(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】通気部材
(51)【国際特許分類】
E04F 19/04 20060101AFI20230331BHJP
E04D 13/15 20060101ALI20230331BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
E04F19/04 A
E04D13/15 Z
E04B1/70 D
(21)【出願番号】P 2021006375
(22)【出願日】2021-01-19
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000174884
【氏名又は名称】三井ホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 芳真
(72)【発明者】
【氏名】笠場 広之
(72)【発明者】
【氏名】松本 英樹
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-133274(JP,A)
【文献】特開2014-009587(JP,A)
【文献】特開2011-202477(JP,A)
【文献】実開昭63-167522(JP,U)
【文献】実開昭57-040546(JP,U)
【文献】英国特許出願公開第02497179(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/04
E04D 13/15
E04D 3/40
E04B 9/02
E04B 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びる第1鉛直部と、前記第1鉛直部から水平方向に延び、被接合部が形成された第1水平部と、を有する内部材と、
前記被接合部に接合可能な接合部が形成された第2水平部と、前記第2水平部から鉛直方向に延び、外通気口を有する第2鉛直部と、前記第2鉛直部から水平方向に延びる第3水平部と、通気防水フィルタを有する外部材と、を備え
、
前記第3水平部は、前記第1鉛直部に向かって延び、前記第3水平部と前記第1鉛直部との間に生じる間隙を塞ぐように弾性変形可能な舌片を有する通気部材。
【請求項2】
鉛直方向に延びる第1鉛直部と、前記第1鉛直部から水平方向に延び、被接合部が形成された第1水平部と、を有する内部材と、
前記被接合部に接合可能な接合部が形成された第2水平部と、前記第2水平部から鉛直方向に延び、外通気口を有する第2鉛直部と、前記第2鉛直部から水平方向に延びる第3水平部と、通気防水フィルタを有する外部材と、を備え
、
前記第1鉛直部は、前記通気防水フィルタに対向して配置された内通気口を有する通気部材。
【請求項3】
鉛直方向に延びる第1鉛直部と、前記第1鉛直部から水平方向に延び、被接合部が形成された第1水平部と、を有する内部材と、
前記被接合部に接合可能な接合部が形成された第2水平部と、前記第2水平部から鉛直方向に延び、外通気口を有する第2鉛直部と、前記第2鉛直部から水平方向に延びる第3水平部と、通気防水フィルタを有する外部材と、を備え
、
前記第1鉛直部は、外方に突出する位置決めストッパを有する通気部材。
【請求項4】
鉛直方向に延びる第1鉛直部と、前記第1鉛直部から水平方向に延び、被接合部が形成された第1水平部と、を有する内部材と、
前記被接合部に接合可能な接合部が形成された第2水平部と、前記第2水平部から鉛直方向に延び、外通気口を有する第2鉛直部と、前記第2鉛直部から水平方向に延びる第3水平部と、通気防水フィルタを有する外部材と
、
係止突起を有するエンドキャップと、を備え、
前記被接合部と前記接合部との間に、前記係止突起を係止可能な係止穴が形成される通気部材。
【請求項5】
前記被接合部及び前記接合部は、一方が他方の上面及び下面を覆う状態で接合可能なスナップフィット構造である
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の通気部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外壁下地材及びその外壁下地材の外面に取り付けられた胴縁を介して取り付けられた外壁材とその上方に設置される笠木との間の部分に設置する笠木下換気構造体があった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の笠木下換気構造体は、外壁下地材と胴縁の間に差し込むことで外壁に取り付けられるものであった。したがって、従来の笠木下換気構造体は、取り付ける対象となる壁体の構造及び壁体への取り付け方法に制約されるものであった。
