(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】容易な除去のための犠牲構造を有する付加製造のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/40 20170101AFI20230331BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20230331BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230331BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230331BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230331BHJP
【FI】
B29C64/40
B29C64/112
B33Y80/00
B33Y10/00
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2021517020
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 IL2019051067
(87)【国際公開番号】W WO2020065653
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-08
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】シトリト, ヤニヴ
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-57871(JP,A)
【文献】特表2018-512080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/40
B29C 64/112
B33Y 80/00
B33Y 10/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の三次元物体の付加製造の方法であって、前記方法が、
層を逐次吐出及び凝固すること、但し前記層が、
(i)物体の一つ以上の形状に対応する構成パターンで配置されかつ一種以上の造形用材料から作られた造形層の少なくとも一つのスタック、
(ii)前記少なくとも一つのスタックを包囲しかつ少なくとも一種の支持体材料を含む中間層、及び
(iii)前記中間層及び物体を包囲する可撓性オーバーレイ
を含む;及び
可撓性オーバーレイへの圧力の付与によって可撓性オーバーレイから造形層のスタックを除去すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記可撓性オーバーレイが、第一の予め決められた組み合わせを含み、第一の予め決められた組み合わせが、少なくとも一種の造形用材料及び少なくとも一種の支持体材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記可撓性オーバーレイが、複数のボクセルを含み、造形用材料のボクセルに支持体材料のボクセルが散在されている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記可撓性オーバーレイが、可撓性であり、前記除去することが、造形層のそれぞれのスタックを可撓性オーバーレイから外に押し出すことを含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記第一の中間層が、一個から十個までの範囲のボクセルの厚さを有する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記中間層が、八個のボクセルの厚さを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記中間層が、親水性である、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記物体を、前記可撓性オーバーレイからのその除去の前及び/又はその除去中に予め決められた時間、制御された温度環境に置くことを含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
制御された温度環境が、制御された温度の水浴である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第一の予め決められた組み合わせが、少なくとも60%の造形用材料を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記第一の予め決められた組み合わせ中の前記造形用材料の百分率割合が、外側表面に向かって増加する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記物体を印刷トレイの上に印刷すること、及び各物体をカバーする可撓性オーバーレイの間に及びそれらのまわりにスカート構造を与えることを含み、前記物体と前記可撓性オーバーレイは、前記スカート構造によって破壊可能に接合される、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記スカート構造が、前記一種以上の造形用材料及び前記支持体材料の第二の予め決められた組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第二の予め決められた組み合わせが、少なくとも90%の造形用材料を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
支持体構造を含み、前記支持体構造が、前記物体に対して前記可撓性オーバーレイの外側にある、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記物体を取り出し、予め決められた期間、浄化溶液中に置くことを含む、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記物体が、義歯造形物である、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
一つ以上の物体を含む3D印刷構造物であって、前記構造物が、
(i)構成パターンで配置された造形層の少なくとも一つのスタックであって、各スタックが、一つ以上の物体の形状に対応し、一種以上の造形用材料から作られているもの、
(ii)一つ以上の物体の前記形状を包囲しかつ支持体材料を含む中間層、及び
(iii)前記中間層を包囲する可撓性オーバーレ
イ、ただし、前記可撓性オーバーレイは、前記可撓性オーバーレイへの圧力の付与
の結果として、前記一つ以上の物体からの前記中間層及び前記可撓性オーバーレイの無傷の除去を可能にする粘度を有する
を含む、3D印刷構造物。
【請求項19】
前記可撓性オーバーレイが、第一の予め決められた組み合わせを含み、第一の予め決められた組み合わせが、前記一種以上の造形用材料のうちの一種、及び少なくとも一種の支持体材料を含む、請求項18に記載の3D印刷構造物。
【請求項20】
前記可撓性オーバーレイが、前記中間層より相対的に可撓性に劣り、それによって前記可撓性オーバーレイが前記造形層のスタックから分離されるとき、前記分離が前記第一の中間層に沿って起こることを確実にする、請求項18又は19に記載の3D印刷構造物。
【請求項21】
前記中間層が、一個から十個までの範囲のボクセルの厚さを有する、請求項18~20のいずれかに記載の3D印刷構造物。
【請求項22】
前記中間層が、八個のボクセルの厚さを有する、請求項21に記載の3D印刷構造物。
【請求項23】
前記中間層が、親水性である、請求項18~22のいずれかに記載の3D印刷構造物。
【請求項24】
前記第一の予め決められた組み合わせが、少なくとも60%の造形用材料を含む、請求項19に記載の3D印刷構造物。
【請求項25】
前記第一の予め決められた組み合わせ中の前記造形用材料の量が、外側表面に向かって増加する、請求項24に記載の3D印刷構造。
【請求項26】
各物体をカバーする可撓性オーバーレイの間に及びそれらのまわりにスカート構造をさらに含み、前記物体と前記可撓性オーバーレイは、前記スカート構造によって破壊可能に接合される、請求項18~25のいずれかに記載の3D印刷構造物。
【請求項27】
前記スカート構造が、前記一種以上の造形用材料及び少なくとも一種の支持体材料の第二の予め決められた組み合わせを含む、請求項26に記載の3D印刷構造物。
【請求項28】
前記第二の予め決められた組み合わせが、少なくとも90%の造形用材料を含む、請求項27に記載の3D印刷構造物。
【請求項29】
支持体構造を含み、前記支持体構造が、前記物体に対して前記可撓性オーバーレイの外側にある、請求項18~28のいずれかに記載の3D印刷構造物。
【請求項30】
プログラム指示が記憶されているコンピューター可読媒体を含むコンピューターソフトウェア製品であって、前記プログラム指示が、付加製造システムのコンピューター化されたコントローラーによって読まれるとき、前記システムに対して複数の層を逐次吐出及び凝固させるものであり、前記複数の層が、
(i)一つ以上の物体の形状に対応する構成パターンで配置されかつ一種以上の造形用材料から作られる造形層の一つ以上のスタック、
(ii)一つ以上の物体の前記形状を包囲しかつ少なくとも一種の支持体材料を含む中間層、及び
(iii)前記中間層を包囲する可撓性オーバーレイであって、造形層の前記スタックが、前記第一の中間層に沿った分離によって前記可撓性オーバーレイから除去可能であるもの
を含む、コンピューターソフトウェア製品。
【請求項31】
付加製造によって三次元物体を製作するためのシステムであって、前記システムが、
少なくとも一種の造形用材料を吐出するために構成された第一吐出ヘッド、及び支持体材料を吐出するために構成された第二吐出ヘッドを少なくとも含む複数の吐出ヘッド、
前記材料の各々を凝固するために構成された凝固システム、及び
前記吐出ヘッド及び凝固システムを操作して複数の層を逐次吐出及び凝固するように構成された回路を有するコンピューター化されたコントローラー
を含み、前記複数の層が、
