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特許7254128CD8+CD45RClow Tregの新しい亜集団およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】CD8+CD45RClow Tregの新しい亜集団およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20230331BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230331BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230331BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230331BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230331BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230331BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230331BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
A61K35/17 ZNA
A61K35/12
A61P37/06
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021133065
(22)【出願日】2021-08-18
(62)【分割の表示】P 2018511706の分割
【原出願日】2016-09-06
(65)【公開番号】P2021183631
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】15306366.4
(32)【優先日】2015-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511074305
【氏名又は名称】インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル)
(73)【特許権者】
【識別番号】506152885
【氏名又は名称】ナント ユニベルシテ
(73)【特許権者】
【識別番号】516200884
【氏名又は名称】センター ホスピタリア ユニバーシタイア デ ナント
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ギヨンノー,キャロル
(72)【発明者】
【氏名】アネゴン,イグナシオ
(72)【発明者】
【氏名】ベジエ,セヴェリーヌ
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】Xystrakis, E. et al.,Identification of a novel natural regulatory CD8 T-cell subset and analysis of its mechanism of regulation,Blood,2004年,Vol.104, No.10,p.3294-3301,doi:10.1182/blood-2004-03-1214
【文献】Chan, W. K. et al.,Chimeric antigen receptor-redirected CD45RA-negative T cells have potent antileukemia and pathogen memory response without graft-versus-host activity,Leukemia,2015年02月,Vol.29, No.2,p.387-395,doi:10.1038/leu.2014.174
【文献】Guillonneau, C. et al.,CD40Ig treatment results in allograft acceptance mediated by CD8CD45RC T cells, IFN-gamma, and indoleamine 2,3-dioxygenase,The Journal of clinical investigation,2007年04月,Vol.117, No.4,p.1096-1106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
C12N 5/00- 5/28
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowT制御性(Treg)細胞の単離集団と少なくとも1種の医薬的に許容できる担体とを含む、必要とする患者において移植片対宿主病(GVHDを予防または処置するための方法における使用のための医薬組成物であって、前記CD8 CD45RC low Treg細胞は、IL-34、IL-10およびIFNγの分泌に依存する抑制活性を媒介する、医薬組成物
【請求項2】
前記Treg細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)またはキメラ自己抗体受容体(CAAR)を含む遺伝子改変されたTreg細胞である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記Treg細胞が、GITRFoxp3である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトCD8CD45RClowTregの高度に抑制的な亜集団の同定を含む細胞療法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
免疫抑制レジメンは依然として、移植片の長期生存および移植患者の安寧にとって大きな障害であり、主に二次的影響および非特異的免疫抑制により、ここ数年は同種移植片の生存率の改善が停滞している(Feng 2008)。ドナー抗原への優れた抑制能力および特異性を有する調節集団のヒトにおける同定は、ヒトの移植、および制御性T細胞(Treg)/エフェクターT細胞(Teff)調節不全を伴う多数の疾患において大きな関心が寄せられている。
【0003】
実際に、Foxp3Treg細胞およびCD45RClowTregをはじめとする制御性T細胞または「Treg」は、Tregが他の免疫細胞の活性を急速に抑制し得るという点で、様々な免疫反応を制御する際の基礎をなす。特にTregは、自己および非自己抗原への望ましくない免疫反応をダウンレギュレートすることにより、免疫寛容を維持するのに不可欠である。例えばTregの欠損が、多発性硬化症(MS)、I型糖尿病(T1D)、乾癬、重症筋無力症(MG)および他の自己免疫疾患の患者で発見された。類似のつながりが、アトピーおよびアレルギー性疾患にも存在し得る。これらの疾患報告全てで、患者のTreg細胞のインビトロ免疫抑制の低下を指摘する報告が存在する。これにより、自己免疫疾患、アレルギー、抗治療性タンパク質免疫反応(即ち、第VIII因子)および移植関連の合併症を処置または予防する免疫療法においてTregを用いる可能性に関心が高まった。
【0004】
こうして、単離されたTreg細胞の集団を得るために、CD4およびCD8エフェクターT細胞を事実上含まない、高度の抑制性を有するTreg細胞の亜集団が、特に必要とされている。実際に、高度に抑制性の単離されたTregは、次には、抗原特異性免疫寛容を効率的に誘導するために、該当する抗原もしくは遺伝子改変された抗原で(例えば、CARとも称される所与のキメラ抗体受容体を発現するため、またはキメラT細胞受容体(TCR)を発現するため)、または他のタイプのキメラ抗原受容体で、増幅およびパルスされ得る。そのような増幅されたTreg細胞集団は、免疫系による自己分子または治療分子/組織の変性を回避するために、慢性炎症、自己免疫性、アレルギー、移植、治療性タンパク質での処置、および遺伝子療法の分野において特に関心が寄せられている。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
第一の態様において、本発明は、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowT制御性(Treg)細胞の単離集団に関する。
【0006】
第二の態様において、本発明は、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料からIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を検出および/または単離するための方法であって、(a)ヒトPBMCまたはリンパ球の前記集団を、ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な手段と接触させるステップと;(b)ステップ(a)で得られたヒトCD8CD45RClowTreg細胞の該単離集団を、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を単離するのに有用な手段と接触させるステップと、を含む、方法に関する。
【0007】
第三の態様において、本発明は、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団を、Treg細胞を増幅させるのに適した培地と接触させるステップを含む、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を増幅させるための方法に関する。本発明はまた、(i)ヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料からCD8CD45RClowTreg細胞を単離すること、場合によりヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料からCD8CD45RClowGITRTreg細胞を単離すること、(ii)場合により該単離されたTreg細胞を凍結し、続いて解凍すること、および(iii)前記細胞を培養で増幅させること、を含む、IFNγ+IL-10+IL-34+分泌ヒトCD8+CD45RClow Treg細胞の集団を生成するための方法に関する。
【0008】
第四の態様において、本発明は、増幅されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。
【0009】
第五の態様において、本発明は、本発明による(増幅された、また増幅されていない)IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団を含む医薬組成物に関する。
【0010】
第六の態様において、本発明は、医薬として使用するための、本発明による(増幅された、また増幅されていない)IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。
【0011】
第七の態様において、本発明は、必要とする患者における移植片拒絶、GVHD(移植片対宿主病)、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、治療性タンパク質への望まない免疫反応、またはアレルギーを予防または処置するための方法で使用するための、本発明による(増幅された、また増幅されていない)IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。
【0012】
最後の態様において、本発明は、患者が移植片拒絶、GVHD、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、治療性タンパク質への望まない免疫反応、またはアレルギーのリスクがあるか否かを決定するインビトロ法であって、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の存在が、移植片拒絶、GVHD、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、治療性タンパク質への望まない免疫反応、またはアレルギーのリスク低下の指標である、本発明の方法により前記患者から得られた生体試料中のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の存在を決定するステップを含む、インビトロ法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、高度に抑制性のCD8Treg亜集団の同定から得られる。詳細には本発明者らは、CD8CD45RClowTregのIFNγIL-10IL-34分泌亜集団の高度に抑制性の亜集団を同定した。本発明者らは、抗ドナーCD4CD25エフェクターT細胞応答に対する古典的CD4CD25highCD127lowTregに比較したそれらの優れた能力と、それらの抑制活性におけるIFNγ、IL-10およびIL-34の役割を実証した。加えて本発明者らは、IFNγIL-10IL-34分泌CD8CD45RClowTregの特異的増幅、ならびにヒト化マウスを用いてヒト皮膚移植片拒絶およびGVHDを阻害する移植での細胞療法としてのそれらの能力を記載した。
【0014】
本発明のTreg細胞集団
第一の態様において、本発明は、CD8Tregの単離集団、詳細にはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowT制御性(Treg)細胞の単離集団に関する。本発明はまた、GITRおよび/またはFoxp3であるIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowT制御性(Treg)細胞の単離集団に関する。
【0015】
一実施形態において、本発明は、CD8+CD45RClow Tregの単離集団に関する。一実施形態において、本発明は、CD8+GITR+ Tregの単離集団に関する。一実施形態において、本発明は、CD8+Foxp3+ Tregの単離集団に関する。一実施形態において、本発明は、CD8+CD45RClowGITR+ Tregの単離集団に関する。一実施形態において、本発明は、CD8+CD45RClowFoxp3+ Tregの単離集団に関する。一実施形態において、本発明は、CD8GITRFoxp3Tregの単離集団に関する。一実施形態において、本発明は、CD8CD45RClowGITRFoxp3Tregの単離集団に関する。
【0016】
一実施形態において、本発明によるCD8Tregの単離集団は、IFNγ、IL-10およびIL-34のうちの少なくとも1種のサイトカインを分泌する。したがって一実施形態において、本発明によるCD8Tregの単離集団は、IFNγまたはIL-10またはIL-34を分泌する。
【0017】
別の実施形態において、本発明によるCD8Tregの単離集団は、IFNγ、IL-10およびIL-34のうちの少なくとも2種のサイトカインを分泌する。したがって一実施形態において、本発明によるCD8Tregの単離集団は、IFNγとIL-10、またはIFNγとIL-34、またはIL-10とIL-34を分泌する。
【0018】
さらに別の実施形態において、本発明によるCD8Tregの単離集団は、IFNγ、IL-10およびIL-34を分泌する。
【0019】
一実施形態において、本明細書の先に記載されたCD8Tregの単離集団はさらに、IL-2および/またはTGFβ-1を分泌する。
【0020】
詳細には、ヒトCD8CD45RClowT制御性細胞のうち、本発明者らは、IFNγ、およびIL-10およびIL-34を分泌するCD8CD45RClowT制御性細胞の亜集団を同定した。したがって一実施形態において、本発明のヒトCD8CD45RClowTregは、IFNγ、IL-10およびIL-34を分泌する。
【0021】
一実施形態において、本発明のヒトCD8CD45RClowTregは、IFNγ、IL-10およびIL-34を分泌し、GITRを発現する。一実施形態において、本発明のヒトCD8CD45RClowTregは、IFNγ、IL-10およびIL-34を分泌し、Foxp3を発現する。一実施形態において、本発明のヒトCD8CD45RClowTregは、IFNγ、IL-10、IL-34およびTGFβ-1を分泌する。
【0022】
別の実施形態において、本発明のヒトCD8CD45RClowTregは、IFNγ、IL-10およびIL-34を分泌し、Foxp3およびGITRを発現する。一実施形態において、本発明のヒトCD8CD45RClowTregは、IFNγ、IL-10、IL-34およびTGFβ-1を分泌し、Foxp3を発現する。別の実施形態において、本発明のヒトCD8CD45RClowTregは、IFNγ、IL-10、IL-34およびTGFβ-1を分泌し、GITRを発現する。
【0023】
さらに別の実施形態において、本発明のヒトCD8CD45RClowTregは、IFNγ、IL-10、IL-34およびTGFβ-1を分泌し、Foxp3およびGITRを発現する。
【0024】
一実施形態において、本明細書の先に記載されたヒトIFNγIL-10IL-34分泌CD8CD45RClowTregは、IL-2を分泌する。
【0025】
本発明の一実施形態において、本明細書の先に記載されたCD8Tregの単離集団は、凍結されて貯蔵され得る。本発明の詳細な実施形態において、本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTregの単離集団は、凍結されて貯蔵され得る。一実施形態において、本明細書の先に記載されたヒトCD8Tregの単離集団は、凍結されて解凍されている。詳細な実施形態において、本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTregの単離集団は、凍結されて解凍されている。
【0026】
本明細書で用いられる用語「制御性T細胞」または「Treg」は、以前はサプレッサーT細胞として知られ、免疫系を調整し、自己抗原への寛容性を維持し、自己免疫疾患を抑制する、T細胞の亜集団を指す。これらの細胞は一般に、エフェクターT細胞の誘導および増殖を抑制またはダウンレギュレートする。
【0027】
本明細書で用いられる用語「集団」は、細胞総数の大部分(例えば、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%)が該当する細胞の指定された特性を有し、該当するマーカーを発現する、細胞の集団を指す(例えば、ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団は、高度に抑制性の機能を有し、IFNγ、IL-10、IL-34、Foxp3、GITRまたはTGFβ-1などの該当する特定のマーカーを発現する細胞を、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%含む)。本明細書で用いられる、数字に先行する用語「約」は、前記数字の値のプラスまたはマイナス10%を意味する。
【0028】
本明細書で用いられる「単離された」は、自然環境(末梢血など)から取り出されて、単離、精製または分離されており、天然に存在するが細胞を単離する基となる細胞表面マーカーを欠く他の細胞を、少なくとも約75%含まない、80%含まない、85%含まない、好ましくは約90%。95%、96%、97%、98%、99%含まない、細胞または細胞集団を指す。
【0029】
本明細書で用いられる用語「マーカー」は、細胞表面もしくは細胞内で発現されて、または細胞により分泌されて、細胞の同定を支援するのに用いられ得る、タンパク質、糖タンパク質、または任意の他の分子を指す。マーカーは一般に、従来の方法により検出され得る。細胞表面マーカーの検出に用いられ得る方法の特異的で非限定的な例は、免疫細胞化学的測定、蛍光活性化細胞分別法(FACS)、および酵素分析だけでなく、該タンパク質のmRNAを検出するRT-PCRおよび分子生物法もある。
【0030】
本明細書で用いられる当該技術分野で周知の用語「CD8」(白血球分化抗原8)は、T細胞受容体(TCR)の共受容体として働く膜貫通糖タンパク質を指す。CD8は、機能するために、一対のCD8鎖からなる二量体を形成する。CD8の最も一般的な形態は、CD8-αおよびCD8-β鎖で構成される。天然由来のヒトCD8-αタンパク質は、アクセション番号P01732としてUniProtデータベース内で提供されるアミノ酸配列を有する。天然由来ヒトCD8-βタンパク質は、アクセション番号P10966としてUniProtデータベース内で提供されるアミノ酸配列を有する。
【0031】
本明細書で用いられる用語「CD45」(LCAまたはPTPRCとしても公知)は、Streuli et al.,1996において過去に記載された異なるアイソフォーム内に存在する膜貫通糖タンパク質を指す。これらの異なるCD45アイソフォームは、CD45細胞外領域の一部をコードする3つの可変性エキソンの選択的スプライシングから生じる細胞外ドメイン構造が異なる。様々なCD45アイソフォームが、異なる細胞外ドメインを有するが、およそ300アミノ酸残基の2つの相同的で高度に保存されたホスファターゼドメインを有する同じ膜貫通セグメントおよび細胞質セグメントを有する。天然由来のヒトCD45タンパク質は、アクセション番号P08575としてUniProtデータベース内で提供されるアミノ酸配列を有する。本明細書で用いられる用語「CD45RC」は、チロシンホスファターゼCD45のエキソン6スプライスバリアント(エキソンC)を指す。CD45RCアイソフォームは、B細胞上、ならびにCD4およびCD8T細胞のサブセット上で発現される。
【0032】
