コーンビームコンピュータ断層撮影(CBCT)システム116を含む。歯及び支持構造物、歯肉、並びに関連組織の画像を得るために、パノラマ撮像装置又は超音波撮像装置などの他の種類の撮像装置18を使用することもできる。加えて、より詳細に後述するように、歯科用撮像システム100と協働する様々な種類の診断測定機器もまた設けることができる。
【0022】
引き続き
図1を参照すると、画像データを撮像装置18から取得し、処理し、格納するためのコンピュータ又は他の種類の専用論理プロセッサなどのホストプロセッサ120もまた、画像結果を見るための1つ又は複数のディスプレイ126と共に、歯科用撮像システム100の一部である。各ディスプレイ126は、観察者の指示を入力するためのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)128を有することができる。GUI128は、タッチスクリーン又はマウス若しくは他のポインタなどの他の指示入力デバイスを使用することができる。ホストプロセッサ120は、画像取得のための1つ又は複数の画像取込デバイス、及び任意選択で、任意の数の自動測定装置(
図1には図示せず)とデータ通信及び信号通信している。加えて、ホストプロセッサ120は、内部に格納された、又は例えばローカル若しくはリモートで提供され得るネットワーク接続されたホスト若しくはサーバ(図示せず)に格納された、患者記録のデータベースとデータ通信及び信号通信することもできる。コンピュータアクセス可能なメモリ124もまた提供され、このメモリは、磁気データ記憶媒体、光学データ記憶媒体、又はその他のデータ記憶媒体を使用するデバイスなど、長期保存に使用される不揮発性メモリ記憶デバイスであり得る。また、コンピュータアクセス可能メモリ124は、ホストプロセッサ120内にあるかそうでなければホストプロセッサ120とデータ通信状態にある、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの揮発性電子メモリとすることもできる。このメモリは、ディスプレイデバイスと組み合わせて使用される、画像内容を表示バッファとして一時的に記憶するためのメモリなどであり、短期間のデータ記憶に使用される。又は、このメモリは、本開示による方法を実施するために1つ又は複数のコンピュータを制御するための指示を有するコンピュータプログラムを格納するために使用される。
【0023】
図2は、患者の上顎弓及び下顎弓のビューの標準的な構成を示す、従来の歯科カルテの一種を示している。前述のように、特定の患者の標準的な歯列弓の構成に対して、1本又は複数本の歯が欠落している、ずれている、又は過剰である場合がある。過剰歯は、特に扱いづらいことがある。
【0024】
図3は、例えば、歯科用印象材から走査した又は口腔内カメラを使用した、特定の患者の上顎弓歯列を示す。すぐに分かるように、この上顎弓は不規則な歯のパターンを示している。この歯の配置を、
図2の標準的な歯列弓構成に又は別の種類の従来の歯科カルテに正確に表すことは困難であろう。
【0025】
図4は、本明細書に記載の方法及び/又は装置の実施形態による3D画像から得られた例示的な動的2D歯列弓マップを示す。各歯列弓の歯に歯番号付けを提供することができる。不規則な歯は、マッピングされ、各歯の診断及び治療をサポートするための注釈を提供する際の参照用に番号が付けられる。
【0026】
図4の歯列弓マップは、いくつかの方法で3D表面画像データから生成することができる。
図5は、本願のある例示的な実施形態による歯列弓マップ生成及び更新の例示的な工程を説明した論理流れ図を示す。この処理は、例えば、
図1を参照して前述したプロセッサ120及び撮像装置を使用して実行することができる。ボリューム画像取得ステップS100において、患者の歯の3D表面画像を、
図1に関して前述した表面撮像源のうちの1つなどの画像源から得る。3D画像内容は、例えば、ボリューム撮像技術の当業者によく知られている3Dボリューム再構成法を使用して、放射線源と検出器とが別々の角度で得た一連の放射線画像からの再構成によって得られるフルボリューム画像データ又は3D表面画像データを提供するCBCTシステムから得ることができる。これらの画像は、患者を走査するか、又は患者の歯列の歯科用印象材を走査することで得ることができる。あるいは、画像内容は、構造化光技術を用いた口腔内カメラを使用して得られる3D表面撮像からも可能である。3D表面画像内容は、患者の歯列弓の任意の部分又は歯列弓全体を含むことができる。