(i)一つ以上の物体の形状に対応する構成パターンで配置されかつ一種以上の造形用材料から作られた造形層の一つ以上のスタック、
(ii)一つ以上の物体の前記形状を包囲しかつ少なくとも一種の支持体材料を含む中間層、及び
(iii)前記中間層を包囲しかつ前記第一の中間層での分離によって除去可能である可撓性オーバーレイ
を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2018年9月27日出願の米国仮特許出願第62/737,129号の優先権の利益を、米国特許法第119条(e)項の下で主張するものである。上記出願の内容は、その全体を参照によって本書に援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、その一部の実施形態では、付加製造(AM)に関し、特に限定されないが、容易に除去可能な犠牲構造を含む付加製造のための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
付加製造(AM)は、付加形成工程によってコンピューターデータから直接任意の造形構造の製作を可能にする技術である。いずれのAMシステムの基本操作も三次元コンピューターモデルを薄い断面にスライスし、その結果を二次元位置データに変換し、そのデータを、層状に三次元構造を製作する制御装置に供給することからなる。
【0004】
付加製造は、三次元(3D)印刷、例えば3Dインクジェット印刷、電子線溶融、ステレオリソグラフィー、選択的レーザー焼結、薄膜積層法、熱溶解積層法などを含む製作法に多くの異なるアプローチを伴なう。
【0005】
3D印刷プロセス、例えば3Dインクジェット印刷は、構築材料の層ごとのインクジェット堆積によって実施される。従って、構築材料は、一組のノズルを有する吐出ヘッドから吐出され、支持体構造上に層を堆積する。構築材料に依存して、層は、次いで好適な装置を使用して硬化又は凝固されることができる。
【0006】
様々な三次元印刷技術が存在し、例えば米国特許第6,259,962号、第6,569,373号、第6,658,314号、第6,850,334号、第6,863,859号、第7,183,335号、第7,209,797号、第7,225,045号、第7,300,619号、第7,500,846号及び第9,031,680号に開示される。それらは、出願人が全て同じであり、その内容は、参考としてここに組み入れられる。
【0007】
一般的なAMプロセスの構築材料は、造形材料(「造形用材料」とも言及される)及び支持材料(「支持体材料」とも言及される)を含み、造形材料は、希望の物体を製造するために堆積され、支持材料は、続く物体層の適切な垂直方向の設置を確保するために及び構築中の物体の特定の領域に一時的な支持体を与える。例えば、物体が突き出ている特徴又は形状(例えば湾曲した幾何学形状、負角、間隙など)を含む場合、物体は、一般的に隣接する支持体構造を使用して構築され、それは、印刷中に使用され、次いで製作された物体の最終形状を表わすために除去される。
【0008】
支持体材料の除去のための公知の方法は、ウォータージェット衝撃、化学的方法(例えば溶媒中の溶解、しばしば熱処理と組み合わされる)を含む。例えば、水溶性支持体材料については、製作された物体(支持体を含む)は、支持体材料を溶解できる水に浸漬される。
【0009】
AMのための支持体材料は、例えば米国特許第6,228,923号、第7,255,825号、第7,479,510号、第7,183,335号、及び第6,569,373号に記載され、それらは、出願人が全て同じであり、その内容は、参考としてここに組み入れられる。
【0010】
米国特許第8,865,047号は、本願と出願人が同じであり、その内容は参考としてその全体をここに組み入れられるが、それは、支持体構造を構築する方法を開示し、そこでは支持体構造は、3D物体に空間があるように設計された体積中で層を交差するストリップを含む。支持体構造は、ストリップの上に持ち上げる力を付与することによって体積から除去される。
【発明の概要】
【0011】
本実施形態は、容易に除去可能な可撓性犠牲構造によってカバーされる物体(単数又は複数)に関することができる。可撓性犠牲構造の除去を容易にするために、犠牲構造は、物体(単数又は複数)をカバーする可撓性複合材料のオーバーレイ、及び可撓性犠牲構造からの物体の容易な除去のためにオーバーレイと物体表面の間の支持体材料から作られた中間層を含む。物体は、物体をその周囲の犠牲構造から外に押し出すことによって可撓性犠牲構造から分離されることができる。
【0012】
可撓性犠牲構造の複合材料は、造形用材料と支持体材料のインターレースされた吐出によって形成されることができる。インターレースされた吐出は、任意選択的にかつ好ましくは、可撓性犠牲構造を生成し、それから物体は、可撓性犠牲構造への圧力の付与によって取り出されることができる。
【0013】
さらに、共有の可撓性犠牲構造内で複数の物体又は物体の部分を生成する方法が提供される。物体又は物体の部分は、印刷表面又はトレイの上で互いに予め規定された距離で、可撓性犠牲構造をそれらの上にかつそれらの間にカバーして形成され、従って製作プロセスが完了した後に可撓性犠牲構造から容易に分離して除去可能である。
【0014】
本実施形態は、特に義歯造形物(denture models)の印刷セットに関することができる。義歯造形物は、上及び下のセットとして与えられることができ、各セットは、個々の患者のためにカスタマイズされ、従って付加製造は、かかる物体の製造の効率的でかつ極めて適切な形態である。本実施形態によれば、各義歯造形物は、それぞれ上又は下の義歯造形物であるが、各義歯造形物は、それ自身の可撓性犠牲構造内で印刷されてもよく、又は代替的に多数の上及び下の義歯造形物は、共通の可撓性犠牲構造内で印刷され、それから別個に取りはずされてもよい。
【0015】
本発明の一態様によれば、一つ以上の三次元物体の付加製造の方法であって、前記方法が、
層を逐次吐出及び凝固すること、但し前記層が、
(i)物体の一つ以上の形状に対応する構成パターンで配置されかつ一種以上の造形用材料から作られた造形層の少なくとも一つのスタック、
(ii)前記少なくとも一つのスタックを包囲しかつ少なくとも一種の支持体材料を含む中間層、及び
(iii)前記中間層及び物体を包囲する可撓性オーバーレイ
を含む;及び
可撓性オーバーレイへの圧力の付与によって可撓性オーバーレイから造形層のスタックを除去すること
を含む、方法が提供される。
【0016】
一実施形態では、前記可撓性オーバーレイが、第一の予め決められた組み合わせを含み、第一の予め決められた組み合わせが、少なくとも一種の造形用材料及び少なくとも一種の支持体材料を含む。
【0017】
一実施形態では、前記可撓性オーバーレイが、複数のボクセルを含み、造形用材料のボクセルに支持体材料のボクセルが散在されている。
【0018】
一実施形態では、前記可撓性オーバーレイが、可撓性であり、前記除去することが、造形層のそれぞれのスタックを可撓性オーバーレイから外に押し出すことを含む。
【0019】
一実施形態では、前記第一の中間層が、一個から十個までの範囲のボクセルの厚さを有する。
【0020】
一実施形態では、前記中間層が、八個のボクセルの厚さを有する。
【0021】
一実施形態では、前記中間層が、親水性である。
【0022】
前記方法は、前記物体を、前記可撓性オーバーレイからのその除去の前及び/又はその除去中に予め決められた時間、制御された温度環境に置くことを含むことができる。
【0023】
一実施形態では、制御された温度環境が、制御された温度の水浴である。
【0024】
一実施形態では、前記第一の予め決められた組み合わせが、少なくとも60%の造形用材料を含む。
【0025】
一実施形態では、前記第一の予め決められた組み合わせ中の前記造形用材料の百分率割合が、外側表面に向かって増加する。
【0026】
前記方法は、前記物体を印刷トレイの上に印刷すること、及び各物体をカバーする可撓性オーバーレイの間に及びそれらのまわりにスカート構造を与えることを含み、前記物体と前記可撓性オーバーレイは、前記スカート構造によって破壊可能に接合されることができる。
【0027】
一実施形態では、前記スカート構造が、前記一種以上の造形用材料及び前記支持体材料の第二の予め決められた組み合わせを含む。
【0028】
一実施形態では、前記第二の予め決められた組み合わせが、少なくとも90%の造形用材料を含む。
【0029】
前記方法は、支持体構造を含み、前記支持体構造が、前記物体に対して前記可撓性オーバーレイの外側にあることができる。
【0030】
前記方法は、前記物体を取り出し、予め決められた期間、浄化溶液中に置くことを含むことができる。
【0031】
一例では、前記物体が、義歯造形物である。
【0032】
本発明の第二態様によれば、一つ以上の物体を含む3D印刷構造物であって、前記構造物が、
(i)構成パターンで配置された造形層の少なくとも一つのスタックであって、各スタックが、一つ以上の物体の形状に対応し、一種以上の造形用材料から作られているもの、
(ii)一つ以上の物体の前記形状を包囲しかつ支持体材料を含む中間層、及び
(iii)前記中間層を包囲する可撓性オーバーレイであって、造形層のスタックが、可撓性オーバーレイへの圧力の付与によって可撓性オーバーレイから除去可能であるもの
を含む、3D印刷構造物が提供される。
【0033】
一実施形態では、前記可撓性オーバーレイが、第一の予め決められた組み合わせを含み、第一の予め決められた組み合わせが、前記一種以上の造形用材料のうちの一種、及び少なくとも一種の支持体材料を含む。
【0034】
一実施形態では、前記可撓性オーバーレイが、前記中間層より相対的に可撓性に劣り、それによって前記可撓性オーバーレイが前記造形層のスタックから分離されるとき、前記分離が前記第一の中間層に沿って起こることを確実にする。
【0035】
一実施形態では、前記中間層が、一個から十個までの範囲のボクセルの厚さを有する。
【0036】
一実施形態では、前記中間層が、八個のボクセルの厚さを有する。
【0037】
一実施形態では、前記中間層が、親水性である。
【0038】
一実施形態では、前記第一の予め決められた組み合わせが、少なくとも60%の造形用材料を含む。
【0039】
