(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】車両前部ドアの動力開放システム
(51)【国際特許分類】
E05F 15/73 20150101AFI20230331BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20230331BHJP
E05F 15/40 20150101ALI20230331BHJP
E05F 15/63 20150101ALI20230331BHJP
E05F 15/77 20150101ALI20230331BHJP
【FI】
E05F15/73
B60J5/04 C
E05F15/40
E05F15/63
E05F15/77
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021189963
(22)【出願日】2021-11-24
(62)【分割の表示】P 2020053916の分割
【原出願日】2016-08-10
【審査請求日】2021-11-24
(32)【優先日】2015-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510192916
【氏名又は名称】テスラ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィーラー,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】マッカーシー,クリス
(72)【発明者】
【氏名】ウォーマン,ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン,オースティン
(72)【発明者】
【氏名】ヒューゲス,ジョン
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-162459(JP,A)
【文献】特開2008-45301(JP,A)
【文献】特開2003-206675(JP,A)
【文献】特開2009-209659(JP,A)
【文献】特開2011-256675(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0059250(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアと、
前記車両の前記ドアを開放するように構成された電気駆動モータと、
前記車両と通信するように構成された無線装置を検知するように構成された検知器と、
ドアコントローラと、を備え、
前記ドアコントローラは、
前記無線装置が、前記車両
の前記ドアに近接した第1の所定のゾーン内にあることを前記検知器が決定したことに応答して、前記ドアを第1の角度に開放するように前記電気駆動モータを制御し、
前記無線装置が、
前記ドアが前記第1の角度に開放された後に前記第1の所定のゾーンの外部にあることを前記検知器が決定したことに応答して、前記ドアを閉鎖するように前記電気駆動モータを制御するように構成されていることを特徴とする車両システム。
【請求項2】
前記第1の所定のゾーンは、前記ドアに対して所定のパターンである、請求項1に記載の車両システム。
【請求項3】
前記車両の内側にタッチスクリーンをさらに備え、前記タッチスクリーンは、前記ドアの閉鎖または開放の制御を表示するように構成されている、請求項1に記載の車両システム。
【請求項4】
前記車両の車体を押圧するように構成された、前記前部ドア後部に取り付けられた押し開き式アクチュエータをさらに備える、請求項1に記載の車両システム。
【請求項5】
前記ドアの外側のタッチコントロールをさらに備え、前記タッチコントロールは前記電気駆動モータを起動するように構成されている、請求項1に記載の車両システム。
【請求項6】
前記無線装置は、
キーフォブ、
スマートフォン
タブレットコンピュータ
スマートウォッチ、又は、
ウェアラブルなデジタル装置の少なくとも1つである請求項1に記載の車両システム。
【請求項7】
前記ドアコントローラは、前記無線装置が前記所定のゾーンに再び進入したときに、前記ドアを開放するように前記電気駆動モータを制御するようにさらに構成されている、請求項1に記載の車両システム。
【請求項8】
車両と通信するように構成された無線装置が、前記車両
のドアに近接した第1の所定のゾーン内にあることを検知するステップと、
前記無線装置が前記第1の所定のゾーン内にあることを検知したことに応答して、前記ドアを第1の角度に開放するように電気駆動モータを駆動するステップと、
