(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】キサンチン誘導体及びBETタンパク質のブロモドメインの阻害剤としてのその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 473/04 20060101AFI20230331BHJP
A61K 31/522 20060101ALI20230331BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20230331BHJP
A61K 31/55 20060101ALI20230331BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230331BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230331BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230331BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230331BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230331BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230331BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230331BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230331BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230331BHJP
C07D 519/00 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
C07D473/04 CSP
A61K31/522
A61K31/5377
A61K31/55
A61P3/04
A61P9/00
A61P13/12
A61P25/28
A61P29/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P35/00
A61P37/06
C07D519/00 311
(21)【出願番号】P 2020524488
(86)(22)【出願日】2018-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2018080345
(87)【国際公開番号】W WO2019086712
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-09-10
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】511025226
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デクス-マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE D’AIX-MARSEILLE
【住所又は居所原語表記】Jardin du Pharo, 58, Bld Charles Livon, F-13284 Marseille cedex 07, France
(73)【特許権者】
【識別番号】507241492
【氏名又は名称】アンスティトゥート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシャルシュ・メディカル・(インセルム)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ・ベッツィ
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・コンブ
(72)【発明者】
【氏名】イーヴ・コレット
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・オフェール
(72)【発明者】
【氏名】グザヴィエ・モーレリ
(72)【発明者】
【氏名】ブリジット・ロー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ロッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ユリア・ヴォイトヴィチ
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/114843(WO,A1)
【文献】特表2013-525304(JP,A)
【文献】特表2012-517428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学式(I)を有する化合物、又はその医薬的に許容可能な塩及び/若しくは互変異性体、又はそのラセミ体、ジアステレオマー若しくはエナンチオマー:
【化1】
[式中、
・Rは(C
1-C
6)アルキル基であり、
・R”はH又は以下の化学式(A):
【化2】
(式中、R
1はH又は(C
1-C
6)アルキル基
である)
を有する基であり、
・Arは(C
5-C
12)アリーレン基であり、
・X
1は-C(=O)-又は-SO
2-であり、並びに
・R’は以下:
*以下から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい、(C
1-C
6)アルキル基:
・場合によっては(C
1-C
6)アルキル基によって置換された(C
5-C
12)アリール基、
・-OR
a(R
aはH及び(C
1-C
6)アルキル基から選択さ
れる)、
・-NH
2、
・-NH-C(=O)-O-(C
1-C
6)アルキル基、並びに
・(ヘテロ)シクロアルキル基、
*以下から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基:
・(C
1-C
6)アルキル基、
・(C
5-C
12)アリール基、及び
・場合によっては(C
1-C
6)アルキル基によって置換されたヘテロアリール基、
*場合によっては(C
1-C
6)アルキル基及びCOR
2(R
2は(C
1-C
6)アルキル基である)から選択される1つ又は複数の置換基で置換された1つのヘテロシクロアルキル基又はヘテロアリール基と縮合していてもよい、(C
5-C
12)アリール基であって、以下から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい、(C
5-C
12)アリール基:
・(C
1-C
6)アルキル基、
・(C
5-C
12)アリール基、
・場合によっては(C
1-C
6)アルキル基によって置換されたヘテロアリール基、
・ハロゲン、
・-CH
2-ヘテロアリール基、
・場合によってはフェニル基と縮合したヘテロシクロアルキル基、
・-NO
2、
・-OR
a(R
aは以下から選択される:
・H、
・(C
1-C
6)アルキル基、
・場合によってはハロ(C
1-C
6)アルキル
基から選択される置換基で置換された(C
5-C
12)アリール基、
・シクロアルキル基、
・場合によって
は(C
1-C
6)アルキル基から選択される置換基で置換されたヘテロアリール基、
・場合によって
は置換基で置換されたヘテロシクロアルキル基、並びに
・-CH
2-(C
5-C
12)アリール基)、
・-C(=O)-R
e(R
eはヘテロシクロアルキル基である)、
・-NR
bR
c(R
b及びR
cは、お互いに独立して、H又は(C
1-C
6)アルキル基で
ある)、並びに
・-NHC(=O)R
d(R
dは(C
1-C
6)アルキル基である)、
*5又は6個の原子及び場合によっては1個のヘテロ原子を含み、以下から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい、(ヘテロ)シクロアルキル基:
・(C
1-C
6)アルキル基、
・-C(=O)R
d(R
dは(C
1-C
6)アルキル基である)、
・-OR
d(R
dは(C
1-C
6)アルキル基である)、
・-CH
2-OR
d(R
dは(C
1-C
6)アルキル基である)、
・(C
5-C
12)アリール基、
・-C(=O)OR
d(R
dは(C
1-C
6)アルキル基である)、
・-CH
2-NHC(=O)OR
d(R
dは(C
1-C
6)アルキル基である)、及び
・-NHC(=O)OR
d(R
dは(C
1-C
6)アルキル基である)
からなる群から選択される]。
【請求項2】
以下の化学式(II)を有する、請求項1に記載の化合物:
【化3】
(式中、R及びR’が請求項1で定義されたものである)。
【請求項3】
以下の化学式(III)を有する、請求項1に記載の化合物:
【化4】
[式中、
・Ar、R及びR”が請求項1において定義されたものであり、
・R’は以下:
*以下から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい、(C
1-C
6)アルキル基:
・場合によっては(C
1-C
6)アルキル基によって置換された(C
5-C
12)アリール基、
・-OR
a(R
aはH及び(C
1-C
6)アルキル基から選択さ
れる)、
・-NH
2、
・-NH-C(=O)-O-(C
1-C
6)アルキル基、並びに
・(ヘテロ)シクロアルキル基、
*以下から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基:
・(C
1-C
6)アルキル基、
・(C
5-C
12)アリール基、及び
・場合によっては(C
1-C
6)アルキル基によって置換されたヘテロアリール基、
*場合によっては(C
1-C
6)アルキル基及びCOR
2(R
2は(C
1-C
6)アルキル基である)から選択される1つ又は複数の置換基で置換された1つのヘテロシクロアルキル基又はヘテロアリール基と縮合していてもよい、(C
5-C
12)アリール基であって、以下から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい、(C
5-C
12)アリール基:
・(C
1-C
6)アルキル基、
・(C
5-C
12)アリール基、
・場合によっては(C
1-C
6)アルキル基によって置換されたヘテロアリール基、
・ハロゲン
・-CH
2-ヘテロアリール基、
・場合によってはフェニル基と縮合したヘテロシクロアルキル基、
・-NO
2、
・-OR
a(R
aは以下から選択される:
・H、
・(C
1-C
6)アルキル基、
・場合によってはハロ(C
1-C
6)アルキル
基から選択される置換基で置換された(C
5-C
12)アリール基、
・シクロアルキル基、
・場合によって
は(C
1-C
6)アルキル基から選択される置換基で置換されたヘテロアリール基、
・場合によって
は置換基で置換されたヘテロシクロアルキル基、並びに
・-CH
2-(C
5-C
12)アリール基)、
・-C(=O)-R
e(R
eはヘテロシクロアルキル基である)、
・-NR
bR
c(R
b及びR
cは、お互いに独立して、H又は(C
1-C
6)アルキル基で
ある)、並びに
・-NHC(=O)R
d(R
dは(C
1-C
6)アルキル基である)
からなる群から選択される]。
【請求項4】
Arがフェニレン(-C
6H
4-)基である、請求項1又は3に記載の化合物。
【請求項5】
R”がHである、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
Rがメチル基又はエチル基で
ある、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
以下の化学式(IV)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物:
【化5】
(式中、
・Rがメチル基又はエチル基であ
り、並びに
・X
1及びR’が請求項1で定義されたものである)。
【請求項8】
請求項1か
ら7のいずれか一項に記載の化合物
を含む医薬品。
【請求項9】
請求項1か
ら7のいずれか一項に記載の化合物、及び少なくとも1つの医薬的に許容可能な賦形剤も含む、医薬組成物。
【請求項10】
がん、炎症性疾患、敗血症、自己免疫疾患、神経変性疾患、心血管疾患、腎障害、ウイルス感染、又は肥満の治療における使用のための
医薬組成物であって、請求項1か
ら7のいずれか一項に記載の化合物
を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キサンチン誘導体、それらの調製工程、及びBETタンパク質のブロモドメインの阻害剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロモドメイン(BRD)は、構造上明確に定められたポケットを通してε-N-アセチル化されたリジン残基に選択的に結合する、タンパク質相互作用モジュールと呼ばれるタンパク質ドメインである。BRDは、クロマチン修飾酵素、ヘリカーゼ、クロマチンリモデラー、転写共役因子、及びメディエーターを含む多様な構造及び機能を有するヒトの総計46個の核又は細胞質タンパク質、並びにbromodomain and extra-terminal domain(BET)ファミリーのタンパク質を含む、8つのタンパク質ファミリーで発見されている。BETタンパク質(BRD2、BRD3、BRD4、及び精巣特異的BRDT)は、2つのN末端タンデムBRD(BD1及びBD2)を含む、保存されたモジュール構造を有する。当該BETは、複合体をアセチル化されたヒストン及びクロマチンにつなぐ組織特異的リクルートメントプラットフォームとして作用すること、転写機構の集合を促進すること、並びに炎症、ウイルス感染、及びがん生物学における遺伝子発現を制御することによって、クロマチン生物学において中心的な役割を果たしている。例えば、BRD2はアセチル化されたヒストンH3及びH4に特異的に動員され、この相互作用は活発な転写及び有糸分裂に関係している。BRD2及びBRD3は、アセチル化されたヌクレオソームを介して許容されたRNAポリメラーゼIIの転写に必要であり、BRD4は第一のブロモドメイン(BD1)を主に使用してアセチル化されたヒストンに結合することが示唆されている。正の転写伸長因子b(positive transcription elongation factor b)と複合体を形成し、活性な遺伝子においてPol IIの持続した存在、並びに転写の開始及び伸長に重要であるサイクリンT1のアセチル化された領域を、BD2ドメインも認識し相互作用する。それによって、c-Myc及びその標的遺伝子を含む細胞増殖を助ける遺伝子の発現を制御する。
【0003】