【0005】
本発明は、壁体の構造及び壁体の施工方法に制約されずに、壁体に対して簡単に取り付けることができる通気部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
(1)本発明に係る一態様の通気部材は、鉛直方向に延びる第1鉛直部と、前記第1鉛直部から水平方向に延び、被接合部が形成された第1水平部と、を有する内部材と、前記被接合部に接合可能な接合部が形成された第2水平部と、前記第2水平部から鉛直方向に延び、外通気口を有する第2鉛直部と、前記第2鉛直部から水平方向に延びる第3水平部と、通気防水フィルタを有する外部材と、を備え、前記第3水平部は、前記第1鉛直部に向かって延び、前記第3水平部と前記第1鉛直部との間に生じる間隙を塞ぐように弾性変形可能な舌片を有する。
(2)本発明に係る一態様の通気部材は、鉛直方向に延びる第1鉛直部と、前記第1鉛直部から水平方向に延び、被接合部が形成された第1水平部と、を有する内部材と、前記被接合部に接合可能な接合部が形成された第2水平部と、前記第2水平部から鉛直方向に延び、外通気口を有する第2鉛直部と、前記第2鉛直部から水平方向に延びる第3水平部と、通気防水フィルタを有する外部材と、を備え、前記第1鉛直部は、前記通気防水フィルタに対向して配置された内通気口を有する。
(3)本発明に係る一態様の通気部材は、鉛直方向に延びる第1鉛直部と、前記第1鉛直部から水平方向に延び、被接合部が形成された第1水平部と、を有する内部材と、前記被接合部に接合可能な接合部が形成された第2水平部と、前記第2水平部から鉛直方向に延び、外通気口を有する第2鉛直部と、前記第2鉛直部から水平方向に延びる第3水平部と、通気防水フィルタを有する外部材と、を備え、前記第1鉛直部は、外方に突出する位置決めストッパを有する。
(4)本発明に係る一態様の通気部材は、鉛直方向に延びる第1鉛直部と、前記第1鉛直部から水平方向に延び、被接合部が形成された第1水平部と、を有する内部材と、前記被接合部に接合可能な接合部が形成された第2水平部と、前記第2水平部から鉛直方向に延び、外通気口を有する第2鉛直部と、前記第2鉛直部から水平方向に延びる第3水平部と、通気防水フィルタを有する外部材と、係止突起を有するエンドキャップと、を備え、前記被接合部と前記接合部との間に、前記係止突起を係止可能な係止穴が形成されている。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記被接合部及び前記接合部は、一方が他方の上面及び下面を覆う状態で接合可能なスナップフィット構造であってよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、壁体の構造及び壁体の施工方法に制約されずに、壁体に対して簡単に取り付けることができる通気部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る通気部材が取り付けられた壁体の上部の断面図である。
【
図2】通気部材を外側の上方から見た斜視図である。
【
図3】通気部材を内側の上方から見た斜視図である。
【
図6】第1の取付方法の説明図であり、
図5のA矢視における通気部材の分解断面図を示している。
【
図7】第2の取付方法の説明図であり、
図5のA矢視における通気部材の分解断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る通気部材100を説明する。
図1は、実施形態に係る通気部材100が取り付けられた壁体1の上部の断面図である。
図2は、通気部材100を正面の上方から見た斜視図である。
図3は、通気部材100を背面の上方から見た斜視図である。
図4は、通気部材の正面図である。
図5は、通気部材の背面図である。
図6は、第1の取付方法の説明図であり、
図5のA矢視における通気部材の分解断面図を示している。
図7は、第2の取付方法の説明図であり、
図5のA矢視における通気部材の分解断面図を示している。なお、以下、特に説明のない限り、壁体の外部から内部に向かって見た場合を正面とし、壁体の内部から外部に向かって見た場合を背面とする。また、壁体の外部から内部への向きを内方といい、壁体の内部から外部への向きを外方という場合がある。
【0010】
[実施形態]
(壁体)
実施形態に係る通気部材100が取り付けられる壁体1は、
図1に示すように、長手方向(
