(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】SYNDECAN-1(CD138)結合剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20230331BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230331BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230331BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230331BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230331BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20230331BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
A61K39/395 T
A61K47/68
A61P35/00
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2019558645
(86)(22)【出願日】2018-04-25
(86)【国際出願番号】 JP2018016847
(87)【国際公開番号】W WO2018199176
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-15
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002956
【氏名又は名称】田辺三菱製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100165892
【氏名又は名称】坂田 啓司
(72)【発明者】
【氏名】ジュリア・コロネラ
(72)【発明者】
【氏名】ロビン・リチャードソン
(72)【発明者】
【氏名】アンジュリ・ティマー
(72)【発明者】
【氏名】ローランド・ニューマン
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/080829(WO,A1)
【文献】米国特許第09289509(US,B2)
【文献】Blood, 2004, Vol.104, No.12, pp.3688-3696
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/28
C12N 15/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CDR-L1~3およびCDR-H1~3を有し、
CDR-L1が配列番号2または3であり、
CDR-L2が配列番号16、17または18であり、
CDR-L3が配列番号28であり、
CDR-H1が配列番号46または配列番号47であり、
CDR-H2が配列番号56であり、および
CDR-H3が配列番号68または配列番号69であり、
シンデカン-1またはその一部に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、シンデカン-1結合剤。
【請求項2】
CDR-L1~3およびCDR-H1~3を有し、
CDR-L1が配列番号4または5であり、
CDR-L2が配列番号19、20または21であり、
CDR-L3が配列番号29または30であり、
CDR-H1が配列番号48または配列番号49であり、
CDR-H2が配列番号58、配列番号59または配列番号60であり、および
CDR-H3が配列番号70または配列番号71であり、
シンデカン-1またはその一部に特異的に結合する抗体又はその結合断片である、シンデカン-1結合剤。
【請求項3】
ヒト化されている、請求項1または2に記載のシンデカン-1結合剤。
【請求項4】
配列番号42~44から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域と、配列番号84~87から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、請求項3記載のシンデカン-1結合剤。
【請求項5】
配列番号42~44から選択される軽鎖可変領域および/または配列番号84~87から選択される重鎖可変領域のアミノ酸配列において、アミノ酸付加、アミノ酸欠失およびアミノ酸置換から選択される1~5のアミノ酸改変を含む、請求項3に記載のシンデカン-1結合剤。
【請求項6】
配列番号42のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域および配列番号85のアミノ酸配列を有する、請求項4に記載のシンデカン-1結合剤。
【請求項7】
ヒトシンデカン-1に特異的に結合する、
請求項1~6のいずれか一項に記載のシンデカン-1結合剤。
【請求項8】
シンデカン-1の細胞外ドメインに特異的に結合する、
請求項1~7のいずれか一項に記載のシンデカン-1結合剤。
【請求項9】
GX
1KEX
2EAX
3VLP(配列番号91)のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合するシンデカン-1結合剤であって、X
1、X
2およびX
3が任意のアミノ酸から選択される、
請求項1~6のいずれか一項に記載のシンデカン-1結合剤。
【請求項10】
AGEGPKEGEAVVLP(配列番号89)またはGPKEGEAVVLP(配列番号90)のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する、
請求項9に記載のシンデカン-1結合剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のシンデカン-1結合剤を含む、医薬組成物。
【請求項12】
腫瘍性障害またはがんの処置用である、
請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記腫瘍性障害またはがんがシンデカン-1を発現する細胞を含む、
請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記腫瘍性障害またはがんが肺癌、乳癌、卵巣癌、腎癌、結腸直腸癌、胃癌、甲状腺癌、膵癌、神経芽腫、頭頸部の扁平上皮癌、頚がん、肝細胞がん、肉腫、中皮腫、膠芽細胞腫、多発性骨髄腫、黒色腫、前立腺および食道の癌から選択される、
請求項12または13に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願
本特許出願は、Julia Coronella、Robyn Richardson、Anjuli TimmerおよびRoland Newmanを発明者とし、代理人整理番号057774-0445246で指定され、「SYNDECAN-1 (CD138) BINDING AGENTS AND USES THEREOF」と題して2017年4月26日に出願した米国仮特許出願第62/490,463号に優先権を主張する。上記特許出願の全ての内容は、全てのテキスト、表および図を含めて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明の実施形態は、シンデカン-1(CD138)またはその一部に特異的に結合する結合剤を含む組成物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
緒言
シンデカンファミリーは、細胞表面に存在する4つの膜貫通ヘパラン硫酸プロテオグリカン類(HSPG)からなる。これらの異なったシンデカン類の構造は脊椎動物および無脊椎動物において高い相同性を示す。4つ全てのシンデカン類は変動する数のグリコサミノグリカン(GAG)側鎖で修飾されたコアタンパク質から組み立てられている。シンデカン類は主としてこれらのGAG鎖を通してその機能を発揮しているが、コアタンパク質の異なったドメインも注目すべき役割を果たしている。シンデカン-1およびシンデカン-3はいずれもヘパラン硫酸(HS)およびコンドロイチン硫酸(CS)鎖を有する一方、シンデカン-2およびシンデカン-4はHS鎖のみを有している。シンデカン類は増殖および分化、細胞の伸展、細胞の付着、 細胞の移動、細胞骨格の形成、浸潤、および血管形成を含む広範囲の生物学的プロセスに関与している。
【0004】
シンデカン-1は、N-末端細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、およびC末端細胞内シグナル伝達ドメインを含む膜貫通(タイプ1)ヘパラン硫酸プロテオグリカンである。ヒトではシンデカン-1(CD138)は長さ310アミノ酸のコアタンパク質を含み、SDC1遺伝子によってコードされている。SDC1遺伝子は5つのエクソンからなり、ヒトの第2染色体に位置している。第1のエクソンはシグナルペプチドをコードし、第2のエクソンはヘパラン硫酸の付着部位をコードし、第3および第4のエクソンはコンドロイチン硫酸の結合部位をコードし、第5のエクソンは膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインをコードしている。
【0005】
シンデカン-1は成体組織の上皮細胞の基底外側表面の上に、成長中の間葉系細胞の上に、および異なった段階の分化の間のリンパ球様細胞の上に発現する。シンデカン-1は肝細胞増殖因子(HGF)に結合することができ、種々の増殖因子と相互作用して共受容体として作用し、細胞の移動、細胞とマトリックスとの相互作用、成長、増殖、および生存に影響する多重のシグナル伝達経路の活性化をもたらす。いくつかの研究によって、肺がん、乳がん、頭頚部癌腫、胃腸の悪性腫瘍、骨髄腫および悪性中皮腫、高侵攻性間葉系腫瘍を含む種々の悪性疾患におけるシンデカン-1の重要な役割が関連付けられてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シンデカン-1に特異的に結合する新規な結合剤、モノクローナル抗体およびその結合部分、その医薬組成物ならびにこれを用いる方法が本明細書で提示される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの態様では、シンデカン-1、シンデカン-1の細胞外ドメインまたはその一部に特異的に結合する結合剤が本明細書で提示される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した結合剤はシンデカン-1を含むタンパク質またはポリペプチド、シンデカン-1の細胞外ドメインまたはその一部に特異的に結合する。ある実施形態では、結合剤はヒトシンデカン-1、非ヒト霊長類シンデカン-1(たとえばサルシンデカン-1)、ラットシンデカン-1およびマウスシンデカン-1から選択される1つまたは複数の哺乳類シンデカン-1ポリペプチドに特異的に結合する。ある実施形態では、結合剤はヒトシンデカン-1の変異体および/または1つもしくは複数の天然に産生する変異体を含むヒトシンデカン-1の細胞外ドメインに特異的に結合する。
【0008】
いくつかの態様では、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3から選択される1つまたは複数の軽鎖相補性決定領域を含むシンデカン-1結合剤が本明細書に提示され、CDR-L1は表1から選択されるCDR-L1のアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有するポリペプチド配列を含み、CDR-L2は表2から選択されるCDR-L2のアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有するポリペプチド配列を含み、CDR-L3は表3から選択されるCDR-L3のアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有するポリペプチド配列を含み、シンデカン-1結合剤はシンデカン-1またはその一部に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤はCDR-L3を含み、CDR-L2を含んでもよい。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤はCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含む。
【0009】
いくつかの態様では、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3から選択される1つまたは複数の重鎖相補性決定領域を含むシンデカン-1結合剤が本明細書に提示され、CDR-H1は表6から選択されるCDR-H1のアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有するポリペプチド配列を含み、CDR-H2は表7から選択されるCDR-H2のアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有するポリペプチド配列を含み、CDR-H3は表8から選択されるCDR-H3のアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有するポリペプチド配列を含み、シンデカン-1結合剤はシンデカン-1またはその一部に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤はCDR-H3を含む。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤はCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含む。
【0010】
いくつかの態様では、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3から選択される1つまたは複数の軽鎖相補性決定領域を含むシンデカン-1結合剤が本明細書に提示され、CDR-L1は表1から選択されるCDR-L1のアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有するポリペプチド配列を含み、CDR-L2は表2から選択されるCDR-L2のアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有するポリペプチド配列を含み、CDR-L3は表3から選択されるCDR-L3のアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有するポリペプチド配列を含む。
【0011】
本明細書に提示するシンデカン-1結合剤のある実施形態では、CDR-L1は表1から選択されるCDR-L1のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するポリペプチド配列を含み、CDR-L2は表2から選択されるCDR-L2のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するポリペプチド配列を含み、CDR-L3は表3から選択されるCDR-L3のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR-L1は表1から選択されるポリペプチド配列を含み、CDR-L2は表2から選択されるポリペプチド配列を含み、CDR-L3は表3から選択されるポリペプチド配列を含む。
【0012】
本明細書に提示するシンデカン-1結合剤のある実施形態では、CDR-H1は表6から選択されるCDR-H1のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するポリペプチド配列を含み、CDR-H2は表7から選択されるCDR-H2のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するポリペプチド配列を含み、CDR-H3は表8から選択されるCDR-H3のアミノ酸配列と少なくとも90%の相同性を有するポリペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、CDR-H1は表6から選択されるポリペプチド配列を含み、CDR-H2は表7から選択されるポリペプチド配列を含み、CDR-H3は表8から選択されるポリペプチド配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤はCDR-H3を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤はCDR-H3およびCDR-L3を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤はCDR-H3、CDR-L3およびCDR-H2もしくはCDR-L2を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤はCDR-H3、CDR-L3、CDR-H2、CDR-L2およびCDR-H1および/またはCDR-L1を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、CDR領域は表1~10の1つまたは複数から選択される。
【0014】
いくつかの態様では、軽鎖相補性決定領域(CDR-L)の3つのポリペプチド配列であるCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含むシンデカン-1結合剤が本明細書に提示され、CDR-L1は表1から選択され、CDR-L2は表2から選択され、CDR-L3は表3から選択され、シンデカン-1結合剤はシンデカン-1またはその一部に特異的に結合する。
【0015】
いくつかの態様では、重鎖相補性決定領域(CDR-H)の3つのポリペプチド配列であるCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含むシンデカン-1結合剤が本明細書に提示され、CDR-H1は表6から選択され、CDR-H2は表7から選択され、CDR-H3は表8から選択され、シンデカン-1結合剤はシンデカン-1またはその一部に特異的に結合する。
【0016】
いくつかの態様では、表1から選択されるCDR-L1、表2から選択されるCDR-L2、表3から選択されるCDR-L3、表6から選択されるCDR-H1、表7から選択されるCDR-H2、表8から選択されるCDR-H3を含むシンデカン-1結合剤が本明細書に提示され、シンデカン-1結合剤はシンデカン-1またはその一部に特異的に結合する。
【0017】
ある実施形態では、シンデカン-1結合剤は抗体またはその結合断片である。ある実施形態では、シンデカン-1結合剤はモノクローナル抗体またはその結合断片である。ある実施形態では、シンデカン-1結合剤はIgG、IgD、IgE、IgA、またはIgMの定常領域を含む。ある実施形態では、シンデカン-1結合剤はIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4の定常領域を含む。ある実施形態では、シンデカン-1結合剤はFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fd、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド連結Fvs(sdFv)、VL、VH、ダイアボディ((VL-VH)2または(VH-VL)2)、トリアボディ(三価)、テトラボディ(四価)、ミニボディ((scFV-CH3)2)、IgGデルタCH2、scFv-Fc、(scFv)2-Fc、およびそれらの結合断片から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤はヒト化されているか、少なくとも1つのヒト定常領域もしくはその部分を含む。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤は1つ、2つもしくは少なくとも3つのヒトまたはヒト化フレームワーク領域を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤はヒトシンデカン-1に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤はシンデカン-1の細胞外ドメインに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤は50nM以下の結合親和性(KD)でヒトシンデカン-1またはその一部に特異的に結合する。
【0020】
いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤はGX1KEX2EAX3VLPのアミノ酸配列(配列番号91)を含むポリペプチドに特異的に結合し、ここでX1、X2およびX3は任意のアミノ酸から選択される。ある実施形態では、X1はプロリン、アラニン、システイン、グリシン、セリン、スレオニン、およびバリンから選択され、ならびに/またはX2はプロリン、アラニン、システイン、グリシン、セリン、スレオニン、およびバリンから選択され、ならびに/またはX3はプロリン、アラニン、システイン、グリシン、セリン、スレオニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシンおよびフェニルアラニンから選択される。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤はAGEGPKEGEAVVLP(配列番号89)またはGPKEGEAVVLP(配列番号90)のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する。
【0021】
いくつかの態様では、シンデカン-1結合剤を含む医薬組成物が本明細書に提示される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は哺乳類への静脈内投与に適した無菌組成物として製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、局所、局部、経皮、皮膚、皮下、結膜下、硝子体内、眼球後方、前房内、鼻内、経粘膜、腸内、経口、舌下、直腸、非経口、全身、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、腔内、頭蓋内、子宮内、膣内、および膀胱内注入から選択される投与経路のために製剤化される。
【0022】
本技術のある態様を以下の記述、実施例、特許請求の範囲および図面においてさらに説明する。
【0023】