BETタンパク質はしばしば疾患においては制御を失い、それらの転写制御活性は変化させられ、そのために多数の成長促進遺伝子及びサイトカインに影響を与えている。BETタンパク質はがんにおいて制御を失うことが知られており、BRDの機能を弱める汎BET阻害剤(pan-BET inhibitor)(多標的BET阻害剤)の最近の発表はこれらの薬剤標的の検証を可能にし、そのような疾患における阻害剤の役割に光を当てた。興味深いことに、BRD4は「スーパーエンハンサー」を占拠し、その阻害は細胞、疾患、及び状況に特異的な方法で数百の遺伝子のみの転写レベルの有意な減少をもたらす。並行して、前臨床にあるBETを標的化することは、特にがんにおいて初期成功を得た。例えば、フェーズIの急性白血病の試験において、チエノジアゼピンである(6S)-4-(4-クロロフェニル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-アセトアミド(OTX015)は、難治性疾患を患う二人の患者での完全寛解を含む寛解を誘導した。BRD2及びBRD3のBD2ドメインに選択的に結合するレスベラトロールのキナゾロン誘導体である2-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル]-5,7-ジメトキシ-4(3H)-キナゾリノン(RVX-208)は、アテローム性動脈硬化の治療に関するフェーズIIの臨床試験において何百もの患者で既に試験され、BETファミリー内で選択的阻害が実現可能であるという概念実証が提供された。
【0004】
創薬において永続的に揺れ動いていることとして、汎用の阻害剤を開発するか、又は選択的(一つを標的とする)な阻害剤を開発するかということがある。確かに、汎BET阻害剤は、多数の転写経路への影響及びBETメンバーの個々の組織特異的機能に関する問題を抱えているかもしれない。さらに、オフターゲット効果の強いリスク及び/又は抵抗性の出現を伴う汎BET阻害剤の使用に関する潜在的な欠点がある。
【0005】
そのため、個々のBETの選択的標的及びBD1とBD2間の区別は、より選択的な転写効果を実現する好機をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2014/0296246号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2646446号明細書
【文献】国際公開第2015/80707号
【文献】米国特許出願公開第2014/0296243号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2859000号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0148344号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従って、ブロモドメインの効果的な阻害剤である新しい化合物を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、好ましくはナノモルの範囲において向上した阻害活性をも有する新しい選択的阻害剤を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、既定のBETタンパク質の1つのブロモドメインの選択的阻害剤を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、ナノモルの範囲においてBRD3及びBRD4のBD1ドメインを選択的に阻害するが、BD2ドメインは阻害しない(又はマイクロモルの範囲において阻害するだけの)化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は以下の化学式(I)を有する化合物、又はその医薬的に許容可能な塩及び/若しくは互変異性体、又はそのラセミ体、ジアステレオマー若しくはエナンチオマー:
【0012】
【0013】
[式中、
・Rは(C1-C6)アルキル基であり、
・R”はH又は以下の化学式(A):
【0014】
【0015】
(式中、R1はH又は(C1-C6)アルキル基であり、好ましくはH又はブチル基である)
を有する基であり、
・Arは(C5-C12)アリーレン基であり、
・X1は-C(=O)-又は-SO2-であり、並びに
・R’は以下:
*以下から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい、(C1-C6)アルキル基:
・場合によっては(C1-C6)アルキル基によって置換された(C5-C12)アリール基、
・-ORa(RaはH及び(C1-C6)アルキル基から選択され、Raは好ましくはHである)、
・-NH2、
・-NH-C(=O)-O-(C1-C6)アルキル基、並びに
・(ヘテロ)シクロアルキル基、
*以下から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基:
・(C1-C6)アルキル基、
・(C5-C12)アリール基、及び
・場合によっては(C1-C6)アルキル基によって置換されたヘテロアリール基、
*場合によっては(C1-C6)アルキル基及びCOR2(R2は(C1-C6)アルキル基である)から選択される1つ又は複数の置換基で置換された1つのヘテロシクロアルキル基又はヘテロアリール基と縮合していてもよい、(C5-C12)アリール基であって、以下から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい、(C5-C12)アリール基:
・(C1-C6)アルキル基、
・(C5-C12)アリール基、
・場合によっては(C1-C6)アルキル基によって置換されたヘテロアリール基、
・-CH2-ヘテロアリール基、
・場合によってはフェニル基と縮合したヘテロシクロアルキル基、
・-NO2、
・-ORa(RaはH、(C1-C6)アルキル基、(C5-C12)アリール基、及び-CH2-(C5-C12)アリール基から選択される)、
・-NRbRc(Rb及びRcは、お互いに独立して、H又は(C1-C6)アルキル基であり、Rb及びRcは好ましくはHである)、並びに
・-NHC(=O)Rd(Rdは(C1-C6)アルキル基である)、
*5又は6個の原子及び場合によっては1個のヘテロ原子を含み、以下から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい、(ヘテロ)シクロアルキル基:
・(C1-C6)アルキル基、
・-C(=O)Rd(Rdは(C1-C6)アルキル基である)、
・-ORd(Rdは(C1-C6)アルキル基である)、
・-CH2-ORd(Rdは(C1-C6)アルキル基である)、
・(C5-C12)アリール基、
・-C(=O)ORd(Rdは(C1-C6)アルキル基である)、
・-CH2-NHC(=O)ORd(Rdは(C1-C6)アルキル基である)、及び
・-NHC(=O)ORd(Rdは(C1-C6)アルキル基である)
からなる群から選択される]
に関する。
【0016】
化学式(I)において、R’は、場合によっては(C1-C6)アルキル基及びCOR2(R2は上記で定義されたものである)から選択される1つ又は複数の置換基で置換された1つのヘテロシクロアルキル基又はヘテロアリール基と縮合していてもよい、(C5-C12)アリール基から選択されてもよく、(C5-C12)アリール基は以下から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい:
・(C1-C6)アルキル基、
・(C5-C12)アリール基、
・場合によっては(C1-C6)アルキル基によって置換されたヘテロアリール基、
・ハロゲン、
・-CH2-ヘテロアリール基、
・場合によってはフェニル基と縮合したヘテロシクロアルキル基、
・-NO2、
・-ORa(Raは以下から選択される:
・H、
・(C1-C6)アルキル基、
・場合によってはハロ(C1-C6)アルキル基、特にCF3から選択される置換基で置換された(C5-C12)アリール基、
・シクロアルキル基、
・場合によってはメチル基のような(C1-C6)アルキル基から選択される置換基で置換されたヘテロアリール基、
・場合によっては、特にメチル基のような(C1-C6)アルキル基、及び(C1-C6)アルキレン-(C2-C6)アルキニル基から選択される置換基で置換されたヘテロシクロアルキル基、並びに
・-CH2-(C5-C12)アリール基)、
・-C(=O)-Re(Reはヘテロシクロアルキル基である)、
・-NRbRc(Rb及びRcは、お互いに独立して、H又は(C1-C6)アルキル基であり、Rb及びRcは好ましくはHである)、並びに
・-NHC(=O)Rd(Rdは(C1-C6)アルキル基である)。
【0017】
化学式(I)の化合物はBETタンパク質阻害剤であり、特に既定のブロモドメインの選択的阻害剤である。
【0018】
本発明における用語「BETタンパク質」又は「BETファミリーメンバー」は、BRD2、BRD3、BRD4、及びBRDTからなる群から選択されたBETタンパク質を指す。
【0019】
本発明における用語「ブロモドメイン」は、BETタンパク質のブロモドメインBD1又はBD2を指す。
【0020】
本発明における用語「BETタンパク質阻害剤」は、標的となるBETタンパク質に結合、特に測定可能な親和性でBETタンパク質の標的となるブロモドメイン(BD1又はBD2)に結合し、その活性を低下させる化合物を指す。典型的には、本発明によると、阻害剤はBETタンパク質及び特にBETタンパク質のブロモドメインに結合し、それによってBETタンパク質の活性を低下させる。
【0021】
化学式(I)の化合物は、1個又は複数の不斉炭素原子を含むことができる。そのため、それらの化合物はエナンチオマー又はジアステレオ異性体の形態で存在することができる。これらのエナンチオマー及びジアステレオ異性体、並びにラセミ混合物を含むそれらの混合物も、本発明の一部を形成している。
【0022】
化学式(I)の化合物は、塩基又は酸を伴う付加塩の形態で存在することができる。そのような付加塩は本発明の一部を形成する。
【0023】
化学式(I)の化合物は医薬的に許容可能な塩の形態で存在することができる。
【0024】
これらの塩は医薬的に許容可能な酸を用いて調製することができるが、例えば化学式(I)の化合物を精製又は単離するために使用されるその他の酸の塩も本発明の一部を形成する。
【0025】
本発明における用語「医薬的に許容可能な塩」は、本発明による阻害剤の全ての医薬的に許容可能な塩、特に弱酸及び弱塩基の塩は、本発明の範囲に含まれることを意味する。塩の例は、塩酸塩、臭化水素塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、塩化アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素カルシウムを含む。
【0026】
本発明における用語「互変異性体」は、核酸塩基の互変異性体、すなわち核酸塩基の構造異性体を指す。
【0027】
本発明の文脈において:
-表現「t及びzが1から6の値を取ることができるCt-Cz」は、tからz個の炭素原子を有することができる炭素をベースとした鎖を意味し、例えば、C1-C3は1から3個の炭素原子を有することができる炭素をベースとした鎖を意味する、
-用語「ハロゲン原子」は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する、
-用語「アルキル基」は、その他に言及されていない限り、1から6個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐の飽和炭化水素をベースとした脂肪族基を意味する。例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、又はペンチル基を挙げることができる、
- 用語「ハロアルキル基」は、1個又は複数の水素原子がハロゲン原子に置き換えられる、上記に定義されたアルキル基を意味する。例として、フルオロアルキル基、特にCF3又はCHF2を挙げることができる、
-用語「シクロアルキル基」は、その他に言及されない限り、3から6個の炭素原子を含む、環状の炭素をベースとした基を意味する。例として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる、
-用語「アリール基」は、その他に規定されない限り、5から12個の間の炭素原子を含む、環状(単環式又は多環式)の芳香族基を意味する。アリール基の例として、フェニル基、ビフェニル基、又はナフチル基を挙げることができる、
-用語「ヘテロアリール基」は、その他に規定されない限り少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくはO、S、又はNから選択される1から3個のヘテロ原子を含む、5から20員、好ましくは4から19員、より好ましくは4から10員の芳香族単環又は二環式基を意味する、
そのようなヘテロアリール基の例は、トリアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、インドリル基、1,2,4-トリアゾロ[1,5-a]ピリミジニル基、テトラゾリル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピラゾイル基(pyrazoyl)、ピラゾリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、チアゾイル基、オキサゾリル基、1-ベンゾフリル基、1-ベンゾチエニル基、インダニル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基(benzoimidazolyl)、ベンゾイソオキサゾリル基(benzisoxazolyl)、ベンゾイソチアゾリル基(benzisothiazolyl)、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ピリジル基、キノリニル基、ピリダジニル基、シンノリニル基(cinnolinyl)、フタラジニル基(phthalazinyl)、ピリミジニル基、キナゾリニル基、ピラジニル基、キノキサリニル基、ピリジニル基、チオフェニル基、ジヒドロベンゾフラニル基(dihydrobenzofuranyl)、イミダゾ[l,2-a]ピリジニル基、トリアジニル基、1,2,4-トリアジニル基、クロメニリウム基、フェニル基、ベンジル基、[1,3]オキサゾロ[4,5-b]ピリジニル基、ピリド-ピリミジニル基、ピリジニル基、イミダゾ[4,5-b]ピリジニル基、ベンゾピラノニル基(benzopyranonyl)、ピリミジノ-ピリジニル基、及びピリダジノ-シクロヘキシル基を含む。好ましいヘテロアリール基は、トリアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、インドリル基、及び1,2,4-トリアゾロ[1,5-a]ピリミジニル基、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル基、ベンゾオキサゾリル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、1,2,4-トリアジニル基、[1,3]オキサゾロ[4,5-b]ピリジニル基、ピリド-ピリミジニル基、ピリジニル基、イミダゾ[4,5-b]ピリジニル基、ベンゾピラノニル基(benzopyranonyl)、ピリミジノ-ピリジニル基、及びピリダジノ-シクロヘキシル基である、