一実施形態では、前記第一の予め決められた組み合わせ中の前記造形用材料の量が、外側表面に向かって増加する。
【0040】
スカート構造は、各物体をカバーする可撓性オーバーレイの間に及びそれらのまわりに与えられ、前記物体と前記可撓性オーバーレイは、前記スカート構造によって破壊可能に接合されることができる。
【0041】
一実施形態では、前記スカート構造が、前記一種以上の造形用材料及び少なくとも一種の支持体材料の第二の予め決められた組み合わせを含む。
【0042】
一実施形態では、前記第二の予め決められた組み合わせが、少なくとも90%の造形用材料を含む。
【0043】
これらの実施形態は、支持体構造を含み、前記支持体構造が、前記物体に対して前記可撓性オーバーレイの外側にあることができる。
【0044】
本発明の第三態様によれば、プログラム指示が記憶されているコンピューター可読媒体を含むコンピューターソフトウェア製品であって、前記プログラム指示が、付加製造システムのコンピューター化されたコントローラーによって読まれるとき、前記システムに対して複数の層を逐次吐出及び凝固させるものであり、前記複数の層が、
(i)一つ以上の物体の形状に対応する構成パターンで配置されかつ一種以上の造形用材料から作られる造形層の一つ以上のスタック、
(ii)一つ以上の物体の前記形状を包囲しかつ少なくとも一種の支持体材料を含む中間層、及び
(iii)前記中間層を包囲する可撓性オーバーレイであって、造形層の前記スタックが、前記第一の中間層に沿った分離によって前記可撓性オーバーレイから除去可能であるもの
を含む、コンピューターソフトウェア製品が提供される。
【0045】
本発明の第四態様によれば、付加製造によって三次元物体を製作するためのシステムであって、前記システムが、
少なくとも一種の造形用材料を吐出するために構成された第一吐出ヘッド、及び支持体材料を吐出するために構成された第二吐出ヘッドを少なくとも含む複数の吐出ヘッド、
前記材料の各々を凝固するために構成された凝固システム、及び
前記吐出ヘッド及び凝固システムを操作して複数の層を逐次吐出及び凝固するように構成された回路を有するコンピューター化されたコントローラー
を含み、前記複数の層が、
(i)一つ以上の物体の形状に対応する構成パターンで配置されかつ一種以上の造形用材料から作られた造形層の一つ以上のスタック、
(ii)一つ以上の物体の前記形状を包囲しかつ少なくとも一種の支持体材料を含む中間層、及び
(iii)前記中間層を包囲しかつ前記第一の中間層での分離によって除去可能である可撓性オーバーレイ
を含む、システムが提供される。
【0046】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0047】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムを実行することは、選択されたタスクを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含んでいる。さらに、本発明の方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたタスクを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、あるいはオペレーティングシステムを用いるそれらの組合せによって実行できる。
【0048】
例えば、本発明の実施形態による印刷タスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されることができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態により選択されたタスクは、コンピューターが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの指示のようなソフトウェアとして実施されることができる。本発明の例示的な実施形態において、本明細書に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、データプロセッサ、例えば複数の指示を実行する計算プラットフォームで実行される。
【0049】
任意選択的に、データプロセッサは、指示および/またはデータを格納するための揮発性メモリ、および/または、指示および/またはデータを格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、および/または取り外し可能な記録媒体)を含む。任意選択的に、ネットワーク接続もさらに提供される。ディスプレイおよび/またはユーザ入力装置(例えば、キーボードまたはマウス)も、任意選択的にさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面及び画像を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0051】
【
図1A】
図1Aは、本発明の一部の実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図1B-1C】
図1B-1Cは、本発明の一部の実施形態による付加製造システムの概略図である。
【
図1D】
図1Dは、本発明の一部の実施形態による付加製造システムの概略図である。
【0052】
【
図2A-2C】
図2A-2Cは、本発明の一部の実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【0053】
【
図3A-3B】
図3A及び3Bは、本発明の一部の実施形態による座標変換を実証する概略図である。
【0054】
【
図4】
図4は、単一の印刷犠牲構造中の三つの印刷物体を断面図で示す簡略概略図であり、そこでは物体は、本発明の実施形態に従って個々に取りはずすことができる。
【0055】
【
図5】
図5は、物体の一つが犠牲構造から外に押し出されるときの
図4の断面図を示す。
【0056】
【
図6】
図6は、物体の一つが犠牲構造から分離された後の
図4の断面図を示す。
【0057】
【
図7】
図7は、物体の形状が凹面及び/又は負角を含む場合に製作されることができる犠牲構造の断面図を示す簡略概略図である。
【0058】
【
図8】
図8は、
図4~6の実施形態による物体の印刷及び除去を示す簡略フローチャートである。
【0059】
【
図9】
図9は、本実施形態に従って印刷される物体の単一層の図を示す。
【0060】
【0061】
【0062】
【
図11】
図11は、本実施形態に従って印刷される複数の物体の単一層の図を示す。
【0063】
【0064】
【0065】
【
図13】
図13は、本発明の実施形態による犠牲構造中の印刷義歯の二つのセットの写真である。
【0066】
【
図14】
図14は、本発明の実施形態による犠牲構造からの印刷物体の分離前の水浴から除去される
図13の印刷義歯のセットの写真である。
【0067】
【
図15】
図15は、犠牲構造からの物体の一つの分離中の
図13の印刷義歯のセットの写真である。
【
図16】
図16は、犠牲構造からの物体の一つの分離中の
図13の印刷義歯のセットの写真である。
【0068】
【
図17】
図17は、本発明の実施形態による犠牲構造からの印刷物体の分離後の
図13の印刷義歯のセットの写真である。
【0069】
【発明を実施するための形態】
【0070】
本発明は、その一部の実施形態では、付加製造(AM)に関し、特に限定されないが、除去可能な犠牲構造の付加製造のための方法及びシステムに関する。
【0071】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面および/または実施例において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0072】
本実施形態の方法およびシステムは、物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を形成することによって、三次元物体をコンピューター物体データに基づいて1層ずつ製作する。コンピューター物体データは、標準テッセレーション言語(STL)またはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴン・ファイル・フォーマット(PLY)、またはコンピューター支援設計(CAD)に適したいずれかの他のフォーマットを含め、それらに限らず、任意の公知のフォーマットにすることができる。
【0073】
本明細書において使用される用語「物体」は、物品全体又は物品の一部を示す。用語「物体」は、付加製造の最終生成物を記載する。この用語は、支持体材料が構築材料の一部として使用されたなら、支持体材料の除去後に本明細書に記載されたような方法によって得られた生成物を示す。「物体」は、それゆえ固化された(例えば硬化された)造形用材料から本質的になる(少なくとも95重量%からなる)。
【0074】
各層は、二次元表面を走査し、パターンに従って表面上に選択されたボクセルで構築材料を置く付加製造装置によって形成される。走査中に、装置は、二次元の層または表面上の複数の目標位置を訪れ、各目標位置または1群の目標位置について、目標位置または目標位置群が構築材料によって占有されるべきか否か、かつどのタイプの構築材料をそこに送達すべきかを決定する。決定は、表面のコンピューター画像に従って行われる。
【0075】
本発明の好ましい実施形態では、AMは、三次元印刷を、より好ましくは三次元インクジェット印刷を含む。これらの実施形態では、構築材料は、1組のノズルを有する吐出ヘッドから吐出され、構築材料を支持体構造上に層状に堆積する。AM装置はこうして、占有すべき目標位置に構築材料を吐出し、かつ他の目標位置を空所のままにする。装置は通常、複数の吐出ヘッドを含み、各吐出ヘッドは、異なる構築材料を吐出するように構成されることができる。従って、異なる目標位置を異なる構築材料が占有することができる。構築材料の種類は主に、造形用材料および支持体材料の2つのカテゴリに分類されることができる。支持体材料は、製作プロセス中に物体もしくは物体の一部分を支持するため、かつ/または他の目的で、例えば中空物体もしくは多孔質物体を提供するために、支持マトリックスまたは支持構造として働く。支持体構造は、例えば支持強度を高めるために、さらに造形用材料要素を含んでよい。