図面は本技術の実施形態を説明するものであって制限するものではない。説明を明瞭かつ容易にするため、図面はスケール通りではなく、いくつかの場合には特定の実施形態の理解を助けるために種々の態様を誇張してまたは拡大して示すことがある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1はヒト、カニクイザル(cyno)およびマウスに由来するCD138タンパク質の配置を示す。免疫に用いたペプチドは箱で囲んだエリアに由来した。
【
図2】
図2は、H929細胞に結合するF12P16F6(
図2A)および別の陽性ハイブリドーマクローンF12P16G3(
図2B)のFACSヒストグラムを示す。
【
図3】
図3は、代表的なハイブリドーマ(即ちF12P16F6)の、167nM(L1A1)~10.4nM(L1A4)でのヒトCD138(上のパネル)への結合についての動的結合解析(即ちSPRソノグラム)の結果を示す。
【
図4】
図4は、代表的なキメラ抗体、12P16F6 hIgG1(chF6、
図4A)および13P30A7 hIgG1(chP30A7、
図4B)の、ヒトCD138発現細胞(ヒト)およびカニクイザルCD138発現細胞(cyno)への結合を示す。対照抗体(Sec)はCD138への特異的結合を殆どまたは全く示さなかった。
【
図5】
図5Aは、親のF12P16F6(P16F6)の重鎖と比較したヒト化重鎖を示す。記号cdrはCDRグラフトアプローチを示し、記号abbは短縮したCDRのグラフトアプローチを示し、記号sdrはSDRトランスファーアプローチを示し、記号fraはフランケンシュタインアプローチを示し、記号venはベニア化アプローチを示す。記号repairは可変領域を第2ラウンドのヒト化に供したことを示す。
図5Bは、親のF12P16F6(P16F6)の軽鎖と比較したヒト化軽鎖を示す。記号cdr、abb、sdr、fra、ven、およびrepairは、
図5Aと同じアプローチを示す。
【
図6】
図6は、代表的な11個のヒト化抗体の分子量(kDa)および純度を説明する、還元条件下で行なったSDS-PAGEゲルの写真を示す。Lane1=12P16F6 hIgG1、Lane2=hF6 aka-rep、Lane3=hF6 aks-rep、Lane4=hF6 akf-rep、Lane5=hF6 cka-rep、Lane6=hF6 ckf-rep、Lane7=hF6 f2ka-rep、Lane8=hF6 f2ks-rep、Lane9=hF6 f2kf-rep、Lane10=hF6 f1ka-rep、Lane11=hF6 f1ks-rep、Lane12=hF6 f1kf-rep、MW=分子量マーカー。分子量マーカーはゲルの右側にラベルしている。
【
図7】
図7は、代表的な11個のヒト化抗体の、多発性骨髄腫細胞株KMS-11(
図7B)および膀胱がん株RT112/84(
図7A)の表面上のヒトCD138への細胞表面結合のFACS解析を示す。陰性対照としてセクキヌマブを用いた。
【
図8】
図8は、1.95Åの分解能で分離した、抗体Fab断片と複合したヒトシンデカン-1ペプチドに由来するX線結晶構造の図を示す。非対称単位あたりそれぞれ1コピーのシンデカン-1ペプチドおよびFabが存在する。
図8はシンデカン-1-Fab結合界面を図示する。Fab重鎖は図の左にリボン状の側鎖炭素原子の形態で示されている。Fab軽鎖は図の右にリボン状の側鎖炭素原子の形態で示されている。シンデカン-1ペプチド炭素原子はFabの重鎖と軽鎖との間に挟まれて示されている。シンデカン-1ペプチドのあるアミノ酸およびFab断片のある側鎖は、それらの対応する3文字アミノ酸略号および位置でラベルされている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
シンデカン-1またはその一部に結合するモノクローナル結合剤、ならびにその組成物および使用が、いくつかの実施形態において本明細書で提示される。ヒトシンデカン-1(たとえば配列番号1)は一般に、310アミノ酸の非成熟ポリペプチド配列を含み、この配列はN末端からC末端に数えてアミノ酸1~22のN末端単一配列、アミノ酸約23~254の細胞外ドメイン、アミノ酸約255~275の膜貫通ドメイン、およびアミノ酸約276~310の細胞質ドメインを含む。シンデカン-1受容体のリーダー配列、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインを同定する方法は知られており、好適な哺乳類種に由来するシンデカン-1ポリペプチド配列内のそのようなドメインまたは領域を同定するために任意の好適な方法を用いることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、シンデカン-1は哺乳類シンデカン-1である。シンデカン-1は任意の哺乳類種に由来するものでよい。いくつかの実施形態では、シンデカン-1ポリペプチドはヒトシンデカン-1である。ある実施形態では、シンデカン-1の細胞外ドメインは典型的には未変性の哺乳類細胞の細胞表面上に発現したシンデカン-1ポリペプチドのN末端部分を含む。ある実施形態ではシンデカン-1の細胞外ドメインは細胞質ドメインおよび/または膜貫通ドメインを含まない可溶性形または非膜結合形で発現される。ある実施形態では、シンデカン-1および/またはシンデカン-1の細胞外ドメインは1つまたは複数のアミノ酸付加、欠失または置換を含む。シンデカン-1ポリペプチドは、シンデカン-1ポリペプチドと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または100%同一のアミノ酸配列を含んでよい。ある実施形態では、シンデカン-1ポリペプチドはシンデカン-1タンパク質の部分(たとえばそのサブ配列)を含む。いくつかの実施形態では、シンデカン-1の部分はシンデカン-1の細胞外ドメインまたはその部分を含む。
【0027】
シンデカン-1またはその一部に特異的に結合する1つまたは複数の結合剤を含む組成物(たとえば医薬組成物)が、いくつかの実施形態において本明細書で提示される。いくつかの実施形態では、本明細書に提示する結合剤は対象における腫瘍性障害および/またはがんの処置、予防および/または診断のために用いられる。
【0028】
「対象」という用語は哺乳類を意味する。任意の好適な哺乳類を本明細書に記載した方法または組成物によって処置することができる。哺乳類の非限定的な例には、ヒト、非ヒト霊長類(たとえば類人猿、テナガザル、チンパンジー、オランウータン、サル、マカク、その他)、家庭内動物(たとえばイヌ、ネコ)、家畜(たとえばウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、およびブタ)および実験動物(たとえばマウス、ラット、ウサギ、およびモルモット)が含まれる。いくつかの実施形態では、哺乳類はヒトである。哺乳類は任意の年齢または任意の成長段階であってよい(たとえば成体、十代、子供、新生児、または子宮内の哺乳類)。哺乳類は雌雄いずれでもよい。いくつかの実施形態では、必要としている対象は腫瘍性障害またはがんを有しているか、有している疑いがある対象である。
【0029】
ある実施形態では、結合剤は少なくとも1つの抗原(たとえばシンデカン-1またはその部分)に特異的に結合する1つもしくは複数のポリペプチドまたは1つもしくは複数のタンパク質を含むかまたはからなる。結合剤は少なくとも1つの抗原結合部分(即ち結合部分)を含むことが多い。結合剤の抗原結合部分は抗原に特異的に結合する部分である。ある実施形態では、結合剤の結合部分は単一のポリペプチド(たとえば一本鎖抗体)を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、結合剤の結合部分は2つのポリペプチドを含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、結合剤の結合部分は2つ、3つ、4つまたはそれ以上のポリペプチドを含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、結合剤は1つまたは複数の構造部分(たとえばスカフォールド、構造ポリペプチド、定常領域および/またはフレームワーク領域)を含む。いくつかの実施形態では、結合剤またはその結合部分は基材(たとえばポリマー、非有機材料、シリコン、ビーズ、その他)に取着されている。
【0030】
結合剤は1つの抗原結合部分または複数の抗原結合部分を含んでよい。たとえば、1つの結合部分を含む結合剤は1価と称されることがある。2つの結合部分を含む結合剤は2価と称されることがある。いくつかの実施形態では、結合剤は1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上の結合部分を含む。ある実施形態では、多価結合剤の結合部分の全ては同じ抗原に結合する。ある実施形態では、多価結合剤の結合部分の全ては少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%同一である1つまたは複数のポリペプチド配列を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、結合剤は抗体またはその部分(たとえばその結合部分)を含む。ある実施形態では、結合剤は抗体、抗体断片および/または抗体の抗原結合部分(たとえば結合断片、即ちその結合部分)を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、結合剤は抗体(たとえばモノクローナル抗体および/または組み換え抗体)である。結合剤または抗体は好適な方法で生成させ、製造し、または産生することができる。いくつかの実施形態では、結合剤はモノクローナルである。いくつかの実施形態では、結合剤は好適な種に由来するモノクローナル抗体である。結合剤のある非限定的な例には、モノクローナル抗体、キメラ抗体、抗体結合断片(たとえば抗体の抗原結合部分)、CDR-グラフト抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体、またはそれらの部分が含まれる。ヒト抗体は任意の好適な方法で得ることができる。たとえば、ヒト抗体は完全にヒト型の抗体を産生するように操作されたトランスクロモソーマル動物から得ることができる。ある実施形態では、結合剤はポリクローナルではなく、および/またはポリクローナル抗体ではない。
【0032】
いくつかの実施形態では、結合剤は好適な種に由来し、これから産生され、得られ、単離され、および/または精製される。いくつかの実施形態では、結合剤はたとえばウサギ、ヤギ、ウマ、ウシ、ラット、マウス、魚、鳥、またはラマに由来し、これらから産生され、得られ、単離され、および/または精製される。いくつかの実施形態では、結合剤は鳥(たとえばニワトリ、または鳥の卵)に由来し、これから産生され、得られ、単離され、および/または精製される。いくつかの実施形態では、結合剤は植物に由来し、これから産生され、得られ、単離され、および/または精製される(たとえば遺伝子操作された植物によって産生される組み換え結合剤)。いくつかの実施形態では、結合剤は好適な哺乳類に由来し、これから産生され、得られ、単離され、および/または精製される。ある実施形態では、好適な哺乳類はヒト重鎖および/もしくはヒト軽鎖またはそれらの部分を含む抗体を産生するように操作された遺伝的に改変された哺乳類(たとえばトランスクロモソーマルまたはトランスジェニック哺乳類)である。いくつかの実施形態では、結合剤は原核細胞または真核細胞から産生され、得られ、単離され、または精製される(たとえば遺伝子操作された細胞によって産生される組み換え結合剤)。いくつかの実施形態では、結合剤はウイルスから産生され、得られ、単離され、または精製される(たとえば遺伝子操作されたウイルスによって産生される組み換え結合剤)。
【0033】
結合剤は好適な発現システムから発現し、単離し、および/または精製することができる。その非限定的な例には好適な細菌、ファージ、昆虫、ウイルス、植物または哺乳類の発現システムが含まれる。たとえば、結合剤をコードする核酸を好適な哺乳類細胞株に導入し、結合剤を発現させて細胞培養培地中に分泌させることができる。任意の好適な哺乳類細胞株を用いることができる。ある実施形態では、哺乳類細胞株はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株である。結合剤(たとえばシンデカン-1結合剤)を産生する方法は、(i)結合剤の発現を指令する1つまたは複数の核酸を好適な細胞株に導入すること、(ii)好適な培養法を用いて、結合剤の発現を可能にする時間、細胞株を培養すること、(iii)細胞株を収穫し(たとえば溶解液を生成させることによって)、または細胞株から馴化培地を収穫すること(たとえば結合剤が分泌される場合)、および(iv)好適な方法を用いて結合剤を単離しおよび/または精製することの1つまたは複数を含んでよい。
【0034】
ある実施形態では、結合剤は天然には見出されず、天然には産生されない。たとえばある実施形態では、結合剤は外来の組み換え抗原、強力なアジュバント、およびしばしば鉱油および/または界面活性剤を含む乳化したカクテルを投与し、それにより外来の組み換え抗原(たとえばシンデカン-1、シンデカン-1-Fc)への人工的な免疫応答を誘起することによって動物で人工的に生成される。
【0035】
ある実施形態では、モノクローナル抗体またはモノクローナル結合剤は、モノクローナル結合剤の産生中に発生するかも知れない変異体を例外として、結合剤またはその結合断片の実質的に同種の集団であって、集団中のそれぞれの個別の結合剤は実質的に同一であり、および/または同じエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、そのような変異体は一般に存在しないか、微量で存在し得る。典型的には異なった決定基(エピトープ)を指向する異なった抗体の集団を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル結合剤の集団のそれぞれの結合剤は、抗原上の単一の決定基と結合することが多い。モノクローナル結合剤は他の免疫グロブリンが混入していないことが多い。しかし1つまたは複数の異なったモノクローナル結合剤を意図的に組成物に加えて混合物を形成させてもよい。
【0036】
修飾語「モノクローナル」は、結合剤を何らかの特定の方法で産生することが必要であると解釈すべきではない。モノクローナル結合剤は任意の好適な方法で産生することができる。たとえばある実施形態では、モノクローナル抗体はハイブリドーマ法(たとえばKohler et al, Nature, 256:495 (1975)に記載されている)またはその変形によって作られる。いくつかの実施形態では、モノクローナル結合剤は組み換えDNA法によって作られる。たとえば、モノクローナル結合剤は好適な発現系(たとえばファージディスプレイ発現系)を用いて組み換えライブラリーをスクリーニングすることによって作ることができる。いくつかの実施形態では、モノクローナル結合剤は、たとえばClackson et al, Nature, 352:624-628 (1991)および/もしくはMarks et al, J. Mol Biol, 222:581-597 (1991)に記載されている手法またはその変形によって結合剤のファージライブラリーから単離される。
【0037】
ある実施形態では、結合剤は、スカフォールドと称されることもある1つまたは複数の構造または骨格部分を含む。結合剤はスカフォールドを含んでよく、その非限定的な例には抗体、プロテインAのZドメイン、ガンマ-B結晶、ユビキチン、シスタチン、Sac7d、三重らせんコイルドコイル、リポカリン、アンキリン繰り返しモチーフ、好適なプロテアーゼ阻害剤のKunitzドメイン、フィブロネクチンドメイン、核酸ポリマー、その他、それらの部分またはそれらの組合せに由来するスカフォールドが含まれる。いくつかの実施形態では、結合剤はスカフォールドを含まない。ある実施形態では、結合剤は哺乳類抗体の1つまたは複数の構造部分を含む。
【0038】
ある実施形態では、結合剤は1つまたは複数の定常領域(たとえば抗体、たとえば哺乳類抗体に由来する定常領域)を含む。結合剤は抗体の任意の好適な定常領域またはその1つまたは複数の部分を含んでよい。ある実施形態では、結合剤は抗体軽鎖の定常領域および/または抗体重鎖の定常領域を含む。いくつかの実施形態では、結合剤はラムダ(λ)軽鎖定常領域またはその部分を含む。いくつかの実施形態では、結合剤はカッパ(κ)軽鎖定常領域またはその部分を含む。いくつかの実施形態では、結合剤は哺乳類抗体の軽鎖定常領域またはその部分のポリペプチド配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%同一であるポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、結合剤はヒト抗体の軽鎖定常領域のポリペプチド配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%同一であるポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、結合剤は軽鎖定常領域を含まない。
【0039】
ある実施形態では、結合剤は抗体重鎖の定常領域を含む。結合剤は任意の好適な重鎖定常領域、またはその部分を含んでよい。哺乳類では、抗体はIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMと称される少なくとも5種/クラスのIg重鎖を有することができ、これらは異なった重鎖定常領域またはその部分(たとえばCH1、CL、CH2、CH3ドメイン)の存在によって決定される。いくつかの実施形態では、結合剤はIgM、IgD、IgA、またはIgEアイソタイプの1つまたは複数の重鎖定常領域またはその部分を含む。いくつかの実施形態では、結合剤はIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4の重鎖定常領域、またはその1つもしくは複数の部分を含む。いくつかの実施形態では、結合剤は哺乳類抗体の重鎖定常領域のポリペプチド配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%同一であるポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、結合剤はヒト抗体の重鎖定常領域のポリペプチド配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%同一または100%同一であるポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、結合剤は定常領域の1つまたは複数の付加、欠失および/または改変を含む。結合剤は抗体のクラス、または結合剤のアイソタイプを変更させるために改変されることがある。いくつかの実施形態では、結合剤は、結合剤の1つまたは複数の機能を改変するため、たとえば血清半減期、Fc受容体結合、補体結合(たとえばC1q結合)、グリコシル化、シアリル化、細胞毒性、抗体依存性細胞介在ファゴサイトーシス(ADCP)、抗体依存性細胞毒性(ADCC)、その他を阻害し、強化し、または低減させるための1つまたは複数の付加、欠失および/または改変(1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失または付加)を含む。いくつかの実施形態では、結合剤は重鎖定常領域または軽鎖定常領域の1つまたは複数の部分を含まない。いくつかの実施形態では、結合剤は重鎖定常領域を含まない。
【0040】
いくつかの実施形態では、結合剤は抗体の1つまたは複数の可変領域またはその部分を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、結合剤は1つまたは複数の軽鎖可変領域またはその部分を含む。いくつかの実施形態では、結合剤は1つまたは複数の重鎖可変領域またはその部分を含む。ある実施形態では、結合剤は少なくとも1つの軽鎖可変領域および少なくとも1つの重鎖可変領域を含む。軽鎖可変領域と重鎖可変領域は同じまたは異なったポリペプチドの上にあってよい。
【0041】
ある実施形態では、結合剤は天然に産生しない結合剤である。天然に産生しない結合剤の非限定的な例には、モノクローナル結合剤(たとえばモノクローナル抗体)、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、一本鎖Fv(scFv)、scFv-Fc、(scFv)2-Fc、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VL、VH、ダイアボディ(Dab)、トリアボディ(三価)、テトラボディ(四価)、ミニボディ((scFv-CH3)2)、IgGデルタCH2、シンボディ、ファイノマー、アフィボディ、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、DARPin、Kunitzドメインペプチド、モノボディ、TandAb、ナノボディ、BiTE、SMIP、DNL、デュオカリン、アドネクチン、Albu-dab、DART、DVD-IG、Covxボディ、ペプチボディ、scFv-Ig、SVD-Ig、dAb-Ig、Knob-in-Holes、トリオムAb等、それらの組合せ、およびそれらの抗原結合部分が含まれる。
【0042】
いくつかの実施形態では、結合剤はFab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、一本鎖Fv(scFv)、ダイアボディ(Dab)、シンボディ、その他、および/またはそれらの組合せもしくは部分を含むかまたはからなる(たとえば米国特許第6099842号および第5990296号を参照)。いくつかの実施形態では、結合剤は1つまたは複数の抗原結合部分を含む一本鎖ポリペプチドを含む。たとえば、一本鎖結合剤は組み換え分子生物学プロセスによって重鎖可変領域またはその抗原結合部分を軽鎖可変領域またはその抗原結合部分とリンカー(たとえばアミノ酸、ポリペプチドリンカー)で接合することによって構築することができる。そのような一本鎖結合剤は抗原に対して親の二本鎖モノクローナル結合剤と同様の特異性および親和性を示すことが多い。結合剤はCDRグラフト部分またはヒト化部分等の操作された領域を含むことが多い。ある実施形態では、結合剤は未変性の二本鎖免疫グロブリンであり、他の実施形態では、結合剤はFabモノマーまたはFabダイマーである。
【0043】