【0027】
図6を参照すると、上下両方の歯列弓の歯列3D表面画像内容の表示例が示されている。
図6は、
図1の撮像装置から得ることができる3D表面画像内容を、モデル化した形式で示している。一実施形態において、
図6の上下両方の歯列弓の3D表面画像内容の表示例は、ステップS100の結果生じ得る。
【0028】
セグメント化ステップS110において、個々の歯の輪郭境界を画定するために、3D画像内容を処理する。セグメント化処理は、完全に自動化することができるか、又はシードデータ若しくはその他の初期化データの入力などの何らかの方法で手動で支援することができる。セグメント化に用いることができる方法には、スネークベースセグメンテーション、反復セグメンテーション手法、領域形成法、及び画像処理技術の当業者によく知られている他の技術が含まれる。歯列弓マップを作成するのに歯のボリュームを完全にセグメント化する必要がない場合もある。例えば、特定の患者の歯列弓の特徴を描写する歯列弓マップを生成するのに、各歯の輪郭画像を画定することができる上面図で十分な場合がある。
【0029】
歯がうまくセグメント化されると、投影ステップS120が実行され、この投影ステップS120では、画定された3D輪郭が2D平面に沿って投影され、歯列弓マップの2D輪郭又はアウトラインが形成される。投影ステップS120は、いくつかの方法のうちのいずれかで実行することができる。本開示の例示的な実施形態によれば、3D歯頸部辺縁境界は、同じ(例えば、Z=0)平面に投影することができる(すなわち、全てのモデルについて同じ平面に投影される)。ただし、モデルの初期方向により、一部の投影がアーチファクトを有する可能性があり、歯の表現が不十分な場合がある。代替的に、モデルの咬合面軸又は各歯の方向軸を使用して、そのようなアーチファクトを制限する最適な平面を決定することができる。例えば、各歯の軸を識別することができ、これにより、投影された輪郭の面積が増加又は最大化される。検出し易さなどの要素に基づいて切歯又は他の歯により高い重みを割り当てる重み付けを適用してもよい。代替的に、歯のアウトライン境界同士の間の2D歯交差部を低減又は最小化する軸を使用することができる。この投影軸は、歯ごとに、又は歯の種類に応じて(切歯、犬歯、小臼歯、及び大臼歯に別々の投影軸を使用してなど)順繰りに適合又は変更することができる。
【0030】
図7A及び
図7Bは、2D歯列弓マップのアウトラインを形成するために使用される例示的な投影を示す。
図7Bは、
図7Aにおいて歯の分離のために示した歯のアウトラインの境界のわずかな不正確さを補正した2D投影を示している。
【0031】
再び
図5のシーケンスを参照すると、強調ステップS130において、歯番号付け方式を使用して歯にラベル付けをすることができる。歯番号付けは、歯番号付け方式として任意の適した標準に従うことができ、この標準は、例えば、より詳細に後述する、ユニバーサルナンバリングシステム(Universal Numbering System)、国際標準化機構(ISO)指定システムの番号付け(ISO 3950)、及びパーマー記法(Palmer notation)を含む。歯番号付けは、自動又は手動とすることができ、オペレータによる補正のためにグラフィカルユーザインターフェースを使用した編集ユーティリティを利用することができる。自動番号付けでは、システムソフトウェアの一部として格納されている標準的な患者の歯列の参照テンプレート又はモデルを使用することができる。例えば、標準的な歯列からなる複数のモデルを、患者の性別、年齢、体格、及びその他の要素に従って格納しておくことができる。強調ステップS130の別の要素として、得られた2D輪郭を、視認性又は読みやすさを向上させるために、平滑化フィルタを使用して又は各輪郭の凸包絡を見つけることにより、平滑化することができる。1つの2D輪郭が別の輪郭と交差する場合、それらの輪郭をわずかに移動させて又はそれらの寸法を縮小させて、歯列弓マッピングにおける支障又は重複を低減又は防止することが可能であり得る。
【0032】
歯頸部辺縁又は他の歯の輪郭の画定の編集もまた、
図5のシーケンスの強調ステップS130の一部として実行することができる。編集操作は、代替的に、例えば、外形若しくは辺縁線、歯のラベル、又は近遠心方向について実行することができる。使用することができるいくつかの例示的な編集機能には、アウトラインの作成、編集、削除、ラベル変更、及び向きの調整が含まれる。施術者又は技師による対話式編集のために、タッチスクリーン指示を用いて又はマウス若しくは他のポインタを用いて歯のアウトラインを選択し、(例えば、