本明細書で用いられる用語「インターフェロンガンマ」または「IFNγ」または「IFNg」または「II型インターフェロン」は、当該技術分野で周知であり、自然および獲得免疫に不可欠なサイトカインを指す。天然由来ヒトIFNγタンパク質は、アクセション番号P01579としてUniProtデータベース内で提供される146アミノ酸のアミノ酸配列を有する。
【0033】
本発明によれば、本発明のIFNγ分泌CD8Tregは、少なくとも約1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000、15000、16000、17000、18000、19000または20000pg/mlのIFNγを分泌する。
【0034】
本明細書で用いられる用語「インターロイキン-10」または「IL-10」は、当該技術分野で周知であり、抗炎症性サイトカインを指す。天然由来ヒトIL-10タンパク質は、アクセション番号P22301としてUniProtデータベース内で提供される178アミノ酸のアミノ酸配列を有する。
【0035】
本発明によれば、本発明のIL-10分泌CD8Tregは、少なくとも約0.1、0.5、1、10、25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900または2000pg/mlのIL-10を分泌する。
【0036】
本明細書で用いられる用語「インターロイキン-34」または「IL-34」は、当該技術分野で周知であり、単球およびマクロファージの増殖、生存および分化を促進するサイトカインを指す。天然由来ヒトIL-34タンパク質は、アクセション番号Q6ZMJ4としてUniProtデータベース内で提供される242アミノ酸のアミノ酸配列を有する。
【0037】
本発明によれば、本発明のIL-34分泌CD8Tregは、少なくとも約0.1、0.5、1、10、25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900または2000pg/mlのIL-34を分泌する。
【0038】
本明細書で用いられる用語「グルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質」または「GITR」または「腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー18」または「TNFRSF18」は、当該技術分野で周知であり、TNF受容体スーパーファミリーの表面受容体分子を指す。天然由来ヒトGITRは、アクセション番号Q9Y5U5としてUniProtデータベース内で提供される241アミノ酸のアミノ酸配列を有する。
【0039】
本明細書で用いられる用語「フォークヘッドボックスP3」または「Foxp3」は、当該技術分野で周知であり、T制御性細胞のマーカーである転写因子として働くと考えられる核タンパク質を指す。天然由来ヒトFoxp3は、アクセション番号Q9BZS1としてUniProtデータベース内で提供される431アミノ酸のアミノ酸配列を有する。
【0040】
本明細書で用いられる用語「トランスフォーミング増殖因子β1」または「TGFβ-1」または「TGFb1」は、当該技術分野で周知であり、免疫系を制御する際に重要な役割を担うサイトカインを指す。天然由来ヒトTGFβ-1は、アクセション番号P01137としてUniProtデータベース内で提供される390アミノ酸のアミノ酸配列を有する。
【0041】
本発明によれば、本発明のTGFβ-1分泌CD8Tregは、少なくとも約0.1、0.5、1、10、25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900または2000pg/mlのTGFβ-1を分泌する。
【0042】
本明細書で用いられる用語「インターロイキン-2」または「IL-2」は、当該技術分野で周知であり、免疫活性化およびホメオスタシスの両方を調節する際に重大な役割を担うサイトカインを指す。天然由来ヒトIL-2は、アクセション番号P60568としてUniProtデータベース内で提供される153アミノ酸のアミノ酸配列を有する。
【0043】
本発明によれば、本明細書の先に記載されたIL-2分泌CD8Tregは、少なくとも約0.1、0.5、1、10、25、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900または2000pg/mlのIL-2を分泌する。
【0044】
本発明によれば、サイトカイン分泌は、典型的には少なくとも1種の刺激剤での活性化後の細胞培養物で評価される。刺激剤の例としては、抗原、細胞、MHCポリマー、抗体およびレクチンが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、前記少なくとも1種の刺激剤は、同種抗原提示細胞、抗CD3抗体および/または抗CD8抗体、IL-2、PMA+イオノマイシンを含む群から選択される。
【0045】
一実施形態において、該サイトカイン分泌は、典型的には培養の6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21日後、好ましくは培養の12、13、14、15、16または17日後、より好ましくは培養の14日後に評価される。別の実施形態において、該サイトカイン分泌は、典型的には約2×10細胞/ml、約3×10細胞/ml、または約4×10細胞/ml、好ましくは約2.5×10細胞/ml、約3×10細胞/ml、または約3.5×10細胞/ml、より好ましくは約3×10細胞/mlで開始された培養物で評価される。一実施形態において、該サイトカイン分泌は、約3.5×10細胞/mlで開始された培養物で培養の14日後に評価される。
【0046】
本発明の一実施形態において、本発明のCD8ヒトTreg、詳細には本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowT制御性(Treg)細胞は、以下にさらに記載される通り、所望の発現生成物をコードするように遺伝子改変され得る。
【0047】
用語「遺伝子改変された」は、細胞が本発明の非修飾CD8ヒトTreg中に、詳細にはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞中に天然には存在しない核酸分子、または本発明の前記CD8ヒトTreg中に、詳細にはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞中に非天然状態で(例えば増大されて)存在する核酸分子を含むことを示す。核酸分子は、前記細胞の中、またはその前身の中へ導入されている場合がある。
【0048】
ウイルス介在性遺伝子送達、非ウイルス介在性遺伝子送達、裸のDNA、物理的処置などの複数のアプローチを用いて、本発明のCD8ヒトTreg、詳細にはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を遺伝子改変することができる。この目的で、核酸は通常、組換えウイルス、プラスミド、ファージ、エピソーム、人工染色体などのベクターに組み込まれる。遺伝子を輸送する核酸を細胞内に導入し得る手段の例としては、マイクロインジェクション、電気穿孔、形質導入、もしくはDEAE-デキストランを用いたトランスフェクション、リポフェクション、リン酸カルシウム、または当業者に公知の他の手順が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本発明の詳細な実施形態において、本発明のCD8ヒトTreg、詳細にはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞は、ウイルスベクター(または組換えウイルス)またはウイルス様粒子(VLP)などのベクター粒子を用いて遺伝子改変される。この実施形態において、該異種核酸は、例えば組換えウイルスに導入され、その後、本発明のCD8ヒトTreg、詳細にはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を感染するために用いられる。異なる型の組換えウイルス、詳細には組換えレトロウイルスが用いられ得る。レトロウイルスの感染は細胞のゲノムへの安定した組み込みをもたらすため、レトロウイルスは好ましいベクターである。対象への注射後のインビトロまたはインビボのいずれかでのリンパ球増幅では、トランスジーンが各細胞分裂時に移送されるように分離の際に安定性を維持される必要があるため、前述のことは重要な特性である。用いられ得るレトロウイルスタイプの例は、オンコウイルス、レンチウイルスまたはスプマウイルスファミリーからレトロウイルスである。オンコウイルスファミリーの詳細な例は、MoMLV、ALV、BLVまたはMMTVなどの非発癌遺伝子キャリアであるスローオンコウイルス、およびRSVなどのファストオンコウイルスである。レンチウイルスファミリーの例は、HIV、SIV、FIVまたはCAEVである。
【0050】
欠損のある組換えレトロウイルスを構築するための技術は、文献に広範に記載されている(WO89/07150、WO90/02806、およびWO94/19478)。これらの技術は通常、トランスジーンを含むレトロウイルスベクターを適当なパッケージング細胞株に導入し、その後、生成された、ゲノム内にトランスジーンを含むウイルスを回収することを含む。本発明のCD8ヒトTreg、詳細にはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞は、ウイルス上清、精製ウイルスとのインキュベーションによる、前記Treg細胞とウイルスのパッケージング細胞との共培養による、Transwell技術によるなど、様々なプロトコルを利用して組換えウイルスで感染され得る。
【0051】
本明細書で用いられる用語「ウイルス様粒子」(VLP)は、ウイルス粒子に類似した構造を指す。本発明によるウイルス様粒子は、ウイルスゲノムの全てまたは一部を欠き、典型的かつ好ましくはウイルスゲノムの複製および感染成分の全てまたは一部を欠くため、非複製的である。本明細書で用いられる用語「非複製的」は、VLP内に含まれる、または含まれないゲノムを複製し得ないことを指す。VLPは、当該技術分野で公知の技術により、例えばWO02/34893として発表された国際特許出願に記載される通り、調製され得る。
【0052】
本発明のCD8ヒトTreg、詳細にはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を遺伝子改変するために用いられる核酸は、ポリペプチド(例えば、タンパク質、ペプチドなど)、RNAなどをはじめとする様々な生物活性生成物をコードし得る。詳細な実施形態において、該核酸は、免疫抑制活性を有するポリペプチドをコードする。別の実施形態において、該核酸は、細胞に対して毒性である、または条件つきで毒性であるポリペプチドをコードする。好ましい例としては、HSV-1 TKなどのチミジンキナーゼ(ヌクレオシド類似体の存在下で毒性を付与する)、シトシンデスアミナーゼなどが挙げられる。
【0053】
核酸の別の好ましいカテゴリーは、該当する抗原に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)、または自己抗原を含むキメラ自己抗体受容体(CAAR)などのT細胞受容体またはそのサブユニットもしくは機能的均等物をコードするものである。例えば抗原に特異的な組換えTCRまたはCARの発現は、必要とする患者において免疫反応を阻害するためにエフェクターT細胞上でより特異的かつ効率的に作用し得る本発明のCD8ヒトTreg、詳細にはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を生成する。キメラ抗原受容体(CAR)設計の基本原理は、詳細に記載されている(例えば、Sadelain et al.,2013)。
【0054】
CARは、一般にはスペーサ/ヒンジおよび膜貫通ドメインを介して細胞内シグナル伝達ドメインに連結される、細胞外抗原認識部分を含む。「第一世代」のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞活性化部分のみを含む。「第二世代」のCARの細胞内ドメインは、活性化部分、例えばCD3ζとタンデムに、共刺激部分を含む。共刺激ドメインの例としては、ICOS、OX40(CD134)、CD28、4-1BB(CD137)、CD27およびDAP10が挙げられるが、これらに限定されない。「第三の世代」のCARの細胞内ドメインは、CD28の組み合わせなどの活性化部分、OXO40または4-1BBなどの腫瘍壊死因子受容体(TNF)、およびCD3ζとタンデムに、2つの共刺激ドメインを含む。
【0055】
CARは一般に、生存および増殖シグナルを支持する共刺激性エンドドメインとタンデムに、細胞外抗原結合ドメインを、T細胞受容体のCD3ζ鎖由来の細胞内シグナル伝達ドメインと融合することにより得られる。CAR修飾T細胞は、患者のMHCと独立して機能し、臨床使用のために即座に作製し得るため、CARに基づくアプローチでの以下に記載される病原性抗原の標的化は、有用である。
【0056】
CAARは、細胞内シグナル伝達ドメインに融合された、自己免疫疾患に関与する自己抗原などの細胞外自己抗原を含む。CAARの細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、CD137CD3ζシグナル伝達ドメインなどのTまたはNK受容体シグナル伝達ドメインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
一実施形態において、本発明のCD8+ Tregは、遺伝子改変されており、細胞内シグナル伝達分子に連結された少なくとも1つのCAR、1つのCAARおよび/または1つのネイティブ受容体を発現する。CARの例としては、第一世代のCAR、第二世代のCAR、第三世代のCAR、3つよりも多くのシグナル伝達ドメイン(共刺激ドメインおよび活性化ドメイン)を含むCAR、および阻害性CAR(iCAR)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
したがって一実施形態において、本発明は、キメラ抗原受容体を含む遺伝子改変されたTreg細胞である本発明のCD8ヒトTregの単離集団、詳細にはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。
【0059】
本発明によれば、該当する抗原を認識するCARの細胞外ドメインは、抗体またはその抗原結合断片などの前記抗原に結合する受容体または受容体断片を含み得る。本発明によれば、CARの細胞外ドメインは、ヒト抗体または任意の他の種を起源とする抗体を含み得る。
【0060】
本明細書で用いられる用語「抗体断片」は、抗原のエピトープと特異的に相互作用する能力を保持する抗体の少なくとも一部分を指す。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、scFv抗体断片、ジスルフィド結合されたFvs(sdFv)、VHドメインとCHIドメインからなるFd断片、直鎖状抗体、sdAb(VLまたはVHのいずれか)などの単一ドメイン抗体、ラクダ科VHHドメイン、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片などの抗体断片から形成された多重特異性抗体、および抗体の単離されたCDRまたは他のエピトープ結合断片が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
別の実施形態において、本発明のCD8+ Tregは、遺伝子改変されており、機能的T細胞受容体(TCR)および/またはヒト白血球抗原(HLA)、例えばHLAクラスIおよび/またはHLAクラスIIの発現を欠く。一実施形態において、機能的TCRおよび/またはHLAを欠く本発明の遺伝子改変CD8+ Tregは、同種Tregである。
【0062】
本発明のTreg細胞を捕捉する手段
本発明のCD8ヒトTregの亜集団、詳細には本明細書の先に記載されたCD8CD45RClowTreg細胞の亜集団は、細胞表面マーカーと、IFNγ、IL-10およびIL-34を生成するそれらの能力とによって操作的に特徴づけられ得る。
【0063】
第二の態様において、本発明はしたがって、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料から、本発明のCD8ヒトTreg、詳細には本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の亜集団を検出および/または単離する方法であって、以下のステップ:(a)ヒトPBMCまたはリンパ球の前記集団を、ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な手段と接触させるステップ;(b)ステップ(a)で得られたヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団を、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を単離するのに有用な手段と接触させるステップ、を含む、方法に関する。
【0064】
本発明はまた、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料から、場合によりGITRおよび/またはFoxp3であるIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を検出および/または単離する方法であって、以下のステップ:(a)ヒトPBMCまたはリンパ球の前記集団を、ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な手段と、場合によりGITRおよび/またはFoxp3CD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な手段と、接触させるステップ;(b)ステップ(a)で得られたヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団を、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を単離するのに有用な手段と接触させるステップ、を含む、方法に関する。
【0065】
一実施形態において、本発明の方法のステップ(b)は、ステップ(a)で得られたヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団を、GITR、Foxp3およびTGFβ-1のうちの少なくとも1つも発現するIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を単離するのに有用な手段と接触させることを含む。
【0066】
別の実施形態において、本発明の方法のステップ(b)は、ステップ(a)で得られたヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団を、Foxp3とGITR、またはFoxp3とTGFβ-1、またはGITRとTGFβ-1も発現するIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を単離するのに有用な手段と接触させることを含む。
【0067】
さらに別の実施形態において、本発明の方法のステップ(b)は、ステップ(a)で得られたヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団を、GITRとFoxp3とTGFβ-1も発現するIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を単離するのに有用な手段と接触させることを含む。
【0068】
一実施形態によれば、本発明の方法のステップ(a)でのヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団の単離は、本発明のCD8Treg細胞の活性化を必要としない。一実施形態によれば、本発明の方法のステップ(b)での本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離は、ステップ(a)で得られたヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団を少なくとも1種の刺激剤で刺激した後に実施される。刺激剤の例は、本明細書の先に記載されている。
【0069】
本明細書で用いられる用語「生体試料」は、末梢血単核細胞「PBMC」またはリンパ球を含有する任意の体液または組織を指す。本発明の状況において、「PBMCまたはリンパ球を含有する液」は、血液(全血試料、血清試料、または血漿試料)および滑液を包含する。「リンパ球を含有する組織」は、脾臓、胸腺、リンパ節、骨髄、パイエル板、および扁桃を包含する。
【0070】
一実施形態において、本発明の方法は、人工多能性幹細胞(iPSC)またはiPSC由来CD34細胞の培養物から得られた、本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を獲得および/または単離するためのものである。本発明の状況において、iPSCまたはiPSC由来CD34細胞の培養物は、例えばヒト末梢血単核細胞(PBMC)を含有する生体試料から得ることができる。
【0071】
ステップ(a)および(b)では、該当するヒト細胞の集団の単離は、フローサイトメトリー法を用いたハイスループット細胞選別などの免疫選別技術、磁気ビーズ、生分解性ビーズ、非生分解性ビーズに標識された抗体でのアフィニティー法、およびそのような方法の組み合わせをはじめとする当業者に利用可能な特定の免疫細胞集団を検出する種々の方法によって実施され得る。
【0072】