図1において、紙面に対して垂直な方向)に対して垂直で、長手方向に沿って略一様な断面を有している。壁体1は、例えば、建築物のバルコニーに設けられた手摺壁、窓の下方に設けられる腰壁等に適用できる。
【0011】
壁体1は、壁体1の上部に配置されて壁体1の長手方向に沿って延びる枠2と、枠2の外方を覆って枠2を挟むようにして枠2の外方に設けられる板状の下地部材3と、枠2及び下地部材3の上方に設けられて壁体1の長手方向に沿って延びる笠木受部材4と、笠木受部材4に取り付けられて壁体1の長手方向に沿って延びる笠木5と、を備えている。
【0012】
壁体1は、壁体1の最も外方に配置される外装材6と、外装材6と下地部材3との間に形成される空間を維持して通気を確保するスペーサ7と、を備えている。
【0013】
壁体1は、下地部材3の外方における上部に、通気部材100を備えている。壁体1は、下地部材3の外方における上部であって、好ましくは、笠木受部材4の下方に、通気部材100を備えている。壁体1は、下地部材3の外方に、通気部材100を備えている。
図1において、壁体1は、下地部材3の外方に、長手方向に延びる二つの通気部材100が取り付けられている例を示している。以下、代表して一方の通気部材100を説明する。
【0014】
枠2は、主に、壁体1の剛性及び強度を担う構造部材である。枠2は、壁体1の上部において長手方向に延びる上枠と、壁体1の下部において長手方向に延びる下枠(不図示)と、上枠と下枠とを繋ぐ縦枠(不図示)と、を備えている。枠2は、例えば、木材、ステンレス鋼等で構成されている。
【0015】
下地部材3は、外装材6が取り付けられるベースとなる部材である。下地部材3は、壁体1の長手方向に延び、枠2の外方を覆う板状体である。下地部材3は、例えば、木製の単板を積層して形成された合板である。下地部材3は、枠2に対して、釘、接着等の適宜の手段によって固定されている。
【0016】
笠木受部材4は、枠2及び下地部材3の上方に設けられて壁体1の長手方向に沿って延びている。笠木受部材4は、枠2(上枠)の上方に取り付けられる基部と、基部の上方において笠木5を取り付けるための笠木取付部と、を有している。
【0017】
笠木5は、外装材6及び笠木受部材4を、平面視において完全に覆う部材である。笠木5は、壁体1の長手方向に沿って延びている。笠木5は、天板部と、天板部の両外端から下方に延びる垂下部と、を有している。笠木5は、例えば、ステンレス鋼で構成されている。
【0018】
外装材6は、スペーサ7を介して下地部材3の外方に設置される部材である。外装材6は、壁体1において最も外方に配置される板状体である。外装材6は、例えば、主にセメントと木質等の繊維質とを混合して製造されるサイディング、又は、主にセメントと砂とを混合して製造されるモルタル等である。なお、サイディング、モルタル等は、現場で施工されて硬化させるものであってよく、工場で予め硬化させてパネル状に成形されたプレファブ製品であってもよい。
【0019】
スペーサ7は、外装材6と下地部材3との間に通気空間Vを形成して、その通気空間Vを維持して空気の通気を確保するものである。
スペーサ7は、
図1に示すように、例えば、シート状の板状体であり、下地部材3の外方を覆うように下地部材3の表面との間に通気空間Vを確保するように配置される。下地部材3の表面との間に通気空間Vを確保するため、スペーサ7は、例えば、シート状の基体71と、基体71の内方の面から下地部材3に向かって、通気空間Vの水平寸法に相当する長さで延びる突起72を有している。スペーサ7は、例えば、
図1に示すように、シート状の基体71から内方に向かって突出する、下地部材3と外装材6との間に通気空間Vを形成するための複数の突起72を有するフェルト等の不織布のシートであってよい。スペーサ7が突起72を有するシートである場合、下地部材3の外方において、隣接する突起72同士の間に、壁体1の下部から上部まで鉛直方向に通じる通気空間Vが形成される。
スペーサ7は、
図1に示すようなシートに代えて、例えば、壁体1の長手方向に間隔を空けて複数配置され、鉛直方向に沿って延びる棒状の胴縁(不図示)であってよい。スペーサ7が胴縁である場合、下地部材3の外方において、隣接する胴縁同士の間に、壁体1の下部から上部まで鉛直方向に通じる通気空間Vが形成される。なお、スペーサ7が胴縁である場合、胴縁は、上枠と下枠との間に架け渡された状態で枠2に固定されてよく、下地部材3に固定されてよい。
このように、スペーサ7を配置することによって、外装材6と下地部材3との間に通気空間Vが形成されるので、外装材6の内方における下部から上部に向かって空気を流すことがき、壁体1の内部(外装材6の内方)における結露を抑制できる。