図4に示した例示的2D歯列弓マップを使用した)歯列弓のアウトライン表示上で特定の歯を指定することができる。動的歯列弓マップにおいて特定の歯を選択すると、その歯又はその周辺領域の自動ズーム、パン、回転などの画像操作機能のためにその選択された歯のアウトラインに焦点を合わせた状態で、選択されたアウトライン又は歯頸部辺縁線が歯列弓モデル内で強調表示される。強調表示は、例えば、色、強化された輪郭、又は太線を使用して提供することができる。
【0033】
オペレータが、表示された動的歯列弓マップ上の既存の歯頸部辺縁又は他の歯のデータを編集すると、歯のアウトラインを再計算することができ、歯列弓マップが更新され、新しく提示されたマップに編集結果が示される。
【0034】
図5のシーケンスを継続すると、動的歯列弓マップ処理の結果が、表示ステップS140で施術者に対して表示される。加えて、歯のラベルを、歯のアウトラインの内部又はすぐ外側に配置するなどして、マップに表示することもできる。
【0035】
場合によっては、施術者がボリューム画像を調査したり、1つ又は複数の歯についての情報を修正する必要性を確認したりすることがあり、この追加された情報は、結果として歯科マップの更新を必要とする場合がある。一実施形態では、撮像システムは、テストステップS150においてこの種類の状態について警告を受ける。更新又は調整を行う場合には、更新ステップS160が実行される。次いで、処理は、更新された情報に基づいて新しいマッピングを生成するために、セグメント化ステップS110及びステップS120、S130に戻る。オペレータ指示により、例えば、自動セグメント化手順で検出されなかった1つ又は複数の歯を識別することができる。ある例示的な実施形態では、ステップS150は、GUIにおいてマップの編集アクション/マップの承認アクションを含む選択可能なコントロールを使用して実施することができる。あるいは、ダイアログウィンドウプロセスでステップS150を実施することが可能である。一実施形態では、ステップS150及びS160は、任意選択である。
【0036】
本明細書で説明するように、生成された歯列弓マップは、仮想モデルデータに関連付けられている。歯列弓マップ上で実行された任意のアクションは、3Dシーンに自動的に反映される。同様に、例示的な実施形態によれば、3Dシーンの変化が歯列弓マップ上に示される。
【0037】
図8Aは、患者の走査された歯科用印象材から得られた3D表面情報からの例示的な完全な歯列弓マップ50の生成を示す。表示された再構成ボリューム画像では、正常にセグメント化された歯が、強調表示されて輪郭で描かれている。例えば、24番の歯が上顎弓から欠落しており、全ての歯が正しくセグメント化されているわけではないようであることに留意されたい。
【0038】
図8Bは、生成された歯列弓マップ50の25番の歯についての歯のアウトラインの補正を示している。3Dシーンにおける対応する要素である歯冠52は、25番の歯(矢印A1)の輪郭が編集されると強調表示される。
【0039】
図9は、歯科マップの1つ又は複数の要素の輪郭又はその他の特徴に関連する誤差を補正又は調整するのに使用できる例示的な編集機能実施形態の拡大図を示す。図示された例では、歯頸最小部92を3Dシーンで再形成することにより、歯のアウトライン表現及び特徴描写の改善に役立てることができる。マッピング内の1つ又は複数のアウトラインの強調表示、及びオペレータ指示によるその1つ又は複数の強調表示されたアウトラインの再計算もまた実行することができる。
【0040】
図10は、自動セグメント化を使用して適切に識別されなかった歯についての歯列弓マップの別の例示的な編集機能を示す。施術者又は他のオペレータは、表示画面に入力される手動のマークアップ命令を用いてセグメント化の不一致を補正することができる。
図10に示す例の場合、手動のマークアップシーケンスを用いて不規則な歯の間隔を補正し、その後、歯のアウトライン及び境界を再計算するためにセグメント化を再開することができる。
図10に示す例の場合、不規則な歯の間隔は、対応する3Dシーン1010において1002で補正される。オペレータ指示を入力して、以前の各ステップで検出又は処理されなかった歯についてセグメント化を再試行することができる。
【0041】