本明細書で用いられる用語「フローサイトメトリー法」は、該当する細胞を流体の流れに懸濁させて、それを電子検出装置に通すことによる、該当する細胞をカウントする技術を指す。フローサイトメトリー法は、蛍光パラメータなど、1秒あたり粒子数千個までの物理的および/または化学的パラメータの同時多パラメータ分析を可能にする。近代のフローサイトメトリー機器は通常、複数のレーザおよび蛍光検出器を有する。フローサイトメトリー技術の一般的バリエーションは、「蛍光活性化細胞選別」を利用して該当する集団を精製または検出するために、それらの特性に基づいて粒子を物理的に選別することである。
【0073】
本明細書で用いられる「蛍光活性化細胞選別」(FACS)は、各細胞の特異的光散乱および蛍光特性に基づいて、生体試料から得られた異種細胞混合物を1回で細胞1つずつ、2つ以上の容器に選別するフローサイトメトリー法を指す。FACSは、個々の細胞から得られた蛍光シグナルの迅速で客観的かつ定量的な記録、および特定の関心がある細胞の物理的分離を提供する。したがってFACSを本明細書に記載された方法と共に用いて、例えばヒトCD8Treg細胞を単離することができる。
【0074】
あるいは、本発明のヒトCD8ヒトTreg、詳細には本発明によるCD8CD45RClowTreg細胞の単離は、磁気ビーズなどのビーズに基づく選別法を利用して実施され得る。
【0075】
そのような方法を利用して、細胞は特定の細胞表面マーカーに関して陽性または陰性に分離および単離され得る。本明細書で定義される「陽性選択」は、特異的細胞表面マーカーを発現する細胞の単離および検出をもたらす技術を指し、「陰性選択」は、特異的細胞表面マーカーを発現しない細胞の単離および検出をもたらす技術を指す。幾つかの実施形態において、ビーズは、市販のビーズコンジュゲーションキットなどの当該技術分野で公知の標準的方法を利用して当業者により抗体でコーティングされ得る。幾つかの実施形態において、陰性選択ステップが、1種または複数の細胞系マーカーを発現する細胞を除去するために実施され、その後、該当するヒトTreg細胞(即ち、本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg)を陽性選択する蛍光活性化細胞選別が実施される。
【0076】
したがって一実施形態において、本発明の方法は、(a)ヒトPBMCまたはリンパ球の集団を、非CD8CD45RClowTreg細胞を除去するのに有用な手段と接触させるステップ;(b)ステップ(a)で得られたヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団を、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を単離するのに有用な手段と接触させるステップ、を含む。
【0077】
典型的には、ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団などの細胞集団を単離するのに有用な手段は、適切な細胞表面分子またはマーカーへの結合パートナー(抗体など)である。
【0078】
特異的な結合パートナーとしては、捕捉部分および標識部分が挙げられる。捕捉部分は、直接的または間接的のいずれかで細胞と生成物の両方に結合するものである。標識部分は、生成物に付着し、直接的または間接的に標識され得るものである。特異的な結合パートナーは、生成物と結合パートナーの間に相対的に高い親和性および特異性が存在し、生成物:パートナー複合体が標識または細胞分離技術の際に検出されるように生成物:パートナー複合体の解離が相対的に遅い、任意の部分を含む。
【0079】
捕捉部分は、場合により連結部分を通して、固定手段(アンカー部分)にカップリングし得、利用可能な捕捉部分の数を倍増させる連結部分も含み得、つまり例えば修飾デキストラン分子、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンをはじめとする分枝状ポリマーなどの生成物の捕捉能力を含み得る。
【0080】
抗体などの捕捉部分にコンジュゲートされ得る標識部分は、当業者に周知である。例えば放射性同位体、例えば32P、35SまたはH;蛍光または発光マーカー、例えばフルオレセイン(FITC)、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン(PE)、アロフィコシアニン、ペリジニン-クロロフィル-タンパク質複合体(PerCP)、6-カルボキシフルオレセイン(6-FAM)、2’,7’-ジメトキシ-4’,5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、6-カルボキシ-X-ローダミン(6-ROX)、6-カルボキシ-2’,4’,7’,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、5-カルボキシフルオレセイン(5-FAM)またはN,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA);抗体または抗体断片、例えばF(ab)2断片;親和性標識、例えばビオチン、アビジン、アガロース、骨形成タンパク質(BMP)、マトリックス結合体(matrix bound)、ハプテン;ならびに酵素または酵素基質、例えばアルカリホスファターゼ(AP)および西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)。
【0081】
適切な細胞分子としては、CD3(T細胞(活性化))、CD8およびCD45RCなどのヒトCD8CD45RClowTreg細胞の細胞表面マーカー、ならびにこれらのCD8T細胞に特異的な他のCDマーカーまたは細胞接着分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
本発明の一実施形態において、ステップ(a)のヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な手段は、ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な抗体である。
【0083】
本発明の一実施形態において、ステップ(a)のヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な手段は、モノクローナル抗ヒトCD3抗体、モノクローナル抗ヒトCD8抗体およびモノクローナル抗ヒトCD45RC抗体からなり、場合により抗ヒトGITR抗体(好ましくはモノクローナル抗ヒトGITR抗体)をさらに含む、少なくとも3つの抗体の組み合わせである。
【0084】
本発明の一実施形態において、ステップ(a)のヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な手段は、モノクローナル抗ヒトCD3抗体、モノクローナル抗ヒトCD8抗体およびモノクローナル抗ヒトCD45RC抗体からなり、場合により抗ヒトGITR抗体(好ましくはモノクローナル抗ヒトGITR抗体)および/または抗ヒトFoxp3抗体(好ましくはモノクローナル抗ヒトFoxp3抗体)をさらに含む、少なくとも3つの抗体の組み合わせである。
【0085】
本明細書で用いられる用語「抗体」は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫活性部分、即ち抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。本発明による「抗X抗体」または「X抗体」は、Xに特異的に結合し得る抗体である。
【0086】
本発明の詳細な実施形態において、ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な抗体は、抗ヒトCD3抗体、抗ヒトCD8抗体および抗ヒトCD45RC抗体、好ましくはモノクローナル抗ヒトCD3抗体、モノクローナル抗ヒトCD8抗体およびモノクローナル抗ヒトCD45RC抗体である。本発明により企図されるヒトCD3抗原に結合する抗体の例としては、モノクローナル抗体OKT3、UCHT1、HIT3a、S4.1およびSK7が挙げられる。本発明により企図されるヒトCD8抗原に結合する抗体の例としては、モノクローナル抗体C8/144B、SK1、3B5、OKT8、BW135/80およびRPA-T8が挙げられる。本発明により企図されるヒトCD45RC抗原に結合する抗体の例としては、モノクローナル抗体MT2およびRP1/12が挙げられる。
【0087】
本発明の一実施形態において、ステップ(b)のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な手段は、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な抗体である。
【0088】
より詳細には、ヒトIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な抗体は、本発明のヒトCD8CD45RClowTreg細胞により分泌されるサイトカイン(即ち、IFNγ、IL-10およびIL-34)の1種に結合し、そしてT細胞に特異的な、好ましくはCD8T細胞に特異的な細胞表面分子(例えば、CD3、CD8、CD45)に結合する二重特異性抗体である。本発明により企図される二重特異性抗体の例としては、ヒトIFNγおよびヒトCD45に結合する二重特異性抗体、ヒトIFNγおよびヒトCD3に結合する二重特異性抗体、ヒトIFNγおよびヒトCD8に結合する二重特異性抗体、ヒトIL-10およびヒトCD45に結合する二重特異性抗体、ヒトIL-10およびヒトCD3に結合する二重特異性抗体、ヒトIL-10およびヒトCD8に結合する二重特異性抗体、ヒトIL-34およびヒトCD45に結合する二重特異性抗体、ヒトIL-34およびヒトCD3に結合する二重特異性抗体、ヒトIL-34およびヒトCD8に結合する二重特異性抗体が挙げられる。例えば、IFNγまたはIL-10分泌アッセイ検出キットは、市販されている(Miltenyi biotec)。
【0089】
一実施形態において、本明細書の先に記載されたヒトIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するために、本発明の方法のステップ(b)は、IFNγとT細胞、好ましくはCD8T細胞に特異的な細胞表面分子(例えば、CD3、CD8、CD45)とに結合する二重特異性抗体、IL-10とT細胞、好ましくはCD8T細胞に特異的な細胞表面分子(例えば、CD3、CD8、CD45)とに結合する二重特異性抗体、およびIL-34とT細胞、好ましくはCD8T細胞に特異的な細胞表面分子(例えば、CD3、CD8、CD45)と、に結合する二重特異性抗体からなる群から選択される少なくとも2つの二重特異性抗体の組み合わせを含む。
【0090】
IFNγ分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞のうち、10%または20%のみが、IL-10である。本出願者により得られた結果によれば、IL-10およびIL-34は一般に、ヒトCD8CD45RClowTreg細胞により共発現される。それゆえ一実施形態において、ステップ(a)で単離されたCD8CD45RClowTregから、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTregを単離するための二重特異性抗体の組み合わせは、IFNγとT細胞に特異的な細胞表面分子とに結合する二重特異性抗体、およびIL-10とT細胞に特異的な細胞表面分子とに結合する二重特異性抗体またはIL-34とT細胞に特異的な細胞表面分子とに結合する二重特異性抗体のいずれか、を少なくとも含む。
【0091】
詳細な実施形態において、IFNγとT細胞に特異的な細胞表面分子とに結合する二重特異性抗体、IL-10とT細胞に特異的な細胞表面分子とに結合する二重特異性抗体、およびIL-34とT細胞に特異的な細胞表面分子とに結合する二重特異性抗体が、該当する集団を単離するために用いられる。
【0092】
二機能性抗体としても知られる二重特異性抗体は、第一の抗原のための少なくとも1つの抗原認識部位と、第二の抗原のための少なくとも1つの抗原認識部位と、を有する。そのような抗体は、組換えDNA法により、または当該技術分野で公知の方法により化学的に生成され得る。化学的に作製された二重特異性抗体としては、二価特性を保持するために還元および再形成された抗体、ならびに各抗原のための少なくとも2つの抗原認識部位を有するように化学的にカップリングされている抗体が挙げられるが、これらに限定されない。二重特異性抗体としては、全ての抗体もしくは抗体コンジュゲート、または2つの異なる抗原を認識することが可能な抗体のポリマー形態が挙げられる。抗体は、ポリマーまたは粒子上に固定され得る。
【0093】
そのような二重特異性抗体を得るための技術は、国際特許出願WO94/09117に詳細に記載されている。
【0094】
一実施形態において、本明細書の先に記載されたヒトIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するために、本発明の方法のステップ(b)は、IFNγ、IL-10、およびT細胞に特異的な細胞表面分子に結合する三重特異性抗体の使用を含む。
【0095】
3つの抗原に同時結合する三重特異性抗体は、WO2016105450に記載されている。
【0096】
本発明の一実施形態において、ステップ(b)のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトGITRCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な手段は、本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な抗体、ならびにGITRおよび/またはFoxp3および/またはTGFβ-1を検出するのに有用な抗体である。
【0097】
より詳細には、GITRを検出するのに有用な抗体は、ヒト抗GITR抗体である。ヒトGITR抗原に結合する抗体の例としては、モノクローナル抗体MAB689-100、621、eBioAITR、110416が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
より詳細には、Foxp3を検出するのに有用な抗体は、ヒト抗Foxp3抗体である。ヒトFoxp3抗原に結合する抗体の例としては、モノクローナル抗体PCH101、259D、206D、および236A/E7が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
より詳細には、TGFβ-1を検出するのに有用な抗体は、ヒト抗TGFβ-1抗体である。ヒトTGFβ-1抗原に結合する抗体の例としては、モノクローナル抗体MAB2463、TW4-6H10、19D8、およびeBio16TFBが挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
本発明の一実施形態において、ステップ(b)のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトGITRCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な手段は、本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な抗体、およびIL-2を検出するのに有用な抗体である。
【0101】
より詳細には、IL-2を検出するのに有用な抗体は、ヒト抗IL-2抗体である。ヒトIL-2抗原に結合する抗体の例としては、モノクローナル抗体MQ1-17H12、および5344.111が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
一実施形態において、本発明の方法のステップ(a)およびステップ(b)は、同時に実施される。言い換えれば一実施形態において、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料から本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を検出および/または単離するための本発明の方法は、ヒトPBMCまたはリンパ球の前記集団を、ヒトIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTregの集団を単離するのに有用な手段と接触させることを含む。適切な手段の例は、本明細書の先に記載されている。
【0103】
本発明はまた、樹状細胞、好ましくは形質細胞様樹状細胞(pDC)の集団の存在下、CD8T細胞の集団を、MHCクラスII分子に由来する単離されたペプチドまたはその機能的断片を含む培地で培養するステップを含む、本発明によるCD8CD45RClowTregの集団を作製するインビトロまたはエクスビボ法に関する。
【0104】
一実施形態において、MHCクラスII分子に由来する単離されたペプチドは、5~40アミノ酸の範囲内の長さを有し、アミノ酸配列:REEYARFDSDVGEYR(SEQ ID NO:1)またはその機能保存性変異体からの少なくとも5つの連続するアミノ酸を含む。好ましくはMHCクラスII分子に由来する単離されたペプチドは、15~40アミノ酸の範囲内の長さを有し、アミノ酸配列:REEYARFDSDVGEYR(SEQ ID NO:1)またはその機能保存性変異体を含む。
【0105】
別の実施形態において、MHCクラスII分子に由来する単離されたペプチドは、11~16アミノ酸の範囲内の長さを有し、アミノ酸配列:SDVGEYR(SEQ ID NO:18)またはその機能保存性変異体を含む。
【0106】
本発明によれば、用語「機能保存性変異体」は、参照のペプチド(SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:18など)と少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%の同一性を含み、依然として機能的である、即ち、参照のペプチド(SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:12など)と実質的に同じ方法でCD8CD45RClowTregの集団の作製を依然として誘導し得るペプチドを指す。
【0107】
好ましくは、MHCクラスII分子に由来する前記ペプチドは、
REEYARFDSDVGEYR(SEQ ID NO:1);
NREEYARFDSDVGEYR(SEQ ID NO:2);
REEYARFDSDVGEFR(SEQ ID NO:3);
REEYVRFDSDVGEYR(SEQ ID NO:4);
QEEYARFD SD VGEYR(SEQ ID NO:5);
REEYARFDSDVGVYR(SEQ ID NO:6);
NREEYARFDSDVGEFR(SEQ ID NO:7);
NREEYVRFDSDVGEYR(SEQ ID NO:8);
NQEEYARFDSDVGEYR(SEQ ID NO:9);
NREEYARFDSDVGVYR(SEQ ID NO:10);
RLLARLIYNREEYARFDSDVGEYRAVTELGRPSAEYRNKQ(SEQ ID NO:11);
YLRYDSDVGEYRAVTE(SEQ ID NO:12);
DSDVGEYRAVTELGRP(SEQ ID NO:13);
YLRYDSDVGEYR(SEQ ID NO:14);
YLRYDSDVGEYRAV(SEQ ID NO:15);
SDVGEYRAVTELGR(SEQ ID NO:16);
LRYDSDVGEYRAVTE(SEQ ID NO:17)、
からなる群から選択される。
【0108】
一実施形態において、前記方法は、CD8T細胞の集団を、先に記載されたMHCクラスII分子に由来するペプチドを含むMHC/ペプチド多量体を含む培地で培養するステップを含む。
【0109】
本発明によれば、用語「MHC/ペプチド多量体」は、先に記載されたMHCクラスII分子に由来するペプチドを装填された主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質サブユニットで構成された安定した多量体複合体を指す。前記MHC/ペプチド多量体(本明細書ではMHC/ペプチド複合体とも呼ばれる)としては、MHC/ペプチド二量体、三量体、四量体または五量体が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは前記MHC/ペプチド多量体は、四量体である。
【0110】
記載されたMHCクラスII分子に由来するペプチド、およびMHC/ペプチド多量体は、参照により本明細書に組み入れられるWO2015150491およびWO2015150492に記載されている。
【0111】
濃縮方法/除去方法/キット
本発明はまた、本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の細胞集団を濃縮する方法であって
- 本明細書の先に記載された通りヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料中のIFNγIL-10IL-34を分泌する該CD8CD45RClowTreg細胞を検出すること、
- 前記細胞を選択し、
それによりIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞が濃縮された細胞集団を得ること、
を含む、方法に関する。
【0112】
したがって一実施形態において、本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を濃縮する方法は、
- ヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料を、ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を単離するのに有用な手段と接触させること、