前記無線装置が前記第1の所定のゾーン内に最早ないことを検知するステップと、
前記無線装置が前記第1の所定のゾーン内に最早ないことを検知したことに応答して、前記ドアを閉鎖するように前記電気駆動モータを制御するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記無線装置が
、前記車両の前記ドアに近接した前記第1の所定のゾーン内にあることを検知するステップは、
キーフォブ、
スマートフォン
タブレットコンピュータ
スマートウォッチ、又は、
ウェアラブルなデジタル装置の少なくとも1つで通信することを含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記ドアの開放の妨げを検知するステップと、
前記ドアの開放の妨げが検知されたとき、前記ドアを前記ドアの角度に維持するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
前記無線装置を押すことによって生成された入力を受信するステップと、
これに応答して、前記ドアを開放又は閉鎖するように前記電気駆動モータを駆動するステップと、をさらに含むことを特徴とする請求項
8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は「VEHICLE FRONT DOOR POWER OPENING SYSTEM」と題し、2015年8月26日に出願された米国特許仮出願第62/210,396号、及び、「VEHICLE FRONT DOOR POWER OPENING SYSTEM」と題し、2015年9月11日に出願された米国実用新案第14/851,274号の優先権を主張し、その両方が、本出願の全体及び一部を参照することによりあらゆる目的のために本書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
自動車は、世界中の多くの人にとって、事実上不可欠な日常使用のツールである。通勤、通学、及び様々な約束事への移動は、他の好ましい移動手段がない場合、自動車で行うことがよくある。さらに、近距離または長距離の移動の際、自動車は身の回りのものを運搬するのに極めて便利である。例えば、多くの人々は、ほとんどの場合、ハンドバック、財布、携帯電話、タブレット、または、バッグもしくは他の付属品を持ち歩いている。これらのアイテムは、自動車の乗車及び下車の際に車両のカーハンドルを操作することをより困難にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
第1の様態では、車両のシステムは、ドアと、ドアのヒンジ部分で作動するよう構成された、ドアを開閉する電気駆動モータと、車両車体を押圧するように構成された、ドア後部に取り付けられた押し開き式アクチュエータと、車両と通信するように構成された無線装置とを備える。
【0004】
実施例は、以下の特徴のいずれかまたはすべてを含むことができる。システムは、ドア外側にタッチコントロールをさらに備え、当該タッチコントロールは、電気駆動モータ及び押し開き式アクチュエータのうち少なくとも1つを起動するように構成されている。ドアは前部ドアであり、システムは前部ドアの後方の後部ドアをさらに備え、当該後部ドアは実質的に垂直方向に開閉するデュアル(二重)ヒンジ構成を有する。システムは車両内部にタッチスクリーンをさらに備え、当該タッチスクリーンはドアの開閉制御を表示するように構成されている。
【0005】
第2の様態では、車両のシステムは、前部ドア、前部ドアの後方の、実質的に垂直方向に開閉するデュアルヒンジ構成(デザイン)を有する後部ドア、前部ドアのヒンジで作動するように構成された、前部ドアを開閉する電気駆動モータ、及び、車両と通信するように構成された無線装置を備える。
【0006】
実施例は以下の特徴のいずれか、またはすべてを含むことができる。システムは、前部ドア後部に取り付けられた押し開き式アクチュエータをさらに備え、押し開き式アクチュエータは車両車体を押圧するように構成されている。システムは、ドア外側にタッチコントロールをさらに備え、当該タッチコントロールは電気駆動モータを起動するように構成されている。システムは車両内側にタッチスクリーンをさらに備え、当該タッチスクリーンは前部ドアの開閉制御を表示するように構成されている。
【0007】
第3の様態では、方法は、車両と関連付けられた無線装置が、車両のドアに近接した第1の所定のゾーン内にあることを検知するステップと、無線装置の検知に応答して、ドア