-用語「ヘテロシクロアルキル基」は、O、S、又はNから選択されるヘテロ原子を1から3個含む、4から10員の飽和又は部分的に不飽和の単環又は二環式基を意味する。ヘテロシクロアルキル基は、炭素原子又はヘテロ原子を介して分子の残部に結合していてもよい。用語、二環式ヘテロシクロアルキル基は、縮合された二環及びスピロ式環を含む。
【0028】
5から6個の原子を含む飽和ヘテロシクロアルキル基の例として、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基、ジオキソラニル基、ピロリジニル基、アゼピニル基(azepinyl)、オキサゼピニル基(oxazepinyl)、ピラゾリジニル基(pyrazolidinyl)、イミダゾリジニル基、テトラヒドロチオフェニル基(tetrahydrothiophenyl)、ジチオラニル基(dithiolanyl)、チアゾリジニル基(thiazolidinyl)、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロピリジニル基(tetrahydropyridinyl)、ジオキサニル基(dioxanyl)、モルフォリニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、テトラヒドロチオピラニル基(tetrahydrothiopyranyl)、ジチアニル基(dithianyl)、チオモルフォリニル基(thiomorpholinyl)、又はイソオキサゾリジニル基(isoxazolidinyl)を挙げることができる。
【0029】
ヘテロシクロアルキル基が置換されている場合、置換基は1個(又は複数)の炭素原子及び/又はヘテロ原子上で置換されていてもよい。ヘテロシクロアルキル基がいくつかの置換基を含む場合、それらを、1個の同じ原子又は異なる原子が有していてもよい。
【0030】
本発明における用語「置換された」は、上記基(group)又は基(radical)の水素原子の少なくとも1個がH以外の少なくとも1つの置換基で置き換えられることを意味する。
【0031】
接尾辞「ene」がアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基と一体となって使用される場合、これは上記で定義されたアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基が2価基であることを意味し、すなわちそれがその他の基への結合点を2つ有することを意味する。
【0032】
本発明はまた、以下の化学式(II)を有する化合物:
【0033】
【0034】
(式中、R及びR’が化学式(I)において上記で定義されたものである)
にも関する。
【0035】
そのような化合物は、Arがフェニレン基、X1がCO、及びR”がHである化学式(I)の化合物に対応する。
【0036】
本発明はまた、以下の化学式(III)を有する化合物:
【0037】
【0038】
[式中、
・Ar、R及びR”が化学式(I)において定義されたものであり、
・R’は以下:
*以下から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい、(C1-C6)アルキル基:
・場合によっては(C1-C6)アルキル基によって置換された(C5-C12)アリール基、
・-ORa(RaはH及び(C1-C6)アルキル基から選択され、Raは好ましくはHである)、
・-NH2、
・-NH-C(=O)-O-(C1-C6)アルキル基、並びに
・(ヘテロ)シクロアルキル基、
*以下から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基:
・(C1-C6)アルキル基、
・(C5-C12)アリール基、及び
・場合によっては(C1-C6)アルキル基によって置換されたヘテロアリール基、
*場合によっては(C1-C6)アルキル基及びCOR2(R2は(C1-C6)アルキル基である)から選択される1つ又は複数の置換基で置換された1つのヘテロシクロアルキル基又はヘテロアリール基と縮合していてもよい、(C5-C12)アリール基であって、以下から選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい、(C5-C12)アリール基:
・(C1-C6)アルキル基、
・(C5-C12)アリール基、
・場合によっては(C1-C6)アルキル基によって置換されたヘテロアリール基、
・ハロゲン
・-CH2-ヘテロアリール基、
・場合によってはフェニル基と縮合したヘテロシクロアルキル基、
・-NO2、
・-ORa(Raは以下から選択される:
・H、
・(C1-C6)アルキル基、
・場合によってはハロ(C1-C6)アルキル基、特にCF3から選択される置換基で置換された(C5-C12)アリール基、
・シクロアルキル基、
・場合によってはメチル基のような(C1-C6)アルキル基から選択される置換基で置換されたヘテロアリール基、
・特にメチル基のような(C1-C6)アルキル基、及び(C1-C6)アルキレン-(C2-C6)アルキニル基から選択されるヘテロシクロアルキル基、並びに
・-CH2-(C5-C12)アリール基)、
・-C(=O)-Re(Reはヘテロシクロアルキル基である)、
・-NRbRc(Rb及びRcは、お互いに独立して、H又は(C1-C6)アルキル基であり、Rb及びRcは好ましくはHである)、並びに
・-NHC(=O)Rd(Rdは(C1-C6)アルキル基である)
からなる群から選択される]
にも関する。
【0039】
そのような化合物は、X1がSO2である化学式(I)の化合物に対応する。
【0040】
好ましい実施形態によると、化学式(I)又は(III)において、Arはフェニレン(-C6H4-)基である。
【0041】
好ましい実施形態によると、化学式(I)、(II)、又は(III)において、R”はHである。
【0042】
好ましい実施形態によると、化学式(I)、(II)、又は(III)において、Rはメチル基又はエチル基であり、好ましくはエチル基である。
【0043】
好ましい基の本発明の化合物は、Arがフェニレン基であり、R”がHであり、及びRがエチル基である化学式(I)の化合物からなる。
【0044】
本発明はまた、以下の化学式(IV)を有する化合物:
【0045】
【0046】
(式中、
・Rはメチル基又はエチル基であり、好ましくはエチル基であり、並びに
・X1及びR’は化学式(I)において上記で定義されたものである)
にも関する。
【0047】
化学式(IV)の化合物は、R”がHであり、及びArがフェニレン基である化学式(I)の化合物に対応する。
【0048】
好ましくは、化学式(IV)において、Rはエチル基である。
【0049】
好ましくは、化学式(IV)において、Rはエチル基であり、及びX1はSO2である。
【0050】
好ましくは、化学式(IV)において、Rはエチル基であり、及びX1はCOである。
【0051】
好ましい基の本発明の化合物は以下の化学式(IV-1)を有する化合物:
【0052】
【0053】
(式中、R及びR’は化学式(I)において上記で定義されたものである)
である。
【0054】
化学式(IV-1)の化合物は、R”がHであり、Arがフェニレン基であり、及びX1がSO2である化学式(I)の化合物に対応する。
【0055】
好ましくは、化学式(IV-1)において、Rはエチル基である。
【0056】
好ましい実施形態によると、化学式(IV-1)において、R’はフェニル基であり、上記で定義されたように置換されていてもよい。
【0057】
好ましい基の本発明の化合物は、R’は上記で言及されたように置換されてもよいヘテロアリール基、好ましくはチオフェニル基又はベンゾチオフェニル基(benzothiophenyl)である、化学式(I)の化合物である。
【0058】
好ましい基の本発明の化合物は、R’は上記で言及されたように置換されてもよいヘテロアリール基、好ましくはチオフェニル基又はベンゾチオフェニル基(benzothiophenyl)である、化学式(IV-1)の化合物である。
【0059】
好ましい基の本発明の化合物は、R’は、上記で言及されたように置換されてもよい、ヘテロシクロアルキル基と縮合されたアリール基、好ましくはフェニル基である、化学式(I)の化合物である。
【0060】
好ましい基の本発明の化合物は、R’は、上記で言及されたように置換されてもよい、ヘテロシクロアルキル基と縮合されたアリール基、好ましくはフェニル基である、化学式(IV-1)の化合物である。
【0061】
好ましい基の本発明の化合物は、R’は上記で言及されたように置換されてもよいビフェニル基である、化学式(I)の化合物である。
【0062】
好ましい基の本発明の化合物は、R’は上記で言及されたように置換されてもよいビフェニル基である、化学式(IV-1)の化合物である。
【0063】
好ましい基の本発明の化合物は、R’は上記で言及されたように置換されてもよいフェニル基である、化学式(I)の化合物である。
【0064】
好ましい基の本発明の化合物は、R’は上記で言及されたように置換されてもよいフェニル基である、化学式(IV-1)の化合物である。
【0065】
好ましい基の本発明の化合物は、R’はヘテロアリール基又は-ORa基(Raは上記で定義されたものである)で置換された、フェニル基である、化学式(I)の化合物である。
【0066】
好ましい基の本発明の化合物は、R’はヘテロアリール基又は-ORa基(Raは上記で定義されたものである)で置換された、フェニル基である、化学式(IV-1)の化合物である。
【0067】
好ましい基の本発明の化合物は、R’は-ORa基(Raは(C1-C6)アルキル基、好ましくはメチル基、(C5-C12)アリール基、好ましくはフェニル基、及び-CH2-(C5-C12)アリール基、好ましくはベンジル基である)で置換されたフェニル基である、化学式(I)の化合物である。
【0068】
好ましい基の本発明の化合物は、R’は-ORa基(Raは(C1-C6)アルキル基、好ましくはメチル基、(C5-C12)アリール基、好ましくはフェニル基、及び-CH2-(C5-C12)アリール基、好ましくはベンジル基である)で置換されたフェニル基である、化学式(IV-1)の化合物である。
【0069】
本発明はまた、以下の化学式(V)を有する化合物、又はその医薬的に許容可能な塩及び/若しくは互変異性体、又はそのラセミ体、ジアステレオマー若しくはエナンチオマー:
【0070】
【0071】
(式中、
・X2はシクロアルキレン基、好ましくはシクロへキシレン基、又はフェニレン基であり、及び
・R2はヘテロアリール基で置換された(C1-C6)アルキル基であって、当該ヘテロアリール基は場合によっては(C1-C6)アルキル基で置換される)
にも関する。
【0072】
本発明はまた、以下の化学式(V-1)を有する化合物:
【0073】
【0074】
(式中、R2は化学式(V)において上記で定義されたものである)
にも関する。
【0075】
本発明はまた、以下の化学式(V-2)を有する化合物:
【0076】
【0077】
(式中、R2は化学式(V)において上記で定義されたものである)
にも関する。
【0078】
本発明はまた、医薬品として使用するための、上記で定義された化学式(I)、(II)、(III)、(IV)、(IV-1)、(V)、(V-1)、又は(V-2)の化合物にも関する。
【0079】
本発明はまた、上記で定義された化学式(I)、(II)、(III)、(IV)、(IV-1)、(V)、(V-1)、又は(V-2)の化合物、及び少なくとの1つの医薬的に許容可能な賦形剤も含む医薬組成物にも関する。
【0080】
BETタンパク質は転写機構の集合を促進し、炎症、ウイルス感染、及びがん生物学における遺伝子発現を制御することが、従来技術から知られている。BETタンパク質はしばしば疾患においては制御を失い、それらの転写制御活性は変化させられ、そのために多数の成長促進遺伝子及びサイトカインに影響を与えていることも実証されている。BRDの機能を弱める汎BET阻害剤(pan-BET inhibitor)(多標的BET阻害剤)の最近の発表はこれらの薬剤標的の検証を可能にし、疾患における阻害剤の役割に光を当てた。
【0081】
従って、キサンチン誘導体化合物である本発明のBETタンパク質阻害剤は、BETタンパク質に関係する標的疾患のために使用することができる。そのような疾患は、これらに限定はされないが、がん、炎症性疾患、敗血症、自己免疫疾患、神経変性疾患、心血管疾患、腎障害、ウイルス感染、又は肥満である(米国特許出願公開第2014/0296246号明細書、欧州特許出願公開第2646446号明細書、国際公開第2015/80707号、米国特許出願公開第2014/0296243号明細書、欧州特許出願公開第2859000号明細書、及び米国特許出願公開第2015/0148344号明細書として公開された特許出願を参照のこと)。
【0082】
本発明はまた、がん、炎症性疾患、敗血症、自己免疫疾患、神経変性疾患、心血管疾患、腎障害、ウイルス感染、又は肥満の治療で使用するための阻害剤にも関する。
【0083】
本発明はそれ故、がん、炎症性疾患、敗血症、自己免疫疾患、神経変性疾患、心血管疾患、腎障害、ウイルス感染、又は肥満の治療で使用するための、上記で定義された化学式(I)、(II)、(III)、(IV)、(IV-1)、(V)、(V-1)、又は(V-2)の化合物に関する。
【0084】
本発明における用語「治療」は、(1)疾患の症状の進行、重症化、並びに悪化を遅くする又は止めること、(2)疾患の症状の改善をもたらすこと、又は(3)疾患を治すことを目的とした方法又は工程を特徴付けるためにここでは使用されている。治療はそれ故、疾患の発症後に、治療効果のために行われてもよい。
【0085】
本発明はまた、BETタンパク質のブロモドメインが関係する疾患を治療するための方法であって、患者に、効果的な量の上記で定義された一般式(I)の阻害剤、又は当該阻害剤を含む組成物を投与することを含む、方法にも関する。そのような疾患は、これらに限定はされないが、がん、炎症性疾患、敗血症、自己免疫疾患、神経変性疾患、心血管疾患、腎障害、ウイルス感染、又は肥満である。
【0086】
好ましくは、阻害剤はBRD4タンパク質の阻害剤であって、当該阻害剤はBRD4のBD1に結合する。
【0087】
好ましくは、阻害剤はBRD3タンパク質の阻害剤であって、当該阻害剤はBRD3のBD1に結合する。
【0088】
好ましくは、上記阻害剤は50 μMと等しいか又は50 μM未満、好ましくは10 μMと等しいか又は10 μM未満、さらに5 μMと等しいか又は5 μM未満、及びさらに好ましくは1 μMと等しいか又は1 μM未満のBRD4(BD1)に対するIC50を有する。
【0089】
本発明における用語「IC50」は、生物学的機能の阻害(例えば、タンパク質-タンパク質相互作用の阻害)における化合物の有効性の尺度である、50%阻害濃度を指す。典型的には、IC50は均一時間分解蛍光(HTRF)によって測定される。本発明においては、IC50は特定のBETタンパク質に対して決定される。
【0090】
特定の実施形態において、本発明は、がん、炎症性疾患、敗血症、自己免疫疾患、神経変性疾患、心血管疾患、腎障害、ウイルス感染、又は肥満状態の患者を治療するための方法を提供する。
【0091】
