(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,2,3-テトラクロロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、または2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパンを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20230331BHJP
【FI】
C09K5/04 F
C09K5/04 E
C09K5/04 C
(21)【出願番号】P 2021116272
(22)【出願日】2021-07-14
(62)【分割の表示】P 2019042114の分割
【原出願日】2010-12-22
【審査請求日】2021-08-12
(32)【優先日】2009-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・ジョーセフ・ナッパ
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/137656(WO,A1)
【文献】特表2008-531836(JP,A)
【文献】国際公開第2009/137658(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/018561(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/003084(WO,A1)
【文献】特開2009-227675(JP,A)
【文献】特開2009-242799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/00
C09K3/20-5/20
F25B1/00-7/00
C07B31/00-63/04
C07C1/00-409/44
C08J9/00-9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HFO-1234yfと、
0超過300ppm以下のHFC-245cbと、
を含有し、
少なくともHFO-1225zc
、HFC-245cb
、HCFC-244bb及びHCFO-1233xfを含むHFO-1234yf以外の追加の化合物が、0.5重量パーセント未満で含まれ、
HFO-1234yfが99.5重量%以上で含まれる、組成物。
【請求項2】
HFC-245cbが10ppm~300ppmで含有される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
低地球温暖化係数を有する請求項1
又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱伝達組成物、エアロゾル噴射剤、発泡剤(foaming agent(
blowing agent))、溶剤、洗浄剤、キャリア流体、置換乾燥剤、バフ研磨
剤、重合媒体、ポリオレフィンおよびポリウレタン用発泡剤、ガス状誘電体、消火剤、お
よび液体またはガス状形態の火災抑制剤として有用であり得る組成物の分野に関する。特
に、本開示は、熱伝達組成物として有用であり得る組成物、例えば、2,3,3,3-テ
トラフルオロプロペン(HFO-1234yf、または1234yf)、またはHFO-
1234yfを製造するプロセスにおいて有用である1,1,1,2,3-ペンタフルオ
ロプロパン(HFC-245eb、または245eb)を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
新しい環境規制は、冷蔵、空調およびヒートポンプ装置で用いる新規な組成物に対する
必要性をもたらした。低地球温暖化係数の化合物は、特に重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本出願人らは、このような新規な低地球温暖化係数の化合物、例えば、HFO-123
4yfを調製する際に、ある種の追加の化合物が少量で存在することを見出した。
【0004】
したがって、本発明によれば、HFO-1234yfと、HCO-1250xf、HC
C-260da、HCC-240aa、HCO-1230xa、HCFO-1233xf
、HCFO-1233zd、HCFC-244bb、HCFC-244db、HFO-1
234ze、HFC-245cb、HFO-1243zf、HCFO-1223za、H
CFO-1224zb、HFO-1225zc、HCFC-241db、HCFC-24
2dc、HCFO-1232xf、HCFO-1231xf、およびHCFO-1233
yfからなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合物とを含む組成物が提供され
る。この組成物は、組成物の全重量に基づいて、約1重量パーセント未満の少なくとも1
種の追加の化合物を含有し得る。
【0005】
さらに、本発明によれば、HCO-1230xaと、プロピレン、HCO-1260z
f、HCC-260da、HCC-260db、HCO-1250xf、HCC-250
aa、およびHCC-240aaからなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合
物とを含む組成物が提供される。
【0006】
さらに、本発明によれば、HCFO-1233xfと、プロピレン、HCO-1260
zf、HCC-260da、HCC-260db、HCO-1250xf、HCC-25
0aa、HCC-240aa、HCO-1230xa、HFO-1243zf、HCFO
-1223za、HCFO-1224zb、HFO-1225zc、HCFO-1233
yf、HCFO-1232xf、HCFC-1231xf、HCFC-241db、およ
びHCFC-242dcからなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合物とを含
む組成物が提供される。
【0007】
さらに、本発明によれば、HCFC-244bbと、プロピレン、HCO-1250x
f、HCC-260da、HCC-260db、HCC-240aa、HCO-1230
xa、HCFO-1233xf、HFO-1243zf、HCFO-1223az、HC
FO-1224zb、HFO-1225zc、HCFC-241db、HCFC-242
dc、HCFO-1232xf、HCFO-1231xf、およびHCFC-1233y
fからなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合物とを含む組成物が提供される
。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の組成物の形成に有用な反応順序を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
組成物
HFO-1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)は、他の用途の中
でも、冷媒、熱伝達流体、エアロゾル噴射剤、フォーム発泡剤(foam expans
ion agent)としての用途について提案されてきた。それはまた、有利には、H
FO-1234yfが、Physical Chemistry Chemical P
hysics,2007,volume 9,pages 1-13において、V.C.