【0020】
(通気部材)
通気部材100は、鉛直方向に延びる第1鉛直部11と、第1鉛直部11から水平方向に延び、被接合部12fが形成された第1水平部12と、を有する内部材10を備えている。また、通気部材100は、被接合部12fに接合可能な接合部23fが形成された第2水平部23と、第2水平部23から鉛直方向に延び、外通気口24hを有する第2鉛直部24と、第2鉛直部24から水平方向に延びる第3水平部25と、通気防水フィルタ26と、を有する外部材20を備えている。このように、通気部材100は、被接合部12fを有する内部材10と、接合部23fを有する外部材20と、を備えている。通気部材100は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂製であってよい。
したがって、
図1に示すように、下地部材3に内部材10を設けた後、任意のタイミングで、その内部材10に対して外部材20を取り付けて、通気部材100を組み立てることができる。例えば、下地部材3の上部における外方に内部材10を設けた後、スペーサ7として突起72が形成されたフェルト製のシートを下地部材3の外方から内部材10における第1鉛直部11の外方まで跨ぐように張り付け、その後、モルタルを現場施工して外装材6を成形できる。そして、
図6に示すように、任意のタイミングで外部材20を内部材10に対して組み立てることができる。
また、例えば、下地部材3の外方にスペーサ7として胴縁が形成された場合、胴縁の上部における外方に内部材10を設けた後、任意のタイミングで、プレファブの外装材6を胴縁の外方から内部材10における第1鉛直部11の外方まで跨ぐように設けることができる。なお、胴縁の上部における内方と下地部材3の外方との間に内部材10の第1鉛直部11を挿入して設けた後、任意のタイミングで、プレファブの外装材6を胴縁の外方に設けてもよい。そして、任意のタイミングで外部材20を内部材10に対して組み立てることができる。
なお、内部材10と外部材20とを組み立てた状態の通気部材100を、下地部材3の外方又はスペーサ7の外方に取り付けてもよい。すなわち、内部材10と外部材20とを組み立てた状態の通気部材100を、下地部材3の外方に直接取り付けてよく、下地部材3の外方に設けられた胴縁の外方に直接取り付けてもよい。
このように、壁体1のスペーサ7が、シートであるか胴縁であるかに依存することなく、また、外装材6の施工のタイミングに依存することなく、任意のタイミングで通気部材100を壁体1に取り付けることができる。よって、壁体1の構造及び壁体1の施工方法に制約されずに、壁体1に対して簡単に取り付けることができる通気部材100を提供できる。
【0021】
第1鉛直部11は、壁体1の長手方向に沿って延びる板状体である。第1鉛直部11は、壁体1の下地部材3の表面に沿って配置される。第1鉛直部11は、例えば、
図1に示すように、下地部材3又はスペーサ7の外表面に配置された状態で、第1鉛直部11を貫通する釘、ビス、接着剤等の固定手段(不図示)によって下地部材3又はスペーサ7に対して固定されてよい。また、第1鉛直部11は、例えば、下地部材3とスペーサ7との間に挟まれることで、下地部材3とスペーサ7とから受ける圧力によって支持されてもよい。
第1鉛直部11の下端部は、下方に行くに連れて先細りに形成されたテーパ部11tを有していてよい。また、テーパ部11tは、下方に行くに連れて内方に寄るように先細りに形成されていることが好ましい。これにより、下地部材3とスペーサ7との間に、通気部材100の内部材10を挿入しやすくできる。また、下地部材3とスペーサ7との間に、通気部材100の内部材10が配置された状態でも、下地部材3の外表面から第1鉛直部11の外表面までの遷移部Tにおける通気空間Vを確保できる。
【0022】
第1鉛直部11は、通気防水フィルタ26に対向して配置された内通気口11hを有している。内通気口11hは、上下方向に延びるスリットであってよい。内通気口11hは、上下方向に延びるスリットを、通気部材100の長手方向に複数並べて配置してよい。これにより、例えば、胴縁の外表面に第1鉛直部11における内表面が接するように内部材10を直接固定した場合であっても、壁体1の内部の空気を、隣り合う胴縁同士の間に形成される通気空間Vから内通気口11hを抜けて、通気防水フィルタ26及び外通気口24hに通気させることができる。
【0023】
