(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】虚像表示装置
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20230331BHJP
G06F 3/0346 20130101ALI20230331BHJP
G06F 3/042 20060101ALI20230331BHJP
G02B 30/56 20200101ALI20230331BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
B60R11/02 C
G06F3/0346 421
G06F3/042 473
G02B30/56
B60K35/00 A
(21)【出願番号】P 2020521208
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2019019789
(87)【国際公開番号】W WO2019225516
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-02-23
(31)【優先権主張番号】P 2018098076
(32)【優先日】2018-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000148689
【氏名又は名称】株式会社村上開明堂
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】浜野 正孝
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-136381(JP,A)
【文献】特開2000-075816(JP,A)
【文献】特開2006-284454(JP,A)
【文献】特開2000-272431(JP,A)
【文献】特開2017-062709(JP,A)
【文献】特開2012-163701(JP,A)
【文献】特開2000-098298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
G06F 3/0346
G06F 3/042
G02B 30/56
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員に情報を表示する虚像表示装置であって、
前記情報として虚像を表示する第1虚像表示ユニットを備え、
前記第1虚像表示ユニットは、前記虚像を表示する虚像表示部と、前記乗員が前記虚像を視認可能な範囲において前記虚像表示部を回転させる回転ユニットと、を有
し、
前記第1虚像表示ユニットは、前記虚像として操作部を表示し、
前記第1虚像表示ユニットは、
前記操作部に接近する対象物の位置を検出するセンサを有し、
前記虚像表示部は、前記操作部を前記虚像として空中に表示する空中結像素子を含み、
前記回転ユニットは、前記空中結像素子を露出させる上面部を備え、
前記センサは、前記回転ユニットの前記上面部に設けられている、
虚像表示装置。
【請求項2】
前記車両の運転者側に虚像を表示する第2虚像表示ユニットを更に備える、
請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記第2虚像表示ユニットは、前記第1虚像表示ユニットの表示に付随した情報を読み上げる人物像を表示する、
請求項2に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記第1虚像表示ユニットは、
前記センサによって検出された前記対象物の位置に基づいて、前記操作部が押下されたか否かを判定する判定
部を更に備え、
前記回転ユニットは、前記虚像表示部と共に前記センサを回転させる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記センサは、前記操作部を挟んで前記対象物とは反対側に設けられる深度センサである、
請求項4に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
前記第1虚像表示ユニットは、前記車両の内部において前記車両の前後方向及び左右方向に移動可能とされている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の内部において情報を虚像として表示する虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内部において情報を表示する装置としては従来から種々のものが知られている。特開2017-84136号公報には、車両の内部に設けられると共にユーザーのジェスチャによる入力を受け付けるジェスチャ入力装置が記載されている。ジェスチャ入力装置は、ジェスチャを撮影するジェスチャ撮影カメラと、ジェスチャを認識するジェスチャ認識部と、フレーム像を表示するフレーム像表示装置と、ディスプレイと、ディスプレイへの画面表示を制御する制御装置とを備える。