Papadimitriouらにより報告されたとおりの低地球温暖化係数(GWP)を
有することもわかった。したがって、HFO-1234yfは、より高いGWP飽和HF
C冷媒を置き換えるための良い候補である。
【0010】
1つの実施形態において、本開示は、HFO-1234yfと、HCO-1250xf
、HCC-260da、HCC-260db、HCC-240aa、HCO-1230x
a、HCFO-1233xf、HCFO-1233zd、HCFC-244bb、HCF
C-244db、HFO-1234ze、HFC-245cb、HFO-1243zf、
HCFO-1223za、HCFO-1224zb、HFO-1225zc、HCFC-
241db、HCFC-242dc、HCFO-1232xf、HCFO-1231xf
、およびHCFO-1233yfからなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合
物とを含む組成物を提供する。
【0011】
本発明の組成物は、HFO-1234yfと、1種の追加の化合物、または2種の追加
の化合物、または3種以上の追加の化合物とを含み得る。
【0012】
別の実施形態において、本発明の組成物は、HFO-1234yfとHCFO-123
2xfとを含む。
【0013】
別の実施形態において、本発明の組成物は、HFO-1234yfと、HCFC-24
3db、HCFO-1233xf、HCFO-1231xf、HCFC-242dcおよ
びHCFC-241dbから選択される少なくとも1種の化合物とを含む。
【0014】
別の実施形態において、本発明の組成物は、HCFC-243dbおよびHFC-24
5faからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む。
【0015】
1つの実施形態において、HFO-1234yfを含む本組成物における追加の化合物
の全量は、組成物の全量に基づいて、ゼロ重量パーセント超~1重量パーセント未満の範
囲である。別の実施形態において、追加の化合物の全量は、組成物の全量に基づいて、ゼ
ロ重量パーセント~0.5重量パーセント未満の範囲である。
【0016】
1つの実施形態において、HFO-1234yfおよび他の化合物を含む組成物は、特
定のトレーサ化合物、例えば、HFC-245cbをさらに含み得る。この実施形態にお
いて、HFC-245cbトレーサは、組成物中の百万部当たり約1部数(ppm)~約
1000ppmの濃度で存在し得る。別の実施形態において、HFC-245cbトレー
サは、約1ppm~約500ppmの濃度で存在し得る。代替として、HFC-245c
bトレーサは、約10ppm~約300ppmの濃度で存在し得る。
【0017】
HFO-1234yfを含む本明細書で開示される組成物は、低地球温暖化係数(GW
P)の熱伝達組成物、エアロゾル噴射剤、発泡剤(foaming agent)、発泡
剤(blowing agent)、溶剤、洗浄剤、キャリア流体、置換乾燥剤、バフ研
磨剤、重合媒体、ポリオレフィンおよびポリウレタン用発泡剤(expansion a
gent)、ガス状誘電体、消火剤、および液体またはガス状形態の火災抑制剤として有
用である。この開示される組成物は、熱源からヒートシンクへ熱を運ぶために用いられる
作業流体として作用し得る。このような熱伝達組成物は、流体が相変化を受ける;すなわ
ち、液体から気体へ、そして戻る、または逆もまた同様のサイクルで冷媒としても有用で
あり得る。
【0018】
熱伝達システムの例には、限定されるものではないが、空調機、冷凍庫、冷蔵庫、ヒー
トポンプ、水冷器、満液式蒸発器冷却器、直接膨張式冷却器、ウォークインクーラー、ヒ
ートポンプ、移動式冷蔵庫、移動式空調ユニットおよびこれらの組合せが含まれる。
【0019】
本明細書で使用される場合、移動式冷蔵装置、移動式空調または移動式加熱装置は、道
路、鉄道、海上または航空用の輸送ユニット中に組み込まれる任意の冷蔵、空調機、また
は加熱装置を指す。さらに、移動式冷蔵または空調ユニットは、いずれの移動性キャリア
かにかかわらず、かつ「複合(intermodal)」システムとして知られている装
置を含む。このような複合システムは、「コンテナ」(複合海上/陸上輸送)ならびに「
スワップボディ」(複合道路/鉄道輸送)を含む。
【0020】
本明細書で使用される場合、定置式熱伝達システムは、任意の多様な建造物内に付随し
たまたはそれに取り付けられたシステムである。これらの定置式設備は、定置式空調およ
びヒートポンプ(限定されるものではないが、冷却器、高温ヒートポンプ、住宅用、商業
用または工業用空調システムを含み、かつ窓用、ダクトレス、ダクト式、パッケージドタ
ーミナル 、チラー、および屋上システムなどの、屋外のではあるが建造物に接続された
ものを含む)。定置式冷蔵設備では、開示される組成物は、商業用、工業用または住宅用
冷蔵庫および冷凍庫、製氷機、独立式(self-contained)クーラーおよび
フリーザー、満液式蒸発冷却器、直接膨張式冷却器、ウォークインおよびリーチインクー
ラーおよびフリーザー、ならびに組合せシステムを含む、高温、中温、および/または低
温冷蔵装置で有用であり得る。一部の実施形態において、開示される組成物は、スーパー
マーケット用冷蔵庫および/または冷凍庫システムで使用され得る。
【0021】
開示される組成物を構成する化合物は表1に明示される。
【0022】
【0023】
HCFO-1233xf、HCFC-244bb、および表1に列挙されたとおりの多
くの他の化合物は、SynQuest Laboratories,Inc.(Alac
hua,FL,U.S.A)を含むスペシャルティー化学製造業者から入手できるか、ま
たは当技術分野で知られた方法で作製され得る。例えば、HCFO-1233xf、およ
びHCFC-244bbは、2008年5月8日に公開された国際出願第2008/05
4782号パンフレットに記載されたとおりに、HFO-1243zfの非接触塩素化に
よって調製され得る。また、HCFO-1233xfおよびHCFC-244bbは、2
008年5月8日に公開された国際出願第2008/054781号パンフレットに記載
されたとおりに、HCFC-243dbの接触フッ素化によって調製され得る。それぞれ
の開示される組成物中に存在する追加の化合物は、その製造方法に依存する。
【0024】
代替として、HCO-1230xaは、米国特許出願公開第2007/0197842
A1号明細書に記載されたとおりに1,2,3-トリクロロプロパンから製造され得る。