図11は、選択された歯についての内容を操作するためのシミュレーションソフトウェアを備えた動的歯列弓マップ50の使用を示す。観察者は、クリックするか、又はその他の方法で歯列弓マップ50から歯を選択することなどによって、シミュレーション用に1つ又は複数の歯を指定し、その後、例えば、計画若しくは意図された歯の除去、並び具合の調整、又は間隔の再調整など、シミュレートしたアクションが行われた状態の歯列弓マップ50の外観を示すことができる。
【0042】
本開示の歯列弓マップは、患者から取得した3Dボリューム情報を使用するため、従来の歯列弓マッピングツールよりも個人の経過を計画及び追跡するのにより正確であり得る。
図5のシーケンスを用いて生成された歯列弓マップは、治療計画を作成するためだけでなく、進行中の治療に伴う歯列弓の計画的な変化を視覚化するのを助けるためにも使用することができる。本開示の例示的な実施形態によれば、動的歯列弓マップで提供される個々の歯のアウトラインは、その歯の追加の画像及び注釈にアクセスする指標として役立ち得る。したがって、いくつかの例示的な実施形態では、動的歯列弓マップ50は、様々な歯科医機能/歯科機能と共に使用することができる。例えば、ディスプレイ上で特定の歯を選択することで、その歯の画像並びにその歯の以前の治療又は計画された治療の記録及び注釈の選択的な表示が可能になる。
【0043】
3D画像は、表面構造、曲率、輪郭特性などの表面の特徴を描写するデータを提供する表面輪郭画像内容を含むことができるが、表面の下にある素材に関する情報を提供することはできない。歯科輪郭撮像などの輪郭撮像の代替技術には、可視光、近赤外光、又は紫外光波長を使用した構造化光撮像と同様に、三角測量による特徴追跡、ストラクチャフロムモーション写真測量(structure from motion photogrammetry)、飛行時間撮像(time-of-flight imaging)、デプスフロムフォーカス撮像(depth from focus imaging)など、表面構造の特徴を描写する他の既知の技術が含まれ得る。輪郭画像内容は、例えば、表面組織を表すボクセルのみを識別及び収集することなどにより、ボリューム画像内容から抽出することもできる。
【0044】
歯科用歯番号付けシステム
本開示の一実施形態では、オペレータは、確立された標準システムを含むいくつかの歯科用歯番号付けシステムのいずれかから選択することができる。
【0045】
歯にラベル付けするための標準となる広く使用されている番号付けシステムの1つは、パーマー記法であり、これは、ジグモンディ(Zsigmondy)又はグリッドシステムとしても知られている。パーマー記法では、四分円に基づき、口の各四分円において中央の歯から外側に数える。永久歯の場合、各四分円内の番号付けは1~8の範囲であり、四分円の位置を示す記号が付いている。乳歯は、各四分円において大文字のA~Eを使用してラベル付けする。
【0046】
アメリカ式としても知られているユニバーサルナンバリングシステムでは、1番のラベルを患者の右側の上顎大臼歯へのラベルとして割り当て、16番が割り当てられる左上側の第3大臼歯まで上歯に沿って連続的な番号付けを進める。16番の下にある臼歯には17番のラベルが付けられ、1番の下にある、右側の最後の下顎大臼歯である32番まで番号が付けられる。乳歯は、大文字のA~Tを使用してラベル付けされる。文字Dは、上の右側の1番目の歯を示す。文字Tは、下の右側の最後の歯へのラベルとして割り当てられる。
【0047】
ISO 3950としても知られるISOシステムでは、各歯に2桁のラベルを使用する。1桁目は四分円基準であり、2桁目は、当該四分円内の歯にラベル付けを行うものである。個々の歯には、中央の歯から1~8のラベルが付けられる。四分円の番号付けは、永久歯については1~4であり、5~8番は、乳歯にラベル付けするために使用される。右上が1、左上が2、左下が3、右下が4である。同様のパターンが、ISOラベル付けシステムを使用する乳歯に適用される。
【0048】
本開示の一実施形態によれば、どの歯科用歯番号付けシステムが選択されても、過剰歯は適切にラベル付けされる。
【0049】
撮像システムにおけるラベル付けの使用
図12の例示的なグラフィカルユーザインターフェース(GUI)78は、表示された歯列弓82のメッシュ又は他のボリューム画像に基づいて視覚表現にラベルを付けるために歯科用番号付けをどのように使用することができるかを示す。施術者は、より詳細な情報を別のオンスクリーンウィンドウ84などにおいて示すために、歯列弓82の表示から特定の番号の付いた歯を選択することができる。選択は、マウス又はタッチスクリーンなどのインターフェースユーティリティを使用して実行することができる。ラベル付けされた歯科カルテ86は、対応する歯のラベルとして使用される、割り当てられた番号を示している。