【0003】
フレーム像表示装置は、ステアリングホイールの面に対して平行な面に実鏡映像結合光学系によってフレーム像を結像する。フレーム像は、ディスプレイの表示面を囲むフレームとして運転席のユーザーに視認可能となるように結像される。ジェスチャ入力装置は、運転席のユーザーの頭部周辺を撮影する頭部撮影カメラと、頭部撮影カメラで撮影した映像からユーザーの視線の位置を検出する視点位置検出部とを備える。視点位置検出部は、頭部撮影カメラによって撮影された映像からユーザーの目の位置を検出する。フレーム像表示装置では、ユーザーが視認しやすくなるように像の位置が可変とされている。
【0004】
特表2007-531067号公報には、ホログラフィックイメージとして表示される入力デバイスに対するユーザーの操作を検出するホログラフィックヒューマンマシンインタフェース(HMI)が記載されている。HMIは、ユーザーから見てホログラフィックイメージの後側に配置されたエミッタ/ディテクタを有する。エミッタ/ディテクタは、ホログラフィックイメージに向けて波を放射する。
【0005】
HMIでは、物体(例えばユーザーの指)がホログラフィックイメージの表示位置に存在すると、エミッタ/ディテクタからの波が当該物体で反射して反射波としてエミッタ/ディテクタに入射する。この反射波の入射により、エミッタ/ディテクタは、ホログラフィックイメージに対するユーザーの操作を検出する。HMIでは、ホログラフィックイメージとして表示される入力デバイスに対するユーザーの操作を検出することが可能である。HMIは、物体が入力デバイスの位置に実際に到達したときに入力デバイスが押下されたと判定することによって、入力デバイスに対するユーザーの押下操作を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-84136号公報
【文献】特表2007-531067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述したジェスチャ入力装置又はHMIのように車両の乗員に情報を表示する装置において、空中に結像する像が2つ以上あるときに、ユーザーが2つの像のそれぞれを同時に認識しようとすることがある。この場合、2つの像のそれぞれに視野角があるため、一方の像に焦点を合わせると他方の像に焦点が合わなくなり、複数の像を同時に確認することが難しい場合がある。従って、視認性の点において改善の余地がある。
【0008】
本開示は、視認性を高めることができる虚像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る虚像表示装置は、車両の乗員に情報を表示する虚像表示装置であって、情報として虚像を表示する第1虚像表示ユニットを備える。第1虚像表示ユニットは、虚像を表示する虚像表示部と、乗員が虚像を視認可能な範囲において虚像表示部を回転させる回転ユニットとを有し、第1虚像表示ユニットは、虚像として操作部を表示し、第1虚像表示ユニットは、操作部に接近する対象物の位置を検出するセンサを有し、虚像表示部は、操作部を虚像として空中に表示する空中結像素子を含み、回転ユニットは、空中結像素子を露出させる上面部を備え、センサは、回転ユニットの上面部に設けられている。
【0010】
この虚像表示装置では、第1虚像表示ユニットの虚像表示部が情報を虚像として表示するので、情報を浮き出たように表示することができる。このように情報を浮き出たように表示することにより、情報の視認性を高めることができる。第1虚像表示ユニットは、乗員が虚像を視認可能な範囲において虚像表示部を回転させる回転ユニットを有する。よって、第1虚像表示ユニットによる虚像の他に別の虚像を表示する場合であっても、第1虚像表示ユニットの回転ユニットが虚像表示部を回転させることにより、ユーザーは別の虚像に焦点を合わせた上で第1虚像表示ユニットによる虚像を同時に確認することができる。従って、視認性を高めることができると共に、虚像を確認する運転者は安全に運転を行うことができる。
【0011】
前述の虚像表示装置は、車両の運転者側に虚像を表示する第2虚像表示ユニットを更に備えてもよい。この場合、第1虚像表示ユニットが虚像を表示すると共に第2虚像表示ユニットが運転者側に虚像を表示することにより、第1虚像表示ユニットの虚像を第2虚像表示ユニットの虚像によって補完することができる。第1虚像表示ユニットの虚像を第2虚像表示ユニットの虚像が補完することにより、表示される情報のインパクトを高めて車両の乗員の気を引くことができる。2つの虚像を表示することによって、情報をより把握しやすくすることができる。
