(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-30
(45)【発行日】2023-04-07
(54)【発明の名称】光学ファイバ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/02 20060101AFI20230331BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20230331BHJP
G02B 6/036 20060101ALI20230331BHJP
【FI】
G02B6/02 461
G02B6/44 301A
G02B6/036
(21)【出願番号】P 2021520473
(86)(22)【出願日】2019-06-07
(86)【国際出願番号】 GB2019051596
(87)【国際公開番号】W WO2019243777
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-02-22
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520503131
【氏名又は名称】ファイバーコア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ラモス,ロジェリオ タデウ
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/136477(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0287353(US,A1)
【文献】特表2011-529200(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0127459(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0209598(US,A1)
【文献】国際公開第2000/042459(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0286561(US,A1)
【文献】国際公開第1998/012525(WO,A1)
【文献】米国特許第05627934(US,A)
【文献】特開2008-282044(JP,A)
【文献】特開2011-107415(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1465788(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02-6/036
6/10
6/44
G01D 5/353
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の測定タイプを同時に実行するセンシングシステムに組み込むための光学ファイバであって、
3μmから20μmまでのシングルモード光学ファイバコア直径及び0.1~0.18までの開口数を有する
シングルモード光学ファイバコアと、
30μmから100μmまでのマルチモード光学ファイバコア直径及び0.15から0.3までの開口数を有する
マルチモード光学ファイバコアと、
クラッド層直径を有する光学ファイバクラッド層であって、前記シングルモード光学ファイバコア及び前記マルチモード光学ファイバコアを取り囲むクラッド層と、
を備え
、
前記光学ファイバは、前記シングルモード光学ファイバコアがレイリー散乱技術を使用してシングルモードパラメータをセンシングし、同時に、前記マルチモード光学ファイバコアがラマン散乱技術を使用して前記シングルモードパラメータとは異なるマルチモードパラメータをセンシングする、ものであり、
前記シングルモード光学ファイバコアはゲルマニウムでドーピングされており、前記マルチモード光学ファイバコアはゲルマニウムを含まない、
光学ファイバ。
【請求項2】
マルチモード光学ファイバコアは、屈折率プロファイルを有し、
屈折率プロファイルは、段階的屈折率プロファイル;ステップ状屈折率プロファイル;n段階的屈折率プロファイル;w段階的屈折率プロファイル;の範囲から選択されるものである、
請求項1記載の光学ファイバ。
【請求項3】
前記シングルモード光学ファイバコア及び前記マルチモード光学ファイバコアは、同心状である、
請求項1又は2記載の光学ファイバ。
【請求項4】
前記シングルモード光学ファイバコア直径は、前記マルチモード光学ファイバコア直径のパーセンテージであり、前記パーセンテージは、0.1%から99%の範囲から選択されたものである、
請求項1乃至3いずれか1項記載の光学ファイバ。
【請求項5】
前記マルチモード光学ファイバコア直径は、前記クラッド層直径のパーセンテージであり、前記パーセンテージは、50%から99%の範囲から選択されたものである、
請求項1乃至4いずれか1項記載の光学ファイバ。
【請求項6】
前記光学ファイバはさらに、外側保護コーティング層を備える、
請求項1乃至5いずれか1項記載の光学ファイバ。
【請求項7】
前記
外側保護コーティング層は:アクリル酸塩;炭素;高温アクリル酸塩;シリコン;PFA;ポリイミド;炭素;金属;エポキシ・アクリル酸塩、ウレタン・アクリル酸塩、(rtvシリコン類を含む)シリコーンゴムを含むがこれらに制限されない放射線硬化コーティング材料;ポリイミド及びエポキシ;電歪材料;磁歪材料;圧電材料;ポリマー材料;の範囲から選択される少なくとも1つを備える、
請求項6記載の光学ファイバ。
【請求項8】
前記シングルモード光学ファイバコア及び/又は前記マルチモード光学ファイバコア及び/又は前記クラッド層は:Al;Er;Se;F;Cl;Br;Ge;P;Yb;ポリマー;の範囲から選択される少なくとも1つの光学ファイバドーパントを含む、
請求項1乃至7いずれか1項記載の光学ファイバ。
【請求項9】
前記光学ファイバドーパントは:
前記シングルモード光学ファイバコア;
前記マルチモード光学ファイバコア;
前記クラッド層;
の群のうちの少なくとも1つの感光度を、これらの構成要素をドーピングする前の等価物と比較した場合に、増加又は減少させ、
前記群のうちの1つの構成要素への光学格子の書き込みは、前記群のうちの他の構成要素の導波特性に影響を及ぼさない、
請求項8記載の光学ファイバ。
【請求項10】
光学ファイバを備えるセンシングシステムであって、
前記光学ファイバは、
3μmから20μmまでの直径及び0.1~0.18までの開口数を有する、シングルモード光学ファイバコアと、
30μmから100μmまでの直径及び0.15から0.3までの開口数を有する、マルチモード光学ファイバコアと、
前記シングルモード光学ファイバコア及び前記マルチモード光学ファイバコアを取り囲むクラッド層と、を備え、
前記光学ファイバは、前記シングルモード光学ファイバコアはレイリー散乱技術を使用して振動を測定し、
同時に、前記マルチモード光学ファイバコアはラマン散乱技術を使用して温度を測定する
ものであり、
前記シングルモード光学ファイバコアはゲルマニウムでドーピングされており、前記マルチモード光学ファイバコアはゲルマニウムを含まない、センシングシステム。
【請求項11】
前記光学ファイバは、請求項1乃至9のいずれか1項に記載されているものである、
請求項10記載のセンシングシステム。