別の実施形態において、治療されるべき疾患は、関節リウマチ、変形性膝関節症、アテローム性動脈硬化、乾癬、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、慢性閉塞性気道疾患、肺臓炎、皮膚炎、脱毛症、腎炎、血管炎、アテローム性動脈硬化、アルツハイマー病、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、硬化性胆管炎、糖尿病(一型糖尿病を含む)、移植臓器の急性拒絶反応、リンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、悪性新生物及び固形腫瘍から選択される。固形腫瘍は、これらに限定はされないが、結腸、直腸、前立腺、肺、膵臓、肝臓、腎臓、子宮頸、胃、卵巣、乳房、皮膚、脳、髄膜、又は中枢神経系の腫瘍である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図1】43cの等温滴定カロリメトリー(ITC)。タンパク質に対するリガンドのモル比に応じた、15℃における43c(シリンジ内に20 μM)に対するBrd4(BD1)(セル内に200 μM)のサーモグラム(上部)、及び統合データの非線形最小二乗適正モデル(下部)。
【
図2】全てのBETメンバーにおける43cの均一時間分解蛍光(HTRF)選択性試験。337 nmの励起光、620 nmのエネルギー転移、及び665 nmの蛍光放射。蛍光データは標準化され、リガンド濃度の関数としてプロットされている。
【
図3】43cのサーマルシフトアッセイ(TSA)。61個のブロモドメインにおいて評価を実施した。カットオフは+/-3.5℃で設定した。43cはそれぞれ、+4.5℃及び+5.25℃で、BRD4(BD1)及びBRD3(BD1)のみを安定化する。
【
図4】Brd4(BD1)のN-アセチル化された結合ポケットにおける43cの分子作用機構。いくつかの保存された残基(灰色の棒で表現)を示す、Brd4(BD1)との複合体における43c(黒の棒で表現)の三次元結晶構造。水分子は球体として表現されている。43cの水素結合及びファンデルワールス相互作用は灰色の破線として示されている。
【実施例】
【0093】
[本発明による化合物の調製]
本発明の化合物は、以下のスキーム1及び2で説明される工程に従って、市販のアミノ酸から又はN-保護(4-(ブロモメチル)アリール)メタンアミンから調製することができる。
【0094】
【0095】
【0096】
アミノ酸から始まり、O-保護反応に続く、市販又は自己調製した対応するスルホニルクロライドを用いたスルホニル化は、対応するメチルエステルスルホンアミドを提供する。脱保護及びその後の様々なアルキルアミンによるアミド化は、本発明の所期の化合物の化学式1c-18bをもたらす。化学式18c-19aの化合物は、一連のN-保護、ペプチドカップリング、及び脱保護を用いて、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸から調製することができる。
【0097】
典型的な工程(国際公開第2017/114843号)によって調製される7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオンを用いた縮合に続く、N-保護基の除去並びに様々なスルホニルクロライド、カルボン酸、及び塩化アシルを用いた遊離アミノ基のスルホニル化/アシル化によって、N-保護(4-(ブロモメチル)アリール)メタンアミン(スキーム2)から様々なスルホンアミド及びアミドを合成することができる。
【0098】
N-保護(4-(ブロモメチル)アリール)は、3つの異なる工程、i)スキーム3による一連の還元、求核置換、及びBoc-保護反応を介した市販の4-(アミノメチル)安息香酸からの化学式19c-31b、33a-42bの化合物に関する工程、ii)スキーム4による一連のラジカル臭素化、フタルイミド(phtalimide)による保護、及びブロモメチル化反応を介した市販の1-メチルナフタレンからの化学式31cの誘導体に関する工程、並びにiii)スキーム5による一連のブロモメチル化及び保護反応を介した市販の1,4-ジメトキシベンゼンからの化学式32aの誘導体に関する工程によって、調製することができる。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
化学式32b-cのスルホンアミド誘導体は、以下に説明される流れ(スキーム6)に従って調製することができる。4-(アミノメチル)ベンジルアルコールのスルホニル化に続く、塩化物によるヒドロキシル基の求核置換は、国際公開第2017/114843号で前述したプリンから脱ベンジル化反応によって調製されるN3-非置換プリン誘導体との縮合を介して所期の誘導体を提供する、中間体をもたらす。
【0103】
【0104】
本発明の化合物の化学式20bから31b、33aから42bの設計及び合成は、自動化されたロボットプラットフォームに連結された分子モデル構築、及びハイスループットラボラトリーワークステーションを統合している(DOTSと呼ばれる)。インシリコ最適化戦略は2つの主な工程、i)医薬品化学に関連にした反応及び市販のビルディングブロック(building block)のコレクションを使用した多様性志向の標的集中(target-focused)化学ライブラリーの設計、ii)1つ(配座異性体羅列)又は2分子以上(ドッキング)の状況における数百の分子内/分子間自由度を扱うことができる、立体配座サンプリングツール(conformation sampling tool)であるS4MPLEを使用する、この化学ライブラリーの仮想スクリーニング、に依存している。S4MPLEはラマルクの遺伝的アルゴリズムに依存しており、有意な柔軟性は可能であってもよい(例えば、リガンド、標的側の鎖、及び主鎖)。エネルギー計算は、AMBER力場及びリガンドに関するその一般化された版のGAFFにもとづいている。
【0105】
本発明の化合物のスルホンアミド及びアミド化学ライブラリーは、スルホニル化又はアシル化反応、及びビルディングブロックのコレクションを使用して生成された。約60個のビルディングブロックが購入され、上位1%から化合物の代表的なセットを調製した。化合物は、前述した3-(4-(アミノメチル)ベンジル)-7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオンと、スルホニル化又はアシル化のための最適な市販のパートナーとをカップリングすることで、Chemspeedから購入した自動化されたロボットプラットフォームを使用して、合成された(スキーム7)。直接Labcyte Access/Echo(登録商標) Laboratory Workstationに移し、均一時間分解蛍光(HTRF(登録商標))技術を用いてブロモドメイン/ヒストン複合体を崩壊させる能力(IC50 μM)に関して化合物を評価することができるAccelerator Synthetizer SL100によって、96ウェルプレート内で、着目したライブラリーの効率的な合成が可能になる。
【0106】
【0107】
本発明の典型的な実施形態は説明のために開示されたが、当業者は付随する請求項で開示される本発明の範囲及び意図から逸脱することなく、様々な改良、追加、及び置き換えが可能であることをよく理解している。本発明はここでは以下の実施例及び図を使用して説明されるが、それらは実例として与えられ、限定するものではない。
【0108】
[本発明による化合物の一般的な合成]
市販の試薬は追加の精製をせずに使用した。カラムクロマトグラフィーはMacherey-Nagel Kieselgel 60(70-230 mesh)を使用して実施した。石油スピリット(petroleum spirit)は40から70℃の範囲の蒸留で得られる分画を指す。1H及び13Cの核磁気共鳴(NMR)のスペクトルは、Bruker AC400、AC250、又はAgilent DD2 400分光計を用いて、DMSO-d6、CD3OD、又はCDCl3中において、室温で記録した。化学シフト(δ)は、内部基準のTMSと共に100万分の1(ppm)で記録し、カップリング値(J)はヘルツで記録した。ピークに関する略語は、br:広い(broad)、s:一重項(singlet)、d:二重項(doublet)、t:三重項(triplet)、q:四重項(quadruplet)、quint:五重項(quintuplet)、sex:六重項(sextuplet)、及びm:多重項(multiplet)である。記録されたスペクトルは、推定される構造と一致する。化合物の反応モニタリング及び精製は、230 nmでのDADを用いた分析用Agilent Infinity高速液体クロマトグラフィー(Column Zorbax SB-C18 1.8 μM (2.1×50 mm); 移動相(A: 0.1% FA H2O、B: 0.1% FA MeCN、時間/%B 0/10、4/90、7/90、9/10、10/10); 流量 0.3 mL/min; 希釈剤 MeOH)を用いて記録した。全ての試験された化合物は、≧95%の純度と一致するデータを生じた。
【0109】
実施例1:
[4-((2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-7-スルホンアミド)メチル)-N-(2-(チオフェン-2-イル)エチル)シクロヘキサンカルボキサミド(5b)]
【0110】
【0111】
ジメチルホルムアミド(2mL)中の3b(50mg、0.13mmol)の溶液に、BOP試薬(58mg、0.13mmol)及び2-チオフェンエチルアミン(15μL、0.13mmol)を添加した。混合物を室温で10分間かき混ぜ、トリエチルアミン(36μL、0.26mmol)を注入した。その結果生じる混合物を室温で3時間かき混ぜ、次いで、減圧下でジメチルホルムアミドを除去した。残余物をH2O(5mL)に懸濁し、濾過によって回収された沈殿をH2Oで十分に洗浄し、減圧下で乾燥させて、ライトベージュの粉末として4-((2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-7-スルホンアミド)メチル)-N-(2-(チオフェン-2-イル)エチル)シクロヘキサンカルボキサミド 5b(51mg、80%)を産出した。1H NMR (250 MHz, CD3OD) δ 7.78 - 7.67 (m, 2H), 7.17 (dd, J = 9.9, 6.7 Hz, 2H), 6.96 - 6.88 (m, 1H), 6.84 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 3.39 (dd, J = 8.8, 5.0 Hz, 2H), 2.99 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.86 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.70 (d, J = 6.7 Hz, 2H), 2.38 - 2.20 (m, 4H), 2.07 (t, J = 12.2 Hz, 1H), 1.78 (d, J = 10.1 Hz, 4H), 1.38 (dd, J = 23.6, 11.2 Hz, 3H), 0.91 (q, J = 12.5 Hz, 2H)。13C NMR (101 MHz, DMSO-d6+CD3OD) δ 177.83, 175.76, 143.37, 142.45, 138.00, 135.73, 129.17, 127.66, 127.01, 126.03, 124.51, 122.70, 49.74, 45.61, 41.43, 38.11, 33.74, 31.05, 30.48(x2), 30.15, 29.71(x2), 29.05. LCMS C24H31N3O4S2 Rt=5.950, m/z=489.6, 純度>95%。
【0112】
[4-((2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-7-スルホンアミド)メチル)シクロヘキサンカルボン酸(3b)]
【0113】
【0114】
メタノール(60mL)中の1c(1g、2.54mmol)の溶液を1Mの水酸化カリウムの水溶液(1.4g、25.4mmol)を用いて処理し、その結果生じる混合物を60℃で4時間かき混ぜた。混合物を室温まで冷却させ、30mLの1Mの塩酸を添加した。形成された沈殿は濾過して除去し、H2Oで十分に洗浄し、減圧下で乾燥させて、白い固体として4-((2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-7-スルホンアミド)メチル)シクロヘキサンカルボン酸 3b(780mg、81%)を産出した。1H NMR (250 MHz, CD3OD) δ 7.73 (dd, J = 9.9, 1.5 Hz, 2H), 7.17 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 2.87 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.71 (d, J = 6.7 Hz, 2H), 2.39 - 2.09 (m, 5H), 1.96 (d, J = 11.2 Hz, 2H), 1.80 (d, J = 11.0 Hz, 2H), 1.45 - 1.21 (m, 3H), 0.92 (qd, J = 12.9, 3.0 Hz, 2H)。13C NMR (63 MHz, CD3OD) δ 176.72 (x2), 143.66, 138.81, 136.31, 129.57, 127.43, 123.13, 50.11, 44.44, 38.65, 34.01, 31.46, 30.77(x2), 29.79(x2), 29.36。
【0115】
[4-((2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-7-スルホンアミド)メチル)シクロヘキサンカルボン酸メチル(1c)]
【0116】
【0117】
ジクロロメタン(25 mL)中の4-(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸メチル塩酸塩(660mg、3.18mmol)の懸濁液に、トリエチルアミン(2.2mL、15.9mmol)及び1b(825mg、3.18mmol)を添加し、その結果生じる混合物を室温で6時間かき混ぜた。次いで、反応混合物を1MのHCl(30mL)及びNaHCO3(30mL)の溶液を用いて二度洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮させて、白い固体として4-((2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-7-スルホンアミド)メチル)シクロヘキサンカルボン酸メチル 1c(1.25g、99%)を産出した。1H NMR (250 MHz, CD3OD+CDCl3) δ 7.68 (dd, J = 6.0, 3.3 Hz, 2H), 7.11 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 3.63 (s, 3H), 2.83 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.70 (d, J = 6.7 Hz, 2H), 2.40 - 2.09 (m, 5H), 1.94 (d, J = 12.4 Hz, 2H), 1.81 (d, J = 11.1 Hz, 2H), 1.47 - 1.22 (m, 3H), 0.90 (dt, J = 12.2, 10.1 Hz, 2H)。13C NMR (63 MHz, CD3OD+CDCl3) δ 177.32, 176.09, 142.70, 137.79, 135.47, 129.05, 126.86, 122.51, 51.82, 49.47, 43.74, 37.86, 33.50, 31.03, 30.06(x2), 28.93(x2), 28.71。