【0076】
造形用材料は一般的に、付加製造用に配合された組成物であり、それは、任意選択的にかつ好ましくは、それ自体で、すなわち他の物質と混合または組み合わせの必要がなく、三次元物体を形成することができる。
【0077】
最終的な三次元物体は、造形用材料または二種以上の造形用材料の組合せ、または造形用材料と支持体材料の組合せ、またはそれらの改良(例えば硬化のような凝固(これに限定されない)後)から作製される。これらの作業は全て、立体自由造形の当業者には良く知られている。
【0078】
本発明の一部の例示的実施形態では、物体は、2つ以上の異なる造形用材料を吐出することによって製造され、各材料は、AMの異なる吐出ヘッドから吐出される。しかしながら、これは、必ずしもその通りである必要はない。なぜなら一部の実施形態について1つより多い造形用材料を吐出する必要がないかもしれないからである。これらの実施形態では、物体は、単一の造形用材料、及び任意選択的にかつ好ましくは単一の支持体材料を吐出することによって製造される。これらの実施形態は、物体が1つだけの造形用材料を吐出するヘッド、及び一つの支持体材料を吐出するヘッドを含むシステムによって製造される。これらの実施形態はまた、2つ以上の造形用材料を吐出するヘッド、及び1つの支持体材料を吐出するヘッドを含むシステムによって製造されるときに好ましいが、全ての造形用材料を吐出するヘッドが同じ造形用材料を受けて吐出する高出力モードでシステムを操作することが望ましい。
【0079】
材料は、任意選択的にかつ好ましくは、印刷ヘッドの同一パス中に層状に堆積される。層内の材料および材料の組合せは、物体の所望の特性に従って選択されることができる。
【0080】
本発明の一部の実施形態による、物体112のAMに適したシステム110の代表的かつ非限定的実施例を、
図1Aに示す。システム110は、複数の吐出ヘッドを含む吐出ユニット16を有する付加製造装置114を含むことができる。各ヘッドは、下述する
図2A~
図2Cに示すように、液状構築材料124が吐出される1つ以上のノズル122のアレイを含むことが好ましい。
【0081】
装置114は三次元印刷装置であることが好ましいが、必須ではない。その場合、吐出ヘッドは印刷ヘッドであり、構築材料はインクジェット技術によって吐出される。用途によっては、付加製造装置は三次元印刷技術を採用する必要がない場合があるので、これは必ずしも該当しない。本発明の様々な例示的実施形態に従って構想される付加製造装置の代表例は、熱溶解積層造形装置および熱溶解材料堆積装置を含むが、それらに限定されない。
【0082】
各吐出ヘッドは、任意選択的にかつ好ましくは構築材料リザーバを介して供給され、リザーバは、任意選択的に温度コントローラ(例えば温度センサーおよび/または加熱装置)および材料レベルセンサーを含んでもよい。構築材料を吐出するために、例えば圧電式インクジェット印刷技術の場合のように、吐出ヘッドノズルを介して材料の液滴が選択的に堆積されるように、電圧信号が吐出ヘッドに印加される。各ヘッドの吐出率は、ノズルの個数、ノズルの種類、および印加電圧の信号レート(周波数)に依存する。そのような吐出ヘッドは、立体自由造形の当業者には知られている。
【0083】
吐出ノズルまたはノズルアレイの総数は、吐出ノズルの半数が支持体材料を吐出するように設計され、かつ吐出ノズルの半数が造形用材料を吐出するように設計され、すなわち造形用材料を噴出するノズルの個数が支持体材料を噴出するノズルの個数と同数になるように選択されることが好ましいが、必須ではない。
図1Aの代表例には、4つの吐出ヘッド16a、16b、16c、および16dが示される。ヘッド16a、16b、16c、および16dの各々がノズルアレイを有する。この例では、ヘッド16aおよび16bは造形用材料用に設計することができ、ヘッド16cおよび16dは支持体材料用に設計することができる。こうして、ヘッド16aは、第1造形用材料を吐出することができ、ヘッド16bは第2造形用材料を吐出することができ、ヘッド16cおよび16dは両方とも支持体材料を吐出することができる。代替的実施形態では、例えばヘッド16cおよび16dは、支持体材料を吐出するための2つのノズルアレイを有する単一のヘッドに組み合わされてもよい。別の代替実施形態では、ヘッド16aおよび16bはともに、同じ造形用材料を吐出することができ、又は造形用材料を吐出するための2つのノズルアレイを有する単一のヘッドに組み合わせることができる。別の代替的実施形態では、吐出ユニット16は、(造形用材料の吐出用)ヘッド16a及び(支持体材料の吐出用)ヘッド16cのみを含み、システム110は、ヘッド16aおよび16c以外の追加の吐出ヘッドを含まない。
【0084】
それにも関わらず、それは本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、造形用材料吐出ヘッド(造形用ヘッド)の個数および支持体材料吐出ヘッド(支持体用ヘッド)の個数は異なってもよいことを理解されたい。一般的に、造形用ヘッドの個数、支持体用ヘッドの個数、およびそれぞれのヘッドまたはヘッドアレイの各々におけるノズルの個数は、支持体材料の最大吐出率と造形用材料の最大吐出率との間に所定の比率αがもたらされるように選択される。所定の比率αの値は、形成される各層における造形用材料の高さが支持体材料の高さに等しいことを確実にするように選択されることが好ましい。αの典型値は約0.6~約1.5である。
【0085】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0086】
例えばα=1の場合、全ての造形用ヘッドおよび支持体用ヘッドが作動しているときに、支持体材料の総吐出率は造形用材料の総吐出率と略同一である。
【0087】
好ましい実施形態では、ノズルp個のアレイm個を各々有する造形用ヘッドM個、およびノズルq個のアレイs個を各々有する支持体用ヘッドS個が存在するので、M×m×p=S×s×qとなる。M×m個の造形用アレイおよびS×s個の支持体用アレイの各々は、別個の物理ユニットとして製造されることができ、それをアレイ群に組み立てたり、そこから分解したりすることができる。この実施形態では、そのようなアレイの各々は、任意選択的にかつ好ましくは、それ自体の温度コントローラおよび材料レベルセンサーを含み、かつその動作のために個々に制御された電圧を受け取る。
【0088】
装置114は、凝固システム324をさらに含むことができ、それは、堆積された材料を凝固、任意選択的にかつ好ましくは硬化させうる光、熱などを放出するように構成された任意の装置を含むことができる。例えば凝固システム324は、1つ以上の放射源を含むことができ、それは、使用される造形用材料に応じて、例えば紫外線もしくは可視光もしくは赤外線ランプ、または他の電磁放射源、または電子ビーム源とすることができる。本発明の一部の実施形態では、凝固システム324は、造形用材料を硬化または凝固させるように働く。
【0089】
吐出ヘッドおよび放射源は、作業面として働くトレイ360上を往復運動するように動作することが好ましいフレームまたはブロック128に取り付けられることが好ましい。本発明の一部の実施形態では、放射源は、吐出ヘッドによって吐出されたばかりの材料を少なくとも部分的に凝固(例えば硬化)するために、放射源が吐出ヘッドの後に追従するようにブロックに取り付けられる。トレイ360は水平に配置される。一般的な取決めに従って、X‐Y‐Zデカルト座標系は、X‐Y面がトレイ360と平行になるように選択される。トレイ360は、垂直方向に(Z方向に沿って)、通常は下方に移動するように構成されることが好ましい。本発明の様々な例示的実施形態では、装置114は、1つ以上のレベリング装置132、例えばローラ326をさらに含む。レベリング装置326は、新たに形成された層の厚さを、その上に次の層が形成される前に矯正し、平準化し、かつ/または確立するように働く。レベリング装置326は、レベリング中に発生した余分な材料を回収するために、廃棄物回収装置136を含むことが好ましい。廃棄物回収装置136は、廃棄物タンクまたは廃棄物カートリッジに材料を送達する何らかの機構を含んでもよい。
【0090】
使用中に、ユニット16の吐出ヘッドは、本書ではX方向と呼ぶ走査方向に移動し、それらがトレイ360上を通過する過程で所定の構成に構築材料を選択的に吐出する。構築材料は通常、1種類以上の支持体材料および1種類以上の造形用材料を含む。ユニット16の吐出ヘッドの通過に続いて、放射源126による造形用材料の硬化が行われる。堆積されたばかりの層のためのヘッドの出発点に戻るヘッドの逆方向の通過中に、所定の構成に従って構築材料の追加吐出が実行されてもよい。吐出ヘッドの順方向または逆方向の通過中に、こうして形成された層は、レベリング装置の順方向および/または逆方向の移動中に好ましくは吐出ヘッドの経路に従うレベリング装置326によって矯正される。吐出ヘッドがX方向に沿ってそれらの出発点に戻ると、吐出ヘッドは、本書ではY方向と呼ぶ割出し方向に沿って別の位置に移動し、X方向に沿った往復運動によって同じ層を構築し続けてもよい。
【0091】
代替的に、吐出ヘッドは、順方向および逆方向の移動の間に、または2回以上の順方向‐逆方向移動の後に、Y方向に移動してもよい。単一の層を完成させるために吐出ヘッドによって実行される一連の走査は、本書では単一走査サイクルと呼ばれる。
【0092】
層が完成すると、次に印刷される層の所望の厚さに応じて、トレイ360は、Z方向に所定のZレベルまで下降する。この手順は、三次元物体112が層毎に形成されるように繰り返される。
【0093】
別の実施形態では、トレイ360は、層内で、ユニット16の吐出ヘッドの順方向および逆方向の通過の間に、Z方向に変位されてもよい。そのようなZ変位は、レベリング装置を1方向に表面と接触させ、かつ他の方向の接触を防止するために実行される。
【0094】
システム110は、任意選択的にかつ好ましくは、構築材料容器またはカートリッジを含みかつ複数の構築材料を製造装置114に供給する、構築材料供給システム330を含む。
【0095】