【請求項12】
前記センシングシステムは:石油工業;ガス産業;構造モニタリング;パイプラインモニタリングの範囲から選択される用途において使用されるように調整されている、
請求項10又は11記載のセンシングシステム。
【請求項13】
光ファイバに沿って実質的に同時に実行されるセンシング方法であって、
i)光学ファイバを提供するステップであって、前記光学ファイバは:
シングルモード光学ファイバコアと;
マルチモード光学ファイバコアと;
前記シングルモード光学ファイバコア及び前記マルチモード光学ファイバコアを取り囲むクラッド層と;
を備える、ステップと、
ii)前記光学ファイバに沿って、同時に、複数のパラメータをセンシングするために前記光学ファイバを使用するステップと、
を含み、
前記パラメータのうちの少なくとも1つはシングルモードパラメータであり、前記シングルモード光学ファイバコアによってレイリー散乱技術を使用してセンシングされ、
前記パラメータのうちの少なくとも1つはマルチモードパラメータであり、前記マルチモード光学ファイバコアによってラマン散乱技術を使用してセンシングされる、
前記シングルモードパラメータと前記マルチモードパラメータとは異なり、
前記シングルモード光学ファイバコア及び前記マルチモード光学ファイバコアは、非同心状に配置されている、
方法。
【請求項14】
前記センシングは、実質的に同じ位置及び/又は同時に実行される、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
センシングされた複数の前記パラメータのうちの少なくとも1つは、センシングされた複数の前記パラメータの少なくとも別の1つの解釈に影響を及ぼすために使用される、
請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記解釈に前記影響を及ぼすことは:較正;補償;検証;補正;バックグラウンド補正;ノイズ除去;正常化;研磨;アーチファクト除去;パターン認識の範囲から選択された少なくとも1つを含む、
請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記光学ファイバは、請求項1乃至9のいずれか1項に記載されているものである、
請求項13乃至16
いずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記光学ファイバは、請求項10乃至12のいずれか1項に記載のセンシングシステム内に含まれる光学ファイバである、
請求項13乃至16
いずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ファイバ、特に、光学センシングを含むマルチセンシング用途に使用されるマルチコア光学ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
油井及びガス井における光学センシングの初期には、光学ファイバは、その意図された目的のために特別に設計されたものではなく、しばしばファイバ上のコーティングの劣化、又は水素によって誘導されるファイバの暗化のために、短時間の後に抗井内で故障する傾向があった。
【0003】
この結果、一部の企業は、抗井口(well head)から抗井先(toe of the well)まで続く空アニールされた制御ラインにファイバをポンピングする(to pump)技術を使用した。ファイバが故障した場合、不良ファイバをポンピングして排出し、別のファイバを取り付けることができた。
【0004】
測定すべきキーとなるパラメータは主に温度であったため、これは、抗井の用途で光学ファイバの使用初期にはある程度有効であった。所望のセンシングパラメータが少ない結果として、追加のファイバを挿入することにさほど関心がなかった。
【0005】
その後の数年を通して、追加のセンシング技術が開発され、複数のファイバをダウンホール(抗井内)に配備する必要性が生じてきた。この分野ではいくつかの研究が試みられているが、成功は極めて限られている。このニーズを満たすために、溶接継ぎ目を有する金属管内に予め構築されたケーブルが市場に登場し、坑井内のセンシングを強化できるようになった。これらが市場に出回り、酸注入などの油回収法が普及するにつれて、温度と酸濃度のいくつかの組み合わせにおいて、外側金属管に沿った溶接継ぎ目が、金属内の高い応力により急速に腐食することが判明した。このタイプの腐食は応力腐食割れと称され、ケーブルの品質及び有用性の劣化を招く。
【0006】
この問題に対する一つの解決策は、ファイバを外側の金属管内に設置することである。しかしながら、外側の金属管が溶接され、引き出され(drawn)又はロールが減少した(roll reduced)、かかる予め構築されたケーブル(pre-built cables)の構造の性質のために、アニールされた外側の金属管を有することは不可能である。
【0007】
石油及びガス産業において、光学ファイバは、温度、音響、圧力及び歪みなどの異なる物理的パラメータをセンシングするために、依然として抗井下で使用されている。ファイバを抗井(ダウンホール)に永続的に配置するには、典型的に2つの方法がある:
【0008】
1)シングル光学ファイバを、アニールされた制御ラインにポンピングすることであって、制御ラインは、抗井口から抗井に下り、通常、抗井の底から戻る戻りラインを有する金属管である。ファイバは通常、水やアルコールなどの液体を伴う位置内にポンピングされる。この方法は、ファイバの比較的安価で直接的な交換を可能にし、通常、費用と時間のかかる抗井複合体(well completion)の費用と時間のかかる抗井改修を必要としない。また、この方法は、ファイバがポンピングされる最終段階までは液圧式接続のみが必要とされるため、設置中の接続を容易にする。この方法の欠点は、1本だけ、または場合によっては2つのファイバしか抗井に正常に注入できないことである。これは、実行可能なセンシングの量を制限し、また、センシングの潜在的な精度もある程度制限する。ポンピングされるファイバの用途では、ファイバが180°Cを超える油井やガス井に露出される傾向があり得、これは、これらの温度での操作性が損なわれるファイバの使用を制限し得る。
【0009】
2)予め構築されたケーブル(pre-built cable)を使用すること。この方法では、複数のファイバが、単一の予め組み立てられたケーブル内に組み込まれることができ、増加したファイバ数によって、センシング選択肢のフルセット(a full suite)を提供することができる。この選択肢の欠点は、抗井複合体のコストのかかる抗井改修なしにファイバを交換することが不可能であることを含む。また、これは、設置中に光学ファイバ接続が必要となる可能性があり、これは、使用される抗井複合体のタイプに応じて、コストがかかり得るか、又は不可能であり得ることを意味する。また、ケーブルを作成する際に、ケーブルの外側金属管は加工硬化されることが多く、剛性が増すために取り扱いの問題が発生することが多く、高温の苛性抗井での腐食の可能性が高まり得る。
【0010】