結合剤のポリペプチドをコードする核酸またはその部分は、好適なクローン化手順によって組み換え発現のためにクローン化、サブクローン化、再配列または改変され、続いて当業者には公知の方法によって好適な発現系で発現される(たとえばManiatis et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1982; Antibody Engineering: Methods and Protocols, Vol. 248 of Methods in molecular biology, edited by Benny K. C. Lo, Springer Science & Business Media, 2004; Antibody Engineering, Vol. 1, Roland E. Kontermann, Stefan Duebel, Edition 2, Publisher Springer Science & Business Media, 2010; Antibody Phage Display: Methods and Protocols, Biomed Protocols, Vol. 178 of Methods in molecular biology, Editors Philippa M. O’Brien, Robert Aitken, Springer Science & Business Media, 2004を参照)。
【0044】
哺乳類では、抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域はそれぞれ、共通してCDR1、CDR2およびCDR3と称され、フレームワーク領域(たとえばFR1、FR2、FR3およびFR4)によって分離され、および/またはこれらが側面にある3つのCDR(相補性決定領域)に寄与している。本明細書で用いる「CDR」という用語は、相補性決定領域として同定されるポリペプチドのアミノ酸配列を意味する。ある実施形態では、CDRポリペプチド配列の確実な説明および結合剤の結合部位を含む残基の同定は、結合剤の構造を解明することおよび/または結合剤-抗原複合体の構造を解明することによって達成される。ある実施形態では、これはX線結晶学および/またはコンピュータモデリング等の任意の好適な方法によって達成することができる。ある実施形態では、結合剤または抗体のCDR配列を同定しまたは近似するために種々の分析方法を用いることができる。たとえば、結合剤、抗体、その結合部分またはその可変領域のポリペプチド配列におけるCDRのアミノ酸配列および/または位置は好適な方法によって同定することができる。その非限定的な例には、Kabatシステム(たとえばKabat, E. A., et al., 1991; Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication No. 91-3242ならびにJohnson, G. and Wu, T. T. 2000, Nucleic Acids Researchを参照)、および/またはChothiaナンバリングスキーム(たとえばChothia & Lesk, (1987) J. Mol. Biol, 196:901-917; Chothia et al, Nature, (1989) 342:878-883;およびAl-Lazikani et al., (1997) JMB 273,927-948)が含まれる。いくつかの実施形態では、抗体のCDRのアミノ酸配列および/または位置は、AbM法および/または接触法によって同定することができる。「AbM」定義には、抗体構造をモデル化してOxford Molecular Groupによって作成されたコンピュータプログラムの統合されたパッケージを用いる(たとえばMartin et al, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 86:9268-9272 (1989); "AbM(商標), A Computer Program for Modeling Variable Regions of Antibodies," Oxford, UK; Oxford Molecular, Ltd.を参照)。AbM定義はSamudrala et al., "Ab Initio Protein Structure Prediction Using a Combined Hierarchical Approach," in PROTEINS, Structure, Function and Genetics Suppl, 3:194-198 (1999)によって記述された知識データベースとアブイニシオ法との組合せを用いた一次配列からの抗体の三次構造をモデルとしている。ある実施形態では、接触定義は入手可能な複結晶構造の解析に基づいている(たとえばMacCallum et ah, J. Mol. Biol, 5:732-45 (1996)を参照)。
【0045】
いくつかの実施形態では、結合剤および/または結合剤の抗原結合部分は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたは少なくとも6つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、結合剤は3~60個のCDRを含む(たとえば複数の抗原結合部分を有する結合剤について)。いくつかの実施形態では、結合剤は3~12個のCDRを含む。いくつかの実施形態では、結合剤の抗原結合部分は1~6個のCDRポリペプチド配列を含む。
【0046】
ある実施形態では、結合剤および/または結合剤の抗原結合部分は、軽鎖可変領域の1つ、2つまたは3つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、結合剤の軽鎖可変領域は1つまたは複数のCDR(たとえば1つ、2つ、3つまたはそれ以上のCDR)を含む。抗体または結合剤の軽鎖可変領域におけるCDRを表わすアミノ酸配列はCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3と称され、これらは軽鎖可変領域のアミノ末端(N末端)からカルボキシ末端(C末端)への方向で連続的に(即ちL1、L2およびL3)番号を付している。たとえば、結合剤の軽鎖可変領域を表わすポリペプチドにおいて、CDR-L1は存在する場合には最もN末端側の軽鎖CDRであり、CDR-L3は存在する場合には最もC末端側の軽鎖CDRであり、CDR-L2は存在する場合には結合剤の軽鎖可変領域または結合部分の(i)CDR-L1とCDR-L3との間、(ii)CDR-L3のN末端側、または(iii)CDR-L1のC末端側に位置している。「CDR-L1」、「CDR-L2」および「CDR-L3」という用語は一つには結合剤の相補性決定領域(たとえば軽鎖可変領域のCDR)として同定され、または本明細書において開示されるポリペプチドのアミノ酸配列を意味する。CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3のアミノ酸配列の非限定的な例を、それぞれ表1~表3に示す。本明細書に記載した結合剤の軽鎖可変領域または抗原結合部分は、本明細書に開示したCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の任意の組合せを含んでよく、結合剤はシンデカン-1またはその部分への特異的結合を保持している。ある実施形態では、本明細書に記載した結合剤の軽鎖可変領域または抗原結合部分は、表3から選択されるCDR-L3と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む一本軽鎖CDRを含む。ある実施形態では、本明細書に記載した結合剤の軽鎖可変領域または抗原結合部分は、表3から選択されるCDR-L3、および他の任意の好適なCDR-L2および/またはCDR-L1ポリペプチド配列と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含み、結合剤はシンデカン-1またはその部分への特異的結合を保持している。ある実施形態では、結合剤の軽鎖可変領域または抗原結合部分の軽鎖CDRはCDR-L3およびCDR-L2からなり、CDR-L3は表3から選択されるCDR-L3と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は表2から選択されるCDR-L2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、本明細書に記載した結合剤の軽鎖可変領域または抗原結合部分は、表3から選択されるCDR-L3と少なくとも70%同一のアミノ酸配列および表2から選択されるCDR-L2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列および任意の他の好適なCDR-L1ポリペプチド配列を含み、結合剤はシンデカン-1またはその部分への特異的結合を保持している。ある実施形態では、本明細書に記載した結合剤の軽鎖可変領域または抗原結合部分は、表3から選択されるCDR-L3と少なくとも70%同一のアミノ酸配列、表2から選択されるCDR-L2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列、および表1から選択されるCDR-L1と少なくとも70%同一のアミノ酸配列からなる3つの軽鎖CDRを含む。ある実施形態では、本明細書に記載した結合剤の軽鎖可変領域または抗原結合部分は、表3から選択されるCDR-L3と少なくとも70%同一のアミノ酸配列、表2から選択されるCDR-L2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列、および表1から選択されるCDR-L1と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含み、結合剤はシンデカン-1またはその部分への特異的結合を保持している。
【0047】
いくつかの実施形態では、結合剤は表1、表2または表3に列挙したCDR配列の任意の1つと少なくとも70%、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%同一である1つまたは複数の軽鎖CDRを含む。いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、表1に示す配列の任意の1つと少なくとも70%、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%同一であるCDR-L1を含む。いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は表1に示す配列の任意の1つのCDR-L1を含む。
【0048】
【0049】
いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表2に示す配列の任意の1つと少なくとも70%、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%同一であるCDR-L2を含む。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表2に示す配列の任意の1つのCDR-L2を含む。
【0050】
【0051】
いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表3に示す配列の任意の1つと少なくとも70%、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%同一であるCDR-L3を含む。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表3に示す配列の任意の1つのCDR-L3を含む。
【0052】
【0053】
いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表4のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%の相同性を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表4の軽鎖可変領域配列を含む。
【0054】
【0055】
いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表5の配列と少なくとも70%、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%の相同性を有するヒト化軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表5のヒト化軽鎖可変領域配列を含む。
【0056】
【0057】
ある実施形態では、シンデカン-1結合剤および/またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、重鎖可変領域の1つ、2つまたは3つのCDRを含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は1つまたは複数のCDR(たとえば1つ、2つ、3つまたはそれ以上のCDR)を含む。抗体または結合剤の重鎖可変領域におけるCDRを表わすアミノ酸配列はCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3と称され、これらは重鎖可変領域のアミノ末端(N末端)からカルボキシ末端(C末端)への方向で連続的に(即ちH1、H2およびH3)番号を付している。たとえば、シンデカン-1結合剤の重鎖可変領域を表わすポリペプチドにおいて、CDR-H1は存在する場合には最もN末端側のCDRであり、CDR-H3は存在する場合には最もC末端側のCDRであり、CDR-H2は存在する場合には重鎖可変領域の(i)CDR-H1とCDR-H3との間、(ii)CDR-H3のN末端側、または(iii)CDR-HのC末端側に位置している。「CDR-H1」、「CDR-H2」および「CDR-H3」という用語は一つにはシンデカン-1結合剤の相補性決定領域(たとえばシンデカン-1結合剤の重鎖可変領域のCDR)として同定され、または本明細書において開示されるポリペプチドのアミノ酸配列を意味する。CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3のアミノ酸配列の非限定的な例を、それぞれ表6~表8に示す。本明細書に記載したシンデカン-1結合剤の重鎖可変領域または抗原結合部分は、本明細書に開示したCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3の任意の組合せを含んでよく、シンデカン-1結合剤はシンデカン-1またはその部分への特異的結合を保持している。ある実施形態では、本明細書に記載したシンデカン-1結合剤の重鎖可変領域または抗原結合部分は、表8から選択されるCDR-H3と少なくとも70%同一のアミノ酸配列からなる一本重鎖CDRを含む。ある実施形態では、本明細書に記載したシンデカン-1結合剤の重鎖可変領域または抗原結合部分は、表8から選択されるCDR-H3と少なくとも70%同一のアミノ酸配列、および他の任意の好適なCDR-H2および/またはCDR-H1ポリペプチド配列を含み、シンデカン-1結合剤はシンデカン-1またはその部分への特異的結合を保持している。ある実施形態では、シンデカン-1結合剤の重鎖可変領域または抗原結合部分の重鎖CDRはCDR-H3およびCDR-H2からなり、CDR-H3は表8から選択されるCDR-H3と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は表7から選択されるCDR-H2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含む。ある実施形態では、本明細書に記載したシンデカン-1結合剤の重鎖可変領域または抗原結合部分は、表8から選択されるCDR-H3と少なくとも70%同一のアミノ酸配列および表7から選択されるCDR-H2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列、ならびに任意の他の好適なCDR-H1ポリペプチド配列を含み、シンデカン-1結合剤はシンデカン-1またはその部分への特異的結合を保持している。ある実施形態では、本明細書に記載したシンデカン-1結合剤の重鎖可変領域または抗原結合部分は、表8から選択されるCDR-H3と少なくとも70%同一のアミノ酸配列、表7から選択されるCDR-H2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列、および表6から選択されるCDR-H1と少なくとも70%同一のアミノ酸配列からなる3つの重鎖CDRを含む。ある実施形態では、本明細書に記載したシンデカン-1結合剤の重鎖可変領域または抗原結合部分は、表8から選択されるCDR-H3と少なくとも70%同一のアミノ酸配列、表7から選択されるCDR-H2と少なくとも70%同一のアミノ酸配列、および表6から選択されるCDR-H1と少なくとも70%同一のアミノ酸配列を含み、シンデカン-1結合剤はシンデカン-1またはその部分への特異的結合を保持している。
【0058】
いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤は表6、表7または表8のCDRの任意の1つと少なくとも70%、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%の相同性を有する1つまたは複数の重鎖CDRを含む。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表6に示す配列の任意の1つと少なくとも70%、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%同一であるCDR-H1を含む。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は表6に示す配列の任意の1つのCDR-H1を含む。
【0059】
【0060】
いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表7に示す配列の任意の1つと少なくとも70%、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%同一であるCDR-H2を含む。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表7に示す配列の任意の1つのCDR-H2を含む。
【0061】
【0062】
いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表8に示す配列の任意の1つと少なくとも70%、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%同一であるCDR-H3を含む。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表8に示す配列の任意の1つのCDR-H3を含む。
【0063】
【0064】
いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表9の配列と少なくとも70%、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%の相同性を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表9の重鎖可変領域配列を含む。
【0065】
【0066】
いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表10の配列と少なくとも70%、75%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも99%の相同性を有するヒト化重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、シンデカン-1結合剤またはシンデカン-1結合剤の抗原結合部分は、表10のヒト化重鎖可変領域配列を含む。
【0067】
【0068】
いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、配列番号27~34のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-L3(たとえば表3から選択されるCDR-L3配列)および配列番号68~76のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-H3(たとえば表8から選択されるCDR-H3配列)を含むまたはからなる。いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、配列番号27、28、29または30のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-L3および配列番号68、69、70または71のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-H3を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、配列番号27~34のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-L3(たとえば表3から選択されるCDR-L3配列)、配列番号16~26のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-L2(たとえば表2から選択されるCDR-L2配列)、配列番号68~76のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-H3(たとえば表8から選択されるCDR-H3配列)、および配列番号56~67のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-H2(たとえば表7から選択されるCDR-H2配列)を含むまたはからなる。いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、配列番号27または29のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-L3、配列番号16または19のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号68または70のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-H3、および配列番号56または58のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-H2を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、配列番号27~34のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-L3(たとえば表3から選択されるCDR-L3配列)、配列番号16~26のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-L2(たとえば表2から選択されるCDR-L2配列)、配列番号2~15のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-L1(たとえば表1から選択されるCDR-L1配列)、配列番号68~76のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-H3(たとえば表8から選択されるCDR-H3配列)、配列番号56~67のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-H2(たとえば表7から選択されるCDR-H2配列)、および配列番号46~55のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-H1(たとえば表6から選択されるCDR-H1配列)を含むまたはからなる。いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、配列番号27または29のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-L3、配列番号16または19のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号2または5のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号68または70のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号56または58のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号46または48のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも90%、または100%同一のアミノ酸配列を含むCDR-H1を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、配列番号2または3のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号16、17または18のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号27または28のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むかまたはからなる。