【0050】
自動ラベル割り当てのためのシーケンス
前述したように、番号付けラベル割り当てのタスクは、歯の特徴の不規則な又は過渡的な配置を含む様々な要因によって複雑になり得る。例えば、幼い患者の歯科矯正治療では、乳歯を自動的に検出して適切にラベル付けしてこれらを永久歯と区別することは困難であり得る。本開示の実施形態は、前述のように、セグメント化された3Dメッシュ又は歯科撮像装置によって提供される他のボリューム画像を使用して、歯のラベル付けとも呼ぶ自動歯番号付けの問題に対処する。
【0051】
図13は、本開示の一実施形態による、自動歯番号付けのためのシーケンスを示す論理流れ図である。処理は、ボリューム取得ステップS800で始まり、このステップでは、トモグラフィック復元から形成された3Dボリューム又はメッシュが、前述のように口腔内スキャナ又はCBCTシステムから得られた点群画像内容から生成される。メッシュを生成するために使用されるこの3D画像内容は、例えば、CBCTシステムから得ることができ、ボリューム撮像技術の当業者によく知られている3Dボリューム再構成法を使用して、放射源と検出器が別々の角度で得た一連の放射線画像からの再構成によって得られたフルボリューム画像データ又は3D表面画像データを提供する。これらの画像は、患者を走査するか、又は患者の歯列の歯科用印象材を走査することで得ることができる。あるいは、この画像内容は、構造化光技術を用いた口腔内カメラを使用して得られる3D表面撮像からも得ることができる。3D表面画像内容は、患者の歯列弓の任意の部分又は歯列弓全体を含むことができる。
【0052】
セグメント化ステップS810では、ボリュームデータ内の別々の歯を識別したセグメント化結果を提供する。セグメント化ステップS810では、個々の歯の輪郭境界を画定するために、3D画像内容を処理する。セグメント化処理は、完全に自動化することができるか、又は、シード点若しくは特徴又はその他の初期化データの入力などの何らかの方法で手動で支援することができる。自動セグメント化の編集もまた提供することができる。スネークベースセグメンテーション、反復セグメンテーション手法、領域形成法、及び画像処理技術の当業者によく知られている他の技術を含むいくつかの方法のいずれかをセグメント化に使用することができる。歯列弓マップを作成するのに歯のボリュームを完全にセグメント化する必要がない場合もあり、すなわち、特定の患者の歯列弓の特徴を描写する歯列弓マップを生成するには、各歯の輪郭画像を画定することができる上面図で十分な場合がある。
【0053】
次いで、自動ラベル割り当てステップS820は、各歯にラベルとして割り当てられる歯番号を生成する。自動歯ラベル付けには、前述のパーマー記法、ISO方式、又はユニバーサル方式などの一組の利用可能なラベル付け方式38のうちの1つを使用することができる。オペレータチェックステップS840では、施術者又は他のオペレータが、1つ又は複数のラベル割り当てに修正が必要かをシステムに対して示すことが可能になる。編集ステップS850では、施術者又は他のオペレータが、自動ラベル割り当てを手動で編集し、1つ又は複数の歯について正しい歯番号付けを提供することが可能である。編集は、標準的ユーザインターフェースユーティリティを使用して(タッチスクリーン又はマウスクリックなどを使用して)変更するラベルを識別し、キーボード又はオンスクリーンキーパッドを使用して割り当てられたラベルの1つ又は複数の桁を編集するように、実行することができる。次いで、表示ステップS860では、歯列弓マップを自動歯番号付け割り当て結果と共に表示し、また、その歯列弓マップを歯番号付けデータと共に記憶及び送信することもできる。
【0054】
図13に示した手順は、上顎弓又は下顎弓全部に、又はその弓の選択した部分だけに番号付けするために使用できることに留意されたい。
【0055】
数字ラベル割り当ての詳細なステップ
図14は、ステップS820(
図13)の一部である自動歯ラベル割り当てに使用することができる詳細なステップを示す論理流れ図である。セグメント化された歯の画像データで始まるこのシーケンスでは、その歯に関する様々な情報を識別し、この様々な情報を使用して、その歯を適切に特徴付けし、指定の番号付け方式に従って歯番号を割り当てることができる。ステップS824、S826、及びS828によって表されるこのシーケンスは、任意の適した順序で実行することができ、例えば、患者の年齢を含む、患者に関する任意の利用可能なデータを使用することができる。自動結果を編集することができる。