【0012】
第2虚像表示ユニットは、第1虚像表示ユニットの表示に付随した情報を読み上げる人物像を表示してもよい。この場合、第2虚像表示ユニットが情報を読み上げる人物像を虚像として表示することにより、車両の乗員にとって親しみやすく情報を提供することができる。第2虚像表示ユニットが第1虚像表示ユニットの表示に付随した情報を読み上げる人物像を表示することにより、情報のインパクトを更に高めることができる。
【0013】
第1虚像表示ユニットは、センサによって検出された対象物の位置に基づいて、操作部が押下されたか否かを判定する判定部を更に備えてもよい。回転ユニットは、虚像表示部と共にセンサを回転させてもよい。ところで、前述したHMIにおいて、ホログラフィックイメージとして表示される入力デバイスに対して正面以外の方向からユーザーが操作を行う場合、ユーザーの指の位置によってはエミッタ/ディテクタが指先ではない部位を認識することがある。その結果、ユーザーの意図通りに操作がなされないことがある。これに対し、前述した虚像表示装置では、回転ユニットにより、センサが虚像表示部と共に回転可能とされている。よって、センサの位置を常に第1虚像表示ユニットの虚像の正面位置とすることができる。この場合、センサが第1虚像表示ユニットの虚像に対し常に正面位置にあるため、センサは常に対象物(例えばユーザーの指先)を認識できることとなり、ユーザーは虚像として表示される操作部を確実に操作することができる。従って、ユーザーの意図通りに操作がなされるので、操作部の操作性が良いとユーザーに感じさせることができる。
【0014】
センサは、操作部を挟んで対象物とは反対側に設けられる深度センサであってもよい。ところで、対象物が操作部に接近する接近方向と、深度センサの座標軸が示す各方向との間にずれが生じている場合、対象物の位置を正しく検出するために、深度センサの座標系に対して座標変換処理を行う必要がありうる。これに対し、操作部を挟んで対象物の反対側に深度センサが設けられる場合、操作部から見て深度センサを対象物の反対側に配置することによって、前述の座標変換処理の負荷を軽減させることができる。これにより、操作に伴う処理負荷を軽減することが可能になると共に、操作を行う対象物の認識の精度を一層高めることができる。
【0015】
第1虚像表示ユニットは、車両の内部において車両の前後方向及び左右方向に移動可能とされていてもよい。この場合、第1虚像表示ユニットが前後方向及び左右方向に移動可能とされている。よって、車両の全ての乗員に対して浮き出たような虚像を表示することができるため、全ての乗員が虚像を確実に視認することができる。従って、車両の乗員に対する虚像の視認性を更に高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、視認性を高めることができる虚像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る虚像表示装置が搭載された車両の例を示す平面図である。
【
図3】
図1の虚像表示装置を示す概略構成図である。
【
図4】
図1の虚像表示装置によって表示される虚像を示す概念図である。
【
図5】
図1の虚像表示装置の第1虚像表示ユニットを上から見た斜視図である。
【
図6】
図1の虚像表示装置の第1虚像表示ユニット及び第2虚像表示ユニットを示す平面図である。
【
図7】
図6の第1虚像表示ユニットを操作する状態の例を示す平面図である。
【
図8】
図6の第1虚像表示ユニットを操作する状態の
図7とは別の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本開示に係る虚像表示装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張している場合があり、寸法及び角度等は図面に記載のものに限定されない。
【0019】
本実施形態に係る虚像表示装置10は、
図1に示されるように、車両1と、車両1の乗員との間においてHMI(Human Machine Interface)を構築する情報表示装置である。本明細書において「乗員」とは、車両1に乗っている者、及び虚像表示装置10のユーザーU(
図4参照)を含んでおり、運転席4に座って車両1を運転する運転者と、助手席2又は後部座席3に座る運転者以外の者と、を含んでいる。
【0020】
虚像表示装置10が表示する情報は、速度情報等の車両1に関する車両情報、目的地に向かう進路の情報等の道路情報、及び、車両1に近接する歩行者の有無等を含む危険度情報を有しており、更に別の情報を含んでいてもよい。虚像表示装置10は、車両1の乗員に充実した情報をよりユーザーフレンドリーな形で提供することにより、情報をより把握しやすくすることが可能である。
【0021】