いくつかの例では、同じ位置で同時に1つ以上タイプの測定を行うことが望ましい。例えば、分散型型音響センシング(DAS)と分散型型温度センシング(DTS)の組み合わせが望ましい。従来は、複数のファイバを配備し、ファイバをコロケーションするための労力が必要であった。しかしながら、このアプローチは、制限された空間によって生じる困難を被る可能性がある。いくつかの配備方法、例えば、ファイバを管にポンピングすることは、上記のように複数のファイバについては実用的ではない虞がある別の問題は、ファイバが分離されることであり、これは、測定システムの品質に影響を及ぼし得る。これは、例えば、あるファイバの温度測定値が、別のファイバの測定値の補償又は補正に使用される場合に、2つのファイバ間の温度差が誤差を引き起こし得る。これは、温度などのパラメータが時間とともに変化する場合に重要になり得る。また、抗井口、チュービングハンガー及びパッカーなどの(当技術分野で知られている)抗井完結部の部分のポートの数の制限は、使用されるファイバの数に制限を課し得る。
【0011】
異なる光学ファイバセンシングシステムは、異なるタイプのファイバを使用し、そのうちのいくつかは、特定の用途により適している。例えば、シングルモード(SM)ファイバは、ブリユアン散乱、レイリー散乱、及びファイバブラッグ回折格子(FBG)に基づくセンシングシステムに使用される傾向があり、マルチモードファイバ(MM)は、より多くの信号エネルギーを捕捉するために、ラマン散乱に基づくセンシングシステムに使用される傾向がある。これらのシステムは、例えば、分散型歪及び温度センシング(DSTS)のために使用されるブリユアン散乱、分散型音響センシング(DAS)のためのレイリー散乱、分散型温度センシング(DTS)のためのラマン散乱、などの異なるパラメータを測定するために使用されてきた。
【0012】
いくつかの例では、同じ位置で同時に1つ以上のタイプの測定を行うことが望ましい。例えば、DASとDTSの組み合わせが望ましい場合がある。上述したように、複数のタイプの測定を実行するには、現在、複数のファイバを配備し、ファイバをコロケーションするための労力が必要である。
【0013】
したがって、複数のパラメータを同一の位置で同時にセンシングすることを可能にする、効率的で、信頼性があり、コスト効率の良い解決策を提供することが望まれる。
【発明の概要】
【0014】
センシングシステムに組み込むための光学ファイバであって、シングルモード光学ファイバコア直径を有するシングルモード光学ファイバコアと、マルチモード光学ファイバコア直径を有するマルチモード光学ファイバコアと、クラッド層直径を有する光学ファイバクラッド層であって、シングルモード光学ファイバコア及びマルチモード光学ファイバコアを取り囲むクラッド層と、を備える。
【0015】
マルチモード光学ファイバコアは、好ましくは、屈折率プロファイルを有し、屈折率プロファイルは、好ましくは、段階的屈折率プロファイル(graded index profile);ステップ状屈折率プロファイル(step index profile);n段階的屈折率プロファイル(n graded index profile);w段階的屈折率プロファイル(w graded index profile)の範囲から選択されたものである。
【0016】
シングルモード光学ファイバコア及びマルチモード光学ファイバコアは、好ましくは同心状である。
【0017】
好ましくは、シングルモード光学ファイバコア直径は、マルチモード光学ファイバコア直径より大きくない。好ましくは、シングルモード光学ファイバコア直径は、マルチモード光学ファイバコア直径のパーセンテージであり、そのパーセンテージは、0.1%から99%の範囲から選択されたものである。
【0018】
好ましい実施形態では、シングルモード光学ファイバコア直径は、1μm~25μmの範囲から選択される。好ましい実施形態では、マルチモード光学ファイバコア直径は、10μm~900μmの範囲から選択される。シングルモードコア及びマルチモード光学ファイバコアの各々の屈折率の相対差を測定する屈折率コントラスト、又は、マルチモード光学ファイバコア及びクラッド層の各々の屈折率の相対差を測定する屈折率コントラストは、シングルモード光学ファイバコア、マルチモード光学ファイバコア及び/又はクラッド層の各々の直径に影響を与える。
【0019】
好ましくは、マルチモード光学ファイバコア直径は、クラッド層直径のパーセンテージであり、そのパーセンテージは、50%から99%の範囲から選択されたものである。
【0020】
好ましくは、シングルモード光学ファイバコアは、シングルモード光学ファイバコア開口数を有し、シングルモード光学ファイバコア開口数は、0.05~0.3の範囲から選択されたものである。
【0021】
好ましくは、前記マルチモード光学ファイバコアは、マルチモード光学ファイバコアの開口数を有し、マルチモード光学ファイバコアの開口数は、0.1~0.5の範囲から選択されたものである。
【0022】
好ましくは、光学ファイバは、シングルモード光学ファイバコアの屈折率とマルチモード光学ファイバコアの屈折率とから特定される屈折率コントラストを備える。好ましくは、屈折率コントラストは、所望の用途に特有である。
【0023】
シングルモード光学ファイバコア及びマルチモード光学ファイバコアの各々に対して必要な屈折率コントラスト及び開口数(NA)値は、好ましい実施形態において、シングルモード光学ファイバコア及びマルチモード光学ファイバコアのそれぞれの直径に関連して画定され得、使用されるセンシングシステムの要件に適応する。例示的な実施形態では、例えば、ラマン散乱に基づく分布温度センシングが使用される場合、例えば0.15~0.3の比較的大きなNA、及び、例えば30μm~100μmの比較的大きなマルチモード光学ファイバコア直径を有するマルチモードであるために必要とされるよりも大きなマルチモード光学ファイバコア直径を有するマルチモード光学ファイバコア。シングルモード光学ファイバコアは、分散型音響センシングのためにレイリー散乱に使用されることができ、大部分が、例えば0.1~0.18のNAと、例えば3μm~20μmの比較的小さなシングルモード光学ファイバコア直径を有する、シングルモードであることが要求され得る(例示のみ)。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によれば、中央のシングルモードの、導光性コアと、シングルモード光学ファイバコアと同心であり、シングルモード光学ファイバコアよりも大きな直径を有する、マルチモード導光性コアと、少なくとも1つのクラッド層と、を備える光学ファイバが提供される。光学ファイバが複数のシングルモード光学ファイバコア及び/又は複数のマルチモード光学ファイバコアを含む実施形態が理解されよう。好ましい実施形態では、クラッド層は、導波路として作用しない。しかしながら、少なくとも1つのクラッド層を含み、その少なくとも1つのクラッド層が、導波路機能を実行するという実施形態が理解されよう。好ましい実施形態において、シングルモード光学ファイバコア及びマルチモード光学ファイバコアはセンシング機能を実行する。好ましくは、シングルモード光学ファイバコア及びマルチモード光学ファイバコアは、異なるセンシング機能を実行する。シングルモード光学ファイバコア及びマルチモード光学ファイバコアが同じセンシング機能を実行する実施形態が理解されよう。本発明の文脈において、「異なるセンシング機能」は、異なるパラメータのセンシングを意味するものとして当業者によって理解され、「同じセンシング機能」は、実質的に同じパラメータのセンシングを意味するものとして理解される。