【0056】
図14のシーケンスでは、位置識別ステップS822で、対象歯の歯列弓内の相対的な位置を検出する。中央の歯の位置を特定し、歯列弓における他の歯の参考として使用することができる。
【0057】
歯輪郭画定ステップS824では、歯の輪郭を画定する。この処理は投影処理を使用することができ、この投影処理では、画定された3D輪郭が2D平面上に投影され、歯列弓マップの2D輪郭又はアウトラインを形成する。投影は、いくつかの方法のいずれかで実行することができる。本開示の一実施形態によれば、セグメント化された歯の3D歯頸部辺縁境界は、同じ基準(Z=0)面に投影することができる。ただし、歯モデルの初期方向により、いくつかの投影がアーチファクトを有することがあり、このような投影では歯のアウトラインの表現が不十分になり得る。代替的に、そのモデルの咬合面軸を使用するか、又は各歯の方向軸を使用するなどして、そのようなアーチファクトを制限する最適な平面を決定することができる。例えば、投影輪郭の面積を最大化する各歯の軸を特定することができる。検出し易さなどの要素に基づいて切歯又は他の歯により高い重みを割り当てる重み付けを適用してもよい。あるいは、歯のアウトライン境界間の2D歯の交差部を最小化する軸を使用することができる。この投影軸は、歯ごとに、又は歯の種類に応じて(切歯、犬歯、小臼歯、及び大臼歯に別々の投影軸を使用してなど)順繰りに適合又は変更することができる。歯頸部辺縁又は他の歯の輪郭の画定の手動編集もまた、ステップS824の一部として実行することができる。
【0058】
図14のシーケンスを継続すると、次いで、歯種類識別ステップS826で、様々な指標及び/又は曲率特性に従って各歯の識別を行う。
【0059】
顎における歯の総数は、歯のラベル付けに役立つ一要素になり得る。それぞれの歯について、
(i)冠軸
(ii)近心-遠心軸
(iii)近心点及び遠心点
(iv)前庭及び舌側咬頭、並びに/又は
(v)溝、を含むいくつかの特徴を、個別に又は組み合わせて検出し、より正確な識別を行うのに役立てることができる。
【0060】
歯の位置、輪郭、及び検出された特徴の態様に基づいて、各歯の種類(class)を、切歯、犬歯、小臼歯、又は大臼歯のうちの1つとする自動検出を実行することができる。これに続いて、例えば、永久小臼歯と暫間大臼歯とを区別するなど、より正確な決定を得ることができる。
【0061】
本開示の例示的な実施形態によれば、例えば、年齢及び性別などの様々な患者データに従って、また位置、特徴、種類検出、及び/又は上記のその他の態様を含む歯の特性に従って、歯の数を決定するためなどにコンピュータ学習アルゴリズムが適用される。
【0062】
ステップS822、S824、及びS826の分析の結果に基づいて、自動ラベル割り当てステップS828では、各歯に番号を割り当てる。この自動割り当ては、
図13のシーケンスを参照して前述したように、修正されなければ、歯に使用することができる。チェックステップS830では、歯列弓の全ての歯に、又は歯列弓内の関心領域の全ての歯に、数字ラベルが割り当てられたかを判定する。全ての歯に割り当てられた場合、表示ステップS832で自動割り当て結果を示す。追加の歯にラベルを割り当てる必要がある場合、反復ステップS834を後続のセグメント化された歯に対して実行する。このような追加の歯には、例えば、過剰歯が含まれ得る。
【0063】
図15は、歯が番号付けされた、表示された歯列弓の例を示す図である。
【0064】
図16は、番号割り当て処理における1つのステップを示しており、この処理により、それぞれの歯に、歯列弓における相対的な位置及び歯の種類、測定基準(metrics)、並びにその他の特性などの特徴に従って、自動ラベルが割り当てられる。
【0065】
本開示の別の例示的な実施形態では、例えば、最初に、歯列弓が上弓(上顎)であるか下弓(下顎)であるかを検出することにより、歯のラベル付けを実行することができる。この決定を行う手順には、以下が、個別に又は組み合わせて、含まれ得る。
(i)顎の正中線を決定する。これは、歯のアウトラインをたどって方向付けられた放物線を用いて決定することができる。次いで、その放物線の頂点又は変曲点を用いて、正中線の初期位置を特定することができる。この初期位置は、その位置に最近接した歯の対称性を用いて精密に決定することができる。