【0072】
いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、配列番号4または5のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号19、20または21のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-L2、および配列番号29または31のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-L3を含むかまたはからなる。
【0073】
いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、配列番号46または47のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号56または57のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号68または69のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むかまたはからなる。
【0074】
いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、配列番号48または49のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号58、59または60のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号70または71のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むかまたはからなる。
【0075】
いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、配列番号2または3のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号16、17または18のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号27または28のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-L3、配列番号46または47のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号56または57のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号68または69のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むかまたはからなる。
【0076】
いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、配列番号4または5のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号19、20または21のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号29または30のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-L3、配列番号48または49のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号58、59または60のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号70または71のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むCDR-H3を含むかまたはからなる。
【0077】
いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、配列番号77~88のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(たとえば表9および表10から選択される重鎖可変領域)および/または配列番号35~45のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(たとえば表4および表5から選択される軽鎖可変領域)を含むまたはからなる。いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、配列番号84~88のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(たとえ表10から選択される重鎖可変領域)および配列番号42~45のアミノ酸配列の任意の1つと少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(たとえば表5から選択される軽鎖可変領域)を含む。
【0078】
「%同一」または「%相同性」という用語は、2つのアミノ酸配列の間の配列相同性を意味する。相同性は、比較の目的のために配置された各配列における位置を比較することによって決定することができる。比較される配列における等価の位置が同じアミノ酸によって占有される場合には、分子はその位置において同一である。等価の部位が同じまたは同様(たとえば立体的および/または電子的性質において同様)のアミノ酸残基によって占有される場合には、分子はその場所において同種(同様)であると称することができる。相同性、同様性、または同一性の百分率としての表現は、比較される配列によって共有される位置における同一または同様のアミノ酸の数の関数を意味する。相同性、同様性、または同一性の百分率としての表現は、比較される配列によって共有される位置における同一または同様のアミノ酸の数の関数を意味する。FASTA、BLAST、またはENTREZ等の種々の配置アルゴリズムおよび/またはプログラムを用いることができる。FASTAおよびBLASTはGCG配列解析パッケージ(University of Wisconsin、Madison、Wis.)の一部として入手可能であり、たとえばデフォルトセッティングとともに用いることができる。ENTREZはNational Center for Biotechnology Information, National Library of Medicine, National Institutes of Health, Bethesda, Md.を通して入手可能である。1つの実施形態では、2つの配列の%相同性は、ギャップウェイトを1として、たとえば2つの配列の間に単一のアミノ酸またはヌクレオチドのミスマッチがあるかのように各アミノ酸ギャップに重み付けしたGCGプログラムによって決定することができる。
【0079】
配置のための他の手法はMethods in Enzymology, vol. 266: Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis (1996), ed. Doolittle, Academic Press, Inc., a division of Harcourt Brace & Co., San Diego, Calif., USAに記載されている。いくつかの実施形態では、配列を配置するために配列におけるギャップを許容する配置プログラムが利用される。Smith-Watermanは配列の配置におけるギャップを許容するアルゴリズムの1つの型である。Meth. Mol. Biol. 70:173-187 (1997)を参照されたい。NeedlemanおよびWunsch配置法を用いるGAPプログラムも、配列を配置するために用いることができる。代替のサーチ戦略はMASPARコンピュータの上で作動するMPSRCHソフトウェアを用いる。MPSRCHは大規模並列コンピュータ上で配列を記録するためにSmith-Watermanアルゴリズムを用いる。このアプローチにより、隔たって関連する組合せを捕捉する能力が改善され、特に小さなギャップおよびヌクレオチド配列エラーを許容することができる。核酸にコードされたアミノ酸配列を用いて、タンパク質およびDNAの両方のデータベースをサーチすることができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、表4および表5の軽鎖可変領域から選択される1つまたは複数のCDRを含む。いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、表9および表10の重鎖可変領域から選択される1つまたは複数のCDRを含む。いくつかの実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、表4および表5の軽鎖可変領域から選択される1つまたは複数のCDRならびに表9および表10の重鎖可変領域から選択される1つまたは複数のCDRを含む。ある実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、表4および表5の軽鎖可変領域の任意の1つからそれぞれ選択されるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3、ならびに表9および表10の重鎖可変領域の任意の1つからそれぞれ選択されるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む。CDR(たとえばCDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)のアミノ酸配列は、本明細書に開示した重鎖または軽鎖可変領域の中で、本明細書に記載した任意の好適な方法または当業者には公知の方法によって同定することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、結合剤は表1~表10から選択される1つまたは複数の好適な配列を含み、選択されるポリペプチド配列は0~5、1~5、0~10、1~10、0~15、または1~12のアミノ酸改変を含み、アミノ酸改変はアミノ酸の付加、アミノ酸の欠失、および/またはアミノ酸の置換であってよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示した結合剤は1つまたは複数のアミノ酸類似体、非天然アミノ酸またはアミノ酸誘導体を含む。
【0082】
ある実施形態では、結合剤または結合剤の抗原結合部分は、1つまたは複数のフレームワーク領域(FR)を含む。フレームワーク領域はCDRの間に位置し、および/または抗体もしくは結合剤の重鎖もしくは軽鎖可変領域のCDR配列の側面にあることが多い。哺乳類では、重鎖可変領域は4つのフレームワーク領域を含むことが多く、軽鎖可変領域は4つのフレームワーク領域を含むことが多い。抗体において、抗体の可変領域において、または結合剤において、任意の好適な方法を用いて1つまたは複数のフレームワーク領域を同定することができる。以下に考察するように、結合剤は改変されていない、または改変された(たとえば最適化された)、合成または天然産生のフレームワーク領域を含んでよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、結合剤またはその抗原結合部分はキメラ化、グラフト、および/またはヒト化されている。キメラ化、グラフト、および/またはヒト化された結合剤は改変されまたは置換された定常領域および/またはフレームワーク領域を含むことが多いが、一方、シンデカン-1またはその部分への結合特異性は維持されている。いくつかの実施形態では、結合剤またはその抗原結合部分は、ヒト抗体由来の定常領域、フレームワーク領域、またはそれらの部分を含む。いくつかの実施形態では、結合剤またはその抗原結合部分は、天然の抗体分子には見出されない完全合成部分、1つまたは複数のアミノ酸、またはアミノ酸の配列を含む。
【0084】
天然産生のフレームワーク領域またはその部分は、任意の好適な種から得られる。ある実施形態では、結合剤またはその抗原結合部分の軽鎖および重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)は、同じまたは別の種からのフレームワーク領域にグラフトされる。たとえば、結合剤の1つまたは複数のフレームワーク領域はげっ歯類(たとえばマウスまたはラット)または霊長類(たとえばヒト)に由来するものでよい。
【0085】
ある実施形態では、結合剤またはその抗原結合部分の軽鎖および/または重鎖可変領域のCDRは、コンセンサスヒトフレームワーク領域にグラフトすることができる。コンセンサスヒトフレームワーク領域を創成するために、ある実施形態では、いくつかのヒト重鎖または軽鎖アミノ酸配列からのフレームワーク領域を配置してコンセンサス配列を同定することができる。ある実施形態では、抗体または結合剤の重鎖または軽鎖フレームワーク領域は、異なった重鎖または軽鎖可変領域からの1つまたは複数のフレームワーク領域またはその部分で置き換えられる。いくつかの実施形態では、結合剤またはその抗原結合部分は、1つまたは複数のヒトフレームワーク領域を含む。ある実施形態では、結合剤またはその抗原結合部分は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のヒトフレームワーク領域を含む。いくつかの実施形態では、結合剤またはその抗原結合部分は1つまたは複数のマウスフレームワーク領域を含む。ある実施形態では、結合剤またはその抗原結合部分は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のマウスフレームワーク領域を含む。ある実施形態では、結合剤またはその抗原結合部分は1つまたは複数のヒトフレームワーク領域および1つまたは複数のマウスフレームワーク領域を含む。
【0086】
たとえばフレームワーク領域またはその部分を改変し、置換し、または欠失させることによってキメラ化、ヒト化、および/または最適化された抗体または結合剤を生成させる方法は既知である。CDRグラフト化の非限定的な例は、たとえば米国特許第6180370号、第6054297号、第5693762号、第5859205号、第5693761号、第5565332号、第5585089号および第5530101号、ならびにJones et al, Nature, 321 :522-525 (1986); Verhoeyen et al, Science, 239:1534-1536 (1988)、ならびにWinter, FEBS Letts., 430:92-94 (1998)に記載されている。キメラ化、グラフト、および/またはヒト化された結合剤を生成するさらなる非限定的な例には、米国特許第5530101号、第5707622号、第5994524号、第6245894号、Queen et al., (1988) PNAS 86:10029-10033、Riechmann et al., Nature (1988) 332:323-327、Antibody Engineering: Methods and Protocols, Methods in molecular biologyの248卷、Benny K. C. Lo編、Springer Science & Business Media, (2004)、およびAntibody Engineering, Vol. 1, Roland E. Kontermann, Stefan Duebel, 2版, Publisher Springer Science & Business Media, (2010)が含まれる。いくつかの実施形態では、結合剤は1つまたは複数のフレームワーク領域またはその部分(たとえば1つまたは複数のアミノ酸)をヒト抗体からの1つまたは複数のフレームワーク領域またはその部分と交換することによってヒト化することができる。ある実施形態では、抗体または結合剤は、ドナー結合剤の結合特異性を保持しながらドナー結合剤(たとえばマウスモノクローナル抗体)からの1つまたは複数のCDR(たとえば1、2、3、4、5または6個全てのCDR)をアクセプター結合剤(たとえばヒト抗体)に移動させることによって、ヒト化またはグラフトすることができる。ある実施形態では、キメラ化、グラフトまたはヒト化結合剤を作成するプロセスは、結合剤の定常領域またはフレームワーク領域に1つまたは複数のアミノ酸置換、付加または欠失を作成することを含む。ある実施形態では、「リシェーピング」、「超キメラ化」、または「ベニア化/リサーフェシング」等の手法を用いてヒト化結合剤を産生することができる(たとえばVaswami et al, Annals of Allergy, Asthma, & Immunol. 81 :105 (1998); Roguska et al, Prot. Engin., 9:895-904 (1996); および米国特許第6072035号を参照)。いくつかの態様では、結合剤は免疫原性を低減させるために上で考察した方法によって、または別の好適な方法によって改変される(たとえばGilliland et al, J. Immunol, 62(6):3663-71 (1999)を参照)。
【0087】
ある実施形態では、結合剤のアミノ酸配列は、標的(たとえばシンデカン-1)に対する結合親和性、種間の交差反応性、溶解性および/または機能(たとえばアゴニスト活性、またはその欠落)を最適化するために改変される。いくつかの実施形態では、シンデカン-1への結合のために、および/または本明細書に開示した結合剤の機能または特徴を最適化するために本明細書に開示したCDRの特定の組合せを最適化することができる。たとえば、本明細書に開示した特徴付けられた軽鎖可変領域(たとえば配列番号35~45の任意の1つの軽鎖可変領域)を、好適な発現系を用いて、特徴付けられた重鎖可変領域(たとえば表6または7から選択される重鎖可変領域)のCDR-H1およびCDR-H2を含む重鎖可変領域のライブラリーとともに共発現することができ、CDR-H3は、たとえば表8の1つまたは複数のCDR-H3領域を含んでもよいCDR-H3配列のライブラリーで置き換えられる。得られる軽鎖/重鎖結合剤は、シンデカン-1への結合について、および/または特定の機能について、スクリーニングすることができる。最適化された結合剤は同定され、CDR-H3のアミノ酸配列は好適な方法によって同定される。上記のスクリーニング法を用いて、結合剤の結合特異性、結合親和性、および/または機能を改善させ得るCDRの特定の組合せ、または特定の最適化されたCDR配列(たとえばアミノ酸置換、付加または欠失を含むCDR配列)を含む結合剤を同定することができる。結合剤をスクリーニングし最適化するそのような方法は既知である(たとえばPortolano et al., (1993) Journal of Immunology 150:880-887;およびClarkson et al., (1991) Nature 352:624-628)を参照)。そのような参考文献は、相補性可変領域のライブラリーをスクリーニングすることによって、既知の可変軽鎖、既知の可変重鎖、またはそれらの部分(たとえばそれらのCDR)を用いて特異的抗原と結合する抗体を産生させる方法を教示している。
【0088】
ある実施形態では、結合剤の親和性および/または機能を最適化するために結合剤が改変され、グリコシル化部位が除去または付加される(たとえばCo et al, Mol. Immunol, 30:1361-1367 (1993)を参照)。いくつかの実施形態では、結合剤におけるグリコシル化部位の数および/または型が改変されまたは変更される。N連結グリコシル化部位は配列Asn-X-SerまたはAsn-X-Thrによって特徴付けられることが多い。ここでXと指定されたアミノ酸残基はプロリン以外の任意のアミノ酸残基であってよい。この配列を創成するためのアミノ酸の置換は、N連結炭水化物鎖の付加のための新たな可能な部位を提供する。あるいは、この配列を除外する置換は、存在するN連結炭水化物鎖を除去することになる。ある実施形態では、1つまたは複数のN連結グリコシル化部位(典型的には天然産生の)が除外され、1つまたは複数の新たなN連結部位が創成されるN連結炭水化物鎖の再配列も提供される。いくつかの実施形態では、結合剤は、改変されない結合剤と比較して1つまたは複数のシステイン残基が欠失することまたは1つまたは複数のシステイン残基が別のアミノ酸(たとえばセリン)によって置換されることによって改変される。ある実施形態では、システイン変異体は発現、分泌、および/または溶解性を最適化するために有用であり得る。