【0025】
センシングされるべき「パラメータ」の例は、温度、圧力、電界、磁界、放射線、地震活動、振動、音響、応力、圧力、伸展、剪断力、変形、形状、変位、速度、加速度、縦力、材料組成、材料濃度、を含むが、これに限定されるものではない。センシングされるべき「パラメータ」は、光学ファイバを使用してセンシングするのに適した任意のパラメータである実施形態が理解されよう。好ましい実施形態によれば、複数のセンシング能力を有する光学ファイバが提供され、前記の複数のセンシングは、好ましくは、同時に、同一の位置で実施され得る。例えば、複数のパラメータのダウンホールセンシングを必要とする用途は、典型的には、複数のファイバを使用する。空間制限は、しばしば、複数のファイバを使用することを非実用的にし、複数のファイバを使用して一度に単一の場所から同期して測定すると、問題が発生する可能性がある。複数のセンサ(光学ファイバコア)は、同一のファイバ本体内にコロケーション(co-located)されていないからである。
【0026】
同心コアは、好ましくは、本発明の好ましい実施形態による光学ファイバの接合(splicing)を助けるものであり、非同心コアを含む実施形態は、アライメント及び配向(alignment and orientation)の問題のために接合がより困難であり得る。
【0027】
同心コアの使用は、好ましくは、2つのファイバ間及びそれらのそれぞれのコア間の接合及び/又は接続を容易にする。なぜなら、好ましくは、アライメントは、ファイバの外側から特定することができ、好ましくは、ファイバの各々の内部にあるそれぞれのコアの全ての内部アライメントを自動的に提供するからである。これは、好ましくは、ファイバ間の所望の接続が遠隔である場合、又は、油/ガス井内にあるか、又は、海中に配置されて場合などの、さもなければ行うことが困難である場合に、著しい利点となり得る。
【0028】
好ましくは、光学ファイバはさらに、外側保護コーティング層を備える。好ましくは、コーティング層はクラッド層を取り囲み、好ましくは導波路機能を実行しない。
【0029】
好ましくは、コーティング層は:アクリル酸塩;炭素;高温アクリル酸塩;シリコン;PFA;ポリイミド;炭素;金属;エポキシ・アクリル酸塩、ウレタン・アクリル酸塩、(rtvシリコン類を含む)シリコーンゴムを含むがこれらに制限されない放射線硬化コーティング材料;ポリイミド及びエポキシ;電歪材料;磁歪材料;圧電材料;ポリマー材料、の範囲から選択された少なくとも1つを含む。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態では、コーティング層は、光学ファイバの最外コアよりも低い屈折率を有する材料を含む。さらに、かかる実施形態では、コーティング層は、コーティング層の屈折率を上昇又は低下させるため、又はそうでなければコーティング層の特性を所望の用途に適するように調整するために使用される1つ以上のドーパントを含み得る。
【0031】
用語「コーティング層」は、当業者によって、光学ファイバを取り囲む層を意味し、光学ファイバは、クラッド層の有無にかかわらず、マルチコアファイバを含み得ると理解されよう。光学ファイバコアは、通常、導光性であり、光学ファイバクラッド層は導光性であり得ることが理解されよう。本発明の文脈におけるコーティング層は、導光性である場合も、そうでない場合もあることがさらに理解されよう。
【0032】
好ましくは、ポリマー材料は、樹脂を含み、樹脂はポリマー材料が機能性特性を呈するよう改質されるように調整され、機能性特性は、電気歪み、磁歪、分極感受性、圧電特性の範囲から選択される機能特性を示す。
【0033】
より好ましくは、ポリマー材料樹脂は、ファイバ引き出し重合プロセス(fiber draw polymerisation process)において導入された、所定の、選択されたモノマー又はフリーラジカルで改質されるように調整される。
【0034】
好ましくは、シングルモード光学ファイバコア及び/又はマルチモード光学ファイバコアは、Al、Er、Se、F、Cl、Br、Ge、P、Yb、ポリマーの範囲から選択された少なくとも1つの光学ファイバドーパントを含む。
【0035】
光学ファイバクラッド層は、好ましくは、Al、Er、Se、F、Cl、Br、Ge、P、Yb、ポリマーの範囲から選択された少なくとも1つの光学ファイバドーパントを含む。
【0036】
本発明の文脈において、「光学ファイバドーパント」という用語は、当業者によれば、光学ファイバコア、クラッド層、及び/又はコーティング層の特性を変化させるために使用されるドーパントを意味すると理解されよう。このような特性には、例えば、構造特性、屈折率、熱膨張率、温度係数、応力誘導特性、導波路特性、増幅特性、安定性、反応性、構造劣化に対する耐性、暗化への耐性、品質劣化に対する耐性、などが含まれる。ここで説明されていない同様な特性は、光学ファイバ製造の当業者にはよく知られているであろう。説明された光学ファイバドーパントは、挙げられていない追加の元素を含む元素形態、イオン形態、又は複合形態(compound form)で使用されると理解されるであろう。
【0037】
本発明の第1態様による光学ファイバでは、好ましくは、ドーピング材料は、シングルモード光学ファイバコア、マルチモード光学ファイバコア、光学ファイバクラッド層のうちの1つ以上の屈折指数(又は屈折率)(index of refraction (or refractive index)
)を調整するために使用されることができる。これらの異なるドーピング材料は、好ましくは、1つ以上の広範な用途のために光学ファイバの性能を強化するために使用され得る。
【0038】
本発明では、ドーピングストラテジーは、光学ファイバコア及び/又はクラッド層を、酸素及び水の非存在下で、塩素でドーピングすることを含み得る、水素誘導暗化(hydrogen-induced darkening)を低減するために使用されることができる。
【0039】
いくつかの好ましい実施形態では、シングルモード光学ファイバコアは、光学回折格子を含み得る。いくつかの好ましい実施形態では、マルチモード光学ファイバコアは、光回折格子を含み得る。シングルモード光学ファイバコア又はマルチモード光学ファイバコアのいずれかが光回折格子を含む実施形態が理解されよう。シングルモード光学ファイバコアとマルチモード光学ファイバコアの両方が光回折格子を含むさらなる実施形態が理解されよう。光学ファイバ内の全ての光学ファイバコアが光回折格子を含む追加的実施形態が理解されよう。シングルモード光学ファイバコアもマルチモード光学ファイバコアも光回折格子を含まない実施形態も理解されよう。
【0040】
好ましくは、光学ファイバドーパントは、
- シングルモード光学ファイバコア、
- マルチモード光学ファイバコア、
- クラッド層、
の群のうちの少なくとも1つのエンティティの光感度を、これらのエンティティの予めドーピングした等価物と比較した場合に、増加又は減少させ、前記の群のうちの1つのエンティティへの光学格子の書き込みは、前記の群のうちの他のエンティティの導波特性に影響を及ぼさない。
【0041】