を第1の角度に開放するように電気モータを駆動するステップと、物体がドアに近接した第2の所定のゾーン内にあることを検知するステップと、物体の検知に応答して、ドアを第1の角度よりも大きな第2の角度に開放するように電気モータを駆動するステップを含む。
【0008】
実施は以下の特徴のいずれか、またはすべてを含むことができる。ドアは運転席側ドアであり、方法は、運転席側ドア後部の後部ドアが閉鎖されているか否かを検知するステップをさらに含み、電気モータは、後部ドアが閉鎖されている場合のみ、運転席側ドアを第2の角度に開放するように駆動される。後部ドアは実質的に垂直方向に開閉するデュアルヒンジ構成を有する。第1の角度は約15から25°であり、第2の角度は約40から50°である。物体は超音波センサによって検知される。方法は、ドア後部に取り付けられた押し開き式アクチュエータを起動するステップをさらに含み、押し開き式アクチュエータは車両車体を押圧するように構成される。押し開き式アクチュエータは、電気モータがドアを開放できないことを判断した上で起動される。方法は、ドア外側のタッチコントロールによって生成された入力を受信するステップ、及び、当該入力に応答して電気モータを起動するステップをさらに含む。方法は、車両のブレーキペダルが押し下げられていることを検知するステップと、それに応答して電気モータを駆動してドアを閉鎖するステップをさらに含む。方法は、i)ドアを閉鎖するステップと、ii)ドア内側のドアハンドルを使用して生成された入力を受信するステップと、iii)入力に応答して、電気モータを駆動してドアを開放するステップをさらに含む。方法は、i)ドアを閉鎖するステップと、ii)ドア内側のタッチスクリーンを使用して生成された入力を受信するステップと、iii)入力に応答して、電気モータを駆動してドアを開放するステップをさらに含む。方法は、無線装置を押すことによって生成される入力を受信するステップと、それに応答して、電気モータを駆動してドアを開放または閉鎖するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は車両及び検知ゾーンの例の正面図である。
【
図2】
図2は他の検知ゾーン及び広角開放位置に開放された前部ドアの例である。
【
図4】
図4は後部ドアのスイングパターンの例です。
【
図5】
図5は車両に接近する人の例の透視図である。
【
図6】
図6は広角開放位置に開放された前部ドアである。
【
図7】
図7は人が運転席に乗車した後に閉鎖された前部ドアの例である。
【
図8】
図8は車両内側から前部ドアを開放する例である。
【
図9】
図9は車両内側から前部ドアを開放する別の例である。
【
図10】
図10は人が車両から離れた後に前部ドアが閉鎖された例である。
【
図12】
図12は前部ドアのヒンジで作動している電気駆動モータの例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書は、自動車(車両)の前部ドアの動力開閉を提供するシステム及び技術の例を説明している。いくつかの実施では、自動車へのタッチレスエントリ(非接触エントリ、touchless entry)が提供されてもよい。これにより、人が、例えば両手に荷物を抱えている場合などに、自動車に容易に乗車することが可能になる。このような状況及び他の状況で、自動開放及び自動閉鎖ドアは、便利な乗車方法を提供し、人が自動車を運転し始める前に荷物を車内に降ろすことができる。
【0011】
図1は、自動車100及び検知ゾーン102の例示の正面図を示している。ここでは、
自動車はクロスオーバータイプの乗用車であるが、別の実施では、ドアまたは乗車の際に開放されるとともに運転前に閉鎖されなければならない他の閉鎖物の背後に運転席が含まれている任意のタイプの自動車でもよい。自動車は、タイプ及びモデルに応じて異なる数のドアを有していてもよい。ここでは、自動車は、前部ドア104A及び104B、ならびに後部ドア106A及び106Bを有する。運転席は、自動車が設計された国に応じて、自動車の左側または右側に配置されうる。ここでは、運転席が左側にあり、前部ドア104Aが運転席側ドアと呼ばれる。
【0012】
自動車は、1または複数の所定のパターンに従って検知ゾーン102を定める。ここでは、このゾーンは運転席側ドア専用に設けられている。いくつかの実施では、このゾーンは、特定の状況下で、前部ドア104Aを便宜的位置(convenience position)に自動的に開放する目的で定められる。例えば、自動車が、運転手がゾーン102内にいることを検知したとき、自動車は概ね図示されている角度に、ドア104Aを自動的に開放してもよい。便宜的位置とは、任意の適切な角度にドアを開放することとして定義される。単なる一例として、この角度は閉位置から約15~25°の範囲であってもよい。