さらに、HCFO-1233xfを形成すべく、気相中触媒の存在下でのHCO-123
0xaとHFとの反応が米国特許出願公開第2007/0197842号明細書に開示さ
れている。代替として、HCFO-1233xfは、米国特許出願公開第2009/02
40090号明細書に記載されたとおりに、1,1,2,3-テトラクロロプロペン(H
CO-1230xa)のフッ素化、HCFC-244bbを形成するさらなるフッ素化、
次いでHFO-1234yfを形成する脱水素塩素化によっても製造され得る。
【0025】
表1に列挙された化合物のいくつか、特にHFO-1234ze、HCFO-1233
zd、およびHCFO-1224zbは、2種以上の異性体で存在し得る。例えば、HF
O-1234zeは、そのE-異性体またはZ-異性体として存在し得る。本明細書で使
用される場合、HFO-1234zeは、そのE-異性体、Z-異性体またはこれらの異
性体の任意の混合物のいずれかを指すことが意図される。本明細書で使用される場合、H
CFO-1233zdは、そのE-異性体、Z-異性体またはこれらの異性体の任意の混
合物のいずれかを指すことが意図される。本明細書で使用される場合、HFO-1224
zbは、そのE-異性体、Z-異性体またはこれらの異性体の任意の混合物のいずれかを
指すことが意図される。
【0026】
さらに、本発明によれば、HCO-1230xaと、プロピレン、HCO-1260z
f、HCC-260da、HCC-260db、HCO-1250xf、HCC-250
aa、およびHCC-240aaからなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合
物とを含む組成物が提供される。
【0027】
別の実施形態において、本発明の組成物は、HCO-1230xaとHCC-240a
aとを含む。さらに別の実施形態において、本発明の組成物は、HCO-1230xaと
、HCC-240aaと、HCC-250aaおよびHCC-260daからなる群から
選択される少なくとも1種の化合物とを含み得る。
【0028】
さらに、本発明によれば、HCFO-1233xfと、プロピレン、HCO-1260
zf、HCC-260da、HCC-260db、HCO-1250xf、HCC-25
0aa、HCC-240aa、HCO-1230xa、HFO-1243zf、HCFO
-1223za、HCFO-1224zb、HFO-1225zc、HCFO-1233
yf、HCFO-1232xf、HCFC-1231xf、HCFC-241db、およ
びHCFC-242dcからなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合物とを含
む組成物が提供される。
【0029】
別の実施形態において、本発明の組成物は、HCO-1230xaとHCFO-123
2xfとを含む。さらに別の実施形態において、本発明の組成物は、HCO-1230x
aと、HCFO-1232xfおよびHCFO-1231xfとを含む。
【0030】
さらに、本発明によれば、HCFC-244bbと、プロピレン、HCO-1250x
f、HCC-260da、HCC-260db、HCC-240aa、HCO-1230
xa、HCFO-1233xf、HFO-1243zf、HCFO-1223az、HC
FO-1224zb、HFO-1225zc、HCFC-241db、HCFC-242
dc、HCFO-1232xf、HCFO-1231xfおよびHCFC-1233yf
からなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合物とを含む組成物が提供される。
【0031】
別の実施形態において、HCFC-244bbを含む本発明の組成物は、HCFC-2
43dbおよびHFC-245faからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を
さらに含み得る。
【0032】
本発明の組成物を形成し得る一連の反応は、
図1に示される。工程の順序は、塩素、C
l
2との反応によるプロピレンの塩素化で開始して、塩化アリル、すなわちHCO-12
60zf(CH
2=CHCH
2Cl)を形成する。次の工程は、Cl
2の存在下でさらに
塩素化して、HCC-260db(CH
2ClCHClCH
2Cl)を生成する工程を含
む。HCC-260dbとNaOH水溶液(または他の苛性アルカリ溶液)との反応によ
り、HCO-1250xf(CH
2=CClCH
2Cl)が形成する。そして、HCO-
1250xfと塩素、Cl
2との反応により、HCC-250aa(CH
2ClCCl
2
CH
2Cl、すなわち1,2,2,3-テトラクロロプロパン)が生成する。Cl
2によ
るさらなる塩素化により、HCC-240da(CHCl
2CCl
2CH
2Cl)を生成
する。HCC-240daとNaOH水溶液(または他のアルカリ溶液)との反応により
、HCO-1230xa(CCl
2=CClCH
2Cl)を形成する。
【0033】
別の実施形態において、前に記載されたとおりの組成物のいずれも、反応物質またはそ
れぞれの組成物を生成する反応化学の副生成物としてのHFの存在のために、フッ化水素
(HF)をさらに含み得る。
【0034】
注目すべきは、HClを含まない組成物、HFを含まない組成物ならびにHClおよび
HFの両方を含まない組成物である。特に注目すべきは、酸を含まない組成物である。酸
は、蒸留および水または苛性アルカリ洗浄などの当技術分野で知られたプロセスで除去さ
れ得る。
【0035】
HCO-1230xaのフッ素化
HCO-1230xaは、触媒の存在下でフッ化水素(HF)との反応によりフッ素化
されて、HCFO-1233xfを生成し得る。この反応は、
図1に示される。
【0036】
フッ素化塩素化反応は、液相または気相中で行われ得る。本発明の液相の実施形態につ
いて、HCO-1230xaとHFとの反応は、バッチ方式、半バッチ方式、半連続方式
、または連続方式で運転する液相反応器中で行われ得る。バッチ方式では、HCO-12
30xaおよびHFは、オートクレーブまたは他の適当な反応容器中で混合され、所望の
温度に加熱される。
【0037】
1つの実施形態において、この反応は、HCO-1230xaを、HFが入っている液
相反応器に供給することによって半バッチ方式で行われる。別の実施形態において、HF
は、HCO-1230xaと、HFおよびHCO-1230xaの反応により形成された
反応生成物との混合物が入っている液相反応器に供給され得る。液相プロセスの別の実施