【0118】
[4-(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸メチル塩酸塩]
【0119】
【0120】
塩化チオニル(763μl、10.5mmol)を、-10℃において5mLの無水MeOHに10分にわたって滴下した。この溶液に、同じ温度において4-(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸(500mg、3.18mmol)を加えて、その結果生じる混合物を室温で20時間かき混ぜた。減圧下で溶媒を除去し、黄色がかった固体として4-(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸メチル塩酸塩(660mg、100%)を産出した。1H NMR (250 MHz, CD3OD) δ 3.66 (s, 3H), 2.80 (d, J = 6.6 Hz, 2H), 2.41 - 2.23 (m, 1H), 2.03 (d, J = 12.0 Hz, 2H), 1.89 (d, J = 11.9 Hz, 2H), 1.64 (s, 1H), 1.54 - 1.34 (m, 2H), 1.18 - 0.99 (m, 2H)。13C NMR (63 MHz, CD3OD) δ 177.61, 52.07, 46.36, 43.99, 36.69, 30.27(x2), 29.26(x2)。
【0121】
[2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-7-スルホニルクロライド(1b)]
【0122】
【0123】
アルゴン存在下で、クロロスルホン酸(7.22 mL、109.8mmol)を激しくかき混ぜている状態で1a(1.77g、11mmol)に滴下して、その結果生じる混合物を室温で20時間かき混ぜた。フラスコを冷却し、白い沈殿が形成されるまで冷えたH2Oを滴下した。沈殿を濾過し、冷えたH2Oで慎重に洗浄し、真空下で乾燥させて、白い粉末として2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-7-スルホニルクロライド 1b(2.1g、75%)を産出した。1H NMR (400 MHz, DMSO) δ 9.56 (s, 1H), 7.47 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.43 (dd, J = 8.1, 2.0 Hz, 1H), 6.90 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 2.67 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 2.17 - 2.05 (m, 4H)。13C NMR (101 MHz, DMSO) δ 173.36, 144.17, 139.27, 132.89, 127.10, 124.58, 120.79, 33.00, 29.99, 28.02。
【0124】
[4,5-ジヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-2(3H)-オン(1a)]
【0125】
【0126】
トルエン(40 mL)中のα-テトラロン(5 g、34.2mmol)の溶液に、10℃においてNaN3(8.9 g、137mmol)を添加し、混合物を0℃まで冷やし、その後濃H2SO4(16mL)を注入した。反応混合物を室温で2日間かき混ぜた。得られた固体は濾過して除去し、トルエンで十分に洗浄し、EtOAc及びH2Oの混合物中に溶解し、EtOAc(20mL×3)を用いて抽出した。有機層をNaClを用いて洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去して、淡黄色の結晶として4,5-ジヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-2(3H)-オン 1a(5.1g、93%)を産出した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.51 (s, 1H), 7.28 - 7.17 (m, 2H), 7.07 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 6.95 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 2.66 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.19 - 2.02 (m, 4H)。13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 173.58, 138.95, 133.82, 129.80, 127.31, 124.85, 121.72, 32.94, 29.98, 28.17。
【0127】
実施例2:
[4-(アミノメチル)-N-(2-(チオフェン-2-イル)エチル)シクロヘキサンカルボキサミド塩酸塩(8b)]
【0128】
【0129】
ジクロロメタン(1mL)中の18c(50mg、0.14mmol)の溶液をトリフルオロ酢酸(104μL、1.4mmol)を用いて処理し、その結果生じる混合物を室温で2時間かき混ぜた。次いで、減圧下で溶媒を除去し、残余物をH2Oに溶解し、EtOAc(10mL×3)を用いて洗浄した。1つにした有機層をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮して、ベージュの固体として4-(アミノメチル)-N-(2-(チオフェン-2-イル)エチル)シクロヘキサンカルボキサミド塩酸塩 8b(35mL、66%をもたらした)を産出した。1H NMR (250 MHz, CD3OD) δ 7.19 (dd, J = 5.1, 1.0 Hz, 1H), 6.91 (dd, J = 5.1, 3.5 Hz, 1H), 6.88 - 6.81 (m, 1H), 3.40 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 3.00 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 2.78 (d, J = 7.0 Hz, 2H), 2.16 (tt, J = 12.0, 3.2 Hz, 1H), 1.95 - 1.77 (m, 4H), 1.72 - 1.57 (m, 1H), 1.47 (ddd, J = 15.9, 13.5, 3.7 Hz, 2H), 1.15 - 0.95 (m, 2H)。13C NMR (63 MHz, CD3OD) δ 178.73, 178.64, 142.55, 127.82, 126.31, 124.65, 46.17, 45.71, 41.97, 36.69, 30.44, 30.31(x2), 29.72(x2). LCMS C14H22N2OS Rt=7.321, m/z=266.8, 純度 100%。
【0130】
[((4-((2-(チオフェン-2-イル)エチル)カルバモイル)シクロヘキシル)メチル)カルバミン酸tert-ブチル(18c)]
【0131】
【0132】
ジメチルホルムアミド(6mL)中の4-(((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)メチル)シクロヘキサンカルボン酸(158mg、0.61mmol)の溶液に、BOP試薬(271.4mg、0.61mmol)及び2-アミノエチルチオフェン(71.9μL、0.61mmol)を添加した。反応混合物を室温で10分間かき混ぜ、トリエチルアミン(213.7μL、1.53mmol)を注入した。その結果生じる混合物を室温で12時間かき混ぜ、次いで、減圧下でジメチルホルムアミドを除去した。残余物をH2O(3mL)に懸濁し、濾過によって回収された沈殿をH2Oを用いて十分に洗浄し、減圧下で乾燥させて、白い固体として((4-((2-(チオフェン-2-イル)エチル)カルバモイル)シクロヘキシル)メチル)カルバミン酸tert-ブチル 18c(199mg、89%)を産出した。1H NMR (250 MHz, CD3OD) δ 7.20 (dd, J = 5.1, 1.0 Hz, 1H), 6.92 (dd, J = 5.1, 3.5 Hz, 1H), 6.85 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 3.40 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 3.00 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.88 (d, J = 6.7 Hz, 2H), 2.10 (t, J = 12.2 Hz, 1H), 1.80 (d, J = 11.2 Hz, 4H), 1.51 - 1.33 (m, 12H), 0.95 (dd, J = 22.7, 12.2 Hz, 2H)。13C NMR (63 MHz, CD3OD) δ 179.21, 158.71, 142.56, 127.81, 126.31, 124.65, 79.88, 47.47, 46.40, 41.96, 39.07, 30.90, 30.44(x3), 30.17(x2), 28.77(x2)。
【0133】
[4-(((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)メチル)シクロヘキサンカルボン酸]
【0134】
【0135】
氷浴で冷やした1MのNaOH(45.8mg、1.15mmol)の水溶液に、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸(100mg、0.64mmol)を添加した。溶液をMeCNで希釈して、1mLにした。二炭酸ジ-tert-ブチル(175mg、0.81mmol)を少しずつ添加し、混合物を室温で一晩かき混ぜた。溶媒を減圧下で除去し、残余物をH2O(2mL)に溶解した。NaHSO4を添加してpH=3にし、混合物をEtOAc(5mL×3)を用いて抽出し、1つにした有機層をNa2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮して、白い固体として4-(((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)メチル)シクロヘキサンカルボン酸(160mg、98%)を産出した。1H NMR (250 MHz, CD3OD) δ 2.89 (t, J = 6.1 Hz, 2H), 2.20 (dd, J = 13.9, 10.5 Hz, 1H), 1.99 (d, J = 13.3 Hz, 2H), 1.81 (d, J = 11.1 Hz, 2H), 1.49 - 1.29 (m, 12H), 0.96 (dd, J = 24.9, 10.3 Hz, 2H)。13C NMR (63 MHz, CD3OD) δ 179.97, 158.70, 79.82, 47.46, 44.54, 39.13, 30.87(x3), 29.89(x2), 28.78(x2)。
【0136】
実施例3:
[N-(4-((7-エチル-2,6-ジオキソ-1,2,6,7-テトラヒドロ-3H-プリン-3-イル)メチル)ベンジル)-4-フェノキシベンゼンスルホンアミド(30c)]
【0137】
【0138】
(工程A)Chemspeed Accelerator自動化同時合成プラットフォーム上で、自動スルホニル化を実施した。反応は2mL LCガスバイアル内で行った。無水テトラヒドロフラン(20mL)中の3-(4-(アミノメチル)ベンジル)-7-エチルキサンチントリフルオロ酢酸塩(206.5mg、1eq)及びトリエチルアミン(138.7μL、2eq)の原液を調製し、ロボットのデッキに設置した。ロボットは、調製された溶液(400 μL)を液体ハンドリングツールを介してクロロスルホニル誘導体(0.01mmol)を含む個々のバイアルに分配することによって、自動的に反応混合物を調製した。室温で12時間後、サンプルを取り出してLCMSで解析し、転換のパーセントを決定した。生成物溶液を80℃で濃縮し、残余物をジメチルスルホキシドで希釈して、所期の化合物の5.10-2Mの溶液を産出した。更なるLCMS解析は、生成物の終濃度を更なる生物学的評価のために精密に10-2Mに調整することを可能にした。
【0139】
(工程B)テトラヒドロフラン(5mL)中の20a(50mg、0.12mmol)の溶液に、トリエチルアミン(84.5μL、0.60mmol)及び4-フェノキシベンゼンスルホニルクロライド(32.2mg、0.12mmol)を注入し、その結果生じる混合物を室温で一晩かき混ぜた。減圧下で溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(溶離液 20:1、CH2Cl2:MeOH)で粗生成物を精製して、白い固体としてN-(4-((7-エチル-2,6-ジオキソ-1,2,6,7-テトラヒドロ-3H-プリン-3-イル)メチル)ベンジル)-4-フェノキシベンゼンスルホンアミド 30c(54.8mg、86%)を産出した。1H NMR (250 MHz, CD3OD) δ 7.89 (s, 1H), 7.69 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.42 (dd, J = 8.2, 7.5 Hz, 2H), 7.29 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.25 - 7.17 (m, 1H), 7.11 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.06 - 6.99 (m, 2H), 6.93 (d, J = 8.9 Hz, 2H), 5.13 (s, 2H), 4.25 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 4.02 (s, 2H), 1.44 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。LCMS C27H25N5O5S Rt=6.594, m/z=531.6, 純度>96%。
【0140】