用語「これらのエンティティの予めドーピングした等価物(pre-doped equivalents of said entities)」は、当業者によれば、シングルモード光学ファイバコア、マルチモード光学ファイバコア、及びクラッド層を含むグループの中のエンティティを意味し、これらは、前記の光学ファイバドーパントを受け取っていないか、又は感光度を変化させることを意図していない、より低い濃度でしか受け取っていない、ことが理解されよう。実施形態において、「これらのエンティティの予めドーピングした等価物」とは、光学ファイバドーパントを含むが、前記のエンティティの光感度を増減するために使用された特定のドーパントを受け取っていないエンティティを指すことが理解されよう。好ましくは、前記のエンティティの光感度を増加させることにより、光学回折格子を前記エンティティに書き込むことが容易になる。
【0042】
1つ以上の光学ファイバドーパントの使用を含む異なるドーピングストラテジーは、好ましくは、マルチモード光学ファイバコアに影響を及ぼすことなく、シングルモード光学ファイバコアへ、ファイバブラッグ格子などの光学回折格子の書き込みを可能にするために使用することができる。ファイバブラッグ格子(FBG)は、UV放射線を用いて光学ファイバコア上に書き込まれることができる。例えば、ゲルマニウムドーピングは、コアの光感度を増加させ、より容易又はより強力なFBG書き込みを可能にする。同心コアを有する可能な実施形態において、好ましくはシングルモード光学ファイバであり得る内部コアは、ゲルマニウムでドーピングされており、FBGsの書き込みを可能にし得ると共に、好ましくはマルチモード光学ファイバコアである、外部コアは、FBG書き込み感度を最小化するために、ゲルマニウムを含まないか、低いゲルマニウム濃度しか有さない。記載されたドーピングストラテジーは、他の実施形態では、代替的な効果を達成するために変更され得る。可能な実施形態において、シングルモード光学ファイバコアは、例えばゲルマニウムなどの、高光感度ドーパントによってドーピングされることができると共に、マルチモード光学ファイバコアは、例えばフッ素などの、低光感度ドーパントによってドーピングされることができる。
【0043】
さらなる実施形態では、光学回折格子は、光学ファイバで使用するのに適した任意の光学回折格子であることが理解されよう。さらなる追加の実施形態では、光学回折格子は、マルチモード光学ファイバコア内に存在し、ドーピングストラテジーは、任意選択的に、マルチモード光学ファイバコア内の光回折格子の配置が、シングルモード光学ファイバコアの導波路特性などの特性に影響しないように使用されることが理解されよう。シングルモード光学ファイバコア及びマルチモード光学ファイバコアのそれぞれが光学回折格子を含み、任意選択的に、シングルモード光学ファイバコア又はマルチモード光学ファイバコアの一方が他方に影響を及ぼすことを低減又は防止するためにドーピングストラテジーが使用される実施形態が理解されよう。
【0044】
本発明の第2態様によれば、光学ファイバを含むセンシングシステムが提供され、光学ファイバは、シングルモード光学ファイバコアと、マルチモード光学ファイバコアと、シングルモード光学ファイバコア及びマルチモード光学ファイバコアを取り囲むクラッド層と、を備える。
【0045】
好ましくは、本発明の第2態様のセンシングシステムの光学ファイバは、本発明の第1態様の光学ファイバである。
【0046】
好ましくは、センシングシステムは複数のセンシング技術を実行するように調整されており、センシング技術は、レイリー散乱、ブリユアン散乱、ラマン散乱、ファイバブラッグ回折格子、インターフェロメトリ、分散型音響センシング(DAS)、分散型温度センシング(DTS)、分散型歪及び温度センシング(DSTS)、の範囲から選択される。
【0047】
好ましくは、センシングシステムは複数のパラメータをセンシングするように調整されており、パラメータは、温度、圧力、電界、磁界、放射線、地震活動、振動、音響、応力、圧力、伸展、剪断力、変形、形状、変位、速度、加速度、縦力、材料組成、材料濃度、の範囲から選択される。
【0048】
好ましくは、センシングシステムは、同じ位置及び/又は同時に複数のパラメータをセンシングするように調整される。好ましくは、同じ位置は、同じ光学ファイバ断面を指す。好ましくは、前記の位置でセンシングされた第1パラメータが、前記の位置でセンシングされた第2パラメータの解釈を変更する(alter the interpretation)ために使用される。
【0049】
好ましくは、前記の位置でセンシングされた第1パラメータは、前記の位置でセンシングされた第2変数を補償、検証、及び/又は較正するために使用される。好ましくは、センシングシステムはさらに、光信号を提供し、光信号を受け入れるように調整された少なくとも1つの入力部分と、出力光信号を受け入れるように調整された少なくとも1つの検出器部と、を備える。
【0050】
本発明の第2態様の好ましい実施形態では、入力部は、光学ファイバセンサ測定器(OFSI)である。これは、シングルモード光学ファイバコア、マルチモード光学ファイバコア、及び光学ファイバのクラッドのうちの1つ以上を調査するために使用され得る。OFSIは、光信号を検出して有用な情報に変換できるように、光信号を送受信する機能を有することができる。
【0051】
好ましくは、センシングシステムは、石油産業、ガス産業、構造モニタリング、パイプラインモニタリング、の範囲から選択される用途で使用されるように構成される。
【0052】
分散型音響センシング(DAS)又は分散型振動センシング(DVS)は、通常、レイリー散乱を使用し、本発明の好ましい実施形態において使用される。このシステムの可能な利点は、好ましくは、ファイバの全長をセンサとして使用することができることである。このようにして、何千メートルものファイバをセンシングすることができ、ファイバの一端のDAS/DVS装置で構成されることができる。それは通常、好ましくは赤外スペクトル内の、1つ以上のパルスの光を光学ファイバに送ることによって機能する。ファイバの材料によって散乱される光の一部は、センシングシステムに向かって後方に方向づけられる。信号がDAS/DVSシステムに戻るのに要する時間は、信号の散乱が発生しているファイバ内の距離に関する情報を提供する。信号の特性、例えば、その位相は、とりわけ、振動、歪み、又は温度、を推測するために使用され得る。DASシステムは、好ましくは、ファイバに沿って数千のセンサをシミュレートするように構成され得る。
【0053】
モデル又はアルゴリズムは、任意に、信号の解釈を支援するために使用され得る。それは、好ましくは、既知の特性を使用することができるか、又は、センシングされるべきシステム内部の挙動を予測することができ、検出された信号と組み合わせて、より良好な測定を提供することができる。モデリングは、好ましくは、有限要素解析(FEA)技術及び/又は解析モデル若しくはパラメトリックモデルによって支援されることができる。人工知能(AI)技術もまた、好ましくは、システムが経験から「学習」することを可能にするために使用され得る。
【0054】
モデル、アルゴリズム、及び/又は較正の使用は、好ましくは、システムが、振動又は信号の影響を、センシングされるシステム、環境、及び/又は他の信号から識別又は分離することを可能にする。これは、電気システム又はケーブルの共振等の効果、並びに、周辺領域からのノイズが、潜在的に、センシングシステムによって行われる測定の品質に有害な影響を及ぼす可能性があるため、非常に貴重であり得る。