形態において、HFおよびHCO-1230xaは、HFと、HFおよびHCO-123
0xaの反応により形成された反応生成物との混合物が入っている反応器に、所望の化学
量論比で同時に供給され得る。
【0038】
液相反応器中のHFとHCO-1230xaとの反応の適切な温度は、1つの実施形態
において、約80℃~約180℃、別の実施形態において、約100℃~約150℃であ
る。温度が高いほど、典型的にはHCO-1230xaのより大きい転化率をもたらす。
【0039】
液相反応器に供給される、HF対全量のHCO-1230xaの適切なモル比は、1つ
の実施形態において、少なくとも化学量論的(約3:1、HF対HCO-1230xa)
であり、別の実施形態において、約5:1~約100:1である。注目すべきは、HF対
HFO-1243zfのモル比が約8:1~約50:1である実施形態である。
【0040】
液相プロセスにおける反応器圧力は、重要ではなく、バッチ反応では通常、反応温度に
おける系の自己圧力である。出発物質および中間反応生成物において、塩素による水素置
換基の置き換えにおよびフッ素による塩素置換基の置き換えによって、塩化水素が形成さ
れるにつれて、系の圧力は増加する。連続式プロセスでは、比較的低い沸点の反応生成物
が、場合によって充填カラムまたは凝縮器を通して、反応器から放出されるように反応器
の圧力を設定することが可能である。このように、比較的高い沸点の中間体は、反応器中
にそのまま残り、揮発性生成物は除去される。典型的な反応器圧力は、約20psig(
239kPa)~約1,000psig(6,994kPa)である。
【0041】
その反応が液相プロセスを用いて行われる一部の実施形態において、用いられ得る触媒
には、炭素、AlF3、BF3、FeCl3-aFa(ここで、a=0~3)、炭素上に
担持されたFeX3、SbCl3-aFa、AsF3、MCl5-bFb(ここで、b=
0~5、M=Sb、Nb、Ta、またはMo)、およびM’Cl4-cFc(ここで、c
=0~4、M’=Sn、Ti、Zr、またはHf)が含まれる。別の実施形態において、
液相プロセス用の触媒は、MCl5-bFb(ここで、b=0~5、M=Sb、Nb、ま
たはTa)である。
【0042】
別の実施形態において、HFとHCO-1230xaとの反応は、気相中で行われる。
典型的には、加熱反応器が使用される。反応器の水平または垂直配向ならびにHCO-1
230xaとHFとの反応の順序を含む、いくつかの反応器の配置が可能である。本発明
の1つの実施形態において、HCO-1230xaは、初期に気化され、気体として反応
器に供給され得る。
【0043】
気相反応のための適切な温度は、約120℃~約500℃である。温度が高いほど、H
CO-1230xaのより大きい転化率および転化化合物のより高い程度のフッ素化およ
び塩素化がもたらされる。
【0044】
気相反応器のための適切な反応器圧力は、約1~約30気圧であり得る。約15~約2
5気圧の圧力は、HClの他の反応生成物からの分離を促進するために有利に用いること
ができ、適切な反応時間は、約1~約120秒間、好ましくは約5~約60秒間で変わり
得る。
【0045】
気相反応のためのHF対全量のHCO-1230xaのモル比は、1つの実施形態にお
いて、HF対全量のHCO-1230xaのほぼ化学量論比(3:1HF対HCO-12
30xa)~約50:1、および別の実施形態において、約10:1~約30:1である
。
【0046】
1つの実施形態において、触媒は、HFとの(3:1HF対HCO-1230xa)気
相反応のための反応ゾーンにおいて用いられる。気相反応中に用いられ得る塩素フッ素化
触媒には、炭素;グラファイト;アルミナ;フッ化アルミナ;フッ化アルミニウム;炭素
上に担持されたアルミナ;炭素上に担持されたフッ化アルミニウム;炭素上に担持された
フッ化アルミナ;フッ化アルミミウム上に担持されたフッ化マグネシウム;金属(元素金
属、金属酸化物、金属ハロゲン化物、および/または他の金属塩を含む);フッ化アルミ
ニウム上に担持された金属;フッ化アルミナ上に担持された金属;アルミナ上に担持され
た金属;ならびに炭素上に担持された金属;金属の混合物が含まれる。
【0047】
触媒として用いるための適切な金属(アルミナ、フッ化アルミニウム、フッ化アルミナ
、または炭素上に場合によって担持された)には、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、ル
テニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金、マンガン、レニウム
、スカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、およびハフニウム、
銅、銀、金、亜鉛、ならびに/または58ないし71の原子数を有する金属(すなわち、
ランタニド金属)が含まれる。1つの実施形態において、担体上で用いられる場合、触媒
の全金属含有量は、触媒の全重量に基づいて、約0.1~約20重量パーセント;別の実
施形態において、触媒の全重量に基づいて、約0.1~約10重量パーセントである。
【0048】
気相反応のための適切な塩素フッ素化触媒には、クロム含有触媒(酸化クロム(III
)(Cr2O3)を含む);Cr2O3上に担持されたハロゲン化マグネシウムまたはハ
ロゲン化亜鉛などの、他の金属と一緒のCr2O3;炭素上に担持されたハロゲン化クロ
ム(III);グラファイト上に場合によって担持されたクロムおよびマグネシウムの混
合物(元素金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物、および/または他の金属塩を含む);
ならびにグラファイト、アルミナ、またはハロゲン化アルミニウム(フッ化アルミニウム
など)上に場合によって担持されたクロムおよび他の金属(元素金属、金属酸化物、金属
ハロゲン化物、および/または他の金属塩を含む)の混合物が含まれる。
【0049】
クロム含有触媒は、当技術分野で周知である。それらは、Heterogeneous
Catalysis in Industrial Practice,2nd ed
ition(McGraw-Hill,New York、1991)のpages 8
7-112でSatterfieldによって概して記載されたとおりの沈殿法または含
浸法によって調製され得る。
【0050】
注目すべきは、結晶質アルファ-酸化クロム(アルファ-酸化クロム格子中約0.05
原子%~約6原子%のクロム原子が、三価コバルト原子で置き換えられている)、および