【0013】
例示の検知ゾーンのパターンによって示されているように、運転手が運転席側ドアから数歩離れている間に、ドアを便宜的位置に開放することができる。これは、この自動車が自動化された動力開放型の前部ドアを有しているという直観的な早期の示唆を運転手に与えることができる。しかし、この例では、ドアが便宜的位置に部分的に開放されるに過ぎないので、乗員や通過するサイクリストなどの他の人にドアが接近しすぎる重大な危険性がない。いくつかの実施では、1または複数の障害物検知器(例えば超音波センサ)が自動車の側面に配置されている。例えば、センサは、前部ドア付近の障害物の存在及び距離を検知してもよく、且つ、その情報をドアコントローラに返信してもよい。その場合、状況に応じて(例えば、角度を減少させることによって、及び/または、開放を遅らせることによって)、自動開放が抑制され、または、次の動作が修正されてもよい。
【0014】
自動車は、任意の適切な技術を使用して、運転手の存在を検知することができる。いくつかの実施では、運転手は無線装置108を携帯している。この説明では、無線装置を携帯している人のことをしばしば運転手と呼ぶ。なぜなら、無線装置の存在が、自動車のシステムに対して、この人物が運転手であることを示しているためである。ただし、無線装置が自動車を運転するつもりのない人によって携帯されている場合も、自動車は同様に機能する。無線装置は、自動車によって受信及び認識される1または複数のタイプの無線信号を送信してもよい。例えば、装置は、この特殊なタイプ及びモデルの自動車と連動して動作するように設計されたキーフォブであってもよい。別の例として、無線装置はスマートフォン、タブレット、スマートウォッチまたは他のタイプの携帯式またはウェアラブルなデジタル装置である。かかる装置は、この特殊なタイプ及びモデルの自動車用に設計されたアプリケーションを実行でき、装置はさらに無線信号または他の通信形式により自動車と相互作用できる。さらに別の例として、無線装置は自動車からのポーリング信号によって起動可能な受動回路であってもよく、その場合、無線装置はその存在を示す信号を生成してもよい。この例では、自動車が無線装置108の存在を検知しており、したがってドア104Aを便宜的位置に開放している。いくつかの実施では、ドアの開閉を起動するために無線装置のボタンを押してもよい。
【0015】
便宜的位置への自動開放の間、運転手は、1または複数の方法でシステムをオーバーライドできる。第1に、運転手がドアの移動をブロックし、又は、ドアを妨げた場合、モータは開放を中断し、ブレーキによってドアを適所に維持する。第2に、運転手が、その代わりに、自動開放の間にドアを開位置へと押した場合、上記もシステムに開放を中断させる。ただし、この場合、システムはブレーキと連動しないため、人はドアをあらゆる開位
置に自由に移動(または閉鎖)してもよい。人がドアの移動を止めたとき、システムは算出されたトルク値を使用してドアを適所に維持する。
【0016】
図2は、別の検知ゾーン200及び広角開放位置202に開放された前部ドア104Aの例である。いくつかの実施では、自動車は、運転手が部分的に開放された前部ドアに十分接近したことを検知した上で、ドアを広角開放位置に移動する。例えば、ゾーン200は、運転手が単に自動車の脇を歩いている又はトランクもしくは後部引き上げゲートに向かっていることとは異なり、運転席に乗り込む意図がある場合に運転手が歩く傾向がある領域に対応している。さらに、誰かが(この場合、運転手)がゾーン200内にいるという事実が、自動車の脇の通行人のような別の障害物がドア104Aの前部に存在しないであろうという信号を送る。
【0017】
ゾーン200は、1または複数の検知器またはセンサを使用して定められてもよい。例えば、無線装置が自動車の左側に近接していることを無線信号が示したとき、且つ、超音波センサがゾーン200内の物体に対して起動されたとき、自動車システムは、運転手がゾーン200に進入したと結論付けることができる。
【0018】