第1鉛直部11は、外方に突出する位置決めストッパ11sを有してよい。ストッパ11sは、内通気口11hに係止されてよい。ストッパ11sは、例えば、
図4及び
図5に示すように、互いに長手方向に離れた少なくとも二つの内通気口11hに架け渡された状態で内通気口11hに係止されてよい。ストッパ11sは、例えば、長手方向に沿って数十センチメートル間隔で、複数設けられている。これにより、例えば、内部材10と外部材20とを組み立てた通気部材100が壁体1に取り付けられた状態で、間隙Gにスペーサ7を挿入しても、スペーサ7の上端の位置を、所定のレベルより上方に行かないように、ストッパ11sにより規制できる。よって、スペーサ7により内通気口11hが塞がれないようにでき、内通気口11hからの通気を確保できる。
【0024】
第1水平部12は、外端部に、被接合部12fを形成している。被接合部12fは、例えば、
図1に示すように、第1水平部12の端部に向けて上部及び下部に二股に分かれている。そして、被接合部12fの上部の下面と下部の上面には、それぞれ、鋸刃状の刻み目が形成されている。この刻み目に、後述する外部材20の接合部23fが係合する。
【0025】
第2水平部23は、第1水平部12と略同じレベル(鉛直方向における位置)に配置される。第2水平部23は、内方における端部に、被接合部12fに接合可能な接合部23fを形成している。接合部23fの上面及び下面には、鋸刃状の刻み目が形成されている。そして、接合部23fを内部材10の被接合部12fに係合することで、内部材10と外部材20とを組み立てることができる。
【0026】
第2鉛直部24は、通気部材100の外端に位置する。第2鉛直部24の内方には、通気防水フィルタ26が配置される。第2鉛直部24には、外通気口24hが設けられている。
【0027】
外通気口24hは、壁体1の内部を通過する空気(通気)の出口となる穴である。外通気口24hは、上下方向に延びるスリットであってよい。外通気口24hは、上下方向に延びるスリットを、通気部材100の長手方向に複数並べて配置してよい。外通気口24hの内方は、通気防水フィルタ26によって塞がれている。これにより、壁体1の内部の空気は、通気空間Vを下方から上方に向かって通り、通気防水フィルタ26を内方から外方に向かって抜け、外通気口24hを内方から外方に向かって抜けることができる。
【0028】
第3水平部25は、通気防水フィルタ26を下から支持する。
【0029】
第3水平部25は、第1鉛直部11に向かって延び、第3水平部25と第1鉛直部11との間に生じる間隙Gを塞ぐように弾性変形可能な舌片27を有してよい。舌片27は、風圧を受けた際に雨水が大量に通気部材100の内部に侵入することを防ぐ程度に弾性的に第1鉛直部11又はスペーサ7に外方から内方に向けて付勢して、間隙Gを覆うものであればよい。舌片27は、例えば、軟質塩化ビニル、熱可塑性エラストマー等の軟質プラスチック製であってよい。このように、第3水平部25は、舌片27を有しているので、間隙Gから通気部材100の内部への雨水、虫等の侵入を防ぐことができる。また、
図1に示すように、間隙Gにスペーサ7の上部が挿入されていたとしても、第3水平部25の内方における端部とスペーサ7の外表面との間を塞ぐことができる。これにより、通気部材100の内部への雨水、虫等の侵入を防ぐことができる。また、通気部材100の内部への現場施工時のモルタル等の流動性のある外装材6の素材の侵入を防ぐことができる。よって、
図1において白抜き矢印で示されるような、壁体1における通気の経路を確保できる。
舌片27は、
図1に示すように、下方に向けて凸の弧を描くような断面を有していてよい。これにより、内部材10と外部材20とが組み立てられた後で、通気部材100の間隙Gからスペーサ7を下方から挿入したとしても、スペーサ7の外表面と第3水平部25との間を塞ぐことができる。
【0030】
通気防水フィルタ26は、空気を通気して、水を通さないものである。通気防水フィルタ26は、例えば、連続気泡を有するポリウレタン等の樹脂製の発泡体である。通気防水フィルタ26は、外部材20に固定されている。通気防水フィルタ26は、第3水平部25に接着されていてよい。通気部材100は、通気防水フィルタ26を備えているので、壁体1の内部の空気を、壁体1の外部に放出できるとともに、壁体1の外部からの水、虫等の壁体1の内部への侵入を防ぐことができる。
【0031】
被接合部12f及び接合部23fは、一方が他方の上面及び下面を覆う状態で接合可能なスナップフィット構造であってよい。これにより、通気部材100の上面から通気部材100の内部への雨水等の侵入経路を長く狭くできるので、通気部材100の上部の水密性を確保できるとともに、内部材10に対する外部材20の組み立てを容易にできる。具体的には、例えば、