(ii)正中線を中心とした歯のサイズを計算して比較する。本発明者らにより識別されるように、上顎及び下顎の歯は、上弓又は下弓を識別するのに使用することができる特徴的なサイズ関係を有する。それらの歯が上弓/下弓にあるかの決定は、
図14に関して説明した例示的なプロセスの前に行うか、又はこのプロセス中に含めることができる。
【0066】
上/下弓の決定に加えて、ラベル付けのために各歯の種類を、切歯/犬歯/小臼歯/大臼歯のうちの1つとして決定することができる。歯の種類は歯列弓に沿った相対的な位置に関連しており、これを使用して、種類決定のための「種類確率(class probability)」を割り当てることができる。近傍確率を使用して、種類決定の成功の可能性をさらに高めることもできる。個別に又は組み合わせて使用することできる基準には、
(i)犬歯と切歯とを区別するために、境界の特徴的形状を使用することができること、
(ii)犬歯と小臼歯とを区別するために、咬頭の数及び高さを使用することができること、並びに/又は
(iii)小臼歯と大臼歯とを区別するために、咬頭の特徴及び歯のサイズを使用することができること、がある。各歯の「種類」は、
図14に関して説明した例示的なプロセスに含めることができる。
【0067】
さらに、隣接する歯同士の間の距離の決定を用いて歯が欠落しているかどうかの決定を支援することができ、また、隣接する歯同士の間の距離の決定は、
図14に関して説明した例示的なプロセスの前に行うか、又はこのプロセス中に含めることができる。
【0068】
歯列弓の識別及び歯の種類の分析は、歯が永久歯か乳歯かを判定するのにも役立つ。患者の年齢及び性別を、全体的な歯のサイズ、長さ、幅、長さ対幅の比率などの要素と合わせて用いて、歯が永久歯かを判定することもできる。咬頭形状並びに最大曲率及び最小曲率の分布もまた、歯が永久歯か一時的な歯かを判断するのに役立つ。顎内の歯の総数とそれらの相対的な分布は、
図14の例示的なプロセスで使用される入力として特に提供されない場合には、患者の年齢を判定するのにも役立てることができ、歯が永久歯かを判定する要素となり得る。様々な測定基準及び特性を提供するために、歯のデータの基準データベースを代替的に使用することが可能である。
【0069】
要素同士の組み合わせを使用して、歯の番号付けに関しての適切な決定を行うのに役立てることができる。要素には、患者の年齢及び性別、可能性の高い歯の種類、相対的な歯の位置、関連する上顎又は下顎、並びに永久歯状態又は乳歯状態が、個別に又は組み合わせて、含まれ得る。
【0070】
本開示の歯列弓マップは、患者から取得した3Dボリューム情報を使用するため、従来の歯列弓マッピングツールよりも個人の経過を計画及び追跡するのにより正確であり得る。
図13及び
図14のシーケンスを使用して生成される歯列弓の番号付けは、治療計画の作成並びに治療データの正確な記録及び伝達に使用することができる。本開示の一実施形態によれば、動的歯列弓マップ上に提供される個々の歯のアウトラインは、それらの歯の追加の画像及び注釈にアクセスするための指標として役立ち得る。したがって、例えば、ディスプレイ上で特定の歯を選択することで、その歯の画像の選択的な表示、並びにその歯の以前の治療又は計画された治療の記録及び注釈の表示が可能になる。
【0071】
本明細書の例示的な実施形態と矛盾せずに、コンピュータプログラムは、電子メモリからアクセスされた画像データに対して実行する、格納された指示を使用することができる。画像処理技術の当業者には明らかなように、本願の例示的な実施形態において撮像システム及びプローブを操作して画像データを取得するためのコンピュータプログラムは、本明細書に記載されるホストプロセッサ120として動作する、パソコンやワークステーションなどの適した汎用コンピュータシステムによって利用することができる。しかし、例えばネットワーク化されたプロセッサ構成を含む、他の多くの種類のコンピュータシステムを使用して、本発明のコンピュータプログラムを実行することができる。例示的な方法の実施形態を実行するためのコンピュータプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体に格納されてもよい。この媒体は、例えば、ハードドライブなどの磁気ディスクなど又は取り外し可能なデバイス若しくは磁気テープなどの磁気記憶媒体、光ディスク、光テープ、若しくは機械可読光エンコーディングなどの光記憶媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)若しくは読み出し専用メモリ(ROM)などのソリッドステート電子記憶デバイス、又はコンピュータプログラムを格納するために使用される任意の他の物理的デバイス若しくは媒体を含み得る。例示的な方法の実施形態を実行するためのコンピュータプログラムはまた、インターネット又は他のネットワーク若しくは通信媒体によって画像プロセッサに接続されたコンピュータ可読記憶媒体に格納され得る。当業者には、このようなコンピュータプログラム製品の均等物もまたハードウェアに構築され得ることをさらに容易に認識されよう。