コンピューター化されたコントローラ152は、製造装置114および任意選択的にかつ好ましくは供給システム330をも制御する。コントローラ152は通常、制御動作を実行するように構成された電子回路を含む。コントローラ152は、コンピューター物体データ、例えば上述のフォーマットのいずれか(例えばSTL)の形式でコンピューター可読媒体に表されたCAD構成に基づいて、製作指示に関するデジタルデータを送信するデータプロセッサ154と通信することが好ましい。通常、コントローラ152は、各吐出ヘッドまたはノズルアレイに印加される電圧、およびそれぞれの印刷ヘッドの構築材料の温度を制御する。
【0096】
製造データがコントローラ152にロードされると、コントローラは、ユーザの介入なしに動作することができる。一部の実施形態では、コントローラ152は、例えばデータプロセッサ154を用いて、あるいはユニット152と通信するユーザインタフェース116を用いて、オペレータから追加の入力を受信する。ユーザインタフェース116は、例えばキーボード、タッチスクリーンなど、しかしそれらに限らず、当業界で公知の任意の種類とすることができる。例えばコントローラ152は、追加の入力として、1つ以上の構築材料の種類および/または属性、例えば色、特性歪み、および/または転移温度、粘度、電気特性、磁気特性などを受信することができるが、それらに限定されない。他の属性および属性群も考えられる。
【0097】
本発明の一部の実施形態による物体のAMに適したシステム10の別の代表的かつ非限定的実施例を
図1B~
図1Dに示す。
図1B~
図1Dは、システム10の上面図(
図1B)、側面図(
図1C)、および等角図(
図1D)を示す。
【0098】
本実施形態では、システム10は、トレイ12と、各々が複数の分離したノズルを有する複数の吐出ヘッド16、任意選択的にかつ好ましくはインクジェット印刷ヘッドとを備える。トレイ12は、円板の形状を有することができ、あるいは環状とすることができる。垂直軸線を中心に回転することができることを前提として、非円形の形状も考えられる。
【0099】
トレイ12およびヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、トレイ12とヘッド16との間の相対的回転運動ができるように取り付けられる。これは、(i)トレイ12がヘッド16に対して垂直軸線14を中心に回転するようにトレイを構成することによって、(ii)ヘッド16がトレイ12に対して垂直軸線14を中心に回転するようにヘッドを構成することによって、または(iii)トレイ12およびヘッド16の両方が垂直軸線14を中心に、しかし異なる回転速度で回転(例えば逆方向に回転)するように構成することによって、達成されることができる。以下の実施形態は、トレイが、ヘッド16に対して垂直軸線14を中心に回転するように構成された回転トレイである構成(i)を特に重点的に記載するが、本願は構成(ii)および(iii)をも企図していることを理解されたい。本書に記載する実施形態はいずれも、構成(ii)および(iii)のいずれかに適用できるように調整することができ、本書に記載する詳細を前提として、そのような調整をどのように行うかが当業者には分かるであろう。
【0100】
以下の説明では、トレイ12と平行で軸線14から外向きの方向を半径方向rと呼び、トレイ12と平行で半径方向rに垂直な方向をここでは方位角方向φと呼び、トレイ12に直角な方向をここでは垂直方向zと呼ぶ。
【0101】
本書で使用する用語「半径方向位置」とは、軸線14から特定の距離にあるトレイ12上またはトレイ12より上の位置を指す。この用語が印刷ヘッドに関連して使用される場合、この用語は、軸線14から特定の距離にあるヘッドの位置を指す。この用語がトレイ12上の点に関連して使用される場合、この用語は、半径が軸線14から特定の距離にあってその中心が軸線14にある円を描く点の軌跡に属する任意の点に対応する。
【0102】
本書で使用する用語「方位角位置」は、所定の基準点に対して特定の方位角にあるトレイ12上またはトレイ12より上の位置を指す。従って、半径方向位置は、基準点に対して特定の方位角を形成する直線を描く点の軌跡に属する任意の点を指す。
【0103】
本書で使用する用語「垂直位置」は、特定の点で垂直軸線14と交差する面全体の位置を指す。
【0104】
トレイ12は、三次元印刷のための支持構造として働く。1つ以上の物体が印刷される作業領域は通常、トレイ12の総面積より小さいが、必ずしもそうである必要はない。本発明の一部の実施形態では、作業領域は環状である。作業領域は符号26で示される。本発明の一部の実施形態では、トレイ12は、物体の形成中ずっと、同一方向に連続的に回転し、本発明の一部の実施形態では、トレイは、物体の形成中に少なくとも1回(例えば振動するように)回転方向を逆転する。トレイ12は、任意選択的にかつ好ましくは取外し可能である。トレイ12の取外しは、システム10の保守のために、あるいは希望する場合には、新しい物体を印刷する前にトレイを交換するために、行うことができる。本発明の一部の実施形態では、システム10には1つ以上の異なる交換トレイ(例えば交換トレイのキット)が提供され、2つ以上のトレイが異なる種類の物体(例えば異なる重量)、異なる動作モード(例えば異なる回転速度)等のために設計される。トレイ12の交換は、希望に応じて手動または自動にすることができる。自動交換が採用される場合、システム10は、トレイ12をヘッド16の下にあるその位置から取り外して、それを交換トレイ(図示せず)と交換するように構成されたトレイ交換装置36を含む。
図1Bの代表図では、トレイ交換装置36は、トレイ12を引っ張るように構成された可動アーム40を持つドライブ38として示されるが、他の種類のトレイ交換装置も考えられる。
【0105】
印刷ヘッド16の例示的実施形態を
図2A~
図2Cに示す。これらの実施形態は、システム110およびシステム10を含め、それらに限らず、上述したAMシステムのいずれかに採用することができる。
【0106】
図2A~
図2Bは、1つ(
図2A)および2つ(
図2B)のノズルアレイ22を持つ印刷ヘッド16を示す。アレイにおけるノズルは、直線に沿って線状に並ぶことが好ましい。特定の印刷ヘッドが2つ以上のリニア・ノズル・アレイを有する実施形態では、ノズルアレイは、任意選択的にかつ好ましくは、相互に平行にすることができる。
【0107】
システム110と同様のシステムが使用される場合、全ての印刷ヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、走査方向に沿ったそれらの位置が互いにずらされ、割出し方向に沿って向き付けられる。
【0108】
システム10と同様のシステムが使用される場合、全ての印刷ヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、それらの方位角位置が互いにずらされ、放射状に(放射方向と平行に)向き付けられる。従って、これらの実施形態では、異なる印刷ヘッドのノズルアレイは、互いに平行ではなく、むしろ互いに角度を成しており、その角度はそれぞれのヘッド間の方位角のずれに略等しい。例えば、1つのヘッドは、放射状に向き付け、かつ方位角位置φ1に配置することができ、別のヘッドは、放射状に向き付け、かつ方位角位置φ2に配置することができる。この実施例では、2つのヘッド間の方位角のずれはφ1-φ2であり、2つのヘッドのリニア・ノズル・アレイ間の角度もまたφ1-φ2である。
【0109】
一部の実施形態では、2つ以上の印刷ヘッドを組み立てて、1ブロックの印刷ヘッドにすることができる。その場合、そのブロックの印刷ヘッドは一般的に、互いに平行である。幾つかのヘッド16a、16b、16cを含むブロックが
図2Cに示される。
【0110】
一部の実施形態では、システム10は、トレイ12がトレイ支持構造30とヘッド16との間に来るように、ヘッド16の下に位置するトレイ支持構造30を含む。トレイ支持構造30は、ヘッド16が作動している間に発生することのあるトレイ12の振動を防止または低減するように働く。印刷ヘッド16が軸線14を中心に回転する構成では、トレイ支持構造30が常にヘッド16の真下にくるように(トレイ12と共にヘッド16とトレイ12の間で)トレイ支持構造30も回転することが好ましい。
【0111】
トレイ12および/または印刷ヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、トレイ12と印刷ヘッド16との間の垂直距離が変動するように垂直方向zに沿って垂直軸線14と平行に移動するように構成される。トレイ12を垂直方向に沿って移動させることによって垂直距離が変動する構成では、トレイ支持構造30もトレイ12と共に垂直方向に移動することが好ましい。トレイ12の垂直位置は固定されたままで、垂直距離がヘッド16によって垂直方向に沿って変動する構成では、トレイ支持構造30もまた固定垂直位置に維持される。
【0112】
垂直移動は、垂直ドライブ28によって確立することができる。ある層が完成すると、次に印刷される層の所望の厚さに応じて所定の垂直間隔だけ、トレイ12とヘッド16との間の垂直距離を増大させることができる(例えばヘッド16に対してトレイ12を下降させる)。この手順は、三次元物体が層毎に形成されるように繰り返される。
【0113】
ヘッド16の動作、および任意選択的にかつ好ましくは、システム10の1つ以上の他の構成部品の動作、例えばトレイ12の移動は、コントローラ20によって制御される。コントローラは、電子回路および電子回路によって読出し可能な不揮発性記憶媒体を有することができ、記憶媒体は、回路によって読み出されたときに、以下でさらに詳述するように制御動作を回路に実行させるプログラム指示を格納する。
【0114】
コントローラ20はまた、上述のフォーマットのいずれかのコンピューター物体データに基づいて、製作指示に関するデジタルデータを送信するホストコンピューター24と通信することもできる。物体データフォーマットは一般的に、デカルト座標系に従って構成される。このような場合、コンピューター24は、コンピューター物体データにおける各スライスの座標をデカルト座標系から極座標系に変換するための手順を実行することが好ましい。コンピューター24は、任意選択的にかつ好ましくは、変換された座標系で製作指示を送信する。代替的に、コンピューター24は、コンピューター物体データによって提供された元の座標系で、製作指示を送信することができ、その場合、座標の変換はコントローラ20の回路によって実行される。