【0089】
ある実施形態では、結合剤は、たとえばタンパク質分解に対する結合剤の感受性を低減させるため、酸化に対する結合剤の感受性を低減させるため、血清半減期を増大させるため、および/または結合剤のその他の物理化学的、薬物動態もしくは機能的特性を付与または改変するために設計されまたは意図されたある種のアミノ酸付加、置換または欠失を含むように改変される。
【0090】
いくつかの実施形態では、結合剤は哺乳類シンデカン-1またはその一部に特異的に結合する。ある実施形態では、本明細書に記載した結合剤は、10-5M以下、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、50nM以下、10nM以下、または1nM以下の結合親和性(KD)で、哺乳類シンデカン-1またはその一部に特異的に結合する。ある実施形態では、本明細書に記載した結合剤は、約10-5~10-15M、10-6~10-15M、10-7~10-15M、10-9~10-15M、10-9~10-14M、10-9~10-13M、または10-9~約10-12Mの結合親和性(KD)で、哺乳類シンデカン-1またはその一部に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、結合剤は哺乳類シンデカン-1の細胞外ドメインもしくは細胞外領域またはその一部に特異的に結合する。ある態様では、結合剤は天然に見出される非変性の(遺伝的に改変されていない)哺乳類の細胞によって産生される野生型シンデカン-1に特異的に結合する。ある態様では、結合剤は天然に発生するシンデカン-1変異体に特異的に結合する。ある態様では、結合剤は1つまたは複数のアミノ酸置換、付加または欠失を含むシンデカン-1に特異的に結合する。ある実施形態では、結合剤はヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、またはげっ歯類(たとえばマウスまたはラット)の細胞の表面で産生されおよび/または発現されるシンデカン-1に特異的に結合する。ある実施形態では、結合剤は、配列番号1および99~102の任意の1つのアミノ酸配列を含む1つもしくは複数のシンデカン-1ポリペプチドまたはその部分(たとえば細胞外ドメイン)に特異的に結合する。ある実施形態では、本明細書に記載した結合剤は、50nM以下、10nM以下、または1nM以下の結合親和性(KD)で、配列番号1および99~102の任意の1つのアミノ酸配列を有する1つまたは複数のシンデカン-1ポリペプチドまたはその一部に特異的に結合する。ある実施形態では、結合剤はヒトシンデカン-1に特異的に結合する。ある実施形態では、結合剤はヒトシンデカン-1の細胞外ドメインに特異的に結合する。ある実施形態では、結合剤はヒトシンデカン-1および/またはその細胞外ドメインに特異的に結合する。
【0091】
ある実施形態では、結合剤は、AGEGPKEGEAVVLP(配列番号89)またはGPKEGEAVVLP(配列番号90)のアミノ酸配列を含むかまたはからなるポリペプチド配列に特異的に結合する。ある実施形態では、本明細書に記載した結合剤は、10-5M以下、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、50nM以下、10nM以下、または1nM以下の結合親和性(KD)で、AGEGPKEGEAVVLP(配列番号89)またはGPKEGEAVVLP(配列番号90)のアミノ酸配列を含むかまたはからなるポリペプチド配列に特異的に結合する。ある実施形態では、結合剤は、GX1KEX2EAX3VLP(配列番号91)のアミノ酸配列を含むかまたはからなるポリペプチド配列に特異的に結合し、ここでX1、X2およびX3は任意のアミノ酸から選択される。いくつかの実施形態では、X1はプロリン、アラニン、システイン、グリシン、セリン、スレオニン、およびバリンから選択され、ならびに/またはX2はプロリン、アラニン、システイン、グリシン、セリン、スレオニン、およびバリンから選択され、ならびに/またはX3はプロリン、アラニン、システイン、グリシン、セリン、スレオニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシンおよびフェニルアラニンから選択される。ある実施形態では、本明細書に記載した結合剤は、50nM以下、10nM以下、または1nM以下の結合親和性(KD)でGX1KEX2EAX3VLP(配列番号91)のアミノ酸配列を含むかまたはからなるポリペプチド配列に特異的に結合し、ここでX1はプロリン、アラニン、システイン、グリシン、セリン、スレオニン、およびバリンから選択され、X2はプロリン、アラニン、システイン、グリシン、セリン、スレオニン、およびバリンから選択され、X3はプロリン、アラニン、システイン、グリシン、セリン、スレオニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシンおよびフェニルアラニンから選択される。ある実施形態では、X1はプロリンであり、X2はアラニン、グリシン、またはセリンから選択され、X3はアラニン、グリシン、およびバリンから選択される。
【0092】
「特異的に結合する」という用語は、他の分子または他のぺプチドより優先的に標的のぺプチドに結合する結合剤を意味し、これはたとえば好適なインビトロ(in vitro)アッセイ(たとえばELISA、イムノブロット、フローサイトメトリー、その他)によって決定される。特異的結合相互作用は約2倍以上、しばしば約10倍以上、時には約100倍以上、1000倍以上、10,000倍以上、100,000倍以上、または1,000,000倍以上、非特異的結合相互作用を識別する。
【0093】
いくつかの実施形態では、シンデカン-1またはその一部に特異的に結合する結合剤は、100nM以下、50nM以下、25nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM以下、900pM以下、800pM以下、750pM以下、700pM以下、600pM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下、または100pM以下の結合親和性定数(KD)でシンデカン-1またはその部分(たとえばシンデカン-1の細胞外ドメイン)に結合する結合剤である。いくつかの実施形態では、シンデカン-1またはその一部に特異的に結合する結合剤は、100nM以下、50nM以下、25nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM以下、900pM以下、800pM以下、750pM以下、700pM以下、600pM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下、または100pM以下の結合親和性定数(KD)でヒトシンデカン-1またはその部分(たとえばヒトシンデカン-1の細胞外ドメイン)に結合する結合剤である。いくつかの実施形態では、シンデカン-1またはその一部に特異的に結合する結合剤は、100nM以下、50nM以下、25nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM以下、900pM以下、800pM以下、750pM以下、700pM以下、600pM以下、500pM以下、400pM以下、300pM以下、200pM以下、または100pM以下の結合親和性定数(KD)で非ヒト種(たとえば非ヒト霊長類またはげっ歯類、たとえばマウスもしくはラット)由来のシンデカン-1またはその一部に特異的に結合する結合剤である。ある実施形態では、本明細書に開示した結合剤はヒトシンデカン-1またはその一部に特異的に結合し、非ヒト霊長類由来のシンデカン-1またはその一部に特異的に結合する。ある実施形態では、本明細書に開示した結合剤はヒトシンデカン-1またはその一部に特異的に結合し、げっ歯類(たとえばマウスまたはラット)由来のシンデカン-1またはその一部に特異的に結合する。ある実施形態では、結合剤は(i)10nM以下、または1nM以下の結合親和性(KD)でヒトシンデカン-1またはその部分(たとえばヒトシンデカン-1の細胞外ドメイン)に特異的に結合し、(ii)100nM以下、90nM以下、80nM以下、70nM以下、60nM以下、50nM以下、40nM以下、30nM以下、20nM以下、または10nM以下の結合親和性(KD)でラットもしくはマウスシンデカン-1またはその部分(たとえばラットまたはマウスシンデカン-1の細胞外ドメイン)に特異的に結合する。
【0094】
ある実施形態では、第2の結合剤(たとえば第2のシンデカン-1結合剤)は、シンデカン-1、その部分、またはそのエピトープへの結合に関して第1のシンデカン-1結合剤と競合する結合剤であり、ここで第1のシンデカン-1結合剤は、表1~表10に示す1つもしくは複数のCDR、または表1~表10に示すものと実質的に類似した1つもしくは複数のCDRを含む結合剤である。ある実施形態では、シンデカン-1のエピトープは、配列番号89、90または91のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。ある実施形態では、第2の結合剤は、本明細書に記載した第1の結合剤の配列番号89、90または91のアミノ酸配列を含むかまたはからなるポリペプチドへの結合に関して競合する。いくつかの実施形態では、第2の結合剤は、本明細書に記載した第1の結合剤とは区別できおよび/または異なるアミノ酸配列を有してよい。たとえば、本明細書に記載した結合剤への結合に関して競合する第2のシンデカン-1結合剤は、表1~表2または表6~表8に示したCDR配列を含まないことが多い。第2のシンデカン-1結合剤は、表3および表4に示す軽鎖可変領域とは実質的に異なる軽鎖可変領域配列を有してよい。第2のシンデカン-1結合剤は、表9および表10に示す重鎖可変領域とは実質的に異なる重鎖可変領域配列を有してよい。
【0095】
抗原への結合に関して競合する結合剤を同定する方法は公知である。第2のシンデカン-1結合剤がシンデカン-1抗原への結合に関して第1のシンデカン-1結合剤と競合するか否かを決定するために任意の好適な方法を用いることができる。たとえば、シンデカン-1抗原またはその部分を96ウェルプレートにコートするELISAに基づく方法を用いることができる。第2のシンデカン-1結合剤を添加し、コートされた抗原に結合させる。次いでプレートを洗浄し、本明細書に記載した第1の結合剤(たとえば本明細書に記載したシンデカン-1結合剤)をプレートに添加して結合させる。第2のシンデカン-1結合剤の存在下または非存在下に第1の結合剤の結合量を測定し、プレートにコートされた抗原への結合に関して第1の結合剤と第2の結合が競合するか否かを決定する。
【0096】
いくつかの実施形態では、結合剤はラベルを含む。本明細書で用いる「ラベル」または「ラベルされた」という用語は、たとえばラベルされたアミノ酸の組み込みまたはラベルされたアビジン(たとえば光学法または比色法で検出できる蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出できるビオチン部分のポリペプチドへの取着による検出可能なマーカーの組み込みを意味する。ある実施形態では、ラベルまたはマーカーを結合剤に取着して診断薬を生成することができる。結合剤は共有結合または非共有結合で任意の好適なラベルまたはマーカーに取着することができる。ポリペプチドおよび糖タンパク質をラベルする種々の方法は当業者に公知であり、用いることができる。ポリペプチドへのラベルの非限定的な例には、これだけに限らないが、蛍光ラベル、酵素ラベル(たとえばホースラディッシュペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、ケミルミネッセントラベル、金属ラベル、クロモフォア、エレクトロケミルミネッセンスラベル、燐光ラベル、クエンチャー(たとえばフルオロフォアクエンチャー)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)ペア(たとえばドナーおよびアクセプター)、染料、酵素基質、小分子、質量タグ、量子ドット、ナノ粒子、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(たとえばロイシンジッパーペア配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、その他およびそれらの組合せが含まれる。
【0097】
いくつかの実施形態では、結合剤は好適なキャリアを含む。結合剤は共有結合または非共有結合で好適なキャリアに取着することができる。キャリアの非限定的な例には、結合剤のインビボ半減期を変化させまたは延長する薬剤または分子、ポリエチレングリコール、グリコーゲン(たとえば結合剤のグリコシル化による)、デキストラン、米国特許第6660843号に記載されたキャリアまたは媒体、その他およびそれらの組合せが含まれる。
【0098】
いくつかの実施形態では、ラベルまたはキャリアは、好適なリンカーを用いて結合剤に結合される。好適なリンカーの非限定的な例には、シラン、チオール、ホスホン酸、ポリエチレングリコール(PEG)、アミノ酸およびぺプチド、それらのポリマー、それらの誘導体、その他、およびそれらの組合せが含まれる。リンカーを用いて2つ以上の分子を取着する方法は当業者には公知であり、時には「架橋」と称される。
【0099】
いくつかの実施形態では、ラベル、キャリアまたはリンカーは、結合剤の好適なチオール基(たとえばシステイン残基のチオール基)に取着される。結合剤の定常領域またはフレームワーク領域の任意の好適なアミノ酸残基は、ラベル、キャリアまたはリンカーを取着させる目的で、チオール基を含むアミノ酸残基(たとえばシステイン)で置換することができる。チオール含有アミノ酸残基で置換することができるアミノ酸の非限定的な例には、IgG2のA118、S119、S239、V282、T289、N361、およびV422、IgG1のS115、S252、V289、T306およびN384、またはIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4の対応する位置が含まれる。ラベル、キャリアおよび/またはリンカーを結合剤に取着させる他の非限定的な例には、アミンをN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、イミドエステル、ペンタフルオロフェニル(PFP)エステル、ヒドロキシメチルホスフィン、オキシランもしくは他の任意のカルボニル化合物と反応させること、カルボキシルをカルボジイミドと反応させること、スルフヒドリルをマレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド、および/もしくはビニルスルホンと反応させること、アルデヒドをヒドラジンと反応させること、任意の非選択的基をジアジリンおよび/もしくはアリールアジドと反応させること、ヒドロキシルをイソシアネートと反応させること、ヒドロキシルアミンをカルボニル化合物と反応させること、その他およびそれらの組合せが含まれる。
【0100】
いくつかの実施形態では、シンデカン-1またはその部分(たとえばシンデカン-1の細胞外ドメインまたはその部分)に特異的に結合する1つまたは複数の結合剤を含む組成物または医薬組成物が本明細書に提示される。
【0101】
医薬組成物は好適な投与経路のために製剤化することができる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は皮下(s.c.)、皮内、筋肉内、腹腔内および/または静脈内(i.v.)投与のために製剤化される。ある実施形態では、医薬組成物は、組成物のたとえばpH、浸透圧、粘度、透明性、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解もしくは放出の速度、吸着もしくは浸透を改変し、維持し、または保存するための製剤材料を含んでもよい。ある実施形態では、好適な製剤材料には、これだけに限らないが、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン等)、抗微生物剤、抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウム等)、緩衝剤(ホウ酸塩、重炭酸塩、トリスHCl、クエン酸塩、リン酸塩(たとえばリン酸塩緩衝食塩液)、または好適な有機酸)、増量剤(マニトールまたはグリシン等)、キレート化剤(エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等)、複合化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン等)、タンパク質(血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン等)、着色剤、香料および希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドン等)、低分子量ポリペプチド、塩形成カウンターイオン(ナトリウム等)、溶媒(グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール等)、希釈剤、賦形剤および/または医薬アジュバント(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., A.R. Gennaro, ed., Mack Publishing Company (1995))が含まれる。
【0102】
ある実施形態では、医薬組成物は好適な賦形剤を含み、その非限定的な例には、付着防止剤(たとえばステアリン酸マグネシウム)、バインダー、フィラー、単糖類、二糖類、その他の炭水化物(たとえばグルコース、マンノースまたはデキストリン)、糖アルコール(たとえばマンニトールまたはソルビトール)、コーティング(たとえばセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、微結晶セルロース、合成ポリマー、シェラック、ゼラチン、トウモロコシタンパク質ゼイン、腸溶性またはその他の多糖類)、デンプン(たとえばジャガイモ、メイズまたはムギのデンプン)、シリカ、着色剤、崩壊剤、香料、潤滑剤、保存剤、吸着剤、甘味剤、媒体、懸濁剤、界面活性剤および/または湿潤剤(プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソーベート20、ポリソーベート80等のポリソーベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパル等)、安定性向上剤(シュクロースまたはソルビトール等)、ならびに等張性向上剤(アルカリ金属ハライド、塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール)、および/またはRemington's Pharmaceutical Sciences, 18版、A.R. Gennaro編、Mack Publishing Company (1995)に開示された任意の賦形剤が含まれる。本明細書で用いる「バインダー」という用語は、医薬混合物を組み合わされた状態に保つことを補助する化合物または成分を意味する。医薬製剤を作成するために医薬錠剤、カプセルおよび顆粒の調製においてしばしば用いられる好適なバインダーは当業者には公知である。明らかにするため、本明細書で用いる「結合剤」という用語は、ある種の医薬製剤で用いられる「バインダー」を意味しない。しかしある実施形態では、医薬組成物はシンデカン-1に特異的に結合する結合剤ならびにバインダーを含んでもよい。
【0103】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は薬学的に許容される好適な添加剤および/またはキャリアを含む。好適な添加剤の非限定的な例には、好適なpH調整剤、緩和剤、緩衝剤、硫黄含有還元剤、抗酸化剤その他が含まれる。硫黄含有還元剤の非限定的な例には、N-アセチルシステイン、N-アセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸およびその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、およびC1~C7チオアルカン酸等のスルフヒドリル基を有する還元剤が含まれる。抗酸化剤の非限定的な例には、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、アルファ-トコフェロール、トコフェロールアセテート、L-アスコルビン酸およびその塩、L-アスコルビルパルミテート、L-アスコルビルステアレート、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、トリアミルガレートおよびプロピルガレート、ならびにエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)ジナトリウム、ピロリン酸ナトリウムおよびメタリン酸ナトリウム等のキレート化剤が含まれる。さらに、希釈剤、添加剤および賦形剤は、一般に用いられる他の成分、たとえば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムおよび重炭酸ナトリウム等の無機塩、ならびにクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよび酢酸ナトリウム等の有機塩を含んでもよい。
【0104】