自動車がゾーン200内に運転手がいることを検知したとき、自動車は、ほぼ図示の広角開放位置までドア104Aを自動的に開放可能である。つまり、広角開放位置は、上記で例示された便宜的位置よりもさらに大きく(より広角で)ドアを開放することを含む。広角開放位置は、任意の適切な角度にドアを開放することとして定められる。単なる例示として、この角度は閉位置から約40~50°の範囲であってもよい。広角開放位置の角度は、運転手が運転席に乗車するために十分な幅でドアを開放するように選択されてもよい。いくつかの実施では、前部ドアの自動開放は、隣接する後部ドアが閉まっている場合にのみ使用可能である。あるいは、ユーザが手動で前部ドアを開放してもよい。
【0019】
一方、ドアが便宜的位置に開放されており、運転手がゾーン200に進入していない場合、自動車はドア104Aを自動的に閉鎖する。例えば、この閉鎖は、所定のタイムアウト時間の後に行われてもよい。
【0020】
図3は、ドアが閉まった状態の自動車100を示している。つまり、この例では、ドアが広角開放位置に開いた後、運転手が運転席に乗車することを前提としている。運転手が運転席に乗車した上で、1または複数の信号が、運転手が完全に自動車内部に入ったこと、及び、ドアを閉めるタイミングであることを自動車システムに対して示してもよい。具体的には、このような信号の1つは、一連の動作(シーケンス、sequence)の開始時に検知された無線装置が、その時点で自動車の中に存在することである。いくつかの実施では、運転手が、前部ドアを閉鎖する準備ができていることの指示として、ブレーキペダルを踏む。例えば、電気自動車では、これは、(例えば、自動車の電気系統のドライブレール(drive rail)を作動させることによって)同時に自動車に運転準備を完了させるトリガーとして機能できる。別の実施では、その代わりに、あるいは上記に加えて、1または複数の検知器が、運転手が完全に運転席に乗車したか否かを検証するために使用される。受信された信号に基づいて、自動車がドア104Aを閉鎖し、運転手が自動車の中で運転できる。つまり、この例では、運転手が自動車に向かって歩み寄り、彼または彼女のためにドアが自動的に開き、当該運転手が運転席に着席し、再度ドアが自動的に閉まり、これらすべての動作は、ドアハンドルまたはドアの他の部分を触ることなく行われ、及び、キーフォブまたは他の装置を操作することなく行われた。
【0021】
運転手は、前部ドアを手動で閉めるという選択肢も持ちうる。ドアの動力システムは、人が手動でドアを動かすことを認識でき、そして自由移動を可能にする。例えば、これはモータのブレーキを解除することを含む。
【0022】
ドア104B(
図1)、つまり、前部助手席側ドアは、運転席側ドアと同様または同一のシステムを有してもよい。いくつかの実施では、操作が異なる場合がある。第1に、助手席側ドアには専用の無線装置が存在しなくてもよい。その代わりに、当該ドアは、手動で自動開放を起動する装置を有してもよい。第2に、自動開放は、助手席側ドアを便宜的位置に移動させてもよく、そこから乗客が手動でドアを所望の角度に開放してもよい。例えば、ドアシステムは、人がドアを引っ張っているまたは押していることを検知したときに自動的にブレーキを解除し、ドアの引っ張りまたは押圧が止まったときに自動的に連動するブレーキ機能を有してもよい。
【0023】
図4は、後部ドア402のスイング(回動)パターン400の例を示している。ここでは、後部ドアは、横向きではなく実質的に垂直方向に自動的に開閉するデュアルヒンジタイプである。例えば、米国特許第8,449,015号、第8,511,738号、第8,511,739号及び/またはD678,154号で説明される任意のまたはすべての構成が使用されてもよい。それらそれぞれの内容は参照によりここに組み込まれる。
【0024】
スイングパターン400は、各々の一連の開閉動作の間、後部ドア部分が位置する場所を示している。開閉の際、前部ドアの端縁(エッジ)及び後部ドアの端縁(エッジ)が互いに近接する実施において、それらの間で人の手や他の身体部分が挟まれる危険性がないように注意が払われなければならない。例えば、前部ドアの便宜的位置での角度は、ユーザが前部ドアの後端部を掴み、後部ドアのスイングパターンに十分な隙間を持たせるように選択されることが可能である。
【0025】
例えば、スライドドアや、前端部または後端部にヒンジの付いたドアなどの後部ドアがデュアルヒンジタイプではない実施では、対応するスイングパターンが定められ、且つ、考慮されてもよい。例えば、後部ドアの位置に関係なく、挟み込みの可能性を回避するために、前部ドアが開放されるべき最小角度を決定できる。便宜的位置はこの角度またはそれよりも大きな値として規定されてもよい。
【0026】
図5は、自動車500に接近する人物の例示の透視図を示している。人物は、この自動車の無線装置を携帯しており、従って、前部ドアが(例えば