【0115】
座標の変換は、回転トレイ上の三次元印刷を可能にする。従来の三次元印刷では、印刷ヘッドは、静止トレイ上を直線に沿って往復運動する。そのような従来のシステムでは、ヘッドの吐出率が均一であることを前提として、印刷解像度はトレイ上のどの点でも同じである。従来の三次元印刷とは異なり、ヘッド点の全てのノズルが同時にトレイ12全体で同一距離をカバーするわけではない。座標の変換は、任意選択的にかつ好ましくは、異なる半径方向位置における過剰な材料の均等な量が確保されるように実行される。本発明の一部の実施形態による座標変換の代表例が、物体の3つのスライスを示す
図3A~
図3Bに提示される(各スライスは物体の異なる層の製作指示に対応する)。
図3Aは、スライスをデカルト座標系で示し、
図3Bは、座標変換手順がそれぞれのスライスに適用された後の同じスライスを示す。
【0116】
通常、コントローラ20は、製作指示に基づき、かつ下述する格納されたプログラム指示に基づいて、システム10のそれぞれの構成部品に印加される電圧を制御する。
【0117】
一般的に、コントローラ20は、トレイ12の回転中に、トレイ12上で三次元物体を印刷するために構築材料の液滴を層状に吐出するように、印刷ヘッド16を制御する。
【0118】
システム10は、任意選択的にかつ好ましくは、凝固システム18を含み、それは、任意選択的にかつ好ましくは、1つ以上の放射源18を備え、それは、使用する造形用材料に応じて、例えば紫外線もしくは可視光もしくは赤外線ランプ、または他の電磁放射源、または電子ビーム源とすることができる。放射源は、発光ダイオード(LED)、デジタル・ライト・プロセシング(DLP)システム、抵抗ランプ等をはじめ、それらに限らず、任意の種類の放射線放出装置を含むことができる。凝固システム18は、造形用材料を凝固(例えば硬化)させるように働く。本発明の様々な例示的実施形態では、凝固システム18の動作は、コントローラ20によって制御され、それは、凝固システム18を作動させたり停止させたりすることができ、かつ任意選択的に凝固システム18によって発生する放射線の量も制御することができる。
【0119】
本発明の一部の実施形態では、システム10は、ローラまたはブレードとして製造されることができる1つ以上のレベリング装置32をさらに含む。レベリング装置32は、新たに形成された層を、次の層がその上に形成される前に矯正するのに役立つ。一部の実施形態では、レベリング装置32は、円錐ローラの形状を有し、その対称軸線34がトレイ12の表面に対して傾斜し、かつその表面がトレイの表面と平行になるように配置される。この実施形態をシステム10の側面図で示す(
図1C)。
【0120】
円錐ローラは、円錐または円錐台の形状を有することができる。
【0121】
円錐ローラの開き角は、その軸線34に沿った任意の位置における円錐の半径と、その位置と軸線14との間の距離との比率が一定になるように選択されることが好ましい。ローラが回転する間、ローラの表面上の点pはどれも、点pの鉛直下方に位置する点のトレイの線速度に比例する(例えば同一の)線速度を有するので、この実施形態は、ローラ32が層を効率的に平準化することを可能にする。一部の実施形態では、ローラは高さh、軸線14から最も近い距離位置における半径R1、および軸線14から最も遠い距離位置における半径R2を有する円錐台の形状を有する。ここでパラメータh、R1、およびR2は、R1/R2=(R-h)/hの関係を満たし、ここでRは、軸線14からのローラの最遠距離である(例えばRは、トレイ12の半径とすることができる)。
【0122】
レベリング装置32の動作は、任意選択的にかつ好ましくは、コントローラ20によって制御される。コントローラ20は、レベリング装置32を作動させたり停止させたりすることができ、かつ任意選択的に、垂直方向(軸線14と平行)に沿ったその位置、および/または放射方向(トレイ12と平行に、軸線14に近づくかまたはそれから離れる方向)に沿ったその位置をも制御することができる。
【0123】
本発明の一部の実施形態では、印刷ヘッド16は、半径方向rに沿ってトレイに対して往復運動するように構成される。これらの実施形態は、ヘッド16のノズルアレイ22の長さがトレイ12上の作業領域26の半径方向に沿った幅より短いときに、有用である。半径方向に沿ったヘッド16の運動は、任意選択的にかつ好ましくはコントローラ20によって制御される。
【0124】
一部の任意選択的な実施形態は、異なる吐出ヘッドから異なる材料を吐出することによって物体を製作することを企図している。これらの実施形態は、とりわけ、所定数の材料から材料を選択し、かつ選択された材料およびそれらの特性の所望の組合せを画定する能力を提供する。本実施形態によれば、異なる材料による異なる三次元空間位置の占有を達成するか、あるいは2つ以上の異なる材料による略同一の三次元位置または隣接する三次元位置の占有を達成するように、層における各材料の堆積の空間位置が画定され、層内の材料の堆積後の空間的組合せが可能になり、それによってそれぞれの位置(単数または複数)で複合材料を形成することが可能になる。
【0125】
造形用材料の任意の堆積後の組合せまたは混合が企図される。例えば、特定の材料が吐出された後、それはその元の特性を維持することができる。しかし、別の造形用材料または他の吐出材料と同時に、同じ位置あるいは近傍位置で吐出された場合、吐出された材料とは異なる特性を有する複合材料が形成される。
【0126】
こうして本実施形態は、広範囲の材料の組合せの堆積を可能にし、かつ物体の各部分を特徴付けるために望ましい特性に応じて、物体の異なる部分を複数の異なる材料の組合せから構成されることができる物体の製作を可能にする。
【0127】
本実施形態に適したAMシステムの原理および動作のさらなる詳細は、米国公開出願第20100191360号に見出され、その内容を参照によって本書に援用する。
【0128】
本発明の一部の実施形態では、前記方法は、層の少なくとも一つに対してデジタル材料を吐出する。
【0129】
本明細書及び業界で使用される表現「デジタル材料(digital material)」は、特定の材料の印刷された領域が2,3個のボクセルのレベルで又は1個のボクセルブロックのレベルであるように微視的なスケール又はボクセルレベルで二種以上の材料の組み合わせを記載する。かかるデジタル材料は、材料の種類及び/又は二種以上の材料の比率及び相対的な空間分布の選択によって影響される新しい特性を示すことができる。
【0130】
例示的なデジタル材料では、硬化で得られた、各ボクセル又はボクセルブロックの造形用又は支持体材料は、硬化で得られた、隣接ボクセル又はボクセルブロックの造形用又は支持体材料から独立しており、従って各ボクセル又はボクセルブロックは、異なる造形用又は支持体材料をもたらし、全体の物体の新しい特性は、複数の異なる造形用材料のボクセルレベルでの空間組み合わせの結果である。
【0131】
本明細書において全体を通じて、表現「ボクセルレベルで」が異なる材料及び/又は特性の文脈において使用されるときはいつでも、ボクセルブロック間の差、並びに複数のボクセル又は2,3個のボクセルのグループの間の差を含むことが意味される。好ましい実施形態では、全体の物体の特性は、複数の異なる造形用材料のボクセルブロックレベルでの空間組み合わせの結果である。
【0132】
本実施形態は、特に義歯造形物の印刷されたセットに関するものであることができる。義歯造形物は、上及び下のセットとして与えられ、各セットは、個々の患者のためにカスタマイズされ、従って付加製造は、かかる物体のために効率的でかつ極めて適切な製造の形態である。本実施形態によれば、それぞれ別の上又は下の義歯造形物である各義歯造形物をそれ自身の可撓性の犠牲構造内で印刷してもよく、又は代替的に多数の上及び下の義歯造形物を共有の可撓性の犠牲構造内で印刷し、それから別々に除去してもよい。
【0133】
義歯造形物全体の一貫した表面は、美感的な考え(例えば連続艶消又は光沢表面)として要求されるが、もしさらなる加工、例えば熱成形用途での義歯の使用が必要とされるなら、この場合も要求される。
【0134】
隣接する支持構造なしで物体を印刷するとき、物体の表面テクスチャは、一般に光沢性に見えるだろう。しかしながら、多くの物体の幾何学形状は、突き出し、負角、曲線及び/又は中空を含み、それらは、一つ以上の支持構造の形成を要求する。物体表面への支持構造の近接は、造形用材料と支持体材料の一部混合によって印刷中のそれらの間の界面で艶消テクスチャを有する表面をもたらす。対照的に、隣接する支持構造なしで印刷される同じ物体の他の表面は、光沢テクスチャを持ち、それは、一貫していない表面テクスチャを持つ最終物体をもたらす。
【0135】
義歯造形物は、一般に上方に面して印刷され、従って義歯造形物表面は、隣接する支持構造を要求しないかもしれない。この場合、印刷プロセスの完了後の支持構造の除去の潜在的に労力の必要な時間消費プロセスは使用者に課されない。しかしながら、一部の義歯造形物の幾何学形状は、実際に一部の表面に隣接する支持構造を要求する。従って、義歯造形物の全体に一貫した艶消表面テクスチャを与えるために、義歯造形物が支持体材料の層でカバーされた表面を持つことが必要であり、それは、いったん印刷が完了したら、好ましくは容易かつ素早く義歯造形物から除去される。一部の実施形態では、印刷造形物の側面、上面及び下面は、支持体材料と接触している。
【0136】
時間消費する後加工工程のさらなる使用なしで一貫した/均質な表面を有する最終造形物を得るための解決策の研究において、本発明者は、その除去を容易にし、後加工工程を最小にするために物体の上又はそのまわりに可撓性犠牲構造を形成する製作技術を考えた。一部の実施形態では、犠牲構造は、造形用材料(この造形用材料は、物体を作るためにも使用される)及び支持体材料の組み合わせを噴射することによってデジタル的に作られる(即ち、デジタル又は複合材料)。それゆえ、一部の実施形態では、物体及びその犠牲構造は、二つの別個の構築材料のみを使用する相対的に簡単な3D印刷システムで製造されることができる。
【0137】