フッ素化剤で処理されている結晶質アルファ-酸化クロム(アルファ-酸化クロム格子中
のクロム原子の約0.05原子%~約6原子%は、三価コバルト原子で置き換えられてい
る)からなる群から選択される少なくとも1種のクロム含有成分を含む塩素フッ素化触媒
である。これらの触媒は、その調製を含めて、米国特許出願公開第2005/02282
02号明細書に開示されている。
【0051】
別の実施形態において、HCO-1230xaとHFとの反応のための気相触媒は、米
国特許第5,036,036号明細書に記載されたとおりに(NH4)2Cr2O7の熱
分解により調製されたCr2O3を含む触媒組成物であり得る。
【0052】
場合によって、上記の金属含有触媒は、HFで前処理され得る。この前処理は、例えば
、金属含有触媒を適切な容器中に入れ、その後、金属含有触媒の上にHFを通過させるこ
とによって行われ得る。1つの実施形態において、このような容器は、塩素フッ素化反応
を実施するために使用される反応器であり得る。1つの実施形態において、前処理時間は
、約15~約300分間であり、前処理温度は、約200℃~約450℃である。
【0053】
HCFO-1233xfのフッ素化
一部の実施形態において、HCFO-1233xfは、フッ素化によってHCFC-H
CFC-244bb、および/またはHFO-1234yfを作製するために使用され得
る。
【0054】
1つの実施形態において、HCFO-1233xfのHCFC-244bbへの反応は
、液相で行われ得る。別の実施形態において、この反応は気相で行われ得る。
【0055】
1つの実施形態において、HCFO-1233xfのHCFC-244bbへの反応は
、バッチ方式で行われ得る。別の実施形態において、この反応は、連続方式で行われ得る
。
【0056】
1つの実施形態において、HCFO-1233xfのHCFC-244bbへの液相反
応は、触媒の存在下で行われ得る。1つの実施形態において、触媒は、ルイス酸触媒であ
り得る。1つの実施形態において、触媒は、金属-ハロゲン化物触媒であり得る。別の実
施形態において、触媒は、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化タリウム
、ハロゲン化鉄およびこれらの2種以上の組合せから選択される少なくとも1種の触媒で
あり得る。別の実施形態において、触媒は、五塩化アンチモン(SbCl5)、三塩化ア
ンチモン(SbCl3)、五フッ化アンチモン(SbF5)、四塩化スズ(SnCl4)
、四塩化チタン(TiCl4)、三塩化鉄(FeCl3、およびこれらの組合せから選択
される少なくとも1種の触媒であり得る。一部の実施形態において、この反応は、液相反
応のための任意の公知のフッ素化触媒で行われ得る。
【0057】
1つの実施形態において、HCFO-1233xfのHCFC-244bbへの反応は
、触媒の不存在下で行われ得る。
【0058】
1つの実施形態において、HCFO-1233xfのHCFC-244bbへの気相反
応は、触媒の存在下で行われ得る。1つの実施形態において、反応は、クロム系触媒、鉄
系触媒、またはこれらの組合せの存在下で行われる。1つの実施形態において、クロム系
触媒は、酸化クロム(例えば、Cr2O3)である。1つの実施形態において、鉄系触媒
は、炭素上のFeCl3であり得る。
【0059】
1つの実施形態において、HCFO-1233xfのHCFC-244bbへの気相反
応は、触媒の不存在下で行われる。
【0060】
HCFC-244bbの脱水素塩素化
一部の実施形態において、HCFC-244bbの脱水素塩素化は、HFO-1234
yfを調製するために用いられる。
【0061】
1つの実施形態において、HCFC-244bbのHFO-1234yfへの脱水素塩
素化は、気相中で行われる。
【0062】
1つの実施形態において、気相脱水素塩素化は、触媒の存在下で行われる。1つの実施
形態において、触媒は、炭素および/または金属系触媒から選択される。1つの実施形態
において、触媒は、活性炭、ニッケル系触媒、パラジウム系触媒、またはこれらの触媒の
任意の組合せから選択され得る。1つの実施形態において、触媒は、Ni-メッシュ、炭
素上パラジウム、酸化アルミニウム上パラジウム、またはこれらの組合せからなる群から
選択され得る。
【0063】
1つの実施形態において、接触気相脱水素塩素化は、約200~600℃の温度で行わ
れる。別の実施形態において、接触気相脱水素塩素化は、約250~500℃の温度で行
われる。反応圧力は、約0~150psiである。
【0064】
別の実施形態において、HFO-1234yfは、HCFC-244bbの熱脱水素塩
素化により調製される。1つの実施形態において、この反応は、触媒の不存在下で起こる
。1つの実施形態において、HCFC-244bbは、温度がHCFC-244bbの熱
脱水素塩素化を行うのに十分高い温度で維持される反応容器中に導入される。1つの実施
形態において、温度は、HCFC-244bbの熱脱水素塩素化を少なくとも50%の転
化パーセントまで行うのに十分高い。別の実施形態において、温度は、HCFC-244
bbの熱脱水素塩素化を少なくとも65%の転化パーセントまで行うのに十分高い。さら
に別の実施形態において、温度は、HCFC-244bbの熱脱水素塩素化を少なくとも
80%の転化パーセントまで行うのに十分高い。さらに別の実施形態において、温度は、
HCFC-244bbの熱脱水素塩素化を少なくとも70%の転化パーセントまで少なく
とも12時間の連続運転で行うのに十分高い。
【0065】
1つの実施形態において、HCFC-244bbは、温度が約500℃~約700℃の
範囲の温度で維持される反応容器中に導入される。別の実施形態において、反応容器の温
度は、約500℃~約650℃の範囲で維持される。さらに別の実施形態において、反応
容器の温度は、HCFC-244bbのHFO-1234yfへの熱分解を80%以上の
選択率で行うのに十分高い温度で維持される。さらに別の実施形態において、反応容器の
温度は、HCFC-244bbのHFO-1234yfへの熱分解を85%以上の選択率
で行うのに十分高い温度で維持される。
【0066】
1つの実施形態において、接触または非接触脱水素塩素化反応について、反応ゾーンは
、腐食に耐性である材料からなる反応容器である。1つの実施形態において、これらの材
料は、合金、例えば、Hastelloy(登録商標)などのニッケル系合金、商標In
conel(登録商標)(以後「Inconel(登録商標)」)の下でSpecial
Metals Corp.から市販されているニッケル-クロム合金、もしくは商標M