図2は、虚像表示装置10を示す斜視図である。
図1及び
図2に示されるように、虚像表示装置10は、第1虚像表示ユニット11と、第2虚像表示ユニット21と、画像表示ユニット30とを備える。例えば、第1虚像表示ユニット11は第2虚像表示ユニット21及び画像表示ユニット30に対して分離可能とされていてもよく、第1虚像表示ユニット11が車両1の前後方向及び左右方向に移動可能であってもよい。この場合、車両1の運転者以外の乗員に対して直接的に情報を表示することが可能となる。
【0022】
虚像表示装置10は、例えば、車両1の左右方向の中央において車両1の前後方向に延びる基準線B1上に配置されている。すなわち、助手席2と運転席4の間、又は、運転席4に座った運転者から見て左斜め前の位置に配置されている。虚像表示装置10は、第1虚像表示ユニット11及び画像表示ユニット30が設けられる第1表示ユニット部10Aと、第2虚像表示ユニット21が設けられる第2表示ユニット部10Bとを含んでいる。
【0023】
第1表示ユニット部10Aにおいて、第1虚像表示ユニット11は画像表示ユニット30の後側(
図2の左側、運転者側)に設けられる。第1表示ユニット部10Aは、前後方向及び左右方向の双方に延在する平坦部10aと、平坦部10aの前側において斜め上方且つ斜め前方に延在する傾斜部10bとを有する。第2表示ユニット部10Bも同様の平坦部10aと傾斜部10bとを有する。
【0024】
第1虚像表示ユニット11は第1表示ユニット部10Aの平坦部10aに設けられており、第2虚像表示ユニット21は第2表示ユニット部10Bの平坦部10aに設けられている。画像表示ユニット30は、第1表示ユニット部10Aの傾斜部10bに設けられたディスプレイ31を有する。ディスプレイ31には、例えば、車両情報、道路情報及び危険度情報の少なくともいずれかが表示される。
【0025】
図2及び
図3に模式的に示されるように、第1虚像表示ユニット11は、虚像表示装置10のユーザーUから見て手前側に操作部12を虚像K1として空中に表示すると共に、操作部12に接近する対象物Fを検出する。操作部12は、一例として、車両1に搭載された各機器(例えば車載用バックカメラ又はエアコン等)を動作させることが可能な操作スイッチを示しており、虚像K1としてスイッチ等のボタンを示している。対象物Fは、操作部12を操作して機器を動作させるものを示しており、例えばユーザーUの指又はペン等の棒状物を示している。
【0026】
第1虚像表示ユニット11は、検出した対象物Fの位置に基づいて、対象物Fによる操作部12の操作を検出し、検出した各操作に基づいて各機器を動作させる。操作の例としては、対象物Fによる操作部12の押下操作、タップ操作又はスライド操作等が挙げられるが、操作の種類については特に限定されない。本実施形態では、操作部12の操作として押下操作を例示する。なお、押下操作には、操作部12を押し下げる操作、及び操作部12を押し上げる操作の両方の操作が含まれる。
【0027】
第1虚像表示ユニット11は、例えば、空中結像素子13と、液晶パネル14と、深度センサ(センサ)15と、制御部16とを備える。空中結像素子13と液晶パネル14は虚像表示部に相当する。空中結像素子13は、操作部12を虚像K1として空中に表示する。空中結像素子13は、例えば、AI(Aerial Imaging)プレート(登録商標)であり、AIプレートは、一例として特許第4865088号に記載された技術を用いて作製されている。空中結像素子13は、液晶パネル14に対して斜めに傾斜している。なお、液晶パネル14に対する空中結像素子13の傾斜角度は可変とされていてもよい。液晶パネル14は、制御部16から出力される信号に基づいて画像を表示する。
【0028】
図4は、第1虚像表示ユニット11によって表示される虚像K1を示す概念図である。
図4に示されるように、液晶パネル14が表示する画像は、空中結像素子13によって、虚像表示部(空中結像素子13及び液晶パネル14)に対してユーザーU側の位置に虚像K1として表示される。例えば、液晶パネル14から出射して空中結像素子13に入射した光L1は、空中結像素子13において2回反射し、ユーザーUから見て空中結像素子13よりも手前側の空間に虚像K1を結像する。
【0029】
図2に示されるように、虚像K1として結像される操作部12は、一例として、車載用バックカメラを操作可能な操作画面であり、操作部12の各ボタンを押すことによって車載用バックカメラの撮影の位置を切り替えることができる。例えば、操作部12は、車両1の左方を撮影する第1虚像ボタン12aと、車両1の後方を撮影する第2虚像ボタン12bと、車両1の右方を撮影する第3虚像ボタン12cとを含む。
【0030】