【0055】
本発明の第2態様によるセンシングシステムの好ましい実施例において、センシングシステムは、好ましくは、温度、圧力、電界、磁界、放射線、地震活動、振動、音響、応力、圧力、伸展、剪断力、縦力、材料組成、材料濃度、を含むが、これらに限定されない、複数のパラメータを検出するために用いられる。
【0056】
本発明は、好ましくは、調査技術(interrogation techniques)を用いて、例えば、温度、歪み及び/又は振動を含み得る複数のパラメータの測定を可能にする。複数のパラメータは、例えば、温度、歪み、振動、及び/又は、本発明の第1態様によって提供されるような光学ファイバ若しくは本発明の第2態様によって提供されるようなセンシングシステムを使用した測定に適したその他のパラメータを含み得る。調査技術は、例えば、レイリー散乱、ブリユアン散乱、ラマン散乱、ファイバブラッグ回折格子、干渉計、及び/又は、本発明の第1態様により提供されるような光学ファイバ、若しくは、本発明の第2態様により提供されるようなセンシングシステムを用いるのに適した任意の別の技術を含み得る。調査技術は、好ましくは、典型的には、異なるファイバタイプを必要とし得、これは、例えば、シングルモード、マルチモード、及び/又は異なる開口数(NA)などの複数の機能を有するファイバを含み得る。本発明は、単一のファイバを使用するかかる調査技術において所望の機能を提供し、好ましくはクロスキャリブレーション又は補償を可能にし、好ましくはファイバの数を最小化し、より好ましくは接続および接合を容易にする。
【0057】
本発明の第3態様によれば、基体内において1つ以上の化学気相堆積反応を実施することによって光学ファイバを製造する方法であって、
i)複数の光学ファイバ基体プレフォームを、前駆体を形成するガラスによって提供するステップと、
ii)基体上にアモルファスガラス層を形成するために、基体中に反応を生成するステップと、
iii)SiO2を含む非焼結煤(unsintered soot)の層を堆積させるステップと、
iv)ガラス層を焼結するステップと、
v)必要な場合に、所与の濃度でドーパントを加える間にプロセスを繰り返すステップと、
vi)熱及び張力の適用でステップvi)において前記プレフォームから光学ファイバを引き出す(drawing)ステップ及び光学ファイバコーティングを施すステップと、
を含む方法が提供される。
【0058】
好ましくは、本発明の第3態様の方法を用いて製造される光学ファイバは、本発明の第1態様の光学ファイバである。
【0059】
第4の本発明の態様によれば、センシング方法が提供され、方法は、
i)シングルモード光学ファイバコアと、マルチモード光学ファイバコアと、シングルモード光学ファイバコア及びマルチモード光学ファイバコアを取り囲むクラッド層と、を備える光学ファイバを提供するステップと、
ii)複数のパラメータをセンシングするために前記の光学ファイバを使用するステップと、
を含む。
【0060】
「パラメータ」という用語は、本発明の文脈において、光学ファイバを使用してセンシングするのに適したパラメータに関連すると、当業者によって理解されるであろう。
【0061】
好ましくは、パラメータのうちの少なくとも1つはシングルモードパラメータであり、シングルモード光学ファイバコアによってセンシングされ、パラメータのうちの少なくとも1つはマルチモードパラメータであり、マルチモード光学ファイバコアによってセンシングされる。
【0062】
本発明の文脈において、「シングルモードパラメータ」という用語は、シングルモード光学ファイバコアによってセンシングされるパラメータを意味することを当業者は理解するであろう。さらに、「マルチモードパラメータ」という用語は、光学ファイバのマルチモード光学ファイバコアによってセンシングされるパラメータを意味することが意図されていることが理解されるであろう。シングルモードパラメータは、好ましくは、シングルモード光学ファイバコアによって最適にセンシングされるパラメータであり得、マルチモードパラメータは、好ましくは、マルチモード光学ファイバコアによって最適にセンシングされるパラメータであり得る。
【0063】
好ましくは、シングルモードパラメータとマルチモードパラメータとは異なる。
【0064】
本発明の第4態様による方法の好適な実施形態によれば、センシングは、好ましくは、実質的に同じ位置で実行される。センシングは、さらに好ましくは、実質的に同時に実行される。
【0065】
本発明の光学ファイバは、好ましくは、複数のセンシング及び/又は測定を、同じ場所で同時に行うことを可能にする。
【0066】
単一の光学ファイバを使用して異なる測定及び/又はセンシングを提供する能力は、好ましくは光学ファイバ上の同じ位置を参照する同じ光学ファイバ断面において複数のパラメータを測定及び/又はセンシングすることを可能にする。これは、好ましくは、同じ位置/光学ファイバ断面で実行される別の測定及び/又はセンシングの解釈に影響を与えるために、1つのセンシング及び/又は測定からの情報を使用することを可能にする。前記の解釈に影響を及ぼすことは、例えば、同じ位置/光学ファイバ断面で実行される前記の別の測定及び/又はセンシングの補償、検証又は較正を含み得る。例えば、分散型温度センシング(DTS)測定及び/又はセンシングは、分散型歪み及び温度センシング(DSTS)歪み測定のための温度変動を補償するために使用されることができる。
【0067】
従来、複数のファイバは、複数のパラメータを測定及び/又はセンシングするために使用されてきた。2つ以上のファイバが同時に同一の環境を経験し、したがって、それらのファイバによって提供される情報は、選択された時間に、同一の環境を正確に描写することになる、ことを確実にするの非常に困難である。例えば、2つのファイバが同一のケーブル内に配置された場合でさえ、それらは、ケーブルが移動、変形、又は原因を有する温度変動にさらされる場合、異なる応力を経験すし得る。本発明のように、同一のファイバクラッド内で複数の測定を行うと、好ましくは、複数のファイバの使用に関連する誤差が解消される。本発明のような同心コアを用いて前述の測定及び/又はセンシングを行うことは、好ましくは、記載された誤差をさらに最小化するであろう。
【0068】
複数のパラメータは、好ましくは、温度、圧力、電界、磁界、放射線、地震活動、振動、音響、応力、圧力、伸展、剪断力、変形、形状、変位、速度、加速度、縦力、材料組成、材料濃度、の範囲から選択される。
【0069】
パラメータが、光学ファイバを使用して感知するのに適した任意のパラメータである実施形態が理解されよう。
【0070】
好ましくは、センシングされた複数のパラメータのうちの少なくとも1つは、センシングされた複数のパラメータの別の少なくとも1つの解釈に影響を及ぼすために使用される。
【0071】
好ましくは、解釈への影響とは、較正、補償、検証、補正、バックグラウンド補正、ノイズ除去、正常化、研磨、アーチファクト除去、パターン認識、の範囲から選択される少なくとも1つを含む。場合によっては、2つの異なるコアを使用して同じ種類の測定を行うことができ、各測定は、異なる方法で使用されることができる異なる解像度を有する。例えば、一方の測定は、(温度などの)高い測定解像度と、低い空間分解能(測定が行われるファイバの長さ)を有し得ると共に、他方の測定は、逆に、低い測定解像度及び高い空間分解能を有し得る。これは、異なるタイプのイベントを識別するために使用することができる。