- 該CD8CD45RClowTreg細胞から該IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を検出および選択し、
それによりIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の濃縮された細胞集団を得ること、
を含む。
【0113】
IFNγIL-10IL-34を分泌するCD8CD45RClowTreg細胞を検出および/または選択する方法は、本明細書の先に記載されている。例えば細胞を分離、単離、または選択する方法としては、抗体コーティング磁気ビーズを用いた磁気分離(Schwartz,et al、米国特許第5,759,793号)、および固体マトリックス(例えば、プレート)へ付着された抗体を利用したアフィニティークロマトグラフィーまたは「パンニング」が挙げられるが、これらに限定されない。正確な分離を提供するさらなる技術としては、マルチカラーチャネル、低角度および鈍角の光散乱検出チャネル、またはインピーダンスチャネルなどの様々な度合いの精巧化を有し得る、蛍光活性化セルソーター(FACS)が挙げられる。死亡細胞は、死亡細胞に関連する染色、例えば(ヨウ化プロピジウム、LDS)での選択により排除され得る。赤血球細胞は、例えばエルトリエーション、溶血、またはFicoll-Paque勾配法により除去され得る。選択された細胞の生存性に過度の有害とならない当該技術分野で周知の任意技術が、用いられ得る。
【0114】
本発明によれば、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を濃縮する方法は、
- ヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料を、非CD8細胞のマーカーに結合する少なくとも1種の試薬と接触させ、それにより非CD8細胞を除去すること、
- 本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を検出し、それらを選択し、
それによりIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の濃縮された細胞集団を得ること、
を含み得る。
【0115】
一実施形態において、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を濃縮する方法は、
- ヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料を、非CD8細胞のマーカーに結合する少なくとも1種の試薬と接触させ、それにより非CD8細胞を除去すること、
- 本明細書の先に記載されたCD8CD45RClowTreg細胞を検出および単離すること、および
- 該CD8CD45RClowTreg細胞から本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を検出および選択し、
それによりIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の濃縮された細胞集団を得ること、
を含む。
【0116】
非CD8細胞に結合するマーカーの例としては、CD4、CD14、CD16、CD19が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
前記マーカーに結合する好ましい試薬は、抗体である。一実施形態において、該抗体は、蛍光色素または磁気粒子にコンジュゲートされる。別の実施形態において、該細胞選択は、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別、磁気選択、アフィニティークロマトグラフィーもしくはパンニング、またはそれらの組み合わせにより実施される。
【0118】
別の態様において、本発明は、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の濃縮集団に関する。IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の前記濃縮集団は、本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を濃縮する方法によって得ることができる。
【0119】
本明細書で用いられる、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の濃縮集団は、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の割合%が本来得られる細胞集団中のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の割合%よりも高いものである。IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の濃縮集団は、可能ではあるが、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の均質な集団を含有する必要はない。詳細な実施形態において、該組成物の前記細胞の少なくとも約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、または約99%が、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞である。別の実施形態において、濃縮集団中のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の割合%は、濃縮前のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の割合%の少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍である。
【0120】
濃縮方法は、濃縮工程の各ステップに関連した濃縮レベルに基づいて変動し得る。IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の濃縮レベルおよび純度%は、非限定的にドナー、細胞/組織供給源およびドナーの疾患状態をはじめとする多くの因子に依存するであろう。詳細な実施形態において、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞は、少なくとも約2倍、約5倍、約10倍、約15倍、約20倍、約25倍、約30倍、約35倍、約40倍、約50倍、約55倍、約60倍、約65倍、約70倍、約75倍、約80倍、約85倍、約90倍、約95倍、約100倍、約105倍、約110倍、約115倍、約120倍、約130倍、約140倍、約150倍、または約200倍濃縮される。
【0121】
本発明はまた、
- 本明細書の先に記載されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料において、IFNγIL-10IL-34を分泌する該CD8CD45RClowTreg細胞を検出すること、
- 前記細胞を除去すること、
-それによりIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞が除去された細胞集団を得ること、
を含む、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の細胞集団を除去する方法に関する。
【0122】
IFNγIL-10IL-34を分泌するCD8CD45RClowTreg細胞を検出および/または選択する方法は、本明細書の先に記載されている。
【0123】
別の態様において、本発明は、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞が除去された集団に関する。前記IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞が除去された集団は、本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の細胞集団を除去する方法により得ることができる。
【0124】
本明細書で用いられるIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞が除去された集団は、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の割合%が本来得られる細胞集団内のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の割合%よりも低いものである。
【0125】
一実施形態において、該除去された集団中のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の割合%は、除去前のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の割合%の、多くとも0.5倍、0.4倍、0.3倍、0.25倍、0.2倍、0.15倍、0.1倍である。
【0126】
制御性T細胞の除去は、癌患者においてワクチン介在性免疫を増強することが示されている(Dannull et al.,2005,115(12):3623-3633)。したがって、本発明の別の実施形態において、本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の除去は、前記Treg細胞が処置にとって有害である、または害を及ぼす可能性があるような、癌または感染性疾患を処置する細胞療法で用いられ得ることを提唱する。例えば癌処置において、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の一時的除去は、ワクチン処理/免疫療法プロトコルの前であれば興味が持たれる可能性があり、前記一時的除去は、本発明の除去方法により装置を通してエクスビボで患者の血液を除去すること、およびそれを直ちに該患者へ再注入すること、により得られる。したがって前記実施形態において、患者の血液からのIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の除去は、装置を通してエクスビボで実施される。
【0127】
本発明はまた、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞集団を同定もしくは単離するための、またはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の細胞集団を濃縮もしくは除去するためのキットに関し、前記キットは、CD3、CD8、CD45RCの細胞表面発現を検出するための試薬、ならびにIFNγおよびIL-10および/またはIL-34の分泌を検出する手段を含む。
【0128】
好ましくは、前記試薬は抗体である。より好ましくは、これらの抗体は、蛍光色素または磁気粒子にコンジュゲートされている。
【0129】
1つの詳細な実施形態において、前記試薬は、微小管阻害薬、アルキル化剤およびDNA副溝結合剤などの細胞障害剤にコンジュゲートされた抗体である。細胞障害剤の例としては、マイトマイシン、アウリスタチン、およびメイタンシン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
別の実施形態において、前記試薬は、抗生物質への抗体コンジュゲートである。抗生物質の例としては、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、リンコマイシン、フシジン酸、ストレプトマイシン、アミノグリコシド系抗生物質、テトラサイクリン、ポリミキシン、ホスホマイシン、バンコマイシン、リストセチン、バシトラシン、グラミシジン(gramacidin)、ペニシリンおよびセファロスポリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
一実施形態において、前記キットは、Foxp3発現および/またはGITR発現および/またはTGFβ-1発現および/またはIL-2発現を検出する試薬をさらに含む。好ましくは、前記試薬は抗体である。より好ましくは、前記抗体は、蛍光色素にコンジュゲートされている。
【0132】
本発明のTreg細胞を増幅させる手段
第三の態様において、本発明は、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団を培養するステップ、好ましくはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団を、Treg細胞を増幅させるのに適した培地と接触させるステップを含む、本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を増幅させる方法に関する。
【0133】
一実施形態において、本発明は、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団を、Treg細胞を増幅させるのに適した培地と接触させるステップを含む、場合によりGITRおよび/またはFoxp3であるIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を増幅させる方法に関する。
【0134】
一実施形態において、本発明は、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトGITRCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団を、Treg細胞を増幅させるのに適した培地と接触させるステップを含む、GITR、Foxp3およびTGFβ-1のうちの少なくとも1つを発現するIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞を増幅させる方法に関する。
【0135】
一実施形態において、本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団は、凍結され、続いて解凍された後、Treg細胞を増幅させるのに適した培地と接触される。本発明者らは、本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞がそのような解凍後でもより効率的に増幅し得ることを実証した。事実、本発明者らは、本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTregが新たに分別された場合よりも解凍された場合に、より効率的に増殖することを観察した。
【0136】
本明細書で用いられる用語「増幅させること」は、細胞(例えば、T細胞などの免疫細胞)の所与の集団を変換および/または増大する工程を指す。T細胞の増幅は、好ましくは抗原、細胞(同種移植片の移植の状況ではドナー細胞など)、MHCポリマー、抗体(抗CD3抗体および/または抗CD28抗体など)、レクチン(PHAなど)などの抗原特異性刺激剤の存在下でT細胞を含む細胞集団を培養することにより実施される。増幅はまた、サイトカイン(IL-15、IL-12、IL-4、IL-7、IL-2、IFNγ、IL-34および炎症促進性サイトカイン(例えばIL-1(詳細にはIL-1β)、IL-6およびTNFαなど)など)の存在下でT細胞の培養を必要とし得る。
【0137】
本明細書で用いられる用語「培地」は、細胞の生存性を維持して増殖を支援する栄養素を含有する細胞集団を維持するため、または細胞集団を培養するための媒体を指す。培地は、適切な組み合わせで、以下のもの:塩(複数可)、緩衝剤(複数可)、アミノ酸、グルコースまたは他の糖(複数可)、抗生物質、血清または代替血清、および他の成分、例えば増殖因子、サイトカインなど、のいずれかを含有し得る。特定の細胞型で通常用いられる培地は、当業者に公知である。本発明の培地は、InvitrogenからのRPMI 1640などの市販の媒体に基づき得る。
【0138】
一実施形態において、本発明のヒトCD8CD45RClowTregを増幅させるのに適した媒体は、少なくとも1種の刺激剤を含む。一実施形態において、前記少なくとも1種の刺激剤は、抗原、細胞、MHCポリマー、抗体およびレクチンを含む群から選択される。一実施形態において、前記少なくとも1種の刺激剤は、抗原特異性であり、抗原、細胞、MHCポリマー、および抗体からなる群から選択される。一実施形態において、前記少なくとも1種の刺激剤は、同種抗原提示細胞、抗CD3抗体、および/または抗CD8抗体、PMA+イオノマイシンを含む群から選択される。
【0139】
一実施形態において、本発明のヒトCD8CD45RClowTregを増幅させるのに適した媒体は、一定量の少なくとも1種のサイトカインを含む。Tregを増幅させるのに適した媒体中に存在し得るサイトカインの例としては、IL-15、IL-12、IL-4、IL-7、IL-2、IFNγ、IL-34および炎症促進性サイトカイン(例えばIL-1(詳細にはIL-1β)、IL-6およびTNFαなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
一実施形態において、Treg細胞を増幅させるのに適した培地は、一定量のインターロイキン-2(IL-2)および/または一定量のインターロイキン-15(IL-15)を含む。
【0141】
詳細な実施形態において、IL-2は、ヒトインターロイキン-2(hIL-2)、好ましくは組換えヒトインターロイキン-2(rhIL-2)である。rhIL-2が医薬的使用のために市販されていることが、さらに留意されなければならない。適切な商業形態としては、例えばProleukin(登録商標)、組換えヒトIL-2組成物が挙げられる。
【0142】
詳細な実施形態において、IL-15は、ヒトインターロイキン-15(hIL-15)、好ましくは組換えヒトインターロイキン-15(rhIL-15)である。
【0143】
典型的にはIL-2は、100~10000U/ml、好ましくは500~5000U/mlの範囲内の濃度で、より好ましくは1000U/mlで、本発明の培地に添加される。
【0144】
典型的にはIL-15は、1~100ng/ml、好ましくは2.5~50ng/mlの範囲内の濃度で、より好ましくは10ng/mlで、本発明の培地に添加される。
【0145】
典型的にはIL-12は、0.01~500ng/ml、好ましくは1~50ng/mlの範囲内の濃度で、より好ましくは5ng/mlで、本発明の培地に添加される。
【0146】
典型的にはIL-4は、0.01~500ng/ml、好ましくは1~20ng/mlの範囲内の濃度で、より好ましくは5ng/mlで、本発明の培地に添加される。
【0147】
典型的にはIL-7は、0.01~500ng/ml、好ましくは2.5~50ng/mlの範囲内の濃度で、より好ましくは10ng/mlで、本発明の培地に添加される。
【0148】
典型的にはIFNγは、0.01~500ng/ml、好ましくは5~100ng/mlの範囲内の濃度で、より好ましくは20ng/mlで、本発明の培地に添加される。
【0149】
典型的にはIL-34は、0.01~500ng/ml、好ましくは10~100ng/mlの範囲内の濃度で、より好ましくは50ng/mlで、本発明の培地に添加される。
【0150】
典型的にはIL-1は、0.01~500ng/ml、好ましくは2.5~50ng/mlの範囲内の濃度で、より好ましくは10ng/mlで、本発明の培地に添加される。
【0151】
典型的にはIL-6は、0.01~500ng/ml、好ましくは5~100ng/mlの範囲内の濃度で、より好ましくは20ng/mlで、本発明の培地に添加される。
【0152】
典型的にはTNFは、0.01~500ng/ml、好ましくは5~100ng/mlの範囲内の濃度で、より好ましくは20ng/mlで、本発明の培地に添加される。
【0153】
典型的にはTGFベータは、0.01~500ng/ml、好ましくは0.1~10ng/mlの範囲内の濃度で、より好ましくは1ng/mlで、本発明の培地に添加される。
【0154】
典型的には、該当する培地での本発明のヒトCD8CD45RClowTreg細胞の培養は、少なくとも6日間、例えば少なくとも6日から15日以下までの間、または少なくとも6日から20日以下までの間、または少なくとも6日から6~8週間以下までの間、好ましくは14日間、実施されるであろう。一実施形態において、該当する培地での本発明のヒトCD8CD45RClowTreg細胞の培養は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30または31日間実施される。一実施形態において、該当する培地での本発明のヒトCD8CD45RClowTreg細胞の培養は、1週間、2週間、3、4、5、6、7、8、9または10週間またはより長く実施される。
【0155】
一実施形態において、サイトカイン、好ましくはIL-2および/またはIL-15は、本発明のヒトCD8CD45RClowTreg細胞の培養0日目に、培地に添加される。別の実施形態において、サイトカイン、好ましくはIL-2および/またはIL-15はさらに、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および/または20日目に1回、2回、もしくは3回または4回以上、培地に添加される。一実施形態において、サイトカイン、好ましくはIL-2および/またはIL-15は、本発明のヒトCD8CD45RClowTreg細胞の培養の0日目、および5、6、7、8または9日目、好ましくは0および7日目に培地に添加される。別の実施形態において、サイトカイン、好ましくはIL-2および/またはIL-15は、3回、好ましくは0日目およびさらに2回、培地に添加される。別の実施形態において、サイトカイン、好ましくはIL-2および/またはIL-15は、4回、好ましくは0日目およびさらに3回、培地に添加される。別の実施形態において、サイトカイン、好ましくはIL-2および/またはIL-15は、5回、好ましくは0日目およびさらに4回、例えば0、6、13、16および18日目に培地に添加される。一実施形態において、サイトカイン、好ましくはIL-2および/またはIL-15は、0日目と、培養終了まで2、3、または4日ごとに添加される。