onel(登録商標)の下でSpecial Metals Corp.(New Ha
rtford,New York)から市販されているニッケル-銅合金、またはフルオ
ロポリマーライニングを有する容器を含む。
【0067】
1つの実施形態において、HCFC-244bbは、約30℃~約100℃の温度に気
化器で予備加熱される。別の実施形態において、HCFC-244bbは、約30℃~約
80℃の温度に気化器で予備加熱される。
【0068】
一部の実施形態において、不活性希釈ガスが、HCFC-244bbのキャリアガスと
して用いられる。1つの実施形態において、キャリアガスが選択され、窒素、アルゴン、
ヘリウムまたは二酸化炭素である。
【0069】
さらなる詳細なしに、当業者は、本明細書における説明を用いて、本発明をその最大限
に使用し得ると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単に例証的なものと
して解釈されるべきであり、本開示の残部を何れであれ決して制約しない。
【0070】
有用性
HFO-1234yfを含む本明細書で開示される組成物は、低地球温暖化係数の熱伝
達組成物、エアロゾル噴射剤、フォーム発泡剤(expansion agent)((
発泡剤(foaming agent)または発泡剤(blowing agent))
としても知られる)、溶剤、洗浄剤、キャリア流体、置換乾燥剤、バフ研磨剤、重合媒体
、ポリオレフィンおよびポリウレタン用発泡剤、ガス状誘電体、消火剤、および液体また
はガス状形態の火災抑制剤として有用である。開示される組成物は、熱を熱源からヒート
シンクに運ぶために使用される作業流体として作用し得る。このような熱伝達組成物は、
流体が、相変化を受ける;すなわち、液体から気体へ、そして戻るまたは逆もまた同様の
サイクルにおける冷媒としても有用であり得る。
【0071】
熱伝達システムの例には、限定されるものではないが、空調機、冷凍庫、冷蔵庫、ヒー
トポンプ、水冷器、満液式蒸発器冷却器、直接膨張式冷却器、ウォークインクーラー、ヒ
ートポンプ、移動式冷蔵庫、移動式空調ユニットおよびこれらの組合せが含まれる。
【0072】
1つの実施形態において、HFO-1234yfを含む組成物は、冷蔵庫、空調、また
はヒートポンプのシステムもしくは装置を含む、移動式熱伝達システムで有用である。別
の実施形態において、本組成物は、冷蔵庫、空調、またはヒートポンプのシステムまたは
装置を含む、定置式熱伝達システムで有用である。
【0073】
本明細書で使用される場合、移動式熱伝達システムは、道路、鉄道、海上または航空用
の輸送ユニットに組み込まれた任意の冷蔵、空調、または暖房装置を指す。さらに、移動
式冷蔵または空調機ユニットは、いずれの移動性キャリアかにかかわらず、「一貫輸送(
intermodal)」システムとして知られている装置を含む。このような複合シス
テムは、「コンテナ」(複合海上/陸上輸送)ならびに「スワップボディ」(複合道路/
鉄道輸送)を含む。
【0074】
本明細書で使用される場合、定置式熱伝達システムは、運転の間に適所に固定されるシ
ステムである。定置式熱伝達システムは、任意の多様な建造物内に付随し得るもしくはそ
れに取り付けられ得るか、または清涼飲料自動販売機などの屋外に配置した独立した装置
であり得る。これらの定置式設備は、定置式空調およびヒートポンプ(限定されるもので
はないが、冷却器、高温ヒートポンプ、住宅用、商業用または工業用空調システムを含み
、かつ窓用、ダクトレス、ダクト式、パッケージドターミナル、チラー、および屋上シス
テムなどの、屋外のではあるが建造物に接続されたものを含む)であり得る。定置式冷蔵
設備では、開示される組成物は、商業用、工業用または住宅用冷蔵庫および冷凍庫、製氷
機、独立式クーラーおよびフリーザー、満液式蒸発器冷却器、直接膨張式冷却器、ウォー
クインおよびリーチインクーラーおよびフリーザー、ならびに組合せシステムを含む、高
温、中温、および/または低温冷蔵装置で有用であり得る。一部の実施形態において、開
示される組成物は、スーパーマーケット用冷蔵庫システムで使用され得る。
【0075】
したがって、本発明によれば、HFO-1234yfを含有する本明細書で開示される
とおりの組成物は、冷却を発生させる、熱を発生させる、および熱を移動させる方法にお
いて有用である。
【0076】
本明細書で開示される組成物は、限定されるものではないが、特に、R134a(すな
わちHFC-134a、1,1,1,2-テトラフルオロエタン)、R22(すなわちH
CFC-22、クロロジフルオロメタン)、R12(CFC-12、ジクロロジフルオロ
メタン);R407C(52重量パーセントのR134a、25重量パーセントのR12
5(ペンタフルオロエタン)、および23重量パーセントのR32(ジフルオロメタン)
のブレンドに対するASHRAE呼称);およびR404A(44重量パーセントのR1
25、52重量パーセントのR143a(1,1,1-トリフルオロエタン)、および4
.0重量パーセントのR134aのブレンドに対するASHRAE呼称)を含めて、現在
使用される冷媒に対する低地球温暖化係数(GWP)代替品として有用であり得る。
【0077】
多くの用途において、HFO-1234yfを含む本組成物の一部の実施形態は、冷媒
として有用であり、かつ置き換えが求められている冷媒として少なくとも匹敵できる冷却
性能(冷却能力およびエネルギー効率を意味する)を与える。
【0078】
別の実施形態において、置き換えられるべき冷媒および潤滑油が入っている熱伝達シス
テムを再充填する方法であって、前記システム中の実質的な部分の潤滑油を保持しながら
、置き換えられるべき冷媒を熱伝達システムから除去し、HFO-1234yfを含む本
組成物の1種を熱伝達システムに導入する工程を含む方法が提供される。
【0079】
別の実施形態において、HFO-1234yfを含む任意の本組成物が入っている熱交
換システムが提供され、ここで、前記システムは、空調機、冷凍機、冷蔵庫、ヒートポン
プ、水冷器、満水式蒸発器冷却器、直接膨張式冷却器、ウォークインクーラー、ヒートポ
ンプ、移動式冷蔵庫、移動式空調ユニット、およびこれらの組合せを有するシステムから
選択される。さらに、HFO-1234yfを含む本組成物は、これらの組成物が、主要
な冷媒として役立ち、したがって、第2の熱伝達流体に冷却を与え、それにより、遠く離
れた場所を冷却する第2のループシステムにおいて有用であり得る。
【0080】
蒸気-圧縮冷凍、空調、またはヒートポンプシステムは、蒸発器、圧縮機、凝縮器、お