【0072】
好ましくは、本発明の第4態様による方法のステップi)で提供される光学ファイバは、本発明の第1態様の光学ファイバである。好ましくは、本発明の第4態様によるセンシング方法のステップi)における光学ファイバは、本発明の第3態様の製造方法を用いて提供される。好ましくは、本発明の第4態様によるセンシング方法のステップi)の光学ファイバは、本発明の第2態様によるセンシングシステム内に含まれる。
【0073】
本発明の第5態様によれば、ダウンホールセンシングのために、アニールされた制御ライン内で単一の光学ファイバを使用することが提供され、光学ファイバは、シングルモード光学ファイバコアと、マルチモード光学ファイバコアと、シングルモード光学ファイバコア及びマルチモード光学ファイバコアを取り囲むクラッド層と、を備える。好ましくは、使用は、複数のパラメータを検出することを含む。好ましくは、光学ファイバは、本発明の第1態様による光学ファイバである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を例として説明する。
【
図1A】
図1Aは、現在利用可能な技術によるシングルモード光学ファイバの断面図を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、現在利用可能な技術によるマルチモード光学ファイバの断面図を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の第1態様による光学ファイバの例示的実施形態の断面図を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の第1態様による光学ファイバの追加的な例示的実施形態の断面図を示す図である。
【
図5】本発明の第2態様によるセンシングシステムに使用するための、本発明の第1態様による光学ファイバの追加的な例示的実施形態の断面図を示す図である。。
【
図6】
図6は、本発明の第3態様による製造方法の例示的実施形態のステップのフローチャートを示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の第4態様によるセンシング方法の例示的実施形態のステップのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
図1Aを参照すると、シングルモード光学ファイバコア12と光学ファイバクラッド層14とを含む円筒状シングルモード光学ファイバ10の断面図が提供される。シングルモード光学ファイバコア12は、クラッド層14の直径の約5%のコア直径を有することが示されている。
図1Bには、
図1Aに示されるファイバの屈折率プロファイルが示され、シングルモード光学ファイバコア12に対応するシングルモード光学ファイバコア領域16は、クラッド層14に対応する周囲のクラッド層領域18と比較して、増加した屈折率を示す。図示の例では、コアの屈折率の増加は、前記ファイバの製造中にドーパントを用いることによってもたらされ、光学ファイバコアは、ゲルマニウムなどの屈折率増加ドーパントでドープされている。同様の屈折率プロファイルを示す他の例が存在し、周囲のクラッド層は、例えば、フッ素などの屈折率低下ドーパントでドープされる。
【0076】
マルチモード光学ファイバ20の一例の断面図を
図2Aに示し、マルチモード光学ファイバ20は、マルチモード光学ファイバコア22と、周囲のクラッド層24とを備えている。
図2Aに示されるファイバ20の屈折率プロファイルは、
図2Bに示されており、マルチモード光学ファイバコア22に対応するマルチモード光学ファイバコア領域26は、クラッド層24に対応する周囲のクラッド層領域28と比較して、増加した屈折率を示す。
図2Aのマルチモード光学ファイバコア22は、
図2Bの対応する部分26に示されており、段階的屈折率プロファイル(graded index profile)を有する。
図1Aに示すシングルモードファイバ10と同様に、ドーパントは、クラッド層24の屈折率を低下させるか、又は導光性光学ファイバコア22の屈折率を上昇させるために使用され得る。
【0077】
本発明による光学ファイバ30の実施例を
図3Aに示し、光学ファイバ30は、シングルモード光学ファイバコア32と、シングルモード光学ファイバコア32と同心のマルチモード光学ファイバコア34と、周囲のクラッド層36とを備えている。
図3(a)に見られるように、マルチモード光学ファイバコア34は、シングルモード光学ファイバコア直径よりも大きいマルチモード光学ファイバコア直径を有する。クラッド層36は、マルチモード光学ファイバコア直径よりも大きいクラッド層直径を有する。
図3Bは、
図3Aに示す実施例30の
屈折率プロファイルを示し、クラッド層36の相対屈折率を表すクラッド層領域38と、マルチモード光学ファイバコア34の相対屈折率を表すマルチモード光学ファイバコア領域40と、シングルモード光学ファイバコア32の相対屈折率を表すシングルモード光学ファイバコア領域42と、を有する。図示のように、30で示される実施形態のマルチモード光学ファイバコア34は、段階的屈折率プロファイル40を有する。
【0078】
図3Aは、第2態様によるセンシングシステムで使用するための第1態様の光学ファイバの例を示し、光学ファイバは、1つ以上のコアを備え、センシングシステムは、様々なセンシング方法を使用する必要がある。
図3Aに示す例示的実施形態の屈折率プロファイルを
図3Bに示す。
【0079】
本発明の第3態様による方法を用いて製造された30の実施例では、ドーピング材料が、シングルモード光学ファイバコア、マルチモード光学ファイバコア、及びクラッド層の製造に使用されている。ドーピング材料は、所与の用途のために光学ファイバ30の性能を向上させるために使用されてきた。
【0080】
図示の実施例30では、n2における屈折率レベルは純粋なシリカガラスの屈折率であり;屈折率レベルn1は、例示の目的でのみ使用される屈折率低下剤であるフッ素がドープされたシリカに対応し、他の屈折率低下剤も認められるであろう。他の屈折率低下剤は、例えば、ホウ素を含む。屈折率レベルn3は、例示の目的でのみ使用される屈折率上昇剤であるゲルマニウムがドープされたシリカに対応する。他の屈折率上昇剤は、例えば、アルミニウム及びリンを含み、他の屈折率上昇剤も認められるであろう。
図3Bに示される屈折率プロファイルは、好ましくは、マルチモード光学ファイバコア34の導波特性に大きな影響を与えることなく、シングルモード光学ファイバコア32にファイバブラッグ格子を書き込むことを可能にする。
図3Bに示された屈折率プロファイルは異なる範囲の屈折率を表し、例えば、屈折率レベルn3は純粋なシリカに関係し、レベルn2及びn1はそれぞれ、屈折率上昇剤であるフッ素又は塩素を、異なるレベルでドープしたシリカに対応することが理解されるであろう。このような構成は、好ましくは、水素耐性又は放射線耐性が所望される用途において有用である。
【0081】
本発明の好ましい部分は、プロファイルの屈折の指標(屈折率)が、所与の用途に対する性能を向上させるために、異なるドーピングストラテジー又は材料を使用することによって調整され得ることである。