【0156】
一実施形態において、Treg細胞を増幅させるのに適した培地は、一定量の該当する少なくとも1種の抗原を含む。典型的には所与の抗原は、1μg/mlの濃度で本発明の培地に添加される。
【0157】
詳細な実施形態において、該増幅は、ポリクローナル増幅(polyclonal expansion)である。ポリクローナル増幅は、抗CD3 Abおよび抗CD28 Abならびに/または同種抗原提示細胞(APC)を用いることにより得ることができる。
【0158】
一実施形態において、0.1~10μg/ml、好ましくは0.25~4μg/ml、より好ましくは1μg/mlの抗CD3抗体、および/または0.1~10μg/ml、好ましくは0.25~4μg/ml、より好ましくは1μg/mlの抗CD28抗体が、培地に添加される。
【0159】
一実施形態において、1:1~1:10、好ましくは1:2~1:6、より好ましくは1:4の範囲内のTreg:同種抗原提示細胞(APC)のAPCが、培地に添加される。
【0160】
本発明の状況において、増幅された、または増幅されていない本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団はその後、抗原特異性IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を得るために、該当する抗原でパルスされ得るが、前記抗原は、本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団を「プライミング」し、それにより前記抗原に特異的なIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を得るのに効果的な量で提供される。事実、そのような増幅された抗原特異性IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞は、自己免疫障害、治療性タンパク質への免疫反応、および/またはアレルギーに関与するものなど、望まない免疫反応の予防または処置に有用である。
【0161】
したがって、処置される疾患に関連する抗原(病原性抗原)に特異的なIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団が、得られなければならない。それゆえ、該当する抗原は、自己抗原、同種抗原、一般的なヒトの食事からの食物抗原、炎症性抗原およびアレルゲンからなる群から選択される。
【0162】
用語「自己抗原」は、個体のタンパク質に由来する免疫原性ペプチドを指す。例としては、以下の非限定的列挙の自己抗原であり得る:アセチルコリン受容体、アクチン、アデニンヌクレオチドトランスロケータ、アドレノレセプター、芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼ、アシアロ糖タンパク質受容体、殺菌性/透過性増強タンパク質(BPi)、カルシウム感知受容体、コレステロール側鎖切断酵素、コラーゲンIV型鎖、チトクロームP450 2D6、デスミン、デスモグレイン-1、デスモグレイン-3、F-アクチン、GM-ガングリオシド、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、グルタミン酸受容体、H/K ATPase、17-α-ヒドロキシラーゼ、21-ヒドロキシラーゼ、IA-2(ICAS12)、インスリン、インスリン受容体、1型内因子、白血球機能抗原1、ミエリン関連糖タンパク質、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンオリゴデンドロサイトタンパク質、ミオシン、P80-コイリン(coilin)、ピルビン酸脱水素酵素複合体E2(PDC-E2)、ヨウ化ナトリウム共輸送体、SOX-10、甲状腺および眼筋共有タンパク質、チログロブリン、甲状腺ペルオキシダーゼ、チロトロピン受容体、組織トランスグルタミナーゼ、転写活性化補助因子p75、トリプトファンヒドロキシラーゼ、チロシナーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、ACTH、アミノアシル-tRNA-ヒスチジル合成酵素、カルジオリピン、炭酸脱水酵素II、セントロメア関連タンパク質、DNA依存ヌクレオソーム刺激ATPase、フィブリラリン、フィブロネクチン、グルコース6リン酸イソメラーゼ、ベータ2-糖タンパク質I、ゴルジン(95、97、160、180)、ヒートショックタンパク質、半接着斑タンパク質180、ヒストンH2A、H2B、ケラチン、IgE受容体、Ku-DNAタンパク質キナーゼ、Ku-核タンパク質、Laリンタンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、プロテイナーゼ3、RNAポリメラーゼI~III、シグナル認識タンパク質、トポイソメラーゼI、チューブリン、ビメンチン、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)、プロテオリピドタンパク質、オリゴデンドロサイト特異的タンパク質(OSP/クローディン11)、2’,3’-環状ヌクレオチド3-ホスホジエステラーゼ(CNPase)、BP抗原1(BPAG1-e)、トランスアルドラーゼ(TAL)、ヒトミトコンドリア自己抗原PDC-E2(Novo1および2)、OGDC-E2(Novo3)、およびBCOADC-E2(Novo4)、水疱性類天疱瘡(BP)180、ラミニン5(LN5)、DEAD-ボックスタンパク質48(DDX48)、またはインスリノーマ関連抗原-2。
【0163】
用語「一般的なヒトの食事からの食物抗原」は、以下の非限定的列挙の食物抗原など、ヒトに共通する食料から得られる免疫原性ペプチドを指す:ウシ抗原、例えばリポカリン、Ca結合S100、アルファ-ラクトアルブミン、ベータ-ラクトグロブリンなどのラクトグロブリン、ウシ血清アルブミン、カゼイン。食物抗原はまた、タイセイヨウサケ抗原、例えばパルブアルブミン、トリ抗原、例えばオボムコイド、オボアルブミン、Ag22、コンアルブミン、リゾチーム、またはトリ血清アルブミン、ピーナッツ、エビ抗原、例えばトロポミオシン、コムギ抗原、例えばアグルチニンまたはグリアジン、セロリ抗原、例えばセロリプロフィリン、ニンジン抗原、例えばニンジンプロフィリン、リンゴ抗原、例えば、タウマチン、リンゴ脂質輸送タンパク質、リンゴプロフィリン、洋ナシ抗原、例えば、洋ナシプロフィリン、イソフラボンレダクターゼ、アボカド抗原、例えばエンドキチナーゼ、アンズ抗原、例えばアンズ脂質輸送タンパク質、モモ抗原、例えばモモ脂質輸送タンパク質またはモモプロフィリン、ダイズ抗原、例えばHPS、ダイズプロフィリン、または(SAM22)PR-10タンパク質であり得る。
【0164】
用語「炎症性抗原」は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、オリゴデンドロサイトミエリンオリゴタンパク質(OMGP)、ミエリン関連オリゴデンドロサイト塩基性タンパク質(MOBP)、オリゴデンドロサイト特異性タンパク質(OSP/クローディン1)、ヒートショックタンパク質、オリゴデンドロサイト特異性タンパク質(OSP)、NOGO A、糖タンパク質Po、末梢ミエリンタンパク質22(PMP22)、2’3’-環状ヌクレオチド3-ホスホジエステラーゼ(CNPase)、シトルリン置換型の環状および直鎖状フィラグリンペプチド、II型コラーゲンペプチド、ヒト軟骨糖タンパク質39(HCgp39)ペプチド、HSP、異種核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)A2ペプチド、hnRNP B1、hnRNP D、Ro60/52、HSP60、65、70および90、BiP、ケラチン、ビメンチン、フィブリノーゲン、コラーゲンI型、III型、IV型およびV型ペプチド、アネキシンV、グルコース6リン酸イソメラーゼ(GPI)、アセチル-カルパスタチン、ピルビン酸脱水素酵素(PDH)、アルドラーゼ、トポイソメラーゼI、snRNP、PARP、Scl-70、Scl-100、アニオンカルジオリピンおよびホスファチジルセリンを含むリン脂質抗原、中性電荷のホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリン、マトリックスメタロプロテイナーゼ、フィブリリン、アグリカン(aggreccan)を指す。
【0165】
用語「アレルゲン」は、吸入アレルゲン、摂取アレルゲンまたは接触アレルゲンを指す。アレルゲンの例としては、花粉(Cup、Jun)、イエダニ類(Der、Gly、Tyr、Lep)、イヌ、ネコおよびげっ歯類(Can、Fel、Mus、Rat)由来の吸入アレルゲンが挙げられるが、これらに限定されない。接触アレルゲンの例としては、重金属(ニッケル、クロム、金など)、ラテックス、ハロタンなどのハプテン、ヒドララジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0166】
したがって一実施形態において、自己免疫疾患が、多発性硬化症である場合、自己抗原は、ミエリン関連抗原(例えば、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)(例えば、MBP83-102ペプチド)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)(例えば、MOG35-55ペプチド)およびプロテオリピドタンパク質(PLP)(例えば、PLP139-151ペプチド)からなる群から選択される。自己免疫疾患が、I型糖尿病(T1D)である場合、自己抗原は、インスリン、インスリン前駆体プロインスリン(ProIns)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、グリア原線維酸性タンパク質(GFAP)、膵島特異性グルコース-6-ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)、インスリノーマ関連抗原-2(IA-2)および亜鉛トランスポーター8(ZnT8)からなる群から選択される。自己免疫疾患が、関節リウマチである場合、自己抗原は、II型コラーゲン(CTII)である。
【0167】
同じく同種抗原として、同種移植片、遺伝子療法の過程で発現されるタンパク質(用いられるウイルスベクターから発生したウイルス抗原も)および治療性タンパク質により発現される抗原が挙げられるが、これらに限定されないものとする。同種抗原は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、HLA-DM、HLA-DO、HLA-DP、HLA-DQ、HLA-DR、マイナー抗原、例えばHA-1、HA-2、HA-3、HA-8、HB-1、UGT2B17、BCL2A1、HY B7、HY A2、 HY A1、HY B60、HY B8、HY DQ5、HY DRB3、ならびに血液型抗原AおよびBからなる群から選択される。
【0168】
そのため「同種移植片」は、2つの遺伝子的に異なるMHCハプロタイプだけでなくマイナー組織適合性抗原および血液型を有する同じ種の2つの個体間の移植体である。したがって、同種移植片拒絶を予防または処置するために、該IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞は、典型的には患者(またはレシピエント)から単離され、ドナーの細胞を利用することにより増幅される。あるいは該IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞は、ドナーから得られた抗原の混合物を用いることにより増幅され得る。
【0169】
用語「治療性タンパク質」は、任意の所与の状態または疾病の治療におけるタンパク質またはペプチド、およびそれらの投与を指す。治療性タンパク質は、患者に投与される任意のタンパク質またはペプチド、例えば治療性抗体、サイトカイン、酵素または任意の他のタンパク質に関する。タンパク質療法の例は、血漿由来または組換え体凝固因子濃縮物(例えば、第VIIIおよび第IX因子)の投与を介した血友病の処置、モノクローナル抗体を用いた癌もしくは心臓血管疾患の処置、または酵素補充療法による代謝もしくはリソゾーム疾患の処置に関する。
【0170】
詳細な実施形態において、Treg細胞を増幅させるのに適した培地は、一定量のインターロイキン-2(IL-2)および/または一定量のインターロイキン-15(IL-15)、ならびに一定量の少なくとも1種の該当する抗原を含む。
【0171】
別の態様において、本発明は、増幅されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。一実施形態において、本発明は、増幅されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトGITRCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。一実施形態において、本発明は、増幅されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトFoxp3CD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。一実施形態において、本発明は、増幅されたTGFβ-1IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。別の実施形態において、本発明は、GITRおよび/またはFoxp3である、増幅されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。別の実施形態において、本発明は、増幅されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトFoxp3GITRCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。別の実施形態において、本発明は、増幅されたTGFβ-1IFNγIL-10IL-34分泌ヒトFoxp3CD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。別の実施形態において、本発明は、増幅されたTGFβ-1IFNγIL-10IL-34分泌ヒトGITRCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。さらに別の実施形態において、本発明は、増幅されたTGFβ-1IFNγIL-10IL-34分泌ヒトFoxp3GITRCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。
【0172】
先に記載された増幅されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の前記単離集団は、先に記載された本発明のTreg細胞を増幅させる方法によって得ることができる。詳細な実施形態において、前記IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞は、抗原特異性である。
【0173】
本発明はまた、
- ヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料からCD8GITRTreg細胞を単離すること、場合によりヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料からCD8CD45RClowGITRTreg細胞を単離すること、
- 場合により該単離されたTreg細胞を凍結し、続いて解凍すること、および
- 前記細胞を培養で増幅させること、
を含む、本発明によるCD8Treg細胞の集団を生成する方法に関する。
【0174】
一実施形態において、前記方法は、
- ヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料から、IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞であるCD8GITRTreg細胞を単離すること、
- 場合により該単離されたTreg細胞を凍結し、続いて解凍すること、および
- 前記細胞を培養で増幅させること、
を含む。
【0175】
事実、本発明者らは、GITRCD8CD45RClowTreg細胞の亜集団が、高度の抑制活性を有することを実証した。
【0176】
一実施形態において、本発明はまた、
- ヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料からCD8GITRTreg細胞を単離すること、場合によりヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料からCD8CD45RClowGITRTreg細胞を単離すること、
- 場合により該単離されたTreg細胞を凍結し、続いて解凍すること、および
- 前記細胞を培養で増幅させること、
を含む、IFNγIL10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を生成する方法に関する。
【0177】
一実施形態において、前記方法は、
- ヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料から、CD8GITRTreg細胞を単離すること、
場合により該単離されたTreg細胞を凍結し、続いて解凍すること、および
- 前記細胞を培養で増幅させること、
を含む。
【0178】
別の実施形態において、前記方法は、
- ヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料から、CD8CD45RClowGITRTreg細胞を単離すること、
- 場合により該単離されたTreg細胞を凍結し、続いて解凍すること、および
- 前記細胞を培養で増幅させること、
を含む。
【0179】
ヒトCD8Treg細胞を単離する方法、およびTreg細胞を増幅させる方法は、本明細書の先に記載されている。
【0180】
一実施形態において、CD8GITRTreg細胞は、GITRを検出するのに有用な抗体で単離され得る。ヒトGITR抗原に結合する抗体の例としては、モノクローナル抗体MAB689-100、621、eBioAITR、110416が挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
別の実施形態において、CD8CD45RClowGITRTreg細胞は、GITRを検出するのに有用な抗体、およびCD45RCを検出するのに有用な抗体で単離され得る。ヒトGITR抗原に結合する抗体の例としては、モノクローナル抗体MAB689-100、621、eBioAITR、110416が挙げられるが、これらに限定されない。ヒトCD45RC抗原に結合する抗体の例としては、モノクローナル抗体MT2およびRP1/12が挙げられる。
【0182】
一実施形態において、CD8GITRTreg細胞またはCD8CD45RClowGITRTreg細胞は、少なくとも1種の刺激剤でのPBMCまたはリンパ球の活性化後に、本発明の方法により単離される。刺激剤の例は、本明細書の先に記載されている。
【0183】
一実施形態において、本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)またはiPSC由来CD34細胞の培養物から誘導および単離される。本発明の状況において、iPSCまたはiPSC由来CD34細胞の培養物は、例えばヒト末梢血単核細胞(PBMC)を含有する生体試料から得ることができる。
【0184】
本発明はまた、
- ヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料において、CD8GITRTreg細胞を検出すること、場合によりヒト末梢血単核細胞(PBMC)またはリンパ球を含有する生体試料において、CD8CD45RClowGITRTreg細胞を検出すること、
- 前記細胞を除去すること、
- それによりIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞が除去された細胞集団を得ること、
を含む、本発明のCD8Tregの集団を除去する方法に関する。
【0185】
本発明の医薬組成物
本発明はまた、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明によるIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団、好ましくは本発明のCD8ヒトTregの、詳細にはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団を含む組成物を提供する。一実施形態において、本発明による組成物は、本発明のCD8ヒトTregの、詳細にはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の濃縮集団を含む。一実施形態において、本発明による組成物は、本発明のCD8ヒトTregが除去された細胞集団、詳細にはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞が除去された集団を含む。別の実施形態において、本発明による組成物は、本発明の遺伝子改変CD8ヒトTregの集団、詳細には遺伝子改変IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を含む。