よび膨張装置を含む。蒸気-圧縮サイクルは、1つの工程で冷却効果および異なる工程で
加熱効果をもたらす複数の工程において冷媒を再使用する。このサイクルは、以下のとお
りに簡単に説明され得る。液体冷媒は、膨張装置を通って蒸発器に入り、その液体冷媒は
、低温で、周囲から熱を取り出すことによって、蒸発器中で沸騰し、気体を形成し、冷却
をもたらす。低圧の気体は、圧縮器に入り、ここで、気体は圧縮されて、その圧力および
温度を上昇させる。次いで、より高い圧力の(圧縮された)ガス状冷媒は、凝縮器に入り
、ここで、冷媒は凝縮し、その熱を周囲に放出する。冷媒は、その液体が凝縮器中でより
高い圧力レベルから蒸発器中の低い圧力レベルに膨張する膨張装置に戻り、このようにし
てサイクルを繰り返す。
【0081】
1つの実施形態において、HFO-1234yfを含む任意の本組成物が入っている熱
伝達システムが提供される。別の実施形態において、HFO-1234yfを含む任意の
本組成物が入っている冷蔵、空調またはヒートポンプ装置が開示される。別の実施形態に
おいて、HFO-1234yfを含む任意の本発明の組成物が入っている定置式冷蔵また
は空調装置が開示される。さらに別の実施形態において、本明細書で開示されるとおりの
組成物が入っている移動式冷蔵または空調装置が開示される。
【0082】
別の実施形態において、HFO-1234yfを含む任意の本組成物を、冷却されるべ
き物体の近くで蒸発させ、その後、前記組成物を凝縮させる工程を含む、冷却を発生させ
る方法が提供される。
【0083】
別の実施形態において、HFO-1234yfを含む任意の本組成物を、加熱されるべ
き物体の近くで凝縮させ、その後、前記組成物を蒸発させる工程を含む、熱を発生させる
方法が提供される。
【0084】
別の実施形態において、熱伝達流体組成物としてHFO-1234yfを含む本組成物
を使用する方法が開示される。この方法は、前記組成物を熱源からヒートシンクに運ぶ工
程を含む。
【0085】
別の実施形態において、本発明は、フォームの製造で用いるHFO-1234yfを含
むフォーム発泡剤組成物に関する。他の実施形態において、本発明は、発泡性組成物、好
ましくは熱硬化性(ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、またはフェノールのような)
フォーム組成物、および熱可塑性(ポリスチレン、ポリエチレン、またはポリプロピレン
のような)フォーム組成物、ならびにフォームを製造する方法を提供する。このようなフ
ォームの実施形態において、HFO-1234yfを含む1種または複数の本組成物は、
発泡性組成物中のフォーム発泡剤として含まれ、この組成物は好ましくは、フォームまた
は気泡構造を形成するために適当な条件下で反応および/または混合ならびに発泡するこ
とができる1種または複数の追加の成分を含む。
【0086】
本発明は、フォームを形成させ方法であって、(a)発泡性組成物に本発明のHFO-
1234yfを含む組成物を加える工程;および(b)フォームを形成させるために有効
な条件下で発泡性組成物を処理する工程を含む方法に関する。
【0087】
本発明の別の実施形態は、スプレー可能な組成物中の噴射剤としてのHFO-1234
yfを含む本発明の組成物の使用に関する。さらに、本発明は、HFO-1234yfを
含むスプレー可能な組成物に関する。不活性成分、溶媒および他の物質と一緒にスプレー
される活性成分もスプレー可能な組成物中に存在し得る。1つの実施形態において、スプ
レー可能な組成物はエアロゾルである。本組成物は、様々な工業用エアロゾルまたは他の
スプレー可能な組成物、例えば、コンタクトクリーナー、ダスター、潤滑スプレー、離型
用スプレー、殺虫剤など、および民生用エアロゾル、例えば、パーソナルケア製品(例え
ば、ヘアスプレー、防臭剤、および香料など)、家庭用品(例えば、ワックス、つや出し
剤、皿スプレー、ルームフレッシュナー、および家庭用殺虫剤など)、および自動車用製
品(例えば、クリーナーおよびポリッシャーなど)、ならびに医療材料(例えば、抗喘息
薬および抗口臭薬など)を配合するために使用され得る。この例には、喘息および他の慢
性閉塞性肺疾患の治療のためのならびに接近可能な粘膜へのまたは鼻腔内への薬剤の送達
のための定量吸入器(MDI)が含まれる。
【0088】
本発明はさらに、HFO-1234yfを含む本発明の組成物を、エアロソル容器中に
活性成分を含む配合物に加える工程を含む、エアロゾル製品を製造する方法であって、前
記組成物は、噴射剤として機能する方法に関する。加えて、本発明はさらに、HFO-1
234yfを含む本発明の組成物を、バリア型エアロゾルパッケージ(缶中バッグ(ba
g-in-can)またはピストン缶(piston can)のような)に加える工程
を含む、エアロゾル製品を製造する方法であって、前記組成物は、エアロゾル容器中で他
の配合成分から分離して保たれ、かつ前記組成物は、噴射剤として機能する方法に関する
。加えて、本発明はさらに、HFO-1234yfを含む本発明の組成物だけを、エアロ
ゾルパッケージに加える工程を含む、エアロゾル製品を製造する方法であって、前記組成
物は、活性成分として機能する方法に関する(例えば、ダスター、または冷却もしくは凍
結スプレー)。
【0089】
HCO-1230xa、HCFO-1233xf、およびHCFC-244bbを含む
本明細書で開示される組成物は、本明細書で前に記載されたとおりにHFO-1234y
fを調製する方法で有用である。
【0090】
さらなる詳細なしに、当業者は、本明細書における説明を用いて、本発明をその最大限
に使用し得ると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単に例証的なものと
して解釈されるべきであり、本開示の残部を何れであれ決して制約しない。
【実施例】
【0091】
生成物分析のための一般手順
以下の一般手順は、フッ素化反応の生成物の分析に用いられる方法の説明である。反応
器全流出物の一部を、質量選択検出器を備えたガスクロマトグラフ(GC/MS)を用い
る有機生成物の分析のためにオンラインで試料採取した。ガスクロマトグラフィーは、不
活性炭素担体上にWilmington,DelawareのE.I.du Pont
de Nemours and Company(以後「DuPont」)により商標K
rytox(登録商標)下で販売されるペルフッ素化ポリエーテルが入っている、20フ
ィート(6.1m)長×1/8インチ(0.32cm)直径のチューブを用いた。ヘリウ