図1に表示されているように)便宜的位置に開いている。
【0027】
図6は、前部ドアが広角開放位置に開放されている状態を示している。例えば、人物が部分的に開放されたドアのすぐ後ろに移動すると、これは、位置202(
図2)のように、システムがさらにドアを広角開放位置まで開放させるようにトリガー(起動)する。
【0028】
図7は、人が運転席に乗車した後に閉鎖された前部ドアの例を示している。例えば、これはキーフォブが自動車内部にあること、及び、運転手がブレーキペダルを踏んでいることを検知することによってトリガーされる。この時点で、自動車は基本的に運転の準備が完了している。例えば、運転手は、自動車を運転モードまたはリバースモードにするセレクタ(変速レバー)を操作して、アクセルペダルを踏むことができる。
【0029】
図8は、前部ドアを自動車内部から開放する例を示している。例えば、ここで運転手は、内部ドアハンドルに手を伸ばして内部ドアハンドルを作動させる。これがドアの自動開放を起動する。例えば、ドアは、ほぼ便宜的位置に開放され、障害物がないことを前提に、運転手はそこからドアをさらに押して開放することができる。
【0030】
図9は、自動車500内部から前部ドアを開放する別の例を示している。ここで、自動車は、様々な自動車機能を制御するタッチスクリーン900を有している。特に、前部ド
アを開けるために内部ドアハンドルを操作する代わりに、運転手はタッチスクリーンに表示される制御を起動してもよい。例えば、この制御は、自動車が駐車モードになったときに表示されてもよい。つまり、運転手はこの時点で自動車から退出することができる。
【0031】
運転手が自動車内部にいながらドアの自動閉鎖を起動するために、同様の機能が使用できる。いくつかの実施では、タッチスクリーンがドアを閉鎖させるための制御を提示する。例えば、この制御は、運転手が運転席に乗車したことが検知されたときに利用可能となる。また、助手席側前部ドアを閉鎖するための制御も表示可能である。
【0032】
ドアの自動開放を起動する別の方法が使用されてもよい。いくつかの実施では、自動車を離れようとする運転手の検知が、ドアを自動開放するための信号として使用できる。例えば、運転手が自身のシートベルトを外したとき、この行為がドアの自動開放を起動する。
【0033】
図10は、人が自動車500を離れた後で、前部ドアが閉鎖される例を示している。つまり、人が運転席を離れた後、自動車から遠ざかることを前提として(例えば
図8または9)、自動車は、運転手が所定のゾーンから遠ざかったことを最終的に検知し、再度前部ドアを自動的に閉鎖する。いくつかの実施では、無線装置を使用して検知が実行される。例えば、運転手がゾーン102(
図1)からいなくなると、ドアを閉鎖してもよい。
【0034】
ドアが閉鎖されているとき、自動車は、継続して無線装置からの信号を聴取することができる。信号が検知されると、例えば
図1に示されるように、前部ドアの開放をトリガーすることができる。それに加えて、またはその代わりに、ドアは別の方法で開放されてもよい。例えば、自動車システムの自動開放モードをオフにすると、システムは上記の方法で無線信号に応答できなくなる。しかしながら、ユーザは、手動でドアの自動開放を起動可能である。いくつかの実施では、運転席側ドアは、外側にタッチコントロール1000を有する。タッチコントロールは、格納されるとドアスキンと同一平面に配置されるタイプの先進ドアハンドル(presenting door handle)と同様に形成されてもよい。例えば、タッチコントロールは、ドアから全く突出しておらず、人が手または腕をコントロール部に置くと検知する(例えば、容量式センサを使用した)タッチセンサ式表面を示している。これは、例えば便宜的位置へのドアの自動開放をトリガーする。いくつかの実施では、無線装置が自動車に近接していることを自動車が検知した場合にのみ、手動によるトリガーが有効となる。ユーザは便宜的位置よりも広角にドアを押すまたは引いてもよく、ユーザがドアの移動を止めたとき、システムは自動的にブレーキと連動して、ドアを適所に維持してもよい。
【0035】
タッチコントロール1000は、ドアが開放されているときに、ドアを自動的に閉鎖するように使用されてもよい。例えば、ドアが便宜的位置にある際に運転手がタッチコントロールをタッチすると、前部ドアの自動閉鎖をトリガーすることになる。タッチコントロールは、ドアの動作中にタッチされると、自動動作を停止する機能を有してもよい。例えば、タッチスクリーンの制御が同様に機能してもよい。