【0186】
別の実施形態において、本発明による組成物は、本発明のCD8ヒトTregの、詳細にはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の増幅集団を含む。別の実施形態において、本発明による組成物は、本発明の抗原特異性CD8ヒトTregの増幅集団、詳細には抗原特異性IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の増幅集団を含む。
【0187】
本発明はまた、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明によるIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を含む医薬組成物を提供する。
【0188】
一実施形態において、該医薬組成物は、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団と、医薬的に許容できる担体と、を含む。一実施形態において、該医薬組成物は、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団と、医薬的に許容できる担体と、を含む。一実施形態において、該医薬組成物は、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の濃縮集団と、医薬的に許容できる担体と、を含む。一実施形態において、該医薬組成物は、本発明の遺伝子改変CD8ヒトTregの、詳細には本明細書の先に記載された遺伝子改変IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団と、医薬的に許容できる担体と、を含む。
【0189】
別の実施形態において、該医薬組成物は、本発明の増幅されたCD8ヒトTregの、詳細には本明細書の先に記載された増幅されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団と、医薬的に許容できる担体と、を含む。詳細な実施形態において、該医薬組成物は、本発明の増幅された抗原特異性CD8ヒトTregの、詳細には本明細書の先に記載された増幅された抗原特異性IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団と、医薬的に許容できる担体と、を含む。
【0190】
該医薬組成物は一般に、1種または複数の医薬的に許容できる、そして/または認可された添加剤、抗生物質、防腐剤、アジュバント、希釈剤および/または安定化剤を含み得る。そのような補助物質は、水、生理食塩水、グリセロール、エタノール、湿潤または乳化剤、pH緩衝物質などであり得る。適切な担体は、典型的には大きく緩徐に代謝される分子、例えばタンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、脂質凝集体などである。この医薬組成物は、インビボ投与に適した追加の添加剤、例えばマンニトール、デキストラン、糖、グリシン、ラクトースもしくはポリビニルピロリドンなど、または他の添加剤、例えば抗酸化剤もしくは不活性ガス、安定化剤もしくは組換えタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)を含有し得る。
【0191】
本明細書で用いられる用語「医薬的に許容できる」は、適宜、哺乳動物、特にヒトに投与された時に、有害反応、アレルギー反応または他の望まない反応を生じない分子物質および組成物を指す。医薬的に許容できる担体または賦形剤は、非毒性で固形、半固形、または液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料または任意の型の配合補助剤を指す。
【0192】
本発明はまた、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明によるIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を含む医薬を提供する。一実施形態において、本発明の医薬は、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明によるIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団を含む。一実施形態において、本発明の医薬は、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明によるIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の濃縮集団を含む。一実施形態において、本発明の医薬は、本発明の遺伝子改変されたCD8ヒトTregの、詳細には本発明による遺伝子改変されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団を含む。
【0193】
一実施形態において、本発明の医薬は、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明によるIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の増幅集団を含む。一実施形態において、本発明の医薬は、本発明の抗原特異性CD8ヒトTregの増幅集団、詳細には本発明による抗原特異性IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の増幅集団を含む。
【0194】
本発明のTreg細胞の治療法および使用
上述の通り、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団は、免疫系による自己組織または治療性タンパク質の変性を回避するための自己免疫性、慢性炎症、アレルギー、移植(移植片拒絶またはGVHDを予防または処置するため、のいずれか)、遺伝子療法および治療性タンパク質での処置の分野で関心が寄せられている。本発明によるヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団は、事実、免疫寛容を誘導する能力、ならびに/または免疫反応、好ましくは処置される疾患に関与する抗原(複数可)に対する抗原特異性免疫反応(複数可)および/もしくはCD4T細胞、CD8T細胞により介在される望まない獲得免疫反応、好ましくは免疫T細胞寛容またはT細胞活性化の低減を抑制および/もしくは阻害する能力を示す。好ましくは本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団は、処置される患者から単離される(そしてエクスビボ増幅後に患者に再投与される)。
【0195】
したがって、本発明の態様は、医薬として使用するための、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。本発明の別の態様は、医薬として使用するための、好ましくは抗原特異性の、本発明の増幅されたCD8ヒトTregの、詳細には本発明の増幅されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。
【0196】
本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明によるIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団(好ましくは増幅された抗原特異性集団)は、複数のアプローチにより患者に再導入され得る。好ましくは、それらは静脈内注射される。一実施形態において、約1×10~約1×10細胞が、患者に再導入される。別の実施形態において、約1×10~約10×10細胞/kg患者体重が、患者に再導入される。
【0197】
用語「予防する」、「予防すること」および「予防」は、本明細書において、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明によるIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の投与から得られる、対象における障害の発生もしくは開始の阻害、または障害の1つもしくは複数の症状の再発、開始もしくは発生の予防を指す。
【0198】
本明細書で用いられる用語「処置」は、治療的処置、ならびに防御的および予防的措置を指し、その目的は、標的とされる病理学的障害または状態を予防または緩徐化する(低減する、減弱する)ことである。処置を必要とするものとしては、既に障害を有するもの、および障害を有することが立証されたものが挙げられる。本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明によるIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の治療的量を受けた後、患者が以下の事柄の1つまたは複数において観察可能および/もしくは測定可能な減少、または非存在を示せば、患者は、望まない免疫反応について「処置」に成功している:病原性細胞の数の減少;全細胞のうちの病原性である割合の減少;および/または特異的疾患もしくは状態に関連する症状の1つもしくは複数のある程度の緩和;罹患率および致死率の減少、ならびに生活の質問題の改善。疾患における処置および改善の成功を評定する上記パラメータは、医師に熟知された日常的手順によって即座に測定可能である。
【0199】
本明細書で用いられる用語「患者」は、医療ケアを待っている、もしくは受けているヒト、または医療的処置の対象であった/対象である/対象になる予定のヒト、または疾患の発生もしくは進行をモニタリングされるヒトを指す。一実施形態において、患者は、成人(例えば、18歳を超える患者)である。別の実施形態において、患者は、小児(例えば、18歳未満の患者)である。一実施形態において、患者は、男性である。別の実施形態において、患者は、女性である。
【0200】
本明細書で用いられる用語「治療有効量」は、標的への有意な負の作用または有害副作用を誘発せずに、(1)望まない免疫反応の開始を遅延もしくは予防すること;(2)望まない免疫反応の1つまたは複数の症状の進行、深刻化もしくは悪化を緩徐化もしくは停止させること;(3)望まない免疫反応の症状の緩和をもたらすこと;(4)望まない免疫反応の重症度もしくは発生率を低減すること;または(5)望まない免疫反応を治癒させること、を目的とする、本発明のCD8ヒトTregの、詳細にはIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の数を指す。治療有効量は、防御もしくは予防作用のために、望まない免疫反応の開始前に投与され得る。代わりまたは追加として、該治療有効量は、治療作用のために、望まない免疫反応の開始後に投与され得る。該有効量は、患者の年齢、性別、種族、一般的状態など、処置される病気の重症度、処置期間、任意の併用処置の性質、用いられる医薬的に許容できる担体、ならびに当業者の知識および専門技術内の類似の因子に応じて変動するであろう。適宜、任意の個体における「有効量」は、関連する教書および文献を参照することにより、そして/または日常的実験を利用することにより、当業者によって決定され得る(例えば、Gennaro et al.,Eds.Remington’s The Science and Practice of Pharmacy,20th edition,(2000),Lippincott Williams and Wilkins,Baltimore MD;Braunwald et al.,Eds.Harrison’s Principles of Internal Medicine,15th edition,(2001),McGraw Hill,NY;Berkow et al.,Eds.The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,(1992),Merck Research Laboratories,Rahway NJ参照)。
【0201】
一実施形態において、本発明は、自己免疫疾患を予防または処置する方法において使用するための、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。
【0202】
一実施形態において、本発明は、自己免疫疾患を予防または処置する方法において使用するための、本発明の増幅されたCD8ヒトTregの、詳細には本発明の増幅されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。
【0203】
本発明はまた、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団の治療有効量を、必要とする患者に投与するステップを含む、自己免疫疾患を予防または処置する方法に関する。
【0204】
本明細書で用いられる用語「自己免疫疾患」は、免疫系が正常な宿主の一部である抗原(即ち自己抗原)に対して免疫反応(例えば、B細胞またはT細胞の応答)を生成し、結果的に組織の傷害を伴う疾患を指す。自己免疫疾患において、宿主の免疫系は、特定の抗原を「自己」と認識することができず、免疫反応が抗原を発現する宿主組織に対して開始される。
【0205】
ヒトに影響を及ぼす模範的な自己免疫疾患としては、関節リウマチ、若年性少関節炎、コラーゲン関節炎、アジュバント関節炎、ブドウ膜炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、炎症性腸疾患(例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎)、自己免疫性胃萎縮、尋常性天疱瘡、乾癬、白斑、1型糖尿病、非肥満型糖尿病、重症筋無力症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、硬化性胆管炎、硬化性唾液腺炎、全身性エリテマトーデス、自己免疫性血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、アジソン病、全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、後天性血友病、血栓性血小板減少性紫斑病などが挙げられる。
【0206】
別の実施形態において、本発明は、慢性炎症性疾患を予防または処置する方法において使用するための、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。
【0207】
一実施形態において、本発明は、慢性炎症性疾患を予防または処置する方法において使用するための、本発明の増幅されたCD8ヒトTregの、詳細には本発明の増幅されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。
【0208】
ヒトに影響を及ぼす慢性炎症性疾患の例としては、非自己免疫性炎症性腸疾患、術後癒着、冠動脈疾患、肝線維症、急性呼吸促拍症候群、急性炎症性膵炎、内視鏡的逆行性胆道膵管造影誘発性膵炎、熱傷、冠動脈、大脳動脈および末梢動脈のアテローム形成、虫垂炎、胆嚢炎、憩室炎、内臓線維性障害(visceral fibrotic disorder)、創傷治癒、皮膚瘢痕障害(skin scarring disorder)(ケロイド、汗腺膿瘍)、肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変)、喘息、壊疽性膿皮症、スイート症候群、ベーチェット病、原発性硬化性胆管炎および膿瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0209】
別の実施形態において、本発明は、移植片拒絶を予防もしくは処置する(または移植体寛容性を誘導する)方法、またはGVHDを予防もしくは処置する方法において使用するための、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。
【0210】
別の実施形態において、本発明は、移植片拒絶を予防もしくは処置する(または移植体寛容性を誘導する)方法、またはGVHDを予防もしくは処置する方法において使用するための、本発明の増幅されたCD8ヒトTregの、詳細には本発明の増幅されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。
【0211】
本発明はまた、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団の治療有効量を、必要とする患者に投与するステップを含む、移植片対宿主病(GVHD)を予防もしくは処置する方法、または移植片拒絶を予防もしくは処置する(または移植体寛容性を誘導する)方法に関する。
【0212】
本明細書で用いられる用語「移植片拒絶」は、急性および慢性移植片拒絶の両方を包含する。「急性拒絶」は、移植された組織が免疫学的に外来物である場合の、組織移植体レシピエントの免疫系による拒絶である。急性拒絶は、エフェクター機能を実施して、移植片組織を破壊する、レシピエントの免疫細胞による移植片組織の浸潤を特徴とする。急性拒絶の開始は急速であり、一般にはヒトにおいて、移植手術後2、3週間以内に起こる。一般に急性拒絶は、ラパマイシン、シクロスポリン、抗CD40Lモノクローナル抗体などの免疫抑制剤で阻害または抑制され得る。「慢性移植片拒絶」は、一般にはヒトにおいて、急性拒絶の免疫抑制が成功した場合でも、生着後数ヶ月~数年以内に起こる。線維症は、全てのタイプの臓器移植片の慢性拒絶における共通の要因である。
【0213】
用語「移植」およびその変形例は、移植が同系間であるか(ドナーとレシピエントが遺伝子的に同一であるか)、同種間であるか(ドナーとレシピエントが異なる遺伝子起源であるが同じ種のものであるか)、または異種間であるか(ドナーとレシピエントが異なる種のものであるか)にかかわらず、レシピエントへの移植体(移植片とも呼ばれる)の挿入を指す。したがって典型的なシナリオにおいて、宿主はヒトであり、移植片は同一または異なる遺伝子起源のヒトに由来する同系移植片である。別のシナリオにおいて、移植片は、系統学的に広範囲に分別された種の動物をはじめとする、移植される種と異なる種に由来する(例えばヒト宿主へ移植されるヒヒの心臓)。
【0214】
一実施形態において、移植片のドナーは、ヒトである。移植片のドナーは、生存するドナーまたは死去したドナー、即ち屍体のドナーであり得る。
【0215】
一実施形態において、移植体は、臓器、組織または細胞である。
【0216】
本明細書で用いられる用語「臓器」は、生物体内で特定の機能、または機能群を実施する固形の血管形成された臓器を指す。臓器という用語は、心臓、肺、腎臓、肝臓、膵臓、皮膚、子宮、骨、軟骨、小腸または大腸、膀胱、脳、乳房、血管、食道、卵管、胆嚢、卵巣、膵臓、前立腺、胎盤、脊髄、上肢および下肢を含む四肢、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、気管、輸尿管、尿道を包含するが、これらに限定されない。本明細書で用いられる用語「組織」は、ヒトまたは動物における任意のタイプの組織を指し、脈管組織、皮膚組織、肝臓組織、膵臓組織、神経組織、泌尿生殖組織、胃腸組織、骨および軟骨を含む骨格組織、脂肪組織、腱および靱帯を含む結合組織、羊膜組織、絨毛膜組織、硬膜、心膜、筋肉組織、腺組織、顔の組織、眼組織を包含するが、これらに限定されない。
【0217】
本明細書で用いられる用語「細胞」は、該当する細胞が濃縮された組成物、好ましくは少なくとも約20%、約30%、約40%、好ましくは少なくとも約50%、約60%、より好ましくは少なくとも約65%、約70%、約75%、約80%の前記細胞を含む組成物を指す。
【0218】
特定の実施形態において、該細胞は、骨髄、末梢血、もしくは臍帯血に由来する多能性造血幹細胞;または多能性(即ち、胚性幹細胞(ES)または人工多能性幹細胞(iPS))もしくはマルチポテント(multipotent)幹細胞に由来する異なる細胞系列、例えば心筋細胞、ベータ膵臓細胞、肝細胞、神経細胞などの分化細胞からなる群から選択される。
【0219】
一実施形態において、該細胞組成物は、同種造血幹細胞移植(HSCT)に用いられ、したがって通常は骨髄、末梢血または臍帯血に由来する、マルチポテント造血幹細胞を含む。
【0220】
HSCTは、白血病およびリンパ腫の患者に治癒性があり得る。しかし同種HCTの重要な限界は、この治療を受けたヒトの約30~50%に重度形態で起こる移植片対宿主病(GVHD)の発症である。
【0221】
別の実施形態において、本発明は、治療性タンパク質に対する任意の望まない免疫反応を予防または処置する方法において使用するための、本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。
【0222】
別の実施形態において、本発明は、治療性タンパク質に対する任意の望まない免疫反応を予防または処置する方法において使用するための、本発明の増幅されたCD8ヒトTregの、詳細には本発明の増幅されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。
【0223】
本発明はまた、本発明のCD8ヒトTregの集団、詳細には本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団の治療有効量を、必要とする患者に投与するステップを含む、治療性タンパク質に対する任意の望まない免疫反応を予防または処置する方法に関する。
【0224】
本明細書で用いられる用語「治療性タンパク質に対する望まない免疫反応」は、遺伝子療法の過程で発現されたタンパク質、および/または治療性タンパク質、例えば第VIII因子(血友病A)および他の凝固因子、酵素補充療法、モノクローナル抗体(例えば、ナタリズマブ、リツキシマブ、インフリキシマブ)、ポリクローナル抗体、酵素またはサイトカイン(例えば、IFNβ)に対する任意の望まない免疫反応を指す。