[3-(4-(アミノメチル)ベンジル)-7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオントリフルオロ酢酸塩(20a)]
【0141】
【0142】
ジクロロメタン(3mL)中の19c(200mg、0.50mmol)の懸濁液をトリフルオロ酢酸(450μM)で処理し、その結果生じる混合物を室温で1時間かき混ぜた。減圧下で溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(溶離液 6:1:0.1、CH2Cl2:MeOH:NH3)で粗生成物を精製して、白い固体として3-(4-(アミノメチル)ベンジル)-7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオントリフルオロ酢酸塩 20a(207mg、100%)を産出した。1H NMR (250 MHz, CD3OD) δ 7.96 (s, 1H), 7.51 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 5.26 (s, 2H), 4.36 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 4.10 (s, 2H), 1.51 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。13C NMR (63 MHz, CD3OD) δ 156.49, 152.88, 151.55, 143.21, 139.18, 133.97, 130.15(x2), 129.78(x2), 108.50, 46.22, 44.01, 43.42, 16.78。
【0143】
[4-((7-エチル-2,6-ジオキソ-1H-プリン-3(2H,6H,7H)-イル)メチル)ベンジルカルバミン酸tert-ブチル]
【0144】
【0145】
ジメチルホルムアミド(15mL)中の7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオン(180mg、1mmol)及びK2CO3(151.8mg、1.1mmol)の懸濁液に、4-(ブロモメチル)ベンジルカルバミン酸tert-ブチル(300mg、1mmol)を少しずつ添加し、その結果生じる混合物を室温で一晩かき混ぜた。減圧下で溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(溶離液 40:1:0.1、CH2Cl2:MeOH:NH3)で粗生成物を精製して、白い固体として4-((7-エチル-2,6-ジオキソ-1H-プリン-3(2H,6H,7H)-イル)メチル)ベンジルカルバミン酸塩 19c(202mg、51%)を産出した。1H NMR (250 MHz, DMSO-d6) δ 8.07 (s, 1H), 7.30 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.18 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 5.09 (s, 2H), 4.25 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 4.09 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 1.47 - 1.31 (m, 12H)。13C NMR (63 MHz, DMSO-d6) δ 155.78, 154.65, 150.83, 149.72, 141.99, 139.36, 135.43, 127.58(x2), 127.01(x2), 106.49, 77.79, 44.55, 43.10, 41.57, 28.27(x3), 16.26。
【0146】
[4-(ブロモメチル)ベンジルカルバミン酸tert-ブチル]
【0147】
【0148】
H2O及びジオキサンの混合物(40mL、1:1)中の(4-(ブロモメチル)フェニル)メタンアミン臭化水素酸塩(1g、5mmol)の溶液に、二炭酸ジ-tert-ブチル(3.3g、15mmol)を0℃において添加した。次いで、同じ温度においてNaHCO3(0.87g、10mmol)を添加し、その結果生じる混合物を室温で3時間かき混ぜた。混合物をEt2O(×3)を用いて抽出し、1つにした有機層をNa2SO4で乾燥させて、減圧下で濃縮した。その結果生じる無色の油(oil)を石油エーテルを用いて洗浄し、形成された沈殿を濾過して除去し、減圧下で乾燥させて、白い固体として4-(ブロモメチル)ベンジルカルバミン酸tert-ブチル(1.1g、73%)を産出した。1H NMR (250 MHz, DMSO-d6) δ 7.38 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.21 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 4.68 (s, 2H), 4.10 (d, J = 6.1 Hz, 2H), 1.39 (s, 9H)。13C NMR (63 MHz, DMSO-d6) δ 155.81, 140.51, 136.39, 129.27(x2), 127.20(x2), 77.86, 43.09, 34.55, 28.26(x3)。
【0149】
[(4-(ブロモメチル)フェニル)メタンアミン臭化水素酸塩]
【0150】
【0151】
4-(アミノメチル)ベンジルアルコール(768mg、5.6mmol)をH2O(8.5mL)及びHBr(46%水溶液、13mL)の混合物中に溶解した。その結果生じる混合物を3.5時間還流させ、次いで、減圧下で溶媒を除去し、得られた固体をEt2Oを用いて洗浄し、灰色の粉末として(4-(ブロモメチル)フェニル)メタンアミン臭化水素酸塩(1g、89%)を産出した。1H NMR (250 MHz, DMSO-d6) δ 8.26 (brs, 2H), 7.48 (s, 4H), 4.71 (d, J = 3.6 Hz, 2H), 4.03 (s, 2H)。13C NMR (63 MHz, DMSO-d6) δ 138.47, 134.07, 129.57(x2), 129.37(x2), 41.90, 34.03。
【0152】
[4-(アミノメチル)ベンジルアルコール]
【0153】
【0154】
テトラヒドロフラン(100mL)中の4-(アミノメチル)安息香酸(10g、66.2mmol)のかき混ぜられた懸濁液に、0℃において水素化アルミニウムリチウム(10g、264.8mmol)を0℃において少しずつ添加した。混合物を加熱して還流させ、再び0℃に冷却する前に一晩かき混ぜた。10mLのH2Oを添加し、次いで、15mLの10% NaOH及び30mLのH2Oを添加した。混合物を1時間0℃に保った。次いで、混合物をセライトのパッドを通して濾過し、EtOAcを用いて洗浄した。濾過された液体を濃縮し、黄色の油として4-(アミノメチル)ベンジルアルコールを産出し、数分後に黄色い油はベージュの固体に結晶化した。得られた固体はEt2Oを用いて洗浄し、ライトベージュの粉末として4-(アミノメチル)ベンジルアルコール(8.8g、97%をもたらした)を産出した。1H NMR (250 MHz, CD3OD) δ 7.32 (s, 4H), 4.58 (s, 2H), 3.78 (s, 2H)。13C NMR (63 MHz, CD3OD) δ 142.21, 141.50, 128.53(x2), 128.26(x2), 64.96, 46.32。
【0155】
実施例4:
[N-(4-((7-エチル-2,6-ジオキソ-1H-プリン-3(2H,6H,7H)-イル)メチル)ベンジル)-1-プロピル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(33c)]
【0156】
【0157】
1-プロピル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(3.73mg、0.024mmol)に、ジメチルホルムアミド(0.5 mL)中の20a(10 mg、0.024 mmol)及びトリエチルアミン(7 μl、0.048 mmol)の溶液を注入した。ジメチルホルムアミド(0.5 mL)中のBOP試薬(11mg、0.024 mmol)の溶液を添加し、その結果生じる混合物を室温で10分間かき混ぜ、次いで、減圧下でジメチルホルムアミドを除去した。残余物をH2O(2 mL)に懸濁し、濾過によって沈殿を回収し、ライトベージュの粉末としてN-(4-((7-エチル-2,6-ジオキソ-1H-プリン-3(2H,6H,7H)-イル)メチル)ベンジル)-1-プロピル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド 33c(6.6mg、63%)を産出した。1H NMR (250 MHz, CD3OD) δ 7.92 (s, 1H), 7.82 (s, 1H), 7.66 (s, 1H), 7.36 (d, J = 9.7 Hz, 2H), 7.24 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 5.16 (s, 2H), 4.45 (s, 2H), 4.24 - 4.23 (m, 2H), 4.06 (d, J = 7.0 Hz, 2H), 1.82 (dt, J = 14.4, 7.2 Hz, 2H), 1.47 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 0.86 (t, J = 7.4 Hz, 3H)。LCMS C22H25N7O3 Rt=5.402 min, m/z=435.7, 純度 99%。
【0158】
実施例5:
[3-((4-(アミノメチル)ナフタレン-1-イル)メチル)-7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオン]
【0159】
【0160】
ヒドラジンハイドレート(141.5μL、2.94mmol)を、メタノール(7mL)中の3-((4-((1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)メチル)ナフタレン-1-イル)メチル)-7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオン(200mg、0.42mmol)の懸濁液に添加し、その結果生じる混合物を4時間還流においてかき混ぜた。減圧下で溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(溶離液 15:1、CH2Cl2:MeOH+NH3)で混合物を精製して、白い固体として3-((4-(アミノメチル)ナフタレン-1-イル)メチル)-7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオン(90mg、62%をもたらした)を産出した。1H NMR (250 MHz, DMSO-d6) δ 8.27 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 8.18 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 8.01 (s, 1H), 7.67 - 7.54 (m, 2H), 7.42 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.04 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 5.57 (s, 2H), 4.25 (dd, J = 13.8, 6.8 Hz, 2H), 4.16 (s, 2H), 1.40 (t, J = 7.1 Hz, 3H)。13C NMR (63 MHz, DMSO-d6) δ 154.80, 151.00, 149.97, 142.02, 131.10, 130.60(x2), 125.98, 125.89, 124.40(x2), 123.89, 123.65, 122.84, 106.67, 54.97, 42.99, 41.63, 16.29。
【0161】
[3-((4-((1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)メチル)ナフタレン-1-イル)メチル)-7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオン]
【0162】
【0163】
ジメチルホルムアミド(5mL)中の7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオン(321.2mg、1.78mmol)、2-((4-(ブロモメチル)ナフタレン-1-イル)メチル) イソインドリン-1,3-ジオン(1.3g、1.78mmol)、及び炭酸カリウム(246.2mg、1.78mmol)の懸濁液を室温で2日間かき混ぜた。減圧下で溶媒を除去し、H2O(5ml)を添加し、ベージュの沈殿を濾過して除去し、H2Oを用いて洗浄し、減圧下で乾燥させた。次いで、カラムクロマトグラフィー(溶離液 CH2Cl2、次いで10:1 CH2Cl2:MeOH)で粗生成物を精製して、ベージュの固体として3-((4-((1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)メチル)ナフタレン-1-イル)メチル)-7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオン(490mg、57%をもたらした)を得た。1H NMR (250 MHz, CDCl3) δ 7.65 (dddd, J = 31.0, 15.0, 6.6, 4.1 Hz, 11H), 5.72 (s, 2H), 5.28 (s, 2H), 4.30 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 1.51 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。13C NMR (63 MHz, CDCl3) δ 168.30(x2), 154.45, 150.95, 150.86, 140.97, 134.18(x2), 132.12(x2), 131.70, 131.55, 131.51, 131.41, 126.65, 126.57, 126.42, 124.32, 124.10, 124.01, 123.48(x2), 107.43, 43.80, 42.63, 39.57, 16.50。
【0164】
[2-((4-(ブロモメチル)ナフタレン-1-イル)メチル)イソインドリン-1,3-ジオン]
【0165】
【0166】
酢酸(5mL)中の2-(ナフタレン-1-イルメチル)イソインドリン-1,3-ジオン(1.5g、5.2mmol)及び(CH2O)n(235mg、7.8mmol)の懸濁液に、Hbr(1.1mL)を滴下し、その結果生じる混合物を120℃で2日間かき混ぜた。H2O(5ml)を添加し、混合物をジクロロメタン(5mL×3)を用いて抽出し、1つにした有機層を回収し、Na2SO4で乾燥させ、減圧下で溶媒を蒸発させて、ライトベージュの泡状物質を形成させた。泡状物質をジクロロメタン及び石油スピリットの混合物中に溶解して、更なる精製をせずに次の工程で直接使用されるベージュの沈殿として2-((4-(ブロモメチル)ナフタレン-1-イル)メチル)イソインドリン-1,3-ジオンを産出した(1.3g、66%をもたらした)。