図1に示すように、被接合部12fは、第1水平部12の端部に向けて上部及び下部に二股に分かれた部分である。そして、被接合部12fの上部の下面と下部の上面には、それぞれ、鋸刃状の刻み目が形成されている。また、接合部23fの上面及び下面には、鋸刃状の刻み目が形成されている。そして、接合部23fを被接合部12fの上部と下部との間に挿入すると、接合部23fが被接合部12fの上部及び下部を上下に離すように押し分ける。接合部23fが内部材10側に向けて進むと、被接合部12fは弾性で元に戻り、被接合部12fの刻み目と、接合部23fの刻み目とが係合する。このように、外部材20を、内部材10に向けて押すだけで、簡単に、内部材10と外部材20とを組み立てることができる。なお、スナップフィット構造は、
図1に示すような具体的な構造に限られない。
【0032】
被接合部12fと接合部23fとの間に、エンドキャップ30(
図2及び
図3参照)の係止突起31を係止可能な係止穴Hが形成されてよい。このように、被接合部12fと接合部23fとの間に形成される空間を係止穴Hとして利用するので、係止穴Hを形成するための追加的な加工を省くことができる。
【0033】
図2及び
図3に示すように、通気部材100は、係止突起31を有するエンドキャップ30を備えていてもよい。エンドキャップ30は、通気部材100の両端面を覆って塞ぐことで、端面からの雨水、虫等の侵入から壁体1を保護する。なお、
図2及び
図3において、通気部材100の長手方向における一方に設けられるエンドキャップ30の図示は省略されている。また、
図2及び
図3において、通気部材100の長手方向における他方に設けられるエンドキャップ30は、説明の便宜のため、通気部材100の長手方向の端面から離れて図示されている。エンドキャップ30は、通気部材の長手方向における両端部に設けられる。
【0034】
エンドキャップ30は、通気部材100の長手方向における両端面を覆うように設けられている。エンドキャップ30は、内部材10の被接合部12fと外部材20の接合部23fとの間に形成された係止穴Hに係止可能な係止突起31を備えている。
このように、エンドキャップ30は、内部材10の被接合部12fと外部材20の接合部23fとの間に形成された係止穴Hに係止可能な係止突起31を備えているので、内部材10と外部材20との接合構造を利用して、通気部材100に対して簡単に取り付けることができる。
【0035】
係止突起31は、エンドキャップ30の内外方向における中心30Pに設けられてよい。そして、係止穴Hは、
図1から
図3までに示すように、エンドキャップ30の外端30eからエンドキャップ30における内外方向の中心30Pまでの距離に相当する距離Dで、外部材20の外端20eから離れた位置に設けられてよい。これにより、エンドキャップ30を内外方向で対称形状にできるので、通気部材100の一方のエンドキャップ30と他方のエンドキャップ30とを、同じ構造の共通部品にできる。また、エンドキャップ30を通気部材100の両端面のいずれに設けても、通気部材100の端面を覆うことができる。
【0036】
[通気部材の第1の取付方法]
以上説明した通気部材100を壁体1に取り付ける第1の取付方法を、壁体1の施工方法に沿って、
図6を用いて説明する。
図6は、第1の取付方法の説明図であり、
図5のA矢視における通気部材100の分解断面図を示している。
(A1)まず、枠2に対して、下地部材3と、笠木受部材4を取り付ける。
(A2)次に、
図6の右方に示すように、下地部材3の上部に、下地部材3の外表面と内部材10の第1鉛直部11の内表面とが接するようにした状態で、内部材10を取り付ける。この際、例えば、内部材10の第1鉛直部11を外方から内方へ貫通する不図示の釘等により、第1鉛直部11を下地部材3に固定する。
(A3)次に、下地部材3の外表面から第1鉛直部11の外表面まで覆うように、スペーサ7を張る。この際、スペーサ7として、内表面に突起72を有するフェルト製のシートを用いてよい。
(A4)次に、外部材20の接合部23fを内部材10の被接合部12fに接合する。具体的には、接合部23fを被接合部12fに向けて押し込む。すると、外部材20は、
図6の右方に示されるように、内部材10に組み付けられる。この際、舌片27は、
図6の右方に示されるように、スペーサ7と第3水平部25との間を塞ぐように弾性変形し、スペーサ7を外方から内方に向けて付勢する。