【0072】
本願の文脈において「コンピュータアクセス可能メモリ」と同等である用語「メモリ」は、画像データを格納し、画像データに操作を施すために使用され、例えばデータベースを含むコンピュータシステムにアクセス可能である、任意の種類の一時的又はより永続的なデータ記憶ワークスペースを指すことができることに留意するべきである。メモリは、例えば、磁気記憶装置又は光学記憶装置などの長期記憶媒体を使用する不揮発性のものであってもよい。あるいは、メモリは、マイクロプロセッサ又は他の制御論理プロセッサデバイスによって一時バッファ又はワークスペースとして使用されるランダムアクセスメモリ(RAM)などの電子回路を使用した、より揮発性な性質のものであってもよい。表示データは、例えば、通常、ディスプレイデバイスに直接的に付随する一時記憶バッファに格納され、データを表示するために、必要に応じて、定期的にリフレッシュされる。本願で使用されるとき、この一時記憶バッファという用語は、メモリの一種であるとみなされる。メモリは、計算及び他の処理を実行して中間及び最終結果を格納するためのデータワークスペースとしても使用される。コンピュータアクセス可能メモリは、揮発性、不揮発性、又は揮発性タイプと不揮発性タイプとを組み合わせたハイブリッドとすることができる。
【0073】
本願のコンピュータプログラム製品がよく知られている様々な画像操作アルゴリズム及びプロセスを利用し得ることが理解されよう。本願のコンピュータプログラム製品の例示的な実施形態が、本明細書に具体的には図示も記載もされていない、実装に有用なアルゴリズム及びプロセスを実施し得ることがさらに理解されよう。このようなアルゴリズム及びプロセスには、画像処理技術の通常の技術の範囲内の従来の有用物を含み得る。このようなアルゴリズム及びシステムの追加の態様、並びに画像を生成するかでなければ処理するための、若しくは本願のコンピュータプログラム製品の例示的な実施形態と連携するためのハードウェア及び/又はソフトウェアは、本明細書では具体的には図示も記載もせず、当技術分野において既知のそのようなアルゴリズム、システム、ハードウェア、構成要素及び要素から選択してよい。
【0074】
本願によるある例示的な方法及び/又は装置の実施形態は、患者の歯列の3D仮想モデルに関連付けられた歯列弓マップを提供することができる。本願による例示的な実施形態は、本明細書に記載した様々な特徴を(個別に又は組み合わせて)含み得る。一実施形態では、
図8B~
図10に関して記載した操作が、ステップS150及びS160を部分的に実施することができる。本開示の各実施形態を歯科撮像装置を使用して例示したが、同様の原理を他の種類の診断撮像及び他の解剖学的構造に適用することが可能である。
【0075】
本発明を、1つ又は複数の実装に関して例示してきたが、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱せずに、例示した実施例に対して変更及び/又は修正を行うことができる。さらに、本発明の特定の特徴を、いくつかの実装/実施形態のうちの1つだけについて開示したが、このような特徴は、任意の所与の機能又は特定の機能について、所望に応じて、好都合となり得るように、他の実装/実施形態のうちの1つ又は複数の他の特徴と組み合わせることができる。用語「少なくとも1つの」は、選択できる列挙された項目のうちの1つ又は複数を意味するために用いられる。用語「約」は、変更が、例示された実施形態のプロセス又は構造との不適合にならない限り、列挙された値が幾分変更されてもよいことを示す。最後に、用語「例示的な」は、その記載が理想的であることを暗示するのではなく、例として使用されることを示す。本発明の他の実施形態は、本明細書及び本明細書に開示された本発明の実施を考慮することから当業者に明らかになるであろう。本明細書及び実施例は単なる例示とみなされ、本発明の真の範囲及び趣旨は、少なくとも以下の特許請求の範囲により示されることが意図される。