一部の実施形態では、(一般にカーペット/台座構造の上にある下面に加えて)形成される物体の全ての外表面は、可撓性犠牲構造でカバーされる。可撓性犠牲構造は、可撓性オーバーレイ、及び可撓性オーバーレイと物体の間の中間層を含む。可撓性オーバーレイは、造形用材料と支持体材料の組み合わせを含む複合材料から形成される。中間層は、一般的に、主に支持体材料、又は支持体材料のみを含み、二、三個のボクセル厚さの厚さ(例えば10~500μm)を有する。一部の実施形態では、複合材料は、予め設定された割合に従ってインターレースされたボクセルで印刷された造形用材料と支持体材料の混合物から製造される。予め設定された割合は、複合材料の全体で変化してもよく(異方性複合材料)、従って例えば複合材料は、それをつかむのを容易にするために外側で低い可撓性にし、可撓性犠牲構造からの物体の除去の容易のために内側で高い可撓性にしてもよい。
【0138】
本発明の一部の実施形態によれば、各物体、例えば義歯造形物は、それ自身の可撓性犠牲構造内で印刷され、それから容易に除去されることができる。本発明の一部の他の実施形態では、複数の物体、例えば複数の義歯造形物が、共有/共通の可撓性犠牲構造内で互いに予め決められた距離で印刷され、それからそれを個々に除去可能である。
【0139】
本発明の一部の実施形態による三次元物体の付加製造の方法は、層を逐次吐出及び凝固することを含む。層は、(i)一つ以上の物体の形状に対応する構成パターンで配置されかつ一種以上の造形用材料から作られた造形層のスタック、(ii)一つ以上の物体の形状を包囲しかつ少なくとも一種の支持体材料を含む中間層、及び(iii)前記中間層を包囲するオーバーレイを含むことができる。任意選択的に、中間層の支持体材料と印刷される物体の造形用材料の混合を減らすために、物体の表面と支持体材料の中間層の間に空隙が与えられることができる。
【0140】
複合材料は、造形用材料及び支持体材料の複数のボクセル(例えば0.1~1mm)として印刷される。複合材料の可撓性は、造形用材料のボクセルに支持体材料のボクセルを散在させることによって達成されることができる。
【0141】
可撓性オーバーレイを形成する複合材料は、少なくとも60%の造形用材料を含む混合物であることができる。一部の実施形態では、可撓性オーバーレイの外側表面に向かって造形用材料の百分率割合が増加する。即ち、支持体材料に対する造形用材料の百分率割合は、可撓性オーバーレイの外側部分の複合材料が約80%の造形用材料と約20%の支持体材料のデジタル組み合わせを含み、可撓性オーバーレイの内側部分が約60%の造形用材料と40%の支持体材料のデジタル組み合わせを含み、可撓性オーバーレイの外側部分より内側部分を可撓性にするように、複合材料の外側部分に向かって増加する。一部の実施形態では、可撓性オーバーレイの内側部分と外側部分の間に可撓性の勾配がある。
【0142】
一部の実施形態では、可撓性オーバーレイと物体表面の間の中間層は、支持体材料の少なくとも90%又は少なくとも100%を含み、一個から十個までのボクセルの厚さ、例えば八個のボクセルの厚さであることができる。中間層は、親水性、疎水性、又は両親媒性であることができる。
【0143】
本発明の一部の実施形態では、本明細書に記載されるように、複数の物体を共有の可撓性犠牲構造内で印刷することができる。物体(例えば義歯造形物)は、互いに予め規定された距離で、かつ互いに対して予め規定された構成で印刷される。かかる実施形態では、可撓性犠牲構造は、各個々の物体スタックの間に印刷された一つ以上のスカート構造をさらに含む。スカートは、異なる物体をカバーする可撓性オーバーレイの間を連結し、物体又は物体群が互いに分離されるように破壊可能であることができる。即ち、スカートは、破壊可能な接合を与える。
【0144】
スカート構造は、スカートが可撓性犠牲構造の残りより硬くなるように、造形用材料と支持体材料の異なるデジタル組み合わせ、例えば少なくとも約90%の造形用材料と約10%の支持体材料を含む複合材料を含むことができる。一部の他の実施形態では、スカートは、少なくとも95:5又は少なくとも100:0の造形用材料対支持体材料の比を含むことができる。
【0145】
一部の場合では、印刷される物体は、突き出し、負角、間隙、及び湾曲領域を有することができ、物体の層、中間層、及び可撓性オーバーレイは、次にそれらが印刷されることを可能にするためにそれら自身の支持構造を必要とする。かかる支持構造は、一般的に、物体形状が下から鉛直方向の支持を必要とする場所に設けられる。この支持構造は、物体に関して可撓性犠牲構造の複合材料とは別個であることができ、物体の突き出る部分、及びそれに関連する中間層並びに可撓性オーバーレイの両方を連続印刷するための支持を与える。支持構造は、公知の造形用材料と支持体材料のマトリックスから形成されてもよい。
【0146】
物体及び可撓性犠牲構造(可撓性オーバーレイ、中間層、スカート、及び支持構造を含む)を形成するために使用される材料は、二つの基本材料のみから選択されることができ、一つは、造形用材料であり、もう一つは、支持体材料である。それゆえ、全体構造は、二つのノズル又は少なくとも二つの組の独立して使用可能なノズルを有するプリンターを使用してなされることができる。より多数のノズル又はより多数の組のノズルを有するプリンターについては、三つ以上の材料の複合物を印刷して使用することができる。
【0147】
本発明の一部の実施形態による犠牲構造からの物体の除去は、水噴射、又は加熱あり又はなしの溶媒中での溶解のような他の化学法が使用される、物体から犠牲構造の除去のための従来の技術とは異なる。これらの従来法では、犠牲構造は、一般にそれを浄化することによって物体から除去され、犠牲構造は、一般に断片化されて除去される。
【0148】
本実施形態のために好適な造形用材料の代表例は、Stratasys、イスラエルによって販売されるVeroWhitePlus(商品名)である。本実施形態のために好適な支持体材料の代表例は、Stratasys、イスラエルによって販売されるSUP706(商品名)である。
【0149】
図4を参照すると、それは、本発明の実施形態を示す簡略図である。構造300は、付加製造を使用して印刷される。構造は、予め決定された形状を形成する造形用材料の層のスタックである一つ以上の物体302を含み、物体は、可撓性犠牲構造306内に印刷される。可撓性犠牲構造306は、中間層307及び可撓性オーバーレイ308を含み、中間層307及び可撓性オーバーレイ308の両方は、物体302の各々を少なくとも部分的に包囲する。本実施形態では、可撓性犠牲構造306は、可撓性オーバーレイ308を接続するスカート構造356を含む。支持体材料の、又は支持体材料と造形用材料の組み合わせのカーペット310は、可撓性犠牲構造の一部として印刷されるか、又は印刷の完了後に印刷トレイから構造全体又はその一部を容易に除去可能にする印刷のためのベースとして物体-可撓性犠牲構造の構造の全体の真下の印刷トレイの上に印刷されることができる。
【0150】
従って、各物体は、製作することが望ましい物体(単数又は複数)の形状に対応する構成パターンで配置されかつ一種以上の造形用材料から作られる造形層のスタックから作り上げられる。即ち、各物体は、一種以上の材料から作られることができ、異なる物体は、同じ又は異なる材料から作られることができる。一般に、本実施形態は、各物体が類似するが同じでない場合に特に有用である。本実施形態はまた、全ての物体が各層に一つのタイプの造形用材料配合物及び一つのタイプの支持体材料配合物を吐出することができる付加製造システムによって製作される場合に特に有用であり、その場合において全ての物体は、同じ造形用材料から作られる。
【0151】
従って、可撓性犠牲構造306は、中間層307、及び物体からの無傷の除去を可能にする粘度を有する可撓性オーバーレイ308を含むことができる。可撓性犠牲構造の全ての部分は、可撓性犠牲構造のその部分について必要な機械特性を達成するために様々な材料及び/又は材料の組み合わせの犠牲層のスタックを含み、可撓性犠牲構造は、個々の物体を形成する造形層のスタックを完全に又は部分的に包囲することができる。個々の物体は、物体のまわりに包まれる犠牲構造から個々に除去されることができる。
【0152】
図5に示されているように、印刷トレイからの除去後、圧力を可撓性オーバーレイ308に対して矢印312の方向に付与し、カーペット310又はカーペット310の残留物を通して可撓性犠牲構造306から外に物体302を押し、かくして物体を露出することができる。物体302は、
図6に示されるように可撓性犠牲構造306から除去される。中間層307のほとんどは、可撓性オーバーレイ308に付着したままであり、従ってほとんどの部分が同時に物体から分離される。即ち、物体は、可撓性犠牲構造から外に押されるか又は押圧される。物体は、真上からだけではなく、いかなる好適な位置でも使用者によって可撓性犠牲構造から外に押圧されることができ、可撓性犠牲構造は、物体を除去するためにそれに付与される圧力によっていかなる点でも破壊又は引裂されることができることが理解されるだろう。
図6に示された二つの他の物体302は、各々が次に個々に除去されるまで可撓性犠牲構造内で乱されないままである。一部の実施形態では、全ての物体302は、例えば可撓性犠牲構造306の複数の位置に圧力を同時に付与するために好適なツール又はジグで、一回で可撓性犠牲構造306から抽出される。
【0153】
図7を参照すると、それは、物体の形状が凹部又は突き出し(即ち、負角)を含む場合に製作されることができる可撓性犠牲構造の断面を例示する簡略概略図である。かかる場合には、複合材料の一部は、付加製造プロセスの様々な段階で支持されないままであり、その問題は、示されたように余分の支持構造を形成するために支持体材料を吐出することによって克服される。
【0154】
従って、物体350は、下部より上部が幅広く、いずれの側にも突き出し3501を残す。物体は、印刷トレイ352上に印刷され、可撓性構造306は、可撓性オーバーレイ308及びその側面及び上面をカバーする中間層307を含む。物体350の下面は、カーペット/台座310の上にある。物体の突き出し部分3501、及びそれらをカバーする可撓性構造306の部分は、印刷プロセス時に支持されるべきであるので、支持構造361は、好ましくはスカート356と可撓性オーバーレイ308の間に印刷される。このようにして、支持構造361は、可撓性犠牲構造306とともに除去され、物体350は、追加の後処理浄化時間を必要としない(かかる追加の後処理浄化時間は、支持構造361が可撓性オーバーレイ308と中間層307の間に構築された場合には必要となるだろう)。支持構造は、一般に支持体材料のみ又は支持体材料と造形用材料の混合物を含む。