図3に示されるように、深度センサ15は、操作部12を挟んで対象物Fの反対側に設けられる。例えば、深度センサ15は、操作部12と対象物Fとを結ぶ仮想直線上、すなわち、虚像K1である操作部12に対して正面位置に設けられる。深度センサ15は、当該仮想直線に対して垂直な面における対象物Fの位置(2次元位置)の情報と、深度センサ15から対象物Fまでの距離D1の情報とを含む距離画像データを取得する。深度センサ15は、取得した距離画像データを所定の周期(例えば1/30秒)で制御部16に出力する。
【0031】
具体例として、深度センサ15は、対象物Fを含む撮影領域内に存在する物体上の各点に光線(例えば赤外線)を照射し、物体上の各点から反射した光線を受光する。そして、深度センサ15は、受光した光線に基づいて深度センサ15と物体上の各点との距離を測定し、測定した距離を画素毎に出力する。深度センサ15と物体上の各点との距離は、例えばLight Coding方式によって測定されてもよい。
【0032】
Light Coding方式では、深度センサ15は、対象物Fを含む撮影領域内に存在する物体上の各点にランダムドットパターンで光線を照射する。そして、深度センサ15は、物体上の各点から反射した光線を受光し、反射した光線のパターンの歪みを検出することによって、深度センサ15と物体上の各点との距離を測定する。深度センサ15は、物体上の各点の2次元位置の情報と、深度センサ15から物体上の各点までの距離の情報とを複数の画素として検出し、検出した複数の画素を制御部16に出力する。
【0033】
制御部16は、液晶パネル14及び深度センサ15に通信可能とされている。制御部16は、例えば、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の記憶部と、入出力部と、ドライバとを備える。制御部16の各機能は、CPUの制御の下で入出力部を動作させ、記憶部におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことによって実現される。制御部16の形態及び配置場所については特に限定されない。
【0034】
制御部16は、操作部12が操作されたか否かを判定する判定部16aを備える。判定部16aは、深度センサ15によって検出された対象物Fの位置に基づいて判定を行う。判定部16aは、深度センサ15から入力された位置データに基づき、対象物Fによって操作部12の押下操作がなされたか否かを判定する。判定部16aは、深度センサ15と対象物Fとの距離D1が閾値T以下であるか否かを判定する。
【0035】
判定部16aは、距離D1が閾値T以下であると判定したときに、対象物Fが仮想の押圧判定面Sに到達し、操作部12が押下されたと判定する。押圧判定面Sは、深度センサ15からの距離が一定である部位に形成された仮想の面であり、操作部12の近接位置に設けられる。押圧判定面Sの位置は、操作部12の位置と一致していてもよいし、操作部12から所定距離だけ離間した位置であってもよい。本実施形態では、押圧判定面Sの位置は操作部12の位置と一致している。
【0036】
第2虚像表示ユニット21は、第1虚像表示ユニット11と同様、空中結像素子13、液晶パネル14、深度センサ15及び制御部16を備える。第2虚像表示ユニット21の構成は、第1虚像表示ユニット11の構成と同様であるため、以下では第1虚像表示ユニット11の構成と重複する説明を省略する。第2虚像表示ユニット21は、例えば、第1虚像表示ユニット11又は画像表示ユニット30が表示する情報に連動する情報を提供する。第2虚像表示ユニット21は、第1虚像表示ユニット11又は画像表示ユニット30の表示を補助する内容を表示してもよい。
【0037】
図2に示されるように、第2虚像表示ユニット21は、車両1の乗員に話しかける人物像Hを虚像K2として表示する。第2虚像表示ユニット21が人物像Hを表示することにより、車両1の乗員に親しみやすく情報を提供できると共に、乗員に対してより確実に情報提供を行うことができる。虚像表示装置10は、第2虚像表示ユニット21による虚像K2の表示に連動して音声を出力する音声出力部22を備える。
【0038】
音声出力部22は、例えば、人物像Hの声を出力する。音声出力部22は、第1虚像表示ユニット11又は画像表示ユニット30が表示する情報を読み上げる人物像Hの声を出力してもよい。音声出力部22の音声出力が人物像Hの声として第1虚像表示ユニット11又は画像表示ユニット30の表示に連動することにより、視覚及び聴覚による一層確実な情報の提供が可能となる。
【0039】
図5は、第1虚像表示ユニット11を拡大した斜視図である。
図2及び
図5に示されるように、第1虚像表示ユニット11は、虚像表示部(空中結像素子13及び液晶パネル14)を可動とする可動モジュール17を備える。可動モジュール17は、回転操作部18と、空中結像素子13及び液晶パネル14を内蔵する回転ユニット19とを備える。回転ユニット19は、回転操作部18の操作に伴って回転する。