(A5)そして、通気部材100の下方であって、スペーサ7の外方に、外装材6を施工する。なお、この際、外装材6が現場施工される流動性のあるモルタル等であっても、舌片27によってスペーサ7と第3水平部25との間を塞がれているので、外装材6が通気部材100の内部に侵入することを防ぐことができ、壁体1の内部の通気の経路を確保できる。また、笠木5を笠木受部材4に取り付ける。
このようにして、壁体1に通気部材100を簡単に取り付けることができる。また、
図6において白抜き矢印で示されるように、壁体1の内部の空気は、スペーサ7と下地部材3との間の通気空間Vを上昇し、内通気口11hを抜けて、通気防水フィルタ26を通過して、外通気口24hを抜けて、外気に出ることができる。よって、通気のよい壁体1を施工できる。
【0037】
[通気部材の第2の取付方法]
以上説明した第1の取付方法とは異なる、通気部材100を壁体1に取り付ける第2の取付方法を、壁体1の施工方法に沿って、
図7を用いて説明する。
図7は、第2の取付方法の説明図であり、
図5のA矢視における通気部材100の分解断面図を示している。
(B1)まず、枠2に対して、下地部材3と、笠木受部材4を取り付ける。
(B2)次に、下地部材3の外表面に、スペーサ7としての胴縁を取り付ける。胴縁は、壁体1の長手方向に間隔を空けて複数配置され、鉛直方向に沿って延びる棒状体である。
(B3)次に、胴縁(スペーサ7)の上部に、胴縁の外表面と内部材10の第1鉛直部11の内表面とが接するようにした状態で、内部材10を取り付ける。この際、例えば、内部材10の第1鉛直部11を外方から内方へ貫通する不図示の釘等により、第1鉛直部11を胴縁に固定する。なお、胴縁と下地部材3との間に第1鉛直部11を挟むことで内部材10を固定してもよい。
(B4)次に、外部材20の接合部23fを内部材10の被接合部12fに接合する。具体的には、接合部23fを被接合部12fに向けて押し込む。すると、外部材20は、
図7の右方に示されるように、内部材10に組み付けられる。この際、舌片27は、
図7の右方に示されるように、第1鉛直部11と第3水平部25との間を塞ぐように弾性変形し、第1鉛直部11を外方から内方に向けて付勢する。
(B5)そして、通気部材100の下方であって、胴縁及び第1鉛直部11の外方に、外装材6を施工する。なお、この際、外装材6は、あらかじめ工場で硬化させた状態のパネル状のサイディングであってよい。また、笠木5を笠木受部材4に取り付ける。
このようにして、壁体1に通気部材100を簡単に取り付けることができる。また、
図7において白抜き矢印で示されるように、壁体1の内部の空気は、外装材6と下地部材3との間の隣接する胴縁同士の間の通気空間Vを上昇し、内通気口11hを抜けて、通気防水フィルタ26を通過して、外通気口24hを抜けて、外気に出ることができる。よって、通気のよい壁体1を施工できる。
上述のように、本実施形態に係る通気部材100は、壁体1の構造及び壁体1の施工方法に制約されずに、壁体1に対して簡単に取り付けることができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る通気部材100は、鉛直方向に延びる第1鉛直部11と、第1鉛直部11から水平方向に延び、被接合部12fが形成された第1水平部12と、を有する内部材10と、被接合部12fに接合可能な接合部23fが形成された第2水平部23と、第2水平部23から鉛直方向に延び、外通気口24hを有する第2鉛直部24と、第2鉛直部24から水平方向に延びる第3水平部25と、通気防水フィルタ26を有する外部材と、を備えている。このような通気部材100は、スペーサ7が突起を有するシートであっても、胴縁であっても、壁体1に対して簡単に取り付けができ、壁体1の内部の通気を確保できる。よって、壁体1の構造及び壁体1の施工方法に制約されずに、壁体1に対して簡単に取り付けることができる通気部材100を提供できる。
【符号の説明】
【0039】
100 通気部材
1 壁体
2 枠
3 下地部材
4 笠木受部材
5 笠木
6 外装材
7 スペーサ
10 内部材
11 第1鉛直部
11h 内通気口
11s ストッパ
11t テーパ部
12 第1水平部
12f 被接合部
20 外部材
20e 外端
23 第2水平部
23f 接合部
24 第2鉛直部
24h 外通気口
25 第3水平部
26 通気防水フィルタ
27 舌片
30 エンドキャップ
30e 外端
30P 中心
31 係止突起
71 基体
72 突起
D 距離
G 間隙
H 係止穴
T 遷移部
V 通気空間