【0225】
別の実施形態において、本発明は、アレルギーの予防または処置において使用するための、本発明のCD8ヒトTregの単離集団、詳細には本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。
【0226】
別の実施形態において、本発明は、アレルギーの予防または処置において使用するための、本発明の増幅されたCD8ヒトTregの単離集団、詳細には本発明の増幅されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の単離集団に関する。
【0227】
本発明はまた、本発明のCD8ヒトTregの集団、詳細には本発明のIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の集団の治療有効量を、必要とする患者に投与するステップを含む、アレルギーを予防または処置する方法に関する。
【0228】
本明細書で用いられる用語「アレルギー」または「アレルギー(複数)」は、免疫系の障害(または不適切な反応)を指す。アレルギー反応は、通常は無害の、アレルゲンとして知られる環境物質に発生するが、これらの反応は、獲得され、予測可能であり、かつ急速である。厳密にはアレルギーは、4形態の過敏のうちの1つであり、I型(または即時型)過敏と呼ばれる。それは、IgEとして知られる抗体タイプによる肥満細胞および好塩基球と呼ばれる特定の白血球の過剰な活性化により極度の炎症反応を生じることを特徴とする。一般のアレルギー反応としては、湿疹、蕁麻疹、花粉症、喘息、食物アレルギーならびにスズメバチおよびミツバチなどの刺咬昆虫の毒への反応が挙げられる。
【0229】
一実施形態において、該対象は、患者である。
【0230】
一実施形態において、該対象は、慢性炎症性疾患に罹患し、好ましくはそれと診断されている。
【0231】
一実施形態において、該対象は、自己免疫疾患に罹患し、好ましくはそれと診断されている。
【0232】
一実施形態において、該対象は、過去に移植されているか、または移植される予定である。
【0233】
一実施形態において、該対象は、過去に治療性タンパク質を受けているか、または治療性タンパク質を受ける予定である。
【0234】
一実施形態において、該対象は、アレルギーに罹患し、好ましくはそれと診断されている。
【0235】
一実施形態において、該対象は、免疫抑制剤、例えばラパマイシン、シクロスポリンA、ミコフェノール酸モフェチル、メチルプレドニゾロン、タクロリムスまたはそれらの組み合わせで処置される。別の実施形態において、該対象は、免疫抑制剤、例えばラパマイシン、シクロスポリンA、ミコフェノール酸モフェチル、メチルプレドニゾロン、タクロリムスまたはそれらの組み合わせで処置されない。
【0236】
本発明の予後診断法
別の態様において、本発明は、患者が移植片拒絶、GVHD、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、治療性タンパク質への望まない免疫反応またはアレルギー(上記定義)のリスクがあるか否かを決定するためのインビトロ法であって、本発明の方法により前記患者から得られた生体試料中の本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の存在を決定するステップを含み、本発明のCD8ヒトTregの存在、詳細には本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の存在が、移植片拒絶、GVHD、慢性炎症性疾患、自己免疫疾患、治療性タンパク質への望まない免疫反応またはアレルギーのリスク低減の指標である、インビトロ法に関する。
【0237】
本明細書で用いられる用語「リスク」は、移植片拒絶の開始など、ある事象が特定の期間に起こる確率を指し、対象の「絶対」リスクまたは「相対」リスクを意味し得る。絶対リスクは、関連する時間コホートのための実際の測定後観測、または関連の期間に従った統計学的に正当な歴史的コホート研究から発生した指標値のいずれかを参照して測定され得る。相対リスクは、低リスクコホートの絶対リスクまたは平均人口リスクのいずれかと比較された患者の絶対リスクの比率を指し、臨床危険因子が評定される方法によって変動し得る。所与のテスト結果の負の事象に対する正の事象の割合であるオッズ比もまた、一般に用いられる(オッズは、式:p/(1-p)(式中、pは、事象の確率であり、(1-p)は、事象がない確率である)に従う)。
【0238】
本発明の状況における「リスクの決定」は、事象が起こり得る確率、オッズ、または尤度を予測することを包含する。リスクの決定は、絶対的用語、または過去に測定された母集団を参照した相対的用語のいずれかの、将来の臨床パラメータ、伝統的検査危険因子値、例えば年齢、性別の不適合、HLA検査などの予測も含み得る。本発明の方法を用いて、移植片拒絶のリスクの分類測定を行い、これにより移植片拒絶のリスクがあると定義された移植患者の分類のリスク範囲を定義することができる。
【0239】
本明細書で用いられる用語「存在を決定すること」は、対照値または所定の値を参照した、または参照しない定性的および/または定量的検出(即ち、存在の検出および/または測定)を包含する。本明細書で用いられる「検出すること」は、本発明のCD8ヒトTreg、詳細には本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞が、生体試料中に存在するか否かを決定することを意味し、「測定すること」は、生体試料中の本発明のCD8ヒトTregの量、詳細には本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の量を決定することを意味する。
【0240】
本明細書で用いられる用語「生体試料」は、当該技術分野における一般的意味を有し、インビトロ評価の目的で患者から得ることができる任意の試料を指す。好ましい生体試料は、血液試料(例えば、全血試料、血清試料、または血漿試料)、より詳細には移植患者、または自己免疫疾患もしくはアレルギーに罹患した患者から得られた血液試料である。
【0241】
さらに別の態様において、本発明は、移植患者(レシピエント)が寛容であるか否かを決定するインビトロ法であって、本発明の方法により前記移植患者から得られた生体試料における本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の存在を決定するステップを含み、本発明の方法により前記移植患者から得られた生体試料中の本発明のCD8ヒトTregの、詳細には本明細書の先に記載されたIFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTreg細胞の存在が、寛容性の指標である、インビトロ法に関する。
【0242】
本明細書で用いられる用語「寛容」または「免疫寛容」は、免疫反応を誘発する能力を有する物質または組織への免疫系の非応答状態を指す。本明細書で用いられる用語「免疫反応」は、T細胞介在性および/またはB細胞介在性免疫反応を包含する。模範的免疫反応としては、T細胞反応、例えばサイトカイン生成および細胞内細胞障害性を包含し、加えて免疫反応という用語は、T細胞活性化により間接的に実行される免疫反応、例えば抗体生成(液性反応)およびサイトカイン応答性細胞、例えばマクロファージの活性化を包含する。免疫反応に関与する免疫細胞としては、リンパ球、例えばB細胞およびT細胞(CD4、CD8、Th1およびTh2細胞);抗原提示細胞(例えば、樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞);ナチュラルキラー細胞;骨髄細胞、例えばマクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球、および顆粒球が挙げられる。
【0243】
本発明を、以下の図および実施例によりさらに例示する。しかしこれらの実施例および図は、本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0244】
図1】ヒトCD8CD45RClowTregはヒトCD4CD25CD127Tregよりも効率的に抗ドナー免疫反応を抑制する。CD8CD45RClowT細胞を、16:1~1:4の範囲内のエフェクター:サプレッサー比の同種T細胞除去PBMCで刺激された同系エフェクターCD4CD25T細胞の増殖への抑制活性について、古典的CD4CD25CD127Tregと比較した。二元配置RM ANOVA。増殖は、Tregの非存在下での増殖に正規化した。:p<0.05。
図2】ヒトCD8CD45RClowTregの抑制活性はpDCとの相互作用により優先的に上昇する。選別されたCD8+ Tregを、抗CD3および抗CD28 mAbで12時間刺激し、8:1~1:1の範囲内のエフェクター:サプレッサー比の同種T細胞除去PBMC(APC)、cDCまたはpDCで刺激された同系エフェクターCD4CD25T細胞の増殖への抑制活性について分析した。二元配置RM ANOVA。増殖は、Tregの非存在下での増殖に正規化した。:p<0.05、**:p<0.01。
図3】ヒトCD8CD45RClowTregの亜集団はGITRを発現する。表面受容体GITRの発現を、単離されたCD8CD45RClowTregおよび単離されたCD8CD45RChighTregにおいてフローサイトメトリーによって分析した。結果を、GITRを発現する細胞の平均割合%(+/-SEM)として表す。
図4】TGFβ-1、IL34、IFNγおよびGITRの発現をFoxp3ヒトCD8Tregに濃縮する。PBMCを、Ficoll勾配により健常な志願者の血液から単離して、10μg/ml Brefeldine Aの存在下、50ng/ml PMAおよび1μg/mlイオノマイシンで4時間刺激した。生存可能な細胞でのゲーティングの後、単離されたCD8細胞集団を、Foxp3、IL-34、IFNγ、TGFβ-1およびGITRの発現に関するFACS染色により分析した。1つの代表的な実験。A.Foxp3およびCD45RCの発現を、CD8Tregで分析した。B.IL-34、IFNγ、GITRおよびTGFβ-1の発現を、Foxp3CD45RClow、Foxp3CD45RClowおよびCD45RChighCD8細胞において決定した。
図5】ヒトCD8CD45RClowTregの特異的亜集団はインビトロで高い抑制能力を実証する。A.選別されたCD8Tregを、抗CD3および抗CD28 mAbで24時間刺激し、IFNγおよび/またはIL-10分泌について選別して、同系CFSE標識CD4CD25T細胞を同種T細胞除去PBMCにより刺激するMLRアッセイにおいて、一定範囲のエフェクター:サプレッサー比で抑制活性についてテストした。選別されたCD8Tregを、全ての抗CD3+抗CD28 mAb刺激CD8Tregと比較した。二元配置RM ANOVA。増殖は、Tregの非存在下での増殖に正規化した。**:p<0.01。B.選別されたCD8CD45RClowTregを、1μg/ml抗CD3および抗CD28 mAbで12時間刺激して、FACS AriaによりGITR発現について新たに選別した。GITRCD8CD45RClowTregおよびGITRCD8CD45RClowTregを、32:1~1:1の範囲内のエフェクター:サプレッサー比の同種T細胞除去PBMCで刺激された同系エフェクターCD4CD25T細胞の増殖への抑制活性について分析した。二元配置RM ANOVA。増殖は、Tregの非存在下での増殖に正規化した。**:p<0.01。
図6】IFNγ、IL-10およびIL-34はCD8CD45RClowTreg抑制の重要な介在物質である。50μg/ml 抗IL-34(α-IL-34)、抗IL-10(α-IL-10)もしくは抗IFNγサイトカイン(α-IFNγ)、またはそれらの抗受容体抗IL-10R(α-IL-10R)もしくは抗IFNγR(α-IFNγR)精製ブロッキングAbを、選別されたCD8CD45RClowT細胞と、同種T細胞除去PBMCで刺激された同系CFSE標識エフェクターCD4CD25T細胞と、を用いた共培養アッセイの0日目に添加した。Tregの存在下での増殖は、Tregの非存在下での増殖に正規化した。ブロッキングAbの存在下での抑制を、アイソタイプ対照Abの存在下での抑制に正規化した。
図7】ヒトCD8CD45RClowTregの抑制活性は接触依存性である。トランスウェル実験を、以下の通り実施した:選別されたCD8Tregを、抗CD3および抗CD28 mAbで12時間刺激して、IL-2の存在下で5日間培養した後、同種T細胞除去PBMCで刺激された同系エフェクターCD4CD25T細胞の増殖への抑制活性について分析した。同種T細胞除去PBMCを、上部ウェルと下部ウェルの両方に添加した。1:1~1:4の範囲内のエフェクター:サプレッサー比で、Tregを上部ウェルに添加し、CD4CD25T細胞を下部ウェルに添加した。二元配置RM ANOVA。増殖は、Tregの非存在下での増殖に正規化した。:p<0.05。
図8】14日間の刺激後の、新たに選別されたCD8CD45RClowTregと解凍されたCD8CD45RClowTregの両方の顕著な増幅。A.選別されたCD8Tregを、0日目に場合により抗CD3および抗CD28 mAb(ポリ)と共に、同種APC(APC)で刺激し、同じAPC(APC)またはAPCおよび抗CD3+抗CD28 mAb(ポリ)で再度刺激した、または刺激しなかった(Xと記載)。グラフは、14日間の培養で得られた細胞の倍率増幅を表す。B.新たに選別された(新鮮)または解凍されたCD8CD45RClow細胞を、0日目に1:4のTreg:APC比の同種T細胞除去PBMCならびに1μg/ml抗CD3および抗CD28 Abと共に完全培地に3.3×10細胞/mlで播種した。7日目に、Tregを1μg/ml抗CD3および抗CD28で再度刺激した。0、7、10および12日目に、培地に1000U/mlヒトIL-2および10ng/mlヒトIL-15を補充した。14日目に、Tregを増幅収率について分析した。グラフは、14日間の培養で得られた細胞の倍率増幅を表す。解凍された細胞は、有意に高い増幅を示している。マン・ホイットニーt検定 ***:p<0.001。
図9】増幅されたCD8+ Tregは免疫抑制剤の存在下で生存する。選別されたCD8+ Tregを、0日目に1:4のTreg:APC比の同種T細胞除去PBMCならびに1μg/ml抗CD3および抗CD28 Abで刺激した。7日目に、Tregを1μg/ml抗CD3および抗CD28で再度刺激した。0、7、10および12日目に、培地にヒトIL-2(1000U/ml)およびヒトIL-15(10ng/ml)を補充した。14日目に、Tregを免疫抑制剤(IS):シクロスポリンA(CsA)、ミコフェノール酸モフェチル(MPA)、メチルプレドニゾロン(MPr)、ラパマイシン(Rapa)、またはタクロリムス(Tacro)の存在下または非存在下で(非処置-NT)、そしてIL-2/IL-15の存在下または非存在下で、同種APCで再度刺激した。Tregの生存率を、6日後に分析した。グラフは、最後の6日間の培養後に得られた細胞生存率%を表す。生存率%を、免疫抑制剤(IS)の添加前14日目の増殖に対して正規化した。
図10】CD8Tregは同じ培養条件のCD4Tregよりも効率的に増殖する。選別されたCD8CD45RClow(CD8)およびCD4CD25highCD127low(CD4)Tregを、0日目に1:4のTreg:APC比の同種T細胞除去PBMCならびに1μg/ml抗CD3および抗CD28 Abで刺激した。7および14日目に、Tregを1μg/mlの抗CD3および抗CD28で再度刺激した。0、7、10、12、14、17および19日目に、培地に1000U/mlヒトIL-2および10ng/mlヒトIL-15を補充した。Treg増幅収率を、7日ごとに分析した。二元配置RMボンフェローニ事後検定。:p<0.05。
図11】増幅されたCD8CD45RClowTregは同種CD4CD25エフェクターT細胞応答の抑制時に有意により効率的である。APCまたは抗CD3+抗CD28 mAb+APCで7日間増幅されたTregを、増幅に用いられた同種APCで刺激された同系CD4CD25T細胞(Tregのドナーから選別)への抑制活性についてテストした。同じドナーからの解凍、選別および非増幅Treg(Xと記載)で、初期抑制活性を定義した。増殖は、Tregの非存在下での増殖に正規化した。
図12】増幅されたCD8CD45RClowTregはIFNγ、IL-10およびIL-34分泌Tregに濃縮される。14日間増幅されたCD8CD45RClowTreg(「増幅」)のサイトカイン発現(IL-10、IL-34およびIFNγ)を分析して、増幅前のCD8CD45RClowTreg(「新鮮」)のそれに比較した。**p<0.01、***p<0.001。
図13】IFNγの分泌増加はCD8CD45RClowTregの上清で検出することができる。CD8CD45RClow細胞を、1μg/ml抗CD3および抗CD28 Abで一晩刺激し、MLRアッセイに添加して同系エフェクターCD4+CD25-T細胞を1:1のエフェクター:サプレッサー比の同種T細胞除去PBMCで刺激するか、または14日間の増幅のために1:4のTreg:APC比の同種T細胞除去PBMC、ならびに1μg/ml抗CD3および抗CD28 Abを含む完全培地に3.3×10細胞/mlで播種した。7日目に、Tregを1μg/mlの抗CD3および抗CD28 Abで再度刺激して、培地を交換した。0、7、10、および12日目に、培地に1000U/mlのヒトIL-2および10ng/mlのヒトIL-15を補充した。IFNγを、14日目にELISAにより培養上清中で測定した。
図14】増幅されたCD8CD45RClowTregは同種ヒト皮膚拒絶を効率的に抑制する。A.ヒト皮膚をNSGマウスに移植して、受容(acceptance)のために15日間放置した。移植片に対して同種のPBMC 5×10個をその後、同系の15日間増幅Treg(eTreg)と共に、またはそれを含まずに腹腔内に移した。B.移植片拒絶を評価して、スコアづけした。C.マウス生存率%を、評定した。
図15】増幅されたCD8CD45RClowTregはヒト化マウスにおけるGVHDを効率的に抑制する。A.異種GVHD実験のために、1.5×10個の同系PBMCを、12時間予備照射されたNSGマウスに、1:1および1:2のPBMC:増幅Treg比のポリクローナル増幅された(polyclonally expanded)Treg(eTreg)と共に、またはそれを含まずに静脈内移入した。B.ヒトPBMC生着を血中でモニタリングして、GVH発生を重量減少により評価した。C.マウスの生存率%を、評定した。:p<0.05、**:p<0.01。
【実施例
【0245】
実施例:IFNγIL-10IL-34分泌ヒトCD8CD45RClowTregの新しい集団は、移植片拒絶を効率的に抑制する
材料と方法
健常な志願者の血液採取およびPBMC分離:
血液を、Etablissement Francais du Sang(フランス、ナント所在)で、健常なドナーから採取した。この試験の認可を、当該協会の審査委員会から得た。記入されたインフォームドコンセントが、当該協会のガイドラインに従って提供された。血液をPBSで二倍希釈した後、PBMCを2000rpm、室温で20のブレーキを用いないFicoll-Paque密度勾配遠心分離(Eurobio、フランスのコートアボフ所在)により単離した。採取されたPBMCを1800rpmで10分間、PBS 50mLで洗浄して、残留する赤血球および血小板を、低浸透性溶液中、5分間のインキュベーションおよび1000rpmで10分間の遠心分離の後に排除した。指示されれば、PBMCをDMSO:SVF 1:9中に凍結し、解凍の間、培地-10%SVFで2回洗浄した。
【0246】
細胞の単離:
B細胞(CD19細胞)および残りの単球(CD14およびCD16細胞)のエルトリエーション(DTC Plateforme、ナント所在)および磁気除去(Dynabeads、Invitrogen)による陰性選択と、その後のレスポンダー細胞としてのCD3CD4CD25細胞、CD8TregとしてのCD3CD4CD45RClow、およびCD4Treg細胞としてのCD3CD4CD25CD127low細胞の選別により、T細胞をPBMCから得た。解凍されたPBMCから選別されたTregを、250U/ml IL-2の存在下、抗CD3および抗CD28 mAbで24時間刺激した後、播種した。IFNγおよび/またはIL-10分泌細胞を、Miltenyiの分泌アッセイ検出キットを用いたTregの24時間ポリクローナル刺激の後、選別した。FACS ARIA I(BD Biosciences、カリフォルニア州マウンテンビュー所在)を用いて、細胞を選別した。
【0247】
刺激細胞として用いられたAPCを、CD3細胞の磁気除去および35Gy照射により得た。pDCおよびcDCを、それぞれCD3、CD14、およびCD16陽性細胞除去、ならびにNrp1またはCD1c細胞選別により得た。
【0248】
モノクローナル抗体およびフローサイトメトリー:
インターロイキン、IFNγおよびFoxp3の分析のために、PBMCを、PMA(50ng/ml)およびイオノマイシン(1μg/ml)で7時間、最後の4時間はBrefeldine A(10μg/ml)の存在下で刺激した。
【0249】
蛍光を、それぞれ表現型および機能分析のためにLSR IIまたはCanto IIサイトメーター(BD Biosciences、カリフォルニア州マウンテンビュー所在)で測定し、FLOWJOソフトウエア(Tree Star,Inc.米国所在)を用いて、データを解析した。細胞を最初、生存可能な細胞を選択することで死亡細胞を除去する形態学的測定によりゲーティングした。