【0040】
例えば、回転操作部18は、虚像表示装置10の平坦部10aにおける回転ユニット19の後側に設けられており、ユーザーUが回転操作部18を回転操作することによって回転ユニット19は回転する。一例として、回転操作部18は、円柱状とされており、鉛直方向に延びる回転操作部18の軸線B2を中心として回転操作が可能とされている。回転ユニット19は、空中結像素子13を露出させる上面部19aを備える。上面部19aは、例えば円形状とされており、鉛直方向に延びる上面部19aの軸線B3を中心として回転する。
【0041】
図6に示されるように、回転ユニット19の上面部19aが回転することによって、虚像表示部、及び、第1虚像表示ユニット11が表示する虚像K1も回転する。これにより、車両1の乗員が虚像K1を視認可能な範囲において回転ユニット19が虚像表示部を回転する。ここで、「乗員が虚像を視認可能な範囲において虚像表示部を回転する」ことは、乗員が虚像を視認可能な範囲だけ虚像表示部を回転することに限られず、当該範囲を超えて虚像表示部を回転することも含まれる。すなわち、回転ユニット19は、乗員が虚像K1を視認可能な範囲を超えて虚像表示部を回転してもよい。
【0042】
第1虚像表示ユニット11が表示する虚像K1は、虚像K1の中心から正面方向に延びる基準線L3に対する傾斜角度である視認角度θ1を有し、視認角度θ1は例えば±20°である。第2虚像表示ユニット21が表示する虚像K2は、虚像K2の中心から正面方向に延びる基準線L4に対する傾斜角度である視認角度θ2を有し、視認角度θ2は例えば±20°である。
【0043】
従って、仮に第1虚像表示ユニット11が表示する虚像K1が車両1の前後方向に向けられていて、車両1の運転者の目Eが第2虚像表示ユニット21の虚像K2に焦点を合わせた場合、当該運転者は虚像K1を確認することができない。しかしながら、本実施形態では、回転ユニット19の回転に伴って虚像K1が回転可能とされているため、虚像K1及び虚像K2の両方を運転者の目Eで確認することが可能となる。
【0044】
図7及び
図8に示されるように、深度センサ15は、例えば、回転ユニット19の上面部19aに設けられており、回転ユニット19と共に回転する。ところで、仮に回転ユニットと共に深度センサが回転せず深度センサが固定されている場合、深度センサは操作部(虚像)に対して正面位置に設けられなくなる。よって、ユーザーは操作部に対して正面から指で操作をしていても、深度センサが指先ではない部位を認識することがあるため、ユーザーの意図通りに操作がなされないことがある。
【0045】
しかしながら、本実施形態では、回転ユニット19と共に深度センサ15が回転するので、ユーザーUが操作部12に対して正面から対象物Fで操作をしたときに、深度センサ15が対象物Fの先端ではない位置を認識することを抑制することができる。従って、深度センサ15が対象物Fの先端の位置を確実に認識することにより、ユーザーUの意図通りの操作を実現させることができる。
【0046】
次に、本実施形態に係る虚像表示装置10の作用効果について詳細に説明する。虚像表示装置10では、第1虚像表示ユニット11の虚像表示部が情報を虚像K1として表示するので、情報を浮き出たように表示することができる。このように情報を浮き出たように表示することにより、情報の視認性を高めることができる。第1虚像表示ユニット11は、乗員が虚像K1を視認可能な範囲において虚像表示部を回転させる回転ユニット19を有する。
【0047】
よって、
図6に示されるように、第1虚像表示ユニット11による虚像K1の他に別の虚像K2を表示する場合において、第1虚像表示ユニット11の回転ユニット19が虚像表示部を回転させることにより、ユーザーUは別の虚像K2に焦点を合わせた上で第1虚像表示ユニット11による虚像K1を同時に確認することができる。従って、視認性を高めることができると共に、虚像K1,K2を確認する運転者は安全に運転を行うことができる。
【0048】
虚像表示装置10は、車両1の運転者側(ユーザーU側)に虚像K2を表示する第2虚像表示ユニット21を備える。第1虚像表示ユニット11が虚像K1を表示すると共に第2虚像表示ユニット21が運転者側に虚像K2を表示することにより、第1虚像表示ユニット11の虚像K1を第2虚像表示ユニット21の虚像K2によって補完することができる。第1虚像表示ユニット11の虚像K1を第2虚像表示ユニット21の虚像K2が補完することにより、表示される情報のインパクトを高めて車両1の乗員の気を引くことができる。2つの虚像K1,K2を表示することによって、情報をより把握しやすくすることができる。
【0049】
第2虚像表示ユニット21は、