【0167】
[2-(ナフタレン-1-イルメチル)イソインドリン-1,3-ジオン]
【0168】
【0169】
カリウムフタルイミド(potassium phtalimide)(2.55g、14mmol)をジメチルホルムアミド(30mL)中に懸濁し、反応混合物を加熱して90℃にした。ジメチルホルムアミド(20mL)中の1-(ブロモメチル)ナフタレン(3g、14mmol)の溶液を添加し、その結果生じる混合物を90℃で1.5時間かき混ぜた。減圧下で溶媒を除去し、H2O(10ml)を添加し、形成された白い沈殿を濾過して除去し、H2O及びEt2Oを用いて洗浄し、乾燥させて、白い粉末として2-(ナフタレン-1-イルメチル)イソインドリン-1,3-ジオン(3g、76%をもたらした)を産出した。1H NMR (250 MHz, CDCl3) δ 8.37 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.90 - 7.39 (m, 10H), 5.34 (s, 2H)。13C NMR (63 MHz, CDCl3) δ 168.39(x2), 134.18(x2), 133.89, 132.18(x2), 131.47, 131.30, 128.86, 128.80, 127.43, 126.66, 125.96, 125.41, 123.60, 123.52(x2), 39.65。
【0170】
[1-(ブロモメチル)ナフタレン]
【0171】
【0172】
50mLのCCl4中の1-メチルナフタレン(3g、21mmol)、NBS(3.76g、1 eq)、及びAIBN(0.35g、0.1eq)の懸濁液を明かりの下で一晩かき混ぜた。減圧下でCCl4を除去し、カラムクロマトグラフィー(溶離液 石油エーテル)で粗混合物を精製して、無色の油として1-(ブロモメチル)ナフタレン(3g、64%をもたらした)を得た。1H NMR (250 MHz, CDCl3) δ 8.17 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.93 - 7.81 (m, 2H), 7.68 - 7.48 (m, 3H), 7.45 - 7.37 (m, 1H), 4.98 (s, 2H)。13C NMR (63 MHz, CDCl3) δ 134.15, 133.38, 131.18, 129.95, 129.00, 127.90, 126.75, 126.38, 125.53, 123.86, 31.89。
【0173】
実施例6:
[3-(4-(アミノメチル)-2,5-ジメトキシベンジル)-7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオン]
【0174】
【0175】
メタノール(10mL)中の3-(4-((1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)メチル)-2,5-ジメトキシベンジル)-7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオン(100mg、0.2mmol)の懸濁液に、ヒドラジン(69.3μL、1.43mmol)を添加し、その結果生じる混合物を還流において7時間かき混ぜた。溶媒を除去し、残余物をジクロロメタン中に溶解し、1N HClを用いて洗浄し、白い粉末として3-(4-(アミノメチル)-2,5-ジメトキシベンジル)-7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオン(50mg、67%をもたらした)を産出した。1H NMR (250 MHz, CDCl3) δ 7.55 (s, 1H), 6.80 (s, 1H), 6.65 (s, 1H), 5.26 (s, 2H), 4.31 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.82-3.80 (m, 5H), 3.68 (s, 3H), 1.52 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。13C NMR (63 MHz, CDCl3) δ 155.08, 151.39, 151.31, 151.10, 150.88, 140.89, 123.46(x2), 112.21, 110.83, 107.31, 65.91, 56.36, 55.93, 42.49, 41.36, 16.45。
【0176】
[3-(4-((1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)メチル)-2,5-ジメトキシベンジル)-7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオン]
【0177】
【0178】
ジメチルホルムアミド(3mL)中の7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオン(100mg、0.62 mmol)及び炭酸カリウム(85mg、1.5eq)の懸濁液に、2-(4-(ブロモメチル)-2,5-ジメトキシベンジル)イソインドリン-1,3-ジオンを添加し、混合物を室温で2時間かき混ぜた。減圧下で溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(溶離液 30:1 CH2Cl2:MeOH、次いで20:1 CH2Cl2:MeOH)で粗生成物を精製して、白い粉末として3-(4-((1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)メチル)-2,5-ジメトキシベンジル)-7-エチル-1H-プリン-2,6(3H,7H)-ジオン(176mg、58%をもたらした)を産出した。1H NMR (250 MHz, CDCl3) δ 7.85 - 7.80 (m, 2H), 7.71-7.67 (m, 2H), 7.53 (s, 1H), 6.82 (s, 1H), 6.62 (s, 1H), 5.21 (s, 2H), 4.83 (s, 2H), 4.29 (q, J = 7.2 Hz, 2H), 3.74 (s, 3H), 3.68 (s, 3H), 1.50 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。13C NMR (63 MHz, DMSO-d6) δ 167.79 (x2), 154.80, 150.99, 150.53, 150.38, 149.89, 141.95, 134.48(x2), 131.74(x2), 124.79, 123.79, 123.18(x2), 111.69, 110.20, 106.53, 56.24, 56.21, 41.56, 41.07, 40.71, 16.27。
【0179】
[2-(4-(ブロモメチル)-2,5-ジメトキシベンジル)イソインドリン-1,3-ジオン]
【0180】
【0181】
ジメチルホルムアミド(5mL)中のカリウムフタルイミド(572mg、3.1mmol)の懸濁液を加熱して90℃にし、次いでジメチルホルムアミド(5mL)中の1,4-ビス(ブロモメチル)-2,5-ジメトキシベンゼン(1g、3.1mmol)の懸濁液を添加した。その結果生じる混合物を90℃で8時間かき混ぜ、次いで、室温で一晩かき混ぜた。減圧下で溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(溶離液 3:1 PE:EtOAc)で粗生成物を精製して、ライトベージュの固体として2-(4-(ブロモメチル)-2,5-ジメトキシベンジル)イソインドリン-1,3-ジオン(423mg、35%をもたらした)を産出した。1H NMR (250 MHz, CDCl3) δ 7.86 (dd, J = 5.5, 3.1 Hz, 2H), 7.72 (dd, J = 5.4, 3.1 Hz, 2H), 6.84 (d, J = 3.3 Hz, 2H), 4.87 (s, 2H), 4.52 (s, 2H), 3.82 (s, 3H), 3.80 (s, 3H)。13C NMR (63 MHz, CDCl3) δ 168.15(x2), 151.37, 151.16, 134.10(x2), 132.15(x2), 126.07, 125.99, 123.42(x2), 113.49, 113.10, 56.42, 56.30, 36.89, 28.98。
【0182】
[1,4-ビス(ブロモメチル)-2,5-ジメトキシベンゼン]
【0183】
【0184】
酢酸(100mL)中の1,4-ジメトキシベンゼン(4.1 g、30mmol)及び(CH2O)n(2g、66mmol)の懸濁液に、HBr(AcOH中の33%溶液、27mL)を滴下し、その結果生じる混合物を80℃で2時間かき混ぜた。形成された白い沈殿を濾過して除去し、冷えたH2Oを用いて洗浄し、乾燥させて、白い固体として1,4-ビス(ブロモメチル)-2,5-ジメトキシベンゼン(6.3g、66%をもたらした)を産出した。1H NMR (250 MHz, CDCl3) δ 6.87 (s, 2H), 4.54 (s, 4H), 3.87 (s, 6H)。13C NMR (63 MHz, CDCl3) δ 151.38(x2), 127.52(x2), 113.93(x2), 56.37(x2), 28.75(x2)。
【0185】
実施例7:
[N-(4-((8-(((6-ブチル-5,7-ジメチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-2-イル)チオ)メチル)-7-エチル-2,6-ジオキソ-1,2,6,7-テトラヒドロ-3H-プリン-3-イル)メチル)ベンジル)-2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-7-スルホンアミド(32c)]
【0186】
【0187】
ジメチルホルムアミド(1mL)中の8-(((6-ブチル-5,7-ジメチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-2-イル)チオ)メチル)-7-エチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオン(10mg、0.023mmol)、N-(4-(クロロメチル)ベンジル)-2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-7-スルホンアミド(8.84mg、0.023mmol)、及び炭酸カリウム(9.7mg、0.069mmol)の懸濁液を室温で2日間かき混ぜた。減圧下で溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(溶離液 10:1 CH2Cl2:MeOH)で粗生成物を精製して、ベージュの固体としてN-(4-((8-(((6-ブチル-5,7-ジメチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-2-イル)チオ)メチル)-7-エチル-2,6-ジオキソ-1,2,6,7-テトラヒドロ-3H-プリン-3-イル)メチル)ベンジル)-2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-7-スルホンアミド 32c(8mg、45%)を産出した。1H NMR (250 MHz, CD3OD+CDCl3) δ 7.56 - 7.48 (m, 1H), 7.21 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.10 - 6.90 (m, 4H), 5.08 (s, 2H), 4.68 (s, 2H), 4.49 (d, J = 7.0 Hz, 2H), 4.04 (s, 2H), 2.75 (s, 6H), 2.66 (s, 3H), 2.26 (t, J = 8.3 Hz, 5H), 1.45 (t, J = 7.1 Hz, 7H), 0.98 (t, J = 6.9 Hz, 3H)。13C NMR (63 MHz, CD3OD) δ 176.57, 176.48, 165.50, 164.19, 155.79, 154.42, 152.09, 150.17, 145.00, 142.77, 138.00, 137.19, 136.29, 135.60, 129.22, 128.89(x2), 128.62(x2), 127.06, 123.07, 122.69, 108.52, 47.23, 45.94, 41.95, 33.52, 32.37, 30.99, 29.09, 28.39, 26.80, 23.73, 23.45, 16.75, 14.31, 14.09。LCMS C37H42N10O5S2 Rt=6.450, m/z=770.4, 純度 >95%。
【0188】
[N-(4-(クロロメチル)ベンジル)-2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-7-スルホンアミド]
【0189】
【0190】
塩化チオニル(156μL、2.15mmol)を、ジクロロメタン(2mL)中のN-(4-(ヒドロキシメチル)ベンジル)-2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-7-スルホンアミド(155mg、0.43mmol)の溶液に添加した。その結果生じる混合物を室温で1時間かき混ぜた。溶媒を蒸発させて、白い固体としてN-(4-(クロロメチル)ベンジル)-2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-7-スルホンアミド(163mg、100%)を産出し、精製をせずに次の工程で直接使用した。1H NMR (250 MHz, CD3OD) δ 7.65 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.22 (dd, J = 21.0, 8.0 Hz, 4H), 7.06 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 4.56 (s, 2H), 4.12 (s, 2H), 2.78 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.25 (dd, J = 11.0, 5.7 Hz, 4H)。
【0191】
[N-(4-(ヒドロキシメチル)ベンジル)-2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-7-スルホンアミド]
【0192】
【0193】