【0036】
図11は、前部ドア1100の例を示している。ここでは、主に、動力開閉装置が取り付けられたドアフレーム、及び、例えば窓のレギュレータ及び窓ガラスなどの他の部品を含むドアが示されている。なお、例えばアウタースキンなどの数々のドア部品は、ここでは明確性のために省略されている。
【0037】
ドア1100は、自動車フレーム1102に取り付けられている。ドアが開位置と閉位置の間で回転できるように、自動車フレームは、ドア用の1または複数のヒンジがフレームに取り付けられる場所であるヒンジ領域1104を形成する。また、自動車フレーム及
びドアは、ドアが選択的に車体に対して締結されるように、ラッチ構成を含む。例えば、ラッチ1106は、ドアが(自動的にまたは手動で)閉位置から移動されるべきときは、いつでも解除(解放)可能である。
【0038】
ドアは、ドアを開閉するための電気駆動モータ1108を有する。モータは、ドアフレームの前部に対して取り付けられ、且つ、ヒンジ領域で作動する。例えば、モータは、ドアを移動するために一定量のトルクを付加してもよい。また、ドアは、ドア後部に向いて配置された押し開き式アクチュエータ1110を有する。このアクチュエータは、例えば、モータが上記を行うのに十分なトルクを生成できない場合に、ドアを押圧して車体から離すことができる。ドアはタッチコントロール900(
図9)と同様に操作可能なタッチコントロール1112を有する。ラッチ1106、電気駆動モータ1108、押し開き(プッシュ-オープン)式アクチュエータ1110、及び、タッチコントロール1112は、コントローラ(制御部)に接続されてもよい(図示せず)。例えば、これは、1または複数のセンサからの入力を取り込み、コンポーネント(構成要素)のいずれかに出力を提供するプロセッサベースのコンポーネントである。その際、コントローラは、ドアの動作を命令するためのプログラムアルゴリズムにセンサ値を入力してもよい。
【0039】
図12は、前部ドアのヒンジで作動する電気駆動モータ1108の例を示している。より具体的には、モータは、ドアを開閉するために、ヒンジ領域1104でトルクを付加するリンク機構1200を駆動する。例えばパルス幅変調によって、コントローラがモータを操作できるように、モータに対して動力を供給するためにハーネスコネクタ1202が使用される。
【0040】
図13は、電気駆動モータ1108の例を示している。いくつかの実施で、これは電気ロータリーモータである。電気ロータリーモータがギヤシステムを回転させて、次いで、ギヤシステムがリンク機構1200を回転させて、前部ドアを開閉させる。例えば、一体式電気機械ブレーキは、リンク機構の回転を規制及び減速させる。リンク機構は、ボールスタッドアタッチメント(ball stud attachment)を含んでもよい。車体側ボールスタッドアタッチメントは、次いで、上部ドアヒンジアセンブリの一部を構成してもよい。モータは、それ自体のドア用ブレーキを有することができるが、一方で、例えばドアヒンジ上にドアの開き過ぎ止め具(オーバーオープンストップ)が使用されてもよい。
【0041】
図14は、押し開き式アクチュエータ1110の例を示している。いくつかの実施では、運転席側ドア及び助手席側ドアは、それぞれ、締結ラッチ上部のドアの後端部付近に配置された直線状の押し開き式アクチュエータを有する。ここで、現状ではアクチュエータラム1400が格納されているが、アクチュエータが起動されると、アクチュエータハウジングから延伸する。このアクチュエータは、電気モータが、ドアを完全な閉位置から移動させるのに十分なトルクを供給できないときに使用することを目的としている。これは、ドアが車体に対して凍り付いている場合の凍結状態において発生しうる。例えば、コントローラは、モータがドアを移動できないことを検知し、それに応答してアクチュエータを起動してもよい。
【0042】
アクチュエータは、ドア内部パネルに取り付けられ、例えばBピラーのような車体部分を押す。アクチュエータは、アクチュエータラム(ram)が突出している間にドアが閉鎖するのを防ぐためのホーム(原点復帰)スイッチを含んでもよい。ラムは、起動時に車体塗面を押圧するプラスチック製ヘッドを有してもよい。アクチュエータの力は、2つの例を挙げると、ドアの重量及びサイズ、ならびに、起こりうる寒冷状況の過酷度に基づいて選択されてもよい。アクチュエータは、例えばパルス幅調整などの任意の適切な方法で駆動及び制御されてもよい。
【0043】
多数の実施例が例示として説明されているが、これ以外の実施例は以下の請求項によって包含される。