本明細書で用いる医薬組成物は長期間、たとえば数か月または数年にわたって安定であり得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は1つまたは複数の好適な保存剤を含む。保存剤の非限定的な例には、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、過酸化水素、その他、および/またはそれらの組合せが含まれる。保存剤は塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゾキソニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミド、塩化セパゾニウム、塩化セチルピリジニウム、または臭化ドミフェン(BRADOSOL(登録商標))等の四級アンモニウム化合物を含み得る。保存剤はチメロサール等のチオサリチル酸のアルキル水銀塩、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀またはホウ酸フェニル水銀を含み得る。保存剤はメチルパラベンまたはプロピルパラベン等のパラベンを含み得る。保存剤はクロロブタノール、ベンジルアルコールまたはフェニルエチルアルコール等のアルコールを含み得る。保存剤はクロロヘキシジンまたはポリヘキサメチレンビグアニド等のビグアニド誘導体を含み得る。保存剤は過ホウ酸ナトリウム、イミダゾリジニル尿素、および/またはソルビン酸を含み得る。保存剤は商品名PURITE(登録商標)として知られ、市販されている安定化オキシクロロ複合体を含み得る。保存剤は商品名POLYQUART(登録商標)として知られ、Henkel KGaAから市販されているポリグリコール-ポリアミン縮合レジンを含み得る。保存剤は安定化過酸化水素を含み得る。保存剤は塩化ベンザルコニウムであってよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は保存剤を含まない。
【0105】
いくつかの実施形態では、組成物、医薬組成物または結合剤は実質的に血液または血液製品混入物(たとえば血液細胞、血小板、ポリペプチド、ミネラル、血液由来化合物または化学製品、その他)を含まない。いくつかの実施形態では、組成物、医薬組成物または結合剤は実質的に血清および血清混入物(たとえば血清タンパク質、血清脂質、血清炭水化物、血清抗原、その他)を含まない。いくつかの実施形態では、組成物、医薬組成物または結合剤は実質的に病原体(たとえばウイルス、寄生虫または細菌)を含まない。いくつかの実施形態では、組成物、医薬組成物または結合剤は実質的にエンドトキシンを含まない。いくつかの実施形態では、組成物、医薬組成物または結合剤は無菌である。ある実施形態では、組成物または医薬組成物はシンデカン-1の細胞外ドメインに特異的に結合する結合剤および希釈剤(たとえばリン酸塩緩衝食塩液)を含む。ある実施形態では、組成物または医薬組成物はシンデカン-1の細胞外ドメインに特異的に結合する結合剤および賦形剤(たとえばクエン酸ナトリウム無水物、またはポリオキシエチレンソルビタン-20モノオレエート(ポリソーベート80))を含む。
【0106】
本明細書に記載した医薬組成物は、それらを用いる治療による任意の好適な形態および/または量で対象に投与するために構成され得る。たとえば非経口投与(たとえば注射または注入による)のために構成された医薬組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液またはエマルジョンの形態を取ってよく、水性または非水性溶媒、共溶媒、懸濁液、保存剤、安定化剤および/または分散剤等の製剤化剤、賦形剤、添加剤および/または希釈剤を含んでよい。いくつかの実施形態では、非経口投与に適した医薬組成物は1つまたは複数の賦形剤を含んでよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は凍結乾燥によって乾燥粉末形態にされる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は凍結乾燥によって好適な医薬溶媒(たとえば水、食塩液、等張緩衝溶液(たとえばPBS)、その他)による再構成に適した乾燥粉末形態にされる。ある実施形態では、凍結乾燥された医薬組成物の再構成された形態は哺乳類への非経口投与(たとえば静脈内投与)に適している。
【0107】
ある実施形態では、医薬組成物は経口投与のために構成され、錠剤、ミクロ錠剤、ミニ錠剤、ミクロペレット、粉末顆粒、カプセル(たとえばミクロ錠剤、ミクロペレット、粉末または顆粒で満たされたカプセル)、エマルジョンまたは溶液として製剤化してよい。経口投与のために構成された医薬組成物は、活性成分(たとえば結合剤)の放出を遅延させまたは持続させるための好適なコーティングを含んでよく、その非限定的な例には、脂肪酸、ワックス、シェラック、プラスチック、メチルアクリレート-メタクリル酸コポリマー、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(ヒプロメロースアセテートスクシネート)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、メチルメタクリレート-メタクリル酸コポリマー、セルロースアセテートトリメリテート、アルギン酸ナトリウム、ゼイン、植物繊維、その他、およびそれらの組合せ等の腸溶性コーティングが含まれる。
【0108】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した医薬組成物は局所投与のために構成されてよく、結合剤および/または潤滑剤、ポリマーグリコール、ゼラチン、ココアバターまたは他の好適なワックスもしくは脂肪の1つまたは複数を含んでよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した医薬組成物は、一般に局所的薬剤投与に適する局所的キャリアを含み、当業者には公知の任意の好適な材料を含む局所的製剤の中に組み込まれる。ある実施形態では、医薬組成物の局所的製剤は局所パッチからの結合剤の投与のために製剤化される。
【0109】
ある実施形態では、最適な医薬組成物は、たとえば意図された投与経路、デリバリーフォーマットおよび所望の用量に基づいて当業者によって決定されることになる(たとえば上記のRemington’s Pharmaceutical Sciencesを参照)。ある実施形態では、そのような組成物は本発明の抗体の物理的状態、安定性、インビボ放出の速度およびインビボクリアランスの速度に影響し得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した組成物、医薬組成物または結合剤は、腫瘍性障害またはがんを有するか、有する疑いのある対象を処置するために用いられる。ある実施形態では、本明細書に記載した結合剤または医薬組成物は対象における腫瘍性障害またはがんの処置において用いられ、結合剤はヒトシンデカン-1の細胞外ドメインに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、腫瘍性障害またはがんを有するか、有する疑いのある対象を処置する方法が本明細書に提示される。ある実施形態では、腫瘍性障害またはがんを有するか、有する疑いのある対象を処置する方法は、治療有効量の本明細書に記載した組成物、医薬組成物または結合剤を対象に投与することを含む。ある実施形態では、処置の方法は対象の細胞(たとえば1つまたは複数の細胞)を治療有効量の本明細書に記載した組成物、医薬組成物または結合剤と接触させることを含む。ある実施形態では、処置の方法は対象の細胞(たとえば1つまたは複数の細胞)をヒトシンデカン-1の細胞外部分またはその変異体に特異的に結合する治療有効量の結合剤と接触させることを含む。対象の細胞はシンデカン-1の細胞外部分を発現する細胞であることが多い。対象の細胞は対象の内部(たとえばインビボ)で見出されてもよく、対象の外部(たとえばインビトロまたはエクスビボ(ex vivo))で見出されてもよい。
【0111】
本明細書に開示した組成物、医薬組成物または結合剤は、シンデカン-1を発現する細胞型が関与する好適な腫瘍性障害またはがんを処置するために用いることができる。本明細書の方法で処置することができる腫瘍性障害またはがんの非限定的な例には、肺癌、乳癌、卵巣癌、腎癌、結腸直腸癌、胃癌、甲状腺癌、膵癌、神経芽腫、または頭頸部の扁平上皮癌、頚がん、肝細胞がん、肉腫、中皮腫、膠芽細胞腫、多発性骨髄腫、黒色腫、前立腺および食道の癌が含まれる。ある実施形態では、がんまたは腫瘍性障害の腫瘍性細胞は、好適な方法(たとえば全細胞ELISA、FACs、任意の好適な免疫アッセイ、その他)により、好適な抗シンデカン-1結合剤、または本明細書に記載した新規な結合剤を用いて、シンデカン-1の発現について迅速にアッセイすることができる。
【0112】
組成物、医薬組成物または結合剤を対象に投与する任意の好適な方法を用いることができる。本明細書に記載した本発明の方法による使用のための組成物の正確な製剤処方および投与経路は、患者の病状を考慮して個別の医師によって選択することができる。たとえば参照により全体として本明細書に組み込まれるFingl et al. 1975、"The Pharmacological Basis of Therapeutics," Ch. 1, p.1を参照されたい。本明細書に記載した医薬組成物または結合剤の投与のため、任意の好適な投与経路を用いることができる。投与経路の非限定的な例には、局所または局部(たとえば経皮または皮膚(たとえば皮膚上もしくは表皮)、眼中または眼上、鼻内、経粘膜、耳中、耳の内側(たとえば鼓膜の後ろ))、腸内(たとえば胃腸管を経由する送達、たとえば経口(たとえば錠剤、カプセル、顆粒、液体、乳化、トローチ、またはそれらの組合せ)、舌下、経胃栄養チューブ、直腸、その他)、非経口投与(たとえば非経口、たとえば静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮内、皮下、腔内、頭蓋内、関節内、関節スペース内、心筋内(心臓内)、空洞内注射、病巣内(皮膚病巣内)、骨内注入(骨髄内)、髄腔内(脊柱管内)、子宮内、膣内、膀胱内注入、硝子体内)、その他またはそれらの組合せが含まれる。
【0113】
いくつかの実施形態では、本明細書の組成物は対象に提供される。対象に提供される組成物は自己投与のため、または別人(たとえば医療従事者以外の者)によって対象に投与されるために提供されることがある。たとえば、本明細書に記載した組成物は、患者が本明細書に記載した組成物または処置を受けることを許可する臨床医によって書かれた指示書(たとえば処方箋)として提供され得る。別の例では、組成物は対象に提供され、対象は組成物を経口、静脈内またはたとえば吸入によって自己投与する。
【0114】
あるいは、全身的ではなくたとえば持続性薬剤または持続放出製剤を用いることを含めて、皮膚、粘膜、または治療のための目的の領域への直接適用による局所での本発明の方法に従う使用のために組成物を投与してもよい。
【0115】
いくつかの実施形態では、結合剤を含む医薬組成物は単独で(たとえば単一活性成分(AIまたはたとえば単一活性医薬成分(API))として)投与することができる。他の実施形態では、結合剤を含む医薬組成物は1つまたは複数の追加のAI/APIと組み合わせて、たとえば2つの異なった組成物として、または1つまたは複数の追加のAI/APIが医薬組成物中で結合剤とともに混合されまたは製剤化される単一組成物として、投与することができる。
【0116】
ある実施形態では、シンデカン-1結合剤は細胞(たとえば哺乳類細胞)に送達される。シンデカン-1結合剤は任意の好適な方法を用いて細胞に送達することができる。ある実施形態では、シンデカン-1結合剤を細胞に送達することは、結合剤が細胞に結合することを可能にする条件下で、シンデカン-1結合剤を含む組成物と哺乳類細胞をインビトロ(in vitro)またはインビボ(in vivo)で接触させることを含む。
【0117】
医薬組成物は、たとえば従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、摩砕、乳化、カプセル化、トラップ化、または錠剤化プロセスによる方法を含む任意の好適な方式で製造することができる。
【0118】
ある実施形態では、結合剤を含む医薬組成物は効果的な治療結果を得るために必要な好適な頻度または間隔で投与される。効果的な治療結果は、腫瘍性障害またはがんに罹患した対象における新生細胞またはがん細胞の数、生存率、増殖、マイトーシス、または転移をモニターすることによって決定することができる。したがって、ある実施形態では、対象における新生細胞またはがん細胞の数、生存率、増殖、マイトーシス、または転移の減少は効果的な治療結果と考えられる。いくつかの実施形態では、結合剤を含む医薬組成物は毎時、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、および/もしくは規則的な間隔で、たとえば毎日、1日おき、週3回、毎週、隔週、月1回、ならびに/または単に医療従事者によって必要とされまたは推奨される頻度または間隔で投与することができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、組成物中の結合剤の量は効果的な治療結果を得るために必要な量である。ある実施形態では、組成物(たとえば医薬組成物)中の結合剤の量は、本明細書で意図するように、腫瘍性障害またはがんを予防し、処置し、その重篤度を低減し、その発症を遅らせ、および/またはその症状を緩和するために十分な量である。
【0120】
「治療有効量」は、効果的な治療結果を得るために十分な量および/または腫瘍性障害またはがんを予防し、処置し、その重篤度を低減し、その発症を遅らせ、および/またはその症状を緩和するために必要で十分な量である。ある実施形態では、「治療有効量」は、腫瘍またはがんの増殖を停止させ、および/またはその増殖を遅延させるために十分な量を意味する。ある実施形態では、「治療有効量」は、1つまたは複数の腫瘍性細胞の複製を阻害し、および/またはその死を誘起するために十分な量を意味する。治療有効量の決定は、特に本明細書に提供した詳細な開示を考慮すれば、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0121】
いくつかの実施形態では、組成物中の結合剤の量は、少なくとも治療有効量である量であり、望ましくない副反応を最小化するのに十分な低い量である。必要な結合剤または活性薬剤の組合せの正確な量は、対象の年齢、体重、および一般症状、治療すべき病状の重篤度、ならびに投与される薬剤の特定の組合せによって対象から対象へと変動する。したがって、多様な対象群において新生物障害を処置するための正確な治療有効量を特定することは常に可能ではない。よく知られているように、特定の病状を有する所与の患者についての、また特定の疾患についての特定の用量は常時変動するが、それぞれの症例における最適量の決定は単純なルーチン手順によって容易に達成することができる。したがって、腫瘍性障害を処置するために用いられる結合剤の治療有効量は、当業者によってルーチンの実験を用いて決定することができる。
【0122】
ある実施形態では、組成物中の結合剤の量は、好適な治療有効量または用量で(たとえば部分的に特定の投与経路によることがある好適な容量および濃度で)投与される。ある実施形態の中では、結合剤(たとえば組成物中の結合剤)は、0.01mg/kg(たとえば対象の体重1kgあたり)~500mg/kg、0.1mg/kg~500mg/kg、0.1mg/kg~400mg/kg、0.01mg/kg~300mg/kg、0.1mg/kg~300mg/kg、0.1mg/kg~200mg/kg、0.1mg/kg~150mg/kg、0.1mg/kg~100mg/kg、0.1mg/kg~75mg/kg、0.1mg/kg~50mg/kg、0.1mg/kg~25mg/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、0.1mg/kg~5mg/kgまたは0.1mg/kg~1mg/kgの用量で投与することができる。いくつかの態様では、結合剤の量は約10mg/kg、9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、1mg/kg、0.9mg/kg、0.8mg/kg、0.7mg/kg、0.6mg/kg、0.5mg/kg、0.4mg/kg、0.3mg/kg、0.2mg/kg、または0.1mg/kgであってよい。いくつかの実施形態では、結合剤の治療有効量は約0.1mg/kg~500mg/kg、または約1mg/kg~約300mg/kgである。静脈内投与に好適な量は公知である。
【0123】
いくつかの実施形態では、結合剤はインビトロまたはインビボでシンデカン-1を検出するために用いられる。いくつかの実施形態では、結合剤は細胞表面上のシンデカン-1を検出するため、および/または細胞がシンデカン-1を発現している場合に腫瘍性細胞(たとえば悪性細胞)の存在または非存在を決定するために用いられる。いくつかの実施形態では、結合剤は対象が腫瘍性障害またはがんを有しているかを決定するために用いられる。いくつかの実施形態では、シンデカン-1を検出する方法は、試料(たとえば対象から直接または間接に得た試料)中の細胞におけるシンデカン-1の存在または非存在を決定することを含む。いくつかの実施形態では、シンデカン-1を発現する細胞を同定する方法は、(i)細胞をシンデカン-1結合剤と接触させること、および/または(ii)シンデカン-1結合剤と細胞を含む結合した複合体の存在または非存在を検出し、ここで結合した複合体の存在は細胞がシンデカン-1を発現していることを示すことを含む。
【0124】
シンデカン-1またはその一部に特異的に結合する結合剤を検出しおよび/またはその存在、非存在および/もしくは量を定量するために任意の好適な方法を用いることができ、その非限定的な例は、Immunology, Werner Luttmann; Academic Press, 2006および/またはMedical Detection and Quantification of Antibodies to Biopharmaceuticals: Practical and Applied Considerations, Michael G. Tovey; John Wiley & Sons, July 12, 2011に見出すことができる。シンデカン-1またはその一部に特異的に結合する結合剤を検出しおよび/またはその存在、非存在および/もしくは量を定量するために用いることができる方法のさらなる非限定的な例には、競合的免疫アッセイ、非競合的免疫アッセイ、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、競合もしくはサンドイッチELISA、サンドイッチ免疫アッセイ、免疫沈降アッセイ、免疫放射アッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイ、プレシピチン反応、ゲル拡散プレシピチン反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定化アッセイ、免疫組織化学アッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、免疫組織アッセイ、免疫細胞化学アッセイ、ドットブロットアッセイ、蛍光分極アッセイ、シンチレーションプロキシミティアッセイ、均一時間分解蛍光アッセイ、IAsys分析、BIAコア分析、その他またはそれらの組合せが含まれる。
【0125】
結合剤の量または用量を含む医薬組成物は、所望であれば結合剤の1つまたは複数の用量を含み得るキット、パックまたは分注デバイスで提供され得る。パックはたとえばブリスターパック等の金属またはプラスチックの箔を含み得る。パックまたは分注デバイスは投与のための説明書を伴ってもよい。パックまたは分注器は、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府官庁によって規定された形態で容器に付随し、ヒトまたは獣医用投与のための薬剤の形態の官庁による承認を反映する注意書を伴ってもよい。そのような注意書は、たとえば処方薬として米国食品医薬品局によって承認されたラベル、または承認された製品添付文書であってよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、キットまたはパックは、1日~1年、1日~180日、1日~120日、1日~90日、1日~60日、1日~30日、またはその間の任意の日または日数、1~4時間、1~12時間、または1~24時間、患者を処置するために十分な量の結合剤を含む。
【0127】
キットは製品ラベルまたは成分の説明もしくはその中の成分のインビトロ、インビボ、もしくはエクスビボの使用のための指示書を含む添付文書を含んでもよい。例示的な指示書には、診断法、処置プロトコルまたは治療計画の指示書が含まれる。ある実施形態では、キットは包装材料を含み、これはキットの成分を収容する物理的な構造を意味する。包装材料は成分を無菌に保つことができ、そのような目的に一般的に用いられる材料(たとえば紙、波形繊維、ガラス、プラスチック、箔、アンプル、バイアル、チューブ、その他)から作られてよい。製品ラベルまたは添付文書は「印刷物」、たとえば個別の、または成分、キットもしくは包装材料(たとえば箱)に貼付された、またはキット成分を含むアンプル、チューブもしくはバイアルに取着された紙もしくはボール紙を含む。ラベルまたは添付文書はさらに、コンピュータで読み取り可能な媒体、CD-もしくはDVD-ROM/RAM、DVD、MP3等の光学ディスク、磁気テープまたはRAMおよびROMまたは磁気/光学保存媒体等のこれらの混成物等の電子保存媒体、FLASH媒体またはメモリー型カード等を含んでよい。製品ラベルまたは添付文書は、その中の1つまたは複数の成分の同定情報、用量、作用機序、薬物動態(PK)および薬力学(PD)を含む活性成分の臨床薬理学を含んでよい。製品ラベルまたは添付文書は、メーカー情報、ロット番号、製造場所、製造日を同定する情報、キット成分が用いられる適応病状、障害、疾患または症状に関する情報を含んでよい。製品ラベルまたは添付文書は、方法、処置プロトコルまたは治療計画において1つまたは複数のキット成分を用いるための医師または対象者のための指示書を含んでよい。指示書は、用量、頻度もしくは期間、および本明細書で説明した方法、処置プロトコルまたは治療計画のいずれかを実施するための指示書を含んでよい。したがって本発明のキットは、本明細書に述べた本発明の方法および使用のいずれかを実施するためのラベルまたは指示書をさらに含んでよい。製品ラベルまたは添付文書は、起こり得る副作用に関する情報および/または警告を含んでよい。
【0128】
ある実施形態では、キットは既知量のシンデカン-1を有する1つまたは複数の対照を含む。いくつかの実施形態では、キットはシンデカン-1を発現する細胞を含む。キット中の細胞は、細胞が直ちに使用可能になるまで適切な保存条件下に保つことができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、キットは結合剤を含む診断キットである。診断キット中に含まれる結合剤は任意の好適な形態を取り得る。いくつかの実施形態では、診断キットは結合剤および検出可能なラベルを含む。たとえばある実施形態では、診断キットは本発明の方法を実施して、たとえばカラーチャートまたは標準曲線と比較することができる比色結果を生成するために必要な試薬を含むスティックテストを含むかまたはからなる。診断キットは、シンデカン-1に特異的に結合する結合剤を検出するために必要な成分、たとえば二次抗体を含んでもよい。
【実施例1】