【0155】
スカート356は、任意選択的に、トレイの上のカーペットベース310の上に印刷され、スカートの厚さは、印刷プロセス中に規定されることができるパラメーターである。スカート356は、異なる印刷物体をカバーする可撓性犠牲構造306の部分間を接続し、物体又は物体の群は、希望の破壊点でスカート356をスナップ、引裂、又は破壊することによって互いに分離されることができる。
【0156】
中間層307は、物体350と可撓性オーバーレイ308の間に印刷されることができ、一般には一つ又は二つもしくは三つのボクセルの厚さの柔らかい純粋な支持体材料であることができ、従って一般には可撓性オーバーレイ308とともに完全に又は部分的に物体から容易に分離することができる。抽出された物体の上に残る支持体材料の残留物は、好適な浄化法で容易に除去されることができる。
【0157】
図8を参照すると、それは、本発明に実施形態に従って可撓性犠牲構造内で3D物体を印刷し、次いで犠牲構造から物体を除去するプロセスを示すフローチャートである。3D印刷又は付加製造システムは、コンピューター物体データを受けとり(ボックス380)、応じて構築材料を吐出し(ボックス382)、物体、即ち造形物396、及び中間層398、可撓性オーバーレイ400並びにスカート402及び必要とされるいずれかの支持構造403を含む可撓性犠牲構造404を与える。構築材料の層は、一層ずつ吐出され、構築材料の各層は、続く層を吐出する前に凝固される(ボックス384)。
【0158】
印刷が完了したら、構造は、任意選択的に、可撓性犠牲層を軟化し、構造から物体を抽出するための制御された温度環境、例えば手を突っ込める熱さの水浴中に置かれることができる。物体を解放するために、各個々の物体をカバーする可撓性犠牲構造、即ち可撓性オーバーレイの部分に圧力を付与し(ボックス386)、可撓性犠牲構造から外に物体を押圧し(ボックス388)、物体を抽出する(ボックス390)。物体は、次いで任意選択的に浄化され(ボックス392)、支持体材料の残留物の完全な除去を確実にする。制御された温度環境は、ボックス394によって示され、水浴によって与えられることができる。
【0159】
一部の実施形態では、いったん全ての層が形成されたら(ボックス384)、方法は、394に進み、そこで形成されかつ可撓性犠牲構造で包囲された物体を任意選択的に水浴に浸漬する。水浴は、制御された温度、例えば手を突っ込める熱さ、又は40~50℃もしくは45℃もしくは46℃で保たれることができ、これは、可撓性犠牲構造からの物体の容易な除去を可能にするように支持体材料の中間層のさらなる軟化を可能にする。実施形態では、中間層は、水浴が中間層による水の吸収及び結果としての中間層の追加の軟化を可能にするように親水性であることができる。物体は、予め設定された時間間隔、例えば20分間水浴中に残すことができ、その後に物体を可撓性犠牲構造から除去する(ボックス386~390)。中間層の多くは、可撓性オーバーレイに付着し、可撓性オーバーレイと共に除去されることが期待される。物体は、代替的に水浴に沈めながら除去されることができる。
【0160】
392では、物体は、中間層のいかなる残留物も浄化されることができる。
【0161】
本出願から成熟する特許の存続期間の期間中には、AMに対して多くの関連する構築材料が開発されることが予想され、「造形用材料」及び「支持体材料」の用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を先験的に包含することが意図される。
【0162】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%又は±5%を示す。
【0163】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0164】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0165】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0166】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0167】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0168】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0169】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1~6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0170】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0171】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0172】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0173】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0174】
実験は、本発明の一実施形態による犠牲構造を設計及び製作するために実施された。全ての実験は、単一の造形用材料(VeroWhitePlus(商品名))及び単一の支持体材料(SUP706(商品名))を充填したインクジェット三次元印刷システムを使用して実施された。
【0175】
図9は、印刷前の物体の単一層のデジタル表現を示す。
図10Aは、物体と可撓性犠牲構造の両方を含む完全な構造の単一層のデジタル表現を示し、
図10Bは、
図10A(円の中)に示された層の構造の詳細部分を拡大して示す。
図10Bは、物体、即ち造形物350、任意の空気ピクセル-造形物表面と可撓性犠牲構造の間の空隙を形成する未印刷ボクセル370、中間層364を形成する純粋な支持体材料、及び可撓性オーバーレイ354を示す。この図でわかるように、オーバーレイ354は、造形用材料に対する支持体材料の高い比率(例えば40/60)を有する内部領域354a、及び造形用材料に対する支持体材料の低い比率(例えば20/80)を有する外部領域354bを含むことができる。純粋な支持体として示された領域は、
図4~6に示された中間層307の均等物である。
【0176】
図11は、一緒に印刷される複数の物体を含む、単一層のデジタル表現を示す。
図12Aは、犠牲構造に埋め込まれた
図11の四つの物体の部分単一図を示し、
図12Bは、円で示された
図12Aの部分の詳細図(拡大図)である。
図12Bは、再び物体350、空隙-未印刷ボクセル370、中間層364を形成する純粋な支持体材料及び可撓性オーバーレイ354を示す。可撓性オーバーレイの深さは、可撓性オーバーレイ領域(例えば内部領域と外部領域)の造形用材料と支持体材料の相対比を含む、その機械特性の分布に寄与しうるパラメーターである。
【0177】
図10A,10B、及び12A及び12Bでは、造形用材料で満たされたボクセルは、濃い色(例えば濃い灰色)で示され、軟らかい支持体材料で満たされたボクセルは、薄い色(例えば薄い灰色)で示されている。従って、物体領域350は、ほとんど濃い灰色であり、中間層364は、純粋の薄い灰色であり、可撓性オーバーレイは、薄いボクセルと濃いボクセルの混合であり、変化する可撓性の複合材料を生み出す。示された実施形態では、可撓性オーバーレイの外側部分372は、可撓性オーバーレイの内側部分374より多い造形用材料を有し、内側部分は、代わりに外側部分より多い支持体材料を有する。このようにして、外側に向かって半径が増加するにつれて可撓性に劣る可撓性オーバーレイが印刷され、従って可撓性オーバーレイは外側から把持されやすくなり、物体に近接する中間層に向かって大きな可撓性を確保しながら全体強度を増加する。
【0178】
図13は、本発明の実施形態による印刷構造320の写真を示す。印刷構造320は、単一の可撓性犠牲構造325中に一緒に形成された二対の義歯322及び323を含む。
【0179】
図14を参照すると、印刷構造320は、任意選択的に、制御された温度に維持された水浴330中に置かれる。試作品のために43℃の手で突っ込める温度が使用された。構造320は、そのベース3100を使用者に面して保持されることができ、物体部分は、下から上方に押圧される。
図15及び16は、破断線334で可撓性犠牲構造から引き出された一つの物体302を示し、
図16はまた、さらに抽出された一つの物体302を示す。
図15及び16の各々では、一つ以上の追加の物体302を、除去前の印刷構造内にまだ見ることができる。
【0180】
圧力を水浴内の構造に付与することができるが、示されているように水浴から構造を除去し、物体を除去し、次いで任意選択的に最終浄化のために物体を水浴に戻すことが一般的により都合が良い。
【0181】
物体302は、いったん抽出されると、任意選択的に、予め設定された期間、浄化溶液中に置かれることができる。例示的な浄化溶液は、2%NaOH及び1%Na2SiO3を含むことができ、前記期間は、25~30分であることができ、その後、流水下での浄化及び気流中での乾燥がなされることができる。
【0182】
図17は、可撓性犠牲構造336からの除去後の物体302を示す。スカート構造356及び可撓性オーバーレイ308は、明らかに区別されることができる。
図18は、浄化、洗浄及び乾燥の後の除去された最終物体302を示す。
【0183】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0184】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。
【0185】
さらに、この出願のいかなる先行文献も参考としてその全体をここに組み入れられる。