【0250】
混合リンパ球の反応:
Treg抑制活性を、同種APCで刺激された同系エフェクターCD4CD25T細胞(Tregのドナーから得られた)で評価した。刺激物質:エフェクター比の範囲を、DCで刺激された時にレスポンダー細胞の顕著な増殖に到達するようにテストして、他の実験はAPC:レスポンダー比 1:1で実行した。ブロッキングmAbまたはアイソタイプ対照mAbを、共培養の0日目に50μg/mlで添加した。トランスウェル膜(0.4μMφ)を用いて、両者とも刺激細胞と接触させながら、Tregをレスポンダー細胞から隔離した。1000U/ml IL-2(Miltenyi)を添加して、Tregによるサイトカイン損失を評定した。解凍されたPBMCから増幅されたTregの抑制活性を、増幅に用いられたものと同じドナーから得られた同種APCで刺激された同系エフェクター細胞で評定し、解凍されたPBMCと同じドナーから選別された非刺激Tregに比較した。5%AB血清培地での共培養の4.5日後に、CD3CD4生存細胞(DAPI陰性)でゲーティングして、添加の際にCPD-V450標識CD4Tregを除去することにより、CFSE標識レスポンダー細胞の増殖をフローサイトメトリーで分析した。
【0251】
Tregの増幅:
Tregを、IL-2(1000U/ml)およびIL-15(10ng/ml)を補充された5%AB血清培地に約3×10個/mlで播種して、1:4のTreg:APC比のコーティング抗CD3 mAb(1μg/ml)、可溶性抗CD28 mAb(1μg/ml)および/または同種APCで刺激した。7日目に、増幅された細胞を1×10個/mlに希釈して、再度刺激した、または刺激しなかった。IL-2およびIL-15サイトカインを、0、7、10および12日目に新たに添加した。14日目に、増幅されたTregを使用前にPBSで洗浄した。
【0252】
ヒト化マウスモデル:
8~12週齢NOD/SCID/IL-2Rγ-/-(NSG)マウスを、SPF条件の本発明者らの動物施設にて飼育した。この試験は、Pays de la Loire(承認番号CEEA.2012.155)のCommittee on the Ethics of Animal Experimentsにより認可されたプロトコルを厳密に遵守して実施した。
【0253】
異種GVHD実験では、1.5×10個同系PBMCを、12時間予備照射されたNSGマウスにおいて、1:1および1:2のPBMC:増幅Treg比のポリクローナル増幅Tregと共に、またはそれを含まずに静脈内移入した。ヒトPBMC生着を血中でモニタリングして、GVH発生を重量減少および肺、肝臓、腸、脾臓、腎臓の組織病理学的分析により評価した。
【0254】
移植モデルでは、ヒト皮膚が健常な志願者から、CHU Nantesにより提供され、移植片がNSGマウスにより15日間受容された。移植片と同種の5×10個PBMCを同系の15日間増幅Tregと共に、またはそれを含まずに腹腔内移入した。移植片拒絶のスコアを、評価した。
【0255】
結果
ヒトCD8CD45RClowTregはヒトCD4CD25CD127Tregよりも効率的な抗ドナー免疫反応抑制物質である
過去の試験で、MHCミスマッチ心臓同種移植片ラットモデルにおけるCD40Igでの処置により誘導された移植片受容におけるCD8CD45RClowT制御性細胞の関与が記載されている(Guillonneau et al.,2007;Li et al.,2010)。両方の試験で、CD40Ig誘導性同種移植片受容におけるIFNγの重要な役割が強調された。
【0256】
健常な個体におけるCD45RCマーカーの表現型分析から、CD45RCマーカーが複数の個体のオーバーレイにより明らかな通り健常個体で差示的に表されることが示された。この差示的表現は、年齢または性別に関係しなかった。
【0257】
最初、全ヒトCD8CD45RClowT細胞サブセットの抑制活性を評定して、CFSE標識CD4CD25T細胞を同種T細胞除去PBMCにより刺激するMLRアッセイで、異なる比率で添加された場合の周知のCD4CD25CD127Tregの抑制活性に比較した(図1)。興味深いこととして、ヒトCD8CD45RClowTregは、全ての比率のCD4CD25CD127Tregに比較して、抗ドナーCD4CD25エフェクターT細胞増殖への有意に優れた抑制能力を示す。
【0258】
ラットにおいて、CD8CD45RClowTregとpDCとの優先的相互作用を、最適な抑制活性を発揮するCD8CD45RClowTregについて同定した。したがってヒトCD8CD45RClowの抑制能力を、刺激物質としてのT細胞除去PBMCに比較して、異なる比率のcDC(CD3CD19CD1cNrp-1)、pDC(CD3CD19CD1cNrp-1)の存在下でテストした(図2)。興味深いこととして、CD8CD45RClowTregのより低い抑制活性が、pDCおよびT細胞除去PBMCに比較してcDCの存在下で観察され、ヒトにおいては、ラットの場合と同様に、pDCがCD4エフェクターT細胞へのCD8CD45RClowTreg抑制活性を介在するのに必須であることが示唆された。
【0259】
結論として、pDCの存在下でのヒトCD8CD45RClowTregが、CD4CD25+CD127- Tregよりも効率的に抗ドナーCD4CD25エフェクターT細胞応答を抑制する。
【0260】
CD8CD45RClowTregの亜集団は、IFNγ、IL-34およびIL-10を発現する
ヒトCD8CD45RClowTregを特徴づけるために、詳細な表現型分析を、13色フローサイトメトリーを利用して実施した。複数のマーカー、即ち、CD103、CTLA-4、GITRなどのTreg、またはIFNγ、IL-34もしくはIL-10などのサイトカインについて過去に記載されたマーカーに加え、ヒトCD8Tregの公知マーカー、即ちCD28およびCD122を分析して、全CD8CD45RClowTregサブセット内の亜集団の存在を評定した。
【0261】
マーカーのスクリーニングから、CD8CD45RChighT細胞に比較してCD8CD45RClowTregで、CD69、CD71、CD103、Foxp3、Tbet、HLA-DR、CD154、IFNγ、IL-2およびIL-34発現の有意なアップレギュレーションおよびCD38発現の減少が明らかになり、総括すると活性化された免疫寛容原性促進性(pro-tolerogenic)細胞のプロファイルが示唆された。
【0262】
CD45RC、CD28およびCD122の共発現分析から、各亜集団がCD45RCマーカーの内部に存在するが、CD8CD28TregおよびCD8CD122Tregが全てではないがCD45RClowマーカー内に含まれることが明らかになり、これらのマーカーのそれぞれが異なるTreg亜集団を同定することが示唆される。
【0263】
特に興味深いこととして、IFNγおよびIL-34の有意な発現が、CD8CD45RClowTregで観察され(それぞれ約60%および20%)、IL-34の大部分がIL-10分泌細胞により共発現された。
【0264】
細胞表面受容体GITRの発現を、CD8CD45RClowTregおよびCD8CD45RChighTregで評定した(図3)。フローサイトメトリー分析により、CD8CD45RChighTregの集団(細胞の約5%がGITRを発現)よりもCD8CD45RClowTregの集団(細胞の約15%がGITRを発現)で、GITRが有意に多く発現されることが示された。したがって(Tus)、CD8CD45RClowTregの中に、GITRCD8CD45RClowTregの亜集団が存在する。
【0265】
最後に、CD3CD8CD45RClowTregを、生存可能な細胞でのゲーティングの後に、Foxp3、IL-34、IFNγ、TGFβ-1およびGITRの発現についてFACS染色することにより分析した(図4)。CD3CD8CD45RClowTregを、10μg/ml Brefeldine Aの存在下で、50ng/ml PMAおよび1μg/mlイオノマイシンで4時間刺激されたPBMCから得た。Foxp3CD8CD45RClowTregのみが、GITR、TGFb1およびIL-34を発現した。Foxp3CD8CD45RClowTregはまた、Foxp3CD8CD45RClowTregよりも高レベルのIFNγを発現した。
【0266】
結論として、IL-34、TGFb1およびGITRの発現は、CD8CD45RClowTregにおけるFoxp3発現と緊密に相関する。
【0267】
IL-10IL-34IFNγ分泌CD8CD45RClowTregの亜集団はインビトロで高い抑制能力を示す
IFNγおよびIL-34を発現するヒトCD8CD45RClowTregの亜集団の抑制能力を評定した。最初に、CD8CD45RClowTregの亜集団を、IFNγ-またはIL-10-分泌アッセイ検出キットを用いて、IFNγおよびIL-10の発現に基づいて選別して、生存細胞の選別を可能にした。IL-34の大部分がIL-10分泌細胞により共発現されるという観察から、IL-10細胞がIL-34細胞でもあると仮定した。したがってCD8CD45RClowTregの4つの亜集団:IL-10(IL-34)IFNγ、IL-10(IL-34)IFNγ、IL-10(IL-34)IFNγ、およびIL-10(IL-34)IFNγCD8CD45RClowTregを選別した。そのような選別された細胞をその後、先に記載された通りMLRアッセイで添加した(図5A)。重要なこととして、IL-10(IL-34)IFNγCD8CD45RClowTregは、IL-10(IL-34)IFNγCD8CD45RClowTregよりも有意に抑制性であり、IL-10およびIL-34の重要な役割が示唆された。
【0268】
結論として、IL-10IL-34IFNγ分泌CD8CD45RClowTregの亜集団は、インビトロで高い抑制能力を示す。
【0269】
GITR選別CD8CD45RClowTregはGITRCD8CD45RClowTregよりも効率的な抑制物質である
全CD8CD45RClowTreg集団を細胞表面マーカー:GITR、CD38、HLA-DR、CD45RA、CD127、CD197、CD27、CD28、CD25で細分することにより、類似のアッセイを実施した。抑制活性の小さな損失が、CD45RAおよびCD28などの一部の他のマーカーで観察され得たが、有意差はなかった。1つの例外を含み、抑制活性の上昇はなく、これらのマーカーを用いて抑制活性を有するCD8CD45RClowTregをさらに識別し得ないことが示唆された。
【0270】
しかし最も興味深いこととして、GITRCD3CD8CD45RClowTregが、GITRCD3CD8CD45RClowTregよりも効率的に抗ドナー免疫反応を抑制した(図5B)。結論として、GITR発現は、同種エフェクターCD4CD25T細胞増殖に対してより高い抑制能力を有するCD8+ Tregの亜集団を同定する。
【0271】
CD8CD45RClowTreg介在性抑制活性はIL-34、IL-10およびIFNγ分泌に依存する
その後、CD8CD45RClowTregの抑制活性の基礎となり得る異なる作用機序を再考した。そのような作用機序としては、サイトカイン分泌、接触依存性活性、エフェクターT細胞増殖を抑制するIL-2除去または殺傷が挙げられる。
【0272】
最初に、IFNγ、IL-34およびIL-10は、最良の制御活性を有するCD8CD45RClowTreg亜集団を識別するため、サイトカイン生成をMLR上清でテストした。5日目までのMLR上清中のサイトカイン生成の分析から、CD8CD45RClowTregの存在下では、Treg不含およびCD8CD45RChighT細胞と対比してIFNγの有意な生成が実証された(図13)。
【0273】
CD8CD45RClowTreg介在性抑制におけるIFNγ、IL-34およびIL-10の役割をさらに評定するために、以下のブロッキング抗体を、CD8CD45RClowTregの存在下で抑制MLRアッセイに添加した:抗IL-34、抗IL-10、抗IL-10R、抗IFNγおよび抗IFNγR(図6)。興味深いこととして、IL-34、IL-10、IL-10R、IFNγ、およびIFNγRのブロックは、CD4CD25T細胞抗ドナー免疫反応へのCD8CD45RClowTregの抑制活性の類似の損失をもたらした。
【0274】
CD8CD45RClowTreg介在性抑制活性はまた接触依存性である
CD8CD45RClowTreg介在性抑制にとっての接触の重要性を決定するために、トランスウェル実験を実施した(図7)。下部チャンバーにおける同種T細胞除去PBMCで刺激されたCFSE標識CD4CD25T細胞の増殖を、下部または上部チャンバーにおいてCD8CD45RClowTregの存在下、または非存在下で評定した。CD8CD45RClowTregを上部チャンバー内で別個に添加した場合に、抑制活性の完全な損失が観察され、接触の必要性が実証された。
【0275】
このことは、殺傷による抑制メカニズムを示唆し得るため、次に、CD8CD45RClowTreg介在性細胞障害性の比率増加を、15時間のインキュベーション後の同系CD4CD25エフェクターT細胞または同種T細胞除去PBMCに対してテストした。同系または同種の標的に対する壊死または後期アポトーシス誘導は存在しなかったが、小さな初期アポトーシス誘導が、高い標的:エフェクター比で両方の標的に対して観察された(データは示さない)。終末期アポトーシス誘導の非存在から、細胞障害性メカニズムが、CD8CD45RClowTregにより介在された抑制効果においてほとんど役割を担わないことが示唆される。
【0276】
CD8CD45RClowTregは解凍後でも効率的に増幅され得る
CD4Tregを用いた細胞療法は、同種移植片の拒絶を予防するための有望な対策であり、CD8CD45RClowTregは、CD4CD25highCD127Tregよりも効率的にエクスビボでの抗ドナー免疫反応を阻害するため(図1)、CD8CD45RClowTregの増幅のプロトコルを設定した。
【0277】
最初に、全CD8CD45RClowTregの増幅のための最も効率的な条件を、異なる比率のAPC(1:1~1:16 Treg:APC比)、異なる血清供給源(AB血清、自家血漿、Tex Mecsまたはアルブミン2%)および異なる刺激(ポリクローナル抗CD3+抗CD28対プールされた同種T細胞除去APC)を利用して同定した。
【0278】
したがって、1:4のTreg:APC比が必須であり、効率的な7日間Treg増幅に十分であり、培地中のAB血清の使用が、そのような比率で効率的なCD8CD45RClowTreg増幅を導くことが見出された。次に、高用量のIL-2およびIL-15の存在下でポリクローナル抗CD3+抗CD28 mAbを含み、または含まずに同種T細胞除去APCで偏りなく培養0日目~7日目に刺激し、7日目~14日目に再刺激した場合、解凍後であっても、CD8CD45RClowTregが14日間で1000倍まで効率的に増幅され得ることが観察された(図8A)。
【0279】
新たに選別されたCD8CD45RClowTregと、解凍されたCD8CD45RClowTregの増幅を、培養の14日後に比較した(図18B)。0日目に、細胞を1:4のTreg:APC比の同種T細胞除去PBMC、およびポリクローナル抗CD3+抗CD28 Abで刺激した。7日目に、細胞を再度、抗CD3+抗CD28 Abで刺激した。0、7、10および12日目に、培地にIL-2およびIL-15を補充した。14日後に、新たに選別されたCD8CD45RClowTregが、135倍増幅され、解凍されたCD8CD45RClowTregは、612倍増幅された。したがって解凍されたCD8CD45RClowTregは、新たに選別されたCD8CD45RClowTregよりも効率的に増殖した。
【0280】
結論として、CD8CD45RClowTregは、解凍後でもより効率的に増幅され得る。
【0281】
さらに、免疫抑制剤の存在下で増幅されたCD8CD45RClowTregの生存を評定した(図9)。0日目に、細胞を1:4のTreg:APC比の同種T細胞除去PBMCおよびポリクローナル抗CD3+抗CD28 mAbで刺激した。7日目に、細胞を、抗CD3+抗CD28 mAbで再度刺激した。0、7、10および12日目に、培地にIL-2およびIL-15を補充した。14日目に、Tregを免疫抑制剤(シクロスポリンA、ミコフェノール酸モフェチル、メチルプレドニゾロン、ラパマイシンまたはタクロリムス)の存在下または非存在下、およびIL-2/IL-15の存在下または非存在下、同種APCで再度刺激した。20日目に、Tregを生存について分析した。CD8CD45RClowTregの生存率は、免疫抑制剤の存在下で変化しなかった。さらにCD8CD45RClowTregは、ミコフェノール酸モフェチルを除き、テストされた免疫抑制剤の存在下で増幅した。増幅は、IL-2/IL-15補充でより効率的になり、両方のサイトカインがCD8Tregの増幅を維持するためにCD8Tregの補充の際にインビボで添加され得ることが示唆される。
【0282】
最後に、CD8CD45RClowTregおよびCD4CD25highCD127lowTregの増幅を、同じ培養条件で比較した(図10)。0日目に、両方のTreg亜集団を、1:4のTreg:APC比の同種T細胞除去PBMCおよびポリクローナル抗CD3+抗CD28 mAbで21日間刺激した。7および14日目に、Tregを抗CD3+抗CD28 mAbで再度刺激した。0、7、10、12、14および19日目に、培地にIL-2およびIL-15を補充した。CD8CD45RClowTregは、ポリクローナル刺激に応答して354倍増幅したが、CD4CD25highTregは、11倍しか増幅しなかった。さらに、14日目にプラトーに達したCD4CD25highTregの増幅と対照的に、効率的かつ指数関数的なCD8CD45RClowTreg増殖が、少なくとも21日目まで維持された。
【0283】
14日間増幅CD8CD45RClowTregはIFNγ、IL-10およびIL-34をアップレギュレートして免疫拒絶を阻害する
重要なこととして、同種およびポリクローナル増幅CD8CD45RClowTregの両方は、解凍された、選別された、および非増幅CD8CD45RClowTregよりも、同種CD4CD25エフェクターT細胞応答の抑制が有意に効率的であった(図11)。
【0284】
加えて、そのような14日間増幅されたCD8CD45RClowTregは、非増幅または7日間増幅CD8CD45RClowTregと同等の細胞障害活性を示しており、増幅により獲得された優れた抑制能力が、CD8CD45RClowTregの殺傷活性増大によらないことが実証された。
【0285】
最も重要なこととして、そのような増幅プロトコルにより、IFNγIL-34IL-10分泌CD8CD45RClowTregの有意な濃縮をもたらした(図12)。
【0286】
IFNγはCD8CD45RClowTreg機能において重大な役割を担う可能性がある
IFNγの検出を、異なるCD8CD45RClowTreg培養物の上清で評定した(図13)。単離されたCD8CD45RClowTregを、ポリクローナル抗CD3および抗CD28 Abで一晩刺激し、MLRアッセイに添加して、同系エフェクターCD4CD25T細胞を1:1のエフェクター:サプレッサー比の同種T細胞除去PBMCで刺激するか、または0日目に1:4のTreg:APC比の同種T細胞除去PBMCで刺激して14日間の増幅でポリクローナル抗CD3および抗CD28 Abで刺激した。7日目に、細胞を抗CD3および抗CD28 Abで再度刺激した。0、7、10および12日目に、培地にIL-2およびIL-15を補充した。IFNγを、14日目にELISAにより培養上清で測定した。IFNγ分泌は、エフェクターCD4CD25T細胞およびAPC(平均2.5ng/ml)の存在下で検出可能であったが、CD8Treg(平均3.9ng/ml)との6日間インキュベーション後、または抗CD3および抗CD28 mAbでのCD8+ Treg(平均8.7ng/ml)の14日間増幅後に増加した。
【0287】
結論として、高レベルのIFNγは、CD8CD45RClowTreg培養物の上清で検出可能であり、CD8CD45RClowTreg機能におけるこのサイトカインの重大な役割が示唆される。
【0288】
増幅IFNγIL-10IL-34分泌CD8CD45RClowTregはインビボで治療効果を示す
最後に、そのような増幅CD8CD45RClowTregの抑制能力を、NSGマウスを用いた2つの異なる移植モデル、同種PBMCの注射後のヒト皮膚の同種移植片拒絶モデル(図14)およびヒトPBMCの注射後の異種GVHDモデル(図15)を用いて評定した。
【0289】
これらのモデルにおいて、同系の増幅CD8CD45RClowTregを、PBMCと同時に注射して、生存、皮膚組織学的検査および重量減少の割合%を測定することにより抗ドナー免疫反応を阻害する際のそれらの能力を評定した。
【0290】
興味深いこととして、両方の例において、増幅されたCD8CD45RClowTregの共移入(co-transfer)は、移植片拒絶を有意に阻害しており、細胞療法としてのCD8CD45RClowTregの能力が実証された。
【0291】
参考資料:
本出願全体を通して、様々な参考資料に、本発明がかかわる技術分野の最新技術が記載されている。これらの参考資料の開示は、参照により本開示に組み入れられる。
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図1
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図5A
図5B
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【配列表】
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