【0130】
抗CD138抗体の生成
(i)高い親和性および特異性で結合し、(ii)迅速な内在化を示し、(iii)カニクイザルに由来するCD138との交差反応性を示すヒトCD138に対するモノクローナル抗体を生成させた。抗体を生成させるために、マウス(dBalb/Cマウス、雌、6~8週令)をCD138ペプチド1~3(フュージョン12)またはペプチド4~6(フュージョン13)の混合物で免疫し、増強した。表11を参照されたい。
【0131】
これらのペプチドは、グリコシル化部位より遠位であって、ヒトとマウスとの間ではあまり保存されていないが、ヒトとカニクイザル種との間では強く保存されている領域にあるように設計した。一次注射には完全フロイントアジュバント(CFA)、引き続く全ての増強には不完全フロイントアジュバントを用いる免疫スケジュールに従い、KLHキャリアタンパク質とコンジュゲートした下記表に示されたペプチドでマウスを免疫した。免疫したマウスの抗体血清力価を、ヒトCD138とCD138-Fcの結合ELISAによる結合について評価した。高い力価を有するマウスを融合のために選択した。最適化された方法を用いるマウスB細胞とSP2/O骨髄腫細胞のエレクトロフュージョンにより、ハイブリドーマを産生させた。
【0132】
【0133】
従来の方法と異なり、ハイブリドーマのクローニングは単一ステップで同時に行ない、融合した細胞をHAT選択によって選択し、単一細胞コロニーをHT培地を含む96ウェルプレートに移し、制限選択条件の下で増殖させ、抗原結合について上清をスクリーニングした。陽性のハイブリドーマを大量に増殖させ、保存のために細胞を凍結した。
【0134】
CD138陽性細胞(H929)における一次ハイブリドーマFACSスクリーン
フュージョン12(プレート12~19)からのハイブリドーマ上清を、ウェルあたり20,000個のH929細胞を含む96ウェルプレートを用いて、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によってスクリーニングした。H929細胞はその細胞表面上にCD138を発現するヒトBリンパ球細胞株である。ハイブリドーマ上清を4℃で1時間、H929細胞に添加した。細胞を洗浄し、AlexaFluro647抗マウス抗体を添加し、再度洗浄して未結合の抗体を除去した。細胞をFACSで解析して結合を検出した。FlowjoソフトウェアによってFACSデータを解析した。上清の抗体がプレートの平均シグナルより3標準偏差以上のレベルで細胞を結合していた場合には、確認FACSおよびさらなる特性解析のためにこれらを選択した。フュージョン12からの全部で5013個のハイブリドーマをこの一次FACSスクリーンにかけて134個の陽性ヒットが得られ、一次スクリーニングの全ヒット率は2.7%であった。フュージョン12プレート16からの陽性ハイブリドーマクローンの試料を下の表12に示す。代表的な2つの陽性ハイブリドーマクローンのFACSヒストグラムを
図2に示す。
【0135】
【0136】
フュージョン12ハイブリドーマの二次FACSスクリーン
一次FACSスクリーニングで陽性の結合を示したハイブリドーマを選択し、さらに特性解析した。二次スクリーニングのため、ハイブリドーマ上清を、H929(CD138を発現)細胞への陽性結合およびARH-77(CD138の発現が陰性)細胞への陰性結合についてのFACSによってアッセイした。陽性細胞株と陰性細胞株をより良く識別することを助けるために、陰性細胞をCSFEで染色した。次いで上清を特異的なCD138結合に対する非特異的な結合と比較した。代表的な二次FACSスクリーンの結果を表13にまとめる。
【0137】
【0138】
フュージョン12ハイブリドーマにおける二次ELISAスクリーン
結合特異性およびIgGの型の確認を助けるために、二次スクリーンの後でCD138およびIgG1アイソタイプのELISAも行なった。CD138結合ELISAは、組み換えCD138フラグを用いて実施した。データは、FACS陽性ハイブリドーマの全てがELISAによってもCD138と結合することを示した。IgG ELISAによってIgG陽性抗体を同定した。IgM抗体はさらなる研究から除外した。この点までの選択プロセスのまとめを表14に示す。
【0139】
【0140】
実験6:代表的な抗体のSPRによる動的結合
ハイブリドーマ上清からマウスIgGを精製し、動的結合測定のためにIgGをSPR(表面プラスモン共鳴)に供した。BioRad Proteon上、50μg/mLでGLMチップ上にヒトまたはマウスのCD138Hisを固定化した。結合したチップの上に濃度範囲167nM~10.4nMの抗体を流量30μl/分で流して動的結合を検出した。二価アナライトフィットを用いてKDを測定した。動的結果を表15および
図3に示す。
【0141】
【0142】
【0143】
抗体の発現
スケールアップ産生の可能性を決定するため、代表的な2つのキメラ抗体の発現を評価した。12P16F6 hIgG1(chF6とも称する)または13P30A7 hIgG1(chP30a7とも称する)の発現を指令するベクターで、Expi293細胞(250mL)を過渡的にトランスフェクトした。キメラ抗体12P16F6 hIgG1は、F12P16F6のマウスの重鎖可変領域(配列番号77)および軽鎖可変領域(配列番号35)ならびにヒトIgG1カッパアイソタイプの定常領域を含んでいる。キメラ抗体13P30A7 hIgG1は、F13P30A7のマウスの重鎖可変領域(配列番号78)および軽鎖可変領域(配列番号36)ならびにヒトIgG1カッパアイソタイプの定常領域を含んでいる。結果を下の表17にまとめる。発現した抗体は、SDS-PAGEおよびサイズ排除クロマトグラフィーでも解析した(データは示していない)。
【0144】
【0145】
代表的な抗体のカニクイザル交差反応性
12P16F6 hIgG1または13P30A7 hIgG1を、カニクイザルCD138への交差反応性について試験した。カニクイザル(cyno)のCD138と交差反応する抗体は、有効性試験を実行する前に非ヒト霊長類のこの血統における毒性について試験することができるという利点がある。簡単には、ヒトCD138またはcynoCD138の細胞表面発現を指令するベクターをExpi293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトしたExpi293細胞への12P16F6 hIgG1および13P30A7 hIgG1の結合を、33.3μg/mlから出発する3倍希釈で試験した。トランスフェクトした細胞がバックグラウンド結合を何ら有しないことを確認するために、セクキヌマブ(Sec)を陰性対照として用いた。代表的な抗体である12P16F6 hIgG1および13P30A7 hIgG1は、ヒトおよびcynoのCD138への特異的な結合を示した(
図4)。
【0146】
【0147】
実施例1で用いたある種の試薬および材料の定義
ここでのハイブリドーマクローンの名称は、その名称が用いられる文脈に応じて、ハイブリドーマ細胞またはそのハイブリドーマ細胞から産生された抗体のいずれかを意味し得ることに注意されたい。ハイブリドーマクローンの名称は、融合(たとえばフュージョン#12または#13、それぞれF12およびF13と略す)、続いて文字「P」に続くプレート番号、およびウェル番号を意味することが多い。たとえば、ハイブリドーマクローンF12P16F6(本明細書では12P16F6またはP16F6とも称する)は、フュージョン12、プレート16、およびウェルF6に由来するハイブリドーマから得られた抗体を意味する。mBT-062はIgG1であり、CD138結合対照抗体である。
【実施例2】
【0148】
ヒト化
本明細書に記載したマウス抗CD138抗体のヒト化バージョンを設計し、創成するための戦略を開発した。ここで抗体のヒト化バージョンは親モノクローナル抗体の特性を保持している。F12P16F6と指定したマウスモノクローナル抗CD138抗体をヒト化する例を本明細書に提供する。
【0149】
本明細書で生成させたF12P16F6のヒト化バージョンは、キメラ抗体12P16F6 IgG1に対してベンチマークとすることが多かった。適切な場合には他の陽性対照および陰性対照も用いた。
【0150】
5種のヒト化戦略を並行して採用し、それにより3つのヒト化F12P16F6軽鎖配列および4つのヒト化F12P16F6重鎖配列を得た。一般には、本方法にはヒトフレームワークおよび定常領域へのマウス相補性決定領域(CDR)のグラフトが含まれる。3つの軽鎖および4つの重鎖のそれぞれを相互に組み合わせて発現させて精製し、それにより全部で12個のヒト化抗CD138モノクローナル抗体を得た。ヒト化抗体を、その発現/精製プロファイル、生物物理学的特性、CD138ペプチド抗原への結合、天然のCD138への結合、および特異性について解析した。代表的なヒト化抗体は、他の生物物理学的特性についても評価した。
【0151】
方法
chP16F6の発現および精製
キメラ抗体chP16F6の発現を指令するベクターを、EXPIFECTAMINE(商標)293トランスフェクションキットを用いて、250mlの体積でExpi293細胞にトランスフェクトした。pH依存性プロテインA精製を利用して、上清を精製した。HiTrap MabSelect SuRe 5mlを用いて、キメラ抗体を精製した。精製の後、ゼバスピンカラムを用いて、抗体を1倍DPBSに緩衝液交換した。chP16F6の回収量は2.21mg/mLで7.1mgであった。
【0152】
F12P16F6のヒト化
重鎖および軽鎖可変ドメインのヒト化は、(i)
CDRグラフトアプローチ(記号cdr):Jones et al. (1986) "Replacing the complementarity determining regions in a human antibody with those from a mouse" Nature 321:522-525およびVerhoeyen et al. (1988) "Reshaping human antibodies: grafting an anti-lysozyme activity" Science 239:1534-1536に従って実施され、Kabat et al. (1991) "Sequences of Proteins of Immunological Interest" 5th ed. US Department of Health and Human Services, Public Health Service, National Institutes of Health (NIH Publication No 91-3242) によって定義されるCDRを適切なヒトスカフォールドに重要なフレームワーク残基が保存されるようにグラフトする方法、、(ii)
短縮したCDRのグラフトアプローチ(記号abb):Padlan et al. (1995) "Identification of specificity-determining residues in antibodies" FASEB J 9:133-139に従って実施され、軽鎖の残基27D~34、50~55、および89~96、ならびに重鎖の31~35B、50~58、および95~101として定義される短縮したCDRを適切なヒトスカフォールドに重要なフレームワーク残基が保存されるようにグラフトする方法、(iii)
SDRトランスファーアプローチ(記号sdr):Padlan et al. (1995) "Identification of specificity determining residues in antibodies" FASEB J 9:133-139に従って実施され、抗原結合に関与し得る残基を適切なヒト配列に、重要なフレームワーク残基が保存されるように移植する方法、(iv)
フランケンシュタインアプローチ(記号fra):Wu and Kabat (1992) "Possible use of similar framework region amino acid sequences between human and mouse immunoglobulins for humanizing mouse antibodies" Mol Immunol 29:1141-1146に従って実施され、CDRを適切なヒト抗体から得た個別のフレームワーク領域から作られたヒトスカフォールドに重要なフレームワーク残基が保存されるようにグラフトする方法、、および(v)
ベニア化アプローチ(記号ven):Padlan (1991) "A possible procedure for reducing the immunogenicity of antibody variable domains while preserving their ligand-binding properties" Mol Immunol 28:489-498に従って実施され、構造が既知の場合には非ヒト抗体の、構造が未知の場合には同種の分子中の曝露される残基を適切なヒト抗体からの対応する残基に、CDRおよび重要なフレームワーク残基が保存されるように変更する方法、を用いて実施した。記載した方法の全てで、「適切なヒト抗体」は、最も近いヒト配列を表わすために用いる(GenBankから入手可能)。用語「重要なフレームワーク残基」は、三次元構造の維持に必須とみなされる残基を表わすために用いる(PDBにおける関連する高分解能X線構造の解析から)。抗体のSECプロファイルを改善するために、ヒト化の第2の「修復」ラウンドを実施することもあった。第2ラウンドで産生されたヒト化抗体は、repまたはrepairという記号で示す。得られたヒト化重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列をそれぞれ
図10Aおよび
図10Bに示す。
【0153】
ヒト化P16F6修復コンストラクトの発現および精製
4つのヒト化重鎖のそれぞれを3つの軽鎖のそれぞれと対にして、12個の異なった抗体を得た(表19)。EXPIFECTAMINE(商標)293トランスフェクションキットを用いて、12個のヒト化P16F6抗体をExpi293細胞中で発現させた。F6 cks-rep(さらなる研究のためにより多くが必要であった)、およびタンパク質の発現が低かったF6 f2ka-repの375mlを除き、全てのコンストラクトは125mlの体積でトランスフェクトした。0.22μmのフィルターを通して上清を濾過し、プロテアーゼ阻害剤で処理した。緩衝液交換後の5mg/L超の発現レベルおよび1mg/mL以上に濃縮できる抗体を、さらなる解析のために選択した。
【0154】
【0155】
pH依存性プロテインA精製(HiTrap MabSelect SuRe 5mL)を利用して抗体を精製した。精製の後、ゼバスピンカラムを用いて、抗体を1倍DPBSに緩衝液交換した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)解析によって決定した回収量および相対的安定性は、ヒト化抗体の間で変動した(SECプロファイルは図示していない)。SECによって決定した回収量、濃度およびモノマー%を表20にまとめる。代表的な11種のヒト化抗体のSDS-PAGE解析を
図6に示す。命名法はhF6 xky-repの形をとることがあり、ここでhはヒト化を表わし、F6はF12P16F6由来を表わし、xはヒト化重鎖配列を生成するために用いた第1の手順の第1の文字を表わし(a=abb、s=sdr、f=fra、c=cdr)、kはカッパ軽鎖を表わし、yはヒト化軽鎖配列を生成するために用いた第1の手順の第1の文字を表わす(a=abb、s=sdr、f=fra、c=cdr)。用語「rep」は「修復された」を表わし、異なった方法を用いることが多い少なくとも第2ラウンドのヒト化を実施したことを示す。
【0156】
【0157】
ヒト化P16F6修復コンストラクトのFACSによるCD138結合
ヒトCD138への細胞表面結合の解析を、FACSにより、代表的な9個のヒト化抗CD138抗体について実施した。陰性対照としてセクキヌマブを用いた。結合を試験するために中程度のレベルのCD138を発現する2つの細胞株、多発性骨髄腫細胞株KMS-11および膀胱がん株RT112/84を用いた。以前の実験において、12P16F6 hIgG1はRT122/84細胞でほぼ9nM、KMS-11細胞で約3nMのEC50を示していた。EC50は4つのパラメーターフィット曲線を用いて計算した(表21)。コンストラクトは、CD138陰性のリンパ芽球であるARH-77細胞に対しても試験した。NBは特異的結合が観察されなかったことを示す。
【0158】
【0159】
ヒト化P16F6修復コンストラクトのCD138結合ELISA
免疫に用いた鎖状CD138ペプチドの部分への結合を決定するために、代表的な9個のヒト化抗体を用いてCD138結合ELISAを実施した(
図7)。プレートを、hCD138ペプチド(AGEGPKEGEAVVLP、配列番号89)および陰性対照ペプチド(QAAVTSHPHGGMQPGLHETSA、配列番号98)、またはF12P16F6が結合しないマウスCD138ペプチドでコートした。コートしたプレートを、9個の代表的な抗体のそれぞれの種々の希釈物と一夜インキュベートし、ヤギ抗ヒトIgG(H+L)-HRPで結合を検出した。EC50は4つのパラメーターフィット曲線を用いて決定した(表22)。プレートにコートしたヒトCD138-Fcタンパク質への結合を検出するためのELISAも実施した(表22)。解析および結果は同様であった。
【0160】
【0161】
選択した研究結果のまとめ
表23に、代表的な13個のヒト化抗CD138モノクローナル抗体の解析結果のまとめを示す。
【0162】
【実施例3】
【0163】
結晶構造の決定
ヒト化抗CD138抗体Fab断片と複合したヒトシンデカン-1ペプチドのX線結晶構造は、1.95Åの分解能で分離された。構造には、非対称単位あたりシンデカン-1ペプチドとFabのそれぞれ1コピーが含まれていた(
図8)。
【0164】
構造の説明
ヒト化抗体Fabは、ヒト化重鎖可変領域(配列番号84)およびヒト化軽鎖可変領域(配列番号42)を含む。PyIgClassifyデータベースに従ってCDRの標準的な構造を解析した。重鎖CDRは以下のように分類した。H1-13-1(CDR-長さ-クラスター)、H2-10-1、およびH3-6-1。軽鎖CDRは以下のように分類した。L1-16-1、L2-8-1、およびL3-9-cis7-1。シンデカン-1ペプチドは一本鎖Fabに結合し、複合体の形成によりシンデカン-1ペプチドの溶媒が接近し得る表面積540Å2の部位とFab(A鎖およびH鎖で313.6Å2、A鎖およびL鎖で226.4Å2)が埋もれる。
【0165】
見えている98~108のシンデカン-1ペプチド残基の全ては、Fabとの直接接触に関与している(
図8)。界面に関与する特定のFab残基はH鎖からの31~33、35、47、50、52、58、94~96、および101~102、ならびにL鎖からの27~28、32、34、46、49~50、89~94、および96である。これは、CDR H1からの4つの残基が、CDR H2からの3つの残基およびCDR H3からの5つの残基とともに界面に関与していることを意味する。さらに、CDR L1からの4つの残基、CDR L2からの2つの残基、およびCDR L3からの7つの残基が、界面に関与している。
【0166】
5.88mg/mL(約125μM)のFabの1mLのアリコートを250μMのシンデカン-1ペプチド(AGEGPKEGEAVVLP、配列番号89)と混合し、4℃で2時間インキュベートした。複合体を、20mMトリスpH7.5および150mMのNaClを含む緩衝液で予備平衡化したS200サイズ排除カラムで分別した。ピーク分画を集めて結晶化のために濃縮した。ブラッドフォードアッセイによって決定した最終タンパク質濃度は3mg/mLであった。
【0167】
モスキートロボット(TTP Labtech)を用いる96ウェルフォーマットの蒸気拡散のハンギングドロップ法によって、約400種の結晶化条件をスクリーニングした。2つの条件、即ち2.1M DL-リンゴ酸、pH7.0および60%Tacsimate、pH7.0で、20℃で結晶成長を観察した。結晶化はさらに24ウェルフォーマットで最適化した。
【0168】
結晶冷却およびデータ収集
記載した結晶は、1.7M DL-リンゴ酸、pH7.0を含む沈殿溶液を用いて、24ウェルプレートで蒸気拡散のハンギングドロップ法を用いて成長させた。社内のX線回折スクリーニングにより、3.0M DL-リンゴ酸、pH7.0を含む溶液中に結晶を24時間予備浸漬することによって分解能が改善されることが示された。結晶は、浸漬液滴から直接ループ中にこれを捕捉して液体窒素中に投入することによって凍結冷却した。ESRFビームラインID30A-1でシンクロトロンデータセットを収集した。
【0169】
結晶構造決定と精密化 MOSFLM(CCP4)およびAIMLESS(CCP4)におけるデータプロセッシングにより、最も可能性が高い空間群はユニットセルディメンジョンa=60.6Å、b=132.9Å、およびc=51.2Åで、全セル体積411706.34ÅのP212121であることが示された。Matthews係数の計算(2.14Å3/Daおよび溶媒含量42.7%)により、非対称ユニットあたり1つの完全なFab-シンデカン-1複合体の存在が最もあり得ることが示された。PDBに対するそれぞれの成分(Fab重鎖および軽鎖)の配列を検索するBLASTにより、分子置換(MR)における使用のためのモデルを選択した。最も高い配列相同性を有するモデルは、3sqo(Fab重鎖)および4ojf(Fab軽鎖)であった。PDB中に堆積したFab結晶構造の数が大きいことにより、可変ドメインと定常ドメインとの間に存在するエルボー角が多様であることが明らかになった。エルボー角のこの多様性により、そうでなければ極めて相同性が高い2つのFab断片の全体の三次構造が顕著に異なることになり、それにより、MRが失敗することになる。このため、重鎖および軽鎖の可変ドメインと定常ドメインとの間のヒンジ領域を除去して、4つの分離したMR検索アンサンブル(VH、VL、CH、およびCL)を創成した。これもMRを失敗させる可能性がある衝突の可能性があればそれを防止するために、COOTにおける目視検査の後で、重鎖および軽鎖可変ドメインモデルのCDRからアミノ酸残基を切り取った。完全なFabを構築するために必要なインプット検索アンサンブル(VH、VL、CH、およびCL)の4つ全ては、PHASER(McCoy, et al., 2007)(CCP4)を用いるMRによって正しく位置された。MRアウトプットモデルには、REFMAC5(CCP4)を用いる20サイクルのジェリーボディ精密化を加えた。タンパク質配列はCHAINSAW(CCP4)を用いてFabの配列に一致するように変異させた。電子密度マップで見ることができるFabの整列した領域の全てが完成するまで、モデルの構築と精密化を継続して繰り返すことにより、反復してモデルを改善した。Kabatの抗体番号付け慣例に従って、重鎖および軽鎖のアミノ酸を再番号付けした。シンデカン-1ペプチドに対応する電子密度は、明確に見ることができた。シンデカン-1アミノ酸残基を手作業でCOOTに加え、正しい番号付けを適用した。水配置オプションを用いて水分子をCOOTに加え、REFMAC5(CCP4)を用いて完全なモデルを精密化した。最終的なFabモデルは重鎖残基1~216(H鎖)および軽鎖残基1~212(L鎖)を含み、いずれの鎖にも中断はなかった。最終的なシンデカン-1モデルは残基98~108(A鎖)を含んでいた。最終的なモデルは205個の水分子をも含んでいた。最終Rwork=21.2%、Rfree=26.1%。