図3Bをガイドとして用いた1つの例示的ケースは、レベルn2は、純粋なシリカに関係し、レベルn1は、場合によってフッ素ドーピングによって、ドープされたシリカに対応し、レベルn3は、場合によってゲルマニウムドーピングによって、ドープされたシリカに対応する場合である。この構成は、マルチモード光学ファイバコアに影響を与えることなく、シングルモード光学ファイバコアにファイバブラッグ格子を書込むことを可能にするのに有用である。
【0082】
これらの実施例の別のケースは、レベルn3が純粋なシリカに関係し、レベルn2及びn1が、場合によっては、異なるドーピングレベルでフッ素ドーピングによってドープされたシリカに対応する場合である。この構成は、水素耐性又は放射線耐性が所望される用途に有用である。
【0083】
別の例示的な実施形態(図示せず)は、
図3Aに示すものと同様のファイバを含むが、屈折率n1は純粋なシリカガラスのものであり、n2及びn3は、例えば、ゲルマニウムを含み得るドーパントでガラスをアップドーピングすること(屈折率を増加させること)によって達成され得る。
【0084】
図示の実施例30の同心コアは、好ましくはファイバ30の接続に有利であり、対応する単一モード光学ファイバコア32、マルチモード光学ファイバコア34及びクラッド層36のより便利なアライメントである。
【0085】
追加の例示的実施形態(図示せず)において、第1態様の光学ファイバは、ファイバが使用される用途及び条件に応じて通常選択されるコーティング材料でコーティングされ得る。例えば、高温に耐えることが期待されるファイバは、ポリイミドなどの高温ポリマーでコーティングされることができる。クラッド上に堆積された炭素層は、気密性を改善するために、又は疲労耐性を増加するために、任意に使用され得る。
【0086】
図4Aは、本発明の第1態様による光学ファイバのさらなる実施例50を提供し、実施例50は、シングルモード光学ファイバコア52と、シングルモード光学ファイバコア52にアライメントされた(aligned)マルチモード光学ファイバコア54と、シングルモード光学ファイバコア52及びマルチモード光学ファイバコア54を取り囲むクラッド層と、を有する。例示的実施例50の屈折率プロファイルは
図4Bに示され、クラッド層36に対応するクラッド層領域58と、マルチモード光学ファイバコア54に対応するマルチモード光学ファイバコア領域60と、シングルモード光学ファイバコア52に対応するシングルモード光学ファイバコア領域62と、を有する。
図4Bには、クラッド層36の屈折率に対して増加されるべきものである、シングルモード光学ファイバコア52及びマルチモード光学ファイバコア54のそれぞれの屈折率が示されている。許容可能なインデックス増加ドーピングストラテジーの例は、
図3A及び3Bについて上述されている。
【0087】
図5には、本発明の第1態様による光学ファイバのさらなる実施例70が示されており、光学ファイバ70は、2つのアライメントされたシングルモード光学ファイバコア72と、2つのアライメントされたマルチモード光学ファイバコア74とを含み、これらはすべてクラッド層76に取り囲まれている。2つのシングルモード光学ファイバコアは、1つの軸にアライメントされ得、2つのマルチモード光学ファイバコアは、別の軸にアライメントされ得、これらの2つの軸は、直交し得る。
図3A、
図3B、
図4A及び
図4Bについて、クラッド層76に対するシングルモード光学ファイバコア72及びマルチモード光学ファイバコア74の屈折率プロファイル及びドーピングストラテジーの例を上述した。
【0088】
図3A、
図4A又は
図5Aのいずれか1つの光学ファイバを使用する場合、センシングシステムに組み込まれ、石油産業内のダウンホールセンシングアプリケーションの範囲において、同じ場所で同時に1つ以上のタイプの測定を実行するために使用される。ファイバは、シングルファイバ内に複数のセンサを含み、したがって、同じ位置で同時に複数のセンシングを実行する目的で、単一の光学ファイバのみを、制御ラインを下って(down a control line)ポンピングすることを可能にする。このようにして、ダウンホールシステムにおける異常の効果的な検出及び位置特定(location)が好適に可能となる。各実施例における(複数の)シングルモード光学ファイバコアは、ファイバブラッグ回折格子又は分散型音響センシング(DAS)を用いた振動センシングを含む。各実施形態における(複数の)マルチモード光学ファイバコアは、代わりに、分散型温度センシング(DTS)を用いた温度センシングのために最適化される。
【0089】
従来は、複数のファイバを配備し、ファイバをコロケーションするための労力が必要であった。しかしながら、この効果の低いアプローチは、スペースの制限によって問題が発生する可能性がある。ファイバを制御ライン内へポンピングするなどのいくつかの配備方法もまた、複数のファイバでは実用的ではない場合がある。別の問題は、ファイバが分離されることであり、これは、効果的な異常検出のために測定の正確なコロケーションが必要とされる測定システムの品質に影響を及ぼす可能性がある。これは、例えば、あるファイバの温度測定値が別のファイバの測定値の補正に使用される場合に、2つのファイバ間の温度差が誤差を引き起こす可能性がある。これは、温度などのパラメータが時間とともに変化する場合に重要である。
【0090】
本発明の第1態様の上述した実施形態例の各々は、本発明の第2態様によるセンシングシステムに組み込むのに適している。
【0091】
第2態様によるセンシングシステムについての例示の実施例は、さらに、光信号を提供し、光信号を受け入れるように調整された少なくとも1つの入力部分と、出力光信号を受け入れるように調整された少なくとも1つの検出器部分と、を備える。
図6には、本発明の第3態様による製造方法80の例示的実施形態が示され、方法は、基体管内において1つ以上の化学気相堆積反応を実施するものであり、方法は、i)複数の光学ファイバ基体プレフォームを、前駆体を形成するガラスによって提供するステップと、
ii)基体上にアモルファスガラス層を形成するために、基体中に反応を生成するステップと、
iii)SiO
2を含む非焼結煤の層を堆積させるステップと、
iv)ガラス層を焼結するステップと、
v)必要な場合に、所与の濃度でドーパントを加える間にプロセスを繰り返すステップと、
vi)熱及び張力の適用と共に、ステップvi)においてプレフォームから光学ファイバを引き出すステップ及び光学ファイバコーティングを施すステップと、
を含む。
【0092】
図6に示される例示的な方法は、上述した本発明の第1態様による光学ファイバの例示的な実施形態のいずれかの製造に適している。
【0093】
図7には、本発明の第4態様によるセンシング方法90の例示的実施形態が示され、その方法は、
i)シングルモード光学ファイバコアと、マルチモード光学ファイバコアと、シングルモード光学ファイバコア及びマルチモード光学ファイバコア92を取り囲むクラッド層と、を備える光学ファイバを提供するステップと、
ii)複数のパラメータ94をセンシングするために光学ファイバを使用するステップと、
を含む。
【0094】
上述の実施形態は、単なる例示として与えられ、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることが理解されるであろう。