アルゴン存在下で、0℃でテトラヒドロフラン(6mL)中の(4-(アミノメチル)フェニル)メタノール(100mg、0.73mmol)及びDIPEA(254μL、1.46mmol)の溶液に、テトラヒドロフラン(4mL)中の溶液として1b(189mg、0.73mmol)を滴下した。0℃で30分間かき混ぜた後、混合物を室温まで温めさせ、4日間かき混ぜた。形成された白い沈殿をセライトを通して濾過し、減圧下で濾過された液体を蒸発させて、粘性のある黄色の油を産出した。ジクロロメタン(1mL)を添加し、形成された沈殿を濾過し、少量のジクロロメタン及びジエチルエーテル用いて洗浄し、減圧下で乾燥させて、白い固体としてN-(4-(ヒドロキシメチル)ベンジル)-2-オキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン-7-スルホンアミド(155mg、59%)を産出した。1H NMR (250 MHz, CD3OD) δ 7.71 - 7.62 (m, 2H), 7.19 (q, J = 8.2 Hz, 4H), 7.08 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.53 (s, 2H), 4.10 (s, 2H), 2.79 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 2.34 - 2.17 (m, 4H)。13C NMR (63 MHz, CD3OD) δ 177.08, 143.49, 141.95, 138.82, 137.58, 136.23, 129.71, 128.96(x2), 127.93(x2), 127.50, 123.05, 64.77, 47.65, 33.87, 31.30, 29.53。
【0194】
[8-(((6-ブチル-5,7-ジメチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-2-イル)チオ)メチル)-7-エチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオン]
【0195】
【0196】
トルエン(5mL)中の8-(((6-ブチル-5,7-ジメチル-[1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン-2-イル)チオ)メチル)-3-(4-クロロベンジル)-7-エチル-3,7-ジヒドロ-1H-プリン-2,6-ジオン(115mg、0.21mmol)の懸濁液に、ジクロロメタン中の1Mの三臭化ホウ素の溶液(2.1mL、2.1mmol)を滴下した。その結果生じる混合物を還流において2時間かき混ぜた。溶媒を除去し、残余物をメタノール(7mL)中に溶解し、濃塩酸(1mL)を注入し、次いで、室温で2時間かき混ぜた。減圧下でメタノールを除去し、残余物をジクロロメタン(5mL)を用いて抽出した。水層を回収し、真空下で乾燥させて、ライトオレンジの固体として生成物(90mg、100%)を得た。1H NMR (250 MHz, CD3OD +CDCl3) δ 4.74 (s, 2H), 4.54 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 2.79 (s, 5H), 2.69 (s, 3H), 1.57 - 1.42 (m, 7H), 0.99 (t, J = 6.3 Hz, 3H)。13C NMR (63 MHz, CD3OD) δ 169.17, 161.18, 156.58, 151.08, 148.68, 148.11, 147.42, 126.44, 108.56, 42.88, 32.23, 28.66, 26.78, 23.78, 23.72, 16.43, 14.41, 14.10。
【0197】
上記した合成を実施することによって、以下の表において公表するような化合物を調製した。
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
[本発明による化合物の活性]
実施例1:HTRFアッセイ
white 384 Well Small Volume(商標)HiBase Polystyrene Microplates(Greiner社)において、20 μLの総ワーキングボリュームを用いて、HTRFアッセイを実施した。Access Labcyte platformのEcho(登録商標)550 robot(Labcyte社)を使用し、及び音波による液体の移動にもとづいて、100% DMSO中の10 mMの濃縮ストックからの各ウェルあたり100 nL(0.5%の終DMSO)を用い、そして段階的にDMSOで希釈して、化合物を懸濁した。次いで、Multidrop Combi(Thermo Fisher Scientific社)を使用して、19.5 μLのバッファーを添加した。最後に、各アッセイにおいて、200 nLのマスターミックス(タンパク質+ドナー+アクセプター)及び200 nLのペプチドを、表3に記載の終濃度及びバッファーに従って、Echo(登録商標)550 robot(Labcyte社)を使用して、アッセイウェル内に添加した。IC50の測定は三つ組で実施した(表2及び3)。全てのHTRF試薬(ドナー及びアクセプター)はCisBio Bioassays社から購入し、サプライヤープロトコールに従って再構成した。ペプチドはGenic Bio Synthetic社から購入した。BRD4(1)タンパク質は研究室内で生成し、精製した。最終インキュベーション(ブロモドメインによって、室温又は4℃で3時間又は6時間又は一晩)後、337 nmの励起フィルター並びに620及び665 nmでの蛍光波長測定、60 μ秒の積分遅延及び500 μ秒の積分時間を有するPHERAstar FS(BMG Labtech社)を使用して、HTRFシグナルを計測した。結果は、二波長シグナル比を用いて解析した:[強度(665 nm)/強度(620 nm)]*104。
【0205】
阻害のパーセンテージは以下の方程式を使用して計算した:%阻害 = [(化合物のシグナル) - (最低のシグナル)] / [(最大のシグナル) - (最低のシグナル)] * 100、(式中、「最大のシグナル」は化合物ビヒクル(vehicle)単独(DMSO)でのシグナル比であり、「最低のシグナル」はペプチドなしのシグナル比である)。IC50の測定に関して、値は以下の公式を使用してPrism(GraphPad software社)を用いて、正規化及びフィットした:Y = 100 / (1 + ((X / IC50)^ヒルのスロープ(Hill slope)))。
【0206】
【0207】
実施例2:ブロモドメイン「BET」選択性プロファイル(HTRFアッセイ)
ブロモドメイン阻害剤の選択性プロファイルは、HTRFスクリーニングの節に記載されているように実施した。ヒストンペプチドの濃度を最適化し、ノイズに対する十分なシグナルの比、弱い阻害剤の検出についての十分な感度、及びブロモドメイン毎の比較できるデータを確保した。HTRF検出試薬(EPIgeneous(商標) Binding Domain kits)はCisbio Bioassays社から購入し、供給業者のプロトコールに従って使用した。GSTを付加されたブロモドメインタンパク質はBPS Bioscience社から購入し、ヒストンペプチドはGenic Bio Synthetic社から購入した。
【0208】
【0209】
【0210】
実施例3:サーマルシフトアッセイ(TSA)を使用したブロモドメイン選択性プロファイル
TSA「Bromoscan」アッセイ(Reaction Biology社)を、384 well RT-PCR plate(BioRad社)において、15 μLの総ワーキングボリュームを用いて、実施した。61個のGST-又はHis-が付加されたブロモドメイン、SYPRO(登録商標)Orange、及びコントロールとしての混合化合物を含む「BromoMelT(商標)」はReaction Biology社から購入した。各ポイントにおいて、3 μLのタンパク質(1×)及び12 μLのマスターミックス(バッファー + SYPRO(登録商標)Orange + 25 μLの化合物又はコントロール混合化合物又はDMSO(0.5%))をプレート内で混合した。プレートをCFX384 RTQPC(BioRad社)内に設置し、25℃で10秒加熱し、次いで、30秒毎に0.5℃の増加で温度を25℃から90℃に上げた。蛍光はFRETフィルターを使用して記録した。
【0211】
化合物27cは汎BET選択性であり、30cはBRD4(1)及びBRD3(1)選択性であり、31aは汎BET選択性ではない。
【0212】
実施例4:等温滴定カロリメトリーアッセイ
ITCを使用して、BRD4(BD1)と選択した化合物間の結合の熱力学パラメーターを評価した。滴定は、MicroCal ITC200 微小熱量計(GE Healthcare社、Piscataway、NJ)上で行った。各実験は、分析物濃度(セル内の化合物は通常10と40 μMの間)の10から15倍に設定された滴定液濃度(シリンジ内のタンパク質は100と400 μMの間)を使用して、及び25℃での13のインジェクションを使用して設計した。滴定前にシリンジ内に閉じ込められた気泡を除去するために、最初の少量のインジェクション(通常0.2 μL)は滴定プロトコール内に含まれる。生データは、基点を設定後に、滴定飽和熱量にあわせて調整した。統合した生ITCデータは、Origin 7(Origin Lab)で実施されているようにMicroCal Originプラグインを使用して、片側非線形最小二乗フィットモデルに適応させた。最後に、ΔG及びTΔS値を、方程式 ΔG = -R.T.lnKA及びΔG = ΔH - TΔSを使用して、フィットさせたΔH及びKA値から計算した。
【0213】
【0214】
実施例5:細胞をベースとしたアッセイ
細胞及び細胞培養
ヒト白血病細胞株Jurkat(ATCC(登録商標)TIB-152)及びMolm14をそれぞれ、10% FBSを補ったRPMI-1640又はMEMαで、37℃及び5% CO2下で、維持した。
【0215】
細胞傷害性実験
抗増殖性アッセイにおいて、製造者(Promega Corporation社)によって説明されたようにCell Titer-Glo Luminescent Cell Viability Assayを使用して、記載したがん細胞株に対する成長阻害活性に関して、化合物を分析した。簡潔には、10.000個の細胞を、96ウェルプレート(透明な底で白い(3610、Corning Costar社))上に各ウェル90 μLの培地でアッセイ直前に蒔いた。10μLの化合物を異なる濃度(50 μMから6 nMの範囲)で各ウェルに添加し、細胞培養を72時間37℃でインキュベーションした。ビヒクル(DMSO)はネガティブコントロールとして使用し、JQ1(汎BET阻害剤)はポジティブコントロールとして使用し、全ての化合物を一定のパーセンテージのDMSO(1%)の中で試験した。50 μLのCell Titer-GLOの添加後、2分振盪し及び室温で10分インキュベーションし、CentroルミノメーターLB960(Berthold社)を使用して発光を測定した。用量反応曲線を作成し、非線形回帰分析(Graph Pad Prism社)を使用して50%有効量(EC50)を計算した。
【0216】
【0217】
実施例6:Brds(BD1)選択的阻害
分子43cを、より詳細な評価のために、選択した。43cは、HTRFによって決定されたIC
50値が74 nMであり、Brd4(BD1)に最も高い親和性を実証した。この活性は、orthogonal assayとしての等温滴定カロリメトリー(ITC)によって更に立証され、90 nMのKDを示した(
図1)。HTRF評価によると、43cは第二ブロモドメインに対して第一ブロモドメインに7から31倍の選択的な結合を示した(
図2)。その選択性プロファイルはBROMOscanアッセイによって確認し、Brd4(BD1)に対する32 nMのK
D値だけでなく、予期しなかった第一のブロモドメインに対する313倍までの選択性比が明らかになった。43cの選択性をまた、熱融解安定性アッセイ(BromoMELT)を使用して、61個のブロモドメインに対して研究した(
図3)。43cは、Brd4(BD1)(ΔTm = +5.25℃)及びBrd3(BD1) (ΔTm = +4.5℃)に対して明らかな選択性をもって、BETタンパク質のみ安定化させることを見出した。
【0218】
Brd4(BD1)との複合体における化合物43cの結晶構造を解明し、以前に観察した30c及び31aの構造と比較した。予想した通り、43cのキサンチンコアは、全ての他の複合体において見られるN140及びY97との古典的水素結合を形成する。スルホンアミド基は、W81との水分子介在した水素結合だけでなく、アミノ酸残基のWPF shelf(W81、P82、及びF83)とのファンデルワールス相互作用も形成する。フェニルオキシオキサン(phenyloxyoxane)によって提供されたファンデルワールス相互作用と、分子30c及び31aの対応する部分によって提供されたファンデルワールス相互作用との比較により、類似した、F79、D145、L148、及びM149とのコンタクトが示された。構造の重ね合わせは、キサンチン-メチルベンジルスルホンアミド部分におけてだけでなく、ベンゼン-置換された断片においても、化合物の完全なる合致を明らかにした(
図4)。
【0219】
疎水結合及び水素結合コンタクトを含むタンパク質/リガンド相互作用の比較解析を、選択的阻害剤30c、31a、及び43cに関して行った(表7)。
【0220】
【0221】
3つの分子の全ては、両側のWPF溝上のフェニルアラニンF79、アスパラギン酸D145、及びメチオニンM149の側鎖との有意なファンデルワールス相互作用を示した。30c及び31aはまた、BCループのロイシンL148と相互作用する。興味深いことに、4つの残基中の3つ、F79、D145、及びL148は、第一のブロモドメインに特有であり、第二のブロモドメインでは対応するチロシン、グルタミン酸、及びアラニンに置き換えられている。おそらく、ベンゼンスルホンアミド部分の、これらのBD1の保存された残基とのファンデルワールス相互作用が、BET-BD1ドメインの選択的阻害を可能にしている。この発見はBETブロモドメインの選択性に関する潜在的なメカニズムを示唆している。
【0222】
細胞アッセイにおける43cの効果の追加の評価のために、c-Myc発現に対する分子の影響をc-Myc HTRFによって決定した。c-Mycはがんにおいて頻繁に過剰発現しているがん促進遺伝子である。これは細胞増殖に関わる多くの遺伝子の発現を増加をもたらし、がんの進展に寄与している。c-Mycの下方制御は抗がん治療に関する有望な手法として考えられている。JQ1又はI-BET151のような、現在までに知られている有力な汎BET阻害剤のほとんどが、c-Mycの強い下方制御を示す一方で、BD2選択的阻害剤RVX-208はこのがん促進遺伝子の発現に対して有意な効果がない。BD1選択的阻害剤43cはJurkat細胞株及びCEM細胞株において、それぞれ2.4 μM及び2.6 μMでc-Mycを下方制御することが見出され、それらは43cの細胞効率を確認しただけでなく、c-Myc発現における第一のブロモドメインの重要な役割も実証した。
【0223】
従って、分子43cは、現在のところ、最も有力で選択的なBD1ドメインの阻害剤であり、より複雑な生物学的なシステムにおける調査のための道具としての更なる評価に対する、(細胞活性を含む)必要で十分な基準を有する。