【0170】
【実施例4】
【0171】
ある種の代表的なシンデカン-1(CD138)配列
ヒトシンデカン-1(シンデカン-1)-UniProtKB-P18827
配列番号1
MRRAALWLWLCALALSLQPALPQIVATNLPPEDQDGSGDDSDNFSGSGAGALQDITLSQQTPSTWKDTQLLTAIPTSPEPTGLEATAASTSTLPAGEGPKEGEAVVLPEVEPGLTAREQEATPRPRETTQLPTTHLASTTTATTAQEPATSHPHRDMQPGHHETSTPAGPSQADLHTPHTEDGGPSATERAAEDGASSQLPAAEGSGEQDFTFETSGENTAVVAVEPDRRNQSPVDQGATGASQGLLDRKEVLGGVIAGGLVGLIFAVCLVGFMLYRMKKKDEGSYSLEEPKQANGGAYQKPTKQEEFYA
【0172】
マウスシンデカン-1(シンデカン-1)-UniProtKB-P18828
配列番号99
MRRAALWLWLCALALRLQPALPQIVAVNVPPEDQDGSGDDSDNFSGSGTGALPDTLSRQTPSTWKDVWLLTATPTAPEPTSSNTETAFTSVLPAGEKPEEGEPVLHVEAEPGFTARDKEKEVTTRPRETVQLPITQRASTVRVTTAQAAVTSHPHGGMQPGLHETSAPTAPGQPDHQPPRVEGGGTSVIKEVVEDGTANQLPAGEGSGEQDFTFETSGENTAVAAVEPGLRNQPPVDEGATGASQSLLDRKEVLGGVIAGGLVGLIFAVCLVAFMLYRMKKKDEGSYSLEEPKQANGGAYQKPTKQEEFYA
【0173】
ラットシンデカン-1(シンデカン-1)-UniProtKB-P26260
配列番号100
MRRAALWLWLCALALRLQPALPQIVTANVPPEDQDGSGDDSDNFSGSGTGALPDMTLSRQTPSTWKDVWLLTATPTAPEPTSRDTEATLTSILPAGEKPEEGEPVAHVEAEPDFTARDKEKEATTRPRETTQLPVTQQASTAARATTAQASVTSHPHGDVQPGLHETLAPTAPGQPDHQPPSVEDGGTSVIKEVVEDETTNQLPAGEGSGEQDFTFETSGENTAVAGVEPDLRNQSPVDEGATGASQGLLDRKEVLGGVIAGGLVGLIFAVCLVAFMLYRMKKKDEGSYSLEEPKQANGGAYQKPTKQEEFYA
【0174】
アカゲザル(リーサス・マカク(Rhesus macaque))シンデカン-1-UniProtKB-A0A1D5RIX8
配列番号101
MGATAYIPNSNSLSALLRGLELPHQTELLRVRALPTLLCPCALCRAPGCVQIVATNLPPEDQDGSGDDSDNFSGSGAGALQDITLSQQTPSTWKDTWLLTATPMSPEPTGLEATAASTSTLPAGEGPKEGEAVVLLEVEPDLTAREQEATPQPTETTQLPTTHQAPTARATTAQEPATSHPHRDMQPGHHETSAPAGPGQADLHTPRTEDGGPSATERAAEDGASSQLPAAEGSGEQDFTFETSGENTAIVAVEPDHRNQSPVDPGATGASQGLLDRKEVLGGIIAGGLVGLIFAVCLVGFMLYRMKKKDEGSYSLEEPKQANGGAYQKPTKQEEFYA
【0175】
カニス・ループス・ファミリアリス(Canis lupus familiaris)(イヌ)(カニス・ファミリアリス(Canis familiaris))シンデカン-1-UniProtKB-E2RT70
配列番号102
MRRAALWLWLCALALRLQPALPQIVATNVPPEDQDGSGDDSDNFSGSGAGALQDITLSQQTPSTWKDMALLTAMPTAQEPTGADDIDSSTSILLTREGPEGGEAVLVAEAEPGFTDREKETAHPPSETTPHPTTHRASTARATTAQGPATLHPHRDAQPDHHQISVLAEPSQLDPHTPRVEDGGPSATERAAEDGVSTQLPAGEGSGEQDFTFDVSGENTAGTAVEPDQRNQPPVDRGATGASQGLLDRKEVLGGVIAGGLVGLIFAVCLVGFMLYRMKKKDEGSYSLEEPKQANGGAYQKPSKQEEFYA
【0176】
マカカ・ファシクラリス(Macaca fascicularis)(カニクイザル)シンデカン-1
配列番号103
MRRAALWLWLCALALSLQPAMPQIVATNLPPEDQDGSGDDSDNFSGSGAGALQDITLSQQTPSTWKDTWLVRATPMSPEPTGLEATAASTSTIQAGEGPKEGEAVVLLEVEPDLTAREQEATPQPTETTQLPTTHQAPTARATTAQEPATSHPHRDMQPGHHETSAPAGPGQADLHTPRTEDGGPSATERAAEDGASSQLPAAEGSGEQDFTFETSGENTAIVAVEPDHRNQSPVDPGATGASQGLLDRKEVLGGIIAGGLVGLIFAVCLVGFMLYRMKKKDEGSYSLEEPKQANGGAYQKPTKQEEFYA
【実施例5】
【0177】
ある実施形態
A1.シンデカン-1またはその一部に特異的に結合する結合剤であって、それぞれが表1、表2および表3から選択される軽鎖可変領域から独立に選択されるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む、結合剤。
A2.シンデカン-1またはその一部に特異的に結合する結合剤であって、それぞれが表6、表7および表8から選択される重鎖可変領域から独立に選択されるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む、結合剤。
A3.シンデカン-1またはその一部に特異的に結合する結合剤であって、(i)それぞれが表4または表5から選択される軽鎖可変領域から独立に選択されるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3ならびに(ii)それぞれが表9または表10から選択される重鎖可変領域から独立に選択されるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む、結合剤。
A4.シンデカン-1またはその一部に特異的に結合する結合剤であって、表1、表2および表3のCDRから選択される軽鎖可変領域の3つのCDR、ならびに表6、表7および表8のCDRから選択される重鎖可変領域の3つのCDRを含む、結合剤。
A5.シンデカン-1またはその一部に特異的に結合する結合剤であって、表1から選択されるCDR-L1、表2から選択されるCDR-L2、表3から選択されるCDR-L3、表6から選択されるCDR-H1、表7から選択されるCDR-H2、表8から選択されるCDR-H3を含む、結合剤。
A6.実施形態A3~A5のいずれか一項の結合剤であって、配列番号27または28のアミノ酸配列を含むCDR-L3、配列番号16、17、または18のアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号2または3のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号68または69のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号56または57のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号46または47のアミノ酸配列を含むCDR-H1を含む、結合剤。
A7.A6の結合剤であって、配列番号27のアミノ酸配列を含むCDR-L3、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号69のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号57のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号46のアミノ酸配列を含むCDR-H1を含む、結合剤。
A8.実施形態A3~A5のいずれか一項の結合剤であって、配列番号29または30のアミノ酸配列を含むCDR-L3、配列番号19、20、または21のアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号4または5のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号70または71のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号58、59または60のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号48または49のアミノ酸配列を含むCDR-H1を含む、結合剤。
A9.実施形態A3~A5のいずれか一項の結合剤であって、配列番号31のアミノ酸配列を含むCDR-L3、配列番号22のアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号6または7のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号72のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号58、59、または60のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号50のアミノ酸配列を含むCDR-H1を含む、結合剤。
A10.実施形態A3~A5のいずれか一項の結合剤であって、配列番号32のアミノ酸配列を含むCDR-L3、配列番号23のアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号8または9のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号73のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号61または62のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号51のアミノ酸配列を含むCDR-H1を含む、結合剤。
A11.実施形態A3~A5のいずれか一項の結合剤であって、配列番号29または30のアミノ酸配列を含むCDR-L3、配列番号24のアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号10または11のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号74のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号58、60または63のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号52のアミノ酸配列を含むCDR-H1を含む、結合剤。
A12.実施形態A3~A5のいずれか一項の結合剤であって、配列番号33のアミノ酸配列を含むCDR-L3、配列番号25のアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号12または13のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号75のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号64または65のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号53のアミノ酸配列を含むCDR-H1を含む、結合剤。
A13.実施形態A3~A5のいずれか一項の結合剤であって、配列番号34のアミノ酸配列を含むCDR-L3、配列番号26のアミノ酸配列を含むCDR-L2、配列番号14または15のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号76のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号66または67のアミノ酸配列を含むCDR-H2、および配列番号54または55のアミノ酸配列を含むCDR-H1を含む、結合剤。
A14.実施形態A6またはA7の結合剤であって、配列番号84~88から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%または少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号42~45から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%または少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、結合剤。
A15.実施形態A14の結合剤であって、配列番号84~88から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号42~45から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、結合剤。
A16.実施形態A14の結合剤であって、配列番号85のアミノ酸配列と少なくとも80%または少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号42のアミノ酸配列と少なくとも80%または少なくとも90%の相同性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、結合剤。
A17.実施形態A16の結合剤であって、配列番号85のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号42のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、結合剤。
A18.実施形態A1~A17のいずれか一項の結合剤であって、モノクローナル抗体である、結合剤。
A19.実施形態A1~A18のいずれか一項の結合剤であって、IgD、IgE、IgA、またはIgMの定常領域を含む結合剤。
A20.実施形態A1~A19のいずれか一項の結合剤であって、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4の定常領域を含む結合剤。
A21.実施形態A1~A20のいずれか一項の結合剤であって、ヒト化、キメラ化、またはCDRグラフトされた結合剤。
A22.実施形態A1~A21のいずれか一項の結合剤であって、ヒト化された結合剤。
A23.実施形態A1~A22のいずれか一項の結合剤および
薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、添加剤またはキャリア
を含む医薬組成物。
【0178】
本明細書に引用したそれぞれの特許、特許出願、公開または他のいずれかの参照もしくは文献の全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾が生じた場合には、定義を含む明細書が優先する。
【0179】
いずれの特許、特許出願、公開または他のいずれかの文献の引用はこれらのいずれも妥当な先行技術であると承認するものではなく、これらの出版物または文献の内容または日付に関するいかなる承認を構成するものでもない。
【0180】
他に定義しない限り、本明細書で用いた全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術における当業者によって共通に理解される同じ意味を有する。本発明の実施または試験において本明細書に記載したものと同様または等価の方法および材料を用いることができるが、本明細書には好適な方法および材料を記載している。
【0181】
本明細書に開示した特徴の全ては任意の組合せで組み合わせることができる。本明細書に開示したそれぞれの特徴は、同一、等価または同様の目的を果たす代替の特徴に置き換えてもよい。したがって、他に明示的に述べない限り、開示した特徴(たとえば抗体)は等価または同様の特徴の属の例である。
【0182】
本明細書で用いる場合、全ての数値または数値範囲は、文脈から明らかに他が指示されない限り、その範囲内の整数および値の分数または範囲内の整数を含む。さらに、本明細書に値のリストが記載されている場合には(たとえば約50%、60%、70%、80%、85%または86%)、リストには全ての中間値およびその分数値が含まれる(たとえば54%、85.4%)。したがって、説明すると80%またはそれ以上の相同性への言及は、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%等、ならびに81.1%、81.2%、81.3%、81.4%、81.5%等、82.1%、82.2%、82.3%、82.4%、82.5%等、等々を含む。
【0183】
超(より大)または未満を伴う整数への言及は、それぞれ参照する数より大きいまたは小さい任意の数を含む。したがって、たとえば100未満への言及は99、98、97等、数字1までの全てを含み、10未満への言及は9、8、7等、数字1までの全てを含む。
【0184】
本明細書で用いる場合、全ての数値または範囲は、文脈から明らかに他が指示されない限り、その範囲内の値および整数の分数ならびにその範囲内の整数の分数を含む。したがって、説明すると1~10等の数値範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10ならびに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5等、等々を含む。したがって1~50の範囲への言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20等、50を含み50まで、ならびに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5等、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5等、等々を含む。
【0185】
連続した範囲への言及は、その連続の中の異なった範囲の境界値を組み合わせた範囲を含む。したがって、説明するとたとえば1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~1,000、1,000~1,500、1,500~2,000、2,000~2,500、2,500~3,000、3,000~3,500、3,500~4,000、4,000~4,500、4,500~5,000、5,500~6,000、6,000~7,000、7,000~8,000、または8,000~9,000の連続した範囲への言及は、10~50、50~100、100~1,000、1,000~3,000、2,000~4,000等の範囲を含む。
【0186】
本技術の基本的態様から逸脱することなく、上記に対して改変を行なうことができる。1つまたは複数の具体的な実施形態を参照して技術を実質的に詳細に説明したが、当業者であれば本出願に具体的に開示した実施形態に変更を加えることが可能であることが認識されよう。しかしこれらの改変および改善は本技術の範囲および精神に含まれる。
【0187】
本発明は、多数の実施形態および態様を説明するため肯定的な言語を用いて本明細書で一般に開示している。本発明はまた、物質もしくは材料、方法および条件、プロトコルもしくは手順等の特定の主題を全てもしくは部分的に除外した実施形態を特に含む。たとえば、本発明のある実施形態または態様において、材料および/または方法ステップを除外している。したがって、本発明が何を含まないかに関して本発明が本明細書中で一般的に表明していないとしても、それにも関わらず、本発明において明示的に除外されていない態様は、本明細書に開示されている。
【0188】
本明細書に説明的に記述した技術は、本明細書に具体的に開示されていないいかなる要素なしでも好適に実施することができる。したがって、たとえば本明細書のそれぞれの場合における「含む」、「実質的に~からなる」、および「~からなる」という用語のいずれも、他の2つの用語のいずれかで置き換えることができる。用いた用語および表現は説明の用語として用いており、限定の用語ではない。そのような用語および表現の使用は開示し記述した特徴またはその部分のいかなる等価物をも除外するものではなく、特許を請求する技術の範囲内で種々の改変が可能である。「a」または「an」という用語は、要素の1つまたは要素の2つ以上が記載されていることが文脈上明白でない限り、それが修飾する要素の1つまたは複数を意味することができる(たとえば「試薬」は1つまたは複数の試薬を意味することができる)。本明細書で用いる用語「約」は、基本となるパラメーターの10%以内(即ちプラスマイナス10%)の値を意味し、数値列の最初における用語「約」の使用は、数値のそれぞれを修飾する(即ち「約1、2および3」は約1、約2および約3を意味する)。たとえば、「約100グラム」の重量は、90グラム~110グラムの重量を含み得る。本明細書で用いる用語「実質的に」は、「少なくとも95%」、「少なくとも96%」、「少なくとも97%」、「少なくとも98%」、または「少なくとも99%」を意味する値の修飾語を意味し、100%を含み得る。たとえば、実質的にXを含まない組成物は、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満のXを含んでよく、および/またはXは組成物中に存在せずもしくは検出不能であってもよい。
【0189】
したがって、代表的な実施形態および任意選択の特徴によって本技術を具体的に開示したが、本明細書に開示した概念の改変および変更を当業者が行なうことは可能であり、そのような改変および変更は本技術の範囲内であると考えられることを理解されたい。
【配列表】