ム流量は、30mL/分(5.0×10-7m3/秒)であった。ガスクロマトグラフ条
件は、3分間の初期保持時間について60℃、続いて、6℃/分の速度で200℃にプロ
グラム化する温度であった。
【0092】
実施例1
HCFO-1233xfのHCFC-244bbへのフッ素化
20グラムの粘性SbF5が入っているPTFE製小バイアルの内容物を、乾燥した4
00mLのHastelloy(登録商標)のシェーカーチューブ中に注ぎ入れた。この
チューブを閉じ、リーク試験のために窒素で加圧した。次いで、シェーカーチューブをド
ライアイスで-40℃未満に冷却し、ゆっくり放出し、次いで、空にした。75グラム(
3.75モル)の無水HF、続いて、165グラム(1.26モル)のHCFO-123
3xfを、シェーカーチューブ中に凝縮させた。シェーカーチューブをバリケード内に置
き、振とうを開始した。
【0093】
シェーカーチューブを周囲温度(約20~23℃)で撹拌し、圧力は21~25psi
gであった。2時間後、振とうを止め、150mLの水をシェーカーチューブ中に慎重に
ポンプで注ぎ込んだ。このチューブを一晩放置し、次いで、氷浴中で0~5℃にまで冷却
し、その後、減圧し、内容物をプラスチック容器に移した。容器は氷上で保った。
【0094】
容器内容物を、いくらかの氷が入っているポリプロピレン製分液漏斗中に注ぎ入れた。
下側の有機相は、外観で薄いコハク色であった。有機層を、Corning(Lowel
l、MA)によりPyrex(登録商標)の商標(以後「Pyrex(登録商標)」の下
で販売されているガラス製媒体瓶(約50mLの4モル(pH7)リン酸緩衝液および氷
(約100mL)が入っている)中に分離した。有機層を再度分離し、少量の無水硫酸マ
グネシウムが入っている乾燥Pyrex(登録商標)媒体瓶中に注ぎ入れた。粗収量は1
64.3グラム(約120mL、86%)であった。
【0095】
粗物質のGC/MSは、それが大部分HCFC-244bbであることを示した。他の
成分は、0.16%の1233xf、および合計で12.2%の他の副生成物を含んだ。
【0096】
実施例2
HCFO-1233xfのHCFC-244bbへのフッ素化
20グラムの粘性SbF5が入っているPTFE製小バイアルの内容物を、乾燥した4
00mLのHastelloy(登録商標)のシェーカーチューブ中に注ぎ入れた。この
チューブを閉じ、リーク試験のために窒素で加圧した。次いで、シェーカーチューブをド
ライアイスで-40℃未満に冷却し、ゆっくり放出し、次いで、空にした。53グラム(
2.65モル)の無水HF、続いて、227グラム(1.74モル)のHCFO-123
3xfをシェーカーチューブ中に移し、冷却シェーカーチューブ中に凝縮させた。シェー
カーチューブをバリケード内に置き、振とうを開始した。
【0097】
シェーカーチューブを周囲温度(約18~21℃)で撹拌し、圧力は16~20psi
gであった。2時間後、振とうを止め、100mLの水をシェーカーチューブ中に慎重に
ポンプで注ぎ込んだ。このチューブを一晩放置し、氷浴中で0~5℃にまで冷却し、その
後、放出し、内容物をプラスチック容器に移した。容器は氷上で保った。
【0098】
容器内容物を、いくらかの氷が入っているポリプロピレン製分液漏斗中に注ぎ入れた。
下側の有機相は、外観で薄いコハク色であった。有機相を、約50mLの4モル(pH7
)リン酸緩衝液および氷(約100mL)が入っているPyrex(登録商標)媒体瓶中
に分離した。有機相を再度分離し、少量の無水硫酸マグネシウムが入っている乾燥Pyr
ex(登録商標)媒体瓶中に注ぎ入れた。粗収量は238.8グラム(約170mL、9
1%)であった。
【0099】
粗物質のGC/MSは、それが大部分HCFC-244bbであることを示した。他の
成分は、0.11%のHFC-245cb、0.10%のHFC-245eb、0.26
%のHCFO-1233xf、および合計で9.7%の他の副生成物を含んだ。
【0100】
実施例3
実施例3は、触媒の不存在下でのHCFC-244bb(2-クロロ-1,1,1,2
-テトラフルオロプロパン)のHFO-1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロ
プロペン)への転化を実証する。
【0101】
約12インチの加熱ゾーンを有する空のInconel(登録商標)チューブ(1/2
インチ外径)を500℃~626℃の間の温度に加熱し、HFC-244bbを、2.4
sccm(4.0×10-8m3)のN2掃引を用いて、40℃に設定した気化器を通し
て0.52mL/時間で供給した。この反応器流出物を、オンラインGCMSを用いて分
析し、結果はモルパーセントで報告する。
【0102】
【0103】
実施例4
実施例4は、触媒の不存在下でのHCFC-244bb(2-クロロ-1,1,1,2
-テトラフルオロプロパン)のHFO-1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロ
プロパン)への転化を実証する。
【0104】
約12インチの加熱ゾーンを有する空のInconel(登録商標)チューブ(1/2
インチ外径)を575℃に加熱し、HFC-244bbを、3.6sccm(6.0×1
0-8m3)のN2掃引を用いて、40℃に設定した気化器を通して0.35mL/時間
で供給した。この反応器を合計19時間連続的に運転し、試料を定期的に採取し、分析し
て、HFC-244bbの転化%、およびHFO-1234yfへの選択率を決定した。
反応器流出物を、オンラインGCMSを用いて分析し、以下の表6のデータは、所定の条
件での少なくとも2回のオンライン注入の平均である:パーセントはモルパーセントであ
る。
【0105】
【0106】
実施例5
実施例5は、活性炭触媒の存在下でのHCFC-244bb(2-クロロ-1,1,1
,2-テトラフルオロプロパン)の脱水素塩素化を実証する。
【0107】
Inconel(登録商標)チューブ(1/2インチOD)を、Calgon製の酸洗
浄PCBポリネシアンココナッツ殻系炭素(6~10メッシュ)4cc(1.99グラム
)で満たした。HFC-244bbを、2.4sccm(4.0×10-8m3)のN2
掃引を用いて、40℃に設定した気化器を通して1.04mL/時間で供給し、反応器温
度を400℃に調節しながら、約32秒の全接触時間を与えた。
【0108】
表4のデータは、7時間の運転時間にわたってHCl脱離によってHFC-1234y
fを作製するべく活性炭触媒を用いるこのプロセス実験について、モルパーセントで反応
器流出物組成を示す。
【0109】