図2に示されるように、第1虚像表示ユニット11の表示に付随した情報を読み上げる人物像Hを表示する。第2虚像表示ユニット21が情報を読み上げる人物像Hを虚像K2として表示することにより、車両1の乗員にとって親しみやすく情報を提供することができる。第2虚像表示ユニット21が第1虚像表示ユニット11の表示に付随した情報を読み上げる人物像Hを表示することにより、情報のインパクトを更に高めることができる。
【0050】
第1虚像表示ユニット11は、虚像K1として操作部12を表示する。第1虚像表示ユニット11は、操作部12に接近する対象物Fの位置を検出する深度センサ15と、深度センサ15によって検出された対象物Fの位置に基づいて、操作部12が押下されたか否かを判定する判定部16aと、を更に備える。回転ユニット19は、虚像表示部と共に深度センサ15を回転させる。
【0051】
よって、深度センサ15の位置を常に第1虚像表示ユニット11の虚像K1の正面位置とすることができる。この場合、深度センサ15が第1虚像表示ユニット11の虚像K1に対し常に正面位置にあるため、深度センサ15は常に対象物Fを認識できることとなり、ユーザーUは虚像K1として表示される操作部12を確実に操作することができる。従って、ユーザーUの意図通りに操作がなされるので、操作部12の操作性が良いとユーザーUに感じさせることができる。
【0052】
深度センサ15は、操作部12を挟んで対象物Fとは反対側に設けられる。ところで、対象物Fが操作部12に接近する接近方向と、深度センサ15の座標軸が示す各方向との間にずれが生じている場合、対象物Fの位置を正しく検出するために、深度センサ15の座標系に対して座標変換処理を行う必要性がありうる。これに対し、操作部12を挟んで対象物Fの反対側に深度センサ15が設けられる場合、操作部12から見て深度センサ15を対象物Fの反対側に配置することによって、前述の座標変換処理の負荷を軽減させることができる。これにより、操作に伴う処理負荷を軽減させることが可能になると共に、深度センサ15による対象物Fの認識の精度を一層高めることができる。
【0053】
第1虚像表示ユニット11は、
図1に示されるように、車両1の内部において車両1の前後方向及び左右方向に移動可能とされていてもよい。この場合、第1虚像表示ユニット11が前後方向及び左右方向に移動可能とされている。よって、車両1の全ての乗員に対して浮き出たような虚像K1を表示することができるため、全ての乗員が虚像K1を確実に視認することができる。従って、車両1の乗員に対する虚像K1の視認性を更に高めることができる。車両1の全ての乗員が操作部12を操作することも可能となる。
【0054】
以下では、変形例に係る虚像表示装置10について説明する。変形例に係る虚像表示装置10は、前述した実施形態の虚像表示装置10の全ての構成を備えていてもよいし、前述した実施形態の虚像表示装置10の一部の構成を備えていてもよい。変形例に係る虚像表示装置10の第1虚像表示ユニット11は、ユーザーU(
図4参照)の顔を検出する。第1虚像表示ユニット11は、検出したユーザーUの顔の動きに基づいて各機器を動作させる。
【0055】
具体的には、前述した深度センサ15がユーザーUの顔の位置の情報を取得し、深度センサ15が取得した顔の位置の情報を制御部16に出力する。制御部16は、例えば、ユーザーUの顔が一定量以上動いたか否かを判定する。このとき、制御部16は、顔が一定量以上動いたと判定したときには、例えば車両の各機器を動作させてもよい。また、制御部16は、顔が一定量以上動いたと判定したときに、虚像表示装置10の一部を動作(例えば振動)させてもよい。
【0056】
一例として、制御部16は、顔が一定量以上動いたと判定したときに、回転ユニット19を所定量回転させる。このように、顔が一定量以上動いたと制御部16が判定したときに回転ユニット19が回転することにより、ユーザーUが顔を動かした場合であっても、ユーザーUに第1虚像表示ユニット11による虚像を確認させることができる。従って、視認性を高めることができると共に、虚像を確認する運転者は安全に運転を行うことができる。更に、顔が一定量動いたと制御部16が判定したときに回転ユニット19が回転することにより、ユーザーUに注意喚起を促すことが可能である。例えば、運転者であるユーザーUの顔が動いてよそ見をしたり居眠りをしたりすることを抑制することができる。なお、顔が一定量以上動いたと判定したときに制御部16が動作させる対象の機器は、回転ユニット19以外の機器であってもよい。
【0057】
以上、本開示に係る虚像表示装置の実施形態及び変形例について説明した。しかしながら、本開示は、前述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において更に変形し又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、虚像表示装置の各部の構成は、各請求項の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0058】
例えば、前述の実施形態では、像を空中に結像させる空中結像素子13がAIプレートである例について説明した。しかしながら、空中結像素子はAIプレート以外の素子であってもよい。例えば、空中結像素子は、ホログラム等、ユーザーU側に立体的な虚像を結像する立体結像素子であってもよい。
【0059】
前述の実施形態では、空中結像素子13、液晶パネル14及び深度センサ15を備える第1虚像表示ユニット11について説明した。しかしながら、空中結像素子、液晶パネル及び深度センサの形状、大きさ、数及び配置態様は適宜変更可能である。第2虚像表示ユニット21についても同様である。
【0060】
前述の実施形態では、深度センサ15は、深度センサ15と物体上の各点との距離をLight Coding方式によって測定する例について説明したが、この方式に限定されない。例えば、深度センサ15は、深度センサ15と物体上の各点との距離を、TOF(Time Of Flight)方式によって測定してもよい。TOF方式では、深度センサ15は、光線が物体上の各点で反射して深度センサ15に到達するまでの光線の飛行時間(遅れ時間)を算出し、算出した飛行時間と光の速度とから、深度センサ15と物体上の各点との距離を測定する。このような形態であっても、前述した実施形態と同様の効果を奏する。更に、センサの種類は深度センサに限定されない。すなわち、深度センサ15に代えて、赤外線センサ又は超音波センサ等を備えていてもよく、センサの種類は適宜変更可能である。
【0061】
前述の実施形態では、第1表示ユニット部10A及び第2表示ユニット部10Bを備えており、平坦部10a及び傾斜部10bを有する虚像表示装置10について説明した。しかしながら、虚像表示装置の形状、大きさ及び配置態様は適宜変更可能である。更に、前述の実施形態では、画像表示ユニット30を備えた虚像表示装置10について説明した。しかしながら、画像表示ユニット30の構成は適宜変更であり、更に画像表示ユニット30を省略することも可能である。
【0062】
前述の実施形態では、第1虚像表示ユニット11又は画像表示ユニット30の表示を補助する内容を第2虚像表示ユニット21が表示する例について説明した。しかしながら、第2虚像表示ユニット21が表示する内容は、第1虚像表示ユニット11又は画像表示ユニット30の表示を補助するものでなくてもよい。すなわち、第1虚像表示ユニット11及び第2虚像表示ユニット21のそれぞれが表示する内容は、全く異なっていてもよく、特に限定されない。更に、第2虚像表示ユニットは人物像を表示するものでなくてもよいし、第2虚像表示ユニットを省略することも可能である。
【0063】
前述の実施形態では、回転操作部18及び回転ユニット19を有する可動モジュール17を備える第1虚像表示ユニット11について説明した。しかしながら、回転ユニットを備える可動モジュールの形状、大きさ、構成及び配置態様は適宜変更可能である。回転ユニット19を回転操作する回転操作部18の形状、大きさ、数、材料及び配置態様についても適宜変更可能である。回転操作部18を省略することも可能であり、回転ユニット19が自動で回転してもよい。
【0064】
前述の実施形態では、車両1に搭載された各機器を動作させる操作部12を虚像K1として表示する第1虚像表示ユニット11について説明した。また、操作部12が第1虚像ボタン12a、第2虚像ボタン12b及び第3虚像ボタン12cを備える例について説明した。しかしながら、操作部のレイアウト及び種類は適宜変更可能である。
【0065】
前述の実施形態では、車両1の前後方向及び左右方向に移動可能とされている第1虚像表示ユニット11について説明した。しかしながら、第1虚像表示ユニットは車両の前後方向及び左右方向に移動可能とされていなくてもよい。前述の実施形態では、深度センサ15及び制御部16を備え、操作部12を虚像K1として表示する第1虚像表示ユニット11について説明した。しかしながら、操作部を省略することも可能である。本開示に係る虚像表示装置は、操作部でない虚像を表示する第1虚像表示ユニットを備えていてもよい。本開示に係る虚像表示装置は、助手席2、後部座席3及び運転席4を備えた
図1に示される車両1のみならず、あらゆる種類の車両に適用させることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…車両、10…虚像表示装置、11…第1虚像表示ユニット、12…操作部、13…空中結像素子(虚像表示部)、14…液晶パネル(虚像表示部)、15…深度センサ(センサ)、16a…判定部、19…回転ユニット、21…第2虚像表示ユニット、H…人物像、K1,K2…虚像。